(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024006288
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】閉塞構造及び移動体
(51)【国際特許分類】
B64D 25/00 20060101AFI20240110BHJP
B64C 1/14 20060101ALI20240110BHJP
E06B 5/00 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
B64D25/00
B64C1/14
E06B5/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022107034
(22)【出願日】2022-07-01
(71)【出願人】
【識別番号】519015117
【氏名又は名称】株式会社SkyDrive
(74)【代理人】
【識別番号】110002789
【氏名又は名称】弁理士法人IPX
(72)【発明者】
【氏名】佐伯 朋哉
【テーマコード(参考)】
2E239
【Fターム(参考)】
2E239AC00
(57)【要約】
【課題】例えば脱出窓として機能し、非常時であっても簡便かつ確実に開放可能な閉塞構造、及びかかる閉塞構造を備える移動体を提供すること。
【解決手段】本発明の一態様によれば、開口を有する移動体の本体に対して、開口を塞ぐように固定される閉塞構造が提供される。この閉塞構造は、フレーム部材と、蓋部材とを備える。フレーム部材は、開口の周縁に沿って配置される。蓋部材は、フレーム部材の内側に装着される。フレーム部材に蓋部材に向かう外力が作用したとき、蓋部材がフレーム部材から離脱するように構成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口を有する移動体の本体に対して、前記開口を塞ぐように固定される閉塞構造であって、
フレーム部材と、蓋部材とを備え、
前記フレーム部材は、前記開口の周縁に沿って配置され、
前記蓋部材は、前記フレーム部材の内側に装着され、
前記フレーム部材に前記蓋部材に向かう外力が作用したとき、前記蓋部材が前記フレーム部材から離脱するように構成されている、閉塞構造。
【請求項2】
請求項1に記載の閉塞構造において、
前記蓋部材の前記フレーム部材からの離脱方向は、前記本体の内側から外側に向かう方向である、閉塞構造。
【請求項3】
請求項2に記載の閉塞構造において、
前記フレーム部材の幅は、前記本体の外側より内側において大きい、閉塞構造。
【請求項4】
請求項2に記載の閉塞構造において、
前記フレーム部材の幅は、厚さ方向に沿って連続的に変化している、閉塞構造。
【請求項5】
請求項2に記載の閉塞構造において、
前記フレーム部材の内周面は、前記フレーム部材の厚さ方向に沿った断面において、直線状又は曲線状をなし、
前記蓋部材の外周面は、前記フレーム部材の内周面に対応した形状をなしている、閉塞構造。
【請求項6】
請求項2に記載の閉塞構造において、
前記フレーム部材の内周面と外面との境界は、丸みを帯びている、閉塞構造。
【請求項7】
請求項1に記載の閉塞構造において、
さらに、前記蓋部材を前記フレーム部材に固定する固定部材を備え、
前記フレーム部材及び前記蓋部材の破壊強度が前記固定部材の破壊強度より大きい、閉塞構造。
【請求項8】
移動体であって、
開口を有する本体と、前記開口を塞ぐように、前記本体に対して固定された請求項1~請求項7の何れか1つに記載の閉塞構造とを備える、移動体。
【請求項9】
請求項8に記載の移動体において、
前記移動体は、与圧を要さない移動体である、移動体。
【請求項10】
請求項8に記載の移動体において、
前記移動体は、有人移動体である、移動体。
【請求項11】
請求項8に記載の移動体において、
前記移動体は、飛行体である、移動体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、閉塞構造及び移動体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の緊急脱出窓は、窓枠と、窓枠の内側に設置された窓ガラスと、窓枠を胴体に連結する複数のピンと、それぞれのピンに連結され、窓枠からピンを引き込むように構成された少なくとも1つのアクチュエータを有する解除機構とを備えている(特許文献1参照)。
そして、脱出窓は、緊急時に胴体から離脱するように回動及び/又は完全に離脱することにより、乗員が脱出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第10,752,335号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、本発明者の検討によれば、窓枠に窓ガラスを挟み込むような大きい外力が作用すると、ピンを外しても脱出窓を胴体から離脱させ難くなる場合がある。
本発明では上記事情に鑑み、例えば脱出窓として機能し、非常時であっても簡便かつ確実に開放可能な閉塞構造、及びかかる閉塞構造を備える移動体を提供することとした。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様によれば、開口を有する移動体の本体に対して、開口を塞ぐように固定される閉塞構造が提供される。この閉塞構造は、フレーム部材と、蓋部材とを備える。フレーム部材は、開口の周縁に沿って配置される。蓋部材は、フレーム部材の内側に装着される。フレーム部材に蓋部材に向かう外力が作用したとき、蓋部材がフレーム部材から離脱するように構成されている。
【発明の効果】
【0006】
かかる態様によれば、フレーム部材に蓋部材に向かう外力が作用したとき、蓋部材がフレーム部材から離脱するように構成されているので、外力の大きさにかかわらず、簡便かつ確実に閉鎖構造を開放することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の移動体の一実施形態である飛行体を示す斜視図である。
【
図3】閉塞構造の一例である窓の構成を示す平面図(本体の外側から見た状態)である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を用いて本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。
図1は、本発明の移動体の一実施形態である飛行体を示す斜視図である。
図2は、飛行体のハードウェア構成を示す図である。
図3は、閉塞構造の一例である窓の構成を示す平面図(本体の外側から見た状態)である。
図4は、
図3中のA-A断面図である。
図5は、窓の他の構成例を示す断面図である。
【0009】
本明細書において「部」とは、例えば、広義の回路によって実施されるハードウェア資源と、これらのハードウェア資源によって具体的に実現されうるソフトウェアの情報処理とを合わせたものも含みうる。また、本実施形態においては様々な情報を取り扱うが、これら情報は、0又は1で構成される2進数のビット集合体として信号値の高低によって表され、広義の回路上で通信・演算が実行されうる。
【0010】
また、広義の回路とは、回路(Circuit)、回路類(Circuitry)、プロセッサ(Processor)、及びメモリ(Memory)等を少なくとも適当に組み合わせることによって実現される回路である。すなわち、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等を含むものである。
【0011】
1.飛行体1の概要
飛行体(移動体)1は、垂直離着陸が可能な有人移動体である。
図1に示すように、飛行体1は、本体12を備えている。
本体12には、複数のアーム13が設けられている。本実施形態では、4つのアーム13が設けられている。そして、各アーム13の先端に、プロペラ14が設けられている。プロペラ14は、ロータ141及びブレード142により構成されている。複数のプロペラ14は、独立して制御することができる。
【0012】
また、本体12は、その内部に搭乗部11を備えている。搭乗部11には、乗員が搭乗することができる。
本体12には、閉塞構造15として、窓15a及び扉15bが設けられている。本体12は、矩形の開口121を有している。閉塞構造15は、飛行体1の本体12に対して、開口121を塞ぐように固定されている。開口121の4つの角部は、丸みを帯びていてもよい。また、開口121の形状は、矩形に限らず、例えば、円形、楕円形等であってもよい。
なお、閉塞構造15の具体的な構成については、後に詳述する。
【0013】
2.飛行体1のハードウェア構成
図2に示すように、飛行体1は、制御部10、通信部20、記憶部30、入力部40及び表示部50を備える。
制御部10は、CPU(Central Processing Unit)等であって、情報処理装置の全体を制御する。
通信部20は、NIC(Network Interface Card)等であって、他の情報処理装置又は構成要素と有線又は無線によりデータ通信可能に構成される。
【0014】
記憶部30は、種々のプログラム及びデータを記憶するものであり、例えばメモリ、HDD(Hard Disk Drive)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等により構成される。
また、記憶部30は、プログラムや種々のデータ等を記憶する。そして、記憶部30に記憶されているプログラムに基づいて制御部10が種々の処理を実行することにより、種々の機能が実現する。
【0015】
入力部40は、飛行体1に種々の情報を入力するものであり、マウス、キーボード、ポインティングデバイス等により構成される。
表示部50は、テキストや画像(静止画及び動画を含む)を表示するものであり、任意のディスプレイにより構成されている。表示部50は、高度を表示可能に構成されてもよい。このとき、表示部50は、搭乗部11から視認可能に設けられることが好ましい。
【0016】
3.閉塞構造15の構成
閉塞構造15の一例である窓15aは、
図3及び
図4に示すように、本体12の開口121の周縁に沿って配置されるフレーム部材151と、フレーム部材151の内側に装着される蓋部材152と、蓋部材152をフレーム部材151に固定するピン(固定部材)153とを備えている。
フレーム部材151の幅(フレーム部材151の厚さ方向に沿った断面における内周面151aと外周面151dとの間の距離)は、本体12の外側より内側において大きく設定されている。すなわち、フレーム部材151の外側の幅WOと内側の幅WIとは、幅WO<幅WIの関係を満足している(
図4参照)。
【0017】
また、フレーム部材151の幅は、厚さ方向に沿って連続的に変化している。具体的には、
図4に示すように、フレーム部材151の内周面151aは、フレーム部材151の厚さ方向に沿った断面において、直線状をなしている。すなわち、フレーム部材151の内周面151aは、本体12の内側から外側に向かって開口領域(開口面積)が拡大するようなテーパ面で構成されている。
一方、蓋部材152の外周面152aは、フレーム部材151の内周面151aに対応した形状のテーパ面で構成されている。
なお、フレーム部材151の内周面151a及び蓋部材152の外周面152aのいずれか一方のみが、上記テーパ面で構成されていてもよい。
【0018】
かかる構成によれば、フレーム部材151に蓋部材152に向かう外力(
図4中、下向きの矢印)が作用したとき、フレーム部材151の内周面151aが内側に変位し、蓋部材152の外周面152aを押圧する。その結果、外力の大きさにかかわらず、蓋部材152が本体12の内側から外側に向かう方向(
図4中、右向きの矢印)にフレーム部材151から離脱するようになる。
これにより、例えば上記のような外力が作用する非常時であっても、閉塞構造15(窓15a)は、簡便かつ確実に開放可能である。
【0019】
なお、蓋部材152のフレーム部材151からの離脱方向は、本体12の外側から内側に向かう方向であってもよいが、本体12の内側から外側に向かう方向であることが好ましい。これにより、搭乗部11内の乗員の安全性を高めることができる。
本実施形態のように、特に、乗員が搭乗する搭乗部11に臨む部分に設ける窓15a及び扉15bに、閉塞構造15を採用する場合、蓋部材152のフレーム部材151からの離脱方向を本体12の内側から外側に向かう方向とすることが好ましい。
【0020】
フレーム部材151は、例えば、アルミニウム合金、ステンレス鋼のような金属材料等で構成することができる。
一方、蓋部材152は、閉塞構造15を窓15aに採用する場合(
図3及び
図4参照)、例えば、プラスチック材料、強化ガラス材料等で構成することができる。これにより、本体12の内側から外側の視認性を確保することができる。なお、閉塞構造15を扉15bに採用する場合、蓋部材152は、例えば、アルミニウム合金、ステンレス鋼のような金属材料等で構成することができる。
【0021】
また、フレーム部材151及び蓋部材152の破壊強度は、ピン153の破壊強度より大きいことが好ましい。かかる構成によれば、フレーム部材151に外力が付与した際に、ピン153がフレーム部材151及び蓋部材152に優先して破壊され易くなる。このため、蓋部材152の開放がピン153により妨げられるのを防止することができる。窓15aでは、ピン153をハンドルやノブ操作で移動可能(
図4では、上方にスライド可能)とすることにより、蓋部材152を開閉するように構成してもよい。
なお、閉塞構造15を扉15bに採用する場合、蓋部材152をフレーム部材151に固定する固定部材としては、ピン153の他、例えば、ラッチ機構、ロック機構等が挙げられる。この場合、これらの機構の破壊強度より、好ましくはフレーム部材151及び蓋部材152の破壊強度が大きくなるように設計される。
【0022】
蓋部材152は、フレーム部材151に対して、例えば嵌合により固定されてもよく、蓋部材152のフレーム部材151からの離脱を妨げない程度の接着力を有する接着剤により固定されてもよく、蓋部材152とフレーム部材151とを気密的に封止する封止材を介して固定されてもよい。
また、フレーム部材151の内周面151aと内面151bとのなす角度(
図4中、θ)は、特に限定されないが、45°以上80°以下であることが好ましく、50°以上75°以下であることがより好ましい。
【0023】
なお、角度θが大きい(例えば、60°以上)、すなわちテーパ(くさび)の角度が浅い場合、
図5に示すように、フレーム部材151の内周面151aと外面151cとの境界1511は、丸みを帯びている(R付けされている)ことが好ましい。これにより、蓋部材152の内側縁部がフレーム部材151の外側縁部に引っ掛かることを防止して、蓋部材152をフレーム部材151から円滑に離脱させることができる。
さらに、フレーム部材151の内周面151aは、フレーム部材151の厚さ方向に沿った断面において、曲線状をなしていてもよい。すなわち、フレーム部材151の内周面151aは、湾曲凸面又は湾曲凹面(好ましくは、湾曲凸面)で構成されてもよい。
【0024】
また、飛行体1は、与圧を要さない飛行体(すなわち、リフトアップしないタイプの飛行体)であることが好ましい。この場合、本体12の内側の圧力を外側の圧力より高めることを要さない。このため、通常時に、蓋部材152がフレーム部材151から離脱し易くなるのを防止することができる。
かかる飛行体1としては、
図1に示す回転翼航空機が好適である。
【0025】
4.その他
本発明は、次に記載の各態様で提供されてもよい。
【0026】
(1)開口を有する移動体の本体に対して、前記開口を塞ぐように固定される閉塞構造であって、フレーム部材と、蓋部材とを備え、前記フレーム部材は、前記開口の周縁に沿って配置され、前記蓋部材は、前記フレーム部材の内側に装着され、前記フレーム部材に前記蓋部材に向かう外力が作用したとき、前記蓋部材が前記フレーム部材から離脱するように構成されている、閉塞構造。
【0027】
(2)上記(1)に記載の閉塞構造において、前記蓋部材の前記フレーム部材からの離脱方向は、前記本体の内側から外側に向かう方向である、閉塞構造。
【0028】
(3)上記(2)に記載の閉塞構造において、前記フレーム部材の幅は、前記本体の外側より内側において大きい、閉塞構造。
【0029】
(4)上記(2)又は(3)に記載の閉塞構造において、前記フレーム部材の幅は、厚さ方向に沿って連続的に変化している、閉塞構造。
【0030】
(5)上記(2)~(4)の何れか1つに記載の閉塞構造において、前記フレーム部材の内周面は、前記フレーム部材の厚さ方向に沿った断面において、直線状又は曲線状をなし、前記蓋部材の外周面は、前記フレーム部材の内周面に対応した形状をなしている、閉塞構造。
【0031】
(6)上記(2)~(5)の何れか1つに記載の閉塞構造において、前記フレーム部材の内周面と外面との境界は、丸みを帯びている、閉塞構造。
【0032】
(7)上記(1)~(6)の何れか1つに記載の閉塞構造において、さらに、前記蓋部材を前記フレーム部材に固定する固定部材を備え、前記フレーム部材及び前記蓋部材の破壊強度が前記固定部材の破壊強度より大きい、閉塞構造。
【0033】
(8)移動体であって、開口を有する本体と、前記開口を塞ぐように、前記本体に対して固定された上記(1)~(7)の何れか1つに記載の閉塞構造とを備える、移動体。
【0034】
(9)上記(8)に記載の移動体において、前記移動体は、与圧を要さない移動体である、移動体。
【0035】
(10)上記(8)又は(9)に記載の移動体において、前記移動体は、有人移動体である、移動体。
【0036】
(11)上記(8)~(10)の何れか1つに記載の移動体において、前記移動体は、飛行体である、移動体。
もちろん、この限りではない。
【0037】
最後に、本発明に係る種々の実施形態を説明したが、これらは、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。当該新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。当該実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
なお、本発明の移動体は、飛行体に限定されず、例えば、車両、船舶等であってもよい。
【符号の説明】
【0038】
1 :飛行体
10 :制御部
11 :搭乗部
12 :本体
13 :アーム
14 :プロペラ
15 :閉塞構造
15a :窓
15b :扉
20 :通信部
30 :記憶部
40 :入力部
50 :表示部
121 :開口
141 :ロータ
142 :ブレード
151 :フレーム部材
151a :内周面
151b :内面
151c :外面
151d :外周面
152 :蓋部材
152a :外周面
153 :ピン
1511 :境界
θ :角度