(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024006281
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】鉄筋結束機用結束線供給機構
(51)【国際特許分類】
E04G 21/12 20060101AFI20240110BHJP
【FI】
E04G21/12 105E
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022107021
(22)【出願日】2022-07-01
(71)【出願人】
【識別番号】513192742
【氏名又は名称】建ロボテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002343
【氏名又は名称】弁理士法人 東和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】眞部 達也
(72)【発明者】
【氏名】井上 治久
(72)【発明者】
【氏名】榎本 羊太
(57)【要約】
【課題】鉄筋結束用自走ロボットの鉄筋結束機に外部から結束線を供給して結束作業を行う際に発生する結束線のバックラッシュ現象に起因する結束線のもつれ詰まり及び曲がり詰まりを防止して、結束線の長時間にわたる持続的かつ円滑な供給を実現する鉄筋結束機用結束線供給機構を提供すること。
【解決手段】
鉄筋結束機BDに近設して一対の結束線TWを鉄筋結束機に供給する結束線供給リール120を装着したリール装着ユニット110と、一対の結束線を個々に分離してそれぞれ挿通して鉄筋結束機の導入窓EWから結束線収容マガジンMG内に導入して結束線収容マガジン内の出口側に設けたガイド窓LG近傍まで案内する結束線挿通ガイドユニット130と、結束線収容マガジン内の内部装着軸部MSに着脱自在に装着した状態で結束線挿通ガイドユニットを所定位置に周回配置する結束線安定化ユニット140とで構成されている鉄筋結束機用結束線供給機構100。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄筋の交差部を結束線により結束する鉄筋結束機に該鉄筋結束機の外部から前記結束線を供給する鉄筋結束機用結束線供給機構であって、
前記鉄筋結束機に近設して一対の結束線を前記鉄筋結束機に供給する結束線供給リールを装着したリール装着ユニットと、
前記一対の結束線を個々に分離してそれぞれ挿通して前記鉄筋結束機の導入窓から結束線収容マガジン内に導入して前記結束線収容マガジン内の出口側に設けたガイド窓近傍まで案内する結束線挿通ガイドユニットと、
前記結束線収容マガジン内の内部装着軸部に着脱自在に装着した状態で前記結束線挿通ガイドユニットを所定位置に周回配置する結束線安定化ユニットとで構成されていることを特徴とする鉄筋結束機用結束線供給機構。
【請求項2】
前記結束線挿通ガイドユニットが、前記分離された結束線をそれぞれ挿通する一対のスプリングチューブから構成されていることを特徴とする請求項1に記載の鉄筋結束機用結束線供給機構。
【請求項3】
前記結束線安定化ユニットが、前記結束線挿通ガイドユニットを構成する一対のスプリングチューブを前記結束線収容マガジン内で個々に分離する仕切板を備えていることを特徴とする請求項2に記載の鉄筋結束機用結束線供給機構。
【請求項4】
前記結束線安定化ユニットが、前記結束線収容マガジン内の内部装着軸部に回動自在に装着する胴部を備えるとともに、該胴部に固定されている環状ボスと該環状ボスから渦巻き状にそれぞれ突出して径方向に揺動自在な複数の弾性腕とで構成される一対の結束線調整羽根車を備えていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の鉄筋結束機用結束線供給機構。
【請求項5】
前記複数の弾性腕が、前記弾性腕の相互に画成された揺動空間部と交互に配置されるとともに前記結束線収容マガジン内で回転対称に配置されていることを特徴とする請求項4に記載の鉄筋結束機用結束線供給機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄筋の交差部を結束線により結束する鉄筋結束機に、外部から結束線を供給する鉄筋結束機用結束線供給機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、施工面に格子状に敷設した複数の鉄筋上を走行する車輪ユニットと、この車輪ユニットを搭載するフレームユニットと、鉄筋結束機を着脱自在に装着する鉄筋結束機保持ユニットと、この鉄筋結束機保持ユニットを上下に駆動する駆動ユニットと、制御ユニットとを備えて、鉄筋結束機保持ユニットに装着した鉄筋結束機を下降させて鉄筋相互の交差部を結束線により結束する鉄筋結束用自走ロボット(特許文献1参照)が知られている。
【0003】
このような従来の鉄筋結束用自走ロボットに装着されている鉄筋結束機は、結束線のリールを結束線収容マガジン内に収納して結束動作を行うため、一巻きのリールを使い果たすたびにロボットの走行を停止させ、鉄筋結束機の結束線収容マガジンを開いてリールを交換する必要があり、作業効率が低下するという問題があったため、本発明者らは、先に、鉄筋結束機に近設して結束線を鉄筋結束機に連続供給する結束線供給リールを装着したリール装着ユニットと、結束線供給リールから供給される結束線を鉄筋結束機の結束線収容マガジン内に導入する結束線アダプターと、リール装着ユニットから結束線アダプターまで結束線を挿通して案内する結束線挿通ガイドユニットとで構成されている鉄筋結束機用結束線供給機構を提案した(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6633720号公報
【特許文献2】特開2022-77685号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献2に記載されている鉄筋結束機用結束線供給機構においては、結束線収容マガジン内のガイド窓に引き込まれた結束線が、鉄筋結束機の結束動作の過程で逆向きに送り戻されて結束線収容マガジン内で余剰分を生じる現象、すなわち、いわゆるバックラッシュ現象が生じる。
このため、このバックラッシュ現象が結束線収容マガジン内で結束動作毎に生じる結束線の余剰分を累積させて、結束線収容マガジン内で2本の結束線の平行な配列形態が乱れてもつれ、その結果、このもつれた部位が結束線収容マガジン内のガイド窓に詰まる「もつれ詰まり」、又は、いずれかの結束線が折れ曲がった部位で結束線収容マガジン内のガイド窓に詰まる「曲がり詰まり」が発生するおそれがあり、鉄筋結束機に対する結束線の長時間にわたる持続的かつ円滑な供給を充分に達成するための工夫が求められている。
【0006】
本発明は、このような従来技術の課題を解決するものであって、すなわち、本発明の目的は、鉄筋結束機に外部から結束線を供給して結束作業を行う際に発生する結束線のバックラッシュ現象に起因する結束線のもつれ詰まり及び曲がり詰まりを防止して、結束線の長時間にわたる持続的かつ円滑な供給を実現する鉄筋結束機用結束線供給機構を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本請求項1に係る発明は、鉄筋の交差部を結束線により結束する鉄筋結束機に該鉄筋結束機の外部から前記結束線を供給する鉄筋結束機用結束線供給機構であって、前記鉄筋結束機に近設して一対の結束線を前記鉄筋結束機に供給する結束線供給リールを装着したリール装着ユニットと、前記一対の結束線を個々に分離してそれぞれ挿通して前記鉄筋結束機の導入窓から結束線収容マガジン内に導入して前記結束線収容マガジン内の出口側に設けたガイド窓近傍まで案内する結束線挿通ガイドユニットと、前記結束線収容マガジン内の内部装着軸部に着脱自在に装着した状態で前記結束線挿通ガイドユニットを所定位置に周回配置する結束線安定化ユニットとで構成されていることにより、前述した課題を解決するものである。
【0008】
本請求項2に係る発明は、請求項1に記載の鉄筋結束機用結束線供給機構の構成に加えて、前記結束線挿通ガイドユニットが、前記分離された結束線をそれぞれ挿通する一対のスプリングチューブから構成されていることにより、前述した課題をさらに解決するものである。
【0009】
本請求項3に係る発明は、請求項2に記載の鉄筋結束機用結束線供給機構の構成に加えて、前記結束線安定化ユニットが、前記結束線挿通ガイドユニットを構成する一対のスプリングチューブを前記結束線収容マガジン内で個々に分離する仕切板を備えていることにより、前述した課題をさらに解決するものである。
【0010】
本請求項4に係る発明は、請求項1又は請求項2に記載の鉄筋結束機用結束線供給機構の構成に加えて、前記結束線安定化ユニットが、前記結束線収容マガジン内の内部装着軸部に回動自在に装着する円筒状芯部を備えるとともに、該円筒状芯部に固定されている環状ボスと該環状ボスから渦巻き状にそれぞれ突出して径方向に揺動自在な複数の弾性腕とで構成される一対の結束線調整羽根車を備えていることにより、前述した課題をさらに解決するものである。
【0011】
本請求項5に係る発明は、請求項4に記載の鉄筋結束機用結束線供給機構の構成に加えて、前記複数の弾性腕が、前記弾性腕の相互に画成された揺動空間部と交互に配置されるとともに前記結束線収容マガジン内で回転対称に配置されていることにより、前述した課題をさらに解決するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の請求項1に係る発明の鉄筋結束機用結束線供給機構によれば、鉄筋結束機に近設して一対の結束線を鉄筋結束機に供給する結束線供給リールを装着したリール装着ユニットと、一対の結束線を個々に分離してそれぞれ挿通して鉄筋結束機の導入窓から結束線収容マガジン内に導入して結束線収容マガジン内の出口側に設けたガイド窓近傍まで案内する結束線挿通ガイドユニットと、結束線収容マガジン内の内部装着軸部に着脱自在に装着した状態で結束線挿通ガイドユニットを所定位置に周回配置する結束線安定化ユニットとで構成されていることにより、結束線挿通ガイドユニットが、一対の結束線をそれぞれの結束線に分離した状態で結束線収容マガジン内の出口側に設けたガイド窓近傍まで整然と案内して供給するため、鉄筋結束機の結束線収容マガジン内において結束線のバックラッシュ現象に起因する結束線のもつれ詰まり及び曲がり詰まりを防止して結束線の長時間にわたって持続的かつ円滑な供給を実現することができる。
【0013】
本発明の請求項2に係る発明の鉄筋結束機用結束線供給機構によれば、請求項1に係る発明の鉄筋結束機用結束線供給機構が奏する効果に加えて、
結束線挿通ガイドユニットが、分離された結束線をそれぞれ挿通する一対のスプリングチューブから構成されていることにより、結束線が鉄筋結束機に引き込まれる際に結束線挿通ガイドユニットが可撓的かつ弾性的に変形して結束線に波状的に繰り返し作用する緊張状態と弛緩状態を柔軟に吸収するため、結束線を結束線供給リールから結束線収容マガジンに案内する過程で周囲のものへの引っ掛かり及び折れ曲がりを防ぎ、あわせて、結束線が結束線収容マガジン内で周回する過程で結束線安定化ユニットと直接的に接触することによる折れ曲がりを防いで、結束線の曲がり詰まりを防止することができる。
【0014】
さらに、スプリングチューブが、結束線と結束線安定化ユニットと間に常に介在するため、結束線との間の摩擦による結束線安定化ユニットの摩耗を防止することができる。
【0015】
本請求項3に係る発明の鉄筋結束機用結束線供給機構によれば、請求項2に記載の鉄筋結束機用結束線供給機構が奏する効果に加えて、結束線安定化ユニットが、結束線挿通ガイドユニットを構成する一対のスプリングチューブを結束線収容マガジン内で個々に分離する仕切板を備えていることにより、一対のスプリングチューブが、個々の結束線を結束線収容マガジン内の導入窓からガイド窓近傍までそれぞれ案内する際に、一対のスプリングチューブ同士が結束線収容マガジン内で仕切板により相互に隔離した状態で順次誘導されるため、結束線収容マガジン内においてスプリングチューブ同士が絡まってスプリングチューブの内径が狭窄することに起因するスプリングチューブ内における結束線の供給抵抗の増大を防止することができる。
【0016】
本請求項4に係る発明の鉄筋結束機用結束線供給機構によれば、請求項1又は請求項2に記載の鉄筋結束機用結束線供給機構が奏する効果に加えて、
結束線安定化ユニットが、前記結束線収容マガジン内の内部装着軸部に回動自在に装着する円筒状芯部を備えるとともに、該円筒状芯部に固定されている環状ボスと該環状ボスから渦巻き状にそれぞれ突出して径方向に揺動自在な複数の弾性腕とで構成される一対の結束線調整羽根車を備えていることにより、結束線が結束線収容マガジン内のガイド窓に引き込まれる際には、結束線挿通ガイドユニットが結束線収容マガジン内で可撓的かつ弾性的に変形して所定の収容位置から結束線収容マガジン内の内部装着軸部に向けて、すなわち、結束線収容マガジンの内側に向けて位置ずれを生じて結束線調整羽根車の弾性腕が内向きに揺動し、その後、結束動作の過程で結束線が送り戻されて結束線収容マガジン内で余剰分が生じる際には、結束線調整羽根車の弾性腕が結束線挿通ガイドユニットを外周側に押し広げる揺動により結束線に張力を与えて余剰分を吸収するため、もつれ詰まり及び曲がり詰まりを確実に防止することができる。
【0017】
本請求項5に係る発明の鉄筋結束機用結束線供給機構によれば、請求項4に記載の鉄筋結束機用結束線供給機構が奏する効果に加えて、複数の弾性腕が、弾性腕の相互に画成された揺動空間部と交互に配置されるとともに結束線収容マガジン内で回転対称に配置されていることにより、結束線安定化ユニットが装着されている角度によらず弾性腕が結束線挿通ガイドユニットに常に当接して外向きに押し広げるため、結束線安定化ユニットを結束線収容マガジン内の内部装着軸部に任意の角度で装着するのみで、もつれ詰まり及び曲がり詰まりを容易に防止することができる。
【0018】
また、複数の弾性腕が、それぞれ螺旋状の形状を有して揺動空間部と交互に配置していることにより、隣接する弾性腕同士の間の揺動空間部を可動範囲として弾性変形による大きい変位を実現して結束線挿通ガイドユニットを外向きに押し広げる大きい揺動により結束線の長い余裕分を吸収するため、結束線の余裕分が長い場合であっても、もつれ詰まり及び曲がり詰まりをいっそう確実に防止することができる。
【0019】
さらに、結束線挿通ガイドユニットの繰り返し移動に対応して弾性腕が内向き及び外向きに繰り返し揺動することに伴い、結束線調整羽根車が結束線安定化ユニット全体を伴って所定の向きに徐々に回動して弾性腕が結束線挿通ガイドユニットに当接する位置が徐々にずれて、弾性腕が結束線挿通ガイドユニットを満遍なく押し広げて円弧状の配置形状を維持するため、曲がり詰まりをさらにいっそう確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の鉄筋結束機用結束線供給機構を適用することができる鉄筋結束用自走ロボットの一例を示す模式図。
【
図3】本発明の一実施例に係るリール装着ユニットの動作を示す説明図。
【
図4】本発明の一実施例に係る結束線安定化ユニットの模式的斜視図。
【
図5】本発明の一実施例に係る結束線安定化ユニットの模式的分解図。
【
図6】本発明の一実施例に係る結束線安定化ユニットの装着状態を示す模式図。
【
図8A】本発明の一実施例に係る結束線挿通ガイドユニットが外周側の所定位置に押し広げられた状態を示す模式図。
【
図8B】本発明の一実施例に係る結束線挿通ガイドユニットが結束線収容マガジンの内側に向けて位置ズレを生じた状態を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、鉄筋結束機に近設して一対の結束線を鉄筋結束機に供給する結束線供給リールを装着したリール装着ユニットと、一対の結束線を個々に分離してそれぞれ挿通して鉄筋結束機の導入窓から結束線収容マガジン内に導入して結束線収容マガジン内の出口側に設けたガイド窓近傍まで案内する結束線挿通ガイドユニットと、結束線収容マガジン内の内部装着軸部に着脱自在に装着した状態で結束線挿通ガイドユニットを所定位置に周回配置する結束線安定化ユニットとで構成されていることにより、鉄筋結束機に外部から結束線を供給して結束作業を行う際に発生する結束線のバックラッシュ現象に起因する結束線のもつれ詰まり及び曲がり詰まりを防止して、結束線の長時間にわたる持続的かつ円滑な供給を実現するものであれば、その具体的な実施態様は、如何なるものであっても構わない。
【0022】
すなわち、本発明のリール装着ユニットは、鉄筋結束機に近設して結束線を鉄筋結束機に供給するものであればよく、鉄筋結束用自走ロボットに付設する構成以外に、たとえば、鉄筋結束機を自ら保持して結束作業を行う者が、腰に装着し、又は背負う構成としても良い。
【0023】
また、本発明の結束線挿通ガイドユニットは、結束線を挿通した状態で可撓的かつ弾性的に変形するものであればよく、金属製のスプリングチューブの他に密着コイル、一般的なコイルバネ、金属製可撓管その他のフレキシブルチューブから構成することができる。
【0024】
さらに、本発明の結束線調整羽根車は、環状ボスと複数の弾性腕とを樹脂により一体に形成して構成することができるが、他の弾性部材から構成することができ、また、環状ボスと複数の弾性腕とをそれぞれ別体として形成した後に組み合わせて構成してもよい。
【実施例0025】
以下に、本発明の一実施例である鉄筋結束機用結束線供給機構100の構成について、
図1乃至
図5Bに基づいて説明する。
【0026】
ここで、
図1は、本発明の鉄筋結束機用結束線供給機構を適用することができる鉄筋結束用自走ロボットの一例を示す模式図であり、
図2は、本発明の一実施例を示す模式図であり、
図3は、本発明の一実施例に係るリール装着ユニットの動作を示す説明図であり、
図4は、本発明の一実施例に係る結束線安定化ユニットの模式的斜視図であり、
図5は、本発明の一実施例に係る結束線安定化ユニットの模式的分解図であり、
図6は、本発明の一実施例に係る結束線安定化ユニットの装着状態を示す模式図であり、
図7は、
図4におけるVII-VII断面図であり、
図8Aは、本発明の一実施例に係る結束線挿通ガイドユニットが外周側の所定位置に押し広げられた状態を示す模式図であり、
図8Bは、本発明の一実施例に係る結束線挿通ガイドユニットが結束線収容マガジンの内側に向けて位置ズレを生じた状態を示す模式図である。
【0027】
本実施例に係る鉄筋結束機用結束線供給機構100は、
図1に示す鉄筋結束用自走ロボットRに搭載された鉄筋結束機BDに、鉄筋結束機BDの外部から結束線TWを供給するために用いる。
【0028】
図1に示す鉄筋結束用自走ロボットRは、手持ち式の鉄筋結束機BDが搭載されており、並行に配置された走行鉄筋LR上を自走しながら、走行鉄筋LRと直交するように配置された直交鉄筋TRと走行鉄筋LRとの交差部を、鉄筋結束機BDを上下動させて結束するものである。
【0029】
まず、本実施例に係る鉄筋結束機用結束線供給機構100の構成を説明する。鉄筋結束機用結束線供給機構100は、
図2乃至
図8Bに示すように、リール装着ユニット110とこのリール装着ユニット110に装着した結束線供給リール120とこの結束線供給リール120から供給される一対の結束線TWを鉄筋結束機BDの結束線収容マガジンMG内に導入する結束線挿通ガイドユニット130とこの結束線挿通ガイドユニット130を結束線収容マガジンMG内で所定位置に周回配置する結束線安定化ユニット140とを備えている。
【0030】
リール装着ユニット110は、
図3に示すように、装着フレーム111と装着回転板112とリール装着軸部113と逆回転防止部材としてのワンウェイクラッチ114とを備えている。
【0031】
リール装着ユニット110は、鉄筋結束機BDに近設して一対の結束線TWを鉄筋結束機BDに供給する結束線供給リール120を装着して用いる。
【0032】
装着フレーム111は、
図2に示すように全体がT字型に構成されており、その複数個所において鉄筋結束用自走ロボットRに固定されているとともに、
図3に示すように上端部付近に装着回転板112が回動自在に固定されている。
【0033】
装着回転板112は、装着フレーム111の上端部付近に、ワンウェイクラッチ114を介して回動自在に固定されており、その中心部に回転軸を共有するリール装着軸部113を備えている。
【0034】
ワンウェイクラッチ114は、回転方向を一方向に規制するものであり、リール装着軸部113に結束線供給リール120を装着した際に、結束線TWが供給される方向にのみ結束線供給リール120が回転させるように設定されている。
【0035】
結束線供給リール120は、鉄筋結束機BDに供給する一対の結束線TWを筒状の胴芯部に巻回して保持しており、リール装着ユニット110に対して着脱自在に装着されている。
【0036】
結束線挿通ガイドユニット130は、分離された結束線TWをそれぞれ挿通する一対の金属製のスプリングチューブ131及び132から構成されている。
【0037】
結束線挿通ガイドユニット130は、結束線供給リール120から供給される一対の結束線TWを結束線供給リール120の近傍に配置した結束線分離ブロックPBにより個々の結束線TWに分離した後に、一対のスプリングチューブ131及び132に個々の結束線TWをそれぞれ挿通して、
図8A及び
図8Bに示すように、鉄筋結束機BDの導入窓EWから結束線収容マガジンMG内に導入して結束線収容マガジンMG内の出口側に設けたガイド窓LG近傍まで案内する。
【0038】
結束線安定化ユニット140は、
図6に示すように、鉄筋結束機BDの結束線収容マガジンMG内の内部装着軸部MSに着脱自在かつ回動自在に装着するものであり、
図4及び
図5に示すように、結束線収容マガジンMG内の内部装着軸部MSに回動自在に装着する円筒状の胴部141と、この胴部141を軸方向の両側から挟む位置に平行に配置されている円盤状の上鍔部142及び下鍔部143と、これら上鍔部142及び下鍔部143の中間位置に平行に配置されて、結束線挿通ガイドユニット130を構成する一対のスプリングチューブ131、132を結束線収容マガジンMG内で個々に分離するドーナツ状の仕切板144と、この仕切板144の両側に隣接して配置された一対の結束線調整羽根車145とから構成されている。
【0039】
したがって、一対の結束線調整羽根車145のうち、一方の結束線調整羽根車145は、上鍔部142と仕切板144との間に配置され、他方の結束線調整羽根車145は、下鍔部143と仕切板144との間に配置されている。
【0040】
一対の結束線調整羽根車145は、
図7に示すように、それぞれ胴部141に固定されている環状ボス145aと、この環状ボス145aから渦巻き状にそれぞれ突出して径方向に揺動自在な複数の弾性腕145bとで構成されている。
【0041】
これら複数の弾性腕145bは、それぞれ環状ボス145aから渦巻き状に突出する腕基底部145baと、この腕基底部145baに対し屈曲する向きに連続して渦巻き状にさらに外周に向けて延在する腕延長部145bbと、この腕延長部145bbに対して屈曲する向きに連続してほぼ周方向に延在する腕当接部145bcから構成されている。
【0042】
これら複数の弾性腕145bは、弾性腕145bの相互に画成された揺動空間部145cと交互に配置されており、さらに、結束線収容マガジンMG内で回転対称に配置されている。
【0043】
次に、
図2、
図6、
図8A及び
図8Bを参照して、本実施例に係る鉄筋結束機用結束線供給機構100を鉄筋結束機BDに装着して結束線TWを鉄筋結束機BD内のガイド窓LGに供給する手順を説明する。
【0044】
本実施例に係る鉄筋結束機用結束線供給機構100を鉄筋結束機BDに装着して結束線TWを結束線収容マガジンMG内のガイド窓LGに供給するためには、まず、
図2に示すように、リール装着ユニット110を構成している装着回転板112のリール装着軸部113に回転自在に結束線供給リール120を装着する。
【0045】
次に、結束線供給リール120に巻回収納されている結束線TWを引き出し、個々の結束線TWを結束線分離ブロックPBの2つの挿通孔にそれぞれ挿通して分離した後に、個々の結束線TWを、それぞれ結束線挿通ガイドユニット130を構成しているスプリングチューブ131、132に挿通させる。
【0046】
その後、
図6に示すように、鉄筋結束機BDの結束線収容マガジンMG内の内部装着軸部MSに結束線安定化ユニット140を着脱自在に装着するとともに、結束線TWが挿通されている結束線挿通ガイドユニット130を導入窓EWから結束線収容マガジンMG内に導入する。
【0047】
この際、
図8Aに示すように、結束線挿通ガイドユニット130は、結束線安定化ユニット140により外向きに押し広げられて所定位置に周回配置されるとともに、結束線挿通ガイドユニット130を構成している一対のスプリングチューブ131、132が、結束線収容マガジンMG内で仕切板144により個々に分離される。
【0048】
また、結束線安定化ユニット140の複数の弾性腕145bが、弾性腕145bの相互に画成された揺動空間部145cと交互に配置されるとともに結束線収容マガジンMG内で回転対称に配置されていることにより、結束線安定化ユニット140が装着されている角度によらず弾性腕145bが結束線挿通ガイドユニット130に常に当接して外向きに押し広げる。
【0049】
なお、
図8A及び
図8Bは、結束線挿通ガイドユニット130と結束線安定化ユニット140との相対的配置関係を明示するために、結束線安定化ユニット140の上鍔部142を取り去った状態として描いている。
【0050】
以上の手順により、結束線挿通ガイドユニット130は、一対の結束線TWを個々に分離してそれぞれ挿通して、鉄筋結束機BDの導入窓EWから結束線収容マガジンMG内に導入して結束線収容マガジンMG内の出口側に設けたガイド窓LGの近傍まで案内するように配置されることとなり、ガイド窓LGに一対の結束線TWを供給して鉄筋結束機BDによる結束動作を準備することにより、鉄筋結束用自走ロボットRによる鉄筋の結束作業の準備が完了する。
【0051】
以上の準備の後に、鉄筋結束用自走ロボットRを
図2のように走行鉄筋LR上に配置して運転を開始させれば、鉄筋結束用自走ロボットRが走行鉄筋LR上を走行しながら鉄筋結束機BDを上下動させて、走行鉄筋LRと直交鉄筋TRとの交差部を結束していく。
【0052】
次に、本実施例に係る鉄筋結束機用結束線供給機構100が、結束線TWのバックラッシュ現象に起因する結束線TWのもつれ詰まり及び曲がり詰まりを防止する作用を
図7乃至
図8Bを参照して説明する。
【0053】
鉄筋結束機BDによる結束動作が開始する前の状態は、
図8Aに示すように、結束線調整羽根車145の弾性腕145bが最も外側に開いた状態であり、スプリングチューブ131、132が仕切板144の上下に分離されているとともに、弾性腕145bにより外周方向に押し広げられて所定位置に周回配置されている。
【0054】
すなわち、結束線挿通ガイドユニット130が、一対の結束線TWをそれぞれの結束線TWに分離した状態で結束線収容マガジンMG内の出口側に設けたガイド窓LG近傍まで整然と案内して供給する配置となっている。
【0055】
また、結束線挿通ガイドユニット130を構成している一対のスプリングチューブ131、132が、個々の結束線TWを結束線収容マガジンMG内の導入窓EWからガイド窓LG近傍までそれぞれ案内する際に、一対のスプリングチューブ131、132同士が結束線収容マガジンMG内で仕切板144により相互に隔離した状態で順次誘導される。
【0056】
さらに、結束線挿通ガイドユニット130を構成しているスプリングチューブ131、132が、結束線TWと結束線安定化ユニット140と間に常に介在することとなる。
【0057】
鉄筋結束機BDが結束動作を開始すると、結束線挿通ガイドユニット130を構成している一対のスプリングチューブ131、132内を挿通している個々の結束線TWが結束線収容マガジンMG内のガイド窓LG内に引き込まれる。
【0058】
この鉄筋結束機BDによる結束線TWの引き込み動作により、リール装着ユニット110の装着回転板112のリール装着軸部113に装着されている結束線供給リール120は、装着回転板112とともに順方向に回転して、結束線TWを供給する。
【0059】
また、結束線TWが鉄筋結束機BDに引き込まれる際に結束線挿通ガイドユニット130が可撓的かつ弾性的に変形して結束線TWに波状的に繰り返し作用する緊張状態と弛緩状態を柔軟に吸収する。
【0060】
この時、鉄筋結束機BDの結束線収容マガジンMG内では、
図8Bに示すように、結束線TWがガイド窓LG内に引き込まれる動きに伴って結束線TWを挿通している一対のスプリングチューブ131、132もまたガイド窓LGに近づく方向に引き込まれる結果、スプリングチューブ131、132が結束線収容マガジンMG内で可撓的かつ弾性的に変形して、所定の収容位置から結束線収容マガジンMG内の内部装着軸部MSに向けて、すなわち、結束線収容マガジンMGの内側に向けて位置づれを生じる。
【0061】
このスプリングチューブ131、132の位置づれにより、スプリングチューブ131、132に内側に当接している結束線調整羽根車145の弾性腕145bの腕当接部145bcに内向きの力が加わって、弾性腕145b全体が弾性的に内向きに揺動する。
【0062】
この時、
図7に示すように、腕当接部145bcに内向きに加わる力Ftは、弾性腕145b全体が弾性変形するように作用するとともに、力Ftの作用線が、渦巻き状に構成されている弾性腕145bの腕当接部145bc、腕延長部145bb、腕基底部145baのそれぞれの延在方向に沿って次第に向きを変える結果、結束線調整羽根車145を、ひいては結束線安定化ユニット140全体を、上鍔部142側から見て時計回りに回動させるように作用する。
【0063】
その後、鉄筋結束機BDは、いったんガイド窓LG内に引き込んだ結束線TWを結束対象である鉄筋に掛け回した上で結束線TW同士を相互に絡めた後に、緩みをなくすために結束線TWをガイド窓LGから結束線収容マガジンMG内に送り戻す動作を行う。
【0064】
このように、鉄筋結束機BDの結束動作の過程で結束線TWが結束線収容マガジンMG内に送り戻される際には、結束線収容マガジンMG内で結束線TWの余剰分が生じることとなるが、
図8Aに示すように、結束線調整羽根車145の弾性腕145bが弾性変形によりスプリングチューブ131、132を外周側に押し広げて所定位置に戻す揺動により、結束線TWに張力を与えて余剰分を吸収する。
【0065】
このため、鉄筋結束機BDが結束動作を繰り返し行う過程で、結束線TWを結束線収容マガジンMGからガイド窓LG内に引き込む動作と、ガイド窓LGから結束線収容マガジンMG内に送り戻す動作を繰り返し、それに応じて結束線調整羽根車145の弾性腕145bが繰り返し弾性的に揺動を繰り返して結束線TWに生じる余剰分を吸収する。
【0066】
なお、結束線安定化ユニット140の複数の弾性腕145bが、弾性腕145bの相互に画成された揺動空間部145cと交互に配置されるとともに結束線収容マガジンMG内で回転対称に配置されていることにより、隣接する弾性腕145b同士の間の揺動空間部145cを可動範囲として弾性変形による大きい変位を実現して、結束線挿通ガイドユニット130を外向きに押し広げる大きい揺動により結束線TWの長い余裕分を吸収する。
【0067】
また、結束線挿通ガイドユニット130の繰り返し移動に対応して弾性腕145bが内向き及び外向きに繰り返し揺動することに伴い、結束線調整羽根車145が結束線安定化ユニット140全体を伴って所定の向きに徐々に回動して弾性腕145bが結束線挿通ガイドユニット130に内側から当接する位置が徐々にずれて、弾性腕145bが結束線挿通ガイドユニット130を満遍なく押し広げて円弧状の配置形状を維持する。