(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024062818
(43)【公開日】2024-05-10
(54)【発明の名称】試験器
(51)【国際特許分類】
G08B 17/00 20060101AFI20240501BHJP
G08B 17/10 20060101ALI20240501BHJP
【FI】
G08B17/00 K
G08B17/10 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022170915
(22)【出願日】2022-10-25
(71)【出願人】
【識別番号】000233826
【氏名又は名称】能美防災株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000752
【氏名又は名称】弁理士法人朝日特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野口 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】前田 剛
(72)【発明者】
【氏名】金子 貴洋
(72)【発明者】
【氏名】松田 大造
(72)【発明者】
【氏名】董 宥辰
【テーマコード(参考)】
5C085
5G405
【Fターム(参考)】
5C085CA11
5C085CA15
5C085DA08
5C085FA25
5G405AD02
5G405AD07
5G405CA13
5G405CA21
5G405DA08
5G405FA17
(57)【要約】
【課題】表示灯の点灯が示す複数種類の情報を含む試験情報を感知器から取得してその感知器が正常であるか否かを判定する際に、試験情報の取得を確実にする。
【解決手段】試験器2は、試験に関する試験情報を表示灯の光の点滅パターンにより伝送路符号化して送信する感知器1を覆って収容する収容部20と、収容部20が感知器1を覆ったときに、その収容部20内において表示灯13に対向し得る領域内に配置され、それぞれ受光した光の強さに応じた信号を出力する複数の受光部23と、を有する。この試験器2は、複数の受光部23のうち少なくともいずれかが出力した信号により示される試験情報に基づいて感知器1が正常であるか否かを判定する。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試験に関する試験情報を表示灯の光の点滅パターンにより伝送路符号化して送信する感知器を覆って収容する収容部と、
前記収容部が前記感知器を覆ったときに、該収容部内において前記表示灯に対向し得る領域内に配置され、それぞれ受光した光の強さに応じた信号を出力する複数の受光部と、
前記複数の受光部のうち少なくともいずれかが出力した信号により示される前記試験情報に基づいて前記感知器が正常であるか否かを判定する判定部と、
を有する試験器。
【請求項2】
前記判定部は、前記複数の受光部の出力した信号を加算した値により示される前記試験情報に基づいて前記感知器が正常であるか否かを判定する
請求項1に記載の試験器。
【請求項3】
前記受光部は、前記領域内において所定間隔で配置されている
請求項1又は2に記載の試験器。
【請求項4】
前記収容部は、前記表示灯の光を外部から確認可能な窓を備えるとともに、前記感知器を覆ったときに前記複数の受光部が外部から受ける光を低減させる
請求項1又は2に記載の試験器。
【請求項5】
前記窓は、前記複数の受光部の受光範囲外に設けられている
請求項4に記載の試験器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火災を感知する感知器を試験して情報を取得する試験器の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
火災を感知する感知器は、作動した際に、作動した感知器を特定できるようにするため、表示灯を点灯させる。この表示灯は主に人が目視で確認するためのものであるが、定期点検のために感知器を作動させたときなどは、この表示灯の点灯状態を検知して感知器の状態を把握することもある。
【0003】
特許文献1は、受光回路の出力に基づいて発光回路及び受光回路の感度を判定し、1回の稼動信号の出力において、発光回路及び受光回路の感度に応じた時間間隔で、火災表示灯を少なくとも3回発光させるマイコンを備える火災感知器を開示する。
【0004】
特許文献2は、感知器の表示灯が点灯して出力した光を受光し、受光したその光に基づいて、感知器による異常の検出に関する状態を検出する試験装置を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2018-116333号公報
【特許文献2】特開2020-177704号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、感知器の状態を示す情報は、異常か正常かの区別、及び感度のスカラー値の他にも様々な内容を有する。
【0007】
特許文献1に記載の技術において、火災表示灯は、連続する2回の発光の時間間隔を固定し、他の連続する2回の発光の時間間隔を感知器の検出部の感度に応じた時間に設定しなければならず、少なくとも3回発光しなければならない。また、この技術において、火災感知器の感度を検査する感度検査装置は、3回の発光の合間で、固定の時間間隔、及び感度に応じた時間間隔の経過をそれぞれ待たなければならない。さらに、この技術において、火災表示灯は、3回の発光によって、感度を示すたった一つのスカラー値しか伝えることができない。
【0008】
また、特許文献2に記載の技術は、判定時間内に感知器の表示灯が点灯したか否かを判定するだけに過ぎない。つまり、この技術は、表示灯の発光動作等に情報を化体させるものではない。
【0009】
そして、これらはいずれも複雑かつ大量の情報を伝達させるものでないため、例えば、特許文献1の技術は、1つの感度検査装置で火災表示灯のパルス発光の強度が検出できることを前提としている。また、特許文献2の技術は、収容部の受光部が感知器の表示灯の直下に配置されることを前提としている。
【0010】
本発明は、表示灯の点灯が示す複数種類の情報が含まれた試験情報を感知器から取得してその感知器が正常であるか否かを判定する際に、試験情報の取得を確実にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するため、本発明は、一の態様において、火災を感知し火災発報したときに点灯する表示灯を備えた感知器であって、センサが対象を感知したとき前記表示灯を点灯させて自器が発報したことを表示するとともに、試験に関する情報であって自器の識別情報を含む試験情報を前記表示灯の光の点滅パターンにより伝送路符号化して送信する感知器から前記表示灯の光を受光する受光部と、前記受光部が受光した光の点滅パターンにより前記試験情報を取得する取得部と、前記取得部が取得した前記試験情報に基づいて前記感知器が正常であるか否かを判定する判定部と、を有する試験器を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、表示灯の点灯が示す複数種類の情報を含む試験情報を感知器から取得してその感知器が正常であるか否かを判定する際に、試験情報の取得を確実にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】感知器試験システム9の全体構成の一の例を示す図。
【
図2】感知器試験システム9の全体構成の他の例を示す図。
【
図5】感知器1における表示灯13の配置の例を示す図。
【
図6】試験器2aにおける受光部23の配置の例を示す図。
【
図8】表示灯13から受光部23までの距離を説明するための図。
【
図9】試験器2の収容部20で感知器1を覆った状態の例を示す図。
【0014】
[実施形態]
[感知器試験システムの全体構成]
図1は、感知器試験システム9の全体構成の一の例を示す図である。感知器試験システム9は、1以上の感知器1、1以上の試験器2a、及び受信機3を有する。感知器試験システム9は、感知器1を試験器2aによって試験するとともに、感知器1が蓄積した試験情報を試験器2aに取得させるシステムである。
【0015】
感知器1は、火災を感知して火災発報する機器であり、図示の例では天井Cに設置されている。試験器2aは、感知器1を試験するとともに、感知器1から試験情報を取得する機器である。
【0016】
受信機3は、管理室等に設置され、監視領域に設置されている1以上の感知器1のそれぞれと電気的に接続されている。受信機3は、接続される感知器や発信機からの火災信号を受けて発報の信号を音響機器や防排煙設備等に送信し火災を知らせる装置であり、感知器1からの通知を受信して、その感知器1へ供給する電力を管理するように動作する装置である。受信機3は、いずれかの感知器1が火災を感知したときに、その感知器1から発報信号を受けて、その感知器1へ火災発報に必要な電力を供給する。
【0017】
図1に示す感知器1は、表示灯13、及びセンサ14を有する。
図1に示す試験器2aは、収容部20、受光部23、連結部24、支持棒25、供給部26、感度試験ユニットU、を有する。
【0018】
センサ14は、火災を示す対象を感知するもので、
図1に示すセンサ14は、火災を示す対象として煙、熱や赤外線等を感知する。感知器1は、センサ14が対象である熱や煙を感知すると、確認灯とも呼ばれる表示灯13が点灯し、感知器1が作動し火災発報したことを報知する。
【0019】
支持棒25は、試験を行うユーザが試験器2aを持つための棒である。支持棒25の一端は
図1に示す通り、試験器2aの各構成と接続され、これらを支持している。支持棒25の他端(
図1において図示せず)は、ユーザが把持するハンドル、操作を行うレバー等の操作子を備える。
【0020】
収容部20は、感知器1を覆って天井Cに密着するように椀状に構成されている。収容部20によって覆われたとき、感知器1の周囲の空間は収容部20の内外にそれぞれ隔離される。
【0021】
収容部20は、外部からの光を内部に透過させ難い材質、色で構成されている。この収容部20を構成する素材は、天井Cとの間に隙間が生じないようにゴム、合成樹脂等の可撓性の高いものであることが望ましい。また、この収容部20は、例えば黒色等、表示灯13が発する赤色光等を遮蔽する色で構成されていることが望ましい。この場合、感知器1の表示灯13から発する光は、収容部20の外に漏れ難い。
【0022】
供給部26は、試験用の煙(疑似煙を含む)を放出して感知器1に供給する加煙ユニットであり、例えば圧縮されたガスとともに火災時の煙を模した煙成分を放出する缶等を有する。
【0023】
連結部24は、供給部26が煙を放出する開口部を覆う蓋と接続され、かつ、支持棒25の他端に設けられたレバー等の操作子とも連結している。ユーザが操作子を操作すると連結部24は回動し、供給部26の蓋を外す。これにより、供給部26は、センサ14のある感知器1の内部方向に向けて煙を放出する。
【0024】
感知器1は、上述した通り、センサ14が供給部26から放出された煙成分を感知したときに火災発報し、表示灯13を点灯させる。このとき、感知器1は、感知器1に対して行われた試験情報122を、表示灯13の光の点滅パターンにより伝送路符号化して送信する。
【0025】
受光部23は、表示灯13から光を受け、その点滅パターンに応じた信号(受光信号という)を感度試験ユニットUに送る。
【0026】
なお、上述した収容部20は、感知器1の表示灯13から発される光を人が目視確認するための窓が設けられていてもよい。この窓は透明、又は半透明の樹脂等で構成され、物質の流入、流出がないように内外の空間を隔離しつつ、表示灯13の光を外部に透過させる。この窓は、例えば、受光部23の背後に配置されているとよい。この配置により、受光部23は、表示灯13の光を受けつつ、窓から入り込む光を受け難い。
【0027】
感度試験ユニットUは、プロセッサ、メモリ等を有し、受光部23から送られた受光信号を取得して、この受光信号から感知器1によって伝送路符号化された試験情報を抽出する。
【0028】
図2は、感知器試験システム9の全体構成の他の例を示す図である。感知器試験システム9は、1以上の感知器1、1以上の試験器2b、及び受信機3を有する。
図1に示す試験器2a、及び
図2に示す試験器2bは、互いに区別しない場合、それぞれ単に試験器2と記述される。
【0029】
試験器2bは、感知器1を試験する機器であるという点で、上述した試験器2aと共通する。一方、試験器2bは、供給部26を有しないという点で、試験器2aと異なる。試験器2bは、送信部28を有する。送信部28は、感知器1に対して試験を開始する旨の指示を示す試験開始信号を送信する。なお、試験器2bは、感度試験ユニットUを有してもよい。この場合、送信部28は、例えば、感度試験ユニットUが有するプロセッサの制御の下、上述した試験開始信号を送信すればよい。
図2に示す感知器1は、受信部15を有し、試験器2bの送信部28が送信する試験開始信号を受信すると表示灯13を点灯させ、試験情報122を、表示灯13の光の点滅パターンにより伝送路符号化して、送信する。
【0030】
[試験情報の構成]
図3は、試験情報122の構成の例を示す図である。感知器1は、図示しない記憶部を有し、
図3に示す試験情報122をその記憶部に記憶する。試験情報122は、複数の項目のそれぞれに、その値を対応付けた情報である。この試験情報122は、「機種コード」、「製造年月日」、「製造番号」、「火災閾値」、「汚れ量」、及び「火災履歴」の項目の値をそれぞれ記憶する。
【0031】
「機種コード」の欄は、感知器1の機種を識別する識別情報である機種コードを記憶する欄である。
【0032】
「製造年月日」の欄は、感知器1が製造された年月日を記憶する欄である。
【0033】
「製造番号」の欄は、感知器1の製造番号を記憶する欄である。この製造番号は、例えば、感知器1を一意に識別する識別情報の例である。
【0034】
なお、「機種コード」、「製造年月日」は、それぞれ感知器1の機種、製造年月日を示す情報であり、これらは個々の感知器1を識別しない場合もあるが、感知器1が所属する集団の識別に用いられる情報である。したがって、「機種コード」、「製造年月日」も感知器の識別情報に含まれる。また、「製造番号」は、感知器1を一意に識別する識別情報でなくてもよく、例えば、「機種コード」及び/または「製造年月日」と組合せた場合に、感知器を一意に識別する識別情報となる情報であってもよい。つまり、「機種コード」、「製造年月日」、「製造番号」、及びこれらの組合せは、感知器1の識別情報の例である。
【0035】
「火災閾値」は、感知器1の感度の異常を決める閾値を示す情報である。例えば、火災閾値に対して、10%/m、60℃等、予め決められた煙濃度の割合、所定の温度を上回る感度が計測された場合、その感度が計測された感知器1は、異常であると判定される。この火災閾値は、個々の感知器1に個性があるため、工場出荷時に、それぞれの感知器1をテストして、その結果に応じたデータが設定される。
【0036】
「汚れ量」は、センサ14の感度を示す感度情報の例である。この汚れ量は、感知器1のセンサ14がどの程度、汚れているかを示すスカラー値であり、例えば256段階で表現される。汚れ量は、例えば、感知器1の内部の電気回路において、煙がない空間に置かれたときのセンサ14に接続されたアンプ(図示せず)の出力電圧が初期値からどれだけ外れているかによって推算される。
【0037】
「火災履歴」は、1週間等、予め決められた期間に「火災」を感知した回数を示す情報である。ここで感知される「火災」とは、実際の火災に限らず、例えば、センサ14が試験用の煙を感知したときも含まれる。また、この「火災」は、感知器1のいずれかの構成の故障により感知されたものを含んでもよい。
【0038】
感知器1は、図示しない送信部を有し、送信部は、図示しない符号化部により伝送路符号化された試験情報122を、決められた方式に沿って表示灯13の点灯、及び消灯動作に変換し、この光の点滅パターンによって試験器2へ送信する。
[試験器の構成]
図4は、試験器2の構成の例を示す図である。
図4に示す試験器2は、プロセッサ21、メモリ22、受光部23、供給部26を有する。これらの構成は、例えばバスで、互いに通信可能に接続されている。また、プロセッサ21、及びメモリ22は、上述した感度試験ユニットUを構成する。プロセッサ21は、メモリ22に記憶されているプログラムを読出して実行することにより試験器2の各部を制御する、例えば、CPUである。メモリ22は、プロセッサ21に読み込まれるオペレーティングシステム、各種のプログラム、データ等を記憶する記憶手段であり、RAM、又はROMを有する。なお、メモリ22は、ソリッドステートドライブ、ハードディスクドライブ等を有してもよい。また、この試験器2は、送信部28を有してもよい。
【0039】
[機械的構造]
以下に感知器1、及び試験器2の機械的構造について図を用いて説明する。以下に示す図において、各構成が配置される空間をxyz右手系座標空間として表す。また、図に示す座標記号のうち、円の中に点を描いた記号は、紙面奥側から手前側に向かう矢印を表し、円の中に交差する2本の線を描いた記号は、紙面手前側から奥側に向かう矢印を表す。空間においてx軸に沿う方向をx軸方向という。また、x軸方向のうち、x成分が増加する方向を+x方向といい、x成分が減少する方向を-x方向という。y、z成分についても、上記の定義に沿ってy軸方向、+y方向、-y方向、z軸方向、+z方向、-z方向が定義される。図において、-z方向は重力の働く方向、すなわち、下方向である。
【0040】
[感知器における表示灯の配置]
図5は、感知器1の一例として、煙感知器における表示灯13の配置の例を示す図である。
図5には、天井Cに設置された感知器1を下から見た様子が示されている。+z方向に沿って、つまり床方向から天井方向を見たときの感知器1の筐体10は、円形の輪郭(外周ともいう)を有している。
【0041】
この円形の輪郭は、xy平面において
図5に示す点Oを中心とする。また、センサ14は、
図1に示す通り、筐体10のうち下方向(-z方向)に突出した部分の内部空間に設けられている。この下方向に突出した部分は、xy平面において筐体10の外周と同じく点Oを中心とした円形の輪郭を有している。
【0042】
図5に示す表示灯13は、センサ14の外周面であって+y方向、及び-y方向のそれぞれの端に1つずつ、計2つが露出している。この表示灯13は、例えば、筐体10の内部で連続した一体の発光素子で構成されている。この発光素子が筐体10にそれぞれ設けられた2箇所の穴から露出することで、表示灯13は、外部から2つ認識される。なお、表示灯13が外部から認識される数は、2つに限らず、1つでもよいし、3つ以上でもよい。
【0043】
[試験器における受光部の配置]
図6は、試験器2aにおける受光部23の配置の例を示す図である。試験器2が有する受光部23の数は1つ又は複数とされるが、試験器2の受光部23の位置を気にすることなく感知器1に対してどの向きで当てても、受光部23が表示灯13に対向しやすくなるために、受光部23は複数設けられることが望ましい。本実施例、
図6に示す試験器2aは、収容部20、及び8つの受光部23を有する。これら8つの受光部23は、例えばフォトダイオードであり、受光波長帯に表示灯13が発する光の波長を含み、受光した光の強さに応じた信号を出力する。試験器2bが有する受光部23の配置も同様である。
【0044】
作業者が、環状の周側面204の内壁(内周ともいう)の略中心を感知器1の中心(
図5で示す点O)に合わせるように試験器2を天井C(
図5参照)に押し付けると、椀状の収容部20は、筐体10を覆い、感知器1を収容する。つまり、この収容部20は、試験に関する試験情報122を表示灯13の光の点滅パターンにより伝送路符号化して送信する感知器1を覆って収容する収容部、の例である。
【0045】
収容部20は、窓201、リブ202、及びノズル受入口203を有する。窓201は、試験器2の内部空間を外部から確認可能にする窓である。窓201は、収容部20に設けられた穴であってもよいが、透明な樹脂、ガラス等の一定量の光を透過する素材で構成されてもよい。
図6では、窓201は、底面205に設けられているが、周側面204に設けられてもよい。
【0046】
この窓201により、試験器2を用いて試験作業を行う作業者は、収容部20に収容された感知器1の表示灯13から放たれる光を試験器2の外部から確認することができる。つまり、この窓201は、表示灯の光を外部から確認可能な窓の例である。
【0047】
収容部20のうち、窓201以外の部分は、外部からの光を内部に透過させ難い材質で構成されている。また、収容部20の上面、つまり+z方向の端面は、O状で平らに形成されている。そして、この上面は、例えば、天然ゴム、合成ゴムといった弾性変形が可能な素材で覆われている。そのため、収容部20が感知器1を覆うと、上述した上面が平滑な天井Cに密着して隙間がなくなり、外部から内部へ向かう光は減少する。
【0048】
上述した複数の受光部23は、収容部20の内部において、例えば、底面205に設けられたドーナツ状の板(図示せず)の上に設けられている。したがって、収容部20が感知器1を覆うと、受光部23が外部から受ける光も減少する。つまり、この収容部20は、表示灯の光を外部から確認可能な窓を備えるとともに、感知器を覆ったときに複数の受光部が外部から受ける光を低減させる収容部の例である。
【0049】
上述したドーナツ状の板には、その内側の穴の縁から+z方向に向かって筒状の部材(筒状部材という)が伸びている。
図6に示すリブ202は、収容部20の内部空間においてこの筒状部材の内周面に沿って底面205から+z方向に伸びている。このリブ202は、複数、本実施例では設けられ、いずれも筒状部材の内周面において均等に設けられている。これらのリブ202は、底面205のz軸方向の強度を上昇させる。
【0050】
ノズル受入口203は、
図1に示す供給部26の上端に設けられた煙を噴射するノズルを受入れる穴である。このノズル受入口203は、上述したノズルを受入れたとき、供給部26と隙間なく密着するので、収容部20を天井Cに密着させたとき、ノズルから噴射される煙は、収容部20の内部に供給され外側に漏れない。
【0051】
ここで収容部20が感知器1を覆ったときに、収容部20の内部空間において感知器1の表示灯13に対向し得る領域Aについて説明する。
図7は、領域Aの例を示す図である。
図7には、感知器1の筐体10、表示灯13、及びセンサ14の位置が破線で示されている。
【0052】
作業者が、
図7に示すこの感知器1の直下に試験器2を配置して、その上面を天井Cに押し付けると、試験器2の収容部20は、その中心が点Oを通るz軸に並行な軸上にある限り(つまり、感知器1、及び試験器2の各中心軸がおおよそ一致している限り)、感知器1を収容することができる。したがって、収容部20は、上述した「点Oを通るz軸に並行な軸(共通軸ともいう)」を中心にして360度のどの角度に回転しても感知器1を収容することができる。
【0053】
この場合、収容部20の内部空間において、試験器2の2箇所に設けられた表示灯13に対向し得る領域は、
図7に示すドーナツ状の領域Aである。
図6に示す通り、試験器2において8つの受光部23は、収容部20の内部空間のうち
図7に示す領域Aに配置されている。つまり、これらの受光部23は、収容部が感知器を覆ったとき、つまり試験器2を感知器1に向けて当てたときに、この収容部内において表示灯に対向し得る領域内に配置され、それぞれ受光した光の強さに応じた信号を出力する複数の受光部の例である。こうすることで、試験器2の受光部23の位置を気にすることなく感知器1を収容することができる
【0054】
なお、試験器2において複数の受光部23は、上述した領域Aにおいて決められた間隔で配置されていることが望ましい。例えば、
図6に示す受光部23は領域Aに8つ設けられており、これらのうち互いに隣り合う受光部23は、いずれも上述した共通軸を中心にxy平面上において45度ずつの等間隔で配置されている。このような配置により、複数の受光部23は、偏って配置された場合に比べて表示灯13の光を受光し易くなる。すなわち、これら複数の受光部23は、試験器に設けられた表示灯に対向し得る領域内において所定間隔で配置されている受光部の例である。
【0055】
また、複数の受光部23は、表示灯13の光を受光したときに、それらのいずれか1つ以上がその光の強度に応じた信号をプロセッサ21に出力すればよく、プロセッサ21は、複数の受光部23のうち、少なくともいずれかが出力した信号により示される試験情報に基づいて、感知器1が正常であるか否かを判定すればよい。
【0056】
図8は、表示灯13から受光部23までの距離を説明するための図である。複数の受光部23a、23b、23c(これらを区別しない場合、単に「受光部23」という)が表示灯13に対向して
図8の(a)に示す配置にあるとき、表示灯13と最も距離が近い受光部23は、これらのうち表示灯13の直下に配置されている受光部23bである。したがって、受光部23bが表示灯13から受光する光は、受光部23a、及び受光部23cよりも強い。この場合、複数の受光部23は、例えば、表示灯13から受光した光が最も強い受光部23bのみから、その光の強度に応じた信号をプロセッサ21に出力し、他の受光部23a,cから信号を出力しないものとしてもよいし、複数の受光部23の全てが信号をプロセッサ21に出力してもよい。また、
図8の(b)に示す通り、表示灯13の直下にはいずれの受光部23も配置されておらず、表示灯13から同じ距離だけ離れたところに受光部23a、23cがあるとする。このとき、表示灯13と最も距離が近い受光部23は、一つに定まらない。この場合にも、複数の受光部23は、例えば、表示灯13から光を受光した全ての受光部23のうち、最も強い光を受光した2以上の受光部23(上述の例では受光部23a,c)のみから、その光の強度に応じた信号をプロセッサ21に出力し、図示しない他の受光部23から信号を出力しないものとしてもよいし、複数の受光部23の全てが信号をプロセッサ21に出力してもよい。このように受光部23の位置は上記のパターンを含む各種のパターンが想定されるところ、複数の受光部23は、上述したいずれかの方法で信号を出力すればよい。
【0057】
また、受光部23は、試験器に設けられた表示灯に対向し得る領域内において所定間隔で配置されていなくてもよい。例えば、上述した実施形態における試験器2の収容部20は、共通軸を中心にして360度のどの角度に回転しても感知器1を収容することができる構成であったが、これに限らない。試験器2の内側には、共通軸を中心にした回転角度によって感知器1の一部と衝突する部材が配置されていてもよい。この場合、この部材が感知器1と衝突しないようにするために、試験器2が感知器1に対して取り得る回転角度の範囲は、360度より小さくてもよい。
【0058】
[試験器における窓の配置]
図9は、試験器2の収容部20で感知器1を覆った状態の例を示す図である。
図9には、感知器1を覆った状態の試験器2をyz平面に並行な面で切断した断面図が示されている。
図9に示す通り、受光部23は、表示灯13と対向し得るように配置されている。また、窓201は、受光部23よりも下方、つまり-z方向にある底面205に設けられている。
【0059】
図10は、受光部23の受光範囲の例を示す図である。受光部23は、例えば、上(つまり、+z方向)に向いた端面の中央に受光素子を配置している。例えば、この端面は-z方向に凹んでいるため、受光素子が受光可能な範囲(受光範囲という)は、範囲Rに限定される。この範囲Rは、例えば、少なくとも受光素子よりも下側を含まない。
【0060】
一方、窓201は、上述した受光素子を有する受光部23よりも下側、つまり、受光部23の受光範囲外に配置されている。この配置のため、窓201は、表示灯13の光を外部に透過させるが、外部から内部へ透過させる光を受光部23に到達させない。つまり、この窓201は、複数の受光部の受光範囲外に設けられている窓の例である。
【0061】
図11は、窓201の外観の例を示す図である。
図11に示す通り、窓201は、底面205に設けられている。これにより、作業者は、下から試験器2の収容部20を見ることで、窓201のうち、連結部24等に遮られていない箇所から漏れる光を確認することができる。
【0062】
[試験器の機能的構成]
図12は、試験器2の機能的構成の例を示す図である。試験器2のプロセッサ21は、メモリ22に記憶されたプログラムを実行することにより、取得部211、及び判定部212として機能する。また、プロセッサ21は、指示部213として機能してもよい。
【0063】
受光部23は、感知器1から表示灯13の光を受光する。つまり、この受光部23は、火災を感知し火災発報したときに点灯する表示灯を備えた感知器であって、監視モード時にセンサが対象を感知したとき表示灯を点灯させて感知器1が作動したことを表示するとともに、試験に関する情報であって自器の識別情報を含む試験情報を表示灯の光の点滅パターンにより伝送路符号化して送信する感知器から表示灯の光を受光する受光部の例である。
【0064】
そして、受光部23は、上述した光を受光すると、受光したこの光の点滅パターンに応じた信号を生成してプロセッサ21に供給する。この信号は、上述した伝送路符号化された信号であり、例えば、シリアル信号として供給される。
【0065】
取得部211は、受光部23が供給するシリアル信号を復号することにより上述した試験情報を取得する。つまり、この取得部211は、感知器1の試験に関する情報であって感知器1の識別情報を含む試験情報を受光部が受光した光の点滅パターンにより取得する取得部の例である。
【0066】
判定部212は、取得部211が取得した試験情報に基づいて感知器1が正常であるか否かを判定する。つまり、この判定部212は、取得部が取得した試験情報に基づいて感知器が正常であるか否かを判定する判定部の例である。
【0067】
ここで上述した通り、複数の受光部23のうち表示灯13の光を受光した受光部23は、そのうちの少なくともいずれか1つ以上のみがその光の強度に応じた信号をプロセッサ21に出力してもよい。この場合、取得部211は、複数の受光部23のうち少なくともいずれかが出力(供給)するシリアル信号を復号することにより試験情報を取得する。そして、判定部212は、取得したこの試験情報に基づいて感知器1が正常であるか否かを判定する。また、複数の受光部23は、全てが受光した光の強度に応じた信号をそれぞれプロセッサ21に出力してもよい。この場合、判定部212は、受光部23から出力される複数の信号に基づいて感知器が正常であるか否かを判定してもよいし、複数の信号からひとつを選択してその信号に基づいて感知器が正常であるか否かを判定してもよい。
【0068】
図12に示す供給部26は、上述した通り、感知器1に向けて試験用の煙を供給する。この供給部26は、例えば、
図1に示す支持棒25に設けられた操作子をユーザが操作すると、この操作に応じて煙を放出するとともに、その旨をプロセッサ21に報告する。判定部212は、この報告を受取ると、これをトリガとして、その時点から予め決められた応答のための期間(応答期間ともいう)が経過するまで、取得部211を監視する。
【0069】
判定部212は、取得部211の監視結果に基づいて、上述した応答期間ではない期間に受光部23が表示灯13の光を受光したことを確認すると、感知器1が正常でない、つまり、異常である、と判定する。
【0070】
一方、判定部212は、上述した応答期間内に受光部23が表示灯13の光を受光したことを確認し、かつ、他の条件が満たされたことを確認すると、感知器1が正常である、と判定する。上述の場合、判定部212は、供給部が煙を供給したときに受光部23が受光することを、感知器1を正常であると判定する条件としている。つまり、この判定部212は、供給部が煙を供給したときに受光部が表示灯の光を受光した場合に、感知器が正常であると判定する判定部の例である。他の条件としては、例えば、取得部211が取得した試験情報から抽出される、感知器の感度を示す感度情報に関する条件、感知器の試験情報に含まれる火災閾値で定められる情報であってもよい。
【0071】
また、供給部26、及び送信部28は、動作に応じた内容をプロセッサ21に報告し、判定部212は、この報告をトリガとして扱っていたが、これらの報告は、供給部26、又は送信部28へ動作を指示する指示部が行ってもよい。
【0072】
例えば、プロセッサ21は、
図12に示す破線で示す指示部213として機能してもよい。この指示部213は、供給部26に煙を放出するよう指示を出したときに、判定部212にその旨を報告してもよい。また、この指示部213は、送信部28に試験開始信号を送信するよう指示を出したときに、判定部212にその旨を報告してもよい。これらの報告を受取ったとき、判定部212は、これをトリガとして、その時点から予め決められた応答のための期間(応答期間ともいう)が経過するまで、取得部211を監視すればよい。
【0073】
本発明における感知器1は、複数種類の情報が含まれた試験情報122を伝送路符号化し、シリアル信号として順次、表示灯13の点滅によって表現、出力するので、受光部23を有する試験器2は、この試験情報122を取得することができる。その際、感知器1は、例えば、点灯を「1」、消灯を「0」とした伝送路符号によって、複数の値が含まれた試験情報122を伝達するため、試験器2は、感知器1が点灯の間隔に比例したスカラー値を伝達する場合に比べて、単位時間当たりにより多くの多様な情報を取得することができる。また、本発明における試験器2は、非接触の感知器1からの光を用いるので、感知器1を天井Cの取付面から外すことなく定期的な動作確認を行うことができ、試験作業を容易に行うことができる。
【0074】
[変形例]
上述の実施形態は本発明の一具体例であって、本発明の技術的思想の範囲内において様々に変形可能である。それらの変形の例は、以下の通りである。なお、以下に示す2以上の変形例が適宜組み合わされてもよい。
【0075】
(1)上述した実施形態において、センサ14は、火災を示す対象を感知するものであったが、感知器1は、他の対象を感知するセンサを有してもよい。例えば、センサ14は、試験器2が所定距離内に近接したことを感知する近接センサを含んでもよい。
【0076】
近接センサは、例えば、磁石、RFID(radio frequency identifier)、近距離無線通信(NFC:Near Field Communication)等を用いて、試験器2が所定距離内に近接したことを感知すればよい。また、この近接センサは、試験器2から伸びる部材と直接接触し、その接触面においてその部材から受けた力を検出することで、試験器2が所定距離内に近接したことを感知してもよい。
【0077】
(2)上述した実施形態において、感知器試験システム9において、感知器1には表示灯13が、試験器2には受信部15が、それぞれ設けられていたが、さらに、感知器1に受光部が、試験器2に発光部が設けられてもよい。この場合、感知器1の受光部は、試験器2の発光部が発する光を受光すればよい。さらに、試験器2の発光部は、光の点滅パターンにより感知器1に情報を送信してもよい。感知器1は、例えば、受光部により試験器2の発光部が発する光を受光したことをトリガとして、通信を開始してもよい。この変形例によれば、感知器1と試験器2とは、互いに光をやり取りすることで双方向通信をすることができる。
【0078】
(3)上述した実施形態において、試験器2は、共通軸を中心にして収容部20を360度のどの角度に回転しても感知器1を収容することができたが、収容部20を限られた角度で回転したときにのみ、感知器1を収容可能に構成されていてもよい。例えば、試験器2と感知器1とは、互いに接触するときに相互の位置が定まる位置決め部材を有していてもよい。試験器2は、この位置決め部材により相互の位置が定まったときにだけ、感知器1を収容可能に構成されていてもよい。試験器2の位置決め部材は、例えば、上述したリブ202でもよい。
【0079】
(4)上述した実施形態において、プロセッサ21は、CPUであったが、他の構成であってもよい。プロセッサ21は、少なくともいずれかが、例えば、FPGA(Field Programmable Gate Array)であってもよいし、FPGAを含んでもよい。また、プロセッサ21は、少なくともいずれかが、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、又は他のプログラマブル論理デバイスを有し、これらによって制御を行ってもよい。
【0080】
(5)上述した実施形態において、収容部20は、感知器1を覆うものであるが、感知器1のセンサ14は実施形態の煙を感知するものに限られず、バイメタルやサーミスタ等、熱を感知する熱感知器であってもよい。
【0081】
(6)上述した実施形態において、試験器2は、収容部20、及び受光部23を有していたが、これらを有しなくてもよい。この場合、試験器2は、上述した収容部20、及び受光部23を備えた機器をアタッチメントとして取り付けてもよい。この機器は、試験に関する試験情報を表示灯の光の点滅パターンにより伝送路符号化して送信する感知器を覆って収容する収容部と、収容部が感知器を覆ったときに、この収容部内において表示灯に対向し得る領域内に配置され、それぞれ受光した光の強さに応じた信号を出力する複数の受光部と、を有する感知器の試験用のアタッチメントの例である。
【符号の説明】
【0082】
1…感知器、10…筐体、122…試験情報、13…表示灯、14…センサ、15…受信部、2(2a、2b)…試験器、20…収容部、201…窓、202…リブ、203…ノズル受入口、204…周側面、205…底面、21…プロセッサ、22…メモリ、23(23a、23b、23c)…受光部、24…連結部、25…支持棒、26…供給部、U…感度試験ユニット、28…送信部、3…受信機、9…感知器試験システム。