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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024062897
(43)【公開日】2024-05-10
(54)【発明の名称】継手部材
(51)【国際特許分類】
   E21D 11/04 20060101AFI20240501BHJP
   E21D 11/08 20060101ALI20240501BHJP
【FI】
E21D11/04 A
E21D11/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022171039
(22)【出願日】2022-10-25
(71)【出願人】
【識別番号】510202167
【氏名又は名称】Next Innovation合同会社
(72)【発明者】
【氏名】道脇 裕
【テーマコード(参考)】
2D155
【Fターム(参考)】
2D155GC04
2D155GD05
(57)【要約】
【課題】簡易な構造によって、継手部材に取り付けたアンカの延在方向を高コスト化させることなく容易に設定し得、継手部材の設置位置の自由度を向上させると共に、アンカの取付けの作業性を向上させるための手段を提供する。
【解決手段】 被接合体に埋設される継手部材であって、上記被接合体に埋設されるアンカ取付部を備え、上記アンカ取付部は、湾曲部及び/又は屈曲部を有して成る一連のアンカの一部が内設される、該アンカを挿通可能な貫通孔を有し、上記貫通孔は、上記アンカの内、該貫通孔に内設されない部分の軸が回動可能に構成される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被接合体に埋設される継手部材であって、
上記被接合体に埋設されるアンカ取付部を備え、
上記アンカ取付部は、湾曲部及び/又は屈曲部を有して成る一連のアンカの一部が内設される、該アンカを挿通可能な貫通孔を有し、
上記貫通孔は、上記アンカの内、該貫通孔に内設されない部分の軸が回動可能に構成されることを特徴とする継手部材。
【請求項2】
前記貫通孔は、内周面の少なくとも一部に、前記アンカの湾曲部分の曲率と同等以上の曲率を有する円弧状部を有すること特徴とする請求項1記載の継手部材。
【請求項3】
前記円弧状部は、前記貫通孔の周方向に沿って所定範囲に形成されることを特徴とする請求項2記載の継手部材。
【請求項4】
前記貫通孔の内径が前記アンカの外径以上であることを特徴とする請求項1記載の継手部材。
【請求項5】
前記アンカ取付部は、前記アンカの延在方向を変え得るように、前記アンカを支持することを特徴とする請求項1記載の継手部材。
【請求項6】
前記被接合体の接合面から突出する突出部と、
前記被接合体に埋設される受容部と、を更に有し、
上記突出部は、対となる他の継手部材の受容部に嵌入し、
上記受容部は、上記他の継手部材の突出部を挿入させることを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の継手部材。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二つの被接合体を接合するための継手部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、複数のプレキャストコンクリート二次製品同士、例えばシールドトンネル構築用のセグメント同士を接合させてセグメントリングを構成するために、セグメント間に継手を設けている。このような継手としては、C字状の凹溝を有する雌型継手金具と、膨出した形状の凸条部を有する雄型継手金具とからなるものがあり、凹溝に凸条部を嵌合させることによって継手を構成するものが知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-012239号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した特許文献1の継手金具は、セグメントに埋設されるアンカを固定するように構成される。また継手金具が埋設されるセグメント内部には、補強等のための鉄筋が複数配設されて継手金具の埋設において、アンカと鉄筋とが干渉しないように継手金具の設置位置を設定している。よって、アンカと鉄筋との干渉を避けるため、継手金具の設置位置が制限されてしまう。また継手金具の設置位置を如何に工夫しても鉄筋との干渉を避けられない場合があり、この様な場合は追加的処置としてアンカに対する追加工として曲げ加工等を施す必要が生じ、高コスト化するという問題がある。
【0005】
また、継手金具の位置をセグメント同士で対応させる必要があるが、継手金具の位置がズレていた場合、セグメント同士を接合させる際に上手く接合できないことや、セグメント間に隙間が生じるという問題や、正常にセグメントリングを組み立てることができない等、施工不良を引き起こしてしまうという問題がある。また継手金具にアンカを固設するときには、アンカを継手金具に対して螺合させる作業や樹脂グラウトやモルタル等をアンカと継手金具との隙間に充填する必要があり工程が煩雑な作業であって時間が掛かってしまい、作業性の低下を引き起こしてしまうという問題がある。
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑みて本発明者の鋭意研究により成されたものであり、簡易な構造によって、継手部材に取り付けたアンカの延在方向を高コスト化させることなく容易に設定し得、継手部材の設置位置の自由度を向上させると共に、アンカの取付けの作業性を向上させるための手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の継手部材は、被接合体に埋設される継手部材であって、上記被接合体に埋設されるアンカ取付部を備え、上記アンカ取付部は、湾曲部及び/又は屈曲部を有して成る一連のアンカの一部が内設される、該アンカを挿通可能な貫通孔を有し、上記貫通孔は、上記アンカの内、該貫通孔に内設されない部分の軸が回動可能に構成されることを特徴とする。
【0008】
また、本発明の継手部材は、前記貫通孔が、内周面の少なくとも一部に、前記アンカの湾曲部分の曲率と同等以上の曲率を有する円弧状部を有すること特徴とする。
【0009】
また、本発明の継手部材は、前記円弧状部が前記貫通孔の周方向に沿って所定範囲に形成されることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の継手部材は、前記貫通孔の内径が前記アンカの外径以上であることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の継手部材は、前記アンカ取付部が前記アンカの延在方向を変え得るように、前記アンカを支持することを特徴とする。
【0012】
また、本発明の継手部材は、前記被接合体の接合面から突出する突出部と、前記被接合体に埋設される受容部と、を更に有し、上記突出部は、対となる他の継手部材の受容部に嵌入し、上記受容部は、上記他の継手部材の突出部を挿入させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、簡易な構造によって、継手部材に取り付けたアンカの延在方向を高コスト化させることなく容易に設定し得、継手部材の設置位置の自由度を向上させると共に、アンカの取付けの作業性を向上させるための手段を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本実施形態に係る継手部材を示す斜視図である。
図2】本実施形態に係る継手部材を示す側面図である。
図3】継手部材を示す正面図である。
図4】継手部材の突出部側を示す平面図である。
図5】継手部材を示す断面図である。
図6】アンカを配した継手部材を示す斜視図である。
図7】アンカの回動例を示す図である。
図8】アンカの回動例を示す図である。
図9】継手部材へのアンカの取付けを示す図である
図10】連結のために対向配置される継手部材を示す図である。
図11】連結された継手部材を示す図である。
図12】継手部材のシールド工法への適用を示す図である。
図13】セグメント内部に配される鉄筋の配置例を示す説明図である。
図14】アンカ同士の接触を避けるように回動させたアンカを示す図である。
図15】鉄筋との接触を避けるように回動させたアンカを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明の実施形態に係る継手部材について説明する。図1は本実施形態に係る継手部材1を示す斜視図、図2は本実施形態に係る継手部材1を示す側面図、図3は継手部材1を示す正面図、図4は継手部材1の突出部2側を示す平面図である。
【0016】
また、以下の説明においては、図1に示すXYZ直交座標系を設定し、この直交座標系を参照しつつ各部の位置関係等について説明する。X軸は、後述する突出部2を他方の継手部材の受容部に嵌入する嵌入方向(或いは後述する受容部4に他方の継手部材の突出部を挿嵌する挿嵌方向ともいえる。)に平行となるように設定する。またY軸は、突出部2が継手部材1において突出する向きに平行となるように設定し、Z軸は、XY平面に直交する方向に設定する。
【0017】
継手部材1は、雄雌一体型継手部材であって、略同一の構造を有する他の継手部材と組み合わされて、被接合体同士を接合するための継手を構成する。即ち、継手部材1は、例えばコンクリート二次製品であるプレキャストコンクリート部材としてのセグメント(被接合体)に埋設され、同様にしてセグメントに埋設された他の継手部材と組み合わせることで、両セグメントの接合面同士を周方向に隣接させた状態で接合することができる。
【0018】
継手部材1は、被接合体100の接合面101からY方向に突出する突出部2、被接合体100に埋設される受容部4、被接合体100に埋設されて突出部2と受容部4とを接続する接続部6、アンカ50(図2参照)を取付けるアンカ取付部8等を具える。継手部材1は、突出部2を他方の継手部材の受容部に嵌入させると共に、受容部4に他方の継手部材の突出部を挿嵌させることで他の継手部材と組み合わせることができる。
【0019】
突出部2は、突出部側係合部20、連結部22等を有し、接合面101から突出している。即ち、接合面101が突出部2と接続部6との境界となるように構成することができる。突出部側係合部20は、YZ平面に略平行な平面で切った場合の断面積がX方向の先端側と後端側とで異なる形状を有する設定とすることができる。具体的には突出部側係合部20のYZ平面に平行な平面で切った場合の断面積は、嵌入方向の先端側が後端側に比して小さくなるように設定してもよい。また連結部22は、突出部側係合部20と接続部6とを連結し、Z方向に沿った幅の長さが突出部側係合部20のZ方向の長さよりも短く設定される。
【0020】
また、突出部側係合部20は、Z方向に沿った幅の長さが嵌入方向(X方向)の先端側と後端側とで異なるように設定しても良く、こうすることで突出部2を他の継手部材の受容部に嵌入し易くすることが出来る。即ち、嵌入方向の下流側が上流側よりも幅狭となるように設定することが好ましい。
【0021】
受容部4は、Y方向側の端面の一部及び、X方向の端面が開口した略凹形状を有し、Y方向側の一端面が露出し、且つ該一端面を接合面101と略面一になるように或いは接合面101に対して落ち込むようにセグメント102に埋設することが出来る。勿論、受容部4は、その一部又は全部が接合面101よりY方向正向き側に突出するように配されていてもよい。
【0022】
また、受容部4は、Z方向に対向配置された一対の側壁40a、開口部42、係合部44等を含んで構成される。側壁40aは、X方向に沿って延在し、受容部4に嵌入する突出部の移動(嵌入)を案内する。開口部42は、図2に示す側壁40aのX方向負側の端部に存し、他の継手部材の突出部を挿入可能とする大きさで開口する。
【0023】
係合部44は、各側壁40aの縁部からZ方向に沿って受容部4のY方向の開口を狭めるように突出させることが好ましい。即ち、係合部44は、互いに先端部間の間隙を狭めるように突出することが出来る。よって係合部44は、受容部4に嵌入した他の継手部材の突出部側係合部と係合し得、他の継手部材のY方向の移動を規制する。なお、係合部44間の間隙は、他の継手部材の連結部が進入可能な長さに設定される。
【0024】
係合部44は、接合面101からY方向負向きに変位させた位置に配される。なお、係合部44は、Y方向の端面が接合面101と面一となるように配設してもよく、或いは、接合面101よりY方向正向き側に突出させて配設してもよい。
【0025】
受容部4は、側壁40a、開口部42、開口部42にX方向に対向する端面46により画定される空間が開口部42に挿入された他の継手部材の突出部を受容する断面凹状の受容空間となる。また、受容空間の形状は、他の継手部材の突出部の形状とほぼ同一であり、受容空間は他の継手部材の突出部を完全に収容し得るように設定可能である。
【0026】
アンカ取付部8は、受容部4のY方向負向き側において、アンカを挿通させて内設し得るようにX方向に貫通させた貫通孔を有する。また、アンカ取付部8は、接続部6に対し突出部2のY方向における反対側に形成される。またアンカ取付部8の貫通孔は、継手部材1内に確実にアンカを挿通させ得る形状を有し、且つ内周面の一部がアンカに密着乃至面状に接触し得る形状を有する構成とすることが好ましい。
【0027】
図5は、継手部材1を示す断面図であり、アンカ取付部8は、内周面の少なくとも一部にアンカの形状に対応した形状部分、本実施形態においては湾曲状とした湾曲部分を有する。即ち、アンカ取付部8は、内周面の一部を湾曲部分とすることで、U字形アンカのU形に曲げられた箇所の内周側に密着又は面状に接触し得る。
【0028】
具体的には、図5に示す継手部材1のXY平面に平行な断面において、アンカ取付部8の貫通孔の内面のY方向正向き側はX方向と略平行に略直線状に延びる直線状部8aを成す。勿論、直線状部8aは必ずしも直線でなければならないというものではなく、少なくともアンカの直線状の部分が挿通し得る形状であれば、X方向の中間部に向かって傾斜状を成す略V字状等に屈曲した形状や略U字状等に湾曲した形状を含んだ形状を有していてもよいことは言うまでもない。
【0029】
また直線状部8aに対向するY方向負向き側は略円弧状に湾曲した円弧状部8bを成すが、略円弧状に湾曲した形状に限定するものでは無く、少なくともU字形アンカのU形に曲げられた箇所を挿通し得る形状であれば略V字形に屈曲した形状や略U字形に湾曲させた形状等であってもよいことは言うまでもない。
【0030】
アンカ取付部8は、直線状部8aを有することにより、U字形アンカの直線部を挿通させることが出来る。また、アンカ取付部8は、円弧状部8bを有することにより、U字形アンカの湾曲部分を挿通させることが出来る。即ち、円弧状部8bの略円弧形状は、U字形アンカの湾曲部分の曲率と同等以上の曲率となるように設定される。
【0031】
更に、円弧状部8bは、U字形アンカの湾曲部分を面状に広く支持し、外力によるU字形アンカから受ける荷重の支圧応力を分散させて緩和することが出来る。また円弧状部8bは、U字形アンカをXY平面に沿って回動し得るように配置することが出来る。
従って、貫通孔は、直線部及び曲線部及び/又は屈曲部を有する一連を成すアンカの内、該貫通孔に内設されない部分の軸が回動可能に構成される。そのため、貫通孔に挿通されるアンカは、該貫通孔に内設されない部分の軸が回動し得るように、アンカ取付部8に内設されて支持、固定し得る。
【0032】
なお、アンカ取付部8の貫通孔の内径は、X方向(孔が貫通している方向)に沿って異なるように設定してもよい。即ち、アンカ取付部8の貫通孔は、X方向において、両端部を中央部に比して拡開させると共に、中央部の内径をアンカの外径以上の内径で十分な間隙を設定することが好ましい。
【0033】
また、アンカ取付部8に挿通されるアンカは、例えば異形棒鋼が有り得るが、勿論素材や形状は特に限定されるものではない。従って、ねじ節鉄筋や丸棒等を基材として形成されたアンカを配してもよい。ここではアンカは、U形に折り曲げた形状を有するものとすることが好ましい。
なお、アンカ取付部8の延伸方向や、湾曲箇所の曲率半径等は、特に限定するものではなく、アンカの形状(例えば、直線形状、L字形状、U字形状、V字形状、J字形状等)に応じて適宜設定する。
【0034】
アンカ取付部8にはアンカ50が挿入され、図6に示すように継手部材1にアンカ50が取付けられる。このとき、アンカ50は、単にアンカ取付孔8に挿通されているだけなので、アンカ取付孔8内でYZ平面に沿って(X軸周りに)回動可能に配される(例えば、図7参照。)。
【0035】
また、アンカ50が継手部材1に対して相対回転し得る向きは、Z方向に沿った向きに限定するものではなく、上述したようにアンカ50がアンカ取付部8内でXY平面に沿って(Z軸周りに)回動し得る。即ち、図8(a)に示すアンカ50の湾曲部分がアンカ取付部8内に存し、アンカ50の直線部がY方向に沿って延在している状態からXY平面に沿って反時計回りに回転し得、同様に図8(b)に示すアンカ50の直線部がY方向に沿って延在している状態からXY平面に沿って時計回りにも回転し得る。
また、アンカ50外径は、アンカ取付部8の貫通孔の内径よりも小さい為、アンカ50の直線部をアンカ取付部8に挿通させた状態では、アンカ50をX軸周りに回転させることが出来る。
【0036】
なお、アンカ取付部8の円弧状部8bは、アンカ取付部8の貫通孔の内周面の内、Y方向負側にのみ形成しているが、形成範囲はこれに限定するものでは無い。例えば、円弧状部8bをアンカ取付部8の貫通孔の内周方向の全域に形成してもよい。即ち、円弧状部8bを全周に形成してアンカ取付部8の貫通孔をラッパ形に開口させることで、アンカ取付部8に支持されている箇所を中心としてアンカ50をX軸周りに360度回転させることができる。
【0037】
継手部材1に対するアンカ50の取付は、図9(a)に示すように、アンカ50の直線部をアンカ取付部8に挿入する。アンカ取付部8は、直線状部8aを設けたことによってアンカ50の直線部に干渉しないため、アンカ50の直線部を挿入することが出来る。次に図9(b)に示すように、アンカ50の湾曲部分をアンカ取付部8に挿入する。アンカ取付部8は、円弧状部8bを設けたことによってアンカ50の湾曲部分が円弧状部8bに沿ってアンカ50を変位させ得、結果アンカ50に干渉しないため、アンカ50の湾曲部分を挿入することが出来る。
【0038】
継手部材1同士の連結は、図10に示す一方の突出部2を他方の受容部4に挿入すると共に、一方の受容部4に他方の突出部2を嵌入させるように、継手部材1同士を相対移動させることにより行われる。結果、図11に示すように継手が構成されて、継手部材1同士は、互いにY方向及びZ方向の変位を規制するように係合する。
【0039】
なお継手は、図12に示すような地中にトンネルを構築するシールド工法にも適用することができる。セグメント202を工事現場にて順次周方向に接合しつつ、軸方向にも接合してリング204状に製作し、トンネル200を構築する。また図11において、短い直線で記号的に示した継手206によってセグメント202同士が接合しており、該継手206は、本発明の継手部材1の組み合わせによって構成し得るものである。
【0040】
図13は、セグメント内部に配される鉄筋の配置例を示す説明図である。図13に示すようにセグメント内部には複数の鉄筋150等を組み合わせた鉄筋かごやそれに類するものが埋設される。更にセグメントには複数の継手部材1が配され、セグメントのY方向(接合方向)の両端部にそれぞれ継手部材1が配列される。このような継手部材1のアンカ50は、セグメント内でY方向に沿って延在する為、セグメントのY方向両端部に配される各継手部材1のアンカ50同士が干渉することがあり得る。また、トンネルを構築する為のセグメント等のような全体が円弧形状を有するセグメントの場合、該円弧形状に沿う湾曲形状の鉄筋150が配されることがあり、継手部材1から直線状に延びるアンカ50が鉄筋150に干渉することがあり得る。
【0041】
そこで、セグメントのY方向両端部に配される各継手部材1のアンカ50同士が干渉する場合には、図14に示すように継手部材1に対してアンカ50をXY平面に沿って回動させ、Y軸に対して傾斜させた向きにすることで、アンカ50同士の干渉を回避することが出来る。
【0042】
また、継手部材1のアンカ50が鉄筋150に干渉する場合には、YZ平面に沿ってアンカ50を回動させて鉄筋150を回避することが出来る。即ち、図15の二点鎖線で示すY軸と略平行に延在させたアンカ50が鉄筋150に干渉する場合、アンカ50の継手部材1内に挿通されている部分を中心にアンカ50を回動させる。これにより例えば、アンカ50の先端側をZ方向正向きに変位させてアンカ50が鉄筋150と干渉するのを回避することが出来る。
このように、継手部材1は、アンカ50が回動可能であるため、継手部材1をセグメントで所望の位置に配置しつつ、アンカ50がセグメントに埋設される鉄筋や他の継手部材のアンカに接触するのを避けることが出来る。
【0043】
以上説明したように、アンカ取付部にアンカを挿通させるだけで継手部材にアンカを取付けることができる為、アンカの取付作業にかかる時間を短縮できる。また既存のアンカのような継手部材に螺合してアンカを固定する場合の螺合作業の手間を省くことができるので、アンカ取付の作業性を向上させることができる。更に、既存のアンカのような継手部材に螺合して固定すると、継手部材に対するアンカ向きを曲げ加工等に依らないと変えることができなかった。しかし本発明ではアンカ取付部内でアンカを回動可能に配しているので、アンカがセグメント(被接合体)内の鉄筋等に対して干渉しない位置に退避させることができるので、継手部材の位置を所望の位置に設定できて設置自由度を高めることが出来る。
【0044】
更に、従来セグメントの作成の際に必須であった、アンカが鉄筋等に干渉する場合のアンカの曲げ加工等の追加処置によるセグメント作成の高コスト化を避けることが出来、セグメント作成における低コスト化及び施工性の向上を図ることが出来る。
【0045】
なお、継手部材の材料は、所望の強度、製造コスト、セグメント等のプレキャストコンクリート二次製品が使用される環境条件等に応じて種々のものを使用することができ、勿論、継手部材1は金属の他、合成樹脂、木、紙、ガラス、セラミックス、ゴム或いはこれらの複合材料など適宜の材料を用いて適宜の製造方法で形成することが可能である。
【0046】
また本発明の継手部材は、セグメント以外の被接合体に適用することができ、適用可能な被接合体の材質としては、例えば、コンクリート、金属、合成樹脂、木材等である。被接続部材の形状としては、例えば、板状、柱状、ブロック状等の同種のもの同士或いは異なる種類の部材の接合に適用することができる。また、上記に例示したシールドセグメントの他に、プレキャストによるコンクリート部材(プレキャストコンクリート部材)一般、家具一般、住宅フレーム材等を含む土木用及び/又は建設や建築用の建材、各種機械等のあらゆる物品に適用することができる。
【0047】
また、本発明の継手部材は、少なくともアンカ取付部を有するものであればよく、上述した雄雌一体型継手部材に限定するものではない。従って、所謂雌型継手部材や、雄型継手部材に適用することも出来、またアンカを固定する構造を有する継手部材であれば、何れの継手部材であっても適用して上記と同様の機能を有することが出来る。
【0048】
また、上記実施形態において、継手部材は、アンカ取付部によってアンカの湾曲している部分を保持しているが、保持する部分を湾曲部分に限定するものではなく、直線状に延びている部分を保持するようにアンカに対して継手部材の配設位置を設定してもよい。
【符号の説明】
【0049】
1…継手部材、2…突出部、4…受容部、6…接続部、8…アンカ取付部、20…突出部側係合部、22…連結部、40a…側壁、42…開口部、44…係合部、50…アンカ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15