(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024063022
(43)【公開日】2024-05-10
(54)【発明の名称】組換え微生物を用いて皮膚疾患を処置するための方法および組成物
(51)【国際特許分類】
C12N 1/21 20060101AFI20240501BHJP
C12P 21/02 20060101ALI20240501BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20240501BHJP
A61P 37/08 20060101ALI20240501BHJP
A61K 35/74 20150101ALI20240501BHJP
C07K 14/47 20060101ALN20240501BHJP
C07K 19/00 20060101ALN20240501BHJP
C12N 15/12 20060101ALN20240501BHJP
C12N 15/63 20060101ALN20240501BHJP
C12N 15/62 20060101ALN20240501BHJP
【FI】
C12N1/21 ZNA
C12P21/02 C
A61P17/00
A61P37/08
A61K35/74
C07K14/47
C07K19/00
C12N15/12
C12N15/63 Z
C12N15/62 Z
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024018472
(22)【出願日】2024-02-09
(62)【分割の表示】P 2020554510の分割
【原出願日】2019-04-05
(31)【優先権主張番号】62/653,021
(32)【優先日】2018-04-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】519445624
【氏名又は名称】アジトラ インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ウィットフィル,トラヴィス,マイケル
(57)【要約】 (修正有)
【課題】炎症性皮膚疾患、特に、尋常性魚鱗癬のための有効な処置法を提供する。
【解決手段】治療的に関連する組換え融合ポリペプチドを発現する操作された微生物を含む、皮膚疾患を処置するための方法および組成物を提供する。一実施形態においては、本開示は、皮膚疾患の処置を必要とする対象に、ヒトフィラグリンを分泌する黄色ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)を含む生きた生物治療製品(LBP)を含む組成物を投与することを含む、アトピー性皮膚炎などの皮膚疾患を処置するための方法を開示する。さらなる態様においては、本発明は、本明細書に記載のフィラグリンポリペプチドを含む医薬組成物を提供する。さらに、本発明は、本明細書に開示される組成物と、使用のための指示書とを含むキットを提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリペプチドを分泌することができる組換え微生物であって、該ポリペプチドを発現することができる遺伝子を含む第1のコード配列と、細胞透過性ペプチドを発現することができる遺伝子を含む第2のコード配列とを含む発現ベクターを含む、組換え微生物。
【請求項2】
移行シグナルを発現することができる遺伝子を含む第3のコード配列をさらに含む、請求項1に記載の組換え微生物。
【請求項3】
第1のコード配列、第2のコード配列および第3のコード配列の発現が、プロモーターの制御下にある、請求項1または2に記載の組換え微生物。
【請求項4】
第1のコード配列、第2のコード配列および第3のコード配列の配置が、インフレームである、請求項3に記載の組換え微生物。
【請求項5】
第1のコード配列、第2のコード配列および第3のコード配列が、プロモーターに機能し得る形で連結されている、請求項2に記載の組換え微生物。
【請求項6】
組換え微生物が、細菌、または細菌の組合せである、請求項2に記載の組換え微生物。
【請求項7】
ポリペプチドが、フィラグリン、またはそのバリアントである、請求項1に記載の組換え微生物。
【請求項8】
微生物が、ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)、ブレヴィバクテリウム(Brevibacterium)、プロピオニバクテリウム(Propionibacterium)、ラクトコッカス(Lactococcus)、ストレプトコッカス(Streptococcus)、スタフィロコッカス(Staphylococcus)、ラクトバチルス(Lactobacillus)、エンテロコッカス(Enterococcus)、ペディオコッカス(Pediococcus)、ロイコノストック(Leuconostoc)、もしくはオエノコッカス(Oenococcus)、またはその組合せからなる群から選択される、請求項1に記載の組換え微生物。
【請求項9】
組換え微生物が、表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)である、請求項1に記載の組換え微生物。
【請求項10】
微生物が、フィラグリン融合タンパク質を分泌する、請求項1に記載の組換え微生物。
【請求項11】
フィラグリン融合タンパク質が配列番号1と95%配列同一であるアミノ酸配列を有する、請求項10に記載の組換え微生物。
【請求項12】
生きた生物治療組成物を製造するための方法であって、
(a)細胞に、(i)治療ポリペプチドを発現することができる核酸配列を含む第1のコード配列、および(ii)細胞透過性ペプチドを発現することができる核酸配列を含む第2のコード配列をトランスフェクトすることと、
(b)トランスフェクトされた細胞に、治療ポリペプチド融合タンパク質を産生させることと、
(c)生きた生物治療組成物を取得することと、
を含む、方法。
【請求項13】
(iii)細胞に、移行シグナルを発現することができる核酸配列を含む第3のコード配列をトランスフェクトすることをさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
第1のコード配列、第2のコード配列および第3のコード配列が、単一のプラスミド中に配置される、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
第1のコード配列、第2のコード配列および第3のコード配列の配置が、プロモーターに機能し得る形で連結される、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
細胞が、ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)、ブレヴィバクテリウム(Brevibacterium)、プロピオニバクテリウム(Propionibacterium)、ラクトコッカス(Lactococcus)、ストレプトコッカス(Streptococcus)、スタフィロコッカス(Staphylococcus)、ラクトバチルス(Lactobacillus)、エンテロコッカス(Enterococcus)、ペディオコッカス(Pediococcus)、ロイコノストック(Leuconostoc)、もしくはオエノコッカス(Oenococcus)、またはその組合せからなる群から選択される微生物からなる群から選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
細胞が、表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)である、請求項12に記載の方法。
【請求項18】
治療ポリペプチド融合タンパク質が、フィラグリン融合タンパク質、またはそのバリアントである、請求項12に記載の方法。
【請求項19】
フィラグリン融合タンパク質が配列番号1と95%配列同一であるアミノ酸配列を有する、請求項11に記載の方法。
【請求項20】
請求項12~19のいずれか一項に記載の方法によって得られた組成物。
【請求項21】
水性溶液、エマルジョン、クリーム、ローション、ゲル、または軟膏からなる群から選択される製薬上許容し得る担体を含む、請求項20に記載の組成物。
【請求項22】
組換え微生物を含む生きた生物治療組成物であって、組換え微生物が、
(i)治療ポリペプチドを発現することができる核酸配列を含む第1のコード配列;
(ii)細胞透過性ペプチドを発現することができる核酸配列を含む第2のコード配列;
(iii)移行シグナルを発現することができる核酸配列を含む第3のコード配列;ならびに (iv)第1のコード配列、第2のコード配列および第3のコード配列に機能し得る形で連結されているプロモーター
を含み、
第1のコード配列、第2のコード配列および第1のコード配列が、フィラグリン融合産物、またはそのバリアントを発現することができる、生きた生物治療組成物。
【請求項23】
組換え微生物が、表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)である、請求項22に記載の組成物。
【請求項24】
移行シグナルが、フィラグリン融合産物、またはそのバリアントを、組換え微生物から外部へ輸送する、請求項22または23に記載の組成物。
【請求項25】
フィラグリン融合タンパク質が配列番号1と95%配列同一であるアミノ酸配列を有する、請求項24に記載の組成物。
【請求項26】
細胞透過性ペプチドが、フィラグリン融合産物、またはそのバリアントの、ヒトケラチノサイトへの進入を容易にする、請求項20に記載の組成物。
【請求項27】
水性溶液、エマルジョン、クリーム、ローション、ゲル、または軟膏からなる群から選択される製薬上許容し得る担体を含む、請求項22に記載の組成物。
【請求項28】
請求項22~27のいずれか一項に記載の組成物、および、使用のための指示書を含む、キット。
【請求項29】
皮膚疾患の処置を必要とする対象に、請求項1~10または18~23のいずれか一項に記載の組成物を投与することを含む、皮膚疾患を処置する方法。
【請求項30】
皮膚疾患が尋常性魚鱗癬(IV)である、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
皮膚疾患がアトピー性皮膚炎である、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
フィラグリンポリペプチド、またはそのバリアントを含む、組成物。
【請求項33】
フィラグリンポリペプチドが融合タンパク質である、請求項32に記載の組成物。
【請求項34】
フィラグリン融合タンパク質が配列番号1と95%配列同一であるアミノ酸配列を有する、請求項33に記載の組成物。
【請求項35】
フィラグリン融合タンパク質が配列番号1のアミノ酸配列からなる、請求項33に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2018年4月5日に出願された、米国仮特許出願第62/653,021号の優先権を主張し、その内容全体があらゆる目的で参照により本明細書に組み込まれるものとする。
【背景技術】
【0002】
尋常性魚鱗癬(IV)は、慢性で乾燥性の鱗屑性皮膚疾患であり、その発生率および有病率は、250人に1人と推定され1、2、米国では130万人の合計患者集団をもたらす。IVの臨床的特徴は通常、約2ヶ月齢で出現し、全身の乾燥および微細な白色から灰色の鱗屑を含み、腹部、胸部、および四肢の伸筋表面で顕著である3。一部のIV患者は、乏汗症および高熱不耐性も経験する4。IVの発症は、表皮ケラトヒアリン顆粒のサイズもしくは数の減少、またはさらには、その完全な不在と長く同定されてきた5~7。さらに、遺伝的因子のため、IVを有する患者は、アトピー性皮膚炎(AD)、喘息、およびアレルギーのリスクが高い8。
【0003】
尋常性魚鱗癬は、フィラグリンをコードする遺伝子の機能喪失型変異によって引き起こされる常染色体半優性疾患である9。フィラグリンは、角質層でフィラグリン単量体に分解し、ケラチノサイト細胞骨格中でケラチンおよび他の中間フィラメントタンパク質に結合することによって皮膚バリアを強化する、プロフィラグリンから誘導される必須構造タンパク質である10。
【0004】
多くの研究が、IVおよびアトピー性皮膚炎患者におけるFLGの機能喪失型変異を同定し11~14、これらの変異は無秩序なケラチンフィラメント、皮膚バリアの欠陥15および角質層における微小破壊と関連し、経皮アレルゲン感作の増強をもたらす16~19。さらに、フィラグリンおよびその分解産物は、皮膚の保湿(吸湿性アミノ酸または「天然保湿成分」による)20、21、抗微生物分子(特に、黄色ブドウ球菌(S.aureus)に対する)の産生の実行22、および皮膚における有益な脂質プロファイル23、24と、pH24~26との両方の維持を含む、皮膚における有意な追加の機能を有する。
【0005】
IVのための現在の治療選択肢としては、主に局所水分蒸発抑制剤(例えば、塩化ナトリウム、尿素、乳酸、サリチル酸)、および保湿剤(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、デクスパンテノール)が挙げられる4。身体による皮膚細胞の産生を遅らせる努力においては、局所レチノイドを処方してもよいが、ビタミンA誘導体としての長期的使用は理想的ではない。特に、IVを有する多くの患者は、自意識および社会的恥ずかしさのため、QOLの有意な低下27~29を経験し、家庭生活、教育/職業人生、さらには余暇/スポーツ活動に対する負の影響を見る28、29。IVが大きく、満たされない必要であることは明らかである。
【0006】
多様な微生物群落が皮膚に生息し、1平方センチメートルは最大で10億の微生物を含有し得る39。細菌、真菌、ダニおよびウイルスのこれらの多様な群落は、疾患に対する保護を提供し、皮膚上に動的であるが、異なる生態的地位を形成することができる40。微生物群落の変化または皮膚における腸内毒素症と、皮膚疾患39、41、特に、AD42、43とを関連付ける証拠が増えている。操作されたプロバイオティクスは、治療目的で皮膚微生物叢を活用することに基づく新しい手法である。特に、操作されたプロバイオティクスは、患者の皮膚上での居住を確立し、治療タンパク質をin situで継続的かつ安定的に送達するため、薬物送達の他の方法よりも重要な利点を有する。さらに、表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)(SE)のある特定の株は、アトピー性皮膚炎の疾患表現型および重症度と関連する、皮膚において重要で有益な免疫調節効果および抗病原体効果を示した。さらに、プロフィラグリンから誘導される構造タンパク質であるフィラグリンの送達は、皮膚バリアにおけるフィラグリンの役割および経表皮水分蒸散量を低減し、皮膚水分補給を改善する能力のため、治療手法をさらに増強する。本発明は、アトピー性皮膚炎の病態生理に対処するためのヒトフィラグリン(例えば、AZT-01)を分泌する皮膚薬物送達系として、表皮ブドウ球菌の遺伝子操作された組換え株を用いて、皮膚疾患、例えば、アトピー性皮膚炎を処置するための方法および組成物を提供する驚くべき利点を有する。皮膚に適用されたら、皮膚への安定な定着およびin situでのその後のフィラグリンの分泌は、疾患を解消することができる。本発明の利益としては、非ステロイド性治療選択肢としてのその安全性、フィラグリンの分泌に由来する利益と、表皮ブドウ球菌の局所適用の利益との本発明の組合せに起因するその効能、および低頻度の適用(1日1回以下)であっても治療的に有効であるその能力が挙げられる。
【発明の概要】
【0007】
本発明はしたがって、炎症性皮膚疾患、特に、IVのための有効な処置の長年にわたる必要に対処する。本発明はまた、皮膚疾患を処置する治療タンパク質を分泌することができる片利共生皮膚細菌の初めて報告された証明の1つでもある。
【0008】
発明の概要
本開示は、尋常性魚鱗癬の病態生理に直接対処する、皮膚疾患、例えば、尋常性魚鱗癬(IV)のための新規治療モダリティを特徴とし、ヒトフィラグリンを分泌する表皮ブドウ球菌を含む生きた生物治療製品(LBP)からなる。本開示の目標は、有益な微生物叢に基づくシャシーシステムによる、フィラグリンの長期的で安定な送達を用いて皮膚を補完することである。本発明によって細菌の潜在的なプロバイオティクス特性が利用され、最適化されるが、疾患の改善は、基礎となる病態生理に直接対処する関連タンパク質の合理的な標的発現に基づく。さらに、異なる微生物種および株に対する応答は個体間で異なるため、治療剤送達を制御するためのモジュラー設計は、天然に存在する株を利用する現在の手法を超える、有意に改善された薬物動態および疾患解消を提供するであろう。重要なことに、ある特定の株は抗微生物ペプチドを分泌することができるため、表皮ブドウ球菌の導入は、病原体により誘導される腸内毒素症を標的化することによって皮膚恒常性を再確立するのを助けることができる。
【0009】
かくして、本発明は、特に、治療的に関連する組換え融合ポリペプチド(すなわち、タンパク質、ペプチド、またはアミノ酸)を発現することができる操作された微生物を含む、皮膚疾患、例えば、IVを処置するための方法および組成物に関する。
【0010】
本発明は、第1の態様において、ポリペプチドを分泌することができる組換え微生物であって、ポリペプチドを発現することができる遺伝子を含む第1のコード配列と、細胞透過性ペプチドを発現することができる遺伝子を含む第2のコード配列とを含む発現ベクターを含む、組換え微生物を特徴とする。関連する実施形態において、組換え微生物は、移行シグナル(輸出シグナル)を発現することができる遺伝子を含む第3のコード配列をさらに含む。さらに別の実施形態において、第1のコード配列、第2のコード配列および第3のコード配列の発現は、プロモーターの制御下にある。他の実施形態において、第1のコード配列、第2のコード配列および第3のコード配列の配置は、インフレームである。さらに別の関連する実施形態において、第1のコード配列、第2のコード配列および第3のコード配列は、プロモーターに機能し得る形で連結されている。一実施形態においては、組換え微生物は、細菌、または細菌の組合せである。別の実施形態においては、ポリペプチドは、フィラグリン(filaggrin)、またはそのバリアント(変異体)である。他の実施形態においては、微生物は、ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)、ブレヴィバクテリウム(Brevibacterium)、プロピオニバクテリウム(Propionibacterium)、ラクトコッカス(Lactococcus)、ストレプトコッカス(Streptococcus)、スタフィロコッカス(Staphylococcus)、ラクトバチルス(Lactobacillus)、エンテロコッカス(Enterococcus)、ペディオコッカス(Pediococcus)、ロイコノストック(Leuconostoc)、もしくはオエノコッカス(Oenococcus)、またはその組合せからなる群から選択される。他の実施形態においては、組換え微生物は、表皮ブドウ球菌である。いくつかの実施形態においては、微生物は、フィラグリン融合タンパク質を分泌する。さらなる実施形態においては、フィラグリン融合タンパク質は、配列番号1と85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含む。一実施形態では、フィラグリン融合タンパク質は、配列番号1からなる。
【0011】
本発明は、さらなる態様において、生きた生物治療組成物を製造するための方法であって、(a)細胞に、(i)治療ポリペプチドを発現することができる核酸配列を含む第1のコード配列、および(ii)細胞透過性ペプチドを発現することができる核酸配列を含む第2のコード配列をトランスフェクトすることと、(b)トランスフェクトされた細胞に治療ポリペプチド融合タンパク質を産生させることと、(c)生きた生物治療組成物を取得することとを含む、方法を特徴とする。関連する実施形態においては、方法は、(iii)細胞に、移行シグナルを発現することができる核酸配列を含む第3のコード配列をトランスフェクトすることをさらに含む。別の実施形態においては、第1のコード配列、第2のコード配列および第3のコード配列は、単一のプラスミド中に配置される。さらに別の実施形態においては、第1のコード配列、第2のコード配列および第3のコード配列は、プロモーターに機能し得る形で連結されている。他の実施形態においては、細胞は、Bifidobacterium、Brevibacterium、Propionibacterium、Lactococcus、Streptococcus、Staphylococcus、Lactobacillus、Enterococcus、Pediococcus、Leuconostoc、もしくはOenococcus、またはその組合せからなる群から選択される微生物からなる群から選択される。さらに別の実施形態においては、細胞は、表皮ブドウ球菌である。他の実施形態においては、治療ポリペプチド融合タンパク質は、フィラグリン融合タンパク質、またはそのバリアントである。さらなる実施形態においては、フィラグリン融合タンパク質は、配列番号1と85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含む。一実施形態では、フィラグリン融合タンパク質は、配列番号1からなる。
【0012】
別の態様においては、本開示は、フィラグリンポリペプチド、またはそのバリアントを含む組成物を特徴とする。一実施形態では、フィラグリンポリペプチドは、融合タンパク質である。さらなる実施形態においては、フィラグリン融合タンパク質は、配列番号1と85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含む。一実施形態では、フィラグリン融合タンパク質は、配列番号1からなる。
【0013】
本発明は、さらなる態様において、本明細書に開示または記載される方法のいずれか1つによって得られる組成物を特徴とする。関連する実施形態においては、組成物は、水性溶液、エマルジョン、クリーム、ローション、ゲル、または軟膏からなる群から選択される製薬上許容し得る担体を含む。
【0014】
本発明は、さらなる態様において、(i)治療ポリペプチドを発現することができる核酸配列を含む第1のコード配列;(ii)細胞透過性ペプチドを発現することができる核酸配列を含む第2のコード配列;(iii)移行シグナルを発現することができる核酸配列を含む第3のコード配列;ならびに(iv)第1のコード配列、第2のコード配列および第3のコード配列に機能し得る形で連結されたプロモーターを含む組換え微生物であって、第1のコード配列、第2のコード配列および第1のコード配列が、フィラグリン融合タンパク質、またはそのバリアントを発現することができる、組換え微生物を含む生きた生物治療組成物を特徴とする。さらなる実施形態においては、フィラグリン融合タンパク質は、配列番号1と85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含む。関連する実施形態においては、組換え微生物は、表皮ブドウ球菌である。さらなる実施形態においては、移行シグナルは、フィラグリン融合産物、またはそのバリアントを、組換え微生物から外部へ輸送する。さらに別の実施形態においては、細胞透過性ペプチドは、フィラグリン融合産物、またはそのバリアントの、ヒトケラチノサイトへの進入を容易にする。別の実施形態においては、組成物は、水性溶液、エマルジョン、クリーム、ローション、ゲル、または軟膏からなる群から選択される製薬上許容し得る担体を含む。
【0015】
本発明は、さらなる態様において、本明細書に開示または記載される組成物のいずれか1つおよび使用のための指示書を含むキットを特徴とする。
【0016】
本発明は、さらなる態様においては、皮膚疾患の処置を必要とする対象に、本明細書に開示または記載される組成物のいずれか1つの組成物を投与することを含む、皮膚疾患を処置する方法を特徴とする。一実施形態においては、皮膚疾患は、IVである。別の実施形態においては、皮膚疾患は、アトピー性皮膚炎である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、液体培養物中での増殖株の特性評価を示すグラフである。SEのみ(黒色の実線、三角のマーカー)は、SE-GFPのみ、またはSEとSE-GFPと一緒よりも急速に増殖した。
【
図2-1】
図2A~Cは、RHE中での株の増殖の特性評価を示す。(A)空のベクターを含むSE(すなわち、タンパク質産生なし)。(B)RHE上のSE-GFPのみが、24時間でより遅い増殖を示す。
【
図2-2】(C)RHE上で50:50で一緒に混合した場合、SEの空のベクターは、SE-GFPを打ち負かす。
【
図3】
図3A~Cは、蛍光および反射オーバーレイを示す。(A)角質層における個々の細胞の表面および輪郭上での蛍光SE(点線は例としての角質細胞の輪郭を示す)。(B~C)ダーマローラー適用、次いで、局所GFP適用後、37℃で3.5時間でのRHEの蛍光および光波長オーバーレイであり、細菌が損傷した角質層の割れ目に局在化したことを示すが、そのレベルで表皮中には細菌の証拠がない。深さを、50μm(B)および70μm(C)で取った。
【
図4】
図4A~Cは、GFP精製の結果を示す。タンパク質を、SEの225mLの培養物(2.7~2.9OD/mL)から精製し、CellB-Lyse(Sigma)を用いて溶解した。4mLの溶出液を作製し、PBS pH7.4のバッファー中、Ni-NTAカラム上で泳動させ、0.4mgを得た。(A)SEに由来する精製されたタンパク質を用いたSDS-PAGEゲル上でのInVision Hisタグ染色。レーン(1)溶解物ペレット;(2)上清、明澄化;(3)流出液;(4)溶出液;(5)濃縮液;(6)マーカー;(7)上清、明澄化;(8)流出液;(9)溶出液;および(10)濃縮液。(C)SEに由来する精製されたGFP。
【
図5-1】
図5A~Oは、RHEにおけるリポーターとして5μgのGFPを使用する、RMRシグナルを用いない、および用いないタンパク質の特性評価を示す。(A~D)30分(A、C、E、G)または60分(B、D、F、H)でのRMRシグナルを用いる(C、D)または用いない(A、B)、局所的に適用されたGFPの2光子画像。画像は、2D平面上に投影されたコンパイルされたZスタックである。
【
図5-2】(E~H)RHEへのタンパク質透過の深さを検査するための3D表面分析。
【
図5-3】(E~H)RHEへのタンパク質透過の深さを検査するための3D表面分析。
【
図5-4】(E~H)RHEへのタンパク質透過の深さを検査するための3D表面分析。
【
図5-5】(E~H)RHEへのタンパク質透過の深さを検査するための3D表面分析。
【
図5-6】(I~N)光(L~N)または蛍光(I~K)波長を使用する、GFP(K、N)、GFP+RMR(J、M)またはビヒクル(I、L)の共焦点画像。(O)50μgのGFP-RMRを含むダーマローラー微小針で穿刺したRHE。画像を、適用の30分後に撮った。
【
図6-1】
図6A~Eは、ヒトフィラグリンの予備バイオインフォマティクス分析を示す。(A)ヒトフィラグリンドメインの相同性。
【
図6-2】(B)ヒトフィラグリンドメインの配列アラインメント。
【
図6-3】(C)フィラグリン配列の対応するダイアグラムを含むヒトフィラグリンドメインの疎水性プロット。(D)hFLG 9~10のN末端のQSGEnSGRnSFLYQVSnHEQSES(配列番号3)リピートを除去するための疎水性プロットを使用するヒトフィラグリンサル(simians)9~10についての例示的なSAR訓練および(E)RMR細胞透過性ペプチドが付加されたこのタンパク質の得られる配列(配列番号15)。
【
図6-4】(D)hFLG 9~10のN末端のQSGEnSGRnSFLYQVSnHEQSES(配列番号3)リピートを除去するための疎水性プロットを使用するヒトフィラグリンサル(simians)9~10についての例示的なSAR訓練および(E)RMR細胞透過性ペプチドが付加されたこのタンパク質の得られる配列(配列番号15)。
【
図6-5】(F)フィラグリン構造の概観。(上)プロフィラグリンおよびフィラグリン遺伝子構造。フィラグリンの大部分は、エクソン3によってコードされる。(下)プロフィラグリンタンパク質構造。
【
図7】
図7A~Eは、アッセイの開発を示す。(A~C)様々な抗体を含むフィラグリン産生SE培養物からの培地単離物中のhFLGのウェスタンブロット。(A)Sigmaポリクローナル抗hFLG抗体。(B)SantaCruzポリクローナル抗hFLG抗体。(C)ポリクローナル抗hFLG抗体。(D)MSに基づくフィラグリン検出の方法開発のための提唱されるワークフロー。(E)hFLG9-10(配列番号16)に関する質量分析に由来する、発現されたヒトフィラグリンの同一性。色は、配列の信頼性を示す:暗青色(非常に高い信頼性)、明青色(観察された)および赤色(観察されず)。
【
図8】
図8は、フィラグリン活性に関するBiacore表面プラズモン共鳴(SPR)の概観を示す。
【
図9-1】
図9A~Gは、フィラグリン分解産物、または天然保湿成分(NMF)に関する標準曲線を作成するパイロット結果を示す。ラマン分光法は、個々のNMF成分を検出することができる(A~D)。
【
図9-2】質量分析(E~G)も、ピクトグラムからナノグラム範囲の定量限界(LOQ)で非常に高感度である。
【
図11】
図11は、16S配列決定の実験的概略を示す。
図11は、出現順に、それぞれ、配列番号17~20、20~22、22~23、23~29を開示する。
【発明を実施するための形態】
【0018】
別段の定義のない限り、本明細書で使用するすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者が一般に理解するのと同じ意味を有する。以下の参考文献は、本発明において使用される多くの用語の一般的定義を提供する:Singletonら、Dictionary of Microbiology and Molecular Biology (第2版、1994);The Cambridge Dictionary of Science and Technology (Walker(編)、1988);The Glossary of Genetics、第5版、R. Riegerら(編)、Springer Verlag (1991);およびHale & Marham, The Harper Collins Dictionary of Biology (1991)。本明細書で使用される場合、以下の用語は、別段の特定のない限り、以下のものに帰する意味を有する。
【0019】
冠詞「a」および「an」は、1または1より多い(すなわち、少なくとも1)のその冠詞の文法的目的語を指すように本明細書で使用される。例えば、「要素(an element)」は、1つの要素または1つより多い要素を意味する。
【0020】
本明細書で使用される用語「含む(including)」は、語句「限定されるものではないが、含む(including but not limited to)」を意味し、それと互換的に使用される。
【0021】
本明細書で使用される用語「または」は、文脈が別途明確に示さない限り、用語「および/または」を意味し、それと互換的に使用される。
【0022】
本明細書で使用される用語「など(such as)」は、語句「限定されるものではないが、~など(such as but not limited to)」を意味し、それと互換的に使用される。
【0023】
本明細書で使用される用語「約」は、特定の記載される数値を参照して使用される場合、その値が記載される値から1%以下で変化してもよいことを意味する。例えば、本明細書で使用される場合、「約100」という表現は、99および101ならびにその間の全ての値(例えば、99.1、99.2、99.3、99.4など)を含む。
【0024】
本明細書で使用される用語「担体」、「担体系」または「ビヒクル」とは、医薬品有効成分または患者もしくは対象に局所適用される組成物中の投与のための他の材料を送達する、含有する、または「担持する」のに好適である適合性物質を指す。本明細書において有用な担体は、製薬上許容し得るものであるべきである。本明細書において有用な担体およびビヒクルは、非毒性的であり、有害な様式でそれが含有される製剤の他の成分と相互作用しない、当業界で公知の任意のそのような材料を含む。用語「水性」とは、水を含有するか、または皮膚もしくは粘膜組織への適用後に水を含有するようになる製剤を指す。「担体」のさらなる例としては、水、低級アルコール、高級アルコール、多価アルコール、単糖類、二糖類、多糖類、炭化水素油、脂肪および油、ワックス、脂肪酸、シリコーン油、非イオン性界面活性剤、イオン性界面活性剤、シリコーン界面活性剤、ならびにそのような担体の水ベースの混合物およびエマルジョンベースの混合物が挙げられる。
【0025】
本明細書で使用される用語「(遺伝子)操作された細菌株」または「組換え細菌株」とは、生物外で調製されたDNAの細菌株への導入によって「遺伝子改変された」または「(遺伝子)操作された」細菌の株を指す。例えば、新しい遺伝子または他の核酸配列を含有するプラスミドの細菌中への導入は、細菌に、それらの遺伝子または他の核酸配列を発現させることができる。あるいは、新しい遺伝子または他の核酸配列を含有するプラスミドを細菌に導入した後、細菌のゲノム中に組み込むことができ、そこで細菌はこれらの遺伝子または他の核酸配列を発現するであろう。
【0026】
本明細書で使用される用語「宿主細胞」とは、外因性ポリヌクレオチド配列によって形質転換もしくはトランスフェクトされた、または形質転換もしくはトランスフェクトすることができる細胞を指すことを意味する。
【0027】
本開示の目的のための用語「単離された」は、その元の環境(それが天然に存在する環境)から取り出された生物材料(細胞、核酸またはタンパク質)を指す。例えば、植物または動物中に天然状態で存在するポリヌクレオチドは単離されていないが、天然に存在する隣接する核酸から分離された同じポリヌクレオチドは、「単離された」とされる。
【0028】
「単離された核酸分子」(例えば、単離されたプロモーターなど)は、核酸の天然の供給源中に存在する他の核酸分子から分離されたものである。例えば、ゲノムDNAに関して、用語「単離された」は、ゲノムDNAが天然に結合した染色体から分離された核酸分子を含む。好ましくは、「単離された」核酸分子は、該核酸分子が由来する生物のゲノムDNA中で、天然で該核酸分子の両側に存在する(フランキングする)配列を含まない。
【0029】
本明細書で使用される用語「遺伝子エレメント(遺伝的エレメント)」は、ポリペプチドをコードする領域を含むポリヌクレオチドまたは複製、転写もしくは翻訳または宿主細胞中でのポリペプチドの発現にとって重要な他のプロセスを調節するポリヌクレオチド領域、またはポリペプチドをコードする領域と、発現を調節するそれに機能し得る形で連結された領域との両方を含むポリヌクレオチドを指すことを意味する。遺伝子エレメントは、エピソームエレメントとして;すなわち、宿主細胞ゲノムとは物理的に無関係の分子として複製するベクター内に含まれていてもよい。それらは、プラスミド内に含まれていてもよい。遺伝子エレメントはまた、その天然の状態ではなく、むしろ、特に、精製されたDNAの形態で宿主細胞中での、またはベクター中での単離、クローニングおよび導入などの操作後に、宿主細胞ゲノム内に含まれていてもよい。
【0030】
本明細書で使用される用語「生きた生物治療製品」(またはLBP)とは、細菌、酵母、および/または他の微生物を含有する製品候補を指す。
【0031】
本明細書で使用される用語「患者」または「対象」とは、本発明の処置および組成物を受けるであろうヒトまたは動物(動物の場合、より典型的には、家畜哺乳動物などの哺乳動物、または家禽動物および魚類および他の海産物もしくは淡水食物生物などの動物)を指す。
【0032】
本明細書で使用される場合、「それを必要とする対象」という表現は、アトピー性皮膚炎の1つ以上の症状もしくは兆候を示す、および/またはIVと診断された、ヒトまたは非ヒト動物を意味する。
【0033】
本明細書で使用される語句「製薬上許容し得る」とは、正しい医学的判断の範囲内で、合理的な利益/リスク比に見合う、過剰の毒性、刺激、アレルギー応答、または他の問題もしくは合併症なしにヒトおよび動物の組織との接触における使用にとって好適である、活性化合物、材料、操作された細菌株もしくは複数の株、組成物、担体、および/または剤形を指す。
【0034】
本明細書で使用される用語「ポリヌクレオチド」は一般に、非改変RNAもしくはDNAまたは改変RNAもしくはDNAであってもよい、任意のポリリボヌクレオチドまたはポリデオキシリボヌクレオチドを指す。かくして、例えば、本明細書で使用されるポリヌクレオチドは、特に、一本鎖および二本鎖DNA、一本鎖および二本鎖領域または一本鎖、二本鎖および三本鎖領域の混合物であるDNA、一本鎖および二本鎖RNA、ならびに一本鎖および二本鎖領域の混合物であるRNA、一本鎖、もしくはより典型的には、二本鎖、または三本鎖、または一本鎖および二本鎖領域の混合物であってもよい、DNAおよびRNAを含むハイブリッド分子を指す。さらに、本明細書で使用されるポリヌクレオチドは、RNAまたはDNAまたはRNAとDNAの両方を含む三本鎖領域を指す。そのような領域中の鎖は、同じ分子または異なる分子に由来するものであってもよい。これらの領域は、1つ以上の分子の全部を含んでもよいが、より典型的には、いくつかの分子の領域のみを含む。三重らせん領域の分子の1つは、オリゴヌクレオチドであることが多い。本明細書で使用される用語「ポリヌクレオチド」は、1つ以上の改変塩基を含有する上記のDNAまたはRNAを含む。かくして、安定性または他の理由のために骨格が改変されたDNAまたはRNAは、その用語が本明細書で意図されるような「ポリヌクレオチド」である。さらに、ほんの2例を挙げると、イノシンなどの非通常塩基、またはトリチル化塩基などの改変塩基を含むDNAまたはRNAは、この用語が本明細書で使用されるようなポリヌクレオチドである。当業者には公知の多くの有用な目的に役立つ数多くの改変がDNAおよびRNAに対して加えられていることが理解されるであろう。本明細書で用いられる用語「ポリヌクレオチド」は、そのような化学的、酵素的または代謝的に改変された形態のポリヌクレオチド、ならびにウイルスおよび特に、単数の細胞および複数の細胞を含む細胞に特徴的な、化学的形態のDNAおよびRNAを包含する。用語「ポリヌクレオチド」はまた、オリゴヌクレオチドと呼ばれることも多い短いポリヌクレオチドも包含する。「ポリヌクレオチド」および「核酸」は、本明細書では互換的に使用されることが多い。
【0035】
本明細書で使用される用語「ポリペプチド」または「タンパク質」とは、鎖中に一緒に結合するアミノ酸残基から構成される生体分子、または高分子を指す。本明細書で使用されるポリペプチドの定義は、アミノ酸残基の1つ以上の長い鎖から構成されるタンパク質(一般的には、より高い分子量)および数個のアミノ酸の低分子(一般的には、低い分子量)を包含することが意図される。他の実施形態においては、技術的にはポリペプチドではないが、単一のアミノ酸も、本開示の範囲内にあると考えられる。
【0036】
本明細書で使用される用語「防止すること」とは、例えば、患者または対象が異常な皮膚状態の素因があるか、または異常な皮膚状態に罹るリスクがある場合に、異常な皮膚状態(例えば、IV)が生じるのを完全に、またはほぼ完全に停止させることを指す。防止することはまた、異常な皮膚状態の発生を阻害すること、すなわち、停止させることを含んでもよい。
【0037】
本明細書で使用される場合、「プロモーター」は、構造遺伝子の転写を指令するDNA配列を指すことを意味する。典型的には、プロモーターは、構造遺伝子の転写開始部位に近い、遺伝子の5’領域に位置する。プロモーターが誘導性プロモーターである場合、転写の速度は、誘導剤に応答して増大する。例えば、プロモーターが特定の組織型中での関連するコード領域の転写においてのみ活性であるように、組織特異的様式でそれを調節することができる。
【0038】
本明細書で使用される用語「リスクを低減すること」とは、例えば、患者または対象が異常な皮膚状態の素因があるか、または異常な皮膚状態に罹るリスクがある場合に、異常な皮膚状態(例えば、IV)が生じる可能性または確率を低下させることを指す。
【0039】
本明細書で使用される用語「治療有効量(治療上有効な量)」とは、薬学活性化合物、化合物もしくは組成物の組合せの量、または単独で、もしくは組み合わせて投与した場合、疾患状態もしくは状態、例えば、異常な皮膚状態(例えば、IV)を処置する、防止する、もしくはそのリスクを低減するための、操作された細菌株もしくは複数の株、例えば、皮膚処置剤もしくは複数の薬剤によって送達される、薬学活性化合物の量を指す。この用語はまた、活性化合物もしくは化合物の組合せまたは薬学活性化合物を送達する操作された細菌株もしくは複数の株を含有する医薬組成物の量も指す。例えば、有効量とは、化合物の量または生物活性、例えば、異常な皮膚状態を処置もしくは防止するための活性を惹起するのに十分なレシピエント患者もしくは対象に与えられる製剤中に存在する操作された細菌株もしくは複数の株によって送達される化合物の量を指す。
【0040】
本明細書で使用される用語「処置すること」とは、異常な皮膚状態(例えば、IV)を治癒させる、または改善するための治療的介入を提供することを指す。
【0041】
組成物
本発明は、皮膚疾患の処置または防止のための組換え治療ポリペプチドを発現するように遺伝的に変化した皮膚定着性微生物、例えば、細菌を提供する(
図2)。遺伝子操作されたタンパク質産生微生物、例えば、細菌の使用は、皮膚疾患を処置する先行技術の方法を超えるいくつかの利点を有する。治療タンパク質は、皮膚状態をもたらす欠陥の根本的な原因を処置することができる。さらに、微生物、例えば、細菌は、挿入された核酸(例えば、遺伝子)を保持しながら自己複製して、治療タンパク質を継続的に産生することができる。
【0042】
本発明は、治療タンパク質、例えば、ヒトフィラグリンを発現するように遺伝的に変化した、例えば、表皮ブドウ球菌などの皮膚定着性微生物、例えば、細菌を提供する。遺伝子操作されたフィラグリン産生微生物、例えば、細菌の使用は、フィラグリン補給の使用を超えるいくつかの利点を有する。第1に、微生物、例えば、細菌は、挿入されたフィラグリン核酸配列(例えば、遺伝子)を保持しながら自己複製することができる。第2に、表皮ブドウ球菌は、通常、皮膚上に存在し、アトピー性皮膚炎フレア中の皮膚微生物叢を支配する同じ分野の細菌種である黄色ブドウ球菌の増殖を阻害することが示されている。
【0043】
細菌株
本発明は、組換え治療タンパク質を発現することができる、遺伝的に変化した微生物、例えば、細菌を提供する。広範囲の微生物が、本発明における使用にとって好適である。例としては、限定されるものではないが、非病原性細菌および片利共生細菌が挙げられる。本発明における使用にとって好適な細菌としては、限定されるものではないが、Bifidobacterium、Brevibacterium、Propionibacterium、Lactococcus、Streptococcus、Staphylococcus (例えば、S. epidermidis)、Lactobacillus (例えば、L. acidophilus)、Pediococcus、Leuconostoc、またはOenococcusが挙げられる。本発明のある特定の実施形態においては、細菌は、表皮ブドウ球菌である。本発明の好ましい実施形態においては、使用される表皮ブドウ球菌の株は、バイオフィルムを産生することができない。バイオフィルムを産生することができない表皮ブドウ球菌の株の1つのそのような例は、表皮ブドウ球菌株ATCC 12228である。しかしながら、本発明のさらに他の実施形態においては、皮膚上に見出される他の関連する、または類似する種を用いることができる。
【0044】
治療タンパク質
本発明は、組換え治療タンパク質を発現することができる、遺伝的に変化した微生物、例えば、細菌を提供する。本発明の好ましい実施形態においては、治療タンパク質は、ヒトフィラグリンを含む。ヒトフィラグリンは、フィラグリン(FLG)をコードするヒト遺伝子によって発現される。フィラグリンは、分化しているケラチノサイトによって産生されるタンパク質であり、ケラチンフィラメントを、他の成分と共に、角化細胞エンベロープを含む細胞骨格に凝集させるように機能する。FLGは、タンパク質分解されて、機能的なフィラグリンモノマーを遊離する不溶性ポリタンパク質であるプロフィラグリンを産生する、染色体lq21上に位置する大きい遺伝子である(Armengot-Carboら、2014)。本発明の治療タンパク質(およびすなわち、タンパク質が発現される遺伝子)は、任意の哺乳動物に由来してもよい。非限定例としては、限定されるものではないが、マウス、ラット、ウサギ、ヤギ、ヒツジ、ウマ、ウシ、イヌ、霊長類、またはヒト遺伝子配列が挙げられる。本発明の好ましい実施形態においては、治療タンパク質は、細胞透過性タンパク質(CPP)に機能し得る形で連結されたフィラグリンを含む組換え融合タンパク質を含む。一実施形態においては、細胞透過性タンパク質は、RMRRMRRMRRである。本発明の他の実施形態においては、治療タンパク質は、組換えフィラグリンを微生物(例えば、細菌)の外部へ輸送することができる、移行または分泌シグナルに機能し得る形で連結されたフィラグリンを含む組換え融合タンパク質を含む。別の実施形態においては、治療タンパク質は、細胞透過性タンパク質(CPP)および移行または分泌シグナルに機能し得る形で連結されたフィラグリンを含む組換え融合タンパク質を含む。
【0045】
一実施形態においては、細胞透過性タンパク質に機能し得る形で連結されたフィラグリンを含む融合タンパク質を、配列番号1に示す。
【0046】
【0047】
一実施形態においては、フィラグリン融合タンパク質は、配列番号1と85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含む。一実施形態では、フィラグリン融合タンパク質は、配列番号1からなる。
【0048】
いくつかの態様においては、治療タンパク質は、微生物(例えば、細菌)によって発現されない。いくつかの態様においては、治療タンパク質は、フィラグリンポリペプチド、またはそのバリアントを含む。一実施形態においては、フィラグリンポリペプチドは、融合タンパク質である。さらなる実施形態においては、フィラグリン融合タンパク質は、配列番号1と85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含む。一実施形態においては、フィラグリン融合タンパク質は、配列番号1からなる。
【0049】
分泌シグナル
分泌シグナルまたは移行シグナルは、分泌経路を介するタンパク質の輸送を容易にするタンパク質上のペプチド配列であり、最終的に、細胞からのタンパク質の分泌をもたらす。本発明においては、微生物(例えば、細菌細胞)から外部への、フィラグリンを含むタンパク質などのタンパク質の輸送を容易にする任意の分泌シグナルが、分泌シグナルとして企図される。
【0050】
細胞透過性ペプチド
細胞透過性ペプチドは、受容体を使用することなく、また、有意な膜損傷を引き起こすことなく、in vivoで生体分子(例えば、タンパク質)の送達を容易にする、または媒介するペプチド配列である。皮膚ケラチノサイトへの進入を容易にする細胞透過性ペプチドは、本発明の細胞透過性ペプチドとして企図される。
【0051】
ある実施形態において、細胞透過性ペプチドは、RMRRMRRMRR (配列番号2)である。
【0052】
遺伝子構築物
本発明は、標準的な分子生物学技術、例えば、(Sambrookら、2001)に記載されたものを用いる。本発明のために用いられる遺伝子構築物の例は、機能を改善するためにプラスミド上にさらなる設計特徴をさらに含む、対立遺伝子交換大腸菌-ブドウ球菌シャトルベクターである、pJB38に基づくpAZTである(Bose, J.L., et al. Applied and environmental microbiology. 2013;79(7):2218-2224)。プラスミドは、標準的な分子生物学技術を用いて、治療タンパク質をコードする遺伝子のcDNAを制限部位に挿入することによって構築される(
図2)。挿入物は、プロモーターによって駆動されるコード配列をさらに含む。そのようなプロモーターは、構成的または誘導的であってもよい。誘導的プロモーターの例としては、アルコール、糖、金属、もしくはテトラサイクリンなどの化合物によって、または光もしくは高温などの物理的因子によって活性化されるものが挙げられる。
【0053】
ヒトFLGのmRNA配列は、Genebank受託番号NM_002016を有する。FLG cDNAの部分をpJB38の制限部位に挿入することにより、プラスミドpAZTを構築した。挿入物は、プロモーターによって駆動される核酸コード配列を含有する。構築物は、分泌シグナルおよび細胞透過性ペプチドをコードする核酸配列をさらに含み、かくして、組換えフィラグリン融合タンパク質が得られる。
【0054】
組換え細菌株の使用
処置されるべき皮膚疾患は、皮膚と関連する任意の疾患または障害であってもよいことが理解される。ある実施形態においては、障害は、アトピー性皮膚炎、乾癬、にきび、アレルギー性接触皮膚炎、表皮剥離性角質増殖症、脂漏性皮膚炎、湿疹、乾燥肌、アレルギー、発疹、UV刺激性皮膚、洗剤刺激性皮膚(酵素および洗浄用洗剤において使用される化合物およびラウリル硫酸ナトリウムによって引き起こされる刺激を含む)、皮膚菲薄化(例えば、高齢者および小児に由来する皮膚)、水疱性類天疱瘡、尋常性天疱瘡、膿痂疹、白斑、脱毛症、および多毛症からなる群から選択される。ある実施形態において、皮膚疾患は尋常性魚鱗癬(IV)である。
【0055】
本発明に従って投与することができるタンパク質の例は、好ましくは、真核タンパク質である。これらのタンパク質としては、限定されるものではないが、単一のアミノ酸、小さいペプチド、および大きいタンパク質が挙げられる。より具体的には、組換え治療タンパク質として本発明において有用であるタンパク質をコードする遺伝子としては、限定されるものではないが、以下のもの:限定されるものではないが、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-10、IL-11、IL-12、IL-13、IL-14およびIL-15を含む、インターロイキンファミリーの遺伝子のメンバー、ならびにその受容体アンタゴニストをコードする遺伝子が挙げられる。限定されるものではないが、エリスロポエチン、顆粒球コロニー刺激因子、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子、マクロファージコロニー刺激因子、幹細胞因子、白血病阻害因子およびトロンボポエチンを含む造血性増殖因子をコードする遺伝子も、本発明において企図される。限定されるものではないが、神経成長因子、脳由来神経栄養因子および毛様体神経栄養因子を含む、神経栄養因子をコードする遺伝子も企図される。さらに、限定されるものではないが、IFN-アルファ、IFN-ベータおよびIFN-ガンマを含むインターフェロンをコードする遺伝子が含まれる。本発明においてさらに企図されるのは、C-CファミリーおよびC-X-Cファミリーのサイトカインなどのケモカシンをコードする遺伝子、プロインスリンおよび成長ホルモン(増殖ホルモン)などのホルモンをコードする遺伝子、ならびに組織プラスミノゲンアクチベーター、ストレプトキナーゼ、ウロキナーゼまたはトリプシン阻害因子などの他の酵素を含む、血栓溶解酵素をコードする遺伝子である。本発明は、限定されるものではないが、オンコスタチンM、血小板由来増殖因子、線維芽細胞増殖因子、表皮増殖因子、肝細胞増殖因子、骨形態形成タンパク質、インスリン様増殖因子、カルシトニンならびにトランスフォーミング増殖因子アルファおよびベータを含む、組織修復因子、増殖および調節因子をコードする遺伝子をさらに含む。さらに企図される遺伝子としては、フィラグリン、アクチン、コラーゲン、フィブリリン、エラスチン、または硬タンパク質を含む構造タンパク質をコードする遺伝子が挙げられる。
【0056】
特定の実施形態において、遺伝子はフィラグリンをコードする遺伝子である。
【0057】
抗体
また、本開示において提供されるのは、サブドメインのすべての対に共通するhFLGのエピトープに対する抗体である。特定の実施形態において、抗体はニワトリIgYである。
【0058】
製剤
本発明による使用のための製剤は、治療有効量の所望のポリペプチドを産生する製薬上有効量の遺伝子操作された微生物、例えば、細菌、例えば、少なくとも約0.01重量%、約0.05重量%、約0.1重量%、約0.2重量%、約0.3重量%、約0.4重量%、約0.5重量%、約0.6重量%、約0.7重量%、約0.8重量%、約0.9重量%、約1.0重量%、約1.5重量%、約2.0重量%、約3.0重量%、約4.0重量%、約5.0重量%、約6.0重量%、約7.0重量%、約8.0重量%、約9.0重量%、約10.0重量%、約11.0重量%、約12.0重量%、約13.0重量%、約14.0重量%、約15.0重量%、約16.0重量%、約17.0重量%、約18.0重量%、約19.0重量%、約20.0重量%、約25.0重量%、約30.0重量%、約35.0重量%、約40.0重量%、約45.0重量%、約50.0重量%以上の遺伝子操作された微生物、例えば、細菌を含んでもよく、その上限は、約90.0重量%の遺伝子操作された微生物、例えば、細菌である。
【0059】
代替的な実施形態においては、本発明による使用のための製剤は、例えば、少なくとも約0.01重量%~約30重量%、約0.01重量%~約20重量%、約0.01重量%~約5重量%、約0.1重量%~約30重量%、約0.1重量%~約20重量%、約0.1重量%~約15重量%、約0.1重量%~約10重量%、約0.1重量%~約5重量%、約0.2重量%~約5重量%、約0.3重量%~約5重量%、約0.4重量%~約5重量%、約0.5重量%~約5重量%、約1重量%~約5重量%以上の遺伝子操作された微生物、例えば、細菌を含んでもよい。
【0060】
いくつかの態様において、本発明における使用のための製剤は、任意の製薬上有効な量のフィラグリンポリペプチドまたはその変異体を含み得る。ある実施形態では、フィラグリンポリペプチドは融合タンパク質である。さらなる実施形態において、フィラグリンポリペプチドは、配列番号1と85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0061】
いくつかの実施形態において、製剤は局所製剤である。本発明における使用のための局所製剤は、クリーム、ローション、スプレー、溶液剤、ゲル、軟膏、ペースト、膏薬、塗料、生体接着剤、懸濁液剤、エマルジョンなどの、体表面への適用にとって好適な任意の形態であってもよく、ならびに/またはリポソーム、ミセル、および/もしくはミクロスフェアを含有するように調製することができる。そのような製剤を、体表面から蒸発する水分が、体表面への適用時およびその後も製剤中で維持されるような、閉鎖した被覆層と組み合わせて使用することができる。製剤は、生きている生物治療組成物を含んでもよく、組換えポリペプチドを産生する、少なくとも1種の遺伝子操作された微生物、例えば、操作された細菌株を含んでもよい。この操作された生きている生物治療組成物は、異常な皮膚状態、および/または皮膚疾患(例えば、炎症性皮膚疾患)を処置または防止するために、ポリペプチドを皮膚に直接送達することができる。
【0062】
局所製剤は、任意の他の活性成分が当業界で公知の皮膚科学的ビヒクル、例えば、水性または非水性ゲル、軟膏、油中水または水中油エマルジョン中に溶解または分散されたものを含む。そのようなビヒクルの構成物質は、水、水性バッファー溶液、非水性溶媒(エタノール、イソプロパノール、ベンジルアルコール、2-(2-エトキシエトキシ)エタノール、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノラウレート、グリコフロールまたはグリセロールなど)、油(例えば、液体パラフィンなどの鉱油、Miglyol(商標)などの天然もしくは合成トリグリセリド、またはジメチコンなどのシリコーン油)を含んでもよい。製剤の性質ならびにその意図される使用および適用部位に応じて、用いられる皮膚科学的ビヒクルは、以下のもの:可溶化剤または溶媒(例えば、ヒドロキシプロピルβ-シクロデキストリンなどのβ-シクロデキストリン、またはエタノール、プロピレングリコールもしくはグリセロールなどのアルコールもしくはポリオール);増粘剤(例えば、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースまたはカルボマー);ゲル化剤(例えば、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンコポリマー);保存剤(例えば、ベンジルアルコール、塩化ベンズアルコニウム、クロルヘキシジン、クロルブトール、安息香酸塩、ソルビン酸カリウムまたはEDTAもしくはその塩);ならびにpH緩衝剤(リン酸二水素とリン酸水素塩との混合物、またはクエン酸とリン酸水素塩との混合物など)から選択される1つ以上の成分(例えば、製剤が水性ゲルである場合、水に加えた成分)を含有してもよい。
【0063】
製薬上許容し得る担体を本発明の製剤中に含有させてもよく、それは当業界で従来使用されている任意の担体であってもよい。その例としては、水、低級アルコール、高級アルコール、多価アルコール、単糖類、二糖類、多糖類、炭化水素油、脂肪および油、ワックス、脂肪酸、シリコーン油、非イオン性界面活性剤、イオン性界面活性剤、シリコーン界面活性剤、ならびにそのような担体の水ベースの混合物およびエマルジョンベースの混合物が挙げられる。本明細書で使用される用語「製薬上許容し得る」または「製薬上許容し得る担体」は、望ましくない生物学的効果または製剤の他の成分との望ましくない相互作用を引き起こすことなく、医薬製剤中に含有させることができる化合物または組成物を指し、本明細書で使用される「担体」または「ビヒクル」とは、局所適用される組成物中への組込みにとって好適な担体材料を指す。本明細書において有用な担体およびビヒクルは、非毒性的であり、有害な様式でそれが含有される製剤の他の成分と相互作用しない、当業界で公知の任意のそのような材料を含む。用語「水性」とは、水を含有するか、または皮膚もしくは粘膜組織への適用後に水を含有するようになる製剤を指す。
【0064】
クリーム基剤は、水で洗浄可能であり、油相、乳化剤、および水性相を含有する。「内部」相とも呼ばれる油相は、一般的には、ワセリンおよびセチルまたはステアリルアルコールなどの脂肪アルコールを含む。水性相は通常、必須ではないが、体積において油相を上回り、一般的には、保湿剤を含有する。クリーム製剤中の乳化剤は、一般的には、非イオン性、陰イオン性、陽イオン性または両性界面活性剤である。
【0065】
ローションは、摩擦なしに皮膚表面に適用される調製物であり、典型的には、活性薬剤を含む粒子が水またはアルコール基剤中に存在する液体または半液体の調製物である。ローションは通常、固体の懸濁液であり、好ましくは、水中油型の液体油性エマルジョンを含む。ローションは、より多くの液体組成物を適用することが容易なため、大きい体面積を処置するための本明細書における好ましい製剤である。ローション中の不溶性物質が微細に分割されることが一般に必要である。ローションは、典型的には、より良好な分散をもたらすための懸濁化剤ならびに活性薬剤を皮膚と接触するように局在化させ、保持するのに有用な化合物、例えば、メチルセルロース、カルボキシメチル-セルロースナトリウムなどを含有することとなる。溶液(剤)は、溶解された物質の分子が溶媒の分子の間に分散されるように、1つ以上の化学物質(溶質)を液体中に溶解することによって調製される均一な混合物である。溶液(剤)は、溶質を緩衝化する、安定化する、または保持するための他の製薬上または化粧上許容し得る化学物質を含有してもよい。溶液(剤)を調製する際に使用される溶媒の一般的な例は、エタノール、水、プロピレングリコールまたは任意の他の許容し得るビヒクルである。勿論周知の通り、ゲルは半固体の懸濁液型系である。単相ゲルは、典型的には、水性であるが、好ましくは、アルコール、および必要に応じて、油も含有する、担体液体を通じて実質的に均一に分布した有機高分子を含有する。好ましい有機高分子、すなわち、ゲル化剤は、「カルボマー」ファミリーのポリマー、例えば、Carbopolの商標の下で商業的に入手できるカルボキシポリアルキレンなどの架橋アクリル酸ポリマーである。また、ポリエチレンオキシド、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンコポリマーおよびポリビニルアルコールなどの親水性ポリマー;ヒドロキシ-プロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシ-プロピルメチルセルロースフタレート、およびメチルセルロースなどのセルロース系ポリマー;トラガカントおよびキサンタンゴムなどのゴム;アルギン酸ナトリウム;ならびにゼラチンも好ましい。均一なゲルを調製するために、アルコールもしくはグリセリンなどの分散剤を添加するか、またはゲル化剤を、磨砕、機械的混合もしくは撹拌、またはその組合せによって分散させることができる。軟膏は、これも当業界で周知の通り、典型的には、ワセリンまたは他の石油誘導体に基づく半固体調製物である。使用される特定の軟膏基剤は、当業者には理解されるように、いくつかの望ましい特徴、例えば、皮膚軟化性などを提供するものである。他の担体またはビヒクルと同様、軟膏基剤は、不活性であり、安定であり、非刺激性であり、非感作性であるべきである。Remington: The Science and Practice of Pharmacy、第19版 (Easton, PA: Mack Publishing Co., 1995)、pages 1399-1404に説明されたように、軟膏基剤を、4つのクラス:脂肪性基剤;乳化性基剤;エマルジョン基剤;および水溶性基剤に分類することができる。脂肪性軟膏基剤としては、例えば、植物油、動物から得られる脂肪、および石油から得られる半固体炭化水素が挙げられる。
【0066】
吸収性軟膏基剤としても知られる、乳化性軟膏基剤は、水をほとんど含有しないか、または全く含有せず、例えば、硫酸ヒドロキシステアリン、無水ラノリン、および親水性ワセリンを含む。
【0067】
エマルジョン軟膏基剤は、油中水(W/O)エマルジョンまたは水中油(O/W)エマルジョンであり、例えば、アセチルアルコール、モノステアリン酸ステアリル、ラノリン、およびステアリン酸を含む。好ましい水溶性軟膏基剤は、変化する分子量のポリエチレングリコールから調製される;さらなる情報については、Remington: The Science and Practice of Pharmacyを参照されたい。
【0068】
ペーストは、活性薬剤が好適な基剤中に懸濁された半固体剤形である。基剤の性質に応じて、ペーストは、脂肪ペーストまたは単相水性ゲルから作られたものの間に分割される。脂肪ペースト中の基剤は、一般的には、ワセリンまたは親水性ワセリンなどである。単相水性ゲルから作られたペーストは、一般的には、基剤としてカルボキシメチルセルロースなどを含む。
【0069】
促進剤は、典型的には、「可塑化」促進剤と呼ばれる親油性共促進剤、すなわち、約150~1000の範囲の分子量、約1wt%未満、好ましくは、約0.5wt%未満、最も好ましくは、約0.2wt%未満の水性溶解度を有する促進剤である。可塑性促進剤のヒルデブラント溶解パラメータδは、約2.5~約10の範囲、好ましくは、約5~約10の範囲にある。好ましい親油性促進剤は、脂肪エステル、脂肪アルコール、および脂肪エーテルである。特定の最も好ましい脂肪酸エステルの例としては、ラウリン酸メチル、オレイン酸エチル、モノラウリン酸プロピレングリコール、ジラウリン酸プロピレングリコール、モノラウリン酸グリセロール、モノオレイン酸グリセロール、イソプロピルn-デカノエート、およびミリスチン酸オクチルドデシルが挙げられる。脂肪アルコールとしては、例えば、ステアリルアルコールおよびオレイルアルコールが挙げられるが、脂肪エーテルとしては、ジオールまたはトリオール、好ましくは、C2~C4アルカンジオールまたはトリオールが1個または2個の脂肪エーテル置換基で置換された化合物が挙げられる。さらなる浸透促進剤は、局所薬物送達の当業者には公知である、ならびに/または関連のある教科書および文献に記載されている。例えば、Percutaneous Penetration Enhancers、Smithら(編) (CRC Press, 1995)(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)を参照されたい。
【0070】
上記で同定されたものに加えて、様々な他の添加剤を、本発明の組成物中に含有させることができる。これらのものとしては、限定されるものではないが、酸化防止剤、収斂剤、香料、保存剤、皮膚軟化剤、色素、染料、保湿剤、推進剤、および日焼け防止剤、ならびに存在が製薬上望ましいか、または別途望ましいものであってよい他のクラスの材料が挙げられる。本発明の製剤中への含有のための必要に応じた添加剤の典型例は、以下の通りである:ソルベートなどの保存剤;イソプロパノールおよびプロピレングリコールなどの溶媒;メントールおよびエタノールなどの収斂剤;ポリアルキレンメチルグルコシドなどの皮膚軟化剤;グリセリンなどの保湿剤;ステアリン酸グリセロール、PEG-100ステアリン酸、ポリグリセリル-3-ヒドロキシラウリルエーテル、およびポリソルベート60などの乳化剤;ソルビトールおよびポリエチレングリコールなどの他のポリヒドロキシアルコール;桂皮酸オクチルメトキシル(Parsol MCXとして商業的に入手可能)およびブチルメトキシベンゾイルメタン(Parsol 1789の商標の下で入手可能)などの日焼け防止剤;アスコルビン酸(ビタミンC)、a-トコフェロール(ビタミンE)、β-トコフェロール、γ-トコフェロール、δ-トコフェロール、ε-トコフェロール、ζι-トコフェロール、ΖΛ-トコフェロール、η-トコフェロール、およびレチノール(ビタミンA)などの酸化防止剤;エッセンシャルオイル、セラミド、必須脂肪酸、鉱油、植物油(例えば、大豆油、ヤシ油、シアバターの液体画分、ヒマワリ油)、動物油(例えば、ペルヒドロスクアレン)、合成油、シリコーン油またはワックス(例えば、シクロメチコンおよびジメチコン)、フッ素化油(一般的には、ペルフルオロポリエーテル)、脂肪アルコール(例えば、セチルアルコール)、およびワックス(例えば、蜜蝋、カルナバ蝋、およびパラフィン蝋);皮膚感触改変剤;ならびに膨潤粘土およびCarbopolの商標の下で商業的に得ることができる架橋カルボキシポリアルキレンなどの増粘剤およびストラクチュラント(構造化剤)。他の添加剤としては、皮膚(特に、角質層における皮膚の上層)の調子を整え、その水分含量の低下を遅延させることによってそれを柔らかく維持する、および/または皮膚を保護する材料などの有益な薬剤を含む。そのようなコンディショナーおよび保湿剤としては、例えば、ピロリジンカルボン酸およびアミノ酸;2,4,4’-トリクロロ-2-ヒドロキシジフェニルエーテル(トリクロサン)および安息香酸などの有機抗微生物剤;アセチルサリチル酸およびグリシルレチン酸などの抗炎症剤;レチノイン酸などの抗脂漏剤;ニコチン酸などの血管拡張剤;コウジ酸などのメラニン形成のインヒビター;ならびにそれらの混合物が挙げられる。さらなる追加の活性薬剤としては、例えば、アルファヒドロキシ酸、アルファケト酸、ポリマー性ヒドロキシ酸、保湿剤、コラーゲン、海洋抽出物、ならびにアスコルビン酸(ビタミンC)、a-トコフェロール(ビタミンE)、β-トコフェロール、γ-トコフェロール、δ-トコフェロール、ε-トコフェロール、ζι-トコフェロール、ζ2-トコフェロール、η-トコフェロール、およびレチノール(ビタミンA)などの酸化防止剤、ならびに/または製薬上許容し得るその塩、エステル、アミド、もしくは他の誘導体が挙げられる。好ましいトコフェロール化合物は、α-トコフェロールである。追加の薬剤としては、例えば、両方ともLancaster Group AGに割り当てられた、GrossらのWO94/00098およびGrossらのWO94/00109(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載された、皮膚組織への酸素供給を改善することができるものが挙げられる。日焼け防止剤およびUV吸収化合物を含有させることもできる。そのような日焼け防止剤およびUV吸収化合物の非限定例としては、アミノ安息香酸(PABA)、アボベンゾン、シノキサート、ジオキシベンゾン、ホモサレート、メンチルアントラニレート、オクトクリレン、メトキシ桂皮酸オクチル、サリチル酸オクチル、オキシベンゾン、パディメートO、フェニルベンズイミダゾール硫酸、スリソベンゾン、二酸化チタン、サリチル酸トロラミン、酸化亜鉛、エンスリゾール、メラジレート、オクチノキサート、オクチサレート、およびオクトクリレンが挙げられる。その全体が本明細書に組み込まれる、Title 21. Chapter 1. Subchapter D. Part 352. 「Sunscreen drug products for over-the-counter human use」を参照されたい。他の実施形態は、本発明の製剤を用いた処置を容易にする、様々な非発癌性、非刺激性の治癒材料を含んでもよい。そのような治癒材料は、栄養素、ミネラル、ビタミン、電解質、酵素、ハーブ、植物エキス、腺エキスもしくは動物エキス、または皮膚障害の治癒を容易にするために製剤に添加することができる安全な治療剤を含んでもよい。
【0071】
本発明は、化粧品の分野で従来使用されているものと等価であり、例えば、局所製剤の総重量の約0.01%~約20%の範囲である、これらの様々な添加剤の量を企図する。
【0072】
本発明の製剤はまた、乳白化剤、香料、着色料、安定化剤、界面活性剤などの従来の添加剤を含んでもよい。ある特定の実施形態では、保存時の腐敗を防ぐため、すなわち、酵母およびカビなどの微生物の増殖を阻害するために、抗微生物剤などの他の薬剤を添加することもできる。
【0073】
本発明のための好適な抗微生物剤としては、限定されるものではないが、p-ヒドロキシ安息香酸のメチルおよびプロピルエステル(すなわち、メチルおよびプロピルパラベン)、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸、イミド尿素、ならびにそれらの組合せからなる群から選択されるものが挙げられる。他の実施形態では、リプレッサーおよびインデューサー、すなわち、目的のポリペプチドの産生を阻害する(すなわち、グリコース)または誘導する(すなわち、キシロース)ための他の薬剤を添加することもできる。そのような添加剤が製剤の機能と適合し、それを阻害しないという条件で、それらを使用することができる。
【0074】
製剤はまた、投与される化学物質、または組成物の他の成分からもたらされる皮膚刺激または皮膚損傷の可能性を最小化するか、または除去するための刺激緩和性添加剤を含有してもよい。
【0075】
好適な刺激緩和性添加剤としては、例えば、a-トコフェロール;モノアミンオキシダーゼインヒビター、特に、2-フェニル-1-エタノールなどのフェニルアルコール類;グリセリン;サリチル酸塩;アスコルビン酸塩;モネンシンなどのイオノフォア;両染性アミン;塩化アンモニウム;N-アセチルシステイン;カプサイシン;およびクロロキンが挙げられる。刺激緩和性添加剤は、存在する場合、刺激または皮膚損傷を緩和するのに有効な濃度で組成物中に含有させることができ、典型的には、製剤の約20wt%以下、より典型的には、約5wt%以下を占める。ある特定の実施形態において本製剤中に含有させ、かくして、活性薬剤と共に局所的に適用することができるさらなる好適な薬理活性物質としては、限定されるものではないが、以下のもの:有色素性または非有色素性の年齢によるシミ、角質繊維、およびシワを改善または根絶する薬剤;抗微生物剤;抗細菌剤;かゆみ止め剤および乾燥防止剤;抗炎症剤;局部麻酔剤および鎮痛剤;コルチコステロイド;レチノイド;ビタミン;ホルモン;ならびに代謝拮抗剤が挙げられる。局所薬理活性物質のいくつかの例としては、アシクロビル、アンホテリシン、クロルヘキシジン、クロトリマゾール、ケトコナゾール、エコナゾール、ミコナゾール、メトロニダゾール、ミノサイクリン、ナイスタチン、ネオマイシン、カナマイシン、フェニトイン、パラアミノ安息香酸エステル、メトキシ桂皮酸オクチル、サリチル酸オクチル、オキシベンゾン、ジオキシベンゾン、トコフェロール、酢酸トコフェロール、セレンスルフィド、亜鉛ピリチオン、ジフェニルヒドラミン、プラモキシン、リドカイン、プロカイン、エリスロマイシン、テトラサイクリン、クリンダマイシン、クロタミトン、ヒドロキノンならびにそのモノメチルおよびベンジルエーテル、ナプロキセン、イブプロフェン、クロモリン、レチノール、パルミチン酸レチニル、酢酸レチニル、コールタール、グリセオフルビン、エストラジオール、ヒドロコルチゾン、ヒドロコルチゾン21-酢酸、ヒドロコルチゾン17-吉草酸、ヒドロコルチゾン17-酪酸、プロゲステロン、吉草酸ベタメタゾン、ジプロピオン酸ベタメタゾン、トリアムシノロンアセトニド、フルオシノニド、クロベタゾールプロピオン酸エステル、ミノキシジル、ジピリダモール、ジフェニルヒダントイン、過酸化ベンゾイル、および5-フルオロウラシルが挙げられる。クリーム、ローション、ゲル、軟膏、ペーストなどを、罹患した表面上に広げ、優しく塗り込むことができる。溶液剤を同じように適用することができるが、より典型的には、スポイト、スワブなどを用いて適用し、罹患した領域に注意深く適用する。
【0076】
適用レジメンは、状態の重症度および初期処置に対するその応答性などの、容易に決定することができるいくつかの因子に依存するが、通常は、1日あたり2回以上の適用を含まないであろう。当業者であれば、投与される製剤の最適量、投与方法および反復速度を容易に決定することができる。一般に、本発明の製剤を、週に1回または2回から最大で1日1回の範囲で適用することが企図される。
【0077】
方法
処置方法
本発明は、皮膚疾患を処置するための方法であって、そのような処置を必要とする対象に、本発明の組換え治療融合タンパク質を発現することができる遺伝子操作された微生物、例えば、遺伝子操作された細菌を投与することによって、対象を処置することを含む、方法を提供する。いくつかの態様においては、本発明は、皮膚疾患を処置するための方法であって、そのような処置を必要とする対象に、本明細書に記載のフィラグリンポリペプチドを含む医薬組成物を投与することを含む、方法を提供する。いくつかの実施形態においては、フィラグリンポリペプチドは、融合タンパク質である。さらなる実施形態においては、フィラグリン融合タンパク質は、配列番号1と85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0078】
一実施形態においては、疾患は、アトピー性皮膚炎である。
【0079】
一実施形態においては、疾患は、尋常性魚鱗癬(IV)である。IVの臨床的特徴は通常、約2ヶ月齢で出現し、全身の乾燥および微細な白色から灰色の鱗屑を含み、腹部、胸部、および四肢の伸筋表面で顕著である。IVは一般的に、一方または両方の親から受け継がれる遺伝子変異によって引き起こされる。魚鱗病または魚皮病とも呼ばれることもある、尋常性魚鱗癬の鱗屑は、誕生時に存在し得るが、通常は、幼児期に初めて出現する。一実施形態においては、処置される対象は、小児である。アレルギー性皮膚状態である湿疹などの他の皮膚疾患が、尋常性魚鱗癬と関連することもある。
【0080】
さらに別の好ましい実施形態においては、組換え治療融合タンパク質は、フィラグリンを含む。他の実施形態においては、組換え治療融合タンパク質は、細胞透過性ペプチドに機能し得る形で連結されたフィラグリンを含む。一実施形態においては、フィラグリン融合タンパク質は、配列番号1と85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0081】
さらなる実施形態においては、組換え治療融合タンパク質は、移行シグナルに機能し得る形で連結されている。
【0082】
キット
本発明は、キットも提供する。一態様においては、本発明のキットは、(a)本発明の組成物および(b)その使用のための指示書を含む。別の態様においては、本発明のキットは、(a)本発明の生きた生物治療組成物のいずれか1つ、および(b)その使用のための指示書を含む。本発明の組成物は、上記のものである。いくつかの実施形態においては、本発明の組成物は、上記のような、治療的に関連する組換え融合ポリペプチドを発現することができる、操作された微生物である。好ましい実施形態においては、組成物は、フィラグリンを含む組換え融合ポリペプチドを発現することができる、操作された細菌(例えば、表皮ブドウ球菌)を含む。
【0083】
本発明を、さらなる限定と解釈されるべきではない、以下の実施例によってさらに例示する。本出願を通して引用される全ての図面ならびに全ての参考文献、特許および公開された特許出願の内容、ならびに図面は、その全体が参照により本明細書に明示的に組み込まれる。
【0084】
(実施例)
以下の実施例は、本発明の範囲内にある実施形態をさらに説明および実証する。実施例は、単に例示のために与えられるものであり、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、その多くの変更が可能であるため、本発明の限定と解釈されるべきではない。
【実施例0085】
液体培地中での形質転換された細菌の増殖特性の定量化および比較
形質転換された表皮ブドウ球菌(SE)が野生型SEに対して競合する能力の基本的理解を得ることが重要であった。形質転換された細菌の増殖特性および組換え体であるタンパク質産生細菌の増殖動力学を理解するために、液体培地中での標準的な増殖方法を使用した。SE-sGFP、SE-chl(空のベクター対照、クロラムフェニコール(chl)に対して耐性)、および野生型SEの間の増殖差を決定するために、それぞれの株を、100mL培養物中で6時間、別々に増殖させた。45分毎に(SEのおよその倍加時間)、1mLの試料を採取し、600nmで測定して、細菌の総濃度の測定値を得た。増殖特性を理解するために、全試料にわたって光密度を比較した。
【0086】
結果を、
図1に示す。
図1に示されるように、タンパク質産生は、CFU測定値によって決定された場合、SEと比較したSE-GFPの競合的増殖をわずかだけ減少させた。増殖の減少は、タンパク質産生SEにおける代謝要求の増加に起因すると予想される。