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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024063000
(43)【公開日】2024-05-10
(54)【発明の名称】新規なクレノラニブの使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/4709 20060101AFI20240501BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240501BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240501BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240501BHJP
   A61K 31/7068 20060101ALI20240501BHJP
   A61K 31/704 20060101ALI20240501BHJP
【FI】
A61K31/4709
A61K45/00
A61P35/00
A61P43/00 121
A61K31/7068
A61K31/704
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024015801
(22)【出願日】2024-02-05
(62)【分割の表示】P 2022510920の分割
【原出願日】2020-01-10
(31)【優先権主張番号】62/888,717
(32)【優先日】2019-08-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】16/738,108
(32)【優先日】2020-01-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】512253006
【氏名又は名称】アログ・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Arog Pharmaceuticals,Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100162684
【弁理士】
【氏名又は名称】呉 英燦
(74)【代理人】
【識別番号】100126778
【弁理士】
【氏名又は名称】品川 永敏
(72)【発明者】
【氏名】ジャイン,ビナイ ケイ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】増殖性障害に罹っている患者の測定可能な残存病変をモニターし、残存病変を低減し、寛解を維持するための方法を提供する。
【解決手段】FLT3チロシンキナーゼ変異を伴うか、または伴わない、増殖性障害を引き起こす変異を有する対象を治療するための方法であって、治療上有効な量のクレノラニブまたはその医薬的に許容される塩を、アルキル化剤、代謝拮抗剤、天然生成物、またはこれらの組み合わせのうちの少なくとも1つと組み合わせて前記対象に投与することを含む、方法である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
FLT3チロシンキナーゼ変異を伴うか、または伴わない、増殖性障害を引き起こす変異を有する対象を治療するための方法であって、治療上有効な量のクレノラニブまたはその医薬的に許容される塩を、アルキル化剤、代謝拮抗剤、天然生成物、またはこれらの組み合わせのうちの少なくとも1つと組み合わせて前記対象に投与することを含む、方法。
【請求項2】
前記増殖性障害の微小残存病変が、
a.腫瘍性細胞を含む前記対象から試料を取得し、
b.前記試料をシングルセル配列決定することであって、前記配列決定が、少なくとも1,000,000個の読取/試料を含むものであり、次いで
c.10%またはそれ以下の対立遺伝子ドロップアウト率である試料のみからの変異を分析することによって検出される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
1つまたはそれ以上の変異の存在または不存在が、前記増殖性障害と相関する患者特異的な単一細胞の変異プロファイルを作成するために用いられる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
1つまたはそれ以上の同時発生する変異が、NPM1、DNMT3A、NRAS、KRAS、JAK2、PTPN11、TET2、IDH1、IDH2、WT1、RUNX1、CEBPA、ASXL1、BCOR、SF3B1、U2AF1、STAG2、SETBP1、ZRSR2、GRB7、SRSF2、MLL、NUP98、ETV6、TCL1A、TUSC3、BRP1、CD36、TYK2、TP53、EZH2、GATA2、KIT、PHF6、MYC、ERG、MYD88、RAD21、STAT3、NF1、BRAF、KDM6A、SETBP1、CALR、CBL、KMT2A、PHF6、SMC1A、CHEK2、GNAS、PPM1D、SMC3、ZRSR2、CSF3R、HRAS、MPL、PTEN、ATM、またはMUTYHのうちの少なくとも1つである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記FLT3変異が、FLT3-ITD、FLT3-TKD、または他のFLT3変異バリアントのうちの少なくとも1つである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記FLT3-TKD変異が、F612、L616、M664、M665、N676、A680、F691、D835、I836、D839、N841、Y842、またはA848のうちの少なくとも1つにおける変化、欠失、または点変異である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記FLT3変異が、L20、D324、L442、E444、S451、V491、Y572、E573、L576、Y572、Q580、V591、T582、D586、Y589、V592、F594、E596、E598、Y599、D600、R607、またはA848のうちの少なくとも1つにおける変化または欠失を生じる点変異を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記対象からの1つまたはそれ以上の縦方向に連続する試料から前記工程(a)から(c)を繰り返し、
1つまたはそれ以上の縦方向の単一細胞ゲノムの変異プロファイルを組み合わせて、治療上有効な量のクレノラニブまたはその医薬的に許容される塩の投与に応答して変化する1つまたはそれ以上の同時発生する変異の存在または不存在を決定し、次いで
前記増殖性障害と相関する治療後の患者特異的な単一細胞の変異プロファイルのパーセンテージの増加または減少として測定される増殖性障害の測定可能な残存病変状態を決定する工程をさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項9】
前記取得される試料が、骨髄、末梢血、または腫瘍組織のうちの少なくとも1つである、請求項2に記載の方法。
【請求項10】
前記シングルセル配列決定が、1個の細胞あたり1つまたはそれ以上のマーカーを用いてゲノムDNAを調製し、次いで調製されたDNAを配列決定することを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項11】
前記シングルセル配列決定が、MiSeq、HiSeq、またはNovaSeqプラットフォームを使用する、請求項2に記載の方法。
【請求項12】
前記アルキル化剤が、カルムスチン、クロラムブシル、シクロホスファミド、イホスファミド、ロムスチン、ストレプトゾトシン、テモゾロミド、シスプラチン、カルボプラチン、ネダプラチン、またはオキサリプラチンのうちの少なくとも1つから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記代謝拮抗剤が、メトトレキサート、ペメトレキセド、ラルチトレキセド、シタラビン、フルダラビン、フルオロウラシル、フロクスウリジン、カペシタビン、またはゲムシタビンのうちの少なくとも1つから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記天然生成物が、ビンブラスチン、ビノレルビン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビンフルニン、パクリタキセル、ドセタキセル、カバジタキセル、エトポシド、テニポシド、トポテカン、イリノテカン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、イダルビシン、エピルビシン、バルルビシン、ミトキサントロン、ブレオマイシン、エストラムスチン、および/またはマイトマイシンのうちの少なくとも1つから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記対象が、小児患者である、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
1つまたはそれ以上の同時発生するRAS変異を有する野生型FLT3を含む増殖性障害に罹っている対象を治療するための方法であって、治療上有効な量のクレノラニブまたはその医薬的に許容される塩を、アルキル化剤、代謝拮抗剤、天然生成物、またはこれらの組み合わせのうちの少なくとも1つと組み合わせて投与することを含む、方法。
【請求項17】
前記増殖性障害の微小残存病変が、
a.腫瘍性細胞を含む対象から試料を取得し、
b.前記試料をシングルセル配列決定することであって、前記配列決定が少なくとも1,000,000個の読取/試料を含むものであり、次いで
c.10%またはそれ以下の対立遺伝子ドロップアウト率である試料のみからの変異を分析することによって検出される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
1つまたはそれ以上の変異の存在または不存在が、増殖性障害と相関する患者特異的な単一細胞の変異プロファイルを作成するために用いられる、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記RAS変異が、NRASまたはKRAS変異のうちの少なくとも1つである、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記1つまたはそれ以上の同時発生する変異が、FLT3、NPM1、DNMT3A、JAK2、PTPN11、TET2、IDH1、IDH2、WT1、RUNX1、CEBPA、ASXL1、BCOR、SF3B1、U2AF1、STAG2、SETBP1、ZRSR2、GRB7、SRSF2、MLL、NUP98、ETV6、TCL1A、TUSC3、BRP1、CD36、TYK2、TP53、EZH2、GATA2、KIT、PHF6、MYC、ERG、MYD88、RAD21、STAT3、NF1、BRAF、KDM6A、SETBP1、CALR、CBL、KMT2A、PHF6、SMC1A、CHEK2、GNAS、PPM1D、SMC3、ZRSR2、CSF3R、HRAS、MPL、PTEN、ATM、またはMUTYHのうちの少なくとも1つである、請求項16に記載の方法。
【請求項21】
対象からの1つまたはそれ以上の縦方向に連続する試料から工程(a)から(c)を繰り返し、
1つまたはそれ以上の縦方向の単一細胞ゲノムの変異プロファイルを組み合わせて、治療上有効な量のクレノラニブまたはその医薬的に許容される塩の投与に応答して変化する1つまたはそれ以上の同時発生する変異の存在または不存在を決定し、次いで
前記増殖性障害と相関する治療後の患者特異的な単一細胞の変異プロファイルのパーセンテージの増加または減少として測定される前記増殖性障害の測定可能な残存病変状態を決定する工程をさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項22】
前記取得される試料が、骨髄、末梢血、または腫瘍組織のうちの少なくとも1つである、請求項17に記載の方法。
【請求項23】
前記シングルセル配列決定が、1個の細胞あたり1つまたはそれ以上のマーカーを用いてゲノムDNAを調製し、次いで調製されたDNAを配列決定することを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項24】
前記シングルセル配列決定が、MiSeq、HiSeq、またはNovaSeqプラットフォームを使用する、請求項17に記載の方法。
【請求項25】
前記アルキル化剤が、カルムスチン、クロラムブシル、シクロホスファミド、イホスファミド、ロムスチン、ストレプトゾトシン、テモゾロミド、シスプラチン、カルボプラチン、ネダプラチン、またはオキサリプラチンのうちの少なくとも1つから選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項26】
前記代謝拮抗剤が、メトトレキサート、ペメトレキセド、ラルチトレキセド、シタラビン、フルダラビン、フルオロウラシル、フロクスウリジン、カペシタビン、またはゲムシタビンのうちの少なくとも1つから選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項27】
前記天然生成物が、ビンブラスチン、ビノレルビン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビンフルニン、パクリタキセル、ドセタキセル、カバジタキセル、エトポシド、テニポシド、トポテカン、イリノテカン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、イダルビシン、エピルビシン、バルルビシン、ミトキサントロン、ブレオマイシン、エストラムスチン、および/またはマイトマイシンのうちの少なくとも1つから選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項28】
前記対象が、FLT3チロシンキナーゼ変異をさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項29】
前記対象が、小児患者である、請求項17に記載の方法。
【請求項30】
過去に治療されて増殖性障害に罹っていない対象における前記増殖性障害の再発を予防するための方法であって、治療上有効な量のクレノラニブまたはその医薬的に許容される塩を、導入化学療法、強化療法に対する応答後または造血幹細胞移植後に十分な期間投与して、前記増殖性障害の再発を予防することを含む方法。
【請求項31】
前記増殖性障害が、1つまたはそれ以上の機能変化変異および少なくとも1つの再発性遺伝子変異を含むことを特徴とする、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記増殖性障害が、1つまたはそれ以上の同時発生する変異を伴うか、または伴わない野生型FLT3を含むことを特徴とする、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
前記対象が、
カルムスチン、クロラムブシル、シクロホスファミド、イホスファミド、ロムスチン、ストレプトゾトシン、テモゾロミド、シスプラチン、カルボプラチン、ネダプラチン、またはオキサリプラチンのうちの少なくとも1つから選択されるアルキル化剤、
メトトレキサート、ペメトレキセド、ラルチトレキセド、シタラビン、フルダラビン、フルオロウラシル、フロクスウリジン、カプシタビン、またはゲムシタビンのうちの少なくとも1つから選択される代謝拮抗剤、あるいは
ビンブラスチン、ビノレルビン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビンフルニン、パクリタキセル、ドセタキセル、カバジタキセル、エトポシド、テニポシド、トポテカン、イリノテカン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、イダルビシン、エピルビシン、バルルビシン、ミトキサントロン、ブレオマイシン、エストラムスチン、および/またはマイトマイシンのうちの少なくとも1つから選択される天然生成物
で過去に治療されたものである、請求項30に記載の方法。
【請求項34】
前記1つまたはそれ以上の同時発生する変異が、NPM1、DNMT3A、NRAS、KRAS、JAK2、PTPN11、TET2、IDH1、IDH2、WT1、RUNX1、CEBPA、ASXL1、BCOR、SF3B1、U2AF1、STAG2、SETBP1、ZRSR2、GRB7、SRSF2、MLL、NUP98、ETV6、TCL1A、TUSC3、BRP1、CD36、TYK2、TP53、EZH2、GATA2、KIT、PHF6、MYC、ERG、MYD88、RAD21、STAT3、NF1、BRAF、KDM6A、SETBP1、CALR、CBL、KMT2A、PHF6、SMC1A、CHEK2、GNAS、PPM1D、SMC3、ZRSR2、CSF3R、HRAS、MPL、PTEN、ATM、またはMUTYHのうちの少なくとも1つである、請求項28に記載の方法。
【請求項35】
前記対象が、小児患者である、請求項30に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の技術分野
本発明は、最初にクローンの不均一性を検出し、次いでクレノラニブを用いてFLT3に関連する細胞増殖性障害を予防し、または治療することによって、細胞または対象における正常および変異FLT3のキナーゼ活性を減少させ、または阻害するための方法に関する。
【0002】
連邦政府の資金提供した研究の宣誓
適用できない。
【0003】
コンパクトディスクで提出された材料の参照による組み込み
適用できない。
【背景技術】
【0004】
発明の背景
本発明の範囲を限定することなく、この背景技術では、癌治療と組み合わせて、治療期間中の測定可能な残存病変をモニターし、再発性の遺伝子変異の存在または不存在を決定し、次いでクレノラニブまたはその医薬的に許容される塩を、適切な再発性遺伝子変異を保有する患者に投与して、測定可能な残存病変を除去し、および/または疾患の寛解を維持するための遺伝学的アッセイの新規な使用について説明する。
【0005】
白血病などの様々な増殖性障害は、再発性の遺伝子変異または変化の異なるパターンと関連することが多い。特に、急性骨髄性白血病(AML)は、FLT3、DNMT3A、NPM1などの一連の遺伝子の再発性変異に関連する(Tyner et al., 2018)。白血病誘発の性質により、AMLは、異なる部分集団の細胞が様々な組み合わせの遺伝子変異を発現する多クローン性で異種性を有する。化学療法剤もしくは標的化薬剤またはこれらの組み合わせによる治療後、患者は形態学的に完全寛解となりうるが、それでも白血病関連の変異を有するわずかな細胞が持続する。これは、測定可能な残存病変またはMRDとして知られている(Ding et al., 2012)。MRDの患者は、形態学的には寛解状態にあるが、疾患の再発を予防するために長期の治療投与の利益を受けうる。このタイプの治療投与は、よくメンテナンスと称される。
【0006】
受容体型チロシンキナーゼFLT3の変異は、再発のリスクが高く、予後が悪いことに関連する。これは、症例の約20~30%で発生するAMLで最も一般的な遺伝子変化の1つでもある(Daver, Schlenk, Russell, & Levis, 2019)。FLT3変異は、他の増殖性障害にも関連する。この遺伝子における変異の頻度および予後の価値により、FLT3は、増殖性障害、特にAMLなどの血液悪性腫瘍において非常に魅力的な創薬ターゲットとなっている。このタンパク質を標的とする薬剤は、最近承認されたか、または現在開発中である。現在開発中のこのような薬剤の1つは、FLT3変異に対して顕著な活性を有するチロシンキナーゼ阻害剤のクレノラニブである。
【0007】
FLT3変異は、患者の予後に影響を与えるため、MRDにおけるこれらの変異の持続性は特に懸念されている。測定可能な残存病変をモニターするための従来の方法は、非常に少数の細胞の変異を検出することができないことによって制限されているか、または時間の経過や施設間によって信頼され得ない細胞マーカーの発現パターンの変化に依存している(Ommen, 2016)。よって、再発のリスクの増加に関連する再発性の遺伝子変異を検出して、医師がより適切な方法または治療法を選択し、測定可能な残存病変を除去するか、または減少させ、それにより疾患の寛解を維持することを可能にするための改善された感度を有する方法が必要とされている。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、1つまたはそれ以上の同時発生するFLT3変異を伴うか、または伴わずに、野生型FLT3を含む増殖性障害の対象を治療するための方法であって、治療上有効な量のクレノラニブまたはその医薬的に許容される塩を、アルキル化剤、代謝拮抗剤、天然生成物、またはこれらの組み合わせのうちの少なくとも1つと組み合わせて前記対象に投与することを含む方法を含む。別の態様において、1つまたはそれ以上の同時発生するRAS変異を伴う野生型FLT3を含む増殖性障害の対象を治療するための方法であって、治療上有効な量のクレノラニブまたはその医薬的に許容される塩を、アルキル化剤、代謝拮抗剤、天然生成物、またはこれらの組み合わせのうちの少なくとも1つと組み合わせて前記対象に投与することを含む方法である。さらに別の態様において、増殖性障害の再発を予防するための方法であって、治療上有効な量のクレノラニブまたはその医薬的に許容される塩を、単一薬剤として、または別の薬剤と組み合わせて投与することを含む方法である。1の態様において、前記増殖性障害は、1つまたはそれ以上の機能変化変異および少なくとも1つの再発性遺伝子変異を含むことを特徴とする。前記微小残存病変は、前記対象から試料を取得し、上記に記載の遺伝子の遺伝子コードをシングルセル配列決定することであって、前記配列決定が少なくとも1,000,000個の読取/試料を含むものであり、次いで10%またはそれ以下の対立遺伝子ドロップアウト率である試料のみを分析することによって検出される。別の態様において、1つまたはそれ以上の変異の存在または不存在は、増殖性障害と相関する患者特異的な単一細胞の変異プロファイルを作成する上記に記載の遺伝子で見出される。別の態様において、上記に記載の再発性遺伝子変異は、FLT3、NPM1、DNMT3A、NRAS、KRAS、JAK2、PTPN11、TET2、IDH1、IDH2、WT1、RUNX1、CEBPA、ASXL1、BCOR、SF3B1、U2AF1、STAG2、SETBP1、ZRSR2、GRB7、SRSF2、MLL、NUP98、ETV6、TCL1A、TUSC3、BRP1、CD36、TYK2、TP53、EZH2、GATA2、KIT、PHF6、MYC、ERG、MYD88、RAD21、STAT3、NF1、BRAF、KDM6A、SETBP1、CALR、CBL、KMT2A、PHF6、SMC1A、CHEK2、GNAS、PPM1D、SMC3、ZRSR2、CSF3R、HRAS、MPL、PTEN、ATM、またはMUTYHなどのうちの少なくとも1つで見出される。別の態様において、前記見出されたFLT3変異として、FLT3-ITD、FLT3-TKD、または他のFLT3変異バリアントが含まれる。別の態様において、前記FLT3-TKD変異には、少なくとも1つのF612、L616、L663、M664、M665、N676、A680、F691、A833、R834、D835、I836、D839、N841、Y842、またはA848における変化または欠失を生じる点変異が含まれる。別の態様において、FLT3バリアント変異には、L20、D324、K429、L442、E444、S451、V491、Y572、E573、L576、Y572、Q580、V591、T582、D586、Y589、V592、F594、E596、E598、Y599、D600、R607、またはA848などのうちの少なくとも1つにおける変化または欠失を生じる点変異が含まれる。別の態様において、前記対象は、小児対象である。
【0009】
別の態様において、対象からの1つまたはそれ以上の縦方向に連続する試料から工程(a)から(c)を繰り返し、1つまたはそれ以上の縦方向の単一細胞ゲノムの変異プロファイルを組み合わせて、治療上有効な量のクレノラニブまたはその医薬的に許容される塩の投与に対する応答として変化する1つまたはそれ以上の変異の存在または不存在を決定し、次いで前記増殖性障害と相関する治療後の患者特異的な単一細胞の変異プロファイルのパーセンテージの増加または減少から前記増殖性障害の測定可能な残存病変状態を決定する工程をさらに含む。別の態様において、取得される試料は、骨髄、末梢血、または腫瘍組織のうちの少なくとも1つである。別の態様において、前記シングルセル配列決定は、同一細胞から単一のヌクレオチドバリアント、バリアントのコピー数、およびタンパク質変化を同時に検出するためのシングルセルマルチオミクスアッセイ(例えば、TAPESTRI(登録商標)プラットフォーム)を用いて、1個の細胞あたりの関連するマーカーを有する上記に記載の遺伝子のためのゲノムDNAを調製し、次いで前記調製されたDNAを、MiSeq、HiSeq、またはNovaSeqプラットフォームのうちの少なくとも1つを用いて配列決定することから構成される。別の態様において、前記対象は、小児対象である。
【0010】
別の実施態様において、本発明には、1つまたはそれ以上の同時発生するRAS変異を有する野生型FLT3を含む増殖性障害に罹っている対象を治療するための方法であって、治療上有効な量のクレノラニブまたはその医薬的に許容される塩を、アルキル化剤、代謝拮抗剤、天然生成物、またはこれらの組み合わせのうちの少なくとも1つと組み合わせて投与することを含む方法が含まれる。前記増殖性障害の微小残存病変は、(a)腫瘍性細胞を含む対象から試料を取得し、(b)前記試料をシングルセル配列決定することであって、前記配列決定が少なくとも1,000,000個の読取/試料を含むものであり、次いで(c)10%またはそれ以下の対立遺伝子ドロップアウト率である試料のみからの変異を分析することによって検出される。1つまたはそれ以上の変異の存在または不存在は、増殖性障害と相関する患者特異的な単一細胞の変異プロファイルを作成するために用いられる。RAS変異は、NRASまたはKRAS変異のうちの少なくとも1つである。別の態様において、1つまたはそれ以上の同時発生する変異は、FLT3、NPM1、DNMT3A、JAK2、PTPN11、TET2、IDH1、IDH2、WT1、RUNX1、CEBPA、ASXL1、BCOR、SF3B1、U2AF1、STAG2、SETBP1、ZRSR2、GRB7、SRSF2、MLL、NUP98、ETV6、TCL1A、TUSC3、BRP1、CD36、TYK2、TP53、EZH2、GATA2、KIT、PHF6、MYC、ERG、MYD88、RAD21、STAT3、NF1、BRAF、KDM6A、SETBP1、CALR、CBL、KMT2A、PHF6、SMC1A、CHEK2、GNAS、PPM1D、SMC3、ZRSR2、CSF3R、HRAS、MPL、PTEN、ATM、またはMUTYHのうちの少なくとも1つである。別の態様において、対象からの1つまたはそれ以上の縦方向に連続する試料から工程(a)から(c)を繰り返し、1つまたはそれ以上の縦方向の単一細胞ゲノムの変異プロファイルを組み合わせて、治療上有効な量のクレノラニブまたはその医薬的に許容される塩の投与に応答して変化する1つまたはそれ以上の変異の存在または不存在を決定し、次いで前記増殖性障害と相関する治療後の患者特異的な単一細胞の変異プロファイルのパーセンテージの増加または減少として測定される前記増殖性障害の測定可能な残存病変状態を決定する工程をさらに含む。別の態様において、取得される試料は、骨髄、末梢血、または腫瘍組織のうちの少なくとも1つである。別の態様において、前記シングルセル配列決定は、1個の細胞あたり1つまたはそれ以上のマーカーを用いてゲノムDNAを調製し、次いで調製されたDNAを配列決定することを含む。別の態様において、前記シングルセル配列決定が、MiSeq、HiSeq、またはNovaSeqプラットフォームを使用する。別の態様において、前記アルキル化剤が、カルムスチン、クロラムブシル、シクロホスファミド、イホスファミド、ロムスチン、ストレプトゾトシン、テモゾロミド、シスプラチン、カルボプラチン、ネダプラチン、またはオキサリプラチンのうちの少なくとも1つから選択される。別の態様において、前記代謝拮抗剤は、メトトレキサート、ペメトレキセド、ラルチトレキセド、シタラビン、フルダラビン、フルオロウラシル、フロクスウリジン、カペシタビン、またはゲムシタビンのうちの少なくとも1つから選択される。別の態様において、前記天然生成物は、ビンブラスチン、ビノレルビン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビンフルニン、パクリタキセル、ドセタキセル、カバジタキセル、エトポシド、テニポシド、トポテカン、イリノテカン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、イダルビシン、エピルビシン、バルルビシン、ミトキサントロン、ブレオマイシン、エストラムスチン、および/またはマイトマイシンのうちの少なくとも1つから選択される。別の態様において、前記対象は、小児対象である。
【0011】
別の実施態様において、本発明には、過去に治療されて増殖性障害に罹っていない対象における前記増殖性障害の再発を予防するための方法であって、治療上有効な量のクレノラニブまたはその医薬的に許容される塩を、導入化学療法、強化療法に対する応答後または造血幹細胞移植後に十分な期間投与して、前記増殖性障害の再発を予防することを含む方法が含まれる。1の態様において、前記増殖性障害は、1つまたはそれ以上の機能変化変異および少なくとも1つの再発性遺伝子変異を含むことを特徴とする。別の態様において、前記増殖性障害は、1つまたはそれ以上の同時発生する変異を伴うか、または伴わない野生型FLT3を含むことを特徴とする。別の態様において、前記対象は、カルムスチン、クロラムブシル、シクロホスファミド、イホスファミド、ロムスチン、ストレプトゾトシン、テモゾロミド、シスプラチン、カルボプラチン、ネダプラチン、またはオキサリプラチンのうちの少なくとも1つから選択されるアルキル化剤;メトトレキサート、ペメトレキセド、ラルチトレキセド、シタラビン、フルダラビン、フルオロウラシル、フロクスウリジン、カペシタビン、またはゲムシタビンのうちの少なくとも1つから選択される代謝拮抗剤;あるいはビンブラスチン、ビノレルビン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビンフルニン、パクリタキセル、ドセタキセル、カバジタキセル、エトポシド、テニポシド、トポテカン、イリノテカン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、イダルビシン、エピルビシン、バルルビシン、ミトキサントロン、ブレオマイシン、エストラムスチン、および/またはマイトマイシンのうちの少なくとも1つから選択される天然生成物で過去に治療されたものである。別の態様において、前記1つまたはそれ以上の同時発生する変異は、NPM1、DNMT3A、NRAS、KRAS、JAK2、PTPN11、TET2、IDH1、IDH2、WT1、RUNX1、CEBPA、ASXL1、BCOR、SF3B1、U2AF1、STAG2、SETBP1、ZRSR2、GRB7、SRSF2、MLL、NUP98、ETV6、TCL1A、TUSC3、BRP1、CD36、TYK2、TP53、EZH2、GATA2、KIT、PHF6、MYC、ERG、MYD88、RAD21、STAT3、NF1、BRAF、KDM6A、SETBP1、CALR、CBL、KMT2A、PHF6、SMC1A、CHEK2、GNAS、PPM1D、SMC3、ZRSR2、CSF3R、HRAS、MPL、PTEN、ATM、またはMUTYHのうちの少なくとも1つである。別の態様において、前記対象は、小児対象である。
【0012】
本発明は、増殖性障害に罹っている対象における測定可能な残存病変を軽減するための方法を提供する。本発明の他の特徴および利点は、以下の本発明の詳細な説明および特許請求の範囲から明らかである。
【0013】
図面の簡単な説明
本発明の特徴および利点をより完全に理解するために、ここでは、添付の図面とともに本発明の詳細な説明を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、患者の縦方向の骨髄試料の図である。正常な野生型(WT)細胞を灰色で示す。この図は、診断時、導入療法開始から35日後、および維持期間の3つの時点における試料内のサブクローン集団の総数を表す。試料は、バリアントFLT3およびFLT3活性化変異が、クレノラニブに加えた集中導入化学療法の併用療法、クレノラニブとの高用量シタラビン(HiDAC)強化療法、および変異クリアランスのための単剤クレノラニブ維持療法によって排除されたことを示す。
図2-1】図2Aおよび2Bは、診断時(図2A)および導入療法開始から35日後(図2B)の患者の骨髄試料内における変異KRASを発現する各細胞(y軸)を示す散布図である。図2Aは、前記細胞集団が左から右への下記変異を含むことを示す;DNMT3A/NPM1/FLT3-A680V/FLT3-ITD、DNMT3A/NPM1/FLT3-N841K、野生型、DNMT3A/NPM1/FLT3-A680V、DNMT3A/NPM1/FLT3-D839G、そして最後に様々な変異を有する小さなサブクローン細胞。図2Bは、前記細胞集団が下記のとおりであることを示す:野生型、DNMT3A/NPM1、DNMT3A、およびDNMT3A/NPM1/FLT3-ITD。クレノラニブによる治療は、大部分の前記変異を含有する癌細胞集団を排除した。
図2-2】図2Aおよび2Bは、診断時(図2A)および導入療法開始から35日後(図2B)の患者の骨髄試料内における変異KRASを発現する各細胞(y軸)を示す散布図である。図2Aは、前記細胞集団が左から右への下記変異を含むことを示す;DNMT3A/NPM1/FLT3-A680V/FLT3-ITD、DNMT3A/NPM1/FLT3-N841K、野生型、DNMT3A/NPM1/FLT3-A680V、DNMT3A/NPM1/FLT3-D839G、そして最後に様々な変異を有する小さなサブクローン細胞。図2Bは、前記細胞集団が下記のとおりであることを示す:野生型、DNMT3A/NPM1、DNMT3A、およびDNMT3A/NPM1/FLT3-ITD。クレノラニブによる治療は、大部分の前記変異を含有する癌細胞集団を排除した。
図3-1】図3Aおよび3Bは、診断時(図3A)および導入療法開始から35日後(図3B)の患者の骨髄試料内における変異DNMT3を発現する各細胞(y軸)を示す散布図である。図3Aは、細胞集団が左から右への下記変異を含むことを示す;DNMT3A/NPM1/FLT3-A680V/FLT3-ITD、DNMT3A/NPM1/FLT3-N841K、野生型、DNMT3A/NPM1/FLT3-A680V、およびDNMT3A/NPM1/FLT3-D839G。図3Bは、前記細胞集団が下記のとおりであることを示す:野生型、DNMT3A/NPM1、DNMT3A、DNMT3A/NPM1/FLT3-ITD、およびFLT3-D835E。クレノラニブによる治療は、大部分の前記変異を含有する癌細胞集団を排除した。
図3-2】図3Aおよび3Bは、診断時(図3A)および導入療法開始から35日後(図3B)の患者の骨髄試料内における変異DNMT3を発現する各細胞(y軸)を示す散布図である。図3Aは、細胞集団が左から右への下記変異を含むことを示す;DNMT3A/NPM1/FLT3-A680V/FLT3-ITD、DNMT3A/NPM1/FLT3-N841K、野生型、DNMT3A/NPM1/FLT3-A680V、およびDNMT3A/NPM1/FLT3-D839G。図3Bは、前記細胞集団が下記のとおりであることを示す:野生型、DNMT3A/NPM1、DNMT3A、DNMT3A/NPM1/FLT3-ITD、およびFLT3-D835E。クレノラニブによる治療は、大部分の前記変異を含有する癌細胞集団を排除した。
図4-1】図4Aおよび4Bは、診断時(図4A)および誘導開始から35日後(図4B)の患者の骨髄試料内における変異NPM1を発現する各細胞(y軸)を示す散布図である。図4Aは、細胞集団が左から右への下記変異を含むことを示す;DNMT3A/NPM1/FLT3-A680V/FLT3-ITD、DNMT3A/NPM1/FLT3-N841K、野生型、DNMT3A/NPM1/FLT3-A680V、およびDNMT3A/NPM1/FLT3-D839G、そして最後に様々な変異を有する小さなサブクローン細胞。図4Bは、前記細胞集団が下記のとおりであることを示す:野生型、DNMT3A/NPM1、DNMT3A、DNMT3A/NPM1/FLT3-ITD、およびFLT3-D835E。クレノラニブによる治療は、大部分の前記変異を含有する癌細胞集団を排除した。
図4-2】図4Aおよび4Bは、診断時(図4A)および誘導開始から35日後(図4B)の患者の骨髄試料内における変異NPM1を発現する各細胞(y軸)を示す散布図である。図4Aは、細胞集団が左から右への下記変異を含むことを示す;DNMT3A/NPM1/FLT3-A680V/FLT3-ITD、DNMT3A/NPM1/FLT3-N841K、野生型、DNMT3A/NPM1/FLT3-A680V、およびDNMT3A/NPM1/FLT3-D839G、そして最後に様々な変異を有する小さなサブクローン細胞。図4Bは、前記細胞集団が下記のとおりであることを示す:野生型、DNMT3A/NPM1、DNMT3A、DNMT3A/NPM1/FLT3-ITD、およびFLT3-D835E。クレノラニブによる治療は、大部分の前記変異を含有する癌細胞集団を排除した。
図5図5は、患者の縦方向の骨髄試料の図である。正常な野生型(WT)細胞を灰色で示す。この図は、診断時、導入療法開始から35日後、および維持期間の3つの時点における試料内のサブクローン集団の総数を表す。試料は、バリアントFLT3およびFLT3活性化変異が、クレノラニブに加えた集中導入化学療法の併用療法、クレノラニブとの高用量シタラビン(HiDAC)強化療法、および変異クリアランスのための単剤クレノラニブ維持療法によって排除されたことを示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の様々な実施態様の製造および使用が以下で詳細に記載されているが、本発明は、多種多様で具体的な状況で具現化できる多くの適用可能な発明の概念を提供するものと理解されるべきである。本明細書に記載される具体的な実施態様は、本発明を製造し、使用するための特定の方法を単に例示するに過ぎず、本発明の範囲を限定するものではない。
【0016】
本発明の理解を容易にするために、いくつかの用語が以下で定義される。本明細書で定義される用語は、本発明に関連する分野の当業者によって一般に理解されるような意味を有する。「a」、「an」、「the」などの用語は、単一の物質のみを指すことを意図したものではなく、具体的な例を例示のために使用できる一般的なクラスを含む。本明細書の用語は、本発明の特定の実施態様を説明するために用いられるが、これらの使用は、特許請求の範囲に記載される場合を除いて本発明を限定するものではない。
【0017】
定義
本明細書で用いられるように、用語「測定可能な残存病変」、「微小残存病変」、および「MRD」は、従来の方法(細胞遺伝学、組織学を含むがこれらに限定されない)によって対象において検出可能な癌の証拠がない状況または状態を意味する。体内に腫瘍細胞が残っている可能性があるが、これらは従来の方法の検出限界以下の量で見出される。しかしながら、これらの残存する腫瘍細胞は、前記増殖性障害を完全に再現することができる。MRDは、典型的に、化学療法、放射線療法、および/または同種異系幹細胞移植後の完全奏効または完全寛解後に生じる。当該技術分野で公知のMRD検出方法には、事前に特定された細胞発現マーカーおよび分子の存在をモニターするフローサイトメトリーに基づく方法が含まれる。MRD検出のための分子に基づく方法には、例えば、NPM1、DNMT3A、NRAS、KRAS、JAK2、PTPN11、TET2、IDH1、IDH2、WT1、RUNX1、CEBPA、ASXL1、BCOR、SF3B1、U2AF1、STAG2、SETBP1、ZRSR2、GRB7、SRSF2、MLL、NUP98、ETV6、TCL1A、TUSC3、BRP1、CD36、TYK2、TP53、EZH2、GATA2、KIT、PHF6、MYC、ERG、MYD88、RAD21、STAT3、NF1、BRAF、KDM6A、SETBP1、CALR、CBL、KMT2A、PHF6、SMC1A、CHEK2、GNAS、PPM1D、SMC3、ZRSR2、CSF3R、HRAS、MPL、PTEN、ATM、またはMUTYHなどの変異の存在に関するPCRに基づく試験が含まれる。PCRに基づく方法は、これらの遺伝子の異常のうちの1つまたはそれ以上を有する患者について用いることができる。
【0018】
本明細書で用いられるように、用語「対象」は、治療、観察または実験の対象である哺乳類動物またはヒトなどの動物を意味する。ある例において、哺乳類動物またはヒトは、小児である。
【0019】
本明細書で用いられるように、用語「増殖性障害」および「細胞増殖性障害」は、多細胞生物に対して害(すなわち、不快感または期待寿命の低下)をもたらす前記多細胞生物における細胞の1つまたはそれ以上のサブセットの過剰な細胞増殖を意味する。細胞増殖性障害は、異なる種類の動物および人間で生じうる。本明細書で用いられるように、「細胞増殖性障害」には、腫瘍性障害が含まれる。
【0020】
本明細書で用いられるように、用語「腫瘍性障害」は、異常なまたは制御されない細胞増殖に起因する腫瘍を意味する。腫瘍性障害の例には、以下の障害に限定されないが、例えば、癌腫、リンパ腫、芽細胞腫、肉腫、および白血病などの癌が含まれる。本発明による治療のための増殖性障害の非限定的な例として、膀胱癌、乳癌、子宮頸癌、CNS癌、結腸癌、食道癌、頭頸部癌、肝臓癌、肺癌、鼻咽頭癌、神経内分泌癌、卵巣癌、膵臓癌、前立腺癌、腎臓癌、唾液腺癌、小細胞癌、肺癌、扁平上皮癌、皮膚癌、胃癌、精巣癌、甲状腺癌、子宮癌、神経膠腫癌、および胃癌が含まれる。本明細書で用いられるように、用語「腫瘍性障害」は、異常なまたは制御されない細胞増殖に起因する腫瘍を意味する。腫瘍性障害の例には、以下の障害に限定されないが、例えば、癌腫、リンパ腫、芽細胞腫、肉腫、および白血病などの癌が含まれる。本発明による治療のための増殖性障害の非限定的な例として、膀胱癌、乳癌、子宮頸癌、CNS癌、結腸癌、食道癌、頭頸部癌、肝臓癌、肺癌、鼻咽頭癌、神経内分泌癌、卵巣癌、膵臓癌、前立腺癌、腎臓癌、唾液腺癌、小細胞癌、肺癌、扁平上皮癌、皮膚癌、胃癌、精巣癌、甲状腺癌、子宮癌、神経膠腫癌、および胃癌が含まれる。
【0021】
本明細書で用いられるように、用語「再発性遺伝子変異」は、増殖性障害で高頻度に見られる1つまたはそれ以上の遺伝子変異を意味し、その多くは高度に異質性疾患であることが知られている。多くの再発性突然変異は、疾患の結果に影響を与えることが示されている。再発性遺伝子変異の例には、以下に限定されないが、NPM1、DNMT3A、NRAS、KRAS、JAK2、PTPN11、TET2、IDH1、IDH2、WT1、RUNX1、CEBPA、ASXL1、BCOR、SF3B1、U2AF1、STAG2、SETBP1、ZRSR2、GRB7、SRSF2、MLL、NUP98、ETV6、TCL1A、TUSC3、BRP1、CD36、TYK2、TP53、EZH2、GATA2、KIT、PHF6、MYC、ERG、MYD88、RAD21、STAT3、NF1、BRAF、KDM6A、SETBP1、CALR、CBL、KMT2A、PHF6、SMC1A、CHEK2、GNAS、PPM1D、SMC3、ZRSR2、CSF3R、HRAS、MPL、PTEN、ATM、またはMUTYHにおける変異、具体的には、増殖性障害および/または癌を引き起こすこれらの遺伝子における変異が含まれる。
【0022】
本明細書で用いられるように、用語「機能変化変異」は、野生型タンパク質と比較して異なる活性を有する変異タンパク質を生じる1つまたはそれ以上の遺伝子変異を意味する。これは、変異体が野生型の機能をもはや有しない機能喪失を生じる変異、および変異体が野生型が有していなかったさらなる機能を有する機能獲得が含まれる。これには、変異体が野生型と同一の活性を有しているが、野生型のシグナル伝達を制御するネガティブ調節を失っている活性化変異も含まれる。
【0023】
本明細書で用いられるように、用語「治療上有効な量」は、研究者、獣医、医師、または他の臨床医によって求められている対象における生物学的または医学的応答(治療されている疾患または障害の症状の緩和を含む)を誘発する、単剤として、または別の薬剤(例えば化学療法剤)と組み合わせて対象に投与される、クレノラニブまたはその医薬的に許容される塩の量を意味する。本発明の化合物を含む医薬組成物の治療上有効な用量を決定するための方法は、当該技術分野で公知である。本発明を用いて有用な製剤を調製するための技術および組成物は、P. O. Anderson, J. E. Knoben, and W. G. Troutman, Handbook of clinical drug data, 10th ed. New York; Toronto: McGraw-Hill Medical Pub. Division, 2002, pp. xvii, 1148 p (Anderson, Knoben, & Troutman, 2002); A. Goldstein, W. B. Pratt, and P. Taylor, Principles of drug action : the basis of pharmacology, 3rd ed. New York: Churchill Livingstone, 1990, pp. xiii, 836 p.(Goldstein, Pratt, & Taylor, 1990); B. G. Katzung, Basic & clinical pharmacology, 9th ed. (Lange medical book). New York: Lange Medical Books/McGraw Hill, 2004, pp. xiv, 1202 p.(Katzung, 2004); L. S. Goodman, J. G. Hardman, L. E. Limbird, and A. G. Gilman, Goodman and Gilman's the pharmacological basis of therapeutics, 10th ed. New York: McGraw-Hill, 2001, pp. xxvii, 2148 p.(Goodman, Hardman, Limbird, & Gilman, 2001); J. P. Remington and A. R. Gennaro, Remington : the science and practice of pharmacy, 20th ed. Baltimore, Md.: Lippincott Williams & Wilkins, 2000, pp. xv, 2077 p.(Remington & Gennaro, 2000); W. Martindale, J. E. F. Reynolds, and Royal Pharmaceutical Society of Great Britain. Council, The extra pharmacopoeia, 31st ed. London: Royal Pharmaceutical Society, 1996, pp. xxi, 2739 p.(Martindale, Reynolds, & Royal Pharmaceutical Society of Great Britain. Council, 1996); and G. M. Wilkes, Oncology Nursing Drug Handbook 2016, 20 ed. Sudbury: Jones & Bartlett Publishers, 2016, p. 1500 p.(Wilkes, 2016)(それぞれの関連する部分は出典明示により本明細書に組み込まれる)を含む多くの参考文献に記載されている。
【0024】
本明細書で用いられるように、用語「と組み合わせて」は、例えば、1つの薬剤が他の薬剤の投与の前に、同時に、または後に、あるいはそれらのいずれかの組み合わせで投与される、単一サイクルまたはそれ以上のサイクルの標準的な治療過程としての繰り返し間隔において、クレノラニブまたはその医薬的に許容される塩および別の薬剤を、同時に、またはいずれかの順序で連続して投与することを意味する。
【0025】
本明細書で用いられるように、用語「化学療法剤」は、アルキル化剤、代謝拮抗剤、および天然生成物などの抗細胞増殖療法剤を意味する。化学療法は、当業者に公知であり、化学療法の適切な用量およびスキームは、化学療法が他の療法と組み合わせて送達されるか、または単独で用いられている臨床療法ですでに使用されているものと同様である。様々な化学療法剤が本発明と組み合わせて用いることができる。一例として、タキサン化合物(例えば、ドセタキセルなど)は、体表面積1平方メートルあたり75mg(mg/m)の用量において、本発明の化合物と組み合わせて安全に投与される。当業者は、選択される化学療法剤が、体重、年齢、性別、疾患の程度などの様々な因子に基づいて用量を有し、意図された治療のための最良の医療行為の範囲内で投与量を変更することを認識する。
【0026】
本明細書で用いられるように、用語「アルキル化剤」は、古典的に、DNAに対してアルキル基を付加する化学療法剤の一群を意味するが、現在では、DNAに対して小さな化学部分を付加する化学療法を意味するために用いられる。アルキル化剤の例には、以下に限定されないが、カルムスチン、クロラムブシル、シクロホスファミド、イホスファミド、ロムスチン、ストレプトゾトシン、テモゾロミド、シスプラチン、カルボプラチン、ネダプラチン、および/またはオキサリプラチンが含まれる。
【0027】
本明細書で用いられるように、用語「代謝拮抗剤」は、酵素またはタンパク質に結合する際に前記化学物質の代わりになり得るが、それらが体内の化学物質の正常な作用の終了を妨げる、体内で天然に存在する化学物質に構造的に類似する化学療法剤の一群を意味する。代謝拮抗剤の例には、以下に限定されないが、メトトレキサート、ペメトレキセド、ラルチトレキセド、シタラビン、フルダラビン、フルオロウラシル、フロクスウリジン、カプシタビン、および/またはゲムシタビンが含まれる。
【0028】
本明細書で用いられるように、用語「天然生成物」は、二次代謝の経路によって生成される、生物から元々単離され精製された有機化合物である化学療法剤および/または化学療法の一群を意味する。20個の天然生成物の例には、以下に限定されないが、ビンブラスチン、ビノレルビン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビンフルニン、パクリタキセル、ドセタキセル、カバジタキセル、エトポシド、テニポシド、トポテカン、イリノテカン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、イダルビシン、エイプルビシン、バルルビシン、ミトキサントロン、ブレオマイシン、エストラムスチン、および/またはマイトマイシンが含まれる。
【0029】
本明細書で用いられるように、用語「組成物」は、特定の量で特定の成分を含む生成物、ならびに特定の量で特定の成分の組み合わせから直接的または間接的に生じる生成物を意味する。
【0030】
シングルセルDNA配列決定は、単一細胞レベルでの再発性遺伝子変異の分析を可能にする。これにより、検出限界が比較的高く、従来の方法には他の欠点があるため、測定可能な残存病変をモニターする際の初期の障壁が取り除かれる(Eastburn et al., 2017)。今日まで、このような方法は、特定の疾患に関連する遺伝子変異を特徴付けるために、新規の可能性のある再発性変異を見つけるために、または治療薬に対する耐性を付与しうる遺伝子変異もしくは変化を特徴付けるために、主に基礎研究の研究室の設備で使用されてきた。しかしながら、これらの方法には、患者が疾患の寛解を達成し、または維持するために特定の治療または介入の投与から利益を得ることができるかどうかを判断するために患者の測定可能な残存病変をモニターするための可能性として強力な用途がありうる。
【0031】
本発明は、少なくとも部分的に、標準的な化学療法の治療後に、クレノラニブ、または、対象における治療過程でMRDが減少または排除されたクレノラニブ単剤療法、ならびに増殖性障害に罹っている対象の血液または骨髄における単離された細胞に付与した知見に基づくものである。本発明は、シングルセルゲノム配列決定によって測定されるような、少なくとも1つの再発性遺伝子変異を有する対象におけるMRDを減少させ、または排除するための標準的な化学療法による本発明の化合物の使用を含む。
【0032】
クレノラニブ(4-ピペリジンアミン、1-[2-[5-[(3-メチル-3-オキセタニル)メトキシ]-1H-ベンズイミダゾール-1-イル]-8-キノリニル])およびその医薬的に許容される塩であって、以下に限定されないが、ベシル酸クレノラニブ、リン酸クレノラニブ、乳酸クレノラニブ、塩酸クレノラニブ、クエン酸クレノラニブ、酢酸クレノラニブ、トルエンスルホン酸クレノラニブ、およびコハク酸クレノラニブを含むが、塩を含まずに利用可能となる場合もありうる。本発明の化合物の調製。式Iで示される化合物を調製するための一般的な合成方法は、例えば、米国特許第5,990,146号(1999年11月23日発行)(Warner-Lambert Co.)およびPCT公開出願番号WO99/16755(1999年4月8日公開)(Merck & Co.)、WO01/40217(2001年7月7日発行)(Pfizer,Inc.)、米国特許出願公開番号US2005/0124599(Pfizer,Inc.)および米国特許第7,183,414号(Pfizer,Inc.)(出典明示により本明細書に組み込まれる関連部分)で提供される。クレノラニブは、構成的に活性なFLT3変異(FLT3ITDおよびFLT3TKD変異を含む)に選択的なタンパク質チロシンキナーゼ阻害剤である。当該技術分野における以前のFLT3阻害剤とは異なり、クレノラニブのベシル酸塩形態は、高度に前処理されたFLT3変異体AMLにおける循環末梢血芽球パーセンテージおよび骨髄芽球パーセンテージを激減させるのに著しく効果的であることが示されている。クレノラニブは、現在、新たに診断されたFLT3変異AMLおよび再発または難治性の構成的に活性化されたFLT3変異一次AMLまたは骨髄異形成に続発するAMLの患者の治療において標準化学療法と組み合わせて使用するために試験中である。
【0033】
1の実施態様において、本発明は、治療上有効な量の式I:
【化1】
で示される化合物またはその医薬的に許容される塩または溶媒和物が、白血病、骨髄腫、骨髄増殖性障害、骨髄異形成症候群、特発性好酸球増多症候群(HES)、膀胱癌、乳癌、子宮頸癌、CNS癌、結腸癌、食道癌、頭頸部癌、肝臓癌、肺癌、鼻咽頭癌、神経内分泌癌、卵巣癌、膵臓癌、前立腺癌、腎臓癌、唾液腺癌、小細胞肺癌、皮膚癌、胃癌、精巣癌、甲状腺癌、子宮癌、および血液悪性腫瘍のうちの少なくとも1つから選択される増殖性障害に対する治療上または予防上有効な量に関する。塩酸塩、リン酸塩および乳酸塩を含む医薬的に許容される塩は、ベンゼンスルホン酸塩と同様の方法で調製され、当業者に周知である。
【0034】
本発明の化合物は、全身に、例えば、経口、静脈内、皮下、筋肉内、皮内、または非経口で対象に投与されてもよい。本発明の化合物はまた、局所で対象に投与することもできる。
【0035】
本発明の化合物は、本発明の化合物と標的組織との接触を所望の時間範囲で維持することを目的として、徐放または速放のために製剤化されてもよい。
【0036】
経口投与に適する組成物には、丸剤、錠剤、カプレット、カプセル、顆粒、および粉末などの固体形態、溶液、乳濁液、および懸濁液などの液体形態が含まれる。非経口投与に有用な形態には、滅菌溶液、乳濁液、および懸濁液が含まれる。
【0037】
本発明の化合物の1日投与量は、1日あたり15~500、25~450、50~400、100~350、150~300、200~250、15、25、50、75、100、150、200、250、300、400、450、または500mgの広範囲にわたり変動しうる。本発明の化合物は、1日あたり1回、2回、3回またはそれ以上の1日の投薬計画で投与されうる。投与される最適な用量は、当業者によって決定されてもよく、使用される本発明の化合物、投与様式、投与時間、調製物の強度、病状の詳細によって変化する。年齢、体重、食事などの対象の特徴に関連する1つまたはそれ以上の因子が投与量の調整のために必要とされる。クレノラニブを用いて有用な製剤を調製するための技術および組成は、以下の参考文献の1つまたはそれ以上に記載されている:P. O. Anderson, J. E. Knoben, and W. G. Troutman, Handbook of clinical drug data, 10th ed. New York; Toronto: McGraw-Hill Medical Pub. Division, 2002, pp. xvii, 1148 p (Anderson, Knoben, & Troutman, 2002); A. Goldstein, W. B. Pratt, and P. Taylor, Principles of drug action : the basis of pharmacology, 3rd ed. New York: Churchill Livingstone, 1990, pp. xiii, 836 p.(Goldstein, Pratt, & Taylor, 1990); B. G. Katzung, Basic & clinical pharmacology, 9th ed. (Lange medical book). New York: Lange Medical Books/McGraw Hill, 2004, pp. xiv, 1202 p.(Katzung, 2004); L. S. Goodman, J. G. Hardman, L. E. Limbird, and A. G. Gilman, Goodman and Gilman's the pharmacological basis of therapeutics, 10th ed. New York: McGraw-Hill, 2001, pp. xxvii, 2148 p.(Goodman, Hardman, Limbird, & Gilman, 2001); J. P. Remington and A. R. Gennaro, Remington : the science and practice of pharmacy, 20th ed. Baltimore, Md.: Lippincott Williams & Wilkins, 2000, pp. xv, 2077 p.(Remington & Gennaro, 2000); W. Martindale, J. E. F. Reynolds, and Royal Pharmaceutical Society of Great Britain. Council, The extra pharmacopoeia, 31st ed. London: Royal Pharmaceutical Society, 1996, pp. xxi, 2739 p.(Martindale, Reynolds, & Royal Pharmaceutical Society of Great Britain. Council, 1996); and G. M. Wilkes, Oncology Nursing Drug Handbook 2016, 20 ed. Sudbury: Jones & Bartlett Publishers, 2016, p. 1500 p.(Wilkes, 2016)(これらの関連部分が出典明示により本明細書に組み込まれる)。
【0038】
クレノラニブを使用するための投薬単位は、単一の化合物または他の化合物(例えば、増強薬)とのその混合物でありうる。前記化合物は一緒に混合され、イオン結合または共有結合を形成していてもよい。本発明の化合物は、医薬分野の当業者に周知な製剤を全て用いて、経口、静脈内(ボーラスまたは注入)、腹腔内、皮下、または筋肉内の形態で投与されうる。特定の送達場所または方法に応じて、異なる製剤、例えば、錠剤、カプセル、丸剤、粉末、顆粒、エリキシル剤、チンキ剤、懸濁液、シロップ、および乳濁液を用いて、本発明の化合物を式Iの化合物を含む治療が必要な患者に提供されうる。
【0039】
クレノラニブは、典型的には、目的の投与形態に基づき、従来の医療行為に従って選択される適切な医薬的な塩、緩衝液、希釈剤、増量剤、賦形剤および/または担体(本明細書では、医薬的に許容される担体または担体物質と総称する)と混合して投与される。投与に最適な場所に応じて、クレノラニブは、例えば、経口、直腸、局所、静脈内注射または非経口投与のための特定の形態について最大のおよび/または一貫した投薬を供するように製剤化されうる。クレノラニブは、単独で投与されうるが、一般的に、医薬的に許容される担体と混合された安定な塩の形態で提供される。担体は、選択される投与のタイプおよび/または場所に応じて固体または液体であってもよい。
【0040】
本発明の化合物の調製。式Iの化合物を調製するために参照されうる一般的な合成方法は、米国特許第5,990,146号(1999年11月23日発行)(Warner-Lambert Co.)およびPCT公開出願番号WO99/16755(1999年4月8日公開)(Merck & Co.)、WO01/40217(2001年7月7日公開)(Pfizer,Inc.)、米国特許出願公開番号US2005/0124599(Pfizer,Inc.)、および米国特許第7,183,414号(Pfizer,Inc.)(関連部分が出典明示により本明細書に組み込まれる)で提供されている。
【0041】
塩酸塩、リン酸塩および乳酸塩などの医薬的に許容される塩は、ベンゼンスルホン酸塩と同様の方法で調製され、当業者に周知である。本発明の以下の代表的な化合物は、例示のために過ぎず、本発明を限定するものではないが、ベシル酸クレノラニブ、リン酸クレノラニブ、乳酸クレノラニブ、塩酸クレノラニブ、クエン酸クレノラニブ、酢酸クレノラニブ、トルエンスルホン酸クレノラニブ、およびコハク酸クレノラニブとしてクレノラニブを含む。
【0042】
本発明はまた、FLT3受容体チロシンキナーゼの異常なキナーゼ活性によって引き起こされる細胞増殖性障害を発症するリスクがあるか、または発症しやすい対象を治療するための予防方法および治療方法の両方を提供する。一例において、本発明は、FLT3に関連する細胞増殖性障害を予防するための方法であって、対象において本発明の化合物を含む医薬組成物の予防上有効な量の投与を含む方法を提供する。前記予防剤の投与は、FLT3で引き起こされる細胞増殖性障害に特徴的な症状が現れる前に行い、その結果、疾患または障害が予防されるか、あるいはその進行を遅延させることができる。
【0043】
本明細書で用いられるように、用語「変異型FLT3」、「FLT3に関連する障害」、「FLT3受容体に関連する障害」、「FLT3受容体チロシンキナーゼに関連する障害」、または「FLT3で引き起こされる細胞増殖性障害」は、FLT3活性に関連し、または関与する疾患、例えば、FLT3の構成的な活性化に引き起こす変異を意味する。「FLT3に関連する障害」の例には、FLT3の変異によるFLT3の過剰刺激に起因する障害、またはFLT3の異常に大量の変異による異常に高いFLT3活性に起因する障害が含まれる。FLT3の過剰活性は、以下に挙げる細胞増殖性障害、腫瘍性疾患、癌などを含む多くの疾患の病因に関与していることが知られている。
【0044】
変異したFLT3腫瘍では、コーディングまたはイントロン-エクソン境界領域内の1つまたはそれ以上の遺伝子変異または欠失の発現または存在の変化により、予後が低下しうる。既存のFLT3変異に加えて、本明細書に開示されるさらなる遺伝子変異は、患者の予後を顕著に低下させる。予後不良とは、例えば、生存可能性(全生存期間、無再発生存期間、無転移生存期間など)の低下、生存期間の低下(例えば、5年未満または1年未満)、悪性腫瘍の存在、疾患の重症度の増加、治療に対する反応の低下、腫瘍再発の増加、転移の増加などの否定的な臨床成績を意味しうる。ある例において、予後不良は生存可能性の低下である(例えば、診断または最初の治療から50ヶ月、40ヶ月、30ヶ月、20ヶ月、12ヶ月、6ヶ月または3ヶ月などの60ヶ月またはそれ以下の生存期間)。
【0045】
本発明の1の態様において、TAPESTRI(登録商標)プラットフォームを用いて実施される再発性AML遺伝子変異のシングルセル配列決定分析に関する。前記プラットフォームを用いるために、細胞懸濁液がマイクロフルイディクスを用いて前記プラットフォームに入れられ、次いで、DNA単離を促すために、各細胞がプロテアーゼと共に油滴中でカプセル化させる。次に、細胞を溶解し、TAPESTRI(登録商標)プラットフォームにロードし直し、ここで、各単一の核を、アクリルアミドを基にしたビーズに結合させた独特なDNAを基にしたバーコードと、油滴内の再発性AML変異遺伝子に対するPCRマスターミックスおよびプライマーセットとともにカプセル化する。これらの液滴はPCRチューブに直接沈着し、UV光に曝されて前記バーコードを放出する。続いて、液滴内のバーコードが付いたゲノムDNAは、標準的なPCR増幅技術に従って増幅させることができる。これと同一の態様において、前記PCR産物は、標準的な分子生物学技術を用いて分離し、イルミナプラットフォーム(MiSeq、HiSeq、およびNovaSeqを含む)と互換性のある次世代シーケンスのためのライブラリーを調製し、前記ライブラリーを検証済みのイルミナプラットフォーム(MiSeq、HiSeq、およびNovaSeqを含む)の1つで配列決定する。同一の態様において、前記配列決定は、1つの試料ごとに少なくとも1,000,000個の読取を含む、対立遺伝子のドロップアウト率は最大で10%である。次世代シーケンスデータは、Tapestri Pipelineを用いて遺伝子バリアントコールを作成し、続いて同時発生する遺伝子変異の決定を含む最終分析のためにTapestri Insightを使用するか、あるいは当業者に公知の標準的な次世代シーケンス(NGS)分析方法のうちの少なくとも1つであるがこれらに限定されない方法で分析することができる。
【0046】
1の実施態様において、再発性AML変異遺伝子内の1つまたはそれ以上の変異の存在または不存在により、増殖性障害と相関する患者特異的な単一細胞の変異プロファイルが作成される。
【0047】
1の態様において、上記に記載の工程を、前記対象からの少なくとも1つのさらなる経時的に連続する試料について繰り返し、次いで経時的な単一細胞ゲノムの変異プロファイルを組み合わせて、時間の経過に伴うFLT3のTKIと組み合わせた化学療法に応答して変化する1つまたはそれ以上の変異の存在または不存在を決定し、それにより治療後の患者特異的な単一細胞変異プロファイルのパーセンテージの増加または減少からMRDを決定するための方法が提供される。
【0048】
別の実施態様において、本発明の方法で試験される試料は、骨髄または末梢血を含む。
【0049】
1の実施態様において、本発明の方法は、TAPESTRI(登録商標)プラットフォームを用いて、各細胞の再発性AML遺伝子変異のためにゲノムDNAを調製し、次いで前記ゲノムDNAを、MiSeq、HiSeq、およびNovaSeqを含むがこれらに限定されないイルミナ配列決定プラットフォームで配列決定することを含む。
【0050】
本発明はまた、増殖性障害に罹っている対象における測定可能な残存疾患を除去するための方法であって、治療上有効な量のクレノラニブまたはその医薬的に許容される塩、ならびに白血病、骨髄腫、骨髄増殖性障害、骨髄異形成症候群、ホジキン病、骨髄腫、急性リンパ性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、急性前骨髄球性白血病(APL)、慢性リンパ性白血病(CLL)、慢性骨髄性白血病(CML)、慢性好中球性白血病(CNL)、急性未分化白血病(AUL)、未分化大細胞型リンパ腫(ALCL)、前リンパ球性白血病(PML)、若年性骨髄単球性白血病(JMML)、成人T細胞ALL、AML(三系統骨髄異形成(AMLITMDS))、混合系統白血病(MLL)、骨髄異形成症候群(MDS)、骨髄増殖性障害(MPD)、または多発性骨髄腫(MM)のうちの1つから選択される異常なFLT3活性および少なくとも1つの再発性AML遺伝子変異によって特徴付けられる増殖性障害に対する標準的な化学療法を前記患者に投与することを含む方法を含む。
【0051】
本発明は、シングルセルDNA配列決定を調製するための以下の方法を含む。1の例は、同一細胞から単一のヌクレオチドバリアント、バリアントのコピー数、およびタンパク質変化を同時に検出するためのシングルセルマルチオミクスアッセイ(例えば、TAPESTRI(登録商標))である。単核細胞は、FICOLL-PAQUE(登録商標)勾配により骨髄試料から分離し、10%DMSO溶液中に再懸濁し、必要になるまで-20℃で凍結させた。単細胞懸濁液は、解凍した単核細胞試料から製造業者の説明書に従って最終濃度まで調製し、TAPESTRI(登録商標)機器にロードした。前記製造業者に従って、TAPESTRI(登録商標)プラットフォームにマイクロフルイディクスを使用して単一細胞を分離し、各細胞を脂肪滴内にカプセル化し、プロテアーゼを各液滴に加えてDNAの分離を支援する。細胞のカプセル化、ターゲットPCR、および次世代ライブラリーの調製は、TAPESTRI(登録商標)プラットフォームおよびThermo Fisher SimpliAmpサーマルサイクラー(カタログ番号A24811またはこれと同等のもの)を用いて、TAPESTRI(登録商標)プラットフォームの製造業者の説明書に従って行った。調製したシングルセルDNAライブラリーは、製造業者の説明書に従って、IlluminaのMiSeq機器を用いて配列決定した。これらの次世代シーケンスデータの分析は、まずTAPESTRI Pipeline(Mission Bioウェブサイトで利用可能)を用いて前記シーケンスデータを処理し、最終的にバリアントコール(variant call)を作成することによって実行した。次いで、得られたルームファイル(loom file)は、TAPESTRI(登録商標)バイオインフォマティクスソフトウェアであるInsightにインポートし、同時発生する変異やまれな変異を含む関連するバリアントを同定するために使用する。
【実施例0052】
実施例1
54歳の女性は、2016年に単球分化を伴うAMLと診断された。この患者は63%の骨髄芽球を呈した。診断時に、バルクDNA配列決定法を用いた分子検査により、前記患者がFLT3-ITD、FLT3-N814K、FLT3-A680V、DNMT3A、およびNPM1変異を有することが明らかになった。これは、予後不良に関連する複数のFLT3変異を有する特にリスクの高い患者の症例であり、NPM1-FLT3ITD-DNMT3A変異の同時発生もまた予後不良に関連している(Papaemmanuil et al., 2016)。さらに、単球分化はCD163の過剰発現を伴っており、これはこの患者の診断用骨髄試料で遡及的に見られ、予後不良とも関連している(van Galen et al., 2019)。この患者の病気を治療し、FLT3変異を克服するために、この患者に、FLT3変異が活性化した新たに診断されたAML患者を対象とした臨床試験において、標準的な化学療法と組み合わせてベシル酸クレノラニブを経口投与した。前記患者を、7日間のシタラビンと3日間のダウノルビシン、続いて治療の10日目から1日3回100mgのベシル酸クレノラニブからなる導入化学療法で治療した。
【0053】
治療35日目に採取した骨髄生検では、患者の骨髄芽球が5%未満に減少したことが明らかになり、前記患者は併用療法でクレノラニブに反応して形態学的に完全な寛解を達成したと判断した。寛解を維持するために、続いて、前記患者に、4サイクルの高用量シタラビン強化化学療法を投与した。各サイクルにおいて、前記患者は標準用量のシタラビン化学療法を受け、続いて最後の化学療法投与48時間後にベシル酸クレノラニブを100mgで1日3回開始し、次の化学療法サイクル開始72時間前まで継続した。強化化学療法の完了後、治療237日目に採取した骨髄試料により、前記患者が形態学的寛解を維持していることを確認した。FLT3変異AMLの高悪性度のため、前記患者は、維持療法として知られる100mgの単剤ベシル酸クレノラニブ療法を1日3回12ヶ月間継続して受けた。骨髄試料は、患者の病気をモニターし、患者が寛解状態にあることを確認するために、維持療法中順次採取した。維持療法の完了時(治療406日目)に採取した最終骨髄試料により、患者が形態学的寛解を維持していることを確認した。
【0054】
治療過程中に採取された縦方向の骨髄試料を、シングルセル配列決定法を用いて解析した。これらの試料には、ベースライン試料(誘導D1)、誘導併用療法の終了時に得られた試料(誘導D35)、強化併用療法の終了時に得られた試料(強化D237)、単剤ベシル酸クレノラニブ維持療法による方法の約4分の1で得られた試料(維持D294)、および単剤ベシル酸クレノラニブ維持療法による終了時に得られた最終試料(維持D406)が含まれる。表1は、得られた試料、配列決定した細胞数、1試料あたりの読取数、および各試料の対立遺伝子ドロップアウト率の概要を示す。
【0055】
表1は、TAPESTRIプラットフォーム(Mission Bio,米国)によるシングルセルDNA(scDNA)分析を用いた配列決定法の概要である。新たに診断されたFLT3-AML患者の骨髄試料を縦方向に採取し、シングルセルゲノム配列決定法により遡及的に分析した。全ての骨髄分析物のタグ付き細胞は、累積合計12,699個の細胞に相当し、シングルセルDNAライブラリーと配列決定法により、個々の細胞を分析した。全ての試料の平均読取数は17.6Mであり、1つの増幅産物あたりの平均読取は99であった。読取数が高いパネル均一性を可能にし[92-94%];平均して低い対立遺伝子ドロップアウト率を示した。細胞のカプセル化、ターゲットPCR、および次世代ライブラリーの調製は、TAPESTRI(登録商標)プラットフォームおよびThermo Fisher SimpliAmpサーマルサイクラー(カタログ番号A24811またはこれと同等のもの)を用いて、TAPESTRI(登録商標)プラットフォームの製造業者の説明書に従って行った。調製したシングルセルDNAライブラリーは、製造業者の説明書に従って、IlluminaのMiSeq機器を用いて配列決定した。これらの次世代シーケンスデータの分析は、まずTAPESTRI Pipeline(Mission Bioウェブサイトで利用可能)を用いて前記シーケンスデータを処理し、最終的にバリアントコール(variant call)を作成することによって実行した。次いで、得られたルームファイル(loom file)は、TAPESTRI(登録商標)バイオインフォマティクスソフトウェアであるInsightにインポートし、同時発生する変異やまれな変異を含む関連するバリアントを同定するために使用する。
【0056】
表1.新たに診断されたFLT3-AML患者の骨髄試料からのシングルセル配列決定の要約データ。
【表1】
ADO、対立遺伝子ドロップアウト率
【0057】
シングルセル配列決定法により、FLT3-D835E、FLT3-D839G、KRAS-G12D、NRAS-G13V、ならびに2つの別々のDNMT3A変異であるR882CおよびR882H(DNMT3A-R882Cのみがバルク配列決定を用いて見ることができた)を含む、バルク配列決定技術では見えなかった多数の遺伝子変異が明らかになった。また、シングルセル配列決定法により、FLT3-ITD、FLT3-A680V、FLT3-N814K、およびNPM1変異の存在も確認された。表2は、診断(誘導D1)試料で見つかった変異の詳細を示す。
【0058】
表2は、シングルセルDNAライブラリーの次世代(Miseq)配列決定法からTAPESTRI Pipelineを用いた、新たに診断されたFLT3-AMLバリアントコールを有する患者のFLT3バリアント、FLT3活性化変異、および同時発生変異のシングルセル配列決定の概要である。分析により、変異遺伝子ファミリー、観察されたヌクレオチド変化、前記遺伝子ファミリー内で変異の入ったコードされたタンパク質、および前記タンパク質の転写コードにおける影響が示されている。さらに、ニューラルネットワークを用いた遺伝子バリアントの有害アノテーション(DANN)は、最大スコア1[範囲:0-1]の真陽性の可能性を示す。各変異の臨床的意義は、MissionBio InsightソフトウェアがA6580VおよびFLT3-ITDの臨床的意義のコーディングを提供せず範囲に限定があるにもかかわらず、本質的に病原性があった。各バリアントサブクローンには、分析された全細胞から遺伝子型が決定されたパーセンテージもあり[範囲:66%から99%]、バリアントによって異なった。
【0059】
表2.新たに診断されたFLT3-AML患者の検出されたFLT3バリアント、FLT3活性化変異、および同時発生変異のシングルセル配列決定の概要。
【表2】
【0060】
得られた縦方向の骨髄試料は、患者の治療過程中における上記で特定された変異の追跡を可能にした。下記表3は、導入化学療法および強化化学療法後のこれらの変異のいくつかの喪失を示す。強化療法終了後、FLT3-A680V、FLT3-D839G、KRAS-G12D、DNMT3A-R882C、およびDNMT3A-R882Hの変異が残存した。前記DNMT3A変異は、年齢に関連しており、ここで見られる低い変異負荷が再発可能性の指標となるわけではない。これらの変異は治療後も持続する可能性があることが知られている。前記FLT3およびKRAS変異の持続は、患者を再発のリスクにさらし、導入化学療法および4サイクルの強化化学療法の終了後のそれらの存在が懸念される。しかしながら、単剤ベシル酸クレノラニブ維持療法の約2ヶ月後、残りのFLT3およびKRAS変異は解消された。これらの変異は維持療法の終了時に不存在のままであり、これにより再発を引き起こす可能性のあるバリアントFLT3変異の抑制におけるベシル酸クレノラニブ単剤維持療法の利益が確認された。
【0061】
表3は、FLT3-ITDと3つのFLT3活性化変異(D839G、A680V、N841K)を、同時発生するNPM1と2つのDNMT3A変異(R882C、R882H)とともに含む、診断時に4つの異なるFLT3サブクローンを明らかにしたシングルセルDNA分析である。FLT3変異クローンを除く、NRASまたはKRAS活性化変異を有する白血病クローン。誘導の最初のサイクルの後、シングルセル配列決定法により、FLT3-ITD(3%)、FLT3-D839G(3%)、およびFLT3-D835E(1%)の低レベルの検出が明らかになった。強化療法後のシングルセルDNAの分析により、NPM1およびFLT3-ITDのクリアランスが明らかになったが、バリアントFLT3-D839G(1%)およびFLT3-A680V(1%)クローンの低レベルの検出が示された。前記患者は1年間のクレノラニブの維持療法を受け、維持療法の79日目までに、全てのバリアントFLT3クローンもまた除去された。
【0062】
表3.新たに診断されたFLT3-AML患者の縦方向の骨髄試料におけるFLT3バリアント、FLT3活性化変異、および同時発生変異のバリアント対立遺伝子頻度のシングルセル配列決定データ。
【表3】
【0063】
表形式で示した結果を、下記図1で図示する。細胞内の同定された変異の同時発生もまた表示する。各垂直バーは、バーの下部で同定されている試料で試験した骨髄細胞の集団全体を表す。右の凡例に示されるように、特定の変異セットを有する骨髄細胞の各集団には色を付けている。前記バー内の各色の相対的なサイズは、それぞれ異なる集団またはクローンの相対的な比率である。診断時に得られた試料は、最大のクローン不均一性を示す。導入化学療法後、前記クローン集団の多くは除去された。最終的に、維持療法後、野生型細胞(灰色)とDNMT3A-R882C変異のみを有するクローン(緑色)のみが残る。前記データのこの表示において、1%の細胞における持続したFLT3-A680V、FL3-D839G、KRAS-G12D、およびDNMT3A-R882Hに相当する小さなクローン集団が書式の限界により示されていないことを留意することは重要である。
【0064】
図1は、新たに診断されたFLT3-AML患者の縦方向の骨髄試料におけるFLT3バリアント、FLT3活性化変異、および同時発生変異のバリアント対立遺伝子頻度のシングルセル配列決定データの図を示す。
【0065】
図2Aおよび2Bは、診断時(図2A)および導入療法開始から35日後(図2B)の患者の骨髄試料内における変異KRASを発現する各細胞(y軸)を示す散布図である。図2Aは、前記細胞集団が左から右への下記変異を含むことを示す;DNMT3A/NPM1/FLT3-A680V/FLT3-ITD、DNMT3A/NPM1/FLT3-N841K、野生型、DNMT3A/NPM1/FLT3-A680V、DNMT3A/NPM1/FLT3-D839G、そして最後に様々な変異を有する小さなサブクローン細胞。図2Bは、前記細胞集団が下記のとおりであることを示す:野生型、DNMT3A/NPM1、DNMT3A、およびDNMT3A/NPM1/FLT3-ITD。クレノラニブによる治療は、前記変異を含有する癌細胞集団の大部分を排除した。
【0066】
図3Aおよび3Bは、診断時(図3A)および導入療法開始から35日後(図3B)の患者の骨髄試料内における変異DNMT3を発現する各細胞(y軸)を示す散布図である。図3Aは、細胞集団が左から右への下記変異を含むことを示す;DNMT3A/NPM1/FLT3-A680V/FLT3-ITD、DNMT3A/NPM1/FLT3-N841K、野生型、DNMT3A/NPM1/FLT3-A680V、およびDNMT3A/NPM1/FLT3-D839G。図3Bは、前記細胞集団が下記のとおりであることを示す:野生型、DNMT3A/NPM1、DNMT3A、DNMT3A/NPM1/FLT3-ITD、およびFLT3-D835E。クレノラニブによる治療は、前記変異を含有する癌細胞集団の大部分を排除した。
【0067】
図4Aおよび4Bは、診断時(図4A)および誘導開始から35日後(図4B)の患者の骨髄試料内における変異NPM1を発現する各細胞(y軸)を示す散布図である。図4Aは、細胞集団が左から右への下記変異を含むことを示す;DNMT3A/NPM1/FLT3-A680V/FLT3-ITD、DNMT3A/NPM1/FLT3-N841K、野生型、DNMT3A/NPM1/FLT3-A680V、およびDNMT3A/NPM1/FLT3-D839G、そして最後に様々な変異を有する小さなサブクローン細胞。図4Bは、前記細胞集団が下記のとおりであることを示す:野生型、DNMT3A/NPM1、DNMT3A、DNMT3A/NPM1/FLT3-ITD、およびFLT3-D835E。クレノラニブによる治療は、前記変異を含有する癌細胞集団の大部分を排除した。
【0068】
図5は、患者の縦方向の骨髄試料の各プロットを示す。正常な野生型(WT)細胞を示す。この図は、診断時、誘導開始から35日後、および維持期間中の3つの時点における試料内のサブクローン集団の総数を表す。試料は、バリアントFLT3およびFLT3活性化変異が、クレノラニブに加えた集中導入化学療法の併用療法、クレノラニブとの高用量シタラビン(HiDAC)強化、および変異クリアランスのための単剤クレノラニブ維持によって排除されたことを示す。
【0069】
実施例2
68歳の男性は2016年にAMLと診断された。診断時に、バルクDNA配列決定を用いた分子検査により、前記患者が野生型FLT3を有し、病理学的変化と見なされるBCOR、NRAS、およびU2AF1遺伝子における変異を有することが明らかになった。最初に、前記患者を標準的なシタラビン/アントラサイクリンに基づく化学療法レジメンで治療した。前記患者は最初の治療に反応せず、難治性であると考えられた。この患者の疾患を治療し、FLT3野生型患者においてさえ、化学療法の連続ラウンド後に発生することが報告されているFLT3リガンドの上昇を克服するために、この患者に、再発/難治性患者のためのサルベージ化学療法と組み合わせて経口ベシル酸クレノラニブを供した。ベースライン時に、この患者は17%の骨髄芽球を示した。前記患者を、5日間のフルダラビン、5日間のシタラビン、3日間のイダルビシン、およびG-CSFからなるサルベージ化学療法、続いて治療7日目から1日3回100mgのベシル酸クレノラニブで治療した。
【0070】
治療32日目に採取した骨髄生検では、患者の骨髄芽球が5%未満に減少したことが明らかになり、前記患者は、クレノラニブ併用療法に反応して完全な形態学的寛解を達成したと判断した。この時点では、診断および試験登録時に存在したBCOR、NRAS、およびU2AF1における変異は、バルクDNA配列決定法を用いて検出されなかった。
【0071】
この試験は、再発/難治性AML患者における標準的なサルベージ化学療法と組み合わせ、前記患者をクレノラニブ併用療法の1~2サイクルの試験のみを継続した場合のクレノラニブの安全性を決定するために設計した。この患者は単一サイクル後に形態学的寛解を達成したため、前記患者はプロトコルに従って試験治療を終了し、生存し続け、最後の追跡調査で寛解している。この例は、FLT3野生型再発/難治性AML患者の悪性白血病細胞を排除するクレノラニブ併用療法の能力を示す。
【0072】
実施例3
36歳の男性は2016年にAMLと診断された。診断時に、バルクDNA配列決定を用いた分子検査により、前記患者がFLT3-ITD、NRAS、およびNPM1変異を有することが明らかになった。この患者の病気を治療し、FLT3変異を克服するために、この患者に、FLT3変異を活性化する新たに診断されたAML患者を対象とした臨床試験において、標準的な化学療法と組み合わせてベシル酸クレノラニブを経口投与した。ベースライン時に、この患者は8%の骨髄芽球を示した。前記患者を、7日間のシタラビンと3日間のダウノルビシンからなる導入化学療法、続いて治療10日目から1日3回100mgのベシル酸クレノラニブで治療した。
【0073】
治療24日目に採取した骨髄生検では、患者の骨髄芽球が5%まで減少したことが明らかになり、前記患者は、クレノラニブ併用療法に反応して完全な形態学的寛解を達成したと判断した。この時点では、診断時に存在したFLT3-ITD変異は、PCRに基づく試験を用いて検出されなかった(診断時に存在した他の変異は、この時点では試験しなかった)。寛解を維持するために、その後、患者に高用量のシタラビン強化化学療法を1サイクル投与し、続いて化学療法の最後の投与から48時間後に1日3回100mgのベシル酸クレノラニブを経口投与した。強化療法の1サイクルの終了後、治療98日目に採取した骨髄試料により、患者が寛解を維持し、診断時に存在したFLT3-ITD変異が標準的なPCR試験で検出されないままであることを確認した。この例は、新たに診断されたAML患者から悪性白血病細胞とFLT3-ITD変異を排除するクレノラニブ併用療法の能力を示す。
【0074】
実施例4
59歳の男性は2017年にAMLと診断された。診断時に、バルクDNA配列決定を用いた分子検査により、前記患者はFLT3-D835V、FLT3-D835E、DNMT3A、NRAS、RUNX1、BCOR、およびU2AF1変異を有することが明らかになった。この患者の病気を治療し、FLT3変異を克服するために、この患者に、FLT3変異を活性化する新たに診断されたAML患者を対象とした臨床試験において、標準的な化学療法と組み合わせてベシル酸クレノラニブを経口投与した。ベースライン時に、この患者は70%の骨髄芽球を示した。前記患者を、7日間のシタラビンと3日間のイダルビシンからなる2サイクルの導入化学療法、続いて治療10日目から1日3回100mgのベシル酸クレノラニブで治療した。
【0075】
治療50日目に採取した骨髄生検では、前記患者の骨髄芽球が5%未満に減少したことが明らかになり、前記患者は、クレノラニブ併用療法に反応して完全な形態学的寛解を達成したと判断した。この時点では、診断時に存在したFLT3変異(D835VおよびD835E)は、バルクNGS法を用いて検出されなかった。この例は、新たに診断されたAML患者から悪性白血病細胞と複数のFLT3変異を排除するクレノラニブ併用療法の能力を示す。
【0076】
実施例5
36歳の女性は2012年にAMLと診断された。診断時に、バルクDNA配列決定を用いた分子検査により、前記患者がFLT3-D835変異を有することが明らかになった。最初に、前記患者を標準的な導入化学療法と骨髄移植で治療した。残念ながら、前記患者はその後再発し、サルベージ化学療法で治療し、再度再発する前に短時間の寛解を達成した。2回目の再発時に、前記患者は、FLT3-D835変異、ならびにNPM1、NOTCH1、CEBPA、およびWT1遺伝子における変異をいまだ有することがわかった。この患者の疾患を治療し、FLT3-D835変異を克服するために、この患者に、FLT3変異を活性化する再発/難治性AML患者を対象とした臨床試験において、ベシル酸クレノラニブを経口投与した。ベースライン時に、この患者は90%の骨髄芽球を示した。前記患者を、200mg/mの用量の単剤ベシル酸クレノラニブで1日3回治療した。
【0077】
治療53日目に採取した骨髄生検では、患者の骨髄芽球が5%未満に減少したことが明らかになり、前記患者はクレノラニブシングル単剤療法に反応して完全な形態学的寛解(不完全な血液学的回復を伴う)を達成したと判断した。この時点では、診断時に存在したFLT3-D835変異は、PCRに基づく技術を用いて検出されなかった。この例は、高度に前治療された再発/難治性AML患者における悪性白血病芽球およびFLT3-D835変異を排除する単剤クレノラニブ療法の能力を示す。
【0078】
実施例6
87歳の女性は2014年にAMLと診断された。診断時に、バルクDNA配列決定を用いた分子検査により、前記患者がFLT3-ITD変異を有することが明らかになった。最初に、前記患者を、低用量の標準的な導入化学療法、続いてソラフェニブの維持療法で治療したが、前記患者は完全な形態学的寛解を達成せず、5ヶ月以内に前記患者は進行性疾患を示すと考えられた。ソラフェニブ治療後に行った分子検査により、前記患者はFLT3-D835変異と第2のFLT3-ITD変異を獲得したことが明らかになった。さらに、バルクDNA配列決定により、NRASおよびRUNX1遺伝子に変異が見つかった。この患者の疾患を治療し、FLT3-ITDおよびFLT3-D835変異を克服するために、この患者に、FLT3変異を活性化する再発/難治性AML患者の臨床試験において、ベシル酸クレノラニブを経口投与した。ベースライン時に、この患者は68%の骨髄芽球を示した。前記患者を、200mg/mの用量の単剤ベシル酸クレノラニブで1日3回治療した。
【0079】
治療27日目に採取した骨髄生検では、患者の骨髄芽球が7%に減少したことが明らかになり、前記患者は、クレノラニブ単剤療法に反応して部分的な形態学的寛解を達成したと決定された。この時点では、前記FLT3-ITD変異の1つの対立遺伝子比率は75%減少しており、第2のITD変異は検出されなかった。この例は、単剤クレノラニブが悪性白血病芽球を顕著に減少させ、再発/難治性患者における複数のFLT3変異の変異負荷を軽減する能力を示す。
【0080】
実施例7
54歳の女性は2016年にAMLと診断された。彼女の診断用骨髄穿刺液は、癌関連遺伝子のNGSに回した。彼女は、FLT3-ITD、FLT3-I836del、FLT3-N841I、FLT3-V491L、FLT3-V592A、IDH2、NMP1、およびSRSF2変異を有することが見出された。この患者の病気を治療し、前記FLT3変異を克服するために、この患者に、FLT3変異を活性化する新たに診断されたAML患者を対象とした臨床試験において、標準的な化学療法と組み合わせてベシル酸クレノラニブを経口投与した。ベースライン時に、この患者は95%の骨髄芽球を示した。前記患者を、7日間のシタラビンと3日間のイダルビシンからなる導入化学療法、続いて治療10日目から1日3回100mgのベシル酸クレノラニブで治療した。
【0081】
治療27日目に採取した骨髄生検では、患者の骨髄芽球が2%に減少したことが明らかになり、前記患者は、クレノラニブ併用療法に反応して完全な形態学的寛解を達成したと判断した。この時点では、分子検査によりFLT3-ITDもFLT3-I836delも見つからず、他の変異は試験されなかった。寛解を維持するために、前記患者にその後、4サイクルの高用量シタラビン強化化学療法を投与した。各サイクルにおいて、前記患者は標準用量でシタラビン化学療法を受け、続いて最後の化学療法投与の48時間後にベシル酸クレノラニブ100mgを1日3回で経口投与を開始し、次の化学療法サイクル開始の72時間前まで継続した。FLT3変異AMLの高悪性度のため、前記患者は、維持療法として知られている、100mgの単剤ベシル酸クレノラニブ療法を1日3回で21ヶ月間継続して受けた。
【0082】
実施例8
1歳の少年は2016年4月にt(9;11)+AMLと診断された。彼は、2サイクルのシタラビン、ダウノルビシン、エトポシド(ADE)、続いてシタラビン、エトポシド(AE)およびミトキサントロン、シタラビン(MA)を各1サイクル受け、2年間寛解した。2018年後半に前記患者は白血病を再発し、洞、眼窩、および蝶形骨における骨髄外疾患に罹った。そして、前記患者は、フルダラビン、シタラビン、およびG-CSF(FLAG)の1サイクルを受けたが、反応しなかった。前記患者は、ゲムツズマブ、オゾガマイシンおよびアザシチジンを追加してFLAGを再度受け、測定可能な残存病変のためのフローサイトメトリーによりネガティブである寛解を達成することができ、同種幹細胞移植を臍帯幹細胞とともに受けた。その後、前記患者は2019年に2回目の再発を経験し、その時点でバルクDNA配列決定によってFLT3-A848P変異を有することが判明した。続いて、この患者は臨床試験に登録し、ベネトクラクスを高用量のシタラビンとイダルビシンとの1サイクルを受けたが、治療に反応しなかった。続いて、リポソーム化学療法(ダウノルビシンおよびシタラビン(VYXEOS(登録商標))ならびにゲムツズマブ、オゾガマイシン)を3回受け、5日後に66.7mg/mのベシル酸クレノラニブを経口投与し始めた。1ヶ月後、彼は、数が戻ることなく完全な形態学的寛解状態にあることがわかった。前記患者は、さらなる同種幹細胞移植の1週間前までクレノラニブを継続した。前記患者は現在移植後100日以上経過し、いまだ寛解状態である。
【0083】
本発明は、1つまたはそれ以上の同時発生するFLT3変異を伴うか、または伴わずに、野生型FLT3を含む増殖性障害の対象を治療するための方法であって、治療上有効な量のクレノラニブまたはその医薬的に許容される塩を、アルキル化剤、代謝拮抗剤、天然生成物、またはこれらの組み合わせのうちの少なくとも1つと組み合わせて前記対象に投与することを含み、から必須としてなり、またはからなる方法を含む。別の態様において、1つまたはそれ以上の同時発生するRAS変異を伴う野生型FLT3を含む増殖性障害の対象を治療するための方法であって、治療上有効な量のクレノラニブまたはその医薬的に許容される塩を、アルキル化剤、代謝拮抗剤、天然生成物、またはこれらの組み合わせのうちの少なくとも1つと組み合わせて前記対象に投与することを含む方法である。さらに別の態様は、増殖性障害の再発を予防するための方法であって、治療上有効な量のクレノラニブまたはその医薬的に許容される塩を、単一薬剤として、または別の医薬薬剤と組み合わせて投与することを含む方法である。1の態様において、前記増殖性障害は、1つまたはそれ以上の機能変化変異および少なくとも1つの再発性遺伝子変異を含むことを特徴とする。1の態様において、前記微小残存病変は、前記対象から試料を取得し、上記に記載の遺伝子の遺伝子コードをシングルセル配列決定することであって、前記配列決定が少なくとも1,000,000個の読取/試料を含むものであり、次いで10%またはそれ以下の対立遺伝子ドロップアウト率である試料のみを分析することによって検出される。別の態様において、1つまたはそれ以上の変異の存在または不存在は、増殖性障害と相関する患者特異的な単一細胞の変異プロファイルを作成する上記に記載の遺伝子で見出される。別の態様において、上記に記載の再発性遺伝子変異は、FLT3、NPM1、DNMT3A、NRAS、KRAS、JAK2、PTPN11、TET2、IDH1、IDH2、WT1、RUNX1、CEBPA、ASXL1、BCOR、SF3B1、U2AF1、STAG2、SETBP1、ZRSR2、GRB7、SRSF2、MLL、NUP98、ETV6、TCL1A、TUSC3、BRP1、CD36、TYK2、TP53、EZH2、GATA2、KIT、PHF6、MYC、ERG、MYD88、RAD21、STAT3、NF1、BRAF、KDM6A、SETBP1、CALR、CBL、KMT2A、PHF6、SMC1A、CHEK2、GNAS、PPM1D、SMC3、ZRSR2、CSF3R、HRAS、MPL、PTEN、ATM、またはMUTYHなどのうちの少なくとも1つで見出される。別の態様において、前記見出されるFLT3変異として、FLT3-ITD、FLT3-TKD、または他のFLT3変異バリアントが含まれる。別の態様において、前記FLT3-TKD変異には、少なくとも1つのF612、L616、K663、M664、M665、N676、A680、F691、A833、R834、D835、I836、D839、N841、Y842、またはA848における変化または欠失を生じる点変異が含まれる。別の態様において、前記FLT3バリアント変異には、L20、D324、K429、L442、E444、S451、V491、Y572、E573、L576、Y572、Q580、V591、T582、D586、Y589、V592、F594、E596、E598、Y599、D600、R607、またはA848などのうちの少なくとも1つにおける変化または欠失を生じる点変異が含まれる。別の態様において、前記対象は、小児対象である。
【0084】
別の態様において、対象からの1つまたはそれ以上の縦方向に連続する試料から工程(a)から(c)を繰り返し、1つまたはそれ以上の縦方向の単一細胞ゲノムの変異プロファイルを組み合わせて、治療上有効な量のクレノラニブまたはその医薬的に許容される塩の投与に対する応答として変化する1つまたはそれ以上の変異の存在または不存在を決定し、次いで前記増殖性障害と相関する治療後の患者特異的な単一細胞の変異プロファイルのパーセンテージの増加または減少から前記増殖性障害の測定可能な残存病変状態を決定する工程をさらに含む。別の態様において、取得される試料は、骨髄、末梢血、または腫瘍組織のうちの少なくとも1つである。別の態様において、前記シングルセル配列決定は、TAPESTRI(登録商標)プラットフォームを用いて、1個の細胞あたりの関連するマーカーを有する上記に記載の遺伝子のためのゲノムDNAを調製し、次いで前記調製されたDNAを、MiSeq、HiSeq、またはNovaSeqプラットフォームのうちの少なくとも1つを用いて配列決定することから構成される。別の態様において、前記対象は、小児対象である。
【0085】
別の実施態様において、本発明には、1つまたはそれ以上の同時発生するRAS変異を有する野生型FLT3を含む増殖性障害に罹っている対象を治療するための方法であって、治療上有効な量のクレノラニブまたはその医薬的に許容される塩を、アルキル化剤、代謝拮抗剤、天然生成物、またはこれらの組み合わせのうちの少なくとも1つと組み合わせて投与することを含み、から必須としてなり、またはからなる方法が含まれる。1の態様において、前記増殖性障害の微小残存病変は、(a)腫瘍性細胞を含む対象から試料を取得し、(b)前記試料をシングルセル配列決定することであって、前記配列決定が少なくとも1,000,000個の読取/試料を含むものであり、次いで(c)10%またはそれ以下の対立遺伝子ドロップアウト率である試料のみからの変異を分析することによって検出される。別の態様において、前記1つまたはそれ以上の変異の存在または不存在は、増殖性障害と相関する患者特異的な単一細胞の変異プロファイルを作成するために用いられる。別の態様において、前記RAS変異は、NRASまたはKRAS変異のうちの少なくとも1つである。別の態様において、前記1つまたはそれ以上の同時発生する変異は、FLT3、NPM1、DNMT3A、JAK2、PTPN11、TET2、IDH1、IDH2、WT1、RUNX1、CEBPA、ASXL1、BCOR、SF3B1、U2AF1、STAG2、SETBP1、ZRSR2、GRB7、SRSF2、MLL、NUP98、ETV6、TCL1A、TUSC3、BRP1、CD36、TYK2、TP53、EZH2、GATA2、KIT、PHF6、MYC、ERG、MYD88、RAD21、STAT3、NF1、BRAF、KDM6A、SETBP1、CALR、CBL、KMT2A、PHF6、SMC1A、CHEK2、GNAS、PPM1D、SMC3、ZRSR2、CSF3R、HRAS、MPL、PTEN、ATM、またはMUTYHのうちの少なくとも1つである。別の態様において、前記対象からの1つまたはそれ以上の縦方向に連続する試料から工程(a)から(c)を繰り返し、1つまたはそれ以上の縦方向の単一細胞ゲノムの変異プロファイルを組み合わせて、治療上有効な量のクレノラニブまたはその医薬的に許容される塩の投与に応答して変化する1つまたはそれ以上の変異の存在または不存在を決定し、次いで前記増殖性障害と相関する治療後の患者特異的な単一細胞の変異プロファイルのパーセンテージの増加または減少として測定される前記増殖性障害の測定可能な残存病変状態を決定する工程をさらに含む。別の態様において、取得される試料は、骨髄、末梢血、または腫瘍組織のうちの少なくとも1つである。別の態様において、前記シングルセル配列決定は、1個の細胞あたり1つまたはそれ以上のマーカーを用いてゲノムDNAを調製し、次いで調製されたDNAを配列決定することを含む。別の態様において、前記シングルセル配列決定は、MiSeq、HiSeq、またはNovaSeqプラットフォームを使用する。別の態様において、前記アルキル化剤は、カルムスチン、クロラムブシル、シクロホスファミド、イホスファミド、ロムスチン、ストレプトゾトシン、テモゾロミド、シスプラチン、カルボプラチン、ネダプラチン、またはオキサリプラチンのうちの少なくとも1つから選択される。別の態様において、前記代謝拮抗剤は、メトトレキサート、ペメトレキセド、ラルチトレキセド、シタラビン、フルダラビン、フルオロウラシル、フロクスウリジン、カペシタビン、またはゲムシタビンのうちの少なくとも1つから選択される。別の態様において、前記天然生成物は、ビンブラスチン、ビノレルビン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビンフルニン、パクリタキセル、ドセタキセル、カバジタキセル、エトポシド、テニポシド、トポテカン、イリノテカン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、イダルビシン、エピルビシン、バルルビシン、ミトキサントロン、ブレオマイシン、エストラムスチン、および/またはマイトマイシンのうちの少なくとも1つから選択される。別の態様において、前記対象は、FLT3チロシンキナーゼ変異をさらに含む。別の態様において、前記対象は、小児対象である。
【0086】
別の実施態様において、本発明には、過去に治療されて増殖性障害に罹っていない対象における前記増殖性障害の再発を予防するための方法であって、治療上有効な量のクレノラニブまたはその医薬的に許容される塩を、導入化学療法、強化療法に対する応答後または造血幹細胞移植後に十分な期間投与して、前記増殖性障害の再発を予防することを含む方法が含まれる。1の態様において、前記増殖性障害は、1つまたはそれ以上の機能変化変異および少なくとも1つの再発性遺伝子変異を含むことを特徴とする。別の態様において、前記増殖性障害は、1つまたはそれ以上の同時発生する変異を伴うか、または伴わない野生型FLT3を含むことを特徴とする。別の態様において、前記対象は、カルムスチン、クロラムブシル、シクロホスファミド、イホスファミド、ロムスチン、ストレプトゾトシン、テモゾロミド、シスプラチン、カルボプラチン、ネダプラチン、またはオキサリプラチンのうちの少なくとも1つから選択されるアルキル化剤;メトトレキサート、ペメトレキセド、ラルチトレキセド、シタラビン、フルダラビン、フルオロウラシル、フロクスウリジン、カペシタビン、またはゲムシタビンのうちの少なくとも1つから選択される代謝拮抗剤;あるいはビンブラスチン、ビノレルビン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビンフルニン、パクリタキセル、ドセタキセル、カバジタキセル、エトポシド、テニポシド、トポテカン、イリノテカン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、イダルビシン、エピルビシン、バルルビシン、ミトキサントロン、ブレオマイシン、エストラムスチン、および/またはマイトマイシンのうちの少なくとも1つから選択される天然生成物で過去に治療されたものである。別の態様において、前記1つまたはそれ以上の同時発生する変異は、NPM1、DNMT3A、NRAS、KRAS、JAK2、PTPN11、TET2、IDH1、IDH2、WT1、RUNX1、CEBPA、ASXL1、BCOR、SF3B1、U2AF1、STAG2、SETBP1、ZRSR2、GRB7、SRSF2、MLL、NUP98、ETV6、TCL1A、TUSC3、BRP1、CD36、TYK2、TP53、EZH2、GATA2、KIT、PHF6、MYC、ERG、MYD88、RAD21、STAT3、NF1、BRAF、KDM6A、SETBP1、CAFR、CBF、KMT2A、PHF6、SMC1A、CHEK2、GNAS、PPM1D、SMC3、ZRSR2、CSF3R、HRAS、MPL、PTEN、ATM、またはMUTYHのうちの少なくとも1つである。別の態様において、前記対象は、小児対象である。
【0087】
本明細書に記載のいずれの実施態様も、本発明のいずれの方法、キット、試薬、または組成物に関して実施することができ、逆もまた同様であると考えられる。さらに、本発明の組成物は、本発明の方法を実施するために用いることができる。
【0088】
本明細書に記載の特定の実施態様は、例示のために示され、本発明を限定するものではないことが理解される。さらに、本発明の主な特徴は、本発明の範囲から逸脱することなく、様々な実施態様で用いることができる。当業者は、日常的な実験のみ、本明細書に記載の具体的な手順に相当する多くの同等物を認識し、または用いて確認することができる。このような同等物は、本発明の範囲内であると考えられ、特許請求の範囲によって網羅される。
【0089】
本明細書に記載される全ての刊行物および特許出願は、本発明が関連する当業者の技術レベルを示す。全ての刊行物および特許出願は、個々の刊行物または特許出願が参照により組み込まれることが具体的かつ個別に示されている場合と同程度に、参照により本明細書に組み込まれる。
【0090】
特許請求の範囲および/または本明細書における用語「含む」と併せて使用される場合の単語「a」または「an」の使用は、「1つ」を意味する場合があるが、「1つまたはそれ以上」「少なくとも1つ」、および「1つまたはそれより多い」の意味にも相当する。特許請求の範囲における用語「または」の使用は、代替物のみおよび「および/または」を意味する定義を意味するが、代替物のみを意味することが明確に示されているか、または代替物が相互に排他的でない限り、「および/または」を意味するために用いられる。本出願を通して、用語「約」は、値が、装置、前記値を決定するために用いられる方法、または試験対象間に存在する変動に対する誤差の固有の変動を含むことを示すために用いられる。
【0091】
本明細書および特許請求の範囲で用いられるように、用語「含む(comprising)」(ならびに「含む(comprise)」および「含む(comprises)」などの含む(comprising)のいずれかの形)、「有する(having)」(ならびに「有する(have)」および「有する(has)」などの有する(having)のいずれかの形)、「含む(including)」(ならびに「含む(includes)」および「含む(include)」などの含む(including)のいずれかの形)、または「含有する(containing)」(ならびに「含有する(contains)」および「含有する(contain)」などの含む(containing)のいずれかの形)は、包括的であるか、またはオープンエンドであり、さらなる記載されていない特徴、要素、構成、群、整数、および/またはステップを除外しないが、他の記載されていない特徴、要素、構成、群、整数、および/またはステップの存在も除外しない。本明細書で供される組成物および方法のいずれかの実施態様において、「含む(comprising)」は、「から必須としてなる」または「からなる」で置き換えてもよい。本明細書で用いられるように、用語「からなる」は、列挙された整数(例えば、特徴、要素、性質、特性、方法/プロセス工程、または限定)または整数群(例えば、特徴、要素、性質、特性、方法/プロセス工程、または限定)のみの存在を示すために用いられる。本明細書で用いられるように、用語「から必須としてなる」は、特定の特徴、要素、構成、群、整数、および/またはステップを必要とするが、他の記載されていない特徴、要素、構成、群、整数および/またはステップの存在、ならびに本発明の基本的で新規な特徴および/または機能に実質的に影響を及ぼさないものを除外するものではない。
【0092】
本明細書で用いられる用語「またはこれらの組み合わせ」は、その用語の前に列挙された項目の全ての配列および組み合わせを意味する。例えば、「A、B、C、またはこれらの組み合わせ」は、A、B、C、AB、AC、BC、またはABCのうちの少なくとも1つを含み、特定の文脈で順序が重要な場合、BA、CA、CB、CBA、BCA、ACB、BAC、またはCABも含むものとされる。この例を続けると、BB、AAA、AB、BBC、AAABCCCC、CBBAAA、CABABBなどの1つまたはそれ以上の項目または用語の繰り返しを含む組み合わせもまた明らかに含まれる。当業者は、典型的に、文脈から明らかでない限り、いずれの組み合わせにおいて項目または用語の数に制限がないことを理解する。
【0093】
本明細書で用いられるように、「約」、「実質的」または「実質的に」などの近似の用語は、このように修飾された場合、必ずしも絶対的または完全ではないが、当業者がその条件が存在することを指し示すことを認めるのに十分に近似すると考えられる条件を意味する。前記記載が変動しうる程度は、変化を設定できる範囲に依存し、当業者は、修飾された特徴を修飾されていない特徴の必要とされる特徴と許容可能性を依然として有するものと認識する。しかしながら、一般に、前述の議論を条件として、「約」などの近似の用語によって修飾される本明細書の数値は、記載された値から少なくとも±1、2、3、4、5、6、7、10、12または15%まで変動しうる。
【0094】
本明細書に開示され、請求される組成物および/または方法の全ては、本開示に照らして過度の実験なしに作成し、および実施することができる。本発明の組成物および方法は、好ましい実施態様に関して記載されているが、当業者には、本発明の概念、精神および範囲から逸脱することなく、バリエーションが組成物および/または方法に適用され、本明細書に記載の工程または工程の配列に適用されうることが明らかである。当業者に明らかな全てのこのような同様の代替および改変は、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の精神、範囲および概念の範囲内であるものとされる。
【0095】
特許庁および本出願で発行された特許の読者が本明細書に添付された特許請求の範囲を解釈するのを支援するために、出願人は、用語「のための手段」または「のための工程」が特定の請求項で明確に用いられていない限り本明細書の提出日に存在するため、添付の請求項のいずれもが35U.S.C§112の段落6、U.S.C§112の段落(f)、または同等のものを想起することを意図していないことに留意したい。
【0096】
請求項の各々について、各従属請求項は、前の請求項が請求項の用語または構成要素についての適切な先行詞の基礎を供する限り、それぞれ全ての請求項についてのその独立請求項および前の従属請求項の各々の両方に従属しうる。
【0097】
参考文献
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図1
図2-1】
図2-2】
図3-1】
図3-2】
図4-1】
図4-2】
図5
【手続補正書】
【提出日】2024-03-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本願明細書および図面に記載の発明。
【外国語明細書】