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  • 特開-排水処理システム及び排水処理方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024006283
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】排水処理システム及び排水処理方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 3/12 20230101AFI20240110BHJP
   C02F 3/34 20230101ALI20240110BHJP
   B01D 33/29 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
C02F3/12 N
C02F3/12 H
C02F3/34 101A
B01D33/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022107024
(22)【出願日】2022-07-01
(71)【出願人】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】石川 公博
(72)【発明者】
【氏名】冨田 浩樹
(72)【発明者】
【氏名】安堂 豪
(72)【発明者】
【氏名】朝倉 善男
(72)【発明者】
【氏名】北川 義雄
【テーマコード(参考)】
4D028
4D040
4D116
【Fターム(参考)】
4D028AA08
4D028AB00
4D028BA00
4D028BB07
4D028BC17
4D028BD17
4D028CA01
4D028CB03
4D028CC00
4D040BB05
4D040BB14
4D040BB24
4D040BB54
4D040BB57
4D040BB65
4D040BB91
4D116BB12
4D116BC07
4D116BC62
4D116BC67
4D116BC70
4D116DD04
4D116EE02
4D116EE11
4D116GG21
4D116KK02
4D116QA45C
4D116QA45G
4D116QC12
4D116QC32A
4D116RR04
4D116RR14
4D116RR22
4D116RR26
4D116VV09
(57)【要約】
【課題】ランニングコストが低く、生物処理法の種類を問わず適用可能である排水処理システムを提供する。
【解決手段】排水処理システムは、並列に配置された複数の固液分離装置11A~11Cと、各固液分離装置11A~11Cの上段に夫々配置され、これらの固液分離装置11A~11Cに流通される有機性排水の量を調節可能な流量調節装置12A~12Cとを有する固液分離ユニット10と、固液分離ユニット10の下段に配置され、有機性排水を微生物によって生物処理する生物処理装置20と、を備え、複数の固液分離装置11A~11Cには、相対的に粗い目開きのスクリーンが設けられた第一の固液分離装置11Aと、相対的に細かい目開きのスクリーンが設けられた第二の固液分離装置11B、11Cとが含まれる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
並列に配置された複数の固液分離装置と、各前記固液分離装置の上段に夫々配置され、これらの固液分離装置に流通される有機性排水の量を調節可能な流量調節装置とを有する固液分離ユニットと、
前記固液分離ユニットの下段に配置され、有機性排水を微生物によって生物処理する生物処理装置と、を備え、
前記複数の固液分離装置には、相対的に粗い目開きのスクリーンが設けられた第一の固液分離装置と、相対的に細かい目開きのスクリーンが設けられた第二の固液分離装置とが含まれる、排水処理システム。
【請求項2】
前記生物処理装置において生物処理された有機性排水の水質に係る指標値を検出する水質センサと、
前記水質に基づいて前記流量調節装置を制御し、複数の前記固液分離装置に流通される有機性排水の配分を調節する制御装置と、をさらに備える、請求項1に記載の排水処理システム。
【請求項3】
前記指標値は、窒素濃度及びりん濃度の少なくとも一つであり、
前記制御装置は、前記指標値が所定の上限値を上回ったときに、前記第一の固液分離装置に流通される有機性排水の量を増加させる、請求項2に記載の排水処理システム。
【請求項4】
前記制御装置は、前記指標値が所定の下限値を下回ったときに、前記第二の固液分離装置に流通される有機性排水の量を増加させる、請求項3に記載の排水処理システム。
【請求項5】
前記固液分離装置は、ロータリーフィルタ方式の固液分離装置である、請求項1から4のいずれか一項に記載の排水処理システム。
【請求項6】
前記流量調節装置は可動堰である、請求項1から4のいずれか一項に記載の排水処理システム。
【請求項7】
相対的に粗い目開きのスクリーンが設けられた第一の固液分離装置と、相対的に細かい目開きのスクリーンが設けられた第二の固液分離装置とを含む、並列に配置された複数の固液分離装置に有機性排水を流通させる固液分離工程と、
複数の前記固液分離装置を通過した有機性排水を生物処理装置に流通させる生物処理工程と、
前記生物処理装置において生物処理された有機性排水の水質に基づいて、複数の前記固液分離装置に流通される有機性排水の配分を調節する配分調節工程とを、含む、排水処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は生物処理法により有機性排水を処理するシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
下水などの有機性排水の処理において、微生物の働きにより窒素やりんなどを除去する生物処理法が従来より採用されている。このような生物処理法では、微生物による処理の前に、排水中に含まれるゴミやし渣などの固形物をある程度除去しておくことが求められている。そのため、生物処理法を適用した排水処理システムは通常、微生物による処理を行う反応槽の前段に、排水から固形物を分離するための固液分離手段を備えている。
【0003】
例えば、窒素の除去を目的とする硝化脱窒法を適用した特許文献1に開示の排水処理システムでは、反応槽である脱窒槽、硝化槽の上段に、並列に配置された複数の最初沈殿池を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001-38389号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
生物処理法による窒素やりんなどの除去率は、反応槽に流通される有機性排水のBOD濃度(生物化学的酸素要求量)と、窒素濃度やりん濃度との比(BOD/N比又はBOD/P比)によって大きく影響されており、例えば、窒素を効率よく除去するには、BOD/N比を少なくとも3以上にする必要があるとされている。そのため、生物処理法を適用した排水処理システムでは、反応槽に流通される排水のBOD/N比やBOD/P比を適切な値に制御することが求められている。
【0006】
特許文献1に開示されているような排水処理システムの場合、反応槽に流通される排水のBOD/N比が適切な値でないときには、反応槽に水素供与体(例えばメタノール)を供給するか、又は、最初沈殿池をバイパスして有機性排水を反応槽に直接に流通させることにより、反応槽への有機物の流入量を増減させる対策が取られていた。
【0007】
しかしながら、反応槽に水素供与体を供給する手法は、ランニングコストの増加に繋がるという問題があった。また、最初沈殿池をバイパスさせる手法は、最終沈殿池の代わりに膜分離装置が採用された膜分離活性汚泥法の場合に膜分離装置を損傷させる虞があった。
【0008】
本発明は上記した実情に鑑みてなされたものであり、ランニングコストが低く、生物処理法の種類を問わず適用可能である排水処理システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の目的を達成するための本発明に係る排水処理システムは、並列に配置された複数の固液分離装置と各前記固液分離装置の上段に夫々配置されてこれらの固液分離装置に流通される有機性排水の量を調節可能な流量調節装置とを有する固液分離ユニットと、前記固液分離ユニットの下段に配置され、有機性排水を微生物によって生物処理する生物処理装置と、を備え、前記複数の固液分離装置には、相対的に粗い目開きのスクリーンが設けられた第一の固液分離装置と、相対的に細かい目開きのスクリーンが設けられた第二の固液分離装置とが含まれることを特徴とする。
【0010】
上記排水処理システムにおいて、相対的に粗い目開きのスクリーンが設けられた第一の固液分離装置を通過した有機性排水は、相対的に細かい目開きのスクリーンが設けられた第二の固液分離装置を通過した有機性排水よりも有機物を多く含むことになる。したがって、固液分離ユニットに含まれる複数の固液分離装置に流通される有機性排水の配分を、流量調節装置によって調節すれば、生物処理装置への有機物の流入量を調節することが可能になる。例えば、生物処理装置への有機物の流入量を増加させる必要があるときには、第一の固液分離装置に流通される有機性排水の量を増加させればよく、反対に、生物処理装置への有機物の流入量を減少させる必要があるときには、第二の固液分離装置に流通される有機性排水の量を増加させればよい。
【0011】
また、上記構成によれば、生物処理装置への有機物の流入量の調節は、固液分離装置に流通される有機性排水の配分を調節するだけで実現できるので、ランニングコストが低く抑えられる。そして、上記構成によれば、排水処理システムに膜分離活性汚泥法を適用する場合には、一定の大きさ以上の固形物を固液分離装置において除去しておくことが可能であり、膜分離装置が損傷する虞はないので、膜分離活性汚泥法を問題なく適用することができる。
【0012】
本発明に係る排水処理システムにおいて、前記生物処理装置において生物処理された有機性排水の水質に係る指標値を検出する水質センサと、前記水質に基づいて前記流量調節装置を制御し、複数の前記固液分離装置に流通される有機性排水の配分を調節する制御装置と、をさらに備えると好適である。
【0013】
前述したように、生物処理装置への有機物の流入量が適切でなければ、処理後の有機性排水(以降、処理水と称することがある)の水質が悪化することがある。上記構成によれば、処理水の水質に係る指標値をモニタリングし、水質が悪化したことに応じて生物処理装置への有機物の流入量を増減させることができるので、水質の改善を図ることが可能となる。
【0014】
本発明に係る排水処理システムにおいて、前記指標値は、窒素濃度及びりん濃度の少なくとも一つであり、前記制御装置は、前記指標値が所定の上限値を上回ったときに、前記第一の固液分離装置に流通される有機性排水の量を増加させると好適である。
【0015】
窒素やりんなどの除去を目的とする排水処理システムの場合、窒素やりんなどの負荷量に対して生物処理装置への有機物の流入量が不足すると、生物処理による窒素やりんなどの除去率が低下し、その結果、処理水の窒素濃度やりん濃度が上昇することになる。つまり、生物処理装置への有機物の流入量が不足しているかは、処理水の窒素濃度やりん濃度に基づいて判断することができ、処理水の窒素濃度やりん濃度が高くなっていることは、生物処理装置への有機物の流入量が不足していることを意味する。そこで、上記構成によれば、水質センサによって検出された処理水の窒素濃度やりん濃度が予め設定可能な上限値を上回ったことに応じて生物処理装置への有機物の流入量を増加させる制御を行うことができ、これにより、生物処理による窒素やりんなどの除去率が上昇するので、処理水の窒素濃度やりん濃度を上限値以下に低下させることが可能となる。
【0016】
本発明に係る排水処理システムにおいて、前記制御装置は、前記指標値が所定の下限値を下回ったときに、前記第二の固液分離装置に流通される有機性排水の量を増加させると好適である。
【0017】
窒素やりんなどの除去を目的とする排水処理システムの場合、生物処理装置への有機物の流入量が増加すると、生物処理による窒素やりんなどの除去率が上昇し、処理水の窒素濃度やりん濃度が低下するので良いのであるが、その一方、生物処理装置への有機物の流入量が過剰になると、生物処理におけるBOD負荷も過剰となるので、過剰なBODを酸化分解させるためには多くの空気を吹き込む必要があり、ランニングコストの増加に繋がる。そこで、上記構成によれば、水質センサによって検出された処理水の窒素濃度やりん濃度が予め設定可能な下限値を下回ったことに応じて生物処理装置への有機物の流入量を減少させる制御を行うことができ、これにより、生物処理装置への有機物の流入量が過剰になることを回避することができる。
【0018】
本発明に係る排水処理システムにおいて、前記固液分離装置は、ロータリーフィルタ方式の固液分離装置であると好適である。
【0019】
ロータリーフィルタ方式の固液分離装置は、従来の沈殿池よりも小型でありながら同等乃至それ以上の処理水量を実現可能であるので、上記構成によれば、排水処理システムの設置に必要なスペースの節約が可能になる。
【0020】
本発明に係る排水処理システムにおいて、前記流量調節装置は可動堰であると好適である。
【0021】
上記構成によれば、固液分離装置に流通される有機性排水の量を可動堰によって自在に調節可能である。
【0022】
上述の目的を達成するための本発明に係る排水処理方法は、相対的に粗い目開きのスクリーンが設けられた第一の固液分離装置と、相対的に細かい目開きのスクリーンが設けられた第二の固液分離装置とを含む、並列に配置された複数の固液分離装置に有機性排水を流通させる固液分離工程と、複数の前記固液分離装置を通過した有機性排水を生物処理装置に流通させる生物処理工程と、前記生物処理装置において生物処理された有機性排水の水質に基づいて、複数の前記固液分離装置に流通される有機性排水の配分を調節する配分調節工程とを、含むことを特徴とする。
【0023】
固液分離工程において、相対的に粗い目開きのスクリーンが設けられた第一の固液分離装置を通過した有機性排水は、相対的に細かい目開きのスクリーンが設けられた第二の固液分離装置を通過した有機性排水よりも有機物を多く含むことになる。したがって、上記構成によれば、固液分離ユニットに含まれる複数の固液分離装置に流通される有機性排水の配分を調節することで、生物処理装置への有機物の流入量を調節することが可能になる。また、上記構成によれば、生物処理装置への有機物の流入量の調節は、固液分離装置に流通される有機性排水の配分を調節するだけで実現できるので、ランニングコストが低く抑えられる。そして、上記構成によれば、排水処理方法を実行する排水処理システムに膜分離活性汚泥法を適用する場合には、一定の大きさ以上の固形物を固液分離装置において除去しておくことが可能であり、膜分離装置が損傷する虞はないので、膜分離活性汚泥法を問題なく適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明に係る排水処理システムの概略構成を示すブロック図である。
図2】排水処理システムにおける固液分離装置及び生物処理装置の具体的な構成を示す図である。
図3】処理水の窒素濃度に基づく生物処理装置への有機物の流入量の調節を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、下水などの有機性排水に含まれる窒素の除去を目的とする硝化脱窒法を適用した排水処理システムを例にして、本発明に係る排水処理システム及びこれを用いた排水処理方法の実施形態について説明する。但し、本発明に係る排水処理システムは、硝化脱窒法に限らず、有機性排水を生物処理する生物処理法であれば適用可能である。
【0026】
<排水処理システムの構成>
例えば、図1に示すように、排水処理システムは、図示しない沈砂池を通過した有機性排水からゴミやし渣などの固形物を分離するための固液分離ユニット10と、固液分離ユニット10によって固形物を分離された有機性排水を生物処理する生物処理装置20と、生物処理装置20によって生物処理された有機性排水の水質に係る指標値を検出する水質センサ30と、水質センサ30の検出結果に基づいて固液分離ユニット10を制御する制御装置40とを備える。なお、以下の説明では、固液分離ユニット10へ流通される有機性排水を被処理水W1と呼ぶことがあり、固液分離ユニット10によって固形物を分離された有機性排水を分離水W2と呼ぶことがあり、生物処理装置20によって生物処理された有機性排水を処理水W3と呼ぶことがある。
【0027】
〔固液分離ユニット〕
固液分離ユニット10には、並列に配置された複数の、本実施形態においては第一~第三の固液分離装置11A~11Cが含まれている。固液分離装置11A~11Cの各々には、目開きが0.1~2.0mmのスクリーンが設けられている。そのうち、第一の固液分離装置11Aに設けられたスクリーンは、相対的に粗い目開き、例えば0.7mmのものであるのに対し、第二及び第三の固液分離装置11B、11Cに設けられたスクリーンは、相対的に細かい目開き、例えば0.3mmのものである。なお、上記目開きは例示であり、本発明の排水処理システムにおいて使用できるスクリーンはこれに限定されない。
【0028】
例えば、図2に示すように、本実施形態において、第一~第三の固液分離装置11A~11Cは、ロータリーフィルタ方式のものを使用している。図2においては、便宜上、第一の固液分離装置11Aのみを示しているが、第二及び第三の固液分離装置11B、11Cは、スクリーンの目開きが異なる点を除き、第一の固液分離装置11Aと同一の構造を有しているので説明を省略する。また、図2に示す固液分離装置11Aは、ロータリーフィルタ方式の一例であり、この例示以外のロータリーフィルタ方式であってもよい。
【0029】
第一の固液分離装置11Aは、スクリーンとしてのパネルフィルタが無端帯状に連結されたフィルタユニット111と、フィルタユニット111の各パネルフィルタを移動させるための複数のローター112とを有する。フィルタユニット111は、第一の固液分離装置11Aに流入した被処理水W1の流路を横切る態様で斜めに傾倒して配置されている。ローター112の回転により、被処理水W1が流入する一次側においてパネルフィルタが下方から上方に移動し、これにより、固形物がパネルフィルタによって捕捉されて被処理水W1から分離される。フィルタユニット111のパネルフィルタに付着している固形物は、パネルフィルタの表側から固形物を掻き落とすスクレーパー113と、パネルフィルタの裏側から洗浄水を吹き付けて固形物を剥離させるスプレー114とによって除去される。一方、フィルタユニット111を通過した分離水W2は、第一の固液分離装置11Aから流出し、第二及び第三の固液分離装置11B、11Cからの分離水W2と合流して生物処理装置20へ流通される。
【0030】
フィルタユニット111のパネルフィルタすなわちスクリーンは交換可能であり、被処理水W1の性状又は目標とする除去率に応じて、適切な目開きのスクリーンを使用し得る。
【0031】
固液分離ユニット10には、更に、各固液分離装置11A~11Cの上段に夫々配置された流量調節装置としての可動堰12A~12Cが含まれている。可動堰12A~12Cは、開閉可能な門扉(ゲート)と、門扉を開閉させる駆動機構とを有するものであり、公知の引上堰又は起伏堰などを使用し得る。固液分離装置11A~11Cの各々に流通される被処理水W1の量は、可動堰12A~12Cの門扉の開閉動作を制御することにより調節可能である。
【0032】
〔生物処理装置〕
例えば、図2に示すように、生物処理装置20は、無酸素槽21と、分離膜23が設けられた好気槽22と、を有する循環式硝化脱窒型の膜分離活性汚泥処理装置である。好気槽22においては、生物処理装置20に流入した分離水W2中のアンモニア性窒素が硝化菌によって硝化されて硝酸性窒素に変換される。この硝酸性窒素は活性汚泥混合液として無酸素槽21に循環される。無酸素槽21においては、硝酸性窒素が脱窒菌によって脱窒されて窒素ガスに変換され、大気中に排出される。分離膜23においては、窒素濃度が低下した活性汚泥混合液が膜ろ過される。このようにして、生物処理装置20から、窒素濃度が低下した処理水W3が排出される。排出された処理水W3は、再利用されるか、河川等に放流される。
【0033】
〔水質センサ〕
水質センサ30は、生物処理装置20から排出された処理水W3の水質に係る指標値として、少なくとも窒素濃度を検出する。水質センサ30は、検出された窒素濃度を信号として制御装置40に送信する。
【0034】
〔制御装置〕
制御装置40は、水質センサ30から受信した信号に基づいて、可動堰12A~12Cの門扉の開閉動作を制御するための信号を生成し、可動堰12A~12Cの駆動機構に信号を送信する。
【0035】
<排水処理方法の第一の実施形態>
本発明に係る排水処理方法は、固液分離工程と、生物処理工程と、配分調節工程とを、含む。
【0036】
固液分離工程は、沈砂池を通過した被処理水W1を第一~第三の固液分離装置11A~11Cに流通させ、被処理水W1からゴミやし渣などの固形物を分離する工程である。
【0037】
生物処理工程は、第一~第三の固液分離装置11A~11Cを通過した分離水W2を生物処理装置20に流通させ、生物処理によって分離水W2から窒素を除去する工程である。
【0038】
配分調節工程は、制御装置40が、生物処理装置20において生物処理された処理水W3の水質に基づいて、第一~第三の固液分離装置11A~11Cに流通される被処理水W1の配分を調節する工程である。
【0039】
生物処理装置20による窒素の除去率は、生物処理装置20に流入される分離水W2の性状、特にBOD/N比に応じて変化するので、分離水W2のBOD/N比が安定しない場合、生物処理装置20から排出される処理水W3の窒素濃度も安定しない。ところで、生物処理装置20から排出される処理水W3は通常、再利用時の用途又は放流先に応じて窒素濃度の許容限度値が決められている。そのため、処理水W3の窒素濃度が許容限度値を超えないように、生物処理装置20に流入される分離水W2のBOD/N比を調節する必要がある。
【0040】
そこで、配分調節工程において、制御装置40は、図3に示すように、水質センサ30によって検出された処理水W3の窒素濃度と、許容限度値よりも低く設定された上限値との比較を所定の時間間隔で実行する。そして、処理水W3の窒素濃度が上限値を上回ったとき(t1)に、制御装置40は、可動堰12A~12Cの門扉の開閉具合を制御することにより、第一の固液分離装置11Aに分配される被処理水W1の量が増加するように、第一~第三の固液分離装置11A~11Cに流通される被処理水W1の配分を調節する。換言すれば、制御装置40は、第一の固液分離装置11Aに流通される被処理水W1を所定量増加させると共に、その分だけ、第二、第三の固液分離装置11B、11Cに流通される被処理水W1の合計量を減少させる。
【0041】
第二、第三の固液分離装置11B、11Cよりも固形物の除去率が低い第一の固液分離装置11Aに流通される被処理水W1の量が増加すると、第一~第三の固液分離装置11A~11Cを通過して生物処理装置20へ送られる全体の分離水W2は、固形物由来の有機物量が増加することにより、BOD/N比が上昇する。その結果、生物処理による窒素の除去率が上昇し、生物処理装置20から排出される処理水W3の窒素濃度がやがて低下し始める。制御装置40は、処理水W3の窒素濃度が上限値以下となるまで、第一の固液分離装置11Aに流通される被処理水W1を増加させる制御を行う。これにより、許容限度値を超えた窒素濃度の処理水W3の排出が回避される。
【0042】
一方、生物処理装置20への有機物の流入量が増加すると、生物反応において消費される酸素を補うために好気槽22へより多くの空気を吹き込む必要があり、これはランニングコストの増加に繋がる。そこで、配分調節工程において、制御装置40は、水質センサ30によって検出された処理水W3の窒素濃度と、上限値よりも低く設定された下限値との比較を所定の時間間隔で実行する。そして、処理水W3の窒素濃度が下限値を下回ったとき(t2)に、制御装置40は、可動堰12A~12Cの門扉の開閉具合を制御することにより、第二、第三の固液分離装置11B、11Cに分配される被処理水W1の量が増加するように、第一~第三の固液分離装置11A~11Cに流通される被処理水W1の配分を調節する。換言すれば、制御装置40は、第二、第三の固液分離装置11B、11Cに流通される被処理水W1の合計量を所定量増加させると共に、その分だけ、第一の固液分離装置11Aに流通される被処理水W1の量を減少させる。
【0043】
第一の固液分離装置11Aよりも固形物の除去率が高い第二、第三の固液分離装置11B、11Cに流通される被処理水W1の量が増加すると、第一~第三の固液分離装置11A~11Cを通過して生物処理装置20へ送られる全体の分離水W2は、固形物由来の有機物量が減少することにより、BOD/N比が低下する。その結果、生物処理による窒素の除去率が低下し、生物処理装置20から排出される処理水W3の窒素濃度がやがて上昇し始める。制御装置40は、処理水W3の窒素濃度が下限値以上となるまで、第二、第三の固液分離装置11B、11Cに流通される被処理水W1を増加させる制御を行う。これにより、生物処理装置への有機物の流入量が過剰になることが回避され、ランニングコストが低減する。
【0044】
なお、処理水W3の窒素濃度は、下限値以上となった後にも、生物処理装置20への有機物の流入量の減少に伴って上昇し続けることがあるが、窒素濃度が上限値を上回ったときには、前述したように生物処理装置20への有機物の流入量を増加させる制御が再び行われる。
【0045】
<その他の実施形態>
(1)前述した実施形態の排水処理システムにおいて、相対的に粗い目開きのスクリーンを有する固液分離装置が一つ(第一の固液分離装置11A)備えられているのに対し、相対的に粗い目開きのスクリーンを有する固液分離装置が二つ(第二及び第三の固液分離装置11B、11C)備えられている。しかしながら、固液分離装置の数はこれに限定されず、相対的に粗い目開きのスクリーンを有する固液分離装置及び相対的に粗い目開きのスクリーンを有する固液分離装置は、単数であってもよく複数であってもよい。相対的に粗い目開きのスクリーンを有する固液分離装置及び相対的に細かい目開きのスクリーンを有する固液分離装置が夫々複数備えられる場合、生物処理装置への有機物の流入量をより細かく調節することが可能になる。
【0046】
(2)前述した実施形態の排水処理システムにおいて、目開きが互いに異なる二種類のスクリーンが使用されている。しかしながら、スクリーンの種類はこれに限定されず、目開きが互いに異なる三種類以上のスクリーン、例えば目開きが0.3mm、0.5mm、0.7mmであるスクリーンを使用してもよい。目開きが互いに異なるスクリーンが三種類以上使用される場合、生物処理装置への有機物の流入量をより細かく調節することが可能になる。
【0047】
(3)前述したロータリーフィルタ方式の固液分離装置11A~11Cにおいて、ローター112の回転数が上昇して無端帯状のフィルタユニット111の回転速度が上昇すると、パネルフィルタによって捕捉されてスクレーパー113やスプレー114によって除去される単位時間当たりの固形物量が増える。すなわち、前述したロータリーフィルタ方式の固液分離装置11A~11Cであれば、ローター112の回転数を調節することによって有機物の除去率を調節することが可能である。前述した実施形態の排水処理システム及び排水処理方法では、複数の固液分離装置11A~11Cに流通される有機性排水の配分を調節することによって生物処理装置への有機物の流入量を調節しているが、本発明はこれに限定されず、有機性排水の配分に加えてローター112の回転数を調節するようにしてもよい。この場合、生物処理装置20への有機物の流入量をより細かく調節することが可能になる。更に、ロータリーフィルタ方式の固液分離装置は、その構造によっては、ローターの回転数の増減に応じて、処理能力(すなわち単位時間当たりに固液分離装置を流通する処理水の流量)が増減することがある。このような固液分離装置を採用した排水処理システムであれば、可動堰などの流量調節装置に対する制御の代わりに又はそれに加えて、ローターの回転数に対する制御を行うことによって、各固液分離装置を流通する被処理水の配分を調節することもできる。
【0048】
(4)前述した実施形態の排水処理システムでは、固液分離装置としてロータリーフィルタ方式のものが使用されている。しかしながら、固液分離装置の種類はこれに限定されず、スクリーンを用いて固形物を分離する構成のものであればよく、例えばドラムスクリーン方式やバースクリーン方式のものであってもよい。
【0049】
(5)前述した実施形態の排水処理システムでは、流量調節装置として可動堰が使用されている。しかしながら、流量調節装置の種類はこれに限定されず、例えばバルブやポンプなど又はこれらの組み合わせであってもよい。
【0050】
(6)前述した実施形態では、生物処理装置として窒素の除去を目的とするものが使用されている。しかしながら、生物処理装置の種類はこれに限定されず、りんの除去、又は窒素及びりんの両方の除去を目的とするものであってもよい。この場合、制御装置は、水質センサによって検出された窒素濃度とりん濃度のいずれか一方又は両方が限界値を超えたことに応じて、固液分離装置に流通される有機性排水の配分を調節する。
【0051】
(7)雨天時の集中降水などにより、排水処理場に流入される有機性排水が一時的に増水した場合、従来の排水処理システムでは、固液分離装置の処理能力を超えた分の有機性排水を生物処理装置へバイパスさせるか直接河川等に放流するなどの対策を取っていた。しかし、生物処理装置へバイパスさせる場合には、膜分離活性汚泥処理装置が採用された場合に損傷をもたらす虞があり、また、直接河川等に放流する場合には、放流先の水質が低下する問題があった。これに対し、本発明に係る排水処理システムにおいて、相対的に粗い目開きのスクリーンが設けられた固液分離装置は、固形物の除去率が低い分、高い処理水量を実現できるので、増水時の非常運転として、当該固液分離装置に流通される有機性排水の量を増加させるようにしてもよい。これにより、固液分離処理されずに生物処理装置へバイパスされるか直接河川等に放流される有機性排水を生じさせない、又は少なくとも減少させることができるので、膜分離活性汚泥処理装置が損傷する虞又は放流先の水質の低下を回避又は軽減することが可能となる。
【符号の説明】
【0052】
10 :固液分離ユニット
11A :第一の固液分離装置
11B :第二の固液分離装置
11C :第三の固液分離装置
12A :可動堰
12B :可動堰
12C :可動堰
20 :生物処理装置
21 :無酸素槽
22 :好気槽
23 :分離膜
30 :水質センサ
40 :制御装置
111 :フィルタユニット
112 :ローター
113 :スクレーパー
114 :スプレー
W1 :被処理水
W2 :分離水
W3 :処理水
図1
図2
図3