(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024062909
(43)【公開日】2024-05-10
(54)【発明の名称】CaMK2γタンパク質活性の阻害における化合物又はその薬用誘導体の使用
(51)【国際特許分類】
A61K 31/55 20060101AFI20240501BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240501BHJP
A61P 17/06 20060101ALI20240501BHJP
【FI】
A61K31/55
A61P43/00 111
A61P17/06
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022203696
(22)【出願日】2022-12-20
(31)【優先権主張番号】202211316391.9
(32)【優先日】2022-10-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】521557687
【氏名又は名称】孫 良丹
【氏名又は名称原語表記】SUN Liangdan
【住所又は居所原語表記】218 Jixi Road, Shushan District, Hefei City, Anhui Province 230022, China
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】甄 ▲ち▼
(72)【発明者】
【氏名】陳 微微
(72)【発明者】
【氏名】王 義睿
(72)【発明者】
【氏名】李 卓
(72)【発明者】
【氏名】孫 良丹
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB11
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA05
4C086MA13
4C086MA27
4C086MA35
4C086MA37
4C086MA38
4C086MA52
4C086MA60
4C086MA66
4C086NA14
4C086ZA89
4C086ZC41
(57)【要約】 (修正有)
【課題】本発明は、タンパク質阻害薬の技術分野に属し、具体的には、CaMK2γタンパク質活性の阻害における化合物又はその薬用誘導体の使用を提供する。
【解決手段】式Iで表される、化合物の使用を提供する。
【効果】本化合物は、従来の広域スペクトル免疫調節剤に比べてより強い標的化作用を有し、より正確、快速、有効、安全、安定的であり、CaMK2γヒトタンパク質及びマウスタンパク質との結合力は非常に高く、従来の生物学的阻害剤に比べて保存されやすく、活性が安定し、分子量が小さく、生産コストが低く、吸収されやすい。
【選択図】
図13
【特許請求の範囲】
【請求項1】
CaMK2γタンパク質活性の阻害における化合物又はその薬用誘導体の使用であって、前記化合物は、下式Iで表されることを特徴とする、使用。
【請求項2】
前記化合物は、薬学的に許容される塩の形態であることを特徴とする、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記化合物は、薬学的に許容される酸付加塩の形態であることを特徴とする、請求項2に記載の使用。
【請求項4】
CaMK2γタンパク質活性を阻害するための薬物における化合物又はその薬用誘導体の使用であって、前記化合物は、下式Iで表されることを特徴とする、使用。
【請求項5】
前記CaMK2γタンパク質活性を阻害するための薬物は、乾癬病変組織のCaMK2γタンパク質活性を阻害する薬物であることを特徴とする、請求項4に記載の使用。
【請求項6】
前記化合物は、薬学的に許容される塩の形態であることを特徴とする、請求項4又は5に記載の使用。
【請求項7】
前記化合物は、薬学的に許容される酸付加塩の形態であることを特徴とする、請求項6に記載の使用。
【請求項8】
前記CaMK2γタンパク質活性を阻害する薬物の剤形は、カプセル剤、錠剤、経口剤、マイクロカプセル剤、注射剤、坐剤、噴霧剤又は軟膏剤であることを特徴とする、請求項4,5,7のいずれか1項に記載の使用。
【請求項9】
前記CaMK2γタンパク質活性を阻害する薬物の剤形は、カプセル剤、錠剤、経口剤、マイクロカプセル剤、注射剤、坐剤、噴霧剤又は軟膏剤であることを特徴とする、請求項6に記載の使用。
【請求項10】
下式Iで表される化合物;並びに/或いは薬学的に許容される担体及び/又は希釈剤を含む乾癬を治療するための医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンパク質阻害薬の技術分野に属し、具体的には、CaMK2γタンパク質活性の阻害における化合物又はその薬用誘導体の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
乾癬は、世界的に難治で罹患率の高い炎症性免疫疾患であり、現在の医療水準では完全に治すことはできない。臨床的には乾癬の治療方法が多く、ほとんどは免疫系に対する広範な阻害(例えば、ホルモンや免疫阻害剤の使用、いくつかの物理療法及び漢方薬の使用)を通じて症状を緩和している。しかし、これらの治療法では、広域スペクトルの対症療法は効果がないことが多く、病気の再発や他のシステムの損傷を容易に引き起こす恐れがある。近年、乾癬に対する高精度医療の開発により、従来の治療法の欠点がある程度補われた。多くの生物学的製剤の開発は、乾癬炎症経路の下流にあるエフェクター分子(例えば、IL-17、TNF-α及びIL-23など)を標的として乾癬の表現型を除去することに焦点を合わせている。
【0003】
従来の治療法と比較して、生物学的薬剤は、一定期間にわたって、乾癬患者の治癒率を様々な程度に高め、投与間隔が長く、服薬コンプライアンスが改善されるが、従来の治療法と同じ欠点がある。現在市場に出回っている乾癬に対する生物学的製剤はすべて、基本的に下流のエフェクター分子の効力を遮断することによって表現型を弱める対症療法であり、生物学的製剤の使用を半年以上中止すると、乾癬再発のリスクが大幅に高くなる問題がある。また、生物学的製剤は、高価であり、長期間服用する必要があり、途中で効果が弱まると、複数の生物学的製剤を併用する必要があるため、患者の経済的負担が大きくなる。
【0004】
つまり、現在の乾癬治療薬は、主に広域スペクトル免疫調節薬と標的薬の2種類に大別される。広域スペクトルの従来の免疫調節剤は、長期的な効果が理想的ではない一方、生物学的薬剤に代表される標的薬は、従来薬剤の有効性の欠如をある程度補ったが、生物学的薬剤は高価であり、適用基準が比較的高い。市販されている乾癬に対する他の標的薬(天然低分子または人工化合物)は種類が少なく、ほとんど乾癬の発症過程における下流エフェクター経路を標的としており、発症に重要なサイトカインIL-17及びその上流の起始経路に対する影響が小さい。その結果、このような対症療法は、乾癬の炎症経路の上流因子を妨害する療法と比較して、長期的な効果が不十分である可能性がある。
【0005】
そのため、従来の治療法及び生物学的薬剤と優位性が相互補完する新薬の開発は必要とされている。上記の薬物の欠如を補いつつも、薬物の有効性、標的化性、経済性、安全性、服薬コンプライアンスおよびその他の側面も考慮する必要がある。
【発明の概要】
【0006】
上記の問題に対して、本発明の目的は、CaMK2γタンパク質活性の阻害における化合物又はその薬用誘導体の使用を提供することにある。この化合物は、CaMK2γタンパク質の活性を阻害することにより、Il-7A、IL-17F、TNFa、IL23Aの生成が顕著に阻害され、IMQマウスの真皮γδT細胞中のIL17A陽性細胞比が低下し、IMQマウスの炎症性表現型が顕著に改善される(乾癬症状が軽減される)。つまり、本発明の化合物は、乾癬の治療薬としてIMQ誘導性乾癬様皮膚損傷を軽減する(PASIスコアを減少させる)ことができる。
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明は、以下の技術的手段を採用する。
本発明の一態様では、CaMK2γタンパク質活性の阻害における前記化合物又はその薬用誘導体の使用が提供される。この化合物の構造は、下式Iで表される。その分子式はC
19H
21N
3O、分子量は307.39である。
【0008】
本発明の別の態様では、CaMK2γタンパク質活性を阻害するための薬物の製造における前記化合物又はその薬用誘導体の使用が提供される。
【0009】
本発明の別の態様では、乾癬を治療するための医薬組成物が提供される。前記医薬組成物は、少なくとも式Iで表される化合物;並びに/或いは薬学的に許容される担体及び/又は希釈剤を含む。
【0010】
本発明の有益な効果は以下の通りである。
(1)本発明の化合物I(Alcaftadine(アルカフタジン);化合物ライブラリー番号:T2533)は、CaMK2γタンパク質を標的とする活性低分子であり、それ又はそれを用いて製造された薬物は、乾癬の治療に使用され、従来の広域スペクトル免疫調節剤に比べてより強い標的化作用を有し、より正確、快速、有効、安全、安定的であり、CaMK2γヒトタンパク質及びマウスタンパク質との結合力は非常に高く、結合定数がそれぞれ2.54×10-5M及び6.84×10-5Mと高い。
(2)本発明の化合物及びそれを用いて製造された薬物は、乾癬における結合阻害の標的部位がCaMK2γ経路の上流に位置し、従来の生物学的阻害剤(生物学的阻害剤は、いずれも乾癬免疫炎症経路の中下流に作用し、対症治療に属し、治療効果の維持が不安定で、ほとんど全ての生物学的製剤は、半年断薬後に再発率が大幅に増加する)に比べて炎症性サイトカインに対する遮断レベルがより高く、生物学的製剤に比べてより良い長期的な効果を有する。また、従来の生物学的製剤は、ほとんど全身注射薬物であり、他のシステムに影響を与える可能性が高いのに対し、本発明の化合物は、外用で吸収されやすく、全身投与による多くの副作用を回避することができ、安全性が高く、適用集団が広く、投薬が容易で、服薬コンプライアンスが良好である。
(3)本発明の化合物は、白色結晶低分子であり、液体形態である場合又は無色溶剤に溶解した場合、無色透明状態となるため、製剤化後の皮膚への外用の適用性と美観を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】バーチャルスクリーニングの作業プロセスの模式図である。
【
図3a】CaMK2γキナーゼアッセイ(Promega #V9201)を用いてCaMK2γ低分子阻害剤を一次スクリーニングした検出結果aである。
【
図3b】CaMK2γキナーゼアッセイ(Promega #V9201)を用いてCaMK2γ低分子阻害剤を一次スクリーニングした検出結果bである。
【
図3c】CaMK2γキナーゼアッセイ(Promega #V9201)を用いてCaMK2γ低分子阻害剤を一次スクリーニングした検出結果cである。
【
図3d】CaMK2γキナーゼアッセイ(Promega #V9201)を用いてCaMK2γ低分子阻害剤を一次スクリーニングした検出結果dである。
【
図3e】CaMK2γキナーゼアッセイ(Promega #V9201)を用いてCaMK2γ低分子阻害剤を一次スクリーニングした検出結果eである。
【
図3f】CaMK2γキナーゼアッセイ(Promega #V9201)を用いてCaMK2γ低分子阻害剤を一次スクリーニングした検出結果fである。
【
図3g】CaMK2γキナーゼアッセイ(Promega #V9201)を用いてCaMK2γ低分子阻害剤を一次スクリーニングした検出結果gである。
【
図3h】CaMK2γキナーゼアッセイ(Promega #V9201)を用いてCaMK2γ低分子阻害剤を一次スクリーニングした検出結果hである。
【
図3i】CaMK2γキナーゼアッセイ(Promega #V9201)を用いてCaMK2γ低分子阻害剤を一次スクリーニングした検出結果iである。
【
図3j】CaMK2γキナーゼアッセイ(Promega #V9201)を用いてCaMK2γ低分子阻害剤を一次スクリーニングした検出結果jである。
【
図3k】CaMK2γキナーゼアッセイ(Promega #V9201)を用いてCaMK2γ低分子阻害剤を一次スクリーニングした検出結果kである。
【
図3l】CaMK2γキナーゼアッセイ(Promega #V9201)を用いてCaMK2γ低分子阻害剤を一次スクリーニングした検出結果lである。
【
図3m】CaMK2γキナーゼアッセイ(Promega #V9201)を用いてCaMK2γ低分子阻害剤を一次スクリーニングした検出結果mである。
【
図3n】CaMK2γキナーゼアッセイ(Promega #V9201)を用いてCaMK2γ低分子阻害剤を一次スクリーニングした検出結果nである。
【
図6】T2533とCaMK2γタンパク質の相互作用の模式図である。
【
図7】T2533とCaMK2γヒトタンパク質との親和力の検出状況である。
【
図8】T2533とCaMK2γマウスタンパク質との親和力の検出状況である。
【
図10】各処理群マウスの紅斑程度の統計状況である。
【
図11】各処理群マウスの鱗屑程度の統計状況である。
【
図12】各処理群マウスの皮膚厚さの統計状況である。
【
図13】T2533を各処理群マウスに塗布した後のIMQマウス表現型である。
【
図14】各処理群マウスの皮膚病理の表現型である。
【
図15】各処理群マウスの皮膚のフローサイトメトリー検出結果である。
【
図16】各処理群マウスの皮膚のqPCR検出結果である。
図1において、AはNewCartoonモデル、Bは分子表面積図である。
図6において、AはヒトCaMK2γとT2533で形成された複合体の構造であり、CaMK2γ表面積は橙色で示され、緑色は化合物を示し、下側はCaMK2γのpocket1領域での化合物の相互作用を示し、R297、R298及びK301はこの化合物と水素結合相互作用を形成し、Bは化合物T2533の化学構造式であり、Cは化合物T2533と標的部位の重要な相互作用アミノ酸の2D相互作用の模式図であり、R297、R298及びK301はこの化合物と水素結合相互作用を形成する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
挙げられる実施例は、本発明をより良く説明するためのものであり、本発明の内容は挙げられる実施例に限定されない。したがって、当業者が上記の発明の概要に基づいて実施形態に加える非本質的な改良及び調整は、本発明の保護範囲に含まれる。
【0013】
本明細書で使用される用語は、特定の実施例を説明するためのものに過ぎず、本発明を制限するものではない。文脈が明らかに異なる意味を有しない限り、単数形の表現は複数形の表現を含む。本明細書で使用される「含む」、「有する」、「包含」などの用語は、特徴、数字、操作、部材、部品、素子、材料又はそれらの組み合わせの存在を示すことを意図している。本明細書に本発明の用語が開示され、他の特徴、数字、操作、部材、部品、素子、材料若しくはそれらの組み合わせが存在するか又は1つ若しくは複数追加できる可能性を排除することを意図していない。例えば、本明細書で使用される「/」は、状況に応じて「及び」又は「又は」と解釈することができる。
【0014】
本発明の実施例は、CaMK2γタンパク質活性の阻害における前記化合物又はその薬用誘導体の使用が提供される。この化合物は、乾癬の治療薬として使用することができ、IMQマウス皮膚損傷における真皮γδTにおけるIL17A
+細胞を顕著に減少でき、IMQマウスの炎症性表現型を顕著に改善することができる。この化合物の構造は下式Iで示される。その分子式はC
19H
21N
3O、分子量は307.39である。
【0015】
なお、乾癬患者及びイミキモド誘導性乾癬マウスの単細胞トランスクリプトームシーケンシング、ATACシーケンシング、トランスクリプトミクス、遺伝学、ゲノミクスなどの研究により、遺伝学をもとに、様々な機能学技術を採用してタンパク質、細胞動物モデル及び組織サンプルレベルで感受性遺伝子CaMK2γを解析した結果、皮膚中のCaMK2γは主に交感神経中で発現され、CaMK2γは皮膚交感神経-NE-γδT-ADRB2-p38軸索によりγδT細胞でのIL-17の産生を促進し、乾癬炎症反応を悪化させることが分かった。CaMK2γ経路は、乾癬の発生及び悪化において重要な役割を果たすことが実証されており、CaMK2γ経路の活性を調節することによりイミキモドマウスモデルの乾癬様炎症性表現型を制御することができる。CaMK2γは経路上流の起動者であり、乾癬においてCaMK2γタンパク質の下流タンパク質活性化能力を遮断することにより、経路の効果を効果的に遮断することができ、原則的には実行因子IL-17のみを除去するよりも効果が強力で持続的である。従来の全身生物学的療法において、上流分子を遮断すると、関連経路が影響する他のシステムの異常を引き起こす可能性がある。
【0016】
本発明は、バーチャルスクリーニング及び実験検証方法に基づいて150万個の化合物を含むChemdiv及びTargetMolデータベースからスクリーニングして阻害活性を有する阻害剤T2533を得た。150万個の低分子化合物に対して複数のコンフォメーションを生成し、これらの化合物コンフォメーションとヒトCaMK2γタンパク質との親和力、ドラッガビリティスコア、構造多様性などの属性を測定し、最終的に実験検証によりT2533(上記式Iで表される化合物)はヒトCaMK2γタンパク質の阻害剤であることを確定した。
【0017】
また、上記化合物の薬用誘導体とは、母核構造を保留し、母核構造のもとに化合物構造を改変して得られた化合物を指す。構造を改変して得られた化合物は、CaMK2γタンパク質活性を阻害する効果、又は化合物の活性を向上させ、薬物動態特性を改善するなどの効果を維持することができる。
【0018】
いくつかの具体的な実施例において、上記の使用では、化合物は、薬学的に許容される塩の形態である。なお、実際の投薬では、投薬の便利及び保存の便利を保証するために、化合物を薬学的に許容される塩の形態に製造することができる。
【0019】
いくつかの具体的な実施例において、上記の使用では、上記化合物は、薬学的に許容される酸付加塩の形式である。なお、上記化合物を薬学的に許容される塩の形態、好ましくは薬学的に許容される酸付加塩の形態に製造することにより、製造は素早く、便利である。もちろん、他の塩形成形態は除外されない。
【0020】
本発明の別の実施例では、CaMK2γタンパク質活性を阻害するための薬物の製造における上記化合物又はその薬用誘導体の使用が提供される。
【0021】
いくつかの具体的な実施例において、上記の使用では、CaMK2γタンパク質活性を阻害するための上記薬物は、乾癬病変組織のCaMK2γタンパク質活性を阻害する薬物である。具体的には、上記のように、遺伝学のもとに、様々な機能学技術によりタンパク質、細胞動物モデル及び組織サンプルのレベルで感受性遺伝子CaMK2γを解析した実験により、皮膚中のCaMK2γは主に交感神経中で発現され、CaMK2γは皮膚交感神経-NE-γδT-ADRB2-p38軸索によりγδT細胞でのIL-17の産生を促進し、乾癬炎症反応を悪化させることが分かった。上記化合物は、乾癬に対する特異性が高く、もたらす副作用が小さいことを示している。
【0022】
いくつかの具体的な実施例において、上記の使用では、上記化合物は、薬学的に許容される塩の形態である。上記のように、投薬の便利及び保存の便利を保証するために、化合物を薬学的に許容される塩の形態、好ましくは、薬学的に許容される酸付加塩の形態に製造することができる。
【0023】
いくつかの具体的な実施例において、上記の使用では、CaMK2γタンパク質活性を阻害する上記薬物の剤形は、カプセル剤、錠剤、経口剤、マイクロカプセル剤、注射剤、坐剤、噴霧剤又は軟膏剤である。具体的には、当業者は投与経路及び投与対象などに応じて適切な剤形を選択することができる。
【0024】
本発明の別の実施例では、少なくとも式Iで表される化合物、並びに/或いは薬学的に許容される担体及び/又は希釈剤を含む乾癬を治療するための医薬組成物が提供される。
【0025】
いくつかの具体的な実施例において、上記医薬組成物において、上記薬学的に許容される担体及び/又は希釈剤は、溶液剤形、コロイド溶液剤形、乳剤剤形、懸濁剤形、気体分散剤形、微粒子分散剤形、固体分散剤形のうちのいずれか1種に適用される。
【0026】
なお、上記式Iで表される化合物は、より良好な治療効果を達成するために、乾癬を治療するための他の薬物と併用することができる。例えば、下流分子IL-17又はIL-23を標的とする生物学的製剤と併用して投与することができる。このような併用投与により、生物学的製剤の最小有効用量を減少させ、他のシステムに対する生物学的製剤の影響をある程度軽減することができ、生物学的製剤の単独使用と比較して効果がより安定的で安全である。いくつかの具体的な実施例において、乾癬を治療するための上記薬物における化合物の有効成分の使用量は5mg/kgであることが好ましい。
【0027】
本発明において、分子ドッキングスコアに基づいて、Chemdiv及びTargetMolデータベースから43083個の化合物のドッキング結果を保留した。そのうち、親和力が-16kcal/mol未満な化合物は19個ある(chemdiv)。低分子化合物の属性(例えば、7.4pH値での水溶性(logS)、脂質-水分配係数(logP)、分子量、分子の柔軟性、水素結合属性、アクセス可能な表面積(TPSA)、CYP2C9酵素分解レベル、hERG阻害率指標、経口投与利用率(HIA)、薬物相互作用のリスク(2D6)などの指標、経口中枢神経系薬剤スコア関数(CNS DrugScore)、リピンスキーの法則(Lipinski Score))を計算及び分析することにより、これらの化合物を評価、スコアリング、スクリーニングした。これらの化合物のうちの10726個の化合物は、血液脳関門を通過することができ、そのCNSドラッガビリティスコアは、ほとんど0.4未満であり、ドラッガビリティ属性は最適化される余地があることを示している。
【0028】
次に、親和力が-11.5kcal/mol未満で天然物ライブラリー及び薬剤ライブラリーに由来の化合物、並びに親和力が-14kcal/mol未満でChemDivライブラリーに由来の化合物を選択した。これらの化合物は、リピンスキーの法則スコアが0.5より大きく、CNSスコアが0.1より大きく、BBBスコアが-1より大きかった。最終的に678個の化合物を得た。678個の化合物からさらにドラッガビリティが良くない化合物(例えば、極性表面積(TPSA>70)、小腸吸収率が低い化合物(HIA Category-)、代謝酵素により加水分解されやすい化合物(2D6値=非常に高い)、及び心毒性の可能性があり(hERG>7)、分子量が500より大きい化合物)を除去し、最終的に570個の化合物を保留した。構造類似性(閾値=0.7)に基づいて得られた570個の化合物を合計70群に分類した。各群の化合物から親和力が比較的高い化合物を選択して高親和で多様性を有する化合物(合計293個の化合物)を形成した。
【0029】
上記の化合物は、本項目でスクリーニングされた最終化合物であり、それらの多くの指標がドラッガビリティの要求を満たした。可能な活性化合物をさらに確定するために、スコアリング関数top100(ChemDivデータベース)及びtop30(TargetMolデータベース)の化合物について活性試験を行った。親和力の大きさに応じて並べ替えて130個の(TOP30、TOP100)CaMK2γの低分子阻害剤をスクリーニングした。最後に、CaMK2γキナーゼアッセイ(Promega #V9201)により阻害効果及びより安全な化合物をスクリーニングした。具体的には、以下のステップを含む。
【0030】
(1)CaMK2γタンパク質の結晶構造を選択する具体的な過程
CaMK2γの結晶構造を解析(2V7O,2UX0)することにより、タンパク質の触媒ドメインの3Dコンフォメーション及び十四量体及び生理学的十二量体状態でのCaMK2γの構造を明らかにした(
図1)。2UX0によりCaMK2γのR395-A521断片の六量体構造を解析した結果、この断片には欠失も変異もなかった。2V7OによりCaMK2γのA5-G302断片の3D構造を解析した結果、この構造には1つの変異部位S36Pがあり、かつA24部位の空間的な位置が不明であった。結晶構造の解析により一部の断片の3D構造のみを解析したため、AlphaFoldによりヒトCaMK2γの全長構造モデルを構築した。このモデルの構造は、結晶構造と高度に一致する(RMSD:0.45 to 2UX0;RMSM:1.587 to 2V7O)。そのため、後の阻害剤スクリーニング作業において、AlphaFoldモデルをCaMK2γの3D構造モデルとして使用し、構造最適化及びプロトン化した後、その構造をスクリーニングのレセプターファイルとした。
【0031】
(2)結合部位を選択する具体的な過程
MOE-site finderを用いてこの標的部位上のpocket1を本バーチャルスクリーニングのドッキング領域として確定した。この領域の体積は431個の原子サイズの空間であり、110個の疎水性が比較的高い原子を含み、この領域は、ATP結合部位K43及び活性部位D136をさらに含む。Openeye (Release 3.2.0.2)のapopdb2receptorツールを用いてバーチャルスクリーニングのレセプターファイルを処理及び生成し、分子のドッキング領域を定義した。この領域の長さ、幅及び高さは、それぞれ32A(オングストローム)x28.67Ax21.67Aであり、体積は19875A3であり、そのinner contourの体積は1648A3であった。
【0032】
(3)コンピュータバーチャルスクリーニングのプロセス(
図2)、低分子化合物ライブラリの確定、標的タンパク質を選択及び準備する具体的な過程
バーチャルスクリーニングのプロセス
ハードウェアは、Dell T7910ワークステーション、Ubuntu kylin15.10オペレーティングシステム、40コアCPU、64Gメモリ、512GのSSDおよび4Tのストレージスペースである。ソフトウェアは、FRED(Ver3.2.0.2)(親和力スクリーニング用のソフトウェア)である。レセプターファイルは、AFモデルに基づくCaMK2γの3D構造及び確定されたスクリーニング領域である。化合物ライブラリは、処理した後のChemDiv、TargetMolの天然物ライブラリー及び市販薬剤ライブラリーL1000である。実行パラメータは、-save_component_scoresであり、trueを選択し、-hitlist_sizeを30,000に設定し、-docked_molecule_fileはsdf形式を選択し、他のパラメータはデフォルトパラメータである。
【0033】
ChemDiv、TargetMolの天然物ライブラリー及び市販薬剤ライブラリーL1000を本バーチャルスクリーニングのデータベースとした。ChemDivデータベースは、1535478個の化合物を含み、天然物ライブラリーは、19746個の化合物を含み、市販薬剤ライブラリーは、2040個の化合物を含む。Openeyeソフトウェアにおけるプラグインomega2(Ver3.0.1.2)は、化合物ライブラリーにおける各低分子化合物の複数のコンフォメーション構造を生成するために使用され、各低分子は、平均約50個のコンフォメーションを産生する。
【0034】
標的タンパク質の準備
AlphaFoldに基づいて構築されたヒトCaMK2Gの3Dモデルをプロトン化処理及び構造最適化によりレセプターファイルを作成し、MOE-site finderによりこの標的部位上のATP結合部位及び活性部位を含むpocket1領域を本バーチャルスクリーニングのドッキング領域として確定した。Openeye(Release3.2.0.2)のapopdb2receptorツールは、バーチャルスクリーニングのレセプターファイルを処理して生成するために使用された。このファイルは、バーチャルスクリーニングのタンパク質構造ファイルとして使用された。
【0035】
(4)バーチャルスクリーニング計算の具体的な過程
(a)親和力計算及びバーチャルスクリーニングソフトウェアFRED(Ver3.2.0.2)を親和力スクリーニングのソフトウェアとして使用した。このソフトウェアは、各化合物の異なるコンフォメーションとCaMK2γとの親和力を計算するために使用された。リジッドドッキングアルゴリズムにより各コンフォメーションとCaMK2γのドッキング領域との相互作用を計算し、Chemgauss4を親和力を計算する力場とした。分子ドッキングスコアに基づいてChemdiv及びTargetMolデータベースから43083個の化合物のドッキング結果を保留した。そのうち、親和力が-16kcal/mol未満な化合物は、19個あった(chemdiv)。
(b)低分子化合物のドラッガビリティ属性の計算及びスクリーニング
化合物的水溶性(logS)、脂質-水分配係数(logP)、分子量、分子の柔軟性、水素結合属性、アクセス可能な表面積(TPSA)、CYP2C9酵素分解レベル、hERG阻害率指標、経口利用率(HIA)、薬物相互作用のリスク(2D6)など、経口中枢神経系薬剤スコア関数(CNS DrugScore)、リピンスキーの法則(Lipinski Score)を計算した。血液脳関門を通過可能な化合物を合計10726個保留し、そのCNS DrugScoreスコアは、ほとんど0.4未満であった。さらに、親和力が-11.5kcal/mol未満で天然物ライブラリー及び薬剤ライブラリーに由来の化合物、並びに親和力が-14kcal/mol未満でChemDivライブラリーに由来の化合物を選択した。これらの化合物は、リピンスキーの法則スコアが0.5より大きく、CNSスコアが0.1より大きく、BBBスコアが-1より大きかった。最終的に678個の化合物を得た。678個の化合物からさらにドラッガビリティが良くない化合物(例えば、極性表面積(TPSA>70)、小腸吸収率が低い化合物(HIA Category-)、代謝酵素により加水分解されやすい化合物(2D6値=非常に高い)、及び心毒性の可能性があり(hERG>7)、分子量が500より大きい化合物)を除去し、最終的に570個の化合物を保留した。
(c)構造類似性に基づいて化合物を分類して分析した。その構造類似性の閾値は0.7であった。得られた570個の化合物を合計70群に分類した。各群の化合物から親和力が比較的高い化合物を選択して高親和で多様性を有する化合物(合計293個の化合物)を形成した。
【0036】
上記の化合物は、本項目でスクリーニングされた最終化合物であり、それらの多くの指標がドラッガビリティの要求を満たした。可能な活性化合物をさらに確定するために、ChemDivライブラリーから100個の化合物を潜在的なCaMK2γ阻害剤として選択した(表1)。
【0037】
【0038】
その後、TargetMolデータベースから30個の化合物を潜在的なCaMK2γ阻害剤として選択した(表2)。
【0039】
【0040】
(5)CaMK2γキナーゼアッセイ(Promega #V9201)により阻害効果を有する化合物をスクリーニングした。
スクリーニングされた130個の化合物についてCaMK2γキナーゼアッセイ(Promega #V9201)によりキナーゼ活性(%)を検出した。評価基準としてキナーゼ活性(%)を陽性対照(PC)と比較して、130個の低分子阻害剤から阻害効果が最も顕著(p<0.0001)な低分子を理想的な候補阻害剤(即ち、本発明で使用される化合物I(T2533とも呼ばれる))として選択した。
【0041】
上記方法により検出した後、各ウェルのキナーゼ活性(%)を計算し、130個の低分子阻害剤から阻害効果が最も顕著(p<0.0001)な低分子を理想的な候補阻害剤として選択した。結果を
図3a-
図3nに示す。
【0042】
上記方法によりスクリーニングされた低分子化合物I(T2533とも呼ばれる)は、名称がAlcaftadine(アルカフタジン)、分子量が307.39であり、構造式が式Iで表される。
【0043】
スクリーニングされた上記低分子化合物Iを特徴付けた。
(1)低分子化合物IをNMRにより特徴付けた。結果は、
図4に示すように、化合物構造と一致し、化合物構造が正しい。
(2)低分子化合物IをHPLCにより検出した。結果は、
図5、表3(254nm)及び表4(220nm)に示すように、目的化合物の特性に一致する。
【0044】
表3:254nm検出波長におけるHPLC検出の検出結果
【0045】
表4:220nm検出波長におけるHPLC検出の検出結果
【0046】
スクリーニングされた上記低分子化合物Iの合成経路は以下の通りである。
【0047】
以下の実施例において、データの統計分析方法は以下の通りである。SPSS23.0及びRVersion4.0.2バージョンのソフトウェア件を用いてデータ処理及び分析を行い、全ての検定は両側検定を使用し、P値が0.05未満である場合、統計的有意性があると考えられる。
【0048】
本発明をより良く理解するために、以下、具体的な実施例により本発明の内容をさらに説明するが、本発明の内容は以下の実施例に限定されない。
【0049】
実施例1:T2533とCaMK2γタンパク質との相互作用パターン
本発明の実施例において、T2533とCaMK2γタンパク質が結合した後の構造を模擬した。まず、Sybyl-X2.1ソフトウェアのSurflexモジュールにより結合シミュレーションを2ラウンド回実行し、そして、CaMK2γ上のArg24、Leu72、Asn73などの複数のアミノ酸と複数の水素結合相互作用を形成し、手動スクリーニングとレビューを実行した。結果を
図6に示す。T2533は、複数の疎水性アミノ酸(例えば、Arg24(側鎖の疎水性部分)、Lys26(側鎖の疎水性部分)、Phe27、Phe28、Leu40、His41、Lys71(側鎖の疎水性部分)及びLeu72)と強い疎水性相互作用を形成した。また、化合物T2533と、Phe27及びPhe28とはπ-πスタッキング相互作用を形成した。疎水性π-πスタッキングなどの相互作用は、化合物T2533とタンパク質CAMK2γとの結合を共同で維持したことを示している。
【0050】
実施例2:T2533とCaMK2γヒトタンパク質は強い親和力を有する試験
本発明の実施例において、T2533とCaMK2γヒトタンパク質の親和力を検出した。まず、pET28Aベクターを用いてそれぞれヒト全長CaMK2γタンパク質を発現して精製し、次に、Biacoreの表面プラズモン共鳴(surface-plasmonresonance,SPR)法によりCM5チップアミンカップリング法を用いて親和力を測定した。検出結果を
図7に示す。結果は、T2533がヒトCaMK2γタンパク質に特異的に結合し、結合定数が2.54×10
-5Mであり、結合能力が非常に強いことを示している。
【0051】
実施例3:T2533とCaMK2γマウスタンパク質は強い親和力を有する試験
本発明の実施例において、T2533とCaMK2γマウスタンパク質の親和力を検出した。まず、pET28Aベクターw用いてそれぞれマウス全長CaMK2γタンパク質を発現して精製し、次にBiacoreの表面プラズモン共鳴(surface-plasmonresonance,SPR)法によりCM5チップアミンカップリング法を用いて親和能力を測定した。検出結果を
図8に示す。結果は、T2533がマウスCaMK2γタンパク質に特異的に結合し、結合定数が6.84×10
-5Mであり、結合能力が非常に強いことを示している。
【0052】
実施例4:T2533がCaMK2γタンパク質活性を効果的に阻害する試験
本発明の実施例において、CaMK2γキナーゼアッセイ(Promega #V9201)によりCaMK2γタンパク質活性に対するT2533の阻害状況を検出した。具体的な実験手順は、以下の通りである。
(1)ウェル配置:2つのブランクウェル、2つの正常反応ウェル、2つのDMSO対照ウェル、40個の阻害剤ウェル(各阻害剤について2つのウェルを用意する。20個の阻害剤)、合計46個のウェル。
【0053】
(2)キナーゼ反応試薬の調製
(a)200μlの4Xキナーゼ緩衝液を調製し、1回あたりの実験は、2.5×20+62.5+62.5=175μlが必要であり、残りは1Xキナーゼ緩衝液を調製してブランクウェルとして使用した(表5)。
【0054】
【0055】
(b)10μlの5X阻害剤溶液(最終濃度10μM)を調製した(2.5μl/ウェル)。阻害剤は10mMであり、DMSOを用いて1:9の比率で1mMに希釈した。DMSOの調製方法は阻害剤と同じであった。DMSOを対照ウェルとした(表6)。
【0056】
【0057】
(c)250μlの2.5X ATP/Autocamtide-2(最終濃度25μM ATP,0.2μg/μl Autocamtide-2)を調製した(5μl/ウェル)を調製した。ATPは10mMであり、水を用いて1:39の比率で250μMに希釈した。Autocamtide-2を最初に解凍した後、チューブあたり270μlに分注し、2回利用可能であった(表7)。
【0058】
【0059】
(d)250μlの2.5X CaMK2γ/Ca2+/カルモジュリン溶液(Calmodulin solution)II(5ng CaMK2γ/12.5μl)に調製した(5μl/ウェル)。CaMK2γを最初に解凍した後、チューブあたり270μlに分注し、2回利用可能であった(表8)。
【0060】
表8:CaMK2γ/Ca2+/カルモジュリン溶液II試薬
【0061】
(2)以下の手順に従ってキナーゼ反応を行った。(a)下記のように試薬を試薬ウェルに添加した。ブランクウェル:7.5μlの1Xキナーゼ緩衝液、正常反応ウェル:2.5μlの1Xキナーゼ緩衝液+5μlの2.5X CaMK2γ/Ca2+/カルモジュリン溶液II、DMSO対照ウェル:2.5μlの5X DMSO+5μlの2.5X CaMK2γ/Ca2+/カルモジュリン溶液I、阻害剤ウェル:2.5μlの5X阻害剤溶液+5μlの2.5X CaMK2γ4/Ca2+/カルモジュリン溶液II。(b)ピペッティングして均一に混合し、室温で10minインキュベートした。(c)各ウェルに5μlの2.5X ATP/Autocamtide-2を加えた。(d)ピペッティングして均一に混合し、室温で60minインキュベートした。(e)ADP-Glo反応:各ウェルに12.5μlのADP-Glo試薬(ADP-Glo試薬を最初に解凍した後、チューブあたり1250μlに分注し、2回利用可能)を加えた。(f)ピペッティングして均一に混合し、室温で40minインキュベートした。(g)各ウェルに25μlのキナーゼ検出試薬(キナーゼ検出試薬を最初に解凍した後、チューブあたり2500μlに分注し、2回利用可能)を加えた。(h)ピペッティングして均一に混合し、室温で30minインキュベートした。(i)化学発光検出、積分時間:0.5-1sec。
【0062】
上記の手順に従って関連実験操作を完成し、検出装置で検出した後、各ウェルのキナーゼ活性(%)を分析して計算した結果、この化合物(T2533)はCaMK2γタンパク質の発現を効果的に低下させたことを見出した。
【0063】
実施例5:乾癬動物モデルにおいてT2533がCaMK2γタンパク質活性を効果的に阻害する試験
DMSOでT2533粉末を溶解し、異なる使用量に応じて粉末を秤量し、次にβ-シクロデキストリンで希釈し、DMSOの最終濃度は5%以下であった。設定されたT2533の用量勾配は、それぞれ0mg/kg、2.5mg/kg、5mg/kg、10mg/kgであった。各マウスの体重を20gとすると、各マウスに毎日0mg、0.05mg、0.1mg、0.2mg投与する必要であった。
【0064】
7週齢のC57/BL6マウスを選択し、飼育及びモデル構造は、いずれもSPFグレードの環境行われた。実験グループは、以下の通りである。(1)イミキモド(IMQ)及び0mg/kgのT2533を皮膚に塗布した。(2)IMQ及び2.5mg/kgのT2533を皮膚に塗布した。(3)IMQ及び5mg/kgのT2533を皮膚に塗布した。(4)IMQ及び10mg/kgのT2533を皮膚に塗布した。(5)ワセリン及び0mg/kgのT2533を皮膚に塗布した。(6)ワセリン及び2.5mg/kgのT2533を皮膚に塗布した。(7)ワセリン及び5mg/kgのT2533を皮膚に塗布した。(8)ワセリン及び10mg/kgのT2533を皮膚に塗布した。
【0065】
上記の各群に6匹のマウスがあり、4cm2の皮膚が露出するようにマウス背部の毛を剃った。実験開始日をDay-2、終了日をDay4に設定した。Day2-Day3:毎日の朝晩にそれぞれ200μlの薬液をマウス皮膚に均一に塗布して吸収させた。Day0-Day3:毎日の正午に各マウスにT2533及び62.5mgのIMQを塗布した。毎日マウス皮膚についてスコアリングし、Day4にマウスを安楽死させ、皮膚組織を取って一連の検出を行った。
【0066】
上記のIMQモデルマウスのPASIスコア結果及び紅斑、鱗屑、皮膚厚さの対応スコア結果をそれぞれ
図9、
図10、
図11及び
図12に示す。皮膚表現型及び皮膚病理表現型をそれぞれ
図13及び
図14に示す。2.5mg/kg、5mg/kg、10mg/kgの3つの用量のT2533は、異なる程度IMQマウスの炎症性表現型を軽減させ、そのうち、5mg/kg用量の軽減効果は最も顕著であり、2.5mg/kg及び10mg/kg用量の効果はそれほどではなかったが、全体的な効果には顕著な違いがなかった。
【0067】
次いで、上記各群マウスの皮膚リンパ球(マウス皮膚のリンパ球におけるIL17A
+cell in Dermal γδTの比率;このような細胞は、乾癬におけるCaMK2γ経路に媒介される主なエフェクター細胞であり、大量のIL-17サイトカインを分泌して乾癬を悪化させることができる)を分離し、フローサイトメトリーにより検出した。結果を
図15に示す。T2533を使用しないIMQマウスに比べ、5mg/kgのT2533で処理したIMQマウスは、IL17A
+cell in Dermal γδTの比率が顕著に低下した。既知の乾癬に密接に関連した炎症促進遺伝子(Il17a、Il17f、Il22、Tnfa及びIl23a)を定量PCRした。結果を
図16に示す。5mg/kgのT2533で処理したマウス皮膚におけるIl17a、Il17f、Tnfa及びIl23aの発現は顕著に低下し、Il22の発現は変化せず、2.5mg/kgのT2533で処理したマウス皮膚におけるIl17a、Il17fの発現は顕著に低下し、Il22、Tnfa及びIl23aの発現は変化しなかった。
【0068】
以上の実施例は、本発明の技術的手段を説明するためのものに過ぎず、本発明を制限するものではない。好ましい実施例により本発明を詳しく説明したが、当業者が本発明の趣旨及び範囲から逸脱することがなく、本発明の技術的手段を修正又は同等置換することができる。これらの修正及び置換は、本発明の特許請求の範囲に含まれるべきである。
【手続補正書】
【提出日】2024-02-01
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
CaMK2γタンパク質活性を阻害するための薬物
の製造のための化合物
の使用であって、前記化合物は、下式Iで表されることを特徴とする、使用。
【請求項2】
前記CaMK2γタンパク質活性を阻害するための薬物は、乾癬病変組織のCaMK2γタンパク質活性を阻害する薬物であることを特徴とする、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記化合物は、薬学的に許容される塩の形態であることを特徴とする、請求項1に記載の使用。
【請求項4】
前記化合物は、薬学的に許容される塩の形態であることを特徴とする、請求項2に記載の使用。
【請求項5】
前記化合物は、薬学的に許容される酸付加塩の形態であることを特徴とする、請求項3に記載の使用。
【請求項6】
前記化合物は、薬学的に許容される酸付加塩の形態であることを特徴とする、請求項4に記載の使用。
【請求項7】
前記CaMK2γタンパク質活性を阻害する薬物の剤形は、カプセル剤、錠剤、経口剤、マイクロカプセル剤、注射剤、坐剤、噴霧剤又は軟膏剤であることを特徴とする、請求項1-6のいずれか1項に記載の使用。