(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024006284
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】フィードバック制御の方法、フィードバック制御のためのプログラム、およびフィルタシステム
(51)【国際特許分類】
B01D 37/04 20060101AFI20240110BHJP
B01D 33/04 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
B01D37/04
B01D33/04 A
B01D33/04 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022107025
(22)【出願日】2022-07-01
(71)【出願人】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】冨田 浩樹
(72)【発明者】
【氏名】石川 公博
(72)【発明者】
【氏名】朝倉 善男
(72)【発明者】
【氏名】安堂 豪
(72)【発明者】
【氏名】北川 義雄
【テーマコード(参考)】
4D116
【Fターム(参考)】
4D116BB11
4D116BC62
4D116BC66
4D116BC67
4D116BC70
4D116DD04
4D116FF11B
4D116GG21
4D116KK02
4D116QC06
4D116QC07
4D116QC08A
4D116QC09
4D116QC39
4D116QC52
4D116RR01
4D116RR05
4D116RR14
4D116RR21
4D116RR22
4D116RR26
4D116VV09
(57)【要約】
【課題】処理能力が異なる運転条件に移行する必要がある場合においても、装置に負荷を与えにくいロータリーフィルタ装置の制御を実現する。
【解決手段】ローターの回転により移動可能な無端帯状フィルタが設けられたロータリーフィルタ装置のフィードバック制御の方法であって、フィードバック制御のパラメータセットとして、第一のパラメータセットと、第二のパラメータセットがあらかじめ設定され、ロータリーフィルタ装置に流入する被処理水に係る所定の条件が満たされない場合に、第一のパラメータセットを用いるフィードバック制御を行い、所定の条件が満たされる場合に、第二のパラメータセットを用いるフィードバック制御を行う。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ローターの回転により移動可能な無端帯状フィルタが設けられたロータリーフィルタ装置のフィードバック制御の方法であって、
フィードバック制御のパラメータセットとして、少なくとも、第一のパラメータセットおよび第二のパラメータセットがあらかじめ設定され、
前記ロータリーフィルタ装置に流入する被処理水に係る所定の条件が満たされない場合に、前記第一のパラメータセットを用いるフィードバック制御を行い、
前記条件が満たされる場合に、前記第二のパラメータセットを用いるフィードバック制御を行うフィードバック制御の方法。
【請求項2】
前記条件が、前記無端帯状フィルタの一次側における水位に基づいて設定される請求項1に記載のフィードバック制御の方法。
【請求項3】
前記条件が、以下の式(1)および式(2)で表される各条件を同時に満たすことである請求項2に記載のフィードバック制御の方法。
L(t)>a (1)
L(t)-L(t-Δt)>b (2)
式中、L(t)は、ある時刻tにおける前記無端帯状フィルタの一次側の水位であり、Δtは所定の単位期間であり、aおよびbは所定の閾値である。
【請求項4】
前記第二のパラメータセットは、前記第一のパラメータセットに比べて比例動作の寄与が大きいパラメータセットである請求項1~3のいずれか一項に記載のフィードバック制御の方法。
【請求項5】
ローターの回転により移動可能な無端帯状フィルタが設けられたロータリーフィルタ装置のフィードバック制御のためのプログラムであって、
フィードバック制御のパラメータセットとして、第一のパラメータセットおよび第二のパラメータセットがあらかじめ設定され、
コンピュータによって実行されたときに、
前記ロータリーフィルタ装置に流入する被処理水に係る所定の条件が満たされているか否かを判定する判定機能と、
前記判定機能において前記条件が満たされていないと判定したときに、前記第一のパラメータセットを用いるフィードバック制御を行う第一制御機能と、
前記判定機能において前記条件が満たされていると判定したときに、前記第二のパラメータセットを用いるフィードバック制御を行う第二制御機能と、を実現するプログラム。
【請求項6】
ローターの回転により移動可能な無端帯状フィルタが設けられたロータリーフィルタ装置と、前記ロータリーフィルタ装置のフィードバック制御を行う制御装置と、を備えるフィルタシステムであって、
前記制御装置に、フィードバック制御のパラメータセットとして、第一のパラメータセットおよび第二のパラメータセットがあらかじめ設定され、
前記制御装置が、
前記ロータリーフィルタ装置に流入する被処理水に係る所定の条件が満たされない場合に、前記第一のパラメータセットを用いるフィードバック制御を行い、
前記条件が満たされる場合に、前記第二のパラメータセットを用いるフィードバック制御を行うように構成されているフィルタシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータリーフィルタ装置の制御に供されるフィードバック制御の方法およびフィードバック制御のためのプログラム、ならびに、フィルタシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
下水処理等に使用されるロータリーフィルタ装置は、パネルフィルタが複数枚連結された無端帯状フィルタの態様で設けられた装置であり、当該無端帯状フィルタを回転駆動することによって、フィルタを再生しながら被処理水中の固形物を分離する装置である。この種の装置では、無端帯状フィルタの回転速度を調節することによって、装置の処理能力を調節できる。
【0003】
たとえば、特開平8-177030号公報(特許文献1)には、水位が設定水位に上昇したことを検出した場合には除塵機を高速で運転したあと徐々に運転速度を下げるようにして制御し、水位が設定水位以下の場合には除塵機を停止または微速運転をして待機するように制御するスクリーン移動式除塵機の運転方法が開示されている。特許文献1の運転方法によれば、不必要な高速運転を避けることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の技術では、運転速度を切り替える際の速度変化が非連続的であるため、たとえば、非常に短い時間に駆動速度が変化ことによって、そのはずみでチェーンとスプロケットとの間の噛み合わせが合わなくなり、歯飛びのリスクが上がる、などの問題が生じて、ローター等の回転機器に与える負荷が大きくなる場合があった。そのため、ロータリーフィルタ装置の寿命を損なうおそれがあった。
【0006】
そこで、処理能力が異なる運転条件に移行する必要がある場合においても、装置に負荷を与えにくいロータリーフィルタ装置の制御が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るフィードバック制御の方法は、ローターの回転により移動可能な無端帯状フィルタが設けられたロータリーフィルタ装置のフィードバック制御の方法であって、フィードバック制御のパラメータセットとして、第一のパラメータセットと、第二のパラメータセットがあらかじめ設定され、前記ロータリーフィルタ装置に流入する被処理水に係る所定の条件が満たされない場合に、前記第一のパラメータセットを用いるフィードバック制御を行い、前記条件が満たされる場合に、前記第二のパラメータセットを用いるフィードバック制御を行うことを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係るフィードバック制御のためのプログラムは、ローターの回転により移動可能な無端帯状フィルタが設けられたロータリーフィルタ装置のフィードバック制御のためのプログラムであって、フィードバック制御のパラメータセットとして、第一のパラメータセットおよび第二のパラメータセットがあらかじめ設定され、コンピュータによって実行されたときに、前記ロータリーフィルタ装置に流入する被処理水に係る所定の条件が満たされているか否かを判定する判定機能と、前記判定機能において前記条件が満たされていないと判定したときに、前記第一のパラメータセットを用いるフィードバック制御を行う第一制御機能と、前記判定機能において前記条件が満たされていると判定したときに、前記第二のパラメータセットを用いるフィードバック制御を行う第二制御機能と、を実現することを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係るフィルタシステムは、ローターの回転により移動可能な無端帯状フィルタが設けられたロータリーフィルタ装置と、前記ロータリーフィルタ装置のフィードバック制御を行う制御装置と、を備えるフィルタシステムであって、前記制御装置に、フィードバック制御のパラメータセットとして、第一のパラメータセットおよび第二のパラメータセットがあらかじめ設定され、前記制御装置が、前記ロータリーフィルタ装置に流入する被処理水に係る所定の条件が満たされない場合に、前記第一のパラメータセットを用いるフィードバック制御を行い、前記条件が満たされる場合に、前記第二のパラメータセットを用いるフィードバック制御を行うように構成されていることを特徴とする。
【0010】
これらの構成によれば、二つのパラメータセットのいずれが用いられる場合であっても、常にフィードバック制御が行われるため、装置の運転条件を連続的に変化させることができる。そのため、処理能力が異なる運転条件に移行する必要がある場合においても、装置に負荷を与えにくい。
【0011】
以下、本発明の好適な態様について説明する。ただし、以下に記載する好適な態様例によって、本発明の範囲が限定されるわけではない。
【0012】
本発明に係るフィードバック制御の方法は、一態様として、前記条件が、前記無端帯状フィルタの一次側における水位に基づいて設定されることが好ましい。
【0013】
この構成によれば、水位の上昇に伴って運転条件を変更できるので、無端帯状フィルタの一次側におけるオーバーフローを未然に防ぎやすい。
【0014】
本発明に係るフィードバック制御の方法は、一態様として、前記条件が、以下の式(1)および式(2)で表される各条件を同時に満たすことであることが好ましい。
L(t)>a (1)
L(t)-L(t-Δt)>b (2)
式中、L(t)は、ある時刻tにおける前記無端帯状フィルタの一次側の水位であり、Δtは所定の単位期間であり、aおよびbは所定の閾値である。
【0015】
この構成によれば、第二のパラメータセットを用いるフィードバック制御が行われる場合を、特に必要性が高い場合に限定できる。
【0016】
本発明に係るフィードバック制御の方法は、一態様として、前記第二のパラメータセットは、前記の第一のパラメータセットに比べて比例動作の寄与が大きいパラメータセットであることが好ましい。
【0017】
この構成によれば、外乱抑制の要請の程度に応じた適切なパラメータセットを用いたフィードバック制御を行うことができる。
【0018】
本発明のさらなる特徴と利点は、図面を参照して記述する以下の例示的かつ非限定的な実施形態の説明によってより明確になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】実施形態に係るフィルタシステムの構成を示す図である。
【
図2】実施形態に係るフィードバック制御の方法の手順を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明に係るフィードバック制御の方法、プログラム、およびフィルタシステムの実施形態について、図面を参照して説明する。以下では、本発明に係るフィードバック制御の方法を、フィルタシステム100に設けられたロータリーフィルタ装置1の制御に適用した例について説明する。
【0021】
〔フィルタシステムの構成〕
フィルタシステム100は、ロータリーフィルタ装置1と、制御装置2と、を含む(
図1)。
【0022】
ロータリーフィルタ装置1は、フィルタユニット11を有するロータリーフィルタ方式のし渣分離装置である。フィルタユニット11は、たとえば目開き0.1~1.0mmのパネルフィルタが複数枚連結された無端帯状フィルタの態様で設けられている。また、ロータリーフィルタ装置1には、フィルタユニット11の各パネルフィルタを移動させるためのローター12が複数設けられている。ローター12は、制御装置2と電気的に接続されており、ローター12の運転状態に関する情報(回転数、電流値など)を制御装置2に送信するとともに、ローター12の運転条件を決定づける制御信号を制御装置2から受信できる。
【0023】
ロータリーフィルタ装置1において、ロータリーフィルタ装置1に流入した被処理水W1の流路を横切る態様で、フィルタユニット11が設けられている。被処理水W1の流路の上流側から下流側に傾く態様でフィルタユニット11が設けられており、ローター12の回転によって被処理水W1が流入する一次側においてパネルフィルタが下方から上方に移動する。被処理水W1に含まれるし渣Sはフィルタユニット11に遮られ、被処理水W1中の水分であるろ過水W2はフィルタユニット11を通過する。フィルタユニット11のパネルフィルタ上に残ったし渣Sは、パネルフィルタの移動に伴って搬送され、洗浄機構13によってフィルタユニット11から剥離される。洗浄機構13は、たとえば、フィルタユニット11からし渣Sをフィルタユニット11から掻き落とすスクレーパ13aと、フィルタユニット11の裏側から洗浄水を吹き付けてし渣Sをフィルタユニット11から剥離させるスプレー13bと、を含む。
【0024】
ロータリーフィルタ装置1の、フィルタユニット11の一次側には、水位計14が設けられており、フィルタユニット11の一次側の水位を検出できる。水位計14の出力は、制御装置2に入力される。
【0025】
制御装置2は、公知のコンピュータとして実装されている。したがって制御装置2は、演算装置、記憶装置、および入出力装置などの、コンピュータとして一般的な構成要素を含む。なお、制御装置2にはロータリーフィルタ装置1のフィードバック制御を行うための制御プログラムがインストールされており、当該制御プログラムは本発明に係るプログラムの一例である。制御装置2は、ローター12および水位計14と電気的に接続されており、ローター12の運転状態に関する情報(回転数、電流値など)および水位計14が検出した水位を受信するとともに、ローター12の運転条件を決定づける制御信号を送信できる。かかる制御信号は、次に説明するフィードバック制御により生成される。
【0026】
〔フィードバック制御の方法〕
本実施形態に係るフィードバック制御の方法は、制御装置2にインストールされた制御プログラムの実行により実現される。本実施形態では、当該フィードバック制御がPI制御として実現されており、PI制御のパラメータセットが二つ、あらかじめ設定されている。第一のパラメータセットは平常時の制御に用いられ、第二のパラメータセットは緊急時の制御に用いられる。緊急時とは、降雨やポンプ場の清掃といった外的要因によってロータリーフィルタ装置1の負荷が急に大きくなるときをいい、平常時とは緊急時に該当しないときをいう。二つのパラメータセットは制御装置2の記憶装置に格納されており、必要に応じて読み込まれる。
【0027】
双方のパラメータセットを比較すると、第二のパラメータセットの方が、第一のパラメータセットより、外乱に対する応答が敏感な設定にしてある。具体的には、第二のパラメータセットの方が、第一のパラメータセットに比べて比例動作の寄与が大きい(比例定数が大きい)パラメータセットである。また、第二のパラメータセットの方が、第一のパラメータセットに比べて積分時間が小さいが、第二のパラメータセットが適用される場合の方が、第一のパラメータセットが適用される場合に比べて変数が大きいため、変数と積分時間の積としてはどちらのパラメータセットが適用される場合も同等の値になる。すなわち、積分動作の寄与は、第一のパラメータセットと第二のパラメータセットとで同等である。第二のパラメータセットを採用すると、外乱を抑制する作用が大きくなる半面、これを常用すると、オーバーシュートが生じるおそれが生じるとともに、短い時間間隔での発停を繰り返すことにより装置自体(特にローター12)への負荷が大きくなる懸念がある。そこで本実施形態では、外乱抑制の要請が大きいとき、すなわち緊急時のみ第二のパラメータセットを採用し、それ以外のとき(平常時)には第一のパラメータセットを採用する。
【0028】
平常時と緊急時との判定は、水位計14の出力(フィルタユニット11の一次側の水位)に基づいて行う。具体的には、以下の式(1)および式(2)で表される各条件を同時に満たすときに、緊急時であると判定する。
L(t)>a (1)
L(t)-L(t-Δt)>b (2)
式中、L(t)は、ある時刻tにおけるフィルタユニット11の一次側の水位であり、Δtは所定の単位期間であり、aおよびbは所定の閾値である。
【0029】
具体的には、
図2のフローチャート200に示す手順で判定を行う。第一の判定は、式(1)に基づく判定201であり、フィルタユニット11の一次側における水位の現況に係る判定である。ある時刻tにおける水位L(t)が所定の閾値a以下であるとき(判定201:いいえ)は、フィルタユニット11の一次側に被処理水W1を受容するだけの容量的な余裕があるといえる。この場合は、仮に外乱によって被処理水W1の流入量が増加する状況にあっても被処理水W1の受容を続けることができるため、緊急時の制御への移行を必要としない。したがって、式(1)の条件が満たされない場合は、式(2)の判定を行うことなく平常時であると判断し(処理205)、第一のパラメータセットを用いるフィードバック制御を継続する(処理206)。一方、式(1)の条件が満たされる場合(判定201:はい)は、続いて式(2)の判定を行う。
【0030】
第二の判定は、式(2)に基づく判定202であり、水位の上昇速度に係る判定である。ある時刻tの直前の単位期間Δtにおける水位の上昇量L(t)-L(t-Δt)が所定の閾値b以下であるとき(判定202:いいえ)は、被処理水W1の収支が概ねつりあっている状態にあるといえる。この場合は、水位が閾値aより大きいとしても、当該水位が急に上昇する可能性が小さいため、緊急時の制御への移行を必要としない。したがって、式(1)の条件が満たされる場合であっても、式(2)の条件が満たされない場合は、平常時であると判断し(処理205)、第一のパラメータセットを用いるフィードバック制御を継続する(処理206)。
【0031】
一方、式(2)の条件が満たされる場合(判定202:はい)は、式(1)および式(2)が同時に満たされており、水位が比較的高く、かつ被処理水W1の流入量が処理量より大きい(被処理水W1の収支がつりあっていない)状態にある。この場合は緊急時であると判定する(処理203)。このときは、ロータリーフィルタ装置1の処理量を一時的に高めて被処理水W1のオーバーフローを防ぐ必要があるため、第二のパラメータセットを用いるフィードバック制御を行う(処理204)。上述の通り、第二のパラメータセットは第一のパラメータセットに比べて外乱に対する応答が敏感であるので、水位の急激な上昇に敏感に反応してローター12の出力を上昇させて、ロータリーフィルタ装置1の処理量を円滑かつ俊敏に高めることができる。
【0032】
以後、同様のフローによる判定を繰り返して、フィードバック制御に用いるパラメータセットを、判定が行われた時点の状況に応じて適切に選択する。
【0033】
閾値aは、ロータリーフィルタ装置1の容量、ロータリーフィルタ装置1の設置場所における被処理水W1の平常的な流入量、ローター12の定格容量、制御装置2の処理能力、などの条件を考慮して設定されうる。一例として、閾値aは、フィルタユニット11の一次側における満水位の60~70%でありうる。
【0034】
閾値bおよび単位期間Δtは、水位計14の能力を考慮して設定されうる。たとえば、第二の判定(判定202)において水位の上昇速度が毎秒0.5cmを超えるときに緊急時と判定するようにしたい場合、閾値bと単位期間Δtとの組合せはb=0.5Δtである限りで限定されないので、1cmと2秒、2cmと4秒、3cmと6秒、など無限に存在する。ここで、単位期間Δtが短い組合せを採用する方が緊急時の判定が遅れにくい点で好ましいといえる。一方、閾値bが過度に小さいと、閾値bと比較される水位の上昇量L(t)-L(t-Δt)が、水位計14が検出しうる水位の差の最小単位を下回ることになり、検出された水位の上昇量L(t)-L(t-Δt)の値の信頼性が損なわれるから、第二の判定(判定202)の精度が低下する。したがって、閾値bおよび単位期間Δtは、緊急時と判定する際の水位の上昇速度を与える閾値bと単位期間Δtとの組合せのうち、閾値bが水位計14の精度に鑑みて適切な値になる組合せとして決定されうる。
【0035】
たとえば、単位期間Δtは、平常時と緊急時との判定を行う周期でありうる。この場合、水位の上昇量L(t)-L(t-Δt)は、ある周期の判定時における水位L(t)と、当該周期の一周期前の判定時における水位L(t-Δt)と、の差として特定できる。すなわち、単位期間Δtの周期で水位の記録を繰り返し実施し、最新の水位とその一周期前の水位との差が閾値bを超えたときに、式(2)の条件が満たされたと判定できる。
【0036】
〔その他の実施形態〕
最後に、本発明に係るフィードバック制御の方法、プログラム、およびフィルタシステムのその他の実施形態について説明する。なお、以下のそれぞれの実施形態で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することも可能である。
【0037】
上記の実施形態では、フィードバック制御に使用するパラメータセットを決定するための所定の条件が式(1)および式(2)で表される例について説明した。しかし、本発明に係るフィードバック制御の方法において、フィードバック制御に使用するパラメータセットを決定するための所定の条件は限定されない。すなわち、上記の実施形態と同様に水位に基づく条件としてもよいし、被処理水の他の物性(流量、懸濁物質量(SS)、濁度などが該当する。)に基づく条件としてもよい。
【0038】
上記の実施形態では、第二のパラメータセットの方が、第一のパラメータセットに比べて比例動作の寄与が大きいパラメータセットである構成を例として説明したが、このような態様に限定されない。本発明に係るフィードバック制御の方法において、第一のパラメータセットと第二のパラメータセットとの関係は、フィードバック制御に使用するパラメータセットを決定するために設定される所定の条件の設定目的に応じて、当該所定の条件によって区分される二つの状態のそれぞれに適した制御を実現できる関係であればよい。
【0039】
上記の実施形態では、フィードバック制御がPI制御として実現されている構成を例として説明した。しかし、本発明に係るフィードバック制御はPI制御に限定されず、たとえばPID制御であってもよい。
【0040】
その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で例示であって、本発明の範囲はそれらによって限定されることはないと理解されるべきである。当業者であれば、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜改変が可能であることを容易に理解できるであろう。したがって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で改変された別の実施形態も、当然、本発明の範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、たとえば活性汚泥処理施設におけるし渣分離に利用できる。
【符号の説明】
【0042】
100 :フィルタシステム
1 :ロータリーフィルタ装置
11 :フィルタユニット
12 :ローター
13 :洗浄機構
13a :スクレーパ
13b :スプレー
14 :水位計
2 :制御装置
S :し渣
W1 :被処理水
W2 :ろ過水