(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024062844
(43)【公開日】2024-05-10
(54)【発明の名称】ブラスト加工装置における集塵機の制御方法及びブラスト加工装置
(51)【国際特許分類】
B24C 9/00 20060101AFI20240501BHJP
B24C 5/02 20060101ALI20240501BHJP
B24C 7/00 20060101ALI20240501BHJP
B23Q 11/00 20060101ALI20240501BHJP
B01D 46/44 20060101ALI20240501BHJP
B07B 1/08 20060101ALI20240501BHJP
【FI】
B24C9/00 G
B24C9/00 E
B24C9/00 B
B24C5/02 B
B24C7/00 B
B23Q11/00 M
B01D46/44
B07B1/08
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022170954
(22)【出願日】2022-10-25
(71)【出願人】
【識別番号】000154129
【氏名又は名称】株式会社不二製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002398
【氏名又は名称】弁理士法人小倉特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】間瀬 恵二
(72)【発明者】
【氏名】林 尚将
【テーマコード(参考)】
3C011
4D021
4D058
【Fターム(参考)】
3C011BB02
4D021FA25
4D021GA12
4D021GB10
4D021HA10
4D058JA04
4D058KB05
4D058NA04
4D058QA01
4D058QA03
4D058QA05
4D058QA21
4D058SA20
4D058UA11
4D058UA25
4D058UA30
(57)【要約】
【課題】比較的簡単で,かつ確実な方法で,ブラスト加工装置に設けた集塵機の風量を一定に維持する。
【解決手段】前記集塵機30の集塵フィルタ33の二次側流路36の所定位置における差圧ΔP(図示の例において空間38内の圧力と大気圧との差圧ΔP
1)を検出し,該検出された前記差圧ΔPに基づいて把握される前記集塵機30の通過風量Qを,予め設定された目標風量Q
0に近付けるように,インバータ61によるPID制御等によって集塵機30の排風機31に設けたファンモータ312及び該ファンモータ312により駆動されるファン311の回転速度を制御する風量制御を実行する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業空間を備えたキャビネットと,該キャビネット内で投射されて粉塵と共に回収された投射材を導入して分級する風力選別機から成る分級機と,前記分級機で分級された再使用可能な投射材を貯留する投射材タンクと,前記分級機内の空気を吸引して排気する,ファンを備えた集塵機を有し,前記集塵機による吸引により前記分級機内に発生させた空気流による風力選別により再使用可能な投射材を前記投射材タンクに回収するブラスト加工装置において,
前記集塵機の集塵フィルタの二次側に設けた流路である二次側流路における差圧を検出し,該検出された前記差圧に基づいて把握される前記集塵機の通過風量を,予め設定された目標風量に近付けるように,前記ファンの回転速度を制御する風量制御を行うことを特徴とするブラスト加工装置における集塵機の制御方法。
【請求項2】
前記二次側流路中に前記ファンを設けると共に,該ファンの二次側において前記二次側流路を大気開放し,
前記二次側流路における前記差圧として,前記集塵フィルタと前記ファンとの間における前記二次側流路内の空間の圧力と大気圧との差圧を検出し,
検出された前記空間の圧力と大気圧との前記差圧と,該差圧の検出時における前記ファンの回転速度から,予め設定した関係式に基づいて,前記集塵機の前記通過風量を算出し,
該算出された通過風量を前記目標風量に近付けるよう,前記ファンの回転速度を制御する前記風量制御を実行することを特徴とする請求項1記載のブラスト加工装置における集塵機の制御方法。
【請求項3】
前記二次側流路における前記差圧として,前記二次側流路内に設けたオリフィス前後の差圧を検出し,
検出された前記オリフィス前後の前記差圧を,前記目標風量に対応する前記オリフィス前後の差圧として予め設定された目標差圧に近付けるよう前記ファンの回転速度を制御する前記風量制御を実行することにより,前記通過風量を前記目標風量に近付けることを特徴とする請求項1記載のブラスト加工装置における集塵機の制御方法。
【請求項4】
前記二次側流路における前記差圧として,前記二次側流路内に設けたオリフィス前後の差圧を検出し,
検出された前記オリフィス前後の前記差圧と予め設定した関係式に基づいて,前記集塵機の前記通過風量を算出し,
該算出された通過風量を前記目標風量に近付けるよう,前記ファンの回転速度を制御する前記風流制御を実行することを特徴とする請求項1記載のブラスト加工装置における集塵機の制御方法。
【請求項5】
使用開始初期における前記集塵フィルタに目の拡大を生じさせ得る前記集塵機の通過風量を限界風量として設定すると共に,
前記通過風量が,前記限界風量未満となるよう前記ファンの回転速度を制御することを特徴とする請求項1~4いずれか1項記載のブラスト加工装置における集塵機の制御方法。
【請求項6】
前記集塵フィルタに破損を生じさせ得る前記集塵フィルタ前後の圧力差を耐圧限界圧力差として予め測定し,
前記集塵フィルタと前記ファンとの間における前記二次側流路内の前記空間の圧力と大気圧との差圧の測定値が,前記耐圧限界圧力差として設定された数値未満となるよう前記ファンの回転速度を制御することを特徴とする請求項2記載のブラスト加工装置における集塵機の制御方法。
【請求項7】
前記ファンの回転速度が所定の上限回転速度に達したとき,前記ファンを非常停止させることを特徴とする請求項1~4いずれか1項記載のブラスト加工装置における集塵機の制御方法。
【請求項8】
作業空間を備えたキャビネットと,該キャビネット内で投射されて粉塵と共に回収された投射材を導入して分級する風力選別機から成る分級機と,前記分級機で分級された再使用可能な投射材を貯留する投射材タンクと,前記分級機内の空気を吸引して排気する,ファンを備えた集塵機を有し,前記集塵機による吸引により前記分級機内で発生させた空気流による風力選別により再使用可能な投射材を前記投射材タンクに回収するブラスト加工装置において,
前記集塵機の集塵フィルタの二次側に設けた流路である二次側流路における差圧を検出する圧力検出手段と,
該圧力検出手段が検出した前記差圧に基づいて把握される前記集塵機の通過風量を,予め設定された目標風量に近付けるように,前記ファンの前記回転速度を制御する風量制御を実行する制御装置を備えることを特徴とするブラスト加工装置。
【請求項9】
前記二次側流路中に前記ファンを設けると共に,該ファンの二次側において前記二次側流路を大気開放し,
前記圧力検出手段として,前記集塵フィルタと前記ファン間における前記二次側流路内の空間の圧力と大気圧との差圧を検出する圧力センサを設け,
前記制御装置が,前記圧力センサが検出した前記大気圧との差圧と該差圧の検出時における前記ファンの回転速度から,予め設定した関係式に基づいて,前記集塵機の前記通過風量を算出し,該算出された通過風量を前記目標風量に近付けるよう,前記ファンの回転速度を制御する前記風量制御を実行することを特徴とする請求項8記載のブラスト加工装置。
【請求項10】
前記圧力検出手段が,前記二次側流路内に設けたオリフィス前後の差圧を検出する差圧センサであり,
前記制御装置が,前記差圧センサが検出した前記オリフィス前後の差圧を,前記目標風量に対応する前記オリフィス前後の差圧として予め設定された目標差圧に近付けるよう前記ファンの回転速度を制御する前記風量制御を実行することにより,前記通過風量を前記目標風量に近付けるように制御することを特徴とする請求項8記載のブラスト加工装置。
【請求項11】
前記圧力検出手段が,前記二次側流路内に設けたオリフィス前後の差圧を検出する差圧センサであり,
前記制御装置が,前記差圧センサが検出した前記オリフィス前後の差圧から,予め設定された関係式に基づいて,前記集塵機の前記通過風量を算出し,該算出された通過風量を前記目標風量に近付けるよう,前記ファンの回転速度を制御する前記風量制御を実行することを特徴とする請求項8記載のブラスト加工装置。
【請求項12】
前記制御装置は,
使用開始初期における前記集塵フィルタに目の拡大を生じさせ得る前記集塵機の通過風量を限界風量として記憶すると共に,
前記通過風量が,前記限界風量未満となるよう前記ファンの回転速度を制御することを特徴とする請求項8~10いずれか1項記載のブラスト加工装置。
【請求項13】
前記制御装置は,
前記集塵フィルタに破損を生じさせ得る前記集塵フィルタ前後の圧力差を耐圧限界圧力差として記憶し,
前記集塵フィルタと前記ファンとの間における前記二次側流路内の前記空間の圧力と大気圧との差圧の測定値が,前記耐圧限界圧力差未満となるよう,前記ファンの回転速度を制御することを特徴とする請求項9記載のブラスト加工装置。
【請求項14】
前記制御装置は,
前記ファンの回転速度が所定の上限回転速度に達したとき,前記ファンを非常停止させることを特徴とする請求項8~11いずれか1項記載のブラスト加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,金属,鉱物,セラミック,ガラス,樹脂,植物の種子殻等の粒状体から成る投射材をワークに対して乾式で投射して行う,サンドブラスト加工,ショットブラスト加工,ショットピーニング加工等の加工方法(本明細書では,これらを総称して「ブラスト加工」という。)に使用されるブラスト加工装置における集塵機の制御方法,及び前記集塵機の制御方法を実行するブラスト加工装置に関する。
【0002】
なお,本明細書において投射材の「投射」には,圧縮空気等の圧縮ガスの噴流に乗せて行う投射,遠心力を利用した投射,及び,打撃による投射等,ワークに向けて投射材を乾式にて加速して投射し得る既知の各種の方法を含み得る。
【背景技術】
【0003】
ワークに対して圧縮空気の噴流と共に投射材の投射を行うエア式のブラスト加工装置の構成例を
図9に示す。
【0004】
図9に示すブラスト加工装置1は,内部に設けた作業空間11に圧縮空気と共に投射材を噴射するブラストノズル12が配置されたキャビネット10を備え,このキャビネット10の作業空間11内でワーク(図示せず)に対し投射材を投射することで加工を行うことができるように構成されている。
【0005】
前述のキャビネット10の底部10aはホッパ状に形成されており,作業空間11内で投射された投射材を,破砕した投射材や,投射材との衝突によってワークが削れて生じた切削粉等の粉塵と共にキャビネット10の底部10aに回収することができるように構成されている。
【0006】
このキャビネット10の底部10aは回収ダクト13を介してサイクロン等の風力選別機から成る分級機20に連通されていると共に,この分級機20は排気ダクト21を介して排風機31を備えた集塵機30に連通されている。
【0007】
従って,該集塵機30に設けた排風機31を作動させて分級機20内の排気を行うことで,キャビネット10の底部10aに粉塵と共に回収された投射材が回収ダクト13を介して分級機20内に導入され,分級機20内で分級された再使用可能な投射材は,分級機20の底部に連結された投射材タンク22に回収される。
【0008】
一方,再使用可能な投射材と分離された粉塵は,分級機20内の空気と共に排気ダクト21を介して集塵機30内に吸引され,集塵機30に設けた集塵フィルタ33によって粉塵が除去された後,清浄な空気が排気口313cを介して機外に排出されるように構成されている。
【0009】
このようにして投射材タンク22に回収された投射材は,投射材ホース23を介して再度,キャビネット10の作業空間11内に配置されたブラストノズル12に供給されてブラストノズル12よりワーク(図示せず)に向けて噴射されることで,投射材を循環使用することができるように構成されている。
【0010】
以上のように構成されたブラスト加工装置1に設けられている前述の集塵機30は,内部に形成された空気の流路中に集塵フィルタ33が設けられていることから,集塵フィルタ33に粉塵が付着して目詰まりが生じると,集塵機30を通過する風量が減少して,分級機20内の空気を吸引する力(吸引力)が低下する。
【0011】
そして,集塵機30の吸引力が低下すると,サイクロン等の風力選別機によって構成されている前述の分級機20内を通過する空気の風量が減少(風速が低下)するため,分級機20の分級性能が低下して投射材と共に投射材タンク22に回収される粉塵の量が増加する。
【0012】
このようにして再使用可能なものとして回収された投射材中に混在する粉塵等の異物の量が増えると,回収された投射材を使用して行われるブラスト加工の精度が低下するため,一定の品質でブラスト加工を継続して行うことができなくなる。
【0013】
なお,集塵機30には集塵フィルタ33の目詰まりに対処するために手動式のシェイキングレバー35が設けられており,集塵フィルタ33の目詰まりによって集塵機30の吸引力が低下した場合には,このシェイキングレバー35を操作して集塵フィルタ33に捕集された粉塵を払い落とすことで集塵機30の通過風量(吸引力)を回復させることができるように構成されている。
【0014】
しかしながら,シェイキングレバー35によって集塵フィルタ33に捕集された粉塵を除去することにより集塵機30の吸引力が回復したとしても,集塵機30の通過風量(吸引力)の変化,従って,分級機20を通過する風量は経時と共に集塵フィルタ33の目詰まりが進行するに従って低下した後,シェイキングレバー35を操作して集塵フィルタ33に付着した粉塵を払い落とすことによって一気に回復することから,
図10に示すように鋸歯状の変化を示す。
【0015】
その結果,シェイキングレバー35の操作による通過風量(吸引力)の回復には,集塵機30の通過風量(吸引力)を安定させる効果はなく,従って,分級機20の分級性能を安定させる効果もない。
【0016】
このように,ブラスト加工装置1に設けた分級機20の分級性能は,集塵機30に設けた集塵フィルタ33の目詰まり等に伴う集塵機30の吸引力の低下と共に低下することから,集塵フィルタ33の目詰まり等の影響を受けずに,常に一定の風量で分級機20内の空気を吸引することができる集塵機30を備えたブラスト加工装置の提供が要望されている。
【0017】
なお,ブラスト加工装置用の集塵機に関する発明ではないが,後掲の特許文献1には,HEPAフィルタ(高効率粒子空気フィルタ/High-Efficiency Particulate Air Filter)を組み込んだ天井カセット型空気調和装置において,HEPAフィルタの目詰まりに伴い風量が変化することを防止するために,HEPAフィルタの一次側と二次側の圧力を測定して初期状態からの圧力損失の増加分ΔPtを演算により求め,求めた圧力損失の増加分ΔPtに基づいて,集塵機に設けたファンモータのトルクを上昇させることでHEPAフィルタを通過する風量の減少分を増加して補うことが提案されている(特許文献1の請求項1,請求項2,段落[0019]-[0020],
図1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
先に紹介した特許文献1に記載の空気調和装置では,HEPAフィルタによって生じる圧力損失を検出して,圧力損失の初期値に対し検出された圧力損出の増加分ΔPtに伴う風量の減少を,ファンモータのトルクを上昇させることにより補うことで,空気調和装置を通過する空気の風量をHEPAフィルタの目詰まりの進行によっても一定に維持することができるものとなっている。
【0020】
従って,
図9を参照して説明したブラスト加工装置1の集塵機30に設けた排風機31のファンモータ312の制御を,特許文献1に倣って集塵フィルタ33の一次側と二次側の圧力を測定して得た圧力損失の増加分ΔPtに対応してトルクを上昇させる制御を行えば,集塵フィルタ33を通過する風量を一定に維持することができ,これにより分級機20を通過する風量についても一定に維持して分級機20の分級性能を安定させることができることになる。
【0021】
しかしながら,特許文献1に記載の方法によりブラスト加工装置1に設けた集塵機30の制御を行う場合,下記のような問題が生じ得る。
【0022】
流体の流量Q(m3/s)は,該流体が通過する流路の面積A(m2)と,流体の流速V(m/s)の積(Q=AV)として表すことができる。
ここで,流体の速度V(m/s)はベルヌーイの定理より,
V=(2q/ρ)1/2・・・(式1)
qは動圧(Pa),ρは流体密度(kg/cm3)
である。
従って,流体の流量Q(m3/s)は,
Q=AV=A(2q/ρ)1/2・・・(式2)
となる。
【0023】
上記の式2より,流体が通過する流路の面積A(m2)が一定であり,且つ,流体の密度が一定であれば,流体の流量Q(m3/s)の変化は,動圧q(Pa)の変化に基づいて求めることができる。
【0024】
しかしながら,特許文献1に記載の方法に倣って,集塵機30に設けた集塵フィルタ33を通過する空気の風量を計測しようとした場合,集塵フィルタ33の一次側と二次側の圧力差(動圧)と流体(空気)の密度が判っていても,流路面積A(m2),即ち,フィルタの目開の合計面積が判明していなければ風量を求めることはできない。
【0025】
この集塵フィルタ33の目開の合計面積(流路面積A)は,使用するフィルタのグレード,製造業者,サイズ等の各種の条件によりそれぞれ固有の初期値を有するだけでなく,集塵フィルタ33の目詰まりに伴って経時と共に変化することから,これを測定することは困難である。
【0026】
そのため,引用文献1の方法に従い経時的に増加する圧力損失の増加分Δptに基づいて演算処理によって必要な風量の増加分ΔFu(圧力損失の増加に伴う風量の減少分)を求め,この風量の増加分ΔFuの増加が得られるファンモータのトルク上昇を得ようとすれば,予め実験を行って,集塵機30と集塵フィルタ33の組み合わせ毎に,初期値となる圧力損失値と通過風量を測定しておくと共に,粉塵を捕集させて風量を減少させた際に,この風量の減少に対し圧力損失がどのように変化するかを測定し,圧力損出の増加分ΔPtと,これに対応した風量増加分ΔFuの関係式を得ておくことが必要となる(特許文献1の段落[0019])。
【0027】
しかも,このような関係式は,ブラスト加工装置を作動させて集塵フィルタ33に粉塵を捕集させる等して実際に集塵フィルタに目詰まりを生じさせなければ測定することができず,測定には長時間を要する。
【0028】
また,特許文献1の方法では,ファンモータのトルクを制御することにより集塵フィルタ33を通過する風量を増大させていることから,必要な風量増加分ΔFを加味した全風量Futとファンモータのトルクとの関係についても予め実験によって求めておくことが必要で(特許文献1の段落[0020]),制御を行うための下準備に多大な労力を必要とするだけでなく,制御の際に行わなければならない演算処理も多くなるために制御が複雑となる。
【0029】
しかも,特許文献1に記載の方法では,同じ集塵機30を使用する場合であっても,集塵機30に装着する集塵フィルタ33を例えば異なるグレードや製造業者のものに交換する等して,圧力損失や通過風量の初期値,圧力損失の増加分ΔPtと必要な風量増加分ΔFの関係に変化が生じると,このような集塵フィルタ33の交換を行う度に上記各データを実験的に取得し直す必要があると共に,関係式や制御プログラムの組み直しが必要となる。
【0030】
更に,特許文献1に記載の方法による制御では,集塵フィルタ33の目詰まりに伴って生じる通過風量の減少についてはこれを補うことができるものの,それ以外の原因による風量の減少(例えば,回収ダクトや排気ダクトの内壁に対する投射材や粉塵の付着に伴う流路の狭窄に伴う通過風量の減少等)には対応することができない。
【0031】
そこで本発明は,上記従来技術における欠点に鑑みて成されたものであり,比較的簡単な方法によって集塵機の通過風量,従って,分級機の通過風量を一定に維持することで,分級機の分級性能を一定に維持することができるだけでなく,集塵フィルタを異なるグレードのものに交換する等して,集塵フィルタが有する圧力損失や通過風量の初期値,圧力損失と通過風量の関係等に変動が生じた場合であっても,関係式の再設定や制御プログラムの組み替え等を行うことなく通過風量を一定に維持することができ,しかも,集塵フィルタの目詰まりによる風量の減少のみならず,回収ダクトや排気ダクトの内壁に対する投射材や粉塵の付着等,集塵フィルタやその一次側で生じた流路の狭窄等を原因とする通過風量の減少全般についても防止し得るブラスト加工装置における集塵機の制御方法及び該集塵機の制御方法を実行するブラスト加工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0032】
以下に,課題を解決するための手段を,発明を実施するための形態で使用する符号と共に記載する。この符号は,特許請求の範囲の記載と発明を実施するための形態の記載との対応を明らかにするためのものであり,言うまでもなく,本発明の技術的範囲の解釈に制限的に用いられるものではない。
【0033】
上記目的を達成するために,本発明のブラスト加工装置1における集塵機30の制御方法は,
作業空間11を備えたキャビネット10と,該キャビネット10内で投射されて粉塵と共に回収された投射材を導入して分級する風力選別機から成る分級機20と,前記分級機20で分級された再使用可能な投射材を貯留する投射材タンク22と,前記分級機20内の空気を吸引して排気する,ファン311を備えた集塵機30を有し,前記集塵機30による吸引により前記分級機20内に発生させた空気流による風力選別により再使用可能な投射材を前記投射材タンク22に回収するブラスト加工装置1において,
前記集塵機30の集塵フィルタ33の二次側に設けた流路である二次側流路36における差圧ΔP(ΔP1又はΔP2)を検出し,該検出された前記差圧ΔP(ΔP1又はΔP2)に基づいて把握される前記集塵機30の通過風量Qを,予め設定された目標風量Q0に近付けるように,前記ファン311の回転速度を制御する風量制御を行うことを特徴とする(請求項1)。
【0034】
上記集塵機30の制御方法において,
前記二次側流路36中に前記ファン311を設けると共に,該ファン311の二次側において前記二次側流路36を大気開放し,
前記二次側流路36における前記差圧ΔPとして,前記集塵フィルタ33と前記ファン311との間における前記二次側流路36内の空間38の圧力と大気圧との差圧ΔP1を検出し,
検出された前記空間38の圧力と大気圧との前記差圧ΔP1と,該差圧ΔP1の検出時における前記ファン311の回転速度(実施例では回転速度に対応するインバータの出力Inv)から,予め設定した関係式〔例えば,Q=f(ΔP1,Inv)〕に基づいて,前記集塵機30の前記通過風量Qを算出し,
該算出された通過風量Qを前記目標風量Q0に近付けるよう,前記ファン311の回転速度を制御する前記風量制御を実行するようにしても良い(請求項2)。
【0035】
上記構成に代えて,
前記二次側流路36における前記差圧ΔPとして,前記二次側流路36内に設けたオリフィス41前後の差圧ΔP2を検出し,
検出された前記オリフィス41前後の前記差圧ΔP2を,前記目標風量Q0に対応する前記オリフィス41前後の差圧として予め設定された目標差圧ΔP0に近付けるよう前記ファン311の回転速度を制御する前記風量制御を実行することにより,前記通過風量Qを前記目標風量Q0に近付けるようにしても良い(請求項3)。
【0036】
又は,
前記二次側流路36における前記差圧ΔPとして,前記二次側流路36内に設けたオリフィス41前後の差圧ΔP2を検出し,
検出された前記オリフィス41前後の前記差圧ΔP2と予め設定した関係式〔例えば,Q=f(ΔP2)〕に基づいて,前記集塵機30の前記通過風量Qを算出し,
該算出された通過風量Qを前記目標風量Q0に近付けるよう,前記ファン311の回転速度を制御する前記風量制御を実行するようにしても良い(請求項4)。
【0037】
上記いずれの構成においても
使用開始初期における前記集塵フィルタ33に目の拡大を生じさせ得る前記集塵機30の通過風量を限界風量Qmaxとして設定すると共に,
前記通過風量Qが,前記限界風量Qmax未満となるよう前記ファン311の回転速度(停止を含む)を制御することが好ましい(請求項5)。
【0038】
また,前記集塵フィルタ33と前記ファン311間における前記二次側流路36内の前記空間38の圧力と大気圧との差圧ΔP
1を検出する構成(請求項2:
図1,
図2参照)にあっては,
前記集塵フィルタ33に破損を生じさせ得る前記集塵フィルタ33前後の圧力差を耐圧限界圧力差ΔPfmaxとして予め測定し,
前記集塵フィルタ33と前記ファン311との間における前記二次側流路36内の前記空間38の圧力と大気圧との差圧ΔP
1の測定値が,前記耐圧限界圧力差ΔPfmaxとして設定された数値未満となるよう前記ファン311の回転速度(停止を含む)を制御することが好ましい(請求項6)。
【0039】
更に,
前記ファン311の回転速度が所定の上限回転速度に達したとき,前記ファン311を非常停止させるようにしても良い(請求項7)。
【0040】
また,本発明のブラスト加工装置1は,
作業空間11を備えたキャビネット10と,該キャビネット10内で投射されて粉塵と共に回収された投射材を導入して分級する風力選別機から成る分級機20と,前記分級機20で分級された再使用可能な投射材を貯留する投射材タンク22と,前記分級機20内の空気を吸引して排気する,ファン311を備えた集塵機30を有し,前記集塵機30による吸引により前記分級機20内で発生させた空気流による風力選別により再使用可能な投射材を前記投射材タンク22に回収するブラスト加工装置1において,
前記集塵機30の集塵フィルタ33の二次側に設けた流路である二次側流路36における差圧ΔP(ΔP1又はΔP2)を検出する圧力検出手段50と,
該圧力検出手段50が検出した前記差圧ΔP(ΔP1又はΔP2)に基づいて把握される前記集塵機30の通過風量Qを,予め設定された目標風量Q0に近付けるように,前記ファン311の前記回転速度を制御する風量制御を実行する制御装置60を備えることを特徴とする(請求項8)。
【0041】
上記構成のブラスト加工装置1において,
前記二次側流路36中に前記ファン311を設けると共に,該ファン311の二次側において前記二次側流路36を大気開放し,
前記圧力検出手段50として,前記集塵フィルタ33と前記ファン311間における前記二次側流路36内の空間38の圧力と大気圧との差圧ΔP1を検出する圧力センサ51を設け,
前記制御装置60が,前記圧力センサ51が検出した前記大気圧との差圧ΔP1と該差圧ΔP1の検出時における前記ファン311の回転速度(実施例では回転速度に対応するインバータの出力Inv)から,予め設定した関係式〔例えば,Q=f(ΔP1,Inv)〕に基づいて,前記集塵機30の前記通過風量Qを算出し,該算出された通過風量Qを前記目標風量Q0に近付けるよう,前記ファン311の回転速度を制御する前記風量制御を実行するように構成するものとしても良い(請求項9)。
【0042】
又は,
前記圧力検出手段50を,前記二次側流路36内に設けたオリフィス41前後の差圧ΔP2を検出する差圧センサ52とし,
前記制御装置60が,前記差圧センサ52が検出した前記オリフィス41前後の差圧ΔP2を,前記目標風量Q0に対応する前記オリフィス41前後の差圧として予め設定された目標差圧ΔP0に近付けるよう前記ファン311の回転速度を制御する前記風量制御を実行することにより,前記通過風量Qを前記目標風量Q0に近付けるように制御するようにしても良い(請求項10)。
【0043】
更には,
前記圧力検出手段50を,前記二次側流路36内に設けたオリフィス41前後の差圧ΔP2を検出する差圧センサ52とし,
前記制御装置60が,前記差圧センサ52が検出した前記オリフィス41前後の差圧ΔP2から,予め設定された関係式〔例えば,Q=f(ΔP2)〕に基づいて,前記集塵機30の前記通過風量Qを算出し,該算出された通過風量Qを前記目標風量Q0に近付けるよう,前記ファン311の回転速度を制御する前記風量制御を実行するようにしても良い(請求項11)。
【0044】
上記いずれのブラスト加工装置1共に,
前記制御装置60は,
使用開始初期における前記集塵フィルタ33に目の拡大を生じさせ得る前記集塵機30の通過風量を限界風量Qmaxとして記憶すると共に,
前記通過風量Qが,前記限界風量Qmax未満となるように前記ファン311の回転速度(停止を含む)の制御を行うように構成するものとしても良い(請求項12)。
【0045】
更には,前記集塵フィルタ33と前記ファン311間における前記二次側流路36内の前記空間38の圧力と大気圧との差圧ΔP1を検出する構成(請求項9)にあっては,
前記制御装置60に,
前記集塵フィルタ33に破損を生じさせ得る前記集塵フィルタ33前後の圧力差を耐圧限界圧力差ΔPfmaxとして記憶させ,
前記集塵フィルタ33と前記ファン311との間における前記二次側流路36内の前記空間38の圧力と大気圧との差圧ΔP1の測定値が,前記耐圧限界圧力差ΔPfmaxとして設定された数値未満となるよう前記ファン311の回転速度(停止を含む)の制御を行わせるようにしても良い(請求項13)。
【0046】
更には,
前記制御装置60を,
前記ファン311の回転速度が所定の上限回転速度に達したとき,前記ファン311を非常停止させるように構成するものとしても良い(請求項14)。
【発明の効果】
【0047】
以上で説明した本発明の構成により,本発明の制御方法でブラスト加工装置1の集塵機30を制御することで,以下の効果を得ることができた。
【0048】
集塵機30の集塵フィルタ33の二次側に設けた流路である二次側流路36における差圧ΔP(ΔP1又はΔP2)を検出し,該差圧ΔP(ΔP1又はΔP2)に基づいて把握された二次側流路36の通過風量Qを,目標風量Q0に近付けるようにファン311の回転速度を制御する風量制御を実行することで,分級機20を通過する風量についても一定量に安定させることができ,集塵機30の集塵フィルタ33に目詰まり等が生じた場合であっても分級機20の分級性能を変化させることなく,回収される投射材の質を一定に維持することができた。
【0049】
その結果,本発明の制御方法で集塵機30の制御を行ったブラスト加工装置1では,回収された投射材を循環して複数回に亘り使用した場合であっても,加工精度を一定に維持することができた。
【0050】
しかも,二次側流路36における差圧ΔP(ΔP1又はΔP2)に基づいて把握される通過風量Qを目標風量Q0に近付けるという極めて簡単かつ単純な制御でありながら,集塵フィルタ33を例えば目の粗い,又は,目が密な異なるグレードのものに変更する等して集塵フィルタ33の特性が変化したような場合であっても,制御用のプログラムや演算式等に変更を加えることなく分級機20内を通過する空気の風量を一定に維持することができた。
【0051】
二次側流路36をファン311の二次側で大気開放した構成では,集塵フィルタ33とファン311との間における二次側流路36内の空間38の圧力と大気圧との差圧ΔP1と,該差圧ΔP1の検出時におけるファン311の回転速度(実施例では回転速度に対応するインバータの出力Inv)から,予め設定した簡単な関係式〔例えば,Q=f(ΔP1,Inv)〕に基づいて,二次側流路36の通過風量Qを演算処理によって求めることができ,単一の圧力センサ51で検出した圧力(大気圧との差圧ΔP1)に基づいて容易に分級機20内の通過風量を一定に維持することができた。
【0052】
なお,二次側流路36内の所定位置に設けたオリフィス41前後の差圧ΔP2を検出して通過風量Qを制御する構成では,二次側流路36を大気開放した構成に限定されず,二次側流路36に対し更に他の機器が接続されている場合であっても,他の機器の接続に伴う排気抵抗の増大の影響を受けることなく二次側流路36の通過風量Qが目標風量Q0に近付けるように制御することができた。
【0053】
その結果,オリフィス41の二次側において二次側流路36に更にHEPAフィルタ等を設けて排気の清浄化等を図った場合であっても,HEPAフィルタの目詰まりの進行に伴う排気抵抗の変化等に影響されることなく通過風量Qを一定に維持することができた。
【0054】
しかも,このように二次側流路36に設けたオリフィス41前後の差圧ΔP2を測定して通過風量Qの制御を行う前述の風量制御を行うようにした構成では,検出されたオリフィス41前後の差圧ΔP2を直接用いて,設定された目標差圧ΔP0に近付けるようにファン311の回転速度を制御する風量制御を行うだけで,演算式等に基づいて通過風量Qを求めることなく通過風量Qを目標風量Q0に近付ける制御を行うことも可能である。
【0055】
更に,特許文献1として紹介した制御方法では,フィルタの目詰まりに伴う風量低下にしか対応できないものであったが,本発明のいずれの方法で制御された集塵機共に,集塵フィルタ33の目詰まりを原因とする通過風量の低下の他,例えば回収ダクト13や排気ダクト21の内壁に対する投射材や粉塵の堆積等に伴う流路の狭窄等,差圧ΔP(ΔP1又はΔP2)の測定位置よりも一次側で生じた流路抵抗の増大を原因とする通過風量Qの減少全般に対応することができた。
【0056】
なお,集塵機30に取り付ける集塵フィルタ33は,一般に「バグフィルタ」と呼ばれる袋状のフィルタであり,この袋状の集塵フィルタ33内に浄化対象とする空気を導入すると共に通過させることで集塵を行う構造となっている。
【0057】
この集塵フィルタ33は,ある程度目詰まりが進むと空気の導入によって膨らんで,集塵フィルタ33の全体を均一に空気が通過するようになる。
【0058】
しかしながら,使用開始初期の目詰まりが生じていない状態で空気を導入しても,集塵フィルタ33は均一に膨らまずにしぼんだ状態となっているため,集塵フィルタ33のうち,空気の導入方向前方にある部分のみを集中的に空気が通過する。
【0059】
その結果,集塵フィルタ33が使用開始初期の状態にあるときに通過風量Qを過度に増大させてしまうと,集中的に空気が通過する部分の目が,他の部分の目に比較して押し広げられて拡大してしまうことがあり,これにより集塵フィルタ33の機能が損なわれてしまう場合がある。
【0060】
これに対し,使用開始初期の前記集塵フィルタ33に目の拡大を生じさせ得る前記集塵機30の通過風量を限界風量Qmaxとして設定すると共に,前記通過風量Qの検出値が,前記限界風量Qmaxとして設定された数値未満となるように前記ファン311の回転速度(停止を含む)を制御することで,使用開始初期における集塵フィルタ33に機能損失が生じることを好適に防止できた。
【0061】
また,前記集塵フィルタ33と前記ファン311間における前記二次側流路36内の空間38の圧力と大気圧との差圧ΔP
1を検出する構成(
図1及び
図2に記載の構成)にあっては,前記空間38の圧力と大気圧との差圧ΔP
1は,常に集塵フィルタ33前後の圧力差以上の値となる。
【0062】
従って,前記集塵フィルタ33に破損を生じさせ得る前記集塵フィルタ33前後の圧力差を耐圧限界圧力差ΔPfmaxとして予め測定し,前記空間38の圧力と大気圧との差圧ΔP1の測定値が,前記耐圧限界圧力差ΔPfmaxとして設定された数値未満となるように前記ファン311の回転速度(停止を含む)を制御することで,集塵フィルタ33の目詰まりに伴い通過風量Qを目標風量Q0に近付けるためにファン311の回転速度が集塵フィルタ33を破損させるまで上昇することを防止できた。
【0063】
また,前述したいずれの集塵機30の制御方法でも,集塵機30に設けた集塵フィルタ33の目詰まりが進行するに従いファン311の回転速度を上昇させることとなるが,該ファン311が所定の上限速度に達したときにファン311を非常停止させることで,前記上限速度をファンモータ312の定格回転速度以下の範囲で適切に設定することにより,ファンモータ312が定格値を超えて駆動されることにより破損すること防止できると共に,例えば,ファンモータ312の回転速度の変化と集塵フィルタ33の一次側と二次側の圧力差の変化の対応関係を予め実験的に求めておき,該圧力差が集塵フィルタ33の耐圧性能を超えない範囲,好ましくは耐圧性能に対し所定の余裕分低い値となるように前述の上限速度を設定しておくことにより,集塵フィルタ33の一次側と二次側の圧力差が集塵フィルタ33の耐圧性能を越えて上昇することを防止して,集塵フィルタ33が破損することを防止できた。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【
図1】二次側流路の圧力と大気圧との差圧ΔP
1に基づいた風量制御を行う場合の集塵機と制御装置の構成例を示した説明図。
【
図2】
図1の構成で使用する集塵機のファン部分の断面図。
【
図3】空間38の圧力と大気圧との差圧ΔP
1と通過風量Q,及びファンモータの動力W(W
0,W
0+σ,W
0+2σ)の関係の一例を示したグラフ。
【
図4】二次側流路に設けたオリフィス前後の差圧ΔP
2に基づいた風量制御を行う場合の集塵機と制御装置の構成例を示した説明図。
【
図5】
図4の構成で使用する集塵機のファン部分の断面図。
【
図6】二次側流路に設けたオリフィス前後の差圧ΔP
2に基づいた風量制御を行う場合の集塵機と制御装置の別の構成例を示した説明図。
【
図10】従来の集塵機の通過風量の変化を示した模式図(シェイキングレバーによる粉塵の除去を定期的に行う場合)。
【発明を実施するための形態】
【0065】
次に,本発明の実施形態につき添付図面を参照しながら以下説明する。
【0066】
〔ブラスト加工装置の全体構成〕
本発明の制御方法が適用されるブラスト加工装置1が,作業空間11を備えたキャビネット10と,該キャビネット10内で投射されて粉塵と共に回収された投射材を導入して分級する風力選別機から成る分級機20と,前記分級機20で分級された再使用可能な投射材を貯留する投射材タンク22と,前記分級機20内の空気を吸引して排気する,ファン311を備えた集塵機30を備えている点は,
図9を参照して説明した既知のブラスト加工装置1と同様である。
【0067】
そして,集塵機30に設けたファン311の回転によって分級機20内の空気を吸引して排気すると,キャビネット10の底部10aに溜まった投射材が粉塵と共に回収ダクト13を介して分級機20に導入され,該分級機20内における分級によって再使用可能な投射材が投射材タンク22内に回収されると共に,排気ダクト21を介して分級機20内の空気と共に粉塵が集塵機30内に回収されて,集塵機30内の集塵フィルタ33によって粉塵が除去された後の清浄な空気を集塵機30の排気口(
図1;313c)より排出できるように構成されている点も
図9を参照して説明した既知のブラスト加工装置1の構成と同様である。
【0068】
なお,
図9を参照して説明したブラスト加工装置1では,投射材タンク22に回収された投射材を,投射材ホース23を介してキャビネット10内に配置されたブラストノズル12に導入可能とした『循環式』のブラスト加工装置1の構成例を示したが,本発明の制御方法が適用されるブラスト加工装置1は,投射材タンク22に投射材を回収する工程までを行い得るものであれば,回収された投射材をブラストノズル12に再循環させる構成は必ずしも必要ではない。
【0069】
〔本発明における制御の概要〕
前述した既知のブラスト加工装置1に対し,本発明のブラスト加工装置1には,集塵機30の集塵フィルタ33の二次側に設けられた空気の流路である二次側流路36に,該二次側流路36における差圧ΔP(ΔP1又はΔP2)を検出する圧力検出手段50(51,52)を設け,検出された差圧ΔP(ΔP1又はΔP2)に基づいて集塵機30の通過風量Qの変化を把握することができるようにした。
【0070】
そして,本発明のブラスト加工装置1では,この圧力検出手段50(51,52)が検出した差圧ΔP(ΔP1又はΔP2)に基づいて把握される通過風量Qを,予め設定された目標風量Q0に近付けるように集塵機30に設けたファン311の回転速度を制御する風量制御を行う制御装置60を設けることにより,分級機20内を通過する空気の流量を一定量に維持して分級機20の分級性能を変化させることなく維持できるようにした。
【0071】
このような集塵機30のファン311の回転速度の制御を可能とすべく,本発明のブラスト加工装置の集塵機30では,ファンモータ312を三相交流モータ,好ましくは,インバータ制御用の三相交流モータと成すと共に,
図1,
図4及び
図6に示すように,前述の制御装置60の構成に,図示せざる電源(例えば商用電源)からの交流を一旦直流に変換した後,任意の周波数の交流に変換して出力するインバータ61を含めることで,ファンモータ312に対して出力する交流の周波数を変化させることができるようにした。
【0072】
このインバータ61は,既知のV/f制御等の方法により出力周波数(Hz)の増加に伴い出力Inv(kW)が増大すると共に,出力周波数(Hz)が減少するに従い出力Inv(kW)が低下するように構成されており,従って,インバータ61の出力Inv(kW)を上昇させることでファンモータ312の動力(W)と共に回転速度が増加し,インバータ61の出力Inv(kW)を低下させることでファンモータ312の動力(W)と共に回転速度が低下する。
【0073】
そして,インバータ61が有するPID制御の機能により,圧力検出手段50が検出した二次側流路36における差圧ΔP(ΔP1又はΔP2)に基づいて把握される通過風量Qを,予め設定された目標風量Q0に近付けるようにインバータ61の出力Inv(kW)を変化させることで,集塵機30を通過する通過風量Qを目標風量Q0に可及的に一致させることができる。
【0074】
〔制御装置の構成例1〕
図1に,排気口313cが大気開放された集塵機30を制御対象とする場合の制御装置60の構成例を示す。
【0075】
図1で制御対象とする集塵機30は,一例として
図2に示すように集塵フィルタ33を収容するフィルタケーシング32に,分級機20と連通する排気ダクト21が接続される吸気口32aを設けると共に,集塵フィルタ33を通過した空気を排出する出口32bを設け,この出口32bにファン311及びファンモータ312を備えた排風機31を取り付けることで,この排風機31によってフィルタケーシング32内を吸引することができるように構成されている。
【0076】
この排風機31は,フィルタケーシング32の出口32bに取り付けられた円筒状のダクト314と,このダクト314に連通する入口313aと,ファン311を収容する収容空間313b,及び大気開放された排気口313cを備えたファンケーシング313を備えている。
【0077】
従って,
図2の集塵機30の構成では,排風機31のダクト314からファンケーシング313の排気口313cに至る部分が,集塵フィルタ33の二次側に設けられた二次側流路36を構成すると共に,この二次側流路36中にファン311が配置されていると共に,ファン311の二次側において二次側流路36の端部(排気口313c)が大気開放された構造となっている。
【0078】
このような集塵機30を制御対象とする
図1の構成では,集塵フィルタ33とファン311間の空間(ダクト314内の空間)38の圧力と大気圧との差圧(ゲージ圧の絶対値)ΔP
1を検出する圧力センサ51を前述の圧力検出手段50として設けると共に,圧力センサ51が検出した差圧ΔP
1と,該差圧ΔP
1の検出時におけるファン311の回転速度〔ファン311の回転速度に対応するインバータ61の出力Inv(kW)〕に基づいて,予め与えられた関係式を使用して通過風量Qを演算する演算装置62を設けている。
【0079】
そして,演算装置62の演算結果である通過風量Qを,インバータ61に入力することで,インバータ61に通過風量Qが目標風量Q0に近付くようにファンモータ312に対する出力Invを変化させるPID制御によって前述した風量制御を行わせている。
【0080】
従って,
図1に示す構成では,前述の演算装置62とインバータ61により,集塵機30のファン311の回転速度を制御する制御装置60が実現されている。
【0081】
集塵フィルタ33とファン311間の空間(ダクト314内の空間)38の圧力と大気圧の差圧ΔP
1と,集塵機30の通過風量Q,及びファン311の回転速度に対応するファンモータ312の動力Wとの間には,一例として
図3に示すような関係があり,集塵機30の通過風量Qは,空間38の圧力と大気圧との差圧ΔP
1とファンモータ312の動力Wの関数で,関係式Q=f(ΔP
1,W)の関係がある。
【0082】
ここで,ファンモータ312の動力Wは,ファンモータ312に入力されるインバータの出力Inv(kW)に比例することから,二次側流路36の通過風量Qは,空間38内の圧力と大気圧との差圧ΔP1とインバータの出力Invの関数で,関係式Q=f(ΔP1,Inv)の関係がある。
【0083】
従って,この関係式Q=f(ΔP
1,Inv)を実験的に求めておき,これを演算装置62に予め記憶させておくことで,
図1に示すように圧力センサ51が検出した空間38の圧力と大気圧の差圧ΔP
1と,インバータの出力Invに基づき,演算装置62に通過風量Qの演算を行わせることができる。
【0084】
そして,この演算装置62が演算によって求めた通過風量Qをインバータに入力し,PID制御等の既知の制御によってインバータ61が,入力された通過風量Qを,予め設定された目標風量Q0に近付けるように出力Inv(kW)を変化させることで,集塵フィルタ33に目詰まりが生じた場合は勿論,集塵フィルタ33を異なるグレードのものに交換等した場合,更には集塵フィルタ33の一次側における如何なる流路抵抗の増大に対しても,集塵機30を通過する風量を一定に維持させることができる。
【0085】
〔制御装置の構成例2〕
以上,
図1を参照して行った説明では,排気口313cが大気開放された集塵機30を制御対象とする場合の構成例を説明した。
【0086】
この構成では,二次側流路36を通過する空気の排気抵抗(背圧)は大気圧で一定であり変化しないことから,一般的な圧力センサ51によって検出されたダクト314内の空間38のゲージ圧(大気圧との差圧)ΔP1と,差圧ΔP1検出時のインバータ61の出力Invから二次側流路36内を通過する通過風量Qの変化を求めることができた。
【0087】
しかしながら,
図4及び
図5に示すように,排風機31の排気口313cに,更に排気管40を接続し,この排気管40の二次側に更にHEPAフィルタ等の後段の機器を接続する場合,空間38内のゲージ圧(大気圧との差圧)ΔP
1に基づいて二次側流路36の通過風量Qを把握することができなくなる。
【0088】
従って,二次側流路36に更に後段の機器の接続が行われるような場合には,例えば
図4及び
図5に示すように,排風機31のファンケーシング313に設けた排気口313cに,オリフィス41を備えた排気管40を接続して二次側流路36を延長し,オリフィス41の前後の差圧ΔP
2を二次側流路における差圧ΔPとして検出し,このオリフィス41前後の差圧ΔP
2に基づいて通過風量Qを制御する前述の風量制御を実行する。
【0089】
ブラスト加工装置1の常用使用温度範囲内における使用では,二次側流路36の通過風量Qとオリフィス41前後の差圧ΔP2との間には,Q=f(ΔP2)の関係があり,通過風量Qは,オリフィス41前後の差圧ΔP2のみの関数によって求めることができる。
【0090】
従って,前述したように二次側流路36内の所定位置に設けたオリフィス41前後の差圧ΔP2の変化は,これをそのまま集塵機30の通過風量Qの変化として把握することができる。
【0091】
そのため
図4に示すようにオリフィス41前後の差圧ΔP
2を検出する差圧センサ52(圧力検出手段50)によって検出された差圧ΔP
2をインバータ61に入力すると共に,インバータ61に,入力されたオリフィス41前後の差圧ΔP
2を目標風量Q
0に対応する差圧として予め記憶させておいた目標差圧ΔP
0に近付けるように出力Invを変化させるPID制御を行わせることで,二次側流路36の通過風量Qを目標風量Q
0に可及的に近付ける風量制御を実行することができる。
【0092】
この構成では,
図4に示すように差圧センサ52(圧力検出手段50)が検出したオリフィス41前後の差圧ΔP
2を直接,インバータ61に入力して集塵機30のファンモータ312の運転を制御するものであることから,インバータ61のみによって集塵機30の動作を制御する制御装置60が構成されている。
【0093】
もっとも,
図4に示した構成に代えて,
図6に示すように差圧センサ52が検出したオリフィス41前後の差圧ΔP
2を受信して,このオリフィス41前後の差圧ΔP
2と予め記憶させておいた関係式Q=f(ΔP)に基づいて二次側流路36の通過風量Qを算出する演算装置62を設け,この演算装置62の演算結果として得た通過風量Qをインバータ61に入力して,インバータ61が,入力された通過風量Qを,予め設定された目標風量Q
0に近付けるように出力Invを変化させるPID制御によって前述の風量制御を行うようにしても良い。
【0094】
この
図6に示す構成では,前述した演算装置62とインバータ61の組み合わせにより,集塵機30の運転を制御する制御装置60が構成される。
【0095】
図4及び
図6を参照して説明したように二次側流路36に設けたオリフィス41前後の差圧ΔP
2に基づいて通過風量Qを把握する構成では,排気抵抗の変化に影響されることなく通過風量Qの変化を把握できることから,排気管40の二次側に更にHEPAフィルタ等の後段の機器を接続した場合であっても,通過風量Qを一定に制御することができる。
【0096】
また,このように排気管40の二次側における排気抵抗の影響を受けずに通過風量Qの制御が可能であることから,排気管40の二次側に後段の機器を接続した構成に限定されず,排気管40の二次側の端部を大気開放した構成を採用した場合であっても通過風量Qを一定に維持することができる。
【0097】
〔その他〕
なお,
図1~
図6を参照して説明した構成では,集塵フィルタ33の目詰まりが進行するに従いインバータ61の出力Invが増大してファンモータ312の回転速度が上昇するため,目詰まりの進行と共に際限なくインバータ61の出力Invを上昇させてゆくとファンモータ312の動力が定格値を超えて運転されることとなる。
【0098】
また,ファン311の回転速度の上昇に伴い,集塵フィルタ33の一次側と二次側の圧力差が増大するため,ファンモータ312の回転速度を際限なく上昇させてゆくと集塵フィルタ33の一次側と二次側の圧力差が集塵フィルタ33の耐圧性能を越えて増大することとなり,集塵フィルタ33が破損して使用できなくなるおそれがある。
【0099】
そのため,例えば集塵機30の制御装置60を構成する前述のインバータ61に,出力Invの上限値を設定する上限設定手段(図示せず)を設け,インバータ61の出力Invが,ファンモータ312の定格動力や集塵フィルタ33の耐圧性能を考慮して予め設定した上限値に達すると,インバータ61が出力を停止してファンモータ312を非常停止させるように構成するものとしても良い。
【0100】
また,インバータ61の出力Invが前述した上限値に達したとき,又は,前述した上限値に対し所定の低い値に達したとき,警告灯を点灯や警告音の発生等によりオペレータに対し警告を行うことにより,シェイキングレバー35の操作により集塵フィルタ33に溜まった粉塵の払い落としや集塵フィルタ33の交換を促すようにしても良い。
【0101】
更に,前述したように使用開始初期の目詰まりが生じていない状態の集塵フィルタ33の通過風量Qを過度に増大させてしまうと,集中的に空気が通過する部分の目が,他の部分の目に比較して押し広げられて拡大してしまい集塵フィルタ33の機能が損なわれてしまう場合があるが,このような目の拡大を生じさせ得る集塵機30の通過風量を限界風量Qmaxとして設定すると共に,前記通過風量Qの検出値が,前記限界風量Qmaxとして設定された数値未満となるように前記ファン311の回転速度(停止を含む)を制御することで,使用開始初期における集塵フィルタ33に機能損失が生じることを防止できるようにしても良い。
【0102】
また,前記集塵フィルタ33と前記ファン311間における前記二次側流路36内の空間38の圧力と大気圧との差圧ΔP
1を検出する構成(
図1及び
図2に記載の構成)にあっては,前記空間38の圧力と大気圧との差圧ΔP
1は,常に,集塵フィルタ33前後の圧力差以上の値となる。
【0103】
従って,前記集塵フィルタ33に破損を生じさせ得る前記集塵フィルタ33前後の圧力差を耐圧限界圧力差ΔPfmaxとして予め測定し,前記空間38の圧力と大気圧との差圧ΔP1の測定値が,前記耐圧限界圧力差ΔPfmaxとして設定された数値未満となるよう前記ファン311の回転速度(停止を含む)を制御することで,集塵フィルタ33に破損が生じることを防止できるようにしても良い。
【実施例0104】
次に,本発明の方法でブラスト加工装置用の集塵機の制御を行った場合の効果確認試験の結果を以下に示す。
【0105】
なお,試験は,後述するように
図1,
図2を参照して説明した装置構成に対応する〔試験1〕と,
図4及び
図5を参照して説明した装置構成に対応する〔試験2〕の2パターンで行った。
【0106】
〔試験1〕
(1)試験装置
図7に示すように,排気口313cが大気開放されているブラスト加工装置用集塵機(不二製作所製「D4715」)30を制御対象とし,この集塵機30のファンモータ312(定格出力0.75kW)を演算装置(シーケンサ)62とインバータ61から成る制御装置60により制御した。
【0107】
集塵機30の排風機31に設けたダクト314内の空間38(
図2参照)のゲージ圧を検出する圧力センサ51を圧力検出手段50として設け,この圧力検出手段50(51)が検出したゲージ圧の絶対値を,空間38の圧力と大気圧との差圧ΔP
1として演算装置62に入力した。
【0108】
演算装置62とインバータ61を通信可能に接続し,演算装置62がリアルタイムでインバータ61の出力Invをモニタできるようにすると共に,圧力検出手段50(51)が検出した大気圧との差圧ΔP1とインバータの出力Invに基づき演算装置62が予め記憶した関係式〔Q=f(ΔP1,Inv)〕に従い演算によって求めた通過風量Qをインバータ61に対し出力できるようにし,インバータ61が,受信した通過風量Qを予め設定された目標風量Q0に近付けるように出力Invを変化させるPID制御により風量制御を実行できるように構成した。
【0109】
集塵機30の通過風量を実測するために,排気口313c付近の同一垂直断面上の5カ所にアネモマスター風速計(図示せず)を設置して5つの風速計で測定した風速の平均値に排気口313cの断面積を乗じることで集塵機30の通過風量(m3/min)を算出した。
【0110】
(2)事前準備
(2-1) 関係式〔Q=f(H,Inv)〕の取得と設定
図7に示した集塵機30の吸気口32aの開度を徐々に狭めて集塵フィルタに目詰まりが進行した状態を擬似的に作成することにより,ダクト314内の空間38の圧力と大気圧の差圧ΔP
1を1.4kPa~1.9kPaの範囲で変化させると共に,インバータの出力Invを0.4kW~0.7kWの範囲で変化させて,Q=f(ΔP
1,Inv)の関係式として,
Q=0.55・Inv/ΔP
1
を取得し,この関係式を演算装置62に記憶させた。
【0111】
(2-2) 目標風量Q0の取得と設定
集塵機30の吸気口32aを全開とし,インバータ61を介さずにファンモータ312に直接,商用電源(50Hz,200V)を接続した際に得られた通過風量である11.44m3/minを目標風量Q0としてインバータ61に記憶させた。
【0112】
(3)試験方法及び試験結果
本発明の制御方法でファンモータ312が制御されている集塵機30の吸気口32aを全開の状態から半開の状態へと変化させて集塵フィルタ33の目詰まりが進行した状態を擬似的に作り出し,通過風量(実測値),風量変化率(全開時に対する変化率),大気圧との差圧ΔP1,インバータ出力Inv(kW),及びインバータの出力周波数(Hz)がどのように変化するかを測定した。
【0113】
比較例として,インバータ61を介さずに集塵機30のファンモータ312を商用電源(50Hz,200V)に直接接続して駆動させた集塵機30の吸気口32aを全開の状態から半開の状態へと変化させて通過風量(実測値)と風量変化率(全開時に対する変化率)を測定した。
【0114】
測定結果を,下記の表1に示す。
【0115】
【0116】
上記の結果から,本発明の制御を行っていない集塵機(比較例)では,吸気口32aを全開とした場合の通過風量が11.44m3/minであったのに対し,半開では10.12m3/minと11.5%もの通過風量の減少が見られた。
【0117】
これに対し,本発明の方法で制御されている集塵機では,吸気口32aを全開とした時の通過風量である11.62m3/minに対し,半開とした時の通過風量は11.27m3/minと風量の低下を3%に抑えることができ,集塵機30の通過風量を高精度で一定に維持できていることが確認できた。
【0118】
しかも,本発明の方法で制御されている集塵機では,集塵機の吸気口32aの開口面積を半開に絞った場合にも通過風量を略一定に制御することができていることからも明らかなように,集塵フィルタの目詰まりに伴う通過風量の減少に限らず,差圧ΔP1の測定位置の一次側で生じた流路面積の減少(例えば,回収ダクトや排気ダクトの内壁に対する投射材や粉塵の付着に伴う流路面積の狭窄等)に伴う風量の減少全般を防止することができる。
【0119】
〔試験2〕
(1)試験装置
図8に示す試験装置を使用して試験を行った。この試験装置において制御対象とした集塵機30は定格出力0.75kWのファンモータを有するブラスト加工装置用集塵機(不二製作所製「D4715」)であり,この集塵機のファンモータ312に,制御装置60としてインバータ61を接続した。
【0120】
集塵機30の排気口313cにオリフィス41を備えた排気管40を接続して二次側流路36を延長し,二次側流路36を構成する排気管40に,オリフィス41前後の差圧ΔP2を検出する差圧センサ52を圧力検出手段50として設けた。
【0121】
この差圧センサ52が検出したオリフィス41前後の差圧ΔP2をインバータ61に入力し,インバータ61が受信したオリフィス41前後の差圧ΔP2を,予め設定された目標差圧ΔP0に近付けるように出力Invを変化させるPID制御によって風量制御を実行するように構成した。
【0122】
集塵機30の通過風量を実測するために,排風管40の出口付近(オリフィス41より十分離れており,オリフィス41前後の差圧ΔP2の測定に影響を及ぼさない位置)の同一垂直断面上の5カ所にアネモマスター風速計(図示せず)を設置して5つの風速計で測定した風速の平均値に排気管40の断面積を乗じることで集塵機の通過風量(m3/min)を算出した。
【0123】
(2)事前準備
(2-2) 目標差圧ΔP0の取得と設定
集塵機30の吸気口32aを全開とし,インバータを介さずにファンモータ312に直接,商用電源(50Hz,200V)を接続した際に差圧センサ52が検出したオリフィス41前後の差圧ΔP2である260Paを目標差圧ΔP0としてインバータ61に記憶させた。
【0124】
(3)試験方法及び試験結果
本発明の方法で制御されている集塵機30の吸気口32aを全開の状態から半開の状態へと変化させて,集塵フィルタの目詰まりが進行した状態を擬似的に作り出し,通過風量(実測値),風量変化率(全開時に対する変化率),オリフィス前後の差圧ΔP2(Pa),インバータの出力Inv(kW),及びインバータの出力周波数(Hz)がどのように変化するかを測定した。
【0125】
比較例として,インバータ61を介さずにファンモータ312を商用電源(50Hz,200V)に直接接続して駆動させている集塵機の吸気口32aを全開の状態から半開の状態へと変化させ,通過風量(実測値)と風量変化率(全開時に対する変化率)を測定した。
測定結果を,下記の表2に示す。
【0126】
【0127】
以上の結果から,本発明の制御を行っていない集塵機(比較例)では,吸気口32aを全開とした場合の通過風量が10.81m3/minであったのに対し,半開では9.49m3/minと12.2%も通過風量が減少した。
【0128】
これに対し,本発明の方法で制御されている集塵機では,全開時の通過風量10.85m3/minに対し,半開時の通過風量は10.89m3/minと風量の低下を0.4%に抑えることができ,集塵機の通過風量を高精度で一定に維持することができていることが確認できた。
【0129】
また,集塵機の吸気口の開口面積を半開とした場合にも通過風量を略一定に制御することができていることからも明らかなように,集塵機のオリフィス前後の差圧Δpに基づきファンモータの回転速度を制御する本試験例の構成においても,集塵フィルタの目詰まりに伴う通過風量の減少に限らず,差圧ΔP2の測定位置の一次側で生じた流路面積の減少(例えば,回収ダクトや排気ダクトの内壁に対する投射材や粉塵の付着に伴う流路面積の狭窄等)に伴う風量の減少全般に対応可能である。