(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024062894
(43)【公開日】2024-05-10
(54)【発明の名称】情報処理方法、情報処理装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G08G 1/00 20060101AFI20240501BHJP
【FI】
G08G1/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022171035
(22)【出願日】2022-10-25
(71)【出願人】
【識別番号】514235341
【氏名又は名称】株式会社スマートドライブ
(72)【発明者】
【氏名】中村 圭佐
(72)【発明者】
【氏名】小畑 良樹
(72)【発明者】
【氏名】神田 大樹
【テーマコード(参考)】
5H181
【Fターム(参考)】
5H181AA01
5H181AA21
5H181BB04
5H181FF05
5H181FF10
5H181FF33
(57)【要約】 (修正有)
【課題】小規模のスカラ値である加速度情報を用いた運転評価を可能とする情報処理方法、情報処理装置及びプログラムを提供する。
【解決手段】情報処理装置は、GPSに基づいて移動体の位置情報を取得する位置情報取得部と、位置情報に基づいて、加速度情報を算出する加速度情報算出部と、加速度情報が所定条件を満たす期間を特定する特定部と、位置情報に基づいて、移動体の運転経路を出力する出力部と、を備える。所定条件は、加速度情報のスカラ値が0を超え且つ所定閾値以下の加速度情報が所定頻度以上であることであり、出力部は、特定された期間の加速度情報に対応する運転経路を、他の運転経路とは異なる態様で出力する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
GPSに基づいて移動体の位置情報を取得する位置情報取得部と、
前記位置情報に基づいて、加速度情報を算出する加速度情報算出部と、
前記加速度情報が所定条件を満たす期間を特定する特定部と、
前記位置情報に基づいて、前記移動体の運転経路を出力する出力部と、
を備える情報処理装置であって、
前記所定条件は、急ハンドル、急加速及び急減速のいずれにも該当しない規模の加速度情報が所定頻度以上で観測されることであり、
前記出力部は、前記特定された期間の前記加速度情報に対応する運転経路を、他の運転経路とは異なる態様で出力する、
情報処理装置。
【請求項2】
GPSに基づいて移動体の位置情報を取得すること、
前記位置情報に基づいて、加速度情報を算出することと、
前記加速度情報が所定条件を満たす期間を特定することと、
前記位置情報に基づいて、前記移動体の運転経路を出力することと、
を含む情報処理方法であって、
前記所定条件は、急ハンドル、急加速及び急減速のいずれにも該当しない規模の加速度情報が所定頻度以上で観測されることであり、
前記出力することは、前記特定された期間の前記加速度情報に対応する運転経路を、他の運転経路とは異なる態様で出力することを含む、
情報処理方法。
【請求項3】
コンピュータに、
GPSに基づいて移動体の位置情報を取得すること、
前記位置情報に基づいて、加速度情報を算出することと、
前記加速度情報が所定条件を満たす期間を特定することと、
前記位置情報に基づいて、前記移動体の運転経路を出力することと、
を実行させるためのプログラムであって、
前記所定条件は、急ハンドル、急加速及び急減速のいずれにも該当しない規模の加速度情報が所定頻度以上で観測されることであり、
前記出力することは、前記特定された期間の前記加速度情報に対応する運転経路を、他の運転経路とは異なる態様で出力することを含む、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理方法、情報処理装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
移動体から取得された走行情報に基づいて、運転の評価を行うことにより、運転品質を認識させ、運転品質の改善を促すことや、また運転品質が改善されることで、燃費の向上、事故の減少等をもたらすことができ、更には、複数の車両の運用効率を改善することができる。
【0003】
例えば、特許文献1には、ドライブレコーダ等の車載記録装置から取得した加速度情報等の走行情報を解析することにより得られる運転精度と基準運転精度との比較結果に応じて、運転スタイルの改善を喚起する喚起情報を通知する発明が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来技術においては、走行情報として加速度センサにより取得された加速度情報が用いられることで、ある程度の大きさのスカラー値である加速度情報として、急ブレーキ、急加速、急ハンドル等の運転者による操作由来のもののほかに、移動体が段差に乗り上げるといった運転者による操作由来でないものも観測されてしまう。すなわち、明らかに急ブレーキ、急加速、急ハンドルと特定できる性質の加速度情報(例えば、所定の閾値以上のスカラ値の加速度情報)でなければ、運転者による操作由来の加速度情報であるかどうかの判別が困難であった。
従って、運転評価の材料として加速度情報を用いる場合には、小規模のスカラー値を有する加速度情報は操作由来であるかどうかの判別ができないことから、かかる加速度情報を適切に運転評価に用いることが困難であった。
【0006】
本発明の目的は、小規模のスカラ値である加速度情報を用いた運転評価を可能とすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によると、情報処理装置は、GPSに基づいて移動体の位置情報を取得する位置情報取得部と、前記位置情報に基づいて、加速度情報を算出する加速度情報算出部と、前記加速度情報が所定条件を満たす期間を特定する特定部と、前記位置情報に基づいて、前記移動体の運転経路を出力する出力部と、を備える情報処理装置であって、前記所定条件は、急ハンドル、急加速及び急減速のいずれにも該当しない規模の加速度情報が所定頻度以上で観測されることであり、前記出力部は、前記特定された期間の前記加速度情報に対応する運転経路を、他の運転経路とは異なる態様で出力する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、より適切な運転評価を可能とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施形態における移動体における運転レポート情報の開示を制御するシステムのシステム構成図である。
【
図2】本実施形態における情報処理装置10の機能構成の一例を示す図である。
【
図3】本実施形態におけるサーバ20の機能構成の一例を示す図である。
【
図4】本実施形態における管理者端末30の機能構成の一例を示す図である。
【
図5】本実施形態における運転スコア情報処理のフローチャートである。
【
図6】本実施形態において出力されるレポート情報の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態の例として、一実施形態について図面を参照して説明する。
なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付して、重複する説明を省略する場合がある。
また、これらの実施形態に記載されている構成要素はあくまで例示であり、本発明の範囲をそれらに限定する趣旨のものではない。
【0011】
図1は、本実施形態の一態様に係る、移動体における運転レポート情報の開示を制御するシステムのシステム構成図である。本システムにおいては、移動体1において設けられた情報処理装置10によって移動体1における位置情報が収集され、サーバ20に送信され蓄積され、サーバ20に蓄積された位置情報に基づいて運転スコア情報が生成され、管理者端末30において、運転スコア情報及び位置情報に基づいて算出された加速度情報等に基づいて生成された運転レポート情報が出力される。
【0012】
ここで、位置情報とは、例えば、移動体1の位置に関する情報であり、所定の間隔(例えば、1秒間隔)で取得されるものである。位置情報の取得方法については後述する。本実施形態においては、取得された位置情報は、情報処理装置10により取得した時間に関する時間情報と紐づけられた態様とされてからサーバ20に送信される。
【0013】
また、運転スコア情報とは、移動体1における運転の品質を示す情報であり、例えば、運転の品質に応じてスコア化したものである。本実施形態においては、運転の品質が高いほど高いスコアに、低いほど低いスコアになるロジックを適用しているものとする。例えば、所定の閾値以上の加速度情報が観測された場合には、閾値又は加速度情報の大きさに対応する点数が減点されるロジックが適用される。
【0014】
また、運転レポート情報とは、運転者の運転に関する情報をまとめた情報であって、例えば、加速度情報の分布を表した情報や、運転スコア情報が減点された推移を表した情報等が挙げられるが、対象となる運転者の運転態様が把握できるものであれば特に限定されない。運転レポート情報の詳細については後述する。
【0015】
移動体1は、本実施形態では、ビジネス上利用される車両とするが、特にそのような車両に限定されない。なお、移動体1には情報処理装置10が備えられており、その詳細については後述する。
【0016】
図2は、
図1の移動体1に備えられた情報処理装置10の機能構成を示すブロック図である。本実施形態における情報処理装置10は、例えば、ドライブレコーダー、カーナビゲーション装置、デジタコ等の移動体1に備えられる装置や、スマートフォン等移動体1の乗車者によって保有される機器等、任意の機器であってよく、少なくとも移動体1の位置情報を収集しサーバ20に送信することができるものであればよい。情報処理装置10は、例えば、制御部110、記憶部120、通信部130、位置情報取得部140、及び時計部150を備えて構成される。
情報処理装置10は、上述したように、所定の間隔で位置情報を取得し、取得した位置情報を時計部150にて取得される時間情報と紐付けて通信部130を通じてネットワークNWに接続されたサーバ20に送信する。
【0017】
制御部110は、例えばCPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro-Processing Unit)を含む処理演算装置によって構成される。制御部110は各データに対する各種処理を行うとともに、記憶部120に格納されたプログラムを読み出して実行することで、通信部130、及び位置情報取得部140の各機能部を制御する。
【0018】
記憶部120は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)、ROM(Read-Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を含み、制御部110が処理する制御プログラムや、各種データ、例えば、各機能部によって取得した情報等を記憶する。なお、記憶部120は、情報処理装置10に内蔵されるものに限らず、USB(Universal Serial Bus)等のデジタル入出力ポート等によって接続された外付け型の記憶装置でもよい。
【0019】
通信部130は、例えば、LTE(Long Term Evolution)や3G、4G、5G等の移動体通信、DSRC(Dedicated Short Range Communication)等の狭帯域通信を用いて、インターネット等の公共のネットワークに接続し、同ネットワークに接続されたサーバー20等の各機器とのデータ通信が可能なモジュールである。または、DSRCを利用して双方向通信を行うETC2.0に対応した通信により、情報のやり取りを行うこととしてもよい。
例えば、通信部130を通じて情報処理装置10はサーバー20と位置情報等のデータのやり取りを行う。
【0020】
位置情報取得部140は、例えば、GNSS衛星(例えばGPS衛星)から到来する電波に基づいて、情報処理装置10の位置情報(例えば、緯度経度情報)を所定間隔で取得する。すなわち、情報処理装置10を備える移動体1の位置情報を取得することができる。転じて、情報処理装置10を備える移動体1を利用することで、実質的に移動体1の位置情報を取得することができる。取得された位置情報は、当該位置情報を取得した時刻(現在時刻)と紐付けられて、記憶部120に格納される。
ここで、位置情報取得部140は、位置情報を取得すると共に、その位置情報の精度を示す精度値(例えば、DOP値)を取得することとしてもよい。この場合、取得された位置情報及び精度値が現在時刻と紐付けられて、記憶部120に格納される。
【0021】
なお、位置情報取得部140による位置情報の取得方式は、上記のものに限られず、任意の位置情報取得方式を適用してよい。例えば、道路脇に設置された路側機により発せられる当該路側機に固有の位置情報を含んだ電波を、情報処理装置10が備えられた移動体1が近接した際に位置情報取得部140が受信することで、情報処理装置10の位置情報を取得することとしてもよい。
【0022】
時計部150は、情報処理装置10の内蔵時計であり、時刻情報(計時情報)を出力する。時計部150は、例えば、水晶発振器を利用したクロック等を有して構成される。
なお、時計部150は、NITZ(Network Identity and Time Zone)規格等を適用したクロックを有して構成されてもよい。
【0023】
図3は、
図1のサーバ20の機能構成を示すブロック図である。本実施形態におけるサーバ20は、制御部210、記憶部220、通信部230を備えて構成される。
サーバ20は、例えば、インターネット等のネットワークを通じて情報処理装置10等と接続され、情報処理装置10等から位置情報等の様々な運転関連情報を受信し、記憶部220に記憶する。また、記憶された情報、例えば、情報処理装置10において取得された位置情報に基づき加速度情報の算出や、運転レポート情報の生成を行う。
【0024】
制御部210は、情報処理装置10の制御部110と同様に、例えばCPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro-Processing Unit)を含む処理演算装置によって構成される。制御部210は各データに対する各種処理を行うとともに、記憶部220に格納されたプログラムを読み出して実行する。また、
【0025】
記憶部220は、情報処理装置10の記憶部120と同様に、例えばHDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)、ROM(Read-Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を含み、制御部210が処理する制御プログラムや、各種データ、例えば、機器の識別情報が登録された搭載機器テーブルなどを記憶する。なお、記憶部220は、サーバー20に内蔵されるものに限らず、USB(Universal Serial Bus)等のデジタル入出力ポート等によって接続された外付け型の記憶装置でもよい。
【0026】
通信部230は、有線通信インターフェースを用いて、または、情報処理装置10の通信部130と同様に、例えば、LTE(Long Term Evolution)や3G等の移動体通信、DSRC(Dedicated Short Range Communication)等の狭帯域通信を用いて、インターネット等のネットワークに接続し、同ネットワークに接続された情報処理装置10等の各機器とのデータ通信が可能なモジュールである。
【0027】
図4は、
図1の管理者端末30の機能構成を示すブロック図である。本実施形態における管理者端末30は、限定ではなく例として、タブレットやラップトップPCなどの電子機器であればよく、例えば、制御部310、記憶部320、通信部330、表示部340、音声出力部350、及び入力部360を備えて構成される。
これら各機能部のうち、制御部310、記憶部320及び通信部330の構成は、情報処理装置10の制御部110、記憶部120及び通信部130とほぼ同様であってよいため、これらの詳細な説明は省略する。
【0028】
表示部340は、例えば、液晶ディスプレイ、又は有機EL(Electro-Luminescence)ディスプレイ等によって構成される、様々な情報を表示するためのディスプレイ手段である。
表示部340は、通信部330を通じて取得した各種情報や制御部310による処理結果等を表示し、例えば、サーバ20によって算出された運転スコア情報や、運転レポート情報を表示する。
【0029】
音声出力部350は、例えば音声出力端子からなり、接続されたイヤホンやスピーカなどから音声を出力させるために音声信号を送信する。または、音声信号にかかる音声を出力するスピーカであってもよい。
音声出力部350は、例えば、情報処理装置10における音声入力部170によって取得した音声情報を出力したり、所望する運転レポート情報におけるコンテンツにアクセスが許可されなかった場合などにおいて、対応するユーザに通知すべく、ビープ音などの音声を出力する。
【0030】
入力部360は、管理者端末30に対して各種入力を行うための入力手段である。例えば、ボタン、タッチパネル、スイッチなどにより構成されている。また、入力部360は、表示部340と一体に構成されたタッチスクリーンとして構成してもよい。
入力部360に対してユーザによる入力操作がなされると、その入力に対応した制御信号が生成されて制御部310に出力される。そして、制御部310によりその制御信号に対応した演算処理や制御が行われる。
【0031】
また、管理者端末30は、管理者と紐づけられている。紐づけられているとは、例えば、その管理者が管理者端末30を使用していると想定可能な態様であることであり、例えば、管理者端末40に対し管理者のユーザアカウントにおいてログインしていること、または、単に管理者に割り当てられた管理者端末30である(その管理者がその管理者端末30を会社から貸与されている等)ことなどが挙げられるが、その形態は特に限定されない。
【0032】
[運転スコア情報処理]
以下、サーバ20によって行われる、運転スコア情報処理について説明する。
図5は、本実施形態における運転スコア情報処理のフローチャートである。
【0033】
図5に示すように、まず、サーバ20は、ネットワークNW経由で、移動体1から情報処理装置10において時系列的に取得された移動体1の位置情報を取得する(S1001)。次に、取得した位置情報に基づいて、移動体1の加速度情報を取得する(S1003)。
【0034】
位置情報に基づく加速度情報の取得方法は特に限定されないが、例えば、特許第7053087号に開示された手法を用いることができる。特許第7053087号に開示された方法について以下説明する。
【0035】
なお、加速度情報の取得にあたっては、移動体1に備えられた加速度センサにより直接取得する方法があるが、この場合、ノイズ等の影響を受けうることのほか、例えば、車のドアを閉めたり、縁石や踏切の段差を越えたりといった、移動体に対する振動や衝撃が、センサに対して直接働くため、センサ出力に悪影響を与えるといったデメリットがある。また、加速度等を取得するためのセンサーモジュールの品質がメーカー毎に違いが出やすく、例えば、加速度情報の取得にあたって、ドライブレコーダーやデジタルタコグラフ等の異なる機器を用いる場合、得られる加速度値の品質に差異が出ることがあるといったデメリットもある。これらデメリットに鑑みると、位置情報に基づいて加速度情報を取得することが好ましい。
【0036】
まず、時系列的に取得された位置情報に基づいて、速度の観測値群を取得する。位置情報に基づく速度の観測値群の取得方法は特に限定されないが、例えば、2点間のベクトルの大きさを、その時刻における速度の観測値とする方法が挙げられる。なお、それぞれの速度の観測値の取得は、対応する時刻に紐づけて行われる。
【0037】
ここで、観測値とは、何らかの状態の中にある情報を、外部から取得しようとして得られる値を意味する。通常、ノイズなどの影響により外部からは正しい値を取得することが困難であることから、ノイズなどの影響を含んだ値である。なお、観測値に基づいて算出された何らかの値(例えば、位置情報の観測値に基づいて、ノイズ等を考慮せずに算出した速度の値)も、ここでは観測値と呼ぶこととする。
また、観測値に対して、状態値という概念がある。状態値とは、何らかの状態に対応する真の値を意味する。前述の通り、ノイズなどの影響により外部からは正しい値を取得することが困難な性質を持つものであり、取得にあたってはノイズなどの影響を排除することが必要となる。
【0038】
次に、速度の観測値群に基づいて、各時刻における移動体1の進行方向における加速度の値を取得する処理を行う。具体的には、移動体1の進行方向における加速度の値の取得及び速度の状態値の取得を、速度の状態値の単位時間当たりの変位が進行方向における加速度の値であるとする状態空間モデルを設定し、それを解くことにより行う。この状態空間モデルを解くにあたり、線形的なモデルを設定しカルマンフィルタを適用する例を以下に説明するが、解く方法はこれに限られない。ここで、適用するフィルタはカルマンフィルタに限られず、例えば粒子フィルタを適用してもよいし、設定するモデルは線形的なものに限られず、非線形的なモデルとしてもよいのはもちろんである。
【0039】
速度の状態値及び進行方向における加速度の値の取得にあたり、例えば以下の状態空間モデルを設定する。
【数1】
【0040】
このモデル式に速度の観測値を紐づけられた時刻に基づいて入力し、またそれぞれの加法項は平均0のガウス分布に従うと仮定し適用することで、進行方向xにおける加速度の値を取得する。ここで、速度の状態値も取得することとしてもよい。
【0041】
すなわち、上述のカルマンフィルタを用いた、進行方向における加速度の値及び速度の状態値を取得する処理をまとめると、速度の状態値の単位時間当たりの変位が進行方向における加速度の値であるとする状態空間モデルを設定し、速度の観測値には速度の状態値に平均0のガウス分布に従う加法項(例えば、ノイズなどの影響を考慮した値)が含まれたものであると想定し、また単位時間における進行方向における加速度の値の変異は平均0のガウス分布に従うと想定して、取得した速度の観測値を状態空間モデルに順次入力していくことによって、逐次的に進行方向における加速度の値及び速度の状態値を取得するものである。
【0042】
次に、時系列的に取得された位置情報に基づいて、方位角の観測値群を取得する。位置情報に基づく方位角の観測値群の取得方法は特に限定されないが、例えば、連続する3点間により生成される角度をその時刻における方位角の観測値とする方法が挙げられる。なお、それぞれの方位角の観測値の取得は、対応する時刻に紐づけて行われる。
【0043】
そして、取得した方位角の観測値に基づいて、移動体1の角速度の値を取得する。角速度の値の取得にあたっては、前述した進行方向における加速度の値を取得する処理に類似して、方位角の状態値の単位時間当たりの変位が角速度の値であるとする状態空間モデルを設定し、かかる状態空間モデルを解くことにより行う。この状態空間モデルを解くにあたり、上記の進行方向における加速度の値及び速度の状態値を取得する処理と同様に、線形的なモデルを設定しカルマンフィルタを適用する場合を以下に説明するが、解く方法はこれに限られない。適用するフィルタはカルマンフィルタに限られず、例えば粒子フィルタを適用してもよいし、設定するモデルは線形的なものに限られず、非線形的なモデルとしてもよいのはもちろんである。
【0044】
方位角の状態値及び角速度の値の取得にあたり、例えば以下の状態空間モデルを設定する。
【数2】
【0045】
このモデル式に観測された方位角の観測値を入力し、またそれぞれの加法項の分布が平均0のガウス分布に従うと推定することで、角速度の値を取得する。ここで、方位角の状態値も取得することとしてもよい。
【0046】
すなわち、上述のカルマンフィルタを用いた角速度の値を取得する処理をまとめると、方位角の状態値の単位時間当たりの変位が角速度の値であるとする状態空間モデルを設定し、方位角の観測値には方位角の状態値に平均0のガウス分布に従う加法項が含まれたものであると想定し、また単位時間における角速度の値の変異は平均0のガウス分布に従うと想定して、取得した方位角の観測値を状態空間モデルに順次入力していくことによって、逐次的に角速度の値を取得するものである。
【0047】
そして、取得された進行方向における加速度の値と角速度の値に基づいて、垂直方向における加速度の値を取得する。垂直方向における加速度の値の取得方法は特に限定されないが、本実施形態においては、例えば、数ミリ秒から数秒といった短時間単位での加速度の値を得られればよい前提として、移動体による運動が幾何学的に求められると仮定し、速度の状態値を単位時間あたりの角速度の値に基づいて垂直方向に射影する数3の式を用いることで、垂直方向における加速度の値を求めることができる。
【0048】
【0049】
または、例えば、移動体による運動が等速円運動であると仮定して、垂直方向における加速度の値を取得することとしてもよい。この場合、数4に示すように、進行方向における加速度の値と角速度の値とを掛け合わせることにより、垂直方向における加速度の値を取得することができる。
【0050】
【0051】
このようにすることにより、時系列的に取得した位置情報に基づいて、進行方向及び垂直方向における加速度情報を取得することができる。
【0052】
ここで、上記の2つの状態空間モデルのそれぞれにおいて、加法項は平均0のガウス分布に従うこととしているが、この形態に限られない。例えば、それぞれの加法項の少なくとも一方が、0ではない平均を持つガウス分布に従うこととしてもよく、また、ガウス分布ではない、任意の分布(例えば、コーシー分布)に従うこととしてもよく、平均値の値、及び分布の種類は特に限定されない。
【0053】
そして、取得した加速度情報に基づいて、運転スコア情報を算出する(S1005)。本実施形態においては、上述の通り、所定の閾値以上の加速度情報が観測された場合には、閾値又は加速度情報の大きさに対応する点数が減点されるロジックが適用される。また、各加速度情報とその加速度情報が観測された時刻とが紐づけられており、いつどの程度の減点がなされたかが分かるようになっている。
【0054】
ステップS1005にて運転スコア情報を算出した後は、取得された運転スコア情報等に基づいて解析した結果の各出力処理を実行する(S1007)。解析及び出力処理の詳細については、以下説明する。
【0055】
<解析及び出力>
図6は、ステップS1007における解析及び出力処理により出力される情報を含んだレポート情報の一例である。
図6に示すレポート情報は、例えば、情報処理端末30の入力部360を通じてされた作成リクエストに応じて(例えば、オンデマンドで)レポート情報が作成される。そして、作成されたレポート情報は例えば表示部340に表示され、管理者等により内容が閲覧される。
【0056】
図6に示すように、レポート情報は、例えば、以下に説明する領域を含んで構成されている。
【0057】
領域U11は、レポート情報が作成される対象のユーザ(以下、「対象ユーザ」と呼ぶ)に関する情報(例えば、氏名及び所属)、並びに、レポート情報の作成対象期間(以下、「対象期間」と呼ぶ)を含んで構成されている。ここで、作成対象期間は任意に設定可能であり、設定された作成対象期間に対応する走行情報に基づいて各解析処理が行われ、各出力が行われる。
なお、作成リクエストに応じてレポート情報が作成される場合は、作成リクエストが行われた時点での最新の基準走行単位までの走行情報を用いた結果が表示されることとなるが、所定時間が経過するごとに最新のレポート情報が作成される場合においては、基準走行単位が蓄積される毎に各解析処理が行われ出力されることとなるため、リアルタイムに近い形でのレポート情報を確認することができる。
【0058】
領域U12は、対象ユーザによる対象期間における走行情報に基づいて算出された各運転関連スコア(例えば、運転スコア、加速スコア、減速スコア、ハンドルスコア)である。ここで、運転関連スコアとは、限定ではなく例として、移動体1における対象ユーザによる運転の様々な観点での品質をスコア化したものである。加速は移動体1における前方向への加速度の品質の評価値、減速は移動体1における後方向への加速度の品質の評価値、ハンドルは移動体1における左右方向への加速度の品質の評価値であり、運転スコアは加速、減速、及びハンドルの全ての加速度の品質の評価値である。
【0059】
領域U13は、対象ユーザによる対象期間における加速度情報に基づいて生成された加速度情報マップである。加速度情報マップとは、取得した加速度情報を何らかの要素に基づいてマップ化したものであり、例えば、本実施形態においては、方向及び大きさに基づいて二次元にマップ化したものが表示されている。より具体的には、取得した加速度情報について、所定の区分ごとにその発生頻度をカウントし、そのカウント値に基づいた表示を各区分の領域について行ったものである。なお、加速度マップにおける各区分における表示は、発生頻度に関するものに限られず、例えば、発生確率に基づくものであってもよい。
なお、本発明における加速度情報マップの特徴として、位置情報に基づいて加速度情報を取得している背景から、段差に乗り上げた際など、運転操作由来ではない加速度情報の観測を排除することができることに基づき、スカラ値が小さい加速度情報(例えば、0.25G以下)についても排除せず観測対象とし、加速度情報マップに反映していることが挙げられる。
【0060】
すなわち、従来であれば、加速度センサによる加速度情報を用いることにより、段差に乗り上げる等、スカラ値がある程度の大きさがありながら運転操作由来でない場合の加速度情報も含めて観測されてしまうことから、基本、取得した加速度情報は運転操作由来であるのか無いのかの区別ができず、運転操作由来であることが明らかである加速度情報(例えば、所定閾値以上のスカラー値をもつもの)でなければ、運転評価の対象からは排除せざるを得なかった。しかしながら、本発明においては、基本、取得した加速度情報は運転操作由来であるといえるため、例えばスカラ値が小さい加速度情報も考慮して運転評価等を行うことができる。
なお、急ハンドル・急加速・急減速といえるほどスカラ値が大きくはないものの、ある程度の大きさのスカラ値がある加速度情報(以降、「小規模加速度情報」という)が観測されるということは、好ましくない運転が発生している可能性がある。特に、小規模加速度情報が継続して観測されている場合は、運転者が苛立っている等、何らかの精神的な問題が発生していることが可能性の一つとして考えられるため、その要因を排除することが好ましい。従って、小規模加速度情報を検知することができれば、その旨を本人に通知することで安全運転を意識させる、対応するセミナーや訓練を受けさせる等の取り組みを行うことにより、運転品質の向上を図ることができる。
【0061】
なお、小規模加速度情報とは、例えば、スカラ値が0.25G以下であるものをいう。0.25Gを超える場合は、急ハンドル、急加速、急減速として取り扱う。
【0062】
領域U14は、対象ユーザによる対象期間における運転に関するタイムライン情報である。タイムライン情報とは、運転中に発生した各イベントについての情報をまとめたものであり、本実施形態においては、開始時刻(始まる時間)、イベント内容、イベント内容のカテゴリー、及び発生期間を出力することとしている。タイムライン情報を提供することにより、対象ユーザがどのような作業を行ったか、また、運転品質がどのようなものであったかを管理者等が確認することができる。
なお、本実施形態においては、領域U14は上述した小規模加速度情報についても言及しており、例えば、「小規模加速度情報観測期間」として、小規模加速度情報が継続的に観測された期間があったことを示している。なお、小規模加速度情報観測期間とは、例えば、小規模加速度情報が所定の頻度(例えば、1分に1回)以上の頻度で観測された期間である。
【0063】
領域U15は、対象ユーザによる対象期間における運転関連情報に含まれる位置情報に基づいて、対象ユーザが運転する移動体1の動き(運転経路)、及び、所定の運転が観測された位置を地図上にマッピングした情報である。かかる情報を提供することにより、対象ユーザがどのような移動体1の運用を行ったか、またどのような場所でどのような運転品質であったかを管理者等が確認することができる。
なお、本実施例においては、領域U14において言及された小規模加速度情報が観測された期間に対応し、かかる期間における運転経路においては、小規模加速度情報が観測されなかった期間を示す実線とは異なり、点線で示されている。なお、かかる期間における運転経路を表現するにあたっては、線の形態を異ならせることに限られず、他の運転経路における態様とは異なる態様(その他の例として、幅を太くする、色彩を異ならせる、何らかのマークを付随して表示する、等)であれば特に限定されない。
【0064】
領域U16は、対象ユーザによる対象期間における運転において、スコア減点が発生したタイミング及びその大きさを時系列的に示した情報である。すなわち、どの程度スコア減点が発生したかを時間情報に紐づけて出力したものに基づいて表示している。かかる情報を提供することにより、どのようなタイミングで、何によってスコアが下がったのかを把握することができる。
なお、ここでいう時間情報は、対応する走行情報が取得され記憶部220に記憶される時に紐づけて記憶される時間情報を用いてもよいし、出力される際の時刻を時計部240から取得して用いてもよく、特に時間情報の取得方法は限定されない。
【0065】
なお、上述したように、減点スコアではなく加減点スコアが算出された場合においては、領域U16は、対象ユーザによる対象期間における運転において、スコアの加減点が発生したタイミング及びその大きさを時系列的に示すこととしてもよい。
【0066】
また、上記の実施例では、各種の処理に係る各種のプログラムやデータが、記憶部に記憶されており、処理部がこれらのプログラムを読み出して実行することで、上記の各実施例における処理が実現された。この場合、各装置の記憶部は、ROMやEEPROM、フラッシュメモリ、ハードディスク、RAMといった内部記憶装置の他に、メモリカード(SDカード)やコンパクトフラッシュ(登録商標)カード、メモリスティック、USBメモリ、CD-RW(光学ディスク)、MO(光磁気ディスク)といった記録媒体(記録メディア、外部記憶装置、記憶媒体)を有していてもよく、これらの記録媒体に上記の各種のプログラムやデータを記憶させることとしてもよい。
【0067】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明の範囲は上記の実施形態および変形例に限定されない。また、上記の実施形態および変形例は、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更が可能である。また、上記の実施形態および変形例は、組み合わせ可能である。
【符号の説明】
【0068】
1 移動体
10 情報処理装置
20 サーバ
30 管理者端末