(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024062891
(43)【公開日】2024-05-10
(54)【発明の名称】筆記具レフィル用ケース
(51)【国際特許分類】
B43K 7/02 20060101AFI20240501BHJP
B43K 23/00 20060101ALI20240501BHJP
B65D 85/28 20060101ALI20240501BHJP
【FI】
B43K7/02
B43K23/00 200E
B65D85/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022171031
(22)【出願日】2022-10-25
(71)【出願人】
【識別番号】303022891
【氏名又は名称】株式会社パイロットコーポレーション
(71)【出願人】
【識別番号】000111890
【氏名又は名称】パイロットインキ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】星野 貴宣
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 崇人
【テーマコード(参考)】
2C350
3E068
【Fターム(参考)】
2C350GA03
2C350KC05
3E068AA23
3E068AB04
3E068AC02
3E068BB02
3E068CC14
3E068CE03
3E068DD07
3E068DD20
3E068DE13
3E068DE18
3E068EE01
(57)【要約】
【課題】簡易な構造で筆記具レフィルの損傷を防ぎ、また開封後でも繰り返し使用が可能な筆記具レフィル用ケースを提供する。
【解決手段】正面部と、正面部の下部と第1のヒンジ部により一体に形成される背面部と、背面部の上部と第2のヒンジ部により一体に形成される蓋部と、を備える。正面部の上縁部と背面部の上縁部とにより形成される開口部と、筆記具レフィルを開口部から出し入れ可能に収納する収納部と、収納部の内面に形成される長手方向に延びるリブと、収納部の内面下部に形成され筆記具レフィルが当接されるストッパと、を備える。開口部は、側面視で、背面部上方から正面部下方に向けて傾斜する斜めカット形状に形成され、蓋部は、側面視で、蓋部を閉じた状態において開口部の側面視形状に対応する略同一傾斜の斜めカット形状に形成される。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に筆記具レフィルを収納可能な筆記具レフィル用ケースであって、
正面部と、
前記正面部の下部と第1のヒンジ部により一体に形成される背面部と、
前記背面部の上部と第2のヒンジ部により一体に形成される蓋部と、
前記正面部の上縁部と前記背面部の上縁部とにより形成される開口部と、
前記筆記具レフィルを前記開口部から出し入れ可能に収納する収納部と、
前記収納部の内面に形成される長手方向に延びるリブと、
前記収納部の内面下部に形成され前記筆記具レフィルが当接されるストッパと、
を備え、
前記開口部は、側面視で、前記背面部上方から前記正面部下方に向けて傾斜する斜めカット形状に形成され、
前記蓋部は、側面視で、前記蓋部を閉じた状態において前記開口部の側面視形状に対応する略同一傾斜の斜めカット形状に形成される筆記具レフィル用ケース。
【請求項2】
前記筆記具レフィルを2本収納可能であり、
前記リブは、前記背面部の短手方向の中央部に2本設けられる請求項1に記載の筆記具レフィル用ケース。
【請求項3】
前記ストッパは、前記背面部の前記リブの延長線上に少なくとも一つ突設される請求項2に記載の筆記具レフィル用ケース。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の筆記具レフィル用ケースと、
前記筆記具レフィル用ケースに収納される前記筆記具レフィルからなり、
前記筆記具レフィルは、少なくともインキ収容管と、前記インキ収容管の下方に設けられるホルダーと、前記ホルダーの下方に設けられるペン先と、前記インキ収容管の内部に収容されるインキと、を備え、
前記インキ収容管は金属製パイプからなり、前記ホルダーは鍔部を備え、前記鍔部は前記ストッパに当接され、前記インキは熱変色性インキである筆記具セット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部に筆記具レフィルを収納可能な筆記具レフィル用ケースに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、外部から筆記具レフィルが視認可能である筆記具レフィル包装袋が開示されている。また、特許文献2には、インキを直接収容し、開口部を栓体で密閉するタイプのインキカートリッジを吊り下げ販売する際、不用意に落下しても栓体が開栓してインキ漏れを生じる虞のない筆記具用インキカートリッジ包装体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-45139
【特許文献2】特開2009-107650
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1及び特許文献2に記載されるようなフィルム製の包装袋(包装体)では、収納物が筆記具レフィルであった場合、ペン先等が繊細であるため、外部から予期せぬ力が加わってしまうことにより、筆記具レフィル又はそのペン先等を損傷してしまう虞がある。
【0005】
前記課題を解決するためのペン先のみを保護する保護部材は、広く用いられている。例えば仮キャップなどである。しかし、該保護部材を用いることは部品点数が増えるだけでなく、該保護部材が使い捨ての部品となってしまうため環境負荷軽減の観点からも好ましくない。
【0006】
また、特許文献1及び特許文献2に記載されるようなフィルム製の包装袋(包装体)では、一度開封すると、使用済みの筆記具レフィルを再収納するなどの繰り返し使用が困難となる虞がある。
【0007】
本発明は、以上のような知見に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、簡易な構造で筆記具レフィル又はそのペン先等の損傷を防ぎ、また開封後でも繰り返し使用が可能な筆記具レフィル用ケースを提供することである。
【0008】
尚、本発明において、「上」とは筆記具レフィル用ケースの組立状態において蓋部側を指し、「下」とはその反対側を指す。すなわち、「下」とは第1のヒンジ部側を指す。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、内部に筆記具レフィルを収納可能な筆記具レフィル用ケースであって、正面部と、前記正面部の下部と第1のヒンジ部により一体に形成される背面部と、前記背面部の上部と第2のヒンジ部により一体に形成される蓋部と、前記正面部の上縁部と前記背面部の上縁部とにより形成される開口部と、前記筆記具レフィルを前記開口部から出し入れ可能に収納する収納部と、前記収納部の内面に形成される長手方向に延びるリブと、前記収納部の内面下部に形成され前記筆記具レフィルが当接されるストッパと、を備え、前記開口部は、側面視で、前記背面部上方から前記正面部下方に向けて傾斜する斜めカット形状に形成され、前記蓋部は、側面視で、前記蓋部を閉じた状態において前記開口部の側面視形状に対応する略同一傾斜の斜めカット形状に形成される筆記具レフィル用ケースである。
【0010】
本発明によれば、リブによって収納部内で筆記具レフィルが安定して収納される。また、ストッパによって筆記具レフィルの下方移動(すなわちペン先側への移動)が規制されることでペン先が保護される。また、開口部(蓋部)が斜めカット形状であることにより開口部を広くとることができ容易に筆記具レフィルの出し入れが可能となる。さらに、正面部と背面部と蓋部とが一体に形成されるケースであることから開封後でも繰り返し使用が可能である。すなわち、簡易な構造で筆記具レフィル又はそのペン先等の損傷を防ぎ、また開封後でも繰り返し使用が可能であり、開口部から容易に筆記具レフィルの出し入れができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、リブによって収納部内で筆記具レフィルが安定して収納され、ストッパによって筆記具レフィルの下方移動(すなわちペン先側への移動)が規制されることでペン先が保護され、開口部(蓋部)が斜めカット形状であることにより開口部を広くとることができ容易に筆記具レフィルの出し入れが可能となる。さらに、正面部と背面部と蓋部とが一体に形成されるケースであることから開封後でも繰り返し使用が可能である。すなわち、簡易な構造で筆記具レフィル又はそのペン先等の損傷を防ぎ、また開封後でも繰り返し使用が可能であり、開口部から容易に筆記具レフィルの出し入れができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の第1実施形態における筆記具レフィル用ケースを示す正面図であり、蓋部が閉まった状態を示す図である。
【
図3】
図1の蓋部が開いた状態を示す斜視図であり、レフィルが収納された状態を示す図である。
【
図4】
図1の筆記具レフィル用ケースの展開状態(組立前)を示す正面図である。
【
図8】
図4のA-A線断面図であり、リブの断面形状を示す図である。
【
図9】
図4のB-B線断面図であり、ストッパの断面形状を示す図である。
【
図10】本発明の第1実施形態における筆記具レフィル用ケースに筆記具レフィルが収納された状態を示す要部拡大図であり、鍔部がストッパに当接されている状態を示す図である。
【
図11】
図3に対して、収納されている筆記具レフィルのうち1本が上下反転されて収納されている状態を示す斜視図である。
【
図12】本発明の第2実施形態における筆記具レフィル用ケースを示す正面図であり、蓋部が閉まった状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の2つの実施の形態について説明する。
【0014】
<第1実施形態>
図1乃至
図11に本発明の第1実施形態の筆記具レフィル用ケース10を示す。
図1乃至
図3は筆記具レフィル用ケース10の組立状態を示す図である。
図1は、本発明の第1実施形態における筆記具レフィル用ケース10を示す正面図であり、蓋部13が閉まった状態を示す図である。
図2は、
図1の右側面図である。
図3は、
図1の蓋部13が開いた状態を示す斜視図であり、筆記具レフィル18が収納された状態を示す図である。
【0015】
図4乃至
図7は筆記具レフィル用ケース10の展開状態(組立前)を示す図である。
図4は、
図1の筆記具レフィル用ケース10の展開状態(組立前)を示す正面図である。
図5は、
図4の右側面図である。
図6は、
図4の背面図である。
図7は
図4の斜視図である。本実施形態の筆記具レフィル用ケース10は、射出成形により一体に形成された樹脂製のケースであり、
図4乃至
図7は成型金型から取り出されたままの状態を示している。
【0016】
また、
図8は、
図4のA-A線断面図であり、リブの断面形状を示す図である。
図9は、
図4のB-B線断面図であり、ストッパ122の断面形状を示す図である。
図10は、本発明の第1実施形態における筆記具レフィル用ケース10に筆記具レフィル18が収納された状態を示す要部拡大図であり、鍔部183がストッパ122に当接されている状態を示す図である。
図11は、
図3に対して、収納されている筆記具レフィル18のうち1本が上下反転されて収納されている状態を示す斜視図である。
【0017】
・筆記具レフィル用ケース
第1実施形態の筆記具レフィル用ケース10は、
図1乃至
図3に示すように、正面部11と、正面部11の下部と第1のヒンジ部14により一体に形成される背面部12と、背面部12の上部と第2のヒンジ部15により一体に形成される蓋部13と、を備える。
【0018】
すなわち、
図4乃至7に示すように、本実施形態の筆記具レフィル用ケース10は、正面部11と、背面部12と、蓋部13と、が各々第1のヒンジ部14又は第2のヒンジ部15によって連結されている。筆記具レフィル用ケース10は、射出成形により一体に形成された樹脂製のケースである。
【0019】
また、本実施形態の筆記具レフィル用ケース10は、正面部11の上縁部と背面部12の上縁部とにより形成される開口部16と、筆記具レフィル18を開口部16から出し入れ可能に収納する収納部17と、収納部17の内面に形成される長手方向に延びるリブ121と、収納部17の内面下部に形成され筆記具レフィル18が当接されるストッパ122と、を備える。
【0020】
すなわち、射出成形により一体に形成された展開状態(組立前)の筆記具レフィル用ケース10(
図4乃至
図7)から、第1のヒンジ部14を折り曲げることにより、正面部11と背面部12とを対向させ、互いに嵌合させる(
図3)。これにより、正面部11の上縁部と背面部12の上縁部とにより開口部16が形成される。
【0021】
また、収納部17は、対向する正面部11と背面部12とにより形成される内部空間に形成され、筆記具レフィル18を開口部16から軸方向に出し入れ可能に収納する。また、本実施形態において、筆記具レフィル用ケース10は、筆記具レフィル18を2本収納可能である。
【0022】
図7及び
図8に示すように、リブ121は、収納部17の内面に長手方向に形成され、背面部12から収納部17に向かって突設されている。好ましくは、リブ121は、背面部12の短手方向の略中央部近傍に2本設けられる。言い換えれば、背面部12の短手方向の中心部に大きなリブ121を一本設けてもよいが、細いリブ121を2本設ける方がより好ましい。これにより、リブ121を形成することによる成形品のヒケ発生を抑制し、成形品品質(筆記具レフィル用ケース10の外面の意匠性)を高めることができる。
【0023】
リブ121の表面形状は、筆記具レフィル18のインキ収容管181の外径形状(R形状)を支持する形状(直線又は相似のR形状)となっている。これにより、筆記具レフィル18を挿入する際に、リブ121がガイドとして機能するため、安定した挿入ができるとともに、筆記具レフィル用ケース10内で筆記具レフィル18が短手方向に動くことを抑制することができる。なお、
図8の破線は、筆記具レフィル18を収納した際のインキ収容管181の位置を示す想像線である。
【0024】
図7に示すように、ストッパ122は、収納部17の内面下部に形成される。また、
図9又は
図10に示すように、ストッパ122には筆記具レフィル18(ホルダー182の鍔部183)が当接される。また、好ましくは、ストッパ122は、背面部12のリブ121の延長線上に少なくとも一つ突設される。
【0025】
ここで、ストッパ122の内接円径は、
図9に示すように筆記具レフィル18の外径(ホルダー182の外径及び尾栓の外径φ6.0~φ6.2)より小さいことが好ましい。具体的には、ストッパの内接円径はφ4.6~φ5.3が好ましい。これにより、ストッパ122よりも下方には、ペン先184を含めた鍔部183より外径の小さい部分(φ4.4~φ4.5)しか通過することができない。なお、
図9の破線は、筆記具レフィル18を収納した際のホルダー182(鍔部183及び鍔部183より下方のホルダー182部分)の位置を示す想像線である。
【0026】
また、前述の通り、ストッパ122の内接円径は、尾栓の外径よりも小さいことが好ましい。これにより、
図11に示すように、筆記具レフィル18が上下反転されて収納された場合にペン先184側が大きく外部に露出して蓋部13を閉じることができなくなる。すなわち、ユーザーが誤って上下反転した状態で筆記具レフィル18の収納することを防ぐことができる。
【0027】
これにより、筆記具レフィル18を2本収納する際に、ペン先184を安定して収納部17内及びストッパ122部に挿入できる。すなわち、リブ121及びストッパ122双方の効果により、筆記具レフィル用ケース10に収納する際に、ペン先184をストッパ122部に当ててしまいペン先184を損傷させてしまうことを防ぐことができる。
【0028】
また、
図2に示すように、開口部16は、側面視で、背面部12上方から正面部11下方に向けて傾斜する斜めカット形状に形成される。また、蓋部13は、側面視で、蓋部13を閉じた状態において開口部16の側面視形状に対応する略同一傾斜の斜めカット形状に形成される。
【0029】
筆記具レフィル用ケース10の背面部12の外部には成形時のゲートが設けられる。これにより、正面部11に意匠上の影響を与えることがない。また、ゲート部が背面部12の外面に設けられることにより、背面部12の内面(収納部17側)にも突出部が形成される。このことから、ゲートは鍔部183よりも下方に設けられることが好ましい。これにより、筆記具レフィル18の挿入及び収納に支障を与えることがない。
【0030】
本実施形態の筆記具レフィル用ケース10は、蓋部13の正面側頂部を背面側に押すことにより、蓋部13を開けることができる。これは、
図2に示すように、蓋部13の正面側(
図2の左側)頂部よりも、第2のヒンジ部15が下方にあることから可能となる。これにより、蓋部13を開けるための突起を設けていなくても容易に蓋を開けることができる。
【0031】
また、蓋部13の斜めカット形状部に突起(側面部へ突出する突起又はリブ121)等を設けて、該突起に指をかけて蓋部13を開けるようにしてもよい。なお、蓋部13と正面部11とは、蓋部13を閉じた際に蓋部13の下端と正面部11の上方の開口部16水平部分とで嵌合される。
【0032】
本実施形態の筆記具レフィル用ケース10は、樹脂製(例えばポリプロピレン、ポリエチレン、ポリアセタール、ポリカーボネート製など)であることが好ましい。筆記具レフィル用ケース10が、特にポリプロピレン、ポリエチレン製である場合、蓋部13を繰り返し開閉してもヒンジ部が破断することを防ぐため、好適である。
【0033】
また、筆記具レフィル用ケース10が、特にポリプロピレン、ポリエチレン製である場合、筆記具レフィル18を収納した状態で筆記具レフィル用ケース10を落下させてもケースが破損することを防ぎ、また、収納されている筆記具レフィル18を保護することも可能であるため、好適である。
【0034】
また、筆記具レフィル用ケース10は、特にポリプロピレン、ポリエチレン製である場合、透明または半透明で形成されることが好ましい。これにより、筆記具レフィル用ケース10を開封することなく筆記具レフィルが収納されているか判別できる。また、正面部表面に印刷やラベル貼り付けを行うことで、筆記具レフィル用ケースに収納されている収納物を判別してもよい。
【0035】
なお、本実施形態においては、筆記具レフィル用ケース10は、ランダムコポリマーのポリプロピレンを用いている。これにより、耐衝撃性に優れ、またヒンジ部の可撓性が上がり、より耐久性が向上し、収納物の保護に好適である。また、透明性が向上し、筆記具レフィル用ケース10を開封することなく筆記具レフィルが収納されているかなどの判別がより容易にできる。
【0036】
・筆記具レフィル
本実施形態における筆記具レフィル18は、金属製パイプからなるインキ収容管181と、インキ収容管181の下方に設けられるホルダー182と、インキ収容管181の上方に設けられる尾栓と、ホルダー182の下方に設けられるペン先184と、インキ収容管181の内部に収容されるインキと、インキの上端に配置されるインキ逆流防止体と、を備える。
【0037】
ホルダー182はインキ収容管181嵌合部と、鍔部183と、ペン先184嵌合部と、を備える。筆記具レフィル18が筆記具レフィル用ケース10に収納された際に、鍔部183はストッパ122に当接される。
【0038】
また、本実施形態において、インキ収容管181に収容されるインキは、熱変色性インキである。
図3に示すように、筆記具レフィル用ケース10と、筆記具レフィル用ケース10に収納される2本の筆記具レフィル18と、を組み合わせて筆記具セットを得ることができる。本実施形態は、該筆記具セットの一例である。
【0039】
・ペン先
図10に示すように、ペン先184は、ペン先184下端部のボール抱持室に、回転可能にボールが抱持されているボールペンチップからなる。該ボールの後方には、常時、ボールをペン先184下端の内向きの下端縁部内面に押圧するスプリングを配設してある。
【0040】
当該スプリングは、例えば、圧縮コイルスプリングの下端部にロッド部を備えた構成となっており、当該ロッド部の下端がボールの上面と接触している。非筆記時には、当該スプリングの下方付勢により、ボールはペン先184下端の内向きの下端縁部内面に密接されている。これにより、ペン先の前端からのインキの漏出及びインキの蒸発が防止されている。
【0041】
・ホルダー
図10に示すように、ホルダー182の上端側外周面とインキ収容管181の下端側内周面とが圧入挿着される。本実施形態において、ホルダー182の上端側外周面は、突起等がない同一外径の筒状体である。ホルダー182の上端側外周面の外径は、インキ収容管181の下端側内周面の内径よりわずかに大きいことが好ましい。ホルダー182とインキ収容管181とを圧入装着した際に、ホルダー182の上端側外周面が削れない寸法が好適である。
【0042】
また、本実施形態において、ホルダー182は、(半)透明樹脂(ポリプロピレン樹脂、熱伝導率0.2W/(m・K))で形成される。これにより、ペン先184上端とインキ収容管181下端との間のホルダー182内部を外部より透視可能に構成し、ホルダー182を通してホルダー182内部のインキを外部より透視可能な構成としてある。なお、ホルダー182は、樹脂製(例えばポリアセタール、ポリプロピレン、ポリエチレン製)または金属製(例えば真鍮製)であってもよい。
【0043】
・インキ収容管
図3に示すように、本実施形態のインキ収容管181は、金属製の筒体からなる。インキ収容管181は、ステンレス鋼(SUS304、熱伝導率16W/(m・K))からなる両端が開口された円筒体である。インキ収容管181の下端側外周面に周状カシメ部が形成(不図示)されており、ホルダー182とインキ収容管181とが軸方向に抜け止め係止されている。なお、インキ収容管181の材質は、金属製ではなく樹脂製(ポリプロピレン、ポリエチレン製)であってもよい。
【0044】
・尾栓
図3に示すように、本実施形態の筆記具レフィル18は、上端に尾栓を備える。尾栓には、上端に向けて開口する空気孔が設けられている。該空気孔は、インキ収容管181の内部と外部とを通気可能としている。
【0045】
本実施形態において、尾栓の下端側外周面とインキ収容管181の上端側内周面とが圧入挿着される。これにより、尾栓とインキ収容管181とが、軸方向に抜け止め係止されている。
【0046】
また、尾栓は、合成樹脂(ポリアセタール樹脂、0.25W/(m・K))で形成されている。尾栓は、インキ収容管181の上端部内に挿通する下端部と、インキ収容管181の上方に突出する上端部とを有する。なお、尾冠は、樹脂製(例えばポリプロピレン、ポリエチレン、ポリカーボネート、ABS製など)であってもよい。
【0047】
・インキ
本実施形態において、インキ収容管181に収容されているインキは熱変色性インキである。特に、インキ収容管181が金属製の筒体からなる場合、熱変色性インキの光劣化を回避でき、且つ、長期の保管で水性の熱変色性インキの水分がインキ収容管181を透過することを抑止できる。
【0048】
熱変色性インキは、可逆熱変色性インキであることが好ましい。可逆熱変色性インキは、発色状態から加熱により消色する加熱消色型、発色状態または消色状態を互変的に特定温度域で記憶保持する色彩記憶保持型、または、消色状態から加熱により発色し、発色状態からの冷却により消色状態に復する加熱発色型等、種々のタイプを単独または併用して構成することができる。
【0049】
可逆熱変色性インキに含有される色材としては、例えば、(イ)電子供与性呈色性有機化合物、(ロ)電子受容性化合物、及び、(ハ)前記両者が化学的に結びつく反応(呈色反応)の生起温度を決める反応媒体、の必須三成分を少なくとも含む可逆熱変色性組成物をマイクロカプセル中に内包させた可逆熱変色性顔料が好適に用いられる。
【0050】
なお、本発明に用いられるインキは熱変色性インキに限られず、熱変色性インキ以外の他のインキ組成物を用いることも可能である。例えば、筆記用インキや修正液、あるいは液状糊や化粧液など、液体吐出具としての用途に応じて適宜選定すればよい。筆記用インキにおいては、油性インキや水性インキなど特に限定されず、剪断減粘性を有するインキを使用することもできる。
【0051】
・インキ逆流防止体
インキ収容管181には、熱変色性インキの上端に配置され且つインキ消費に伴い前進する高粘度流体からなるインキ逆流防止体が収容される。インキ逆流防止体としては、例えば液栓が挙げられる。 液栓は、例えば不揮発性液体及び/又は難揮発性液体(基油)からなる。具体的には、ワセリン、スピンドル油、ヒマシ油、オリーブ油、精製鉱油、流動パラフィン、ポリブテン、α-オレフィン、α-オレフィンオリゴマー又はコオリゴマー、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル及び脂肪酸変性シリコーンオイル等があげられ、1種であってよく、2種以上を併用してもよい。
【0052】
不揮発性液体及び/又は難揮発性液体には、ゲル化剤を添加して好適な粘度まで増粘させてよい。ゲル化剤としては、例えば、表面を疎水処理したシリカ、表面をメチル化処理した微粒子シリカ、珪酸アルミニウム、膨潤性雲母、疎水処理を施したベントナイト又はモンモリロナイト等の粘土系増粘剤、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸亜鉛等の脂肪酸金属石鹸、トリベンジリデンソルビトール、脂肪酸アマイド、アマイド変性ポリエチレンワックス、水添ひまし油、脂肪酸デキストリン等のデキストリン系化合物、及びセルロース系化合物が挙げられる。インキ逆流防止体15の基油としては、ポリブテン又はシリコーン油が好適に用いられ、増粘剤としては脂肪酸アマイド又はシリカが好適に用いられる。
【0053】
以上のような構成の筆記具レフィル用ケース10は、以下の様に作用する。
【0054】
本実施形態の筆記具レフィル用ケース10によれば、リブ121によって収納部17内で筆記具レフィル18が安定して収納され、ストッパ122によって筆記具レフィル18の下方移動(すなわちペン先184側への移動)が規制されることでペン先184が保護され、開口部16(蓋部13)が斜めカット形状であることにより開口部16を広くとることができ容易に筆記具レフィル18の出し入れが可能となる。さらに、正面部11と背面部12と蓋部13とが一体に形成されるケースであることから開封後でも繰り返し使用が可能である。すなわち、簡易な構造で筆記具レフィル18又はそのペン先184等の損傷を防ぎ、また開封後でも繰り返し使用が可能であり、開口部16から容易に筆記具レフィル18の出し入れができる。
【0055】
また、本実施形態の筆記具レフィル用ケース10によれば、筆記具レフィル18を2本収納可能であり、リブ121は、背面部12の短手方向の中央部に2本設けられる。これにより、筆記具レフィル18を2本収納する際に、収納部17内で筆記具レフィル18がより安定して収納され、更にリブ121を形成することによる成形品のヒケ発生を抑制し、成形品品質(筆記具レフィル用ケース10の外面の意匠性)を高めることができる。
【0056】
また、本実施形態の筆記具レフィル用ケース10によれば、ストッパ122は、背面部12のリブ121の延長線上に少なくとも一つ突設される。これにより、筆記具レフィル18を2本収納する際に、ペン先184を安定して収納部17内及びストッパ122部に挿入できる。すなわち、筆記具レフィル用ケース10に収納する際に、ペン先184をストッパ122部に当ててしまうことによるペン先損傷を防ぐことができる。
【0057】
また、本実施形態の筆記具セットによれば、筆記具レフィル用ケース10と、筆記具レフィル用ケース10に収納される筆記具レフィル18からなり、筆記具レフィル18は、少なくともインキ収容管181と、インキ収容管181の下方に設けられるホルダー182と、ホルダー182の下方に設けられるペン先184と、インキ収容管181の内部に収容されるインキと、を備える。インキ収容管181は金属製パイプからなり、ホルダー182は鍔部183を備え、鍔部183は前記ストッパ122に当接され、インキは熱変色性インキである。
【0058】
これにより、ユーザーは、熱変色性インキを収容した筆記具レフィル18を損傷させることなく持ち歩くことができる。更に、交換後の使用済み筆記具レフィル18をそのまま筆記具レフィル用ケース10に収納できるため、ユーザーの利便性が向上する。
【0059】
<第2実施形態>
図12は、本発明の第2実施形態における筆記具レフィル用ケース10を示す正面図であり、蓋部13が閉まった状態を示す図である。本発明の第2実施形態における第1実施形態との違いは、正面部11に窓部111が設けられている点である。第2実施形態のその他の構成は、第1実施形態と略同様であるため、その詳細な説明は省略する。
【0060】
・窓部
図12に示すように、第2実施形態の筆記具レフィル用ケース10は、正面部11に窓部111が貫設され、収納部17を外部から視認することができる。なお、窓部111は、正面部11と背面部12の少なくともいずれか一方に設けられていればよい。
【0061】
これにより、筆記具レフィル用ケース10を開封することなく何が収納されているか判別できる。例えば、インキの種類、インキ色、インキ残量、又はペン先のボール径など、筆記具レフィル用ケース10を開封することなく判別可能である。
【0062】
また、窓部111が、外部からホルダー182が視認できる位置に設けられている場合、インキ収容管181が金属製の筒体であってインキ残量が視認できない場合でも、ホルダー182を視認することでインキ残量が確認できる。このため、筆記具レフィル用ケース10を開封することなく収納されている筆記具レフィル18が未使用のものか、又は使用済みのものかが判別できる。
【0063】
また、正面部11に窓部111が貫設されていることから、収納されている筆記具レフィル18を取り出す際に、窓部111から筆記具レフィル18を指で押し出すように取り出すことができ、筆記具レフィル用ケース10としての利便性・操作性が向上する。
【符号の説明】
【0064】
10 筆記具レフィル用ケース
11 正面部
111 窓部
12 背面部
121 リブ
122 ストッパ
13 蓋部
14 第1のヒンジ部
15 第2のヒンジ部
16 開口部
17 収納部
18 筆記具レフィル
181 インキ収容管
182 ホルダー
183 鍔部
184 ペン先