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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024062831
(43)【公開日】2024-05-10
(54)【発明の名称】廃棄物処理方法
(51)【国際特許分類】
   B09B 3/40 20220101AFI20240501BHJP
   F23G 5/027 20060101ALI20240501BHJP
   F23G 7/06 20060101ALI20240501BHJP
【FI】
B09B3/40
F23G5/027 A
F23G7/06 104
F23G7/06 103
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022170931
(22)【出願日】2022-10-25
(71)【出願人】
【識別番号】399049981
【氏名又は名称】株式会社オメガ
(72)【発明者】
【氏名】中村 信一
【テーマコード(参考)】
3K078
3K161
4D004
【Fターム(参考)】
3K078AA04
3K078BA02
3K078EA04
3K078EA06
3K161AA04
3K161AA13
3K161CA03
3K161EA36
3K161EA44
3K161EA45
3K161GA12
3K161GA21
3K161GA22
3K161LA17
3K161LA41
3K161LA42
4D004AA11
4D004AA22
4D004AA23
4D004BA03
4D004BA06
4D004CA27
4D004CB31
(57)【要約】
【課題】均質な処理を行うことができる廃棄物処理方法を提供しようとするもの。
【解決手段】真球状の剛性加熱媒体を複数個貯留して昇温させ、昇温した前記剛性加熱媒体から廃棄物に放熱させて熱分解させるようにした。真球状の剛性加熱媒体を複数個貯留して昇温させるようにしたので、真球状の剛性加熱媒体は均等に吸熱して昇温されることとなりまた各真球状の剛性加熱媒体は熱(遠赤外線等)を全方位に均等に放熱(放射)することができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
真球状の剛性加熱媒体を複数個貯留して昇温させ、昇温した前記剛性加熱媒体から廃棄物に放熱させて熱分解させるようにしたことを特徴とする廃棄物処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、均質な処理を行うことができる廃棄物処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ゴム等の廃棄物を燃焼し熱を回収するリサイクルシステムに関する提案があった(特許文献1)。
すなわち、タイヤを含めたゴム製品等の廃棄に大きな問題となっていた。タイヤを含む自動車部品の処分は環境汚染などの観点により、粗大ごみで捨てることができず、廃棄物処理法で適正処理困難物に指定されており、適切な方法で処分する必要があった。
この従来提案は、ゴムの廃棄物を焼却することで発生した熱を回収し、その熱によって蒸気を発生させる蒸気発生装置と、前記蒸気を熱プレス成型機まで運ぶ蒸気搬送経路と、前記ゴムの廃棄物又はゴムの原料を型に供給し、前記蒸気の熱を利用して熱プレスによってゴムの成形品を形成する熱プレス成型機と、を備えたこととし、廃棄物を燃焼させ、廃棄物の燃焼から生成した熱をゴムの成形品を成形する際に利用することによって、熱を有効に活用することが可能である、というものである。
これに対し、均質な処理を行うことができる廃棄物処理方法に対する要望があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第7050258号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこでこの発明は、均質な処理を行うことができる廃棄物処理方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するためこの発明では次のような技術的手段を講じている。
この発明の廃棄物処理方法は、真球状の剛性加熱媒体を複数個貯留して昇温させ、昇温した前記剛性加熱媒体から廃棄物に放熱させて熱分解させるようにしたことを特徴とする。
【0006】
この廃棄物処理方法は、真球状(できるだけ真球に近いもの)の剛性加熱媒体(例えばφ11mm程度の鉄球)を複数個(例えば500個)貯留して昇温(例えば約650℃)させるようにしたので(例えば誘導加熱やLNG加熱)、真球状の剛性加熱媒体は均等に吸熱して昇温されることとなりまた各真球状の剛性加熱媒体は熱(遠赤外線等)を全方位に均等に放熱(放射)することができる。
そして、昇温した前記剛性加熱媒体(攪拌することもできる)から廃棄物(例えば廃プラスチックや廃液)に放熱させて熱分解(有機物は結合が分断された炭化水素にする)させるようにしたので、昇温した真球状の剛性加熱媒体が熱源として機能して熱を全方位に均等に放熱し廃棄物に万遍なく熱を及ぼして熱分解することができる。
【0007】
ここで、前記廃棄物として、廃タイヤ、廃プラスチック類、廃ソーラーパネル、廃家電製品、排水、(高濃度)廃液、排ガスなどを例示することができる。廃タイヤ、廃プラスチック類、廃ソーラーパネル当を熱分解して、気化ガス(熱分解した炭化水素ガス等)や溶融物(アルミニウムなどの金属等)を回収して再資源化することができる。
熱分解した廃棄物の溶融成分を、融点の温度差や比重差によって成分毎に分取することができる。また、熱分解した廃棄物の気化(揮発)成分を回収(液化、固化)して、再利用することができる。
【0008】
剛性加熱媒体の加熱手段として、LNGバーナー、誘導加熱(IH)を例示することができる。処理の態様として、真球状の剛性加熱媒体中に廃棄物を埋没(ジャブ漬け)させることを例示することができる。
真球状の剛性加熱媒体として、鉄球(例えば直径φ8-11mm、比重 約7.8程度)、鋼球、Si-C球やセラミックス球(例えば直径φ4-8mm、比重約3.5程度)、ベアリングなどを例示することができる。剛性加熱媒体の材質として、クロムなどを含むステンレスより、混じりけや成分ムラのない純鉄が分子の偏在がなく好ましい。外表面に、クロムメッキなどの耐酸化性処理が施してあってもよい。
【0009】
前記鉄球(例えば直径φ8-11mm、比重 約7.8程度)、鋼球、Si-C球やセラミックス球(例えば直径φ4-8mm、比重約3.5程度)、ベアリングを混合して使用してもよい。
前記真球状の剛性加熱媒体の表面積(S=4πr2)の全体が、処理対象の廃棄物に対して熱を放出する加熱面積となる。
【0010】
熱分解処理は、窒素ガス置換下で行うことができる。これにより、有機物の熱分解成分のCO2(地球温暖化ガス)化を回避することができ、熱分解した炭化水素ガス(メタン等)を回収して燃料として利用することができる。
熱分解した排ガスは、電解スクラバー槽に通し、含有成分・有害成分は電解水で浄化してから排出することができる。スクラバー水の電気分解は、食塩やオゾンの共存下で行うことができる。食塩の共存下で行った場合はスクラバー水中に電解次亜塩素酸(HOCl)が生成し、オゾンの共存下で行った場合はスクラバー水中に酸素ラジカル(・O)が生成することとなる。
【0011】
真球状の剛性加熱媒体(例えば直径φ8-11mm程度の鉄球)は、約20段程度に積層(連続ヒーターとして機能する)して使用することができる。この下層領域に液体状の廃棄物(排水、廃液など)を供給すると剛性加熱媒体の外表面に広がって加熱処理されることとなり、液状の加熱媒体(例えば加熱した溶融金属など)を使用した場合のような突沸(液中での液体から気体への急激な膨張)を回避して処理することができる。
そして、剛性加熱媒体を積層する段数、全体的な高さにより、廃棄物の加熱滞留時間を制御することができる。
【0012】
真球状の剛性加熱媒体を用いると、加熱媒体として液状の加熱媒体(加熱した溶融金属など)を使用した場合よりも、熱処理後の炭化物、熱分解残渣物の分離・取り出しの際の離形性がよいという利点がある。液状の加熱媒体の場合、炭化物や熱分解残渣物が絡まったり固着したりすることがあるからである。
真球状の剛性加熱媒体を昇温する温度として、約450℃~950℃を例示することができる。約900℃以上に昇温して、出てきた排ガスを急速に200℃以下に冷却するとダイオキシンの生成を回避することができる。
【発明の効果】
【0013】
この発明は上述のような構成であり、次の効果を有する。
廃棄物に万遍なく熱を及ぼして熱分解することができるので、均質な処理を行うことができる廃棄物処理方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、この発明の実施の形態を説明する。
(実施形態1)
この実施形態の廃棄物処理方法は、真球状の剛性加熱媒体(直径φ11mmの鋼鉄球)を複数個(約500個)貯留して昇温(約650℃)させた。そして、昇温した前記剛性加熱媒体(直径φ11mmの鋼鉄球)から廃棄物(廃プラスチック)に放熱させて熱分解させた。剛性加熱媒体の加熱手段として、誘導加熱(IH)を用いた。
【0015】
具体的には、真球状の剛性加熱媒体として、外表面にクロムメッキがされた鋼鉄球(直径φ11mm、比重 約7.8)を約500個使用した。鋼鉄球(直径φ11mm)1個の表面積は380mm2で500個の全表面積は1,900cm2となり、この全表面積から廃棄物へと均等に放熱した。
そして、熱分解した排ガス(有機物の結合が分断された炭化水素)は電解スクラバー槽に通し、含有成分・有害成分は電解水で浄化してから排出した。スクラバー水の電気分解(5A/dm2)は食塩の共存下で行い、スクラバー水中に電解次亜塩素酸(HOCl)が生成した。
【0016】
次に、この実施形態の廃棄物処理方法の使用状態を説明する。
この廃棄物処理方法は、真球状の剛性加熱媒体(直径φ11mmの鋼鉄球)を複数個(約500個)貯留して昇温させるようにしたので、真球状の剛性加熱媒体は均等に吸熱して昇温されることとなりまた各真球状の剛性加熱媒体は熱(遠赤外線等)を全方位に均等に放熱(放射)することができた。
【0017】
そして、昇温した前記剛性加熱媒体(全表面積1,900cm2)から廃棄物に放熱させて熱分解させるようにしたので、昇温した真球状の剛性加熱媒体が熱源として機能して熱を全方位に均等に放熱し廃棄物に万遍なく熱を及ぼして熱分解することができ、均質な処理を行うことができた。
【0018】
また、真球状の剛性加熱媒体(直径φ11mmの鋼鉄球)を用いたので、加熱媒体として液状の加熱媒体(加熱した溶融金属)を使用した場合よりも、熱処理後の炭化物、熱分解残渣物の分離・取り出しの際の離形性がよかった。
【0019】
(実施形態2)
上記実施形態との相違点を中心に説明する。
真球状の剛性加熱媒体(直径φ11mmの鋼鉄球)を複数個(500個を一段に敷き詰めた、高さ11mm)貯留して昇温させ(約300℃)、昇温した前記剛性加熱媒体から廃棄物(廃液)に放熱させて熱分解させるようにした。
廃棄物として、pH1.4、全窒素5,559ppm(アンモニア648ppm、亜硝酸11ppm、硝酸4,900ppm)、導電度157,400μs/cm、硫酸イオン40,200ppm、鉄13,100ppm、ss19ppmの窒素含有廃液を処理した。
【0020】
誘導加熱(IH)により剛性加熱媒体を約300℃に昇温すると、硫黄系の強烈な臭いが発生し、10分程度加熱を続けると水分がほぼ蒸発(排ガスは電解スクラバーに導いて浄化処理を行った)して熱分解残渣物が残った。
熱分解残渣物に新たに水300ccを添加して、同様に約300℃に昇温すると、殆ど臭いはすることなく10分程度で全量蒸発した。こうして、熱分解残渣物への付着物を洗浄した。
窒素含有廃液300ccについて最初の約10分と、添加した水300ccについて追加の約10分の合計約20分で処理することができた。そして、最終55gの黒色の熱分解残渣物が得られた。
【0021】
(実施形態3)
上記実施形態との相違点を中心に説明する。
真球状の剛性加熱媒体(直径φ11mmの鋼鉄球)を複数個(1,500個を三段に敷き詰めた、高さ20-30mm)貯留して昇温させ(約900℃)、昇温した前記剛性加熱媒体から排ガス(排水を処理した排ガス)に放熱させて熱分解させるようにした。
誘導加熱(IH)により剛性加熱媒体を約900℃に昇温すると、各鋼鉄球が赤熱し、ここに排ガスを通過させて炭化水素を燃焼(熱分解の一態様とする)させ(脱臭ができた)、次いで200℃以下に急冷した。これにより排ガス中の有機成分はCO2化されると共に、ダイオキシンは発生しないような処理を行うことができた。
【産業上の利用可能性】
【0022】
均質な処理を行うことができることによって、種々の廃棄物処理方法の用途に適用することができる。