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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024006304
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】衝撃吸収構造体
(51)【国際特許分類】
   F16F 7/12 20060101AFI20240110BHJP
   F16F 7/00 20060101ALI20240110BHJP
   B62D 21/15 20060101ALI20240110BHJP
   B60R 19/34 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
F16F7/12
F16F7/00 J
B62D21/15 A
B60R19/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022107063
(22)【出願日】2022-07-01
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】富岡 宏匡
(72)【発明者】
【氏名】福井 勇人
【テーマコード(参考)】
3D203
3J066
【Fターム(参考)】
3D203AA02
3D203BA06
3D203CA07
3D203CA40
3J066AA02
3J066AA23
3J066BA03
3J066BC01
3J066BF02
3J066BG08
(57)【要約】
【課題】変形の起点を設けるための衝撃吸収部材に対する後加工が不要である衝撃吸収構造体を提供する。
【解決手段】衝撃吸収構造体14は、所定の延設方向に延びる繊維強化樹脂製の衝撃吸収部材20と、延設方向における衝撃吸収部材20の先端部に設けられた第1連結部材30とを備えている。衝撃吸収部材20は、延設方向に延びる本体部21と、延設方向における本体部21の先端である第1端21aから延設方向と交差する方向に延びる延出部23とを有している。第1連結部材30は、延出部23が挿入されている貫通孔33を有している。第1連結部材30における貫通孔33を区画する面は、衝撃荷重を延出部23に伝達する衝撃荷重伝達面としての第1面33aを有している。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の延設方向に延びる繊維強化樹脂製の衝撃吸収部材と、前記延設方向における前記衝撃吸収部材の先端部に設けられた連結部材とを備え、
前記衝撃吸収部材は、前記延設方向に延びる本体部と、前記延設方向における前記本体部の先端から前記延設方向と交差する方向に延びる延出部とを有し、
前記連結部材は、前記延出部が挿入されている貫通孔又は溝を有し、
前記連結部材における前記貫通孔又は前記溝を区画する面は、衝撃荷重を前記延出部に伝達する衝撃荷重伝達面を有していることを特徴とする衝撃吸収構造体。
【請求項2】
前記貫通孔又は前記溝は、前記連結部材を前記延設方向と交差する方向に貫通しており、
前記延出部は、前記延設方向と交差する方向において前記貫通孔又は前記溝に挿通されることによって、前記連結部材を前記延設方向と交差する方向に貫通している請求項1に記載の衝撃吸収構造体。
【請求項3】
前記連結部材は、前記貫通孔を有し、
前記衝撃吸収部材は、前記延設方向と交差する方向における前記延出部の端部であって前記本体部とは反対側に位置する端部から前記衝撃荷重伝達面から離れるように延びる折り返し部を有する請求項1に記載の衝撃吸収構造体。
【請求項4】
前記衝撃吸収部材は、繊維強化織物と前記繊維強化織物に複合化された樹脂とを有し、
前記衝撃吸収部材と前記連結部材とは、前記樹脂によって接合されている請求項1に記載の衝撃吸収構造体。
【請求項5】
前記連結部材における前記貫通孔又は前記溝を区画する面は、前記延設方向において前記延出部と対向するとともに前記衝撃荷重伝達面の反対側に位置する対面を有している請求項1に記載の衝撃吸収構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衝撃吸収構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両の衝撃吸収構造体が開示されている。特許文献1の衝撃吸収構造体は、所定の延設方向に延びる繊維強化樹脂製の衝撃吸収部材と、延設方向における衝撃吸収部材の先端部に設けられた連結部材とを備えている。連結部材は、バンパなどの車両構成部材と衝撃吸収部材とを延設方向に連結している。車両構成部材が物体に衝突すると、衝撃吸収部材には連結部材を介して衝撃荷重が作用する。衝撃吸収部材に衝撃荷重が作用すると、衝撃吸収部材は変形することによって衝撃エネルギーを吸収する。このような衝撃吸収構造体では、衝撃エネルギーを安定的に吸収するために、衝撃吸収部材は延設方向における先端から順に変形するのが好ましい。したがって、衝撃吸収部材が先端から順に変形するように、衝撃吸収構造体には変形の起点が設けられていることがある。例えば、特許文献1の衝撃吸収構造体では、衝撃吸収部材の先端部の板厚を先端に向かうにつれて徐々に薄くすることによって変形の起点を設けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6506029号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のように衝撃吸収部材の先端部の板厚を薄くすることによって変形の起点を設ける場合、衝撃吸収部材を成形した後で、衝撃吸収部材の先端部に切削加工を施すことになる。つまり、変形の起点を設けるために衝撃吸収部材に対して後加工を行う必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記問題点を解決するための衝撃吸収構造体は、所定の延設方向に延びる繊維強化樹脂製の衝撃吸収部材と、前記延設方向における前記衝撃吸収部材の先端部に設けられた連結部材とを備え、前記衝撃吸収部材は、前記延設方向に延びる本体部と、前記延設方向における前記本体部の先端から前記延設方向と交差する方向に延びる延出部とを有し、前記連結部材は、前記延出部が挿入されている貫通孔又は溝を有し、前記連結部材における前記貫通孔又は前記溝を区画する面は、衝撃荷重を前記延出部に伝達する衝撃荷重伝達面を有していることを要旨とする。
【0006】
衝撃吸収部材の延出部は、連結部材の貫通孔又は溝に挿入されている。連結部材における貫通孔又は溝を区画する面は、衝撃荷重を延出部に伝達する衝撃荷重伝達面を有している。このため、衝撃吸収構造体が設けられた車両が物体に衝突することによって連結部材に衝撃荷重が加わると、衝撃荷重伝達面は、延出部を押圧することによって、衝撃荷重を延出部に伝達する。すると、本体部の先端周辺に負荷が加わることによって、衝撃吸収部材は本体部の先端周辺で破断する。破断した部分はささくれのようになっているため、他の部分と比べて脆弱である。したがって、本体部は、破断した部分から順に変形する。つまり、破断した部分が変形の起点になる。この場合、衝撃吸収部材が連結部材を介して衝撃荷重を受ける過程で変形の起点が形成されるため、変形の起点を設けるための衝撃吸収部材に対する後加工が不要になる。
【0007】
上記衝撃吸収構造体において、前記貫通孔又は前記溝は、前記連結部材を前記延設方向と交差する方向に貫通しており、前記延出部は、前記延設方向と交差する方向において前記貫通孔又は前記溝に挿通されることによって、前記連結部材を前記延設方向と交差する方向に貫通していてもよい。
【0008】
上記構成では、延出部が連結部材を延設方向と交差する方向に貫通していない場合と比較して、延出部の長さを長くすることができる。このため、衝撃荷重伝達面が延出部を押圧した際に本体部の先端周辺に加わる負荷を大きくすることができる。したがって、衝撃吸収部材は本体部の先端周辺で破断しやすくなるため、変形の起点が形成されやすくなる。
【0009】
上記衝撃吸収構造体において、前記連結部材は、前記貫通孔を有し、前記衝撃吸収部材は、前記延設方向と交差する方向における前記延出部の端部であって前記本体部とは反対側に位置する端部から前記衝撃荷重伝達面から離れるように延びる折り返し部を有していてもよい。
【0010】
上記構成では、折り返し部によって、延出部が貫通孔から抜けにくくなる。したがって、例えば、車両を牽引するときに衝撃吸収部材から連結部材が外れにくくなる。
上記衝撃吸収構造体において、前記衝撃吸収部材は、繊維強化織物と前記繊維強化織物に複合化された樹脂とを有し、前記衝撃吸収部材と前記連結部材とは、前記樹脂によって接合されていてもよい。
【0011】
上記構成では、繊維強化織物に樹脂を複合化することによって衝撃吸収部材を形成するのと同時に、衝撃吸収部材と連結部材とを接合することができる。したがって、衝撃吸収構造体の生産性が向上する。
【0012】
上記衝撃吸収構造体において、前記連結部材における前記貫通孔又は前記溝を区画する面は、前記延設方向において前記延出部と対向するとともに前記衝撃荷重伝達面の反対側に位置する対面を有していてもよい。
【0013】
上記構成では、車両を牽引するときに対面は延出部に接触する。したがって、連結部材における貫通孔又は溝を区画する面が対面を有していない場合と比較して、衝撃吸収部材から連結部材が外れにくくなる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、変形の起点を設けるための衝撃吸収部材に対する後加工が不要になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施形態における車両を示す模式図である。
図2】実施形態における衝撃吸収構造体を示す分解斜視図である。
図3】実施形態における衝撃吸収構造体を示す断面図である。
図4】実施形態における成形前の繊維強化織物を示す平面図である。
図5】実施形態における衝撃吸収構造体の作用を示す模式図である。
図6】変更例における衝撃吸収構造体を示す断面図である。
図7】変更例における衝撃吸収構造体を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、衝撃吸収構造体を具体化した一実施形態を図1図5にしたがって説明する。衝撃吸収構造体は、車両に設けられている。以下の説明において、前、後、左、右とは、車両の運転者が前方(前進方向)を向いた状態を基準とした場合の、前、後、左、右のことをいう。
【0017】
図1に示すように、車両10は、一対のフロントサイドメンバ11と、フロントクロスメンバ12と、フロントバンパ13と、衝撃吸収構造体14とを備えている。一対のフロントサイドメンバ11、フロントクロスメンバ12、及びフロントバンパ13は、車両構成部材である。フロントサイドメンバ11は、前後方向に延びている。フロントクロスメンバ12は、一対のフロントサイドメンバ11を左右方向に連結している。フロントバンパ13は、左右方向に延びている。フロントバンパ13は、一対のフロントサイドメンバ11及びフロントクロスメンバ12よりも前方に位置している。本実施形態の衝撃吸収構造体14は、フロントバンパ13が物体に衝突する場合を想定して設けられている。衝撃吸収構造体14は、フロントサイドメンバ11の前端部とフロントバンパ13との間に設けられている。
【0018】
<衝撃吸収構造体の構成>
衝撃吸収構造体14は、衝撃吸収部材20と、連結部材としての第1連結部材30と、第2連結部材40とを備えている。
【0019】
衝撃吸収部材20は、所定の延設方向に延びている。所定の延設方向とは、車両10に対する衝撃入力方向に沿う方向である。本実施形態では、前方から後方に向かう方向を車両10に対する衝撃入力方向として想定している。したがって、本実施形態では、所定の延設方向は、前後方向である。
【0020】
第1連結部材30は、延設方向における衝撃吸収部材20の先端部に設けられている。第1連結部材30は、衝撃吸収部材20とフロントバンパ13とを延設方向に連結している。第2連結部材40は、延設方向における衝撃吸収部材20の端部であって、第1連結部材30が設けられる端部とは反対側の端部に設けられている。第2連結部材40は、衝撃吸収部材20とフロントサイドメンバ11とを延設方向に連結している。第1連結部材30は、衝撃吸収部材20よりも前方、すなわち衝撃入力方向において衝撃吸収部材20よりも上流側に位置している。第2連結部材40は、衝撃吸収部材20よりも後方、すなわち衝撃入力方向において衝撃吸収部材20よりも下流側に位置している。
【0021】
図2及び図3に示すように、衝撃吸収部材20は、延設方向に延びる本体部21を有している。本実施形態の本体部21は、円筒状である。本体部21の軸方向は、前後方向と一致している。本体部21は、第1端21a及び第2端21bを有している。第1端21aは、延設方向における本体部21の先端である。第2端21bは、延設方向において第1端21aの反対側に位置する端である。本実施形態では、第1端21aは、本体部21の前端である。第2端21bは、本体部21の後端である。本実施形態の本体部21の径は、本体部21の軸方向において第1端21aから第2端21bに向かうにつれて徐々に拡径している。衝撃吸収部材20は、2つの突出部22を有している。突出部22は、本体部21の第1端21aから突出している。一方の突出部22と他方の突出部22は、本体部21の周方向において180度離れた位置に配置されている。
【0022】
衝撃吸収部材20は、繊維強化樹脂(FRP)製である。衝撃吸収部材20は、繊維強化織物200(図4参照)と、繊維強化織物200に複合化された樹脂とを有している。なお、図2において、樹脂をドットハッチングで示している。本実施形態の繊維強化織物200は、強化繊維経糸と強化繊維緯糸とが製織されたものである。本実施形態の強化繊維は、炭素繊維である。したがって、本実施形態の衝撃吸収部材20は、炭素強化繊維樹脂製(CFRP)製である。本実施形態の樹脂は、熱硬化性樹脂であるエポキシ樹脂である。
【0023】
本実施形態の第1連結部材30は、有底円筒状である。第1連結部材30は、円板状の底壁31と、底壁31の周縁から立設された円筒状の周壁32とを有している。底壁31は、図示しない締結部材によってフロントバンパ13に締結される。周壁32の軸方向は、前後方向と一致している。周壁32は、後方に延びている。言い換えると、周壁32は、フロントバンパ13から離れるように延びている。第1連結部材30は、2つの貫通孔33を有している。貫通孔33は、周壁32を径方向に貫通している。一方の貫通孔33と他方の貫通孔33は、周壁32の周方向において180度離れた位置に配置されている。本実施形態の第1連結部材30は、金属製である。
【0024】
図3に示すように、衝撃吸収部材20は、第1連結部材30に組み付けられている。本体部21の内側には、第1連結部材30の周壁32の開口側の一部が挿入されている。本体部21の内周面は、周壁32の外周面と対向している。突出部22は、根元部分が折り曲げられることによって、第1連結部材30の貫通孔33に挿通されている。また、突出部22における周壁32の内側に位置する部分は、底壁31から離れるように折り返されている。
【0025】
突出部22は、衝撃吸収部材20が第1連結部材30に組み付けられた状態において、延出部23と折り返し部24とを有している。なお、図2では、衝撃吸収部材20が第1連結部材30に組み付けられていない状態を図示しているため、突出部22は、延出部23と折り返し部24とを有していない。延出部23は、本体部21の第1端21aから延設方向と交差する方向に延びている。本実施形態の延出部23は、本体部21の第1端21aから、延設方向と直交する方向である本体部21の径方向内側に延びている。延出部23は、延設方向と交差する方向において第1連結部材30の貫通孔33に挿通されている。これにより、延出部23は、第1連結部材30の周壁32を延設方向と交差する方向に貫通している。折り返し部24は、延設方向と交差する方向における延出部23の端部であって本体部21とは反対に位置する端部から、第1連結部材30の底壁31から離れるように延びている。本実施形態では、折り返し部24は、延出部23の径方向内側の端部から後方に向かって延びている。周壁32の内周面は、折り返し部24と対向している。
【0026】
また、衝撃吸収部材20と第1連結部材30とは、接合されている。本実施形態では、衝撃吸収部材20と第1連結部材30とは、衝撃吸収部材20を形成する強化繊維樹脂のエポキシ樹脂によって接合されている。
【0027】
第1連結部材30における貫通孔33を区画する面は、第1面33aと第2面33bとを有している。第1面33a及び第2面33bは、延設方向に対して垂直な面である。第2面33bは、延設方向において第1面33aの反対側に位置する対面である。第1面33aは、延設方向において第2面33bよりも底壁31側に位置している。延出部23は、延設方向において第1面33aと第2面33bとの間に位置している。第1面33a及び第2面33bはそれぞれ、延出部23と対向している。第1面33aは、延出部23よりも前方、すなわち衝撃入力方向において延出部23よりも上流側に位置している。第2面33bは、延出部23よりも後方、すなわち衝撃入力方向において延出部23よりも下流側に位置している。折り返し部24は、延設方向と交差する方向における延出部23の端部であって本体部21とは反対に位置する端部から、第1面33aから離れるように延びている。
【0028】
<衝撃吸収構造体の製造方法>
本実施形態の衝撃吸収部材20は、RTM(Resin Transfer Molding)法によって形成される。具体的には、繊維強化織物200が配置された成形型内に樹脂を充填することによって、繊維強化織物200に樹脂を複合化することで、衝撃吸収部材20を形成する。本実施形態では、成形型内に第1連結部材30に組み付けられた状態の繊維強化織物200を配置することによって、衝撃吸収部材20の形成と同時に、衝撃吸収部材20と第1連結部材30との接合も行う。
【0029】
図4は、成形される前の繊維強化織物200を図示している。繊維強化織物200は、第1構成部201と、2つの第2構成部202とを有している。第1構成部201は、第1縁部201aと、第2縁部201bと、一対の第3縁部201cとを有している。第1縁部201a及び第2縁部201bは、弧状に延びている。第2縁部201bの長さは、第1縁部201aの長さよりも長い。一対の第3縁部201cは、第1縁部201aと第2縁部201bとを接続している。第3縁部201cは、直線状に延びている。第2構成部202は、第1構成部201の第1縁部201aから突出している。
【0030】
繊維強化織物200は、次のように第1連結部材30に組み付けられた状態で成形型内に配置される。第1構成部201は、一対の第3縁部201c同士が対向するように第1連結部材30の周壁32に巻き付けられることによって円筒状に成形される。第2構成部202は、根元部分が折り曲げられることによって、第1連結部材30の貫通孔33に挿通される。第2構成部202における周壁32の内周面から突出した部分は、底壁31から離れるように折り返される。
【0031】
そして、第1連結部材30に組み付けられた状態の繊維強化織物200が配置された成形型内に熱硬化性樹脂が充填される。熱硬化性樹脂は、繊維強化織物200に含浸する。また、熱硬化性樹脂は、繊維強化織物200と第1連結部材30との間にも流れ込む。その後、熱硬化性樹脂は硬化する。
【0032】
繊維強化織物200に樹脂が複合化されることによって、衝撃吸収部材20が形成される。詳しくは、第1構成部201に樹脂が複合化されることによって、本体部21が形成される。第2構成部202における貫通孔33に挿通された部分に樹脂が複合化されることによって、延出部23が形成される。第2構成部202における折り返された部分に樹脂が複合化されることによって、折り返し部24が形成される。また、繊維強化織物200と第1連結部材30との間に流れ込んだ樹脂によって、衝撃吸収部材20と第1連結部材30とが接合される。
【0033】
[本実施形態の作用]
本実施形態の作用を説明する。
図5に示すように、衝撃吸収部材20の延出部23は、第1連結部材30の貫通孔33に挿入されている。フロントバンパ13が物体に衝突することによって第1連結部材30に前方から後方に向かう衝撃荷重が加わると、第1連結部材30の第1面33aは衝撃吸収部材20の延出部23を押圧することによって、衝撃荷重を延出部23に伝達する。つまり、第1面33aは、衝撃荷重を延出部23に伝達する衝撃荷重伝達面である。第1面33aが延出部23を押圧すると、衝撃吸収部材20の本体部21の第1端21a周辺に負荷が加わることによって、衝撃吸収部材20は、本体部21の第1端21a周辺で破断する。破断した部分はささくれのようになっているため、他の部分に比べて脆弱である。したがって、本体部21は、破断した部分から順に変形する。つまり、破断した部分が本体部21の変形の起点となる。本体部21が破断した部分から順に変形することによって、衝撃吸収部材20は衝撃エネルギーを安定的に吸収する。
【0034】
なお、第1連結部材30は、延出部23を押圧した後、本体部21の内側を後方に向かって移動する。また、衝撃吸収部材20が破断することによって本体部21と別体になった突出部22は、第1連結部材30の貫通孔33を通って本体部21の外側に飛び出すか、もしくは第1連結部材30とともに本体部21の内側を後方に向かって移動する。
【0035】
[本実施形態の効果]
本実施形態の効果を説明する。
(1)衝撃吸収部材20は、延設方向に延びる本体部21と、延設方向における本体部21の先端である第1端21aから延設方向と交差する方向に延びる延出部23とを有している。第1連結部材30は、延出部23が挿入されている貫通孔33を有している。第1連結部材30における貫通孔33を区画する面は、衝撃荷重を延出部23に伝達する衝撃荷重伝達面としての第1面33aを有している。このため、フロントバンパ13が物体に衝突することによって第1連結部材30に衝撃荷重が加わると、第1面33aは延出部23を押圧することによって、衝撃荷重を延出部23に伝達する。すると、本体部21の第1端21a周辺に負荷が加わることによって、衝撃吸収部材20は、本体部21の第1端21a周辺で破断する。破断した部分はささくれのような状態になっているため、他の部分と比べて脆弱である。したがって、本体部21は、破断した部分から順に変形する。つまり、破断した部分が本体部21の変形の起点となる。この場合、衝撃吸収部材20が第1連結部材30を介して衝撃荷重を受ける過程で変形の起点が形成されるため、変形の起点を設けるための衝撃吸収部材20に対する後加工が不要になる。
【0036】
(2)貫通孔33は、第1連結部材30の周壁32を延設方向と交差する方向に貫通している。延出部23は、延設方向と交差する方向において貫通孔33に挿通されることによって、周壁32を延設方向と交差する方向に貫通している。このため、例えば、延出部23が周壁32を延設方向と交差する方向に貫通していない場合と比較して、延出部23の長さを長くすることができる。このため、第1連結部材30が延出部23を押圧した際に本体部21の第1端21a周辺に加わる負荷を大きくすることができる。したがって、衝撃吸収部材20は本体部21の第1端21a周辺で破断しやすくなるため、変形の起点が形成されやすくなる。
【0037】
(3)衝撃吸収部材20は、延設方向と交差する方向における延出部23の端部であって本体部21とは反対側に位置する端部から、第1面33aから離れるように延びる折り返し部24を有している。折り返し部24によって、延出部23が貫通孔33から抜けにくくなる。したがって、例えば、車両10を牽引するときに衝撃吸収部材20から第1連結部材30が外れにくくなる。
【0038】
(4)衝撃吸収部材20は、繊維強化織物200と繊維強化織物200と複合化された樹脂とを有している。衝撃吸収部材20と第1連結部材30とは、衝撃吸収部材20を形成する繊維強化樹脂の樹脂によって接合されている。この場合、繊維強化織物200に樹脂を複合化することによって衝撃吸収部材20を形成するのと同時に、衝撃吸収部材20と第1連結部材30とを接合することができる。したがって、衝撃吸収構造体14の生産性が向上する。
【0039】
(5)第1連結部材30における貫通孔33を区画する面は、延設方向において延出部23と対向するとともに第1面33aの反対側に位置する対面としての第2面33bを有している。このため、車両10を牽引するときに第2面33bは延出部23に接触する。したがって、第1連結部材30における貫通孔33を区画する面が第2面33bを有していない場合と比較して、衝撃吸収部材20から第1連結部材30が外れにくくなる。
【0040】
(6)例えば、衝撃吸収部材20は、第1連結部材30を介さずに延出部23がフロントバンパ13に直接連結されることが考えられる。この場合、フロントバンパ13が衝撃吸収部材20の延出部23を押圧する。これに対し、本実施形態の衝撃吸収部材20は、第1連結部材30を介してフロントバンパ13に連結されている。このため、第1連結部材30の第1面33aが衝撃吸収部材20の延出部23を押圧する。この場合、フロントバンパ13が延出部23を押圧する場合と比較して、延出部23に対する押圧面を小さくすることができるため、延出部23に集中荷重を加えやすくなる。よって、衝撃吸収部材20が破断しやすくなる。
【0041】
(7)第1連結部材30は、金属製である。したがって、例えば、第1連結部材30が繊維強化樹脂(FRP)製である場合と比較して、閉じた断面形状である周壁32の形成が容易である。また、第1連結部材30におけるフロントバンパ13との締結部分においてクリープが発生しにくい。
【0042】
(8)衝撃吸収部材20の本体部21の径は、第1端21aから第2端21bに向かうにつれて拡径している。このため、本体部21における延設方向に対して垂直な断面の面積は、第1端21aから第2端21bに向かうにつれて大きくなる。したがって、衝撃吸収部材20は、衝撃荷重をより安定的に受けることができる。
【0043】
[変更例]
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施できる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施できる。
【0044】
○ 衝撃吸収部材20は、本体部21と延出部23とを有していれば、折り返し部24を有していなくてもよい。
○ 延出部23は、本体部21の第1端21aから延設方向と交差する方向に延びていれば、延設方向と直交する方向に延びていなくてもよい。
【0045】
図6に示すように、第1連結部材30は、貫通孔33の代わりに周壁32の外周面から凹んだ溝としての第1溝34を有していてもよい。衝撃吸収部材20の延出部23は、第1溝34に挿入されている。第1連結部材30における第1溝34を区画する面は、衝撃荷重を延出部23に伝達する衝撃荷重伝達面34aと、延設方向において延出部23と対向するとともに衝撃荷重伝達面34aの反対側に位置する対面34bとを有している。
【0046】
なお、第1溝34は、周壁32の先端面32aにおいて開口していてもよい。この場合、第1連結部材30における第1溝34を区画する面は、対面34bを有していない。
○ 第1連結部材30は、貫通孔33の代わりに周壁32の先端面32aから凹んだ溝としての第2溝を有していてもよい。第2溝は、周壁32を延設方向と交差する方向に貫通している。衝撃吸収部材20の延出部23は、延設方向と交差する方向において第2溝に挿通されることによって、周壁32を延設方向と交差する方向に貫通している。第1連結部材30における第2溝を区画する面は、衝撃荷重を延出部23に伝達する衝撃荷重伝達面を有している。第1連結部材30における第2溝を区画する面は、延設方向において延出部23と対向するとともに衝撃荷重伝達面の反対側に位置する対面を有していない。
【0047】
○ 本体部21の形状は、円筒状に限定されない。本体部21は、例えば、三角筒状や四角筒状などの多角筒状であってもよい。
○ 本体部21は、筒状に限定されない、本体部21は、例えば、C字状やハット状などの開いた断面形状であってもよい。
【0048】
○ 本体部21の径は、軸方向において一定であってもよい。
○ 本体部21が周壁32の内側に挿入されていてもよい。この場合、突出部22は、本体部21の第1端21aから本体部21の径方向外側に向かうように折り曲げられることによって、第1連結部材30の貫通孔33又は溝に挿入される。
【0049】
○ 第1連結部材30は、底壁31を有していなくてもよい。
○ 周壁32は、円筒状に限定されない。周壁32は、例えば、三角筒状や四角筒状などの多角筒状であってもよい。
【0050】
○ 周壁32は、筒状に限定されない。周壁32は、例えば、C字状やハット状などの開いた断面形状であってもよい。
図7に示すように、衝撃吸収部材20は、延設方向に延びる平板状の本体部21と、本体部21の第1端21aから延設方向と交差する方向に延びる延出部23とを有していてもよい。この場合、第1連結部材30も平板状であってもよい。第1連結部材30は、第1連結部材30を板厚方向に貫通する貫通孔33を有している。延出部23は、貫通孔33に挿通されている。第1連結部材30における貫通孔33を区画する面は、衝撃荷重伝達面としての第1面33aと、対面としての第2面33bとを有している。
【0051】
○ 衝撃吸収部材20が有する突出部22の数、及び第1連結部材30が有する貫通孔33又は溝の数は、適宜変更されてもよい。
○ 衝撃吸収部材20が有する突出部22の幅、及び第1連結部材30が有する貫通孔33又は溝の幅は、適宜変更されてもよい。例えば、第1連結部材30が溝を有する場合、溝は、周壁32の周方向全周に設けられていてもよい。この場合、衝撃吸収部材20の突出部22も、本体部21の周方向全周に設けられていてもよい。なお、突出部22の幅、すなわち延出部23の幅が大きい方が破断した部分の断面積が大きくなるため、本体部21の変形の起点としての効果が増大する。
【0052】
○ 衝撃吸収部材20と第1連結部材30とは、例えば、接着剤によって接合されていてもよい。この場合、繊維強化織物200に樹脂を複合化することによって衝撃吸収部材20を形成した後で、衝撃吸収部材20を第1連結部材30に組み付けるとともに衝撃吸収部材20と第1連結部材30とを接合する。
【0053】
○ 繊維強化織物200は、複数の強化繊維経糸が配列された経糸層と複数の強化繊維緯糸が配列された緯糸層とが積層されるとともに、経糸層と緯糸層とが結合糸によって互いに結合された多層織物であってもよい。
【0054】
○ 衝撃吸収部材20は、複数枚のプリプレグが積層されることによって形成されていてもよい。
○ 強化繊維は、炭素繊維に限定されない。強化繊維は、ガラス繊維、炭化ケイ素系セラミック繊維、アラミド繊維、超高分子量ポリエチレン繊維等であってもよい。
【0055】
○ 繊維強化樹脂の樹脂は、エポキシ樹脂に限定されない。繊維強化樹脂の樹脂は、例えば、ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂などの他の熱硬化性樹脂であってもよい。また、繊維強化樹脂の樹脂は、例えば、ポリアミド、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイミド樹脂、ABS樹脂等といった熱可塑性樹脂であってもよい。
【0056】
○ 第1連結部材30は、金属製に限定されない。第1連結部材30は、例えば、繊維強化樹脂(FRP)製であってもよい。
○ 車両10に対する衝撃吸収構造体14の配置は、車両10に対する衝撃入力方向に応じて適宜変更されてもよい。
【0057】
例えば、車両10に対する衝撃入力方向として後方から前方に向かう方向を想定する場合、衝撃吸収構造体14は、リアサイドメンバとリアバンパとの間に設けられる。この場合も、所定の延設方向は前後方向である。第1連結部材30は、リアバンパと衝撃吸収部材20とを前後方向に連結する。第2連結部材40は、リアサイドメンバの後端部と衝撃吸収部材20とを前後方向に連結する。
【0058】
例えば、車両10に対する衝撃入力方向として左方から右方に向かう方向、又は右方から左方に向かう方向を想定する場合、衝撃吸収構造体14は、フロントサイドメンバ11とフロントクロスメンバ12との間に設けられる。この場合、所定の延設方向は左右方向である。第1連結部材30は、フロントサイドメンバ11と衝撃吸収部材20とを左右方向に連結する。第2連結部材40は、フロントクロスメンバ12と衝撃吸収部材20とを左右方向に連結する。
【符号の説明】
【0059】
14…衝撃吸収構造体、20…衝撃吸収部材、21…本体部、21a…先端としての第1端、23…延出部、24…折り返し部、30…連結部材としての第1連結部材、33…貫通孔、33a…衝撃荷重伝達面としての第1面、33b…対面としての第2面、34…溝としての第1溝、34a…衝撃荷重伝達面、34b…対面、200…繊維強化織物。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7