IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ヨコオの特許一覧

<>
  • 特開-コネクタ 図1
  • 特開-コネクタ 図2
  • 特開-コネクタ 図3
  • 特開-コネクタ 図4
  • 特開-コネクタ 図5
  • 特開-コネクタ 図6
  • 特開-コネクタ 図7
  • 特開-コネクタ 図8
  • 特開-コネクタ 図9
  • 特開-コネクタ 図10
  • 特開-コネクタ 図11
  • 特開-コネクタ 図12
  • 特開-コネクタ 図13
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024006296
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/24 20060101AFI20240110BHJP
【FI】
H01R13/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022107051
(22)【出願日】2022-07-01
(71)【出願人】
【識別番号】000006758
【氏名又は名称】株式会社ヨコオ
(74)【代理人】
【識別番号】100136375
【弁理士】
【氏名又は名称】村井 弘実
(74)【代理人】
【識別番号】100079290
【弁理士】
【氏名又は名称】村井 隆
(72)【発明者】
【氏名】田川 芳生
(57)【要約】
【課題】スタック現象の発生が無く、かつ堅牢性や封止性を確保できる低背短尺化可能なコネクタを提供する。
【解決手段】一端が開口する有底筒状のチューブと、スプリングピンと、を備え、前記スプリングピンは、前記チューブの前記開口から突出する接点部と、前記チューブの内側底面に当接する接触部と、前記接点部と前記接触部との間に位置する弾性変形部と、を有し、前記接点部と前記接触部と前記弾性変形部とは連続した1つの部材からなる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端が開口する有底筒状のチューブと、
前記チューブの前記開口から突出する接点部と、前記チューブの内側底面に当接する接触部と、前記接点部と前記接触部との間に位置する弾性変形部と、を有し、前記接点部と前記接触部と前記弾性変形部とは連続した1つの部材からなるスプリングピンと、を備えたコネクタ。
【請求項2】
前記チューブの内側底面に凹部が形成され、前記接触部は前記凹部に当接する凸部を有する、請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記スプリングピンは基端側板状部を有し、前記接触部の前記凸部は前記基端側板状部に略半球状凸部として形成されている、請求項1又は2に記載のコネクタ。
【請求項4】
前記接点部は前記チューブから突出する略半球状凸部として形成されている、請求項1又は2に記載のコネクタ。
【請求項5】
前記弾性変形部は円弧状の周回部を有し、前記周回部の内周径よりも前記基端側板状部の外周径が小さい、請求項3に記載のコネクタ。
【請求項6】
前記弾性変形部は円弧状の周回部を有し、前記周回部の外周径が前記接点部から前記接触部に向かって小さい、請求項1又は2に記載のコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のコネクタ、特にチューブ内のスプリングにより接続対象に接触するプランジャを付勢させて導電させる、いわゆるポゴピンと呼ばれる構造においては、コネクタを低背短尺化するにあたりプランジャがチューブ内部で詰まるスタック現象が発生し、接続不良を発生するリスクがあった。
【0003】
そこで、下記特許文献1に記載のような薄板を折り曲げ箱型にしたチューブレス構造のコネクタが用いられているが、スタック現象は解消されるものの、堅牢性や取付筐体への組み込み後における封止性において不利な点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6829082号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように、プランジャがチューブ内を摺動するコネクタではスタック現象の発生可能性があり、チューブレス構造であると堅牢性や封止性において不利な点があった。
【0006】
本発明の目的の一例は、スタック現象の発生が無く、かつ堅牢性や封止性を確保できる低背短尺化可能なコネクタを提供することにある。本発明の他の目的は、本明細書の記載から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、一端が開口する有底筒状のチューブと、
前記チューブの前記開口から突出する接点部と、前記チューブの内側底面に当接する接触部と、前記接点部と前記接触部との間に位置する弾性変形部と、を有し、前記接点部と前記接触部と前記弾性変形部とは連続した1つの部材からなるスプリングピンと、を備えるコネクタである。
【0008】
本発明の上記態様によれば、スタック現象の発生が無く、かつ堅牢性や封止性を確保できるコネクタを実現可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明に係るコネクタの実施の形態であって、チューブ10を断面とした正面図である。
図2】本発明に係るコネクタの実施の形態であって、スプリングピン20の押し込み状態の、チューブ10を断面とした正面図である。
図3】実施の形態の正面図である。
図4】実施の形態の斜視図である。
図5】実施の形態で用いるスプリングピン20の正面図である。
図6】スプリングピン20の正断面図である。
図7】スプリングピン20の平面図である。
図8】スプリングピン20の右側面図である。
図9】スプリングピン20の底面図である。
図10】スプリングピン20の略左上方よりみた斜視図である。
図11】スプリングピン20の略右上方よりみた斜視図である。
図12】スプリングピン20の略左下方よりみた斜視図である。
図13】スプリングピン20の略右下方よりみた斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1から図4は本発明に係るコネクタの実施の形態であり、図5から図13は実施の形態で用いるスプリングピンを示す。これらの図において、コネクタ1は、導電性の有底筒状のチューブ10と、チューブ10の内側に配置され、押圧接点部として一方の端部がチューブ10の開口11から突出する接点部21となる導電性のスプリングピン20と、を備えている。本実施形態のチューブ10の底面は、円形状である。ただし、四角や六角等の多角形状であってもよい。底面が多角形状の場合、チューブは底面に合わせた多角筒状ともなり得る。
【0011】
図1から図4に示すように、チューブ10は開口11を有する内側空間12の内側底面に略円錐状の凹部13を有する。凹部13は内側空間12をドリル加工で形成したときの窪みを利用することも可能である。チューブ10の基部には外周にフランジ部14が形成され、基部外側底面はコネクタ1を配置する機器の接触パッドへの接触や、機器へのはんだ付け実装に使用可能なように平坦面となっている。なお、チューブ10の外周にフランジ部を設けない構造であってもよい。
【0012】
図5から図13にも示すように、スプリングピン20は、例えば、1枚の導電性板材(金属板)からの打ち抜き及び折曲げ加工により形成される、いわゆる板金加工品である。導電性材料として、例えば、ベリリウム銅やチタン銅、リン青銅などの銅合金が使用されるが、これに限定されない。スプリングピン20は一方の端部(以下、先端部という)が接点部21で、他方の端部(以下、基端部という)がチューブ10の内側底面に当接する接触部31となっており、接点部21と接触部31の間に伸縮するバネ機能部としての弾性変形部41を有する。チューブ10の内側空間12にスプリングピン20を配置し、チューブ10の開口11のかしめ加工を行うことでスプリングピン20はチューブ10の内側に保持される。接触部31及び弾性変形部41はチューブ10の内側に位置し、接点部21は開口11より突出している。
【0013】
先端側の接点部21は、先端側板状部22に、例えば絞り加工によって略半球状に先端側凸部23として形成されており、チューブ10から突出する向きの凸面である。先端側板状部22は、抜け止めのために、かしめ等による加工後の開口11の内径よりも大径である。従って、先端側凸部23の周囲に残ったフランジ状部分24の外径は、開口11の内径よりも大きく、抜け止め機能及び先端側凸部23の突出姿勢の安定化機能を有する。
【0014】
基端側の接触部31は、基端側板状部32に、例えば絞り加工によって略半球状に基端側凸部33として形成されており、チューブ10の内側底面に向かって突出する凸面である。基端側凸部33はチューブ側の略円錐状の凹部13に当接して電気的に接触する。基端側凸部33は、チューブ10の高さ寸法を抑えるため、先端側凸部23よりも小径であって、高さも低い。
【0015】
弾性変形部41は、接点部21側の先端側板状部22と、接触部31側の基端側板状部32と、を連絡しており、略1回分周回する円弧状の周回部42と、周回部42の一端と先端側板状部22とを接続する第1連絡部43と、周回部42の他端と基端側板状部32とを接続する第2連絡部44とを有する。本実施形態では、スプリングピン20は板金加工品であるため、弾性変形部41は、図5図6に示す接点部21の中心と接触部31の中心とを結ぶスプリングピン20の中心軸20a方向における周回部42の厚みよりも、中心軸20aに垂直な方向における周回部42の幅が大きい。あるいは、周回部42の厚みと幅が略等しい場合もあり得る。第1連絡部43は先端側板状部22と周回部42との間に所定の隙間を確保するために中心軸20aに沿った長さを有する。同様に、第2連絡部44は基端側板状部32と周回部42との間に所定の隙間を確保するために中心軸20aに沿った長さを有する。
【0016】
なお、円弧状の周回部42の内周径よりも基端側板状部32の外周径が小さく設定されている。これは、弾性変形部41が圧縮されたときに、基端側板状部32に当たることを回避することで、弾性変形部41の伸縮ストロークを確保するのに有効である。また、好ましくは図1図2に示したチューブ10の中心軸10a方向と、スプリングピン20の中心線20a方向とが略一致するようチューブ10にスプリングピン20が配置される。
【0017】
以上の実施の形態の構成において、図2のように、例えば相手側機器50の電極51が、コネクタ1が有するスプリングピン20の接点部21に当接し、スプリングピン20を押し込む。すると、スプリングピン20の弾性変形部41が、チューブ10の中心軸10aに沿った方向に圧縮され、バネ機能によって相手側電極51と接点部21間に所定接触圧を与えるため、相手側電極51と接点部21間の電気的接続を確保できる。他方で、スプリングピン20の接触部31もチューブ10の内側底面の凹部13に所定接触圧で当接し、スプリングピン20とチューブ10間の電気的接続が確保される。この結果、相手側機器50の電極51、スプリングピン20、チューブ10に至る電気の通電経路が形成され、さらには相手側機器50とチューブ10が装着(接続)された機器との電気接続が確実に行われることになる。
【0018】
本実施の形態によれば、下記の効果を奏することができる。
【0019】
(1) コネクタ1は、スプリングピン20の周囲が、スプリングピン20を内側に設けた有底筒状のチューブ10で囲まれているため、薄板を折り返して箱型にしたチューブレス構造の従来品よりも堅牢性に優れる。例えば、スプリングピン20の横ずれや、押し込み時の過度の変形を防止できる。また、取付筐体へ圧入や樹脂封止することができるため、取付筐体組み込み後の封止性が向上する利点がある。
【0020】
(2) スプリングピン20は、接点部21と接触部31との間に弾性変形部41を有するが、これらは板金加工品として効率的に製造可能である。また、スプリングピン20はプランジャとスプリングが一体構造であることにより、従来の別体構造に比べて、低背短尺化が可能であり、部品点数が少なく製造容易である。
【0021】
(3) プランジャとスプリングが一体のスプリングピン20の基端側でチューブ10に対し導電させる構造であり、スプリングピン20をチューブ中心軸10aに対して傾ける必要がなく、スタックが発生しにくい。
【0022】
(4) チューブ10の内側底面に凹部13が形成され、スプリングピン20の接触部31は凹部13に当接する基端側凸部33を有するため、両者の接触部位が明確になり、電気的接続が安定化される。つまり、凹部13と基端側凸部33の接触部位に弾性変形部41のバネ機能による接触圧が加わり、チューブ10、スプリングピン20間の確実な電気的接続が可能となる。なお、凹部13は、内側空間12の形成時のドリル加工で発生するため、凹部13を形成するための製造工程は不要であり、製造工数が増加することは無い。
【0023】
(5) スプリングピン20において、プレス加工により接点部21の先端側凸部23及び接触部31の基端側凸部33を簡単に形成でき、効率的に製造可能である。
【0024】
(6) 弾性変形部41は円弧状の周回部42を有し、周回部42の内周径よりも基端側凸部33が形成された基端側板状部32の外周径が小さい。このため、周回部42が基端側板状部32に当たるのを回避でき、弾性変形部41の伸縮のストロークを十分確保できると共に、スプリングピンの低背化に繋がる。
【0025】
(7) チューブ10の基部にはフランジ部14が形成されているため、例えば取付筐体側にフランジ部14に対応する二段穴等を設けることで、取付筐体側へのコネクタ1の装着が容易となる。
【0026】
以上、図面を参照して本発明の実施形態及び変形例について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【0027】
実施の形態では、チューブ10の内側底面に凹部13、スプリングピン20側に基端側凸部33を形成して、凹凸部による接触としたが、基端側凸部33を省略してもよい。つまり、チューブ10の内側底面に、スプリングピン20の基端部底面(基端側板状部32の底面)を接触させる構成でもよい。
【0028】
実施の形態では、スプリングピン20の弾性変形部41は、円弧状の周回部42を一個有するとしたが、伸縮ストロークを増やすために円弧状の周回部を複数個有してもよい。その場合の周回部は、基端部側に向かうにつれ外周径が小さくなり、先端部側の周回部の内側に基端側の周回部が嵌まり込むようにしてもよい。
【0029】
実施の形態では、チューブ10の開口11のかしめ加工によりスプリングピン20をチューブ10内側に保持するとしたが、別機構で保持してもよい。例えば、チューブ10にスプリングピン20を配置した後、一端が内側にかしめられている又は内周面に段が付いた貫通筒状部品を、チューブ10とスプリングピン20の間に圧入し、スプリングピン20の抜けを防止する機構でもよい。スプリングピン20をチューブ10と共に貫通筒状部品等の別体で保持することで、チューブ10にかしめ加工するよりも加工制約がなく製造が簡易になったり、スプリングピン20の長さ違いごとにチューブ10を設計する必要がないため、部品の共通化ができる等の利点がある。加えてチューブ10と貫通筒状部品でめっき種類を変えることができるため、耐久性・耐食性等の向上、又は不要なめっきを省くことでのコスト削減を図ることも可能になる。
【0030】
本明細書によれば、以下の態様のコネクタが提供される。
【0031】
(態様1)
態様1は、一端が開口する有底筒状のチューブと、
前記チューブの前記開口から突出する接点部と、前記チューブの内側底面に当接する接触部と、前記接点部と前記接触部との間に位置する弾性変形部と、を有し、前記接点部と前記接触部と前記弾性変形部とは連続した1つの部材からなるスプリングピンと、を備えるコネクタである。
【0032】
上述の態様1によれば、前記スプリングピンの周囲が前記チューブで囲まれているため、薄板を折り返して箱型にしたチューブレスの従来品よりも堅牢性に優れる。例えば、スプリングピンの横ずれや、押し込み時の過度の変形を防止できる。また、取付筐体への組み込み後に樹脂封止する用途にも適用可能な利点がある。前記スプリングピンはプランジャとスプリングが一体構造であり、従来の別体構造に比べて、低背短尺化が可能であり、部品点数が少なく製造容易である。さらに、前記スプリングピンの基端側で前記チューブに対し導電させる構造であり、前記スプリングピンをチューブ中心軸に対して傾ける必要がなく、スタックが発生しにくい。
【0033】
(態様2)
態様2は、前記チューブの内側底面に凹部が形成され、前記接触部は前記凹部に当接する凸部を有する。
【0034】
上述の態様2によれば、前記スプリングピンの接触部と、前記チューブとの接触部位が明確になり、電気的接続が安定化される。つまり、前記凹部と前記凸部の接触部位に前記弾性変形部のバネ機能による接触圧が加わり、前記チューブ、前記スプリングピン間の確実な電気的接続が可能となる。なお、前記凹部は、前記チューブ内側空間の形成時のドリル加工で発生するため、凹部を形成するための製造工程は不要であり、製造工数が増加することは無い。
【0035】
(態様3)
態様3は、前記スプリングピンは基端側板状部を有し、前記接触部の前記凸部は前記基端側板状部に略半球状凸部として形成されている。
【0036】
上述の態様3によれば、前記接触部の前記凸部をプレス加工により容易に形成可能である。
【0037】
(態様4)
態様4は、前記接点部が前記チューブから突出する略半球状凸部として形成されている。
【0038】
上述の態様4によれば、前記接点部をプレス加工により容易に形成可能である。
【0039】
(態様5)
態様5は、前記弾性変形部が円弧状の周回部を有し、前記周回部の内周径よりも前記基端側板状部の外周径が小さい。
【0040】
上述の態様5よれば、前記弾性変形部の伸縮のストローク、つまりスプリングピンの伸縮ストロークを十分確保できる。
【0041】
(態様6)
態様6は、前記弾性変形部が円弧状の周回部を有し、前記周回部の外周径が前記接点部から前記接触部に向かって小さい。
【0042】
上述の態様6よれば、前記周回部の外径が前記接点部から前記接触部に向かって小さいことで、前記周回部を複数設けた場合に、先端部側の周回部の内側に基端部側の周回部が嵌まり込むようにして、前記弾性変形部のストロークの増大を図るのに有効となる。
【符号の説明】
【0043】
1 コネクタ
10 チューブ
11 開口
12 内側空間
13 凹部
14 フランジ部
20 スプリングピン
21 接点部
22 先端側板状部
23 先端側凸部
24 フランジ状部分
31 接触部
32 基端側板状部
33 基端側凸部
41 弾性変形部
42 周回部
43,44 連絡部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13