(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024062872
(43)【公開日】2024-05-10
(54)【発明の名称】間仕切り及び間仕切りシステム
(51)【国際特許分類】
E04B 2/82 20060101AFI20240501BHJP
E04B 2/74 20060101ALI20240501BHJP
【FI】
E04B2/82 501E
E04B2/74 501A
E04B2/82 501G
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022171003
(22)【出願日】2022-10-25
(71)【出願人】
【識別番号】000239714
【氏名又は名称】文化シヤッター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119091
【弁理士】
【氏名又は名称】豊山 おぎ
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼木 将司
(57)【要約】
【課題】遮音性を有し圧接ゴムの操作性が良い間仕切りを提供する。
【解決手段】本発明は、空間を区画するパネル1aと、パネル1aの上端面又は下端面に配され、パネル1aの上方又は下方の設置面100A,100Bに向かって進出又は退避可能な圧接フレーム21と、圧接フレーム21に取り付けられ、パネル1aと前記設置面との間を閉塞可能な圧接ゴム2,2とを備え、圧接フレーム21は、パネル1a内に設けられた横框5の長手方向に延びる一対の立ち上がり壁の内面に対向させて上下動自在に配する一対の挿入壁部25,25と、この一対の挿入壁部25,25の上端に設けられ、圧接ゴム2,2を保持するための嵌合部26,26とを有し、一対の挿入壁部25,25は、その各外表面にシールゴム35を備えている間仕切り1に関する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空間を区画するパネルと、前記パネルの上端面又は下端面に配され、前記パネルの上方又は下方の設置面に向かって進出又は退避可能な圧接フレームと、前記圧接フレームに取り付けられ、前記パネルと前記設置面との間を閉塞可能な圧接ゴムとを備え、
前記圧接フレームは、前記パネル内に設けられた横框の長手方向に延びる一対の立ち上がり壁の内面に対向させて上下動自在に配する一対の挿入壁部と、この一対の挿入壁部の上端に設けられ、前記圧接ゴムを保持するための嵌合部とを有し、
前記一対の挿入壁部は、その各外表面にシールゴムを備えている間仕切り。
【請求項2】
前記シールゴムは、前記挿入壁部に固定された状態で前記横框の立ち上がり壁の内面に向かって延びるとともに、下方に向かって湾曲する円弧形状の接触部を有している請求項1に記載の間仕切り。
【請求項3】
前記接触部は、摩擦係数が他の箇所よりも小さくするすべり加工が施されている請求項1又は2に記載の間仕切り。
【請求項4】
前記シールゴムは、エチレンプロピレンジエンゴムを含む合成樹脂により形成されている請求項1又は2に記載の間仕切り。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の間仕切りと、
前記間仕切りの前記圧接ゴムに対向して設けられたレール部と、
前記レール部内で回転自在に設けられ、前記間仕切りと連結したローラとを備えた間仕切りシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室内空間を分割可能な間仕切り及び間仕切りシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
複数のパネルを連結させて室内空間を仕切るスライディングウォール等の間仕切りが広く知られている。このような間仕切りについて、遮音性を高める技術が多数開発されている。
間仕切りの上下においては、遮音性を上げるために、天井面又は床面との隙間を塞ぐ圧接ゴムがパネルの上端面及び下端面に設けられたものがある。
このような圧接ゴムは、パネル内部に設けられた圧接フレームに固定されており、圧接フレームの上下動により、パネルの移動時にパネル内に引き込まれてパネルの移動を容易にし、パネル設置時に引き出されて天井面及び/又は床面等の設置面に密着し得る構成になっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来の圧接フレームは、構造が複雑であるという問題があった。
そこで本発明は、構造がシンプルで遮音効果を高め得る圧接フレームを有する間仕切り及び間仕切りシステムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の間仕切りは、空間を区画するパネルと、前記パネルの上端面又は下端面に配され、前記パネルの上方又は下方の設置面に向かって進出又は退避可能な圧接フレームと、前記圧接フレームに取り付けられ、前記パネルと前記設置面との間を閉塞可能な圧接ゴムとを備え、前記圧接フレームは、前記パネル内に設けられた横框の長手方向に延びる一対の立ち上がり壁の内面に対向させて上下動自在に配する一対の挿入壁部と、この一対の挿入壁部の上端に設けられ、前記圧接ゴムを保持するための嵌合部とを有し、前記一対の挿入壁部は、その各外表面にシールゴムを備えている。
この構成によれば、圧接フレームと横框との間を塞ぐシールゴムを設ける構成をシンプルにすることができる。
【0005】
本発明の間仕切りの前記シールゴムは、前記挿入壁部に固定された状態で前記横框の立ち上がり壁の内面に向かって延びるとともに、下方に向かって湾曲する円弧形状の接触部を有していてもよい。
この構成によれば、シールゴムと横框との摩擦を抑えて圧接フレームの動作を円滑にすることができる。
【0006】
本発明の間仕切りの前記接触部は、摩擦係数を他の箇所よりも小さくするすべり加工されていてもよい。
この構成によれば、シールゴムと横框との摩擦を抑えて圧接フレームの動作を円滑にすることができる。
【0007】
本発明の間仕切りの前記シールゴムは、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)を含む合成樹脂により形成されていてもよい。
この構成によれば、シールゴムによって圧接フレームと横框との間隔を良好に保持するとともに摩擦を抑えて圧接フレームの動作を円滑にすることができる。
【0008】
本発明の間仕切りシステムは、前記いずれか一に記載の間仕切りと、前記間仕切りの前記圧接ゴムに対向して設けられたレール部と、前記レール部内で回転自在に設けられ、前記間仕切りと連結したローラとを備えている。
この構成によれば、上記いずれかの機能を有する間仕切りシステムを提供することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の間仕切りは、部品点数を抑制したシンプルな構成で、より高い遮音性を発揮することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態の間仕切りシステムを示す概略図である。
【
図2】
図1に示す間仕切りの一部をA-A線で切断した面で矢視した断面図である。
【
図3】(a),(b)本発明の一実施形態の間仕切りを連結ゴムで連結する過程を示したい横断面図である。
【
図4】本発明の一実施形態の間仕切りをシールゴムの長手方向に直交する方向で切断して視た縦断面図である。
【
図5】本発明の一実施形態の間仕切りのシールゴムを示す斜視図である。
【
図6】本発明の一実施形態の間仕切りの圧接ゴムを示す斜視図である。
【
図7】本発明の一実施形態の間仕切り同士を連結する前の状態を示す正面図である。
【
図8】(a)本発明の一実施形態の間仕切りの角部圧接ゴムを示した右側面図である。(b)本図(a)を平面視した図である。(c)本図(a)を底面視した図である。(d)本発明の角部圧接ゴムを示した背面図である。
【
図9】本発明の一実施形態の間仕切りシステムであって、間仕切りを移動可能にした状態を示す図である。
【
図10】本発明の一実施形態の間仕切り同士の間が閉塞した状態を角部圧接ゴムの水平延伸部を含む面で断面視した図である。
【
図11】本発明の一実施形態の間仕切り同士の間が閉塞した状態を角部圧接ゴムの上下延伸部を含む面で断面視した図である。
【
図12】本発明の一実施形態の間仕切り同士を連結した状態で設置面に対して圧接ゴムを操作する過程を示す正面図である。
【
図13】本発明の一実施形態の間仕切りの圧接ゴムを設置面に対して密着させた状態を示す側面図である。
【
図14】本発明の他の実施形態の間仕切りのシールゴムを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図を参照して本発明の間仕切り及び間仕切りシステムの一実施形態について、スライディングウォール及びスライディングウォールシステムを例として説明する。
図1に示すように、本発明のスライディングウォールシステムXは、スライディングウォール1と、スライディングウォール1の上方及び下方に設けられた設置面100A,100Bと、レール100内で回転自在に設けられ、スライディングウォール1と連結したローラ110とを主として備えている。
【0012】
スライディングウォール1は、パネル1a、パネル1aの上下の設置面100A,100Bとパネル1aとの間を塞ぐ圧接ゴム2、及び圧接ゴム2を上下動させる圧接フレーム21(
図4参照)を主として備えている。本実施形態では、スライディングウォール1は、更に隣接するパネル1a,1a間を塞ぐ連結ゴム3等を備えている。
【0013】
設置面100A,100Bは、それぞれ、スライディングウォール1が設置される空間の天井面若しくは天井面に設けられたレール100の下面及び側面100A並びに床面Fである。
【0014】
図1又は
図2に示すように、パネル1aは、左右一対の縦框4,4,上下一対の横框5,5、枠材の表裏に貼り合わせる一対の表面材6,6(
図2参照)、及び、表面材6,6間に充填された不図示の遮音材を具備している。
【0015】
縦框4は、左右の竪枠を構成する部材である。
図2に示すように、縦框4は、表面材6,6の左右端縁の間を塞ぐ長尺なほぼ矩形の基板部8と、表面材6,6間側に向けるように基板部8の一方の偏平面に形成された横桟保持部9と、基板部8の他方の偏平面に形成された接続部10とを有している。
【0016】
横桟保持部9は、基板部8の短手方向(即ちパネル1aの厚さ方向)の両端から基板部8の偏平面に対してほぼ垂直に突出する一対の側面部11,11と、一対の側面部11,11の先端から互いに対向する方向に折れ曲がって延びた後、再び折れ曲がって反対側の縦框4に向かって延びた一対の狭持部12,12とを有している。
【0017】
狭持部12,12間には、パネル1aに剛性を付与する横桟15をちょうど挟める間隔が設けられている。横桟15の端部に面接触する接触部13,13間は、横桟15を挿入させる開口部となっている。
【0018】
接続部10は、基板部8、係止壁10a,10a、及び化粧板嵌合部17,17を有している。
係止壁10a,10aは、それぞれ基板部8の短手方向の両端近傍から突出した後、互いに近接する方向に延びるようにして、階段状に2度略直角に折れ曲がって開口部をすぼめている。このようにして係止壁10a,10aは、横桟保持部9の開口と反対の方向に開口している。
【0019】
基板部8及び係止壁10a,10aに囲まれた接続部10内は、隣接するパネル1a,1aの間に介在させる連結ゴム3又は角部圧接ゴム2cを嵌合させる凹所になっている。
係止壁10a,10aには、やや厚板状の化粧板嵌合部17が互いに反対方向を向いて張り出している。
【0020】
化粧板嵌合部17は、一対の表面材6,6の外面に向かって基板部8にほぼ平行に形成されている。
化粧板嵌合部17には、その張り出し方向の先端の面を開口部として、化粧板嵌合部17を厚さ方向に二分する溝17aが形成されている。溝17aは、後述する表面材6の化粧板31の先端をぴったりと嵌合できる幅を有し、縦框4の延在の方向に貫通している。
【0021】
基板部8、横桟保持部9を形成している側面部11及び狭持部12、並びに接続部10、は、表面材6の上端から下端に亘って一定形状で延伸している。
【0022】
図3(a)に示すように、パネル1aの左右に設けられた縦框4,4のうちの一方(本実施形態では左側の縦框4)には、予め連結ゴム3が取り付けられている。これにより、パネル1aの左側の縦框4は、隣接するパネル1aの右側の縦框4に連結できるようになっている。
【0023】
連結ゴム3は、固定部3aと、間隔保持部3b,3bと、嵌着部3cとを有した断面視偏平な形状で、縦框4を覆う長尺な部材である。
連結ゴム3の固定部3aは、パネル1aの一方の側端面の縦框4の接続部10に一旦嵌合すると、係止壁10aとの係合で容易に取り外しできない形状で接続部10内に固定されている。
【0024】
図3(b)に示すように、連結ゴム3の間隔保持部3bは、固定部3aと嵌着部3cとの中間から水平方向に張り出している。間隔保持部3bは、パネル1aの右側端面と隣接するパネル1aの左側端面とを突き合せた際に、一方のパネル1aの係止壁10a,10a及び化粧板嵌合部17,17と他方のパネル1aの係止壁10a,10a及び化粧板嵌合部17,17との間に介在する。これにより、対向するパネル1a,1aとの間の距離を一定以上に保持するとともに、パネル1a,1a間を密に閉塞している。
【0025】
連結ゴム3の嵌着部3cは、間隔保持部3b,3bの間から接続部10の外側に突出する部分である。嵌着部3cは、突出方向に向かってすぼむ、中空の平面視略台形に形成されている。この嵌着部3cは、隣接するパネル1aの接続部10内に所定以上の力で完全に押し込まれて密に連結可能となっており、所定以上の力で隣接するパネル1aの接続部から引き抜くことができるようになっている。
【0026】
以上の構成を有する連結ゴム3は、パネル1aの右側端面の上端部及び下端部を除く側端面の全体を覆っている。
なお、連結ゴム3の取り付けは、右側端面又は左側端面のいずれかに決められていれば、どちらに取り付けられていてもよい。
【0027】
図2に示すように、表面材6は、パネル1aの偏平面の基盤となる矩形のボード部材30と、ボード部材30の表面に貼り合わせられる化粧板31とを備えている。
ボード部材30は、石膏ボード等により形成されている。
化粧板31は、薄い鋼板又は樹脂製の板等により形成されている。化粧板31の端部は、左右の両端で端面側に折り返されて、化粧板嵌合部17の溝17aに嵌め込まれている。
【0028】
図4に示すように、横框5は、表面材6,6の上端間及び下端間を塞ぐ部材である。
横框5は、箱状に形成され表面材6に固定されたボックス部20と、ボックス部20内に支持されるとともにボックス部20に対して上下動し、設置面100A,100Bに対して進出及び退避自在に構成された圧接フレーム21とを備えている。
【0029】
ボックス部20は、表面材6,6の上端縁の長手方向の両端間に亘って延びる略矩形の凹部を成す凹状部22と、凹状部22の上端部から表面材6,6に向かって張り出すフランジ部23,23を有している。凹状部22はボード部材30,30間の幅よりも小さい幅に形成されている。フランジ部23は、化粧板31の折り曲げられた上端部の下面に接した状態で、化粧板31及びボード部材30とビス等の締結部材によって固定されている。
【0030】
圧接フレーム21は、圧接ゴムを上下動させる部材であり、ボックス部20の開口部を覆う水平板24とボックス部20内に挿入する挿入壁部25,25を有している。
水平板24は、表面材6,6の上端間又は下端間と略同等の長辺及び表面材6,6の上端間又は下端間よりもやや短い短辺を有する矩形板で、ボックス部20の開口部を覆うように設けられている。水平板24の短辺の両端には、圧接ゴム2を保持する略C型の嵌合部26,26が長辺に沿って形成されている。
【0031】
挿入壁部25は、偏平面が立ち上がった矩形板により構成され、ボックス部20の側壁(立ち上がり壁)20aの内壁面とわずかな間隔を空けて、前記内壁面に沿って、ボックス部20の長手方向のほぼ全体に亘って設けられている。
挿入壁部25の下端部には、横框5の側壁20aの内面に接して適度な摩擦を起こし、圧接フレーム21を安定的に保持するとともに、上下の摺動を許すシールゴム35の取付部36が設けられている。
【0032】
取付部36は、パネル1aの側面視で(横框5を長手方向に視て)略C字型又は逆C字型に形成され、開口部を横框5の側壁20aに向けた状態で設けられている。なお、取付部36は、C字型及び逆C字型以外であっても、シールゴム35の固定部を確実に保持して容易に外れない形状であればどのような形状であってもよい。
【0033】
本実施形態では、取付部36は、パネル1aの厚さの中心方向に延びる上壁と、上壁から鉛直下方に延びる側壁と、側壁の下端から側壁20aに向かって延びる下壁と、下壁から上方に突出した下係止壁と、上壁から下係止壁に対向して延びた上係止壁とを有している。
この取付部36は、圧接フレーム21と同様に、横框5の長手方向の両端に亘って連続して延びている。
【0034】
図5に示すように、シールゴム35は、取付部36内に配される固定部35aと、固定部35aから取付部36の開口部を通って側壁20aに向かって延びる接触部35bとを有している。
固定部35aは、取付部36内にちょうどフィットする厚さ寸法の略板状に形成されている。
【0035】
接触部35bは、固定部35aの偏平面の短手方向中間部から突出して延びた後、鍵状に湾曲した側面視略円弧形状に形成されており、表面に、摩擦係数を他の箇所よりも小さくするコーティング処理されている。処理の例としては、ハロゲン化処理、粉末処理、又はシリコーン、フッ素樹脂、ウレタン樹脂、超高分子ポリエチレン若しくはエポキシ樹脂でコーティング処理が挙げられる。
【0036】
接触部35bの硬度としては、横框5に接触した際に、圧接フレーム21の上下動を円滑にしつつも圧接フレーム21が自重で下降しない程度の圧迫を付与し得る程度の弾性変形力を有し又は可撓性を有する程度となっている。
【0037】
図6に示すように、圧接ゴム2は、圧接フレーム21の水平板24の短手方向両端部に、パネル1aの上下端面の長手方向に延びるように2列平行に形成された嵌合部26,26に保持されて、延在する部材である。
圧接ゴム2は、レールの下面100A又は床面Fに押し当てられて、仕切られた室内を閉塞する押圧部2aと、嵌合部26に固定される固定部2bとを有している。
【0038】
押圧部2aは、側面視略矩形の基台部200と、基台部200の上面から設置面100A,100Bに向かって突出する複数のリブを備えた第1の密着部201と、第1の密着部201に平行に突出する第2の密着部202,202を備えている。
基台部200は、圧接フレーム21の長手方向に連続して延在している。
【0039】
第1の密着部201は、弾性変形可能な素材により、基台部200の厚さ(幅)L1方向に複数隣接して設けられた断面円弧形状のリブ201aで形成されている。各リブ201aは、基台部200の厚さL1方向の両端部の間に同形状の円弧形状で形成されており、基台部200の長手方向に連続して延びている。
【0040】
本実施形態ではリブ201aは3つ形成されている。リブ201a同士の間は、浅い溝となっている。これにより、第1の密着部201が設置面100A,100Bに押し当てられた際に弾性変形しやすく、密着しやすくなっている。
【0041】
第2の密着部202は、弾性変形可能な素材により、第1の密着部201に沿って所定の厚さの板状(ないしひれ状)の突起で形成されている。
具体的には、第2の密着部202は、基台部200の厚さL1方向の両端部から基台部200の長手方向の全体に亘って、平面視略矩形で弾性変形可能な薄板状に突出している。第2の密着部202の厚さは0.8mm~3mm程度に形成されている。第2の密着部202,202の突出は、設置面100A,100Bに向かって拡開するよう傾斜する向きすなわち設置面100A,100Bに対して直交する向きに対し90°未満の角度を成して延び、その後更に外側に折れ曲がって外側に延びている。
【0042】
基台から90°未満の角度で斜めに延びる部分は第2の密着部202の基端部202aをなし、基端部202aよりも大きい角度を成している部分は先端部202bを構成している。本実施形態では、先端部202bは、設置面100A,100Bの水平部にほぼ沿っている。
【0043】
基端部202a及び先端部202bは、長手方向に視て、先端に向かって徐々に厚さが小さくなるように形成されている。
第2の密着部202は、第1の密着部201に沿って基台部200の長手方向に連続して延在している。
【0044】
基端部202a及び/又は先端部202bの設置面100A,100Bを向く面は、設置面と接触する接触面部203を有している。
接触面部203の表面は、摩擦係数を他の箇所よりも小さくするコーティング処理されている。処理の例としては、ハロゲン化処理、粉末処理、又はシリコーン、フッ素樹脂、ウレタン樹脂、超高分子ポリエチレン若しくはエポキシ樹脂でコーティング処理が挙げられる。
【0045】
圧接ゴム2の固定部2bは、第1の密着部201及び第2の密着部202が形成された基台部200の面と反対側を向く面から、断面ほぼT字状(又は逆T字状)に突出した部分であり、基台部200の長手方向に沿って連続して延在している。
【0046】
以上の構成を有する圧接ゴム2は、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)等の合成樹脂材料により一体的に生成されている。
【0047】
図4に示すように、上側の横框5の凹状部22の下方には、シャフト80を固定可能な吊りボックス27と、その更に下方に固定された補強材28が設けられている。下側の横框5は、凹状部22の上方に補強材28が設けられている。
図7に示すように、互いに隣り合うパネル1a,1aの角部には、設置面100A,100Bに向かって上下動可能な角部圧接ゴム2cが配されているとよい。
【0048】
図7又は
図8に示すように、角部圧接ゴム2cは、設置面100A若しくは設置面100B及び隣接するパネル1a,1aの側端面p,pに対向させる面合わせ部40と、面合わせ部40の表面に形成された突起片41,凹溝42及び受け部43を備えている。
【0049】
面合わせ部40は、
図9に示すように、パネル1aの側端面を正面視して略T字状に形成されている。
面合わせ部40は、パネル1aの厚さ方向を長手方向として延びた水平延伸部45と、水平延伸部45の長手方向中央からパネル1aの側端面に沿って延びた上下延伸部46とを有している。
【0050】
図7又は
図9に示すように、水平延伸部45は、圧接ゴム2よりもわずかに大きい高さ寸法、圧接ゴム2の端面から係止壁10aの先端までの幅寸法、及び、パネル1a上の圧接ゴム2,2を側端面側からほぼ覆う奥行き寸法を有する矩形に形成されている。水平延伸部45は、圧接ゴム2,2とほぼ隙間なく接するように配されている。
水平延伸部45の設置面100A,100Bに対向する面45tは、設置面100A,100Bを隙間なく閉塞し得る形状で形成されている。
【0051】
図10に示すように、水平延伸部45の圧接ゴム2,2に対向する面側には、圧接フレーム21に連結するための板状の固定部44が設けられている。固定部44と圧接フレーム21とは、ボルト等の締結部材によって固定されている。
【0052】
図11に示すように、上下延伸部46は、縦框4の接続部10内にちょうど嵌合する偏平なほぼ凸状の板部材をベース部46aとして、縦框4の係止壁10a,10a内でこれらに係合させる爪部47,47を備えている。
【0053】
図9又は
図11に示すように、面合わせ部40全体の表面には、水平延伸部45及び上下延伸部46を奥行き方向に等分した縦半部に、水平延伸部45の上端から上下延伸部46の下端まで貫く突起片41、凹溝42が形成され、他の縦半部に受け部43が形成されている。
【0054】
図8(b)に示すように、突起片41は、面合わせ部40の上面視で、表面40aから斜めに突出した後、突出元の表面40aに向かって湾曲又は屈曲した断面形状で上下方向に延伸し、先端が開放端となったいわゆる板状(ないしひれ状)に形成されている。
突起片41の折曲箇所の内側には、折曲を柔軟にするための溝部48が上下方向に貫くように形成されている。
【0055】
凹溝42は、突起片41が押圧された際に、突起片41の先端が表面40aに接触するのを回避させ得る位置に形成されている。
受け部43は、水平延伸部45及び上下延伸部46の他の縦半部の偏平な表面により構成され、隣り合うパネル1aの突起片41を接触させるようになっている。
角部圧接ゴム2cは、ベース部46a、固定部44、突起片41、受け部43の全てが一体的に形成されている。
【0056】
角部圧接ゴム2cを構成する素材としては、フッ素ゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、クロロプレンゴム等を用いることができる。これらのうち、特に突起片41の弾性変形及び弾性復帰が容易で押圧や摩擦時にかかる力に対する耐久性の高いエチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)を好適に用いることができる。また、室内の温度変化に柔軟に対応し得る耐候性の高いフッ素ゴム等も好適に用いることができる。
【0057】
以上の構成を有する角部圧接ゴム2cは、
図7に示すように、突起片41を有する表面40aを外側に向けてパネル1aの両端の縦框4,4に取り付けられている。これにより、互いに隣接するパネル1a,1aの側端面p,p(及び縦框4,4)同士を突き合せた際に、
図11に示すようにそれぞれの突起片41が受け部43に対向して密接可能となる。そしてこの構成により、パネル1a,1a間は、連結時に厚さ方向に間隔を空けて2つの閉塞箇所が形成されるようになっている。
【0058】
上下延伸部46を保持している縦框4の係止壁10a,10aの一方の外側には、角部圧接ゴム2cの設置面100A,100Bへの圧接時に生じうる圧接ゴム2と連結ゴム3との間を塞ぐ補助閉塞ゴム70が設けられている。
【0059】
補助閉塞ゴム70は、横断面視が略矩形の棒状の樹脂部材である。横断面視をした際の矩形の寸法は、隣り合うパネル1a,1aを連結ゴム3で連結した際に対向する係止壁10a,10aにより形成される隙間にちょうどフィットする大きさに設定されている。
【0060】
詳細には、補助閉塞ゴム70の収まり位置は、対向する係止壁10a,10aの基端同士の間となっている。補助閉塞ゴム70は、隣接するパネル1a,1aの縦框4,4を連結ゴム3でつなげることによって、互いに対向する縦框4,4間に狭持され、スライディングウォール1をパネル1aの厚さ方向から挟み込む構成となっている。
補助閉塞ゴム70の素材としては、クロロプレンゴム等の素材が好適に用いられる。
【0061】
以上の構成により、補助閉塞ゴム70についても、左右の係止壁10aの一方に配されているもの同士を対向させることでパネル1a,1aの厚さ方向に2箇所で閉塞する突起片41を更に厚さ方向に2箇所で挟み、パネル1a,1a間の隙間を閉塞している。
【0062】
図9に示すように、シャフト80は、天井面に設けたレール100内でほぼ鉛直方向の軸線周り(すなわち水平方向)に回転しながら移動するハンガーローラ110の軸に連結して固定されるボルト部材である。
シャフト80は、
図4に示す吊りボックス27に固定された状態で、上方に突出した先端をハンガーローラ110の中心に形成された雌螺子孔に螺合してハンガーローラ110と着脱自在に連結している。
【0063】
パネル1a,1a等を吊り下げるハンガーローラ110及びレール100は、概略以下のような構成となっている。
【0064】
ハンガーローラ110は、
図9に示すように、ほぼ鉛直方向の軸線周りに回転するローラ111と、ローラ111の中心に設けられた軸部112を備えている。
ローラ111は、特に限定されるわけではないが、本実施形態では、軸部112に上下に2つ設けられている。
【0065】
軸部112は、シャフト80を軸部112の軸線Lに沿って螺合させる雌螺子孔を内部に有し、かつ、外周面側にローラ111を回転自在に保持している。
レール100は、各ローラ111を摺動させるレール溝101を水平方向に形成し、レール溝101同士を対向配置させた一対の側板部102,102と、側板部102,102の上端を閉じる上板部103とを有している。
【0066】
側板部102,102のレール溝101は、ローラ111の数に合わせて上下に並ぶよう形成されている。本実施形態では、レール溝101は上下に2つ平行に設けられている。なお、ローラ111が1つのみのスライディングウォールシステムXにおいては、レール100の側板部102,102には、1つのレール溝101のみが設けられている。
【0067】
側板部102,102の下側のレール溝101の下方には、室内の天井の板部材に固定するフランジ部115が形成されている。
ハンガーローラ110は、水平方向に延びるレール溝101が対向するように形成されたレール100内に配されている。
【0068】
次に、本発明のスライディングウォール1及びスライディングウォールシステムXを使用した場合の作用について説明する。
室内空間に複数のスライディングウォール1を並べて室内を仕切るにあたっては、
図9に示すように、上下の圧接ゴム2,2及び角部圧接ゴム2cを各パネル1aの上端及び下端に退避させた状態でスライディングウォール1を所定位置まで移動させる。
【0069】
所定の設置位置にスライディングウォール1を配置したら、
図12及び
図13に示すように、圧接フレーム21を不図示の機構により上方に移動させる。これにより、スライディングウォール1の上下の圧接ゴム2,2及び角部圧接ゴム2cをレール100の下面及び床面Fに向けて突出し密接する。
【0070】
そうすると、
図6に示す圧接ゴム2の先端部202bの接触面部203がまず設置面100A,100Bに触れ、更に圧接ゴム2を突出させると、
図13に示すように、
図6に示す第1の密着部201が設置面100A,100Bに接触して押圧した状態となる。この際、第2の密着部202はより大きい接触面積で設置面100A,100Bに接触した状態となる。
【0071】
一つのスライディングウォール1の設置が完了したら、このスライディングウォール1に隣接させるスライディングウォール1を移動させ、既に設置されたスライディングウォール1の縦框4の接続部10に連結ゴム3を嵌合せて連結する。その上で、上記と同様に圧接ゴム2及び角部圧接ゴム2cを共に引き出すことで、高い遮音効果を持たせた状態でスライディングウォール1の設置が完了する。
【0072】
以上に示した圧接フレーム21は、挿入部25,25の下端部に取付部36を介してシールゴム35を有しているため、圧接フレーム21を上方に移動させた際に、圧接フレーム21と側壁20aとの間に形成される隙間を封止することができる。
したがって、スライディングウォール1の設置時に、より高度に遮音することができるという効果を奏する。
【0073】
また、圧接フレーム21に直接にシールゴム35を取り付けられる構造となっているため、部品点数を最小限にして効率よく遮音構造を形成することができるという効果を奏する。
【0074】
また、圧接フレーム21は、シールゴム35によってガタつきなく安定的に動作させることができる。
また、圧接フレーム21は、接触部35bに摩擦係数を他の箇所よりも小さくするすべり加工でコーティング処理されているため、円滑に上下動することができるという効果を奏する。
【0075】
なお、本発明の圧接ゴム2は、レールに沿って摺動させて用いるスライディングウォール1以外にも、所定の設置場所に運搬し天井及び床面間を閉じて設置する間仕切りであればどのようなものにも適用し、本発明の作用及び効果を得ることができる。
【0076】
また、シールゴム35は、横框5に対して弾性変形可能に密着しつつ円滑に上下動可能な湾曲した接触部35bを有していれば、例えば
図14に示すように、長手方向に中空部を形成した筒体により形成されたものであってもよい。また、接触部35bは、シールゴム35は、横框5に対して弾性変形可能に密着しつつ円滑に上下動可能であれば忠実に形成されていてもよい。
【符号の説明】
【0077】
1 スライディングウォール
1a パネル
5 横框
20a 立ち上がり壁
2 圧接ゴム
21 圧接フレーム
25 挿入壁部
26 嵌合部
35 シールゴム
36 取付部
X スライディングウォールシステム