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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024062971
(43)【公開日】2024-05-10
(54)【発明の名称】標的システム
(51)【国際特許分類】
   F41J 5/10 20060101AFI20240501BHJP
【FI】
F41J5/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023183481
(22)【出願日】2023-10-25
(31)【優先権主張番号】P 2022170416
(32)【優先日】2022-10-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】512198660
【氏名又は名称】株式会社エイテック
(74)【代理人】
【識別番号】100121131
【弁理士】
【氏名又は名称】西川 孝
(74)【代理人】
【氏名又は名称】稲本 義雄
(74)【代理人】
【識別番号】100168686
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 勇介
(72)【発明者】
【氏名】永井 克己
(57)【要約】
【課題】画像に基づいて着弾位置を検出する。
【解決手段】標的システムは、標的を撮像する撮像装置と、標的に向かって飛翔する飛翔物体が衝突して跳ね返る様子を撮像装置が撮像した画像に対する画像処理を行って、標的に対する飛翔物体の衝突位置を特定する処理を行う衝突位置特定部とを備える。撮像装置が標的の正面方向に配置される場合、飛翔物体が写された複数のフレームの画像のうち、飛翔物体の進行方向が変化したことが検出されたフレームの1つ前のフレームの画像を、衝突位置を特定するための画像として決定し、その画像にブレて写されている飛翔物体の進行方向の前方の円弧を半円とする円形の中心位置を、衝突位置として特定する。本技術は、例えば、BB弾を射撃できるソフトエアガンの標的システムに適用できる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
標的を撮像する撮像装置と、
前記標的に向かって飛翔する飛翔物体が衝突して跳ね返る様子を前記撮像装置が撮像した画像に対する画像処理を行って、前記標的に対する前記飛翔物体の衝突位置を特定する処理を行う衝突位置特定部と
を備える標的システム。
【請求項2】
前記撮像装置が、前記標的の正面方向に配置される
請求項1に記載の標的システム。
【請求項3】
前記衝突位置特定部は、
前記飛翔物体が写された複数のフレームの画像のうち、前記飛翔物体の進行方向が変化したことが検出されたフレームの1つ前のフレームの画像を、前記衝突位置を特定するための画像として決定し、
その画像にブレて写されている前記飛翔物体の進行方向の前方の円弧を半円とする円形の中心位置を、前記衝突位置として特定する
請求項2に記載の標的システム。
【請求項4】
前記撮像装置が、前記標的の正面に対して斜め上方向に配置される
請求項1に記載の標的システム。
【請求項5】
前記撮像装置が、前記標的の正面に対して斜め横方向に配置される
請求項1に記載の標的システム。
【請求項6】
前記衝突位置特定部は、
前記飛翔物体が写された1フレーム目の画像を、前記衝突位置を特定するための画像として決定し、
その画像にブレて写されている前記飛翔物体の右側および左側の円弧のうちの、前記撮像装置が前記標的の正面に対して斜め横方向に配置されている側と同じ側の円弧を半円とする円形の中心位置を、前記衝突位置として特定する
請求項5に記載の標的システム。
【請求項7】
前記撮像装置は、2つの撮像部を有するステレオカメラである
請求項1に記載の標的システム。
【請求項8】
前記ステレオカメラによって撮像されたペアの画像に基づいて前記飛翔物体までの距離を計測するとともに時刻を計測し、その計測結果に従って、前記飛翔物体が着弾すると予測される着弾予測時刻を算出した後、前記ステレオカメラによる撮像を一時停止させて、前記着弾予測時刻の直前から前記ステレオカメラによる撮像を再開させる
請求項7に記載の標的システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、標的システムに関し、特に、画像に基づいて着弾位置を検出することができるようにした標的システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プラスチック製の弾丸(以下、BB(Ball Bullet)弾と称する)を低圧の圧縮空気などで発射する機構を備えたトイガンであるソフトエアガンを使用して標的を射撃し、標的にBB弾が着弾したときの着弾位置に応じて得られるスコアを競う射撃競技が行われている。このような射撃競技では、BB弾の着弾位置を正確に検出することが重要である。
【0003】
そこで、本願出願人は、標的板にBB弾が着弾したときに発生する衝撃波を検出することで、標的板に着弾したBB弾の着弾位置や着弾速度、エネルギーなどを正確に算出することができる標的システムを提案している(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014-25677号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述の特許文献1で提案されているように、衝撃波に基づいてBB弾の着弾位置を検出することができるが、画像に基づいてBB弾の着弾位置を検出することが求められるケースがあった。
【0006】
本開示は、このような状況に鑑みてなされたものであり、画像に基づいて着弾位置を検出することができるようにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一側面の標的システムは、標的を撮像する撮像装置と、前記標的に向かって飛翔する飛翔物体が衝突して跳ね返る様子を前記撮像装置が撮像した画像に対する画像処理を行って、前記標的に対する前記飛翔物体の衝突位置を特定する処理を行う衝突位置特定部とを備える。
【0008】
本開示の一側面においては、撮像装置により標的が撮像され、その標的に向かって飛翔する飛翔物体が衝突して跳ね返る様子が撮像された画像に対する画像処理が行われ、標的に対する飛翔物体の衝突位置を特定する処理が行われる。
【発明の効果】
【0009】
本開示の一側面によれば、画像に基づいて着弾位置を特定することができる。
【0010】
なお、ここに記載された効果は必ずしも限定されるものではなく、本開示中に記載されたいずれかの効果であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本技術を適用した標的システムの第1の実施の形態の構成例を示す図である。
図2】衝撃緩和ユニットの構成例を示す図である。
図3】BB弾の着弾位置の検出方法について説明する図である。
図4】標的システムの第2の実施の形態の構成例を示す図である。
図5】標的システムの第3の実施の形態の構成例を示す図である。
図6】BB弾の着弾位置の検出方法について説明する図である。
図7】標的システムの第4の実施の形態の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本技術を適用した具体的な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0013】
<標的システムの第1の構成例>
図1は、本技術を適用した標的システムの第1の実施の形態の構成例を示す図である。
【0014】
図1に示すように、標的システム11は、表示装置12、衝撃緩和ユニット13、撮像装置14、およびノートブック型パーソナルコンピュータ(以下、ノートPC(Personal Computer)と称する)15を備えて構成される。また、表示装置12およびノートPC15は、映像ケーブル16を介して接続されており、撮像装置14およびノートPC15は、通信ケーブル17を介して接続されている。なお、これらがワイヤレスで接続される構成を採用してもよい。
【0015】
例えば、標的システム11では、ソフトエアガン21を使用して射撃を行うユーザから所定の距離(例えば、10m~30m程度)だけ離れた位置に表示装置12が配置され、ユーザの手元にノートPC15が配置される。また、表示装置12の前面に衝撃緩和ユニット13が装着されており、衝撃緩和ユニット13の前方の下側に、捕集トレイ22が配置されている。
【0016】
そして、撮像装置14は、衝撃緩和ユニット13越しに表示装置12を撮像するように、表示装置12の正面方向であって、ユーザが構えたソフトエアガン21の射線から外れた位置(例えば、ソフトエアガン21の射線に対して周囲の上下左右いずれかの位置であり、かつ、ユーザの射撃の邪魔とならない位置)に配置することができる。具体的には、例えば、ユーザが立射姿勢である場合、撮像装置14は、ユーザの視点から下方に40cm程度以内までの位置に配置することが好ましい。このような位置に撮像装置14を配置しても、撮像装置14から表示装置12まで10m以上の距離を設けることによって、表示装置12をほぼ正面から撮像装置14で撮像することができ、ユーザが射撃を行う際の障害となることも回避される。または、ユーザの射界に入らない程度で表示装置12から10mよりも近い位置に、三脚などに装着させて撮像装置14を配置してもよい。なお、ソフトエアガン21の銃身に沿って撮像装置14を固定する構成としてもよいが、この構成では、ソフトエアガン21の振動に応じて撮像装置14により撮像される画像に生じるブレや傾きなどを補正することが必要となる。
【0017】
また、標的システム11では、ユーザがノートPC15を操作して、射撃を行う際の標的を表す標的画像23をノートPC15の表示部に表示させると、映像ケーブル16を介して、表示装置12にも標的画像23が表示される。そして、ユーザがソフトエアガン21の銃口を表示装置12に向けて標的画像23を狙って射撃を行うと、ソフトエアガン21から発射されたBB弾24は、図1に示す一点鎖線に沿って飛んだ後、衝撃緩和ユニット13に着弾して跳ね返る。図2を参照して後述するように、衝撃緩和ユニット13の表面には軟質シート32が設けられており、軟質シート32によって着弾時の衝撃が緩和されたBB弾24は、衝撃緩和ユニット13の前方で落下し、捕集トレイ22によって散らばることなく回収される。
【0018】
そして、標的システム11では、撮像装置14によって撮像された画像に基づいて、衝撃緩和ユニット13にBB弾24が着弾した着弾位置が検出され、その着弾位置を示す着弾マークPが標的画像23に重畳して表示される。ユーザは、表示装置12に表示される標的画像23上の着弾マークPとともに、ノートPC15の表示部に表示される標的画像23上の着弾マークPによって、BB弾24の着弾位置を確認することができる。
【0019】
このように標的システム11は構成されており、ソフトエアガン21から発射されたBB弾24の標的画像23に対する着弾位置を検出する検出機能、および、衝撃緩和ユニット13に着弾したBB弾24を捕集トレイ22で回収する回収機能を備えている。
【0020】
なお、標的システム11は、ノートPC15に替えて、タブレット端末やスマートフォンなどを備えた構成としてもよく、ノートPC15に対する操作を、タブレット端末やスマートフォンなどに対して行うようにしてもよい。さらに、標的システム11は、必要な処理性能を備えたボードタイプなどのコンピュータモジュールを備えた構成としてもよい。また、撮像装置14として、上述したように配置することが可能であって性能的に利用することができれば、ノートPC15やタブレット端末、スマートフォンなどに搭載されているカメラを使用したり、ボードタイプなどのコンピュータモジュールに接続可能なカメラモジュールを使用したりすることができる。例えば、カメラ搭載のボードタイプなどのコンピュータモジュールを使ってもよいし、必要な数のカメラをボードタイプなどのコンピュータモジュールに接続してもよい。
【0021】
<衝撃緩和ユニットの構成例>
図2を参照して、衝撃緩和ユニット13の構成例、および、表示装置12に対する撮像装置14の配置位置について説明する。
【0022】
図2には、標的システム11を平面視した概略的な構成例が示されており、ノートPC15や、映像ケーブル16、通信ケーブル17などの図示は省略されている。
【0023】
図2に示すように、標的システム11では、表示装置12の前面に衝撃緩和ユニット13が装着されており、衝撃緩和ユニット13から所定の距離Dを設けて、例えば、10m~30m程度を設けて、表示装置12の正面方向に撮像装置14が配置されている。なお、表示装置12の正面から見て左右上下にそれぞれ20度の範囲を正面方向とし、この範囲における傾きに応じた補正を施すことでBB弾24の着弾位置の座標を計算することができる。
【0024】
衝撃緩和ユニット13は、枠部材31、軟質シート32、保護板33、および固定板34-1乃至34-3を備えて構成される。
【0025】
枠部材31は、軟質シート32および保護板33の上下辺および左右辺を固定するための枠形状の部材であり、表示装置12の外形形状と略同一の大きさとなるように構成される。もちろん、枠部材31は、表示装置12の外形形状より大きくてもよい。枠部材31の前面側(撮像装置14側)に軟質シート32が固定され、枠部材31の背面側(表示装置12側)に保護板33が固定される。
【0026】
軟質シート32は、ソフトエアガン21により発射されたBB弾24の衝突を撓むことによって受け止めることができる透明な軟質のシート状の部材である。例えば、軟質シート32には、衝撃による変形に対する復元速度が緩やかな材質として、厚み3.0mmの軟質の塩化ビニル樹脂などを使用することが好ましい。そして、軟質シート32は、表示装置12の前方において略垂直となるように張った状態で全体的に平坦となるように、即ち、撓みが生じないように平面的に、上下辺および左右辺が枠部材31に対して固定される。
【0027】
保護板33は、表示装置12のディスプレイ画面を保護するための透明な硬質の板状の部材であり、例えば、厚み2mmのPET(Polyethylene terephthalate)樹脂などを使用することが好ましい。例えば、BB弾24が軟質シート32に着弾することで、枠部材31の厚み(軟質シート32と保護板33との間隔)以上の大きな撓みが軟質シート32に生じてしまう場合でも、保護板33によって表示装置12を保護することができる。なお、このような大きな撓みが軟質シート32に生じない場合、衝撃緩和ユニット13は、保護板33を備えない構成としてもよい。なお、保護板33は、枠部材31に対する筋交いとしての役目を備えており、例えば、枠部材31の歪を防止するためにも有効である。
【0028】
固定板34-1乃至34-3は、衝撃緩和ユニット13を表示装置12に対して装着するのに利用される。例えば、固定板34-1乃至34-3は、枠部材31の上面に対して、枠部材31の上面から後方に向かって延在するように固定されている。固定板34-1は、枠部材31の上面の中央に固定されており、固定板34-2および固定板34-3は、それぞれ固定板34-1の上面の左右の端部近傍に固定されている。例えば、後述する図4に示すように、表示装置12の上面に固定板34-1乃至34-3の下面を当接させ、固定板34-1乃至34-3によって表示装置12に対して係止するように、衝撃緩和ユニット13が表示装置12に装着される。
【0029】
このように衝撃緩和ユニット13は構成されており、BB弾24が軟質シート32に着弾した際の衝撃が緩和される。そして、標的システム11では、表示装置12の正面方向に配置された撮像装置14によってBB弾24が軟質シート32に着弾する様子を撮像し、その撮像によって得られた画像に基づいて、BB弾24の着弾位置を検出することができる。
【0030】
図3を参照して、標的システム11におけるBB弾24の着弾位置の検出方法について説明する。
【0031】
例えば、衝撃緩和ユニット13から撮像装置14までの距離Dを10mとし、フレームレートが120fpsの撮像装置14を使用して、衝撃緩和ユニット13越しに表示装置12の全体を望遠で撮像することで、標的画像23に向かって飛翔するBB弾24が軟質シート32に衝突して跳ね返る様子を1フレームごとに確認することができた。このとき、BB弾24が軟質シート32に着弾する約5m手前からBB弾24が画像に写り始めて、軟質シート32に着弾したBB弾24は、BB弾24自身の回転などの影響によって様々な方向に向かいながら落下することが確認された。また、BB弾24が、軟質シート32に着弾する手前では70m/s程度の速度で飛翔し、軟質シート32に着弾した後は1~2m/s程度の速度で落下することが確認された。
【0032】
図3には、上述したように撮像して得られた複数のフレームの画像のうち、BB弾24が軟質シート32に着弾する前後の5つのフレーム(時刻t:1~5)の画像から、標的画像23の中央付近を切り出して模式的に表した画像が示されている。フレームt1乃至t5の画像には、BB弾24の進行方向に応じて、BB弾24が伸びたようにブレた形状(前端および後端が略半円形状の角丸長方形)が写されており、このような形状でBB弾24が写されている領域を、以下、BB弾像51と称する。
【0033】
まず、ノートPC15は、BB弾24の着弾位置を特定するために、例えば、各フレームの画像の全領域の色をピクセル単位で調査し、BB弾24の色(RGBの各値)に近いピクセルを検出することによりBB弾像51を特定する画像処理を行う。例えば、ノートPC15は、BB弾像51の大きさよりも若干小さな領域(例えば、BB弾像51の大きさが6mmである場合、1辺の長さが4mmの正方形の領域)ごとに、その領域の1ピクセルだけRGBの各値を調査することによって、さらに検出した領域で正方形の領域を狭めて調査していくことによって、BB弾像51の中心を正確に特定することができる。
【0034】
例えば、BB弾24が白色であって、白を示すRGBのカラーコードが#FFFFFFである場合、RGBそれぞれ全てのカラーコードが#F0以上であるときに白と判定する範囲内かどうかで判定するような処理によって、白色のBB弾像51を検出する確実性を確保することができる。なお、色に基づいてBB弾像51を判別する処理では、BB弾像51の背景となる標的画像23の色には、BB弾24の色とは異なる色(例えば、RGBそれぞれのカラーコードが#F0未満の色)を用いる必要がある。
【0035】
または、ノートPC15は、画像処理ライブラリなどを活用して背景差分を求める処理を行うことによって、変化領域を検出することでBB弾像51を容易に特定することができる。あるいは、撮像装置14として高速度カメラなどを利用し、高フレームレートでBB弾像51を円形に撮像することができる場合、ノートPC15は、ハフ変換やパターンマッチングなどの画像処理技術によってBB弾像51を検出することができる。
【0036】
そして、ノートPC15は、BB弾像51が写されている複数のフレームを特定し、それらの各フレームにおいて、BB弾像51を時間順に認識する画像処理を行う。これにより、ノートPC15は、BB弾像51の進行方向を把握して、BB弾像51の進行方向が変化する直前のフレームの画像を、BB弾24の着弾位置を特定するための画像として決定する。
【0037】
図3に示す例では、フレームt1、フレームt2、およびフレームt3の画像には、軟質シート32に向かって飛翔している状態のBB弾24が写されたBB弾像51(略横向きの角丸長方形)が表示されている。即ち、フレームt1、フレームt2、およびフレームt3の順に、右側から左側に向かう進行方向のBB弾像51が表示されている。そして、フレームt4、およびフレームt5の画像には、軟質シート32で跳ね返って落下している状態のBB弾24が写されたBB弾像51(略縦向きの角丸長方形)が表示されている。即ち、フレームt4、およびフレームt5の順に、上側から下側に向かう進行方向のBB弾像51が表示されている。
【0038】
従って、ノートPC15は、BB弾像51の進行方向が変化する直前のフレームt3の画像を、BB弾24の着弾位置を特定するための画像として決定する。例えば、フレームt1からフレームt4の画像において、BB弾像51の中心座標(x,y)は、フレームt1の画像では中心座標(320,240)、フレームt2の画像では中心座標(310,242)、フレームt3の画像では中心座標(305,244)、フレームt4の画像では中心座標(300,230)と変化している。従って、フレームt3からフレームt4へのBB弾像51の中心座標のy座標の変化より、フレームt3の画像を、BB弾24の着弾位置を特定するための画像として決定することができる。
【0039】
次に、ノートPC15は、このように決定したフレームt3の画像におけるBB弾像51の縦方向の長さhおよび横方向の長さwを計測する。そして、ノートPC15は、計測した長さの長手方向をBB弾像51の進行方向として、その進行方向の前方の円弧を半円とする円形(図3の右側に示すBB弾像51内の二点鎖線の円形)の中心位置を、BB弾24の着弾位置として特定することができる。ここで、フレームt3の画像におけるBB弾像51の前方および後方の円弧のうち、例えば、次のフレームt4のBB弾像51に近い方の円弧を、フレームt3の画像におけるBB弾像51の前方の円弧とする。
【0040】
なお、撮像装置14のシャッタースピードを速くすることによってBB弾像51のブレを小さくすることは可能であるが、BB弾24が写らない時間が多くなってしまう。このため、撮像装置14のシャッタースピードを速くせずに(例えば、1/フレームレート秒で)ブレたBB弾像51を用いて、上述したようにBB弾24の着弾位置を特定することで、BB弾24の着弾を検出する確実性を高めることができるとともに、BB弾24の着弾位置の誤差を小さくすることができる。もちろん、フレームレートが高くなればBB弾像51が角丸長方形から真円に近くなるので、BB弾24の進行方向の変化だけからBB弾24の着弾の瞬間のフレームを特定すればよくなる。
【0041】
<標的システムの第2の構成例>
図4は、本技術を適用した標的システムの第2の実施の形態の構成例を示す図である。なお、図4に示す標的システム11Aにおいて、図1の標的システム11と共通する構成については同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0042】
図4には、標的システム11Aを側面視した概略的な構成例が示されている。
【0043】
図4に示すように、標的システム11Aは、表示装置12に対して衝撃緩和ユニット13が装着されている点で、図1の標的システム11と共通する構成となっている。なお、図4では、図1に示したノートPC15や、映像ケーブル16、通信ケーブル17などの図示は省略されている。また、図示するように、標的システム11A(他の構成例も同様)は、アジャスタ機能付きの脚部によって自重を支え、固定板34のストッパーが表示装置12の上端部に係止するような構成となっている。
【0044】
そして、標的システム11Aは、撮像装置14を支持する支持部材41を備える点で、図1の標的システム11と異なる構成となっている。
【0045】
支持部材41は、衝撃緩和ユニット13の枠部材31の上辺の略中央に対して、衝撃緩和ユニット13から前方(図4の右方向)に向かって伸びるように固定されている。例えば、支持部材41は、支持部材41の基部が衝撃緩和ユニット13の上面に固定され、支持部材41の先端部に撮像装置14が取り付けられるように構成される。つまり、支持部材41は、表示装置12を斜め上方向から撮像するように撮像装置14を支持することができる。
【0046】
つまり、図1の標的システム11は、撮像装置14の配置位置が表示装置12の正面方向であったのに対し、標的システム11Aは、撮像装置14の配置位置が表示装置12の斜め上方向となっている。
【0047】
このように構成される標的システム11Aでは、表示装置12の斜め上方向に配置された撮像装置14によってBB弾24が軟質シート32に着弾する様子を撮像し、その撮像によって得られた画像に基づいて、BB弾24の着弾位置を検出することができる。なお、撮像装置14の配置位置が表示装置12に対して下側であってもよく、この場合、表示装置12に向かってBB弾24が落下してくることが想定され、減速したBB弾24を下側から撮像することで一定時間同じ位置にBB弾24が写された画像に基づいて、BB弾24の着弾位置を検出することができる。もちろん、この場合、表示装置12をBB弾24から保護することが必要になる。また、この場合、支持部材41を用いる構成ではなく、撮像装置14を斜め上に向けた台や三脚などに載せて床に角度を付けて置くような構成とすることができる。
【0048】
<標的システムの第3の構成例>
図5は、本技術を適用した標的システムの第3の実施の形態の構成例を示す図である。なお、図5に示す標的システム11Bにおいて、図1の標的システム11と共通する構成については同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0049】
図5には、標的システム11Bを平面視した概略的な構成例が示されている。
【0050】
図5に示すように、標的システム11Bは、表示装置12に対して衝撃緩和ユニット13が装着されている点で、図1の標的システム11と共通する構成となっている。なお、図5では、図1に示したノートPC15や、映像ケーブル16、通信ケーブル17などの図示は省略されている。
【0051】
そして、標的システム11Bは、撮像装置14を支持する支持部材42を備える点で、図1の標的システム11と異なる構成となっている。
【0052】
支持部材42は、衝撃緩和ユニット13の枠部材31の右辺(衝撃緩和ユニット13を正面から見て右側の辺)の略中央に対して、衝撃緩和ユニット13から前方(図5の右方向)に向かって伸びるように固定されている。例えば、支持部材42は、90°に折れ曲がったL字形状の部材であって、支持部材42の基部が衝撃緩和ユニット13の右側面に固定され、支持部材42の先端部に撮像装置14が取り付けられるように構成される。
【0053】
つまり、図1の標的システム11は、撮像装置14の配置位置が表示装置12の正面方向であったのに対し、標的システム11Bは、撮像装置14の配置位置が表示装置12の斜め横方向となっている。
【0054】
このように構成される標的システム11Bでは、表示装置12の斜め横方向に配置された撮像装置14によってBB弾24が軟質シート32に着弾する様子を撮像し、その撮像によって得られた画像に基づいて、BB弾24の着弾位置を検出することができる。なお、図5では、撮像装置14の配置位置が表示装置12に対して右側の斜め横方向となっている構成例が示されているが、その逆に、撮像装置14の配置位置が表示装置12に対して左側の斜め横方向であってもよい。
【0055】
ここで、標的システム11Aおよび11Bでは、例えば、図5に示すように表示装置12を斜め方向45°から撮像するように撮像装置14を配置することが好適であるが、撮像装置14が表示装置12を撮像する角度は45°に限定されることなく、斜め方向20°~80°の範囲であればよい。例えば、この範囲における傾きに応じた補正を施すことでBB弾24の着弾位置の座標を計算することができる。また、短い支持部材41または42を使用して、この傾きが大きくなった場合であっても、BB弾24が軟質シート32に着弾する様子を撮像装置14によって撮像することができれば、BB弾24の着弾位置の座標の計算は可能である。一方、長い支持部材41または42を使用することによって、BB弾24が軟質シート32に着弾する様子を正面に近い位置から撮像装置14によって撮像することができる。
【0056】
なお、標的システム11Aでは、支持部材41を使用せずに天井に固定された撮像装置14によって表示装置12を斜め上方向から撮像するような構成としてもよい。同様に、標的システム11Bでは、支持部材42を使用せずに三脚等の台座に装着された撮像装置14によって表示装置12を斜め横方向から撮像するような構成としてもよい。また、標的システム11Aおよび11Bは、枠部材31に対して支持部材41および42を着脱可能な構成としたり、枠部材31に対して支持部材41および42を折り畳み可能な構成としたりすることで、利便性を向上させることができる。
【0057】
図6を参照して、標的システム11BにおけるBB弾24の着弾位置の検出方法について説明する。
【0058】
上述の図3を参照して説明したように、表示装置12の正面方向から撮像装置14により撮像した場合には、軟質シート32に着弾する前も含めて複数のフレームでBB弾24が写されていた。これに対し、表示装置12の斜め横方向から撮像装置14により撮像した場合には、軟質シート32に着弾する前のBB弾24が写されることはなく、軟質シート32に着弾して減速した後のBB弾24が写されること(なお、撮像装置14として高速度カメラが用いられない限り、BB弾24が写っていても薄い筋が残るだけ)になる。なお、本実施の形態では、60fpsよりも大きなフレームレートで動画像の撮像が可能な撮像装置14を、高速度カメラと称する。
【0059】
このため、標的システム11Bでは、表示装置12の斜め横方向から撮像装置14により撮像した画像のうち、BB弾24が写されている1フレーム目の画像に基づいて、BB弾24の着弾位置を特定することができる。なお、撮像装置14を配置する角度によっては、軟質シート32に着弾する前のBB弾24が筋状に写ることもあるが、例えば、図5に示したように、表示装置12に対して斜め横方向45°から撮像装置14により撮像した場合には、軟質シート32に着弾する前のBB弾24が写されることは殆どなかった。
【0060】
図6に示す例では、フレームt1、およびフレームt2の画像には、BB弾24が写されていない。そして、フレームt3の画像には、軟質シート32に着弾して減速した後のBB弾24が写されたBB弾像51が表示されており、フレームt4、およびフレームt5の画像には、落下している状態のBB弾24が写されたBB弾像51が表示されている。
【0061】
従って、ノートPC15は、例えば、1フレーム前との変化を検出する画像処理を行って、BB弾24が最初に写されたフレームt3の画像を、BB弾24の着弾位置を特定するための画像として決定する。
【0062】
ここで、標的システム11Bのように、表示装置12の右側の斜め横方向から撮像装置14により撮像した場合、ほぼ確実に、軟質シート32に着弾した後のBB弾24は、画像の左側に向かって動くように写されることになる。従って、この場合、ノートPC15は、フレームt3の画像におけるBB弾像51の右側および左側の円弧のうち、右側の円弧を半円とする円形(図6の右側に示すBB弾像51内の二点鎖線の円形)の中心位置を、BB弾24の着弾位置として特定することができる。
【0063】
つまり、表示装置12の正面方向から撮像した場合には、BB弾24自身の回転などの影響によって、軟質シート32に着弾した後のBB弾24は上下左右の様々な方向に向かって散るように動くため、特定の方向に動くようにBB弾24が画像に写されることはなかった。これに対し、表示装置12の右側の斜め横方向から撮像した場合には、軟質シート32に着弾した後のBB弾24は、左側に向かって動くように画像に写されることになる。もちろん、その逆に、表示装置12の左側の斜め横方向から撮像した場合には、軟質シート32に着弾した後のBB弾24は、右側に向かって動くように画像に写されることになる。
【0064】
従って、表示装置12の正面方向から撮像した画像と比較して、表示装置12の斜め横方向から撮像した画像では、ほぼ確実に、軟質シート32に着弾した後にBB弾24が動く方向を特定することができる。そして、ノートPC15は、BB弾像51の右側および左側の円弧のうちの、撮像装置14が表示装置12の正面に対して斜め横方向に配置されている側と同じ側(表示装置12の右側の斜め横方向に撮像装置14が配置されている場合には右側、表示装置12の左側の斜め横方向に撮像装置14が配置されている場合には左側)の円弧を半円とする円形の中心位置を、BB弾24の着弾位置として特定することができる。
【0065】
なお、図4の標的システム11Aも、標的システム11Bと同様に、BB弾24が最初に写された画像を、BB弾24の着弾位置を特定するための画像として決定し、BB弾像51の上側および下側の円弧のうち、上側の円弧を半円とする円形の中心位置を、BB弾24の着弾位置として特定することができる。また、標的システム11Aおよび標的システム11Bは、図1の標的システム11と比較して、軟質シート32の近くに撮像装置14を配置することができる。そして、標的システム11Aおよび標的システム11Bは、衝撃緩和ユニット13に対して撮像装置14を固定することによって撮像装置14の方向や位置の調整などが不要となり取り扱いを容易にすることができるとともに、BB弾24の着弾位置を特定するための画像を決定する処理も容易に行うことができる。また、撮像装置14によって表示装置12を斜め方向から撮像するような構成とすることで、軟質シート32で跳ね返って遅くなったBB弾24のみを撮像することができ、1つの撮像装置14でBB弾24の着弾位置のXY座標を特定することができる。
【0066】
<標的システムの第4の構成例>
図7は、本技術を適用した標的システムの第4の実施の形態の構成例を示す図である。なお、図7に示す標的システム11Cにおいて、図1の標的システム11と共通する構成については同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0067】
図7には、標的システム11Cを平面視した概略的な構成例が示されている。
【0068】
図7に示すように、標的システム11Cは、表示装置12に対して衝撃緩和ユニット13が装着されている点で、図1の標的システム11と共通する構成となっている。なお、図7では、図1に示したノートPC15や、映像ケーブル16、通信ケーブル17などの図示は省略されている。
【0069】
そして、標的システム11Cは、ステレオカメラ61を備える点で、図1の標的システム11と異なる構成となっている。
【0070】
ステレオカメラ61は、2つの撮像装置14Lおよび撮像装置14Rを有して構成され、衝撃緩和ユニット13から所定の距離(例えば、10m~30m程度)を設けて、表示装置12の正面方向に配置されている。そして、ステレオカメラ61は、撮像装置14Lおよび撮像装置14Rにより撮像された画像をノートPC15に供給し、ノートPC15は、同時に撮像されたペアの画像に写されている被写体までの距離を、撮像装置14Lおよび撮像装置14Rの視差に基づいて測定することができる。
【0071】
例えば、ノートPC15は、ステレオカメラ61から軟質シート32までの距離を測定するとともに、ステレオカメラ61からBB弾24までの距離を測定し、それらの距離が等しくなった(即ち、BB弾24が軟質シート32に着弾した)ときのフレームの画像を、BB弾24の着弾位置を特定するための画像として決定する。なお、軟質シート32が透明であるため、実際には、ステレオカメラ61から表示装置12までの距離を測定して、その距離から、表示装置12と軟質シート32との間隔を減算することで、ステレオカメラ61から軟質シート32までの距離が求められる。
【0072】
しかしながら、一般的な高フレームレートである60fps程度では、例えば、90m/sの弾速の弾は1.5mに1回しか撮像することができないため、BB弾24の着弾位置を正確に検出することは困難であると想定される。そこで、標的システム11Cでは、例えば、BB弾24の発射後から、最低でも2カ所でBB弾24までの距離および時刻の計測を開始し、その計測結果に従って、BB弾24が軟質シート32に着弾すると予測される着弾予測時刻を算出する。そして、着弾予測時刻の直前から1/60秒のシャッタースピードでステレオカメラ61による撮像を行うようにすることで、BB弾24が軟質シート32に着弾する瞬間の画像を撮像することができる。
【0073】
具体的には、標的システム11Cでは、ステレオカメラ61は、常に60fpsで連続撮像を行ってBB弾24を検出し続け、ノートPC15は、BB弾24が検出されるタイミングで、1/60秒ごとにBB弾24までの距離および時刻の計測を開始する。そして、ノートPC15は、前回の計測値との距離差および時間差に従ってBB弾24の速度を計算し、BB弾24が軟質シート32に着弾すると予測される着弾予測時刻を算出する。
【0074】
そして、標的システム11Cでは、BB弾24と軟質シート32との距離が近く(例えば、2.5m以下に)なったタイミングで、ステレオカメラ61による連続撮像を一時停止させて、BB弾24の着弾の瞬間を撮像するために、着弾予測時刻の直前からステレオカメラ61による連続撮像を再開させる。例えば、2つの撮像装置14Lおよび撮像装置14Rのシャッタータイミングの同期が取れていれば、シャッタースピードが速い方が遠ざかって行くBB弾24までの測距精度を向上させることができ、シャッタースピードが1/250秒である場合にはシャッターが開いている時間は4msであるので、着弾予測時刻の2ms前にシャッターを切ることでBB弾24が着弾する前後の画像を撮像することができる。特に、BB弾24が軟質シート32に着弾した後の弾速は1m/s程度に減速するので、ステレオカメラ61で正面方向から撮像することによって、ほぼ確実にBB弾像51が円形となるように撮像することができる。なお、ステレオカメラ61のシャッタースピードを上げて、例えば、1/500秒にして、BB弾24が軟質シート32に着弾する1ms前にシャッターを切ってもよく、これによりBB弾24の着弾の瞬間だけをより綺麗に撮像することができる。
【0075】
ただし、ステレオカメラ61の計測誤差が大きい場合には、BB弾24の着弾を検出する確実性を高めることを優先してシャッタースピードを上述した1/250秒よりも遅くし、BB弾24の着弾の瞬間が確実に撮像時間に入るタイミングでシャッターを切ることが必要となる。または、通常通りに、シャッタースピード1/60秒などでステレオカメラ61によって測距しながら普通に撮影しておいて、着弾時には、軟質シート32にBB弾24が到達した距離となったタイミングのフレーム(および、必要ならその前後のフレーム)において、この場合、BB弾像51は殆ど角丸長方形になるので、上述した方法で着弾位置を計測してもよい。
【0076】
このように、標的システム11Cでは、高速度カメラなどを使用することなく、より
高精度にBB弾24の着弾位置を検出することができる。
【0077】
なお、ユーザから見て表示装置12の画面に映りこまない場所から、表示装置12に向かって照明光を照射することによってBB弾24の着弾を検出する確実性を高めることができる。例えば、図4および図5に示したように撮像装置14を設置する構成では、撮像装置14と同じ方向を照らす照明装置を設けることによってBB弾24が真円となるように照明光を照射する方式が理想的である。その一方で、表示装置12の画面に照明装置が映り込まないことや照明光の均一性などの観点から、表示装置12の画面の表面に沿って真上や真横などの側方から細長い照明装置、例えば、一列に並べたLED(Light Emitting Diode)照明装置などで照明光を照射する方式が合理的である。なお、ここで説明した照明光の全てについて、赤外線域の照明光を照射する照明装置(例えば、赤外線LEDなど)を使用することで、ユーザから見て画面に照明光が映り込むことを抑制することができ、撮像装置14によってBB弾24を撮像するための照明光としてのみ機能させることができる。この場合、撮像装置14にIRカットフィルタが付いている構成であれば、撮像装置14からIRカットフィルタを取り外す必要がある。もちろん、撮像装置14として赤外線カメラを使用してもよい。
【0078】
従って、図4および図5に示した構成において、この方式で、上下または左右の側方から表示装置12の画面に対して照明光を照射することが好適である。ただし、表示装置12の画面に照明装置が映り込まなければ、斜め前から照明光を照射する方が効果的である。これにより、必要な範囲でBB弾24の影が映り込まないようにして、BB弾24の着弾を検出する確実性を向上させることができるとともに、例えば、暗い所でも標的システム11を使用することが可能となる。さらに、図2に示した構成において、上下または左右の側方(斜め前の側方を含む)から軟質シート32に対して照明光を照射することが好適であるが、この場合には、それぞれ対称となるように両側から照明光を照射する必要がある。なお、撮像装置14の位置から軟質シート32に対して照明光を照射する構成では、軟質シート32まで距離があるため光量は低下するが、常に同じようにBB弾24に対して照明光を照射することができ、図7に示した標的システム11Cにも適用することができる。
【0079】
ところで、例えば、上述した特許文献1で開示されているような衝撃波に基づいてBB弾24の着弾位置を検出する標的システムでは、複数のBB弾24が同時刻に着弾するようなユースケースでは、それらのBB弾24の着弾位置を検出することができなかった。例えば、一度に複数のBB弾24を発射することが可能なソフトエアガン21を用いたり、複数人で一緒にソフトエアガン21でBB弾24を発射したりするようなユースケースが想定される。
【0080】
これに対し、標的システム11は、画像に基づいてBB弾24の着弾位置を検出するため、複数のBB弾24が同時刻に着弾するようなユースケースであっても、それらのBB弾24の着弾位置を検出することができる。つまり、撮像装置14により撮像された画像に複数のBB弾像51が表示されていても、個々のBB弾像51から着弾位置を求めることができる。
【0081】
もちろん、衝撃波に基づいてBB弾24の着弾位置を検出する標的システムと、画像に基づいてBB弾24の着弾位置を検出する標的システム11とを組み合わせた構成を使用してもよい。例えば、1つずつBB弾24が着弾するようなユースケースでは、衝撃波に基づいてBB弾24の着弾位置を検出し、複数のBB弾24が同時刻に着弾するようなユースケースでは、画像に基づいてBB弾24の着弾位置を検出するように補完することができる。これにより、衝撃波に基づいてBB弾24の着弾位置を高精度に検出すること、および、画像に基づいて複数のBB弾24の着弾位置を検出することが可能となる。
【0082】
また、本発明は、ソフトエアガン21により発射されたBB弾24の標的となる標的システム11に限定されることはなく、例えば、標的に対して飛翔物体を当てる任意の競技や遊戯、具体的には、ダーツ、吹き矢などの標的システムに適用してもよい。この場合、ダーツや吹き矢が命中した命中位置を正確に検出することができ、着弾マークの代わりにダーツや吹き矢の矢を標的画像上の命中位置に表示すればよい。また、当然ながら、BB弾24に代わるダーツや吹き矢の矢が軟質シート32に刺さらないようにその先端を丸める必要がある。さらに、軟質シート32の強度を増せば、本発明は、トイガン(ソフトエアガン)よりも着弾時のエネルギーが強いエアライフル(実銃としての空気銃)の標的システムにも適用することも可能である。
【0083】
なお、標的画像23を表示する表示装置12を利用することなく、同様の標的が描かれた紙を軟質シート32または保護板33に貼り付けたり、同様の標的を軟質シート32または保護板33に描いたりしてもよい。また、軟質シート32または保護板33を不透明(例えば白や灰色など)にして、プロジェクタにより軟質シート32または保護板33に標的画像23を投影してもよい。このようにプロジェクタを使用する場合、軟質シート32として布を用いてもよい。また、この場合、表示装置12の代用となる設置台を設けたり、衝撃緩和ユニット13の枠部材31に脚部を設けて自立することができる構成としたりする必要がある。
【0084】
<標的システムの変形例>
標的システム11の第1の変形例として、表示装置12の画面に対して上方向および横方向の位置に、それぞれ画面に沿った方向を撮像する2台の撮像装置14を配置した構成を採用することができる。そして、BB弾24が軟質シート32に着弾したときのXY座標のうち、表示装置12の上方向に配置された撮像装置14によってX座標を測定し、表示装置12の横方向に配置された撮像装置14によってY座標を測定することで、BB弾24の着弾位置を検出することができる。
【0085】
このように、第1の変形例の標的システム11においても、軟質シート32に着弾して減速した後のBB弾24のみを、2台の撮像装置14によって撮像することができる。なお、第1の変形例の標的システム11では、2台の撮像装置14のシャッタータイミングを同期させることが好ましいが、軟質シート32に着弾して減速した後のBB弾24のみが撮像されるので、一般的なフレームレート(例えば、30~60fps程度)でならば同期させなくてもBB弾24の着弾位置の検出にそれほど支障となることはない。また、第1の変形例の標的システム11は、上述の図4および図5に示した構成例のように、撮像装置14が軟質シート32よりも前方に大きく出っ張るような構造となることを回避することができる。
【0086】
なお、第1の変形例の標的システム11の2台の撮像装置14に替えて、例えば、表示装置12の画面に対して上方向および横方向の位置に2セットのLiDAR(Light Detection And Ranging)やレーダなどを配置した構成としてもよい。または、発光素子と受光素子とを対向して並べた構成や、発光素子、反射板、およびカメラで表面の接触を感知するようなタッチパネル方式を採用した構成などでもよい。これらの構成によって、高速のBB弾24を横から検出するのではなく、軟質シート32に着弾して十分に減速した後のBB弾24を検出することができる。また、素子や制御系などが安価であるなら、小さなLiDAR(半導体レーザおよび光センサ)やアンテナ素子などでも1列に並べて計測するのが簡単である。一方、素子や制御系などが高価であるなら、少ない素子やセンサで高速に照射方向を変えてスキャンするような構成とするのが好適である。
【0087】
標的システム11の第2の変形例として、電磁波を発射して、BB弾24までの距離やBB弾24の位置および速度などを、その反射波を測定することにより計測する構成を採用することができる。例えば、図2に示した撮像装置14を、LiDARやレーダなどに置き換えることで、標的システム11を暗い場所で使用する場合であっても、照明光などを不要とすることができる。さらに、BB弾24の色に関わらず全ての色を使用することができる。
【0088】
例えば、標的システム11の第2の変形例では、LiDARを使用した場合にはレーザ光を様々な方向に照射(走査)することで広範囲にわたって状況を捉えることができ、レーダとしてフェーズドアレイレーダを使用した場合には広範囲を高速に計測することができるので、大画面の表示装置12に対応することができる。
【0089】
また、標的システム11の第2の変形例では、アンテナ内蔵等のミリ波レーダーデバイスを使用した場合には、BB弾24までの距離および速度を計測することができる。そして、これらをアンテナの間隔を考慮して配置して多チャネル構成とすることで、反射波の方位を特定することができ、BB弾24の位置を特定することが可能になる。もちろん、複数の送受信用アンテナを集積したミリ波のレーダーデバイスを使用したり、さらにはサブミリ波のレーダーデバイスを使用したりすることができれば、BB弾24の位置を特定することが更に容易になる。
【0090】
標的システム11の第3の変形例として、表示装置12に替えて、ゴーグル型や眼鏡型などのAR(Augmented Reality)・MR(Mixed Reality)デバイスを利用して標的画像23を表示する構成を採用することができる。例えば、表示装置12を使用しない第3の変形例の標的システム11では、表示装置12を保護するための保護板33は不要となり、標的となる軟質シート32が枠部材31に対して固定された構成の衝撃緩和ユニット13を使用することができる。また、第3の変形例の標的システム11では、表示装置12の代用となる設置台を設けたり、衝撃緩和ユニット13の枠部材31に脚部を設けて自立することができる構成としたりする必要がある。
【0091】
例えば、VR(Virtual Reality)ゴーグルを装着して行うVRシューティングではBB弾24が発射されないため、自由な場所で仮想的な射撃を行うことができる。これに対して、BB弾24を発射するソフトエアガン21を使用したシューティングでは、BB弾24から壁などを保護してBB弾24を回収するための衝撃緩和ユニット13が必要であり(さらに、捕集トレイ22やマイクロファイバータオルなどのようにBB弾24を反発させずにBB弾24の転がる範囲を限定できる回収部もあった方が良い)、決まった範囲にしか射撃を行うことができない。
【0092】
そこで、第3の変形例の標的システム11は、カメラや、距離センサ、慣性センサ、ジャイロスコープなどを利用して、ユーザの体や頭、目の動きなどの動きに追従してユーザの位置や姿勢、視線などを認識するとともに、標的となる軟質シート32の位置や傾きなどを認識して、ユーザと軟質シート32との空間的な関係を把握する。そして、衝撃緩和ユニット13の背後に表示装置12が配置される構成やプロジェクタで投影する構成などと同様に、第3の変形例の標的システム11は、ユーザから実際に見える通りの軟質シート32の位置やサイズに従って、軟質シート32に重畳するような標的画像23をAR・MRデバイスによってリアルタイムで表示する。
【0093】
さらに、第3の変形例の標的システム11は、上述したようにBB弾24が軟質シート32に着弾したときの着弾位置の検出に従って、標的画像23上に着弾マークPを表示したり、得点などを表示したりすることができる。その他、第3の変形例の標的システム11では、BB弾24の着弾時や着弾位置などに応じた映像や音などのアクションをAR・MRデバイスによって提供するようにしてもよい。
【0094】
また、第3の変形例の標的システム11では、軟質シート32をARマーカとして利用することができ、例えば、軟質シート32の外周に黒色などの帯を設けたり、軟質シート32の四隅にマークを設けたりして、明確なARマーカとして使用してもよい。なお、軟質シート32に設けられるARマーカは、色でも枠線でも四隅のマークでもよい。
【0095】
第3の変形例の標的システム11では、特に、透過型(光学シースルー型)のAR・MRデバイスを使用する場合には、不透明な軟質シート32を使用するのが望ましい。また、第3の変形例の標的システム11では、ビデオ透過型(ビデオシースルー型)のAR・MRデバイスを使用する場合には、BB弾24を識別し易いようにグリーン1色などの目立つような色で不透明な軟質シート32を使用することが好適である。
【0096】
さらに、第3の変形例の標的システム11では、グリーンや、赤、黒などの不透明な軟質シート32を使用することで、BB弾24の識別性を向上させることができるので、ビデオ透過型のAR・MRデバイスを使用する場合で、上述したように撮像装置14により撮像された画像に基づいてBB弾24の着弾位置を検出する方式を採用するのに好適である。さらに、AR・MRデバイス自体のカメラでBB弾24の着弾位置を検出するような構成とすることが、このような構成でも着弾位置の検出精度が得られるのならば最も合理的である。
【0097】
なお、透明な軟質シート32では、透過型およびビデオ透過型のAR・MRデバイスどちらを使用しても、また、ARマーカの使用の有無に関わらず、衝撃緩和ユニット13の内部構造または背後の見え方が角度によって変化することが想定される。このため、第3の変形例の標的システム11では、均一で不透明(例えば、透過型のAR・MRデバイスを使用する場合には、映像を邪魔せずBB弾24も識別可能なグレーやライトブルーなどの単色、ビデオ透過型のAR・MRデバイスを使用する場合には、BB弾24の識別し易さを優先してグリーンや赤などの単色)な軟質シート32を使用するのが好適である。
【0098】
なお、第3の変形例の標的システム11では、上述したように撮像装置14により撮像された画像に基づいてBB弾24の着弾位置を検出する方式の他、衝撃波に基づいてBB弾24の着弾位置を検出する方式や、レーザなどの反射波に基づいてBB弾24の着弾位置を検出する方式などを採用することができ、軟質シート32として布を用いてもよい。さらに、撮像装置14により撮像された画像に基づいてBB弾24の着弾位置を検出する方式、および、レーザなどの反射波に基づいてBB弾24の着弾位置を検出する方式では、BB弾24が軟質シート32に接触したタイミング(即ち、BB弾24の着弾の瞬間)が確認し易いのは不透明な軟質シート32の方であり、例えば、斜めや横からならばBB弾24が軟質シート32に接触する瞬間を撮像できることより、衝撃緩和ユニット13の背後に表示装置12を設置せずに光学的に検出する構成では、不透明な軟質シート32を使用するのが好適である。
【0099】
また、第3の変形例の標的システム11においては、衝撃緩和ユニット13の軟質シート32の位置にAR・MRデバイスによって標的画像23をリアルタイムで表示することと、BB弾24が軟質シート32に着弾したときに検出された着弾位置を示す情報をAR・MRデバイスが取得したり、AR・MRデバイスのカメラで着弾位置を検出したりすることと、その着弾位置に応じて標的画像23上に着弾マークPを表示したり映像を変化させたり得点表示を変えたりすることとを含み、映像や音などでユーザにアクションを提供するプログラムが実行される。そして、軟質シート32に重畳するように標的画像23を表示したい範囲だけを単色または不透明にしてもよいし、その範囲を示すマーカを軟質シート32に描いてもよく、これにより、AR・MRデバイス側では、その範囲だけに標的画像23を表示するというプログラムが作り易くなり、マーカーレス型でも有効であると考えられる。例えば、ビデオ透過型のAR・MRデバイスを使用する場合には、軟質シート32に重畳して完全に標的画像23に置き換えてしまえば、標的画像23が何色であっても全く悪影響もない。一方、軟質シート32を透明として衝撃緩和ユニット13の内部が見える場合には、角度によって見え方が変化することや、軟質シート32の表面に光が反射することなどによって、処理する情報量が無駄に増えるという悪影響があると考えられる。
【0100】
さらに、本技術は、上述したいずれの実施形態および変形例においても、軟質シート32や布などで一瞬殆ど静止(または、例えば、1~3m/s程度まで十分に減速)させたBB弾24の着弾位置を検出するのに非常に有効である。
【0101】
なお、本実施の形態は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。また、本明細書に記載された効果はあくまで例示であって限定されるものではなく、他の効果があってもよい。
【符号の説明】
【0102】
11 標的システム, 12 表示装置, 13 衝撃緩和ユニット, 14 撮像装置, 15 ノートPC, 16 映像ケーブル, 17 通信ケーブル, 21 ソフトエアガン, 22 捕集トレイ, 23 標的画像, 24 BB弾, 31 枠部材, 32 軟質シート, 33 保護板, 34 固定板, 41および42 支持部材, 51 BB弾像, 61 ステレオカメラ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7