(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024062853
(43)【公開日】2024-05-10
(54)【発明の名称】シールド掘進機における流動化液材の供給部構造
(51)【国際特許分類】
E21D 9/06 20060101AFI20240501BHJP
【FI】
E21D9/06 301M
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022170974
(22)【出願日】2022-10-25
(71)【出願人】
【識別番号】000140292
【氏名又は名称】株式会社奥村組
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森 竜生
(72)【発明者】
【氏名】今北 公宏
【テーマコード(参考)】
2D054
【Fターム(参考)】
2D054AC04
2D054DA39
2D054FA03
(57)【要約】
【課題】流動化液材を噴射させつつ地盤を切削してゆく際に、簡易な構成によって、切削された土砂が噴射部に入り込むのを回避できる泥土圧式のシールド掘進機における流動化液材の供給部構造を提供する。
【解決手段】側周面11aに液材吐出開口12を有する吐出筒体11と、吐出筒体11の外側に環状に設けられたガイド壁部13と、液材吐出開口12を覆って装着された弾性スリーブ部材14とを含んで構成される。弾性スリーブ部材14は、吐出筒体11の先端部分にナット状部材15が螺着されることで、吐出筒体11の側周面11aに位置決めされている。ナット状部材15は、外周縁部から掘進方向X後方側に延設する環状スカート部15aを有している。環状スカート部15aは、弾性スリーブ部材14の掘進方向X前方側の先端部分を、外側から覆うようにして配置される。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カッタチャンバに充填された泥土によって切羽部を安定させつつ、回転カッタにより地盤を切削する泥土圧式のシールド掘進機において、塑性流動化した泥土を生成させる流動化液材を、カッタチャンバに供給するための供給部構造であって、
前記流動化液材の供給配管と連通すると共に、前記回転カッタから掘進方向前方側に突出して設けられた、側周面に複数の液材吐出開口を有し、且つ閉塞された先端部を有する有天筒状の吐出筒体と、該吐出筒体の外側に間隔をおいて環状に設けられたガイド壁部と、複数の前記液材吐出開口を覆って前記吐出筒体の側周面に密着した状態で装着された弾性スリーブ部材とを含んで構成されており、
前記弾性スリーブ部材は、前記吐出筒体の先端部分の側周面に形成された雄ネジ突条に、内周面に雌ネジ突条が形成されたナット状部材が螺着されていることによって、前記吐出筒体の側周面に位置決めされており、
且つ前記ナット状部材は、外周縁部から掘進方向後方側に延設する環状スカート部を有しており、該環状スカート部は、位置決めされた前記弾性スリーブ部材の掘進方向前方側の先端部分を、外側から覆うようにして配置されているシールド掘進機における流動化液材の供給部構造。
【請求項2】
前記ガイド壁部は、掘進方向前方側に向けて拡経する、テーパ状壁面部を備えている請求項1記載のシールド掘進機における流動化液材の供給部構造。
【請求項3】
前記弾性スリーブ部材は、JIS K 6253 に基づく硬度がA55~A75の天然ゴムからなる請求項1又は2記載のシールド掘進機における流動化液材の供給部構造。
【請求項4】
前記天然ゴムは、5~10mmの厚さを有している請求項3記載のシールド掘進機における流動化液材の供給部構造。
【請求項5】
前記ナット状部材の前記環状スカート部は、内周面を、前記弾性スリーブ部材の掘進方向前方側の先端部分の外周面に、密着させた状態で取り付けられている請求項1~4のいずれか1項記載のシールド掘進機における流動化液材の供給部構造。
【請求項6】
前記回転カッタに両側の端部を接合させて、帯状緩衝壁部材が、前記吐出筒体の径方向に延設すると共に、これの内周面と前記吐出筒体の先端部との間に間隔を保持した状態で、掘進方向前方側から見て前記吐出筒体と重なるように配置されて取り付けられている請求項1~5のいずれか1項記載のシールド掘進機における流動化液材の供給部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールド掘進機における流動化液材の供給部構造に関し、特に、泥土圧式のシールド掘進機において、塑性流動化した泥土を生成させる流動化液材を、カッタチャンバに供給するための供給部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
シールド掘進機として、泥土圧式のシールド掘進機は、切羽部の地盤を回転カッタにより切削することでカッタチャンバに取り込まれた土砂に、好ましくは作泥剤等の塑性流動化剤を含む液材を混合することによって、塑性流動化した泥土を生成し、生成された泥土がカッタチャンバに充填されることにより生じた泥土圧によって、切羽部を安定させつつ、切羽部の地盤を掘削してゆく掘進機である。
【0003】
また、このような泥土圧式のシールド掘進機では、駆動装置によって回転駆動される回転カッタによって地盤が切削される際に、回転カッタに設けられた供給部から、塑性流動化剤を含む液材が切羽面の地盤に向けて供給されることで、掘削された土砂は、チャンバ内で塑性流動化剤を含む液材と共に撹拌されることになる(例えば、特許文献1参照)。塑性流動化剤を含む液材と共に撹拌されて塑性流動化した泥土は、切羽部の地盤の掘削に伴って、カッタチャンバを区画する隔壁に一端部が開口しているスクリューコンベアを介して、カッタチャンバに充填された泥土による泥土圧が生じている状態を保持しつつ、シールド掘進機の後方に排土されることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、塑性流動化剤を含む流動化液材を回転カッタから切羽部の地盤に向けて供給するための供給部の構造として、例えば
図6示すような、流動化液材を吐出させる吐出口が、回転カッタによる切削中の土砂によって目詰まりしないようにしたものが提案されている。
図6において提案されている流動化液材の供給部の構造50では、流動化液材の供給配管51と連通して設けられた、側周面に複数の液材吐出開口53を有し、且つ閉塞された先端部54を備える有天筒状の吐出筒体52と、液材吐出開口53を覆って吐出筒体52の側周面に密着して装着された弾性スリーブ部材55とを含んで構成されており、液材吐出開口53は、弾性スリーブ部材55によって覆われていることで、切削中の土砂によって目詰まりしないように工夫されている。また弾性スリーブ部材55は、ナット状部材56が吐出筒体52の先端部分に螺着されることで、位置ずれしないように位置決めされた状態となっている。
【0006】
そして、
図6において提案されている流動化液材の供給部の構造50では、供給配管51を介して圧送されてきた流動化液材は、その圧力によって、弾性スリーブ部材55を持ち上げるようにしながら液材吐出開口53から吐出されると共に、吐出された流動化液材は、持ち上げた弾性スリーブ部材55と、吐出筒体52の側周面との間の隙間を介して、弾性スリーブ部材55の両側の端部から勢いよく噴出されることになると共に、特に弾性スリーブ部材55における掘進方向X後方側の端部から噴出した流動化液材は、吐出筒体52の外側に環状に設けられたガイド壁部57のテーパ状壁面部57aに衝突した後に、ガイド壁部57によって案内されつつ、反対の掘進方向X前方側に向けて拡散しながら噴出されて行くことになる。
【0007】
しかしながら、
図6において提案されている流動化液材の供給部の構造50では、シールド掘進機(
図1参照)を掘進方向Xに前進させながら、流動化液材を噴射させつつ回転カッタによって切羽部の地盤を切削してゆく際に、流動化液材の圧送圧力によってめくれあがった弾性スリーブ部材55の掘進方向X前方側の端部の隙間に、掘進時の圧力により切削された土砂が逆に入り込むことによって、当該隙間を閉塞するおそれがあると思われる。
【0008】
めくれあがった弾性スリーブ部材55の掘進方向X前方側の端部の隙間に、切削された土砂が入り込んだ場合には、油圧力によって入り込んだ土砂を除去する処置を施すことが考えられるが、油圧力によって除去しようとすると、相当量の油が地盤に流入することになって、環境への負荷を増大させることになる。このようなことから、泥土圧式のシールド掘進機を掘進方向Xに前進させながら、流動化液材を噴射させつつ回転カッタによって切羽部の地盤を切削してゆく際に、簡易な構成によって、弾性スリーブ部材の掘進方向前方側の端部の隙間に、切削された土砂が入り込むことになるのを、効果的に回避できるようにする手段の開発が望まれている。
【0009】
本発明は、泥土圧式のシールド掘進機を掘進方向に前進させながら、流動化液材を噴射させつつ回転カッタによって切羽部の地盤を切削してゆく際に、簡易な構成によって、弾性スリーブ部材の掘進方向前方側の端部の隙間に、切削された土砂が入り込むことになるのを効果的に回避することのできるシールド掘進機における流動化液材の供給部構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、カッタチャンバに充填された泥土によって切羽部を安定させつつ、回転カッタにより地盤を切削する泥土圧式のシールド掘進機において、塑性流動化した泥土を生成させる流動化液材を、カッタチャンバに供給するための供給部構造であって、前記流動化液材の供給配管と連通すると共に、前記回転カッタから掘進方向前方側に突出して設けられた、側周面に複数の液材吐出開口を有し、且つ閉塞された先端部を有する有天筒状の吐出筒体と、該吐出筒体の外側に間隔をおいて環状に設けられたガイド壁部と、複数の前記液材吐出開口を覆って前記吐出筒体の側周面に密着した状態で装着された弾性スリーブ部材とを含んで構成されており、前記弾性スリーブ部材は、前記吐出筒体の先端部分の側周面に形成された雄ネジ突条に、内周面に雌ネジ突条が形成されたナット状部材が螺着されていることによって、前記吐出筒体の側周面に位置決めされており、且つ前記ナット状部材は、外周縁部から掘進方向後方側に延設する環状スカート部を有しており、該環状スカート部は、位置決めされた前記弾性スリーブ部材の掘進方向前方側の先端部分を、外側から覆うようにして配置されているシールド掘進機における流動化液材の供給部構造を提供することにより、上記目的を達成したものである。
【0011】
そして、本発明のシールド掘進機における流動化液材の供給部構造は、前記ガイド壁部が、掘進方向前方側に向けて拡経する、テーパ状壁面部を備えていることが好ましい。
【0012】
また、本発明のシールド掘進機における流動化液材の供給部構造は、前記弾性スリーブ部材が、JIS K 6253 に基づく硬度がA55~A75の天然ゴムからなっていることが好ましい。
【0013】
さらに、本発明のシールド掘進機における流動化液材の供給部構造は、前記天然ゴムが、5~10mmの厚さを有していることが好ましい。
【0014】
さらにまた、本発明のシールド掘進機における流動化液材の供給部構造は、前記ナット状部材の前記環状スカート部が、内周面を、前記弾性スリーブ部材の掘進方向前方側の先端部分の外周面に、密着させた状態で取り付けられていることが好ましい。
【0015】
また、本発明のシールド掘進機における流動化液材の供給部構造は、前記回転カッタに両側の端部を接合させて、帯状緩衝壁部材が、前記吐出筒体の径方向に延設すると共に、これの内周面と前記吐出筒体の先端部との間に間隔を保持した状態で、掘進方向前方側から見て前記吐出筒体と重なるように配置されて取り付けられていることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明のシールド掘進機における流動化液材の供給部構造によれば、泥土圧式のシールド掘進機を掘進方向に前進させながら、流動化液材を噴射させつつ回転カッタによって切羽部の地盤を切削してゆく際に、簡易な構成によって、弾性スリーブ部材の掘進方向前方側の端部の隙間に、切削された土砂が入り込むことになるのを効果的に回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の好ましい一実施形態に係る流動化液材の供給部構造を採用した、泥土圧式のシールド掘進機の縦断面図である。
【
図2】
図1の泥土圧式のシールド掘進機を、掘進方向の前方側から見た正面図である。
【
図3】本発明の好ましい一実施形態に係る流動化液材の供給部構造を説明する、
図1のA部拡大断面図である。
【
図4】(a)は、本発明の好ましい一実施形態に係る流動化液材の供給部構造の拡大断面図、(b)は、弾性スリーブ部材の拡大断面図である。
【
図5】(a)、(b)は、流動化液材の供給部構造の他の形態を例示する拡大断面図である。
【
図6】従来の流動化液材の供給部の構造を説明する拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の好ましい一実施形態に係るシールド掘進機における流動化液材の供給部構造10(
図3、
図4(a)参照)は、
図1に示す泥土圧式のシールド掘進機30において、カッタチャンバ31に取り込まれた掘削土砂を、塑性流動化させて泥土としてカッタチャンバ31に充填することを目的として、好ましくは作泥剤を含む流動化液材を、切羽部33の地盤に向けて供給するための、流動化液材の供給部の構造として採用されたものである。
【0019】
すなわち、泥土圧式のシールド掘進機30は、切羽部33の地盤を回転カッタ32により切削することでカッタチャンバ31に取り込まれた土砂に、好ましくは作泥剤等の塑性流動化剤を含む液材を混合することによって、塑性流動化した泥土を生成し、生成された泥土をカッタチャンバ31に充填することにより生じた泥土圧によって、切羽部33を安定させながら、切羽部33の地盤を掘削してゆくものである。
【0020】
また、
図1に示す泥土圧式のシールド掘進機30は、公知の泥土圧式シールド掘進機と同様の構造を備えており、カッタ駆動装置34によって回転駆動される回転カッタ32により切羽部33の地盤を切削し、隔壁35によって先端部分に区画されたカッタチャンバ31において、取り込まれた切削土砂を撹拌する際に、例えば後述する回転カッタ32の円形基盤部32a、及び選択された一本の切削スポーク32bの先端部分に配置された、2箇所の供給部32c(
図2参照)から、塑性流動化剤を含む液材が、切羽部33の地盤に向けて供給されるようになっている。塑性流動化剤を含む液材と混合撹拌されて、塑性流動化した泥土は、切羽部33の地盤を掘削しつつシールド掘進機30が前進するのに伴って、カッタチャンバ31内の泥土圧により切羽部33を安定させた状態に保持しつつ、隔壁35に一端部が開口しているスクリューコンベア36を介して、シールド掘進機30の後方に排土されることになる。
【0021】
ここで、塑性流動化剤を含む流動化液材を回転カッタ32から切羽部33の地盤に向けて供給するための供給部32cの構造としては、上述の
図6に示すような、流動化液材を吐出させる吐出開口53を弾性スリーブ部材55で覆うことにより、回転カッタ32で切削中の土砂によって吐出開口53が目詰まりしないようにする構造が提案されているが、
図6の供給部32cの構造では、シールド掘進機30を掘進方向Xに前進させながら、流動化液材を噴射させつつ回転カッタ32によって切羽部33の地盤を切削してゆく際に、弾性スリーブ部材55の掘進方向X前方側の端部の隙間に、切削された土砂が入り込んで目詰りすることが考えられる。
【0022】
本実施形態のシールド掘進機における流動化液材の供給部構造10は、このような、塑性流動化剤を含む流動化液材を回転カッタ32から切羽部33の地盤に向けて供給する、供給部32cの構造に特有の技術的課題を解決せんとする意図の下になされたものであり、泥土圧式のシールド掘進機30を掘進方向Xに前進させながら、流動化液材を噴射させつつ回転カッタ32によって切羽部33の地盤を切削してゆく際に、簡易な構成によって、弾性スリーブ部材14の掘進方向X前方側の端部の隙間に、切削された土砂が入り込むことになるのを、効果的に回避できるようになっている。
【0023】
そして、本実施形態のシールド掘進機における流動化液材の供給部構造10(
図4(a)参照)は、カッタチャンバ31に充填された泥土によって切羽部33を安定させつつ、回転カッタ32により地盤を切削する泥土圧式のシールド掘進機30(
図1参照)において、塑性流動化した泥土を生成させる流動化液材を、カッタチャンバ31に供給するための供給部の構造であって、
図3及び
図4(a)に示すように、流動化液材の供給管20と連通すると共に、回転カッタ32から掘進方向X前方側に突出して設けられた、側周面11aに複数の液材吐出開口12を有し、且つ閉塞された先端部11bを有する有天筒状の吐出筒体11と、この吐出筒体11の外側に間隔をおいて環状に設けられたガイド壁部13と、複数の液材吐出開口12を覆って吐出筒体11の側周面11aに密着した状態で装着された弾性スリーブ部材14とを含んで構成されている。弾性スリーブ部材14は、吐出筒体11の先端部分の側周面11aに形成された雄ネジ突条(図示せず)に、内周面に雌ネジ突条(図示せず)が形成されたナット状部材15が螺着されていることによって、吐出筒体11の側周面11aに位置決めされており、且つナット状部材15は、外周縁部から掘進方向X後方側に延設する環状スカート部15aを有しており、この環状スカート部15aは、位置決めされた弾性スリーブ部材14の掘進方向X前方側の先端部分を、外側から覆うようにして配置されている。
【0024】
また、本実施形態の流動化液材の供給部構造10では、ガイド壁部13は、掘進方向X前方側に向けて拡経する、テーパ状壁面部13aを備えている。
【0025】
本実施形態では、泥土圧式のシールド掘進機30は、
図1及び
図2に示すように、例えば中折れ式の掘進機となっており、上述のように、公知の泥土圧式シールド掘進機と同様の構造を備えている。シールド掘進機30は、回転カッタ32、隔壁35、カッタチャンバ31、カッタ駆動装置34の他、前胴部外郭体37a、後胴部外郭体37b、シールドジャッキ38、中折れジャッキ39、ロータリージョイン40、エレクタ41等を備えており、後胴部外郭体37bの内部でエレクタ41によってセグメント42をリング状に組み付けて、一次覆工体43を順次形成すると共に、形成したセグメント42による一次覆工体43から反力を得ながら、シールドジャッキ38を伸長させることにより、回転カッタ32によって切羽部33の地盤を切削しつつ、掘進方向Xに前進できるようになっている。
【0026】
また、本実施形態では、回転カッタ32は、隔壁35の後胴部外郭体37b側の面の中央部分に固定されたロータリージョイン40のハウジング部40aから、隔壁35を貫通してカッタチャンバ31の内部に延設して設けられた回転軸部40bの先端部に、円形基盤部32aを、一体として接合させることで、ロータリージョイン40の回転軸部40bと共に回転するようになっている。本実施形態では、回転カッタ32の円形基盤部32aから、十字形状に四方に延設して、切削ビット32hが固着された4本の切削スポーク32bが、一体として取り付けられており、回転カッタ32の円形基盤部32aが設けられた中央部分から掘進方向X前方側に山形形状に突出して、センタビット32dが一体として取り付けられている。本実施形態では、流動化液材の供給部構造10は、例えば回転カッタ32の円形基盤部32a中央部分の、正面側から見てセンタビット32dと一部が重なる位置の1箇所と、4本の切削スポーク32bのうちの選択された一本における径方向外側の端部分の1箇所との、合計2箇所に配置された、上述の2箇所の供給部32c(
図2参照)の構造として設けられている。
【0027】
さらに、本実施形態では、4本の切削スポーク32bには、掘進方向X後方側に延設して、回転移動ロッド部32eが、後端部を回転駆動機構45の円環状回転レール部材46に接合した状態で、取り付けられている(
図1参照)。円環状回転レール部材46は、接続ボックス47の内部において、隔壁35に固定された上述の好ましくは油圧モータによるカッタ駆動装置34と、例えば歯車機構により係合している。これによって、カッタ駆動装置34による回転駆動力を、円環状回転レール部材46及び回転移動ロッド部32eを介して4本の切削スポーク32bに伝えることか可能になり、回転カッタ32を所定のトルクで安定した状態で回転させて、切削ビット32hやセンタビット32dによる切羽部33の地盤の切削を、効率良く行うことができるようになっている。
【0028】
そして、本実施形態では、流動化液材の供給部構造10は、上述のように、例えば回転カッタ32の円形基盤部32aの中央部分と、選択された一本の切削スポーク32bの先端部分の2箇所に配置された、流動化液材の供給部32c(
図2参照)の構造として設けられたものであり、
図3及び
図4(a)に示すように、側周面11aに複数の液材吐出開口12を有する、先端部11bが閉塞された有天筒状の吐出筒体11と、この吐出筒体11の外側に設けられたガイド壁部13と、吐出筒体11の側周面11aに密着した状態で装着された弾性スリーブ部材14と、吐出筒体11の先端部分に螺着された、ナット状部材15とを備えている。
【0029】
吐出筒体11は、例えばφ50mm程度の内径を有する金属製の円筒状の部材となっており、底盤部17を介してガイド壁部13とともに一体成型された吐出部金物18を、回転カッタ32の円形基盤部32aや選択された切削スポーク32bに形成された嵌着穴19に、嵌め込むようにして嵌着すると共に、周縁部分を嵌着穴19の内周面に例えば溶接により固着することによって、当該吐出筒体11の少なくとも先端部11bを、回転カッタ32の円形基盤部32aや切削スポーク32bの表面から突出させた状態で、回転カッタ32に一体として取り付けられている。吐出筒体11の中空内部は、底盤部17を貫通して形成さえた連通穴17aを介して、回転カッタ32やロータリージョイン40の回転軸部40bを経た流動化液材の供給管20と連通しており、また吐出筒体11は、先端部11bが天板によって閉塞された有天筒状の円筒体となっている。吐出筒体11の側周面11aには、複数の液材吐出開口12として、例えばφ20mm程度の内径を有する円形開口が、好ましくは周方向に90度の角度間隔をおいて、4か所に開口形成されている。
【0030】
これらによって、供給管20を介して圧送されてきた、塑性流動化剤として好ましくは作泥剤を含む流動化液材を、4か所の液材吐出開口12から、四方に向けて勢い良く噴出させることができるようになっておいる。
【0031】
吐出筒体11の側周面11aに密着した状態で装着された弾性スリーブ部材14は、本実施形態では、弾性材料として、好ましくはJIS K 6253 に基づく硬度がA55~A75の天然ゴムを用いて形成することができる。弾性スリーブ部材14は、例えば
図4(b)に示すように、好ましくは、5~10mm程度の厚さを有する天然ゴムを用いて、吐出筒体11の外径と同等か、これより僅かに小さな内径を備えると共に、雄ネジ突条が形成された先端部11bを除いた吐出筒体11の長さと同様の長さを有する、円筒形状に成形されている。弾性スリーブ部材14は、弾性変形させつつ、吐出筒体11の側周面11aに形成された4か所の液材吐出開口12を外側から覆った状態で、当該側周面11aの全体に密着して装着されている。
【0032】
流動化液材を回転カッタ32から切羽部33に向けて供給する際に、供給管20を介した圧送圧力によって、流動化液材は、弾性スリーブ部材14を持ち上げるよう弾性変形させながら、各々の液材吐出開口12から吐出すると共に、吐出された流動化液材は、同様に圧送圧力によって弾性スリーブ部材14を持ち上げながら、持ち上げた弾性スリーブ部材14と吐出筒体11の側周面11aとの間の隙間を介して、弾性スリーブ部材14の先端部や後端部に向けて圧送された後に、本実施形態では、後述するナット状部材15の作用によって、主として弾性スリーブ部材14の後端部から噴射されることになる。後端部から噴射された流動化液材は、吐出筒体11の外側に設けられたガイド壁部13に案内されつつ方向転換して、掘進方向X前方の切羽部33に向けて、勢いよく噴射されることになる。
【0033】
吐出筒体11の外側に設けられたガイド壁部13は、上述のように、吐出部金物18の一部として、吐出筒体11と一体として成形された金属製の部分となっている。ガイド壁部13は、吐出部金物18が回転カッタ32の円形基盤部32aや切削スポーク32bに形成された嵌着穴19に固着されことにより、吐出筒体11の外側に、吐出筒体11と同心状に配置された、円環状の部分として設けられている。ガイド壁部13は、弾性スリーブ部材14の後端部から掘進方向Xの後方に向けて噴射された流動化液材を、当該ガイド壁部13の、底部を含む内周面に沿って方向転換するように案内して、掘進方向Xの前方の切羽部33に向けて、流動化液材を噴射させる機能を備えている。
【0034】
また、本実施形態では、ガイド壁部13は、好ましくは吐出部金物18の底盤部17との接続基端部から、掘進方向X前方側に向けて拡経する、テーパ状壁面部13aを備えており、これによって、弾性スリーブ部材14の後端部から掘進方向Xの後方に向けて噴射されて、方向転換された流動化液材を、掘進方向Xの前方の切羽部33に向けて、より広範囲にわたって、四方に向けて噴射させることができるようになっている。
【0035】
吐出筒体11の先端部分に螺着されたナット状部材15は、内周面に雌ネジ突条(図示せず)が形成された螺着開口を中央部分に備える、金属製の金物である。またナット状部材15は、外周縁部から掘進方向X後方側に延設する、環状スカート部15aを有している。ナット状部材15は、螺着開口の内周面の雌ネジ突条を、吐出筒体11の閉塞された先端部11bの側周面11aに形成された雄ネジ突条(図示せず)に、螺着することによって、好ましくは吐出筒体11の側周面11aに装着された弾性スリーブ部材14の先端面に、掘進方向X後方側の内側面を当接させることができる。これによって、回転カッタ32を回転させつつシールド掘進機30が掘進してゆく際に、弾性スリーブ部材14が位置ずれしないように、位置決めすることが可能になる。
【0036】
また、ナット状部材15は、吐出筒体11の先端部11bに螺着された際に、環状スカート部15aが、位置決めされた弾性スリーブ部材14の掘進方向X前方側の先端部分を、外側から覆うようにして配置されるようになっている。本実施形態では、環状スカート部15aは、弾性スリーブ部材14の先端部分の外周面との間に間隔を保持した状態で、弾性スリーブ部材14の先端部分を外側から覆うようにして配置されている。環状スカート部15aは、好ましくは内周面を、弾性スリーブ部材14の先端部分の外周面に、密着させた状態で取り付けることもできる(
図5(a)、(b)参照)。
【0037】
ナット状部材15の環状スカート部15aが、液材吐出開口12を覆って吐出筒体11に装着された弾性スリーブ部材14の先端部分を、外側から覆うようにして配置されていることにより、シールド掘進機30を掘進方向Xに前進させながら、流動化液材を噴射させつつ回転カッタ32によって切羽部33の地盤を切削してゆく際に、切削された土砂は、環状スカート部15aを回り込むようにして、掘進方向X前方側に移動しなければ、弾性スリーブ部材14の掘進方向X前方側の端部には至らなくなる。これによって、切削された土砂が、弾性スリーブ部材55の掘進方向X前方側の端部の隙間には至らないようにすることができるので、掘進時の圧力によって切削された土砂が、吐出時にめくれ上がった弾性スリーブ部材55の掘進方向X前方側の端部の隙間に入り込んで、閉塞することになるのを、効果的に回避することが可能になる。
【0038】
したがって、本実施形態によれば、ナット状部材15に環状スカート部15aを設けただけの簡易な構成によって、泥土圧式のシールド掘進機30を掘進方向Xに前進させながら、流動化液材を噴射させつつ回転カッタ32によって切羽部33の地盤を切削してゆく際に、弾性スリーブ部材14の掘進方向X前方側の端部の隙間に、切削された土砂が入り込むことになるのを、効果的に回避することが可能になる。
【0039】
また、螺着されたナット状部材15の環状スカート部15aの内周面を、弾性スリーブ部材14の先端部分の外周面に密着させた状態としておけば(
図5(a)、(b)参照)、切削された土砂が環状スカート部15aを回り込むようにして掘進方向X前方側に移動しようとするのを遮断して、さらに効果的に、弾性スリーブ部材14の掘進方向X前方側の端部の隙間に、切削された土砂が入り込むことになるのを回避することが可能になる。
【0040】
本実施形態では、回転カッタ32の円形基盤部32aの中央部分に配置された供給部32c(
図2参照)における流動化液材の供給部構造10は、センタビット32dの掘進方向X後方側の部分に設けられた、台形状切欠き部32fにおいて、吐出筒体11を円形基盤部32aから突出させていることで、正面側から見てセンタビット32dと重なるように配置されている。これによって、センタビット32dを緩衝壁部材部材として機能させて、泥土圧式のシールド掘進機30を掘進方向Xに前進させながら回転カッタ32によって切羽部33の地盤を切削してゆく際に、切削時の圧力が直接的に中央部分の供給部構造10に負荷されるのを、効果的に緩和することが可能になる。
【0041】
また、選択された切削スポーク32bの端部分の配置された供給部32cにおける流動化液材の供給部構造10には、
図2及び
図4(a)に示すように、帯状緩衝壁部材32gを、吐出筒体11の径方向に延設すると共に、当該帯状緩衝壁部材32gの内周面と吐出筒体11の先端部11bとの間に間隔を保持した状態で、掘進方向X前方側から見て吐出筒体11と重なるように配置して、取り付けておくことができる。これにより当該帯状緩衝壁部材32g2dの機能によって、泥土圧式のシールド掘進機30を掘進方向Xに前進させながら回転カッタ32によって切羽部33の地盤を切削してゆく際に、切削時の圧力が直接的に切削スポーク32bの端部分の供給部構造10に負荷されるのを、効果的に緩和することが可能になる。
【0042】
図5(a)、(b)は、本発明の他の実施形態に係る流動化液材の供給部構造10’,10”を例示するものである。
図5(a)に示す流動化液材の供給部構造10’では、弾性スリーブ部材14’は、例えば内側に軟質ゴム14aを配し、外側に硬質ゴム14bを配した、半径方向2層構成のものとなっており、ゴムの収縮速度の相違によって、土砂の逆流防止を図ったものとなっている。
図5(b)に示す流動化液材の供給部構造10”では、弾性スリーブ部材14”は、例えば両端に硬質ゴム14cを配し、中央に軟質ゴム14aを配した、軸方向3層構成のものとなっており、中央部から流動化液材を吐出させることにより、土砂の逆流防止を図ったものとなっている。その他の構成については、上記の実施形態と、同様となっている。
【0043】
これらの弾性スリーブ部材14’,14”を用いた流動化液材の供給部構造10’,10”によっても、上記の実施形態の流動化液材の供給部構造10と、同様の作用効果が奏される。
【0044】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されることなく種々の変更が可能である。例えば、ガイド壁部は、掘進方向前方側に向けて拡経する、テーパ状壁面部を備えている必要は必ずしもない。
【0045】
10,10’,10” 流動化液材の供給部構造
11 吐出筒体
11a 側周面
11b 先端部
12 液材吐出開口
13 ガイド壁部
13a テーパ状壁面部
14,14’,14” 弾性スリーブ部材
15 ナット状部材
15a 環状スカート部
18 吐出部金物
19 嵌着穴
20 供給管
30 泥土圧式のシールド掘進機
31 カッタチャンバ
32 回転カッタ
32a 円形基盤部
32b 切削スポーク
32c 供給部
32g 帯状緩衝壁部材
33 切羽部
34 カッタ駆動装置
35 隔壁
X 掘進方向