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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024062808
(43)【公開日】2024-05-10
(54)【発明の名称】レンズ及びレンズの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 3/00 20060101AFI20240501BHJP
   C03B 11/00 20060101ALI20240501BHJP
【FI】
G02B3/00 Z
C03B11/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022170904
(22)【出願日】2022-10-25
(71)【出願人】
【識別番号】000113263
【氏名又は名称】HOYA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004185
【氏名又は名称】インフォート弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100166408
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 邦陽
(72)【発明者】
【氏名】池西 幹男
(72)【発明者】
【氏名】和田 裕樹
(57)【要約】
【課題】製造しやすくレンズの位置精度や形状精度に影響を及ぼさないマーキングを備えたレンズを提供する。
【解決手段】ガラスのプレス成形品であり、光軸方向の両側のレンズ面(11、12)と、レンズ面の外周側に設けた環状のコバ部(13)と、を有するレンズ(10)であって、コバ部は、両側のレンズ面の少なくとも一方の外周側に、レンズ面を囲む環状に設けられ、光軸(X1)に対して略垂直な平坦面(15)と、コバ部の最外周で平坦面を囲む環状に設けられ、平坦面に対して光軸方向に凹となる段差面(17)と、段差面と同じ径方向領域に設けられ、段差面に対して光軸方向に凸となり、且つ平坦面に対して光軸方向に突出しないマーキング(18)と、を有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラスのプレス成形品であり、光軸方向の両側のレンズ面と、前記レンズ面の外周側に設けた環状のコバ部と、を有するレンズであって、
前記コバ部は、
両側の前記レンズ面の少なくとも一方の外周側に、前記レンズ面を囲む環状に設けられ、光軸に対して略垂直な平坦面と、
前記コバ部の最外周で前記平坦面を囲む環状に設けられ、前記平坦面に対して光軸方向に凹となる段差面と、
前記段差面と同じ径方向領域に設けられ、前記段差面に対して光軸方向に凸となり、且つ前記平坦面に対して光軸方向に突出しないマーキングと、
を有することを特徴とするレンズ。
【請求項2】
前記平坦面の箇所での前記コバ部の光軸方向の厚さt1と、前記マーキングの箇所での前記コバ部の光軸方向の厚さt2と、前記段差面の箇所での前記コバ部の光軸方向の厚さt3が、t1>t2>t3であることを特徴とする、請求項1に記載のレンズ。
【請求項3】
前記レンズのレンズ径をD、前記レンズ面に接する前記平坦面の内径をd、前記段差面に接する前記平坦面の外径をdとしたとき、以下の条件(1)を満たすことを特徴とする、請求項1又は2に記載のレンズ。
(1)(0.7D+0.3d)<d<D-0.2
【請求項4】
前記マーキングを備える位置での前記レンズの半径方向に対して垂直な前記マーキングの弦方向幅wが、以下の条件(2)満たすことを特徴とする、請求項1又は2に記載のレンズ。
(2)w≧0.05mm
【請求項5】
前記マーキングを備える位置での前記レンズの半径方向と平行な前記マーキングの径方向幅Lが、以下の条件(3)満たすことを特徴とする、請求項1又は2に記載のレンズ。
(3)L≧0.2mm
【請求項6】
前記段差面は、前記平坦面と平行な面であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のレンズ。
【請求項7】
前記マーキングは、光軸に沿って見たときに、多角形、弓形、楕円形のいずれかであることを特徴とする、請求項1又は2に記載のレンズ。
【請求項8】
請求項1又は2に記載のレンズを製造する製造方法であって、
前記レンズ面を形成するためのレンズ形成面と、
前記レンズ形成面の外周側に位置し、前記平坦面を形成するための平坦環状部と、
前記平坦環状部の外周側に位置し、前記段差面を形成するための段差環状部と、
前記段差環状部に対してプレス方向に凹となり、前記マーキングを形成するための溝部と、
をプレス面に有する型部材を用いて、
前記型部材によってガラスプリフォームをプレスして、前記プレス面の形状を転写した前記レンズを成形することを特徴とするレンズの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズ及びレンズの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
レンズには、各種情報を示すマーキングを施す場合がある。例えば、レンズの偏心方位を示すためのマーキングが知られている。一般的なレンズは、レンズ面を有する光学機能部の周縁にコバ部(フランジ部などとも呼ばれる)を備えており、コバ部にマーキングが施されることが多い(例えば、特許文献1、2)。
【0003】
レンズに対して印刷、塗装、蒸着などによってマーキングする方法が知られている。これらの方法は、レンズを成形した後に、レンズとは異なる材質を用いてマーキングを形成するので、工程の増加により生産効率が低下したり、製造コストが増大するという問題がある。
【0004】
また、成形型(金型)を用いてレンズをプレス成形する際に、コバ部の一部に凸部や凹部からなるマーキングを形成する方法が知られている。この方法は、レンズの成形時にマーキングの形状を同時に形成するので、生産効率に優れており、後からマーキングを施すための装置や工程を必要としないという利点がある。
【0005】
光学機器におけるレンズの位置は、光学系の光軸方向の位置と、光軸直交方向(光軸に対して垂直な方向)の位置と、光軸に対する傾きとで管理される。レンズはコバ部をレンズ保持部材(レンズ枠、鏡筒など)に固定させて保持され、コバ部がレンズの位置基準となる。例えば、コバ部が、光軸方向の前後の少なくとも一方に、光軸に対して垂直な平面を有しており、この平面を基準として光軸方向のレンズ位置を定める。また、コバ部が、光軸を中心とする円筒状の外周面を有しており、この外周面を基準として光軸直交方向のレンズ位置を定める場合もある。
【0006】
レンズのマーキングとしてコバ部から突出する凸部を設ける場合、当該凸部が、レンズ保持部材のレンズ取付部、隣接する別のレンズ、レンズ間距離を調整するスペーサなどと干渉してしまうおそれがある。また、マーキングとして、レンズの外面に突出する微小な凸部を設けると、凸部が削れるなどの損傷が生じる可能性がある。
【0007】
このような問題の対策として、特許文献3では、プラスチックレンズのレンズ面の外周に備えたフランジ部において、一面側のフランジ面の一部に段差部を設け、段差部のマーキング面に一体に射出成形されたマーキングを設け、マーキングの最も高い部分がフランジ面の最も高い面よりも低い構成を採用している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004-191493号公報
【特許文献2】国際公開第2019/208455号
【特許文献3】特開2010-186550号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献3は、樹脂材料を射出成形して製造するプラスチックレンズを対象とした技術である。樹脂材料の射出成形は、複雑な形状や微小な形状を形成しやすく、上記のような段差部やマーキングを含むレンズを設ける場合に制約が少ない。
【0010】
これに対し、ガラス材料をプレス成形して製造するガラスモールドレンズでは、ガラスが軟化する高温域まで加熱して加工するので、耐熱性の高い成形型を用いる必要があり、成形型構造に関する制約が多くなる。例えば、加工性に優れる金属製の成形型ではなく、硬質で加工しにくいセラミックス製の成形型を使用する場合がある。また、プレス時のガラスの延展性、プレス後の冷却によるガラスの収縮などの要素を考慮した場合に、成形型の形状を高精度に転写させるためのレンズ形状にも制約がある。したがって、ガラスモールドレンズは、プラスチックレンズに比してマーキングの形成に関する制約条件が多く、ガラスモールドレンズにおいて好適なマーキングの条件を見出すことが求められる。
【0011】
本発明は、以上の問題意識に基づいてなされたものであり、製造しやすくレンズの位置精度や形状精度に影響を及ぼさないマーキングを備えたレンズ及びレンズの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一態様は、ガラスのプレス成形品であり、光軸方向の両側のレンズ面と、前記レンズ面の外周側に設けた環状のコバ部と、を有するレンズであって、前記コバ部は、両側の前記レンズ面の少なくとも一方の外周側に、前記レンズ面を囲む環状に設けられ、光軸に対して略垂直な平坦面と、前記コバ部の最外周で前記平坦面を囲む環状に設けられ、前記平坦面に対して光軸方向に凹となる段差面と、前記段差面と同じ径方向領域に設けられ、前記段差面に対して光軸方向に凸となり、且つ前記平坦面に対して光軸方向に突出しないマーキングと、を有することを特徴とする。
【0013】
前記平坦面の箇所での前記コバ部の光軸方向の厚さt1と、前記マーキングの箇所での前記コバ部の光軸方向の厚さt2と、前記段差面の箇所での前記コバ部の光軸方向の厚さt3が、t1>t2>t3であるように設定する。
【0014】
前記レンズのレンズ径をD、前記レンズ面に接する前記平坦面の内径をd、前記段差面に接する前記平坦面の外径をdとしたとき、以下の条件(1)を満たすことが好ましい。
(1)(0.7D+0.3d)<d<D-0.2
【0015】
前記マーキングを備える位置での前記レンズの半径方向に対して垂直な前記マーキングの弦方向幅wが、以下の条件(2)満たすことが好ましい。
(2)w≧0.05mm
【0016】
前記マーキングを備える位置での前記レンズの半径方向と平行な前記マーキングの径方向幅Lが、以下の条件(3)満たすことが好ましい。
(3)L≧0.2mm
【0017】
前記段差面は、前記平坦面と平行な面であることが好ましい。
【0018】
前記マーキングは、光軸に沿って見たときに、多角形、弓形、楕円形のいずれかであることが好ましい。
【0019】
また、本発明は、以上の構成のレンズを製造する製造方法であって、前記レンズ面を形成するためのレンズ形成面と、前記レンズ形成面の外周側に位置し、前記平坦面を形成するための平坦環状部と、前記平坦環状部の外周側に位置し、前記段差面を形成するための段差環状部と、前記段差環状部に対してプレス方向に凹となり、前記マーキングを形成するための溝部と、をプレス面に有する型部材を用いて、前記型部材によってガラスプリフォームをプレスして、前記プレス面の形状を転写した前記レンズを成形することを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、製造しやすくレンズの位置精度や形状精度に影響を及ぼさないマーキングを備えたレンズ及びレンズの製造方法を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本実施形態のガラスモールドレンズの前面側を光軸に沿って見た図である。
図2】本実施形態のガラスモールドレンズの後面側を光軸に沿って見た図である。
図3図1のIII-III線に沿う断面図である。
図4図1のIV-IV線に沿う断面図である。
図5】ガラスモールドレンズに設けたマーキング及びその周辺を拡大した図である。
図6】本実施形態のガラスモールドレンズを製造する成形型を示す断面図である。
図7】成形型を構成する上型のプレス面を示す斜視図である。
図8】マーキングの変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して、本実施形態のレンズとその製造方法を説明する。図1から図4は、本実施形態のレンズであるガラスモールドレンズ10を示している。図1はガラスモールドレンズ10の前面側、図2はガラスモールドレンズ10の後面側を示している。図3図4は、ガラスモールドレンズ10を、光軸X1を含む断面で示している。ガラスモールドレンズ10において、光軸X1に沿う方向を光軸方向とする。また、光軸X1に対して垂直な方向を、光軸直交方向、あるいはガラスモールドレンズ10の半径方向と呼ぶ場合がある。
【0023】
ガラスモールドレンズ10は、光軸方向の両側に、凸状のレンズ面11と、凹状のレンズ面12と、を有している。ガラスモールドレンズ10を光学機器に組み込んだ場合に、レンズ面11が光軸方向の前面、レンズ面12が光軸方向の後面となる。なお、ガラスモールドレンズ10の前後方向は一例であり、これに限定されるものではない。
【0024】
ガラスモールドレンズ10は、レンズ面11及びレンズ面12を含む光学機能部の外周側に環状のコバ部13を有している。コバ部13は、レンズ面11の外周側に位置する前面側の第1平坦面14と、レンズ面12の外周側に位置する後面側の第2平坦面15と、光軸X1を中心とする円筒形状の外周面16と、を有している。第1平坦面14及び第2平坦面15はそれぞれ、光軸X1に対して垂直な平面である。第1平坦面14と第2平坦面15の間隔が、コバ部13の光軸方向の最大厚さ(図3に示す厚さt1)になる。外周面16は、ガラスモールドレンズ10の径方向の最外縁を構成する面であり、ガラスモールドレンズ10の直径(図2に示すレンズ径D)は外周面16の直径として規定される。
【0025】
さらに、コバ部13の後面側には、段差面17とマーキング18が設けられている。段差面17は、第2平坦面15の外周側に位置しており、第2平坦面15を囲む環状の領域に形成されている。つまり、レンズ面12の外周側に円環状の第2平坦面15が形成され、第2平坦面15の外周側に円環状の段差面17が形成されている。段差面17はコバ部13の後面の最外周に設けられており、段差面17の外縁と外周面16とが接している。
【0026】
図3及び図4に示すように、段差面17は、第2平坦面15よりも低い位置に形成され、第2平坦面15に対して光軸方向に凹となる形状である。第1平坦面14から段差面17までの光軸方向の厚さ(図3に示す厚さt3)は、第1平坦面14から第2平坦面15までの光軸方向の厚さ(図3に示す厚さt1)よりも小さい。
【0027】
マーキング18は、光軸X1を中心とする周方向で、段差面17の延長上に位置している。つまり、マーキング18は、段差面17と同じ径方向領域に設けられて、第2平坦面15の外周側に位置している。マーキング18は、段差面17に対して光軸方向に凸となる形状である。段差面17からの光軸方向のマーキング18の突出量(高さ)は、段差面17から第2平坦面15までの光軸方向の距離よりも僅かに小さい。したがって、マーキング18は、光軸方向で第2平坦面15よりも低い位置に設けられ、第2平坦面15に対して光軸方向に突出しない。マーキング18が光軸方向に突出しない条件については、後述する。
【0028】
図5は、マーキング18及びその周辺を拡大した図である。マーキング18は、ガラスモールドレンズ10の後方から見て略矩形である。マーキング18の内径側端部が第2平坦面15の外縁に接しており、マーキング18の内径側端部から外径側端部18bに向けて一対の略平行な側壁18aが延びている。
【0029】
マーキング18は、ガラスモールドレンズ10に関する様々な情報を示す情報表示部として機能する。マーキング18によって示される情報の例として、ガラスモールドレンズ10の周方向の方位(偏心方位)、ガラスモールドレンズ10のシリアル番号や製造ロットなどがある。図示の実施形態では、一つのマーキング18のみを備えた例を示しているが、複数のマーキングを設けたり、複数のマーキングのそれぞれの形状を異ならせたりすることによって、所望の情報を表すことが可能である。また、複数のマーキングを設ける場合に、周方向の位置関係(間隔)を異ならせることによっても情報の内容を区別できる。
【0030】
マーキング18は、ガラスモールドレンズ10の形状の一部として設けられるので、ガラスモールドレンズ10をプレス成形する際にマーキング18も同時に形成される。レンズ成形後に、ガラスとは異なる材質を用いて別工程でマーキングを施す必要がなく、生産効率に優れている。
【0031】
ところで、ガラスのプレス成形品であるレンズの形状の一部としてマーキングを設ける場合、レンズを成形する成形型(金型)についても考慮する必要がある。ガラスモールドレンズをプレス成形するための成形型は、ガラス材料を溶融させる高温環境下で用いられるため、材質に制約がある。また、レンズの成形時に成形型の形状をガラス材料に確実に転写させる必要があるので、部分的に急峻に形状が変化する複雑な成形型は採用しにくい。
【0032】
例えば、ガラスモールドレンズ用の成形型の材質としてセラミックスが使用される。一般的に、セラミックス製の成形型は、金属製の成形型に比べて、加工性の面から形状の自由度が制約されやすく、製造に手間がかかることが多い。より詳しくは、セラミックス製の成形型に対して、バイトによる旋削で形状自由度の高い加工を行うことは難しく、研削砥石による研削を用いてシンプルな形状に加工するという制約がある。
【0033】
レンズ側のマーキングとして、レンズ外面から突出する単純な凸部を設ける場合、成形型にはマーキングに対応する箇所に凹部を設ける。マーキング形成用の微小な凹部をセラミックス製の成形型に設けることは、少量の研削加工などで実現できるため、成形型の製造のしやすさの点で有利である。しかしながら、単に成形型の凹部を転写させた凸部をレンズ側のマーキングにするだけでは、レンズの外面からマーキングが突出してしまい、レンズを光学機器に組み込む際に、レンズ枠、鏡筒、別のレンズ、スペーサなどに対してマーキングが干渉して、レンズを高精度に配置できなくなるおそれがある。また、レンズの外面から突出する微小な凸部形状のマーキングは破損しやすい。
【0034】
レンズ側のマーキングを凹部にすれば、マーキングが他の部材に干渉したり、破損したりするリスクを回避できる。その一方で、マーキングを単純に微小な凹部にすると、当該凹部を形成するための微小な凸部を成形型に設けることになる。成形型に微小な凸部を設けるためには、当該凸部以外の広い範囲に対して研削加工などを行って凸部を残すような加工が必要であり、成形型の加工難度が高くなり、加工の手間も増大してしまう。また、成形型に設けた微小な凸部は、破損しやすいという問題がある。
【0035】
本実施形態のガラスモールドレンズ10は、第2平坦面15に対して光軸方向に凹となる段差面17を設けた上で、段差面17上に光軸方向に凸となるマーキング18を設けており、マーキング18を光軸方向で第2平坦面15よりも突出しない高さにしている。換言すれば、マーキング18は、段差面17と第2平坦面15の間の光軸方向範囲に収まっており、第2平坦面15に対して光軸方向に突出しない。そのため、第2平坦面15に当接して位置決めを行う別部材に対するマーキング18の干渉を防止できる。このような別部材として、ガラスモールドレンズ10を取り付けるレンズ枠や鏡筒、ガラスモールドレンズ10に隣接する別のレンズ、複数のレンズ間距離を調整するスペーサ、などが挙げられる。その結果、第2平坦面15を含むコバ部13によってガラスモールドレンズ10の取付位置を適切に管理することができる。また、第2平坦面15に対して光軸方向に突出しないマーキング18は、破損のリスクが低い。
【0036】
図6の(A)及び(B)は、ガラスモールドレンズ10を製造する成形型30の構成及び動作を示している。
【0037】
成形型30は、胴型31と下型32と上型33とによって構成されている。下型32と上型33は、互いに対向するプレス面41とプレス面44を備える型部材である。胴型31は円筒形状であり、円筒面である内周面34によって囲まれる内部空間を有する。成形型30の中心軸X2は、内周面34の中心を通って上下方向に延びる軸線である。胴型31の下端面35と上端面36はそれぞれ、中心軸X2に対して垂直な面である。胴型31の内部空間は、上下方向に貫通して下端面35と上端面36に開口している。
【0038】
下型32は、胴型31の内部空間に対して下方から挿入される挿入部37と、挿入部37の下部に設けられて挿入部37よりも大径の大径部38とを有する。上型33は、胴型31の内部空間に対して上方から挿入される挿入部39と、挿入部39の上部に設けられて挿入部39よりも大径の大径部40とを有する。挿入部37と挿入部39のそれぞれの外周面は、胴型31の内周面34に対して、上下方向に摺動が可能であり、中心軸X2と垂直な方向には移動が規制される。つまり、下型32と上型33の中心が中心軸X2に一致するように調芯された状態で、胴型31に対して下型32と上型33が上下方向に移動可能である。
【0039】
下型32は、挿入部37の上端にプレス面41を有する。プレス面41は、凹型のレンズ形成面42と、レンズ形成面42の外周側に位置するコバ形成面43と、を備えている。コバ形成面43は、中心軸X2に対して垂直な面である。
【0040】
上型33は、挿入部39の下端にプレス面44を有する。プレス面44は、凸型のレンズ形成面45と、レンズ形成面45の外周側に位置するコバ形成面46と、を備えている。
【0041】
図7は、上型33の挿入部39のプレス面44を示す斜視図である。コバ形成面46は、平坦環状部46aと段差環状部46bと溝部46cを備えている。平坦環状部46aは、レンズ形成面45の外周側を囲む環状の範囲に形成されており、中心軸X2に対して垂直な環状平面を構成している。段差環状部46bは、平坦環状部46aの外周側を囲む環状の範囲に形成されており、中心軸X2に沿う方向で平坦環状部46aに対して突出する円環状の突出部分である。段差環状部46bは、中心軸X2に対して垂直な平面を有している。
【0042】
溝部46cは、段差環状部46bの周方向の一部に設けられており、段差環状部46bに対してプレス方向(中心軸X2に沿う方向)に凹となる部位である。溝部46cは、プレス面44の半径方向に延びる溝であり、内径側の端部が平坦環状部46aに通じ、外径側の端部が挿入部39の外周面に連通している。溝部46cの底面は、中心軸X2に沿う方向で平坦環状部46aよりもやや高い(突出した)位置にある。
【0043】
プレス面44のコバ形成面46は、レンズ形成面45の外側に同心状の平坦環状部46aと段差環状部46bとを有するシンプルな構造であるため、上型33の製造に際して容易に形成が可能である。例えば、中心軸X2と平行な軸を中心として回転動作を行う研削砥石を用いた研削によって、平坦環状部46aと段差環状部46bの箇所を形成できる。
【0044】
溝部46cについては、周方向の全周に連続する形状の段差環状部46bを形成した後に、段差環状部46bの一部を研削砥石による研削などで薄化させることによって形成可能である。溝部46cは、プレス面44の半径方向に延びて段差環状部46bを横断する貫通溝であるため、シンプルな加工により形成できる。例えば、中心軸X2に対して垂直な軸を中心として回転動作を行う小型の研削砥石を用いた研削によって、溝部46cの箇所を形成できる。中心軸X2に沿う方向で溝部46cの底面が平坦環状部46aよりも高い(突出している)という構成は、段差環状部46bの形成後に溝部46cを形成する際の加工のしやすさに効果を有する。
【0045】
以上の理由から、上型33を効率よく製造することができる。また、周方向に連続する段差環状部46bの一部に溝部46cを有する構造は、プレス面44において微小な突出部分が存在せず、破損のリスクが少ない。このように、プレス面44は、上型33の材質がセラミックスの場合にも製造しやすく、且つ破損が生じにくい構造を有している。
【0046】
図6に戻って、成形型30によるプレス成形の工程を説明する。成形型30を用いてガラスモールドレンズ10を成形する際には、図6の(A)に示すように、ガラスモールドレンズ10の母材であるガラスからなる球体状のガラスプリフォームPFを、下型32のプレス面41に載せる。レンズ形成面42の凹み形状によって、ガラスプリフォームPFが中心軸X2上の位置に保持される。下型32は、大径部38を下端面35に当接させた位置に保持され、挿入部37が胴型31から離脱しないように、下型32が不図示の台座によって下方から支持される。なお、プレス面41上へのガラスプリフォームPFの供給は、胴型31から挿入部37を下方に抜いた状態で行ってもよいし、胴型31に挿入部37を挿入した状態で胴型31の上端側から行ってもよい。
【0047】
ガラスプリフォームPFをガラス転移温度を超えるまで加熱して軟化させ、挿入部39を胴型31に挿入した状態の上型33を下方に向けて押圧する。下降する上型33のプレス面44と、下降が規制された下型32のプレス面41との間でガラスプリフォームPFがプレスされ、ガラスプリフォームPFが変形する。
【0048】
上型33を図6の(B)に示すプレス移動端まで下降させると、ガラスプリフォームPFは、プレス面41とプレス面44と内周面34で囲まれる型空間に対応した形状になる。そして、所定の温度まで冷却してから成形型30を分解することによって、成形後のガラスモールドレンズ10を取り出すことができる。ガラスモールドレンズ10は、プレス面41とプレス面44と内周面34の面形状がそれぞれ転写されたレンズである。
【0049】
より詳しくは、胴型31の内周面34が、ガラスモールドレンズ10の外周面16を形成する。下型32のレンズ形成面42がレンズ面11を形成し、コバ形成面43がコバ部13の第1平坦面14を形成する。
【0050】
ガラスモールドレンズ10の後面側においては、上型33のレンズ形成面45がレンズ面12を形成し、平坦環状部46aが第2平坦面15を形成し、段差環状部46bが段差面17を形成し、溝部46cがマーキング18を形成する。
【0051】
以上のように、ガラスモールドレンズ10においては、マーキング18が第2平坦面15や外周面16よりも突出しない非突出形状であるため、マーキング18が光学機器への組み込みの妨げにならず、且つマーキング18が破損しにくい構造が実現されている。成形型30においては、マーキング18を形成するための段差環状部46bや溝部46cを製造しやすく、溝部46cを含む各部が破損しにくい構造が実現されている。したがって、上記構成には、ガラスモールドレンズ10と成形型30の両方においてメリットがある。また、成形型30を用いて製造することによって、マーキング18を有するガラスモールドレンズ10を効率よく低コストに得ることができる。
【0052】
ガラスモールドレンズ10に関する好適な条件について、より詳しく説明する。まず、段差面17は、マーキング18の箇所を除いて、光軸X1を中心とする周方向の全体に連続し、第2平坦面15の略全体の外周側を囲んでいることが好ましい。これにより、段差面17の形状がシンプルになり、強度を確保しやすくなる。また、段差面17の形成領域におけるコバ部13の厚みが均一化されるので、プレス成形後のガラスの冷却に伴う収縮量に偏りがなく、精度の高いレンズ形状を実現しやすい。
【0053】
段差面17及びマーキング18は、コバ部13の最外周に設けられていることが好ましい。マーキング18の箇所でコバ部13の厚さが部分的に異なるが、マーキング18とレンズ面12の間には第2平坦面15があるため、プレス後の冷却時にマーキング18付近での収縮量にばらつきが生じた場合でも、レンズ面12への形状精度への影響が及ばす、光学性能が損なわれない。また、第2平坦面15の箇所のコバ部13の厚さ(図3の厚さt1)と、段差面17の箇所のコバ部13の厚さ(図3の厚さt3)との違いによって、プレス後の冷却時に段差面17の箇所での収縮量が異なっても、収縮量のばらつきをコバ部13の最外周で吸収できるので、第2平坦面15よりも内側のレンズ面12への形状精度への影響が及びにくい。
【0054】
例えば、本実施形態と異なり、第2平坦面15と段差面17の形成位置を逆にして、レンズ面12に隣接する外周側に段差面及びマーキングを設けると、段差面やマーキングの箇所で厚みが異なることによる冷却時の収縮量のばらつきの影響で、レンズ面12の形状精度に影響が生じる可能性がある。
【0055】
また、段差面17及びマーキング18がコバ部13の最外周にあると、マーキング18に対する形状調整などの加工を後から行うことが容易であり、マーキング18の加工の際にレンズ面12を傷つけるおそれも少ないという利点がある。
【0056】
図3に示すように、第1平坦面14を基準としてコバ部13の厚さを定義した場合、第2平坦面15の箇所でのコバ部13の厚さt1と、マーキング18の箇所でのコバ部13の厚さt2と、段差面17の箇所でのコバ部13の厚さt3は、t1>t2>t3であることが好ましい。この条件を満たすことにより、マーキング18が段差面17よりも光軸方向に突出して視認しやすくなると共に、マーキング18が第2平坦面15に対して光軸方向に突出しない形状を実現できる。
【0057】
第2平坦面15の箇所でのコバ部13の厚さt1と、段差面17の箇所でのコバ部13の厚さt3との差は、10μm~30μm程度であることが好ましい。厚さt1と厚さt3の差が10μmを下回ると、段差面17やマーキング18を良好な形状に形成することが難しかったり、マーキング18の視認性が悪くなったりするおそれがある。
【0058】
厚さt1と厚さt3の差が大きすぎると、段差面17の箇所でのコバ部13の厚さが過小になり、コバ部13の外周部分における強度低下が問題になる。また、成形型30の上型33のプレス面44における平坦環状部46aと平坦環状部46aの間の段差が過大になり、プレス面44の形状加工にかかる手間とコストが増大してしまう。
【0059】
ガラスモールドレンズ10の直径(外周面16によって規定される外径サイズ)であるレンズ径をD、レンズ面12に接する第2平坦面15の内縁側の内径をdと、段差面17に接する第2平坦面15の外縁側の外径をdとしたとき、以下の条件(1)を満たすことが好ましい。
(1)(0.7D+0.3d)<d<D-0.2
【0060】
条件(1)の下限値を満たすことにより、ガラスモールドレンズ10の半径方向における第2平坦面15の幅について必要十分な寸法を確保して、第2平坦面15を用いたガラスモールドレンズ10の位置決めを高精度に行うことができる。また、条件(1)の上限値を満たすことにより、ガラスモールドレンズ10の半径方向における段差面17の幅が過小にならず、段差面17及びマーキング18の形状精度を確保しやすくなる。
【0061】
また、ガラスモールドレンズ10の半径方向における段差面17の幅((D-d)/2)は、0.2mm以上であることが好ましい。成形型30を用いたプレス加工でガラスモールドレンズ10を形成した場合、段差面17と外周面16との境界部分の断面形状は、厳密には図3及び図4に示すような直角ではなく、湾曲したコーナーR形状になる。このコーナーR形状の箇所では、段差面17やマーキング18の形状を高精度に管理することが難しいため、コーナーR形状が占める範囲を見越して、段差面17を有効に形成可能な半径方向の最小限の幅が0.2mm程度になる。
【0062】
図5に示すように、マーキング18について、マーキング18を備える位置でのガラスモールドレンズ10の半径方向に対して垂直な方向における寸法を弦方向幅wとする。マーキング18においては、一対の側壁18aを最短距離で結ぶ幅が弦方向幅wである。
【0063】
マーキング18の弦方向幅wは、以下の条件(2)満たすことが好ましい。
(2)w≧0.05mm
【0064】
条件(2)を満たすことによって、視認性に優れたマーキング18を得ることができる。また、条件(2)を満たすことによって、マーキング18を形成するための上型33の溝部46cの幅が過小にならず、上型33を製造する際の加工性を向上させることができる。逆に、マーキング18の弦方向幅wが条件(2)を下回ると、マーキング18の視認性が低くなることや、上型33における溝部46cの加工難度が高くなるという問題が生じる。
【0065】
なお、マーキング18の弦方向幅wは、条件(2)を満たす場合であっても、大きくしすぎないことが好ましい。弦方向幅wが過大になると、プレス後の冷却時におけるマーキング18の箇所の収縮による形状歪みが無視できない程度になり、コバ部13やその内周側のレンズ面11、12の形状精度に影響を及ぼすおそれがある。
【0066】
図5に示すように、マーキング18について、マーキング18を備える位置でのガラスモールドレンズ10の半径方向と平行な方向における寸法を径方向幅Lとする。マーキング18においては、光軸X1に沿って見たときに一対の側壁18aが延びる方向の幅が径方向幅Lである。径方向幅Lは、弦方向幅wに対して直交する方向の幅を表している。
【0067】
マーキング18の径方向幅Lは、以下の条件(3)を満たすことが好ましい。
(3)L≧0.2mm
【0068】
条件(3)を満たすことによって、視認性に優れたマーキング18を得ることができる。また、条件(3)を満たすことによって、マーキング18を形成するための上型33の溝部46cの長さが過小にならず、上型33を製造する際の加工性を向上させることができる。逆に、マーキング18の径方向幅Lが条件(3)を下回ると、マーキング18の視認性が低くなってしまう。
【0069】
マーキング18の外径側端部18bが、コバ部13の外周面16に達する形状であってもよいし、マーキング18の外径側端部18bが、外周面16よりも内径側に位置する形状であってもよい。
【0070】
図5は、マーキング18の外径側端部18bが、外周面16よりも内径側に位置する構成例を示している。つまり、マーキング18の径方向幅Lが、ガラスモールドレンズ10の半径方向における段差面17の幅((D-d)/2)よりも小さい。この構成例の場合、マーキング18が、コバ部13において、光軸方向だけでなく、外径方向にも突出しないことが保証される。したがって、外周面16を囲む別の部材(例えば、ガラスモールドレンズ10を取り付けるレンズ枠や鏡筒の内周面)に対してマーキング18が干渉することや、マーキング18の外径側端部18b付近が破損することを防ぐことができる。また、ガラスモールドレンズ10のプレス成形後に外周面16の形状を調整する芯取り加工を行う場合に、芯取り加工領域がマーキング18の箇所まで到達しないように設定して、マーキング18に割れや欠けが発生することを回避できる。
【0071】
成形型30によってガラスモールドレンズ10を成形した後に、マーキング18の外径側の一部を研削などで除去する加工によって、図5に示すような形状のマーキング18を得ることができる。段差面17及びマーキング18をコバ部13の最外周に配置したことによって、このようなプレス成形後の後加工を行いやすくなっている。
【0072】
なお、ガラスモールドレンズ10が完成した状態で、マーキング18の外径側端部18bが外周面16よりも内径側に位置する構成(図5に示す構成例)の場合でも、上型33の溝部46cについては、外径側の端部が塞がれずに挿入部39の外周面に連通した形状(図5に示す径方向幅Lよりもプレス面44の半径方向に長い形状)であることが好ましい。挿入部39の外周面まで連通する形状の溝部46cは、外径側の端部が塞がれた非貫通形状の溝部に比べて、製造しやすいという利点がある。
【0073】
図5の構成例とは異なり、マーキング18の外径側端部18bが、コバ部13の外周面16に達する形状であってもよい。この構成では、成形型30によってガラスモールドレンズ10を成形した段階でマーキング18の最終的な形状を完成させることが可能であり、マーキング18に対して後加工を省略できるという利点がある。但し、マーキング18の外径側端部18bが、コバ部13の外周面16よりも外径側に突出しないように設定する。
【0074】
図5に示すマーキング18の形状(略矩形)は一例であり、ガラスモールドレンズ10には、これに限定されない様々な幾何的形状のマーキングを設けることができる。マーキング形状の変形例を図8に示す。
【0075】
図8の(A)は、三角形の外縁形状を有するマーキング20を例示している。マーキング20は、第2平坦面15に接する内径側からコバ部13の外周面16に向かうにつれて先細になる形状の三角形である。
【0076】
図8の(B)は、弓形の外縁形状を有するマーキング21を例示している。マーキング21は、第2平坦面15に接する内径側からコバ部13の外周面16に向かうにつれて先細になる湾曲形状を有している。
【0077】
図8の(C)は、楕円形の外縁形状を有するマーキング22を例示している。マーキング22は、ガラスモールドレンズ10の半径方向に長軸が延びる楕円形状である。
【0078】
このように、マーキングの形状は、矩形や三角形などの多角形、弓形、楕円形などを適宜選択できる。図8に示す各変形例のマーキングは、研削砥石による加工で形状を仕上げやすいものであり、マーキングを効率的に製造することができる。
【0079】
マーキングの形状は、図5図8に示すものには限定されず、矩形及び三角形以外の多角形、円形、半円形など、様々な幾何的形状のマーキングを採用することが可能である。
【0080】
上記実施形態のガラスモールドレンズ10は、凸状のレンズ面11と凹状のレンズ面12を有する凸メニスカスレンズであるが、本発明を適用するレンズ形状はこれに限定されず、両凸レンズ、両凹レンズ、平凸レンズ、平凹レンズ、凹メニスカスレンズなどであってもよい。また、レンズ面は、球面であってもよいし、非球面であってもよい。
【0081】
上記実施形態のガラスモールドレンズ10は、第2平坦面15の箇所でのコバ部13の厚さt1と、マーキング18の箇所でのコバ部13の厚さt2とが、t1>t2の関係である。すなわち、ガラスモールドレンズ10の後面側において、マーキング18と第2平坦面15が面一の関係(t1=t2)ではなく、光軸方向でマーキング18が第2平坦面15よりもやや低い位置にある。これとは異なり、マーキング18と第2平坦面15を面一の関係(t1=t2)に設定することも可能である。従って、t1≧t2を条件にしてもよい。本発明における「光軸方向に突出しない」とは、マーキング18と第2平坦面15が面一である場合を含む概念である。
【0082】
上記実施形態のガラスモールドレンズ10は、凹状のレンズ面12を備える後面側の最外周に段差面17及びマーキング18(20、21及び22)を設けているが、これに代えて、凸状のレンズ面11を備える前面側の最外周に、段差面とマーキングを含む同様の構造を設けてもよい。また、最外周に備える段差面とマーキングは、レンズのコバ部の前後一方の面だけに設けてもよいし、コバ部の前後両方の面に設けてもよい。
【0083】
上記実施形態のガラスモールドレンズ10は、光軸X1を中心とする周方向の一箇所のみにマーキング18(20、21及び22)を設けているが、複数のマーキングを設けてもよい。また、マーキングを複数設ける場合に、それぞれのマーキングの形状が異なっていてもよい。また、複数のマーキングを設ける場合に、各マーキングの周方向の配置間隔を異ならせてもよい。
【0084】
上記実施形態のガラスモールドレンズ10は、段差面17が第2平坦面15と平行な平面であるが、段差面は、コバ部における平坦面と平行な面には限定されない。但し、段差面が平坦面に対して急峻に変化する形状を含んでいると、段差面を含むコバ部の最外周部分で形状精度や強度が損なわれるおそれがあるので、段差面と平坦面の形成方向や面形状をできるだけ揃えることが望ましい。
【0085】
本発明の実施の形態は上記実施形態やその変形例に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の趣旨を逸脱しない範囲において様々に変更、置換、変形されてもよい。さらには、技術の進歩又は派生する別技術によって、本発明の技術的思想を別の仕方で実現することができれば、その方法を用いて実施されてもよい。したがって、特許請求の範囲は、本発明の技術的思想の範囲内に含まれ得る全ての実施形態をカバーしている。
【符号の説明】
【0086】
10 :ガラスモールドレンズ(レンズ)
11 :レンズ面
12 :レンズ面
13 :コバ部
14 :第1平坦面
15 :第2平坦面(平坦面)
16 :外周面
17 :段差面
18 :マーキング
18a :側壁
18b :外径側端部
20 :マーキング
21 :マーキング
22 :マーキング
30 :成形型
31 :胴型
32 :下型
33 :上型(型部材)
41 :プレス面
42 :レンズ形成面
43 :コバ形成面
44 :プレス面
45 :レンズ形成面
46 :コバ形成面
46a :平坦環状部
46b :段差環状部
46c :溝部
PF :ガラスプリフォーム
X1 :光軸
X2 :成形型の中心軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8