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特開2024-62841スイング角度較正方法、姿勢検出方法、スイング角度較正システムおよび姿勢検出システム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024062841
(43)【公開日】2024-05-10
(54)【発明の名称】スイング角度較正方法、姿勢検出方法、スイング角度較正システムおよび姿勢検出システム
(51)【国際特許分類】
   E02F 3/43 20060101AFI20240501BHJP
【FI】
E02F3/43 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022170951
(22)【出願日】2022-10-25
(71)【出願人】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】西村 峰鷹
(72)【発明者】
【氏名】池上 晃太
【テーマコード(参考)】
2D003
【Fターム(参考)】
2D003AA01
2D003AB03
2D003AB04
2D003BA01
2D003BB07
2D003BB10
2D003CA02
2D003DA04
2D003DB04
2D003FA02
(57)【要約】
【課題】作業機のスイング角度を検出する角度センサで測定する場合に生じる誤差を較正し、精度良くスイング角度を検出することが可能なスイング角度較正方法を提供する。
【解決手段】スイング角度較正方法で、ステップS11は、作業機3を左右方向へのスイングのみを行った複数のスイング姿勢K1~K7でトータルステーションTSを用いて作業機3の所定位置の位置情報を取得する。ステップS12、S13、S21~S24、S31~S33は、位置情報に基づいて各々のスイング姿勢におけるスイング角度θを算出する。ステップS34,S35は、スイング角度センサ67による複数のスイング姿勢K1~K7での検出値に基づいて各々のスイング姿勢K1~K7におけるスイング角度θswiを取得する。ステップS40は、複数のスイング姿勢K1~K7におけるスイング角度θとスイング角度θswiに基づいてスイング角度誤差テーブルTを作成する。
【選択図】図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業機械の作業機のスイング角度を較正するスイング角度較正方法であって、
前記作業機を所定の姿勢に固定した状態で左右方向へのスイングのみを行った複数のスイング姿勢で、計測装置を用いて前記作業機の所定位置の位置情報を取得する位置情報取得ステップと、
前記位置情報に基づいて、各々の前記スイング姿勢における第1スイング角度を算出する第1スイング角度算出ステップと、
前記作業機械に搭載され、前記作業機のスイング角度を検出する角度センサによる前記複数のスイング姿勢での検出値に基づいて、各々の前記スイング姿勢における第2スイング角度を取得する較正用第2スイング角度取得ステップと、
前記複数のスイング姿勢における前記第1スイング角度と前記第2スイング角度に基づいて相関テーブルを作成する作成ステップと、
を備えたスイング角度較正方法。
【請求項2】
前記相関テーブルは、前記第1スイング角度と前記第2スイング角度の相関を示す、
請求項1に記載のスイング角度較正方法。
【請求項3】
前記第1スイング角度と前記第2スイング角度に基づいて、前記角度センサの測定誤差を算出する誤差算出ステップを更に備え、
前記相関テーブルは、前記第2スイング角度と前記測定誤差の相関を示す、
請求項1に記載のスイング角度較正方法。
【請求項4】
前記第1スイング角度算出ステップは、
前記複数のスイング姿勢における前記作業機の前記所定位置の位置情報に基づいて、複数の前記所定位置からの距離が最小となる平面を算出する平面算出ステップと、
前記複数の所定位置を前記平面上に投影した複数の投影位置の座標を前記計測装置の座標系から前記平面の座標系に変換する座標変換ステップと、
前記平面の座標系において、前記複数の投影位置との誤差が最小となる前記平面上の円を算出する円算出ステップと、
各々の前記投影位置の前記円における回転角度を算出し、前記回転角度を前記投影位置に対応する前記スイング姿勢における前記第1スイング角度とする角度算出ステップと、を有する、
請求項1に記載のスイング角度較正方法。
【請求項5】
作業機械の作業機の姿勢を検出する姿勢検出方法であって、
前記作業機械に搭載され、前記作業機のスイング角度を検出する角度センサの検出値に基づいて第2スイング角度を取得する第2スイング角度取得ステップと、
請求項1~4のいずれかに記載のスイング角度較正方法の前記相関テーブルと前記第2スイング角度に基づいて、誤差補正後の第2スイング角度を検出する補正後第2スイング角度検出ステップと、
検出した前記誤差補正後の第2スイング角度を用いて前記作業機の姿勢を検出する姿勢検出ステップと、
を備えた、姿勢検出方法。
【請求項6】
前記作業機械は、前記作業機が左右方向にスイング可能に取り付けられた作業機械本体を有し、
前記第2スイング角度取得ステップにおいて、前記角度センサは、前記作業機械本体に対する前記作業機のスイング角度を検出する、
請求項5に記載の姿勢検出方法。
【請求項7】
前記作業機は、
前記作業機械本体に上下方向に回転可能に取り付けられたブームと、
前記ブームの先端に回転可能に取り付けられたアームと、
前記アームの先端に回転可能に取り付けられたバケットと、を有し、
前記姿勢検出ステップは、前記バケットの刃先位置を検出する、
請求項6に記載の姿勢検出方法。
【請求項8】
作業機械の作業機のスイング角度を較正するスイング角度較正システムであって、
前記作業機を所定の姿勢に固定した状態で左右方向へのスイングのみを行った複数のスイング姿勢で、前記作業機の所定位置の位置情報を計測する計測装置と、
前記作業機械に搭載され、前記作業機のスイング角度を検出する角度センサと、
前記位置情報に基づいて、各々の前記スイング姿勢における第1スイング角度を算出し、前記角度センサによる前記複数のスイング姿勢での検出値に基づいて、各々の前記スイング姿勢における第2スイング角度を取得し、前記複数のスイング姿勢における前記第1スイング角度と前記第2スイング角度に基づいて相関テーブルを作成するコントローラと、を備えた、
スイング角度較正システム。
【請求項9】
作業機械の作業機の姿勢を検出する姿勢検出システムであって、
前記作業機械に搭載され、前記作業機のスイング角度を検出する角度センサと、
請求項1~4のいずれかに記載のスイング角度較正方法の前記相関テーブルを記憶する記憶部と、
前記角度センサで検出した前記スイング角度を前記相関テーブルに基づいて補正し、補正後のスイング角度を用いて、前記作業機の姿勢を検出するコントローラと、を備えた、
姿勢検出システム。
【請求項10】
前記作業機械は、前記作業機が左右方向にスイング可能に取り付けられた作業機械本体を有し、
前記角度センサは、前記作業機械本体に対する前記作業機のスイング角度を検出する、
請求項9に記載の姿勢検出システム。
【請求項11】
前記作業機は、
前記作業機械本体に上下方向に回転可能に取り付けられたブームと、
前記ブームの先端に回転可能に取り付けられたアームと、
前記アームの先端に回転可能に取り付けられたバケットと、を有し、
前記コントローラは、前記バケットの刃先位置を検出する、
請求項10に記載の姿勢検出システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、スイング角度較正方法、姿勢検出方法、スイング角度較正システムおよび姿勢検出システムに関する。
【背景技術】
【0002】
作業機を有する作業機械において、アタッチメントであるバケットの刃先の位置を算出する技術が、知られている。例えば、特許文献1に示す油圧ショベルは、車両本体と作業機とを備えている。車両本体には、車体の位置を検出するために、例えばGNSS(Global Navigation Satellite System)のアンテナが設けられている。また、車両本体には、例えばIMU(Inertial Measurement Unit)が配置されている。IMUは、車両本体のロール角、及び、ピッチ角などを検出する。作業機は、ブームと、アームと、バケットと、それらを駆動する油圧シリンダとを有している。油圧ショベルのコントローラは、GNSSアンテナとブームピンの位置関係、ブームとアームとバケットのそれぞれの長さ、ブームとアームとバケットのそれぞれの回転角度等のパラメータに基づいて、バケットの刃先の位置を演算している。
【0003】
このように刃先位置を演算するために、初期設定時には、油圧ショベルが備える作業機のパラメータが較正される。例えば、外部計測装置を用いて作業機の所定位置を計測し、その計測値に基づいて作業機の寸法等に関するパラメータが較正される。特許文献1では、作業機の自重により油圧ショベルが車体前後方向に傾斜することによって生じる高さ方向における刃先の位置の精度低下を抑制するために、車両本体のIMUによるピッチ角を利用して較正を行うことが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2015/173920公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1では、作業機のスイング角度を検出する角度センサが誤差を持つ場合は考慮しておらず、その場合には刃先位置の検出精度が低下していた。
【0006】
本開示は、作業機のスイング角度を検出する角度センサで測定する場合に生じる誤差を較正し、精度良くスイング角度を検出することが可能なスイング角度較正方法、姿勢検出方法、スイング角度較正システムおよび姿勢検出システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示にかかる第1の態様のスイング角度較正方法は、作業機械の作業機のスイング角度を較正するスイング角度較正方法であって、位置情報取得ステップと、第1スイング角度算出ステップと、較正用第2スイング角度取得ステップと、作成ステップと、を備える。位置情報取得ステップは、作業機を所定の姿勢に固定した状態で左右方向へのスイングのみを行った複数のスイング姿勢で、計測装置を用いて作業機の所定位置の位置情報を取得する。第1スイング角度算出ステップは、位置情報に基づいて、各々のスイング姿勢における第1スイング角度を算出する。較正用第2スイング角度取得ステップは、作業機械に搭載され、作業機のスイング角度を検出する角度センサによる複数のスイング姿勢での検出値に基づいて、各々のスイング姿勢における第2スイング角度を取得する。作成ステップは、複数のスイング姿勢における第1スイング角度と第2スイング角度に基づいて相関テーブルを作成する。
【0008】
本開示にかかる第2の態様の姿勢検出方法は、作業機械の作業機の姿勢を検出する姿勢検出方法であって、第2スイング角度取得ステップと、補正後第2スイング角度検出ステップと、姿勢検出ステップと、を備える。第2スイング角度取得ステップは、作業機械に搭載され、作業機のスイング角度を検出する角度センサの検出値に基づいて第2スイング角度を取得する。補正後第2スイング角度検出ステップは、第1の態様のスイング角度較正方法の相関テーブルと第2スイング角度に基づいて、誤差補正後の第2スイング角度を検出する。姿勢検出ステップは、誤差補正後の第2スイング角度を用いて作業機の姿勢を検出する。
【0009】
本開示にかかる第3の態様のスイング角度較正システムは、作業機械の作業機のスイング角度を較正するスイング角度較正システムであって、計測装置と、角度センサと、コントローラと、を備える。計測装置は、作業機を所定の姿勢に固定した状態で左右方向へのスイングのみを行った複数のスイング姿勢で、作業機の所定位置の位置情報を計測する。角度センサは、作業機械に搭載され、作業機のスイング角度を検出する。コントローラは、位置情報に基づいて、各々のスイング姿勢における第1スイング角度を算出し、角度センサによる複数のスイング姿勢での検出値に基づいて、各々のスイング姿勢における第2スイング角度を取得し、複数のスイング姿勢における第1スイング角度と第2スイング角度に基づいて相関テーブルを作成する。
【0010】
本開示にかかる第4の態様の姿勢検出システムは、作業機械の作業機の姿勢を検出する姿勢検出システムであって、角度センサと、記憶部と、コントローラと、を備える。角度センサは、作業機械に搭載され、作業機のスイング角度を検出する。記憶部は、第1の態様のスイング角度較正方法の相関テーブルを記憶する。コントローラは、角度センサで検出したスイング角度を相関テーブルに基づいて補正し、補正後のスイング角度を用いて、作業機の姿勢を検出する。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、作業機のスイング角度を検出する角度センサで測定する場合に生じる誤差を較正し、精度良くスイング角度を検出することが可能なスイング角度較正方法、姿勢検出方法および姿勢検出システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本開示にかかる作業機械システムを示す図である。
図2図1の作業機械のスイングブラケット近傍を示す斜視図である。
図3図2のスイングブラケットの近傍を示す上面図である。
図4】作業機械の駆動システムと駆動制御システムの構成を示すブロック図である。
図5】作業機械の姿勢検出システムの制御構成を示すブロック図である。
図6】作業機械の構成を模式的に示す側面図である。
図7】表示入力装置に表示されるガイド画面を示す図である。
図8A】本開示にかかるスイング角度較正方法を示すフロー図である。
図8B】本開示にかかるスイング角度較正方法を示すフロー図である。
図9】(a)作業機を複数のスイング姿勢に移動させてトータルステーションでアームトップの座標を計測している状態を示す正面図であり、(b)作業機を複数のスイング姿勢に移動させた状態を示す平面図である。
図10A】スイング角度較正の際の表示入力装置の表示画面を示す図である。
図10B】スイング角度較正の際の表示入力装置の表示画面を示す図である。
図11A】スイング角度較正方法を説明するための図である。
図11B】スイング角度較正方法を説明するための図である。
図11C】スイング角度較正方法を説明するための図である。
図11D】スイング角度較正方法を説明するための図である。
図12】スイング角度較正方法で作成されたスイング角度誤差テーブルを示す図である。
図13】本開示にかかる姿勢検出方法を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本開示の一実施形態に係るスイング角度較正方法、姿勢検出方法および姿勢検出システムについて説明する。
【0014】
図1は、本開示にかかる作業機械1を示す図である。作業機械1は、例えば、油圧ショベルを挙げることができる。
【0015】
(作業機械1の概要)
作業機械1は、車両本体2(作業機械本体の一例)と、作業機3を有する。
【0016】
車両本体2は、旋回体11と、下部構造体12と、ブレード13と、を有する。旋回体11は、下部構造体12の上側に配置されている。旋回体11は、下部構造体12に対して旋回可能に支持されている。旋回体11は、上面のフロア14と、フロア14に配置された運転席15と、運転席15の上方に配置されたルーフ16とを有している。本実施形態の作業機械1は、キャノピー型である。下部構造体12は履帯12a、12bを含む。履帯12a、12bが回転することにより作業機械1が走行する。ブレード13は、下部構造体12の前方に配置されている。ブレード13は、油圧アクチュエータによってリフト動作可能である。
【0017】
なお、以下の説明において、「前」および「後」とは車両本体2の前後を意味する。また、以下の説明における「右」、「左」、「上」、及び「下」とは運転席15から前方を見た状態を基準とする方向を示す。「車幅方向」と「左右方向」は同義である。図には、前方向F、後方向B、左方向Lおよび右方向Rが示されている。
【0018】
(作業機3)
作業機3は、車両本体2に取り付けられている。作業機3は、スイングブラケット20と、ブーム21と、アーム22と、バケット23と、を含む。スイングブラケット20は、旋回体11の前側に配置されている。図2は、作業機械1のスイングブラケット近傍を示す斜視図である。図3は、スイングブラケット20の近傍を示す上面図である。図3では作業機3は省略されている。図2および図3に示すスイングブラケット20は、旋回体11の前後方向に沿って作業機3が配置されている状態である。
【0019】
スイングブラケット20は、旋回体11の前側に配置されている。図2に示すように、旋回体11は、前端部に支持ブラケット18を有している。支持ブラケット18は、前方に向かって突出するように配置されている。図3に示すように、スイングブラケット20は、上下方向のピン19によって上面視において時計回りおよび反時計回りに回転可能に支持ブラケット18に装着されている。図3には、ピン19の回転中心が軸A1として示されている。
【0020】
ブーム21の基端は、図1に示すように、ブームピン24を介してスイングブラケット20に上下方向に回転可能に取り付けられている。アーム22の基端は、アームピン25を介してブーム21の先端に回転可能に取り付けられている。バケット23は、バケットピン26を介してアーム22の先端に回転可能に取り付けられている。アーム22とバケット23の間は、リンク27によって接続されている。
【0021】
スイングブラケット20は、図3に示すように、ブラケット本体32と、レバー部33と、を有する。ブラケット本体32は、図3に示すように、ピン19によって回転可能に支持ブラケット18に支持されている。レバー部33は、図2および図3に示すように、ブラケット本体32から右方向Rに突出している。
【0022】
ブラケット本体32は、図3に示すように、作業機支持部34と、リンク機構支持部35と、を有する。作業機支持部34は、作業機3を上下方向に回転可能に支持する。作業機支持部34は、図3に示すように、左側部34aと右側部34bと、を有する。左側部34aと右側部34bは、ブーム21の基端を左右から挟むように配置されている。リンク機構支持部35と作業機支持部34は、軸A1を挟んで配置されている。リンク機構支持部35は、後述するリンク機構36を支持する。
【0023】
作業機3は、図1に示すように、ブームシリンダ28と、アームシリンダ29と、バケットシリンダ30、スイングシリンダ31(図2参照)と、を含む。ブームシリンダ28と、アームシリンダ29と、バケットシリンダ30と、スイングシリンダ31は、それぞれ油圧シリンダである。
【0024】
ブームシリンダ28のボトム側の端は、スイングブラケット20に回転可能に取り付けられている。ブームシリンダ28のボトム側の端は、図3に示す左側部34aと右側部34bの間に配置される。ブームシリンダ28のロッド側の端は、ブーム21に回転可能に取り付けられている。
【0025】
アームシリンダ29のボトム側の端は、ブーム21に回転可能に取り付けられている。アームシリンダ29のロッド側の端は、アーム22に回転可能に取り付けられている。
【0026】
バケットシリンダ30のボトム側の端は、アーム22に回転可能に取り付けられている。バケットシリンダ30のロッド側の端は、バケット23にリンク27を介して回転可能に取り付けられている。
【0027】
ブームシリンダ28が伸縮することで、ブーム21が上下方向に回転する。アームシリンダ29が伸縮することで、ブーム21に対してアーム22が回転する。バケットシリンダ30が伸縮することで、アーム22に対してバケット23が回転する。
【0028】
スイングシリンダ31は、旋回体11とレバー部33の間を接続する。スイングシリンダ31のボトム側の端は、旋回体11に回転可能に取り付けられている。スイングシリンダ31のロッド側の端は、レバー部33に回転可能に取り付けられている。スイングシリンダ31が伸縮することによって、スイングブラケット20を含む作業機3が旋回体11に対して左右方向にスイングする。
【0029】
(駆動システム41および駆動制御システム42)
作業機械1は、駆動システム41と、駆動制御システム42と、を有する。図4は、作業機械1の駆動システム41と駆動制御システム42の構成を示すブロック図である。駆動システム41は、駆動源43と、油圧ポンプ44とを備えている。駆動源43は、例えば内燃エンジンである。ただし、駆動源43は、電動モータ、あるいはエンジンと電動モータのハイブリッド機構であってもよい。油圧ポンプ44は、駆動源43によって駆動され、作動油を吐出する。油圧ポンプ44から吐出された作動油は、ブームシリンダ28、アームシリンダ29、バケットシリンダ30,およびスイングシリンダ31に供給される。作業機械1は、第1走行モータ45aと、第2走行モータ45bと、旋回モータ46と、を備えている。第1走行モータ45aは、履帯12aを駆動する。第2走行モータ45bは、履帯12bを駆動する。旋回モータ46は、旋回体11を旋回させる。油圧ポンプ44から吐出された作動油は、第1走行モータ45aと、第2走行モータ45bと、旋回モータ46とに供給される。なお、図4では、1つの油圧ポンプ44が図示されているが、複数の油圧ポンプが設けられていてもよい。
【0030】
駆動制御システム42は、操作装置47と、入力装置48と、を備える。操作装置47および入力装置48は、運転席15の周囲に配置されている。操作装置47は、作業機3、旋回体11、および下部構造体12を駆動するためのオペレータによる操作を受け付け、操作に応じた操作信号を出力する。操作装置47は、例えば、レバー、ペダル、スイッチ等を含む。
【0031】
入力装置48は、作業機械1の制御の設定を行うためのオペレータによる操作を受け付け、操作に応じた操作信号を出力する。入力装置48は、例えば、タッチスクリーンである。或いは、入力装置48は、レバー、あるいはスイッチを含んでもよい。
【0032】
駆動制御システム42は、本体コントローラ51と、記憶装置52と、制御弁53と、を含む。本体コントローラ51は、取得した操作信号に基づいて作業機械1を制御するようにプログラムされている。本体コントローラ51は、CPU(Central Processing Unit)などのプロセッサと、RAM(Random Access Memory)、及びROM(Read Only Memory)などのメモリを含む。記憶装置52は、非一時的な(non-transitory)プロセッサで読み取り可能な記録媒体の一例である。記憶装置52は、プロセッサによって実行可能であり作業機械1を制御するためのコンピュータ指令を記録している。
【0033】
本体コントローラ51は、操作装置47および入力装置48から操作信号を取得する。本体コントローラ51は、操作信号に基づいて、制御弁53を制御する。制御弁53は、圧力比例制御弁であってもよい。或いは、制御弁53は、電磁比例制御弁であってもよい。制御弁53は、油圧ポンプ44から第1走行モータ45aと第2走行モータ45bとに供給される作動油の流量を制御する。それにより、操作装置47の操作に応じて作業機械1が走行する。制御弁53は、油圧ポンプ44から、ブームシリンダ28、アームシリンダ29、バケットシリンダ30,およびスイングシリンダ31に供給される作動油の流量を制御する。本体コントローラ51は、操作装置47の操作に応じて、ブーム21、アーム22、およびバケット23が動作するように、制御弁53への指令信号を生成する。制御弁53は、油圧ポンプ44から旋回モータ46へ供給される作動油の流量を制御する。本体コントローラ51は、操作装置47の操作に応じて、旋回体11が旋回するように、制御弁53への指令信号を生成する。本体コントローラ51は、操作装置47の操作に応じて、作業機3が車両本体2に対して左右にスイングするように、制御弁53への指令信号を生成する。
【0034】
(姿勢検出システム60)
作業機械1は、姿勢検出システム60を備える。図5は、姿勢検出システム60の構成を示すブロック図である。姿勢検出システム60は、GNSSレシーバ61と、一対のGNSSアンテナ62a、62bと、本体IMU63と、ブームIMU64と、アームIMU65と、バケットIMU66と、スイング角度センサ67(角度センサの一例)と、姿勢検出コントローラ68と、記憶装置69と、表示入力装置70と、通信装置71と、を備える。
【0035】
GNSSレシーバ61および一対のGNSSアンテナ62a、62bは、車両本体2に配置されている。GNSSアンテナ62a、62bは、図1に示すように、左右方向において所定間隔を空けて配置されている。GNSS(Global Navigation Satellite System)レシーバ61は、例えばGPS(Global Positioning System)用の受信機である。GNSSレシーバ61は、衛星より測位信号を受信し、測位信号によりGNSSアンテナ62a、62bの位置を演算して車体位置データを作成する。車体位置データは、GNSSによるグローバル座標系における位置情報と、旋回体11の向きの情報を含む。姿勢検出コントローラ68は、GNSSレシーバ61から車体位置データを取得する。
【0036】
本体IMU63は、図1に示すように、車両本体2に配置されている。本体IMU63は、本体傾斜角データを取得する。車両傾斜角データは、車両前後方向の水平に対する角度(ピッチ角)、および車両左右方向の水平に対する角度(ロール角)を含む。本体IMU63は、姿勢検出コントローラ68に車両傾斜角データを出力する。
【0037】
ブームIMU64は、図1に示すように、ブーム21に配置されている。ブームIMU64は、ブーム21の傾斜角データを取得する。ブーム傾斜角データは、ブーム21の水平方向に対する上下方向への傾斜角を含む。ブームIMU64は、姿勢検出コントローラ68にブーム傾斜角データを出力する。
【0038】
アームIMU65は、図1に示すように、アーム22に配置されている。アームIMU65は、アーム22の傾斜角データを取得する。アーム傾斜角データは、アーム22の水平方向に対する上下方向への傾斜角を含む。アームIMU65は、姿勢検出コントローラ68にアーム傾斜角データを出力する。
【0039】
バケットIMU66は、図1に示すように、バケット23が接続されているリンク27に配置されている。バケットIMU66は、バケット23の傾斜角データを取得する。バケット傾斜角データは、バケット23の水平方向に対する上下方向への傾斜角を含む。バケットIMU66は、姿勢検出コントローラ68にバケット傾斜角データを出力する。
【0040】
スイング角度センサ67は、スイングブラケット20の旋回体11に対するスイング角度を求めるための検出値を検出する。スイング角度センサ67は、スイングブラケット20の側方に配置されている。スイング角度センサ67は、旋回体11に固定されている。
【0041】
スイング角度センサ67は、図3に示すように、リンク機構36によってスイングブラケット20に接続されている。スイング角度センサ67は、図示しない回転センサと、マグネットと、マグネットに接続されたピン37と、を含む。スイングブラケット20が回転すると、その回転がリンク機構36を介してピン37に伝達され、ピン37が回転軸A2を中心にして回転し、ピン37に固定されているマグネットが回転する。マグネットの回転角度を回転センサが検出し、その検出値であるスイング角度データを姿勢検出コントローラ68に出力する。
【0042】
姿勢検出コントローラ68は、CPU(Central Processing Unit)などのプロセッサと、RAM(Random Access Memory)、及びROM(Read Only Memory)などのメモリを含む。記憶装置69は、非一時的な(non-transitory)プロセッサで読み取り可能な記録媒体の一例である。記憶装置69は、プロセッサによって実行可能であり作業機械1を制御するためのコンピュータ指令を記録している。
【0043】
図6は、作業機械1の構成を模式的に示す側面図である。姿勢検出コントローラ68は、本体傾斜角データ、ブーム傾斜角データ、アーム傾斜角データ、およびバケット傾斜角データに基づいて、ブーム角α1、アーム角α2、およびバケット角α3を算出する。ブーム角α1は、車両本体2に対するブーム21の傾斜角を示す。アーム角α2は、ブーム21に対するアーム22の傾斜角を示す。バケット角α3は、アーム22に対するバケット23の傾斜角を示す。なお、ブームIMU64、アームIMU65、およびバケットIMU66の代わりに、ブームシリンダ28、アームシリンダ29、およびバケットシリンダ30の各々のストローク量を検出するセンサが設けられ、センサの検出値からブーム角α1、アーム角α2、およびバケット角α3を算出してもよい。
【0044】
姿勢検出コントローラ68は、スイング角度データからスイング角度を算出し、記憶装置69に記憶されているスイング角度誤差テーブルに基づいて、較正後のスイング角度を算出する。スイング角度誤差テーブルおよびスイング角度の算出については後段にて詳述する。
【0045】
記憶装置69は、車両本体2と作業機3との形状データとを記憶している。車両本体2の形状データは、車両本体2の形状を示す。車両本体2の形状データは、GNSSアンテナ62と車両本体2における基準位置との位置関係を示す。車両本体2の形状データは、車両本体2における基準位置と、ブームピン24との位置関係を示す。
【0046】
作業機3の形状データは、作業機3の形状を示す。形状データは、ブーム長L1と、アーム長L2と、バケット長L3とを含む。ブーム長L1は、ブームピン24からアームピン25までの長さである。アーム長L2は、アームピン25からバケットピン26までの長さである。バケット長L3は、バケットピン26からバケット23の刃先位置P10までの長さである。姿勢検出コントローラ68は、車両傾斜角データ、ブーム傾斜角データ、アーム傾斜角データ、バケット傾斜角データ、およびスイング角度データに基づいて、GNSSレシーバ61が取得した車体位置データから、バケット位置データを検出する。バケット位置データは、バケット23の刃先位置P10を示す。
【0047】
記憶装置69は、現況地形データと設計地形データとを記憶している。現況地形データは、作業現場の現況地形を示す。設計地形データは、作業現場の目標形状を示す。姿勢検出コントローラ68は、現況地形データと、設計地形データと、形状データとに基づいて、図7に示すガイド画面72を表示入力装置70に表示する。図7に示すように、ガイド画面72は、現況地形73と、設計地形74と、作業機械1との位置を示す。形状データは、バケット23の形状を示すデータを含む。姿勢検出コントローラ68は、バケット23の形状データとバケット位置データとに基づいて、現況地形73及び設計地形74に対するバケット23の位置をガイド画面72に示す。
【0048】
表示入力装置70は、作業者の入力指示に基づいて、上記ガイド画面72を表示する。表示入力装置70は、通信装置71を介してインターネットを通じて姿勢検出コントローラ68と通信を行う。表示入力装置70は、例えば、タブレット端末である。通信装置71は、表示入力装置70をインターネットに接続する。表示入力装置70と通信装置71の間の通信は、有線または無線のいずれで行われてもよい。通信装置71は、例えば、無線LANルータである。
【0049】
(スイング角度較正方法)
次に、記憶装置69に記憶されているスイング角度誤差テーブルを作成するスイング角度較正方法について説明するとともにスイング角度較正システムについても同時に述べる。図8Aおよび図8Bは、スイング角度較正方法を示すフロー図である。
【0050】
図8Aおよび図8Bに示すように、スイング角度較正方法では、ステップS10において、複数のスイング姿勢において作業機の所定の点(スイング点)の座標を計測し、それぞれの点を所定のスイング平面上に投影し、スイング平面上における複数のスイング点を作成する。次に、ステップS20において、スイング平面におけるスイング座標系を作成する。次に、ステップS30において、スイング座標系において複数のスイング点におけるスイング角度を計算する。次に、ステップS40において、スイング角度誤差テーブルを作成する。
【0051】
以下、ステップS10~S40の各々のステップにおける詳細について説明する。
【0052】
図9(a)は、作業機3を複数のスイング姿勢に移動させた状態を示す正面図である。図9(b)は、作業機3を複数のスイング姿勢に移動させてトータルステーションTS(計測装置の一例)でアームトップの座標を計測している状態を示す平面図である。例えばアーム22の先端(アームトップ)にプリズムが貼り付けられる。
【0053】
ステップS10におけるステップS11において、ブーム角α1、アーム角α2、およびバケット角α3を固定した状態でスイング姿勢のみを変化させて、アームトップに貼り付けられているプリズムからの反射波をトータルステーションTSで受信してプリズムの座標を計測する。
【0054】
例えば、図9(b)に示すように、複数のスイング姿勢K1~K7におけるアームトップの点p1~p7の座標が計測される。点p1は、旋回体11に対して作業機3を右方向にスイングさせた際の機構的限界となるスイング姿勢K1(右エンド)におけるアームトップの位置である。点p3は、平面視において作業機3が旋回体11の前後方向に平行に配置されたスイング姿勢K3(中立姿勢)におけるアームトップの位置である。点p2は、スイング姿勢K1とスイング姿勢K3の間のスイング姿勢K2におけるアームトップの位置である。スイング姿勢K2は、スイング姿勢K1とスイング姿勢K3の概ね中央に位置するように設定される。点p7は、旋回体11に対して作業機3を左方向にスイングさせた際の機構的限界となるスイング姿勢K7(左エンド)におけるアームトップの位置である。点p4は、スイング姿勢K4におけるアームトップの位置である。点p5は、スイング姿勢K5におけるアームトップの位置である。点p6は、スイング姿勢K6におけるアームトップの位置である。スイング姿勢K4、K5、K6は、スイング姿勢K3とスイング姿勢K7の間に順に設定されている。スイング姿勢K4、K5、K6は、概ねスイング姿勢K3とスイング姿勢K7の間を4等分するように設定されている。なお、スイング姿勢K2~K6は、厳密でなくてもよく、作業者による目測でよい。
【0055】
より具体的には、ステップS11において、表示入力装置70に、図10Aに示すスイング角度較正画面80が表示される。スイング角度較正画面80は、画面に表示されているスイング姿勢にするように作業者に指示を行う。スイング角度較正画面80は、左画面81と、右画面82と、X座標入力部83と、Y座標入力部84と、Z座標入力部85と、を有する。左画面81は、作業機械1の側面図を表示する。右画面82は、作業機械1の平面図を表示する。左画面81および右画面82には、プリズム91が示されている。右画面82には、トータルステーションTSが示されており、トータルステーションTSにおけるXYZ座標が示されている。
【0056】
作業者が、図10Aに示すスイング角度較正画面80に従って、目測でスイング姿勢K3になるように操作装置47を操作してスイングシリンダ31を駆動させ、作業機3を旋回体11に対して回転させる。そして、トータルステーションTSによって、プリズム91の位置座標が検出される。トータルステーションTSで検出されたXYZ座標は、作業者によってX座標入力部83と、Y座標入力部84と、Z座標入力部85に入力される。入力されたXYZ座標は、姿勢検出コントローラ68に出力される。
【0057】
XYZ座標の入力後、作業者が進む釦86を押下すると、図10Bに示すスイング角度較正画面80が表示される。図10Bのスイング角度較正画面80では、作業機3をスイング姿勢K1にするように作業者に指示が行われる。
【0058】
作業者が、スイング角度較正画面80に従って、ブーム角α1、アーム角α2、およびバケット角α3を固定した状態で旋回体11に対して作業機3を機構限界に達するまで右方向にスイングさせる。これによって作業機3がスイング姿勢K1となる。そして、トータルステーションTSによって、プリズム91の位置座標が検出される。トータルステーションTSで検出されたXYZ座標は、作業者によってX座標入力部83と、Y座標入力部84と、Z座標入力部85に入力される。入力されたXYZ座標は、姿勢検出コントローラ68に出力される。
【0059】
次に、進む釦86を押下すると、スイング角度較正画面80には、ブーム角α1、アーム角α2、およびバケット角α3を固定した状態で作業機3をスイング姿勢K2に配置させるような指示が表示される。そして、上記と同様に、スイング姿勢K2におけるトータルステーションTSで検出された点p2のXYZ座標の値が入力され、入力されたXYZの値は、姿勢検出コントローラ68に出力される。
【0060】
同様に、スイング姿勢K4~K7において、トータルステーションTSによる点p4~p7のXYZ座標の値が姿勢検出コントローラ68に出力される。
【0061】
以上の動作によって、姿勢検出コントローラ68は、スイング姿勢K1~K7におけるアームトップの点p1~p7のトータルステーションTSにおけるXYZ座標の値を取得する。
【0062】
次に、図8AのステップS12に示すように、姿勢検出コントローラ68は、最小二乗法を用いて、スイング動作平面を算出する。具体的には、式(1)および式(2)のように、点p1~p7におけるトータルステーションTSのXYZ座標をpi、その重心ベクトルをgとする。
(式1)
(式2)
点pi各点からの距離が最小となるスイング平面Uの方程式を以下の式(3)とすると、以下の式(4)より最小二乗法を用いてa, b, cが求められる。
(式3)
(式4)
スイング平面Uの法線ベクトルをNとし、原点からの距離をhとし、Nの単位ベクトルをnとすると、Nは以下の式(5)で示され、nは以下の式(6)で示され、hは以下の式(7)で示される。
(式5)
(式6)
(式7)
次に、ステップS13において、図11Aに示すように、姿勢検出コントローラ68は、点pi(i=1、2、3、4、5、6、7)をスイング平面Uに投影し、点p´i(i=1、2、3、4、5、6、7)を作成する。スイング平面Uに投影した点pi´は、以下の式(8)で表わすことができる。
(式8)
次に、ステップS20(スイング座標系の作成)のステップS21において、姿勢検出コントローラ68は、スイング点pi´(i=1、2、3、4、5、6、7)を平行移動し、スイング点p”i(i=1、2、3、4、5、6、7)を作成する。具体的には、姿勢検出コントローラ68は、以下の式(9)に示すように、スイング点p´iを-pi´平行移動した点をp”iとする。これは、スイング座標系においてp´iを原点とするためである。
(式9)
次に、ステップS22において、図11Bに示すように、姿勢検出コントローラ68は、p”1p”7ベクトルの単位ベクトルsをスイング平面Uのx軸として算出する。単位ベクトルsxは、以下の(式10)で表わされる。
(式10)
次に、ステップS23において、図11Bに示すように、姿勢検出コントローラ68は、以下の(式11)に示すように、sとn(ステップS12における法線ベクトルNの単位ベクトル)の外積sをスイング平面Uのy軸に設定する。また、姿勢検出コントローラ68は、以下の式(12)に示すように、nをスイング平面Uのz軸に設定する。
(式11)
(式12)
次に、ステップS24において、姿勢検出コントローラ68は、トータルステーションTSの座標系からスイング平面Uの座標系へと変換する行列Qを算出する。行列Qは、以下の(式13)で表わされる。
(式13)
次に、ステップS30(スイング角度計算)のステップS31において、姿勢検出コントローラ68は、以下の(式14)を用いてスイング点pi”をスイング座標系へと変換した点をスイング変換点psiとする。
(式14)
次に、図8Bに示すように、ステップS32において、姿勢検出コントローラ68は、最小二乗法を用いて、sxをx軸とし、syをy軸とするスイング平面U上においてスイング変換点psiとの誤差が最小となる円を算出する。円を以下の(式15)で表わす。
(式15)
この式15のA、BおよびCは、以下の(式16)を用いて求めることができる。
(式16)
ここで、図11Cに示すように、円の中心座標をso(a、b)とし、半径をrとすると、a、b、およびrと、A、BおよびCの関係は以下の(式17)~(式19)で表わすことができる。
(式17)
(式18)
(式19)
これにより、円の中心座標so(a、b)および半径rが求められる。
【0063】
次に、ステップS33において、姿勢検出コントローラ68は、スイング変換点ps3からスイング変換点ps1、ps2、ps4、ps5、ps6、ps7までのスイング角度θ(第1スイング角度の一例)を算出する。図11Dに示すように、スイング中心soからpsiへのベクトルをqiとする。q3が中立姿勢である。θ(i=1、2、4、5、6、7)は、以下の(式20)によって求めることができる。
(式20)
一方、ステップS34において、姿勢検出コントローラ68は、スイング姿勢K1~K7におけるスイング角度センサ67による検出値であるスイング角度データを取得する。これらのスイング角度データは、ステップS11において作業機3を旋回体11に対して旋回してスイング姿勢K1~K7にしたときに、スイング角度センサ67が取得すればよい。
【0064】
次に、ステップS35において、姿勢検出コントローラ68は、スイング姿勢K1~K7におけるスイング角度データから、各々のスイング姿勢におけるスイング角度を算出する。ここで、姿勢検出コントローラ68が算出したスイング角度θsw(第2スイング角度の一例)をθsw1sw2,・・・θsw7とする。
【0065】
次に、ステップS36において、姿勢検出コントローラ68は、スイング姿勢K1~K7の各々における角度誤差eiを算出する。角度誤差eiは、以下の(式21)によって算出される。
(式21)
次に、ステップS40において、姿勢検出コントローラ68は、スイング角度誤差テーブルT(相関テーブルの一例)を作成する。(θsw1,e1)、(θsw2,e2)、・・・(θsw7,e7)を結ぶ線分をy=ai*x+biとすると、aiとbiは以下の(式22)で表される。
(式22)
図12は、スイング角度誤差テーブルTを示す図である。図12の横軸は、スイング角度センサ67から算出したスイング角度(deg)を示す。縦軸は、スイング角度の誤差(deg)を示す。横軸に示すように、中立姿勢であるスイング姿勢K3から右方向へのスイング角度をマイナスで示し、スイング姿勢K3から左方向へのスイング角度をプラスで示している。
【0066】
図12に示すスイング角度誤差テーブルTが記憶装置69に記憶される。姿勢検出コントローラ68は、スイング角度センサ67の検出値であるスイング角度データから算出したスイング角度θswに対してスイング角度誤差テーブルTを用いて、以下の式(23)に示すように較正を行ってスイング角度θsw´を算出する。
(式23)
例えば、スイング角度センサ67から得られたスイング角度θswがθsw1とθsw2の間の場合、y=a1*x+b1の直線M1(図12参照)を用いて誤差を算出し、得られたスイング角度から誤差を引くことによって、誤差補正を行った後のスイング角度θsw´を得ることができる。なお、ステップS11は、位置情報取得ステップの一例に対応する。ステップS12、S13、S21~S24、S31~S33は、第1スイング角度算出ステップの一例に対応する。ステップS34、S35は、較正用第2スイング角度取得ステップの一例に対応する。ステップS40は、作成ステップの一例に対応する。ステップS12は、平面算出ステップの一例に対応する。ステップS20、S31は、座標変換ステップの一例に対応する。ステップS32は、円算出ステップの一例に対応する。ステップS33は、角度算出ステップの一例に対応する。ステップS36は、誤差算出ステップの一例に対応する。なお、スイング角度較正システムは、トータルステーションTSと、スイング角度センサ67と、姿勢検出コントローラ68と、を含む。
【0067】
(姿勢検出方法)
次に、本実施形態の姿勢検出方法について説明する。図13は、本実施形態の姿勢検出方法を示すフロー図である。
【0068】
はじめに、ステップS110において、姿勢検出コントローラ68は、GNSSレシーバ61から車体位置データを取得する。
【0069】
次に、ステップS120において、姿勢検出コントローラ68は、本体IMU63から本体傾斜角データを取得する。
【0070】
次に、ステップS130において、姿勢検出コントローラ68は、ブームIMU64からブーム傾斜角データを取得する。
【0071】
次に、ステップS140において、姿勢検出コントローラ68は、アームIMU65からアーム傾斜角データを取得する。
【0072】
次に、ステップS150において、姿勢検出コントローラ68は、バケットIMU66からバケット傾斜角データを取得する。
【0073】
次に、ステップS160において、姿勢検出コントローラ68は、スイング角度センサ67からスイング角度データを取得し、スイング角度データからスイング角度θswを算出する。ステップS160は、第2スイング角度取得ステップの一例に対応する。
【0074】
次に、ステップS170において、姿勢検出コントローラ68は、本体傾斜角データ、ブーム傾斜角データ、アーム傾斜角データ、およびバケット傾斜角データから、ブーム角α1、アーム角α2、およびバケット角α3を算出する。
【0075】
次に、ステップS180において、姿勢検出コントローラ68は、記憶装置69に記憶されているスイング角度誤差テーブルTに基づいてスイング角度θswにおける誤差eを算出する。姿勢検出コントローラ68は、スイング角度θswから誤差eを差し引くことによって、誤差補正後のスイング角度θsw´を算出する。ステップS180は、補正後第2スイング角度検出ステップの一例に対応する。
【0076】
次に、ステップS190において、姿勢検出コントローラ68は、車体位置データ、本体傾斜角データ、ブーム角α1、アーム角α2、バケット角α3、誤差補正後のスイング角度、および車両本体2と作業機3との形状データから、バケット23の刃先位置P10を算出する。ステップS190は、姿勢検出ステップの一例に対応する。
【0077】
次に、ステップS200において、姿勢検出コントローラ68は、現況地形データと、設計地形データと、車両本体2と作業機3との形状データと、検出した刃先位置P10に基づいて、図7に示すガイド画面72を表示入力装置70に表示する。
【0078】
(特徴等)
本実施形態のスイング角度較正方法では、トータルステーションTSで計測した位置情報から算出したスイング角度θとスイング角度センサ67の検出値から算出したスイング角度θswiとに基づいてスイング角度誤差テーブルTを作成する。作成したスイング角度誤差テーブルTを用いることで、スイング角度センサの測定誤差や、車体の組立誤差等を較正できるので、スイング角度センサ67によって精度良くスイング角度を検出することができる。
【0079】
また、複数のスイング姿勢K1~K7において取得した点p1~p7をスイング平面Uに投影し、スイング座標系においてスイング角度θを算出することによって、より精度良くスイング角度の真値であるスイング角度θiを算出することができる。真値は、第1スイング角度に対応する。
【0080】
また、既存の作業機械1に姿勢検出システム60を後付けすることによって、既存の作業機械に対してICT(Information and Communication Technology)施工を可能にすることができる。
【0081】
(他の実施形態)
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0082】
(A)
上記実施形態では、作業機3の旋回体11に対するスイング角度を検出する角度センサについて較正を行っているが、これに限らなくてもよい。例えば、旋回体11の下部構造体12に対する旋回角度を検出する角度センサに対して本開示のスイング角度較正方法を適用してもよい。また、オフセット式ショベルのスイング角度を検出する角度センサに対して本開示のスイング角度較正方法を適用してもよい。
【0083】
(B)
上記実施形態では、計測装置の一例としてトータルステーションを用いてスイング姿勢K1~K7におけるアームトップの位置の座標を取得しているが、これに限らなくてもよい。計測装置として、例えば、作業現場に配置された複数の既知の座標の基準点にバケット23の刃先を当てて座標を取得してもよい。また、無人航空機(UAV(Unmanned Aerial Vehicle))に搭載した撮像装置で作業機械の姿勢を取得してブームトップの位置座標を画像解析によって取得してもよい。さらに、作業機械に搭載している撮像装置で周辺環境を撮像し、スイングさせた前後の差分に基づいてブームトップの位置座標を取得してもよい。現場に設置された撮像装置で作業機械の姿勢を取得してもよいし、作業機械の測定対象位置にGNSSアンテナを配置し、GNSSアンテナの位置情報に基づいて作業機械の姿勢を取得してもよい。
【0084】
(C)
上記実施形態では、7つのスイング姿勢におけるアームトップの位置座標を7点取得したが、7点に限らなくてもよく、6点以下、8点以上であってもよい。また、上記(B)で記載した方法によって、7点の位置座標に対して補充を行ってもよい。
【0085】
(D)
上記実施形態ではブームトップの位置座標を取得しているが、ブームトップに限らなくてもよく、バケット23の所定位置等であってもよく、スイング動作に伴って回転する作業機3のいずれかの位置であればよい。
【0086】
(E)
上記実施形態では、スイング角度センサ67から取得したスイング角度と誤差の関係を示すスイング角度誤差テーブルが記憶装置69に記憶されているが、これに限らなくてもよく、例えば、スイング角度センサ67から取得したスイング角度と、トータルステーションTSから取得したスイング角度との関係を示す相関テーブルが記憶装置69に記憶されていてもよい。
【0087】
(F)
上記実施形態では、姿勢検出コントローラ68が、バケット23の刃先位置を検出し、且つスイング角度誤差テーブルTを作成しているが、スイング角度誤差テーブルTの作成は別のコントローラによって行われてもよい。例えば、ステップS11とステップS34のデータの取得ステップは、車載コントローラで実施し、取得したデータを車外コントローラに送信して、車外コントローラでステップS12、S13、S20、S31~S33、S36、およびS40を処理することも可能である。その場合、作成したスイング角度誤差テーブルTを車載コントローラに送信してもよい。
【0088】
(G)
上記実施形態では、姿勢検出コントローラ68と本体コントローラ51が分けて設けられているが、1つのコントローラが兼ねていてもよい。
【0089】
(H)
上記実施形態では、ガイド画面72を表示入力装置70に表示させているが、作業機械1の入力装置48がタッチパネル等のディスプレイを備えている場合には、入力装置48に表示させてもよい。その場合、通信装置71は設けられていなくてもよい。
【0090】
(I)
上記実施形態における作業機械1として油圧ショベルを用いて説明したが、油圧ショベルに限らず、機械式ショベル、ロープショベル等の他の機械であってもよい。上記の実施形態に係る作業機械1は、いわゆるバックフォー型のショベルであるが、フェースショベルであってもよい。また、下部構造体は、履帯に限らず、ホイールであってもよい。また、下部構造体は、台船等の船体であってもよい。すなわち、作業機械1は、ブームを含む作業機を備える浚渫船であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本開示によれば、作業機のスイング角度を検出する角度センサで測定する場合に生じる誤差を較正し、精度良くスイング角度を検出することが可能なスイング角度較正方法、姿勢検出方法および姿勢検出システムを提供することができる。
【符号の説明】
【0092】
1 :作業機械
2 :車両本体
3 :作業機
11 :旋回体
12 :下部構造体
67 :スイング角度センサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図9
図10A
図10B
図11A
図11B
図11C
図11D
図12
図13