(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024062947
(43)【公開日】2024-05-10
(54)【発明の名称】設備保全管理システム
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/20 20230101AFI20240501BHJP
【FI】
G06Q10/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023171997
(22)【出願日】2023-10-03
(62)【分割の表示】P 2023519677の分割
【原出願日】2022-10-25
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】狄 靖
(72)【発明者】
【氏名】山本 剛史
(72)【発明者】
【氏名】前口 知哉
(72)【発明者】
【氏名】神保 裕喜
(72)【発明者】
【氏名】竹治 正裕
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049CC15
(57)【要約】
【課題】設備の稼働時間を踏まえた適切な保全予定時期を設定する。
【解決手段】保全管理システムは、保全対象となる設備に配置され、設備の稼働状況を示す情報である設備稼働情報を無線送信するセンサと、設備の保全予定時期を設定する演算装置とを備える。演算装置は、センサから設備稼働情報を取得し、設備稼働情報に基づいて設備の保全予定時期を設定する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
保全対象となる設備に配置され、前記設備が稼働しているか否かを示す第1情報を送信する第1のセンサと、
前記設備の稼働中における状態を示す第2情報を送信する第2のセンサと、
前記設備の保全予定時期を設定する演算装置とを備え、
前記演算装置は、
前記第1のセンサおよび前記第2のセンサから前記第1情報および前記第2情報を取得し、
前記第1情報および前記第2情報に基づいて前記保全予定時期を設定し、
前記演算装置は、
前記第1情報の履歴に基づいて前記設備の累積稼働時間を算出し、
前記累積稼働時間に基づいて前記保全予定時期を設定し、
前記演算装置は、前記累積稼働時間に加えて、前記第2情報に基づいて、前記保全予定時期を設定する、設備保全管理システム。
【請求項2】
前記第2のセンサは、電流センサおよび振動センサの少なくとも一方を含む、請求項1に記載の設備保全管理システム。
【請求項3】
前記演算装置は、前記設備の使用が開始されてからの経過時間と前記累積稼働時間との関係から前記累積稼働時間が所定の基準時間に達すると予測される時期を予測し、予測された時期を前記保全予定時期に設定し、
前記演算装置は、前記第2情報に基づいて前記基準時間を増減する、請求項1に記載の設備保全管理システム。
【請求項4】
前記第2情報は、前記設備の稼働中における状態を示すパラメータが予め定められた閾値を超えるか否かの情報である、請求項3に記載の設備保全管理システム。
【請求項5】
前記設備の保全作業に関する情報を表示する表示装置をさらに備える、請求項1に記載の設備保全管理システム。
【請求項6】
前記演算装置は、前記保全予定時期を、保全担当部署、保全対象設備、保全作業、および保全作業名の少なくともいずれかと対応付けて前記表示装置に表示させる、請求項5に記載の設備保全管理システム。
【請求項7】
前記設備の保全作業は、前記設備のオペレータが担当する第1作業と、前記設備の保全者が担当する第2作業とに予め層別されており、
前記演算装置は、前記第1作業に関する情報と、前記第2作業に関する情報とを前記表示装置の同一画面に表示させる、請求項5に記載の設備保全管理システム。
【請求項8】
前記設備の保全に要する部品の在庫数を管理する在庫管理システムをさらに備え、
前記演算装置は、前記設備の保全に要する部品を、前記在庫管理システムから取得された前記部品の在庫数に対応付けて前記表示装置に表示させる、請求項5に記載の設備保全管理システム。
【請求項9】
前記演算装置は、前記設備の保全に遅延が生じた場合、その遅延理由を前記表示装置に表示させる、請求項5に記載の設備保全管理システム。
【請求項10】
前記演算装置は、
前記第1情報の履歴に基づいて前記設備の累積稼働回数を算出し、
前記累積稼働回数に基づいて前記保全予定時期を設定する、請求項1に記載の設備保全管理システム。
【請求項11】
前記演算装置は、前記設備の使用が開始されてからの経過時間と前記累積稼働回数との関係から前記累積稼働回数が所定の基準回数に達すると予測される時期を予測し、予測された時期を前記保全予定時期に設定する、請求項10に記載の設備保全管理システム。
【請求項12】
前記設備の保全作業に関する情報を表示する表示装置をさらに備え、
前記演算装置は、前記保全予定時期を設定することに加えて、さらに、
前記第1情報の履歴に基づいて前記設備に設置された部品の累積稼働回数を算出し、
前記設備の使用が開始されてからの経過時間と前記累積稼働回数との関係から前記累積稼働回数が所定の基準回数に達すると予測される時期を予測し、予測された時期を前記部品の交換予定時期に設定し、
前記保全予定時期と前記交換予定時期との時間差が所定の基準期間内であるか否かを判定し、判定結果を前記表示装置に表示させる、請求項1に記載の設備保全管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、設備保全管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
工場やプラント等で用いられる設備の保全を行なう際には、設備の異常を早期に発見し、設備の故障によって設備が停止する前に設備の保全を行なうことが望ましい。近年では、設備の作業者が所持する携帯端末から管理サーバ装置へのアクセス環境を用意した上で、その携帯端末での保全情報の入出力や更新等を行えるようにすることも提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【0004】
本開示による設備保全管理システムは、保全対象となる設備に配置され、設備の稼働状況を示す情報である設備稼働情報を無線送信するセンサと、設備の保全予定時期を設定する演算装置とを備える。演算装置は、センサから設備稼働情報を取得し、設備稼働情報に基づいて保全予定時期を設定する。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【
図1】
図1は、保全管理システムの概要を示す図である。
【
図2】
図2は、保全予定日の設定手法を説明するための図(その1)である。
【
図3】
図3は、メンテナンスリストの一覧画面を示す図である。
【
図4】
図4は、メンテナンスリストの詳細画面を示す図(その1)である。
【
図5】
図5は、メンテナンスリストの詳細画面を示す図(その2)である。
【
図6】
図6は、演算装置の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、保全予定日の設定手法を説明するための図(その2)である。
【
図8】
図8は、保全予定日の設定手法を説明するための図(その3)である。
【
図10】
図10は、遅延パターンの集計および分析の結果の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
[本開示が解決しようとする課題]
製品の製造等に用いられる設備が突発的に故障した場合、時間稼働率の低下、製品の納期遅れなどの不具合を招く。そのため、設備の適切な保全(メンテナンス)と部品交換が重要である。
【0007】
従来においては、設備の保全時期を、設備の使用が開始されてからの経過時間で管理する期間基準保全が行なわれる場合が多かった。しかしながら、期間基準保全では、時間稼働率の低い設備は保全過剰、時間稼働率の高い設備は保全不足となることが懸念される。
【0008】
本開示の目的は、設備の稼働時間を踏まえた適切な保全予定時期を設定することである。
【0009】
[本開示の効果]
本開示によれば、設備の稼働時間を踏まえた適切な保全予定時期を設定することができる。
【0010】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
【0011】
(第1項) 本開示による設備保全管理システムは、保全対象となる設備に配置され、設備の稼働状況を示す情報である設備稼働情報を送信するセンサと、設備の保全予定時期を設定する演算装置とを備える。演算装置は、センサから設備稼働情報を取得し、設備稼働情報に基づいて保全予定時期を設定する。
【0012】
(第2項) 第1項に記載の設備保全管理システムにおいて、設備稼働情報には、設備が稼働しているか否かを示す第1情報が含まれる。演算装置は、第1情報の履歴に基づいて設備の累積稼働時間を算出し、累積稼働時間に基づいて保全予定時期を設定する。
【0013】
(第3項) 第2項に記載の設備保全管理システムにおいて、演算装置は、設備の使用が開始されてからの経過時間と累積稼働時間との関係から累積稼働時間が所定の基準時間に達すると予測される時期を予測し、予測された時期を保全予定時期に設定する。
【0014】
(第4項) 第2項に記載の設備保全管理システムにおいて、設備稼働情報には、設備の稼働中における状態を示す第2情報が含まれる。演算装置は、累積稼働時間に加えて、第2情報に基づいて、保全予定時期を設定する。
【0015】
(第5項) 第1~4項のいずれかに記載の設備保全管理システムにおいて、設備の保全作業に関する情報を表示する表示装置をさらに備える。
【0016】
(第6項) 第5項に記載の設備保全管理システムにおいて、演算装置は、保全予定時期を、保全担当部署、保全対象設備、保全作業、および保全作業名の少なくともいずれかと対応付けて表示装置に表示させる。
【0017】
(第7項) 第5または6項に記載の設備保全管理システムにおいて、設備の保全作業は、設備のオペレータが担当する第1作業と、設備の保全者が担当する第2作業とに予め層別されている。演算装置は、第1作業に関する情報と、第2作業に関する情報とを表示装置の同一画面に表示させる。
【0018】
(第8項) 第5~7項のいずれかに記載の設備保全管理システムにおいて、設備の保全に要する部品の在庫数を管理する在庫管理システムをさらに備える。演算装置は、設備の保全に要する部品を、在庫管理システムから取得された部品の在庫数に対応付けて表示装置に表示させる。
【0019】
(第9項) 第5~8項のいずれかに記載の設備保全管理システムにおいて、演算装置は、設備の保全に遅延が生じた場合、その遅延理由を表示装置に表示させる。
【0020】
(第10項) 第1項に記載の設備保全管理システムにおいて、設備稼働情報には、設備が稼働しているか否かを示す第1情報が含まれる。演算装置は、第1情報の履歴に基づいて設備の累積稼働回数を算出し、累積稼働回数に基づいて保全予定時期を設定する。
【0021】
(第11項) 第10項に記載の設備保全管理システムにおいて、演算装置は、設備の使用が開始されてからの経過時間と累積稼働回数との関係から累積稼働回数が所定の基準回数に達すると予測される時期を予測し、予測された時期を保全予定時期に設定する。
【0022】
(第12項) 第2項に記載の設備保全管理システムにおいて、設備の保全作業に関する情報を表示する表示装置をさらに備える。演算装置は、保全予定時期を設定することに加えて、さらに、第1情報の履歴に基づいて設備に設置された部品の累積稼働回数を算出し、設備の使用が開始されてからの経過時間と累積稼働回数との関係から累積稼働回数が所定の基準回数に達すると予測される時期を予測し、予測された時期を部品の交換予定時期に設定し、保全予定時期と交換予定時期との時間差が所定の基準期間内であるか否かを判定し、判定結果を表示装置に表示させる。
【0023】
[本開示の実施形態の詳細]
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。また、以下に記載する実施形態の少なくとも一部を任意に組み合わせてもよい。
【0024】
(保全管理システムの概要)
図1は、本実施の形態に従う保全管理システム1の概要を示す図である。保全管理システム1は、複数の設備2の保全業務に関する情報を管理する。
【0025】
保全管理システム1は、保全対象となる複数の設備2と、複数のセンサ3と、無線中継機4と、クラウドサーバ5と、複数の端末6と、在庫管理システム200とを含む。
【0026】
複数の設備2の各々は、たとえば、工場内の作業現場に配置され、製品の製造等に用いられる。通常の作業時においては、設備2は作業者(オペレータ)によって操作される。設備2の保全時には、作業者と保全者とが協力して設備2の保全作業を行なう。
【0027】
複数のセンサ3は、複数の設備2にそれぞれ配置される。各センサ3は、当該センサ3が配置されている設備2の稼働状況を示す情報である設備稼働情報を取得し、取得した設備稼働情報を無線中継機4に無線送信する。なお、各センサ3は、設備稼働情報をたとえばPLC(Programmable Logic Controller)等によって有線送信するものであってもよい。
【0028】
無線中継機4は、各センサ3から取得した設備稼働情報を、無線通信または有線LANを介してクラウドサーバ5に送信する。各センサ3からクラウドサーバ5へのデータ送信は、人を介在することなく行なわれる。各センサ3は、いわゆる無線M2M(Machine to Machine)センサである。なお、無線M2Mセンサには、コストが安く、簡単に設置できるというメリットがある。
【0029】
各センサ3は、設備2の制御盤等に取り付けられ、設備2が稼働しているのか停止しているのかを示す信号を取得する接点センサを含む。すなわち、各センサ3が取得する設備稼働情報には、設備2が稼働しているか否かを示す情報が含まれる。
【0030】
設備2のなかに電流で稼働する部品(たとえば冷却ファン)が含まれる場合には、その部品の稼働電流を検出する電流センサがセンサ3に含まれていてもよい。また、設備2の稼働中に振動する部品(たとえば回転軸等)がある場合には、その部品の振動を検出する振動センサがセンサ3に含まれていてもよい。すなわち、センサ3が取得する設備稼働情報には、設備が稼働しているか否かを示す情報に代えてあるいは加えて、設備2の稼働中の状態(稼働電流、振動等)を示す情報が含まれていてもよい。
【0031】
在庫管理システム200には、複数の設備2の保全に要する部品の在庫状況を示す在庫情報が記憶されている。
【0032】
クラウドサーバ5には、各センサ3からの設備稼働情報が、無線中継機4を介して受信される。クラウドサーバ5は、演算装置100と作業状態管理システム300とを含む。
【0033】
演算装置100は、CPU(Central Processing Unit)などの演算回路と、ROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory)などのメモリと、各種信号を入出力するためのポートとを含む(いずれも図示せず)。
【0034】
演算装置100のメモリには、各センサ3から受信した設備稼働情報が記憶される。演算装置100は、たとえば端末6からの要求に応じて、記憶されている設備稼働情報を端末6に送信する。
【0035】
作業状態管理システム300には、複数の設備2の保全作業の状態(たとえば未作業、作業中、作業完了のいずれの状態であるのか)を示す作業状態情報が記憶されている。
【0036】
演算装置100は、在庫管理システム200と有線あるいは無線で通信接続されている。
【0037】
演算装置100は、各センサ3からの設備稼働情報、在庫管理システム200からの在庫情報、作業状態管理システム300からの作業状態情報に基づいて、複数の設備2の保全作業に関する情報を一元管理する。
【0038】
複数の端末6は、演算装置100と有線あるいは無線で通信接続されている。各端末6は、パーソナルコンピュータ等のディスプレイ付きの情報通信端末である。各端末6は、ユーザによって操作されることにより、演算装置100に記憶されている保全業務情報をディスプレイに表示させる。ユーザは、端末6のディスプレイに表示される画面を見ることによって、設備2の保全状況を把握することができる。
【0039】
(次回の保全予定日の予測)
演算装置100は、センサ3から取得する設備稼働情報に基づいて、設備2の次回の保全予定時期を設定する。本実施の形態においては、演算装置100は、設備稼働情報に基づいて把握される設備2の累積稼働時間を基準として、設備2の次回の保全予定日を設定する。
【0040】
図2は、保全予定日の設定手法を説明するための図である。
図2において、横軸は日付(設備2の使用開始時からの経過時間)を示し、縦軸は設備2の累積稼働時間を示す。なお、設備2の「使用開始時」とは、当該設備2が保全された履歴がある場合は前回の保全が実施された日時である「前回保全日時」を意味し、当該設備2が保全された履歴がない場合は当該設備2が初めて稼働された日時である「初稼働日時」を意味する。
【0041】
演算装置100は、保全対象の設備2に配置されたセンサ3から、設備稼働時間(稼働/停止)をリアルタイム(たとえば1分周期)で取得する。
【0042】
演算装置100は、センサ3から取得する設備稼働情報に含まれる、設備2が稼働しているか否かを示す情報の履歴から、設備2の累積稼働時間を算出する。なお、累積稼働時間の初期値(使用開始時の累積稼働時間)は0である。
【0043】
演算装置100は、設備2の使用開始時を原点P0として、経過時間および累積稼働時間のカウントを開始する。そして、演算装置100は、現時点の稼働点P(経過時間と累積稼働時間との交点)と原点P0とを結ぶ直線の傾き、すなわち、現時点における単位経過時間あたりの累積稼働時間をリアルタイム(たとえば1分周期)で算出する。
【0044】
そして、演算装置100は、現時点における単位経過時間あたりの累積稼働時間に基づいて、現時点において累積稼働時間が予め定められた保全基準時間に達する日付を予測し、予測された日付を次回保全予定日に設定する。
【0045】
なお、「保全基準時間」は、たとえば作業者等のユーザによって予め入力された時間に設定される。また、「設備2の使用開始時」(前回保全実施日時あるいは初稼働日時)も、同様に、たとえば作業者等のユーザによって予め入力された日時に設定される。
【0046】
図2に示される例では、日付t1における稼働点P1および日付t2における稼働点P2は、どちらも、原点P0を通る同じ直線L1上に存在している。そのため、日付t1における次回保全予定日M1、および、日付t2における次回保全予定日M2は、どちらも、直線L1と保全基準時間とが交差する日付t4に設定される。
【0047】
一方、日付t2から日付t3までの期間は何らかの要因で設備2の稼働が停止されているため、累積稼働時間は増加せずに一定である。この影響で、日付t3における稼働点P3は、直線L1よりも傾きの小さい直線L2上に存在することになり、日付t3における次回保全予定日M3は、直線L2と保全基準時間とが交差する日付t5に設定されることになる。すなわち、演算装置100は、稼働停止時間に応じて、次回保全予定日を日付t4から日付t5に遅らせる。
【0048】
このように、本実施の形態による演算装置100は、M2Mセンサであるセンサ3から取得される設備稼働情報に応じて、次回保全予定日をリアルタイムに設定することができる。そのため、単純に経過時間だけで次回保全予定日を決める場合に比べて、設備2の実際の稼働時間を踏まえた適切な次回保全予定日を設定することができる。
【0049】
(保全作業の一元管理)
演算装置100は、上述のように設定した次回保全予定日を含めて、設備2の保全作業に関する情報を一元管理するためのメンテナンスリストを生成する。
【0050】
図3は、端末6のディスプレイに表示されるメンテナンスリストの一覧画面を示す図である。一覧画面の表示項目には、保全を担当する部署、保全対象となる設備、保全の作業名、次回保全予定日、保全の作業状態等が含まれる。部署、設備および作業名の欄には、保全管理者等によって予め入力されている情報が表示される。ユーザは、端末6を操作して端末6のディスプレイにメンテナンスリストを表示することによって、設備2の保全作業に関する情報を把握することができる。これにより、オンラインでも保全業務の見える化が図られる。
【0051】
次回保全予定日の欄には、上述のように演算装置100がリアルタイムに設定した次回保全予定日が自動的に表示される。次回保全予定日が近づくと、演算装置100は、保全対象となる設備2の予備品の準備を促すメールを予備品準備の担当者等に通知する。これにより、予備品の欠品によって保全が遅延することを未然に防止することができる。
【0052】
作業状態の欄には、演算装置100が作業状態管理システム300からのリアルタイムに取得した情報が自動的に表示される。そのため、ユーザは、メンテナンスリストの一覧画面を見ることで、次回保全予定日だけではなく、実際の保全作業状態をも確認することができるため、保全作業の遅延が生じているのか否かを容易に把握することができる。
【0053】
ユーザが一覧画面上でいずれかの作業名を選択してクリックすると、選択された作業名についての詳細画面が端末6のディスプレイに表示される。
【0054】
図4は、メンテナンスリストの詳細画面を示す図である。詳細画面の上段には「現場作業」、「保全作業」、「予備品確認」、および「実施後の確認」の表示欄が設けられている。詳細画面の下段には、「現場作業」、「保全作業」、「予備品確認」、および「実施後の確認」のうちから選択されたいずれか1つの詳細項目が表示される。
【0055】
設備2の保全作業は、作業者(オペレータ)が担当する作業と、設備2の保全を専門とする保全者が担当する作業とに予め層別されている。詳細画面の「現場作業」、「保全作業」、「予備品確認」、および「実施後の確認」には、作業者が担当する作業と、保全者が担当する作業の両方が含まれている。このように作業者が担当する作業と保全者が担当する作業とを同一画面に表示することによって、一連の保全作業を作業者と保全者とで共有することができる。また、一般的には作業者は保全作業に対する関心が低く保全作業を保全者に任せっきりになることが多いが、上記のように作業者および保全者の双方の担当作業を同一画面に表示することによって、作業者の保全作業に対する関心を高めて作業者が保全作業に積極的に関与するように促すことができる。
【0056】
図4には、「現場作業」が選択された状態が例示されている。「現場作業」選択時の詳細項目には、対応事項、確認、時間、備考等が含まれている。対応事項の欄には現場の作業内容が列挙され、各対応事項が完了した場合に確認欄のチェックボックスにチェックを入力できるようになっている。すべての対応事項の確認欄にチェックが入力されると、現場作業の表示欄に[完了]とのメッセージが自動的に表示される。そのため、ユーザは、現場作業の表示欄を見ることで、現場作業の対応事項が完了しているか否かを容易に把握することができる。なお、備考欄には、現場の作業者が保全者に向けたメッセージを入力することができる。
図4には、現場の作業者が、保全者に向けて、備考欄の最下行に「現場作業完了」とのメッセージを入力した例が表示されている。ユーザは、備考欄に入力されているメッセージを見ることによっても、現場作業の状態を把握することができる。
【0057】
図5は、メンテナンスリストの詳細画面で「予備品確認」が選択された状態を示す図である。
【0058】
「予備品確認」選択時の詳細項目には、保全に要する予備品の品名、型式、在庫チェック、棚番号、必要個数、在庫数などの項目が含まれている。品名、型式、棚番号、必要個数の欄には、予め入力された情報が表示される。各予備品の確認が完了した場合に在庫チェック欄のチェックボックスにチェックを入力できるようになっている。すべての予備品の在庫チェック欄にチェックが入力されると、予備品確認の表示欄に[完了]とのメッセージが自動的に表示される。そのため、ユーザは、予備品確認の表示欄を見ることで、予備品の確認が完了しているか否かを把握することができる。
【0059】
在庫数の欄には、演算装置100が在庫管理システム200からリアルタイムに取得した在庫数が自動的に表示される。そのため、ユーザは、「予備品確認」の詳細画面を見ることで、予備品の在庫状況を把握することができる。
【0060】
(フローチャート)
図6は、演算装置100が保全業務に関する情報を管理する際に行なう処理手順の一例を示すフローチャートである。このフローチャートは、予め定められた条件が成立する毎(たとえば所定周期毎)に繰り返し実行される。
【0061】
演算装置100は、M2Mセンサであるセンサ3からの設備稼働情報を取得する(ステップS10)。
【0062】
次いで、演算装置100は、設備稼働情報の履歴から、設備2の累積稼働時間を算出する(ステップS12)。
【0063】
次いで、演算装置100は、ステップS12で算出された累積稼働時間に基づいて、次回保全予定日を予測する(ステップS14)。なお、次回保全予定日の予測手法は上述したとおりである。
【0064】
次いで、演算装置100は、予測された次回保全予定日が近いか否かを判定する(ステップS20)。たとえば、演算装置100は、現在の日付から次回保全予定日までの期間が所定期間(たとえば数週間)未満である場合に、次回保全予定日が近いと判定する。なお、「所定期間」は、たとえば作業者等のユーザによって予め入力された期間に設定される。
【0065】
次回保全予定日が近い場合(ステップS20においてYES)、演算装置100は、予備品の準備を促すメールを予備品準備の担当者に通知する(ステップS22)。なお、メールを通知する宛先は、ユーザが自由に設定することができる。
【0066】
次いで、演算装置100は、いずれかの端末6からメンテナンスリストの表示要求を受信したか否かを判定する(ステップS30)。
【0067】
メンテナンスリストの表示要求を受信した場合(ステップS30においてYES)、演算装置100は、作業状態管理システム300から作業状態の情報を取得するとともに、在庫管理システム200から予備品の在庫数の情報を取得する(ステップS32)。
【0068】
次いで、演算装置100は、ステップS14で予測した次回保全予定日、ステップS32で取得した作業状態および在庫数を反映したメンテナンスリストを、表示要求を送信してきた端末6のディスプレイに表示する(ステップS34)。
【0069】
以上のように、本実施の形態による保全管理システム1は、設備2の実際の稼働時間を踏まえた適切な次回保全予定日を設定し、することができる。次回保全予定日を含むメンテナンスリストを端末6のディスプレイに表示する。これにより、オンラインで保全業務の見える化を図ることができる。
【0070】
[変形例1]
上述の実施の形態においては設備2の累積稼働時間をパラメータとして次回保全予定日を設定したが、設備2の累積稼働時間に加えて設備2の稼働中の状態をパラメータとして次回保全予定日を設定するようにしてもよい。
【0071】
本変形例1においては、上述の実施の形態のように累積稼働時間が保全基準時間に達する日付を次回保全予定日に設定することを基本としつつ、設備2の稼働中の状態に応じて保全基準時間を増減させる。
【0072】
図7および
図8は、本変形例1による次回保全予定日の設定手法を説明するための図である。
図7および
図8には、冷却ファンを保全対象とする例が示されている。
【0073】
具体的には、本変形例1による演算装置100は、保全予定日に近づいた時点(たとえば次回の保全に要する予備品を準備するためのメールを発信する直前)でセンサ3から取得された設備稼働情報から把握される冷却ファンの電流波形が、予め定められた閾値を超えているか否かを判定する。
【0074】
図7には、保全基準時間を増量する例が示される。
図7に示す例では、保全予定日に近づいた時点の冷却ファンの電流が閾値未満であるため、演算装置100は、冷却ファンの状態が良好であると判定し、保全基準時間を所定時間だけ増量する。これにより、次回の保全予定日が所定期間だけ延長される。
【0075】
図8には、保全基準時間を減量する例が示される。
図8に示す例では、冷却ファンの電流が閾値を超えた時間があるため、演算装置100は、冷却ファンの状態が劣化していると判定し、保全基準時間を所定時間だけ減量する。これにより、次回保全予定日が所定期間だけ短縮される。
【0076】
このように、設備2の累積稼働時間に加えて稼働中の状態をパラメータとして次回保全予定日を設定するようにしてもよい。
【0077】
なお、本変形例1において、冷却ファンの電流が閾値を超えた場合には、その時点から所定期間後(たとえば1週間後)を次回保全予定日に設定するようにしてもよい。
【0078】
また、本変形例1において、冷却ファンの電流の平均値あるいは移動平均値をパラメータとして次回保全予定日を設定するようにしてもよい。
【0079】
また、本変形例1において、冷却ファンの電流のみをパラメータとして次回保全予定日を設定するようにしてもよい。また、たとえば、冷却ファンの電流が閾値を超えた回数あるいは累積時間が第1閾値を超えた場合にはその時点から1ヶ月後を次回保全予定日に設定し、冷却ファンの電流が閾値を超えた回数あるいは累積時間が第1閾値よりも大きい第2閾値を超えた場合にはその時点から1週間後を次回保全予定日に設定するようにしてもよい。
【0080】
[変形例2]
上述の実施の形態においては設備2の累積稼働時間をパラメータとして次回保全予定日を設定したが、設備2の累積稼働時間に代えて、設備2の累積稼働回数をパラメータとして次回保全予定日を設定するようにしてもよい。
【0081】
たとえば、演算装置100は、センサ3から取得する設備稼働情報に含まれる、設備2が稼働しているか否かを示す情報の履歴から、設備2の累積稼働回数を算出し、現時点における単位経過時間あたりの累積稼働回数に基づいて、現時点において累積稼働回数が予め定められた保全基準回数に達する日付を予測し、予測された日付を次回保全予定日に設定するようにしてもよい。
【0082】
[変形例3]
設備2の保全予定日を設定することに加えて、設備2に付随する部品(たとえばシリンダバルブ、マグネットスイッチ等)の交換予定日を設定するようにしてもよい。
【0083】
たとえば、演算装置100は、センサ3から取得する設備稼働情報に含まれる、設備2が稼働しているか否かを示す情報の履歴から、設備2に付随する部品の累積稼働回数を算出し、現時点における単位経過時間あたりの当該部品の累積稼働回数に基づいて、現時点において当該部品の累積稼働回数が予め定められた基準回数に達する日付を予測し、予測された日付を次回の交換予定日に設定するようにしてもよい。
【0084】
さらに、演算装置100が、設備2の保全予定日と、設備2に付随する部品の交換予定日との時間差が所定の基準期間(たとえば3ヶ月)以内であるか否かを判定し、その判定結果を端末6のディスプレイに表示させるようにしてもよい。これにより、ユーザは、設備2の保全予定日が設備2に付随する部品の交換予定日と近いか否かを容易に把握でき、設備2の保全作業時に合せて設備2の付随部品の交換作業を実施するための準備を計画し易くすることができる。
【0085】
[変形例4]
次回保全予定日が過ぎても保全作業が完了していない保全遅延が生じた設備2がある場合には、遅延理由を端末6のディスプレイに表示させるようにしてもよい。
【0086】
図9は、端末6のディスプレイに表示される保全遅延リストを示す図である。保全遅延リストには、保全遅延が生じた部署、設備、作業名、遅延理由が表示される。
【0087】
保全遅延があった場合、演算装置100は、在庫管理システム200と連動して予備品の在庫状況を確認し、予備品が欠品している場合には遅延理由の欄に「予備品在庫なし」との理由を自動的に入力する。なお、遅延理由の欄には、たとえば保全管理者等が「日程調整」などの遅延理由を入力することもできる。
【0088】
このように保全の遅延理由を管理することによって、遅延パターンの集計および分析が可能になり、今後の保全遅延対策に活用することができる。
【0089】
図10は、遅延パターンの集計および分析の結果の一例を示す図である。このように、遅延理由とその発生回数とをグラフ化して表示することにより、遅延パターンの分析が容易となり、今後の保全遅延対策に活用することができる。
【0090】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0091】
1 保全管理システム、2 設備、3 センサ、4 無線中継機、5 クラウドサーバ、6 端末、100 演算装置、200 在庫管理システム、300 作業状態管理システム。