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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024062817
(43)【公開日】2024-05-10
(54)【発明の名称】配管継手
(51)【国際特許分類】
   F16L 33/10 20060101AFI20240501BHJP
   F16L 37/04 20060101ALI20240501BHJP
   F16L 47/24 20060101ALN20240501BHJP
【FI】
F16L33/10
F16L37/04
F16L47/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022170914
(22)【出願日】2022-10-25
(71)【出願人】
【識別番号】390039929
【氏名又は名称】三桜工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大門 聡
(72)【発明者】
【氏名】中本 優士
【テーマコード(参考)】
3J106
【Fターム(参考)】
3J106BA01
3J106BB01
3J106BC03
3J106DA14
3J106DA17
(57)【要約】
【課題】配管が挿入される配管挿入部を外周側から締付部材で締め付ける配管継手において、締付部材の締付操作を簡単に行える技術を提供する。
【解決手段】配管継手は、継手本体と、前記継手本体を構成する材料よりも軟質で弾性を有する樹脂材料によって構成され、前記継手本体と一体であり、配管が挿入される配管挿入部と、前記配管挿入部の外周に配置され、締付操作により前記配管挿入部を外周側から締め付ける環状の締付部材と、前記配管挿入部に設けられ、締付操作前の前記締付部材が前記配管挿入部に対して前記配管挿入部の軸方向へ移動するのを阻止すると共に前記配管挿入部の周方向に回転するのを抑制する抑制部と、を備える。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
継手本体と、
前記継手本体を構成する材料よりも軟質で弾性を有する樹脂材料によって構成され、前記継手本体と一体であり、配管が挿入される配管挿入部と、
前記配管挿入部の外周に配置され、締付操作により前記配管挿入部を外周側から締め付ける環状の締付部材と、
前記配管挿入部に設けられ、締付操作前の前記締付部材が前記配管挿入部に対して前記配管挿入部の軸方向へ移動するのを阻止すると共に前記配管挿入部の周方向に回転するのを抑制する抑制部と、
を備える配管継手。
【請求項2】
前記抑制部は、前記配管挿入部の外周面から突出し、前記軸方向に間隔をあけて設けられた一対の突出部を有し、
一対の前記突出部間に前記締付部材が配置され、
前記締付部材の幅方向の両端部が一対の前記突出部にそれぞれ接している、請求項1に記載の配管継手。
【請求項3】
一対の前記突出部には、互いに対向する方向に張り出す張出部がそれぞれ設けられており、
一対の前記張出部と前記配管挿入部の外周面との間に前記締付部材が配置されている、請求項2に記載の配管継手。
【請求項4】
前記張出部が締付操作前の前記締付部材の外周面に接している、請求項3に記載の配管継手。
【請求項5】
前記抑制部は、前記配管挿入部の外周面から隆起し、前記配管挿入部の周方向に間隔をあけて設けられ、締付操作前の前記締付部材を内周側から支持する支持部を有する、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の配管継手。
【請求項6】
前記抑制部は、前記配管挿入部の外周面から隆起し、前記配管挿入部の周方向に間隔をあけて設けられ、締付操作前の前記締付部材を内周側から支持する支持部を有し、
複数の前記支持部のうち、一つの前記支持部が一対の前記突出部間に設けられている、請求項2~請求項4のいずれか1項に記載の配管継手。
【請求項7】
前記配管挿入部は、前記締付部材による締付領域よりも前記配管の挿入方向の奥側の部分に内径が拡がる拡径部が設けられている、請求項1に記載の配管継手。
【請求項8】
前記配管挿入部の内周は、少なくとも前記締付領域に対応する部分が一定径部である、請求項7に記載の配管継手。
【請求項9】
前記継手本体は、繊維強化樹脂によって構成され、
前記配管挿入部は、熱可塑性エラストマによって構成されている、請求項1に記載の配管継手。
【請求項10】
前記継手本体は、管状部材に接続される配管接続部を備える、請求項1に記載の配管継手。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配管継手に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、拡径状態のクランプの内周面を係止部の外方向へ押圧する反力によって、押圧されているのとは反対側のクランプ内周面をクランプ装着部に圧接させて、クランプのクランプ装着部に対する周方向の回転を抑制し、パイプの先端側保持部と本体側保持部によってクランプのクランプ装着部に対する軸方向への移動を規制する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6148607号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に開示された技術では、組付作業時の作業振動やクランプの重量によってクランプ装着部に対するクランプの位置が安定しない、すなわち、クランプが移動する虞がある。クランプ装着部に対してクランプが移動した場合、クランプを締付操作するためのフックと突起部の位置を、締付操作しやすい位置へ再度合わせる作業が生じることがある。
【0005】
本発明は、配管が挿入される配管挿入部を外周側から締付部材で締め付ける配管継手において、締付部材の締付操作を簡単に行える技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1態様の配管継手は、継手本体と、前記継手本体を構成する材料よりも軟質で弾性を有する樹脂材料によって構成され、前記継手本体と一体であり、配管が挿入される配管挿入部と、前記配管挿入部の外周に配置され、締付操作により前記配管挿入部を外周側から締め付ける環状の締付部材と、前記配管挿入部に設けられ、締付操作前の前記締付部材が前記配管挿入部に対して前記配管挿入部の軸方向へ移動するのを阻止すると共に前記配管挿入部の周方向に回転するのを抑制する抑制部と、を備える。
【0007】
第1態様の配管継手では、配管を配管挿入部に挿入し、締付前の締付部材を締付操作することによって、配管が挿入された配管挿入部が外周側から締め付けられ、配管挿入部に配管が接続される。
【0008】
ここで、上記配管継手では、抑制部によって締付操作前の締付部材が配管挿入部に対して配管挿入部の軸方向に移動するのが阻止されると共に配管挿入部の周方向に回転するのが抑制される。このため、締付操作前の締付部材に対して締付操作を行う際に、配管挿入部に対して締付部材の位置を安定させられる(言い換えると、締付部材の移動を抑制できる)ため、締付部材の締付操作を簡単に行うことができる。
【0009】
以上より、第1態様の配管継手によれば、例えば、締付操作前の締付部材が配管挿入部に対して移動可能な構成と比べて、締付部材の締付操作を簡単に行うことができる。
【0010】
本発明の第2態様の配管継手は、第1態様の配管継手において、前記抑制部は、前記配管挿入部の外周面から突出し、前記軸方向に間隔をあけて設けられた一対の突出部を有し、一対の前記突出部間に前記締付部材が配置され、前記締付部材の幅方向の両端部が一対の前記突出部にそれぞれ接している。
【0011】
第2態様の配管継手では、締付部材の幅方向の両端部が一対の突出部にそれぞれ接していることから、一対の突出部によって、締付操作前の締付部材が配管挿入部に対して配管挿入部の軸方向に移動するのが阻止される。また、締付部材の幅方向両端部と一対の突出部との摩擦によって、締付操作前の締付部材が配管挿入部に対して配管挿入部の周方向に回転するのが抑制される。
ここで、第2態様の配管継手によれば、配管挿入部の外周面に軸方向に間隔をあけて一対の突出部を設ける簡単な構成で締付操作前の締付部材が配管挿入部に対して配管挿入部の軸方向へ移動するのを阻止すると共に配管挿入部の周方向に回転するのを抑制することができる。
【0012】
本発明の第3態様の配管継手は、第2態様の配管継手において、一対の前記突出部には、互いに対向する方向に張り出す張出部がそれぞれ設けられており、一対の前記張出部と前記配管挿入部の外周面との間に前記締付部材が配置されている。
【0013】
第3態様の配管継手では、一対の突出部に張出部がそれぞれ設けられており、一対の張出部と配管挿入部の外周面との間に締付部材が配置されていることから、一対の張出部によって締付操作前で径が縮径していない締付部材が突出部を乗り越えるのが抑制される。
【0014】
本発明の第4態様の配管継手は、第3態様の配管継手において、前記張出部が締付操作前の前記締付部材の外周面に接している。
【0015】
第4態様の配管継手では、張出部が締付操作前の締付部材の外周面に接していることから、締付操作前の締付部材の外周面と張出部との摩擦によって、締付操作前の締付部材が配管挿入部に対して配管挿入部の周方向に回転するのが抑制される。
【0016】
本発明の第5態様の配管継手は、第1態様~第4態様のいずれか一態様の配管継手において、前記抑制部は、前記配管挿入部の外周面から隆起し、前記配管挿入部の周方向に間隔をあけて設けられ、締付操作前の前記締付部材を内周側から支持する支持部を有する。
【0017】
第5態様の配管継手では、複数の支持部によって締付操作前の締付部材が内周側から支持されるため、複数の支持部と締付部材との摩擦により、締付操作前の締付部材が配管挿入部に対して配管挿入部の周方向に回転するのが抑制される。
【0018】
本発明の第6態様の配管継手は、第2態様~第4態様のいずれか一態様の配管継手において、前記抑制部は、前記配管挿入部の外周面から隆起し、前記配管挿入部の周方向に間隔をあけて設けられ、締付操作前の前記締付部材を内周側から支持する支持部を有し、複数の前記支持部のうち、一つの前記支持部が一対の前記突出部間に設けられている。
【0019】
第6態様の配管継手では、複数の支持部によって締付操作前の締付部材が内周側から支持されるため、複数の支持部と締付部材との摩擦により、締付操作前の締付部材が配管挿入部に対して配管挿入部の周方向に回転するのが抑制される。また、上記配管継手では、一つの支持部が一対の突出部間に設けられていることから、張出部と支持部とによって締付部材が厚み方向で挟まれる。これにより、支持部と締付部材との摩擦及び張出部と締付部材との摩擦によって、締付操作前の締付部材が配管挿入部に対して配管挿入部の周方向に回転するのが更に抑制される。
【0020】
本発明の第7態様の配管継手は、第1態様~第6態様のいずれか一態様の配管継手において、前記配管挿入部は、前記締付部材による締付領域よりも前記配管の挿入方向の奥側の部分に内径が拡がる拡径部が設けられている。
【0021】
第7態様の配管継手では、例えば、先端に環状凸部を有する配管を配管挿入部に挿入した場合、環状凸部が拡径部に到達すると、配管の挿入に対する抵抗力が低下し、配管挿入時の負荷が軽減される。すなわち、配管の挿入に必要な挿入力が軽減される。このため、上記配管継手では、配管挿入部への配管挿入作業において、配管の挿入量、言い換えると、配管が所定位置まで挿入されたかを把握しやすい。言い換えると、環状凸部が拡径部に到達することで、配管挿入完了の節度感が得られるため、配管の配管挿入部に対する挿入完了位置を安定させられる。
【0022】
本発明の第8態様の配管継手は、第7態様の配管継手において、前記配管挿入部の内周は、少なくとも前記締付領域に対応する部分が一定径部である。
【0023】
第8態様の配管継手では、配管挿入部の内周の少なくとも締付部材によって締め付けられる締付領域に対応する部分を一定径部としていることから、締付部材によって締め付けられる配管挿入部の内周面が、挿入された配管の外周面に全周に渡って密着しやすい。
【0024】
本発明の第9態様の配管継手は、第1態様~第8態様のいずれか一態様の配管継手において、前記継手本体は、繊維強化樹脂によって構成され、前記配管挿入部は、熱可塑性エラストマによって構成されている。
【0025】
第9態様の配管継手では、配管挿入部を熱可塑性エラストマによって構成していることから、配管と配管挿入部との間のシール性を確保することができる。また、配管挿入部を熱可塑性エラストマで構成することで、例えば、配管挿入部を熱硬化性エラストマで構成するよりも、配管継手の成形時において継手本体と配管挿入部とを一体化させやすい。
【0026】
本発明の第10態様の配管継手は、第1態様~第9態様のいずれか一態様の配管継手において、前記継手本体は、管状部材に接続される配管接続部を備える。
【0027】
第10態様の配管継手では、継手本体が備える配管接続部に管状部材を接続し、配管挿入部に配管を挿入し、締付部材を締付操作して配管挿入部を外周側から締め付けることで、管状部材と配管が連通する。このように上記配管継手によれば、簡単な作業で管状部材と配管を連通させることができる。
【発明の効果】
【0028】
以上説明したように、本発明によれば、配管が挿入される配管挿入部を外周側から締付部材で締め付ける配管継手において、締付部材の締付操作を簡単に行える技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の一実施形態に係る配管継手の側面図である。
図2図1に示す配管継手の縦断面図(軸方向に沿って切断した断面図)である。
図3図1に示す配管継手(締付部材未装着)の斜視図である。
図4図1に示す配管継手の斜視図である。
図5図3の5X-5X線断面図である。
図6図2の矢印6Xで指し示す部分の拡大図である。
図7図2の矢印7Xで指し示す部分の拡大図である。
図8】本発明のその他の実施形態に係る配管継手の斜視図(図3に対応する斜視図)である。
図9図8に示す配管継手の縦断面図(図2に対応する縦断面図)である。
図10】本発明のその他の実施形態に係る配管継手の縦断面図である。
図11】本発明のその他の実施形態に係る配管継手の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づき説明する。各図面において同一の符号を用いて示される構成要素は、同一又は同様の構成要素であることを意味する。なお、以下に説明する実施形態において重複する説明及び符号については、省略する場合がある。また、以下の説明において用いられる図面は、いずれも模式的なものであり、図面に示される、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は、現実のものとは必ずしも一致していない。また、複数の図面の相互間においても、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は必ずしも一致していない。
【0031】
図1図7には、本発明の一実施形態に係る配管継手20が示されている。本実施形態の配管継手20は、樹脂チューブ100を接続パイプ110に接続するための継手である。
【0032】
本実施形態の樹脂チューブ100は、軟質で弾性を有する樹脂材料で構成された可撓性を有するチューブである。この樹脂チューブ100は、本発明における管状部材の一例である。
【0033】
本実施形態の接続パイプ110は、金属材料や硬質な樹脂材料で構成されたパイプである。また、接続パイプ110の先端部に環状凸部112を有している。この環状凸部112は、接続パイプ110の先端部外周に周方向に連続して形成されている。また、接続パイプ110は、先端部の環状凸部112よりも奥側に環状凸部を更に有していてもよい。この接続パイプ110は、本発明における配管の一例である。
【0034】
図2に示されるように、配管継手20は、継手本体22と、配管挿入部30と、締付部材40と、抑制部50と、を備えている。また、図1及び図2に示されるように、本実施形態の配管継手20は、L字型の配管継手である。
【0035】
本実施形態の配管継手20は、二色成形によって成形されており、継手本体22と配管挿入部30とが一体とされている。なお、本発明はこの構成に限定されず、継手本体22と配管挿入部30を一体にできれば、インサート成形で成形してもよい。また、継手本体22と配管挿入部30をそれぞれ別々に成形した後、溶着等で一体にしてもよい。
【0036】
(継手本体)
継手本体22は、配管継手20の本体部分を構成している。この継手本体22は、図2に示されるように、樹脂材料を円筒状に形成した部材である。この継手本体22の軸方向の一端側(図2では左側)には、樹脂チューブ100に接続される配管接続部24が形成されている。言い換えると、継手本体22は、樹脂チューブに接続される配管接続部24を備えている。
【0037】
図2に示されるように、配管接続部24の先端部外周には、周方向に沿って延びる環状の溝25が形成されている。この溝25には、Oリング26が収められている。配管接続部24を樹脂チューブ100に挿入することで、樹脂チューブ100が継手本体22に接続される。すなわち、配管継手20に樹脂チューブ100が接続される。
【0038】
また、継手本体22の軸方向の他端側(図2では右側)には、配管挿入部30が接合される接合部27が形成されている。この接合部27の内径及び外径は、配管挿入部30の内径及び外径よりも大きくなっている。接合部27の内周側には、配管挿入部30の接合部32が配置されている。また、接合部27の内周と接合部32の外周とが接合されている。なお、本実施形態では、継手本体22と配管挿入部30が二色成形によって成形されていることから、接合部27と接合部32との界面で各々の材料が良くなじみ(言い換えると、良く混ざり合い)接合強度が向上している。
【0039】
また、継手本体22を構成する樹脂材料としては、強度の観点から、例えば、ポリプロピレン系樹脂、ポリアミド系樹脂又はポリフェニレンサルファイド系樹脂にグラスファイバーを配合した繊維強化樹脂等を用いることが好ましい。
なお、本実施形態の継手本体22は、ポリプロピレン樹脂にグラスファイバーを配合した繊維強化樹脂によって構成されている。
【0040】
(配管挿入部)
図1及び図2に示されるように、配管挿入部30は、配管継手20の接続パイプ110が挿入される部分を構成している。この配管挿入部30は、継手本体22を構成する材料よりも軟質で弾性を有する樹脂材料によって構成されている。具体的には、配管挿入部30は、継手本体22を構成する樹脂材料よりも軟質で弾性を有する樹脂材料を円筒状に形成した部材である。なお、本実施形態の配管挿入部30は、L字型の配管継手20の屈曲部分(言い換えると、曲管部分)と一方の直線部分(言い換えると、直管部分)とを構成しており、継手本体22は、配管継手20の他方の直線部分(言い換えると、直管部分)を構成している。
【0041】
図2に示されるように、配管挿入部30の軸方向の一端側(図2では左側)には、前述の接合部32が形成されている。この接合部32の外周には、接合部27の内周が接合されている。
【0042】
配管挿入部30の軸方向の他端側(図2では下側)から、配管挿入部30の内側に接続パイプ110を挿入(圧入)することで、配管挿入部30に接続パイプ110が接続されるようになっている。
【0043】
また、配管挿入部30は、後述する締付部材40による締付領域40Rよりも接続パイプ110の挿入方向の奥側の部分に内径が拡がる拡径部34が設けられている。具体的には、配管挿入部30の内周は、少なくとも締付領域40Rに対応する部分が一定径部36であり、一定径部36よりも接続パイプ110の挿入方向の奥側の部分に拡径部34が設けられている。なお、拡径部34は一定径部36よりも径が大きい。また、接続パイプ110の挿入方向は、図2の矢印ID方向である。なお、締付領域40Rは、配管挿入部30の締付部材40によって締め付けられる領域である。そのため、締付部材40が配管挿入部30の外周面30Aに接する場合、締付部材40の幅が締付領域40Rとなる。一方、締付部材40が後述する支持部56を介して支持されている場合、支持部56の軸方向ADの範囲(領域)締付領域40Rとなる。
【0044】
また、配管挿入部30を構成する樹脂材料としては、シール性の観点から、熱可塑性エラストマ又は熱硬化性エラストマを用いることが好ましい。熱可塑性エラストマとしては、例えば、オレフィン系エラストマ(TPO)、スチレン系エラストマ(TPS)、ポリ塩化ビニル系エラストマ(TPVC)、ポリウレタン系エラストマ(TPU)、ポリエステル系エラストマ(TPC)、ポリアミド系エラストマ(TPA)等を用いてもよい。また、熱硬化性エラストマとしては、例えば、加硫ゴム、エチレンプロピレンゴム、フッ素ゴム、フロロシリコーンゴム、水素化ニトリルゴム等を用いてもよい。
なお、本実施形態では、配管挿入部30を構成する熱可塑性エラストマとして、オレフィン系エラストマ(TPO)を用いている。
【0045】
ここで、本実施形態では、継手本体22の成形にポリプロピレン樹脂にグラスファイバーを配合した繊維強化樹脂を用いるため、この繊維強化樹脂と、ポリプロピレン樹脂を含有するオレフィン系エラストマ(TPO)で形成された配管挿入部30とが二色成形時に良くなじむため、継手本体22と配管挿入部30とが強固に接合(一体化)される。具体的には、二色成形時に、継手本体22と配管挿入部30のそれぞれの材料に含まれるポリプロピレン樹脂の高分子鎖同士が絡み合うため、継手本体22と配管挿入部30とが強固に接合される。
なお、本実施形態では継手本体22と配管挿入部30を二色成形で成形しているが、インサート成形で成形してもよい。インサート成形した場合も二色成形と同様の効果が得られる。
【0046】
(締付部材)
締付部材40は、配管挿入部30を外周側から締め付ける部材である。この締付部材40は、接続パイプ110が挿入された配管挿入部30を外周側から締め付けることで、配管挿入部30を接続パイプ110に圧接させて、配管挿入部30と接続パイプ110を密着させる機能を有する。
【0047】
図2及び図3に示されるように、締付部材40は、環状であり、配管挿入部30の外周に配置されている。この締付部材40は、締付操作により配管挿入部30を外周側から締め付ける。具体的には、締付部材40は、両端に摘まみ42が設けられた円形の弾性バネである。この締付部材40は、両端側に設けられた係止部(図示省略)同士が互いに係止されることで拡径状態が維持されており、摘まみ42を操作して、係止部同士の係止を解除することで元の径に復元される。なお、締付部材40の締付操作とは、拡径状態の締付部材40を元の径に復元させるために、係止部同士の係止を解除させる摘まみ42の操作を指す。
【0048】
また、締付操作前の締付部材40の内径(拡径状態の内径)は、接続パイプ110が挿入される前の配管挿入部30を締め付けないように、配管挿入部30において締付部材40が配置される部分の外径よりも大径とされている。
【0049】
本実施形態の締付部材40は、締め付け力の観点から、金属製の弾性バネとしているが、この構成に限定されない。締め付け力が確保できれば、樹脂材料で形成された弾性バネとしてもよい。
【0050】
(抑制部)
抑制部50は、配管挿入部30に設けられ、締付操作前の締付部材40が配管挿入部に対して移動するのを抑制する部分である。この抑制部50は、締付操作前の締付部材40が配管挿入部30に対して配管挿入部30の軸方向へ移動するのを阻止すると共に配管挿入部30の周方向に回転するのを抑制する機能を有する。なお、以下では、配管挿入部30の軸方向を符号ADで示し、配管挿入部30の周方向を符号CDで示す。
【0051】
図1図3に示されるように、抑制部50は、突出部52と、支持部56と、を有している。
【0052】
突出部52は、図3図5及び図6に示されるように、配管挿入部30の外周面30Aから突出し、軸方向ADに間隔をあけて設けられている。本実施形態では、配管挿入部30の外周面30A上に一対の突出部52が軸方向ADに対向して配置されている。言い換えると、一対の突出部52は、軸方向ADに互いに隣接している。
【0053】
図6に示されるように、一対の突出部52の間に締付部材40が配置されている。そして、締付部材40の幅方向の両端部40Aが一対の突出部52にそれぞれ接している。具体的には、締付部材40の幅方向の両端部40Aが一対の突出部52の互いに対向する側壁面52Aにそれぞれ接している。これにより、締付操作前の締付部材40が配管挿入部30に対して軸方向ADに移動するのが阻止されている。
【0054】
図5及び図6に示されるように、一方の突出部52の頂部52Bには、互いに対向する方向に張り出す張出部54がそれぞれ設けられている。具体的には、一方の突出部52には、頂部52Bから他方の突出部52の頂部52Bに向けて張り出す張出部54が設けられ、他方の突出部52には、頂部52Bから一方の突出部52の頂部52Bに向けて張り出す張出部54が設けられている。なお、本発明はこの構成に限定されない。張出部54は、突出部52の突出方向の中間部から張り出していてもよい。
【0055】
図6に示されるように、張出部54は締付操作前の締付部材40の外周面40Bに接している。
【0056】
図3及び図5に示されるように、支持部56は、配管挿入部30の外周面30Aから隆起した隆起部分であり、配管挿入部30の周方向に間隔をあけて設けられている。具体的には、支持部56は、配管挿入部30の周方向に等間隔で設けられている。これらの支持部56は、図4及び図6に示されるように、締付操作前の締付部材40を内周側から支持する。
【0057】
また、複数の支持部56のうち、一つの支持部56が一対の突出部52間に設けられている。したがって、締付操作前の締付部材40において一対の突出部52間に位置する部分は、支持部56と張出部54とによって厚み方向に挟まれている。
【0058】
次に、本実施形態の作用並びに効果について説明する。
本実施形態の配管継手20では、接続パイプ110を配管挿入部30に挿入し、締付前の締付部材40を締付操作することによって、接続パイプ110が挿入された配管挿入部30が外周側から締め付けられ、配管挿入部30に接続パイプ110が接続される。
【0059】
ここで、配管継手20では、抑制部50によって締付操作前の締付部材40が配管挿入部30に対して軸方向ADに移動するのが阻止されると共に配管挿入部30の周方向CDに回転するのが抑制される。このため、締付操作前の締付部材40に対して締付操作を行う際に、配管挿入部30に対して締付部材40の位置(具体的には、摘まみ42の位置)を安定させられる。言い換えると、配管挿入部30に対する締付部材40の移動を抑制できるため、締付部材40の締付操作を簡単に行うことができる。一例として、締付前の締付部材40の締付操作にプライヤー等の工具を用いる際に、配管挿入部30に対して締付部材40の摘まみ42の位置が動かず、安定していることにより、作業者は片手でプライヤー等の工具を使用して、摘まみ42を摘まんで締付操作を行うことができる。このように、本実施形態の配管継手20は、締付前の締付部材40の締付操作を片手のみで行えるため、現場における配管接続作業の負担が軽減される。
【0060】
以上より、本実施形態の配管継手20によれば、例えば、締付操作前の締付部材40が配管挿入部30に対して移動可能な構成と比べて、締付部材40の締付操作を簡単に行うことができる。
【0061】
また、本実施形態の配管継手20では、締付部材40の幅方向の両端部40Aが一対の突出部52にそれぞれ接していることから、これらの突出部52によって、締付操作前の締付部材40が配管挿入部30に対して軸方向ADに移動するのが阻止される。また、締付部材40の両端部40Aと一対の突出部52の側壁面52Aとの摩擦によって、締付操作前の締付部材40が配管挿入部30に対して周方向CDに回転するのが抑制される。
ここで、本実施形態の配管継手20によれば、配管挿入部30の外周面30Aに軸方向ADに間隔をあけて一対の突出部52を設ける簡単な構成で締付操作前の締付部材40が配管挿入部30に対して軸方向ADへ移動するのを阻止すると共に周方向CDに回転するのを抑制することができる。
【0062】
また、本実施形態の配管継手20では、一対の突出部52に張出部54がそれぞれ設けられており、一対の張出部54と外周面30Aとの間に締付部材40が配置されていることから、一対の張出部54によって締付操作前で径が縮径していない締付部材40が突出部52を乗り越えるのが抑制される。
【0063】
また、本実施形態の配管継手20では、張出部54が締付操作前の締付部材40の外周面40Bに接していることから、締付操作前の締付部材40の外周面40Bと張出部54との摩擦によって、締付操作前の締付部材40が配管挿入部30に対して周方向CDに回転するのが抑制される。
【0064】
また、本実施形態の配管継手20では、複数の支持部56によって締付操作前の締付部材40が内周側から支持されるため、複数の支持部56と締付部材40との摩擦により、締付操作前の締付部材40が配管挿入部30に対して周方向CDに回転するのが抑制される。
【0065】
また、本実施形態の配管継手20では、一つの支持部56が一対の突出部52間に設けられていることから、張出部54と支持部56とによって締付部材40が厚み方向で挟まれる。これにより、支持部56と締付部材40との摩擦及び張出部54と締付部材40との摩擦によって、締付操作前の締付部材40が配管挿入部30に対して周方向CDに回転するのが更に抑制される。
【0066】
また、本実施形態の配管継手20では、例えば、先端部に環状凸部112を有する接続パイプ110を配管挿入部30に挿入した場合、環状凸部112が拡径部34に到達すると、接続パイプ110の挿入に対する抵抗力が低下し、配管挿入時の負荷が軽減される。すなわち、接続パイプ110の挿入に必要な挿入力が軽減される。このため、配管継手20では、配管挿入部30への配管挿入作業において、接続パイプ110の挿入量、言い換えると、接続パイプ110が所定位置まで挿入されたかを把握しやすい。言い換えると、環状凸部112が拡径部34に到達することで、接続パイプ110が挿入完了した際に節度感が得られるため、接続パイプ110の配管挿入部30に対する挿入完了位置を安定させられる。これにより、接続パイプ110が挿入された配管挿入部30を外周側から締付部材40で締め付けた際の接続パイプ110と配管挿入部30との間のシール性を安定させられる。
【0067】
また、本実施形態の配管継手20では、配管挿入部30の内周の少なくとも締付部材40によって締め付けられる締付領域40Rに対応する部分を一定径部36としていることから、締付部材40によって締め付けられる配管挿入部30の内周面が、挿入された接続パイプ110の外周面に全周に渡って密着しやすい。これにより、接続パイプ110と配管挿入部30との間のシール性が向上する。
【0068】
また、本実施形態の配管継手20では、配管挿入部30を熱可塑性エラストマによって構成していることから、接続パイプ110と配管挿入部30との間のシール性を確保することができる。また、配管挿入部30を熱可塑性エラストマで構成することで、例えば、配管挿入部30を熱硬化性エラストマで構成するよりも、配管継手20の成形時(二色成形時)において継手本体22と配管挿入部30とを一体化しやすい。
【0069】
また、本実施形態の配管継手20では、継手本体22が備える配管接続部24に樹脂チューブ100を接続し、配管挿入部30に接続パイプ110を挿入し、締付部材40を締付操作して配管挿入部30を外周側から締め付けることで、樹脂チューブ100と接続パイプ110とが連通する。このように上記配管継手20によれば、簡単な作業で樹脂チューブ100と接続パイプ110を連通させることができる。
【0070】
前述の実施形態では、配管挿入部30がL字型の配管継手20の屈曲部分(言い換えると、曲管部分)と一方の直線部分(言い換えると、直管部分)とを構成しており、継手本体22が配管継手20の他方の直線部分(言い換えると、直管部分)を構成しているが、本発明はこの構成に限定されない。例えば、図8及び図9に示される配管継手21のように配管挿入部31がL字型の配管継手20の一方の直線部分(言い換えると、直管部分)を構成し、継手本体23が配管継手20の屈曲部分(言い換えると、曲管部分)と他方の直線部分(言い換えると、直管部分)を構成してもよい。なお、配管挿入部31及び継手本体23は、形状を除き、前述の実施形態の配管挿入部30及び継手本体22と同様の構成である。なお、符号31Aは、配管挿入部31の外周面を指す。
【0071】
前述の実施形態では、配管継手20がL字型であったが、本発明はこの構成に限定されない。例えば、図10に示される配管継手60のようにT字型であってもよいし、図11に示される配管継手70のようにストレート型であってもよい。図10に示されるように、配管継手60は、T字状の継手本体62を備えており、この継手本体62の一つの分岐部の先端側に配管接続部24が設けられ、二つの分岐部の先端側に直線状(直管状)の配管挿入部64がそれぞれ一体とされている。一方、図11に示されるように、配管継手70は、直線状(直管状)の継手本体72を備えており、この継手本体72の両端側に上記の配管挿入部64がそれぞれ一体とされている。また、本発明は、配管継手60及び配管継手70のように、複数の配管挿入部を備える構成でもよい。また、配管継手60及び配管継手70に、前述の配管挿入部30を用いてもよい。
【0072】
前述の実施形態では、一対の突出部52を配管挿入部30の外周面30Aに一組設けているが、本発明はこの構成に限定されない。例えば、一対の突出部52を配管挿入部30の外周面30Aに周方向に間隔をあけて複数組設けてもよい。なお、一対の突出部52は、配管挿入部30の外周面30Aに周方向に等間隔で複数組設けられてもよい。さらに、一対の突出部52を複数組設けた場合に、各組の一対の突出部52間に支持部56が設けられてもよい。
【0073】
前述の実施形態では、接続パイプ110の先端部に環状凸部112が設けられているが、本発明はこの構成に限定されず、接続パイプ110の先端部に環状凸部112が設けられなくてもよい。
【0074】
以上、実施形態を挙げて本発明の実施の形態を説明したが、これらの実施形態は一例であり、要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施できる。また、本発明の権利範囲がこれらの実施形態に限定されないことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0075】
20 配管継手
22 継手本体
24 配管接続部
30 配管挿入部
30A 外周面
34 拡径部
36 一定径部
40 締付部材
40R 締付領域
40A 幅方向の両端部
40B 外周面
50 抑制部
52 突出部
54 張出部
56 支持部
60 配管継手
62 継手本体
64 配管挿入部
70 配管継手
72 継手本体
100 樹脂チューブ
110 接続パイプ
112 環状凸部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
図11