(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024000631
(43)【公開日】2024-01-09
(54)【発明の名称】把手穴付き段ボール箱
(51)【国際特許分類】
B65D 5/468 20060101AFI20231226BHJP
B65D 5/02 20060101ALI20231226BHJP
【FI】
B65D5/468 100
B65D5/02 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022099424
(22)【出願日】2022-06-21
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 1.納品 公開日 令和3年7月9日 公開場所 株式会社やまびこ 広島事業所(広島県山県郡北広島町新氏神35) 2.コンテスト出品 送付日 令和4年5月13日 送付先 公益社団法人日本包装技術協会(東京都中央区築地4-1-1東劇ビル10F)
(71)【出願人】
【識別番号】000115980
【氏名又は名称】レンゴー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100117400
【弁理士】
【氏名又は名称】北川 政徳
(74)【代理人】
【識別番号】100161746
【弁理士】
【氏名又は名称】地代 信幸
(74)【代理人】
【識別番号】100166796
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 雅至
(72)【発明者】
【氏名】相澤 孝一
(72)【発明者】
【氏名】大谷 昌義
【テーマコード(参考)】
3E060
【Fターム(参考)】
3E060AA03
3E060AB05
3E060BA03
3E060BB01
3E060BB03
3E060BC02
3E060CA01
3E060CA12
3E060CA23
3E060CA42
3E060CD02
3E060CD10
3E060CD12
3E060CG12
3E060DA11
(57)【要約】
【課題】製造コストの上昇を抑えつつ、内フラップの折込部の反発による戻りを防止し、物品の収納時や運搬時の作業性を向上させる。
【解決手段】周方向に各一対の側壁1,2が連なり、把手穴1aを備えた側壁1に内フラップ9が連設され、内フラップ9に上部稜線8から先端側へ山折線11及び谷折線12が配列されて、内蓋部13、裏重部14及び折返部15が順次設けられ、内蓋部13の裏側に裏重部14を折り重ね、内蓋部13を内側へ折り曲げ、折返部15を側壁1の内面に折り重ねる段ボール箱において、段ボールの厚みに応じて、上部稜線8に対し山折線11及び谷折線12を平行とし、又は傾けることにより、折返部15の側端縁が側壁1に隣り合う側壁2の内面に当接し、折返部15の反発による戻りが抑制され、把手穴1aの端縁が側壁1の内面に沿った折返部15により補強されるものとする。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
周方向に各一対の側壁(1,2)が連なり、底壁(5)を有し、把手穴(1a)を備えた側壁(1)に上部稜線(8)を介して内フラップ(9)が連設され、
前記内フラップ(9)に、前記上部稜線(8)から先端側へ順次間隔をあけて幅方向に延びる山折線(11)及び谷折線(12)が配列され、前記内フラップ(9)の上部稜線(8)と山折線(11)の間、山折線(11)と谷折線(12)の間及び谷折線(12)と先端縁の間がそれぞれ内蓋部(13)、裏重部(14)及び折返部(15)とされ、
前記内蓋部(13)の裏側に前記山折線(11)に沿って前記裏重部(14)を折り重ね、前記内蓋部(13)を前記上部稜線(8)に沿って内側へ折り曲げると共に、前記折返部(15)を前記谷折線(12)に沿って前記側壁(1)の内面に折り重ねると、前記折返部(15)の側端縁が前記把手穴(1a)を備えた側壁(1)に隣り合う側壁(2)の内面に当接して、前記折返部(15)の反発による戻りが抑制され、前記側壁(1)の内面に沿った前記折返部(15)により前記把手穴(1a)の端縁が補強される把手穴付き段ボール箱。
【請求項2】
前記内フラップ(9)の幅方向の寸法(Lf)は、前記把手穴(1a)を備えた側壁(1)の両側に隣り合う側壁(2)の内面間の寸法(L)以上であり、
前記内フラップ(9)の山折線(11)及び谷折線(12)は、前記上部稜線(8)に平行とされ、
前記内フラップ(9)の前記上部稜線(8)、山折線(11)及び谷折線(12)に沿った折り曲げに伴い、前記折返部(15)の両方の側端縁が前記把手穴(1a)を備えた側壁(1)の両側に隣り合う側壁(2)の内面に当接することを特徴とする請求項1に記載の把手穴付き段ボール箱。
【請求項3】
材料の段ボールは、ABフルート以上の厚さの複両面段ボールであることを特徴とする請求項2に記載の把手穴付き段ボール箱。
【請求項4】
前記内フラップ(9)の幅方向の寸法(Lf)は、前記把手穴(1a)を備えた側壁(1)の両側に隣り合う側壁(2)の内面間の寸法(L)より小さく、
前記内フラップ(9)の山折線(11)及び谷折線(12)は、前記上部稜線(8)に対して傾き、
前記内フラップ(9)の前記上部稜線(8)、山折線(11)及び谷折線(12)に沿った折り曲げに伴い、前記折返部(15)の片方の側端縁が前記把手穴(1a)を備えた側壁(1)の片側に隣り合う側壁(2)の内面に当接することを特徴とする請求項1に把手穴付き段ボール箱。
【請求項5】
材料の段ボールは、Aフルート以下の厚さの両面段ボールであることを特徴とする請求項4に記載の把手穴付き段ボール箱。
【請求項6】
前記内フラップ(9)の山折線(11)及び谷折線(12)は、段ボールを厚さ方向に押圧した押罫と、厚さ方向に切り込んだ切目とから構成されるリード罫線であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の把手穴付き段ボール箱。
【請求項7】
前記内フラップ(9)の折返部(15)の先端は、前記底壁(5)に達していることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の把手穴付き段ボール箱。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、運搬時等に手を掛ける把手穴の縁部を補強した段ボール箱に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、
図10に示すような段ボール箱が記載されている。この段ボール箱は、周方向に各一対の側壁51,52が連なり、把手穴51aを備えた一対の側壁51に上部稜線53を介して内フラップ54が連設され、他対の側壁52に上部稜線53を介して蓋板55が連設されたものである。蓋板55の先端には、内フラップ54の切溝54aに差し込まれる封緘用の差込片55aが設けられている。
【0003】
この段ボール箱の内フラップ54には、上部稜線53から先端側へ順次間隔をあけて幅方向に延びる山折線56及び谷折線57が配列されている。
【0004】
内フラップ54の上部稜線53と山折線56の間、山折線56と谷折線57の間及び谷折線57と先端縁の間の各部分は、それぞれ内蓋部58、裏重部59及び折返部60とされ、内蓋部58の中間部は、裏重部59への切込により台形状に突出している。
【0005】
この段ボール箱では、内蓋部58の裏側に山折線56に沿って裏重部59を折り重ね、内蓋部58を上部稜線53に沿って内側へ折り曲げると共に、折返部60を谷折線57に沿って側壁51の内面に折り重ね、折返部60の先端縁を把手穴51aの上端縁に沿わせて、把手穴51aの上縁を折返部60により補強している。折返部60の反発は、把手穴51aの内側の把手片51bを折り込んで抑制している。
【0006】
また、下記特許文献2には、
図11に示すように、折返部60を把手穴51aより下方まで延長して側壁51の内面に貼り着け、内フラップ54の折返部60にも把手穴60aを設け、側壁51の把手穴51aと折返部60の把手穴60aとを一致させた段ボール箱が記載されている。この段ボール箱では、把手穴51a,60aの周縁全体が補強されるので、持ち上げて運搬する場合だけでなく、引っ張って移動させるような場合にも、把手穴51a,60aの周縁が破れにくくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実公昭56-49866号公報
【特許文献2】実公平7-47304号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献1に記載された段ボール箱では、内フラップ54の折返部60の反発を把手片51bの折り込みだけで抑制することができず、折返部60が箱の内部に迫り出して、物品の収納時に障害となることがある。
【0009】
また、上記特許文献2に記載された段ボール箱では、製造に際し、内フラップ54の折返部60を側壁51の内面に貼り着ける手間がかかるほか、把手穴51a,60aの位置がずれて、箱の運搬時に把手穴51a,60aに手を掛けにくくなる恐れがある。
【0010】
そこで、この発明は、製造コストの上昇を抑えつつ、内フラップの折込部の反発による戻りを防止し、物品の収納時や運搬時の作業性を向上させることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、この発明に係る段ボール箱は、周方向に各一対の側壁が連なり、底壁を有し、把手穴を備えた側壁に上部稜線を介して内フラップが連設され、前記内フラップに、前記上部稜線から先端側へ順次間隔をあけて幅方向に延びる山折線及び谷折線が配列され、前記内フラップの上部稜線と山折線の間、山折線と谷折線の間及び谷折線と先端縁の間がそれぞれ内蓋部、裏重部及び折返部とされ、
前記内蓋部の裏側に前記山折線に沿って前記裏重部を折り重ね、前記内蓋部を前記上部稜線に沿って内側へ折り曲げると共に、前記折返部を前記谷折線に沿って前記側壁の内面に折り重ねると、前記折返部の側端縁が前記把手穴を備えた側壁に隣り合う側壁の内面に当接して、前記折返部の反発による戻りが抑制され、前記側壁の内面に沿った前記折返部により前記把手穴の端縁が補強されるものとしたのである。
【0012】
そして、上記のような段ボール箱の材料の段ボールがABフルート以上の厚さの複両面段ボールである場合のように、前記内フラップの幅方向の寸法が、前記把手穴を備えた側壁の両側に隣り合う側壁の内面間の寸法以上となる場合、
前記内フラップの山折線及び谷折線は、前記上部稜線に平行とし、
前記内フラップの前記上部稜線、山折線及び谷折線に沿った折り曲げに伴い、前記折返部の両方の側端縁が前記把手穴を備えた側壁の両側に隣り合う側壁の内面に当接するものとしたのである。
【0013】
また、上記のような段ボール箱の材料の段ボールがAフルート以下の厚さの両面段ボールである場合のように、前記内フラップの幅方向の寸法が、前記把手穴を備えた側壁の両側に隣り合う側壁の内面間の寸法より小さくなる場合、
前記内フラップの山折線及び谷折線は、前記上部稜線に対して傾け、
前記内フラップの前記上部稜線、山折線及び谷折線に沿った折り曲げに伴い、前記折返部の片方の側端縁が前記把手穴を備えた側壁の片側に隣り合う側壁の内面に当接するものとしたのである。
【発明の効果】
【0014】
この発明に係る把手穴付き段ボール箱では、内フラップを上部稜線、山折線及び谷折線に沿って折り曲げるだけで、段ボールの厚みに応じて、内フラップの折返部の側端縁が把手穴を備えた側壁に隣り合う側壁の内面に当接し、折返部の反発による戻りが抑制されるので、折返部に煩わされることなく、物品を収納することができる。
【0015】
また、内フラップの折返部の貼着加工等を行う必要がなく、従来の機械により製造することができるので、製造コストの上昇が抑えられる。
【0016】
そして、把手穴の端縁が内フラップの折返部によりしっかりと補強されるので、重量物を収納して運搬する場合においても、把手穴の端縁からの段ボールの破れが防止される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】この発明の第1実施形態に係る把手穴付き段ボール箱のブランクを示す図
【
図2】同上の材料の段ボールと段ボール箱の寸法関係を示す模式図
【
図3】同上の段ボール箱の内フラップを折り曲げた状態を示す全体斜視図
【
図4】同上の内フラップの折曲状態を箱内部から示す部分斜視図
【
図5】同上の内フラップの折返部が底壁に達する段ボール箱を示す斜視図
【
図6】この発明の第2実施形態に係る把手穴付き段ボール箱のブランクを示す図
【
図7】同上の材料の段ボールと段ボール箱の寸法関係を示す模式図
【
図8】同上の段ボール箱の内フラップを折り曲げた状態を示す全体斜視図
【
図9】同上の内フラップの折曲状態を示す把手穴の上方の部分断面図
【
図10】特許文献1に記載の把手穴付き段ボール箱の内フラップを折り曲げた状態を示す全体斜視図
【
図11】特許文献2に記載の把手穴付き段ボール箱の部分断面図
【発明を実施するための形態】
【0018】
<第1実施形態>
この発明の第1実施形態を
図1乃至
図5に基づいて説明する。
【0019】
(ブランク)
この段ボール箱は、ABフルートの複両面段ボールを材料とし、
図1に示すようなブランクから形成される。このブランクでは、幅面の側壁1と長面の側壁2とが隅部稜線3を介して各一対交互に連設され、一方の側壁2の外側端に隅部稜線3を介して継代片3aが連設されている。側壁1,2の下端には、下部稜線4を介して底壁5となる内フラップ6及び外フラップ7がそれぞれ連設され、側壁1,2の上端には、上部稜線8を介して内フラップ9及び蓋板10がそれぞれ連設されている。
【0020】
隅部稜線3,下部稜線4及び上部稜線8は、それぞれ段ボールを裏面側から押し潰した押罫の折目線とされている。
【0021】
一対の側壁1には、上部稜線8の下方における幅方向中央部に把手穴1aが設けられている。把手穴1aは、下縁及び両側縁が切目線とされ、山形状をなす上縁の2辺には、それぞれ押罫の折目線を介して把手片1bが連設されている。
【0022】
一対の内フラップ9には、側壁1との境界の上部稜線8から先端側へ順次間隔をあけて幅方向に延びる山折線11及び谷折線12が配列され、山折線11及び谷折線12は、上部稜線8と平行になっている。
【0023】
内フラップ9の上部稜線8と山折線11の間、山折線11と谷折線12の間及び谷折線12と先端縁の間の各部分は、それぞれ内蓋部13、裏重部14及び折返部15とされ、折返部15には、把手穴1aに対応する把手穴9aが設けられている。
【0024】
山折線11及び谷折線12は、段ボールを厚さ方向に押圧した押罫と、厚さ方向に切り込んだ切目とから構成されるリード罫線であり、切目の介在により折曲抵抗が軽減されている。特に、180°折り曲げられる山折線11は、切目が主体とされ、2か所でのみ内蓋部13と裏重部14とが繋がり、その繋部に並行する2本の押罫が入れられている。
【0025】
(段ボールの厚さ及び箱の内寸と内フラップの幅の関係)
段ボールのフルートは、(JIS Z 1516 外装用段ボール)に規定されている。Aフルートは、30cm当たりの段の数が34±2とされ、両面段ボールの厚さは約5mmとなっている。Bフルートは、30cm当たりの段の数が50±2とされ、両面段ボールの厚さは約3mmとなっている。Aフルート又はBフルートの両面段ボールの片側にもう一方の片面段ボールの段頂を貼り合わせたABフルートの複両面段ボールの厚さは、約8mmとなっている。
【0026】
ABフルートの複両面段ボールは、
図2に示すように、把手穴1aを備えた側壁1から両側の側壁2を隅部稜線3に沿って直角に折り曲げたとき、対向する側壁2が隅部稜線3の谷底部より内側へ大きく箱の内部側へ入り込む。
【0027】
このため、側壁1の両側に隣り合って対向する側壁2の内面間の寸法Lは、側壁1の両側の隅部稜線3の間隔よりも相当に小さくなる。また、内フラップ9と蓋板10の間の切溝の幅は、6mm程度とされている。その結果、内フラップ9の幅方向の寸法Lfは、対向する側壁2の内面間の寸法Lと同等或いはそれ以上となる。
【0028】
(段ボール箱の組み立て)
図3に示すように、この段ボール箱の組み立てに際しては、段目が細かいBフルート側を表面として、継代片3aを反対側の側壁1の側端部の内面に貼り着ける。そして、各一対の側壁1,2を角筒状に立体化し、各一対の内フラップ6及び外フラップ7を順次内側へ折り重ね、テープ又は接着剤で固定して底壁5を形成し、箱の底面を閉じる。
【0029】
次に、
図3及び
図4に示すように、内フラップ9の内蓋部13の裏側に山折線11に沿って裏重部14を折り重ね、内蓋部13を上部稜線8に沿って内側へ折り曲げると共に、折返部15を谷折線12に沿って側壁1の内面に折り重ねる。
【0030】
このように内フラップ9を折り曲げると、折返部15の両方の側端縁が側壁1の両側に隣り合う側壁2の内面に当接し、折返部15の反発による戻りが抑制され、折返部15が側壁1の内面に沿った状態に保持される。
【0031】
この状態では、側壁1の把手穴1aと折返部15の把手穴9aとが一致するので、側壁1の把手片1bを折返部15の把手穴9aの内側へ折り込んで、折返部15のずり落ちを防止すると共に、把手穴1a,9aに手を入れたときに、段ボールの端縁が指に当たらないようする。
【0032】
そして、箱内に物品を収納し、内蓋部13に被せるように、一対の蓋板10を内側へ折り重ね、テープ又は接着剤で固定して、箱の天面を閉じる。
【0033】
なお、この実施形態では、一対の蓋板10がそれぞれ箱の幅方向全体に及ぶ長さを有するものとし、蓋板10同士を折り重ねて箱の天面を閉じることとしているが、通常の溝切り形段ボール箱のように、蓋板10を箱の幅方向寸法の略半分の長さとし、その先端同士を突き合わせて箱の天面を閉じるようにしてもよい。
【0034】
(効果)
この段ボール箱では、内フラップ9を上部稜線8、山折線11及び谷折線12に沿って折り曲げるだけで、折返部15の側端縁が把手穴1aを備えた側壁1に隣り合う側壁2の内面に当接して、折返部15の反発による戻りが抑制されるので、折返部15に煩わされることなく、物品を収納することができる。
【0035】
また、側壁1への折返部15の貼着加工等を行う必要がなく、従来の機械により製造することができるので、製造コストの上昇が抑えられる。
【0036】
そして、把手穴1aの周縁全体が折返部15によりしっかりと補強され、材料が厚い複両面段ボールであるので、相当重い物品を収納して運搬する場合や引っ張って移動させるような場合においても、把手穴1aの周縁からの段ボールの破れが防止される。
【0037】
さらに、蓋板10の落ち込みがL字状に折り曲げられた内フラップ9により防止され、側壁1及び内フラップ9の上部稜線8に臨む連設部と蓋板10の側端縁との間に、箱内に連通する隙間が生じることもなく、箱内への塵埃の侵入が防止される。
【0038】
(変形例)
また、
図5に示すように、段ボール箱の高さが低い場合には、折り曲げられた内フラップ9の折返部15の先端が底壁5に達するようにすると、把手穴1aの端縁が補強されるだけでなく、箱の圧縮強度が向上するので、物品を収納した状態で、多数の段ボール箱を積み上げることができる。
【0039】
<第2実施形態>
次に、この発明の第2実施形態を
図6乃至
図9に基づいて説明する。なお、ここでは、上記第1実施形態と異なる部分を中心として言及するに留める。
【0040】
(ブランク)
この段ボール箱は、Bフルートの両面段ボールを材料とし、
図6に示すようなブランクから形成される。このブランクでは、天面側の内フラップ9及び蓋板10が箱の幅方向寸法の略半分の長さとされている。そして、内フラップ9の山折線11及び谷折線12は、上部稜線8に対して同一の角度をなすように傾き、上部稜線8と山折線11の間、山折線11と谷折線12の間及び谷折線12と先端縁の間の各部分は、それぞれ内蓋部13、裏重部14及び折返部15とされている。
【0041】
各一対の側壁1の把手穴1aは、下縁及び両側縁が切目線とされ、上縁に2本の押罫の折目線を介して把手穴1aの内側全体に及ぶ把手片1bが連設されている。
【0042】
(段ボールの厚さ及び箱の内寸と内フラップの幅の関係)
Bフルートの両面段ボールは、厚さが約3mmであり、この段ボールを材料とする段ボール箱では、
図7に示すように、把手穴1aを備えた側壁1から両側の側壁2を隅部稜線3に沿って直角に折り曲げたとき、対向する側壁2が隅部稜線3の谷底部よりそれほど大きく内側へ箱の内部側へ入り込むことがない。
【0043】
このため、側壁1の両側に隣り合って対向する側壁2の内面間の寸法Lは、側壁1の両側の隅部稜線3の間隔よりも若干小さくなる程度である。また、内フラップ9と蓋板10の間の切溝の幅は、6mm程度とされている。その結果、内フラップ9の幅方向の寸法Lfは、対向する側壁2の内面間の寸法Lより小さくなる。
【0044】
(段ボール箱の組み立て)
この段ボール箱の組み立てに際しては、
図8に示すように、各一対の側壁1,2を角筒状に立体化し、底壁5を形成して箱の底面を閉じ、内フラップ9の内蓋部13の裏側に山折線11に沿って裏重部14を折り重ね、内蓋部13を上部稜線8に沿って内側へ折り曲げると共に、折返部15を谷折線12に沿って側壁1の内面に折り重ねる。
【0045】
このように内フラップ9を折り曲げると、
図9に示すように、折返部15の片方の側端縁が側壁1の片側に隣り合う側壁2の内面に当接して、折返部15の反発による戻りが抑制され、折返部15が側壁1の内面に沿った状態に保持される。
【0046】
そして、箱内に物品を収納した後、一対の蓋板10の先端同士を突き合わせて、箱の天面を閉じる。また、把手穴1aの内側の把手片1bは、箱の内側へ折り込んで、折返部15の内面に沿わせ、折返部15のずり落ちを防止すると共に、把手穴1aに手を入れたときに、段ボールの端縁が指に当たらないようする。
【0047】
(効果)
このような段ボール箱においても、内フラップ9を上部稜線8、山折線11及び谷折線12に沿って折り曲げるだけで、折返部15の側端縁が把手穴1aを備えた側壁1に隣り合う側壁2の内面に当接し、折返部15の反発による戻りが抑制されるので、折返部15に煩わされることなく、物品を収納することができる。
【0048】
また、側壁1への折返部15の貼着加工等を行う必要がなく、従来の機械により製造することができるので、製造コストの上昇が抑えられる。
【0049】
そして、把手穴1aの端縁が内フラップ9の折返部15によりしっかりと補強されるので、重い物品を収納して運搬する場合においても、把手穴1aの端縁からの段ボールの破れが防止される。
【0050】
さらに、蓋板10の落ち込みがL字状に折り曲げられた内フラップ9により防止され、側壁1及び内フラップ9の上部稜線8に臨む連設部と蓋板10の側端縁との間に、箱内に連通する隙間が生じることもなく、箱内への塵埃の侵入が防止される。
【0051】
<その他>
上記第1実施形態では、材料の段ボールがABフルートの複両面段ボールであるものを例示したが、材料がこれ以外の段ボールであっても、内フラップ9の幅方向の寸法Lfが対向する側壁2の内面間の寸法Lと同等或いはそれ以上であれば、内フラップ9の折返部15の両方の側端縁が側壁1の両側に隣り合う側壁2の内面に当接して、折返部15の反発が抑制され、第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0052】
また、上記第2実施形態では、材料の段ボールがBフルートの両面段ボールであるものを例示したが、材料がこれ以外の段ボールであっても、Aフルート以下の段ボールで内フラップ9の幅方向の寸法Lfが対向する側壁2の内面間の寸法Lより小さければ、内フラップ9の山折線11及び谷折線12を上部稜線8に対して傾けることにより、折返部15の片方の側端縁が側壁1の片側に隣り合う側壁2の内面に当接して、折返部15の反発による戻りが抑制されるようにすると、第2実施形態と同様の効果が得られる。
【0053】
また、上記各実施形態では、材料が紙製の段ボールであるものを例示したが、プラスチック段ボールのように、中空構造で厚く、内面側から罫線を入れることにより折り曲げられる材料であれば、材料の厚さに応じて、それぞれ上記各実施形態と同様の構成とすることにより、同様の効果が得られる。
【0054】
そのほか、上記各実施形態では、蓋板10を閉じると、箱の天面が完全に覆われるものを例示したが、蓋板10を閉じたとき、箱の天面に開口部が残存する段ボール箱においても、対向する側壁2の内面間の寸法と内フラップ9の幅の関係において、上記のような構成を適用することができる。
【0055】
また、蓋板10が側壁2の上端に連なったのもを例示したが、テレスコープ形段ボール箱のように、蓋板10は、箱本体とは分離した蓋体をなすものとし、これを内フラップ9の内蓋部13に被せるようにして、箱本体の天面を閉じるものとしてもよい。
【0056】
また、底壁5が側壁1,2の下端に連なる内フラップ6及び外フラップ7を重ね合わせて形成されるものを例示したが、底面全体をなす底壁5の周囲各辺に連設された各一対の側壁1,2を起立させる奴式の段ボール箱や、底壁5が底面をなす高さの低いトレイと、各一対の側壁1,2が筒状をなす上部箱体とが分離しており、このトレイと上部箱体とを組み合わせて形成される段ボール箱においても、上記のような構成を適用できる。
【符号の説明】
【0057】
1,2 側壁
1a 把手穴
1b 把手片
3 隅部稜線
3a 継代片
4 下部稜線
5 底壁
6 内フラップ
7 外フラップ
8 上部稜線
9 内フラップ
9a 把手穴
10 蓋板
11 山折線
12 谷折線
13 内蓋部
14 裏重部
15 折返部