(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024062893
(43)【公開日】2024-05-10
(54)【発明の名称】搾り出し器
(51)【国際特許分類】
B65D 35/28 20060101AFI20240501BHJP
【FI】
B65D35/28 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022171034
(22)【出願日】2022-10-25
(71)【出願人】
【識別番号】522418819
【氏名又は名称】株式会社竹内左官技工
(74)【代理人】
【識別番号】100161300
【弁理士】
【氏名又は名称】川角 栄二
(72)【発明者】
【氏名】三ツ塚 基
【テーマコード(参考)】
3E065
【Fターム(参考)】
3E065FA07
3E065FA11
3E065JA01
3E065JA13
(57)【要約】
【課題】 袋から缶への流動物の移し替えを安定した姿勢で行えるような搾り出し器を提供する。
【解決手段】 袋に収納された流動物を搾り出して缶に移す搾り出し器1であって、袋を挟み圧迫する一対のローラーと、一対のローラーを支持する枠体20と、枠体20に回転可能に結合され、その回転により一対のローラーの間の距離を調整するレバー41とを備え、一対のローラーが、枠体20に固定された固定ローラー11と、レバー41の回転により移動する可動ローラー12とからなり、レバー41を倒伏させた状態において、可動ローラー12が固定ローラー11に最も近づいた状態となる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
袋に収納された流動物を搾り出して缶に移す搾り出し器であって、
前記袋を挟み圧迫する一対のローラーと、
前記一対のローラーを支持する枠体と、
前記枠体に回転可能に結合され、その回転により前記一対のローラーの間の距離を調整するレバーとを備え、
前記一対のローラーが、前記枠体に固定された固定ローラーと、前記レバーの回転により移動する可動ローラーとからなり、
前記レバーを倒伏させた状態において、前記可動ローラーが前記固定ローラーに最も近づいた状態となる
ことを特徴とする搾り出し器。
【請求項2】
前記枠体を前記缶の開口部に装着する装着手段をさらに備え、
前記装着手段が、前記缶の胴体から外に突出する突起の下に嵌る係合突起を有し、
前記係合突起が、弾性力により前記缶の前記胴体に向けて押し付けられている
ことを特徴とする請求項1に記載の搾り出し器。
【請求項3】
前記レバーを倒伏させた状態でロックするロック機構をさらに備え、
作業者が把持するハンドルが前記レバーに連結されており、
前記ロック機構が、前記レバーを倒伏させた状態で前記ハンドルに掛かり前記レバーの動きを制限する爪部と、前記爪部が前記ハンドルに掛かった状態で維持するよう弾性力を付与するバネとを有する
ことを特徴とする請求項2に記載の搾り出し器。
【請求項4】
前記バネが、その弾性力により前記係合突起を前記缶の前記胴体に向けて押し付ける
ことを特徴とする請求項3に記載の搾り出し器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、袋に収納された流動物を搾り出して缶に移す搾り出し器に関し、特に建築材料等の粘性の高い流動物を搾り出す搾り出し器に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に塗材等の建築材料は、袋に収納されその袋ごとドラム缶の中に入れられ流通することが多く、使用する際には、袋を破り中身を缶に移す替える必要がある。袋から塗材を出すには、刃物で袋に切れ目を入れて袋を圧迫すればよい。通常、塗材は粘性の高い流動物であるため、搾り出すためには強い力で圧迫する必要があり、手で搾り出すには時間がかかり、労力を要する。
【0003】
そこで、袋に収納された粘性材を搾り出す器具として、袋を二つのローラーで挟み込んだ状態で引っ張るよう構成された器具が知られている(特許文献1参照)。特許文献1に記載の器具は、固定ローラーと、レバーに結合された可動ローラーとを有し、レバーを起立させると固定ローラーと可動ローラーが近接するよう構成されている(特許文献1の
図1参照)。
【0004】
この器具を用いて粘性材を搾り出すには、固定ローラーと可動ローラーとで袋を圧迫し続ける必要があるため、器具に横向きの荷重を加え続ける必要がある(特許文献1の
図5参照)。そうすると器具が容器から外れるおそれがあり、また容器ごと倒れるおそれもある。特に、袋から缶に流動体を移し替える場合は、作業開始時の缶は空であるため全体の重心位置が高く、横向き荷重を加えると転倒の危険性が高まる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記問題点を鑑みて、本発明は、袋から缶への流動物の移し替えを安定した姿勢で行えるような搾り出し器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る搾り出し器は、袋に収納された流動物を搾り出して缶に移す搾り出し器であって、前記袋を挟み圧迫する一対のローラーと、前記一対のローラーを支持する枠体と、前記枠体に回転可能に結合され、その回転により前記一対のローラーの間の距離を調整するレバーとを備え、前記一対のローラーが、前記枠体に固定された固定ローラーと、前記レバーの回転により移動する可動ローラーとからなり、前記レバーを倒伏させた状態において、前記可動ローラーが前記固定ローラーに最も近づいた状態となることを特徴とする。
【0008】
この発明によれば、袋から缶への流動物の移し替えを安定した姿勢で行えるような搾り出し器を提供することができる。
【0009】
また本発明に係る他の搾り出し器は、前記枠体を前記缶の開口部に装着する装着手段をさらに備え、前記装着手段が、前記缶の胴体から外に突出する突起の下に嵌る係合突起を有し、前記係合突起が、弾性力により前記缶の前記胴体に向けて押し付けられていることを特徴とする。
【0010】
この発明によれば、缶への着脱が容易であり、袋から缶への流動物の移し替えが効率的に行える搾り出し器を提供することができる。
【0011】
また本発明に係る他の搾り出し器は、前記レバーを倒伏させた状態でロックするロック機構をさらに備え、作業者が把持するハンドルが前記レバーに連結されており、前記ロック機構が、前記レバーを倒伏させた状態で前記ハンドルに掛かり前記レバーの動きを制限する爪部と、前記爪部が前記ハンドルに掛かった状態で維持するよう弾性力を付与するバネとを有することを特徴とする。
【0012】
この発明によれば、ローラーで挟まれて圧迫された袋を引き上げる際に、ローラー同士が離れて圧迫が緩むことのない搾り出し器を提供することができる。
【0013】
また本発明に係る他の搾り出し器は、前記バネが、その弾性力により前記係合突起を前記缶の前記胴体に向けて押し付けることを特徴とする。
【0014】
この発明によれば、部品点数が少数でありながら缶への着脱を容易にしつつ袋の圧迫が緩むのを防止できる搾り出し器を提供することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、袋から缶への流動物の移し替えを安定した姿勢で行えるような搾り出し器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の第一実施形態に係る搾り出し器を示す斜視図である。
【
図2】本発明の第一実施形態に係る搾り出し器を示す図であり、(a)は正面図であり、(b)は底面図である。
【
図3】本発明の第一実施形態に係る搾り出し器を
図2(b)の矢視A-Aで示す矢視図であって、レバーが起立した状態を示す図である。
【
図4】本発明の第一実施形態に係る搾り出し器を
図2(b)の矢視A-Aで示す矢視図であって、レバーが起立した状態から約45°後方に傾いた状態を示す図である。
【
図5】本発明の第一実施形態に係る搾り出し器を
図2(b)の矢視A-Aで示す矢視図であって、レバーが倒伏した状態を示す図である。
【
図6】本発明の第一実施形態に係る搾り出し器を使用して、袋の中の流動物を缶に移している状態を示す模式図である。
【
図7】本発明の第二実施形態に係る搾り出し器を示す図であり、(a)は正面図であり、(b)は袋の中の流動物を缶に移している状態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明を適用した搾り出し器の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下に述べる実施形態は、本発明の好適な実施形態であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。
【0018】
〔第一実施形態〕
本発明の第一実施形態に係る搾り出し器について、
図1~6に基づき説明する。
図1は、本発明の第一第一実施形態に係る搾り出し器を示す斜視図であり、
図2は、本発明の第一実施形態に係る搾り出し器を示す図であり、(a)は正面図であり、(b)は底面図である。
図3は、本発明の第一実施形態に係る搾り出し器を
図2(b)の矢視A-Aで示す矢視図であって、レバーが起立した状態を示す図であり、
図4は、本発明の第一実施形態に係る搾り出し器を
図2(b)の矢視A-Aで示す矢視図であって、レバーが起立した状態から約45°後方に傾いた状態を示す図であり、
図5は、本発明の第一実施形態に係る搾り出し器を
図2(b)の矢視A-Aで示す矢視図であって、レバーが倒伏した状態を示す図である。
図6は、本発明の第一実施形態に係る搾り出し器を使用して、袋の中の流動物を缶に移している状態を示す模式図である。なお、
図1,2,6において二点鎖線で示すのは、装着される対象である円筒状の缶Cである。缶Cは、その開口部に胴体Tから外に突出する突起Rを有する。
【0019】
まず、本実施形態に係る搾り出し器1の構成について、
図1,2に基づき説明する。搾り出し器1は袋に収納された流動物を搾り出して缶に移すものであって、基本的な構成要素として、袋を挟み圧迫する一対のローラーをなす固定ローラー11及び可動ローラー12、これらのローラーを支持する枠体20、枠体20を缶Cの開口部に装着する装着手段30を備える。
【0020】
枠体20は、概ね環状に形成されたリングフレーム21、一対の左右対称のブラケット22,22及び一対の左右対称のブラケット23,23を有する。リングフレーム21には、左右に対向して配置された一対のブラケット22,22が、その上面側に結合されている。ブラケット22の前方の端部近傍において、左右のブラケット22,22を架け渡すように固定ローラー11が回転可能に結合されている。
【0021】
リングフレーム21には、左右に対向して配置された一対のブラケット23,23が、その下面側に結合されている。それぞれのブラケット23には、リンク43の基端部が、回転軸44を介して回転可能に結合されており(
図2(a)参照)、リンク43の先端部には左右のリンク43,43を架け渡すように可動ローラー12が回転可能に結合されている。なお、この搾り出し器1を構成する回転軸等の軸体の端部には、適宜に抜け止めの処理がなされているが、個々の説明は省略する。
【0022】
固定ローラー11及び可動ローラー12はいずれも枠体20に支持され、固定ローラー11は枠体20に固定されており、可動ローラー12は後述のように前後に移動することができる。固定ローラー11及び可動ローラー12は前後に平行に配置されており、固定ローラー11と可動ローラー12との間に配置された袋は、可動ローラー12を前方に移動させることにより圧迫される。なお、前後方向に圧迫された袋が左右に拡大して圧が緩むのを防ぐため、枠体20には、前後方向に延びる規制部材24,24がリングフレーム21に固定結合されて設けられている。
【0023】
枠体20を缶Cの開口部に装着する装着手段30は、
図2に示すように、互いに対向して配置されている支持突起31及び係合突起32を有する。支持突起31は枠体20のリングフレーム21の下面側に固定的に結合されており、缶Cの開口部の縁に全周にわたり形成された突起Rの下に嵌るよう、缶Cの形状に合わせた円弧状に切り欠かれている(
図2(b)参照)。係合突起32は、枠体20に揺動可能に結合された揺動体61に設けられており、缶Cの突起Rの下に嵌った状態と、缶Cから離れた状態とを取り得るよう構成されている。係合突起32は、
図2(a)に示すバネ63の弾性力により、缶Cの胴体Tに向けて押し付けられている。缶Cの前後両側において突起Rの下にそれぞれ支持突起31及び係合突起32が嵌ることにより、枠体20が缶Cに装着される。なお、揺動体61及びバネ63の詳細については後述する。
【0024】
次に可動ローラー12を動かす機構について説明する。左右のブラケット22,22それぞれに、回転軸42を介して一対のレバー41,41が回転可能に結合されており、左右のレバー41,41はハンドル45で固定的に結合されている。これにより、レバー41,41及びハンドル45が、回転軸42を中心に一体的に回転可能となっている。また左右のレバー41,41が、左右のリンク43,43それぞれと動きが連動するように結合されている。なお、左右のブラケット22,22、レバー41,41、リンク43,43は、それぞれ左右対称であるため、以下では
図2(a)に示されるブラケット22、レバー41、リンク43を用いて説明する。
【0025】
レバー41は、二つのアーム41a,41bが回転軸42の位置で折れ曲がり結合されているようなクランク状に形成されており、アーム41bの先端近傍には左右方向内側に向けて突出するピン41cが設けられている。レバー41は回転軸42を中心に回転し、それにつれてピン41cも、
図2(a)に示す正面視で、回転軸42を中心に回転移動する。
【0026】
リンク43には、回転軸44の位置と可動ローラー12の位置の間に長孔43aが設けられており、レバー41のピン41cが長孔43aに収容されている。そのため、レバー41が回転軸42を中心に回転すると、ピン41cが動き、そしてピン41cが長孔43aの中をスライドするのを許容するようにリンク43が回転し、それにつれて可動ローラー12が移動することになる。なお、レバー41の位置と可動ローラー12の位置の関係の詳細については後述する。
【0027】
次にレバー41を倒伏状態でロックするロック機構60について説明する。ロック機構60は、揺動体61、ヒンジ62、バネ63を有しており、
図2(a)に示すように、揺動体61はヒンジ62を介して枠体20に結合され、揺動中心62aを中心に揺動可能に構成されている。そして揺動体61はバネ63によって、
図2(a)における反時計方向に弾性力が付与されている。なお、バネ63はねじりコイルばねが好適であるが、任意のばねを使用することができる。
【0028】
揺動体61には爪部61aが設けられており、レバー41が後方に倒伏するとハンドル45の上に爪部61aが掛かる(
図5参照)。そしてバネ63が揺動体61に対して、
図2(a)における反時計方向に弾性力を付与しているため、レバー41はこの状態でロックされ、それに応じて可動ローラー12の位置もロックされる。すなわち、この状態では袋を挟んだ際の反力により可動ローラー12が固定ローラー11から離れて圧迫が緩む、ということがない。ロックを解除するには、作業者が揺動体61を前方に倒して、ハンドル45の上に爪部61aが掛からないようにすればよい。
【0029】
なお、揺動体61には、その下部に先述の係合突起32が設けられており、バネ63が揺動体61に付与する弾性力により、係合突起32が缶Cの突起Rの下に嵌りつつ、胴体Tに向けて押し付けられる。すなわち、バネ63はレバー41をロックする役目に寄与するとともに、枠体20を缶Cの開口部に装着する役目にも寄与する。
【0030】
次に、可動ローラー12の位置とレバー41の位置の関係について、
図3~5に基づき説明する。
図3に示す状態では、レバー41はほぼ鉛直に起立しており(回転軸42とハンドル45を結ぶ線がほぼ鉛直)、この状態で可動ローラー12は最も後方に位置している。すなわち、可動ローラー12は固定ローラー11から最も離れた状態となっている。この状態からレバー41を後方に倒していくと、レバー41のピン41cは前方に移動しつつ下方に移動していき、それに追従してリンク43が回転軸44を中心に、図示における時計方向に回転していき、可動ローラー12が前方に移動していく。
【0031】
そして
図4のように、レバー41が後方に約45°倒れた状態に至る。この状態では、リンク43は概ね直立しており、可動ローラー12が固定ローラー11に近づいている。この時、ピン41cの位置はリンク43の長孔43aの中でほぼ最下点にある。そしてこの状態からレバー41をさらに後方に倒していく。
【0032】
そして
図5のように、レバー41がほぼ水平に倒伏した状態(回転軸42とハンドル45を結ぶ線がほぼ水平)に至る。この状態ではリンク43は鉛直から約45°、図示における時計方向に回転しており、可動ローラー12が固定ローラー11に最も近づいた状態となる。この時、ピン41cの位置はリンク43の長孔43aの中でほぼ最上点にある。そしてこの時、ロック機構60の爪部61aはハンドル45の上に掛かっており、レバー41はこの状態でロックされる。
【0033】
次に、この状態において袋の中の流動物を缶に移す方法について、
図6に基づき説明する。予め切れ目を入れておき、固定ローラー11と可動ローラー12の間に挟んでおいた袋Bを引き上げると、袋Bは固定ローラー11と可動ローラー12により圧迫され、中の流動物Fは缶Cの中に落ちていく。この時、レバー41はロック機構60によりロックされているため、圧迫が緩むことなく効率的に搾り出すことができる。そして袋Bを完全に引き上げたところで、袋Bから缶Cへの移し替えは終了となる。
【0034】
移し替えが終了した後は、缶Cから搾り出し器1を取り外す。この時、ロック機構60の揺動体61を揺動させさえすれば、係合突起32が缶Cの突起Rの下から離れるため、搾り出し器1を取り外せるとともに、レバー41のロックも解除される。そのためレバー41を回転させて概ね鉛直な姿勢とし、ハンドル45を把持して搾り出し器1を動かすことができる。こうしてスピーディーに次の袋から缶への移し替え作業に移行することができる。
【0035】
〔第二実施形態〕
次に、本発明の第二実施形態に係る搾り出し器について、
図7に基づき説明する。
図7は、本発明の第二実施形態に係る搾り出し器を示す図であり、(a)は正面図であり、(b)は袋の中の流動物を缶に移している状態を示す模式図である。なお
図7(b)は、第二実施形態に係る搾り出し器を、
図6と同様の矢視で見た図である。
【0036】
本実施形態に係る搾り出し器2は、ロック機構60及び係合突起32を有さない以外は、第一実施形態に係る搾り出し器1と同じである。そのため、第一実施形態の説明で用いた符号と同じ符号を用いて、本実施形態に係る搾り出し器2の構成を
図7に示している。缶への装着及びレバーのロック以外については第一実施形態と同じであるため、説明を省略する。
【0037】
搾り出し器2は、支持突起31を缶Cの突起Rの下に嵌めつつ、リングフレーム21を缶Cの開口の上に載せることによって、缶Cに装着される(
図7(a)参照)。缶Cに装着した後、レバー41を操作して可動ローラー12を動かし袋を圧迫する方法は、第一実施形態と同じである(
図3~5参照)。ただし、レバー41がほぼ水平に倒伏した状態で、本実施形態に係る搾り出し器2のレバー41はロックされない。
【0038】
次に、本実施形態に係る搾り出し器2を使用して、袋の中の流動物を缶に移す方法について、
図7(b)に基づき説明する。
図7(b)は、レバー41がほぼ水平に倒伏しており、可動ローラー12が固定ローラー11に最も近づいた状態である。予め切れ目を入れておき、固定ローラー11と可動ローラー12の間に挟んでおいた袋Bを、図の上向き矢印で示した方向に引き上げると、袋Bは固定ローラー11と可動ローラー12により圧迫され、中の流動物Fは缶Cの中に落ちていく。しかしこの時、可動ローラー12には袋Bからの反力が作用するため、可動ローラー12は後方に動こうとする。可動ローラー12が後方に動くと、袋Bの圧迫が緩むため、流動物Fを搾り出せない。これを防ぐため、作業者は、レバー41を図の下向き矢印で示した方向に押し付けて、レバー41が水平に倒伏した状態を維持する。こうすることによって、袋Bが受ける圧迫は緩むことなく、流動物Fを搾り出すことができる。なお、作業者はレバー41を手で押したり足で踏み付けたり、任意の方法で押し付けることができる。もちろん、ハンドル45を下に押し付けることで、レバー41の水平姿勢を維持することもできる。
【0039】
この時、搾り出し器2には、
図7(b)で示した上下それぞれの矢印方向の荷重が作用する。缶Cには上下向きの荷重が相殺して伝わるため、その姿勢には殆ど影響を及ぼさない。また缶Cを倒そうとするモーメントも大きくなく、缶Cの底で支持され姿勢は安定する。そのため、搾り出し器2及び缶Cが転倒するおそれはなく、流動物の移し替えを安定した姿勢で行うことができる。
【0040】
〔変形例〕
上述の第一実施形態では、レバー41の動きをロックする爪部61aと枠体20を缶Cに装着するための係合突起32とを、一つの揺動体61に設けていたが、この構成に代えて、これらを別々の部品に設けることも可能である。また係合突起32を缶Cの胴体Tに向けて押し付ける弾性力は、バネによるものに限られず、例えは係合突起32自身が有する板としての弾性力を使用することもできる。
【0041】
また上述の第一及び第二実施形態では、レバー41が起立した状態で可動ローラー12が固定ローラー11から最も離れ、レバー41が倒伏した状態で可動ローラー12が固定ローラー11に最も近づくよう構成されていたが、レバー41と可動ローラー12の位置関係は、レバー41のクランクの角度やピン41cの位置等を変更することによって、様々に設定することができる。
【0042】
また上述の第一実施形態では、缶Cの開口部の縁の全周にわたる突起R(いわゆる「チャイム」)に支持突起31及び係合突起32を掛けて装着していたが、缶Cのビード等の、他の突起に掛けて装着することも可能である。また装着手段30として、支持突起31及び係合突起32の組み合わせに代えて、他の任意の装着方法、例えば磁力を使用する方法を採用することも可能である。また上述の第二実施形態では、支持突起31を缶Cの開口部の縁の全周にわたる突起Rに掛けて装着していたが、他の任意の装着方法、例えば磁力を使用する方法を採用することも可能である。
【0043】
また上述の第一及び第二実施形態では、
図2(b)に示すように支持突起31を円弧状に形成することで、曲線に沿って缶Cの突起Rの下に嵌るよう構成されていたが、これに代えて、点状に、缶Cの突起Rの下に嵌るよう構成することも可能である。すなわち、枠体20に結合された鉤状の部材を単数又は複数設け、その鉤部分を缶Cの突起Rに引っ掛けて、鉤部分の突起が缶Cの突起Rの下に嵌るよう構成することも可能である。また上述の第一及び第二実施形態では、枠体20を構成するリングフレーム21が、一つの部品から構成されていたが、複数の部品を組み立てて構成することも可能である。また、ブラケット22,23をリングフレーム21と一体化することも可能である。
【符号の説明】
【0044】
1,2 搾り出し器
11 固定ローラー
12 可動ローラー
20 枠体
21 リングフレーム
22 ブラケット
23 ブラケット
24 規制部材
30 装着手段
31 支持突起
32 係合突起
41 レバー
41a アーム
41b アーム
41c ピン
42 回転軸
43 リンク
43a 長孔
44 回転軸
45 ハンドル
60 ロック機構
61 揺動体
61a 爪部
62 ヒンジ
62a 揺動中心
63 バネ
B 袋
C 缶
F 流動物
R 突起
T 胴体