(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024062986
(43)【公開日】2024-05-10
(54)【発明の名称】腫瘍微小環境を標的にするキメラ抗原受容体T細胞
(51)【国際特許分類】
C12N 5/10 20060101AFI20240501BHJP
C12N 5/0783 20100101ALI20240501BHJP
C07K 14/705 20060101ALI20240501BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20240501BHJP
A61K 35/17 20150101ALI20240501BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240501BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20240501BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20240501BHJP
C12N 15/62 20060101ALN20240501BHJP
C12N 15/12 20060101ALN20240501BHJP
A61K 38/17 20060101ALN20240501BHJP
A61K 39/395 20060101ALN20240501BHJP
A61K 38/19 20060101ALN20240501BHJP
【FI】
C12N5/10
C12N5/0783 ZNA
C07K14/705
C07K19/00
A61K35/17
A61P35/00
A61K48/00
A61P25/00
C12N15/62 Z
C12N15/12
A61K38/17
A61K39/395 N
A61K38/19
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024014208
(22)【出願日】2024-02-01
(62)【分割の表示】P 2019555484の分割
【原出願日】2018-04-16
(31)【優先権主張番号】62/629,593
(32)【優先日】2018-02-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/485,670
(32)【優先日】2017-04-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】592017633
【氏名又は名称】ザ ジェネラル ホスピタル コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】マウス, マルセラ ヴィー.
(72)【発明者】
【氏名】チョイ, ブライアン
(57)【要約】 (修正有)
【課題】腫瘍微小環境を標的にするキメラ抗原受容体(CAR)T細胞を提供する。また、癌を有する対象を治療する方法を提供する。
【解決手段】異種核酸分子を含むキメラ抗原受容体(CAR)T細胞であって、前記異種核酸分子は、(a)抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン及び細胞内シグナル伝達ドメインを含むCARをコードする第1のポリヌクレオチドと、(b)治療物質をコードする第2のポリヌクレオチドとを含む、キメラ抗原受容体(CAR)T細胞を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
異種核酸分子を含むキメラ抗原受容体(CAR)T細胞であって、前記異種核酸分子は、
(a)抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン及び細胞内シグナル伝達ドメインを含むCARをコードする第1のポリヌクレオチドと、
(b)治療物質をコードする第2のポリヌクレオチドと
を含む、キメラ抗原受容体(CAR)T細胞。
【請求項2】
前記治療物質は、抗体試薬を含む、請求項1に記載のCAR T細胞。
【請求項3】
前記抗体試薬は、一本鎖抗体又は単一ドメイン抗体を含む、請求項2に記載のCAR T細胞。
【請求項4】
前記抗体試薬は、二重特異性抗体試薬を含む、請求項2に記載のCAR T細胞。
【請求項5】
前記二重特異性抗体試薬は、二重特異性T細胞誘導体(BiTE)を含む、請求項4に記載のCAR T細胞。
【請求項6】
前記単一ドメイン抗体は、ラクダ科抗体を含む、請求項3に記載のCAR T細胞。
【請求項7】
前記治療物質は、サイトカインを含む、請求項1に記載のCAR T細胞。
【請求項8】
前記CAR及び前記治療物質は、別々のCAR及び治療物質分子を生成するために切断されるポリタンパク質の形態で作製される、請求項1に記載のCAR T細胞。
【請求項9】
前記ポリタンパク質は、前記CARと前記治療物質との間に切断可能部分を含む、請求項8に記載のCAR T細胞。
【請求項10】
前記切断可能部分は、2Aペプチドを含む、請求項9に記載のCAR T細胞。
【請求項11】
前記2Aペプチドは、P2A又はT2Aを含む、請求項10に記載のCAR T細胞。
【請求項12】
前記CAR及び前記治療物質は、それぞれ構成的に発現される、請求項1に記載のCAR T細胞。
【請求項13】
前記CAR及び前記治療物質の発現は、伸長因子1-α(EF1α)プロモーターによって駆動される、請求項1に記載のCAR T細胞。
【請求項14】
前記治療物質は、任意選択的にT細胞受容体又はCARシグナル伝達によって誘導可能である誘導性プロモーターの制御下で発現される、請求項1に記載のCAR T細胞。
【請求項15】
前記誘導性プロモーターは、NFATプロモーターを含む、請求項14に記載のCAR T細胞。
【請求項16】
前記CARは、構成的プロモーターの制御下で発現され、且つ前記治療物質は、任意選択的にT細胞受容体又はCARシグナル伝達によって誘導可能である誘導性プロモーターの制御下で発現される、請求項1に記載のCAR T細胞。
【請求項17】
前記CARは、1つ以上の同時刺激ドメインをさらに含む、請求項1に記載のCAR T細胞。
【請求項18】
前記CARの前記抗原結合ドメインは、抗体、一本鎖抗体、単一ドメイン抗体又はリガンドを含む、請求項1に記載のCAR T細胞。
【請求項19】
前記CARの前記膜貫通ドメインは、任意選択的に配列番号4、10、16、22、28、37、46、58及び66のいずれか1つの配列又はその変異体を含むCD8ヒンジ/膜貫通ドメインを含む、請求項1に記載のCAR T細胞。
【請求項20】
前記細胞内シグナル伝達ドメインは、任意選択的に配列番号6、12、18、24、30、39、48、60及び68のいずれか1つの配列又はその変異体を含むCD3ζ細胞内シグナル伝達ドメインを含む、請求項1に記載のCAR T細胞。
【請求項21】
任意選択的に配列番号5、11、17、23、29、38、47、59及び67のいずれか1つの配列又はその変異体を含む4-1BB同時刺激ドメインを含む、請求項1に記載のCAR T細胞。
【請求項22】
前記CAR抗原結合ドメイン又は前記治療物質は、前記治療物質が抗体試薬を含むとき、腫瘍関連抗原に結合する、請求項1に記載のCAR T細胞。
【請求項23】
前記CAR抗原結合ドメイン又は前記治療物質が結合する前記腫瘍関連抗原は、固形腫瘍関連抗原である、請求項22に記載のCAR T細胞。
【請求項24】
前記CAR抗原結合ドメイン又は前記治療物質が結合する前記腫瘍関連抗原は、上皮成長因子受容体変異体III(EGFRvIII)、EGFR、CD19、前立腺特異膜抗原(PSMA)又はIL-13受容体α2(IL-13Rα2)を含み、且つ任意選択的に、前記CAR抗原結合ドメイン又は前記治療物質は、配列番号21、27、33、36、42、45、51、55、57、63、65及びその変異体からなる群から選択される配列を含む、請求項22に記載のCAR T細胞。
【請求項25】
前記CAR抗原結合ドメイン又は前記治療物質は、前記治療物質が抗体試薬を含むとき、Treg関連抗原に結合する、請求項1に記載のCAR T細胞。
【請求項26】
前記CAR抗原結合ドメイン又は前記治療物質が結合する前記Treg関連抗原は、反復優位糖タンパク質A(GARP)、潜在関連ペプチド(LAP)、CD25及び細胞傷害性Tリンパ球関連抗原-4(CTLA-4)からなる群から選択され、且つ任意選択的に、前記CAR抗原結合ドメイン又は前記治療物質は、配列番号3、9、15、25及びその変異体からなる群から選択される配列を含む、請求項25に記載のCAR T細胞。
【請求項27】
CARをコードするポリヌクレオチドを含むCAR T細胞であって、前記CARは、抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン及び細胞内シグナル伝達ドメインを含み、且つ前記抗原結合ドメインは、Treg関連抗原に結合する、CAR T細胞。
【請求項28】
前記Treg関連抗原は、GARP、LAP、CD25及びCTLA-4からなる群から選択される、請求項27に記載のCAR T細胞。
【請求項29】
前記CARは、1つ以上の同時刺激ドメインをさらに含む、請求項27に記載のCAR T細胞。
【請求項30】
前記CARの前記抗原結合ドメインは、任意選択的に配列番号3、9、15、25及びその変異体からなる群から選択される配列を含むscFv又は単一ドメイン抗体を含む、請求項27に記載のCAR T細胞。
【請求項31】
配列番号26、配列番号35、配列番号44、配列番号53、配列番号61、配列番号19、配列番号1、配列番号7及び配列番号13のいずれか1つのアミノ酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列をコードする異種核酸分子を含むCAR T細胞。
【請求項32】
配列番号26、配列番号35、配列番号44、配列番号53、配列番号61、配列番号19、配列番号1、配列番号7及び配列番号13のいずれか1つのアミノ酸配列をコードする異種核酸分子を含む、請求項31に記載のCAR T細胞。
【請求項33】
請求項1に記載の(i)CARポリペプチド又は(ii)CARポリペプチド及び治療物質を含むポリタンパク質をコードする核酸分子。
【請求項34】
請求項1に記載のCARポリペプチド又はCARポリペプチド及び治療物質を含むポリタンパク質。
【請求項35】
請求項1に記載の1つ以上のCAR T細胞、核酸分子、CARポリペプチド又はポリタンパク質を含む医薬組成物。
【請求項36】
癌を有する患者を治療する方法であって、請求項1に記載の1つ以上のCAR T細胞又はその核酸分子、CARポリペプチド若しくはポリタンパク質を含む医薬組成物を前記患者に投与することを含む方法。
【請求項37】
全身毒性は、腫瘍微小環境を標的にすることによって低下される、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記癌は、1つ以上の固形腫瘍の存在によって特徴付けられる、請求項36に記載の方法。
【請求項39】
前記癌は、腫瘍浸潤性Tregによって特徴付けられる、請求項36に記載の方法。
【請求項40】
前記癌は、神経膠芽腫である、請求項36に記載の方法。
【請求項41】
癌を有する患者を治療する方法であって、腫瘍毒性抗体又はサイトカインを分泌するように遺伝子組換えされたCAR T細胞産物を前記患者に投与することを含み、全身毒性は、癌の毒性を腫瘍微小環境に局所的に誘導することによって低下される、方法。
【請求項42】
前記CAR T細胞は、CTLA4、CD25、GARP、LAP、IL15、CSF1R若しくはEGFRに対する抗体又は前記腫瘍微小環境に対する二重特異性抗体を送達するように遺伝子組換えされる、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記二重特異性抗体は、EGFR及びCD3に対して向けられる、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
疾患又は病理を治療するために治療物質を患者における組織又は臓器に送達する方法であって、治療抗体、毒素又は作用剤を分泌するように遺伝子組換えされたCAR T細胞を前記患者に投与することを含み、前記治療抗体、毒素又は作用剤は、単独では前記組織又は臓器に侵入又は浸透することができないであろう、方法。
【請求項45】
前記組織又は臓器は、神経系におけるものである、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記神経系は、中枢神経系である、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記中枢神経系は、脳である、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記疾患又は病理は、神経膠芽腫である、請求項44に記載の方法。
【請求項49】
前記治療抗体は、抗EGFR(抗上皮成長因子受容体)又は抗EGFRvIIIである、請求項44に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に記載の技術は、免疫療法に関する。
【背景技術】
【0002】
キメラ抗原受容体(CAR)は、選択された標的抗原、最も多くは腫瘍抗原又は腫瘍関連抗原を発現する標的細胞に対して細胞傷害性T細胞応答を駆動するための方法を提供する。CARは、抗原結合ドメインが誘導された標的抗原に特異的に結合する抗体の抗原結合ドメインと置換される場合のT細胞受容体の適応である。T細胞上に発現されるCAR(「CAR T細胞」又は「CAR-T」)による標的細胞の表面上での標的抗原の会合により、標的細胞の殺滅が促進される。
【発明の概要】
【0003】
本発明は、異種核酸分子を含むキメラ抗原受容体(CAR)T細胞を提供し、ここで、異種核酸分子は、(a)抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン及び細胞内シグナル伝達ドメインを含むCARをコードする第1のポリヌクレオチドと、(b)治療物質をコードする第2のポリヌクレオチドとを含む。任意選択的に、第1及び第2のポリヌクレオチドは、単一のポリヌクレオチド分子内に含まれる。さらに、いくつかの実施形態では、CARは、1つ以上の同時刺激ドメイン(例えば、4-1BB;下記も参照されたい)をさらに含む。
【0004】
様々な実施形態では、治療物質は、抗体試薬(例えば、一本鎖抗体、単一ドメイン抗体(例えば、ラクダ科抗体)又は二重特異性抗体試薬(例えば、二重特異性T細胞誘導体(bispecific T cell engager (BiTE));下記も参照されたい)であるか又はそれを含む。他の実施形態では、治療物質は、サイトカインであるか又はそれを含む。
【0005】
様々な実施形態では、CAR及び治療物質は、別々のCAR及び治療物質分子を生成するために切断されるポリタンパク質の形態で作製される(したがって単一の核酸分子内にコードされ得る)。いくつかの実施形態では、ポリタンパク質は、CARと治療物質との間に切断可能部分(例えば、2Aペプチド、例えばP2A又はT2A;下記も参照されたい)を含む。いくつかの実施形態では、CAR及び治療物質は、それぞれ構成的に発現される。いくつかの実施形態では、CAR及び治療物質の発現は、伸長因子-1α(EF1α)プロモーターによって駆動される。いくつかの実施形態では、治療物質は、任意選択的にT細胞受容体又はCARシグナル伝達によって誘導可能である誘導性プロモーター(例えば、NFATプロモーター)の制御下で発現される。いくつかの実施形態では、CARは、構成的プロモーターの制御下で発現され、且つ治療物質は、任意選択的にT細胞受容体又はCARシグナル伝達によって誘導可能である誘導性プロモーター(例えば、NFATプロモーター)の制御下で発現される。
【0006】
様々な実施形態では、CARの抗原結合ドメインは、抗体、一本鎖抗体、単一ドメイン抗体(例えば、ラクダ科抗体)又はリガンドであるか又はそれを含む。
【0007】
様々な実施形態では、CARの膜貫通ドメインは、任意選択的に配列番号4、10、16、22、28、37、46、58及び66のいずれか1つの配列又はその変異体を含むCD8ヒンジ/膜貫通ドメインを含む。
【0008】
様々な実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、任意選択的に配列番号6、12、18、24、30、39、48、60及び68のいずれか1つの配列又はその変異体を含むか又はそれからなるCD3ζ細胞内シグナル伝達ドメインを含む。
【0009】
様々な実施形態では、任意選択的に配列番号5、11、17、23、29、38、47、59及び67のいずれか1つの配列又はその変異体を含むか又はそれからなる4-1BB同時刺激ドメインが含まれる。
【0010】
様々な実施形態では、CAR抗原結合ドメイン又は治療物質は、治療物質が抗体試薬であるか又はそれを含むとき、腫瘍関連抗原に結合する(例えば、下記を参照されたい)。様々な実施形態では、CAR抗原結合ドメイン又は治療物質が結合する腫瘍関連抗原は、固形腫瘍関連抗原である。様々な実施形態では、CAR抗原結合ドメイン又は治療物質が結合する腫瘍関連抗原は、上皮成長因子受容体変異体III(EGFRvIII)、EGFR、CD19、前立腺特異膜抗原(PSMA)又はIL-13受容体α2(IL-13Rα2)を含み、且つ任意選択的に、CAR抗原結合ドメイン又は治療物質は、配列番号21、27、33、36、42、45、51、55、57、63、65及びその変異体からなる群から選択される配列を含む。
【0011】
様々な実施形態では、CAR抗原結合ドメイン又は治療物質は、治療物質が抗体試薬であるか又はそれを含むとき、Treg関連抗原に結合する。様々な実施形態では、CAR抗原結合ドメイン又は治療物質が結合するTreg関連抗原は、反復優位糖タンパク質A(GARP)、潜在関連ペプチド(LAP)、CD25及び細胞傷害性Tリンパ球関連抗原-4(CTLA-4)からなる群から選択され、且つ任意選択的に、CAR抗原結合ドメイン又は治療物質は、配列番号3、9、15、25及びその変異体からなる群から選択される配列を含む。
【0012】
本発明は、CARをコードするポリヌクレオチドを含むCAR T細胞をさらに提供し、ここで、CARは、抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン(例えば、CD8ヒンジ/TM;例えば追加例として下記を参照されたい)及び細胞内シグナル伝達ドメイン(例えば、CD3z;例えば追加例として下記を参照されたい)を含み、且つ抗原結合ドメインは、Treg関連抗原に結合する。様々な実施形態では、Treg関連抗原は、GARP、LAP、CD25及びCTLA-4からなる群から選択される。様々な実施形態では、CARは、1つ以上の同時刺激ドメイン(例えば、4-1BB;例えば追加例として下記を参照されたい)をさらに含む。様々な例では、CARの抗原結合ドメインは、任意選択的に配列番号3、9、15、25及びその変異体からなる群から選択される配列を含むscFv又は単一ドメイン抗体を含む。
【0013】
本発明は、配列番号26、配列番号35、配列番号44、配列番号53、配列番号61、配列番号19、配列番号1、配列番号7及び配列番号13のいずれか1つのアミノ酸配列に対して少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%、又は100%)の配列同一性を有するアミノ酸配列をコードする異種核酸分子を含むCAR T細胞をさらに提供する。
【0014】
さらに、本発明は、本明細書に記載の通りの(i)CARポリペプチド又は(ii)CARポリペプチド及び治療物質を含むポリタンパク質をコードする核酸分子を提供する。
【0015】
本発明は、本明細書に記載の通りの(i)CARポリペプチド又は(ii)CARポリペプチド及び治療物質を含むポリタンパク質をさらに提供する。
【0016】
本発明は、本明細書に記載の通りの1つ以上のCAR T細胞、核酸分子、CARポリペプチド又はポリタンパク質を含む医薬組成物をさらに提供する。
【0017】
本発明には、疾患又は状態(例えば、癌(神経膠芽腫など);下記も参照されたい)を有する患者(例えば、ヒト患者)を含む対象を治療する方法も含まれる。この方法は、1つ以上のCAR T細胞を含む医薬組成物又は本明細書に記載の医薬組成物を対象に投与することを含む。様々な実施形態では、方法は、腫瘍微小環境を標的にし、それにより例えば全身毒性が低下される。様々な実施形態では、癌は、1つ以上の固形腫瘍の存在によって特徴付けられる。様々な実施形態では、癌は、腫瘍浸潤性Tregによって特徴付けられる。
【0018】
本発明は、癌を有する対象(例えば、患者、例えばヒト患者)を治療する方法をさらに提供する。この方法は、腫瘍毒性抗体又はサイトカインを分泌するように遺伝子組換えされたCAR T細胞産物を対象に投与することを含み、ここで、癌毒性を腫瘍微小環境に局所的に導くことによって全身毒性が低下される。様々な実施形態では、CAR T細胞は、CTLA4、CD25、GARP、LAP、IL15、CSF1R若しくはEGFRに対する抗体又は腫瘍微小環境に対する(例えば、EGFR及びCD3に特異的な)二重特異性抗体を送達するように遺伝子組換えされる。
【0019】
本発明は、疾患又は病理を治療するために1つ以上の治療物質を患者における組織又は臓器に送達する方法をさらに提供する。この方法は、治療抗体、毒素又は薬剤を分泌するように遺伝子組換えされたCAR T細胞を患者に投与することを含み、ここで、治療抗体、毒素又は薬剤は、単独では組織又は臓器に侵入又は貫通することができないであろう。様々な実施形態では、組織又は臓器は、神経系におけるものである。様々な実施形態では、神経系は、中枢神経系(例えば、脳)である。様々な実施形態では、疾患又は病理は、神経膠芽腫である。様々な実施形態では、治療抗体は、抗EGFR(抗上皮成長因子受容体)又は抗EGFRvIIIである。
【0020】
本発明は、本明細書に記載の疾患又は状態を予防又は治療する上での使用又はそのための薬剤の調製の使用におけるCAR T細胞、ポリペプチド、核酸分子、医薬組成物並びに他の組成物及び分子の使用も含む。
【0021】
定義
便宜上、本明細書、実施例及び貼付の特許請求の範囲において用いられるいくつかの用語及び語句の意味は下記に提供される。特に断りのない限り又は文脈から示唆されるように、以下の用語及び語句は、以下に提供される意味を含む。技術の範囲があくまで特許請求の範囲によって限定されないことから、定義は、特定の実施形態の記述に役立つように提供され、特許請求される技術を限定することが意図されない。特段の定義がされていない限り、本明細書で用いられるすべての科学技術用語は、この技術が属する当業者により一般に理解される意味と同じ意味を有する。当該技術分野における用語の使用と本明細書に提供されるその定義との間に明白な矛盾が存在する場合、本明細書中に提供される定義が採用されるものとする。
【0022】
免疫学及び分子生物学における一般的用語の定義は、The Merck Manual of Diagnosis and Therapy,19th Edition,Merck Sharp&Dohme Corp.により発行,2011(ISBN978-0-911910-19-3);Robert S.Porter et al.(eds.)、The Encyclopedia of Molecular Cell Biology and Molecular Medicine,Blackwell Science Ltd.により発行,1999-2012(ISBN9783527600908);及びRobert A.Meyers(ed.)、Molecular Biology and Biotechnology:a Comprehensive Desk Reference,VCH Publishers,Inc.により発行,1995(ISBN1-56081-569-8);Immunology by Werner Luttmann,Elsevierにより発行,2006;Janeway’s Immunobiology,Kenneth Murphy,Allan Mowat,Casey Weaver(eds.)、Taylor&Francis Limited,2014(ISBN0815345305,9780815345305);Lewin’s Genes XI,Jones&Bartlett Publishersにより発行,2014(ISBN-1449659055);Michael Richard Green and Joseph Sambrook,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,4th ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.,USA(2012)(ISBN1936113414);Davis et al.,Basic Methods in Molecular Biology,Elsevier Science Publishing,Inc.,New York,USA(2012)(ISBN044460149X);Laboratory Methods in Enzymology:DNA,Jon Lorsch(ed.)Elsevier,2013(ISBN0124199542);Current Protocols in Molecular Biology(CPMB)、Frederick M.Ausubel(ed.)、John Wiley and Sons,2014(ISBN047150338X,9780471503385)、Current Protocols in Protein Science(CPPS)、John E.Coligan(ed.)、John Wiley and Sons,Inc.,2005;及びCurrent Protocols in Immunology(CPI)(John E.Coligan,ADA M Kruisbeek,David H Margulies,Ethan M Shevach,Warren Strobe,(eds.)John Wiley and Sons,Inc.,2003(ISBN0471142735,9780471142737)(これら各々の内容のすべては、それら全体が参照により本明細書中に援用される)に見出すことができる。
【0023】
用語「減少する」、「低下した」、「低下」又は「阻害する」は、すべて統計学的に有意な量の低下を意味するように本明細書で用いられる。いくつかの実施形態では、「低下する」、「低下」又は「減少する」又は「阻害する」は、典型的には、参照レベル(例えば、所与の治療又は薬剤の不在)と比べて少なくとも10%の減少を意味し、例えば少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、少なくとも約99%又はそれを超える減少を含み得る。本明細書で用いられるとき、「低下」又は「阻害」は、参照レベルと比べての完全な阻害又は低下を包含しない。「完全阻害」は、参照レベルと比べての100%の阻害である。適用可能である場合、減少は、好ましくは所与の障害を有しない個体において正常範囲内として認められたレベルまでの低下であり得る。
【0024】
用語「増加した」、「増加させる」、「増強する」又は「活性化する」は、すべて統計学的に有意な量の増加を意味する本明細書で用いられる。いくつかの実施形態では、用語「増加した」、「増加する」、「増強する」又は「活性化する」は、参照レベルと比べて少なくとも10%の増加、例えば参照レベルと比べて、少なくとも約20%、若しくは少なくとも約30%、若しくは少なくとも約40%、若しくは少なくとも約50%、若しくは少なくとも約60%、若しくは少なくとも約70%、若しくは少なくとも約80%、若しくは少なくとも約90%の増加、又は100%までの増加、又は10~100%の間の任意の増加、又は参照レベルと比べて、少なくとも約2倍、若しくは少なくとも約3倍、若しくは少なくとも約4倍、若しくは少なくとも約5倍若しくは少なくとも約10倍の増加、又は2倍と10倍以上との間の任意の増加を意味し得る。マーカー又は症状との関連で、「増加」は、かかるレベルにおける統計学的に有意な増加である。
【0025】
本明細書で用いられるとき、「対象」は、ヒト又は動物を意味する。通常、動物は、霊長類、齧歯類、家畜又は狩猟動物などの脊椎動物である。霊長類は、例えば、チンパンジー、カニクイザル、クモザル及びマカク、例えばアカゲザルを含む。齧歯類は、例えば、マウス、ラット、マーモット、フェレット、ウサギ及びハムスターを含む。家畜又は狩猟動物は、例えば、雌ウシ、ウマ、ブタ、シカ、バイソン、水牛、ネコ種、例えばイエネコ、イヌ種、例えばイヌ、キツネ、オオカミ、トリ種、例えばニワトリ、エミュー、ダチョウ及び魚、例えばマス、ナマズ及びサケを含む。いくつかの実施形態では、対象は、哺乳動物、例えば霊長類、例えばヒトである。用語「個体」、「患者」及び「対象」は、本明細書で交換可能に用いられる。
【0026】
好ましくは、対象は、哺乳動物である。哺乳動物は、ヒト、非ヒト霊長類、マウス、ラット、イヌ、ネコ、ウマ又は雌ウシであり得るが、これらの例に限定されない。ヒト以外の哺乳類は、有利には、疾患、例えば癌の動物モデルを表す対象として用いることができる。対象は、雄又は雌であり得る。
【0027】
対象は、治療を必要とする状態(例えば、特に神経膠芽腫、グリオーマ、白血病又は別タイプの癌)又はかかる状態に関連した1つ以上の合併症を患うか又は有すると以前に診断又は同定されている、任意選択的に状態又は状態に関連した1つ以上の合併症に対する治療を既に受けている対象であり得る。或いは、対象は、かかる状態又は関連合併症を有すると以前に診断されていない対象でもあり得る。例えば、対象は、状態又は状態に関連する1つ以上の合併症における1つ以上のリスク因子を呈する対象又はリスク因子を呈しない対象であり得る。
【0028】
特定の状態に対する治療を「を必要とする対象」は、その状態を有するか、その状態を有すると診断されたか、又はその状態を発現するリスクがある対象であり得る。
【0029】
「疾患」は、動物がホメオスタシスを維持できず、疾患が寛解されない場合、動物の健康が悪化し続ける、動物、例えばヒトの健康状態である。それに対し、動物における「障害」は、動物がホメオスタシスを維持することができるが、動物の健康状態が障害の不在下で予想される状態よりも好ましくないような健康状態である。障害は、治療されないままで、動物の健康状態におけるさらなる低下を生じるとは限らない。
【0030】
本明細書で用いられるとき、用語「腫瘍抗原」及び「癌抗原」は、癌細胞により別々に発現される抗原を指すように交換可能に用いられ、したがって癌細胞を標的にするために用いることができる。癌抗原は、潜在的には腫瘍特異的免疫応答を明らかに刺激し得る抗原である。これらの抗原の一部はコードされるが、必ずしも正常細胞によって発現されない。これらの抗原は、通常は正常細胞内でサイレントである(すなわち発現されない)もの、分化の特定ステージに限って発現されるもの並びに胚性及び胎児抗原などの一時的に発現されるものとして特徴付けることができる。他の癌抗原は、突然変異細胞遺伝子、例えば癌遺伝子(例えば、活性化ras癌遺伝子)、サプレッサー遺伝子(例えば、突然変異体p53)及び内部欠失又は染色体転座から生じる融合タンパク質によってコードされる。さらに他の癌抗原は、例えば、RNA及びDNA腫瘍ウイルス上で運ばれるようなウイルス遺伝子によってコードされ得る。多数の腫瘍抗原が、複数の固形腫瘍:免疫によって規定されるMAGE1、2及び3;MART-1/Melan-A、gp100、癌胎児性抗原(CEA)、HER2、ムチン(すなわちMUC-1)、前立腺特異抗原(PSA)及び前立腺酸性ホスファターゼ(PAP)の観点から定義されている。さらに、B型肝炎(HBV)、エプスタイン・バー(EBV)及びヒト乳頭腫(HPV)によってコードされるものなどのウイルスタンパク質は、それぞれ肝細胞癌、リンパ腫及び子宮頸癌の発現において重要であることが示されている。腫瘍抗原の例が以下に提供され、例えばEGFR、EGFRvIII、CD19、PSMA、BCMA、IL13Ra2などを含む。
【0031】
本明細書で用いられるとき、「Treg抗原」又は「Treg関連抗原」は、T制御(Treg)細胞によって発現される抗原を指すように交換可能に用いられる。これらの抗原は、任意選択的に、本発明の細胞及び方法によって標的にされ得る。Treg抗原の例が以下に提供され、例えばGARP、LAP、CD25及びCTLA4を含む。
【0032】
本明細書で用いられるとき、用語「キメラ」は、少なくとも2つ以上の異なるポリヌクレオチド分子の部分間の融合の生成物を指す。一実施形態では、用語「キメラ」は、既知のエレメント又は他のポリヌクレオチド分子の操作を通じて生成される遺伝子発現エレメントを指す。
【0033】
「二重特異性T細胞誘導体(bispecific T cell engager)」、「BiTE抗体構築物」又はBiTE」は、各々がタンデムに連結された一本鎖可変断片(scFv)を含むポリペプチドを意味する。任意選択的に、scFvは、リンカー(例えば、グリシンリッチリンカー)によって連結される。BiTEの一方のscFvは、T細胞受容体(TCR)に(例えば、CD3εサブユニットに)結合し、且つ他方は、標的抗原(例えば、腫瘍関連抗原)に結合する。
【0034】
いくつかの実施形態では、「活性化」は、検出可能な細胞増殖を誘導するように十分に刺激されているT細胞の状態を指し得る。いくつかの実施形態では、活性化は、誘導されたサイトカイン産生を指し得る。他の実施形態では、活性化は、検出可能なエフェクター機能を指し得る。少なくとも、「活性化T細胞」は、本明細書で用いられるとき、増殖性T細胞である。
【0035】
本明細書で用いられるとき、用語「特異的結合」及び「特異的に結合する」は、2つの分子、化合物、細胞及び/又は粒子の間での物理的相互作用であって、第1の実体が、標的である第2の実体に、非標的である第3の実体に結合するよりも高い特異性及び親和性で結合する場合を指す。いくつかの実施形態では、特異的結合は、第1の実体の第2の標的実体に対する、同じ条件下で第3の非標的実体に対する親和性よりも少なくとも10倍、少なくとも50倍、少なくとも100倍、少なくとも500倍、少なくとも1000倍又はそれを超える親和性を指し得る。所与の標的に対して特異的な試薬は、アッセイが利用されている条件下でその標的に対して特異的結合を示すものである。非限定例として、同族結合パートナー(例えば、T細胞上に存在する刺激及び/又は同時刺激分子)タンパク質を認識し、それと結合する、抗体又はリガンドが挙げられる。
【0036】
「刺激リガンド」は、本明細書で用いられるとき、抗原提示細胞(APC、例えばマクロファージ、樹状細胞、B細胞、人工APCなど)上に存在するとき、T細胞上の同族結合パートナー(本明細書で「刺激分子」又は「同時刺激分子」と称される)と特異的に結合し、それにより、限定はされないが、増殖、活性化、免疫応答の開始などを含む、T細胞による一次応答を媒介し得るリガンドを指す。刺激リガンドは、当該技術分野で周知であり、特に、ペプチドが負荷されたMHCクラスI分子、抗CD3抗体、スーパーアゴニスト抗CD28抗体及びスーパーアゴニスト抗CD2抗体を包含する。
【0037】
「刺激分子」は、用語が本明細書で用いられるとき、抗原提示細胞上に存在する同族刺激リガンドと特異的に結合するT細胞上の分子を意味する。
【0038】
「同時刺激リガンド」、用語が本明細書で用いられるとき、T細胞上の同族同時刺激分子に特異的に結合し、それにより、例えばTCR/CD3複合体とペプチドが負荷されたMHC分子との結合により提供される一次シグナルに加えて、限定はされないが、増殖、活性化、分化などを含むT細胞応答を媒介するシグナルを提供するAPC上の分子を含む。同時刺激リガンドは、限定はされないが、4-1BBL、OX40L、CD7、B7-1(CD80)、B7-2(CD86)、PD-L1、PD-L2、誘導性同時刺激リガンド(ICOS-L)、細胞間接着分子(ICAM)、CD30L、CD40、CD70、CD83、HLA-G、MICA、MICB、HVEM、リンホトキシンβ受容体、3/TR6、ILT3、ILT4、HVEM、Toll様受容体に結合する作動薬又は抗体及びB7-H3に特異的に結合するリガンドを含み得る。同時刺激リガンドは、限定はされないが、T細胞上に存在する同時刺激分子に特異的に結合する抗体、例えば限定はされないが、CD27、CD28、4-1BB、OX40、CD30、CD40、PD-1、ICOS、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1)、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H3及びCD83に特異的に結合するリガンドも含み得る。
【0039】
「同時刺激分子」は、同時刺激リガンドに特異的に結合し、それによりT細胞による同時刺激応答、例えば限定はされないが増殖を媒介する、T細胞上の同族結合パートナーを指す。同時刺激分子は、限定はされないが、MHCクラスI分子、BTLA、Toll様受容体、CD27、CD28、4-1BB、OX40、CD30、CD40、PD-1、ICOS、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1)、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H3及びCD83を含む。
【0040】
一実施形態では、用語「改変される」及びその文法的等価物は、本明細書で用いられるとき、核酸、例えば生物のゲノム内の核酸の1つ以上のヒト向けに設計された変更を指し得る。別の実施形態では、改変されるは、遺伝子の変更、付加及び/又は欠失を指し得る。「改変された細胞」は、付加、欠失及び/又は変更された遺伝子を有する細胞を指し得る。用語「細胞」又は「改変された細胞」及びそれらの文法的等価物は、本明細書で用いられるとき、ヒト又は非ヒト動物由来の細胞を指し得る。
【0041】
本明細書で用いられるとき、用語「作動可能に連結される」は、第1のポリヌクレオチド分子、例えばプロモーターが、第2の転写可能なポリヌクレオチド分子、例えば目的の遺伝子と接続されることを指し、この場合のポリヌクレオチド分子は、第1のポリヌクレオチド分子が第2のポリヌクレオチド分子の機能に影響するように配列される。2つのポリヌクレオチド分子は、単一の隣接ポリヌクレオチド分子の一部であってもなくてもよく、また隣接していてもしていなくてもよい。例えば、プロモーターが細胞内での目的の遺伝子の転写を制御又は媒介する場合、プロモーターは目的の遺伝子に作動可能に連結される。
【0042】
本明細書に記載の様々な実施形態では、記載の特定ポリペプチドのいずれかの変異体(天然に存在するか又はそれ以外)、対立遺伝子、ホモログ、保存的に修飾された変異体及び/又は保存的置換変異体が包含されることがさらに検討される。アミノ酸配列に関して、当業者は、コードされた配列内の単一のアミノ酸又は低い百分率のアミノ酸を変更する、核酸、ペプチド、ポリペプチド又はタンパク質配列に対する個別の置換、欠失又は付加が、改変がアミノ酸と化学的に類似したアミノ酸との置換をもたらし、ポリペプチドの所望される活性を保持する場合の「保存的に修飾された変異体」であることを理解するであろう。かかる保存的に修飾された変異体は、それに加えて、本開示に一致する多型変異体、種間ホモログ及び対立遺伝子を除外しない。
【0043】
所与のアミノ酸は、類似の生理化学的特徴を有する残基で置換され得るが、例えば1つの脂肪族残基を他のもの(Ile、Val、Leu又はAlaなどを相互に)置換すること又は1つの極性残基の他のものとの(LysとArg;GluとAsp;又はGlnとAsnとの間での)置換が挙げられる。他のかかる保存的置換、例えば類似の疎水性特徴を有する全領域の置換は周知である。保存的アミノ酸置換を含むポリペプチドは、本明細書に記載のアッセイのいずれか1つにおいて試験することで、所望される活性、例えば天然又は参照ポリペプチドのリガンド媒介受容体活性及び特異性が保持されることを確認することができる。
【0044】
アミノ酸は、(A.L.Lehninger,in Biochemistry,second ed.,pp.73-75,Worth Publishers,New York(1975)における)それらの側鎖の特性:(1)非極性:Ala(A)、Val(V)、Leu(L)、Ile(I)、Pro(P)、Phe(F)、Trp(W)、Met(M);(2)非荷電極性:Gly(G)、Ser(S)、Thr(T)、Cys(C)、Tyr(Y)、Asn(N)、Gln(Q);(3)酸性:Asp(D)、Glu(E);(4)塩基性:Lys(K)、Arg(R)、His(H)における類似性に従ってグループ化され得る。或いは、天然に存在する残基は、共通の側鎖特性:(1)疎水性:ノルロイシン、Met、Ala、Val、Leu、Ile;(2)中性親水性:Cys、Ser、Thr、Asn、Gln;(3)酸性:Asp、Glu;(4)塩基性:His、Lys、Arg;(5)鎖配向性に影響を及ぼす残基:Gly、Pro;(6)芳香族:Trp、Tyr、Pheに基づいてグループ分けされ得る。非保存的置換は、これらのクラスの1メンバーを別クラスと交換することを伴うことになる。特定の保存的置換として、例えばAlaをGly又はSerへ;ArgをLysへ;AsnをGln又はHisへ;AspをGluへ;CysをSerへ;GlnをAsnへ;GluをAspへ;GlyをAla又はProへ;HisをAsn又はGlnへ;IleをLeu又はValへ;LeuをIle又はValへ;LysをArg、Gln又はGluへ;MetをLeu、Tyr又はIleへ;PheをMet、Leu又はTyrへ;SerをThrへ;ThrをSerへ;TrpをTyrへ;TyrをTrpへ;及び/又はPheをVal、Ile又はLeuへ、が挙げられる。
【0045】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のポリペプチド(又はかかるポリペプチドをコードする核酸)は、本明細書に記載のアミノ酸配列の1つの機能断片であり得る。本明細書で用いられるとき、「機能断片」は、当該技術分野で公知であるか又は本明細書中の以下に記載されるアッセイによると、野生型参照ポリペプチドの活性の少なくとも50%を保持する、ペプチドの断片又はセグメントである。機能断片は、本明細書に開示される配列の保存的置換を含み得る。
【0046】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のポリペプチドは、本明細書に記載のようなポリペプチド又は分子の変異体であり得る。いくつかの実施形態では、変異体は、保存的に修飾された変異体である。保存的置換変異体は、例えば、天然ヌクレオチド配列の突然変異によって得られ得る。「変異体」は、本明細書で参照されるとき、天然又は参照ポリペプチドに対して実質的に相同であるが、1つ又は複数の欠失、挿入又は置換が理由で天然又は参照ポリペプチドの場合と異なるアミノ酸配列を有するポリペプチドである。変異体ポリペプチドをコードするDNA配列は、天然又は参照DNA配列と比べて、ヌクレオチドの1つ以上の付加、欠失又は置換を含むが、非変異体ポリペプチドの活性を保持する変異体タンパク質又はその断片をコードする、配列を包含する。多種多様なPCRに基づく部位特異的変異原性手法は、当該技術分野で公知であり、当業者によって適用され得る。
【0047】
変異体のアミノ酸又はDNA配列は、天然又は参照配列に対して、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%又はそれを超えて同一であり得る。天然及び突然変異体配列の間の相同性(パーセント同一性)の程度は、例えば、一般にワールドワイドウェブ上でこの目的のために用いられる自由に利用可能なコンピュータプログラム(例えば、デフォルト設定でのBLASTp又はBLASTn)を用いて2つの配列を比較することにより決定され得る。
【0048】
天然アミノ酸配列の変更は、当業者に公知のいくつかの技術のいずれかにより達成され得る。突然変異は、例えば、天然配列の断片へのライゲーションを可能にする制限部位によって隣接される、突然変異体配列を有するオリゴヌクレオチドを合成することにより、特定の遺伝子座に導入され得る。ライゲーション後、得られる再構築された配列は、所望されるアミノ酸の挿入、置換又は欠失を有する類似体をコードする。或いは、オリゴヌクレオチドに誘導される部位特異的変異原性手法を用いて、要求される置換、欠失又は挿入に従って変更された特定コドンを有する変更されたヌクレオチド配列を提供することができる。かかる変更を設けるための技術は、十分に確立されており、例えばWalder et al.(Gene 42:133,1986);Bauer et al.(Gene 37:73,1985);Craik(BioTechniques,January 1985,12-19);Smith et al.(Genetic Engineering:Principles and Methods,Plenum Press,1981);並びに米国特許第4,518,584号明細書及び米国特許第4,737,462号明細書(それら全体が参照により本明細書中に援用される)に開示されたものを含む。ポリペプチドの適切な立体構造を維持することに関与しない任意のシステイン残基は、一般にセリンと置換されることで、分子の酸化安定性を改善し、異常な架橋を阻止することもできる。逆に、システイン結合をポリペプチドに付加することで、その安定性を改善し、オリゴマー形成を促進することができる。
【0049】
本明細書で用いられるとき、用語「DNA」は、デオキシリボ核酸と定義される。用語「ポリヌクレオチド」は、ヌクレオシドのポリマーを示すため、「核酸」と交換可能に本明細書で用いられる。典型的には、ポリヌクレオチドは、リン酸ジエステル結合によって接続されたDNA又はRNA(例えば、アデノシン、チミジン、グアノシン、シチジン、ウリジン、デオキシアデノシン、デオキシチミジン、デオキシグアノシン及びデオキシシチジン)において天然に見出されるヌクレオシドから構成される。しかし、用語は、天然に存在する核酸中に見出されるか否かにかかわらず、化学的又は生物学的に修飾された塩基、修飾された骨格などを有するヌクレオシド又はヌクレオシド類似体を含む分子を包含し、かかる分子は、特定用途にとって好ましいことがある。本願がポリヌクレオチドを指す場合、DNA、RNAの両方並びに各場合における一本鎖及び二本鎖形態の両方(及び各一本鎖分子の相補鎖)が提供されることが理解される。「ポリヌクレオチド配列」は、本明細書で用いられるとき、ポリヌクレオチド材料自体及び/又は特定の核酸を生化学的に特徴付ける配列情報(すなわち塩基における略称として用いられる一連の文字)を指し得る。本明細書で提示されるポリヌクレオチド配列は、別段の指示がない限り、5’から3’方向で示される。
【0050】
用語「ポリペプチド」は、本明細書で用いられるとき、アミノ酸のポリマーを指す。用語「タンパク質」及び「ポリペプチド」は、本明細書で交換可能に用いられる。ペプチドは、典型的には約2~60の間のアミノ酸長の比較的短いポリペプチドである。本明細書で用いられるポリペプチドは、典型的には、最も一般的にはタンパク質中に見出される20Lのアミノ酸などのアミノ酸を有する。しかし、当該技術分野で公知の他のアミノ酸及び/又はアミノ酸類似体を用いることができる。ポリペプチド中のアミノ酸の1つ以上が例えば炭水化物基、リン酸基、脂肪酸基、コンジュゲーションのためのリンカー、機能分化などの化学的実体の付加により修飾され得る。それと共有結合的又は非共有結合的に会合された非ポリペプチド部分を有するポリペプチドは、やはり「ポリペプチド」と考えられる。例示的修飾は、グリコシル化及びパルミトイル化を含む。ポリペプチドは、例えば、天然供給源から精製され得るか、組換えDNA技術を用いて生成され得るか、又は通常の固相ペプチド合成などの化学的手段によって合成され得る。用語「ポリペプチド配列」又は「アミノ酸配列」は、本明細書で用いられるとき、ポリペプチド材料自体及び/又はポリペプチドを生化学的に特徴付ける配列情報(すなわちアミノ酸名における略称として用いられる一連の文字又は3文字コード)を指し得る。本明細書で提示されるポリペプチド配列は、別段の指示がない限り、N末端からC末端方向で示される。
【0051】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のようなポリペプチド(例えば、CARポリペプチド)をコードする核酸は、ベクターによって含まれる。本明細書に記載の態様の一部では、本明細書に記載のような所与のポリペプチドをコードする核酸配列又はその任意のモジュールは、ベクターに作動可能に連結される。用語「ベクター」は、本明細書で用いられるとき、宿主細胞への送達又は異なる宿主細胞間の導入向けに設計された核酸構築物を指す。本明細書で用いられるとき、ベクターは、ウイルス又は非ウイルスであり得る。用語「ベクター」は、適切な調節エレメントと会合する際に複製能力があり、且つ遺伝子配列を細胞に導入し得る任意の遺伝要素を包含する。ベクターは、限定はされないが、クローニングベクター、発現ベクター、プラスミド、ファージ、トランスポゾン、コスミド、人工染色体、ウイルス、ビリオンなどを含み得る。
【0052】
本明細書で用いられるとき、用語「発現ベクター」は、ベクター上の転写制御配列に連結された配列からRNA又はポリペプチドの発現を誘導するベクターを指す。発現される配列は、必然ではないが、細胞に対して異種となることが多い。発現ベクターは、追加的配列を含み得、例えば、発現ベクターは、2つの複製系を有し得、それにより2つの生物、例えば発現のためのヒト細胞並びにクローニング及び増幅のための原核生物宿主におけるその維持が可能になる。用語「発現」は、RNA及びタンパク質の生成、また必要に応じて、タンパク質の分泌に関与する細胞プロセス、適用可能であれば、例えば限定はされないが、転写、転写物プロセシング、翻訳及びタンパク質のフォールディング、修飾及びプロセシングなどを指す。「発現産物」は、遺伝子から転写されたRNA及び遺伝子から転写されたmRNAの翻訳により得られたポリペプチドを含む。用語「遺伝子」は、適切な制御配列に作動可能に連結されるとき、インビトロ又はインビボで(DNAから)RNAに転写される核酸配列を意味する。遺伝子は、コード領域に先行及び後続する領域、例えば5’非翻訳(5’UTR)又は「リーダー」配列及び3’UTR又は「トレーラー」配列並びに個別のコードセグメント(エクソン)間の介在配列(イントロン)を含んでも含まなくてもよい。
【0053】
本明細書で用いられるとき、用語「ウイルスベクター」は、ウイルス起源の少なくとも1つの配列を含み、ウイルスベクター粒子にパッケージングされる能力を有する核酸ベクター構築物を指す。ウイルスベクターは、非必須なウイルス遺伝子の代わりに本明細書に記載のようなポリペプチドをコードする核酸を含有し得る。ベクター及び/又は粒子は、インビトロ又はインビボのいずれかで核酸を細胞に導入することを目的として利用され得る。極めて多数のウイルスベクターの形態は、当該技術分野で公知である。
【0054】
「組換えベクター」は、インビボで発現する能力がある異種核酸配列又は「導入遺伝子」を含むベクターを意味する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のベクターを他の好適な組成物及び治療と組み合わせ可能であることが理解されるべきである。いくつかの実施形態では、ベクターはエピソームである。好適なエピソームベクターの使用により、高コピー数の染色体外DNAで対象における目的のヌクレオチドを維持し、それにより染色体組込みの潜在的影響を除去する手段が提供される。
【0055】
本明細書で用いられるとき、用語「治療する」、「治療」、「治療すること」又は「寛解」は、対象が疾患又は障害、例えば神経膠芽腫、グリオーマ、急性リンパ性白血病若しくは他の癌、疾患又は障害に関連した状態の進行又は重症度に対する逆転、軽減、寛解、阻害、緩徐化又は停止に至るための治療的処置を指す。用語「治療する」は、状態、疾患又は障害の少なくとも1つの有害作用又は症状を低減又は軽減することを含む。治療は、1つ以上の症状又は臨床マーカーが低下する場合、一般に「有効」である。或いは、治療は、疾患の進行が低下又は停止する場合、「有効」である。すなわち、「治療」は、症状又はマーカーの改善だけでなく、治療の不在下で想定されることと比べての、症状の進行又は悪化の休止又は少なくとも緩徐化を含む。有利な又は所望される臨床結果として、限定はされないが、1つ以上の症状の軽減、疾患の程度の低下、疾患の安定化(すなわち悪化していない)状態、疾患進行の遅延又は緩徐化、病態の寛解又は緩和、寛解(部分又は完全と無関係に)及び/又は死亡率の低下(検出可能又は検出不能と無関係に)が挙げられる。疾患の用語「治療」は、疾患の症状又は副作用からの軽減(対症療法を含む)も提供することを含む。
【0056】
本明細書で用いられるとき、用語「医薬組成物」は、薬学的に許容できる担体、例えば医薬品業界で一般に用いられる担体と組み合わせた活性薬剤を指す。語句「薬学的に許容できる」は、健全な医学的判断の範囲内で、合理的なリスク・ベネフィット比に見合う、過剰な毒性、刺激作用、アレルギー反応又は他の課題若しくは合併症を伴わずにヒト及び動物の組織との接触における使用に適した化合物、材料、組成物及び/又は剤形を指すように本明細書で用いられる。態様のいずれかのいくつかの実施形態では、薬学的に許容できる担体は、水以外の担体であり得る。態様のいずれかのいくつかの実施形態では、薬学的に許容できる担体は、クリーム、乳剤、ゲル、リポソーム、ナノ粒子及び/又は軟膏であり得る。態様のいずれかのいくつかの実施形態では、薬学的に許容できる担体は、人工的な又は改変された担体、例えば活性成分が天然に存在することが見出されないような担体であり得る。
【0057】
本明細書で用いられるとき、用語「投与する」は、所望される部位への薬剤の少なくとも部分的な送達をもたらす方法又は経路による、本明細書で開示されるような治療又は医薬組成物の対象への配置を指す。本明細書で開示されるような薬剤を含む医薬組成物は、対象における効果的治療をもたらす任意の適切な経路により投与され得る。
【0058】
用語「統計学的に有意な」又は「有意に」は、統計学的有意性を指し、一般に2標準偏差(2SD)又はより大きい差異を意味する。
【0059】
実験実施例以外又は他の指示がある場合以外には、本明細書で用いられる成分の量又は反応条件を表すすべての数は、すべての例において用語「約」によって修飾されるように理解されるべきである。用語「約」は、百分率との関連で用いられるとき、±1%を意味し得る。
【0060】
本明細書で用いられるとき、用語「~を含む」は、提示される定義された要素に加えて、他の要素も存在し得ることを意味する。「~を含む」の使用は、限定ではなく包含を示す。
【0061】
用語「~からなる」は、本明細書に記載のような組成物、方法及びその各構成要素を指し、実施形態のその記述の中に列挙されない任意の要素が除外される。
【0062】
本明細書で用いられるとき、用語「本質的に~からなる」は、所与の実施形態にとって必要とされる要素を指す。用語は、技術の実施形態の基本的且つ新規な又は機能的特徴に実質的に影響しない追加的要素の存在を許容する。
【0063】
単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」及び「その(the)」は、文脈から明らかにそうでないことが示されなければ、複数の参照対象を含む。同様に、用語「or」は、文脈から明らかにそうでないことが示されなければ、「and」を含むことが意図される。本明細書に記載の場合に類似又は相当する方法及び材料が本開示の実行又は試験において用いることができるが、好適な方法及び材料が以下に説明される。略称「e.g.」は、ラテン語のexempli gratiaに由来し、非限定例を示すために本明細書で用いられる。したがって、略称「e.g.」は、用語「for example」と同義である。
【0064】
態様のいずれかのいくつかの実施形態では、本明細書に記載の開示内容は、ヒトをクローン化するためのプロセス、ヒトの生殖系列の遺伝的同一性を修飾するためのプロセス、産業若しくは商業目的でのヒト胚の使用又は罹患をもたらしやすく、ヒト若しくは動物に対して実質的な医学的恩恵を全く伴わない動物の遺伝的同一性を修飾するためのプロセス、ひいてはかかるプロセスから生じる動物に関連しない。
【0065】
他の用語は、以下に示される技術の様々な態様及び実施形態の説明の範囲内で定義される。
【0066】
本発明は、いくつかの利点を提供する。例えば、本発明のCAR T細胞は、癌治療のために治療用分子を送達するために用いることができる。一例では、本発明のCAR T細胞は、他に毒性抗体(例えば、抗CTLA4又は抗CD25(例えば、ダクリズマブ)又は他の分子(例えば、サイトカイン)を腫瘍微小環境に送達するために用いることができ、その場合、有利には、周囲の腫瘍浸潤リンパ球の活性化を可能にし、チェックポイント遮断をもたらし、且つ制御性T細胞(Treg)を枯渇させることができる。本発明のCAR T細胞は、さらに、Treg抗原に特異的であり、Treg細胞の標的化を促進し得る。さらに、遺伝的にコードされた分子(例えば、抗体又はサイトカイン)を、これら分子が本来であれば到達できない身体の領域(例えば、脳を含む中枢神経系)に送達するために本発明の特定のCAR T細胞を用いることができる。一例では、EGFRvIIIを標的にするCAR T細胞は、脳腫瘍を標的にするために用いることができ、抗体(例えば、EGFRに対する抗体、例えばセツキシマブ;下記も参照されたい)を腫瘍に送達し得る。そのため、本発明は、腫瘍微小環境下での遺伝的にコードされたTregの標的化を提供する。さらに、本発明は、特定組織内に達することができない抗体の遺伝的にコードされた送達を可能にし、抗腫瘍標的の特異性を広げることにより、T細胞療法の効力を増強することができる。したがって、本発明は、癌に対する遺伝子修飾されたT細胞治療を提供する。
【0067】
本発明の他の特徴及び利点は、以下の詳細な説明、図面及び特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【
図1】
図1は、CART-EGFRvIII:U87vIII標的細胞比の関数としてのCART-EGFRvIII細胞によるヒト神経膠腫標的細胞株U87vIIIの殺滅を示すグラフである。非形質導入細胞が陰性対照として標的細胞とともにインキュベートされた。
【
図2A-2B】
図2A及び2Bは、ヒト神経膠腫の皮下モデルにおけるEGFRvIII発現腫瘍(U87vIII)の位置を示す一連のX線オーバーレイである。
図2Aは、陰性対照として非形質導入細胞で処置されたマウスを示す。
図2Bは、移植後4日目、CART-EGFRvIIIで処置されたマウス(上行)とともに、21日目までの成功した処置(下行)を示す。
【
図3A-3B】
図3A及び3Bは、ヒト神経膠腫の頭蓋内モデルにおけるEGFRvIII発現腫瘍(U87vIII)の位置を示す一連のX線オーバーレイである。
図2Aは、5日目(D5;上部)及びD11(下部)での陰性対照として非形質導入(UTD)細胞で処置されたマウスを示す。
図2Bは、移植後2日目、D5(上行)及びD21(下行)でのCART-EGFRvIIIで処置されたマウスを示す。
【
図4A-4B】
図4A及び4Bは、CART-EGFRvIIIの注入から5日後の患者1名における腫瘍組織の免疫組織化学を示す顕微鏡写真である。
図4Aは、CD3に対して染色されたT細胞を示す。
図4Bは、CD25+細胞を示す。CD25は、活性化又は制御性T細胞のマーカーであるIL-2受容体α鎖である。
【
図5A-5C】
図5A~5Cは、インビトロでのヒトグリオーマ細胞(緑)とのコインキュベーションから18時間後のCAR T細胞(赤)抗腫瘍活性のTreg抑制を定性的に示す蛍光顕微鏡写真である。
図5Aは、グリオーマ細胞に対するCART非特異的細胞の相対濃度を示す。
図5Bは、培養物中にTregを有しないグリオーマ細胞に対するCART-EGFRvIII細胞の相対濃度を示す。
図5Cは、培養物中にTregが含まれるグリオーマ細胞に対するCART-EGFRvIII細胞の相対濃度を示す。
【
図5D】
図5Dは、時間の関数(最大48時間)としてのグリオーマ細胞生存度の尺度として、緑色対象のコンフルエンスの定量的読み取りを示すグラフである。上の線は、
図5Aに示される結果(グリオーマ細胞増殖)を表し、下の線は、
図5Bに示される結果(神経膠腫細胞死滅)を表し、また中間の線は、
図5Cに示される結果(CART-殺滅に対して抵抗性があるグリオーマ細胞)を表す。
【
図6A-6C】
図6A~6Cは、対照T細胞(
図6A)、非活性化Treg(
図6B)及び活性化Treg(
図6C)に対するLAP(x軸)及びGARP(y軸)の発現を示すフローサイトメトリープロットである。Tregは、CD4+CD25+CD127-におけるロイコパックから選別され、IL-2の存在下でCD3/CD28ビーズで7日間拡大された。1日目、それらは、発現されたGFPに形質導入された。7日目に脱ビーズ化(debeading)後、拡大されたTregは、凍結前4日間静置された。解凍後、Tregは、一晩静置(非活性化)又は抗CD3及び抗CD28で一晩活性化された後、LAP及びGARPの発現のために染色された。同じドナーからの非形質導入T細胞(CD4+及びCD8+)が発現に対する対照として用いられた(
図6A)。
【
図7A】
図7A及び7Bは、LAPの発現(
図7A)及びGARPの発現(
図7B)を示す、
図6A~6Cに示される結果に対応するフローサイトメトリーヒストグラムである。
【
図7B】
図7A及び7Bは、LAPの発現(
図7A)及びGARPの発現(
図7B)を示す、
図6A~6Cに示される結果に対応するフローサイトメトリーヒストグラムである。
【
図8A】
図8A~8Dは、Treg関連抗原を標的にするためのCAR構築物の概略図である。
図8Aは、抗LAP scFvと、それぞれ5’→3’方向に配列されたその軽鎖(L)及び重鎖(H)を有するLAP標的化CAR構築物(CART-LAP-L-H)を示す。
図8Bは、抗LAP scFvと、それぞれ5’→3’方向に配列されたその重鎖(H)及び軽鎖(L)を有するLAP標的化CAR構築物(CART-LAP-H-L)を示す。
図8Cは、抗GARPラクダ科抗体結合ドメインを有するGARP標的化CAR構築物(CART-GARP)を示す。
図8Dは、抗GARPラクダ科抗体を有するEGFR標的化CAR構築物を示す。
【
図8B】
図8A~8Dは、Treg関連抗原を標的にするためのCAR構築物の概略図である。
図8Aは、抗LAP scFvと、それぞれ5’→3’方向に配列されたその軽鎖(L)及び重鎖(H)を有するLAP標的化CAR構築物(CART-LAP-L-H)を示す。
図8Bは、抗LAP scFvと、それぞれ5’→3’方向に配列されたその重鎖(H)及び軽鎖(L)を有するLAP標的化CAR構築物(CART-LAP-H-L)を示す。
図8Cは、抗GARPラクダ科抗体結合ドメインを有するGARP標的化CAR構築物(CART-GARP)を示す。
図8Dは、抗GARPラクダ科抗体を有するEGFR標的化CAR構築物を示す。
【
図8C】
図8A~8Dは、Treg関連抗原を標的にするためのCAR構築物の概略図である。
図8Aは、抗LAP scFvと、それぞれ5’→3’方向に配列されたその軽鎖(L)及び重鎖(H)を有するLAP標的化CAR構築物(CART-LAP-L-H)を示す。
図8Bは、抗LAP scFvと、それぞれ5’→3’方向に配列されたその重鎖(H)及び軽鎖(L)を有するLAP標的化CAR構築物(CART-LAP-H-L)を示す。
図8Cは、抗GARPラクダ科抗体結合ドメインを有するGARP標的化CAR構築物(CART-GARP)を示す。
図8Dは、抗GARPラクダ科抗体を有するEGFR標的化CAR構築物を示す。
【
図8D】
図8A~8Dは、Treg関連抗原を標的にするためのCAR構築物の概略図である。
図8Aは、抗LAP scFvと、それぞれ5’→3’方向に配列されたその軽鎖(L)及び重鎖(H)を有するLAP標的化CAR構築物(CART-LAP-L-H)を示す。
図8Bは、抗LAP scFvと、それぞれ5’→3’方向に配列されたその重鎖(H)及び軽鎖(L)を有するLAP標的化CAR構築物(CART-LAP-H-L)を示す。
図8Cは、抗GARPラクダ科抗体結合ドメインを有するGARP標的化CAR構築物(CART-GARP)を示す。
図8Dは、抗GARPラクダ科抗体を有するEGFR標的化CAR構築物を示す。
【
図9A】
図9A及び9Bは、標的Tregの殺滅をCAR T細胞対標的Treg細胞比の関数として示すグラフである。Tregは、GFPが形質導入され、細胞傷害性がGFP発現を監視することにより定量化された。
図9Aは、活性化Tregの殺滅を示し、
図9Bは、非活性化Tregの殺滅を示す。非活性化Tregの殺滅時、CART-LAP-H-Lは、CART-LAP-L-Hと比べてより有効であった。
【
図9B】
図9A及び9Bは、標的Tregの殺滅をCAR T細胞対標的Treg細胞比の関数として示すグラフである。Tregは、GFPが形質導入され、細胞傷害性がGFP発現を監視することにより定量化された。
図9Aは、活性化Tregの殺滅を示し、
図9Bは、非活性化Tregの殺滅を示す。非活性化Tregの殺滅時、CART-LAP-H-Lは、CART-LAP-L-Hと比べてより有効であった。
【
図10A】
図10A及び10Bは、4日間の、様々な抗Treg CAR T細胞(すなわちCART-GARP、CART-LAP-H-L、CART-LAP-L-H又は非形質導入対照細胞)による標的Tregの殺滅をCAR T細胞対Tregの1:1比で示すグラフである。
図10A及び10Bは、2つの異なるドナーにおいて実施された同じ実験からの結果を示す。
【
図10B】
図10A及び10Bは、4日間の、様々な抗Treg CAR T細胞(すなわちCART-GARP、CART-LAP-H-L、CART-LAP-L-H又は非形質導入対照細胞)による標的Tregの殺滅をCAR T細胞対Tregの1:1比で示すグラフである。
図10A及び10Bは、2つの異なるドナーにおいて実施された同じ実験からの結果を示す。
【
図11A】
図11A~11Dは、共培養の3日後、LAP標的化CAR T細胞による標的Tregの殺滅をCAR T細胞対標的Treg細胞比の関数として示すグラフである。
図11A及び11Bは、フローサイトメトリーによる測定として、共培養下で残存する標的細胞の数を示す。破線は、CAR細胞を含有しない対照サンプル中の標的細胞の数を示す。
図11Aは、標的細胞としての非活性化Tregを示す一方、
図11Bは、標的細胞としての活性化Tregを示す。
図11C及び11Dは、標的細胞によるルシフェラーゼ発現による測定としてパーセント細胞傷害性を示す。
図11Cは、標的細胞としての非活性化Tregを示す一方、
図11Dは、標的細胞としての活性化Tregを示す。11A~11Dの各々において、丸は、CART-LAP-H-Lを表し、四角は、CART-LAP-L-Hを表し、三角は、非形質導入CAR細胞を表す。
【
図11B】
図11A~11Dは、共培養の3日後、LAP標的化CAR T細胞による標的Tregの殺滅をCAR T細胞対標的Treg細胞比の関数として示すグラフである。
図11A及び11Bは、フローサイトメトリーによる測定として、共培養下で残存する標的細胞の数を示す。破線は、CAR細胞を含有しない対照サンプル中の標的細胞の数を示す。
図11Aは、標的細胞としての非活性化Tregを示す一方、
図11Bは、標的細胞としての活性化Tregを示す。
図11C及び11Dは、標的細胞によるルシフェラーゼ発現による測定としてパーセント細胞傷害性を示す。
図11Cは、標的細胞としての非活性化Tregを示す一方、
図11Dは、標的細胞としての活性化Tregを示す。11A~11Dの各々において、丸は、CART-LAP-H-Lを表し、四角は、CART-LAP-L-Hを表し、三角は、非形質導入CAR細胞を表す。
【
図11C】
図11A~11Dは、共培養の3日後、LAP標的化CAR T細胞による標的Tregの殺滅をCAR T細胞対標的Treg細胞比の関数として示すグラフである。
図11A及び11Bは、フローサイトメトリーによる測定として、共培養下で残存する標的細胞の数を示す。破線は、CAR細胞を含有しない対照サンプル中の標的細胞の数を示す。
図11Aは、標的細胞としての非活性化Tregを示す一方、
図11Bは、標的細胞としての活性化Tregを示す。
図11C及び11Dは、標的細胞によるルシフェラーゼ発現による測定としてパーセント細胞傷害性を示す。
図11Cは、標的細胞としての非活性化Tregを示す一方、
図11Dは、標的細胞としての活性化Tregを示す。11A~11Dの各々において、丸は、CART-LAP-H-Lを表し、四角は、CART-LAP-L-Hを表し、三角は、非形質導入CAR細胞を表す。
【
図11D】
図11A~11Dは、共培養の3日後、LAP標的化CAR T細胞による標的Tregの殺滅をCAR T細胞対標的Treg細胞比の関数として示すグラフである。
図11A及び11Bは、フローサイトメトリーによる測定として、共培養下で残存する標的細胞の数を示す。破線は、CAR細胞を含有しない対照サンプル中の標的細胞の数を示す。
図11Aは、標的細胞としての非活性化Tregを示す一方、
図11Bは、標的細胞としての活性化Tregを示す。
図11C及び11Dは、標的細胞によるルシフェラーゼ発現による測定としてパーセント細胞傷害性を示す。
図11Cは、標的細胞としての非活性化Tregを示す一方、
図11Dは、標的細胞としての活性化Tregを示す。11A~11Dの各々において、丸は、CART-LAP-H-Lを表し、四角は、CART-LAP-L-Hを表し、三角は、非形質導入CAR細胞を表す。
【
図13A】
図13A及び13Bは、共培養の3日後、LAP標的化CAR T細胞による標的HUT78細胞の殺滅をCAR T細胞対標的細胞比の関数として示すグラフである。
図13Aは、フローサイトメトリーによる測定として、3日後の培養下で残存する標的細胞の数を示す。破線は、CAR細胞を含有しない対照サンプル中の標的細胞の数を示す。
図13Bは、標的細胞によるルシフェラーゼ発現による測定としてパーセント細胞傷害性を示す。丸は、CART-LAP-H-Lを表し、四角は、CART-LAP-L-Hを表し、三角は、非形質導入CAR細胞を表す。
【
図13B】
図13A及び13Bは、共培養の3日後、LAP標的化CAR T細胞による標的HUT78細胞の殺滅をCAR T細胞対標的細胞比の関数として示すグラフである。
図13Aは、フローサイトメトリーによる測定として、3日後の培養下で残存する標的細胞の数を示す。破線は、CAR細胞を含有しない対照サンプル中の標的細胞の数を示す。
図13Bは、標的細胞によるルシフェラーゼ発現による測定としてパーセント細胞傷害性を示す。丸は、CART-LAP-H-Lを表し、四角は、CART-LAP-L-Hを表し、三角は、非形質導入CAR細胞を表す。
【
図15A】
図15A及び15Bは、共培養の24時間後(
図15A)及び48時間後(
図15B)、GARP及びLAP標的化CAR T細胞による標的SeAx細胞の殺滅を、標的細胞によるルシフェラーゼ発現による測定として、CAR T細胞対標的細胞比の関数として示すグラフである。四角は、CART-GARPを表し、上向き三角は、CART-LAP-H-Lを表し、下向き三角は、CART-LAP-H-L細胞を表し、菱形は、非形質導入CAR細胞を表す。
【
図15B】
図15A及び15Bは、共培養の24時間後(
図15A)及び48時間後(
図15B)、GARP及びLAP標的化CAR T細胞による標的SeAx細胞の殺滅を、標的細胞によるルシフェラーゼ発現による測定として、CAR T細胞対標的細胞比の関数として示すグラフである。四角は、CART-GARPを表し、上向き三角は、CART-LAP-H-Lを表し、下向き三角は、CART-LAP-H-L細胞を表し、菱形は、非形質導入CAR細胞を表す。
【
図16A】
図16A~16Cは、CART-EGFR-GARP T細胞の培養から得られる上清のタンパク質成分の存在を示すウエスタンブロットの写真である。
図16A及び16Bは、分子量基準ラダーを含む全ゲルを示す。
図16Cは、
図16Bに示されるゲルの下部領域のより長い曝露に相当し、ここでは、10~15kD間のバンドが矢印を用いて同定されており、ラクダ科抗体の存在が示される。
【
図16B】
図16A~16Cは、CART-EGFR-GARP T細胞の培養から得られる上清のタンパク質成分の存在を示すウエスタンブロットの写真である。
図16A及び16Bは、分子量基準ラダーを含む全ゲルを示す。
図16Cは、
図16Bに示されるゲルの下部領域のより長い曝露に相当し、ここでは、10~15kD間のバンドが矢印を用いて同定されており、ラクダ科抗体の存在が示される。
【
図16C】
図16A~16Cは、CART-EGFR-GARP T細胞の培養から得られる上清のタンパク質成分の存在を示すウエスタンブロットの写真である。
図16A及び16Bは、分子量基準ラダーを含む全ゲルを示す。
図16Cは、
図16Bに示されるゲルの下部領域のより長い曝露に相当し、ここでは、10~15kD間のバンドが矢印を用いて同定されており、ラクダ科抗体の存在が示される。
【
図17】
図17は、CAR及びBiTEをコードする例示的な核酸分子であるCAR-EGFR-BiTE-(EGFR-CD3)の概略図である。
【
図18】
図18は、セツキシマブ由来の抗EGFRドメイン及びブリナツモマブ由来の抗CD3ドメインを有するBiTEの概略図である。
【
図19】
図19は、レーン2におけるBiTEの存在を立証するウエスタンブロット実験を示す写真セットである。
【
図20A】
図20A及び20Bは、CAR-EGFR-BiTE-(EGFR-CD3)が形質導入されたHEK293細胞により発現されたBiTEの、K562細胞により発現されたEGFR(
図20A)及びジャーカット細胞により発現されたCD3(
図20B)への結合を示すフローサイトメトリーグラフのセットである。
【
図20B】
図20A及び20Bは、CAR-EGFR-BiTE-(EGFR-CD3)が形質導入されたHEK293細胞により発現されたBiTEの、K562細胞により発現されたEGFR(
図20A)及びジャーカット細胞により発現されたCD3(
図20B)への結合を示すフローサイトメトリーグラフのセットである。
【
図21A】
図21A及び21Bは、CAR-EGFR-BiTE-(EGFR-CD3)が形質導入されたSupT1細胞により発現されたBiTEの、K562細胞により発現されたEGFR(
図21A)及びCAR-EGFR-BiTE-(EGFR-CD3)を発現するSupT1細胞により発現されたCD3(
図21B)への結合を示すフローサイトメトリーグラフのセットである。
【
図21B】
図21A及び21Bは、CAR-EGFR-BiTE-(EGFR-CD3)が形質導入されたSupT1細胞により発現されたBiTEの、K562細胞により発現されたEGFR(
図21A)及びCAR-EGFR-BiTE-(EGFR-CD3)を発現するSupT1細胞により発現されたCD3(
図21B)への結合を示すフローサイトメトリーグラフのセットである。
【
図22A】
図22A及び22Bは、CAR-EGFR-BiTE-(EGFR-CD3)が形質導入されたND4細胞により発現されたBiTEの、K562細胞により発現されたEGFR(
図21A)及びCAR-EGFR-BiTE-(EGFR-CD3)を発現するND4細胞により発現されたCD3(
図21B)への結合を示すフローサイトメトリーグラフのセットである。
【
図22B】
図22A及び22Bは、CAR-EGFR-BiTE-(EGFR-CD3)が形質導入されたND4細胞により発現されたBiTEの、K562細胞により発現されたEGFR(
図21A)及びCAR-EGFR-BiTE-(EGFR-CD3)を発現するND4細胞により発現されたCD3(
図21B)への結合を示すフローサイトメトリーグラフのセットである。
【
図23】
図23は、CAR-EGFR-BiTE-(EGFR-CD3)が形質導入されたHEK293T細胞により分泌されたBiTEとともにインキュベートされたND4細胞によるU87vIII細胞の殺滅をエフェクター(非形質導入ND4)対標的(U87vIII)細胞比の関数として示すグラフである。四角は、上清がBiTEを含有した場合の実験群を表し、丸は、BiTEを含有しない陰性対照を表す。
【
図24】
図24は、EF1αプロモーターの制御下でのCAR及びNFATプロモーターの制御下でのGFPをコードする例示的な核酸分子の図面である。
【
図25A】
図25A及び25Bは、
図24の構築物が形質導入された細胞によるGFP発現を示すフローサイトメトリーグラフのセットである。赤色ヒストグラムは、非刺激細胞におけるGFP発現を示し;青色ヒストグラムは、PMA及びイオノマイシンで刺激された細胞におけるGFP発現を示し;オレンジ色ヒストグラムは、PEPvIIIでコーティングされた細胞におけるGFP発現を示す。
【
図25B】
図25A及び25Bは、
図24の構築物が形質導入された細胞によるGFP発現を示すフローサイトメトリーグラフのセットである。赤色ヒストグラムは、非刺激細胞におけるGFP発現を示し;青色ヒストグラムは、PMA及びイオノマイシンで刺激された細胞におけるGFP発現を示し;オレンジ色ヒストグラムは、PEPvIIIでコーティングされた細胞におけるGFP発現を示す。
【
図26A】
図26Aは、CAR及び構成的に発現されたBiTEをコードする例示的な核酸分子であるGFP-CAR-EGFR-BiTE-(EGFR-CD3)の概略図である。
【
図26B】
図26Bは、CAR及び構成的に発現されたBiTEをコードする例示的な核酸分子であるGFP-CAR-EGFR-BiTE-(CD19-CD3)の概略図である。
【
図27A】
図27Aは、CAR及び誘導的に発現されたBiTEをコードする例示的な核酸分子であるBiTE-(CD19-CD3)-CAR-EGFRの概略図である。
【
図27B】
図27Bは、CAR及び誘導的に発現されたBiTEをコードする例示的な核酸分子であるBiTE-(CD19-CD3)-CAR-EGFRの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0069】
本発明は、キメラ抗原受容体T細胞(「CAR T細胞」)に基づく治療法に対する改善された手法を提供する。一般に、改善は、抗腫瘍療法における標的化、例えば腫瘍微小環境の標的化の異なる態様に関する。
【0070】
以下にさらに説明される通り、本発明者らは、制御性T細胞(本明細書中では「Treg」とも称される)が、腫瘍(例えば、腫瘍微小環境下)に対する対象の免疫応答の抑制における役割を担い、CAR T細胞を用いて標的にされ得ることを示している。したがって、本発明は、CARがTreg抗原又はマーカー(例えば、GARP、LAP、CTLA4又はCD25;下記も参照されたい)に特異的である場合のCAR T細胞を提供する。他の例では、本発明は、1つ以上のTreg抗原又はマーカー(例えば、GARP、LAP、CTLA4及びCD25;下記も参照されたい)に対する抗体(例えば、一本鎖抗体、単一ドメイン抗体(例えば、ラクダ科抗体)又は二重特異性抗体(例えば、二重特異性T細胞誘導体))を分泌するCAR T細胞を提供する。Tregの標的化に加えて、本発明は、他の治療物質(例えば、抗体及び関連分子)を腫瘍に送達するためのCAR T細胞及び関連の方法を提供する。一例では、脳腫瘍(例えば、神経膠芽腫)を標的にするため、EGFRvIIIに特異的なCARを有するCAR T細胞が用いられる。かかるCAR T細胞は、治療用分子、例えば抗体試薬(例えば、一本鎖抗体、単一ドメイン抗体(例えば、ラクダ科抗体)又は二重特異性抗体(例えば、二重特異性T細胞誘導体))をこれらの腫瘍に送達するためにも用いられ得る。これらの方法は、抗体が通常通過しない血液脳関門に対して、事実上、脳への抗体投与を容易にするために特に有利である。これらの手法並びに関連の方法及び組成物は、以下の通りにさらに説明される。
【0071】
キメラ抗原受容体
本明細書に記載の技術は、免疫療法における使用を意図した改善されたCARを提供する。以下、CAR及び様々な改善について論じる。
【0072】
用語「キメラ抗原受容体」又は「CAR」又は「CARs」は、本明細書で用いられるとき、リガンド又は抗原特異性をT細胞(例えば、ナイーブT細胞、セントラルメモリーT細胞、エフェクターメモリーT細胞又はそれらの組み合わせ)に移植する、改変されたT細胞受容体を指す。CARは、人工的T細胞受容体、キメラT細胞受容体又はキメラ免疫受容体としても知られる。
【0073】
CARは、細胞の表面上に発現される標的、例えばポリペプチドに特異的に結合するキメラ細胞外標的結合ドメインを、T細胞受容体分子の膜貫通ドメイン及び細胞内ドメインを含む構築物に対するT細胞応答における標的になるように配置する。一実施形態では、キメラ細胞外標的結合ドメインは、T細胞応答における標的になるように細胞上に発現される抗原に特異的に結合する抗体の抗原結合ドメインを含む。CARの細胞内シグナル伝達ドメインの特性は、当該技術分野で公知の通り、また本明細書で開示される通り、変化し得るが、キメラ標的/抗原結合ドメインは、キメラ標的/抗原結合ドメインが標的細胞の表面上の標的/抗原に結合するとき、受容体をシグナル伝達活性化に対して感受性にする。
【0074】
細胞内シグナル伝達ドメインに関して、いわゆる「第一世代」CARは、抗原結合時にCD3ゼータ(CD3ζ)シグナルを単独で提供するものを含む。いわゆる「第二世代」CARは、同時刺激(例えば、CD28又はCD137)及び活性化(CD3ζ)ドメインの両方を提供するものを含み、またいわゆる「第三世代」CARは、複数の同時刺激(例えば、CD28及びCD137)ドメイン及び活性化ドメイン(例えば、CD3ζ)を提供するものを含む。様々な実施形態では、CARは、標的/抗原に対して高い親和性又は結合活性を有するように選択され、例えば、抗体由来の標的又は抗原結合ドメインは、一般に、天然に存在するT細胞受容体の場合よりも標的抗原に対する高い親和性及び/又は結合活性を有することになる。この特性は、抗体についての選択を可能にする高い特異性と組み合わせて、CAR T細胞により高度に特異的なT細胞標的化をもたらす。
【0075】
本明細書で用いられるとき、「CAR T細胞」又は「CAR-T」は、CARを発現するT細胞を指す。T細胞内で発現されるとき、CARは、T細胞の特異性及び反応性を非MHC制限様式で選択された標的の方へ再誘導し、モノクローナル抗体の抗原結合特性を利用する能力を有する。非MHC制限抗原認識は、CARを発現するT細胞に、抗原プロセシングと独立に抗原を認識し、それにより腫瘍エスケープの主要な機構をバイパスする能力を与える。
【0076】
本明細書で用いられるとき、用語「細胞外標的結合ドメイン」は、標的への結合を促進するのに十分である、細胞の外側に見出されるポリペプチドを指す。細胞外標的結合ドメインは、その結合パートナー、すなわち標的に特異的に結合することになる。非限定例として、細胞外標的結合ドメインは、同族結合パートナータンパク質を認識し、それと結合する、抗体若しくは抗体試薬の抗原結合ドメイン又はリガンドを含み得る。これに関連して、リガンドは、タンパク質及び/又は受容体の一部に特異的に結合する分子である。本明細書に記載の方法及び組成物において有用なリガンドの同族結合パートナーは、一般に細胞の表面上に見出され得る。リガンド:同族パートナー結合は、リガンドを有する受容体の改変をもたらすか、又は生理学的応答を活性化、例えばシグナル伝達経路を活性化する可能性がある。一実施形態では、リガンドは、ゲノムに対して非天然であり得る。任意選択的に、リガンドは、少なくとも2つの種にわたる保存された機能を有する。
【0077】
抗体試薬
様々な実施形態では、本明細書に記載のCARは、抗体試薬又はその抗原結合ドメインを細胞外標的結合ドメインとして含む。
【0078】
本明細書で用いられるとき、用語「抗体試薬」は、少なくとも1つの免疫グロブリン可変ドメイン又は免疫グロブリン可変ドメイン配列を含み、且つ所与の抗原に特異的に結合するポリペプチドを指す。抗体試薬は、抗体又は抗体の抗原結合ドメインを含むポリペプチドを含み得る。態様のいずれかのいくつかの実施形態では、抗体試薬は、モノクローナル抗体又はモノクローナル抗体の抗原結合ドメインを含むポリペプチドを含み得る。例えば、抗体は、重(H)鎖可変領域(本明細書でVHと略記)及び軽(L)鎖可変領域(本明細書でVLと略記)を含み得る。別の例では、抗体は、2つの重(H)鎖可変領域及び2つの軽(L)鎖可変領域を含む。用語「抗体試薬」は、抗体の抗原結合断片(例えば、一本鎖抗体、Fab及びsFab断片、F(ab’)2、Fd断片、Fv断片、scFv、CDRs及びドメイン抗体(dAb)断片(例えば、de Wildt et al.,Eur.J.Immunol.26(3):629-639,1996を参照されたい;その全体が参照により本明細書中に援用される))並びに完全抗体を包含する。抗体は、IgA、IgG、IgE、IgD又はIgM(並びにサブタイプ及びそれらの組み合わせ)の構造的特徴を有し得る。抗体は、マウス、ウサギ、ブタ、ラット及び霊長類(ヒト及び非ヒト霊長類)を含む任意の供給源に由来し、且つ霊長類化抗体であり得る。抗体は、ミディボディ、ヒト化抗体、キメラ抗体なども含む。完全ヒト抗体結合ドメインは、当業者に公知の方法を用いて、例えばファージディスプレイライブラリーから選択され得る。さらに、抗体試薬は、単一ドメイン抗体、例えばラクダ科抗体を含む。
【0079】
VH及びVL領域は、「フレームワーク領域」(「FR」)と称されるより保存された領域が散在した「相補性決定領域」(「CDR」)と称される超可変性の領域にさらに細分化され得る。フレームワーク領域及びCDRの範囲は、以前に定義されている(Kabat,E.A.et al.(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest,Fifth Edition,U.S.Department of Health and Human Services,NIH Publication No.91-3242及びChothia et al.,J.Mol.Biol.196:901-917,1987を参照されたい;その各々は、その全体が参照により本明細書中に援用される)。VH及びVLの各々は、典型的には、アミノ末端からカルボキシ末端にかけて以下の順序:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4で配列された、3つのCDRと4つのFRとから構成される。
【0080】
一実施形態では、抗体又は抗体試薬は、ヒト抗体又は抗体試薬でない(すなわち抗体又は抗体試薬はマウスである)が、ヒト化されている。「ヒト化抗体又は抗体試薬」は、ヒトにおいて天然に産生された抗体又は抗体試薬の変異体に対するその類似性を高めるためにタンパク質配列レベルで修飾されている非ヒト抗体又は抗体試薬を指す。抗体をヒト化するための一手法では、マウス又は他の非ヒトCDRのヒト抗体フレームワークへの移植が利用される。
【0081】
一実施形態では、CARの細胞外標的結合ドメインは、フレキシブルリンカーペプチドを介して、抗体、一般にモノクローナル抗体のVH及びVLドメインを融合することによって作出される一本鎖Fv(scFv)断片を含むか又は本質的にそれからなる。様々な実施形態では、scFvは、膜貫通ドメイン及びT細胞受容体細胞内シグナル伝達ドメイン、例えば本明細書に記載のような改変された細胞内シグナル伝達ドメインに融合される。別の実施形態では、CARの細胞外標的結合ドメインは、ラクダ科抗体を含む。
【0082】
それらを選択し、クローン化するための抗体結合ドメイン及び方法は、当業者に周知である。一実施形態では、抗体試薬は、抗GARP抗体試薬であり、配列番号3若しくは25の配列を含むか、又は配列番号3若しくは25の配列に対して少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%若しくはそれを超える配列同一性を有する配列を含む。別の実施形態では、抗体試薬は、抗LAP抗体試薬であり、配列番号9若しくは15の配列を含むか、又は配列番号9若しくは15の配列に対して少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%若しくはそれを超える配列同一性を有する配列を含む。別の実施形態では、抗体試薬は、抗EGFR又は抗EGFRvIII抗体試薬であり、配列番号21、27、33、36、42、45、55、57若しくは65の配列を含むか、又は配列番号21、27、33、36、42、45、55、57若しくは65の配列に対して少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%若しくはそれを超える配列同一性を有する配列を含む。別の実施形態では、抗体試薬は、抗CD19抗体試薬であり、配列番号51若しくは63の配列を含むか、又は配列番号51若しくは63の配列に対して少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%若しくはそれを超える配列同一性を有する配列を含む。別の実施形態では、抗体試薬は、抗CD3抗体試薬であり、配列番号34、43、52、56若しくは64の配列を含むか、又は配列番号34、43、52、56若しくは64の配列に対して少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%若しくはそれを超える配列同一性を有する配列を含む。様々な例では、抗体は、C225、3C10、セツキシマブ及び2173から選択され得る。
【0083】
一実施形態では、本明細書に記載の技術において有用なCARは、少なくとも2つの抗原特異的標的化領域、細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン及び細胞内シグナル伝達ドメインを含む。かかる実施形態では、2つ以上の抗原特異的標的化領域は、少なくとも2つの異なる抗原を標的にし、タンデムに配列され、リンカー配列によって分離され得る。別の実施形態では、CARは、二重特異性CARである。二重特異性CARは、2つの異なる抗原に特異的である。
【0084】
標的/抗原
任意の細胞表面部分は、CARにより標的にされ得る。多くの場合、標的は、T細胞応答について標的にすることが所望される細胞上で差次的に又は優先的に発現され得る細胞表面ポリペプチドとなる。Tregを標的にするため、抗体試薬は、例えば、反復優位糖タンパク質A(GARP)、潜在関連ペプチド(LAP)、CD25、CTLA-4、ICOS、TNFR2、GITR、OX40、4-1BB及びLAG-3に対して標的にされ得る。腫瘍又は癌細胞を標的にするため、本明細書に記載の通り、抗体ドメインは、例えば、EGFR又はEGFRvIIIに対して標的にされ得る。腫瘍に対して特異的である腫瘍抗原又は腫瘍関連抗原を標的にすることにより、腫瘍細胞を標的にする一方、非腫瘍細胞又は組織に対するコラテラルダメージを回避するか又は少なくとも制限するための手段が得られ得る。さらなる腫瘍抗原、腫瘍関連抗原又は目的の他の抗原の非限定例として、CD19、CD37、BCMA(腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー17(TNFRSF17);NCBI遺伝子ID:608;NCBI参照配列 NP_001183.2)及びmRNA(例えば、NCBI参照配列NM_001192.2)、CEA、未熟ラミニン受容体、TAG-72、HPV E6及びE7、BING-4、カルシウム活性化塩化物チャネル2、サイクリンB1、9D7、Ep-CAM、EphA3、her2/neu、テロメラーゼ、メソテリン、SAP-1、サバイビン、BAGEファミリー、CAGEファミリー、GAGEファミリー、MAGEファミリー、SAGEファミリー、XAGEファミリー、NY-ESO-1/LAGE-1、PRAME、SSX-2、Melan-A/MART-1、gp100/pmel17、チロシナーゼ、TRP-1/-2、MC1R、BRCA1/2、CDK4、MART-2、p53、Ras、MUC1、TGF-βRII、IL-15、IL13Ra2及びCSF1Rが挙げられる。
【0085】
膜貫通ドメイン
本明細書に記載のような各CARは、細胞外標的結合ドメインを細胞内シグナル伝達ドメインに連結する膜貫通ドメインを含む。
【0086】
本明細書で用いられるとき、「膜貫通ドメイン」(TMドメイン)は、細胞の原形質膜を横切る、CARの一般的に疎水性の領域を指す。TMドメインは、膜貫通タンパク質(例えば、I型膜貫通タンパク質又は他の膜貫通タンパク質)、人工的疎水性配列又はそれらの組み合わせの膜貫通領域又はその断片であり得る。具体例が本明細書中で提示され、実施例中で用いられる一方、他の膜貫通ドメインは、当業者にとって明白なものとなり、技術の代替的実施形態に関連して用いることができる。選択された膜貫通領域又はその断片であれば、好ましくはCARの意図される機能に干渉しないであろう。「その断片」は、タンパク質又はポリペプチドの膜貫通ドメインに関連して用いられるとき、タンパク質を細胞表面に固着又は付着させるのに十分である膜貫通ドメインの一部を指す。
【0087】
一実施形態では、CARの膜貫通ドメイン又はその断片は、CD8の膜貫通ドメイン(例えば、配列番号4、10、16、22、28、37、46、58若しくは66のいずれか1つ又はその変異体)に由来するか又はそれを含む。代替的実施形態では、本明細書に記載のCARの膜貫通ドメイン又はその断片は、T細胞受容体のα、β若しくはζ鎖、CD28、CD3ε、CD45、CD4、CD5、CD8、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137、CD154、KIRDS2、OX40、CD2、CD27、LFA-1(CDl la、CD18)、ICOS(CD278)、4-1BB(CD137)、4-1BBL、GITR、CD40、BAFFR、HVEM(LIGHTR)、SLAMF7、NKp80(KLRFI)、CD160、CD19、IL2Rβ、IL2Rγ、IL7Ra、ITGA1、VLA1、CD49a、ITGA4、IA4、CD49D、ITGA6、VLA-6、CD49f、ITGAD、CDl ld、ITGAE、CD103、ITGAL、CDl la、LFA-1、ITGAM、CDl lb、ITGAX、CDl lc、ITGB1、CD29、ITGB2、CD18、LFA-1、ITGB7、TNFR2、DNAM1(CD226)、SLAMF4(CD244、2B4)、CD84、CD96(Tactile)、CEACAM1、CRT AM、Ly9(CD229)、CD160(BY55)、PSGL1、CD100(SEMA4D)、SLAMF6(NTB-A、Lyl08)、SLAM(SLAMF1、CD150、IPO-3)、BLAME(SLAMF8)、SELPLG(CD162)、LTBR、PAG/Cbp、NKp44、NKp30、NKp46、NKG2D及び/又はNKG2Cの膜貫通ドメインから選択される膜貫通ドメインを含む。
【0088】
CD8は、細胞傷害性Tリンパ球の細胞表面上に優先的に見出される抗原である。CD8は、免疫系内部の細胞-細胞相互作用を媒介し、T細胞共受容体として作用する。CD8は、α(CD8α)及びβ(CD8β)鎖から構成される。CD8a配列は、いくつかの種において公知であり、例えばヒトCD8a、(NCBI Gene ID:925)ポリペプチド(例えば、NCBI Ref Seq NP_001139345.1)及びmRNA(例えば、NCBI Ref Seq NM_000002.12)が挙げられる。CD8は、天然に存在する変異体、分子及びその対立遺伝子を含むヒトCD8を指し得る。態様のいずれかのいくつかの実施形態では、例えば獣医学適用では、CD8は、例えば、イヌ、ネコ、雌ウシ、ウマ、ブタなどのCD8を指し得る。ヒトCD8のホモログ及び/又はオルソログは、かかる種について、当業者が例えばNCBIオルソログ探索機能を用いるか、又は所与の種における利用可能な配列データを参照CD8配列に類似した配列について探索することにより容易に同定される。
【0089】
4-1BBLは、TNFスーパーファミリーに属するタイプ2膜貫通糖タンパク質である。4-1BBLは、活性化Tリンパ球上に発現される。4-1BBL配列は、いくつかの種において公知であり、例えばTNFSF9としても公知のヒト4-1BBL(NCBI Gene ID:8744)ポリペプチド(例えば、NCBI Ref Seq NP_003802.1)及びmRNA(例えば、NCBI Ref Seq NM_003811.3)が挙げられる。4-1BBLは、天然に存在する変異体、分子及びその対立遺伝子を含むヒト4-1BBLを指し得る。態様のいずれかのいくつかの実施形態では、例えば獣医学適用では、4-1BBLは、例えば、イヌ、ネコ、雌ウシ、ウマ、ブタなどの4-1BBLを指し得る。ヒト4-1BBLのホモログ及び/又はオルソログは、かかる種について、当業者が例えばNCBIオルソログ探索機能を用いるか、又は所与の種における利用可能な配列データを参照4-1BBL配列に類似した配列について探索することにより容易に同定される。
【0090】
同時刺激ドメイン
本明細書に記載の各CARは、任意選択的に、1つ以上の同時刺激分子又は同時刺激ドメインの細胞内ドメインを含む。本明細書で用いられるとき、用語「同時刺激ドメイン」は、同時刺激分子の細胞内シグナル伝達ドメインを指す。同時刺激分子は、抗原への結合時、Tリンパ球の効率的な活性化及び機能にとって要求される第2のシグナルをもたらす抗原受容体又はFc受容体以外の細胞表面分子である。一例では、4-1BB細胞内ドメイン(ICD)を用いることができる(例えば、下記及び配列番号5、11、17、23、29、38、47、59、67又はその変異体を参照されたい)。かかる同時刺激分子のさらなる実例として、CARD11、CD2、CD7、CD27、CD28、CD30、CD40、CD54(ICAM)、CD83、CD134(OX40)、CD137(4-1BB)、CD150(SLAMF1)、CD152(CTLA4)、CD223(LAG3)、CD270(HVEM)、CD273(PD-L2)、CD274(PD-L1)、CD278(ICOS)、DAP10、LAT、NKD2C SLP76、TRIM及びZAP70が挙げられる。一実施形態では、細胞内ドメインは、4-1BBの細胞内ドメインである。4-1BB(CD137;TNFRS9)は、活性化誘導同時刺激分子であり、且つ免疫応答の重要な制御分子である。
【0091】
細胞内シグナル伝達ドメイン
本明細書に記載のようなCARは、細胞内シグナル伝達ドメインを含む。「細胞内シグナル伝達ドメイン」は、標的抗原への有効なCARの結合のメッセージを免疫エフェクター細胞の内部に形質導入し、エフェクター細胞機能を誘導すること、例えば活性化、サイトカイン産生、増殖及び細胞傷害性活性、例えば細胞傷害性因子のCAR結合標的細胞への放出又は細胞外CARドメインへの抗原結合後に誘発される他の細胞応答などに関与するCARポリペプチドの一部を指す。様々な例では、細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3ζから得られる(例えば、下記及び配列番号6、12、18、24、30、39、48、60、68又はその変異体を参照されたい)。技術において特に用いられるITAM含有細胞内シグナル伝達ドメインの追加的な非限定例として、TCRζ、FcRγ、FcRβ、CD3γ、CD3θ、CD3δ、CD3ε、CD3ζ、CD22、CD79a、CD79b及びCD66dに由来するものが挙げられる。
【0092】
CD3は、適切な同時刺激と同時に会合されるとき(例えば、同時刺激分子の結合)、Tリンパ球活性化を促進するT細胞共受容体である。CD3複合体は、4つの異なる鎖からなり;哺乳動物CD3は、CD3γ鎖、CD3δ鎖及び2つのCD3ε鎖からなる。これらの鎖は、T細胞受容体(TCR)及びCD3ζとして知られる分子と会合し、Tリンパ球における活性化シグナルを生成する。完全TCR複合体は、TCR、CD3ζ及び完全CD3複合体を含む。
【0093】
任意の態様のいくつかの実施形態では、本明細書に記載のCARポリペプチドは、CD3ゼータ(CD3ζ)からの免疫受容体チロシンに基づく活性化モチーフすなわちITAMを含む細胞内シグナル伝達ドメインを含む。任意の態様のいくつかの実施形態では、ITAMは、CD3ζのITAMの3つのモチーフ(ITAM3)を含む。任意の態様のいくつかの実施形態では、CD3ζのITAMの3つのモチーフは、突然変異されないことから、天然又は野生型配列を含む。いくつかの実施形態では、CD3ζ配列は、本明細書で提供される配列に示される通り、CD3ζの配列を含む。
【0094】
本明細書に記載のような個別のCAR及び他の構築物成分は、当業者により判定可能であるように、相互に用いられて、本明細書に記載の様々な構築物の内外で交換され得る。これらの各成分は、本明細書に示される対応する配列のいずれか又はその変異体を含むか又はそれらからなり得る。
【0095】
CAR及びCAR T細胞のより詳細な説明は、Maus et al.,Blood 123:2624-2635,2014;Reardon et al.,Neuro-Oncology 16:1441-1458,2014;Hoyos et al.,Haematologica 97:1622,2012;Byrd et al.,J.Clin.Oncol.32:3039-3047,2014;Maher et al.,Cancer Res 69:4559-4562,2009;及びTamada et al.,Clin.Cancer Res.18:6436-6445,2012(これらの各々は、その全体が参照により本明細書中に援用される)に見出すことができる。
【0096】
一実施形態では、CARは、リンカードメインをさらに含む。本明細書で用いられるとき、「リンカードメイン」は、本明細書に記載のようにCARのドメイン/領域のいずれかを一緒に連結する、約2~100アミノ酸長のオリゴ又はポリペプチド領域を指す。いくつかの実施形態では、リンカーは、隣接タンパク質ドメインが相互に関連して自由に動くように、グリシン及びセリンなどの可動性残基を含み得るか又はそれらから構成され得る。2つの隣接ドメインが立体的に相互に干渉しないことを保証することが望ましいとき、より長いリンカーを用い得る。リンカーは、切断可能であっても切断不能であり得る。切断可能なリンカーの例として、2Aリンカー(例えば、T2A)、2A様リンカー又はその機能的等価物及びそれらの組み合わせが挙げられる。様々な例では、本明細書に示されるような配列を有するリンカー又はその変異体が用いられる。特定の位置における構築物中の特定のリンカーの表示は、そのリンカーのみがそこで使用可能であることを意味しないことが理解されるべきである。むしろ、当業者によって判定可能であるように、異なるリンカー配列(例えば、P2A及びT2A)は、(例えば、本発明の構築物との関連では)相互に交換可能である。一実施形態では、リンカー領域は、ゾセア・アシグナ(Thosea asigna)ウイルス由来のT2Aである。この技術において使用可能なリンカーの非限定例として、T2A、P2A、E2A、BmCPV2A及びBmIFV2Aが挙げられる。これらなどのリンカーは、ポリタンパク質、例えば下記のものとの関連で使用可能である。例えば、それらは、ポリタンパク質のCAR成分をポリタンパク質の治療物質(例えば、抗体、例えばscFv、単一ドメイン抗体(例えば、ラクダ科抗体)又は二重特異性抗体(例えば、BiTE))成分から分離するために使用可能である(以下を参照されたい)。
【0097】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のようなCARは、任意選択的に、例えば非浸潤性イメージング(例えば、陽電子放射断層撮影PETスキャン)を可能にするため、レポーター分子をさらに含む。レポーター分子を含む二重特異性CARでは、第1の細胞外結合ドメイン及び第2の細胞外結合ドメインは、異なる又は同じレポーター分子を含み得る。二重特異性CAR T細胞では、第1のCAR及び第2のCARは、異なる又は同じレポーター分子を発現し得る。別の実施形態では、本明細書に記載のようなCARは、単独で又は基質又は化学物質(例えば、9-[4-[18F]フルオロ-3-(ヒドロキシメチル)ブチル]グアニン([18F]FHBG))と組み合わせて画像化可能であるレポーター分子(例えば、ハイグロマイシンホスホトランスフェラーゼ(hph))をさらに含む。別の実施形態では、本明細書に記載のようなCARは、非浸潤性技術を用いて容易に画像化可能であるナノ粒子(例えば、64Cu2+で官能化された金ナノ粒子(GNP))をさらに含む。非浸潤性イメージングのためのCAR T細胞の標識は、例えば、Bhatnagar et al.,Integr.Biol.(Camb).5(1):231-238,2013及びKeu et al.,Sci.Transl.Med.18;9(373)、2017(それらの全体が参照により本明細書中に援用される)にレビューされている。
【0098】
GFP及びmCherryは、T細胞上に発現されるCAR(例えば、CAR T細胞)を画像化するのに有用な蛍光タグとして本明細書で示される。この目的のための蛍光タグとして、当該技術分野で公知の本質的に任意の蛍光タンパク質が使用可能であることが想定されている。臨床用途において、CARは、蛍光タグ又は蛍光タンパク質を含む必要はない。したがって、本明細書に提供される特定の構築物の各例において、構築物中に存在する任意のマーカーは、除去され得る。本発明は、マーカーの有無にかかわらず構築物を含む。したがって、特定の構築物が本明細書で参照されるとき、任意のマーカー又はタグ(例えば、ヒスチジンタグを含む)の有無にかかわらず、それは、本発明中に含まれているものとして検討され得る。
【0099】
一実施形態では、CARポリペプチド配列は、配列番号1、7若しくは13又は配列番号21~24、27~30、36~39、45~48、57~60若しくは65~68の組み合わせから選択される配列の、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%又はそれを超える配列同一性を有する配列に対応するか又はそれを含む。当業者によって判定可能であるように、これらのCARの様々な機能的に類似又は対応する成分は、相互に並びに当該技術分野で公知であるか又は本明細書中に列挙される他の類似する又は機能的に対応する成分と交換又は置換され得る。
【0100】
CAR T細胞によって送達される抗体及び関連分子
上記の通り、本発明のCAR T細胞は、任意選択的に、抗体試薬(又は他の治療用分子、例えばサイトカイン)を腫瘍、例えば腫瘍微小環境に送達するために使用可能である。様々な実施形態では、抗体試薬は、CARと同じ核酸分子によってコードされ、したがって細胞(例えば、T細胞)の形質導入を容易にし、CAR及び抗体試薬の両方を発現する。かかる例では、抗体試薬は、例えば、それが切断可能なリンカー配列(例えば、2Aリンカー、例えばP2A又はT2Aなど;上記を参照されたい)によってCAR(且つ任意選択的に他のタンパク質、例えばマーカー)から分離されるように発現され得る。抗体試薬は、CARと同じプロモーターの制御下で(例えば、EF1αプロモーターにより)発現され得るとともに、構成的に発現され得る。他の例では、抗体試薬は、誘導性プロモーター、例えばT細胞活性化時に発現されるプロモーター(例えば、NFATプロモーター)の制御下で発現される。かかる誘導性プロモーターは、例えば、抗体がT細胞活性化時に限り、したがって例えばCAR T細胞が腫瘍微小環境内に含まれるときに限り(その場所では抗体産生を制限させるのに有利であることがある)、発現されることを保証するために使用可能である。当該技術分野で理解されるように、本発明中の様々なベクター設計では、CARコード配列は、抗体試薬コード配列に対して5’又は3’側であり得る。
【0101】
様々な例では、(例えば、CARと同じ核酸分子からの)CAR T細胞内で発現される抗体は、本明細書に記載のような一本鎖抗体又は単一ドメイン抗体(scFV又はラクダ科)である。一本鎖抗体の場合、鎖は、L-H又はH-Lの順序であり得、且つ任意選択的にリンカー(例えば、グリシンに基づくリンカー)により互いから分離され得る。
【0102】
様々な例では、抗体は、例えば、二重特異性T細胞誘導体(BiTE)を含む二重特異性抗体である。かかる分子は、T細胞(例えば、CD3に結合することによる)とともに腫瘍抗原(例えば、EGFR、EGFRvIII又はCD19;上記も参照されたい)を標的にすることができ、また例えば腫瘍微小環境下でT細胞応答を増強するために使用可能である。BiTEの2つの成分は、任意選択的に、リンカー(例えば、グリシンに基づくリンカー)によって互いから分離され得る。
【0103】
抗体試薬は、例えば、腫瘍抗原又はTreg抗原、例えば本明細書に記載のもの又は他の抗原(例えば、EGFR、EGFRvIII、CD19、CTLA4、CD25、GARP、LAP、IL-15、IL13Ra2、CSF1Rなど)に対して標的にされ得る。
【0104】
任意選択的に、本明細書に記載のように抗体試薬を送達することに加えて、本発明のCAR T細胞は、例えば、サイトカイン及び毒素を含む他の治療用分子を送達するために使用可能である。
【0105】
本明細書に記載の通り、CARの他の成分及び関連の構築物(又はその変異体)、例えばIgκ(例えば、配列番号32、41、50、54、62又はその変異体)、CD8リーダー(例えば、配列番号2、14、20又はその変異体)及び関連の配列は、当業者に明白となるように、本発明の構築物の作製における使用を意図して選択され得る。
【0106】
細胞及び治療
本明細書に記載の技術の一態様は、本明細書に記載のCARポリペプチドのいずれかを(任意選択的に別の治療用分子、例えば抗体試薬(例えば、scFv、ラクダ科抗体又はBiTE)又はサイトカインと一緒に)、又は本明細書に記載のCARポリペプチドのいずれかをコードする核酸を(任意選択的に別の治療用分子、例えば抗体試薬(例えば、scFv、ラクダ科抗体又はサイトカイン)と一緒に含む哺乳動物細胞に関する。一実施形態では、哺乳動物細胞は、抗体、抗体試薬、その抗原結合部分、本明細書に記載のCARのいずれか若しくはサイトカイン又はかかる抗体、抗体試薬、その抗原結合部分、本明細書に記載のCARのいずれか若しくはサイトカインをコードする核酸を含む。哺乳動物細胞又は組織は、ヒト、霊長類、ハムスター、ウサギ、齧歯類、雌ウシ、ブタ、ヒツジ、ウマ、ヤギ、イヌ又はネコ由来であり得るが、任意の他の哺乳動物細胞を用い得る。任意の態様の好ましい実施形態では、哺乳動物細胞はヒトである。
【0107】
一実施形態では、細胞はT細胞である。任意の態様の代替的実施形態では、細胞は免疫細胞である。本明細書で用いられるとき、「免疫細胞」は、免疫応答における役割を果たす細胞を指す。免疫細胞は、造血由来であり、リンパ球、例えばB細胞及びT細胞;ナチュラルキラー細胞;骨髄系細胞、例えば単球、マクロファージ、好酸球、マスト細胞、好塩基球及び顆粒球を含む。いくつかの実施形態では、細胞は、T細胞;NK細胞;NKT細胞;リンパ球、例えばB細胞及びT細胞;並びに骨髄系細胞、例えば単球、マクロファージ、好酸球、マスト細胞、好塩基球及び顆粒球である。
【0108】
一実施形態では、細胞は、癌、形質細胞障害又は自己免疫疾患を有する又は有すると診断された個体から得られる。
【0109】
「癌」は、本明細書で用いられるとき、特有の形質、正常な細胞制御の減少が、制御されない増殖、分化の欠如、局所組織浸潤及び転移をもたらす場合の細胞の過剰増殖を指す可能性があり、神経膠芽腫、グリオーマ、白血病、リンパ腫、多発性骨髄腫又は固形腫瘍であり得る。白血病の非限定例として、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、急性リンパ球性白血病(ALL)及び慢性リンパ性白血病(CLL)が挙げられる。一実施形態では、癌は、ALL又はCLLである。リンパ腫の非限定例として、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、濾胞性リンパ腫、慢性リンパ性白血病(CLL)、小リンパ球性リンパ腫(SLL)、マントル細胞リンパ腫(MCL)、辺縁帯リンパ腫、バーキットリンパ腫、ヘアリー細胞白血病(HCL)及びT細胞リンパ腫(例えば、皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)及び未分化大細胞リンパ腫(ALCL)を含む末梢性T細胞リンパ腫(PTCL))が挙げられる。一実施形態では、癌は、DLBCL又は濾胞性リンパ腫である。固形腫瘍の非限定例として、副腎皮質腫瘍、胞状軟部肉腫、癌、軟骨肉腫、結腸直腸癌、類腱腫、線維形成性小円形細胞腫瘍、内分泌腫瘍、卵黄嚢腫瘍、類上皮血管内皮腫、ユーイング肉腫、胚細胞腫瘍(固形腫瘍)、骨及び軟部組織の巨細胞腫、肝芽腫、肝細胞癌、メラノーマ、腎腫瘍、神経芽細胞腫、非横紋筋肉腫軟部肉腫(NRSTS)、骨肉腫、傍脊椎肉腫、腎細胞癌、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、滑膜肉腫及びウィルムス腫瘍が挙げられる。固形腫瘍は、骨、筋肉又は臓器に見出すことができ、肉腫又は癌であり得る。本明細書に記載の技術の任意の態様が、本願中に列挙されない癌を含む癌のあらゆるタイプを治療するのに使用可能であると考察される。本明細書で用いられるとき、用語「腫瘍」は、例えば、悪性タイプ又は良性タイプの細胞又は組織の異常な増殖を指す。
【0110】
本明細書で用いられるとき、「自己免疫疾患又は障害」は、自らの免疫系が外来細胞と健常細胞とを識別できないことによって特徴付けられる。この結果、自らの免疫系がプログラム細胞死として自らの健常細胞を標的にする。自己免疫疾患又は障害の非限定例として、炎症性関節炎、1型糖尿病、多発性硬化症、乾癬、炎症性腸疾患、SLE及び血管炎、アレルギー性炎症、例えばアレルギー性喘息、アトピー性皮膚炎及び接触過敏症が挙げられる。自己免疫関連疾患又は障害の他の例として、限定されるものとして解釈されるべきでないが、関節リウマチ、多発性硬化症(MS)、全身性エリテマトーデス、グレーブス病(過活動性甲状腺)、橋本甲状腺炎(低活動性甲状腺)、セリアック病、クローン病及び潰瘍性大腸炎、ギラン・バレー症候群、原発性胆汁性硬化症/硬変、硬化性胆管炎、自己免疫性肝炎、レイノー現象、強皮症、シェーグレン症候群、グッドパスツール病、ウェゲナー肉芽腫症、リウマチ性多発筋痛症、側頭動脈炎/巨細胞性動脈炎、慢性疲労症候群CFS)、乾癬、自己免疫アジソン病、強直性脊椎炎、急性散在性脳脊髄炎、抗リン脂質抗体症候群、再生不良性貧血、特発性血小板減少性紫斑病、重症筋無力症、眼球クローヌス・ミオクローヌス症候群、視神経炎、オード甲状腺炎、天疱瘡、悪性貧血、犬の多発性関節炎、ライター症候群、高安動脈炎、温式自己免疫性溶血性貧血、ウェゲナー肉芽腫症及び線維筋痛症(FM)が挙げられる。
【0111】
一実施形態では、哺乳動物細胞は、外来物質(例えば、ウイルス又は細菌細胞)に対処する自らの能力を阻害する、免疫系における異常に低い活性又は免疫不全障害をもたらす免疫系障害を有する患者において得られる。
【0112】
形質細胞は、感染に対処するために必要な抗体を産生及び放出するように機能するBリンパ球から産生する白血球である。本明細書で用いられるとき、「形質細胞障害又は疾患」は、形質細胞の異常な増殖によって特徴付けられる。異常な形質細胞は、健常な形質細胞を「押し出す」能力があり、それにより外来性対象、例えばウイルス又は細菌細胞に対処する能力の低下をもたらす。形質細胞障害の非限定例として、アミロイドーシス、ワルデンストレームマクログロブリン血症、骨硬化性骨髄腫(POEMS症候群)、意義不明の単クローン性免疫グロブリン血症(MGUS)及び形質細胞骨髄腫が挙げられる。
【0113】
T細胞は、当該技術分野で公知の標準的技術を用いて対象から得ることができる。例えば、T細胞は、ドナー又は患者から採取される末梢血から単離され得る。T細胞は、哺乳動物から単離され得る。好ましくは、T細胞は、ヒトから単離される。
【0114】
細胞、例えばT細胞は、本明細書に記載のCARポリペプチドのいずれか(本明細書に記載のように、抗体試薬又はサイトカインに切断可能に連結されたCARポリペプチドを含む)、又は本明細書に記載のCARポリペプチドのいずれか(且つ任意選択的に、さらに遺伝的にコードされた抗体試薬又はサイトカイン)をコードする核酸を含むように改変され得る。一実施形態では、本明細書に記載のCARポリペプチドのいずれかは、(任意選択的に、本明細書に記載のような抗体試薬又はサイトカインと一緒に)レンチウイルスベクターから発現される。レンチウイルスベクターは、感染における標準技術を用いて、CARポリペプチド(且つ任意選択的にまた抗体試薬又はサイトカイン)を細胞内で発現させるために用いられる。
【0115】
レトロウイルス、例えばレンチウイルスは、遺伝子、すなわち目的のキメラ遺伝子をコードする核酸配列を送達するための便宜的なプラットフォームを提供する。選択された核酸配列は、当該技術分野で公知の技術を用いて、ベクターに挿入され、レトロウイルス粒子にパッケージングされ得る。次に、組換えウイルスは、例えば、インビトロ又は生体外で単離され、細胞に送達され得る。レトロウイルス系は、当該技術分野で周知であり、例えば米国特許第5,219,740号明細書;Kurth and Bannert(2010)“Retroviruses:Molecular Biology,Genomics and Pathogenesis”Calster Academic Press(ISBN:978-1-90455-55-4);及びHu et al.,Pharmacological Reviews 52:493-512,2000(これらは、それぞれそれらの全体が参照により本明細書中に援用される)に記載されている。効率的なDNA送達のためのレンチウイルス系は、OriGene;Rockville,MDから購入することができる。他の実施形態では、本明細書に記載のCARのいずれかのCARポリペプチド(且つ任意選択的に抗体試薬又はサイトカイン)は、CARをコードする核酸を含む発現ベクターのトランスフェクション又はエレクトロポレーションを介して哺乳動物細胞において発現される。トランスフェクション又はエレクトロポレーション法は、当該技術分野で公知である。
【0116】
本明細書に記載のポリペプチドのいずれかのCARポリペプチド(且つ任意選択的に抗体試薬又はサイトカイン)の効率的発現は、mRNA、DNA又はCAR(及び任意選択的な抗体試薬又はサイトカイン)をコードする核酸の遺伝子産物を検出する標準的アッセイを用いて評価され得る。例えば、RT-PCR、FACS、ノーザンブロッティング、ウエスタンブロッティング、ELISA又は免疫組織化学が挙げられる。
【0117】
一実施形態では、本明細書に記載のCARポリペプチド(且つ任意選択的に抗体試薬又はサイトカイン)は、構成的に発現される。一実施形態では、CARポリペプチドは、構成的に発現され、且つ任意選択的な抗体試薬又はサイトカインは、誘導的に発現される。一実施形態では、本明細書に記載のCARポリペプチド(及び任意選択的な抗体試薬又はサイトカイン)は、組換え核酸配列によってコードされる。
【0118】
本明細書に記載の技術の一態様は、癌、形質細胞障害又は自己免疫性疾患の治療を、それを必要とする対象において行う方法であって、T細胞表面上に本明細書に記載のCARポリペプチドのいずれか(且つ任意選択的に抗体試薬又はサイトカイン)を含むようにT細胞を改変することと、改変されたT細胞を対象に投与することとを含む方法に関する。癌の場合、方法は、診断された癌を治療するか、癌の再発を予防するか、又はアジュバント若しくはネオアジュバントセッティングにおいて用いるためのものであり得る。
【0119】
本明細書に記載の技術の一態様は、癌、形質細胞障害又は自己免疫性疾患の治療を、それを必要とする対象において行う方法であって、本明細書に記載のCARポリペプチドのいずれか(及び任意選択的な抗体試薬又はサイトカイン)を含む哺乳動物細胞のいずれかの細胞を投与することを含む方法に関する。
【0120】
クラスター分化(CD)分子は、白血球上に存在する細胞表面マーカーである。白血球が分化し、成熟するとき、そのCD特性が変化する。白血球が癌細胞(すなわちリンパ腫)に変化する場合、そのCD特性は、疾患を診断する上で重要である。特定タイプの癌の治療及び予後は、癌細胞のCD特性の決定に依存する。「CDX+」(式中、「X」は、CDマーカーである)が、CDマーカーが癌細胞内に存在することを示す一方、「CDX-」は、マーカーが存在しないことを示す。当業者は、標準的技術を用いて、例えば免疫蛍光を用いて癌細胞上に存在するCD分子を評価し、CD分子に結合された市販抗体を検出できることになる。
【0121】
態様のいずれかのいくつかの実施形態では、改変されたCAR-T細胞は、対象への投与前に刺激及び/又は活性化される。
【0122】
投与
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法は、癌、形質細胞疾患若しくは障害又は自己免疫性疾患若しくは障害を有するか又は有すると診断された対象を、本明細書に記載のCARポリペプチドのいずれか(及び任意選択的な抗体試薬又はサイトカイン)又は本明細書に記載のCARポリペプチドのいずれか(及び任意選択的な抗体試薬又はサイトカイン)をコードする核酸を含む哺乳動物細胞を用いて治療することに関する。本明細書で用いられるとき、「本明細書に記載のようなCAR T細胞」は、本明細書に記載のCARポリペプチドのいずれか(且つ任意選択的に抗体試薬又はサイトカイン)又は本明細書に記載のCARポリペプチドのいずれか(且つ任意選択的に抗体試薬又はサイトカイン)をコードする核酸を含む哺乳動物細胞を指す。本明細書で用いられるとき、「状態」は、癌、形質細胞疾患若しくは障害又は自己免疫疾患若しくは障害を指す。状態を有する対象は、医師により状態を診断する現行の方法を用いて同定され得る。状態の症状及び/又は合併症は、これらの状態を特徴付け、診断を補助するものであり、当該技術分野で周知であり、限定はされないが、疲労、持続性感染及び持続性出血を含む。例えば、状態の診断を補助することがある試験は、限定はされないが、血液スクリーニング及び骨髄検査が挙げられ、所与の状態にとって当該技術分野で公知である。状態における家族歴又は状態におけるリスク因子への曝露も、対象が状態を有する可能性が高いか否かを判定するか又は状態の診断を行うことを補助し得る。
【0123】
本明細書に記載の組成物は、状態を有する又は有すると診断された対象に投与され得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法は、状態の症状を軽減するため、本明細書に記載の活性化CAR T細胞を有効量で対象に投与することを含む。本明細書で用いられるとき、「状態の症状を軽減すること」は、状態に関連した任意の状態又は症状を寛解することである。対応する未治療対照と比較されるとき、かかる低減は、任意の標準的技術による測定として、少なくとも5%、10%、20%、40%、50%、60%、80%、90%、95%、99%又はそれを超える。本明細書に記載の組成物を対象に投与するための種々の手段は、当業者に公知である。一実施形態では、本明細書に記載の組成物は、全身的又は局所的に投与される。好ましい実施形態では、本明細書に記載の組成物は、静脈内に投与される。別の実施形態では、本明細書に記載の組成物は、腫瘍部位に投与される。
【0124】
用語「有効量」は、本明細書で用いられるとき、疾患又は障害の少なくとも1つ以上の症状を軽減するのに必要な活性化CAR T細胞の量を指し、細胞調製物又は組成物が所望される効果をもたらすのに十分な量に関する。したがって、用語「治療有効量」は、典型的対象に投与されるとき、特定の抵抗状態効果をもたらすのに十分な活性化CAR T細胞の量を指す。有効量は、本明細書で用いられるとき、様々な状況下で、疾患の症状の発現を遅延させる、症状・疾患の経過を変更する(例えば、限定はされないが、状態の進行を緩徐化する)か、又は状態の症状を逆転させるための十分な量も含むことになる。したがって、一般には正確な「有効量」を特定することは実行可能でない。しかし、特定の場合、適切な「有効量」は、専ら通常の実験を用いて当業者により決定され得る。
【0125】
有効量、毒性及び治療効果は、細胞培養物又は実験動物において標準医薬品手順により評価され得る。用量は、用いられる剤形及び利用される投与経路に応じて変動し得る。毒性効果と治療効果との間の用量比は治療指数であり、LD50/ED50比として表現され得る。大きい治療指数を示す組成物及び方法が好ましい。治療有効量は、最初に細胞培養アッセイから評価され得る。また、用量は、細胞培養又は適切な動物モデルにおいて決定されるように、IC50(すなわち、症状の最大半量阻害を達成する活性化CAR T細胞の濃度)を含む循環血漿濃度範囲を達成するため、動物モデルにおいて配合され得る。血漿におけるレベルは、例えば、高性能液体クロマトグラフィーにより測定され得る。任意の特定用量の効果は、特に、好適なバイオアッセイ、例えば骨髄検査のためのアッセイにより監視され得る。用量は、医師により決定され、必要に応じて、治療の観察される効果に適するように調節され得る。
【0126】
技術の一態様では、本明細書に記載の技術は、本明細書に記載のような活性化CAR T細胞及び任意選択的に薬学的に許容できる担体を含む医薬組成物に関する。医薬組成物の活性成分は、少なくとも本明細書に記載のような活性化CAR T細胞を含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物の活性成分は、本質的に本明細書に記載のような活性化CAR T細胞からなる。いくつかの実施形態では、医薬組成物の活性成分は、本明細書に記載のような活性化CAR T細胞からなる。細胞に基づく治療製剤のための薬学的に許容できる担体は、生理食塩水及び水性緩衝液、リンゲル液及び血清成分、例えば血清アルブミン、HDL及びLDLを含む。「賦形剤」、「担体」、「薬学的に許容できる担体」などの用語は、本明細書で交換可能に用いられる。
【0127】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のような活性化CAR T細胞を含む医薬組成物は、非経口投与形態であり得る。非経口剤形の投与が典型的には汚染物質に対する患者の天然防御をバイパスすることから、CAR T細胞自体以外の成分は、患者への投与前、好ましくは無菌状態であるか又は無菌化され得る。非経口剤形の例として、限定はされないが、注射用溶液、注射のための薬学的に許容できる媒体に容易に溶解又は懸濁される乾燥生成物、注射用懸濁液及び乳濁液が挙げられる。これらのいずれかは、投与前、活性化CAR T細胞調製物に添加され得る。
【0128】
中に開示のような活性化CAR T細胞の非経口剤形を提供するために使用可能な好適な媒体は、当業者に周知である。例として、限定はされないが、生理食塩水;グルコース溶液;水性媒体、例えば限定はされないが、塩化ナトリウム注射剤、リンゲル注射剤、ブドウ糖注射剤、ブドウ糖及び塩化ナトリウム注射剤及び乳酸リンゲル注射剤;水混和性媒体、例えば限定はされないが、エチルアルコール、ポリエチレングリコール及びプロピレングリコール;並びに非水性媒体、例えば限定はされないが、トウモロコシ油、綿実油、ピーナッツ油、ゴマ油、オレイン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル及び安息香酸ベンジルが挙げられる。
【0129】
用量
「単位剤形」は、用語が本明細書で用いられるとき、好適な単回投与のための用量を指す。例として、単位剤形は、送達装置、例えばシリンジ又は静脈内点滴バッグで処理される治療薬の量であり得る。一実施形態では、単位剤形は、単回投与で投与される。別の実施形態では、2以上の単位剤形が同時に投与され得る。
【0130】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の活性化CAR T細胞は、単独療法として投与される、すなわち状態に対する他の治療薬は、対象に同時に投与されない。
【0131】
本明細書に記載のT細胞を含む医薬組成物は、一般に、104~109細胞/kg体重、場合によっては105~106細胞/kg体重の用量(それら範囲内のすべての整数値を含む)で投与され得る。必要であれば、T細胞組成物はまた、これらの用量で複数回投与され得る。細胞は、免疫療法において一般に知られる注入技術を用いることにより投与され得る(例えば、Rosenberg et al.,New Eng.J.Med.319:1676,1988を参照されたい)。
【0132】
特定の態様では、活性化CAR T細胞を対象に投与し、次にその後に血液を再採取し(又はアフェレーシスを実施し)、本明細書に記載のようなそれからのT細胞を活性化し、これらの活性化及び拡大されたT細胞を患者に再注入することが所望されることがある。このプロセスは、数週ごとに複数回実施され得る。特定の態様では、T細胞は、l0cc~400ccの血液採取物から活性化され得る。特定の態様では、T細胞は、20cc、30cc、40cc、50cc、60cc、70cc、80cc、90cc又はl00ccの血液採取物から活性化される。
【0133】
投与モードは、例えば、静脈内(i.v.)注射又は注入を含み得る。本明細書に記載の組成物は、患者の経動脈的、腫瘍内、節内又は髄内に投与され得る。いくつかの実施形態では、T細胞の組成物は、腫瘍、リンパ節又は感染部位に直接的に注射され得る。一実施形態では、本明細書に記載の組成物は、体腔又は体液(例えば、腹水症、胸水、腹水又は脳脊髄液)に投与される。
【0134】
特定の例示的態様では、対象は、白血球除去を受け得、ここで、白血球は、収集されるか、濃縮されるか又は生体外枯渇がなされ、目的の細胞、例えばT細胞が選択及び/又は単離される。これらT細胞単離物は、人工APC、例えば抗CD28及び抗CD3 CDRを発現するAPCと接触させることにより拡大され、技術の1つ以上のCAR構築物が導入され、それによりCAR T細胞が生成され得るように処理され得る。それを必要とする対象は、その後に高用量化学療法を用いる標準的治療、その後に末梢血幹細胞移植を受け得る。移植後又は移植と同時に、対象は、拡大されたCAR T細胞の注入を受け得る。一実施形態では、拡大された細胞は、手術前又は手術後に投与される。
【0135】
いくつかの実施形態では、対象に対して、本明細書に記載のような1つ以上のCAR T細胞を投与する前、リンパ球枯渇がなされる。かかる実施形態では、リンパ球枯渇は、メルファラン、シトキサン、シクロホスファミド及びフルダラビンの1つ以上を投与することを含み得る。
【0136】
患者に投与されるべき上記治療薬の用量は、治療中の状態及び治療のレシピエントの正確な性質に応じて変化することになる。ヒト投与のための用量のスケーリングは、当該技術分野で認められた慣習に従って実施され得る。
【0137】
いくつかの実施形態では、単一の治療計画が必要とされる。他には、1以上の後続用量の投与又は治療計画が実施され得る。例えば、隔週で3か月にわたる治療後、治療は、1か月、6か月又は1年又はそれを超える期間につき1回で反復され得る。いくつかの実施形態では、初期治療後、追加的治療が実施されない。
【0138】
本明細書に記載のような組成物の用量は、医師により決定され、必要に応じて、治療の観察される効果に適するように調節され得る。治療の持続時間及び頻度に関連して、治療が治療効果をもたらしているときを判定し、またさらなる細胞を投与するべきか否か、治療を中断するべきか否か、治療を再開するべきか否か、又はその治療計画以外で変更を行うべきか否かを判定するため、熟練臨床医が対象を監視することは典型的である。用量は、有害な副作用、例えばサイトカイン放出症候群を引き起こす程に高用量であるべきではない。一般に、用量は、患者の年齢、状態及び性別に応じて変化することになり、当業者により決定され得る。用量はまた、何らかの合併症が生じる場合、個別医師により調節され得る。
【0139】
併用療法
本明細書に記載の活性化CAR T細胞は、任意選択的に、当業者によって適切と判定され得る通り、互いに且つ他の公知の作用剤及び治療法と組み合わせて使用可能である。一例では、異なるTregマーカー(例えば、GARP、LAPなど)を標的にする2つ以上のCAR T細胞が組み合わせ投与可能である。別の例では、異なる癌抗原を標的にする2つ以上のCAR T細胞が組み合わせ投与される。さらなる例では、Tregマーカー(例えば、GARP、LAPなど)を標的にする1つ以上のCAR T細胞及び1つ以上の腫瘍抗原を標的にする1つ以上のCAR T細胞が組み合わせ投与される。
【0140】
「組み合わせ」投与は、本明細書で用いられるとき、障害による対象の苦悩の過程において2(又は3以上)の異なる治療薬が対象に送達され、例えば対象が障害を有すると診断されてから、また障害が治癒又は除去されているか、又は他の理由で治療が終了している以前に2つ以上の治療薬が送達される。いくつかの実施形態では、一方の治療薬の送達が、第2の送達が開始するとき、依然として行われていることで、投与については重複がある。これは、ときとして本明細書中で「同時」又は「併用送達」と称される。他の実施形態では、一方の治療薬の送達は、他方の治療薬の送達が開始する前に終了する。いずれかの場合のいくつかの実施形態では、治療薬は、組み合わせ投与が理由でより有効である。例えば、第2の治療薬がより有効であり、例えば等価な効果が第2の治療薬の低減とともに見られるか、又は第2の治療薬が、第2の治療薬が第1の治療薬の不在下で投与された場合に見られるよりも広範囲に症状を低減するか、又は類似の状況が第1の治療薬の存在下で見られる。いくつかの実施形態では、送達は、症状における低減又は障害に関する他のパラメータの程度が、一方の治療薬が他方の不在下で送達される場合に認められる場合よりも大きいようになされる。2つの治療薬の効果は、部分的に相加的、完全に相加的又は相加的以上であり得る。送達は、送達される第1の治療薬の効果が、第2の治療薬が送達されるときに依然として検出可能であるようになされ得る。本明細書に記載の活性化CAR T細胞及び少なくとも1つの追加的治療薬は、同時に、同じ組成物中で、又は別々の組成物中で、又は逐次的に投与され得る。逐次投与では、本明細書に記載のCARを発現する細胞が最初に投与可能であり、追加的薬剤が2番目に投与可能であるか、又は投与順序が逆転可能である。CAR T療法及び/又は他の治療薬、手順又は様式は、活動的な障害の期間中又は寛解若しくはあまり活動的でない疾患の期間中に実施することができる。CAR T療法は、別の治療前、治療と並行して、治療後又は障害の寛解中に施すことができる。
【0141】
組み合わせて投与されるとき、活性化CAR T細胞及び追加的薬剤(例えば、第2又は第3の薬剤)又は全部が、例えば単独療法として、個別に用いられる各薬剤の量又は用量よりも高い、それよりも低い又はそれと同じ量又は用量で投与され得る。特定の実施形態では、活性化CAR T細胞、追加的薬剤(例えば、第2又は第3の薬剤)又は全部の投与量又は用量は、個別に用いられる各薬剤の量又は用量よりも(例えば、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%又は少なくとも50%)低い。他の実施形態では、所望される効果(例えば、癌の治療)をもたらす、活性化CAR T細胞、追加的薬剤(例えば、第2又は第3の薬剤)又は全部の量又は用量は、同じ治療効果を達成するために個別に要求される各薬剤の量又は用量よりも低い(例えば、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%又は少なくとも50%低い)。さらなる実施形態では、本明細書に記載の活性化CAR T細胞は、手術、化学療法、放射線、mTOR経路阻害剤、免疫抑制剤、例えばシクロスポリン、アザチオプリン、メトトレキサート、ミコフェノール酸塩及びFK506、抗体又は他の免疫除去剤、例えばCAMPATH、抗CD3抗体若しくは他の抗体治療薬、シトキシン、フルダラビン、ラパマイシン、ミコフェノール酸、ステロイド、FR901228、サイトカイン又はペプチドワクチン、例えばIzumoto et al.,J.Neurosurg.108:963-971,2008に記載のものと組み合わせた治療計画の中で用いることができる。
【0142】
一実施形態では、本明細書に記載の活性化CAR T細胞は、チェックポイント阻害剤と併用され得る。例示的なチェックポイント阻害剤として、抗PD-1阻害剤(ニボルマブ、MK-3475、ペンブロリズマブ、ピディリズマブ、AMP-224、AMP-514)、抗CTLA4阻害剤(イピリムマブ及びトレメリムマブ)、抗PDL1阻害剤(アテゾリズマブ、アベルマブ、MSB0010718C、MEDI4736、及びMPDL3280A)、及び抗TIM3阻害剤が挙げられる。
【0143】
一実施形態では、本明細書に記載の活性化CAR T細胞は、化学療法剤と併用され得る。例示的化学療法剤として、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシン(例えば、リポソームドキソルビシン))、ビンカアルカロイド(例えば、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビノレルビン)、アルキル化剤(例えば、シクロホスファミド、ダカルバジン、メルファラン、イホスファミド、テモゾロミド)、免疫細胞抗体(例えば、アレムツズマブ、ゲムツズマブ、リツキシマブ、トシツモマブ)、代謝拮抗剤(例えば、葉酸拮抗剤、ピリミジン類似体、プリン類似体及びアデノシンデアミナーゼ阻害剤(例えば、フルダラビン)を含む)、mTOR阻害剤、TNFRグルココルチコイド誘導性TNFR関連タンパク質(GITR)作動薬、プロテアソーム阻害剤(例えば、アクラシノマイシンA、グリオトキシン又はボルテゾミブ)、免疫調節薬、例えばサリドマイド又はサリドマイド誘導体(例えば、レナリドミド)が挙げられる。併用療法における使用について検討される一般的化学療法剤は、アナストロゾール(Arimidex(登録商標))、ビカルタミド(Casodex(登録商標))、ブレオマイシン硫酸塩(Blenoxane(登録商標))、ブスルファン(Myleran(登録商標))、ブスルファン注射剤(Busulfex(登録商標))、カペシタビン(Xeloda(登録商標))、N4-ペントキシカルボニル-5-デオキシ-5-フルオロシチジン、カルボプラチン(Paraplatin(登録商標))、カルムスチン(BiCNU(登録商標))、クロラムブシル(Leukeran(登録商標))、シスプラチン(Platinol(登録商標))、クラドリビン(Leustatin(登録商標))、シクロホスファミド(Cytoxan(登録商標)又はNeosar(登録商標))、シタラビン、シトシンアラビノシド(Cytosar-U(登録商標))、シタラビンリポソーム注射剤(DepoCyt(登録商標))、ダカルバジン(DTIC-Dome(登録商標))、ダクチノマイシン(アクチノマイシンD、Cosmegan)、ダウノルビシン塩酸塩(Cerubidine(登録商標))、ダウノルビシンクエン酸塩リポソーム注射液(DaunoXome(登録商標))、デキサメタゾン、ドセタキセル(Taxotere(登録商標))、ドキソルビシン塩酸塩(アドリアマイシン(Adriamycin)(登録商標)、Rubex(登録商標))、エトポシド(Vepesid(登録商標))、リン酸フルダラビン(Fludara(登録商標))、5-フルオロウラシル(Adrucil(登録商標)、Efudex(登録商標))、フルタミド(Eulexin(登録商標))、テザシチビン、ゲムシタビン(ジフルオロデオキシシチジン)、ヒドロキシ尿素(Hydrea(登録商標))、イダルビシン(Idamycin(登録商標))、イホスファミド(IFEX(登録商標))、イリノテカン(Camptosar(登録商標))、L-アスパラギナーゼ(ELSPAR(登録商標))、ロイコボリンカルシウム、メルファラン(Alkeran(登録商標))、6-メルカプトプリン(Purinethol(登録商標))、メトトレキサート(Folex(登録商標))、ミトキサントロン(Novantrone(登録商標))、マイロターグ(mylotarg)、パクリタキセル(Taxol(登録商標))、フェニックス(Yttrium90/MX-DTPA)、ペントスタチン、カルムスチンインプラントを伴うポリフェプロサン20(Gliadel(登録商標))、タモキシフェンクエン酸塩(Nolvadex(登録商標))、テニポシド(Vumon(登録商標))、6-チオグアニン、チオテパ、チラパザミン(Tirazone(登録商標))、注射用トポテカン塩酸塩(Hycamptin(登録商標))、ビンブラスチン(Velban(登録商標))、ビンクリスチン(Oncovin(登録商標))及びビノレルビン(Navelbine(登録商標))を含む。例示的アルキル化剤として、限定はされないが、ナイトロジェンマスタード、エチレンイミン誘導体、スルホン酸アルキル、ニトロソウレア及びトリアゼン):ウラシルマスタード(Aminouracil Mustard(登録商標)、Chlorethaminacil(登録商標)、Demethyldopan(登録商標)、Desmethyldopan(登録商標)、Haemanthamine(登録商標)、Nordopan(登録商標)、Uracil nitrogen mustard(登録商標)、Uracillost(登録商標)、Uracilmostaza(登録商標)、Uramustin(登録商標)、Uramustine(登録商標))、クロルメチン(Mustargen(登録商標))、シクロホスファミド(Cytoxan(登録商標)、Neosar(登録商標)、Clafen(登録商標)、Endoxan(登録商標)、Procytox(登録商標)、Revimmune(商標))、イホスファミド(Mitoxana(登録商標))、メルファラン(Alkeran(登録商標))、クロラムブシル(Leukeran(登録商標))、ピポブロマン(Amedel(登録商標)、Vercyte(登録商標))、トリエチレンメラミン(Hemel(登録商標)、Hexalen(登録商標)、Hexastat(登録商標))、トリエチレンチオホスホラミン、テモゾロミド(Temodar(登録商標))、チオテパ(Thioplex(登録商標))、ブスルファン(Busilvex(登録商標)、Myleran(登録商標))、カルムスチン(BiCNU(登録商標))、ロムスチン(CeeNU(登録商標))、ストレプトゾシン(Zanosar(登録商標))及びダカルバジン(DTIC-Dome(登録商標))が挙げられる。追加的な例示的アルキル化剤として、限定はされないが、オキサリプラチン(Eloxatin(登録商標));テモゾロミド(Temodar(登録商標)及びTemodal(登録商標));ダクチノマイシン(アクチノマイシン-D、Cosmegen(登録商標)としても公知);メルファラン(L-PAM、L-サルコリシン及びフェニルアラニンマスタード、Alkeran(登録商標)としても公知);アルトレタミン(ヘキサメチルメラミン(HMM)、Hexalen(登録商標)としても公知);カルムスチン(BiCNU(登録商標));ベンダムスチン(Treanda(登録商標));ブスルファン(Busulfex(登録商標)及びMyleran(登録商標));カルボプラチン(Paraplatin(登録商標));ロムスチン(CCNU、CeeNU(登録商標)としても公知);シスプラチン(CDDP、Platinol(登録商標)及びPlatinol(登録商標)-AQとしても公知);クロラムブシル(Leukeran(登録商標));シクロホスファミド(Cytoxan(登録商標)及びNeosar(登録商標));ダカルバジン(DTIC、DIC及びイミダゾールカルボキサミド、DTIC-Dome(登録商標)としても公知);アルトレタミン(ヘキサメチルメラミン(HMM)、Hexalen(登録商標)としても公知);イホスファミド(Ifex(登録商標));プレドヌムスチン;プロカルバジン(Matulane(登録商標));メクロレタミン(ナイトロジェンマスタード、ムスチン及びメクロレタミン塩酸塩、Mustargen(登録商標)としても公知);ストレプトゾシン(Zanosar(登録商標));チオテパ(チオホスホアミド、TESPA及びTSPA、Thioplex(登録商標)としても公知);シクロホスファミド(Endoxan(登録商標)、Cytoxan(登録商標)、Neosar(登録商標)、Procytox(登録商標)、Revimmune(登録商標));及びベンダムスチンHC1(Treanda(登録商標))が挙げられる。例示的なmTOR阻害剤として、例えばテムシロリムス;リダフォロリムス(以前はデフェロリムスとして公知、(lR,2R,45)-4-[(2R)-2[(1R,95,125,15R,16E,18R,19R,21R,235,24E,26E,28Z,305,325,35R)-l,18-ジヒドロキシ-19,30-ジメトキシ-15,17,21,23,29,35-ヘキサメチル-2,3,10,14,20-ペンタオキソ-ll,36-ジオキサ-4-アザトリシクロ[30.3.1.04’9]ヘキサトリアコンタ-16,24,26,28-テトラエン-12-イル]プロピル]-2-メトキシシクロヘキシルジメチルホスフィネートとして公知であり、AP23573及びMK8669としても公知、またPCT公開の国際公開第03/064383号パンフレットに記載);エベロリムス(Afinitor(登録商標)又はRADOOl);ラパマイシン(AY22989、Sirolimus(登録商標));シマピモド(CAS164301-51-3);エムシロリムス(emsirolimus)、(5-{2,4-ビス[(35,)-3-メチルモルホリン-4-イル]ピリド[2,3-(i]ピリミジン-7-イル}-2-メトキシフェニル)メタノール(AZD8055);2-アミノ-8-[iraw5,-4-(2-ヒドロキシエトキシ)シクロヘキシル]-6-(6-メトキシ-3-ピリジニル)-4-メチル-ピリド[2,3-JJピリミジン-7(8H)-オン(PF04691502,CAS1013101-36-4);及びN2-[l,4-ジオキソ-4-[[4-(4-オキソ-8-フェニル-4H-l-ベンゾピラン-2-イル)モルホリニウム-4-イル]メトキシ]ブチル]-L-アルギニルグリシル-L-a-アスパルチルL-セリン-、分子内塩(SF1126、CAS936487-67-1)及びXL765が挙げられる。例示的な免疫調節薬として、例えばアフツズマブ(Roche(登録商標)から入手可能);ペグフィルグラスチム(Neulasta(登録商標));レナリドミド(CC-5013、Revlimid(登録商標));サリドマイド(Thalomid(登録商標))、アクチミド(CC4047);及びIRX-2(インターロイキン1、インターロイキン2及びインターフェロンγを含むヒトサイトカインの混合物、CAS951209-71-5、IRX Therapeuticsから入手可能)が挙げられる。例示的なアントラサイクリンとして、例えばドキソルビシン(Adriamycin(登録商標)及びRubex(登録商標));ブレオマイシン(lenoxane(登録商標));ダウノルビシン(ダウノルビシン塩酸塩、ダウノマイシン及びルビドマイシン塩酸塩、Cerubidine(登録商標));ダウノルビシンリポソーム(ダウノルビシンクエン酸塩リポソーム、DaunoXome(登録商標));ミトキサントロン(DHAD、Novantrone(登録商標));エピルビシン(Ellence(商標));イダルビシン(Idamycin(登録商標)、Idamycin PFS(登録商標));マイトマイシンC(Mutamycin(登録商標));ゲルダナマイシン;ハービマイシン;ラビドマイシン;及びデアセチルラビドマイシンが挙げられる。例示的なビンカアルカロイドとして、例えばビノレルビン酒石酸塩(Navelbine(登録商標))、ビンクリスチン(Oncovin(登録商標))及びビンデシン(Eldisine(登録商標)));ビンブラスチン(ビンブラスチン硫酸塩、ビンカロイコブラスチン及びVLB、Alkaban-AQ(登録商標)及びVelban(登録商標)としても公知);及びビノレルビン(Navelbine(登録商標))が挙げられる。例示的なプロテオソーム阻害剤として、ボルテゾミブ(Velcade(登録商標));カルフィルゾミブ(PX-171-007、(5)-4-メチル-N-((5)-l-(((5)-4-メチル-l-((R)-2-メチルオキシラン-2-イル)-l-オキソペンタン-2-イル)アミノ)-l-オキ
ソ-3-フェニルプロパン-2-イル)-2-((5,)-2-(2-モルホリノアセトアミド)-4-フェニルブタンアミド)-ペンタンアミド);マリゾミブ(NPT0052);イキサゾミブクエン酸塩(MLN-9708);デランゾミブ(CEP-18770);及びO-メチル-N-[(2-メチル-5-チアゾリル)カルボニル]-L-セリル-O-メチル-N-[(llS’)-2-[(2R)-2-メチル-2-オキシラニル]-2-オキソ-l-(フェニルメチル)エチル]-L-セリナミド(ONX-0912)が挙げられる。
【0144】
当業者は、使用する化学療法剤を容易に同定することができる(例えば、Physicians’Cancer Chemotherapy Drug Manual 2014,Edward Chu,Vincent T.DeVita Jr.,Jones&Bartlett Learning;Principles of Cancer Therapy,Chapter 85 in Harrison’s Principles of Internal Medicine,18th edition;Therapeutic Targeting of Cancer Cells:Era of Molecularly Targeted Agents and Cancer Pharmacology,Chapters.28-29 in Abeloff’s Clinical Oncology,2013 Elsevier;及びFischer DS(ed.):The Cancer Chemotherapy Handbook,4th ed.St.Louis,Mosby-Year Book,2003を参照されたい)。
【0145】
一実施形態では、本明細書に記載の活性化CAR T細胞は、GITRを標的にし且つ/又はGITR機能を調節する分子のレベル及び/又は活性を低下させる分子、Treg細胞集団を減少させる分子、mTOR阻害剤、GITR作動薬、キナーゼ阻害剤、非受容体チロシンキナーゼ阻害剤、CDK4阻害剤及び/又はBTK阻害剤と組み合わせて対象に投与される。
【0146】
有効性
例えば、本明細書に記載の状態の治療における又は本明細書に記載のような応答(例えば、癌細胞における減少)を誘導するための活性化CAR T細胞の有効性は、熟練した臨床医により判定され得る。しかし、治療は、用語が本明細書で用いられ、本明細書に記載の状態の徴候又は症状の1つ以上が有利な様式で改変される場合、他の臨床的に認められた症状が改善されるか、又はさらに寛解されるか、又は所望される応答が誘導されるとき(例えば、本明細書に記載の方法に従う治療後に少なくとも10%)、「有効な治療」と考えられる。有効性は、例えば、本明細書に記載の方法に従って治療される状態のマーカー、指標、症状及び/若しくは発生率又は任意の他の測定可能な適切なパラメータを測定することにより評価され得る。本明細書に記載の方法に従う治療は、状態のマーカー又は症状のレベルを例えば少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%若しくは少なくとも90%又はそれを超えて低下させ得る。
【0147】
有効性は、入院による評価として個体が悪化しないこと又は医学的介入についての必要性(すなわち疾患の進行が停止する)によっても評価され得る。これらの指標を測定する方法は、当業者に公知であり、且つ/又は本明細書に記載される。
【0148】
治療は、個体又は動物(いくつかの非限定例として、ヒト又は動物が挙げられる)における疾患の任意の治療を含み、(1)疾患を阻害する、例えば症状(例えば、疼痛又は炎症)の悪化を予防すること;又は(2)疾患の重症度を軽減する、例えば症状の回復を引き起こすことを含む。疾患の治療における有効量は、それを必要とする対象に投与されるとき、疾患に対する、本明細書で定義される通りの有効な治療をもたらすのに十分である量を意味する。薬剤の有効性は、状態又は所望される応答の身体的指標を評価することによって判定され得る。かかるパラメータのいずれか1つ又はパラメータの任意の組み合わせを測定することにより、投与及び/又は治療の有効性を監視することは、十分に当業者の能力の範囲内にある。所与の手法の有効性は、本明細書に記載の状態の動物モデルにおいて評価され得る。実験動物モデルを用いるとき、治療の有効性は、マーカーにおける統計学的に有意な変化が認められるとき、証明される。
【0149】
本願全体を通じて引用される、すべての特許及び他の刊行物、例えば参考文献、交付済み特許、特許出願公開及び同時係属特許出願は、例えば、本明細書に記載の技術と関連して用い得るような刊行物中に記載される方法を説明及び開示することを目的として、明確に参照により本明細書中に援用される。これらの刊行物は、あくまで本願の出願日に先行するそれらの開示を意図して提供される。これに関連して、本発明者らが先行技術の理由で又は任意の他の理由でかかる開示に先行する権限が与えられないことの承認として解釈されるべきではない。これらの文書の内容に関する日付又は表現についてのすべての記載内容は、出願人が入手可能な情報に基づくものであり、これらの文書の日付又は内容の正確性についての承認を示すものでは決してない。
【0150】
本開示の実施形態の記載内容は、本開示を開示される正確な形態にまで厳密化又は限定することは意図されない。本開示における具体的な実施形態及び実施例が例示目的で本明細書に記載される一方、様々な等価な修飾が、当業者が理解する通り、本開示の範囲内で可能である。例えば、方法ステップ又は機能が所与の順序で提示される一方、代替的実施形態では異なる順序で機能を実施し得るか又は実質的に同時に機能を実施し得る。本明細書に提供される開示の教示内容は、必要に応じて他の手順又は方法に適用され得る。本明細書に記載の様々な実施形態を組み合わせることで、さらなる実施形態を提示することができる。本開示の態様は、必要があれば修飾し、上記の参考文献及び出願の組成物、機能及び概念を活用することで、本開示のさらなる実施形態をさらに提示することができる。さらに、生物学的・機能的な同等性を考察することにより、タンパク質構造において、種類又は量における生物学的又は化学的作用に影響することなく、いくらかの変更を行うことができる。詳細な説明のおかげで、本開示にこれら及び他の変更を行うことができる。すべてのかかる修飾は、添付の特許請求の範囲の範囲内に含まれることは意図されない。
【0151】
前述の実施形態のいずれかの具体的要素は、他の実施形態における要素と組み合わせるか又は置き換えることができる。さらに、本開示の特定の実施形態に関連した利点がこれらの実施形態との関連で記載されている一方、他の実施形態もかかる利点を示し得、実施形態のすべてが、かかる利点が本開示の範囲内に含まれることを必ずしも示す必要はない。
【0152】
本明細書に記載の技術は、以下の実施例によりさらに例示されるが、さらに限定するものとして解釈されるべきでは決してない。
【実施例0153】
実施例1.EGFRvIII標的化CAR T細胞
EGFRvIII抗原結合部分を有するCAR T細胞(例えば、CART-EGFRvIII細胞)は、一部にはEGFRvIIIが腫瘍組織上に特異的に発現される一方、一般に健常組織から不在であることから、腫瘍微小環境に対する細胞溶解性細胞の特異的標的化を意図した有望な細胞治療を表す。本実施例では、CART-EGFRvIII細胞を2つの動物モデルにおいてインビトロ及びインビボで試験した。
【0154】
非特定化された健常ドナーから得た白血球除去産物からのT細胞をDynabeads(ヒトT-アクチベーターCD3/CD28)で3:1のビーズ対細胞比において刺激し、完全RPMI1640培地で培養した。刺激及びレンチウイルス形質導入から10日後、機能的アッセイにおける使用のため、細胞を凍結及び貯蔵した。
【0155】
図1に示す20時間のルシフェラーゼに基づくアッセイにおいて、CAR-EGFRvIII細胞が非形質導入対照細胞と比べて腫瘍細胞を優先的に殺滅する能力を特徴付けるため、初期試験をインビトロで実施した。ヒトグリオーマ細胞系のU87vIIIを標的細胞として用いた。インビトロ特徴付けによると、EGFRvIII CAR T細胞は、U87vIII細胞に対する有意且つ特異的な細胞傷害性を媒介することが示される(
図1)。
【0156】
インビボ実験では、U87vIII腫瘍細胞を対数増殖期において収集し、洗浄し、マウスに対し、ヒト神経膠芽腫の異種移植片モデルでは皮下に(
図2A及び2B)又はヒト神経膠腫のモデルでは頭蓋内に投与した(
図3A及び3B)。頭蓋内投与では、50μLのハミルトンシリンジの針を、定位フレームを用いて十字縫合の右側2mmに、また冠状縫合の頭蓋骨の表面下4mmに位置付けた。治療として、マウスに尾静脈を介してCAR T細胞を1回注入した(1×10
6個のCAR形質導入T細胞/マウス)。
【0157】
インビトロで認められた強力な抗腫瘍効果をヒト神経膠芽腫のインビボ皮下異種移植片モデルにおいて再現した(
図2A及び2B)。このモデルでは、樹立した巨大腫瘍(上列)は、CART-EGFRvIIIに応答した一方(
図2B)、非形質導入細胞は、腫瘍増殖を阻止しなかった(
図2A)。頭蓋内ヒト神経膠腫のマウスモデルでは、EGFRvIII CAR T細胞は、非形質導入細胞(
図3A)と比べて腫瘍の増殖を緩徐化し、生存延長をもたらした(
図3B)。腫瘍増殖が抑制されたが、皮下腫瘍に対して認められた場合ほど効果は明白でなかった。
【0158】
CART-EGFRvIII細胞での治療後、ヒト患者腫瘍組織において制御性T細胞(Treg)の存在が認められた(
図4A及び4B)。脳浸潤性TregがCART-EGFRvIII細胞の抑制における機能的役割を有するか否かを判定するため、インビトロTreg抑制アッセイを実施し、そこでは、CART-EGFRvIII細胞(赤)及びグリオーマ細胞(緑)をTregの存在下で18時間インキュベートした。結果は、
図5A~5Cに示す通り、IncyCyte生細胞分析により得られた。非特異的なCAR細胞は、グリオーマ細胞の増殖を可能にした一方(
図5A及び5D、上線)、CART-EGFRvIII細胞は、グリオーマ細胞を殺滅した(
図5B及び5D、下線)。しかし、共培養下でのTregの添加により、CART-EGFRvIII細胞が標的のグリオーマ細胞を殺滅する能力は、有意に低下した(
図5C及び5D、中線)。
【0159】
実施例2.Treg関連抗原に対して標的にされるCAR T細胞の設計及び特徴付け
図6A~6C、7A及び7Bは、実験の結果を示し、そこでは、LAP及びGARPがヒト末梢血液細胞に対するTreg関連マーカーとして同定された。特に、生体外で活性化されなかったヒトTregの中で、約27%がLAPを発現し、約4%がLAP及びGARPについて二重陽性であった(
図6B)。抗CD3、抗CD8及びIL-2を用いて生体外で一旦活性化されると、約30%がLAPを発現し、LAP/GARP二重陽性Tregの数が12.3%に増加した(
図6C)。
【0160】
次いで、LAP及びGARPを標的にするCARをコードするCAR構築物を設計した。これら構築物の概略図を
図8A~8Dに示す。Treg標的化構築物は、2つのLAP標的化CAR(CAR-LAP-L-H(
図8A)及びCAR-LAP-H-L(
図8B);ここで、各抗LAP scFvは、重(H)及び軽(L)鎖配置において反転を有する)、GARP標的化CAR構築物(CAR-GARP;
図8C)及び抗GARPラクダ科抗体をさらにコードするEGFR標的化CAR構築物(CAR-EGFR-GARP;
図8D)を含む。各構築物の形質導入効率を、フローサイトメトリーを用いてmCherry陽性細胞の百分率を測定することにより評価したものを下記に提示する。
【0161】
【0162】
抗LAP CART細胞を試験するため、CAR T細胞を同じドナーから拡大した単離Tregと共培養し、TregマーカーとしてGFPを発現するように形質導入した。殺滅アッセイ前、Tregを抗CD3及び抗CD28を用いて一晩活性化するか(
図9B)又は一晩静置した(
図9A)。62,500個のTreg/ウェルを蒔いた。CARをTregに対する指定比で添加した。培養物を300U/mLのIL-2の存在下で3日間インキュベートした。3日目、30,000イベント/ウェルを収集することにより、フローサイトメトリーを実施した。パーセント細胞傷害性を、GFP陽性細胞における、Tregを有する非形質導入T細胞培養物と比べてのパーセント低下として算出した。CART-LAP-H-Lは、非活性化Tregの殺滅時、CART-LAP-L-Hと比べてより有効であった。次に、1:1のCAR T細胞対Treg比での2つの異なるドナーを通じた4日間の類似のTreg殺滅アッセイにおいて、LAP標的化CAR T細胞をGARP標的化CART細胞と比較した(
図10A及び10B)。
図11A及び11Bは、LAP標的化CAR T細胞による非活性化及び活性化Tregの殺滅を、非形質導入対照と比べて、CAR T細胞対Treg細胞比の関数として3日共培養の終了時に残存する標的Tregの数により特徴付ける。
図11C及び11Dは、同じドナーからの類似データを示し、ここで、細胞傷害性は、ルシフェラーゼ発現により測定する。
【0163】
LAP及びGARP標的化CAR T細胞の機能に対する抗原発現の効果をさらに特徴付けるため、不死化細胞株をLAP及びGARP抗原発現についてスクリーニングし、各CAR T細胞による細胞傷害性効果を評価した。最初に、HUT78細胞、IL-2を発現する皮膚ヒトCD4 T細胞リンパ球由来細胞株を、GARP及びLAPについて染色し(それぞれ
図12A及び12B)、HUT78細胞によるLAP発現を確認した。次に、CART-LAP-H-L及びCART-LAP-L-H細胞は、細胞傷害性アッセイにより、HUT78細胞に対する細胞傷害性を媒介した(
図13A及び13B)。次に、SeAx、IL-2依存性ヒトセザリー症候群由来細胞をGARP及びLAPについて染色し(それぞれ
図14A及び14B)、両抗原の発現を確認した。SeAx細胞をCART-GARP細胞、CART-LAP-H-L細胞、CART-LAP-L-L細胞及び非形質導入細胞と共培養し、24時間後(
図15A)及び48時間後(
図15B)、CAR T細胞媒介性殺滅を定量化した。各CAR Tは、24時間後、優位なSeAx標的細胞の死滅とともに、48時間後、より明白な効果を示した。CART-GARP及びCART-LAP-H-Lは標的SeAx細胞を殺滅し、48時間まではCART-LAP-L-H細胞よりも効率が高かった。
【0164】
次に、CART-EGFR-GARP細胞による抗GARPラクダ科抗体の分泌をウエスタンブロットによって特徴付けた(
図16A~16C)。CART-EGFR-GARP細胞を含有する培養物から上清を収集し、還元及び非還元条件下で処置し、10~15kDの間のバンドの存在を、非還元サンプルを有するレーン内に認め(
図16C)、ラクダ科抗体の存在が確認された。
【0165】
実施例3.BiTEを分泌するCAR T細胞の設計及び特徴付け
(例えば、Tregによる免疫調節を克服するため)腫瘍微小環境内でのCAR T細胞活性の有効性を増強するための本明細書に提供した別の機構は、免疫調節抗体、例えばBiTEを分泌するCAR T細胞を介する。理論によって拘束されることを望まないが、本発明者らは、免疫調節抗体(例えば、BiTE)のCARもコードする構築物からの発現により、抗腫瘍効果がさらに増幅され得ることを発見している。
【0166】
図17に概略的に示す1つの例示的核酸構築物のCAR-EGFR-BiTE-(EGFR-CD3)は、BiTEをコードするポリヌクレオチドの5’側に作動可能に連結されたCARをコードするポリヌクレオチドを含む。CARは、CAR T細胞をEGFRvIII陽性腫瘍の微小環境に誘導する、EGFRvIIIに結合する腫瘍抗原結合ドメインを特徴とする。BiTEは、
図18に示すように、一方のドメインでEGFRに、また他方のドメインでCD3に結合し、(a)宿主CAR T細胞の腫瘍細胞への結合活性をさらに増強することができるか、又は(b)腫瘍に対する隣接(例えば、内因性)T細胞に備えることができる。BiTEは、BiTEの分泌を分離可能にするため、切断可能なリンカーP2A及びT2Aによって隣接される一方、CARは、細胞表面に標的化される。他の例示的なBiTEをコードするCAR構築物(例えば、BiTE標的化CD19をコードする)を
図26A及び26Bに示す。
【0167】
CART-EGFR-BiTE-(EGFR-CD3)細胞によるBiTE分泌を、CAR-EGFR-BiTE-(EGFR-CD3)が形質導入されたSupT1細胞を含有する培養物から上清を単離し、上清中のBiTEの濃度をOD450に基づいて計算し、ウエスタンブロット解析を実施することにより確認した。上清中のBiTEの濃度は、0.604ng/mLであった。ウエスタンブロット実験の結果を
図19に示す。約50~60kDでレーン2におけるバンドが認められ、上清中でのBiTE分子の存在が示された。
【0168】
次に、BiTE分子の結合をフローサイトメトリーにより評価した。HEK293T細胞にCAR-EGFR-BiTE-(EGFR-CD3)を形質導入し、分泌されたBiTEを含有する上清を収集し、K562細胞(
図20A)及びジャーカット細胞(
図20B)とともにインキュベートした。
図20Aに示す通り、BiTEは、EGFRを発現するK562細胞に結合し、CD19を発現するK562細胞に結合せず、BiTEのEGFR結合ドメインの機能が確認された。
図20Bに示す通り、CD3を発現するジャーカット細胞は、CAR-EGFR-BiTE-(EGFR-CD3)を発現するHEK293T細胞からの上清とのインキュベーション後のBiTEに対する染色が非形質導入HEK293T細胞からの上清とのインキュベーション後のBiTEに対する染色と比べてより強力であることを示し、BiTEがまたCD3に機能的に結合することが示された。
【0169】
CAR-EGFR-BiTE-(EGFR-CD3)に対する形質導入宿主としてSupT1細胞を用いて類似の実験を実施した。
図21Aは、BiTEがEGFRを発現するK562細胞に結合し、CD19を発現するK562細胞に結合しなかったことを示し、形質導入されたSupT1細胞によって発現されたBiTEのEGFR結合ドメインの機能が確認された。BiTEが宿主SupT1細胞の表面上に発現されたCD3に結合したことを確認するため、形質導入されたSupT1細胞をBiTEについて染色した。
図21Bに示す結果により、形質導入されたSupT1細胞がBiTEに対して陽性染色であることが確認される。ND4細胞も、CAR-EGFR-BiTE-(EGFR-CD3)の形質導入時に機能的BiTEを分泌する能力について評価した。
図22Aは、形質導入されたND4細胞によって分泌されたBiTEが、EGFRを発現するK562細胞に結合し、CD19を発現するK562細胞に結合しなかったことを示す。
図22Bに示す通り、BiTEは、その分泌元である形質導入されたND4細胞上に発現されたCD3に結合した。
【0170】
次に、形質導入されたCAR T細胞から分泌されたBiTEの能力をインビトロで特徴付けた。CAR-EGFR-BiTE-(EGFR-CD3)を形質導入したHEK293T細胞から分泌されたBiTEを含有する上清を非形質導入ND4細胞及びU87vIII標的細胞の様々な比での共培養物とともにインキュベートした。
図23に示す通り、ND4細胞を用量依存的様式でBiTEとともにインキュベートしたとき、BiTEがND4に発現されたCD3とU87vIIIに発現されたEGFRとの両方に、ND4細胞により殺滅を誘導するのに十分な程度まで結合していることが示された。
【0171】
T細胞活性化時にBiTEの誘導発現を可能にするため、NFATプロモーターを有する構築物を設計し、合成した。
図24に示す通り、NFATプロモーターは、GFPをコードするポリヌクレオチドに先行し、構築物は、構成的プロモーターEF1αによって駆動される、下流CARをコードするポリヌクレオチドをさらに含む。GFPの誘導発現を確認するため、GFPの発現を、PMA/イオノマイシンによるTCR刺激に応答して、FACSにより評価した。
図25A及び25Bに示す通り、刺激によりGFPの発現がもたらされた。この誘導発現は、PEPvIIIとのインキュベーションにより阻害された。CARをコードする誘導性BiTE構築物は、
図27A及び27Bに示す通り、BiTEを誘導性プロモーター、例えばNFATプロモーターの下流に位置付けることにより設計する。
【0172】
実施例4.配列情報
CD8リーダー配列(配列番号1のアミノ酸1~21;配列番号2);抗GARPラクダ科(配列番号1のアミノ酸22~128;配列番号3);CD8ヒンジ/TMドメイン(配列番号1のアミノ酸129~197;配列番号4);4-1BB ICD(配列番号1のアミノ酸198~239;配列番号5);及びCD3ζ(配列番号1のアミノ酸240~351;配列番号6)を含む抗GARP CAR-pMGH97:CD8リーダー-抗GARP-CD8ヒンジ+TM-4-1BB-CD3z(配列番号1)
CD8リーダー配列(配列番号1のアミノ酸1~21;配列番号2)
MALPVTALLLPLALLLHAARP
抗GARPラクダ科(配列番号1のアミノ酸22~128;配列番号3)
CD8ヒンジ/TMドメイン(配列番号1のアミノ酸129~197;配列番号4)
4-1BB ICD(配列番号1のアミノ酸198~239;配列番号5)
KRGRKKLLYIFKQPFMRPVQTTQEEDGCSCRFPEEEEGGCEL
CD3ζ(配列番号1のアミノ酸240~351;配列番号6)
【0173】
CD8リーダー配列(配列番号7のアミノ酸1~21;配列番号8)、抗LAP scFv(H-L)(配列番号7のアミノ酸22~307;配列番号9)、CD8ヒンジ/TMドメイン(配列番号7のアミノ酸308~376;配列番号10)、4-1BB ICD(配列番号7のアミノ酸377~418;配列番号11)及びCD3ζ(配列番号7のアミノ酸419~530;配列番号12)を含む抗LAP CAR(H-L)-pMGH99:CD8リーダー-抗LAP-CD8ヒンジ+TM-4-1BB-CD3z(配列番号7)
CD8リーダー配列(配列番号7のアミノ酸1~21;配列番号8)
MALPVTALLLPLALLLHAARP
抗LAP scFv(H-L)(配列番号7のアミノ酸22~307;配列番号9)
CD8ヒンジ/TMドメイン(配列番号7のアミノ酸308~376;配列番号10)
4-1BB ICD(配列番号7のアミノ酸377~418;配列番号11)
KRGRKKLLYIFKQPFMRPVQTTQEEDGCSCRFPEEEEGGCEL
CD3ζ(配列番号7のアミノ酸419~530;配列番号12)。
【0174】
CD8リーダー(配列番号13のアミノ酸1~21;配列番号14)、抗LAP scFv(L-H)(配列番号13のアミノ酸22~307;配列番号15)、CD8ヒンジ/TM(配列番号13のアミノ酸308~376;配列番号16)、4-1BB ICD(配列番号13のアミノ酸377~418;配列番号17)及びCD3z(配列番号13のアミノ酸419~530;配列番号18)を含む抗LAP CAR(L-H)-pMGH100:CD8リーダー-抗LAP-CD8ヒンジ+TM-4-1BB-CD3z(配列番号13)
CD8リーダー(配列番号13のアミノ酸1~21;配列番号14)
MALPVTALLLPLALLLHAARP
抗LAP scFv(L-H)(配列番号13のアミノ酸22~307;配列番号15)
CD8ヒンジ/TM(配列番号13のアミノ酸308~376;配列番号16)
4-1BB ICD(配列番号13のアミノ酸377~418;配列番号17)
KRGRKKLLYIFKQPFMRPVQTTQEEDGCSCRFPEEEEGGCEL
CD3z(配列番号13のアミノ酸419~530;配列番号18)
【0175】
CD8リーダー(配列番号19のアミノ酸1~21;配列番号20)、抗EGFR scFv(配列番号19のアミノ酸22~267;配列番号21)、CD8ヒンジ/TM(配列番号19のアミノ酸268~336;配列番号22)、4-1BB(配列番号19のアミノ酸337~378;配列番号23)、CD3z(配列番号19のアミノ酸379~490;配列番号24)、2A切断配列(配列番号19のアミノ酸494~515;配列番号31)、IgKリーダー(配列番号19のアミノ酸519~539;配列番号32)及び抗GARPラクダ科(配列番号19のアミノ酸540~646;配列番号25)を含む抗GARPラクダ科-pMGH105:CD8リーダー-抗EGFR-CD8ヒンジ+TM-4-1BB-CD3z-抗GARPラクダ科(配列番号19)を分泌する抗EGFR CAR
CD8リーダー(配列番号19のアミノ酸1~21;配列番号20)
MALPVTALLLPLALLLHAARP
抗EGFR scFv(配列番号19のアミノ酸22~267;配列番号21)
CD8ヒンジ/TM(配列番号19のアミノ酸268~336;配列番号22)
4-1BB(配列番号19のアミノ酸337~378;配列番号23)
KRGRKKLLYIFKQPFMRPVQTTQEEDGCSCRFPEEEEGGCEL
CD3z(配列番号19のアミノ酸379~490;配列番号24)
2A切断配列(配列番号19のアミノ酸494~515;配列番号31)
GSGATNFSLLKQAGDVEENPGP
IgKリーダー(配列番号19のアミノ酸519~539;配列番号32)
METDTLLLWVLLLWVPGSTGD
抗GARPラクダ科(配列番号19のアミノ酸540~646;配列番号25)。
【0176】
3C10 scFv(配列番号26のアミノ酸1~243;配列番号27)、CD8ヒンジ/TM(配列番号26のアミノ酸244~312;配列番号28)、4-1BB ICD(配列番号26のアミノ酸313~354;配列番号29)、CD3z(配列番号26のアミノ酸355~466;配列番号30)、P2A(配列番号26のアミノ酸467~488;配列番号31)、IgKリーダー(配列番号26のアミノ酸491~511;配列番号32)、セツキシマブscFv(配列番号26のアミノ酸512~752;配列番号33)、CD3 scFv(配列番号26のアミノ酸758~1000;配列番号34)を含むpMGH113-3C10 scFv-CD8ヒンジ/TM-4-1BB ICD-CD3z-P2A-IgKリーダー-セツキシマブscFv-CD3 scFv-Hisタグ(配列番号26)
3C10 scFv(配列番号26のアミノ酸1~243;配列番号27)
CD8ヒンジ/TM(配列番号26のアミノ酸244~312;配列番号28)
4-1BB ICD(配列番号26のアミノ酸313~354;配列番号29)
KRGRKKLLYIFKQPFMRPVQTTQEEDGCSCRFPEEEEGGCEL
CD3z(配列番号26のアミノ酸355~466;配列番号30)
P2A(配列番号26のアミノ酸467~488;配列番号31)
GSGATNFSLLKQAGDVEENPGP
IgKリーダー(配列番号26のアミノ酸491~511;配列番号32)
METDTLLLWVLLLWVPGSTGD
セツキシマブscFv(配列番号26のアミノ酸512~752;配列番号33)
CD3 scFv(配列番号26のアミノ酸758~1000;配列番号34)
【0177】
2173 scFv(配列番号35のアミノ酸1~246;配列番号36)、CD8ヒンジ/TM(配列番号35のアミノ酸247~315;配列番号37)、4-1BB ICD(配列番号36のアミノ酸316~357;配列番号38)、CD3z(配列番号35のアミノ酸358~469;配列番号39)、P2A(配列番号35のアミノ酸470~491;配列番号40)、IgKリーダー(配列番号35のアミノ酸494~514;配列番号41)、セツキシマブscFv(配列番号35のアミノ酸515~755;配列番号42)及びCD3 scFv(配列番号35のアミノ酸761~1003;配列番号43)を含むpMGH133-2173 scFv-CD8ヒンジ/TM-4-1BB ICD-CD3z-P2A-IgKリーダー-セツキシマブscFv-CD3 scFv-Hisタグ(配列番号35)
2173 scFv(配列番号35のアミノ酸1~246;配列番号36)
CD8ヒンジ/TM(配列番号35のアミノ酸247~315;配列番号37)
4-1BB ICD(配列番号35のアミノ酸316~357;配列番号38)
KRGRKKLLYIFKQPFMRPVQTTQEEDGCSCRFPEEEEGGCEL
CD3z(配列番号35のアミノ酸358~469;配列番号39)
P2A(配列番号35のアミノ酸470~491;配列番号40)
GSGATNFSLLKQAGDVEENPGP
IgKリーダー(配列番号35のアミノ酸494~514;配列番号41)
METDTLLLWVLLLWVPGSTGD
セツキシマブscFv(配列番号35のアミノ酸515~755;配列番号42)
CD3 scFv(配列番号35のアミノ酸761~1003;配列番号43)
【0178】
2173 scFv(配列番号44のアミノ酸1~246;配列番号45)、CD8ヒンジ/TM(配列番号44のアミノ酸247~315;配列番号46)、4-1BB ICD(配列番号44のアミノ酸316~357;配列番号47)、CD3z(配列番号44のアミノ酸358~469;配列番号48)、P2A(配列番号44のアミノ酸470~491;配列番号49)、IgKリーダー(配列番号44のアミノ酸494~514;配列番号50)、CD19 scFv(配列番号44のアミノ酸515~764;配列番号51)、CD3 scFv(配列番号44のアミノ酸770~1012;配列番号52)を含むpMGH134-2173 scFv-CD8ヒンジ/TM-4-1BB ICD-CD3z-P2A-IgKリーダー-CD19 scFv-CD3 scFv-Hisタグ(配列番号44)
2173 scFv(配列番号44のアミノ酸1~246;配列番号45)
CD8ヒンジ/TM(配列番号44のアミノ酸247~315;配列番号46)
4-1BB ICD(配列番号44のアミノ酸316~357;配列番号47)
KRGRKKLLYIFKQPFMRPVQTTQEEDGCSCRFPEEEEGGCEL
CD3z(配列番号44のアミノ酸358~469;配列番号48)
P2A(配列番号44のアミノ酸470~491;配列番号49)
GSGATNFSLLKQAGDVEENPGP
IgKリーダー(配列番号44のアミノ酸494~514;配列番号50)
METDTLLLWVLLLWVPGSTGD
CD19 scFv(配列番号44のアミノ酸515~764;配列番号51)
CD3 scFv(配列番号44のアミノ酸770~1012;配列番号52)
【0179】
IgKリーダー(配列番号53のアミノ酸1~21;配列番号54)、セツキシマブscFv(配列番号53のアミノ酸22~262;配列番号55)、CD3 scFv(配列番号53のアミノ酸268~510;配列番号56)、2173 scFv(配列番号53のアミノ酸517~762;配列番号57)、CD8ヒンジ/TM(配列番号53のアミノ763~831;配列番号58)、4-1BB ICD(配列番号53のアミノ酸832~873;配列番号59)、CD3z(配列番号53のアミノ酸874~985;配列番号60)を含むpMGH135-(NFAT応答要素)-IgKリーダー-セツキシマブscFv-CD3 scFv-Hisタグ-(EF1aプロモーター)-2173 scFv-CD8ヒンジ/TM-4-1BB ICD-CD3z(配列番号53)
(NFAT応答要素)
(EF1aプロモーター)
(注:上記の2つのポリペプチドは、便宜上、単一の配列識別子とともに表されるが、CAR及びBiTE成分が2つの別々のプロモーターにより別々に作製可能であることが理解される必要がある;上記を参照されたい)
IgKリーダー(配列番号53のアミノ酸1~21;配列番号54)
METDTLLLWVLLLWVPGSTGD
セツキシマブscFv(配列番号53のアミノ酸22~262;配列番号55)
CD3 scFv(配列番号53のアミノ酸268~510;配列番号56)
2173 scFv(配列番号53のアミノ酸517~762;配列番号57)
CD8ヒンジ/TM(配列番号53のアミノ酸763~831;配列番号58)
4-1BB ICD(配列番号53のアミノ酸832~873;配列番号59)
KRGRKKLLYIFKQPFMRPVQTTQEEDGCSCRFPEEEEGGCEL
CD3z(配列番号53のアミノ酸874~985;配列番号60)
【0180】
(NFAT応答要素)、IgKリーダー(配列番号61のアミノ酸1~21;配列番号62)、CD19 scFv(配列番号61のアミノ酸22~271;配列番号63)、CD3 scFv(配列番号61のアミノ酸277~519;配列番号64)、2173 scFv(配列番号61のアミノ酸526~771;配列番号65)、CD8ヒンジ/TM(配列番号61のアミノ酸772~840;配列番号66)、4-1BB ICD(配列番号61のアミノ酸841~882;配列番号67)、CD3z(配列番号61のアミノ酸883~994;配列番号68)を含むpMGH136-(NFAT応答要素)-IgKリーダー-CD19 scFv-CD3 scFv-Hisタグ-(EF1aプロモーター)-2173 scFv-CD8ヒンジ/TM-4-1BB ICD-CD3z(配列番号61)
(EF1aプロモーター)
(注:上記の2つのポリペプチドは、便宜上、単一の配列識別子とともに表されるが、CAR及びBiTE成分が2つの別々のプロモーターにより別々に作製可能であることが理解される必要がある;上記を参照されたい)
IgKリーダー(配列番号61のアミノ酸1~21;配列番号62)
METDTLLLWVLLLWVPGSTGD
CD19 scFv(配列番号61のアミノ酸22~271;配列番号63)
CD3 scFv(配列番号61のアミノ酸277~519;配列番号64)
2173 scFv(配列番号61のアミノ酸526~771;配列番号65)
CD8ヒンジ/TM(配列番号61のアミノ酸772~840;配列番号66)
4-1BB ICD(配列番号61のアミノ酸841~882;配列番号67)
KRGRKKLLYIFKQPFMRPVQTTQEEDGCSCRFPEEEEGGCEL
CD3z(配列番号61のアミノ酸883~994;配列番号68)
【0181】
本発明の他の態様は、以下の番号付けられたパラグラフの範囲内に含まれる。
1.異種核酸分子を含むキメラ抗原受容体(CAR)T細胞であって、異種核酸分子は、
(a)抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン及び細胞内シグナル伝達ドメインを含むCARをコードする第1のポリヌクレオチドと、
(b)治療物質をコードする第2のポリヌクレオチドと
を含む、キメラ抗原受容体(CAR)T細胞。
2.治療物質は、抗体試薬を含む、パラグラフ1のCAR T細胞。
3.抗体試薬は、一本鎖抗体又は単一ドメイン抗体を含む、パラグラフ2のCAR T細胞。
4.抗体試薬は、二重特異性抗体試薬を含む、パラグラフ2又は3のCAR T細胞。
5.二重特異性抗体試薬は、二重特異性T細胞誘導体(BiTE)を含む、パラグラフ4のCAR T細胞。
6.単一ドメイン抗体は、ラクダ科抗体を含む、パラグラフ3のCAR T細胞。
7.治療物質は、サイトカインを含む、パラグラフ1のCAR T細胞。
8.CAR及び治療物質は、別々のCAR及び治療物質分子を生成するために切断されるポリタンパク質の形態で作製される、パラグラフ1~7のいずれか1つのCAR T細胞。
9.ポリタンパク質は、CARと治療物質との間の切断可能部分を含む、パラグラフ8のCAR T細胞。
10.切断可能部分は、2Aペプチドを含む、パラグラフ9のCAR T細胞。
11.2Aペプチドは、P2A又はT2Aを含む、パラグラフ10のCAR T細胞。
12.CAR及び治療物質は、それぞれ構成的に発現される、パラグラフ1~11のいずれか1つのCAR T細胞。
13.CAR及び治療物質の発現は、伸長因子-1α(EF1α)プロモーターによって駆動される、パラグラフ1~12のいずれか1つのCAR T細胞。
14.治療物質は、任意選択的にT細胞受容体又はCARシグナル伝達によって誘導可能である誘導性プロモーターの制御下で発現される、パラグラフ1~11のいずれか1つのCAR T細胞。
15.誘導性プロモーターは、NFATプロモーターを含む、パラグラフ14のCAR T細胞。
16.CARは、構成的プロモーターの制御下で発現され、且つ治療物質は、任意選択的にT細胞受容体又はCARシグナル伝達によって誘導可能である誘導性プロモーターの制御下で発現される、パラグラフ1~11のいずれか1つのCAR T細胞。
17.CARは、1つ以上の同時刺激ドメインをさらに含む、パラグラフ1~16のいずれか1つのCAR T細胞。
18.CARの抗原結合ドメインは、抗体、一本鎖抗体、単一ドメイン抗体又はリガンドを含む、パラグラフ1~17のいずれか1つのCAR T細胞。
19.CARの膜貫通ドメインは、任意選択的に配列番号4、10、16、22、28、37、46、58及び66のいずれか1つの配列又はその変異体を含むCD8ヒンジ/膜貫通ドメインを含む、パラグラフ1~18のいずれか1つのCAR T細胞。
20.細胞内シグナル伝達ドメインは、任意選択的に配列番号6、12、18、24、30、39、48、60及び68のいずれか1つの配列又はその変異体を含むCD3ζ細胞内シグナル伝達ドメインを含む、パラグラフ1~19のいずれか1つのCAR T細胞。
21.任意選択的に、配列番号5、11、17、23、29、38、47、59及び67のいずれか1つの配列又はその変異体を含む4-1BB同時刺激ドメインを含む、パラグラフ1~20のいずれか1つのCAR T細胞。
22.CAR抗原結合ドメイン又は治療物質は、治療物質が抗体試薬を含むとき、腫瘍関連抗原に結合する、パラグラフ1~21のいずれか1つのCAR T細胞。
23.CAR抗原結合ドメイン又は治療物質が結合する腫瘍関連抗原は、固形腫瘍関連抗原である、パラグラフ22のCAR T細胞。
24.CAR抗原結合ドメイン又は治療物質が結合する腫瘍関連抗原は、上皮成長因子受容体変異体III(EGFRvIII)、EGFR、CD19、前立腺特異膜抗原(PSMA)又はIL-13受容体α2(IL-13Rα2)を含み、且つ任意選択的に、CAR抗原結合ドメイン又は治療物質は、配列番号21、27、33、36、42、45、51、55、57、63、65及びその変異体からなる群から選択される配列を含む、パラグラフ22又は23のCAR T細胞。
25.CAR抗原結合ドメイン又は治療物質は、治療物質が抗体試薬を含むとき、Treg関連抗原に結合する、パラグラフ1~21のいずれか1つのCAR T細胞。
26.CAR抗原結合ドメイン又は治療物質が結合するTreg関連抗原は、反復優位糖タンパク質A(GARP)、潜在関連ペプチド(LAP)、CD25及び細胞傷害性Tリンパ球関連抗原-4(CTLA-4)からなる群から選択され、且つ任意選択的に、CAR抗原結合ドメイン又は治療物質は、配列番号3、9、15、25及びその変異体からなる群から選択される配列を含む、パラグラフ25のCAR T細胞。
27.CARをコードするポリヌクレオチドを含むCAR T細胞であって、CARは、抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン及び細胞内シグナル伝達ドメインを含み、且つ抗原結合ドメインは、Treg関連抗原に結合する、CAR T細胞。
28.Treg関連抗原は、GARP、LAP、CD25及びCTLA-4からなる群から選択される、パラグラフ27のCAR T細胞。
29.CARは、1つ以上の同時刺激ドメインをさらに含む、パラグラフ27又は28のCAR T細胞。
30.CARの抗原結合ドメインは、任意選択的に配列番号3、9、15、25及びその変異体からなる群から選択される配列を含むscFv又は単一ドメイン抗体を含む、パラグラフ27~29のいずれか1つのCAR T細胞。
31.配列番号26、配列番号35、配列番号44、配列番号53、配列番号61、配列番号19、配列番号1、配列番号7及び配列番号13のいずれか1つのアミノ酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列をコードする異種核酸分子を含むCAR T細胞。
32.配列番号26、配列番号35、配列番号44、配列番号53、配列番号61、配列番号19、配列番号1、配列番号7及び配列番号13のいずれか1つのアミノ酸配列をコードする異種核酸分子を含む、パラグラフ31のCAR T細胞。
33.パラグラフ1~32のいずれか1つの(i)CARポリペプチド又は(ii)CARポリペプチド及び治療物質を含むポリタンパク質をコードする核酸分子。
34.パラグラフ1~32のいずれか1つのCARポリペプチド又はCARポリペプチド及び治療物質を含むポリタンパク質。
35.パラグラフ1~34のいずれか1つの1つ以上のCAR T細胞、核酸分子、CARポリペプチド又はポリタンパク質を含む医薬組成物。
36.癌を有する患者を治療する方法であって、パラグラフ1~32のいずれか1つの1つ以上のCAR T細胞を含む医薬組成物又はパラグラフ35の医薬組成物を患者に投与することを含む方法。
37.全身毒性は、腫瘍微小環境を標的にすることによって低下される、パラグラフ36の方法。
38.癌は、1つ以上の固形腫瘍の存在によって特徴付けられる、パラグラフ36又は37の方法。
39.癌は、腫瘍浸潤性Tregによって特徴付けられる、パラグラフ36~38のいずれか1つの方法。
40.癌は、神経膠芽腫である、パラグラフ36~39のいずれか1つの方法。
41.癌を有する患者を治療する方法であって、腫瘍毒性抗体又はサイトカインを分泌するように遺伝子組換えされたCAR T細胞産物を患者に投与することを含み、全身毒性は、癌の毒性を腫瘍微小環境に局所的に誘導することによって低下される、方法。
42.CAR T細胞は、CTLA4、CD25、GARP、LAP、IL15、CSF1R若しくはEGFRに対する抗体又は腫瘍微小環境に対する二重特異性抗体を送達するように遺伝子組換えされる、パラグラフ41の方法。
43.二重特異性抗体は、EGFR及びCD3に特異的である、パラグラフ42の方法。
44.疾患又は病理を治療するために治療物質を患者における組織又は臓器に送達する方法であって、治療抗体、毒素又は作用剤を分泌するように遺伝子組換えされたCAR T細胞を前記患者に投与することを含み、治療抗体、毒素又は作用剤は、単独では組織又は臓器に侵入又は浸透することができないであろう、方法。
45.組織又は臓器は、神経系におけるものである、パラグラフ44の方法。
46.神経系は、中枢神経系である、パラグラフ45の方法。
47.中枢神経系は、脳である、パラグラフ46の方法。
48.疾患又は病理は、神経膠芽腫である、パラグラフ44~47のいずれか1つの方法。
49.治療抗体は、抗EGFR(抗上皮成長因子受容体)又は抗EGFRvIIIである、パラグラフ44の方法。
【0182】
以下の特許請求の範囲は、あくまで代表的なものであり、開示される本発明の範囲を限定しないことを意味する。少なくとも1つの態様において、本発明者らは、以下のように特許請求する。