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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024062866
(43)【公開日】2024-05-10
(54)【発明の名称】防音壁の頂部構造
(51)【国際特許分類】
   E01F 8/00 20060101AFI20240501BHJP
【FI】
E01F8/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022170992
(22)【出願日】2022-10-25
(71)【出願人】
【識別番号】000006839
【氏名又は名称】日鉄建材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120868
【弁理士】
【氏名又は名称】安彦 元
(72)【発明者】
【氏名】中村 祐太
(72)【発明者】
【氏名】阿部 幸夫
(72)【発明者】
【氏名】山本 健次郎
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 克彦
【テーマコード(参考)】
2D001
【Fターム(参考)】
2D001AA01
2D001BA02
2D001BB01
2D001CA01
2D001CB02
2D001CD03
2D001CD06
(57)【要約】
【課題】人力施工可能な重量の部材からなり、部材を支柱の上方まで持ち上げずに設置可能で、狭い作業スペースでも施工性が良く、且つ、接合部材が外れた場合でも落下のおそれが少ない防音壁の頂部構造を提供する。
【解決手段】騒音源からの騒音を減音する防音壁の頂部構造1において、支柱H1,H1間に取り付けられて上下方向に立設された直壁パネル2と、直壁パネル2及び支柱H1のいずれか一方又は両方に取り付けられて騒音源側に迫り出すブラケット材3と、ブラケット材3に装着される吸音材が挿置された吸音パネル4と、を備え、ブラケット材3に、フランジ(31a,31b)を設け、吸音パネル4をフランジ(31a,31b)上に載置して固定する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
騒音源からの騒音を減音する防音壁の頂部構造であって、
支柱間に取り付けられて上下方向に立設された直壁パネルと、前記直壁パネル及び前記支柱のいずれか一方又は両方に取り付けられて騒音源側に迫り出すブラケット材と、前記ブラケット材に装着される吸音材が挿置された吸音パネルと、を備え、前記ブラケット材には、フランジが設けられており、前記吸音パネルは、前記フランジ上に載置されて固定されていること
を特徴とする防音壁の頂部構造。
【請求項2】
前記フランジ及び前記吸音パネルには、ボルト孔が穿設され、前記吸音パネルは、前記フランジにボルト接合されているとともに、
前記ブラケット材には、前記フランジ上に前記吸音パネルを載置した際に前記フランジ及び前記吸音パネルのボルト孔が重なり合うように位置決めする第1位置決め部材が形成され、又は取り付けられていること
を特徴とする請求項1に記載の防音壁の頂部構造。
【請求項3】
前記フランジには、前記吸音パネルを挿通するスリットが形成されていること
を特徴とする請求項1又は2に記載の防音壁の頂部構造。
【請求項4】
前記ブラケット材には、外周部を除く部分が切り欠かれていること
を特徴とする請求項1又は2に記載の防音壁の頂部構造。
【請求項5】
前記ブラケット材を前記支柱に接合する際に位置決めする第2位置決め部材が、前記ブラケット材及び前記支柱のいずれか一方又は両方に取り付けられていること
を特徴とする請求項1又は2に記載の防音壁の頂部構造。
【請求項6】
前記第2位置決め部材の先端は、前記直壁パネル間に挿置されていること
を特徴とする請求項5に記載の防音壁の頂部構造。
【請求項7】
前記ブラケット材を前記直壁パネルに接合する際に位置決めする第3位置決め部材が、前記ブラケット材及び前記直壁パネルのいずれか一方又は両方に取り付けられていること
を特徴とする請求項1又は2に記載の防音壁の頂部構造。
【請求項8】
前記第3位置決め部材は、前記ブラケット材の基端部の板面に当接するとともに、前記ブラケット材の前記直壁パネルに固定するためのパネル固定部に下方から当接して掛け止めること
を特徴とする請求項7に記載の防音壁の頂部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防音壁の頂部構造に関するものであり、詳しくは、頂部の形状で騒音を多重回析と干渉で減音する分岐型の頂部を有する防音壁の頂部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
高速道路などの道路沿いや鉄道などの軌道沿いに、騒音源からの騒音伝播の抑制を目的とした防音壁が設置されている。このような防音壁においては、高さを上げることなく騒音を低減できることが求められており、近年、防音壁の頂部を改良して、騒音源からの直接音や回析音、反射音を低減させる構造が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、支柱間に取り付けられて上下方向に延びる遮音パネルと、前記遮音パネルから騒音源側に斜め上方に延びる分岐パネルとを備え、前記分岐パネルの下面側に着脱可能な吸音部材が取り付けられている防音壁の頂部構造が開示されている(特許文献1の特許請求の範囲の請求項1、明細書の段落[0030]~[0054]、図面の図2図5図7等参照)。
【0004】
特許文献1に記載の防音壁の頂部構造は、遮音パネルと分岐パネルによって、二重回折と干渉による減音効果が期待できることから、壁高さを上げることなく騒音低減効果に優れ、かつ、メンテナンス性が良好で隣地境界を越境するおそれがないなどの利点を有している。
【0005】
しかし、道路や鉄道の高架橋において、高架橋の上や下にクレーンなどの重機を置くスペースが無い場合や、鉄道運行時など重機が使えない場合、人力で施工することが求められる。このとき、特許文献1の防音壁の頂部構造は、遮音パネルと分岐パネルとが一体化されており、通常の直壁パネルよりも重い構造となっている。それに加え、積雪地域などへの適用を考慮すると、雪荷重への対応も求められることから、遮音パネルと分岐パネルそれぞれの補強が必要となる。このため、遮音パネルと分岐パネルとを強固につなぐ部材も必要になり、さらに重量増となる。例えば、鉄道で通常用いられる支柱間隔3m用のパネルの場合、着脱可能な吸音部材を除いても、人力により取り扱い可能な重量を超えるため、人力施工が容易ではなかった。
【0006】
また、騒音規制の関係で、防音壁の高さを2m以上とする場合が多く、この場合、支柱の高さも2mを超えてしまう。特許文献1の防音壁の頂部構造は、H形鋼支柱のフランジ内に落とし込む方法で施工するため、一旦、防音壁の頂部を支柱の上方まで持ち上げる必要がある。しかし、前述のように、人力では重量的に施工が困難な防音壁の頂部を、高さ2mを超える支柱の上方に人力で持ち上げるのは困難であるという問題もあった。
【0007】
その上、特許文献1の防音壁の頂部構造は、遮音パネルと分岐パネルとが一体化されており、通常の直壁パネルよりも厚み方向の寸法が大きい。このため、鉄道向けとして設置する場合、軌道と高欄との間の限られた施工スペース内で防音壁の頂部を搬入することが困難となっていた。つまり、遮音パネルと分岐パネルが一体化されたパネルを人力で所定位置に横移動させ、さらに支柱先端部に縦移動させて持ち上げる際、寸法の大きいパネルでは、高欄の軌道側にある電線や配管等の付帯構造物に接触したり、仮設線路防護柵に当たったりするなど、施工性が良好ではないという問題があった。
【0008】
それに加え、特許文献1の防音壁の頂部構造の軌道側に張り出した吸音パネルは、軌道方向からボルト等の接合部材で接合されており、ボルト等の接合部材が外れた場合に、軌道側に吸音パネルが落下してしまうおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2021-161610号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、本発明は、前述した問題に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、人力施工可能な重量の部材からなり、部材を支柱の上方まで持ち上げずに設置可能で、狭い作業スペースでも施工性が良く、且つ、接合部材が外れた場合でも落下のおそれが少ない防音壁の頂部構造を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1発明に係る防音壁の頂部構造は、騒音源からの騒音を減音する防音壁の頂部構造であって、支柱間に取り付けられて上下方向に立設された直壁パネルと、前記直壁パネル及び前記支柱のいずれか一方又は両方に取り付けられて騒音源側に迫り出すブラケット材と、前記ブラケット材に装着される吸音材が挿置された吸音パネルと、を備え、前記ブラケット材には、フランジが設けられており、前記吸音パネルは、前記フランジ上に載置されて固定されていることを特徴とする。
【0012】
第2発明に係る防音壁の頂部構造は、第1発明において、前記フランジ及び前記吸音パネルには、ボルト孔が穿設され、前記吸音パネルは、前記フランジにボルト接合されているとともに、前記ブラケット材には、前記フランジ上に前記吸音パネルを載置した際に前記フランジ及び前記吸音パネルのボルト孔が重なり合うように位置決めする第1位置決め部材が形成され、又は取り付けられていることを特徴とする。
【0013】
第3発明に係る防音壁の頂部構造は、第1発明又は第2発明において、前記フランジには、前記吸音パネルを挿通するスリットが形成されていることを特徴とする。
【0014】
第4発明に係る防音壁の頂部構造は、第1発明又は第2発明において、前記ブラケット材には、外周部を除く部分が切り欠かれていることを特徴とする。
【0015】
第5発明に係る防音壁の頂部構造は、第1発明又は第2発明において、前記ブラケット材を前記支柱に接合する際に位置決めする第2位置決め部材が、前記ブラケット材及び前記支柱のいずれか一方又は両方に取り付けられていることを特徴とする。
【0016】
第6発明に係る防音壁の頂部構造は、第5発明において、前記第2位置決め部材の先端は、前記直壁パネル間に挿置されていることを特徴とする。
【0017】
第7発明に係る防音壁の頂部構造は、第1発明又は第2発明において、前記ブラケット材を前記直壁パネルに接合する際に位置決めする第3位置決め部材が、前記ブラケット材及び前記直壁パネルのいずれか一方又は両方に取り付けられていることを特徴とする。
【0018】
第8発明に係る防音壁の頂部構造は、第7発明において、前記第3位置決め部材は、前記ブラケット材の基端部の板面に当接するとともに、前記ブラケット材の前記直壁パネルに固定するためのパネル固定部に下方から当接して掛け止める部材であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
第1発明~第8発明によれば、防音壁の分岐型の頂部構造を複数の部材に分けて構成しているため、重機で揚重する必要がなく人力施工が可能となっている。また、第1発明~第8発明によれば、厚み方向に幅をとる分岐型の頂部構造を、複数枚の薄い部材から構成することができ、線路際などの狭隘な作業空間での作業効率が向上する。その上、第1発明~第8発明によれば、ブラケット材にフランジを設けることで吸音パネルが、接合部材が外れた場合でも軌道や車道の騒音源側に落下することを防止できるとともに、ブラケット材の上方に持ち上げることなく、ケンドン式にフランジを避けて吸音パネルを挿置することができ、重機等で作業員の頭上を越える高さまで揚重する必要がなくなる。
【0020】
特に、第2発明によれば、位置決め部材により、フランジ上に吸音パネルを載置するだけでフランジと吸音パネルのボルト孔が重なり合うように位置決めすることができ、作業負担が軽減され、施工性が向上する。
【0021】
特に、第3発明によれば、吸音パネルを挿通するスリットが形成されているので、フランジを避けてケンドン式に吸音パネルを挿し込むのではなく、スリットから直線的に吸音パネルを挿し込むことができ、短時間で作業ができ、施工効率が向上する。また、第3発明によれば、スリットから直線的に吸音パネルを挿し込むことができるため、狭隘な作業スペースでも施工が可能となる。
【0022】
特に、第4発明によれば、ブラケット材が外周部を除く部分が切り欠かれているので、ブラケット材が軽量化されるとともに、持ちやすくなり、運搬や作業効率が向上する。
【0023】
特に、第5発明によれば、第2位置決め部材により、ブラケット材を支柱に取り付ける際の作業効率が向上する。
【0024】
特に、第6発明によれば、第2位置決め部材の先端が直壁パネル間に挿置されているので、支柱にブラケット材を接合する接合部材であるボルトが万が一破断した場合でも、ブラケット材やそれに取り付けられた吸音パネルが騒音源となる鉄道や車道に落下して大事故になることを防止することができる。
【0025】
特に、第7発明によれば、第3位置決め部材により、ブラケット材を直壁パネルに取り付ける際の作業効率が向上する。
【0026】
特に、第8発明によれば、第3位置決め部材が直壁パネルに固定するためのパネル固定部に下方から当接して掛け止めるので、直壁パネルにブラケット材を接合する接合部材であるボルトが万が一破断した場合でも、ブラケット材やそれに取り付けられた吸音パネルが騒音源となる鉄道や車道に落下して大事故になることを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1図1は、本発明の実施形態に係る防音壁の頂部構造を示す正面斜視図である。
図2図2は、同上の防音壁の頂部構造を示す見下げ斜視図である。
図3図3は、同上の防音壁の頂部構造を示す正面図である。
図4図4は、同上の防音壁の頂部構造を示す図3の右側面図である。
図5図5は、同上の防音壁の頂部構造を示す図3のA-A線断面図である。
図6図6は、同上の防音壁の頂部構造の直壁パネル単体を示す斜視図であり、(a)が上段の直壁パネルを示す斜視図、(b)が下段の直壁パネルを示す斜視図である。
図7図7は、同上の防音壁の頂部構造の支柱固定用ブラケット材単体を示す斜視図である。
図8図8は、同上の防音壁の頂部構造のパネル固定用ブラケット材単体を示す斜視図である。
図9図9は、同上の防音壁の頂部構造において支柱に直壁パネルとブラケット材を取り付けて、吸音パネルを取り付ける前の状態を示す斜視図であり、図9(b)は、図9(a)のA部拡大図である。
図10図10は、同上の防音壁の頂部構造の吸音パネル単体を示す正面斜視図である。
図11図11は、同上の防音壁の頂部構造の受け部材を支柱に介装した状態を示す平面図であり、(a)がくさびナットを溶接した場合、(b)がゆるみ止めクリップKナットを取り付けた場合である。
図12図12は、同上の防音壁の頂部構造の吸音パネルをスリットに挿入する状態を示す図であり、(a)が正面斜視図、(b)が右側面図である。
図13図13は、同上の防音壁の頂部構造の吸音パネルを傾倒してブラケット材のフランジ上に載置する状態を示す図であり、(a)が正面斜視図、(b)が右側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態に係る防音壁の頂部構造について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0029】
[防音壁の頂部構造]
図1図11を用いて本発明の実施形態に係る防音壁の頂部構造1(以下、単にと頂部構造ともいう。)について説明する。図1は、本発明の実施形態に係る防音壁の頂部構造1を示す正面斜視図であり、図2は、頂部構造1を示す見下げ斜視図である。また、図3は、頂部構造1を示す正面図であり、図4は、頂部構造1を示す図3の右側面図であり、図5は、頂部構造1を示す図3のA-A線断面図である。なお、図中のX方向が前後方向、Y方向が軌道や道路に沿った壁面方向、Z方向が上下方向である。
【0030】
図1図5に示すように、頂部構造1は、H形鋼からなる支柱H1の上端部に設置され、騒音源側に傾斜して延びる分岐した頂部の形状で騒音を多重回析と干渉で減音する分岐型の頂部構造である。この頂部構造1は、H形鋼からなる支柱H1と支柱H1との間に取り付けられて上下方向に立設された上下2段の直壁パネル2と、直壁パネル2及び支柱H1,H1にそれぞれ取り付けられて騒音源側に迫り出す複数(図示形態では3つ)の三角形状のブラケット材3と、ブラケット材3に装着された吸音パネル4と、支柱H1の前フランジH1aと後フランジにH1bとの間に挿置される受け部材5など、から構成されている。
【0031】
(直壁パネル)
直壁パネル2は、図2図6に示すように、高耐候性めっき鋼板やアルミニウム板などの金属板から縁部が折り返されて箱体の正面(前面)側が開放された横長な長方形状のパネル本体20を基体とする上下二段のパネルである。この直壁パネル2は、横長な長方形状のパネル本体20の長手方向の両端がそれぞれ支柱H1,H1の間の1スパンに架け渡されて固定されている。なお、直壁パネル2は、アルミニウム板とすることで軽量化を図ることができるため好ましい。図6は、頂部構造1の直壁パネル2単体を示す斜視図であり、(a)が上段の直壁パネル2を示す斜視図、(b)が下段の直壁パネル2を示す斜視図である。
【0032】
このパネル本体20は、図2に示すように、騒音源側である前面側が支柱H1の前フランジH1aに水平断面がZ字状の前止め部材21で固定され、反対側となる背面(後面)側が受け部材5に当接されることで固定されている。また、図6(a),図6(b)に示すように、パネル本体20の横長な長手方向の中央には、ブラケット材3を固定するブラケット固定部材22がボルト固定されている。
【0033】
そして、前止め部材21は、前フランジH1aに固定する上下一対のフランジ固定片23,23を有している。これらの上下一対のフランジ固定片23,23の間には、中央に後述のブラケット材3の上部支柱固定部32a及び下部支柱固定部33aを避ける切欠き24が形成されている。また、上下一対のフランジ固定片23,23には、前フランジH1aにボルト固定するための長孔23aが形成されている。
【0034】
なお、後で詳述するように、図6(a)に示すように、上段の直壁パネル2のブラケット固定部材22には、パネル固定用ブラケット材3bを直壁パネル2に接合する際に位置決めする左右一対の正面視L字状の第3位置決め部材25,25が取り付けられている。なお、図6(b)に示すように、第3位置決め部材25,25に相当する部材は、下段の直壁パネル2には取り付けられていない。
【0035】
(ブラケット材)
ブラケット材3は、図7に示す支柱H1に固定する支柱固定用ブラケット材3aと、図8に示す直壁パネル2のブラケット固定部材22に固定するパネル固定用ブラケット材3bの2種類のブラケット材がある。但し、ブラケット材3は、いずれもパネル固定用ブラケット材3bとしても構わないし、後述の吸音パネル4を長くし、パネル固定用ブラケット材3bを無くして支柱固定用ブラケット材3aだけとしても構わない。図7は、支柱固定用ブラケット材3aを示す斜視図であり、図8は、パネル固定用ブラケット材3bを示す斜視図である。
【0036】
(支柱固定用ブラケット材)
図7に示すように、支柱固定用ブラケット材3aは、2枚の鋼板が組み合わされ部材であり、直角三角形状の角が切り取られた六角形状の外形を有したウェブ30aと、ウェブ30aの斜めに傾斜した斜辺に沿って形成されたフランジ31aと、を有している。また、支柱固定用ブラケット材3aは、前フランジH1aに固定するための上部左右一対の上部支柱固定部32aと、下部左右一対の下部支柱固定部33aと、を有している。
【0037】
このウェブ30aは、外周部を除く部分に開口部34aが形成されているこのため、支柱固定用ブラケット材3aを軽量化できるとともに、支柱固定用ブラケット材3aが持ちやすくなり、運搬や作業効率が向上する。
【0038】
また、フランジ31aには、吸音パネル4をボルト接合するための複数のボルト孔35aが穿設されている。この支柱固定用ブラケット材3aのボルト孔35aは、図7に示すように、位置調整のための長孔となっている。
【0039】
また、上部支柱固定部32aには、前フランジH1aに固定するためのボルト孔36aが穿設され、下部支柱固定部33aには、前フランジH1aに固定するためのボルト孔37aが穿設されている。この下部支柱固定部33aのボルト孔37aは、長孔となっており、一方、上部支柱固定部32aのボルト孔36aは、通常の円形の孔となっている。勿論、ボルト孔36a及びボルト孔37aは、いずれも長孔であってもよいし、いずれも円形の丸孔であってもよい。また、ボルト孔36aを長孔とし、ボルト孔37aを円形の丸孔としても構わない。
【0040】
そして、支柱固定用ブラケット材3aのウェブ30aの支柱H1側の基端部には、左右一対の第1位置決め部材38aがビス等でねじ止め固定されている。このため、第1位置決め部材38aにより、傾斜したフランジ31a上に吸音パネル4を載置した際に吸音パネル4が自重でずれ落ちるのを掛け止めてフランジ31aのボルト孔35aと吸音パネル4のボルト孔とが重なり合うように位置決めすることができる。よって、吸音パネル4を支柱固定用ブラケット材3aにボルト接合する作業効率が格段に向上する。
【0041】
但し、この第1位置決め部材38aは、ウェブ30aと別体とするのではなく、ウェブ30aに突起等を設けて第1位置決め部材としても構わない。同様に、吸音パネル4が自重でずれ落ちるのを阻止することができるからである。
【0042】
さらに、支柱固定用ブラケット材3aのウェブ30aの基端部には、左右一対の第2位置決め部材39aがビス等でねじ止め固定されている。これら左右一対の第2位置決め部材39aは、ウェブ30aの基端部からウェブ30aの板面に対して直交方向に広がり、そこから背面側に直角に折れ曲がったエルボー状(平面視L字状)となっている。そして、一対の第2位置決め部材39aの先端部39c同士の間隔が前フランジH1aの幅よりやや広く設定され、且つ、先端部39cがテーパー状となっている。
【0043】
このため、一対の第2位置決め部材39aが取り付けられた支柱固定用ブラケット材3aを前フランジH1aに当接することで、テーパー状の先端部39cに案内されて、支柱固定用ブラケット材3aのウェブ30aが前フランジH1aの幅方向の中心位置に来るように位置決めされる。
【0044】
また、図9(a),図9(b)に示すように、第2位置決め部材39aの先端部39cが、上段の直壁パネル2と下段の直壁パネル2との間に差し込まれることで、支柱固定用ブラケット材3aが、前フランジH1aの所定の高さに位置決めされる。図9(a)は、支柱H1に上下2段の直壁パネル2と、3つのブラケット材3を取り付けて、吸音パネル4を取り付ける前の頂部構造1を示す斜視図であり、図9(b)は、図9(a)のA部拡大図である。
【0045】
(パネル固定用ブラケット材)
図8に示すように、パネル固定用ブラケット材3bも、支柱固定用ブラケット材3aと同様に、2枚の鋼板が組み合わされ部材であり、直角三角形状の角が切り取られた六角形状の外形を有したウェブ30bと、ウェブ30bの斜めに傾斜した斜辺に沿って形成されたフランジ31bと、を有している。また、パネル固定用ブラケット材3bは、上段の直壁パネル2のブラケット固定部材22に固定するための左右一対の上部パネル固定部32bと、下段の直壁パネル2のブラケット固定部材22に固定するための左右一対の下部パネル固定部33bと、を有している。
【0046】
このウェブ30bは、外周部を除く部分に開口部34bが形成されている。このため、パネル固定用ブラケット材3bを軽量化できるとともに、支柱固定用ブラケット材3aが持ちやすくなり、運搬や作業効率が向上する。
【0047】
また、フランジ31bには、吸音パネル4をボルト接合するための複数のボルト孔35bが穿設されている。このパネル固定用ブラケット材3bのボルト孔35bは、図8に示すように、一般的な円形の孔となっている。つまり、吸音パネル4をブラケット材3に固定するに際しては、先ず、中央のパネル固定用ブラケット材3bの円形の孔であるボルト孔35bから接合を行って、左右の支柱固定用ブラケット材3aの長孔であるボルト孔35aで調整する。
【0048】
また、上部パネル固定部32bには、上段の直壁パネル2のブラケット固定部材22に固定するためのボルト孔36bが穿設され、下部パネル固定部33bには、下段の直壁パネル2のブラケット固定部材22に固定するためのボルト孔37bが穿設されている。この上部パネル固定部32bのボルト孔36bは、円形の孔となっており、下部パネル固定部33bのボルト孔37bは、上下のパネル体の左右誤差修正のため長孔となっている。。勿論、ボルト孔36b及びボルト孔37bは、いずれも長孔であってもよいし、いずれも円形の丸孔であってもよい。また、ボルト孔36bを長孔とし、ボルト孔37bを円形の丸孔としても構わない。
【0049】
そして、パネル固定用ブラケット材3bのウェブ30bの直壁パネル2側の基端部には、左右一対の第1位置決め部材38aがビス等でねじ止め固定されている。このため、第1位置決め部材38bにより、傾斜したフランジ31b上に吸音パネル4を載置した際に吸音パネル4が自重でずれ落ちるのを掛け止めてフランジ31bのボルト孔35bと吸音パネル4のボルト孔とが重なり合うように位置決めすることができる。よって、吸音パネル4をパネル固定用ブラケット材3bにボルト接合する作業効率が格段に向上する。
【0050】
但し、この第1位置決め部材38bは、ウェブ30bと別体とするのではなく、ウェブ30bに突起等を設けて第1位置決め部材としても構わない。同様に、吸音パネル4が自重でずれ落ちるのを阻止することができるからである。
【0051】
さらに、図9に示すように、パネル固定用ブラケット材3bが取り付けられる上段の直壁パネル2のブラケット固定部材22には、パネル固定用ブラケット材3bを直壁パネル2に接合する際に位置決めする第3位置決め部材25が取り付けられている。この第3位置決め部材25は、パネル固定用ブラケット材3bのウェブ30bの基端部の板面に当接することで、パネル固定用ブラケット材3bの壁面方向であるY方向の位置決めがされる。
【0052】
また、第3位置決め部材25は、上部パネル固定部32bに下方から当接して掛け止めているので、上下方向Zの位置決めがなされるとともに、直壁パネル2にパネル固定用ブラケット材3bを接合するボルトが万が一破断した場合でも、パネル固定用ブラケット材3bやそれに取り付けられた吸音パネル4が騒音源となる鉄道や車道に落下して大事故になることを防止することができる。
【0053】
(吸音パネル)
吸音パネル4は、図10図5等に示すように、金属板からなる矩形箱状の金属筺体40を備え、その金属筺体40内に吸音材41が挿置された一般的な吸音パネルである。図10は、本発明の実施形態に係る頂部構造1の吸音パネル単体を示す正面斜視図である。
【0054】
この金属筺体40は、高耐候性めっき鋼板やアルミニウム板などの金属板からなる。また、金属筺体40の正面板は、図1図3図4に示すように、多数の貫通孔40aが穿設されたパンチングメタル形式の吸音パネルとなっており、多数の貫通孔40aから騒音の直接音を透過し、その直接音を吸音材で吸音する仕組みとなっている。勿論、本発明に係る金属筺体40は、パンチングメタル形式ものに限られず、ルーバー形状の開口が形成されたルーバー形式のものであっても構わない。
【0055】
吸音材41は、グラスウールやポリエステル繊維などの繊維材や発泡樹脂などの多孔質材からなり、騒音を吸音材で乱反射して減衰させて減音する機能を有している。勿論、本発明に係る吸音材は、騒音を乱反射して減衰させて吸音でき、防音壁に挿置可能な所定の撥水性や難燃性がある素材であれば特に限定されるものではない。
【0056】
勿論、本発明に係る吸音パネルは、吸音材を挿置した多孔質型吸音タイプのものに限られない。例えば、本発明に係る吸音パネルは、板振動や膜振動をし、音のエネルギの一部を内部摩擦によって消費して吸音する板(膜)振動型吸音タイプ、空洞に孔があいた共鳴器を備え、共鳴周波数の近くで孔の部分の空気が激しく振動し、周辺との摩擦熱として消費して吸音する共鳴器型吸音タイプ、など、他の既知の吸音パネルとすることができる。
【0057】
(受け部材)
受け部材5は、図11に示すように、支柱H1の前フランジH1aと後フランジH1bとの間に介装されて騒音源側となる前フランジH1aに前止め固定される背面側の一辺の幅が広い断面コの字状の部材であり、前述の直壁パネル2やその下段に挿置される遮音パネルや吸音パネルの背面側を受け止めて支持する機能を有している。図11は、受け部材5を支柱H1に介装した状態を示す平面図であり、(a)がくさびナットを溶接した場合、(b)がゆるみ止めクリップKナットを取り付けた場合である。
【0058】
図11(a)に示すように、この受け部材5には、くさびナットWNが溶接されている。このくさびナットWNが溶接されている位置は、支柱H1のボルト孔に相当する位置であり、防音壁の前面(正面)側から簡単にボルトで各パネルの前止めが可能となっている。但し、予め受け部材5にくさびナットWN溶接するのではなく、図11(b)に示すように、受け部材5にゆるみ止めクリップKナットKNをクリップ止めしても構わない。溶接する手間が省けるからである。
【0059】
[吸音パネルの装着方法]
次に、図12図13を用いて、吸音パネル4の装着方法について説明する。前述の頂部構造1で吸音パネル4をブラケット材3に装着する場合で説明する。図12は、頂部構造1の吸音パネル4をスリットS1に挿入する状態を示す図であり、(a)が正面斜視図、(b)が右側面図である。また、図13は、頂部構造1の吸音パネル4を傾倒してブラケット材3のフランジ上に載置する状態を示す図であり、(a)が正面斜視図、(b)が右側面図である。
【0060】
図12に示すように、頂部構造1では、吸音パネル4は、ブラケット材3(支柱固定用ブラケット材3a,パネル固定用ブラケット材3b)のフランジ(フランジ31a,31b)下端と支柱H1や直壁パネル2との隙間であるスリットS1を通過させて挿入される。
【0061】
そして、図13に示すように、スリットS1を通過させた吸音パネル4を傾倒してブラケット材3(支柱固定用ブラケット材3a,パネル固定用ブラケット材3b)のフランジ(フランジ31a,31b)上に載置する。
【0062】
すると、吸音パネル4は、自重でフランジ(フランジ31a,31b)上を滑ってずれ落ち、前述の第1位置決め部材38a(38b)に吸音パネル4の下端が掛け止められることで、フランジ(フランジ31a,31b)のボルト孔と吸音パネル4のボルト孔が重なり合うように位置決めされる。このため、ブラケット材3への吸音パネル4のボルト固定作業における頭上での人力での吸音パネル4を固定して支え続ける際の作業負担が軽減され、施工性が向上する。
【0063】
ここで、ブラケット材3(支柱固定用ブラケット材3a,パネル固定用ブラケット材3b)のフランジ(フランジ31a,31b)の間隔は、吸音パネル4の長手方向の幅より狭くなっており、フランジで吸音パネル4を下側から支える構成となっている。このため、吸音パネル4をブラケット材3に装着する場合は、フランジ(フランジ31a,31b)を避けてケンドン式に挿入すれば、スムーズに挿入することはできる。しかし、頂部構造1は、一般的に2m以上もある防音壁の頂部に設けられる構成であるため、フランジ(フランジ31a,31b)を避けてケンドン式に吸音パネル4を挿入する作業は、作業員の頭上に人力で吸音パネル4を持ち上げた状態での作業となり、かなりの重労働となる。
【0064】
しかし、本実施形態に係る頂部構造1では、前述のように、吸音パネル4を挿通するスリットS1が形成されているので、フランジを避けてケンドン式に吸音パネル4を挿し込むのではなく、図12の矢印で示すように、頭上作業ではない高さからスリットS1を通過して一気に直線的に吸音パネル4を挿し込むことができ、短時間で楽に作業ができ、施工効率が向上する。
【0065】
[頂部構造の作用効果]
以上説明した本実施形態に係る防音壁の頂部構造1によれば、分岐型の頂部構造を複数の部材に分けて構成しているため、重機で揚重する必要がなく人力施工が可能となっている。また、頂部構造1によれば、厚み方向に幅をとる分岐型の頂部構造を、複数枚の薄い部材から構成することができ、線路際などの狭隘な作業空間での作業効率が向上する。
【0066】
その上、頂部構造1によれば、ブラケット材3にフランジ(フランジ31a,31b)を設けることで吸音パネル4を接合している接合部材が外れた場合でも軌道や車道の騒音源側に吸音パネル4が落下することを防止できる。
【0067】
さらに、頂部構造1によれば、ブラケット材3の上方に吸音パネル4を持ち上げることなく、ケンドン式にブラケット材3のフランジ(フランジ31a,31b)を避けて吸音パネル4を挿置することができ、重機等で作業員の頭上を越える高さまで揚重する必要がない。
【0068】
また、頂部構造1には、第1位置決め部材38a,38bにより、フランジ(フランジ31a,31b)上に吸音パネル4を載置するだけでフランジと吸音パネル4のボルト孔が重なり合うように位置決めすることができ、作業負担が軽減され、施工性が向上する。
【0069】
その上、頂部構造1には、吸音パネル4を挿通するスリットS1が形成されているので、フランジを避けてケンドン式に吸音パネルを挿し込むのではなく、スリットS1から直線的に吸音パネル4を挿し込むことができ、短時間で作業ができ、施工効率が向上する。また、スリットS1から直線的に吸音パネル4を挿し込むことができるため、鉄道橋のような運行する列車と敷地境界までの間の狭隘な作業スペースでも施工が可能となる。
【0070】
また、頂部構造1のブラケット材3のウェブ30a,30bは、外周部を除く部分に開口部34a,34bが設けられているので、ブラケット材3を軽量化することができるとともに、ウェブ30a,30bの幅が人の手で握りやすい幅となり、ブラケット材3が持ち易く、運搬や作業効率が向上する。
【0071】
また、頂部構造1には、ブラケット材3に第2位置決め部材39aが、ブラケット固定部材22に第3位置決め部材25が設けられているので、第2位置決め部材39a及び第3位置決め部材25により、ブラケット材3が位置決めされ、ブラケット材3を支柱H1や直壁パネル2のブラケット固定部材22に取り付ける際の作業効率が向上する。
【0072】
また、頂部構造1では、第3位置決め部材25がパネル固定用ブラケット材3bの上部パネル固定部32bに下方から当接して掛け止めるので、直壁パネル2にパネル固定用ブラケット材3bを接合するボルトが万が一破断した場合でも、ブラケット材3やそれに取り付けられた吸音パネル4が騒音源となる鉄道や車道に落下して大事故になることを防止することができる。
【0073】
また、頂部構造1では、第2位置決め部材39aの先端部39cが上下段の直壁パネル2,2間に挿置されているので、支柱H1にブラケット材3を接合するボルトが万が一破断した場合でも、ブラケット材3やそれに取り付けられた吸音パネル4が騒音源となる鉄道や車道に落下して大事故になることを防止することができる。
【0074】
以上、本発明の実施形態に係る防音壁の頂部構造1について詳細に説明したが、前述した又は図示した実施形態は、いずれも本発明を実施するにあたって具体化した一実施形態を示したものに過ぎない。よって、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。
【0075】
1:(防音壁の)頂部構造
2:直壁パネル
20:パネル本体
21:前止め部材
22:ブラケット固定部材
23:フランジ固定片
23a:長孔
24: 切欠き
25:第3位置決め部材(位置決め部材)
3:ブラケット材
3a:支柱固定用ブラケット材
3b:パネル固定用ブラケット材
30a,30b:ウェブ
31a,31b:フランジ
32a:上部支柱固定部
32b:上部パネル固定部
33a:下部支柱固定部
33b:下部パネル固定部
34a、34b:開口部
35a,35b,36a,36b,37a,37b:ボルト孔
38a,38b:第1位置決め部材
39a:第2位置決め部材
39c:先端部
4:吸音パネル
40:金属筐体
40a:貫通孔
41:吸音材
5:受け部材
S1:スリット
H1:支柱
H1a:前フランジ
H1b:後フランジ
WN:くさびナット
KN:ゆるみ止めクリップKナット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13