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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024062903
(43)【公開日】2024-05-10
(54)【発明の名称】水中油型乳化化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/49 20060101AFI20240501BHJP
   A61K 8/04 20060101ALI20240501BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20240501BHJP
   A61K 8/92 20060101ALI20240501BHJP
   A61K 8/63 20060101ALI20240501BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20240501BHJP
【FI】
A61K8/49
A61K8/04
A61K8/37
A61K8/92
A61K8/63
A61Q19/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022187843
(22)【出願日】2022-11-25
(31)【優先権主張番号】P 2022170644
(32)【優先日】2022-10-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】593106918
【氏名又は名称】株式会社ファンケル
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100194803
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 理弘
(72)【発明者】
【氏名】藤原 蓉子
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA121
4C083AA122
4C083AB032
4C083AC112
4C083AC122
4C083AC172
4C083AC302
4C083AC351
4C083AC352
4C083AC391
4C083AC442
4C083AC851
4C083AC852
4C083AD092
4C083AD152
4C083AD212
4C083AD352
4C083AD491
4C083AD492
4C083AD572
4C083AD662
4C083CC05
4C083DD23
4C083DD27
4C083DD33
4C083EE06
(57)【要約】
【課題】ナイアシンアミドを高含有する水中油型乳化化粧であって、べたつき感を抑制しながらも、ハリ感を向上し、コク感、もっちり感、やわらかさ、といった使用感に優れた化粧料を提供すること。
【解決手段】下記(A)~(D)を含む水中油型乳化化粧料。
(A)ナイアシンアミド 1~10重量%
(B)トリグリセリドである植物油
(C)固形の 高級アルコール脂肪酸エステル
(D)ダイマー酸フィトステリル誘導体
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)~(D)を含む水中油型乳化化粧料。
(A)ナイアシンアミド 1~10重量%
(B)トリグリセリドである植物油
(C)固形の高級アルコール脂肪酸エステル
(D)ダイマー酸フィトステリル誘導体
【請求項2】
(C)が、パルミチン酸セチル、ミリスチン酸ミリスチル、ステアリン酸ステアリルから選ばれる1以上である請求項1に記載の水中油型乳化化粧料。
【請求項3】
(C)を0.1~5重量%、(D)を0.01~3重量%含む請求項1または2に記載の水中油型乳化化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中油型乳化化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
ナイアシンアミドは、別名ニコチンアミド(nicotin amide)/ナイアシン/ビタミンB3とも呼ばれる、ニコチン酸のアミド化合物である。ナイアシンアミドは水溶性ビタミンで、ビタミンB群の一つである。ナイアシンアミドが欠乏するとペラグラなどの欠乏症となる。ナイアシンアミドは、外用薬の成分としてニキビ(尋常性ざ瘡)の治療や、美容目的で化粧品に配合される。日本では、医薬部外品の化粧品に、シワ改善の有効成分(リンクルナイアシン)、美白作用の有効成分(ニコチン酸アミド)として承認されている。
【0003】
ナイアシンアミドは、シワ改善の有効成分としてスキンケア化粧料等にしばしば配合されており、ナイアシンアミドにより、シワ改善、肌のハリ感や弾力を付与するためには3~7重量%ほどの高い配合が求められる。しかし、ナイアシンアミドを高含有すると使用感が低下することが知られており、経験的には3重量%以上含有すると使用感の低下が認識される。
【0004】
本発明者は、水中油型乳化化粧料の組成中に植物油脂を含有させると「肌がもっちりする」、「コク感がでる」、「やわらかい」という優れた使用感が実現できることを経験していた。
【0005】
植物油脂を含有した水中油型乳化化粧料に、さらにナイアシンアミドを主剤として5%含有させて医薬部外品化を検討したところ、やはり、ナイアシンアミド特有のべたつき感が強調された使用感になるとともに、植物油脂による「もっちり感」、「コク感」、「やわらかさ」が損なわれるという問題が発生した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、ナイアシンアミドを高含有する水中油型乳化化粧であって、べたつき感を抑制しながらも、ハリ感を向上し、コク感、もっちり感、やわらかさ、といった使用感に優れた化粧料を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の課題を解決するための手段は、以下のとおりである。
1.下記(A)~(D)を含む水中油型乳化化粧料。
(A)ナイアシンアミド 1~10重量%
(B)トリグリセリドである植物油
(C)固形の高級アルコール脂肪酸エステル
(D)ダイマー酸フィトステリル誘導体
2.(C)が、パルミチン酸セチル、ミリスチン酸ミリスチル、ステアリン酸ステアリルから選ばれる1以上である1.に記載の水中油型乳化化粧料。
3.(C)を0.1~5重量%、(D)を0.01~3重量%含む1.または2.に記載の水中油型乳化化粧料。
【発明の効果】
【0008】
本発明の水中油型乳化化粧料は、べたつきを抑制しながらハリ感を向上させることができ、コク感、もっちり感、やわらかさ、といった使用感に優れている。本発明の水中油型乳化化粧料は、「もっちり感」・「やわらかさ」と、「ハリ感」という相反する効果を両立することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、下記(A)~(D)を含む水中油型乳化化粧料に関する。
(A)ナイアシンアミド 1~10重量%
(B)トリグリセリドである植物油
(C)固形の高級アルコール脂肪酸エステル
(D)ダイマー酸フィトステリル誘導体
なお、本明細書において、「X~Y」(X、Yは数値)との表記は、その両端を含む数値範囲を意味する。
【0010】
(A)ナイアシンアミド
(A)成分であるナイアシンアミドは、ニコチン酸のアミド化合物であり、別名ニコチン酸アミド(ビタミンB3/ナイアシン)ともいう水溶性ビタミンである。ナイアシンアミドは、天然物(米ぬかなど)からの抽出物であってもよく、公知の方法によって合成した物でもよく、具体的には、第15改正日本薬局方2008に収載されているものを用いることができる。ナイアシンアミドには、シワ改善効果に加えて血行促進作用や、肌荒れ改善作用、メラニン生成抑制作用や美白効果が知られている。
【0011】
本発明の化粧料において、(A)成分の含有量は、化粧料全体に対して、1~10重量%である。(A)の含有量は、化粧料全体に対し2重量%以上であることが好ましく、3重量%以上であることがより好ましく、4重量%以上であることがさらに好ましく、また、9重量%以下であることが好ましく、8重量%以下であることがより好ましく、7重量%以下であることがさらに好ましく、6重量%以下であることがよりさらに好ましい。(A)ナイアシンアミドの含有量は、化粧料全体に対して、3~7重量%であると好ましい。
【0012】
(B)トリグリセリドである植物油
(B)成分は、植物から得られる、1つのグリセリンに3つの脂肪酸がついたトリグリセリドである植物油(植物油脂)であり、常温で液体の油、常温で固体の脂のいずれでもよい。植物油であっても、トリグリセリドではない植物油、例えば、不飽和脂肪酸と不飽和アルコールとのエステルであるホホバ油は、本発明の(B)成分ではない。
【0013】
(B)トリグリセリドである植物油としては、マカデミアナッツ油、メドゥフォーム油、ひまわり油、ヤシ油、オリーブ油、アボカド油、ククイナッツ油、シア脂等が挙げられ、これらの1種または2種以上を混合して使用することができる。
本発明の化粧料において、(B)成分の含有量は、化粧料全体に対して、1~10重量%であることが好ましい。(B)の含有量は、化粧料全体に対し2重量%以上であることが好ましく、3重量%以上であることがより好ましく、また、9重量%以下であることが好ましく、8重量%以下であることがより好ましく、7重量%以下であることがさらに好ましく、6重量%以下であることがよりさらに好ましい。(B)トリグリセリドである植物油の含有量は、化粧料全体に対して、2~6重量%であると好ましい。
【0014】
(C)固形の高級アルコール脂肪酸エステル
(C)成分は、高級アルコール脂肪酸エステルのうち、固形のものである。ここで、本明細書において、固形とは、融点が30℃以上のものを意味する。
(C)成分としては、パルミチン酸セチル(融点55℃)、ミリスチン酸ミリスチル(融点41℃)、ステアリン酸ステアリル(融点62℃)が例示でき、これらの1種または2種以上を混合して使用することができる。融点が40~65℃の高級アルコール脂肪酸エステルであるパルミチン酸セチル(融点55℃)、ミリスチン酸ミリスチル(融点41℃)、ステアリン酸ステアリル(融点62℃)が好ましい。
本発明の化粧料において、(C)成分の含有量は、化粧料全体に対して、0.1~5重量%程度であることが好ましい。(C)の含有量は、化粧料全体に対し0.2重量%以上であることがより好ましく、0.3重量%以上であることがさらに好ましく、また、4重量%以下であることがより好ましく、3重量%以下であることがさらに好ましく、2重量%以下であることがよりさらに好ましい。(C)固形の高級アルコール脂肪酸エステルの含有量は、化粧料全体に対して、0.3~2重量%であると好ましい。
【0015】
(D)ダイマー酸フィトステリル誘導体
(D)成分は、ダイマー酸のフィトステロールのエステルの誘導体である。
ダイマー酸とは、ダイマージリノール酸の略称であり、2分子のリノール酸[(9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエン酸]等の不飽和脂肪酸を重合させたリノール酸の2量体である。リノール酸の重合反応の生成物にはリノール酸の2量体の他に、未反応のリノール酸や3量体、さらに高重合のリノール酸重合体が含まれる。分子蒸留によりリノール酸の2量体の含有量を90重量%以上に高めることができる。また、得られたリノール酸の2量体の不飽和結合に水素を添加して安定化させることができる。これらのリノール酸の2量体を水素添加したものは、一般的には水添ダイマー酸と呼ばれている。
(D)成分であるダイマー酸フィトステリル誘導体の合成に用いるダイマージリノール酸としては、これらのダイマー酸、及び、水添ダイマー酸の何れをも使用することができるが、酸化安定性の観点から水添ダイマー酸を使用することがより好ましい。水添ダイマー酸は市販品、例えばユニケマ社PRIPOL1006、PRIPOL1009、PRIPOL1025等を用いることが可能である。
【0016】
フィトステロールは、植物に含まれるステロールの総称であり、主な成分としてはβ-シトステロール、スチィグマステロール、カンペステロール、ブラシカステロール等が知られている。
(D)成分であるダイマー酸フィトステリル誘導体の合成に用いるフィトステロールとしては、これらに限定されず、植物から得られるステロールであれば特に制限することなく用いることができる。また、複数のフィトステロールの混合物でもよい。
【0017】
(D)成分としては、具体的には、ダイマージリノール酸ジ(イソステアリル/フィトステリル)、ダイマージリノール酸(フィトステリル/イソステアリル/セチル/ステアリル/ベヘニル)等が挙げられる。
ダイマージリノール酸ジ(イソステアリル/フィトステリル)の濃度は0.01~3重量%、好ましくは0.05~0.5重量%程度であることが確かめられた。
(D)成分の含有量は、化粧料全体に対して、0.01~3重量%程度であることが好ましい。(D)の含有量は、化粧料全体に対し0.02重量%以上であることがより好ましく、0.05重量%以上であることがさらに好ましく、また、1重量%以下であることがより好ましく、0.6重量%以下であることがさらに好ましい。(D)ダイマー酸フィトステリル誘導体の含有量は、化粧料全体に対して、0.02~0.6重量%であると好ましい。
【0018】
本発明の水中油型乳化化粧料においては、(D)ダイマー酸フィトステリル誘導体の含有量は、(C)固形の高級アルコール脂肪酸エステルの含有量を超えないことが好ましい。(D)成分の含有量が(C)成分の含有量を超えると、(D)成分のべたつきが感じられるようになり、(A)ナイアシンアミドのべたつきを抑える効果が発揮できない恐れが高まるので好ましくない。(C)固形の高級アルコール脂肪酸エステルの含有量と(D)ダイマー酸フィトステリル誘導体の含有量の重量比率(C):(D)は、1:0.02~1:0.6であると好ましい。
【0019】
本発明の化粧料は、(A)~(D)成分以外に、本発明の効果を妨げない範囲で、水中油型乳化化粧料に常用される各種原料、例えば、乳化剤、エタノール、保湿成分、増粘剤、キレート剤、pH調整剤、中和剤、防腐剤、酸化防止剤、香料、着色剤(例えばシアノコバラミン)、美容成分(例えばローズマリーエキス)、ビタミン類等の機能成分を含有することができる。
【実施例0020】
本試験で用いた試料は以下のとおりである。
<試料>
(A)ナイアシンアミド
(B)トリグリセリドである植物油(植物油脂)
マカデミアナッツ油(日本サーファクタント工業、NIKKOL マカデミアンナッツ油、マカデミアナッツ油)
メドウフォーム油(クローダジャパン、CROPURE MEADOWFOAM-LQ、メドウフォーム油)
ひまわり油(International Flora Technologies, Ltd.(米)、FLORASUN 90、ヒマワリ種子油)
ヤシ油(日光ケミカルズ、NIKKOL Trifat C-24、ヤシ油)
【0021】
(C)固形の高級アルコール脂肪酸エステル
パルミチン酸セチル(BASFジャパン、Cutina CP-JP、パルミチン酸セチル):(融点55℃)
ミリスチル酸ミリスチル(日光ケミカルズ、NIKKOL MM、ミリスチン酸ミリスチル):(融点41℃)
ステアリン酸ステアリル(高級アルコール工業、アムレプス SS、ステアリン酸ステアリル):(融点62℃)
(D)ダイマー酸フィトステリル誘導体
ダイマージリノール酸ジ(イソステアリル/フィトステリル)(日本精化、LUSPLAN PI-DA、ダイマージリノール酸ジ(イソステアリル/フィトステリル))
ダイマージリノール酸(フィトステリル/イソステアリル/セチル/ステアリル/ベヘニル)(日本精化、Plandool-S、ダイマージリノール酸(フィトステリル/イソステアリル/セチル/ステアリル/ベヘニル))
【0022】
ホホバ油(香栄工業、精製ホホバ油、ホホバ油:トリグリセリドではない)
水添レシチン(日本サーファクタント工業、NIKKOL レシノールS-10M、水添レシチン)
カルボマー(和光純薬工業、ハイビスワコー105、カルボマー)
スクレロチウムガム(Alban Muller International、AMIGEL、スクレロチウムガム)
アルカリゲネス産生多糖体(伯東、アルカシーラン、アルカリゲネス産生多糖体)
ラウロイルグルタミン酸ジ(オクチルドデシル/フィトステリル/ベヘニル)(味の素、エルデュウPS-306、ラウロイルグルタミン酸ジ(オクチルドデシル/フィトステリル/ベヘニル))
マカデミアナッツ脂肪酸フィトステリル(日本精化、Plandool-MAS、マカデミアナッツ脂肪酸フィトステリル)
ジメチコン(東レ・ダウコーニング、DOWSIL(TM) SH 200 C Fluid 50 cSt、ジメチコン)
ポリソルベート60(日本サーファクタント工業、NIKKOL TS-10V、ポリソルベート60)
SIMULGEL EG(SEPPIC社製、(アクリル酸Na/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマー、イソヘキサデカン、ポリソルベート80、水、オレイン酸ソルビタンを含む混合原料)
【0023】
<調製方法>
表1~3に示す組成で、水相と、乳化剤(SIMULGEL EG)を含んだ油相をそれぞれ85℃に加温し、ホモミクサーで攪拌しながら油相中に水相をゆっくりと添加しながら攪拌した。そして、35℃まで冷却後、水酸化カリウムで中和することにより、各水中油型乳化化粧料を調製した。
【0024】
【表1】
【0025】
【表2】
【0026】
【表3】
【0027】
<試験方法>
上記の方法で得た水中油型乳化化粧料について、「ハリ感」・「べたつき」・「やわらかさ」・「コク感」・「もっちり感」について以下の評価方法にて評価を行った。
・ハリ感
専門パネラー3名の合議により、各水中油型乳化化粧料を前腕内側部に約0.3mL塗布した直後のハリ感について下記の評点の付け方にて官能評価を実施し、以下のような評点を付けた。
◎:ハリ感を感じる
○:ハリ感をやや感じる
△:ハリ感をわずかに感じる
×:ハリ感を感じない
・べたつき
専門パネラー3名の合議により、各水中油型乳化化粧料を前腕内側部に約0.3mL塗布した直後のべたつきについて下記の評点の付け方にて官能評価を実施し、以下のような評点を付けた。
◎:べたつきを感じない
○:べたつきをほとんど感じない
△:べたつきをわずかに感じる
×:べたつきを感じる
【0028】
・コク感
専門パネラー3名の合議により、各水中油型乳化化粧料を前腕内側部に約0.3mL出し、伸ばし広げる時のコク感について下記の評点の付け方にて官能評価を実施し、以下のような評点を付けた。コク感とは、塗布時に、厚みのある使用感のことであり、剤の厚みが感じられ、手と肌が接触しない感覚である。
◎:コク感を感じる
〇:コク感をやや感じる
△:コク感をわずかに感じる
×:コク感を感じない
・もっちり感
専門パネラー3名の合議により、各水中油型乳化化粧料を前腕内側部に約0.3mL塗布した直後のもっちり感(手が肌に吸い付くような感じ)について下記の評点の付け方にて官能評価を実施し、以下のような評点を付けた。
◎:もっちり感を感じる
〇:もっちり感をやや感じる
△:もっちり感をわずかに感じる
×:もっちり感を感じない
・やわらかさ
専門パネラー3名の合議により、各水中油型乳化化粧料を前腕内側部に約0.3mL塗布し、直後の肌のやわらかさについて下記の評点の付け方にて官能評価を実施し、以下のような評点を付けた。
◎:やわらかさを感じる
〇:やわらかさをやや感じる
△:やわらかさをわずかに感じる
×:やわらかさを感じない
【0029】
「結果」
実施例1と比較例1~4の結果より、(A)ナイアシンアミドがハリ感に寄与していること、(B)植物油脂がやわらかさやコク感、もっちり感に寄与していること、(C)パルミチン酸セチルはハリ感やコク感に寄与していること、(D)ダイマージリノール酸ジ(イソステアリル/フィトステリル)はべたつき抑制やハリ感に寄与していることが確かめられた。
実施例1~4の結果より、(B)植物油として、マカデミアナッツ油、メドゥフォーム油、ヒマワリ油、ヤシ油等が、同様の効果を奏することが確かめられた。
実施例1、8、9の結果より、(C)固形の高級アルコール脂肪酸エステルとして、パルミチン酸セチル、ミリスチン酸ミリスチル、ステアリン酸ステアリル等が、同様の効果を奏することが確かめられた。
【0030】
実施例1と比較例5、6の結果より、(C)固形の高級アルコール脂肪酸エステルを、他の固形の高級アルコールや脂肪酸に代替しても、同様の効果が得られないことが確かめられた。
実施例1、12と比較例7、8の結果より、(D)ダイマー酸のフィトステリル誘導体は、ダイマージリノール酸ジ(イソステアリル/フィトステリル)やダイマージリノール酸(フィトステリル/イソステアリル/セチル/ステアリル/ベヘニル)で同様の効果があり、トリエチルヘキサノインやイソステアリン酸イソステアリル等の他のエステル油に代替すると同様の効果が得られないことが確かめられた。
【0031】
実施例1、5、6、7の結果より、(C)固形の高級アルコール脂肪酸エステルであるパルミチン酸セチルの濃度は0.1~5重量%程度、好ましくは0.3~2重量%程度であること、実施例1、10、11の結果より、(D)ダイマージリノール酸ジ(イソステアリル/フィトステリル)の濃度は0.01~3重量%、好ましくは0.05~0.5重量%程度であることが確かめられた。
【0032】
処方例1:乳液(医薬部外品) (重量%)
1.水 残余
2.ナイアシンアミド 5
3.カルボマー 0.05
4.スクレロチウムガム 0.02
5.アルカリゲネス産生多糖体 0.01
6.BG 7
7.ペンチレングリコール 1.5
8.フェノキシエタノール 0.3
9.エチルヘキシルグリセリン 0.1
10.クエン酸 適量
11.マカデミアナッツ油 8
12.水添レシチン 0.4
13.ラウロイルグルタミン酸
ジ(オクチルドデシル/フィトステリル/ベヘニル) 4
14.マカデミアナッツ脂肪酸フィトステリル 0.8
15.パルミチン酸セチル 0.8
16.グリセリン 10
17.ポリソルベート60 0.3
18.ジメチコン 2
19.SIMULGEL EG 0.7
20.ダイマージリノール酸ジ(イソステアリル/フィトステリル) 0.1
21.トコフェロール 0.01
22.水酸化K 0.01
常法により処方例1の乳液を調製した。得られた乳液(水中油型乳化化粧料)は、べたつかずハリ感に優れ、コク感、もっちり感、やわらかさに優れていた。該乳液は「もっちり感」・「やわらかさ」と、「ハリ感」という一般的には相反するとされる効果を両立していた。