(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024062972
(43)【公開日】2024-05-10
(54)【発明の名称】レーザー血流測定装置
(51)【国際特許分類】
A61B 5/026 20060101AFI20240501BHJP
【FI】
A61B5/026 120
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023183492
(22)【出願日】2023-10-25
(31)【優先権主張番号】P 2022170433
(32)【優先日】2022-10-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000126757
【氏名又は名称】株式会社アドバンス
(72)【発明者】
【氏名】大内 俊治
(72)【発明者】
【氏名】濱田 洋
(72)【発明者】
【氏名】今井 和貞
【テーマコード(参考)】
4C017
【Fターム(参考)】
4C017AA11
4C017AB03
4C017AC27
4C017AC28
4C017BC11
4C017BD04
4C017EE01
4C017FF05
(57)【要約】
【課題】生体内部の血流量(FLOW)及び血球量等の血流情報を得ることで、体内血液状態の変化を測定するレーザー血流計測装置を提案する。
【解決手段】
生体を対向して挟むように配置するレーザー発光部と受光部からなるセンサー、前記受光部から得られる透過信号を直流状成分信号に変換する直流状成分信号変換ユニットにより生体内部の血液濃度を測定する。
更に、生体に対して照射したレーザー光の反射光を検出し、電気信号に変換する受光部、前記受光部で得られた電気信号を、ろ波し、直流状成分信号に変換する反射光用直流状成分信号変換ユニット、前記反射光用直流状成分信号変換ユニットで得られた直流成分信号値に対し、予め設定した血流量と直流成分信号値の関係に基づいて体内血流量相当量を得る。
又、生体を介して検出された受光レーザー光から、脈波ピーク値、変化量、脈波の立ち上がり時間等の情報を算出して、血流情報を得る。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体を対向して挟むように配置するレーザー発光部と受光部からなるセンサー、前記受光部から得られる透過信号を直流状成分信号に変換する透過光用直流状成分信号変換ユニットよりなるレーザー血流計測装置。
【請求項2】
生体に対して照射したレーザー光の反射光を検出し、電気信号に変換する受光部、前記受光部で得られた電気信号を直流状成分信号に変換する反射光用直流状成分信号変換ユニット、前記直流成分信号値に対し、所定の口径の血管における血流量に置換して置換血流量として出力する置換ユニットよりなるレーザー血流計測装置。
【請求項3】
反射光用直流状成分信号変換ユニットは、フィルタ回路、及び実行値変換回路又は平均値変換回路から選ばれた回路を組み合わせてなる請求項1に記載の血流情報測定装置。
【請求項4】
透過光用直流状成分信号変換ユニットは、1 Hz~500KHzの周波数帯域を通過させるフィルタ回路、実行値変換回路、平均値変換回路から選ばれた回路を組み合わせるか、又は、そのまま通過させる請求項2に記載の血流情報測定装置。
【請求項5】
前記発光部は、 出力強度1~10mW、波長700~800nm及びレーザー照射部の口径が50μmから100μmの半導体レーザーを光源とし、光ファイバによる導光路との組み合わせ構成で形成されている請求項1,2に記載のレーザー血流計測装置。
【請求項6】
前記置換ユニットは、所定口径の疑似血管内を、所定の流量で流した血流量相当量を前記直流状成分信号ユニットで測定し、得られる直流状成分信号値に置換して出力する請求項1,2に記載のレーザー血流計測装置。
【請求項7】
生体に対して照射したレーザー光の反射光又は透過光を電気信号に変換する受光部、前記受光部から得られた受光電気信号を微分して微分信号に変換する微分信号変換手段、前記微分信号変換手段で得られた電気信号からボトム時相を検出するボトム時相検出手段、前記受光部で得られた電気信号からピーク時相を検出するピーク時相検出手段、前記ピーク時相検出手段でえられたピーク時相と前記ボトム時相検出手段から得られたボトム時相から、立ち上がり時間を算出する立ち上がり時間算出手段を備えた請求項1、2に記載のレーザー血流計測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザー光を透過して生体の血行を測定するレーザー血行測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザー光による血流測定装置は、皮膚表面からレーザー光を照射して非侵襲で反射、透過により血流測定をするドップラーシフト周波数帯域を検出し、血流速度、血流量等を測定する構成や、得られる脈波波形から特定の周波数に対応するスペクトル値を算出し、酸素飽和度などを測定する装置が従来から提案されている。
【0003】
特表2006-526460号公報には、照射したレーザー光が生体を通過又は反射した光には、脈波等の心血管波形が含まれ、この波形から動脈成分、静脈成分を分離検出し、その周波数成分、強度、波形等から情報を抽出することが記載されている。心血管波形は、指先などの透過光でも検出可能であるが、ドップラーシフトを生じさせた干渉波の検出は、専ら反射光による毛細血管内の血流に係るものであることが記載されている。
【0004】
特開2021-87849号公報及び非特許文献「小型レーザー血流センサーの開発 PIONEER R&D (Vol.21, No.1/2012,P30-37)」には、ドップラーシフトを生じさせた干渉波を検出するための反射型血流センサーが開示されており、その中で、血流量相当量として、呼吸、運動、熱刺激による皮膚反応等がアナログ信号表示として得られることが記載されている。
【0005】
上記の特開2021-87849号公報等で開示する血流センサーは、ドップラーシフトを検出する為の構成であり、検出している周波数帯としては、主に30Hzから30000Hzの範囲を検出することから、その周波数帯以外の情報は、減衰されていて、血流情報としては、十分ではない場合がある。
【0006】
国際公開2013/5320号には、 生体の血圧低下を予測する血圧低下予測装置であって、レーザードップラーフローサイトメトリー手法を用いた上で、得られる血流量(血流波形の平均値)と脈拍の変化から、透析患者の血圧の低下を検出する事が記載されている。
特開昭64-17624号公報には、レーザー光を生体に照射し、散乱光を受光して、光電変換した後、得られた電気信号について、脈拍に応じて大きくなる血流速度の周波数成分を抽出し、そのレベルが、所定値を越えたとき、1つの脈波が形成されたことを検出すると共に、その出力波形を表示する血流計が開示されており、生体から得られる反射散乱光には、様々な血流情報が含まれていることが開示されているが、実際の解明は、脈拍の検出に留まるものであり、その他の血流情報について、具体的には、記載がない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特表2006-526460号公報
【特許文献2】特開2021-87849号公報
【特許文献3】国際公開2013/5320号
【特許文献4】特開昭64-17624号公報
【0008】
【非特許文献1】小型レーザー血流センサーの開発 PIONEER R&D (Vol.21, No.1/2012,P30-37)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
レーザードップラー型の血流計は、反射型の毛細血管内の血流量(FLOW)を、フーリエ変換回路、演算処理ユニット等を用いて、数値的に表示するが、あくまで、生体表面近傍の毛細血管断面の値を目的とした構成であり、フィルタもドップラーシフトの限られた周波数帯を中心として検出するため、その他の情報は得ることが困難になる。例えば手、足、の血流を判断する程の深部血流を測定していることにはならず、実際の血流状態とは、異なる場合がある。
又、例えば血液透析での血液内の尿成分を取り出す場合、レーザードップラー型の場合は、皮膚から浅いところで毛細血管における状況であり、実際の体内での脱水状況を示すものでは無いことから、より手、足を代表する血流量、血液量等の血液情報が得られることが求められている。
ところで、血流波形は、いわゆる脈波成分を有することから心臓の拍動を示す脈波波形を含み生体各所の収縮期、拡張期の時相区分を示す他、立ち上がりの傾斜、時間が血管の状態を示す等、生体各部位で血流脈波等を明確に表示する。
実際、得られる血流波形には、収縮期と拡張期を示すことから、動脈で反射、又は透過してきたものを受光していると考えられるが、指先、耳朶など、薄部分や直径が小さい部分が専ら測定対象となり、得られる値も、波形から心拍数又は、SpO2反射、透過した光の吸収スペクトル値程度であり、ドップラー式の血流計についても、皮膚から浅い部分の血流に対応しており、ドップラー干渉波信号を受光する程度で、情報としての利用は限られている。
血流情報は、波形、振幅、時間に存在しており、指先で測定する脈波計と比べて、情報量において勝っている。
例えば、血圧は、収縮期において、血流が血管を押す力であり、血管が硬ければ、脈波のピークに到達する時間が長くなると共に、血流速度が速くなる。又、血流が血管を押す力の最大値が脈波のピーク値に関係し、波高値が血流量に相関することも正確な血流波形をモニターできれば、可能となり、生体各部での血流情報が取得できる他、血圧情報も取得可能とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記に鑑み本発明は、生体に照射したレーザー光は、部位により生体深部に到達するとの知見に基づきなされたもので、
生体を挟むように対向して配置するレーザー発光部と受光部からなるセンサー、前記受光部から得られる透過信号を直流状成分信号に変換する透過光用直流状成分信号変換ユニットにより、骨などの硬質性組織に影響されない部位における生体深部の血液濃度などの血流状態を把握できることで、浮腫や血流濃度の変化を捉えることができ、
血液透析のように、体中から、局所的等様々な部位での血管状態に伴う血流が測定でき、血管収縮を考慮した除水の実施が可能となる他、浮腫の測定により、疾患の傾向等を検査することが可能となる。
【0011】
又、 生体に対して照射したレーザー光の反射光を検出し、電気信号に変換する受光部、前記受光部で得られた電気信号をろ波し、直流状成分信号に変換する反射光用直流状成分信号変換ユニット、前記直流成分信号値に対し、所定の口径の血管における血流量に置換する置換ユニットより 実際の太い血管であって、実際の血流に対応する血流量データを得ることができる。
本発明における透過光用直流状成分信号変換ユニット及び反射光用直流状成分信号変換ユニットはフィルタや、透過光、又は 反射光から得られるアナログ信号(脈波成分を含む)の実行値、平均値から得る場合が例示される。
【0012】
即ち、レーザー光は、その出力を調整することによって、生体深部へ到達することから、今までの毛細血管のような皮膚から浅い部位の血管の他、生体のある程度の深部における反射光を受光する為、毛細血管の血流量(FLOW)測定で用いられる血流計で得られる血流量等と相違する場合がある。尚、透過光は、透過部位に骨組織が占有的にある場合は、透過できない為透過光が得られないことから位置を多少ずらす場合もある。
本発明における置換ユニットにおける太い血流量への置換は、反射光による血流量相当量(受光強度値)及び透過光による血流量相当量(受光強度値)の中間値に対して、基準となる血管口径に基づく血流と血流量の関係を用いて置換する場合がある。
尚、ここで示す血流量相当量は、レーザー光を生体に照射した際の反射光及び生体に照射したレーザー光の透過光のそれぞれ光量値を電圧値に変換した値を示しており、透過光の場合、血球成分の量によって、受光量が変化することから、血球量である場合もある。
【0013】
本発明におけるレーザー発光部から出力されるレーザー光は、出力強度1~10mW、波長700~800nmが例示される。レーザー照射部の口径が50μmから100μ(好ましくは50μmから75μm)が例示され、生体の広範囲で透過光及び反射光による血流情報の取得が可能となる。尚、計測部位をレーザー出力プローブで多少の押圧を加えることにより圧力脈波を得ることができることから、多少の押圧が可能なカフに装着して、使用することで、より広範囲でレーザー血流情報を得ることができる。
本発明における透過光を受光する受光素子は、その表面に皮膚との接触状態を良好とするような柔軟性を有する例えばオブシーラー(商標)等の発泡ゴム材よりなる透光性緩衝部材を配置することで、皮膚との接触が良好になり、受光感度を高める。
これは、透過光を受光する以外の反射光を受光する部位皮膚との接触面に適用する場合もある。
【0014】
本発明は、反射光に対して、レーザー光源と、レーザー光を照射部位まで伝達する光ファイバ及び生体を反射した通過レーザー光を受光し光電変換する一体化したプローブ状のユニットが、取り扱い性に優れているが、一体化しなくても良い場合もある。
透過光に対しては、レーザー光源から光ファイバを介してレーザーを照射するプローブと透過して対向する面に配置した受光ユニットの2つの組合わせを備える場合もある。
【0015】
本発明は、血流量を測定する反射光を測定する構成と、血液濃度を測定する為に透過光を測定する構成の2つの構成を示すが、両方を1つの装置とする場合の他、別々であってもよく、それぞれの回路構成は、電池駆動可能なため、ウェアラブル機器としての形態を取り得る。
レーザー光はLEDと異なり、直進性、コヒーレント性があり、生体組織でも軟組織だけの部位では、組織状態が疎な部分に対して、損失を抑えた状態で、透過受光が行えることから、手、足において、透過状態の血流脈波を得ることができる。又硬組織であっても、特定の波長であれば、透過した血流脈波が得られる。
血流脈波状態の信号は、例えば、平均値化したり実行値化して表示することで、血流動態の変化が得られ、血行の状態がモニター可能である。
得られる血流脈波のピーク値(Qmax:波高値)は、血管内で血液を末梢方向へ押し出した際に、血管を押し開き、収縮期の末で口径が最大となった血管中を血流が流れる状態であることから、血管断面積と血流速度の積で示される血流量に相関すると考えられる。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、レーザー光を利用して足、手、その他の部位の深部までのより太い血管を含む血管群から血液情報から血液濃度を測定すると共に、出力口径50μmから100μmの範囲のレーザー光を手や足、首等に照射して得られる反射光又は透過光の強度値を、予め決定した参照用反射光強度値と照合し、一致する参照用反射光強度に対応する血流量の値に置き換えることで、体内の血流量を測定することを可能とする。又、血流脈波情報が持つ血圧情報、血管情報を得ることも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図4】本発明の透過光計測の為の実施例を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
レーザー透過光から得られる血液量相当量の直流成分から血液濃度を測定する構成と、レーザー反射光から得られる血流量相当量の直流成分から所定の血管口径を流れる血流量(FLOW)に置換して測定する構成の1方又は両方からなる。
血液濃度を測定する場合は、手、足、腹などの光透過部位に透過光用プローブを押し当てて測定する。
血流量測定装置は、レーザー光出力用の光ファイバの端部及び反射光受光用光ファイバ端部を一対としたプローブを形成する場合が主であるが、必ずしも、一体化する必要はなく、より深部の血流反射光を得る場合は、両プローブ端は離れていても良い場合もある。
【0019】
血液濃度測定装置と、血流量測定装置は、ぞれぞれ分離して、浮腫検査や、透析用として生体の血流に関わる情報を収集してもよく、電池駆動可能であることから、ウェアラブルな機器として提供可能である。
本発明におけるレーザー光は、その強度、波長等を選ぶことで、生体硬組織が無い部位で生体深部にまで到達することから、反射光に基づくFLOW値にも、生体深部の毛細血管ではない口径が大きい血管内の血流に反射したものが含まれていると推定できることから、口径が太い(例えば10mm)疑似血管と、この血管に疑似血液を所定の血流量を流すことで得られる反射光強度値(電圧値)と血流量値の関係を参照データとして設定し、実際、生体を計測して得られる反射光強度値を参照データに照合して得られる血流量値を表示する。
【実施例0020】
次に本願発明の一実施例を
図1を参照して説明する。
図1で示す実施例は、生体皮膚表面からレーザー光を照射し、その反射光による血流量測定ユニットと生体を透過したレーザ光による血液濃度測定ユニットの2つのユニットをまとめた記載したものであり、レーザー光を照射する照射部(光ファイバ端面)と、反射光を受光する反射光受光部(光ファイバ端面)を一体化してプローブ10を形成した例を示しているが、2つのレーザー光を照射する照射ユニットを設けて、受光ユニットもそれぞれ別々にする場合もある。
【0021】
10は、プローブであって、レーザー光を照射する照射部(光ファイバ端面)と、反射光を受光する反射光受光部(光ファイバ端面)を硬化性プラスチック等の硬質部材で一体化し手持ち型にしたものである。
11は、発光部であり、レーザー光源、半導体レーザー光源、LED光源などから選ばれ、照射用光ファイバ11aを介して生体へ照射される。
【0022】
11aは、照射用光ファイバであり、透過率の高い石英ガラスやプラスチックなどで作られた光の伝送路であって、中心をコア、その周囲にクラッドが形成され、外周を樹脂で被覆したものが用いられている。
12は、透過光用受光部であり、フォトトランジスタ等で構成され、透過レーザー光を受光し、光電変換を行って電気信号を出力する。
12aは、接触体であり、皮膚表面と柔軟性と均一性をもつ例えば、オブシーラー等のゴム、又は樹脂で形成されている。
13は、反射光用受光ファイバであり、照射用光ファイバ11aと同様の構成を有し、一端の端面を受光部として形成され、発光部から延びた光ファイバの端面とを間隔間隔0.125mm~1mmを取って組み合わせてプローブ10を形成する。
13aは、受光用光ファイバであり、照射用光ファイバ11aと同様の構成を有し、他端を、反射光用光電変化部15と接続する。
14は、透過光用増幅部であり、入力される受光電気信号を増幅するための回路である。
【0023】
15は、反射光用光電変化部であり、光電変換部及び増幅部からなり、受光用光ファイバを介して伝達された受光レーザー光を電気信号に変換した後、増幅した信号を形成する。
16は、透過光用直流成分変換回路であり、1~500KHzのフィルタ、その他、場合によっては、平均値変換回路又は実行値変換回路を設ける場合もある。透過光用直流成分変換回路16は、ベースライン信号を形成するためのものであるが、信号の状態に応じて、フィルタを用いず、そのまま通過させる場合もある。
ここでベースラインとは、直流成分値を示す。
尚、直線上であっても、脈波の低周波成分による変化が見られる範囲の周波数帯域も含まれる場合がある。
【0024】
17は、反射光用直流成分変換回路であり、フィルタ、平均値又は実行値変換回路からなり、いわゆるベースライン信号を形成するためのものである。
広帯域化することにより、深部の反射光を受光することができ透過光用直流成分変換回路16と同様にベースライン信号化する。
18は、置換部であり、反射光用直流成分変換回路16が出力する電圧値を、血流量値に置換するための部分である。当該置換は、
図7で示す基準回路により得られる反射光用直流成分変換回路16が出力する電圧値と予め設定された血流量値との対応関係から、得られる記憶メモリのテーブルデータや対照データ、対照表に基づいて求める。
19は、表示部であり、液晶、有機ELなどのモニターを備えたものであり、置換部18の出力値を表示する場合は、基準回路から得られた基準電圧値に対応する血流量の単位が表示される。
【0025】
20は、信号処理回路であり、サンプルホールド回路、AD変換回路及びコンピュータの組み合わせで構成され、更に必要に応じてFFT等の変換モジュールを含む。コンピュータは、目的に応じて任意に接続し、
例えば、得られる血流データを外部計測装置へ送信する為の通信機能を必要とする場合等に用いられる。信号処理回路20は、アナログ信号をデジタル信号に変換された後、プログラム処理を行う構成を備えている。
【0026】
21は、通信回路であり、WiFi、その他の電磁波を利用した無線、赤外線等を媒体とした通信回路を示すもので、ウェアラブル型の計測装置として、本実施例を用いる場合などに使用される。
22は、記憶回路であり、透過光情報、血流量情報等得られる情報を一時的に又は継続的に記憶するためのメモリ、SDカード、SSD、HD等で構成される。
【0027】
次に
図1で示す実施例の動作を説明する。
反射光を使用した血流量計について
指先、手、足 腕、腹部等で示される生体Sに発光部11から延びた照射用光ファイバ11aの端部と、受光側の反射光用受光ファイバ13の端部(両方を一体的に固定形成したプローブ)を接触させる。発光部11から出力したレーザー光は、生体S内の血管等に反射(S2)して受光側の反射光用受光ファイバ13の端部で受光し、反射光用光電変化部15に入力する。反射光用光電変化部15内の受光部で光電変換され、受光電気信号は、増幅されて、反射光用直流成分変換回路17に入力される。反射光用直流成分変換回路17に入力された受光電気信号は、フィルタにより、より低周波成分の信号に変換される。 尚、受光電気信号には、脈波信号が含まれているため、フィルタによりろ波後、平均値や実行値に変換され、ベースライン化された直流状の信号に変換される場合もある。
【0028】
反射光用直流成分変換回路17で直流状の信号に変換された後、反射光用直流成分変換回路17で得られた反射光強度(NILT(V/Vmax) V:電圧値 Vmax:最大電圧値)は、置換部18で照合用記録データで照合された血流量(FLOW)値に置き換えて表示され(
図5の52)、更に単位(
図5の53)が表示される。
尚、
図7で示す参照血液回路に基づく血流量(FLOW)と反射光強度との対応関係は、表示装置の表示画面の目盛り表示に予め書き込まれる等の作業によっても、形成可能である。
場合によって、血流量データは、信号処理回路20に入力され、サンプルホールド回路、AD変換回路を経てデジタル化され、記憶回路22に記憶されたり、通信回路21で、他のコンピュータ端末に送信され、表示、使用される。
【0029】
透過光を使用した血液濃度測定について、
発光部11で出力されたレーザー光は、照射用光ファイバ11aを介して生体Sを透過S1して接触体12aを介して透過光用受光部12で受光されて光電変換され、透過光電気信号を透過光用増幅部14に入力される。
透過光用増幅部14に入力された透過光電気信号は、増幅された後、透過光用直流成分変換回路16に入力され、強度信号として低域フィルタでろ波され、直流状に変換されたり、フィルタ通過後、平均値、実行値に変換されて直流状の電気信号に変換される。
【0030】
この変換された信号は、ベースライン化されたものであり、
図5の51で示す波形として、表示回路9において表示される。
又透過光用直流成分変換回路16の出力は、信号処理回路20に入力され、デジタル信号化された後、記憶回路22に記憶されたり、通信回路21で、他のコンピュータ端末に送信され、表示、使用される。
図2は、指の先端に発光部11から延びた照射用光ファイバ11aと、透過光用受光部12の組み合わせからなる透過光用センサーユニットを装着し、指の付け根を圧迫して
図1で示す透過光用直流成分変換回路16の出力を表示部19に表示したものである。
【0031】
図2は、透過光の光強度の変化を示すものである。透過光の光強度は、指の付け根に対する加圧により血流の循環が阻止され、生体内部に血液(血球)が蓄積されており、透過光が遮られる為、徐々に低下する。即ち血液濃度が増加している状況を示している。
このようにレーザー光は、部位にもよるが生体深部まで、到達することから、得られる反射光も毛細血管ではなく、内部の血管内の血流で反射されて得られることがわかる。
【0032】
図3に、本発明の実施例で用いる、指先に対し平行に摺動して挟み込むことにより装着される透過光用センサーユニットを示す。
硬質性のプラスチックや樹脂よりなる硬質性カバー上部31には、その両側面の2カ所に下方向に延びたスライダー31aとスライダー31aの上下方向に形成した長孔31bが一体的に形成され、
【0033】
硬質性カバー下部32の両側面の2カ所には、上方向に延びた支持プレート32aが一体的に形成され、支持プレート32aには長孔31bを通過可能で、直径が、長孔の短軸より少し小さい円筒状の凸部32bが形成されている。
硬質性カバー下部32の支持プレート32a上の凸部32bは、硬質性カバー上部31のスライダー31a上の長孔31bを通過している状態で、凸部32bを軸に硬質性カバー上部31の長孔31bが上下に摺動することで、硬質性カバー上部31も、硬質性カバー下部32に対して上下に平行に移動し、指HMを挟持する(
図3(c))。33は、止め具であり、中空の円盤状に形成され、止め具33の中空の部分が凸部32bに挿入され、止め具33は、支持プレート32aとの間に介在するスライダー31aを挟み込んだ状態を維持することで硬質性カバー上部31と硬質性カバー下部32が指HMを挟持した状態を維持する。
35は、棒状の出力光用プローブであり、中心に光ファイバを配置してその周辺に硬質性プラスチック、金属等を被覆した硬質性被覆部35aを形成している。
【0034】
硬質性カバー上部31の略中央には出力光用プローブ35を挿入して固定させる中空状の円筒体34aと、円筒体34aの底部を広げて基台部34bを一体的に形成しで構成されるプローブアダプター34が配置されている。
硬質性カバー下部32には受光体37を固定位置に誘導するガイド部32bが形成されている。
受光体37は、硬質性の筐体の上部にフォトトランジスタ等光電変換する受光素子センサーが配置され、その上部に、透光性の接触体37aが配置されている。
38は、電気リード線であり、受光素子センサーの電気出力を伝達する為のものである。
受光体37は、ガイド部32bへ挿入された状態で、ストッパー32cを設置して固定される。
【0035】
プローブアダプター34の円筒体34aには、棒状の出力光用プローブ35が挿入され、皮膚との接触位置にて固定される。出力光用プローブ35と、光ファイバ36が一体的に接続して
図1で示す発光部11と接続する。
プローブアダプター34は、容易に出力光用プローブ35を生体上の目的とする計測部位に配置固定できることから、生体の各測定部位への適用が可能であり、いろいろな部位の計測を容易にする。
図3(c)は指先HMを硬質性カバー上部31と硬質性カバー下部32で挟むように挟持して固定する状態を示す。
出力光用プローブ35から照射されたレーザー光は、指先HMを透過して37aを介して受光体37で受光する。
【0036】
図3(c)で示すKMは、加圧カフであり、加圧用空気が供給されると、膨張して、指を加圧する為のもので、指先で血圧を侵襲的に加圧する際用いられる血圧装置の一部が例示される。
加圧カフKMは、例えば
図5(a)で示す様に血液濃度値の測定の際、指を加圧と加圧の開放を行うことで、深部血管内の血液濃度を測定する場合などの実験用に用いられる。
【0037】
図4は
図3(a)(b)で示す透過光用センサーユニットを用いて疑似血管体50内の血液濃度の変化を測定するための測定状態を示す図である。
疑似血管体40は、光透過度が指先と似ているPOM(ポリアセタール樹脂板(厚さ1mm))で構成される疑似皮膚体41と、濃度を調整した疑似血液を透光性部材からなるセルに収容する疑似血管体42の積層体を示す。尚、疑似血管体40は、
図4で示す様に、1つの疑似皮膚体41と、疑似血管体42の表面への片面積層状態が示されているが、更に疑似皮膚体を疑似血管体42の裏面に積層して、疑似血管体42の両面積層とする場合もある。
【0038】
図4で示す厚さ1mmのPOMで形成される疑似皮膚体41と厚さ5mmのガラスセルで形成される疑似血管体42の積層体を
図3で示す透過光用センサーユニットに挟持装着する。
疑似血管体42内に、濃度を調整した疑似血液を充填した状態で透過光量を測定した。
結果を
図6に示した。
図6の縦軸(NIRT)は、受光した信号の電圧値(強度)を示す。
図6で示すように、赤血球数を増やすと、血液濃度が大きくなるため、透過光受光光量が少なくなることがわかる。
【0039】
図7に測定した電圧値を血流量(FLOW)値に置換する為の基準血液回路の一例を示す。
71は、
図1で示した少なくとも反射光による血流量値としての出力を行うレーザー血流測定ユニットである。
71aは、レーザー光源であり、半導体レーザー、等で形成され、
図1で示す発光部11に相当する。
71bは、受光部であり、
図1で示す反射光用光電変化部15内のフォトトランジスタ等と同じものである。71cは、照射用光ファイバであり、
図1で示す照射用光ファイバ11aと同様のものである、71dは、反射光用受光ファイバであり、
図1で示す反射光用受光ファイバ13と同じ光ファイバで形成されている。
【0040】
72は、光ファイバプローブであり、照射用光ファイバ71cの端部であり、反射光用受光ファイバ71dの端部を示し、一体的に束ねたものである。
73は、試験用血液槽であり、例えば牛の血を貯留した水槽を示す。
74は、輸血用チューブであり、試験用血液槽73内の牛血をポンプ75に送るための樹脂、ガラス等で形成されている。
【0041】
75は、ポンプであり、液体に流れを設ける為の電動ポンプであり、ローラー式のポンプ等で構成され、流量を正確に調整表示するものである。
76は、測定用カバーであり、計測部位周辺を光不透過性部材で覆い、外部周辺からの光を遮断する。
77は、疑似皮膚であり、
図4の疑似皮膚体41と同様、皮膚と同様の光透過能を有するPOM等で形成されている。
78は、基準血管用導管であり、ポンプ75から接続されており基準値として指定する口径(10mm)を示すシリコーン製のチューブであり、毛細血管ではなく、正確な血流量として測定するのに好適な口径を有する疑似血管である。図では、直方体で示されているが、円筒体で形成されても良い。
【0042】
図7で示す基準血液回路の動作は、以下の通りである。
レーザー血流測定ユニット71におけるレーザー光源71aから出力されたレーザー光は、照射用光ファイバ71c、光ファイバプローブ72を介して疑似皮膚77に照射され、基準血管用導管78内の赤血球で反射した反射光が、光ファイバプローブ72、反射光用受光ファイバ71dを介して、受光部71bで受光され、光電変換され後、レーザー血流測定ユニット71に入力され、
図1で示す実施例の回路で処理され、例えば
図5の52で示す血流量相当量を出力表示する。
【0043】
その際、内蔵されたポンプ75は、所定の流量で輸血用チューブ74及び基準血管用導管78内の血液を駆動する。
段階的な所定の流量に対して、
図7で示すレーザー血流測定ユニット71の反射光が光電変換によって得られた電圧強度値(NILT)が記録されることで、例えば、設定された血流量値と電圧強度値の関係を記録するメモリーテーブルを形成する。
メモリーテーブルは、コンピュータメモリで形成され、入力される反射光強度値をメモリーテーブルで予め記憶した血流量値列から参照して選ばれた血流量値を出力する対応でもよい。
【0044】
図8に本発明の他の実施例をブロック図で示す。
図8は、血流波形の脈波成分から、血流量情報、血管情報を検出して表示する機能を示す。
800は、レーザー光受光素子で反射光又は透過光を光電変換した受光信号入力部であり、
図1の反射光用光電変化部15及び透過光用直流成分変換回路16の出力部と接続する部分である。受光信号が2つあるので、それぞれと接続する
図8の構成の回路を2つ必要としているが、
図8の回路を1つとして、入力を切り替える構成を用いる場合もある。
801は、フィルタであり、ハイパスフィルタによりドリフトする心電図の基線の補正を行う他、受光した光電信号のノイズを消去する為のフィルタ機能も場合により接続する。
802は、微分回路であり、CR回路等が例示され、入力信号に対し、微分波形信号を形成する。
【0045】
803は、収縮期パルス形成回路であり、コンパレータチップ、OPアンプ等の集積回路等で形成され、閾値を超えたとき、ハイ、ロー何れかの状態の変化をおこない、パルス出力を行う。閾値は、脈波信号の立ち上がりを検出する為の0vに近い値が例示され、立ち上がり時間幅を持つパルスを形成するが、目的に応じて、適宜調整される。
804は、弁別回路であり、例えば、積分回路とコンパレータの組み合わせで形成され、パルス幅が所定値以上でパルスが発生させるためのものであり、
図9の収縮期に該当しない幅の狭い非該当パルス906を削除する為のものである。
805は、ボトムパルス形成回路であり、入力されるパルスの立ち下がりをトリガして立ち上がりパルスとして出力するワンショット型のマルチバイブレータ等で構成される。
【0046】
806は、ピークパルス形成回路であり、ボトムパルス形成回路805と同様の構成を備え、入力されるパルスの立ち下がりを捉えて立ち上がりとするパルスを出力する。
807は、ボトム値検出回路であり 入力端807aに入力されるアナログの血流脈波状の信号に対し、入力端807b入力するボトムパルスがオン時の電圧値をピークに備えた出力を行うスイッチング回路で構成されている。ボトム値検出回路807は、ボトム値のアナログ振幅を備えた信号を出力する。
808は、ピーク値検出回路であり入力端808aに対し入力するアナログの血流脈波状の信号に対し、入力端808bに入力するピークパルスがオン時の電圧値をピークに備えた出力を行うアナログスイッチング回路で構成されている。ピーク値検出回路808は、ピーク値のアナログ振幅を備えた信号を出力する。
809は、立ち上がり時間検出回路であり、入力するパルスの立ち上がり時間及び立ち下がり時間を補間して収縮期間を示す立ち上がり時間を備えたパルス幅を有するパルスを出力する。
【0047】
立ち上がり検出時間検出回路809は、弁別回路804が出力する収縮期パルスを入力し、収縮期間を補完するパルスを形成する。
これは、入力されたパルス幅に閾値で失われる値のパルス幅を補完するパルス加算回路等で構成される。
810は、例えば2チャンネル型のAD変換器であり、2つのAD変換器が配置され、入力されるアナログ信号値を、所定のビット数のデジタル信号に変換するためのものである。
AD変換器810は、2チャンネル構成でなく、独立した2つのAD変換器であってもよい。
【0048】
811は、信号処理回路であり、マイクロコンピュータで形成され、内蔵するプログラムに基づいて、データの処理をおこない、記憶回路、デイスプレイ等に出力表示をするためのものである。信号処理回路811には、3つ以上の入力ポート811a、811b、811cが設けてあり、
811aは、デジタル変換されたボトム値を入力し、811bは、デジタル変換されたピーク値データを入力するポートである。
811cは、例えば、1ビット入力ポートであり、入力されたパルスの立ち上がりと立ち下がりを捉えてパルス幅を求めるものであるが、これに限るものではない。
812はデータ記憶回路であり、SSD、HD、DVD、CD、非揮発性メモリ等で形成され、データを圧縮して記憶する等、長時間のデータの記録を行う場合がある。
813は、表示機器であり、液晶モニター、I/Oインターフェースで構成されている。
尚、本装置が、ウェアラブルな装置として小型化される場合は、表示機器813に更に、赤外線、電波を使った無線送信によりスマートフォン等の端末へデータを送り、スマートフォンモニター画面に表示する構成であってもよい。
【0049】
次に
図8で示す実施例の動作を
図9を参照して詳細に説明する。
レーザーを生体に照射し、反射又は透過した戻りレーザー光を光電変換して
図9(a)で示す光電変換血流脈波信号901が受光信号入力部800に入力され、フィルタ801に入力される。
フィルタ801に入力された血流脈波信号は、低周波成分がろ波され、
図9(b)でしめすドリフトが補正された信号に変換された補正血流脈波信号902が出力される。
補正された血流脈波信号902は、微分回路802へ入力され、
図9(c)で示す微分波形信号903に変換され、収縮期パルス形成回路803に入力される。
収縮期パルス形成回路803は、入力された微分波形信号903のうち、閾値904を越えた分をパルス化した信号を出力する(
図9(d))。
閾値904を越える信号は、収縮期パルス905の他の信号も非該当パルス906として示すパルスとするが、弁別回路804は、他の非該当パルス906を除去し、
図9(e)で示す収縮期パルス905を出力する。閾値904は、例えば、収縮期の立ち上がり時間が検出できるパルスが含まれる値であればよい。
収縮期パルス905の立ち上がり905aは、血流脈波のボトム値に相当することからピークパルス形成回路806に入力された収縮期パルスから
図9の(g)でしめす、ボトム時相を有するボトム時相パルス908を出力する。
【0050】
図9(e)で示す収縮期パルスの立ち下がり905bは、脈波血流信号のピーク時相を有することから、この部分を捉えたピーク時相パルス907を生成し、ピーク値検出回路808の入力端808bに入力される。
ボトムパルス形成回路805は、
図9(e)で示す収縮期パルスの立ち上がりを捉えて
図9(g)で示すボトム時相パルス908を出力し、ボトム値検出回路807の入力端807bに入力される。
ボトム値検出回路807は、更に、入力端807aにフィルタ801を通過した
図9(b)でしめす血流脈波を入力し、血流脈波上のボトム時相パルス908のオン時の振幅値を持つボトム値パルス910を出力する。
【0051】
弁別回路804から出力した収縮期パルス905は、立ち上がり時間検出回路809に入力され、閾値分の時間幅が付加された立ち上がり時間パルスとして信号処理回路811の入力ポート811bへ供給される。
ボトム値検出回路807から出力されたアナログボトム値を備えたボトム時相パルス908は、AD変換器810の入力端810aへ出力する。
ピーク値検出回路808から出力されたアナログピーク値をピークに含むピーク値パルス909は、AD変換器810の入力端810bへ出力する。
A/D変換器810は、数ビットのアナログ信号を信号処理回路811の入力端811aへ出力する。
立ち上がり時間検出回路809の出力パルスは、信号処理回路811のポート811bに入力され、オン、オフに基づいてパルス幅を時間に変換させるプログラムにより立ち上がり時間幅を生成する。
信号処理回路811は、内蔵するプログラムに基づいて、データを処理し、データ記憶回路812に適時データを記憶し、血流脈波から得られる立ち上がり時間、脈波ピーク値を換算した換算血流量を表示機器813で表示する。時相とは、ピーク時、ボトム時の時間情報をパルスの立ち上がり又は立ち下がりに含んだ状態を示す。
【0052】
次に
図8で示す信号処理回路811の動作例を
図10のフローチャートを用いて説明する。
1001は、信号処理回路811で実行される波高値設定及び推定血流量を算出表示する為のプログラムルーチンの開始を示すステップである。
1002は、計測終了の操作(コンピュータによるオンオフ操作、無線リモートによるオンオフ操作、タイマー操作等)がされているかを判定するステップであり、例示的に配置したものである。
1003は、ボトム値が入力されたかどうか判断する為のステップであり、
信号処理回路811の入力ポート811aにデジタル符号化されたボトム信号が入力されたか否かを判断するためのものである。
【0053】
1004は、ピーク値が入力されたかどうか判断する為の ステップであり、
信号処理回路811の入力ポート811bにデジタル符号化されたピーク信号が入力されたか否かを判断するためのものである。
1005は、波高値を算出するステップであり、ピーク値からボトム値を減算した値lを算出するステップである。この減算は、負の方向へのパルス発生の場合を考慮せず、波高値が得られる演算を示す。
1006は、ステップ1005で得られた波高値lに前の加算波高値lxを加算し一時的に記憶する為のステップである。
1007は、立ち上がり時間入力ステップであり、信号処理回路811の入力ポート811cに入力されたパルスの立ち上がりから立ち下がりまでの時間mを積算した立ち上がり時間mxに更に加算するためのステップである。
【0054】
1008は、加算ステップであり、k=k+1が行われ、加算数を取得する為のステップである。
1009は、加算数が所定数を越えるか否かを判定するステップであり、越えた場合(yes)、次のステップ1010へ移動し、未の場合(no)、最初に戻り、次の波形の立ち上がり信号から時間を算出するためのステップを繰り返す。
1010は、立ち上がり平均時間(mx/k)を設定するステップであり、所定の数の立ち上がり時間値に対し、加算平均演算がおこなわれ平均した立ち上がり時間(Up Stroke Time)が得られる。
1011は、加算波高値の平均値(lx/k)を設定する手段であり、ステップ1005で得られた波高値を加算平均して平均波高値を設定するステップである。
1012は、波高値の加算平均値(lx/k)に所定数をかけて血流量に変換するステップである。当該所定数は、測定者毎の個体値に基づき事前に、測定者の血流波高値と血流量を測定して得られるものである。
1013は、波高値、立ち上がり時間、平均値、実効値を液晶モニター、LCD表示、及びコンピュータメモリ、HD、SDD、CD、DVD等の記憶媒体に記憶するステップである。
1014は、終了のステップであり、当該ルーチンを終了し、メインルーチンに移行したり、プログラム自体を終了させたりするステップである。
【0055】
次に
図10で示したフローチャートの動作を説明する。
動作をスタートさせる(1001)。計測終了の指示がされているか確認し(1002)、
終了の指示がされていない場合(no)は、計測動作を行い、終了の指示がされている場合は、終了する(ステップ1014)。
図8のボトム値検出回路807で得られたボトム値をA/D変換器810でデジタル値に変換した信号が入力されるポート811aの信号の有無があるかを判定し(ステップ1003)、ある場合(yes)は、次のステップ1004へ移行し、無い場合(no)は、計測終了かどうかを判定するステップ1002の前の段階へ移行し、入力を待つ。尚、次に再びボトム値がきた場合は、エラー割り込み等の処理に移行し、再びステップ1002に戻るルーチンを設けてもよい。
【0056】
ステップ1003でボトム値が入力された場合(YES)、次のステップ1004に移行し、
ステップ1004でピーク値検出回路808から出力されたピーク信号値をAD変換器810でAD変換したデジタル信号がポート811bに入力された場合(yes)で、波高値を算出するステップ1005に移行する。
ステップ1005で、波高値l(ピーク値ーボトム値)を算出して、ステップ1006で、先に記憶した加算波高値lxに現加算波高値lを加算(lx=lx+l)する。
次に、ステップ1007において、信号処理回路811のポート811cに入力された立ち上がり時間検出回路809からのパルス信号に対し、パルス信号の立ち上がりから立ち下がり時間幅データをデジタル符号信号として算出する。
【0057】
次のステップ1008で、立ち上がり時間及び波高値の加算回数kをインクリメントする。
加算回数kが所定数と等しいか上回ったとき(ステップ1009)(yes)、ステップ1010で立ち上がり時間値を、記憶回数で除算して平均値を設定する。更にステップ1011で、加算した波高値を加算回数で除算し、平均値化した波高値を出力する。
加算された回数kが所定数以下の場合再度ステップ1002まで戻る。
ステップ1012では、加算平均波高値に基づいて、相当する血流量に変換し、ステップ1013で、平均波高値、平均立ち上がり時間、及び相当する血流量データを時系列で記憶し、更に記憶手段で記憶する。
図10の実施例に基づいて得られる波高値、立ち上がり時間は、血流の状態が把握でき、血圧値及びその変化についても算出可能である。
以上の実施例に基づけば、血流状態を生体各部でモニターできると共に、その変化を正確に把握することが必要な、透析患者への血流、血圧モニター装置を実現可能とする。
本発明は、皮膚を透過するレーザー光を用いた置換血流量、血液濃度、及び血流脈波の立ち上がり時間等が簡単な構成で、しかも低電力で測定できることから小型携帯型の血液濃度値、血液流量値が得られ、ウェアラブル機器での利用が可能となる。