(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024062928
(43)【公開日】2024-05-10
(54)【発明の名称】農業ハウスの温度調整システムおよび温度調整方法
(51)【国際特許分類】
A01G 9/24 20060101AFI20240501BHJP
A01G 9/20 20060101ALI20240501BHJP
【FI】
A01G9/24 J
A01G9/20 B
A01G9/24 M
A01G9/24 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023114339
(22)【出願日】2023-07-12
(31)【優先権主張番号】P 2022170437
(32)【優先日】2022-10-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】392018078
【氏名又は名称】日栄インテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100160314
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 公芳
(74)【代理人】
【識別番号】100087745
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 善廣
(74)【代理人】
【識別番号】100118094
【弁理士】
【氏名又は名称】殿元 基城
(74)【代理人】
【識別番号】100134038
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 薫央
(74)【代理人】
【識別番号】100150968
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 悠有子
(72)【発明者】
【氏名】金子 敏也
(72)【発明者】
【氏名】星野 和範
(72)【発明者】
【氏名】大田 準
(72)【発明者】
【氏名】古田 徹也
【テーマコード(参考)】
2B029
【Fターム(参考)】
2B029AA01
2B029NA02
2B029RB21
2B029RB25
2B029SA01
2B029SE01
(57)【要約】
【課題】農業ハウスの温度調整を低コストで行うこと。
【解決手段】農業ハウス100で植物の栽培が許容される最高温度をTU、最低温度をTL、その間の温度をTU>T5>T4>T3>T2>TLとし、日の出を示す時刻になったら水平カーテンを全開にし、日没時刻になったら水平カーテンを全閉にし、農業ハウス100内の温度がT2になったら天窓110を開けて天窓扇150を稼働させ、温度がT3になったら内側カーテン120を全開にし、外側カーテン130を一部開いて上端から水平カーテン140の設置高さまでの範囲で開口101aを開放し、温度がT4になったら外側カーテン130を開いて下端から水平カーテン140の設置高さよりも低い位置までの範囲でさらに開口101aを開放し、温度がT5になったら外側カーテン130を全開にする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物栽培用の農業ハウスに設けられた開閉可能な天窓と、
前記農業ハウス内の空気を前記天窓へ誘導する天窓扇と、
前記農業ハウスの側窓の屋外側に設けられて、前記側窓の開口を屋外側から開放または閉塞する外側カーテンと、
前記側窓の屋内側に設けられて、前記側窓の前記開口を屋内側から開放または閉塞する内側カーテンと、
前記側窓の上端と下端との間の高さ位置に対して水平方向に開閉可能に設置され、水平方向に閉設された状態において前記農業ハウスの内部空間を植物の上方で上下に分割する水平カーテンと、
前記農業ハウス内であって前記水平カーテンよりも低い位置の温度を検出する温度検出手段と、
現在の時刻を検出する時計手段と
を備える農業ハウスの温度調整方法であって、
前記農業ハウスで前記植物を栽培するのに許容される最高温度をTU、最低温度をTLとし、TUからTLまでの間の温度をT5,T4,T3,T2,(但し、TU>T5>T4>T3>T2>TL)として、
前記時計手段により検出された時刻が日の出を示す時刻になった場合に、前記水平カーテンを全開にし、検出された前記時刻が日没時刻前の所定時刻になった場合に、前記水平カーテンを全閉にし、
前記温度検出手段で検出された温度がT2未満の状態からT2になった場合に、前記天窓を開けて、前記天窓扇を稼働させ、
前記温度検出手段で検出された温度がT3未満の状態からT3になった場合に、前記内側カーテンを全開にして前記開口を前記屋内側に開放し、前記外側カーテンを一部開けて、前記開口の上端から前記水平カーテンの設置位置の高さまでの範囲で、前記開口を前記屋外側に開放し、
前記温度検出手段で検出された温度がT4未満の状態からT4になった場合に、前記外側カーテンをさらに一部開けて、前記開口の下端から前記水平カーテンの設置位置よりも低い位置までの範囲で、前記開口をさらに前記屋外側に開放し、
前記温度検出手段で検出された温度がT5未満の状態からT5になった場合に、前記外側カーテンを全開にする
ことを特徴とする農業ハウスの温度調整方法。
【請求項2】
前記農業ハウスは、
該農業ハウス内であって前記水平カーテンの設置位置よりも低い位置に温風の吹出口が設けられる暖房手段と、
前記農業ハウス内の空気を循環させる循環扇と
を備え、
温度T2よりも低くて温度TLよりも高い温度をT1およびT0(T2>T1>T0>TL)として、
冬春季において、前記時計手段により検出された時刻が日没時刻前の所定時刻の場合、または、前記温度検出手段で検出された温度がT1になった場合に、前記天窓扇を停止させ、前記内側カーテンおよび前記外側カーテンで前記開口を閉塞し、前記天窓を閉じ、さらに、前記時計手段により検出された時刻が日没時刻前の所定時刻の場合に、前記水平カーテンを全閉にし、
前記暖房手段および前記循環扇が稼働されていない状態で、前記温度検出手段で検出された温度がTL以下になった場合に、前記暖房手段および前記循環扇を稼働させ、
前記暖房手段および前記循環扇が稼働された状態で、前記温度検出手段で検出された温度がT0以上になった場合に、前記暖房手段および前記循環扇を停止させること
を特徴とする請求項1に記載の農業ハウスの温度調整方法。
【請求項3】
前記農業ハウスは、
該農業ハウス内で栽培される前記植物を冷却するための気化冷却ファンと、
前記農業ハウス内であって前記水平カーテンの設置位置よりも低い位置に冷風の吹出口が設けられる冷房手段と、
前記農業ハウス内の空気を循環させる循環扇と
を備え、
温度TUよりも低くて温度T5よりも高い温度をT6(TU>T6>T5)とし、
温度T2よりも低くて温度TLよりも高い温度をT0(T2>T0>TL)として、
夏秋季において前記時計手段により検出された時刻が日没時刻前の所定時刻になった場合に、前記天窓扇および前記気化冷却ファンを停止し、前記内側カーテンおよび前記外側カーテンで前記開口を閉塞し、前記天窓および前記水平カーテンを全閉し、設定温度をT0に設定して前記冷房手段を稼働させ、前記循環扇を稼働させ、
夏秋季において前記時計手段により検出された時刻が日の出を示す時刻になった場合に、前記冷房手段と前記循環扇とを停止させ、前記気化冷却ファンを稼働させ、
夏秋季において前記温度検出手段で検出された温度がTU以上の場合に、前記水平カーテンを全閉し、前記開口の下端から前記水平カーテンの設置位置の高さまでの範囲で、前記外側カーテンを一部閉じて前記開口を前記屋外側で閉塞し、前記冷房手段を稼働させ、前記循環扇を稼働させ、
夏秋季において前記温度検出手段で検出された温度がT6より高い状態からT6になった場合に、前記水平カーテンおよび前記外側カーテンを全開し、前記冷房手段および前記循環扇を停止させること
を特徴とする請求項1に記載の農業ハウスの温度調整方法。
【請求項4】
植物栽培用の農業ハウスに設けられた天窓の開閉を行う天窓駆動手段と、
前記農業ハウスの側窓の屋外側に設けられる外側カーテンの開閉を行う外側カーテン駆動手段と、
前記側窓の屋内側に設けられる内側カーテンの開閉を行う内側カーテン駆動手段と、
前記側窓の上端と下端との間の高さ位置に水平に設置され、水平方向に閉設された状態において前記農業ハウスの内部空間を植物の上方で上下に分割する水平カーテンの開閉を行う水平カーテン駆動手段と、
前記水平カーテンよりも低い位置の温度を検出する温度検出手段から前記農業ハウス内の温度を取得する制御手段と、
現在の時刻を検出して前記制御手段に伝達する時計手段と
を備える農業ハウスの温度調整システムであって、
前記農業ハウスで前記植物を栽培するのに許容される最高温度をTU、最低温度をTLとし、TUからTLまでの間の温度をT5,T4,T3,T2,(但し、TU>T5>T4>T3>T2>TL)として、
前記制御手段は、
前記時計手段により検出された時刻が日の出を示す時刻になった場合に、前記水平カーテン駆動手段によって前記水平カーテンを全開にさせ、検出された前記時刻が日没時刻前の所定時刻になった場合に、前記水平カーテン駆動手段によって前記水平カーテンを全閉にさせ、
前記温度検出手段から取得した温度がT2未満の状態からT2になった場合に、前記天窓駆動手段によって前記天窓を開けさせると共に、前記農業ハウス内の空気を前記天窓へ誘導する天窓扇を稼働させ、
前記温度検出手段から取得した温度がT3未満の状態からT3になった場合に、前記内側カーテン駆動手段によって前記内側カーテンを全開にさせて前記開口を前記屋内側に開放すると共に、前記外側カーテン駆動手段によって前記外側カーテンを一部開けさせて、前記開口の上端から前記水平カーテンの設置位置の高さまでの範囲で、前記開口を前記屋外側に開放し、
前記温度検出手段から取得した温度がT4未満の状態からT4になった場合に、前記外側カーテン駆動手段によって前記外側カーテンをさらに一部開けさせて、前記開口の下端から前記水平カーテンの設置位置よりも低い位置までの範囲で、前記開口をさらに前記屋外側に開放し、
前記温度検出手段から取得した温度がT5未満の状態からT5になった場合に、前記外側カーテン駆動手段によって、前記外側カーテンを全開にさせる
ことを特徴とする農業ハウスの温度調整システム。
【請求項5】
前記農業ハウスには、
該農業ハウス内であって前記水平カーテンの設置位置よりも低い位置に温風の吹出口が設けられる暖房手段と、
前記農業ハウス内の空気を循環させる循環扇と
が設けられ、
温度T2よりも低くて温度TLよりも高い温度をT1およびT0(T2>T1>T0>TL)として、
前記制御手段は、
冬春季において、前記時計手段により検出された時刻が日没時刻前の所定時刻になった場合、または、前記温度検出手段で検出された温度がT1になった場合に、前記天窓扇を停止し、前記外側カーテン駆動手段および前記内側カーテン駆動手段によって前記内側カーテンおよび前記外側カーテンを全閉にさせて前記開口を閉塞し、前記天窓駆動手段によって前記天窓を閉じさせ、さらに、前記時計手段により検出された時刻が日没時刻前の所定時刻になった場合に、前記水平カーテン駆動手段によって前記水平カーテンを全閉にさせ、
前記暖房手段および前記循環扇が稼働されていない状態で、前記温度検出手段から取得した温度がTL以下になった場合に、前記暖房手段および前記循環扇を稼働させ、
前記暖房手段および前記循環扇が稼働された状態で、前記温度検出手段から取得した温度がT0以上になった場合に、前記暖房手段および前記循環扇を停止させること
を特徴とする請求項4に記載の農業ハウスの温度調整システム。
【請求項6】
前記農業ハウスには、
該農業ハウス内で栽培される前記植物を冷却するための気化冷却ファンと、
前記農業ハウス内であって前記水平カーテンの設置位置よりも低い位置に冷風の吹出口が設けられる冷房手段と、
前記農業ハウス内の空気を循環させる循環扇と
が設けられ、
温度TUよりも低くて温度T5よりも高い温度をT6(TU>T6>T5)とし、
温度T2よりも低くて温度TLよりも高い温度をT0(T2>T0>TL)として、
前記制御手段は、
夏秋季において前記時計手段により検出された時刻が日没時刻前の所定時刻になった場合に、前記天窓扇および前記気化冷却ファンを停止し、前記外側カーテン駆動手段および前記内側カーテン駆動手段によって前記内側カーテンおよび前記外側カーテンを閉じさせて前記開口を閉塞し、前記天窓駆動手段によって前記天窓を閉じさせ、前記水平カーテン駆動手段によって前記水平カーテンを全閉にさせ、設定温度をT0に設定して前記冷房手段を稼働させ、前記循環扇を稼働させ、
夏秋季において前記時計手段により検出された時刻が日の出を示す時刻になった場合に、前記冷房手段と前記循環扇とを停止させ、前記気化冷却ファンを稼働させ、
夏秋季において前記温度検出手段から取得した温度がTU以上の場合に、前記水平カーテン駆動手段によって前記水平カーテンを全閉にさせ、前記開口の下端から前記水平カーテンの設置位置の高さまでの範囲で、前記外側カーテン駆動手段によって前記外側カーテンを一部閉じさせて前記開口を前記屋外側で閉塞し、前記冷房手段と前記循環扇とを稼働させ、
夏秋季において前記温度検出手段から取得した温度がT6より高い状態からT6になった場合に、前記水平カーテン駆動手段によって前記水平カーテンを全開にさせ、前記外側カーテン駆動手段によって前記外側カーテンを全開にさせ、前記冷房手段および前記循環扇を停止させること
を特徴とする請求項4に記載の農業ハウスの温度調整システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農業ハウスの温度調整システムおよび温度調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
農業ハウスで植物を栽培する場合、栽培する品種に適した温度管理を行うことが重要である。例えば、イチゴの栽培に好適な温度は、一般的に15℃~25℃程度とされている。このため、冬春季にイチゴを栽培する場合には、冬季に比較的温暖な地域で栽培が行われ、夏秋季にイチゴを栽培する場合には、夏季に比較的冷涼な地域で栽培が行われる(例えば、非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】“夏秋どりイチゴ栽培マニュアル(改訂版)”,[Online] ,技術紹介パンフレット,農研機構,2008年5月1日,p.1-86,[2022年10月25日検索],インターネット<https://www.naro.go.jp/publicity_report/publication/pamphlet/tech-pamph/004275.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、冬季に比較的温暖となる地域は、夏季に比較的温度が高くなる傾向があり、夏季にイチゴを栽培することが難しい。また、夏季に比較的冷涼となる地域は、冬季に比較的温度が低くなる傾向があり、冬季にイチゴを栽培することが難しい。このため、冬春季、或いは、夏秋季にイチゴを栽培することが可能な地域であっても、1年を通じて安定してイチゴを栽培することが難しいという問題があった。
【0005】
一方で、夏秋季に栽培されるイチゴの多くは、ケーキなどのスイーツ需要のために栽培されることが多い。スイーツ需要は都市部で高くなる傾向があるため、夏秋季に栽培されたイチゴは都市部に数多く搬送される。しかしながら、夏秋季にイチゴを栽培する地域は比較的冷涼な土地であるため、都市部から遠くなってしまう傾向がある。このため、夏秋季に栽培されたイチゴは、比較的高い輸送費が価格に付加されてしまうという問題があった。
【0006】
また、冬春季にイチゴを栽培する地域は、比較的温暖な気候であることが多く、都市部に近い傾向がある。都市部に近い地域のイチゴ栽培業者は、冬春季だけでなく夏秋季にもイチゴを栽培してスイーツ需要に対応したいと考えている。しかしながら、この地域では夏に温度が高くなる傾向があり、農業ハウス内の温度が40℃以上になってしまうこともある。冷房機器等を用いてハウス内の温度を下げようとしても、農業ハウス内の温度が40℃に達する場合には、イチゴ栽培に適した温度(15℃~25℃)まで温度を下げることが困難であった。
【0007】
近時では、品種改良や栽培方法の改善等により、イチゴ栽培を行うことが可能な温度範囲が広くなっている。農業ハウスでイチゴを栽培する場合、イチゴ栽培を行うために許容される温度範囲は、例えば5℃程度から30度程度までの範囲となっている。しかしながら、イチゴの栽培が可能な温度範囲が広がっても、上述したように農業ハウス内の温度が40℃に達する場合には、許容されうる最大温度30℃を超えてしまうため、良質なイチゴを栽培することが困難である。また、農業ハウス内の温度が5℃未満まで下がってしまう場合も同様に、良質なイチゴを栽培することが困難である。
【0008】
また、温度管理の行い易い栽培環境を実現するために、人工光型植物工場が開発されている。人工光型植物工場であれば、より柔軟に温度管理を行うことができるため、周年でイチゴ栽培を行うことができる。しかしながら、人工光型植物工場は、一般的な農業ハウスよりもコストがかかる傾向があり、事業化が容易ではないという問題があった。
【0009】
さらに、農業ハウスでイチゴ以外の植物を栽培する場合にも、同様の問題が生じ得るという問題があった。
【0010】
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、低コストかつ効果的に農業ハウスの温度調整を行うことが可能な農業ハウスの温度調整システムおよび温度調整方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明に係る農業ハウスの温度調整方法は、植物栽培用の農業ハウスに設けられた開閉可能な天窓と、前記農業ハウス内の空気を前記天窓へ誘導する天窓扇と、前記農業ハウスの側窓の屋外側に設けられて、前記側窓の開口を屋外側から開放または閉塞する外側カーテンと、前記側窓の屋内側に設けられて、前記側窓の前記開口を屋内側から開放または閉塞する内側カーテンと、前記側窓の上端と下端との間の高さ位置に対して水平方向に開閉可能に設置され、水平方向に閉設された状態において前記農業ハウスの内部空間を植物の上方で上下に分割する水平カーテンと、前記農業ハウス内であって前記水平カーテンよりも低い位置の温度を検出する温度検出手段と、現在の時刻を検出する時計手段とを備える農業ハウスの温度調整方法であって、前記農業ハウスで前記植物を栽培するのに許容される最高温度をTU、最低温度をTLとし、TUからTLまでの間の温度をT5,T4,T3,T2,(但し、TU>T5>T4>T3>T2>TL)として、前記時計手段により検出された時刻が日の出を示す時刻になった場合に、前記水平カーテンを全開にし、検出された前記時刻が日没時刻前の所定時刻になった場合に、前記水平カーテンを全閉にし、前記温度検出手段で検出された温度がT2未満の状態からT2になった場合に、前記天窓を開けて、前記天窓扇を稼働させ、前記温度検出手段で検出された温度がT3未満の状態からT3になった場合に、前記内側カーテンを全開にして前記開口を前記屋内側に開放し、前記外側カーテンを一部開けて、前記開口の上端から前記水平カーテンの設置位置の高さまでの範囲で、前記開口を前記屋外側に開放し、前記温度検出手段で検出された温度がT4未満の状態からT4になった場合に、前記外側カーテンをさらに一部開けて、前記開口の下端から前記水平カーテンの設置位置よりも低い位置までの範囲で、前記開口をさらに前記屋外側に開放し、前記温度検出手段で検出された温度がT5未満の状態からT5になった場合に、前記外側カーテンを全開にすることを特徴とする。
【0012】
また、上述した農業ハウスの温度調整方法は、前記農業ハウスが、該農業ハウス内であって前記水平カーテンの設置位置よりも低い位置に温風の吹出口が設けられる暖房手段と、前記農業ハウス内の空気を循環させる循環扇とを備え、温度T2よりも低くて温度TLよりも高い温度をT1およびT0(T2>T1>T0>TL)として、冬春季において、前記時計手段により検出された時刻が日没時刻前の所定時刻の場合、または、前記温度検出手段で検出された温度がT1になった場合に、前記天窓扇を停止させ、前記内側カーテンおよび前記外側カーテンで前記開口を閉塞し、前記天窓を閉じ、さらに、前記時計手段により検出された時刻が日没時刻前の所定時刻の場合に、前記水平カーテンを全閉にし、前記暖房手段および前記循環扇が稼働されていない状態で、前記温度検出手段で検出された温度がTL以下になった場合に、前記暖房手段および前記循環扇を稼働させ、前記暖房手段および前記循環扇が稼働された状態で、前記温度検出手段で検出された温度がT0以上になった場合に、前記暖房手段および前記循環扇を停止させるものであってもよい。
【0013】
さらに、上述した農業ハウスの温度調整方法は、前記農業ハウスが、該農業ハウス内で栽培される前記植物を冷却するための気化冷却ファンと、前記農業ハウス内であって前記水平カーテンの設置位置よりも低い位置に冷風の吹出口が設けられる冷房手段と、前記農業ハウス内の空気を循環させる循環扇とを備え、温度TUよりも低くて温度T5よりも高い温度をT6(TU>T6>T5)とし、温度T2よりも低くて温度TLよりも高い温度をT0(T2>T0>TL)として、夏秋季において前記時計手段により検出された時刻が日没時刻前の所定時刻になった場合に、前記天窓扇および前記気化冷却ファンを停止し、前記内側カーテンおよび前記外側カーテンで前記開口を閉塞し、前記天窓および前記水平カーテンを全閉し、設定温度をT0に設定して前記冷房手段を稼働させ、前記循環扇を稼働させ、夏秋季において前記時計手段により検出された時刻が日の出を示す時刻になった場合に、前記冷房手段と前記循環扇とを停止させ、前記気化冷却ファンを稼働させ、夏秋季において前記温度検出手段で検出された温度がTU以上の場合に、前記水平カーテンを全閉し、前記開口の下端から前記水平カーテンの設置位置の高さまでの範囲で、前記外側カーテンを一部閉じて前記開口を前記屋外側で閉塞し、前記冷房手段を稼働させ、前記循環扇を稼働させ、夏秋季において前記温度検出手段で検出された温度がT6より高い状態からT6になった場合に、前記水平カーテンおよび前記外側カーテンを全開し、前記冷房手段および前記循環扇を停止させるものであってもよい。
【0014】
また、本発明に係る農業ハウスの温度調整システムは、植物栽培用の農業ハウスに設けられた天窓の開閉を行う天窓駆動手段と、前記農業ハウスの側窓の屋外側に設けられる外側カーテンの開閉を行う外側カーテン駆動手段と、前記側窓の屋内側に設けられる内側カーテンの開閉を行う内側カーテン駆動手段と、前記側窓の上端と下端との間の高さ位置に水平に設置され、水平方向に閉設された状態において前記農業ハウスの内部空間を植物の上方で上下に分割する水平カーテンの開閉を行う水平カーテン駆動手段と、前記水平カーテンよりも低い位置の温度を検出する温度検出手段から前記農業ハウス内の温度を取得する制御手段と、現在の時刻を検出して前記制御手段に伝達する時計手段とを備える農業ハウスの温度調整システムであって、前記農業ハウスで前記植物を栽培するのに許容される最高温度をTU、最低温度をTLとし、TUからTLまでの間の温度をT5,T4,T3,T2,(但し、TU>T5>T4>T3>T2>TL)として、前記制御手段は、前記時計手段により検出された時刻が日の出を示す時刻になった場合に、前記水平カーテン駆動手段によって前記水平カーテンを全開にさせ、検出された前記時刻が日没時刻前の所定時刻になった場合に、前記水平カーテン駆動手段によって前記水平カーテンを全閉にさせ、前記温度検出手段から取得した温度がT2未満の状態からT2になった場合に、前記天窓駆動手段によって前記天窓を開けさせると共に、前記農業ハウス内の空気を前記天窓へ誘導する天窓扇を稼働させ、前記温度検出手段から取得した温度がT3未満の状態からT3になった場合に、前記内側カーテン駆動手段によって前記内側カーテンを全開にさせて前記開口を前記屋内側に開放すると共に、前記外側カーテン駆動手段によって前記外側カーテンを一部開けさせて、前記開口の上端から前記水平カーテンの設置位置の高さまでの範囲で、前記開口を前記屋外側に開放し、前記温度検出手段から取得した温度がT4未満の状態からT4になった場合に、前記外側カーテン駆動手段によって前記外側カーテンをさらに一部開けさせて、前記開口の下端から前記水平カーテンの設置位置よりも低い位置までの範囲で、前記開口をさらに前記屋外側に開放し、前記温度検出手段から取得した温度がT5未満の状態からT5になった場合に、前記外側カーテン駆動手段によって、前記外側カーテンを全開にさせることを特徴とする。
【0015】
さらに、上述した農業ハウスの温度調整システムは、前記農業ハウスに、該農業ハウス内であって前記水平カーテンの設置位置よりも低い位置に温風の吹出口が設けられる暖房手段と、前記農業ハウス内の空気を循環させる循環扇とが設けられ、温度T2よりも低くて温度TLよりも高い温度をT1およびT0(T2>T1>T0>TL)として、前記制御手段は、冬春季において、前記時計手段により検出された時刻が日没時刻前の所定時刻になった場合、または、前記温度検出手段で検出された温度がT1になった場合に、前記天窓扇を停止し、前記外側カーテン駆動手段および前記内側カーテン駆動手段によって前記内側カーテンおよび前記外側カーテンを全閉にさせて前記開口を閉塞し、前記天窓駆動手段によって前記天窓を閉じさせ、さらに、前記時計手段により検出された時刻が日没時刻前の所定時刻になった場合に、前記水平カーテン駆動手段によって前記水平カーテンを全閉にさせ、前記暖房手段および前記循環扇が稼働されていない状態で、前記温度検出手段から取得した温度がTL以下になった場合に、前記暖房手段および前記循環扇を稼働させ、前記暖房手段および前記循環扇が稼働された状態で、前記温度検出手段から取得した温度がT0以上になった場合に、前記暖房手段および前記循環扇を停止させるものであってもよい。
【0016】
また、上述した温度調整システムは、前記農業ハウスに、該農業ハウス内で栽培される前記植物を冷却するための気化冷却ファンと、前記農業ハウス内であって前記水平カーテンの設置位置よりも低い位置に冷風の吹出口が設けられる冷房手段と、前記農業ハウス内の空気を循環させる循環扇とが設けられ、温度TUよりも低くて温度T5よりも高い温度をT6(TU>T6>T5)とし、温度T2よりも低くて温度TLよりも高い温度をT0(T2>T0>TL)として、前記制御手段は、夏秋季において前記時計手段により検出された時刻が日没時刻前の所定時刻になった場合に、前記天窓扇および前記気化冷却ファンを停止し、前記外側カーテン駆動手段および前記内側カーテン駆動手段によって前記内側カーテンおよび前記外側カーテンを閉じさせて前記開口を閉塞し、前記天窓駆動手段によって前記天窓を閉じさせ、前記水平カーテン駆動手段によって前記水平カーテンを全閉にさせ、設定温度をT0に設定して前記冷房手段を稼働させ、前記循環扇を稼働させ、夏秋季において前記時計手段により検出された時刻が日の出を示す時刻になった場合に、前記冷房手段と前記循環扇とを停止させ、前記気化冷却ファンを稼働させ、夏秋季において前記温度検出手段から取得した温度がTU以上の場合に、前記水平カーテン駆動手段によって前記水平カーテンを全閉にさせ、前記開口の下端から前記水平カーテンの設置位置の高さまでの範囲で、前記外側カーテン駆動手段によって前記外側カーテンを一部閉じさせて前記開口を前記屋外側で閉塞し、前記冷房手段と前記循環扇とを稼働させ、夏秋季において前記温度検出手段から取得した温度がT6より高い状態からT6になった場合に、前記水平カーテン駆動手段によって前記水平カーテンを全開にさせ、前記外側カーテン駆動手段によって前記外側カーテンを全開にさせ、前記冷房手段および前記循環扇を停止させるものであってもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る農業ハウスの温度調整システムおよび温度調整方法によれば、低コストで農業ハウスの温度調整を行うことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】農業ハウスの概略構成を示した模式図である。
【
図2】温度調整システムの概略構成を示したブロック図である。
【
図3】温度調整システムの制御部が、夏秋季に農業ハウス内の温度調整を行う処理を示したフローチャートである。
【
図4】温度調整システムの制御部が、冬春季に農業ハウス内の温度調整を行う処理の前半の処理内容を示したフローチャートである。
【
図5】温度調整システムの制御部が、冬春季に農業ハウス内の温度調整を行う処理の後半の処理内容を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について、農業ハウスの温度調整システムを一例として示し、図面を用いて詳細に説明する。
【0020】
図1は、温度調整システムが設けられた農業ハウスの概略構成を示した模式図である。
図2は、温度調整システムの概略構成を示したブロック図である。
【0021】
農業ハウス100は、複数のアーチパイプ(曲管パイプ)を等間隔に立設すると共に、立設されたアーチパイプを水平に配置される母屋パイプ(直管パイプ)に固定することによって骨組みが構成されている。骨組みに対して、ビニール材料等で外壁部分や屋根部分を覆うことにより、略蒲鉾形状の中空建物からなる農業ハウス100が形成される。
【0022】
農業ハウス100の側面部分には、
図1に示すように、側窓101が形成されている。側窓101には、開口101aが確保されており、次述する外側カーテン130および内側カーテン120の開閉状態によって、開口101aの開放・閉塞が切り替えられる構造になっている。また、農業ハウス100内には、等間隔に高設ベンチ103が並べられており、高設ベンチ103においてイチゴの栽培が行われている。
【0023】
温度調整システム1は、
図2に示すように、制御部(制御手段)10と、天窓駆動部(天窓駆動手段)11と、内側カーテン駆動部(内側カーテン駆動手段)12と、外側カーテン駆動部(外側カーテン駆動手段)13と、水平カーテン駆動部(水平カーテン駆動手段)14と、時計部(時計手段)15とを備えている。また、
図1に示すように、農業ハウス100には、温度調整システム1(
図1において図示省略)に加えて、天窓110と、天窓扇150と、内側カーテン120と、外側カーテン130と、水平カーテン140と、ヒートポンプ(暖房手段、冷房手段)160と、気化冷却ファン170と、温度検出器(温度検出手段)180と、循環扇190とが設けられている。
【0024】
天窓110は、農業ハウス100の天井部分に、開閉可能に設けられている。天窓駆動部11は、制御部10の指示に従って、天窓110の開閉を行う。天窓扇150は、天窓110近傍に設けられた換気扇であり、制御部10の指示に応じて、稼働・停止(On/Off)が行われる。天窓110が開いた状態で天窓扇150が稼働されると、農業ハウス100内の空気が天窓110を介して屋外に排出される。
【0025】
循環扇190は、農業ハウス100内の空気をハウス内で循環させるために設けられている。循環扇190を稼働させることにより、農業ハウス100内の空気を循環させて室内温度の均一化を図ることが可能になる。循環扇190は、制御部10の指示に応じて、稼働・停止(On/Off)が行われる。
【0026】
内側カーテン120は、上下方向に折り畳まれ、または、広げられることによって開閉する構造になっている。内側カーテン120は、農業ハウス100の側窓101の開口101aを、農業ハウス100の内側から開放・閉塞する。但し、内側カーテン120の開閉は、上下方向だけに限定されず、左右方向に折り畳まれ、または、広げられる構造であってもよい。内側カーテン駆動部12は、制御部10の指示に従って、内側カーテン120を開閉させる。
【0027】
外側カーテン130は、上下方向に折り畳まれ、または、広げられて開閉する構造となっている。外側カーテン130は、農業ハウス100の側窓101の開口101aを、農業ハウス100の外側から開放・閉塞する。特に、実施の形態に係る外側カーテン130では、上端から1/4までの範囲で開口101aを開放させたり、下端から1/4までの範囲で開口101aを開放させたり、真ん中の範囲(例えば、真ん中1/2以上の範囲)だけ開口101aを閉塞させたり、開口101aの全体を開放させたりすることができる。外側カーテン駆動部13は、制御部10の指示に従って、外側カーテン130を開閉させる。
【0028】
水平カーテン140は、農業ハウス100の内部空間を上下に二分することを目的として設けられている。水平カーテン140は、高設ベンチ103の上方を覆うようにして、側窓101の上端と下端との間の高さ位置に、水平に設置される。実施の形態に係る水平カーテン140は、外側カーテン110の上下幅の上端から1/4の高さ位置に設置されている。水平カーテン駆動部14は、制御部10の指示に従って、水平カーテン140を開閉させる。
【0029】
ヒートポンプ160は、気体を圧縮すると温度が上がり、膨張させると温度が下がる性質を利用した冷暖房器具であり、大気中の熱を集めて移動させることにより、農業ハウス100内の冷房或いは暖房を行う。熱を運ぶ動力として電力を使うが、少しの電力で大きな熱を利用することができ、効率的に農業ハウス100内の温度を調整することが可能である。
【0030】
ヒートポンプ160は、農業ハウス100の床面に設置されており、高設ベンチ103の下側に対して温風(暖気)或いは冷風(冷気)を吹き出すための吹出口161が設けられている。このため、水平カーテン140が閉じられた場合、ヒートポンプ160は水平カーテン140の下側の空間に対して、冷房或いは暖房を行うことが可能になる。ヒートポンプ160は、制御部10の指示に従って、農業ハウス100内の冷房或いは暖房の稼働・停止(On/Off)を行う。
【0031】
気化冷却ファン170は、高設ベンチ103で栽培されるイチゴの温度上昇を抑制するために、高設ベンチ103の下部に設けられている。気化冷却ファン170は、制御部10の指示に従って、稼働・停止(On/Off)を行う。
【0032】
温度検出器180は、農業ハウス100内の温度を少なくとも1℃刻み(0.5℃刻みや0.2℃刻み等であってもよい)で検出し、制御部10に温度情報を伝達する役割を有している。温度検出器180は、高設ベンチ103で栽培されるイチゴの周囲の温度を測定するために、高設ベンチ103の高さを考慮して設置される。水平カーテン140が閉じられた場合、温度検出器180は水平カーテン140の下側の空間に位置した状態になる。
【0033】
時計部15は、一般的な時計としての機能を備えており、現在の時刻(農業ハウス100が設置される場所の標準時刻)の情報(時刻情報)を、制御部10に伝達する役割を有している。
【0034】
制御部10は、時計部15から時刻情報を取得し、また、温度検出器180から温度情報を取得する。また、制御部10は、取得された時刻情報或いは温度情報に基づいて、既に説明した天窓駆動部11と、天窓扇150と、内側カーテン駆動部12と、外側カーテン駆動部13と、水平カーテン駆動部14と、ヒートポンプ160と、気化冷却ファン170と、循環扇190とを制御する。
【0035】
次に、制御部10による農業ハウス100の温度調整処理について説明する。イチゴ栽培に適した温度は、一般的に15℃から25℃までの温度範囲と言われている。しかしながら、近時の栽培環境・栽培条件によれば、5℃程度から30℃程度までの範囲で温度調整・温度制御を行うことにより、イチゴを栽培することが可能になっている。このため、制御部10は、農業ハウス100内の温度が5℃から30℃までの温度範囲に収まるように、農業ハウス100内の温度調整を行う。農業ハウスで植物を育てるのに許容される最高温度をTUとし、最低温度をTLとして、この温度範囲(TU~TL(TU>TL))内の温度を段階的にT6,T5,T4,T3,T2,T1,T0とする。各温度の関係は、TU>T6>T5>T4>T3>T2>T1>T0>TLとなる。イチゴ栽培の場合には、TU=30℃、T6=26℃、T5=25℃、T4=23℃、T3=21℃、T2=18℃、T1=16℃、T0=15℃、TL=5℃に設定される。
【0036】
図3、
図4および
図5は、制御部10の処理内容を示したフローチャートである。
図3は、夏秋季に制御部10が実行する処理を示している。制御部10は、まず、時計部15から時刻情報を取得し(S.01)、時刻情報に基づいて、現在の時刻(時刻情報を取得した時刻)が、夕刻日没前を示す所定時刻(例えば16時)から日の出の直前の時刻までの間の時刻であるか否かの判断を行う(S.02)。
【0037】
夕刻日没前を示す所定時刻や、日の出の直前の時刻は、ユーザによって調整・変更することが可能になっている。日没時刻や日の出時刻は、地域や季節等のさまざまな要因によって変化するため、ユーザが適宜設定を調整・変更することにより、地域の特徴や季節に応じて、より好ましい時刻を設定することが可能である。例えば、日の出の直前の時刻として、その日の日の出の時刻の10分前の時刻等を一例として設定することが可能である。
【0038】
時刻情報が、夕刻日没前を示す所定時刻から日の出の直前の時刻までの間の時刻である場合(S.02でYes)、制御部10は、天窓駆動部11によって天窓110を閉じ、天窓扇150を停止させ、内側カーテン駆動部12によって内側カーテン120を閉じて開口101aを閉塞させ、外側カーテン駆動部13によって外側カーテン130を閉じて開口101aを閉塞させ、気化冷却ファン170を停止させ、水平カーテン駆動部14によって水平カーテン140を全閉にさせ、ヒートポンプ160で冷房を稼働させ、循環扇190を稼働させる。このように、天窓110や全てのカーテンを閉めて農業ハウス100の内部を冷却することにより、農業ハウス100の夜冷を開始する(S.03)。
【0039】
このとき、制御部10は、ヒートポンプ160における冷房の設定温度を、5℃(TL)に設定する。日没後の夜冷において、冷房の温度を、イチゴ栽培を行うことが可能な最低温度である5℃(TL)に設定することにより、日の出後に農業ハウス100内の温度が上昇する場合であっても、最低温度である5℃から段階的に温度を上昇させることが可能となり、効果的かつ柔軟に農業ハウス内の温度制御を行うことができる。また、冷房の温度設定を5℃に設定することにより、農業ハウス100内の温度が、最低温度である5℃よりも下がってしまうことを防止することが可能になる。さらに、冷房の温度設定を5℃に設定した後に、後述する処理(
図3に示す各処理)を実行することにより、農業ハウス100内の温度を5℃から30℃までの温度範囲内に収まるように調整をすることが容易になる。
【0040】
なお、夜冷において設定される冷房の温度は、5℃に限定されない。イチゴ栽培に好適な温度範囲は、15℃から25℃までの範囲であるため、この好適な温度範囲に収まるように、冷房の設定温度を15℃(T0)に設定することも可能である。
【0041】
また、水平カーテン140を閉めた状態で夜冷を行うことにより、農業ハウス100内の冷却スペース(冷却すべきハウス内体積)を小さくすることができ、冷房効率を高めることができる。さらに、高設ベンチ103のイチゴ栽培部分を効率的に冷却することができる。
【0042】
農業ハウス100の夜冷が開始された後(S.03)、制御部10は、
図3に示した温度調整処理を終了する。なお、時刻情報が、夕刻日没前を示す所定時刻から日の出の直前の時刻までの間の時刻であって(S.02でYes)、既に夜冷が開始されている場合(S.03)、制御部10は、夜冷をそのまま継続させて、
図3に示した温度調整処理を終了する。また、S.03に示す処理を行って、
図3に示した温度調整処理を終了した場合、制御部10は、繰り返し
図3に示す温度調整処理を実行する。なお、S.03に示す処理を行って、
図3に示した温度調整処理を終了した場合だけでなく、後述するS.05、S.08、S.10、S.12、S.14、S.16、S.18に示す処理を行って、
図3に示した温度調整処理を終了した場合、あるいは、S,17においてNoであって
図3に示した温度調整処理を終了した場合にも、制御部10は、繰り返し
図3に示す温度調整処理を実行する。このように温度調整処理を繰り返し実行することによって、現在の時刻に応じた適切な処理を行うことが可能となる。また、後述する温度情報の取得処理(S.06)により取得された温度情報に基づいて、現在の温度に応じた適切な処理を行うことが可能になる。
【0043】
時刻情報が、夕刻日没前を示す所定時刻から日の出の直前の時刻までの間の時刻でなかった場合(S.02でNo)、制御部10は、時計部15から取得した時刻情報(S.01)に基づいて、現在の時刻が、日の出を示す時刻(例えば午前5時)であるか否かの判断を行う(S.04)。なお、日の出を示す時刻も、ユーザによって調整・変更することが可能になっている。
【0044】
現在の時刻(時刻情報)が日の出を示す時刻である場合(S.04でYes)、制御部10は、ヒートポンプ160による冷房を停止し、循環扇190を停止させる(S.05)。ヒートポンプ160による冷房を、日の出を示す時刻に停止することにより、日が昇り始めて農業ハウス100内の温度が上昇し始める状況において、最低温度である5℃から段階的かつ効果的に農業ハウスの温度制御を行うことが可能になる。
【0045】
さらに、制御部10は、水平カーテン駆動部14によって水平カーテン140を全開にさせ、気化冷却ファン170を稼働させる(S.05)。日の出を示す時刻に水平カーテン140を全開にすることにより、早朝からより多くの太陽光を農業ハウス100内のイチゴに照射させることが可能になり、イチゴの育成をより効果的に行うことが可能になる。また、気化冷却ファン170を稼働させることにより、高設ベンチ103周辺の空気を循環させることができるため、農業ハウス100内の温度に対応させて、イチゴに対する温度管理を行うことが可能になる。
【0046】
ヒートポンプ160および循環扇190の停止処理、水平カーテン140の全開処理および気化冷却ファン170の稼働処理が行われた後(S.05)、制御部10は、
図3に示した温度調整処理を終了する。なお、日の出を示す時刻において、既に水平カーテン140の全開処理および気化冷却ファン170の稼働処理が行われている場合、制御部10は、そのままの状態を維持したまま、
図3に示した温度調整処理を終了する。
【0047】
現在の時刻(時刻情報)が日の出を示す時刻でない場合(S.04でNo)、制御部10は、温度検出器180から温度情報を取得する処理を行う(S.06)。そして、制御部10は,取得した温度情報から、現在の温度が18℃(T2)であるか否かを判断する(S.07)。より詳細には、夜冷により農業ハウス100内の温度が5℃程度まで低下しているので、制御部10は、現在の温度が18℃未満から18℃になったか(18℃へ温度が上昇したか)否かを判断する。日が昇ることにより、次第に温度が上昇することから、温度情報に基づいて現在の温度を判断するS.09以降の処理においても、同様に所定温度未満から所定温度になったかどうかについて判断する。
【0048】
現在の温度が18℃の場合(S.07でYes)、制御部10は、天窓駆動部11を制御して天窓110を開き、天窓扇150を稼働させる(S.08)。このように、天窓110の開放と天窓扇150の稼働とを行うことによって、農業ハウス100内上部の暖かい空気を、天窓110を介して屋外に排出することが可能になる。天窓110を開き、天窓扇150を稼働させた後、制御部10は、
図3に示した温度調整処理を終了する。
【0049】
なお、既に天窓110が開放され、または天窓扇150が稼働されている状態で、現在の温度が18℃になった場合(S.07でYes)、制御部10は、天窓110を開放させた状態を維持し、天窓扇150の稼働を引き続き継続させたまま、
図3に示した温度調整処理を終了する。
【0050】
現在の温度が18℃(T2)でなかった場合(S.07でNo)、制御部10は、現在の温度が21℃(T3)であるか(21℃未満から21℃になったか)否かを判断する(S.09)。現在の温度が21℃の場合(S.09でYes)、制御部10は、内側カーテン駆動部12によって内側カーテン120を全開にさせ、さらに、外側カーテン駆動部13によって外側カーテン130の上側1/4を開放させる(S.10)。
【0051】
一般的に、夜冷により冷やされた空気は、農業ハウス100の下側に留まり易い。一方で、暖かい空気は、農業ハウス100の上側に留まり易い。このため、内側カーテン120を全開にし、さらに、外側カーテン130の上側1/4を開放することにより、側窓101の開口101aを介して、農業ハウス100の上側部分に外気を導入し易くなり、水平カーテン140の設置位置よりも上側の空気を、天窓110から農業ハウス100の外に排出することが容易になる。さらに、水平カーテン140の設置位置よりも下側に留まる冷たい空気は、下側3/4だけ閉じられている外側カーテン130によって、農業ハウス100の上側の空気および外側カーテン130の外側の空気に対して分け隔てられている。従って、夜冷した冷たい空気を、農業ハウス100の下側の空間に残しておくことができる。内側カーテン120および外側カーテン130の上側1/4を開放させた後、制御部10は、
図3に示した温度調整処理を終了する。
【0052】
なお、外側カーテン130を開放させる範囲は、上側1/4に限定されず、任意で変更することが可能である。例えば、1/5から1/3までの範囲で、外側カーテン130の上側範囲を任意で変更する構成とすることも可能である。また、既に内側カーテン120が全開であって、さらに、外側カーテン130の上側1/4(或いは、上側1/5~上側1/3の範囲)が開放されている状態で、現在の温度が21℃になった場合(S.09でYes)、制御部10は、内側カーテン120を全開にした状態を維持し、また、外側カーテン130の上側1/4(或いは、上側1/5~上側1/3の範囲)を開放させた状態を維持したまま、
図3に示した温度調整処理を終了する。
【0053】
現在の温度が21℃(T3)でなかった場合(S.09でNo)、制御部10は、現在の温度が23℃(T4)であるか(23℃未満から23℃になったか)否かを判断する(S.11)。現在の温度が23℃の場合(S.11でYes)、制御部10は、外側カーテン駆動部13によって、外側カーテン130の下側1/4をさらに開放させる(S.12)。外側カーテン130の上側1/4と下側1/4とを開放し、真ん中の部分(残りの1/2)だけを閉じた状態にすることにより、外側カーテン130が全体的に開放された場合に比べて、急激にイチゴの周囲の温度が上昇してしまうことを防ぐことができる。このため、急激な温度上昇に伴うイチゴへの負荷を避けることができる。外側カーテン130の下側1/4を開放させた後(S.12)、制御部10は、
図3に示した温度調整処理を終了する。
【0054】
なお、外側カーテン130を開放させる範囲は、下側1/4に限定されず、任意で変更することが可能である。例えば、1/5から1/3までの範囲で、外側カーテン130の下側範囲を任意で変更する構成とすることも可能である。また、外側カーテン130の下側1/4(或いは、下側1/5~下側1/3の範囲)が開放されている状態で、現在の温度が23℃になった場合(S.11でYes)、制御部10は、外側カーテン130の下側1/4(或いは、下側1/5~下側1/3の範囲)を開放させた状態を維持したまま、
図3に示した温度調整処理を終了する。
【0055】
現在の温度が23℃(T4)でなかった場合(S.11でNo)、制御部10は、現在の温度が25℃(T5)であるか(25℃未満から25℃になったか)否かを判断する(S.13)。現在の温度が25℃の場合(S.13でYes)、制御部10は、外側カーテン駆動部13によって外側カーテン130を全開にさせて(S.14)、
図3に示した温度調整処理を終了する。外側カーテン130を全開にすることにより、積極的に外気を農業ハウス100内に導入して、外部空気を循環させることが可能になる。
【0056】
なお、既に外側カーテン130が全開にされている状態で、現在の温度が25℃になった場合(S.13でYes)、制御部10は、外側カーテン130を全開にさせた状態を維持したまま、
図3に示す温度調整処理を終了する。
【0057】
現在の温度が25℃(T5)でなかった場合(S.13でNo)、制御部10は、現在の温度が26℃(T6)であるか(26℃未満から26℃になったか、または、26℃より高い温度から26度になったか)否かを判断する(S.15)。現在の温度が26℃でない場合(S.15でNo)、制御部10は、現在の温度が30℃(TU)以上であるか否かを判断する(S.17)。
【0058】
夏秋季は日差しが強いため、農業ハウス100内の温度が30℃以上(40℃近くまで)に上昇する可能性があるが、イチゴ栽培において許容される最高温度は30℃程度である。このため、制御部10は、農業ハウス100の温度が30℃以上である場合(S.17でYes)、水平カーテン駆動部14により水平カーテン140を全閉し、外側カーテン駆動部13により外側カーテン130の下側3/4(上側1/4を除いて)を閉じて、ヒートポンプ160の温度を25℃(T5)に設定して冷房を稼働させ、さらに循環扇190を稼働させる(S.18)。このような処理(S.18)を行うことにより、農業ハウス100の水平カーテン140よりも下側の空間の温度上昇を抑制し、イチゴ栽培に最適な温度範囲内となる25℃まで、農業ハウス100内のイチゴ周辺の温度を冷却させることができる。
【0059】
さらに、農業ハウス100の温度が30℃以上であっても(S.17でYes)、天窓110を開け、天窓扇150を稼働させ(S.08)、内側カーテン120を全開にさせ、外側カーテン130の上側1/4を開放(S.10)した状態を維持することにより、農業ハウス100の外部の空気を、農業ハウス100の水平カーテン140よりも上側の空間に導き入れて、天窓110から効率的に排出させることができる。このため、農業ハウス100の上側の空間における空気の滞留を防ぐことが可能になり、農業ハウス100内の上側の空間の温度が上昇してしまうことを防止することができる。また、農業ハウス100内の上側の空間の温度上昇を抑制することができるため、水平カーテン140と外側カーテン130の下側3/4部分とにより囲まれた、農業ハウス100の下側の空間を、ヒートポンプ160による冷房と循環扇190とにより、効率的に冷却することが可能になる。
【0060】
水平カーテン140を全閉し、外側カーテン130を上側1/4を除いて閉じ、冷房および循環扇190を駆動させた(S.18)後、制御部10は、
図3に示す温度調整処理を終了する。また、既に水平カーテン140が全閉にされ、外側カーテン130が上側1/4を除いて閉じられて、冷房および循環扇190が稼働されている状態で、農業ハウス100内の温度が30℃以上であると判断された場合(S.17でYes)、制御部10は、水平カーテン140が全閉にされ、外側カーテン130が上側1/4を除いて閉じられて、冷房および循環扇190が稼働された状態を維持したまま、
図3に示す温度調整処理を終了する。また、農業ハウス100内の温度が30℃以上でない場合(S.17でNo)、より詳細には、農業ハウス100内の温度が、18℃(S.07)、21℃(S.09)、23℃(S.11)、25℃(S.13)、26℃(S.15)および30℃以上(S.17)に該当しない場合、制御部10は、
図3に示す温度調整処理を終了する。
【0061】
一方で、現在の温度が26℃(T6)である(26℃未満から26℃になったか、または、26℃より高い温度から26度になった)場合(S.15でYes)、制御部10は、水平カーテン駆動部14により水平カーテン140を全開にさせ、外側カーテン駆動部13により外側カーテン130を全開にさせて側窓101の開口101aを開放させ、ヒートポンプ160による冷房を停止させ、循環扇190を停止させる(S.16)。
【0062】
現在の温度が、26℃未満から26℃になった場合、既に、水平カーテン140が全開にされ(S.05)、外側カーテン130が全開にされ(S.14)、ヒートポンプ160および循環扇190が停止されている(S.05)ため、制御部10は、その状態を維持したまま、
図3に示す温度調整処理を終了する。
【0063】
一方で、現在の温度が、26℃より高い温度から26℃になった場合、上述したS.18の処理により水平カーテン140が全閉にされ、外側カーテン130が上側1/4を除いて閉じられた状態で、冷房および循環扇190が稼働されることになるので、農業ハウス100内の温度が下がってきたと判断することができる。この場合、制御部10により水平カーテン140を全開にさせ、外側カーテン130を全開にさせると共に、ヒートポンプ160による冷房を停止させ、循環扇190を停止させることによって(S.16)、農業ハウス100内の温度が下がりすぎてしまうこと防止して、イチゴ栽培に適した温度である25℃付近に温度を維持することが可能となる。
【0064】
なお、既に水平カーテン140および外側カーテン130が全開にされ、冷房および循環扇190が停止されている状態で、現在の温度が26℃より高い温度から26℃になった場合(S.15でYes)、制御部10は、水平カーテン140および外側カーテン130を全開にさせ、冷房および循環扇190を停止させた状態を維持したまま、
図3に示す温度調整処理を終了する。
【0065】
また、S.16の処理では、水平カーテンを全開にさせる温度、外側カーテンを全開にさせる温度、および、冷房を停止させる温度および循環扇190を停止させる温度の一例として、これらの温度を26℃に設定する場合を示した。しかしながら、水平カーテン等を全開にさせる温度や冷房を停止させる温度等は、26℃には限定されない。イチゴ栽培に適した温度範囲は15℃~25℃であり、また、イチゴ栽培を行う為に許容される温度範囲は5℃~30℃である。このため、S.18の処理により、水平カーテン140が全閉にされ、外側カーテン130が上側1/4を除いて閉じられ、冷房や循環扇190の稼働が行われた後に、水平カーテン140および外側カーテン130を全開にさせ、冷房や循環扇190を停止させる温度として、イチゴ栽培に適した温度の下限である15℃に設定することも可能であり、また、イチゴ栽培のために許容される最低温度である5℃に設定することも可能である。
【0066】
冷房を停止させる温度を15℃に設定することにより、イチゴ栽培に適した温度の下限の温度まで農業ハウス100を冷却した状態から、段階的に農業ハウス100内の温度が上昇するように温度制御を行うことが可能となり、農業ハウス100内の温度をより長くイチゴ栽培に適した温度範囲(15℃~25℃)に維持することが可能になる。一方で、冷房を停止させる温度を5℃に設定することにより、イチゴ栽培のために許容される最低温度まで農業ハウス100を冷却した状態から、段階的に農業ハウス100内の温度が上昇するように温度制御を行うことができ、農業ハウス100内の温度をより多段的かつ緩やかに変化させることが可能になる。このため、農業ハウス100内の温度を、イチゴ栽培を行うことが可能な温度範囲(5℃~30℃)に維持させることが容易になる。
【0067】
また、冷房の停止温度を5℃や15℃に設定した場合において、水平カーテン駆動部14により水平カーテン140を全開にさせる温度を同じ温度(5℃や15℃)にすることにより、冷房が行われている間、農業ハウス100の内部空間が水平カーテン140によって上下に分けた状態となるため、下側の空間だけを効果的に冷却することが可能になる。また、冷房が停止すると同時に水平カーテン140を全開にさせることにより、イチゴに対してより多くの太陽光を照射させることが可能となり、光合成を促進させることが可能になる。一方で、
図3のS.15の処理で示したように、現在の温度が26℃になったときに冷房の停止処理を行うことにより、5℃や15℃になるまで冷房を継続する場合に比べて、冷房処理に伴うコスト増加を抑えることが可能になる。
【0068】
そして、制御部10は、上述した各処理により
図3に示した温度調整処理が終了した後に、繰り返し
図3に示す処理を実行する。この繰り返しにより、現在の時刻に応じて行うべき処理(S.02~S.05)や、現在の温度に応じて行うべき処理(S.06~S.18)を、各時刻および各温度に応じて迅速且つ適切なタイミングで確実に実行することが可能になる。
【0069】
さらに、夏秋季は夜間であっても気温が下がりにくいので、日の出時刻の直前まで夜冷を行って(S.02,S.03)、農業ハウス100内の温度を、イチゴ栽培を行うのに許容される最低温度5℃や、イチゴ栽培に好適な最低の温度15℃に維持しておくことにより、日の出後の温度調整を効果的に行うことが可能になる。
【0070】
また、日の出後に、すぐに農業ハウス100の天窓や全てのカーテンを開けるのではなく、農業ハウス100内の温度変化に応じて段階的に天窓110やカーテンを開けて、外気の導入や空気循環を行うことにより、ヒートポンプ160による冷房等を極力稼働しない(エネルギー消費を抑制した低コスト状態)で、さらに、栽培する植物(イチゴ)に対して温度変化による負荷を与えないようにして、農業ハウス100内の温度調整を行うことが可能になる。
【0071】
図4および
図5は、冬春季に制御部10が実行する処理を示したフローチャートである。制御部10は、時計部15から時刻情報を取得し(S.21)、続いて、温度検出器180から温度情報を取得する(S.22)。そして、制御部10は、現在の時刻が夕刻日没前を示す所定時刻(例えば16時)であるか否かの判断を行う(S.23)。冬春季は日中に気温が上がり、夕刻日没に近づくに従って気温が下がった後、日没後に急激に寒くなる傾向がある。このため、制御部10は、現在時刻に基づいて夕刻の日没前の所定時刻になったか否かを、S.23の処理において判断する。
【0072】
現在の時刻が、夕刻日没前を示す所定時刻(例えば16時)である場合(S.23でYes)、制御部10は、天窓駆動部11によって天窓110を閉じ、天窓扇150を停止させ、内側カーテン駆動部12によって内側カーテン120を全閉にさせ、外側カーテン駆動部13によって外側カーテン130を全閉にさせ、水平カーテン駆動部14によって水平カーテン140を全閉にさせる(S.24)。
【0073】
制御部10は、夕刻日没前を示す所定時刻に天窓110や全てのカーテンを閉じる等の処理を行うことによって、日没後に屋外温度が低下する影響を受けて、農業ハウス100内の温度まで大きく下がってしまうことを防止する。天窓110や全てのカーテンを閉じる等の処理を行った後(S.24)、制御部10は、
図4および
図5に示す温度調整処理を終了する。
【0074】
なお、制御部10は、
図3に示した夏秋季の処理と同様に、冬春季において
図4および
図5の各処理により温度調整処理を終了した後には、繰り返し
図4および
図5に示す処理を実行する。この繰り返しにより、取得された時刻情報に基づいて、現在の時刻に応じて行うべき処理を、迅速かつ的確なタイミングで実行することが可能となり、また、取得された温度情報に基づいて、現在の温度に応じて行うべき処理を、迅速かつ的確なタイミングで実行することが可能になる。
【0075】
なお、天窓110や全てのカーテンが全閉にされ、天窓扇150が停止された状態で、現在の時刻が夕刻日没前を示す所定時刻(例えば16時)であると判断された場合(S.23でYes)、制御部10は、天窓110や全てのカーテンを全閉し、天窓扇150を停止させた状態を維持したまま、
図4および
図5に示す温度調整処理を終了する。
【0076】
現在の時刻が夕刻日没前を示す所定時刻(例えば16時)でない場合(S.23でNo)、制御部10は、現在の温度が16℃(T1)であるか否か、より詳細には、16℃よりも高い温度から16℃まで温度が下がったかどうかの判断を行う(S.25)。冬春季には、日没前であっても、外気温度の低下に伴って、農業ハウス100内の温度が16℃よりも高い温度から16℃以下へと低下するおそれがある。このため、制御部10は、現在の温度が16℃(T1)である場合(16℃よりも高い温度から16℃まで温度が下がった場合)に、天窓駆動部11によって天窓110を閉じ、天窓扇150を停止させ、内側カーテン駆動部12によって内側カーテン120を全閉にさせ、外側カーテン駆動部13によって外側カーテン130を全閉にさせる(S.26)。
【0077】
なお、S.26の処理では、S.24の処理と異なり、水平カーテン140を全閉させる処理は行わない。現在の温度が16℃(T1)まで下がった場合であっても水平カーテン140を全開させた状態を維持することにより、イチゴに対してより多くの太陽光を照射させることが可能となり、光合成を促進させることが可能になる。
【0078】
天窓110を閉じ、天窓扇150を停止させ、内側カーテン120および外側カーテン130を全閉させる処理(S.26)を行った後、制御部10は、
図4および
図5に示す温度調整処理を終了する。なお、天窓110が閉じており、天窓扇150が停止されて、内側カーテン120および外側カーテン130が全閉にされた状態で、現在の温度が16℃(T1)になった(16℃よりも高い温度から16℃まで温度が下がった)場合(S.25でYes)、制御部10は、天窓110を閉じた状態にし、天窓扇150の停止を維持させ、内側カーテン120および外側カーテン130を全閉にさせた状態を維持したまま、
図4および
図5に示す温度調整処理を終了する。
【0079】
現在の温度が16℃(T1)でない場合(S.25でNo)、制御部10は、現在の時刻が、日の出を示す時刻(例えば午前5時)であるか否かの判断を行う(S.27)。現在の時刻が日の出を示す時刻である場合(S.27でYes)、制御部10は、水平カーテン駆動部14によって水平カーテン140を全開にさせる(S.28)。水平カーテン140を全開にする処理により、早朝からより多くの太陽光を農業ハウス内のイチゴに照射させることが可能になり、イチゴの育成をより効果的に行うことが可能になる。水平カーテン140を全開にする処理(S.28)を行った後、制御部10は、
図4および
図5に示す温度調整処理を終了する。なお、既に水平カーテン140が全開にされた状態で、現在の時刻が日の出を示す時刻になった場合(S.27でYes)、制御部10は、水平カーテン140が全開にされた状態を維持したまま、
図4および
図5に示す温度調整処理を終了する。
【0080】
現在の時刻が日の出を示す時刻でなかった場合(S.27でNo)、制御部10は、現在の温度が5℃(TL)以下であるか否かの判断を行う(S.29)。イチゴ栽培を行うことが可能な最低温度は、既に説明したように5℃程度である。従って、農業ハウス100内の温度が5℃以下になってしまう場合には、農業ハウス100内の温度を5℃より高くなるように暖める必要が生じる。現在の温度が5℃(TL)以下である場合(S.29でYes)、制御部10は、ヒートポンプ160を操作して暖房を行わせると共に、循環扇190を稼働させて農業ハウス100内の空気を循環させることにより、農業ハウス100の温度が5℃以下にならないように温度制御を行う(S.30)。循環扇190を稼働させて農業ハウス100内の暖房を行う処理(S.30)を開始した後、制御部10は、
図4および
図5に示す温度調整処理を終了する。
【0081】
なお、既に循環扇190が稼働されており、農業ハウス100内の暖房が行われている状態で、現在の温度が5℃(TL)以下であると判断された場合(S.29でYes)、制御部10は、循環扇190の稼働処理および農業ハウス100内の暖房処理をそのまま継続させた状態で、
図4および
図5に示す温度調整処理を終了する。
【0082】
現在の温度が5℃(TL)以下でない場合(S.29でNo)、制御部10は、現在の温度が15℃(T0)であるか否か(15℃未満の温度から15℃になったか否か)を判断する(S.31)。既に説明したように、イチゴ栽培に適した温度範囲は15℃~25℃である。このため、ヒートポンプ160により暖房が行われて農業ハウス100内の温度が15℃まで暖められた場合(S.31でYes)、制御部10は、ヒートポンプ160を停止させて暖房処理を終了させると共に、循環扇190を停止させる(S.32)。ヒートポンプ160と循環扇190とを停止させた後(S.32)、制御部10は、
図4および
図5に示す温度調整処理を終了する。また、既にヒートポンプ160と循環扇190とが停止されている状態で、現在の温度が15℃になった場合(S.31でYes)、制御部10は、ヒートポンプ160と循環扇190が停止した状態を維持したまま、
図4および
図5に示す温度調整処理を終了する。
【0083】
都市部に比較的近い地域であっても、冬春季の日没後は、ヒートポンプ160を用いて暖房を行わないと農業ハウス100内の温度が5℃以下に下がってしまうことが多い。このため、上述したように、夜間に農業ハウス100内の温度が5℃以下となる場合、制御部10は、農業ハウス100内を暖房で暖めると共に循環扇190で空気循環を行うことにより、農業ハウス100内の温度が5℃以下になることを防ぐ。また、制御部10は、農業ハウス100内の温度が15℃まで上がった場合に、暖房と循環扇とを停止することにより、農業ハウス100内の温度がイチゴ栽培に適した温度範囲(あるいはイチゴ栽培に許容される温度範囲)内に収まるように、温度調整を行う。
【0084】
さらに、日中であっても、真冬の時期には農業ハウス100外の温度が5℃以下になる場合がある。そのような場合、制御部10は、日中であっても、温度が5℃以下になる(S.29でYes)と、暖房と循環扇とを稼働させ(S.30)、温度が15℃になる(S.31でYes)と、暖房と循環扇とを停止させる処理(S.32)を繰り返し実行する。なお、冬春季には、農業ハウス100内の温度が低く、イチゴの温度上昇を招きにくいので、気化冷却ファン170は停止させた状態にする。
【0085】
現在の温度が15℃でない場合(S.31でNo)、制御部10は、現在の温度が18℃(T2)であるか(18℃未満から18℃になったか)否かを判断する(S.33)。日が昇り始めると、農業ハウス100内の温度が上昇し始めるため、晴天時の農業ハウス100の温度は、18℃未満から18℃へ達することが多い。現在の温度が18℃の場合(S.33でYes)、制御部10は、天窓駆動部11を操作して天窓110を開き、天窓扇150を稼働させる(S.34)。農業ハウス100内の温度が上昇すると、暖かい空気は農業ハウス100の上部に貯まっていく。天窓110を開いて、天窓扇150を稼働させることによって、農業ハウス100内の暖かい空気を農業ハウス100の外部に排出することができる。その後、制御部10は、
図4および
図5に示す温度調整処理を終了する。
【0086】
なお、既に天窓110が開放され、または天窓扇150が稼働されている状態で、現在の温度が18℃になった場合(S.33でYes)、制御部10は、天窓110を開放させた状態を維持し、天窓扇150の稼働を引き続き継続したまま、
図4および
図5に示す温度調整処理を終了する。
【0087】
現在の温度が18℃でない場合(S.33でNo)、制御部10は、現在の温度が21℃(T3)であるか(21℃未満から21℃になったか)を判断する(S.35)。温度が21℃である場合(S.35でYes)、制御部10は、内側カーテン駆動部12を操作して内側カーテン120を全開にさせると共に、外側カーテン駆動部13を操作して外側カーテン130の上側1/4を開放させる(S.36)。既に、天窓110を開放し、天窓扇150を稼働させているため、内側カーテン120を全開にし、かつ、外側カーテン130の上側1/4を開放することにより、農業ハウス100の水平カーテン140の設置位置よりも上側の空間において、側窓101の開口101aから外気を導入し、天窓110からハウス100内の空気を排出することが可能になる。また、天窓扇150により空気の流れを円滑にすることが可能となる。その後、制御部10は、
図4および
図5に示す温度調整処理を終了する。
【0088】
なお、外側カーテン130を開放させる範囲は、上側1/4に限定されず、任意で変更することが可能である。例えば、1/5から1/3までの範囲で、外側カーテン130の上側範囲を任意で変更する構成とすることも可能である。また、既に内側カーテン120が全開であって、さらに、外側カーテン130の上側1/4(或いは、上側1/5~上側1/3の範囲)が開放されている状態で、現在の温度が21℃になった場合(S.35でYes)、制御部10は、内側カーテン120を全開にした状態を維持し、また、外側カーテン130の上側1/4(或いは、上側1/5~上側1/3の範囲)を開放させた状態を維持したまま、
図4および
図5に示す温度調整処理を終了する。
【0089】
現在の温度が21℃でない場合(S.35でNo)、制御部10は、温度が23℃(T4)であるか(23℃未満から23℃になったか)を判断する(S.37)。現在の温度が23℃である場合(S.37でYes)、制御部10は、外側カーテン駆動部13を操作して外側カーテン130の下側1/4を、さらに開放させる(S.38)。
【0090】
上述したように、水平カーテン140の設置位置より上側の空間に外気を導入して空気の循環を行っている状況で、温度検出器180で検出される温度が23℃に達する場合には、水平カーテン140の設置位置よりも下側の空間に対しても外気を導入し、空気の循環を行うことが好ましい。このため、外側カーテン130の下側1/4をさらに開放させることにより、外部の空気を農業ハウス100の下側空間に導入し易いようにすると共に、導入された外気を、天窓110を介して農業ハウス100の外へ排出できるようにする。このようにすることにより、農業ハウス100の下側空間に外気を導入して、農業ハウス100内の空気の循環を容易かつ積極的に行うことが可能になる。
【0091】
農業ハウス100内の温度が23℃の場合には、イチゴ栽培の好適な温度範囲の上限25℃(T5)まで少しだけ温度的な余裕がある。このため、室内温度が23℃の場合には、外側カーテン130を全開にせず、真ん中の部分(残りの1/2)を閉じた状態にすることにより、外気の流入を調整し、農業ハウス100内の温度が徐々に外気温に近づくように温度を調整することができる。その後、制御部10は、
図4および
図5に示す温度調整処理を終了する。
【0092】
外側カーテン130を開放させる範囲は、下側1/4に限定されず、任意で変更することが可能である。例えば、1/5から1/3までの範囲で、外側カーテン130の下側範囲を任意で変更する構成とすることも可能である。また、外側カーテン130の下側1/4(或いは、下側1/5~下側1/3の範囲)が既に開放されている状態で、現在の温度が23℃になった場合(S.37でYes)、制御部10は、外側カーテン130の下側1/4(或いは、下側1/5~下側1/3の範囲)を開放させた状態を維持したまま、
図4および
図5に示す温度調整処理を終了する。
【0093】
現在の温度が23℃でない場合(S.37でNo)、制御部10は、温度が25℃(T5)以上であるか(25℃未満から25℃になったか)を判断する(S.39)。温度が25℃以上である場合(S.39でYes)、制御部10は、外側カーテン駆動部13を操作して外側カーテン130を全開にさせて(S.40)、
図4および
図5に示す温度調整処理を終了する。
【0094】
既に外側カーテン130が全開にされている状態で、現在の温度が25℃以上になった場合(S.39でYes)、制御部10は、外側カーテン130を全開にさせた状態を維持したまま、
図4および
図5に示す温度調整処理を終了する。
【0095】
このように外側カーテン130を全開にすることによって、農業ハウス100内に外気を効果的に導入することができると共に、天窓扇150および循環扇190を使って効果的に空気の循環・排出を行うことが可能になる。一方で、温度が25℃以上でない場合(S.39でNo)、制御部10は、
図4および
図5に示す処理を終了し、その後に繰り返し
図4および
図5に示す処理を実行する。
【0096】
実施の形態に係る温度調整システム1では、夏秋季や冬春季、或いは日の出や日の入り、さらには、農業ハウス100内の温度に応じて、天窓110およびカーテン120,130,140の開閉制御や、循環扇190、天窓扇150、気化冷却ファン170およびヒートポンプ160の稼働・停止制御を行うことにより、農業ハウス100の外部の温度変化等に応じて、イチゴ栽培を行うことが可能な温度範囲(5℃~30℃)に収まるように、農業ハウス100内の温度を段階的に調整することができる。このため、農業ハウスの外部の温度変化等を考慮せずに暖房や冷房によって農業ハウス内の温度制御を行う方法に比べて、エネルギー消費量(電気使用量等)を少なくすること(低コスト化を図ること)が可能になる。また、エネルギー消費量(電気使用量等)を抑えながら、農業ハウス100内の温度調整を行うことができるため、イチゴ栽培を周年で行うことが容易になる。
【0097】
以上、本発明に係る農業ハウスの温度調整システムおよび温度調整方法について、温度調整システム1を一例として示して説明を行った。しかしながら、農業ハウスの温度調整システムおよび温度調整方法は、温度調整システム1の構成および処理方法には限定されない。例えば、実施の形態に示した温度調整システム1では、制御部10が各駆動部11~14等を介して、天窓110、カーテン120,130,140、天窓扇150、ヒートポンプ160、気化冷却ファン170、循環扇190を駆動・停止させる場合について説明した。しかしながら、天窓110やカーテン120,130,140等の開閉制御は、制御部10の制御により行われるものには限定されず、人間(ユーザ)が開閉する構成であってもよい。
【0098】
例えば、冬春季であれば、現在の時刻が日の出を示す時刻になったら(
図4のS.27に対応)、人間(ユーザ)が水平カーテンを全開にし(
図4のS.28に対応)、現在の時刻が夕刻日没前の所定時刻(例えば16時)になった場合(
図4のS.23に対応)、人間(ユーザ)が水平カーテンを全閉にする処理(
図4のS.24に対応)を行ってもよい。また、現在の時刻が夕刻日没前の所定時刻になった場合(
図4のS.23に対応)や、現在の温度が16℃まで下がった場合(
図4のS.25に対応)に、人間(ユーザ)が、天窓110を閉じ、天窓扇150を停止し、内側カーテン120および外側カーテン130を全閉する処理等を行い(
図4のS.24,S.26に対応)、農業ハウス100内の温度が5℃以下になったら(S.29に対応)、ヒートポンプ160で暖房を行い、循環扇190を稼働させ(S.30に対応)、農業ハウス100内の温度が15℃になったら(S.31に対応)、ヒートポンプ160と循環扇190とを停止し(S.32に対応)、農業ハウス100内の温度が18℃になったら(S.33に対応)、天窓110を開き、天窓扇150を稼働させ(S.34に対応)、農業ハウス100内の温度が21℃になったら(S.35に対応)、内側カーテン120を全開にし、外側カーテン130の上側1/4(或いは、上側1/5~上側1/3の範囲)を開放し(S.36に対応)、農業ハウス100内の温度が23℃になったら(S.37に対応)、外側カーテン130の下側1/4(或いは、下側1/5~下側1/3の範囲)を開放し(S.38に対応)、農業ハウス100内の温度が25℃以上になったら(S.39に対応)、外側カーテン130を全開にする(S.40に対応)ように処理を行ってもよい。
【0099】
夏秋季においても、
図3に示す温度調整処理に対応するように、人間(ユーザ)が、天窓110や各カーテン120,130,140の開閉を行い、ヒートポンプ160等の稼働・停止処理を行ってもよい。
【0100】
このような処理を人間が行う場合であっても、農業ハウス100の外部の温度変化等に応じて、イチゴ栽培が可能な温度範囲に収まるように、農業ハウス100内の温度を段階的に調整することができる。このため、農業ハウス100の外部の温度変化等を考慮せずに暖房や冷房によって農業ハウス100内の温度制御を行う方法に比べて、エネルギー消費量(電気使用量等)を少なくすること(低コスト化を図ること)が可能になる。また、エネルギー消費量(電気使用量等)を抑えながら、農業ハウス100内の温度調整を行うことができるため、イチゴ栽培を周年で行うことが容易になる。
【0101】
また、実施の形態に示した温度調整システム1では、現在の時刻が日の出を示す時刻である場合に、水平カーテン140を全開にさせ(S.04,S.05,S.27,S.28)、現在の時刻が夕刻日没前の所定の時刻である場合に、水平カーテン140を全閉にさせる(S.02,S.03,S.23,S.24)処理について説明した。しかしながら、水平カーテン140を全開あるいは全閉させるタイミングは、日の出を示す時刻や夕刻日没前の所定の時刻だけには限定されない。日の出を示す時刻に水平カーテン140を全開にさせるのではなく、例えば、日の出後であっても現在の温度が23℃未満の場合には、水平カーテン140を全閉にさせておき、現在の温度が23℃になった場合(S.11,S.37)に、外側カーテン130の下側1/4を開放させると共に、水平カーテン140を全開にさせるようにしてもよい(S.12,S.38)。現在の温度が23℃になるまで水平カーテン140を全閉にさせておくことにより、農業ハウス100内の空間を水平カーテン140によって上側空間と下側空間とに分け隔てることができる。したがって、現在の温度が23℃になるまで水平カーテン140を全閉にさせると、夜冷(S.03)による冷たい空気や、ヒートポンプにより温められた空気(S.30,S.32)を、農業ハウス100の下側の空間に残しておくことができる。このため、農業ハウス100内の水平カーテン140よりも下側の空間の温度が急激に上昇あるは下降してしまうことを抑制することができ、効果的かつ柔軟に農業ハウス内の温度制御を行うことが可能になる。
【0102】
また、実施の形態に係る農業ハウスの温度調整システムおよび温度調整方法では、農業ハウス100でイチゴを栽培する場合を一例として示して説明を行ったが、農業ハウス100で栽培する植物はイチゴには限定されない。農業ハウス内で栽培を行うことが可能な他の植物(例えば、果物、野菜または生花等)を育てる場合にも、イチゴ栽培と同様に、温度調整、温度制御および温度管理を行うことが可能である。
【0103】
さらに、実施の形態に係る農業ハウスの温度調整システムでは、温度調整システム1(制御部10)が農業ハウス100内に設置される場合を一例として示したが、例えば、温度調整システム1(制御部10)を農業ハウス100外に設置し、ネットワークを介して制御部10が、天窓駆動部11や、内側カーテン駆動部12や、外側カーテン駆動部13や、水平カーテン駆動部14や、天窓扇150や、外側カーテン130や、気化冷却ファン170や、循環扇190等を制御する構成にすることも可能である。また、制御部10を農業ハウス100内に設置した状態で、スマーフォン、タブレットあるいはパーソナルコンピュータを用いてネットワーク回線を介して制御部10を操作する構成とすることも可能である。
【符号の説明】
【0104】
1 …温度調整システム
10 …制御部(制御手段)
11 …天窓駆動部(天窓駆動手段)
12 …内側カーテン駆動部(内側カーテン駆動手段)
13 …外側カーテン駆動部(外側カーテン駆動手段)
14 …水平カーテン駆動部(水平カーテン駆動手段)
15 …時計部(時計手段)
100 …農業ハウス
101 …側窓
101a …(側窓の)開口
103 …高設ベンチ
110 …天窓
120 …内側カーテン
130 …外側カーテン
140 …水平カーテン
150 …天窓扇
160 …ヒートポンプ(暖房手段、冷房手段)
161 …(ヒートポンプの)吹出口
170 …気化冷却ファン
180 …温度検出器(温度検出手段)
190 …循環扇