特開 2024-62867 防音壁の頂部構造

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】公開特許公報(A)

(11)【公開番号】P2024062867

(43)【公開日】2024-05-10

(54)【発明の名称】防音壁の頂部構造

(51)【国際特許分類】

   E01F 8/00 20060101AFI20240501BHJP

【ＦＩ】

E01F8/00

【審査請求】未請求

【請求項の数】11

【出願形態】ＯＬ

(21)【出願番号】P 2022170993

(22)【出願日】2022-10-25

(71)【出願人】

【識別番号】000006839

【氏名又は名称】日鉄建材株式会社

(74)【代理人】

【識別番号】100120868

【弁理士】

【氏名又は名称】安彦 元

(72)【発明者】

【氏名】中村 祐太

(72)【発明者】

【氏名】阿部 幸夫

(72)【発明者】

【氏名】山本 健次郎

(72)【発明者】

【氏名】鈴木 克彦

【テーマコード（参考）】

2D001

【Ｆターム（参考）】

2D001AA01

2D001BA02

2D001BB01

2D001CA01

2D001CB02

2D001CD03

2D001CD06

(57)【要約】

【課題】人力施工可能な重量の部材からなり、部材を支柱の上方まで持ち上げずに設置可能で、狭い作業スペースでも施工性が良く、且つ、接合部材が外れた場合でも落下のおそれが少ない防音壁の頂部構造を提供する。
【解決手段】騒音源からの騒音を減音する防音壁の頂部構造１において、支柱Ｈ１，Ｈ１間に取り付けられて上下方向に立設された直壁パネル２と、直壁パネル２及び支柱Ｈ１のいずれか一方又は両方に取り付けられて騒音源側に迫り出すブラケット材３と、ブラケット材３に装着される吸音材が挿置された吸音パネル４と、を備え、ブラケット材３に、フランジ（３１ａ，３１ｂ）を設け、吸音パネル４をフランジ（３１ａ，３１ｂ）上に載置して固定し、吸音パネル４をパネル板面から突出して分岐する突起４ａを有する突起パネル４とする。
【選択図】図１

【特許請求の範囲】

【請求項1】

騒音源からの騒音を減音する防音壁の頂部構造であって、
支柱間に取り付けられて上下方向に立設された直壁パネルと、前記直壁パネル及び前記支柱のいずれか一方又は両方に取り付けられて騒音源側に迫り出すブラケット材と、前記ブラケット材に装着される吸音材が挿置された吸音パネルと、を備え、前記ブラケット材には、フランジが設けられており、前記吸音パネルは、前記フランジ上に載置されて固定されており、
前記吸音パネルは、パネル板面から突出して分岐する突起を有する突起パネルであること
を特徴とする防音壁の頂部構造。

【請求項2】

前記フランジ及び前記吸音パネルには、ボルト孔が穿設され、前記吸音パネルは、前記フランジにボルト接合されているとともに、
前記フランジ上に前記吸音パネルを載置した際に前記フランジ及び前記吸音パネルのボルト孔が重なり合うように位置決めする第１位置決め部材が設けられていること
を特徴とする請求項１に記載の防音壁の頂部構造。

【請求項3】

前記フランジには、前記突起パネルの前記突起を挿通するスリットが形成されていること
を特徴とする請求項１又は２に記載の防音壁の頂部構造。

【請求項4】

前記スリットは、前記第１位置決め部材の機能を兼用していること
を特徴とする請求項３に記載の防音壁の頂部構造。

【請求項5】

前記突起パネルは、断面Ｌ字状のＬ字パネルから構成され、
前記Ｌ字パネルは、前記スリットから挿入して回転することで前記フランジ上に載置可能に構成されていること
を特徴とする請求項３に記載の防音壁の頂部構造。

【請求項6】

前記突起パネルは、一対のＬ字パネルが組み合わされて構成され、
前記一対のＬ字パネルの一方に凸部が他方に凹部が形成され、前記凸部と前記凹部が嵌合していること
を特徴とする請求項３に記載の防音壁の頂部構造。

【請求項7】

前記ブラケット材には、外周部を除く部分が切り欠かれていること
を特徴とする請求項１又は２に記載の防音壁の頂部構造。

【請求項8】

前記ブラケット材を前記支柱に接合する際に位置決めする第２位置決め部材が、前記ブラケット材及び前記支柱のいずれか一方又は両方に取り付けられていること
を特徴とする請求項１又は２に記載の防音壁の頂部構造。

【請求項9】

前記第２位置決め部材の先端は、前記直壁パネル間に挿置されていること
を特徴とする請求項８に記載の防音壁の頂部構造。

【請求項10】

前記ブラケット材を前記直壁パネルに接合する際に位置決めする第３位置決め部材が、前記ブラケット材及び前記直壁パネルのいずれか一方又は両方に取り付けられていること
を特徴とする請求項１又は２に記載の防音壁の頂部構造。

【請求項11】

前記第３位置決め部材は、前記ブラケット材の基端部の板面に当接するとともに、前記ブラケット材の前記直壁パネルに固定するためのパネル固定部に下方から当接して掛け止めること
を特徴とする請求項１０に記載の防音壁の頂部構造。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

本発明は、防音壁の頂部構造に関するものであり、詳しくは、頂部の形状で騒音を多重回析と干渉で減音する分岐型の頂部を有する防音壁の頂部構造に関する。

【背景技術】

【0002】

高速道路などの道路沿いや鉄道などの軌道沿いに、騒音源からの騒音伝播の抑制を目的とした防音壁が設置されている。このような防音壁においては、高さを上げることなく騒音を低減できることが求められており、近年、防音壁の頂部を改良して、騒音源からの直接音や回析音、反射音を低減させる構造が提案されている。

【0003】

例えば、特許文献１には、支柱間に取り付けられて上下方向に延びる遮音パネルと、前記遮音パネルから騒音源側に斜め上方に延びる分岐パネルとを備え、前記分岐パネルの下面側に着脱可能な吸音部材が取り付けられている防音壁の頂部構造が開示されている（特許文献１の特許請求の範囲の請求項１、明細書の段落［００３０］～［００５４］、図面の図２，図５～図７等参照）。

【0004】

特許文献１に記載の防音壁の頂部構造は、遮音パネルと分岐パネルによって、二重回折と干渉による減音効果が期待できることから、壁高さを上げることなく騒音低減効果に優れ、かつ、メンテナンス性が良好で隣地境界を越境するおそれがないなどの利点を有している。

【0005】

しかし、道路や鉄道の高架橋において、高架橋の上や下にクレーンなどの重機を置くスペースが無い場合や、鉄道運行時など重機が使えない場合、人力で施工することが求められる。このとき、特許文献１の防音壁の頂部構造は、遮音パネルと分岐パネルとが一体化されており、通常の直壁パネルよりも重い構造となっている。それに加え、積雪地域などへの適用を考慮すると、雪荷重への対応も求められることから、遮音パネルと分岐パネルそれぞれの補強が必要となる。このため、遮音パネルと分岐パネルとを強固につなぐ部材も必要になり、さらに重量増となる。例えば、鉄道で通常用いられる支柱間隔３ｍ用のパネルの場合、着脱可能な吸音部材を除いても、人力により取り扱い可能な重量を超えるため、人力施工が容易ではなかった。

【0006】

また、騒音規制の関係で、防音壁の高さを２ｍ以上とする場合が多く、この場合、支柱の高さも２ｍを超えてしまう。特許文献１の防音壁の頂部構造は、Ｈ形鋼支柱のフランジ内に落とし込む方法で施工するため、一旦、防音壁の頂部を支柱の上方まで持ち上げる必要がある。しかし、前述のように、人力では重量的に施工が困難な防音壁の頂部を、高さ２ｍを超える支柱の上方に人力で持ち上げるのは困難であるという問題もあった。

【0007】

その上、特許文献１の防音壁の頂部構造は、遮音パネルと分岐パネルとが一体化されており、通常の直壁パネルよりも厚み方向の寸法が大きい。このため、鉄道向けとして設置する場合、軌道と高欄との間の限られた施工スペース内で防音壁の頂部を搬入することが困難となっていた。つまり、遮音パネルと分岐パネルが一体化されたパネルを人力で所定位置に横移動させ、さらに支柱先端部に縦移動させて持ち上げる際、寸法の大きいパネルでは、高欄の軌道側にある電線や配管等の付帯構造物に接触したり、仮設線路防護柵に当たったりするなど、施工性が良好ではないと問題があった。

【0008】

それに加え、特許文献１の防音壁の頂部構造の軌道側に張り出した吸音パネルは、軌道方向からボルト等の接合部材で接合されており、ボルト等の接合部材が外れた場合に、軌道側に吸音パネルが落下してしまうおそれがあった。

【先行技術文献】

【特許文献】

【0009】

【特許文献1】特開２０２１－１６１６１０号公報

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0010】

そこで、本発明は、前述した問題に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、人力施工可能な重量の部材からなり、部材を支柱の上方まで持ち上げずに設置可能で、狭い作業スペースでも施工性が良く、且つ、接合部材が外れた場合でも落下のおそれが少ない防音壁の頂部構造を提供するものである。

【課題を解決するための手段】

【0011】

第１発明に係る防音壁の頂部構造は、騒音源からの騒音を減音する防音壁の頂部構造であって、支柱間に取り付けられて上下方向に立設された直壁パネルと、前記直壁パネル及び前記支柱のいずれか一方又は両方に取り付けられて騒音源側に迫り出すブラケット材と、前記ブラケット材に装着される吸音材が挿置された吸音パネルと、を備え、前記ブラケット材には、フランジが設けられており、前記吸音パネルは、前記フランジ上に載置されて固定されており、前記吸音パネルは、パネル板面から突出して分岐する突起を有する突起パネルであることを特徴とする。

【0012】

第２発明に係る防音壁の頂部構造は、第１発明において、前記フランジ及び前記吸音パネルには、ボルト孔が穿設され、前記吸音パネルは、前記フランジにボルト接合されているとともに、前記フランジ上に前記吸音パネルを載置した際に前記フランジ及び前記吸音パネルのボルト孔が重なり合うように位置決めする第１位置決め部材が設けられていることを特徴とする。

【0013】

第３発明に係る防音壁の頂部構造は、第１発明又は第２発明において、前記フランジには、前記突起パネルの前記突起を挿通するスリットが形成されていることを特徴とする。

【0014】

第４発明に係る防音壁の頂部構造は、第３発明において、前記スリットは、前記第１位置決め部材の機能を兼用していることを特徴とする。

【0015】

第５発明に係る防音壁の頂部構造は、第３発明において、前記突起パネルは、断面Ｌ字状のＬ字パネルから構成され、前記Ｌ字パネルは、前記スリットから挿入して回転することで前記フランジ上に載置可能に構成されていることを特徴とする。

【0016】

第６発明に係る防音壁の頂部構造は、第３発明において、前記突起パネルは、一対のＬ字パネルが組み合わされて構成され、前記一対のＬ字パネルの一方に凸部が他方に凹部が形成され、前記凸部と前記凹部が嵌合していることを特徴とする。

【0017】

第７発明に係る防音壁の頂部構造は、第１発明又は第２発明において、前記ブラケット材には、外周部を除く部分が切り欠かれていることを特徴とする。

【0018】

第８発明に係る防音壁の頂部構造は、第１発明又は第２発明において、前記ブラケット材を前記支柱に接合する際に位置決めする第２位置決め部材が、前記ブラケット材及び前記支柱のいずれか一方又は両方に取り付けられていることを特徴とする。

【0019】

第９発明に係る防音壁の頂部構造は、第８発明において、前記第２位置決め部材の先端は、前記直壁パネル間に挿置されていることを特徴とする。

【0020】

第１０発明に係る防音壁の頂部構造は、第１発明又は第２発明において、前記ブラケット材を直壁パネルに接合する際に位置決めする第３位置決め部材が、前記ブラケット材及び前記直壁パネルのいずれか一方又は両方に取り付けられていることを特徴とする。

【0021】

第１１発明に係る防音壁の頂部構造は、第１０発明において、前記直壁パネルに取り付けられた前記第２位置決め部材は、前記ブラケット材の基端部の板面に当接するとともに、前記ブラケット材の前記直壁パネルに固定するためのパネル固定部に下方から当接して掛け止める部材であることを特徴とする。

【発明の効果】

【0022】

第１発明～第１１発明によれば、防音壁の分岐型の頂部構造を複数の部材に分けて構成しているため、重機で揚重する必要がなく人力施工が可能となっている。また、第１発明～第１１発明によれば、厚み方向に幅をとる分岐型の頂部構造を、複数枚の薄い部材から構成することができ、線路際などの狭隘な作業空間での作業効率が向上する。その上、第１発明～第１１発明によれば、ブラケット材にフランジを設けることで接合部材が外れた場合でも吸音パネルが軌道や車道の騒音源側に落下することを防止できるとともに、ブラケット材の上方に持ち上げることなく、ケンドン式にフランジを避けて吸音パネルを挿置することができ、重機等で作業員の頭上を越える高さまで揚重する必要がなくなる。さらに、第１発明～第１１発明によれば、吸音パネルは、突起を有する突起パネルであるので、回析による騒音低減効果が向上する。

【0023】

特に、第２発明によれば、第１位置決め部材が設けられているので、フランジ上に吸音パネルを載置するだけでフランジと吸音パネルのボルト孔が重なり合うように位置決めすることができ、作業負担が軽減され、施工性が向上する。

【0024】

特に、第３発明によれば、ブラケット材のフランジにスリットが設けられているので、突起パネルの突起を吸音パネルの幅方向の端部まで隙間なく設けることができ、騒音低減効果が向上する。

【0025】

特に、第４発明によれば、フランジに設けられたスリットにより、第１位置決め部材を設けることなく、フランジ上に吸音パネルの突起パネルを載置するだけでフランジと吸音パネルのボルト孔が重なり合うように位置決めすることができ、作業負担が軽減され、施工性が向上する。

【0026】

特に、第５発明によれば、突起パネルは、断面Ｌ字状のＬ字パネルから構成され、Ｌ字パネルは、スリットから挿入して回転することで前記フランジ上に載置可能に構成されているので、フランジを避けてケンドン式に突起パネルを挿し込むのではなく、スリットからＬ字パネルを簡潔な動作で設置して重労働な頭上作業を短時間で完了でき、施工効率がより向上する。

【0027】

特に、第６発明によれば、Ｌ字パネル同士が凸部と凹部とからなる嵌合部で嵌合されているので、上部のＬ字パネルの回転が阻止され、誤って上部のＬ字パネルがスリットから回転して落下するおそれを払拭することができる。また、第６発明によれば、凸部と凹部のＬ字パネル同士の噛み合いにより、騒音低減効果が向上するだけでなく、吸音パネルに対する垂直方向の外力に対して上下のＬ字パネル同士が一体化して対抗することができる。

【0028】

特に、第７発明によれば、ブラケット材が外周部を除く部分が切り欠かれているので、ブラケット材が軽量化されるとともに、持ちやすくなり、運搬や作業効率が向上する。

【0029】

特に、第８発明によれば、第２位置決め部材により、ブラケット材を支柱に取り付ける際の作業効率が向上する。

【0030】

特に、第９発明によれば、第２位置決め部材の先端が直壁パネル間に挿置されているので、支柱にブラケット材を接合する接合部材であるボルトが万が一破断した場合でも、ブラケット材やそれに取り付けられた吸音パネルが騒音源となる鉄道や車道に落下して大事故になることを防止することができる。

【0031】

特に、第１０発明によれば、第３位置決め部材により、ブラケット材を直壁パネルに取り付ける際の作業効率が向上する。

【0032】

特に、第１１発明によれば、第３位置決め部材が直壁パネルに固定するためのパネル固定部に下方から当接して掛け止めるので、直壁パネルにブラケット材を接合する接合部材であるボルトが万が一破断した場合でも、ブラケット材やそれに取り付けられた吸音パネルが騒音源となる鉄道や車道に落下して大事故になることを防止することができる。

【図面の簡単な説明】

【0033】

【図1】図１は、本発明の実施形態に係る防音壁の頂部構造を示す正面斜視図である。

【図2】図２は、同上の防音壁の頂部構造を示す正面図である。

【図3】図３は、同上の防音壁の頂部構造を示す図２の右側面図である。

【図4】図４は、同上の防音壁の頂部構造を示す図２のＡ－Ａ線断面図である。

【図5】図５は、同上の防音壁の頂部構造の直壁パネル単体を示す斜視図であり、（ａ）が上段の直壁パネルを示す斜視図、（ｂ）が下段の直壁パネルを示す斜視図である。

【図6】図６は、同上の防音壁の頂部構造の支柱固定用ブラケット材単体を示す斜視図である。

【図7】図７は、同上の防音壁の頂部構造のパネル固定用ブラケット材単体を示す斜視図である。

【図8】図８は、同上の防音壁の頂部構造において支柱に直壁パネルとブラケット材を取り付けて、吸音パネルを取り付ける前の状態を示す斜視図であり、図８（ｂ）は、図８（ａ）のＡ部拡大図である。

【図9】図９は、同上の防音壁の頂部構造の吸音パネル単体を示す斜視図である。

【図10】図１０は、変形例１に係る吸音パネルを示す斜視図である。

【図11】図１１は、変形例２に係る吸音パネルを示す斜視図である。

【図12】図１２（ａ）は、変形例３に係る吸音パネルを示す斜視図であり、図１２（ｂ）は、変形例３に係る吸音パネルをブラケット材に装着した状態を示す斜視図である。

【図13】図１３は、同上の防音壁の頂部構造の受け部材を支柱に介装した状態を示す平面図であり、（ａ）がくさびナットを溶接した場合、（ｂ）がゆるみ止めクリップＫナットを取り付けた場合である。

【図14】図１４は、同上の防音壁の頂部構造の吸音パネルをスリットに挿入する状態を示す図であり、（ａ）が正面斜視図、（ｂ）が右側面図である。

【図15】図１５は、同上の防音壁の頂部構造の吸音パネルを傾倒してブラケット材のフランジ上に載置する状態を示す図であり、（ａ）が正面斜視図、（ｂ）が右側面図である。

【発明を実施するための形態】

【0034】

以下、本発明の実施形態に係る防音壁の頂部構造について、図面を参照しながら詳細に説明する。

【0035】

［防音壁の頂部構造］
図１～図１３を用いて本発明の実施形態に係る防音壁の頂部構造１（以下、単にと頂部構造ともいう。）について説明する。図１は、本発明の実施形態に係る防音壁の頂部構造１を示す正面斜視図であり、図２は、頂部構造１を示す正面図である。また、図３は、頂部構造１を示す図２の右側面図であり、図４は、頂部構造１を示す図２のＡ－Ａ線断面図である。なお、図中のＸ方向が前後方向、Ｙ方向が軌道や道路に沿った壁面方向、Ｚ方向が上下方向である。

【0036】

図１～図４に示すように、本発明の実施形態に係る防音壁の頂部構造１は、Ｈ形鋼からなる支柱Ｈ１の上端部に設置され、騒音源側に傾斜して延びる分岐した頂部の形状で騒音を多重回析と干渉で減音する分岐型の頂部構造である。この頂部構造１は、Ｈ形鋼からなる支柱Ｈ１と支柱Ｈ１との間に取り付けられて上下方向に立設された直壁パネル２と、直壁パネル２及び支柱Ｈ１，Ｈ１にそれぞれ取り付けられて騒音源側に迫り出す複数（図示形態では３つ）の三角形状のブラケット材３と、ブラケット材３に装着された吸音パネル４と、支柱Ｈ１の前フランジＨ１ａと後フランジにＨ１ｂとの間に挿置される受け部材５など、から構成されている。

【0037】

（直壁パネル）
直壁パネル２は、図２，図５に示すように、高耐候性めっき鋼板やアルミニウム板などの金属板から縁部が折り返されて箱体の正面（前面）側が開放された横長な長方形状のパネル本体２０を基体とする上下二段のパネルである。この直壁パネル２は、横長な長方形状のパネル本体２０の長手方向の両端がそれぞれ支柱Ｈ１，Ｈ１の間の１スパンに架け渡されて固定されている。なお、直壁パネル２は、アルミニウム板とすることで軽量化を図ることができるため好ましい。図５は、頂部構造１の直壁パネル２単体を示す斜視図であり、（ａ）が上段の直壁パネル２を示す斜視図、（ｂ）が下段の直壁パネル２を示す斜視図である。

【0038】

このパネル本体２０は、図２に示すように、騒音源側である前面側が支柱Ｈ１の前フランジＨ１ａに水平断面がＺ字状の前止め部材２１で固定され、反対側となる背面（後面）側が受け部材５に当接されることで固定されている。また、図５（ａ），図５（ｂ）に示すように、パネル本体２０の横長な長手方向の中央には、ブラケット材３を固定するブラケット固定部材２２がボルト固定されている。

【0039】

そして、前止め部材２１は、前フランジＨ１ａに固定する上下一対のフランジ固定片２３，２３を有している。これらの上下一対のフランジ固定片２３，２３の間には、中央に後述のブラケット材３の上部支柱固定部３２ａ及び下部支柱固定部３３ａを避ける切欠き２４が形成されている。また、上下一対のフランジ固定片２３，２３には、前フランジＨ１ａにボルト固定するための長孔２３ａが形成されている。

【0040】

前止め部材２１は、前フランジＨ１ａに固定する上下一対のフランジ固定片２３，２３を有している。これらの上下一対のフランジ固定片２３，２３の間には、中央に後述のブラケット材３の上部支柱固定部３２ａ及び下部支柱固定部３３ａを避ける切欠き２４が形成されている。また、上下一対のフランジ固定片２３，２３には、前フランジＨ１ａにボルト固定するための長孔２３ａが形成されている。

【0041】

なお、後で詳述するように、図５（ａ）に示すように、上段の直壁パネル２のブラケット固定部材２２には、パネル固定用ブラケット材３ｂを直壁パネル２に接合する際に位置決めする左右一対の正面視Ｌ字状の第３位置決め部材２５，２５が取り付けられている。なお、図５（ｂ）に示すように、第３位置決め部材２５，２５に相当する部材は、下段の直壁パネル２には取り付けられていない。

【0042】

（ブラケット材）
ブラケット材３は、図６に示す支柱Ｈ１に固定する支柱固定用ブラケット材３ａと、図７に示す直壁パネル２のブラケット固定部材２２に固定するパネル固定用ブラケット材３ｂの２種類のブラケット材がある。但し、ブラケット材３は、いずれもパネル固定用ブラケット材３ｂとしても構わないし、後述の吸音パネル４を長くし、パネル固定用ブラケット材３ｂを無くして支柱固定用ブラケット材３ａだけとしても構わない。図６は、支柱固定用ブラケット材３ａを示す斜視図であり、図７は、パネル固定用ブラケット材３ｂを示す斜視図である。

【0043】

（支柱固定用ブラケット材）
図６に示すように、支柱固定用ブラケット材３ａは、２枚の鋼板が組み合わされ部材であり、直角三角形状の角が切り取られた六角形状の外形を有したウェブ３０ａと、ウェブ３０ａの斜めに傾斜した斜辺に沿って形成されたフランジ３１ａと、を有している。また、支柱固定用ブラケット材３ａは、前フランジＨ１ａに固定するための上部左右一対の上部支柱固定部３２ａと、下部左右一対の下部支柱固定部３３ａと、を有している。

【0044】

このウェブ３０ａは、外周部を除く部分に開口部３４ａが形成されている。このため、支柱固定用ブラケット材３ａを軽量化できるとともに、支柱固定用ブラケット材３ａが持ちやすくなり、運搬や作業効率が向上する。

【0045】

また、フランジ３１ａには、吸音パネル４をボルト接合するための複数のボルト孔３５ａが穿設されている。この支柱固定用ブラケット材３ａのボルト孔３５ａは、図６に示すように、位置調整のための長孔となっている。

【0046】

但し、後述のように、吸音パネル４は、パネル板面から突出して分岐する突起４ａを有する突起パネル（以下、突起パネル４ともいう）である。このため、支柱固定用ブラケット材３ａのフランジ３１ａは、突起パネル４の突起４ａを挿通するために矩形状に切り欠かれてスリットＳ１が形成されている。

【0047】

また、上部支柱固定部３２ａには、前フランジＨ１ａに固定するためのボルト孔３６ａが穿設され、下部支柱固定部３３ａには、前フランジＨ１ａに固定するためのボルト孔３７ａが穿設されている。この下部支柱固定部３３ａのボルト孔３７ａは、長孔となっており、一方、上部支柱固定部３２ａのボルト孔３６ａは、通常の円形の孔となっている。勿論、ボルト孔３６ａ及びボルト孔３７ａは、いずれも長孔であってもよいし、いずれも円形の丸孔であってもよい。また、ボルト孔３６ａを長孔とし、ボルト孔３７ａを円形の丸孔としても構わない。

【0048】

そして、支柱固定用ブラケット材３ａのフランジ３１ａの上面には、突起パネル４を掛け止めるために矩形状の鋼板からなる第１位置決め部材３８ａが突設されている。このため、第１位置決め部材３８ａにより、傾斜したフランジ３１ａ上に突起パネル４を載置した際に突起パネル４が自重でずれ落ちるのを掛け止めてフランジ３１ａのボルト孔３５ａと吸音パネル４のボルト孔とが重なり合うように位置決めすることができる。よって、突起パネル４を支柱固定用ブラケット材３ａにボルト接合する作業効率が格段に向上する。

【0049】

また、スリットＳ１は、第１位置決め部材３８ａと同様に、突起パネル４が自重でずれ落ちるのを突起４ａで掛け止めてフランジ３１ａのボルト孔３５ａと吸音パネル４のボルト孔とが重なり合うように位置決めすることができる。要するに、スリットＳ１は、第１位置決め部材３８ａの機能を兼用している。

【0050】

さらに、支柱固定用ブラケット材３ａのウェブ３０ａの基端部には、左右一対の第２位置決め部材３９ａがビス等でねじ止め固定されている。これら左右一対の第２位置決め部材３９ａは、ウェブ３０ａの基端部からウェブ３０ａの板面に対して直交方向に広がり、そこから背面側に直角に折れ曲がったエルボー状（平面視Ｌ字状）となっている。そして、一対の第２位置決め部材３９ａの先端部３９ｃ同士の間隔が前フランジＨ１ａの幅よりやや広く設定され、且つ、先端部３９ｃがテーパー状となっている。

【0051】

このため、一対の第２位置決め部材３９ａが取り付けられた支柱固定用ブラケット材３ａを前フランジＨ１ａに当接することで、テーパー状の先端部３９ｃに案内されて、支柱固定用ブラケット材３ａのウェブ３０ａが前フランジＨ１ａの幅方向の中心位置に来るように位置決めされる。

【0052】

また、図８（ａ），図８（ｂ）に示すように、第２位置決め部材３９ａの先端部３９ｃが、上段の直壁パネル２と下段の直壁パネル２との間に差し込まれることで、支柱固定用ブラケット材３ａが、前フランジＨ１ａの所定の高さに位置決めされる。図８（ａ）は、支柱Ｈ１に上下２段の直壁パネル２と、３つのブラケット材３を取り付けて、吸音パネル４を取り付ける前の頂部構造１を示す斜視図であり、図８（ｂ）は、図８（ａ）のＡ部拡大図である。

【0053】

（パネル固定用ブラケット材）
図７に示すように、パネル固定用ブラケット材３ｂも、支柱固定用ブラケット材３ａと同様に、２枚の鋼板が組み合わされ部材であり、直角三角形状の角が切り取られた六角形状の外形を有したウェブ３０ｂと、ウェブ３０ｂの斜めに傾斜した斜辺に沿って形成されたフランジ３１ｂと、を有している。また、パネル固定用ブラケット材３ｂは、上段の直壁パネル２のブラケット固定部材２２に固定するための左右一対の上部パネル固定部３２ｂと、下段の直壁パネル２のブラケット固定部材２２に固定するための左右一対の下部パネル固定部３３ｂと、を有している。

【0054】

このウェブ３０ｂは、外周部を除く部分に開口部３４ｂが形成されている。このため、パネル固定用ブラケット材３ｂを軽量化できるとともに、支柱固定用ブラケット材３ａが持ちやすくなり、運搬や作業効率が向上する。

【0055】

また、フランジ３１ｂには、吸音パネル４をボルト接合するための複数のボルト孔３５ｂが穿設されている。このパネル固定用ブラケット材３ｂのボルト孔３５ｂは、図７に示すように、一般的な円形の孔となっている。つまり、吸音パネル４をブラケット材３に固定するに際しては、先ず、中央のパネル固定用ブラケット材３ｂの円形の孔であるボルト孔３５ｂから接合を行って、左右の支柱固定用ブラケット材３ａの長孔であるボルト孔３５ａで調整する。

【0056】

支柱固定用ブラケット材３ａと同様に、パネル固定用ブラケット材３ｂのフランジ３１ｂは、突起パネル４の突起４ａを挿通するために矩形状に切り欠かれてスリットＳ１が形成されている。

【0057】

また、上部パネル固定部３２ｂには、上段の直壁パネル２のブラケット固定部材２２に固定するためのボルト孔３６ｂが穿設され、下部パネル固定部３３ｂには、下段の直壁パネル２のブラケット固定部材２２に固定するためのボルト孔３７ｂが穿設されている。この上部パネル固定部３２ｂのボルト孔３６ｂは、円形の孔となっており、下部パネル固定部３３ｂのボルト孔３７ｂは、上下のパネル体の左右誤差修正のため長孔となっている。勿論、ボルト孔３６ｂ及びボルト孔３７ｂは、いずれも長孔であってもよいし、いずれも円形の丸孔であってもよい。また、ボルト孔３６ｂを長孔とし、ボルト孔３７ｂを円形の丸孔としても構わない。

【0058】

そして、支柱固定用ブラケット材３ａと同様に、パネル固定用ブラケット材３ｂのフランジ３１ｂの上面には、突起パネル４を掛け止めるために矩形状の鋼板からなる第１位置決め部材３８ｂが突設されている。このため、第１位置決め部材３８ｂにより、傾斜したフランジ３１ｂ上に突起パネル４を載置した際に突起パネル４が自重でずれ落ちるのを掛け止めてフランジ３１ｂのボルト孔３５ｂと吸音パネル４のボルト孔とが重なり合うように位置決めすることができる。よって、吸音パネル４を支柱固定用ブラケット材３ａにボルト接合する作業効率が格段に向上する。

【0059】

また、スリットＳ１は、第１位置決め部材３８ｂと同様に、突起パネル４が自重でずれ落ちるのを突起４ａで掛け止めてフランジ３１ｂのボルト孔３５ｂと吸音パネル４のボルト孔とが重なり合うように位置決めすることができる。要するに、スリットＳ１は、第１位置決め部材３８ｂの機能を兼用している。

【0060】

さらに、図５，図８に示すように、パネル固定用ブラケット材３ｂが取り付けられる上段の直壁パネル２のブラケット固定部材２２には、パネル固定用ブラケット材３ｂを直壁パネル２に接合する際に位置決めする第３位置決め部材２５が取り付けられている。この第３位置決め部材２５は、パネル固定用ブラケット材３ｂのウェブ３０ｂの基端部の板面に当接することで、パネル固定用ブラケット材３ｂの壁面方向であるＹ方向の位置決めがされる。

【0061】

また、第３位置決め部材２５は、上部パネル固定部３２ｂに下方から当接して掛け止めているので、上下方向Ｚの位置決めがなされるとともに、直壁パネル２にパネル固定用ブラケット材３ｂを接合するボルトが万が一破断した場合でも、パネル固定用ブラケット材３ｂやそれに取り付けられた突起パネル４が騒音源となる鉄道や車道に落下して大事故になることを防止することができる。

【0062】

（吸音パネル）
本実施形態に係る吸音パネル４は、図４に示すように、金属板からなる金属筺体４０を備え、その金属筺体４０内に吸音材４１が挿置された一般的な吸音パネルである。但し、吸音パネル４は、パネル板面から突出して分岐する突起４ａを有する突起パネルとなっている。このため、多重回析による騒音低減効果が向上する。

【0063】

この金属筺体４０は、高耐候性めっき鋼板やアルミニウム板などの金属板からなる。また、金属筺体４０の正面板は、図１，図２，図９に示すように、多数の貫通孔４０ａが穿設されたパンチングメタル形式の吸音パネルとなっており、多数の貫通孔４０ａから騒音の直接音を透過し、その直接音を吸音材で吸音する仕組みとなっている。勿論、本発明に係る金属筺体４０は、パンチングメタル形式ものに限られず、ルーバー形状の開口が形成されたルーバー形式のものであっても構わない。図９は、頂部構造１の吸音パネル４を示す斜視図である。

【0064】

吸音材４１は、グラスウールやポリエステル繊維などの繊維材や発泡樹脂などの多孔質材からなり、騒音を吸音材で乱反射して減衰させて減音する機能を有している。勿論、本発明に係る吸音材は、騒音を乱反射して減衰させて吸音でき、防音壁に挿置可能な所定の撥水性や難燃性がある素材であれば特に限定されるものではない。

【0065】

また、本発明に係る吸音パネルは、吸音材を挿置した多孔質型吸音タイプのものに限られない。例えば、本発明に係る吸音パネルは、板振動や膜振動をし、音のエネルギの一部を内部摩擦によって消費して吸音する板（膜）振動型吸音タイプ、空洞に孔があいた共鳴器を備え、共鳴周波数の近くで孔の部分の空気が激しく振動し、周辺との摩擦熱として消費して吸音する共鳴器型吸音タイプ、など、他の既知の吸音パネルとすることができる。

【0066】

但し、図４，図９に示すように、本実施形態に係る吸音パネル４は、断面において線対称の一対の断面Ｌ字状のＬ字パネルの短辺同士が背面で当接して組み合わされて突起４ａが構成された突起パネル４となっている。下部に位置するＬ字パネルが下部Ｌ字パネル４２であり、上部に位置するＬ字パネルが上部Ｌ字パネル４３である。

【0067】

また、上部Ｌ字パネル４３の角部に凸部４３ａが形成され、下部Ｌ字パネル４２の角部に凹部４２ａが形成され、これらの凸部４３ａと凹部４２ａとが互いに嵌合することで、上部Ｌ字パネル４３と下部Ｌ字パネル４２とが互いに回転不能になっている。このため、ボルト接合前に上部Ｌ字パネル４３及び下部Ｌ字パネル４２がスリットＳ１から回転して転落するおそれが低減される。

【0068】

勿論、上部Ｌ字パネル４３の角部に凸部４３ａが形成されているものを例示して説明したが、凸部が上部Ｌ字パネル４３と下部Ｌ字パネル４２のいずれか一方に形成され、他方に凹部が形成されていればよい。但し、上部Ｌ字パネル４３は、スリットＳ１に掛け止められていないので、回転してスリットＳ１から落下するおそれが高いため、上部Ｌ字パネル４３の方に、凸部４３ａを設けることが比較的好ましい。

【0069】

また、Ｌ字パネル４２とＬ字パネル４３とが、凸部４３ａと凹部４２ａで嵌合されているので、上部Ｌ字パネル４３の回転が阻止され、誤って上部のＬ字パネル４３がスリットＳ１から回転して落下するおそれを払拭することができる。また、凸部と凹部のＬ字パネル同士の噛み合いにより、騒音低減効果が向上するだけでなく、吸音パネル４に対して垂直方向の外力に対して上下のＬ字パネル同士が一体化して対抗することができる。

【0070】

＜変形例１＞
次に、図１０を用いて、本実施形態に係る吸音パネル４の変形例１について説明する。図１０は、変形例１に係る吸音パネル４－１を示す斜視図である。図１０に示すように、吸音パネル４－１は、前述の下部Ｌ字パネル４２と、上部フラットパネル４４とから構成されており、下部Ｌ字パネル４２の短辺部が突起４ａとなっている。

【0071】

上部フラットパネル４４は、金属板からなる矩形箱状の金属筺体４０を備え、その金属筺体４０内に吸音材４１が挿置された一般的な吸音パネルである。金属筺体４０の正面板は、図１０に示すように、多数の貫通孔４０ａが穿設されたアルミニウム板からなるパンチングメタル形式の吸音パネルとなっている。

【0072】

また、上部フラットパネル４４には、前述の下部Ｌ字パネル４２の凹部４２ａと嵌合する凸部４４ａが形成されている。これらの凸部４４ａと凹部４２ａとが互いに嵌合することで、上部フラットパネル４４と下部Ｌ字パネル４２とが互いに回転不能になっている。このため、上部フラットパネル４４の回転が阻止され、誤って上部フラットパネル４４がスリットＳ１から回転して落下するおそれを払拭することができる。

【0073】

＜変形例２＞
次に、図１１を用いて、本実施形態に係る吸音パネル４の変形例２について説明する。図１１は、変形例２に係る吸音パネル４－２を示す斜視図である。図１１に示すように、吸音パネル４－２は、前述の上部Ｌ字パネル４３と、下部フラットパネル４５とから構成されており、上部Ｌ字パネル４３の短辺部が突起４ａとなっている。

【0074】

下部フラットパネル４５も、金属板からなる矩形箱状の金属筺体４０を備え、その金属筺体４０内に吸音材４１が挿置された一般的な吸音パネルである。金属筺体４０の正面板は、図１１に示すように、多数の貫通孔４０ａが穿設されたアルミニウム板からなるパンチングメタル形式の吸音パネルとなっている。

【0075】

また、下部フラットパネル４５には、前述の上部Ｌ字パネル４３の凸部４３ａと嵌合する凹部４５ａが形成されている。これらの凸部４３ａと凹部４５ａとが互いに嵌合することで、下部フラットパネル４５と上部Ｌ字パネル４３とが互いに回転不能になっている。このため、上部フラットパネル４３の回転が阻止され、誤って上部フラットパネル４３がスリットＳ１から回転して落下するおそれを払拭することができる。

【0076】

＜変形例３＞
次に、図１２を用いて、本実施形態に係る吸音パネル４の変形例３について説明する。図１２（ａ）は、変形例３に係る吸音パネルを示す斜視図であり、図１２（ｂ）は、変形例３に係る吸音パネルをブラケット材に装着した状態を示す斜視図である。図１２（ａ）に示すように、吸音パネル４－３は、フラットパネル４ｂ’と突起部４ａ’とからなる、一体型の吸音パネルである。

【0077】

また、突起部４ａ’の幅は、フラットパネル４ｂ’の幅より狭くなっている。このため、吸音パネル４－３は、ブラケット材３のフランジにスリットＳ１が形成されていなくても、ブラケット材３のフランジにケンドン式に装着することが可能となっている。

【0078】

（受け部材）
受け部材５は、図１３に示すように、支柱Ｈ１の前フランジＨ１ａと後フランジＨ１ｂとの間に介装されて騒音源側となる前フランジＨ１ａに前止め固定される背面側の一辺の幅が広い断面コの字状の部材であり、前述の直壁パネル２やその下段に挿置される遮音パネルや吸音パネルの背面側を受け止めて支持する機能を有している。図１３は、受け部材５を支柱Ｈ１に介装した状態を示す平面図であり、（ａ）がくさびナットを溶接した場合、（ｂ）がゆるみ止めクリップＫナットを取り付けた場合である。

【0079】

図１３（ａ）に示すように、この受け部材５には、くさびナットＷＮが溶接されている。このくさびナットＷＮが溶接されている位置は、支柱Ｈ１のボルト孔に相当する位置であり、防音壁の前面側から簡単にボルトで各パネルの前止めが可能となっている。但し、予め受け部材５にくさびナットＷＮ溶接するのではなく、図１３（ｂ）に示すように、受け部材５にゆるみ止めクリップＫナットＫＮをクリップ止めしても構わない。溶接する手間が省けるからである。

【0080】

［突起パネルの装着方法］
次に、図１４，図１５を用いて、突起パネル４の装着方法について説明する。前述の頂部構造１で突起パネル４をブラケット材３に装着する場合で説明する。図１４は、頂部構造１の突起パネル４をスリットＳ１に挿入する状態を示す図であり、（ａ）が正面斜視図、（ｂ）が右側面図である。図１５は、頂部構造１の突起パネル４を傾倒してブラケット材３のフランジ上に載置する状態を示す図であり、（ａ）が正面斜視図、（ｂ）が右側面図である。

【0081】

図１４に示すように、頂部構造１では、先ず、ブラケット材３（支柱固定用ブラケット材３ａ，パネル固定用ブラケット材３ｂ）のフランジ（フランジ３１ａ，３１ｂ）に形成されたスリットＳ１に下部Ｌ字パネル４２の長辺を挿入する。

【0082】

そして、図１５に示すように、スリットＳ１の下端を中心に長辺を通過させた下部Ｌ字パネル４２を回転して傾倒させ、ブラケット材３（支柱固定用ブラケット材３ａ，パネル固定用ブラケット材３ｂ）のフランジ（フランジ３１ａ，３１ｂ）上に下部Ｌ字パネル４２を載置する。

【0083】

すると、突起パネル４は、スリットＳ１の下端に掛け止められるとともに、前述の第１位置決め部材３８ａ（３８ｂ）に突起パネル４の下端が掛け止められることで、フランジ（フランジ３１ａ，３１ｂ）のボルト孔と吸音パネル４のボルト孔が重なり合うように位置決めされる。このため、ブラケット材３への突起パネル４のボルト固定作業における頭上での人力での持ち上げ固定作業の作業負担が軽減され、施工性が向上する。

【0084】

次に、スリットＳ１に上部Ｌ字パネル４３の長辺を挿入する。そして、図１５に示すように、スリットＳ１の上端を中心に長辺を通過させた上部Ｌ字パネル４３を回転して傾倒させ、ブラケット材３（支柱固定用ブラケット材３ａ，パネル固定用ブラケット材３ｂ）のフランジ（フランジ３１ａ，３１ｂ）上に上部Ｌ字パネル４３を載置する。

【0085】

ここで、一般に、頂部構造１は、一般的に２ｍ以上もある防音壁の頂部に設けられる構成であるため、フランジ（フランジ３１ａ，３１ｂ）を避けてケンドン式に突起パネル４を挿入する作業は、作業員の頭上に人力で突起パネル４を持ち上げた状態での作業となり、かなりの重労働となる。

【0086】

しかし、本実施形態に係る頂部構造１では、前述のように、フランジを避けてケンドン式に吸音パネル４を挿し込むのではなく、突起パネル４をスリットＳ１から挿入して回転させて挿置するので、位置決め時に突起パネル４を持ち上げた状態で保持する必要がなく、短時間で楽に作業ができ、施工効率が向上する。

【0087】

［頂部構造の作用効果］
以上説明した本実施形態に係る防音壁の頂部構造１によれば、分岐型の頂部構造を複数の部材に分けて構成しているため、重機で揚重する必要がなく人力施工が可能となっている。また、頂部構造１によれば、厚み方向に幅をとる分岐型の頂部構造を、複数枚の薄い部材から構成することができ、線路際などの狭隘な作業空間での作業効率が向上する。

【0088】

その上、頂部構造１によれば、ブラケット材３にフランジ（フランジ３１ａ，３１ｂ）を設けることで吸音パネル４を接合している接合部材が外れた場合でも軌道や車道の騒音源側に吸音パネル４が落下することを防止できる。

【0089】

さらに、頂部構造１によれば、ブラケット材３の上方に吸音パネル４を持ち上げることなく、ケンドン式にブラケット材３のフランジ（フランジ３１ａ，３１ｂ）を避けて吸音パネル４を挿置することができ、重機等で作業員の頭上を越える高さまで揚重する必要がない。

【0090】

そして、頂部構造１によれば、吸音パネル４が突起４ａを有する突起パネル４であるので、多重回析による騒音低減効果が向上する。

【0091】

また、頂部構造１では、第１位置決め部材３８ａ，３８ｂ及びスリットＳ１により、フランジ（フランジ３１ａ，３１ｂ）上に突起パネル４を回転載置するだけでフランジと吸音パネル４のボルト孔が重なり合うように位置決めすることができ、作業負担が軽減され、施工性が向上する。

【0092】

その上、頂部構造１には、吸音パネル４を挿通するスリットＳ１が形成されているので、フランジを避けてケンドン式に吸音パネルを挿し込むのではなく、スリットＳ１から回転させて吸音パネル４を挿し込むことができ、短時間で作業ができ、施工効率が向上する。また、スリットＳ１から吸音パネル４を挿し込んで装着することができるため、鉄道橋のような運行する列車と敷地境界までの間の狭隘な作業スペースでも施工が可能となる。

【0093】

また、頂部構造１のブラケット材３のウェブ３０ａ，３０ｂは、外周部を除く部分に開口部３４ａ，３４ｂが設けられているので、ブラケット材３を軽量化することができるとともに、ウェブ３０ａ，３０ｂの幅が人の手で握りやすい幅となり、ブラケット材３が持ち易く、運搬や作業効率が向上する。

【0094】

また、頂部構造１には、ブラケット材３に第２位置決め部材３９ａが、ブラケット固定部材２２に第３位置決め部材２５が設けられているので、第２位置決め部材３９ａ及び第３位置決め部材２５により、ブラケット材３が位置決めされ、ブラケット材３を支柱Ｈ１や直壁パネル２のブラケット固定部材２２に取り付ける際の作業効率が向上する。

【0095】

また、頂部構造１では、第３位置決め部材２５がパネル固定用ブラケット材３ｂの上部パネル固定部３２ｂに下方から当接して掛け止めるので、直壁パネル２にパネル固定用ブラケット材３ｂを接合するボルトが万が一破断した場合でも、ブラケット材３やそれに取り付けられた吸音パネル４が騒音源となる鉄道や車道に落下して大事故になることを防止することができる。

【0096】

また、頂部構造１では、第２位置決め部材３９ａの先端部３９ｃが上下段の直壁パネル２，２間に挿置されているので、支柱Ｈ１にブラケット材３を接合するボルトが万が一破断した場合でも、ブラケット材３やそれに取り付けられた吸音パネル４が騒音源となる鉄道や車道に落下して大事故になることを防止することができる。

【0097】

以上、本発明の実施形態に係る防音壁の頂部構造１について詳細に説明したが、前述した又は図示した実施形態は、いずれも本発明を実施するにあたって具体化した一実施形態を示したものに過ぎない。よって、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。

【0098】

１：（防音壁の）頂部構造
２：直壁パネル
２０：パネル本体
２１：前止め部材
２２：ブラケット固定部材
２３：フランジ固定片
２３ａ：長孔
２４：切欠き
２５：第３位置決め部材（位置決め部材）
３：ブラケット材
３ａ：支柱固定用ブラケット材
３ｂ：パネル固定用ブラケット材
３０ａ，３０ｂ：ウェブ
３１ａ，３１ｂ：フランジ
３２ａ：上部支柱固定部
３２ｂ：上部パネル固定部
３３ａ：下部支柱固定部
３３ｂ：下部パネル固定部
３４ａ、３４ｂ：開口部
３５ａ，３５ｂ，３６ａ，３６ｂ，３７ａ，３７ｂ：ボルト孔
３８ａ，３８ｂ：第１位置決め部材
３９ａ：第２位置決め部材
３９ｃ：先端部
４：吸音パネル（突起パネル）
４０：金属筐体
４０ａ：貫通孔
４１：吸音材
４２：下部Ｌ字パネル（突起パネル）
４３：上部Ｌ字パネル（突起パネル）
４４：上部フラットパネル（突起パネル）
４５：下部フラットパネル（突起パネル）
５：受け部材
Ｓ１：スリット（第１位置決め部材）
Ｈ１：支柱
Ｈ１ａ：前フランジ
Ｈ１ｂ：後フランジ
ＷＮ：くさびナット
ＫＮ：ゆるみ止めクリップＫナット

【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】

【図13】

【図14】

【図15】