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特開2024-62919中間転写ベルト、転写装置、及び画像形成装置
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  • 特開-中間転写ベルト、転写装置、及び画像形成装置 図1
  • 特開-中間転写ベルト、転写装置、及び画像形成装置 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024062919
(43)【公開日】2024-05-10
(54)【発明の名称】中間転写ベルト、転写装置、及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/16 20060101AFI20240501BHJP
   G03G 15/01 20060101ALI20240501BHJP
【FI】
G03G15/16
G03G15/01 114
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023048789
(22)【出願日】2023-03-24
(31)【優先権主張番号】P 2022170991
(32)【優先日】2022-10-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】種村 大輔
(72)【発明者】
【氏名】小野 雅人
(72)【発明者】
【氏名】福田 茂
(72)【発明者】
【氏名】古川 雅士
(72)【発明者】
【氏名】田中 宏晃
(72)【発明者】
【氏名】久保 陽祐
(72)【発明者】
【氏名】西村 伊織
(72)【発明者】
【氏名】瀬古 真路
(72)【発明者】
【氏名】松本 晃一
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 聡哉
【テーマコード(参考)】
2H200
2H300
【Fターム(参考)】
2H200FA16
2H200FA19
2H200GA09
2H200GA12
2H200GA23
2H200GA34
2H200GA47
2H200GB12
2H200GB22
2H200HA11
2H200JA02
2H200JB13
2H200JB22
2H200JC04
2H200JC12
2H200JC13
2H200JC15
2H200JC16
2H200JC17
2H200KA03
2H200KA12
2H200MA04
2H200MA13
2H200MA17
2H200MA20
2H200MB02
2H200MB05
2H200MC06
2H200MC08
2H200MC20
2H300EB05
2H300EB07
2H300EB12
2H300EC01
2H300EC05
2H300EC09
2H300ED01
2H300EF03
2H300EF08
2H300EG03
2H300EH16
2H300EH22
2H300EJ01
2H300EJ09
2H300EL01
2H300EL04
2H300GG45
2H300MM05
2H300MM06
2H300MM23
2H300MM25
2H300NN01
2H300NN02
2H300NN04
(57)【要約】
【課題】凹凸を有する紙に対するトナーの転写維持性に優れる中間転写ベルトの提供。
【解決手段】表面に、固体潤滑剤として金属酸化物粒子を有し、表面における金属酸化物粒子同士の平均間隔が1000nm以下、金属酸化物粒子の表面からの平均高さが15nm以上320nm以下である中間転写ベルト。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に、固体潤滑剤として金属酸化物粒子を有し、前記表面における前記金属酸化物粒子同士の平均間隔が1000nm以下、前記金属酸化物粒子の前記表面からの平均高さが15nm以上320nm以下であることを特徴とする中間転写ベルト。
【請求項2】
前記表面における前記金属酸化物粒子同士の平均間隔が3nm以上200nm以下である請求項1に記載の中間転写ベルト。
【請求項3】
前記金属酸化物粒子の前記表面からの平均高さが30nm以上150nm以下である請求項1に記載の中間転写ベルト。
【請求項4】
前記金属酸化物粒子のアスペクト比が、1.0以上1.8以下である請求項1に記載の中間転写ベルト。
【請求項5】
前記金属酸化物粒子のアスペクト比が、1.0以上1.4以下である請求項4に記載の中間転写ベルト。
【請求項6】
前記金属酸化物粒子が表面疎水処理されている請求項1に記載の中間転写ベルト。
【請求項7】
前記金属酸化物粒子が、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、トリメチルクロロシラン、トリメチルメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン、テトラメチルジシラザンからなる群より選択される少なくとも1種の疎水化処理剤により表面疎水処理されている請求項6に記載の中間転写ベルト。
【請求項8】
前記金属酸化物粒子が、シリカ粒子、チタニア粒子、アルミナ粒子、酸化セリウム粒子、酸化マグネシウム粒子、酸化亜鉛粒子、及びジルコニア粒子からなる群より選択される少なくとも1種の粒子である請求項1に記載の中間転写ベルト。
【請求項9】
前記金属酸化物粒子が、シリカ粒子である請求項8に記載の中間転写ベルト。
【請求項10】
前記金属酸化物粒子の表面自由エネルギーが54mJ/m以下である、請求項1に記載の中間転写ベルト。
【請求項11】
表面にトナー像が転写される、請求項1に記載の中間転写ベルトと、
像保持体の表面に形成されたトナー像を前記中間転写ベルトの表面に一次転写する一次転写部材を有する一次転写装置と、
前記中間転写ベルトの表面に接触して配置され、前記中間転写ベルトの表面に転写された前記トナー像を記録媒体の表面に二次転写する二次転写部材を有する二次転写装置と、
前記中間転写ベルトの表面をクリーニングするクリーニングブレードを有するクリーニング装置と、
前記中間転写ベルトの表面に接触して設けられ、前記中間転写ベルトの表面に固体潤滑剤として金属酸化物粒子を供給する金属酸化物粒子供給装置と、
を備える転写装置。
【請求項12】
像保持体を有し、前記像保持体の表面にトナー像を形成するトナー像形成装置と、
前記像保持体の表面に形成された前記トナー像を記録媒体の表面に転写する転写装置であって、請求項11に記載の転写装置と、
を備える画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中間転写ベルト、転写装置、及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式を用いた画像形成装置(複写機、ファクシミリ、プリンタ等)では、像保持体の表面に形成されたトナー像を記録媒体の表面に転写し、記録媒体上に定着して画像が形成される。なお、こうしたトナー像の記録媒体への転写には、例えば、中間転写ベルが用いられる。
【0003】
例えば、特許文献1には、「電子写真方式の画像形成装置で使用され、基材層及び表層を有する中間転写ベルトであって、前記表層が、少なくとも結着樹脂を含む材料で形成されたコート層と体積平均粒子径30nm~200nmの無機微粒子からなり、該無機微粒子が、前記コート層の表面に偏在しかつ固定化されている中間転写ベルト」が開示されている。
【0004】
特許文献2には、「ポリイミド樹脂又はポリアミドイミド樹脂を含む基層上に弾性層を積層した転写ベルトにおいて、該弾性層上に波長900nmにおける屈折率が該弾性層よりも大きい平均粒径0.5~4μmの球形粒子を敷き詰めてなる弾性転写ベルト」が開示されている。
【0005】
特許文献3には、「導電性支持体上に中間層が形成され、この中間層上に感光層が形成されてなる電子写真感光体の製造方法において、金属酸化物微粒子原料を有機化合物によって疎水化処理することにより金属酸化物微粒子を得、この金属酸化物微粒子およびバインダー樹脂を含有する中間層形成用塗布液を調製し、この中間層形成用塗布液を導電性支持体の外周面に塗布することにより、中間層を形成する工程を有し、前記疎水化処理に供される金属酸化物微粒子原料の電解質量が20μS/cm以上500μS/cm以下である電子写真感光体の製造方法」が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011-039430号公報
【特許文献2】特開2011-242724号公報
【特許文献3】特開2015-141316号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、表面における金属酸化物粒子同士の平均間隔が1000nm超、並びに金属酸化物粒子の表面からの平均高さが15nm未満及び320nm超の少なくともいずれかを満たす中間転写ベルトに比べ、凹凸を有する紙に対するトナーの転写維持性に優れる中間転写ベルト、並びに前記中間転写ベルトを備える転写装置、及び画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための手段は、以下の態様を含む。
<1>
表面に、固体潤滑剤として金属酸化物粒子を有し、前記表面における前記金属酸化物粒子同士の平均間隔が1000nm以下、前記金属酸化物粒子の前記表面からの平均高さが15nm以上320nm以下であることを特徴とする中間転写ベルト。
<2>
前記表面における前記金属酸化物粒子同士の平均間隔が3nm以上200nm以下である<1>に記載の中間転写ベルト。
<3>
前記金属酸化物粒子の前記表面からの平均高さが30nm以上150nm以下である<1>に記載の中間転写ベルト。
<4>
前記金属酸化物粒子のアスペクト比が、1以上1.8以下である<1>に記載の中間転写ベルト。
<5>
前記金属酸化物粒子のアスペクト比が、1以上1.4以下である<4>に記載の中間転写ベルト。
<6>
前記金属酸化物粒子が表面疎水処理されている<1>に記載の中間転写ベルト。
<7>
前記金属酸化物粒子が、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、トリメチルクロロシラン、トリメチルメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン、及びテトラメチルジシラザンからなる群より選択される少なくとも1種の疎水化処理剤により表面疎水処理されている<6>に記載の中間転写ベルト。
<8>
前記金属酸化物粒子が、シリカ粒子、チタニア粒子、アルミナ粒子、酸化セリウム粒子、酸化マグネシウム粒子、酸化亜鉛粒子、及びジルコニア粒子からなる群より選択される少なくとも1種の粒子である<1>に記載の中間転写ベルト。
<9>
前記金属酸化物粒子が、シリカ粒子である<8>に記載の中間転写ベルト。
<10>
前記金属酸化物粒子の表面自由エネルギーが54mJ/m以下である、<1>に記載の中間転写ベルト。
<11>
表面にトナー像が転写される、<1>に記載の中間転写ベルトと、
像保持体の表面に形成されたトナー像を前記中間転写ベルトの表面に一次転写する一次転写部材を有する一次転写装置と、
前記中間転写ベルトの表面に接触して配置され、前記中間転写ベルトの表面に転写された前記トナー像を記録媒体の表面に二次転写する二次転写部材を有する二次転写装置と、
前記中間転写ベルトの表面をクリーニングするクリーニングブレードを有するクリーニング装置と、
前記中間転写ベルトの表面に接触して設けられ、前記中間転写ベルトの表面に固体潤滑剤として金属酸化物粒子を供給する金属酸化物粒子供給装置と、
を備える転写装置。
<12>
像保持体を有し、前記像保持体の表面にトナー像を形成するトナー像形成装置と、
前記像保持体の表面に形成された前記トナー像を記録媒体の表面に転写する転写装置であって、<11>に記載の転写装置と、
を備える画像形成装置。
【発明の効果】
【0009】
<1>、<8>、又は<9>に係る発明によれば、表面における金属酸化物粒子同士の平均間隔が1000nm超、並びに金属酸化物粒子の表面からの平均高さが15nm未満及び320nm超の少なくともいずれかを満たす中間転写ベルトに比べ、凹凸を有する紙に対するトナーの転写維持性に優れる中間転写ベルトが提供される。
<2>に係る発明によれば、表面における金属酸化物粒子同士の平均間隔が3nm未満である中間転写ベルトに比べ、凹凸を有する紙に対するトナーの転写維持性に優れる中間転写ベルトが提供される。
<3>に係る発明によれば、金属酸化物粒子の表面からの平均高さが30nm未満又は150nm超である中間転写ベルトに比べ、凹凸を有する紙に対するトナーの転写維持性に優れる中間転写ベルトが提供される。
<4>に係る発明によれば、金属酸化物粒子のアスペクト比が1.8超である中間転写ベルトに比べ、凹凸を有する紙に対するトナーの転写維持性に優れる中間転写ベルトが提供される。
<5>に係る発明によれば、金属酸化物粒子のアスペクト比が1.4超である中間転写ベルトに比べ、凹凸を有する紙に対するトナーの転写維持性に優れる中間転写ベルトが提供される。
<6>に係る発明によれば、金属酸化物粒子が表面疎水処理されていない中間転写ベルトに比べ、凹凸を有する紙に対するトナーの転写維持性に優れる中間転写ベルトが提供される。
<7>に係る発明によれば、金属酸化物粒子がポリジメチルシロキサンにより表面疎水処理されている中間転写ベルトに比べ、凹凸を有する紙に対するトナーの転写維持性に優れる中間転写ベルトが提供される。
<10>に係る発明によれば、金属酸化物粒子の表面自由エネルギーが54mJ/m超である中間転写ベルトに比べ、凹凸を有する紙に対するトナーの転写維持性に優れる中間転写ベルトが提供される。
【0010】
<11>、又は<12>に係る発明によれば、表面における金属酸化物粒子同士の平均間隔が50nm未満、および金属酸化物粒子の表面からの平均高さが30nm未満の少なくとも一方を満たす中間転写ベルトを備える場合に比べ、凹凸を有する紙に対するトナーの転写維持性に優れる転写装置及び画像形成装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施形態に係る画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
図2】本実施形態に係る画像形成装置の他の一例における二次転写部周辺を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の一例である本実施形態について説明する。これらの説明及び実施例は実施形態を例示するものであり、実施形態の範囲を制限するものではない。
【0013】
本実施形態中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本実施形態中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本実施形態において「工程」との語は、独立した工程だけでなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
本実施形態において実施形態を図面を参照して説明する場合、当該実施形態の構成は図面に示された構成に限定されない。また、各図における部材の大きさは概念的なものであり、部材間の大きさの相対的な関係はこれに限定されない。
本実施形態において各成分は該当する物質を複数種含んでいてもよい。本実施形態において組成物中の各成分の量について言及する場合、組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計量を意味する。
【0014】
[中間転写ベルト]
本実施形態に係る中間転写ベルトは、表面に、固体潤滑剤として金属酸化物粒子を有し、前記表面における前記金属酸化物粒子同士の平均間隔が1000nm以下、前記金属酸化物粒子の前記表面からの平均高さが15nm以上320nm以下である中間転写ベルトである。
【0015】
本実施形態に係る中間転写ベルトは、上記構成により、凹凸を有する紙に対するトナーの転写維持性に優れる。その理由は定かではないが、次の通り推測される。
【0016】
電子写真装置の分野において、クリーニングブレードにより中間転写ベルトの外周面をクリーニングする転写装置では、凹凸を有する紙(つまりエンボス紙のような表面凹凸を有する記録媒体。以下単に「凹凸紙」とも称す。)に対するトナー像の転写の維持性が低下する。これは、画像形成を繰り返すうちに、像保持体等から発生する放電生成物が中間転写ベルトの表面に堆積して中間転写ベルトとトナーとの付着力が次第に増加するためである。特に、凹凸紙における凹部の端の領域では、中間転写ベルトからのトナー像の転写位置(つまり二次転写部)における凹凸紙の中間転写ベルトへの押圧力が低くなるため、トナーの転写維持性が低下する。
【0017】
これに対し、本実施形態に係る中間転写ベルトは、固体潤滑剤として金属酸化物粒子を表面に有する。中間転写ベルトの表面に存在する金属酸化物粒子は、クリーニングブレードとの接触部に堆積して粒子ダムを形成し、この粒子ダムが中間転写ベルトの表面の堆積物(例えば放電生成物)を削り取る役目(研磨する役目)を担う。そのため、堆積物による中間転写ベルトとトナーとの付着力の増加が抑制され、凹凸紙に対するトナーの転写性が画像形成を繰り返した後においても維持される。
【0018】
また、本実施形態に係る中間転写ベルトは、表面における金属酸化物粒子同士の平均間隔(以下単に「粒子間隔」とも称す)が1000nm以下、金属酸化物粒子の表面からの平均高さ(以下単に「粒子高さ」とも称す)が15nm以上320nm以下である。表面に金属酸化物粒子が存在する中間転写ベルトにトナーが転写されると、トナーと中間転写ベルトとの間にこの金属酸化物粒子が介在する。そして、粒子間隔および粒子高さが上記の範囲であると、介在する金属酸化物粒子によってトナーと中間転写ベルトとの間に適度な空隙が形成され、両者間のファンデルワールス力を低下させる。そのため、堆積物による中間転写ベルトとトナーとの付着力の増加が抑制され、凹凸紙に対するトナーの転写性が画像形成を繰り返した後においても維持される。
【0019】
但し、金属酸化物粒子が少なくて粒子間隔が1000nm超であると、中間転写ベルトとの間に金属酸化物粒子が介在せずに中間転写ベルトに直に接触するトナーが増える。その場合、堆積物による中間転写ベルトとトナーとの付着力が増加し、画像形成を繰り返した後における凹凸紙に対するトナーの転写維持性が低下する。また、金属酸化物粒子の粒子高さが高くて320nm超であると、トナーと金属酸化物粒子との接触面積が大きくなり、トナーと金属酸化物粒子とのファンデルワールス力が大きくなって付着力が大きくなるため、画像形成を繰り返した後における凹凸紙に対するトナーの転写維持性が低下する。また、金属酸化物粒子の粒子高さが低くて15nm未満であると、トナーと中間転写ベルトとの間に適度な空隙が形成されず、トナーと中間転写ベルトとのファンデルワールス力が高くなる。そのため、堆積物によって中間転写ベルトとトナーとの付着力が増加し、画像形成を繰り返した後における凹凸紙に対するトナーの転写維持性が低下する。
【0020】
以上により、本実施形態に係る中間転写ベルトは、凹凸紙に対するトナーの転写維持性に優れる。
【0021】
以下、本実施形態に係る中間転写ベルトの詳細について説明する。
【0022】
(金属酸化物粒子)
中間転写ベルトは、表面に固体潤滑剤として金属酸化物粒子を表面に有する。
【0023】
-粒子間隔-
表面における金属酸化物粒子同士の平均間隔(粒子間隔)は、1000nm以下である。
粒子間隔が1000nm超であると、画像形成を繰り返した後における凹凸紙に対するトナーの転写維持性が低下する。
なお、初期のトナー転写性を高める観点から、粒子間隔の下限値は3nm以上であることが好ましい。
トナーの転写維持性及び初期のトナー転写性の観点から、粒子間隔は3nm以上200nm以下であることが好ましく、10nm以上150nm以下であることがより好ましい。
【0024】
粒子間隔は、中間転写ベルトの表面への金属酸化物粒子の供給量の調整、金属酸化物粒子の凝集の度合いの調整、等により制御される。
【0025】
金属酸化物粒子同士の平均間隔(粒子間隔)とは、隣り合う金属酸化物粒子の間隔の平均値を意味する。なお、間隔とは、粒子の頂点(中間転写ベルトの表面から最も離れた点)と該粒子に隣り合う粒子の頂点との距離を意味する。金属酸化物粒子が凝集している場合には、その凝集した粒子を一つの粒子とみなす。
【0026】
粒子間隔は以下の方法により測定する。
金属酸化物粒子が存在する中間転写ベルトの表面をSEM画像として撮影し、この画像の二値化画像に直線10本を無作為に引き、金属酸化物粒子でない領域の長さを測定して、そこから算術平均値を算出する。
【0027】
-粒子高さ-
金属酸化物粒子の表面からの平均高さ(粒子高さ)は、15nm以上320nm以下である。
粒子高さが320nm超であると、初期のトナー転写性が低下する。粒子高さが15nm未満であると、画像形成を繰り返した後における凹凸紙に対するトナーの転写維持性が低下する。
なお、トナーの転写維持性及び初期のトナー転写性の観点から、粒子高さは30nm以上150nm以下であることが好ましく、40nm以上130nm以下であることがより好ましい。
【0028】
粒子高さは、金属酸化物粒子の粒径の調整、金属酸化物粒子の凝集の度合いの調整、等により制御される。
【0029】
金属酸化物粒子の表面からの平均高さ(粒子高さ)とは、中間転写ベルトの表面に存在する金属酸化物粒子の該表面からの高さの平均値を意味する。なお、高さとは、粒子の頂点(中間転写ベルトの表面から最も離れた点)までの距離を意味する。金属酸化物粒子が凝集している場合には、その凝集した粒子を一つの粒子とみなす。
【0030】
粒子高さは以下の方法により測定する。
イオンビームで作成したベルトの厚さ方向の断面をSEMにより撮影し、この断面画像を2値化処理して、粒子高さを測定する。
【0031】
-粒子のアスペクト比-
金属酸化物粒子のアスペクト比は、1以上1.8以下であることが好ましい。つまり、金属酸化物粒子は球形に近い形状であることが好ましい。
アスペクト比が1.8以下であることで、介在する金属酸化物粒子によってトナーと中間転写ベルトとの間に適度な空隙が形成され、凹凸紙に対するトナーの転写性が画像形成を繰り返した後においても、より維持され易くなる。
アスペクト比は、トナーの転写維持性及び初期のトナー転写性の観点から、1以上1.4以下であることがより好ましい。
【0032】
金属酸化物粒子のアスペクト比は、長軸長さと短軸長さとの比(長軸長さ/短軸長さ)を意味する。金属酸化物粒子の長軸長さは、金属酸化物粒子の最大長さを意味する。金属酸化物粒子の短軸長さは、金属酸化物粒子の長軸長さの延長線に対する直交方向の長さのうち、最大長さを意味する。
金属酸化物粒子のアスペクト比は、走査電子顕微鏡により100個の金属酸化物粒子のアスペクト比を求めた平均値とする。
【0033】
-粒子の疎水化-
金属酸化物粒子は、表面疎水処理されていることが好ましい。
表面疎水処理された金属酸化物粒子を用いることで、トナーと金属酸化物粒子との付着力が低減され、初期のトナー転写性、及び画像形成を繰り返した後における凹凸紙に対するトナーの転写維持性が、より低下し易くなる。
【0034】
表面疎水処理に用いる疎水化処理剤としては、例えばアルキル基(例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等)を有する公知の有機珪素化合物が挙げられ、具体例には、シラザン化合物(例えばメチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、トリメチルクロロシラン、トリメチルメトキシシラン、オクチルトリエトキシシランなどのシラン化合物、ヘキサメチルジシラザン、テトラメチルジシラザン等)等が挙げられる。疎水化処理剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0035】
金属酸化物粒子は、表面自由エネルギーが54mJ/m以下であることが好ましい。金属酸化物粒子の表面自由エネルギーが上記範囲であることで、中間転写ベルトに対するトナーの付着力が低減され、凹凸を有する紙に対するトナーの優れた転写維持性が得られ、特に高速対応の画像形成装置において凹凸を有する紙に対するトナーの優れた転写維持性が得られる。表面自由エネルギーは、金属酸化物粒子に対する表面疎水処理の度合いや、用いる疎水化処理剤の選択等により調整される。
金属酸化物粒子の表面自由エネルギーは、さらに45mJ/m以下であることがより好ましく、30mJ/m以下であることがさらに好ましい。
【0036】
金属酸化物粒子の表面自由エネルギーは、以下の方法により測定される。
OWRK法に基づき、表面自由エネルギーが既知である水及びジヨードメタンを用い、金属酸化物粒子の圧粉体の表面に水を滴下して水の接触角を測定し、さらに金属酸化物の圧粉体の表面にジヨードメタンを滴下してジヨードメタンの接触角を測定し、表面自由エネルギー(mJ/m)を算出する。
【0037】
-金属酸化物粒子の種類-
金属酸化物粒子としては、例えばシリカ粒子(SiO)、チタニア粒子(TiO)、アルミナ粒子(Al)、酸化セリウム粒子、酸化マグネシウム粒子、酸化亜鉛粒子、及びジルコニア粒子(ZrO)が挙げられる。
これらの中でも、金属酸化物粒子としては、シリカ粒子が好ましい。
【0038】
金属酸化物粒子としてシリカ粒子を用いることで、このシリカ粒子が中間転写ベルトとクリーニングブレードとの接触部に堆積して粒子ダムを形成した際の、堆積物(例えば放電生成物)を削り取る能力(研磨能)をより高められる。そのため、凹凸紙に対するトナーの転写性が画像形成を繰り返した後においても、より維持され易くなる。
【0039】
(中間転写ベルトの構成)
本実施形態に係る中間転写ベルトは、ベルト本体と、ベルト本体の表面(つまり外周面)に存在する固体潤滑剤としての金属酸化物粒子と、を有する。
ベルト本体は、樹脂基材層の単層体であってもよいし、樹脂基材層を含む積層体であってもよい。
樹脂基材層を含む積層体は、樹脂基材層の外周面上に弾性層を設けた積層体、樹脂基材層の内周面上に樹脂層を設けた積層体、樹脂基材層の外周面上に弾性層及び樹脂基材層の内周面上に樹脂層を設けた積層体が挙げられる。
なお、樹脂基材層の外周面上に設ける弾性層、樹脂基材層の内周面に樹脂層は、中間転写ベルトに採用されている周知の層が適用される。
【0040】
-樹脂基材層-
樹脂基材層は、例えば、樹脂と、導電剤と、を含む。樹脂基材層は、必要に応じて、周知のその他成分を含んでもよい。
【0041】
・樹脂
樹脂としては、例えば、ポリイミド樹脂(PI樹脂)、ポリアミドイミド樹脂(PAI樹脂)、芳香族ポリエーテルケトン樹脂(例えば、芳香族ポリエーテルエーテルケトン樹脂等)、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS樹脂)、ポリエーテルイミド樹脂(PEI樹脂)、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂等が挙げられる。
樹脂は、機械的強度及び導電剤の分散性の観点から、ポリイミド系樹脂(つまりイミド結合を有する構成単位を含む樹脂)が好ましく、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂がより好ましく、ポリイミド樹脂がより好ましい。
【0042】
ポリイミド樹脂としては、例えば、テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物との重合体であるポリアミック酸(ポリイミド樹脂の前駆体)のイミド化物が挙げられる。
ポリイミド樹脂としては、例えば、下記一般式(I)で示される構成単位を有する樹脂が挙げられる。
【0043】
【化1】

【0044】
一般式(I)中、Rは4価の有機基を表し、Rは2価の有機基を表す。
で表される4価の有機基としては、芳香族基、脂肪族基、環状脂肪族基、芳香族基と脂肪族基とを組み合わせた基、又はそれらが置換された基が挙げられる。4価の有機基として具体的には、例えば、後述するテトラカルボン酸二無水物の残基が挙げられる。
で表される2価の有機基としては、芳香族基、脂肪族基、環状脂肪族基、芳香族基と脂肪族基とを組み合わせた基、又はそれらが置換された基が挙げられる。2価の有機基として具体的には、例えば、後述するジアミン化合物の残基が挙げられる。
【0045】
ポリイミド樹脂の原料として用いるテトラカルボン酸二無水物として具体的には、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,2’-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)スルホン酸二無水物、ペリレン-3,4,9,10-テトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、エチレンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。
【0046】
ポリイミド樹脂の原料として用いるジアミン化合物の具体例としては、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジクロロベンジジン、4,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、1,5-ジアミノナフタレン、m-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、3,3’-ジメチル4,4’-ビフェニルジアミン、ベンジジン、3,3’-ジメチルベンジジン、3,3’-ジメトキシベンジジン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルプロパン、2,4-ビス(β-アミノ第三ブチル)トルエン、ビス(p-β-アミノ-第三ブチルフェニル)エーテル、ビス(p-β-メチル-δ-アミノフェニル)ベンゼン、ビス-p-(1,1-ジメチル-5-アミノ-ペンチル)ベンゼン、1-イソプロピル-2,4-m-フェニレンジアミン、m-キシリレンジアミン、p-キシリレンジアミン、ジ(p-アミノシクロヘキシル)メタン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ジアミノプロピルテトラメチレン、3-メチルヘプタメチレンジアミン、4,4-ジメチルヘプタメチレンジアミン、2,11-ジアミノドデカン、1,2-ビス-3-アミノプロボキシエタン、2,2-ジメチルプロピレンジアミン、3-メトキシヘキサメチレンジアミン、2,5-ジメチルヘプタメチレンジアミン、3-メチルヘプタメチレンジアミン、5-メチルノナメチレンジアミン、2,17-ジアミノエイコサデカン、1,4-ジアミノシクロヘキサン、1,10-ジアミノ-1,10-ジメチルデカン、12-ジアミノオクタデカン、2,2-ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、ピペラジン、HN(CHO(CHO(CH)NH、HN(CHS(CHNH、HN(CHN(CH(CHNH等が挙げられる。
【0047】
ポリアミドイミド樹脂としては、繰り返し単位にイミド結合とアミド結合とを有する樹脂が挙げられる。
より具体的には、ポリアミドイミド樹脂は、酸無水物基を有する3価のカルボン酸化合物(トリカルボン酸ともいう)と、ジイソシアネート化合物又はジアミン化合物と、の重合体が挙げられる。
【0048】
トリカルボン酸としては、トリメリット酸無水物及びその誘導体が好ましい。トリカルボン酸の他に、テトラカルボン酸二無水物、脂肪族ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸などを併用してもよい。
【0049】
ジイソシアネート化合物としては、3,3’-ジメチルビフェニル-4,4’-ジイソシアネート、2,2’-ジメチルビフェニル-4,4’-ジイソシアネート、ビフェニル-4,4’-ジイソシアネート、ビフェニル-3,3’-ジイソシアネート、ビフェニル-3,4’-ジイソシアネート、3,3’-ジエチルビフェニル-4,4’-ジイソシアネート、2,2’-ジエチルビフェニル-4,4’-ジイソシアネート、3,3’-ジメトキシビフェニル-4,4’-ジイソシアネート、2,2’-ジメトキシビフェニル-4,4’-ジイソシアネート、ナフタレン-1,5-ジイソシアネート、ナフタレン-2,6-ジイソシアネート等が挙げられる。
ジアミン化合物としては、上記のイソシアネートと同様の構造を有し、イソシアナト基の代わりにアミノ基を有する化合物が挙げられる。
【0050】
ここで、樹脂基材層に対する、樹脂の含有量は、機械的強度及び体積抵抗率調整等の観点から、60質量%以上95質量%以下であることが好ましく、70質量%以上95量%以下であることがより好ましく、75質量%以上90質量%以下であることが更に好ましい。
【0051】
・導電剤
導電剤としては、導電性(例えば体積抵抗率10Ω・cm未満、以下同様である)又は半導電性(例えば体積抵抗率10Ω・cm以上1013Ω・cm以下、以下同様である)の粉末が挙げられる。
具体的には、導電剤としては、特に制限はないが、例えば、カーボンブラック、金属(例えばアルミニウム、ニッケル等)、金属酸化物(例えば酸化イットリウム、酸化錫等)、イオン導電性物質(例えばチタン酸カリウム、LiCl等)等が挙げられる。
【0052】
導電剤は、その使用目的により選択されるが、カーボンブラックが好ましい。
カーボンブラックとしては、例えば、ケッチェンブラック、オイルファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、等が挙げられる。カーボンブラックとしては、表面が処理されたカーボンブラック(以下、「表面処理カーボンブラック」ともいう)を用いてもよい。
表面処理カーボンブラックは、その表面に、例えば、カルボキシ基、キノン基、ラクトン基、ヒドロキシ基等を付与して得られる。表面処理の方法としては、例えば、高温雰囲気下で空気と接触して反応させる空気酸化法、常温(例えば、22℃)下で窒素酸化物又はオゾンと反応させる方法、高温雰囲気下での空気酸化後、低温でオゾンにより酸化する方法等を挙げられる。
【0053】
カーボンブラックの平均粒径としては、分散性、機械的強度、体積抵抗率、成膜性等の観点から、2nm以上40nm以下が好ましく、8nm以上20nm以下がより好ましく、10nm以上15nm以下がさらに好ましい。
【0054】
導電剤(特にカーボンブラック)の平均粒径は、次の方法により測定される。
まず、樹脂基材層から、ミクロトームにより、100nmの厚さの測定サンプルを採取し、本測定サンプルをTEM(透過型電子顕微鏡)により観察する。そして、導電剤50個の各々の投影面積に等しい円の直径(すなわち円相当径)を粒子径として、その平均値を平均粒径とする。
【0055】
導電剤の含有量は、機械的強度、体積抵抗率の観点から、樹脂基材層に対して10質量%以上50質量%以下が好ましく、12質量%以上40質量%以下がより好ましく、15質量%以上30質量%以下であることが好ましい。
【0056】
-その他成分-
その他成分としては、例えば、機械的強度向上のためのフィラー、ベルトの熱劣化を防止するための酸化防止剤、流動性を向上させるための界面活性剤、耐熱老化防止剤等が挙げられる。
その他成分が含まれる場合、その他の成分の含有量は、樹脂基材層に対して、0質量%超10質量%以下が好ましく、0質量%超5質量%以下がより好ましく、0質量%超1質量%以下が更に好ましい。
【0057】
-樹脂基材層の厚み-
樹脂基材層の厚さは、機械的強度の観点から、60μm以上120μm以下であることが好ましく、80μm以上120μm以下であることがより好ましい。
【0058】
樹脂基材層の厚さは、次の通り測定する。
即ち、樹脂基材層の厚み方向の断面を光学顕微鏡又は走査型電子顕微鏡により観察して、測定対象の層の厚みを10箇所測定し、この平均値を厚みとする。
【0059】
(中間転写ベルトの体積抵抗率)
中間転写ベルトの、500Vの電圧を10秒間印加した際の体積抵抗率の常用対数値は、転写性の観点から、9.0(logΩ・cm)以上13.5(logΩ・cm)以下であることが好ましく、9.5(logΩ・cm)以上13.2(logΩ・cm)以下であることがより好ましく、10.0(logΩ・cm)以上12.5(logΩ・cm)以下であることが特に好ましい。
中間転写ベルトにおける500Vの電圧を10秒間印加した際の体積抵抗率の測定は、以下の方法により行う。
抵抗測定機として、微小電流計(Advantest社製R8430A)を用い、プローブとしてURプローブ(三菱ケミカルアナリテック(株)製)を使用し、体積抵抗率(logΩ・cm)について、中間転写ベルトを周方向に等間隔で6点、幅方向の中央部及び両端部について3点の計18点、電圧500V、印加時間10秒間、加圧1kgfで測定し、平均値を算出する。また、温度22℃、湿度55%RHの環境下で測定を行うものとする。
【0060】
(中間転写ベルトの表面抵抗率)
中間転写ベルトの、外周面に500Vの電圧を10秒間印加した際の表面抵抗率の常用対数値は、凹凸紙への転写性の観点から、10.0(logΩ/suq.)以上15.0(logΩ/suq.)以下であることが好ましく、10.5(logΩ/suq.)以上14.0(logΩ/suq.)以下であることがより好ましく、11.0(logΩ/suq.)以上13.5(logΩ/suq.)以下であることが特に好ましい。
なお、前記表面抵抗率の単位logΩ/suq.は、表面抵抗率を単位面積当たりの抵抗値の対数値で表すものあり、log(Ω/suq.)、logΩ/suquare、logΩ/□等とも表記する。
中間転写ベルトの外周面における500Vの電圧を10秒間印加した際の表面抵抗率の測定は、以下の方法により行う。
抵抗測定機として、微小電流計(Advantest社製R8430A)を用い、プローブとしてURプローブ(三菱ケミカルアナリテック(株)製)を使用し、無端ベルトの外周面の表面抵抗率(logΩ/suq.)について、中間転写ベルトの外周面を周方向に等間隔で6点、幅方向の中央部及び両端部について3点の計18点、電圧500V、印加時間10秒間、加圧1kgfで測定し、平均値を算出する。また、温度22℃、湿度55%RHの環境下で測定を行うものとする。
【0061】
<中間転写ベルトの製造方法>
本実施形態に係る中間転写ベルトの製造方法は、例えば、ベルト本体を準備する工程と、ベルト本体の外周面に、固体潤滑剤としての金属酸化物粒子を付与する工程と、を有する。
【0062】
ベルト本体を準備する工程では、周知の中間転写ベルトの製造方法を利用してベルト本体を得る。
【0063】
金属酸化物粒子を付与する工程としては、例えば下記(1)、(2)及び(3)の態様が挙げられ、(1)の態様が好ましい。
(1)金属酸化物粒子の成型物に、供給部材を接触させて金属酸化物粒子を削り取り、削り取られた金属酸化物粒子をベルト本体の表面に供給する態様
(2)金属酸化物粒子の成型物を中間転写ベルト(つまりベルト本体)に直接押し当てて、摩耗させることで金属酸化物粒子をベルト本体の表面に供給する態様
(3)粉体状の金属酸化物粒子をロールなどの供給部材に適量載せ、供給部材からベルト本体の表面に供給する態様
【0064】
[転写装置]
-第一実施形態-
第一本実施形態に係る転写装置は、表面(つまり外周面)にトナー像が転写される中間転写ベルトと、像保持体の表面に形成されたトナー像を前記中間転写ベルトの表面に一次転写する一次転写部材を有する一次転写装置と、中間転写ベルトの表面に接触して配置され、中間転写ベルトの表面に転写されたトナー像を記録媒体の表面に二次転写する二次転写部材を有する二次転写装置と、中間転写ベルトの表面をクリーニングするクリーニングブレードを有するクリーニング装置と、を備える。そして、中間転写ベルトとして、上記本実施形態に係る中間転写ベルトが適用される。
【0065】
第一実施形態に係る転写装置では、上記構成より、凹凸を有する紙に対するトナーの転写維持性に優れる。
【0066】
一次転写装置において、一次転写部材は、中間転写ベルトを挟んで像保持体に対向して配置される。一次転写装置においては、上記一次転写部材により中間転写ベルトに対しトナーの帯電極性と逆極性の電圧を付与することで、トナー像が中間転写ベルトの表面に一次転写される。
【0067】
二次転写装置において、二次転写部材は、中間転写ベルトのトナー像保持側に配置される。そして、二次転写装置は、例えば、二次転写部材と共に、中間転写ベルトのトナー像保持側と反対側に配置される背面部材と、を備える。二次転写装置においては、中間転写ベルト及び記録媒体を二次転写部材と背面部材とで挟み込み転写電界を形成することで、中間転写ベルト上のトナー像が記録媒体に二次転写される。
二次転写部材は、二次転写ロールであってもよいし、二次転写ベルトであってもよい。なお、背面部材は、例えば、背面ロールが適用される。
【0068】
クリーニング装置において、クリーニングブレードは、中間転写ベルトのトナー像保持側に配置される。そして、クリーニング装置は、例えば、クリーニングブレードと共に、中間転写ベルトのトナー像保持側と反対側に配置される背面部材と、を備える。クリーニング装置では、例えば、クリーニングブレードと背面部材とで中間転写ベルトを挟みつつ、クリーニングブレードにより中間転写ベルトの表面をクリーニングする。
【0069】
なお、本実施形態に係る転写装置は、複数の中間転写ベルトを介して、トナー像を記録媒体の表面に転写する転写装置であってもよい。つまり、転写装置は、例えば、像保持体から第1中間転写ベルトにトナー像を一次転写し、さらに、第1中間転写ベルトから第2中間転写ベルトにトナー像を二次転写した後、第二中間転写ベルトから記録媒体にトナー像を三次転写する転写装置であってもよい。
転写装置が、複数の中間転写ベルトの少なくとも一つに、上記本実施形態に係る中間転写ベルトを適用する。
【0070】
-第二実施形態-
第二実施形態に係る転写装置は、表面にトナー像が転写される中間転写ベルトと、像保持体の表面に形成されたトナー像を中間転写ベルトの表面に一次転写する一次転写部材を有する一次転写装置と、中間転写ベルトの表面に接触して配置され、中間転写ベルトの表面に転写された前記トナー像を記録媒体の表面に二次転写する二次転写部材を有する二次転写装置と、中間転写ベルトの表面をクリーニングするクリーニングブレードを有するクリーニング装置と、中間転写ベルトの表面に接触して設けられ、中間転写ベルトの表面に固体潤滑剤として金属酸化物粒子を供給する金属酸化物粒子供給装置と、を備える。
【0071】
第二実施形態に係る転写装置では、上記構成より、凹凸を有する紙に対するトナーの転写維持性に優れる。
【0072】
第二実施形態に係る転写装置において、金属酸化物粒子供給装置は、例えば、二次転写装置より中間転写ベルトの回転方向下流側、かつクリーニング装置より中間転写ベルトの回転方向上流側に設けられる。
【0073】
金属酸化物粒子供給装置は、例えば、固体潤滑剤としての金属酸化物粒子の成型物と、金属酸化物粒子供給部材と、を有する態様が挙げられる(前述の(1)の態様)。
金属酸化物粒子の成型物は、例えば、結着樹脂と共に固体状に固めた金属酸化物粒子、金属酸化物粒子を圧縮成型した成型物等が挙げられる。成型物の形状としては、棒状、板状(つまりブレード状)等がある。
金属酸化物粒子供給部材は、回転ブラシ、ゴムロール等が挙げられ、これらの中でも回転ブラシが好ましい。回転ブラシ、ゴムロールは、回転しながら金属酸化物粒子の成型物に接触して金属酸化物粒子を削り取り、中間転写ベルトの表面に削り取った金属酸化物粒子を供給する。
【0074】
また、金属酸化物粒子供給装置の態様として、例えば、金属酸化物粒子の成型物を中間転写ベルト(つまりベルト本体)に直接押し当てる態様が挙げられる(前述の(2)の態様)。中間転写ベルトに押し当てられた金属酸化物粒子の成型物が摩耗することで、金属酸化物粒子がベルト本体の表面に供給される。
【0075】
第二実施形態に係る転写装置において、金属酸化物粒子供給装置以外の構成については、上記第一実施形態に係る転写装置で説明した構成と同様である。
【0076】
[画像形成装置]
本実施形態に係る画像形成装置は、像保持体の表面にトナー像を形成するトナー像形成装置と、記像保持体の表面に形成された前記トナー像を記録媒体の表面に転写する転写装置と、を備える。そして、転写装置は、上記第一実施形態に係る転写装置、又は第二実施形態に係る転写装置が適用される。
【0077】
トナー像形成装置は、例えば、像保持体と、像保持体の表面を帯電する帯電装置と、帯電した像保持体の表面に静電潜像を形成する静電潜像形成装置と、トナーを含む現像剤により、像保持体の表面に形成された静電潜像を現像してトナー像を形成する現像装置と、を備える装置が例示される。
【0078】
本実施形態に係る画像形成装置は、記録媒体の表面に転写されたトナー像を定着する定着手段を備える装置;トナー像の転写後、帯電前の像保持体の表面をクリーニングするクリーニング手段を備えた装置;トナー像の転写後、帯電前に像保持体の表面に除電光を照射して除電する除電手段を備える装置;像保持体の温度を上昇させ、相対温度を低減させるための像保持体加熱部材を備える装置等の周知の画像形成装置が適用される。
【0079】
本実施形態に係る画像形成装置は、乾式現像方式の画像形成装置、湿式現像方式(液体現像剤を利用した現像方式)の画像形成装置のいずれであってもよい。
【0080】
なお、本実施形態に係る画像形成装置において、例えば、像保持体を備える部分が、画像形成装置に対して着脱されるカートリッジ構造(プロセスカートリッジ)であってもよい。プロセスカートリッジとしては、例えば、トナー像形成装置と転写装置とを備えるプロセスカートリッジが好適に用いられる。
【0081】
以下、本実施形態に係る画像形成装置の一例について図面を参照しつつ説明する。ただし、本実施形態に係る画像形成装置は、これに限定されるわけではない。なお、図に示す主要部を説明し、その他はその説明を省略する。
ここで、図面を参照しつつ説明する画像形成装置の一例は、転写装置として、上記第二実施形態に係る転写装置を適用した画像形成装置である。転写装置として、上記第一実施形態に係る転写装置を適用した画像形成装置は、転写装置において、固体潤滑剤供給装置を設けてもよいし、設けなくてもよい。
【0082】
(画像形成装置)
図1は、本実施形態に係る画像形成装置の構成を示した概略構成図である。
【0083】
本実施形態に係る画像形成装置100は、図1に示すように、例えば、一般にタンデム型と呼ばれる中間転写方式の画像形成装置であって、電子写真方式により各色成分のトナー像が形成される複数の画像形成ユニット1Y、1M、1C、1K(トナー像形成装置の一例)と、各画像形成ユニット1Y、1M、1C、1Kにより形成された各色成分トナー像を中間転写ベルト15に順次転写(一次転写)させる一次転写部10と、中間転写ベルト15上に転写された重畳トナー像を記録媒体である用紙Kに一括転写(二次転写)させる二次転写部20と、二次転写された画像を用紙K上に定着させる定着装置60と、を備えている。また、画像形成装置100は、各装置(各部)の動作を制御する制御部40を有している。
【0084】
画像形成装置100の各画像形成ユニット1Y、1M、1C、1Kは、表面に形成されるトナー像を保持する、矢印A方向に回転する感光体11(像保持体の一例)を備えている。
【0085】
感光体11の周囲には、帯電手段の一例として、感光体11を帯電させる帯電器12が設けられ、潜像形成手段の一例として、感光体11上に静電潜像を書込むレーザ露光器13(図中露光ビームを符号Bmで示す)が設けられている。
【0086】
また、感光体11の周囲には、現像手段の一例として、各色成分トナーが収容されて感光体11上の静電潜像をトナーにより可視像化する現像器14が設けられ、感光体11上に形成された各色成分トナー像を一次転写部10にて中間転写ベルト15に転写する一次転写ロール16が設けられている。
【0087】
更に、感光体11の周囲には、感光体11上の残留トナーが除去される感光体クリーナ17が設けられ、帯電器12、レーザ露光器13、現像器14、一次転写ロール16及び感光体クリーナ17の電子写真用デバイスが感光体11の回転方向に沿って順次配設されている。これらの画像形成ユニット1Y、1M、1C、1Kは、中間転写ベルト15の上流側から、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の順に、略直線状に配置されている。
【0088】
中間転写ベルト15は、各種ロールによって図1に示すB方向に目的に合わせた速度で循環駆動(回転)されている。この各種ロールとして、定速性に優れたモータ(不図示)により駆動されて中間転写ベルト15を回転させる駆動ロール31、各感光体11の配列方向に沿って略直線状に延びる中間転写ベルト15を支持する支持ロール32、中間転写ベルト15に対して張力を与えると共に中間転写ベルト15の蛇行を防止する補正ロールとして機能する張力付与ロール33、二次転写部20に設けられる背面ロール25、中間転写ベルト15上の残留トナーを掻き取るクリーニング部に設けられるクリーニング背面ロール34を有している。
【0089】
一次転写部10は、中間転写ベルト15を挟んで感光体11に対向して配置される一次転写ロール16で構成されている。そして、一次転写ロール16は中間転写ベルト15を挟んで感光体11に圧接配置され、更に一次転写ロール16にはトナーの帯電極性(マイナス極性とする。以下同様。)と逆極性の電圧(一次転写バイアス)が印加されるようになっている。これにより、各々の感光体11上のトナー像が中間転写ベルト15に順次、静電吸引され、中間転写ベルト15上において重畳されたトナー像が形成されるようになっている。
【0090】
二次転写部20は、背面ロール25と、中間転写ベルト15のトナー像保持面側に配置される二次転写ロール22と、を備えて構成されている。
【0091】
背面ロール25は、表面抵抗率が1×10Ω/□以上1×1010Ω/□以下となるように形成され、硬度は、例えば、70°(アスカーC:高分子計器社製、以下同様。)に設定される。この背面ロール25は、中間転写ベルト15の裏面側に配置されて二次転写ロール22の対向電極を構成し、二次転写バイアスが安定的に印加される金属製の給電ロール26が接触配置されている。
【0092】
一方、二次転写ロール22は、体積抵抗率が107.5Ωcm以上108.5Ωcm以下の円筒ロールである。そして、二次転写ロール22は中間転写ベルト15を挟んで背面ロール25に圧接配置され、更に二次転写ロール22は接地されて背面ロール25との間に二次転写バイアスが形成され、二次転写部20に搬送される用紙K上にトナー像を二次転写する。
【0093】
また、中間転写ベルト15の二次転写部20の下流側には、二次転写後の中間転写ベルト15上の残留トナーや紙粉を除去し、中間転写ベルト15の表面をクリーニングする中間転写ベルトクリーニング部材35が接離自在に設けられている。中間転写ベルトクリーニング部材35は、クリーニングロールが例示される。ただし、クリーニングブレードであってもよい。
また、二次転写ロール22の二次転写部20の下流側には、二次転写後の二次転写ロール22上の残留トナーや紙粉を除去し、二次転写ロール22の表面をクリーニングする二次転写ロールクリーニング部材22Aが設けられている。二次転写ロールクリーニング部材22Aは、クリーニングブレードが例示される。ただし、クリーニングロールであってもよい。
【0094】
また、中間転写ベルト15の、二次転写部20の下流側、かつ中間転写ベルトクリーニング部材35の上流側には、固体潤滑剤としての金属酸化物粒子を供給する金属酸化物粒子供給装置70が設けられている。
金属酸化物粒子供給装置70は、金属酸化物粒子の成型物71と、金属酸化物粒子の成型物を削り取り、金属酸化物粒子を中間転写ベルト15の表面に供給する金属酸化物粒子供給部材72と、摺動により金属酸化物粒子を中間転写ベルト15の表面に擦りつけて、金属酸化物粒子の被覆体を形成する摺動部材73と、を有する。
【0095】
なお、中間転写ベルト15、一次転写ロール16、二次転写ロール22、中間転写ベルトクリーニング部材35及び金属酸化物粒子供給装置70を備える構成が、転写装置の一例に該当する。
ここで、画像形成装置100は、二次転写ロール22に代えて、二次転写ベルト(二次転写部材の一例)を備える構成であってもよい。具体的には、図2に示すように、画像形成装置100は、二次転写ベルト23と、中間転写ベルト15および二次転写ベルト23を介して背面ロール25に対向配置されている駆動ロール23Aと、駆動ロール23Aと共に二次転写ベルト23を張架するアイドラロール23Bと、を備えた二次転写装置を備えてもよい。
【0096】
一方、イエローの画像形成ユニット1Yの上流側には、各画像形成ユニット1Y、1M、1C、1Kにおける画像形成タイミングをとるための基準となる基準信号を発生する基準センサ(ホームポジションセンサ)42が配設されている。また、黒の画像形成ユニット1Kの下流側には、画質調整を行うための画像濃度センサ43が配設されている。この基準センサ42は、中間転写ベルト15の裏側に設けられたマークを認識して基準信号を発生しており、この基準信号の認識に基づく制御部40からの指示により、各画像形成ユニット1Y、1M、1C、1Kは画像形成を開始するように構成されている。
【0097】
更に、本実施形態に係る画像形成装置では、用紙Kを搬送する搬送手段として、用紙Kを収容する用紙収容部50、この用紙収容部50に集積された用紙Kを予め定められたタイミングで取り出して搬送する給紙ロール51、給紙ロール51により繰り出された用紙Kを搬送する搬送ロール52、搬送ロール52により搬送された用紙Kを二次転写部20へと送り込む搬送ガイド53、二次転写ロール22により二次転写された後に搬送される用紙Kを定着装置60へと搬送する搬送ベルト55、用紙Kを定着装置60に導く定着入口ガイド56を備えている。
【0098】
次に、本実施形態に係る画像形成装置の基本的な作像プロセスについて説明する。
本実施形態に係る画像形成装置では、図示しない画像読取装置や図示しないパーソナルコンピュータ(PC)等から出力される画像データは、図示しない画像処理装置により画像処理が施された後、画像形成ユニット1Y、1M、1C、1Kによって作像作業が実行される。
【0099】
画像処理装置では、入力された反射率データに対して、シェーディング補正、位置ズレ補正、明度/色空間変換、ガンマ補正、枠消しや色編集、移動編集等の各種画像編集等の画像処理が施される。画像処理が施された画像データは、Y、M、C、Kの4色の色材階調データに変換され、レーザ露光器13に出力される。
【0100】
レーザ露光器13では、入力された色材階調データに応じて、例えば半導体レーザから出射された露光ビームBmを画像形成ユニット1Y、1M、1C、1Kの各々の感光体11に照射している。画像形成ユニット1Y、1M、1C、1Kの各感光体11では、帯電器12によって表面が帯電された後、このレーザ露光器13によって表面が走査露光され、静電潜像が形成される。形成された静電潜像は、各々の画像形成ユニット1Y、1M、1C、1Kによって、Y、M、C、Kの各色のトナー像として現像される。
【0101】
画像形成ユニット1Y、1M、1C、1Kの感光体11上に形成されたトナー像は、各感光体11と中間転写ベルト15とが接触する一次転写部10において、中間転写ベルト15上に転写される。より具体的には、一次転写部10において、一次転写ロール16により中間転写ベルト15の基材に対しトナーの帯電極性(マイナス極性)と逆極性の電圧(一次転写バイアス)が付加され、トナー像を中間転写ベルト15の表面に順次重ね合わせて一次転写が行われる。
【0102】
トナー像が中間転写ベルト15の表面に順次一次転写された後、中間転写ベルト15は移動してトナー像が二次転写部20に搬送される。トナー像が二次転写部20に搬送されると、搬送手段では、トナー像が二次転写部20に搬送されるタイミングに合わせて給紙ロール51が回転し、用紙収容部50から目的とするサイズの用紙Kが供給される。給紙ロール51により供給された用紙Kは、搬送ロール52により搬送され、搬送ガイド53を経て二次転写部20に到達する。この二次転写部20に到達する前に、用紙Kは一旦停止され、トナー像が保持された中間転写ベルト15の移動タイミングに合わせて位置合わせロール(不図示)が回転することで、用紙Kの位置とトナー像の位置との位置合わせがなされる。
【0103】
二次転写部20では、中間転写ベルト15を介して、二次転写ロール22が背面ロール25に加圧される。このとき、タイミングを合わせて搬送された用紙Kは、中間転写ベルト15と二次転写ロール22との間に挟み込まれる。その際に、給電ロール26からトナーの帯電極性(マイナス極性)と同極性の電圧(二次転写バイアス)が印加されると、二次転写ロール22と背面ロール25との間に転写電界が形成される。そして、中間転写ベルト15上に保持された未定着トナー像は、二次転写ロール22と背面ロール25とによって加圧される二次転写部20において、用紙K上に一括して静電転写される。
【0104】
その後、トナー像が静電転写された用紙Kは、二次転写ロール22によって中間転写ベルト15から剥離された状態でそのまま搬送され、二次転写ロール22の用紙搬送方向下流側に設けられた搬送ベルト55へと搬送される。搬送ベルト55では、定着装置60における最適な搬送速度に合わせて、用紙Kを定着装置60まで搬送する。定着装置60に搬送された用紙K上の未定着トナー像は、定着装置60によって熱及び圧力で定着処理を受けることで用紙K上に定着される。そして定着画像が形成された用紙Kは、画像形成装置の排出部に設けられた排紙収容部(不図示)に搬送される。
【0105】
一方、用紙Kへの転写が終了した後、中間転写ベルト15上に残った残留トナーは、中間転写ベルト15の回転に伴ってクリーニング部まで搬送され、クリーニング背面ロール34及び中間転写ベルトクリーニング部材35によって中間転写ベルト15上から除去される。
【0106】
以上、本実施形態について説明したが、上記実施の形態に限定的に解釈されるものではなく、種々の変形、変更、改良が可能である。
【実施例0107】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下の説明において、特に断りのない限り、「部」及び「%」はすべて質量基準である。
【0108】
<実施例1>
-ベルト本体作製工程-
3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物と4,4’-ジアミノジフェニルエーテルとの重合体からなるポリアミック酸をN-メチル-2-ピロリドン(NMP)に溶解したPI前駆体溶液を準備した。PI前駆体溶液は、ポリアミック酸のイミド化後のポリイミド樹脂の固形分率が18質量%の溶液とした。
次に、PI前駆体溶液に、ポリアミック酸の固形分100質量部に対し、カーボンブラック(FW200:オリオンエンジニアドカーボン社製、平均粒径=13nm)を19質量部になるよう添加し、混合・攪拌することにより、カーボンブラック分散PI前駆体溶液を調製した。
次に、アルミニウム製の円筒体の外面に円筒体を回転させながら、円筒体外面にディスペンサーを介して、500mmの幅で、カーボンブラック分散PI前駆体溶液を吐出した。
その後、円筒体を水平のまま、140℃で30分間加熱乾燥させ、最高温度が320℃となるように120分加熱し、厚さ80μmのベルト本体(つまり、ポリイミド樹脂層の単層体)を363mmの幅にカットした。
以上の工程を経て、中間転写ベルト本体を得た。
【0109】
-固体潤滑剤-
固体潤滑剤として、表1に記載のシリカ粒子を結着樹脂と共に固めて板状成型体を得た。
板状成型体を回転ブラシにより削って、固体潤滑剤を中間転写ベルトに供給する固体潤滑剤供給装置を作製した。
【0110】
-評価試験-
固体潤滑剤供給装置を装着した画像形成装置「Versant 180 press(富士フイルムビジネスイノベーション社製)」の改造機により、トナー付着力、及びエンボス紙転写性について評価した。
固体潤滑剤供給装置から供給する固体潤滑剤の供給量は、表1に示す粒子間隔及び粒子高さとなる量とした。
【0111】
<他の実施例および比較例>
用いる固体潤滑剤の種類、粒径、アスペクト比、表面疎水処理の有無、疎水化処理剤の種類(疎水化処理方法)、疎水化度を変更し、また固体潤滑剤供給装置からの供給量の調整等により粒子間隔及び粒子高さを調整したこと以外は、実施例1と同じ方法により、評価試験を行った。
なお、表1に記載の「TMS化」はトリメチルシラン化を、「PDMS」はポリジメチルシロキサンを、「OTES」はオクチルトリエトキシシランを、「Amino Silane」はアミノシランを、表す。また、比較例4で用いた「BN」は窒化ホウ素である。
【0112】
<評価>
(トナー付着力)
中間転写ベルトに対するトナー付着力を、画像形成の初期(画像10枚形成時)および経時(画像1000枚形成時、維持性)において測定した。
なお、トナー付着力は以下の方法により測定した。
トナー付着力は、中間転写ベルトの外周面に体積平均粒径4.7μmのポリエステル樹脂粒子を荷重46g/cm付着させた後、外周面上方側から、吹き付け圧力を上昇させながら、外周面に空気を吹き付け、外周面に付着した全ての前記ポリエステル樹脂粒子が外周面から離間したときの、空気の吹き付け圧力(単位:MPa)を示す。
【0113】
(転写性)
Blueのハーフトーン30%画像をエンボス紙(ボス雪)に1000枚出力し、初期(画像10枚形成時)および経時(画像1000枚形成時、維持性)での凹部の埋まりこみを目視確認し、1枚目と10枚目の画像、及び1枚目と1000枚目の画像を比較することで、転写性を評価した。評価基準は、次の通りである。
A+(◎+):1枚目と同じく凹部の白抜けはなし
A(◎):1枚目に比べ変わらず、凹部のわずかな白抜けがみられる
B(〇):1枚目に比べ、凹部の白抜けがわずかに悪化した
C(△):1枚目に比べ、凹部の白抜けがB(〇)よりも大きく悪化し許容できない
D(×):1枚目に比べ、凹部の白抜けがC(△)よりもさらに激しく悪化した
【0114】
(高速機種対応時の転写性)
画像形成装置において1分間に印刷可能な枚数(単位:ppm)を上限の120ppmにして、上記(転写性)と同じ評価における維持性の評価を実施した。評価基準は、次のとおりである。
A+(◎+):1枚目と同じく凹部の白抜けはなし
A(◎):1枚目に比べ変わらず、凹部のわずかな白抜けがみられる
B(〇):1枚目に比べ、凹部の白抜けがわずかに悪化した
C(△):1枚目に比べ、凹部の白抜けがB(〇)よりも大きく悪化し許容できない
D(×):1枚目に比べ、凹部の白抜けがC(△)よりもさらに激しく悪化した
【0115】
【表1】
【0116】
上記結果から、本実施例の中間転写ベルトは、比較例の中間転写ベルトに比べ、凹凸を有する紙に対するトナーの転写維持性に優れることがわかる。
また、実施例9、10、及び13は、表面自由エネルギーが54mJ/mを超える例である。特に、実施例10は、粒子間隔、粒子高さ、及びアスペクト比が実施例1と同じであり、表面処理方法が異なり且つ表面自由エネルギーが54mJ/m超の例である。そして、実施例1は実施例10に比べ、高速機種対応時のエンボス紙転写性が優れていることがわかる。
【0117】
本実施形態は、以下の態様を含む。
(((1)))
表面に、固体潤滑剤として金属酸化物粒子を表面に有し、前記表面における前記金属酸化物粒子同士の平均間隔が1000nm以下、前記金属酸化物粒子の前記表面からの平均高さが15nm以上320nm以下であることを特徴とする中間転写ベルト。
(((2)))
前記表面における前記金属酸化物粒子同士の平均間隔が3nm以上200nm以下である(((1)))に記載の中間転写ベルト。
(((3)))
前記金属酸化物粒子の前記表面からの平均高さが30nm以上150nm以下である(((1)))又は(((2)))に記載の中間転写ベルト。
(((4)))
前記金属酸化物粒子のアスペクト比が、1以上1.8以下である(((1)))~(((3)))のいずれか一項に記載の中間転写ベルト。
(((5)))
前記金属酸化物粒子のアスペクト比が、1以上1.4以下である(((4)))に記載の中間転写ベルト。
(((6)))
前記金属酸化物粒子が表面疎水処理されている(((1)))~(((5)))のいずれか一項に記載の中間転写ベルト。
(((7)))
前記金属酸化物粒子が、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、トリメチルクロロシラン、トリメチルメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン、及びテトラメチルジシラザンからなる群より選択される少なくとも1種の疎水化処理剤により表面疎水処理されている(((6)))に記載の中間転写ベルト。
(((8)))
前記金属酸化物粒子が、シリカ粒子、チタニア粒子、アルミナ粒子、酸化セリウム粒子、酸化マグネシウム粒子、酸化亜鉛粒子、及びジルコニア粒子からなる群より選択される少なくとも1種の粒子である(((1)))~(((7)))のいずれか一項に記載の中間転写ベルト。
(((9)))
前記金属酸化物粒子が、シリカ粒子である(((8)))に記載の中間転写ベルト。
(((10)))
前記金属酸化物粒子の表面自由エネルギーが54mJ/m以下である、(((1)))~(((9)))に記載の中間転写ベルト。
(((11)))
表面にトナー像が転写される、(((1)))~(((10)))のいずれか一項に記載の中間転写ベルトと、
像保持体の表面に形成されたトナー像を前記中間転写ベルトの表面に一次転写する一次転写部材を有する一次転写装置と、
前記中間転写ベルトの表面に接触して配置され、前記中間転写ベルトの表面に転写された前記トナー像を記録媒体の表面に二次転写する二次転写部材を有する二次転写装置と、
前記中間転写ベルトの表面をクリーニングするクリーニングブレードを有するクリーニング装置と、
前記中間転写ベルトの表面に接触して設けられ、前記中間転写ベルトの表面に固体潤滑剤として金属酸化物粒子を供給する金属酸化物粒子供給装置と、
を備える転写装置。
(((12)))
像保持体を有し、前記像保持体の表面にトナー像を形成するトナー像形成装置と、
前記像保持体の表面に形成された前記トナー像を記録媒体の表面に転写する転写装置であって、(((11)))に記載の転写装置と、
を備える画像形成装置。
【0118】
(((1)))、(((8)))、又は(((9)))に係る発明によれば、表面における金属酸化物粒子同士の平均間隔が1000nm超、並びに金属酸化物粒子の表面からの平均高さが15nm未満及び320nm超の少なくともいずれかを満たす中間転写ベルトに比べ、凹凸を有する紙に対するトナーの転写維持性に優れる中間転写ベルトが提供される。
【0119】
(((2)))に係る発明によれば、表面における金属酸化物粒子同士の平均間隔が3nm未満である中間転写ベルトに比べ、凹凸を有する紙に対するトナーの転写維持性に優れる中間転写ベルトが提供される。
(((3)))に係る発明によれば、金属酸化物粒子の表面からの平均高さが30nm未満又は150nm超である中間転写ベルトに比べ、凹凸を有する紙に対するトナーの転写維持性に優れる中間転写ベルトが提供される。
(((4)))に係る発明によれば、金属酸化物粒子のアスペクト比が1.8超である中間転写ベルトに比べ、凹凸を有する紙に対するトナーの転写維持性に優れる中間転写ベルトが提供される。
(((5)))に係る発明によれば、金属酸化物粒子のアスペクト比が1.4超である中間転写ベルトに比べ、凹凸を有する紙に対するトナーの転写維持性に優れる中間転写ベルトが提供される。
(((6)))に係る発明によれば、金属酸化物粒子が表面疎水処理されていない中間転写ベルトに比べ、凹凸を有する紙に対するトナーの転写維持性に優れる中間転写ベルトが提供される。
(((7)))に係る発明によれば、金属酸化物粒子がポリジメチルシロキサンにより表面疎水処理されている中間転写ベルトに比べ、凹凸を有する紙に対するトナーの転写維持性に優れる中間転写ベルトが提供される。
(((10)))に係る発明によれば、金属酸化物粒子の表面自由エネルギーが54mJ/m超である中間転写ベルトに比べ、凹凸を有する紙に対するトナーの転写維持性に優れる中間転写ベルトが提供される。
【0120】
(((11)))、又は(((12)))に係る発明によれば、表面における金属酸化物粒子同士の平均間隔が50nm未満、および金属酸化物粒子の表面からの平均高さが30nm未満の少なくとも一方を満たす中間転写ベルトを備える場合に比べ、凹凸を有する紙に対するトナーの転写維持性に優れる転写装置及び画像形成装置が提供される。
【符号の説明】
【0121】
1Y、1M、1C、1K 画像形成ユニット
10 一次転写部
11 感光体
12 帯電器
13 レーザ露光器
14 現像器
15 中間転写ベルト
16 一次転写ロール
17 感光体クリーナ
20 二次転写部
22 二次転写ロール
22A 二次転写ロールクリーニング部材
25 背面ロール
26 給電ロール
31 駆動ロール
32 支持ロール
33 張力付与ロール
34 クリーニング背面ロール
35 中間転写ベルトクリーニング部材
40 制御部
42 基準センサ
43 画像濃度センサ
50 用紙収容部
51 給紙ロール
52 搬送ロール
53 搬送ガイド
55 搬送ベルト
56 定着入口ガイド
60 定着装置
70 金属酸化物粒子供給装置
71 金属酸化物粒子の成型物
72 金属酸化物粒子供給部材
100 画像形成装置
図1
図2