(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024006280
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】安定性に優れた非水性製剤
(51)【国際特許分類】
A61K 31/197 20060101AFI20240110BHJP
A61K 31/22 20060101ALI20240110BHJP
A61P 7/06 20060101ALI20240110BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240110BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20240110BHJP
A61K 9/48 20060101ALI20240110BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20240110BHJP
A61K 9/16 20060101ALI20240110BHJP
A61P 1/08 20060101ALI20240110BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20240110BHJP
A61K 47/14 20170101ALI20240110BHJP
A61K 47/06 20060101ALI20240110BHJP
A61K 47/10 20170101ALI20240110BHJP
A61K 47/04 20060101ALI20240110BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
A61K31/197
A61K31/22
A61P7/06
A61P43/00
A61K9/20
A61K9/48
A61K9/14
A61K9/16
A61P1/08
A61K47/12
A61K47/14
A61K47/06
A61K47/10
A61K47/04
A61K47/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022107018
(22)【出願日】2022-07-01
(71)【出願人】
【識別番号】517198735
【氏名又は名称】ネオファーマジャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(72)【発明者】
【氏名】出来 健
(72)【発明者】
【氏名】石井 邦明
(72)【発明者】
【氏名】洞口 陽彦
(72)【発明者】
【氏名】山下 智典
【テーマコード(参考)】
4C076
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA30
4C076AA31
4C076AA36
4C076AA53
4C076BB01
4C076CC14
4C076CC16
4C076CC40
4C076DD21
4C076DD23
4C076DD24
4C076DD28
4C076DD29
4C076DD34
4C076DD37
4C076DD41
4C076DD46
4C076DD68
4C076FF41
4C076FF63
4C206AA01
4C206AA02
4C206FA47
4C206GA01
4C206GA25
4C206MA03
4C206MA05
4C206MA55
4C206MA57
4C206MA61
4C206MA63
4C206NA03
4C206ZA55
4C206ZA71
4C206ZC80
(57)【要約】
【課題】5-ALA若しくはその誘導体又はこれらの塩を含有し、5-ALA若しくはその誘導体又はこれらの塩の安定性に優れた非水性製剤を提供すること。
【解決手段】下記一般式(I)で表される化合物又はこの塩と、
[一般式(I)中、R
1は、水素原子又はアシル基を表し、R
2は水素原子、直鎖若しくは分岐状アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はアラルキル基を表す。]
糖又は糖アルコールと、
融点が30~100℃の、脂肪酸、脂肪酸エステル、脂肪族炭化水素及び脂肪族アルコールからなる群より選ばれる少なくとも1種と、
を含有する非水性製剤。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)で表される化合物又はこの塩と、
【化1】
[式中、R
1は、水素原子又はアシル基を表し、R
2は水素原子、直鎖若しくは分岐状アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はアラルキル基を表す。]
糖又は糖アルコールと、
融点が30~100℃の、脂肪酸、脂肪酸エステル、脂肪族炭化水素及び脂肪族アルコールからなる群より選ばれる少なくとも1種と、
を含有する非水性製剤。
【請求項2】
前記糖又は糖アルコールは、D-マンニトール、エリスリトール、キシリトール、ソルビトール、乳糖、トレハロース、イソマル水和物、及びマルチトールからなる群より選ばれる1種以上である、請求項1に記載の非水性製剤。
【請求項3】
前記脂肪酸エステルは、多価アルコールの脂肪酸エステルである、請求項1に記載の非水性製剤。
【請求項4】
前記脂肪酸エステルは、ショ糖脂肪酸エステル及びグリセリン脂肪酸エステルからなる群より選ばれる1種以上である、請求項1に記載の非水性製剤。
【請求項5】
前記脂肪酸は、炭素数が10~24の飽和脂肪酸である、請求項1に記載の非水性製剤。
【請求項6】
前記一般式(I)で示される化合物又はこの塩の含有量は、非水性製剤の全量を基準として、5~80質量%である、請求項1に記載の非水性製剤。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の非水性製剤と、該非水性製剤を乾燥状態で収容する包装と、を備える、製品。
【請求項8】
前記非水性製剤は、錠剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、又は細粒剤の形状を有する、請求項7に記載の製品。
【請求項9】
シリカゲル、シリカアルミナゲル、天然ゼオライト、合成ゼオライト、塩化カルシウム、生石灰、ベントナイトクレイ、塩化マグネシウム、酸化マグネシウム、硫酸カルシウム、活性アルミナ、アルミナ、ボーキサイト、無水硫酸カルシウム、及び吸水性クレイ並びにこれらの成分と活性炭との混合物からなる群より選ばれる1種以上の乾燥剤により、前記非水性製剤が乾燥状態となる、請求項7に記載の製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、安定性に優れた非水性製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
アミノレブリン酸(5-ALA)、その誘導体及びこれらの塩は、経尿道的膀胱腫瘍切除術時における筋層非浸潤性膀胱癌の可視化のための光線力学診断用剤、健康食品等として用いられている。また、特許文献1~3には、ALA類を含む抗ガン剤の副作用の予防剤及び/又は治療剤(特許文献1)、ALA類を含む二日酔いの予防剤及び/又は治療剤(特許文献2)、ALAを含むがん性貧血改善剤や予防剤(特許文献3)等も開示されている。
【0003】
一般に、医薬品における有効成分又は健康食品における栄養成分等として有用な化合物は、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤等の添加剤と共に製剤化され、経口投与が容易な錠剤や顆粒剤として服用される。こうした製剤においては、期待される薬効の発揮や予期せぬ副作用の回避、変色等による商品性低下の防止等の観点から、製剤中での有効成分、栄養成分の保存安定性の確保が極めて重要となる。
【0004】
しかし、5-ALAを含む製剤には、製剤の形態や添加剤の種類によって、5-ALAの経時的な分解が誘発されるという課題がある。例えば、特許文献4には、ALA類を含む製剤の開発を行っていたところ、水分を含む製剤中にALA類と鉄化合物とが共存すると、製剤中のALA類の安定性が低下し、ALAの濃度が短期間で減少してしまうという課題に直面したと記載されている。このように、5-ALAを含む製剤の開発は難しく、5-ALAの安定性に優れた非水性製剤は未だ知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開2013/054756号
【特許文献2】国際公開2013/084816号
【特許文献3】国際公開2013/054770号
【特許文献4】国際公開2018/043240号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、5-ALA若しくはその誘導体又はこれらの塩を含有し、5-ALA若しくはその誘導体又はこれらの塩の安定性に優れた非水性製剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、いくつかの側面において、下記の[1]~[9]を提供する。
【0008】
[1]下記一般式(I)で表される化合物又はこの塩と、
【化1】
[式中、R
1は、水素原子又はアシル基を表し、R
2は水素原子、直鎖若しくは分岐状アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はアラルキル基を表す。]
糖又は糖アルコールと、
融点が30~100℃の、脂肪酸、脂肪酸エステル、脂肪族炭化水素及び脂肪族アルコールからなる群より選ばれる少なくとも1種と、
を含有する非水性製剤。
[2]糖又は糖アルコールは、D-マンニトール、エリスリトール、キシリトール、ソルビトール、乳糖、トレハロース、イソマル水和物、及びマルチトールからなる群より選ばれる1種以上である、[1]に記載の非水性製剤。
[3]脂肪酸エステルは、多価アルコールの脂肪酸エステルである、[1]又は[2]に記載の非水性製剤。
[4]脂肪酸エステルは、ショ糖脂肪酸エステル及びグリセリン脂肪酸エステルからなる群より選ばれる1種以上である、[1]~[3]に記載の非水性製剤。
[5]脂肪酸は、炭素数が10~24の飽和脂肪酸である、[1]~[4]のいずれかに記載の非水性製剤。
[6]一般式(I)で示される化合物又はこの塩の含有量は、非水性製剤の全量を基準として、5~80質量%である、[1]~[5]のいずれかに記載の非水性製剤。
[7][1]~[6]のいずれかに記載の非水性製剤と、該非水性製剤を乾燥状態で収容する包装と、を備える、製品。
[8]非水性製剤は、錠剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、又は細粒剤の形状を有する、[7]に記載の製品。
[9]シリカゲル、シリカアルミナゲル(アロフェン等)、天然ゼオライト、合成ゼオライト、塩化カルシウム、生石灰(酸化カルシウム)、ベントナイトクレイ(モンモリナイト、モンモリロナイト等)、塩化マグネシウム、酸化マグネシウム、硫酸カルシウム、活性アルミナ、アルミナ、ボーキサイト、無水硫酸カルシウム、及び吸水性クレイ並びにこれらの成分と活性炭との混合物からなる群より選ばれる1種以上の乾燥剤により、非水性製剤が乾燥状態となる、[7]又は[8]に記載の製品。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、5-ALA若しくはその誘導体又はこれらの塩を含有し、5-ALA若しくはその誘導体又はこれらの塩の安定性に優れた非水性製剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明のいくつかの実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0011】
一実施形態に係る非水性製剤は、下記一般式(I)で表される化合物又はこの塩を含有する。
【化2】
式中、R
1は、水素原子又はアシル基を表し、R
2は水素原子、直鎖若しくは分岐状アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はアラルキル基を表す。
【0012】
以下、一般式(I)で表される化合物又はこの塩を、まとめて「5-ALA化合物」と呼ぶ場合がある。一般式(I)で表される化合物は、5-ALA(5-アミノレブリン酸)と5-ALA誘導体(5-ALA以外の一般式(I)で表される化合物)から構成される。したがって、5-ALA化合物は、5-ALA若しくは5-ALA誘導体又はこれらの塩ということもできる。
【0013】
先ず、5-ALA(5-アミノレブリン酸)について説明する。5-ALAは、一般式(I)において、R1及びR2が共に水素原子である化合物であり、アミノ酸の一種である。
【0014】
次に、5-ALA誘導体について説明する。5-ALA誘導体において、R1が水素原子であり、かつR2が直鎖若しくは分岐状アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はアラルキル基であってよく、R1がアシル基であり、かつR2が水素原子であってよい。
【0015】
R1におけるアシル基としては、ホルミル、アセチル、プロピオニル、ブチリル、イソブチリル、バレリル、イソバレリル、ピバロイル、ヘキサノイル、オクタノイル、ベンジルカルボニル基等の直鎖又は分岐状の炭素数1~8のアルカノイル基や、ベンゾイル、1-ナフトイル、2-ナフトイル基等の炭素数7~14のアロイル基を挙げることができる。
【0016】
R2におけるアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル基等の直鎖又は分岐状の炭素数1~8のアルキル基を挙げることができる。
【0017】
R2におけるシクロアルキル基としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロドデシル、1-シクロヘキセニル基等の飽和、又は一部不飽和結合が存在してもよい、炭素数3~8のシクロアルキル基を挙げることができる。
【0018】
R2におけるアリール基としては、フェニル、ナフチル、アントリル、フェナントリル基等の炭素数6~14のアリール基を挙げることができる。
【0019】
R2におけるアラルキル基としては、アリール部分は上記アリール基と同じ例示ができ、アルキル部分は上記アルキル基と同じ例示ができ、具体的には、ベンジル、フェネチル、フェニルプロピル、フェニルブチル、ベンズヒドリル、トリチル、ナフチルメチル、ナフチルエチル基等の炭素数7~15のアラルキル基を挙げることができる。
【0020】
5-ALA誘導体としては、R1が、ホルミル、アセチル、プロピオニル、又はブチリル基等である化合物が好ましい。また、R2が、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル基等である化合物が好ましい。5-ALA誘導体としては、上記R1とR2の組合せが、ホルミルとメチル、アセチルとメチル、プロピオニルとメチル、ブチリルとメチル、ホルミルとエチル、アセチルとエチル、プロピオニルとエチル、ブチリルとエチルの組合せである化合物などを好ましく挙げることができる。
【0021】
5-ALA誘導体は、5-ALAのプロドラッグであってもよい。5-ALAのプロドラッグは、生体内等で代謝されることによって、5-ALAを生成する化合物である。5-アミノレブリン酸のプロドラッグとしては、例えば、5-アミノレブリン酸メチルエステル、5-アミノレブリン酸エチルエステル、5-アミノレブリン酸プロピルエステル、5-アミノレブリン酸ブチルエステル、5-アミノレブリン酸ペンチルエステル等の5-アミノレブリン酸のエステルが挙げられる。
【0022】
次に、5-ALA又は5-ALA誘導体の塩について説明する。5-ALA又は5-ALA誘導体の塩は、薬理学的に許容される塩であればよい。塩としては、例えば、酸付加塩、金属塩、アンモニウム塩、有機アミン付加塩等を挙げることができる。酸付加塩の例としては、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、リン酸塩、硝酸塩、硫酸塩等の無機酸塩;及びギ酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、トルエンスルホン酸塩、コハク酸塩、シュウ酸塩、乳酸塩、酒石酸塩、グリコール酸塩、メタンスルホン酸塩、酪酸塩、吉草酸塩、クエン酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、リンゴ酸塩等の有機酸付加塩が挙げられる。金属塩の例としては、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、マグネシウム塩、カルシウム塩等のアルカリ土類金属塩、アルミニウム塩、亜鉛塩等が挙げられる。アンモニウム塩の例としては、アンモニウム塩、テトラメチルアンモニウム塩等のアルキルアンモニウム塩が挙げられる。有機アミン付加塩の例としては、トリエチルアミン塩、ピペリジン塩、モルホリン塩、及びトルイジン塩が挙げられる。
【0023】
5-ALA化合物は、5-ALA及び5-ALAエステル(5-ALAメチルエステル、5-ALAエチルエステル、5-ALAプロピルエステル、5-ALAブチルエステル、5-ALAペンチルエステル等)、並びに、これらの塩酸塩、リン酸塩、及び硫酸塩からなる群より選ばれる1種以上であることが好ましい。5-ALA化合物は、より好ましくは、5-ALA塩酸塩、及び/又は5-ALAリン酸塩である。
【0024】
5-ALA化合物の含有量は、非水性製剤の全量を基準として、5質量%以上、20質量%以上、又は40質量%以上であってよく、80質量%以下、70質量%以下、又は65質量%以下であってよい。5-ALA化合物の含有量は、非水性製剤の全量を基準として、5~80質量%であることが好ましく、20~70質量%であることがより好ましく、40~65質量%であることが特に好ましい。
【0025】
一実施形態に係る非水性製剤は、上述した5-ALA化合物の他、糖又は糖アルコールを含有することができる。糖又は糖アルコールは、単糖、二糖、少糖(分子量が300~3000の糖。ただし、二糖類に該当するものを除く。)、及びこれらの糖アルコールからなる群より選ばれる1種以上であってよい。
【0026】
単糖の例としては、グルコース(ブドウ糖)及びフルクトース(果糖)が挙げられ、単糖の糖アルコール(「単糖アルコール」ともいう。)の例としては、D-マンニトール、エリスリトール、キシリトール、及びソルビトールが挙げられる。
【0027】
二糖の例としては、乳糖(例えば、乳糖水和物、無水乳糖、噴霧乾燥乳糖、流動層造粒乳糖、及び異性化乳糖)、ショ糖(スクロース)、トレハロース、及びマルトースが挙げられ、二糖の糖アルコール(「二糖アルコール」ともいう。)の例としては、イソマル水和物、ラクチトール(還元乳糖)、及びマルチトールが挙げられる。二糖は、精製白糖、白糖等として含有されていてもよい。なお、精製白糖及び白糖は、ショ糖を含む。また、二糖アルコールは、還元麦芽糖水あめ等として含有されていてもよい。なお、還元麦芽糖水あめは単糖アルコール、二糖アルコール(マルチトール)、及び少糖の糖アルコール(「少糖アルコール」ともいう。)を含む。非水性製剤が還元麦芽糖水あめを含む場合、二糖アルコールに加えて単糖アルコール及び少糖アルコールが還元麦芽糖水あめとして含有されているともいえる。
【0028】
少糖は、オリゴ糖と呼ばれることもある。少糖(オリゴ糖)の例としては、フラクトオリゴ糖等が挙げられる。少糖は、単糖が3個以上10個以下結合した糖であってよい。
【0029】
非水性製剤は、これらの糖又は糖アルコールのうち、1種のみを含有していてもよく、2種以上を含有していてもよい。糖又は糖アルコールは、単糖、二糖、少糖及びこれらの糖アルコールからなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、単糖の糖アルコール、二糖の糖アルコール及び少糖の糖アルコールからなる群より選ばれる少なくとも1種であることがより好ましい。また、糖又は糖アルコールは、D-マンニトール、エリスリトール、キシリトール、ソルビトール、乳糖、トレハロース、イソマル水和物、及びマルチトールからなる群より選ばれる1種以上であってもよい。
【0030】
糖又は糖アルコールの含有量は、非水性製剤の全量を基準として、10質量%以上、20質量%以上、30質量%以上、又は33質量%以上であってよく、95質量%以下、80質量%以下、70質量%以下、又は60質量%以下であってよい。糖又は糖アルコールの含有量は、非水性製剤の全量を基準として、10~95質量%であってよく、20~80質量%であることが好ましく、30~70質量%であることがより好ましく、33~60質量%であることがさらに好ましい。
【0031】
一実施形態に係る非水性製剤は、上述した5-ALA化合物の他、融点が30~100℃の、脂肪酸、脂肪酸エステル、脂肪族炭化水素及び脂肪族アルコールからなる群より選ばれる少なくとも1種(以下、「低融点化合物」ともいう。)を含有することができる。ここで、融点は、「第十八改正日本薬局方 一般試験法 2.物理的試験法 2.60融点測定法」に記載の方法により測定することができる。低融点化合物は、それぞれ水不溶性であってよく、水難溶性であってもよい。
【0032】
低融点化合物である脂肪酸は、融点が30~100℃の脂肪酸である。脂肪酸の融点は40℃以上、又は50℃以上であってもよく、90℃以下、又は80℃以下であってもよい。脂肪酸は、炭素数が10~24の飽和脂肪酸であることが好ましく、飽和脂肪酸の炭素数は、12~24、又は14~18であってもよい。炭素数が10~24の飽和脂肪酸の例としては、デカン酸(カプリン酸)、ドデカン酸(ラウリン酸)、テトラデカン酸(ミリスチン酸)、ヘキサデカン酸(パルミチン酸)、ヘプタデカン酸(マルガリン酸)、オクタデカン酸(ステアリン酸)、エイコサン酸(アラキジン酸)、ドコサン酸(ベヘン酸)及びテトラコサン酸(リグノセリン酸)が挙げられる。脂肪酸は、ステアリン酸であることが特に好ましい。脂肪酸は、木ロウとして含有されていてもよい。
【0033】
低融点化合物である脂肪酸エステルは、融点が30~100℃の脂肪酸エステルである。脂肪酸エステルの融点は40℃以上、又は50℃以上であってもよく、90℃以下、又は80℃以下であってもよい。脂肪酸エステルは、例えば、多価アルコールの脂肪酸エステルであってよい。多価アルコールの脂肪酸エステルの例としては、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、及びソルビタン脂肪酸エステルが挙げられる。多価アルコールの脂肪酸エステルは、ショ糖脂肪酸エステル若しくはグリセリン脂肪酸エステル又はこれらの混合物であることが特に好ましい。
【0034】
ショ糖脂肪酸エステルは、親水基であるショ糖と、親油基である植物油脂由来の脂肪酸とのエステルであり、シュガーエステルとも呼ばれる。ショ糖はスクロース(sucrose)とも呼ばれ、ブドウ糖(glucose)と果糖(fructose)の2つの単糖で形成された糖であり、8個の水酸基を有している。ショ糖脂肪酸エステルは、ショ糖が有する水酸基のうち1個以上の水酸基が脂肪酸で置換されたものである。ショ糖脂肪酸エステルは、ショ糖が有する水酸基のうち、1個が脂肪酸で置換されたモノエステルであってもよく、2個以上8個以下が脂肪酸で置換されたエステル(ジエステル、トリエステル、オクタエステル等)であってもよく、これらの混合物であってもよい。
【0035】
ショ糖脂肪酸エステルを構成する脂肪酸は、飽和脂肪酸であってもよく、不飽和脂肪酸であってもよい。また、直鎖状であってもよく、分岐状であってもよい。ショ糖脂肪酸エステルを構成する脂肪酸は、炭素数10~24の脂肪酸であってもよく、好ましくは、炭素数12~22又は炭素数18~22の脂肪酸である。炭素数18~22の脂肪酸の例としては、オクタデカン酸(ステアリン酸)、エイコサン酸(アラキジン酸)、ドコサン酸(ベヘン酸)、及びエルカ酸が挙げられる。
【0036】
グリセリン脂肪酸エステルは、グリセリンと脂肪酸とのエステルである。グリセリンは3価の糖アルコールであり、3個の水酸基を有している。グリセリン脂肪酸エステルは、グリセリンが有する水酸基のうち1個以上の水酸基が脂肪酸で置換されたものである。グリセリン脂肪酸エステルは、グリセリンが有する水酸基のうち、1個が脂肪酸で置換されたモノエステルであることが好ましい。グリセリン脂肪酸エステルは、油脂として含有されていてもよい。油脂の例としては、カカオ脂等の植物脂、及び、硬化ナタネ油、硬化ヒマシ油等の硬化植物油が挙げられる。硬化植物油は、比較的融点の低い不飽和脂肪酸を多く含むために常温で液体となっている植物油脂に対して、水素付加(水添)を行い、より融点の高い飽和脂肪酸の割合を増加させ、常温で固形化した油脂である。
【0037】
低融点化合物である脂肪族炭化水素は、融点が30~100℃の脂肪族炭化水素である。脂肪族炭化水素の融点は40℃以上、又は50℃以上であってもよく、90℃以下、又は80℃以下であってもよい。脂肪族炭化水素は飽和脂肪族炭化水素であってもよい。脂肪族炭化水素は、鉱物油として含有されていてもよい。鉱物油は、石油や鉱物から精製される炭化水素である。鉱物油の例としては、パラフィン(石油)、マイクロクリスタリンワックス(石油)、及びセレシン(地ロウ)が挙げられる。
【0038】
低融点化合物である脂肪族アルコールは、融点が30~100℃の脂肪族アルコールである。脂肪族アルコールの融点は40℃以上、又は50℃以上であってもよく、90℃以下、又は80℃以下であってもよい。脂肪族アルコールは、飽和脂肪族アルコールであってもよく、不飽和脂肪族アルコールであってもよい。また、脂肪族アルコールは、直鎖状であってもよく、分岐状であってもよい。脂肪族アルコールの炭素数は、14~24、又は15~20であってよい。脂肪族アルコールの例としては、セタノール、及びステアリルアルコールが挙げられる。
【0039】
低融点化合物は、植物性又は動物性のロウとして含有されていてもよい。植物性のロウの例としては、カルナウバロウ(カルナウバヤシ)が挙げられる。動物性のロウの例としては、ミツロウが挙げられる。
【0040】
低融点化合物は、融点が30~100℃の、多価アルコールの脂肪酸エステル、及び脂肪酸からなる群より選ばれる少なくとも1種であってもよい。
【0041】
低融点化合物は、非水性製剤の全量を基準として、0.1質量%以上、0.5質量%以上、又は1質量%以上であってよく、20質量%以下、10質量%以下、又は5質量%以下であってよい。低融点化合物の含有量は、非水性製剤の全量を基準として0.1~20質量%であってよく、0.5~10質量%であることが好ましく、1~5質量%であることがより好ましい。
【0042】
非水性製剤は、結合剤を含有していてもよい。結合剤の例としては、結晶セルロース、ヒプロメロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のヒドロキシアルキルセルロース、及びアラビアゴムが挙げられる。非水性製剤は、これらの結合剤のうち1種を含有していてよく、2種以上を含有していてもよい。結合剤の含有量は、非水性製剤の全量を基準として、0.1質量%以上、0.5質量%以上、又は1質量%以上であってよく、20質量%以下、10質量%以下、又は5質量%以下であってもよい。結合剤の含有量は、0.1~20質量%であってよく、0.5~10質量%であることが好ましく、1~5質量%であることがより好ましい。
【0043】
非水性製剤は、本発明の効果に影響を与えない範囲であれば、製剤分野において通常使用されるその他の添加剤をさらに含有していてもよい。その他の添加剤の例としては、賦形剤、崩壊剤、滑沢剤、緩衝剤、流動化剤、抗酸化剤、安定化剤、界面活性剤、甘味剤、矯味剤、香料、着色剤、及びフィルムコーティング剤が挙げられる。非水性製剤は、これらの添加剤のうち1種又は2種以上を含有していてよい。
【0044】
賦形剤としては、例えば、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、無水リン酸カルシウム、無水リン酸水素カルシウム、ケイ酸カルシウム、乳酸カルシウム、沈降炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、乳酸カルシウム等が挙げられる。
【0045】
崩壊剤としては、例えば、カルメロース、カルメロースカルシウム、カルメロースナトリウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、クロスポビドン、クロスカルメロースナトリウム、カルボキシルメチルスターチナトリウム、デンプングリコール酸ナトリウム等が挙げられる。
【0046】
滑沢剤としては、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム等のステアリン酸塩が挙げられる。ステアリン酸塩の融点は一般的には100℃以上である。
【0047】
緩衝剤としては、カルボン酸(コハク酸、フマル酸、クエン酸、酒石酸等)、アミノ酸(グルタミン酸、グルタミン、グリシン、アスパラギン酸、アラニン、アルギニン等)、アスコルビン酸等の有機酸(ただし、融点が30~100℃の脂肪酸を除く。)及びこれらの塩;リン酸、ホウ酸等の無機酸及びこの塩;水酸化マグネシウム等の金属水酸化物;酸化マグネシウム、酸化亜鉛等の金属酸化物等が挙げられる。
【0048】
流動化剤としては、例えば、無水ケイ酸カルシウム、含水二酸化ケイ素、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、タルク等が挙げられる。
【0049】
抗酸化剤としては、例えば、クエン酸、亜硝酸ナトリウム、アスコルビン酸、L-アスコルビン酸ステアリン酸エステル、亜硝酸水素ナトリウム、亜硝酸ナトリウム、アルファチオグリセリン、エデト酸ナトリウム、エリソルビン酸、塩酸システイン、乾燥亜硫酸ナトリウム、ジクロルイソシアヌール酸カリウム、大豆レシチン、チオグリコール酸ナトリウム、チオリンゴ酸ナトリウム、天然ビタミンE、トコフェロール、d-δ-トコフェロール、トコフェロール酢酸エステル、濃縮混合トコフェロール、パルミチン酸アスコルビン酸、ピロ亜硫酸ナトリウム、ブチルヒドロキシアニソール、1,3-ブチレングリコール、ベンゾトリアゾール、ペンタエリスリチル-テトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2-メルカプトベンズイミダゾール、没食子酸プロピル、ジブチルヒドロキシトルエン等が挙げられる。
【0050】
安定化剤としては、例えば、クエン酸及びこの塩(クエン酸、クエン酸水和物、クエン酸カルシウム、クエン酸ナトリウム水和物、クエン酸二水素ナトリウム、クエン酸二ナトリウム等)等が挙げられる。
【0051】
界面活性剤としては、例えば、ポリソルベート80、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等が挙げられる。
【0052】
甘味剤としては、例えば、サッカリンナトリウム、グリチルリチン酸、アスパルテーム、ステビア、ソーマチン等が挙げられる。
【0053】
矯味剤としては、例えば、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸等が挙げられる。
【0054】
香料としては、例えば、レモン、レモンライム、オレンジ、メントール等が挙げられる。
【0055】
着色剤としては、例えば、三二酸化鉄、黄色三二酸化鉄、食用タール色素及びそのアルミニウムレーキ、リボフラビン、銅クロロフィリンナトリウム等が挙げられる。
【0056】
フィルムコーティング剤としては、例えば、ヒプロメロース、ポリビニルアルコール、メタクリル酸コポリマー、アミノアルキルメタクリレートコポリマー、アンモニオアルキルメタクリレートコポリマー、エチルセルロース等が挙げられる。
【0057】
非水性製剤は、その他の添加剤を1種含有していてよく、2種以上を組み合わせて含有していてもよい。適宜適量添加することができる。その他の添加剤の含有量は、本発明の効果に影響を与えない範囲で適宜調整することができ、例えば、非水性製剤の全量を基準として、0.5質量%以下であってよい。
【0058】
非水性製剤は、一定量の水を含有していてもよい。具体的には、非水性製剤の含水量は、非水性製剤の全量を基準として、20質量%以下であり、7質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましく、1質量%以下であることがさらに好ましい。
【0059】
非水性製剤は、例えば、細粒剤、顆粒剤、錠剤(例えば、素錠、フィルムコーティング錠、チュアブル錠、口腔内崩壊錠)、カプセル剤、散剤又はドライシロップ剤の形状を有していてよい。非水性製剤は、好ましくは錠剤である。また、非水性製剤は、服用時に水とともに服用されてよい。非水性製剤は、直接水で服用されてよく、水に添加され、溶液又は懸濁液とされた後に服用されてもよい。
【0060】
本発明の非水性製剤は、5-ALA化合物とは異なる他の有効成分を更に含む配合剤であってよい。この場合、非水性製剤の剤形は、普通錠、積層錠、有核錠、コーティングされた顆粒を含む錠剤又は顆粒剤、主薬をフィルム層に含むコーティング錠等であってもよい。積層錠は、第1層と第2層からなる二層錠であってよく、第1層及び第2層に加えて、第1層と第2層との間に設けられた中間層を1層以上有する多層錠(三層錠、四層錠、五層錠等)であってもよい。有核錠は、内核と外層のみを有する有核錠であってよく、内核、外層、及び内核と外層との間に設けられた中間層を有する有核錠であってもよい。これらの配合剤において、5-ALA化合物と、糖又は糖アルコールと、多価アルコールの脂肪酸エステル、及び融点30℃以上の脂肪酸からなる群より選ばれる少なくとも1種とは、一部の層、内核、又は外殻にのみ含有されていてもよい。
【0061】
一実施形態に係る非水性製剤は、例えば、粉砕工程、混合工程、造粒工程、乾燥工程、成型(打錠)工程、フィルムコーティング工程、結晶化工程等を含む方法により製造することができる。非水性製剤の製造方法は、これらの工程の一部を含む方法であってよく、全てを含む方法であってもよい。
【0062】
粉砕工程では、非水性製剤の原料を粉砕する。非水性製剤の原料は、5-ALA化合物、糖又は糖アルコール、低融点化合物の少なくとも1種及び必要に応じて添加されるその他の添加剤からなる群より選ばれる1種以上を含む。粉砕装置及び手段は特に制限されない。粉砕装置としては、例えば、ハンマーミル、ボールミル、ジェットミル、コロイドミル等が挙げられる。粉砕条件は、適宜選択することができる。
【0063】
混合工程では、原料を混合する。混合工程は、各成分を均一に混合できる方法であれば装置、手段とも特に制限されず、粉砕工程の後又は粉砕工程と同時に実施される工程であってもよい。
【0064】
造粒工程では、原料を造粒する。造粒装置及び手段は特に制限されない。造粒工程は、水、エタノール等の溶媒を用いる湿式造粒工程であってもよく、乾式造粒工程であってもよい。湿式造粒工程では、溶媒としてエタノールを用いることが好ましく、90%以上のエタノールを用いることが特に好ましい。湿式造粒に用いられる造粒方法としては、例えば、高速撹拌造粒法、解砕(粉砕)造粒法、流動層造粒法、押出造粒法、転動造粒法、噴霧乾燥造粒法等が挙げられる。造粒工程では、好ましくは、高速撹拌造粒法が用いられる。
【0065】
乾燥工程では、例えば、造粒工程により得られた造粒物を乾燥させる。乾燥装置及び手段としては、通常用いられる装置及び手段を用いることができる。乾燥工程では、減圧下及び/又は60℃以下の環境で乾燥させることが好ましい。乾燥装置としては、例えば、通風乾燥機、減圧乾燥機、真空乾燥機、流動層造粒乾燥機等が挙げられる。乾燥工程は、乾燥の後、篩、コールミル等を用いて造粒物を篩過(整粒)する工程を備えていてもよい。
【0066】
成型(打錠)工程では、例えば、混合工程後の原料又は造粒工程により得られた造粒物を成型する。この場合、成型の前に造粒物に対して滑沢剤が添加されてもよい。成型装置及び手段は特に制限はされない。成型工程では、例えば、ロータリー式打錠機、オイルプレス等の打錠装置を用いて圧縮成型する。打錠条件は、適宜調整することができる。成型工程により得られた打錠品の硬度は、製造及び流通過程で破損しない程度であればよく、例えば、40~200Nであってもよい。
【0067】
フィルムコーティング工程では、例えば、成型工程により得られた打錠品の表面にフィルムコーティングを施す。フィルムコーティングする方法は、例えば、パンコーティング、ディップコーティング等が挙げられる。フィルムコーティング工程では、例えば打錠品に対して、上述したフィルムコーティング剤を1種又は2種以上組み合わせて添加することができる。フィルムコーティング工程後の非水性製剤のコーティング率(フィルムコーティング剤の含有量)は、例えば、非水性製剤の全量を基準として、1質量%~10質量%であってもよい。フィルムコーティング工程では、フィルムコーティング中及びフィルムコーティング後の打錠品が乾燥されてよい。
【0068】
結晶化工程では、5-ALA化合物の結晶化を促進する。製剤作製の際に、5-ALA化合物の結晶の割合が低下することがあり、このような場合に本結晶化工程を実施することが好ましい。結晶化を促進する方法としては、例えば、マイクロ波、低周波等の電波照射処理、熱電子照射処理等が挙げられる。電波照射処理では、例えば、10MHz~25GHzの電波が照射されてもよい。この場合、処理時間は、初期の結晶の割合、添加剤の種類等により適宜調整されるが、例えば、10秒~60分間であってよい。電波照射処理では、また、10kHz~600kHzの電波が照射されてもよい。この場合、処理時間は、初期の結晶の割合、添加剤の種類等により適宜調整されるが、例えば、10秒~24時間であってよい。電波の照射は連続して又は断続して行われてもよい。
【0069】
以上説明した非水性製剤は、5-ALA化合物、糖又は糖アルコール、及び低融点化合物の少なくとも1種を含有するため、5-ALA化合物の安定性に優れる。本発明者らは、5-ALA化合物と、糖若しくは糖アルコール及び/又は低融点化合物の少なくとも1種とを非水性製剤に含有させることにより、非水性製剤中の5-ALA化合物が安定化されることを見出した。したがって、以上説明した非水性製剤は、安定化非水性製剤ともいえる。また、本発明の一実施形態は、5-ALA化合物と、糖若しくは糖アルコール及び/又は低融点化合物の少なくとも1種とを非水性製剤に含有させることを含む、非水性製剤の安定化方法でもある。
【0070】
非水性製剤は、包装に収容されていてもよい。本発明の他の一実施形態は、非水性製剤と、非水性製剤を乾燥状態で収容する包装と、を備える、製品である。
【0071】
包装は、通常の取扱い、運搬又は保存等の状態において、水分の包装外からの実質的な侵入を抑制し得る包装であってよく、「容器」、例えば、第十八改正日本薬局方 参考情報 G0. 医薬品品質に関する基本的事項に定義される「気密容器」及び「密封容器」を包含する。包装の形状は、ビン、ボトル等の定形容器であってもよく、SP(StripPackaging)包装、PTP(Press Through Packaging)包装、袋状の包装(例えば、ピロータイプ包装、及びスティック包装)等の不定形であってもよい。製品において、これらの包装は1種単独で用いられてもよく、2種以上を組み合わせて用いられてもよい。例えば、製品において、非水性製剤が一次包装(例えば、PTP包装)に収容され、非水性製剤を収容した一次包装がさらに二次包装(例えば、ピロータイプ包装)に収容されていてもよい。
【0072】
包装の材質は、製品を湿気の影響から保護する観点から、水分を実質的に透過しない又は防湿機能を有する材質であることが好ましい。ここで、水分を実質的に透過しないとは、包装に収容された非水性製剤に影響を及ぼす量の水分を透過しないことを意味する。包装の材質として、医薬品や食品の分野で、水分に弱い内容物を収容する包装に用いられる材質を適宜用いることができる。
【0073】
ビン又はボトルの材質としては、例えば、ガラス;ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン(低密度ポリエチレン(LDPE)及び高密度ポリエチレン(HDPE)を含む)、ポリカーボネート、ポリスチレン等の樹脂;このような樹脂に乾燥剤を含有させたもの(乾燥剤含有樹脂);アルミニウム等の金属等が挙げられる。また、ビンは栓又は蓋を有していてよい。栓又は蓋の材質としては、例えば、ポリエステル、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリプロピレン等のプラスチック;アルミニウム等の金属等が挙げられる。乾燥剤が練り込まれたプラスチックを材質とするボトルは、水分吸収機能付きボトルとも呼ばれる。
【0074】
SP包装、PTP包装、及び袋状の包装(ピロータイプ包装、スティック包装等)の材質としては、例えば、二軸延伸ポリプロピレン(OPP)、二軸延伸ポリエステル(PET)、グルコース変性PET(PET-G)、二軸延伸ナイロン(ONy、PA)、ポリエチレン(低密度ポリエチレン(LDPE)及び直鎖状低密度ポリエチレン(L-LDPE)を含む)、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、無延伸ポリプロピレン(CPP、IPP)、アイオノマー樹脂(IO)、エチレン-メタクリル酸共重合体(EMAA)、ポリアクリロニトリル(PAN)、二軸延伸ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、エチレン-ビニルアルコール共重合樹脂(EVOH)、ポリ塩化ビニル(PVC)、環状ポリオレフィン(COC)、無延伸ナイロン(CNy)、ポリカーボネート(PC)、ポリスチレン(PS)、硬質塩化ビニル(VSC)等の樹脂;このような樹脂に乾燥剤を含有させたもの(乾燥剤含有樹脂);アルミニウム(AL)等の金属;セロハン;紙等が挙げられる。
【0075】
包装の材質は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。包装は、例えば、異なる材質からなる層が2層以上積層した積層体であってもよい。2層構造の積層体としては、上述した金属、セロハン又は紙と、上述した樹脂又は乾燥剤含有樹脂との積層体が挙げられる。積層体は、外層又は中間層として水分の透過を抑制する防湿層を有していてよく、内層又は中間層として乾燥機能を持つ吸収層を有していてもよい。乾燥機能を持つ吸収層を構成する材質の例としては、乾燥剤含有樹脂が挙げられる。
【0076】
一実施形態に係る製品において、包装は、非水性製剤を乾燥状態で収容する。ここで「乾燥状態として収容する」とは、包装によって非水性製剤が乾燥状態に保たれる状態にすることをいい、包装自体を非透湿性・非透水性の素材で構成させる場合や、乾燥剤と共に非水性製剤を包装する場合が含まれる。包装自体が非透湿性・非透水性であるものとしては、金属からなる包装の他、金属、セロハン又は紙と乾燥剤含有樹脂との積層体が挙げられる。
【0077】
乾燥剤は、通常製剤に使用可能な乾燥剤であってよい。乾燥剤は、シリカゲル、シリカアルミナゲル(アロフェン等)、天然ゼオライト、合成ゼオライト、塩化カルシウム、生石灰(酸化カルシウム)、ベントナイトクレイ(モンモリナイト、モンモリロナイト等)、塩化マグネシウム、酸化マグネシウム、硫酸カルシウム、活性アルミナ、アルミナ、ボーキサイト、無水硫酸カルシウム、吸水性クレイ並びにこれらの成分と活性炭との混合物からなる群より選ばれる1種以上であってもよい。乾燥剤は、シリカゲル、シリカアルミナゲル(アロフェン)、合成ゼオライト、及び塩化カルシウムからなる群より選ばれる1種以上であることが好ましく、5-ALA化合物と水分との相互作用を抑制する観点から、合成ゼオライトであることがさらに好ましい。
【0078】
乾燥剤の形状は、例えば、板状又は袋状のシート型であってよく、円柱状(錠剤型)であってもよい。また、乾燥剤は、樹脂と一体化したフィルムとして用いられてもよい。
【0079】
製品は、例えば、非水性製剤を製造した後、非水性製剤及び必要に応じて乾燥剤を包装に収容する包装工程を含む方法により、製造することができる。包装工程では、非水性製剤及び包装の形態等に応じた装置、手段を適宜使用できる。非水性製剤及び必要に応じて乾燥剤を包装に収容する方法は、例えば、非水性製剤及び必要に応じて乾燥剤を包装内に配置する方法であってもよく、蓋を有する包装(例えば、ビン)内に非水性製剤を配置し、乾燥剤(好ましくは、円柱状(錠剤型)の乾燥剤)を蓋に取り付ける方法であってもよい。また、非水性製剤を一次包装(例えば、PTP包装)内に配置した後、非水性製剤を収容した一次包装と、乾燥剤(例えば、袋状又はシート状の乾燥剤)とをさらに二次包装(例えば、ピロータイプ包装)内に配置する方法であってもよい。
【実施例0080】
以下、製剤例を挙げて本発明についてさらに具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの製剤例に限定されるものではない。
【0081】
製剤例1~40では、下記の成分を用いた。
5-ALA塩酸塩:5-アミノレブリン酸塩酸塩
(成分A)
A-1:イソマル水和物(BENEO-Palatinit社製)
A-2:D-マンニトール(Merck社製)
A-3:無水乳糖(DFEファーマ(株)製)
A-4:乳糖水和物(フロイント産業(株)製)
A-5:ソルビトール(Merck社製)
A-6:トレハロース((株)林原製)
A-7:還元麦芽糖水あめ(三菱商事ライフサイエンス(株)製)
a-1:結晶セルロース(旭化成(株)製)
a-2:トウモロコシデンプン(日本コーンスターチ(株)製)
a-3:低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(信越化学工業(株)製)
(成分B)
B-1:ショ糖脂肪酸エステル(三菱ケミカル(株)製、融点58~64℃)
B-2:グリセリン脂肪酸エステル(理研ビタミン(株)製、融点68~73℃)
B-3:ステアリン酸(日油(株)製、融点56~72℃)
B-4:硬化ナタネ油(フロイント産業(株)製「ラブリワックス(登録商標)」、69~86℃)
b-1:ステアリン酸マグネシウム(太平化学産業(株)製)
b-2:ステアリン酸カルシウム(太平化学産業(株)製)
b-3:フマル酸ステアリルナトリウム(DuPont社製)
(成分C)
C-1:ヒドロキシプロピルセルロース(日本曹達(株)製)
C-2:ヒプロメロース(信越化学工業(株)製)
【0082】
[非水性製剤及び製品の製造]
<製剤例1~10、14~23、27~40>
表2~表5に示す量のアミノレブリン酸塩酸塩(5-ALA塩酸塩)と、表2~表5に示す種類及び量の成分Aをポリ袋に入れて混合した後、表2~表5に示す種類及び量の成分Bを加えてさらに混合し、自動打錠試験器(Auto-Tab-200TR型、市橋精機株式会社製)を用いて、直径5mmの円形錠用金型にて成型し、製剤例1~11、15~25、29~42に係る錠剤(非水性製剤)を作製した。得られた錠剤をポリエチレン製の袋(PE袋)に収容し、製剤例1~10及び製剤例27~33に係る錠剤については錠剤を収容したPE袋のみを、製剤例14~23及び製剤例34~40に係る錠剤については錠剤を収容したPE袋及び乾燥剤を、アルミニウム製の袋(アルミ袋)に収容し、製品を製造した。
【0083】
<製剤例11、24>
表2、表3に示す量の5-ALA塩酸塩をバーティカルグラニュレーター(FM-VG-10、パウレック)に投入し、99.5%エタノールを加え撹拌造粒を行った。その後、造粒物をパワーミル(D-80型、ダルトン)にて整粒し、送風定温乾燥機(WFO-1020型、東京理化学機器)にて50℃で乾燥を行った。乾燥後、目開き850μmの篩で整粒し、造粒顆粒を得た。5-ALA塩酸塩に代えて、以上の方法で作製した造粒顆粒を用いた以外は製剤例1~10、14~23と同様の方法により、製剤例11、24に係る錠剤(非水性製剤)を作製し、得られた錠剤をPE袋に収容した。製剤例11に係る錠剤については錠剤を収容したPE袋のみを、製剤例24に係る錠剤については錠剤を収容したPE袋及び乾燥剤を、アルミ袋に収容し、製品を製造した。
【0084】
<製剤例12、13、25、26>
表2、表3に示す量の5-ALA塩酸塩、成分A、及び成分Cをバーティカルグラニュレーター(FM-VG-10、パウレック)に投入し、99.5%エタノールを加え撹拌造粒を行った。その後、造粒物をパワーミル(D-80型、ダルトン)にて整粒し、送風定温乾燥機(WFO-1020型、東京理化学機器)にて50℃で乾燥を行った。乾燥後、目開き850μmの篩で整粒し、造粒顆粒を得た。以上の方法で作製した造粒顆粒と、表2、表3に示す種類及び量の成分Bとをポリ袋に入れて混合した後、自動打錠試験器(Auto-Tab-200TR型、市橋精機株式会社製)を用いて、直径5mmの円形錠用金型にて成型し、製剤例12、13、25、26に係る錠剤(非水性製剤)を作製した。得られた錠剤をPE袋に収容し、製剤例12、13に係る錠剤については錠剤を収容したPE袋を、製剤例25、26に係る錠剤については錠剤を収容したPE袋及び乾燥剤を、アルミ袋に収容し、製品を製造した。
【0085】
[経時安定性試験]
各製剤例に係る非水性製剤を、製品の状態で40℃75%RHの環境で2箇月間保管し、液体クロマトグラフィーにより、保管後の5-ALAの代表的な類縁物質である下記式(II)で表される化合物(化合物(II)ともいう。)の含有量を測定した。
【化3】
液体クロマトグラフィーの条件は以下のとおりである。
検出器:紫外吸収光度計(測定波長260nm)
カラム:内径3.0mm,長さ15.0mmのステンレス管に3μmの液体クロマトグラフィー用逆相及び強力カチオン交換シリカゲルを充填した。
カラム温度:40℃付近の一定温度
移動相A:0.3%ギ酸水溶液
移動相B:0.2Mギ酸アンモニウム溶液(水/アセトニトリル(体積比)=700/300)
移動相の送液:移動相Aと移動相Bの混合比を下記表1のように変えて濃度勾配制御した。
【表1】
流量:0.4mL/min
注入量:20μL
サンプルクーラー温度:5℃
【0086】
試料溶液注入後25分間の、一般式(I)で表される化合物のピーク面積(ATI)と、式(II)で表される化合物のピーク面積(ATII)を求め、下記式により、式(II)で表される化合物の量を算出した。結果を表2~表5に示す。
化合物(II)の含有量(%)=(ATII/ATI)×100/165
なお、上記式中、165は感度係数である。
【0087】
【0088】
【0089】
【0090】