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特開2024-63116免疫療法生産物を発生させるための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024063116
(43)【公開日】2024-05-10
(54)【発明の名称】免疫療法生産物を発生させるための方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/0783 20100101AFI20240501BHJP
   C12N 5/0784 20100101ALN20240501BHJP
   C12M 3/00 20060101ALN20240501BHJP
【FI】
C12N5/0783
C12N5/0784
C12M3/00 Z
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024029396
(22)【出願日】2024-02-29
(62)【分割の表示】P 2022105432の分割
【原出願日】2017-06-27
(31)【優先権主張番号】62/357,937
(32)【優先日】2016-07-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/356,504
(32)【優先日】2016-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VISUAL BASIC
(71)【出願人】
【識別番号】591127113
【氏名又は名称】ノースイースタン・ユニバーシティ
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100196117
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 利恵
(72)【発明者】
【氏名】シャシ ムールティー
(57)【要約】      (修正有)
【課題】免疫療法生産物を発生させるための方法を提供する。
【解決手段】第1の細胞培養チャンバーの中で末梢血単核細胞および樹状細胞を培養して、T細胞を含む上清を作り出すステップと、T細胞を含む上清を第1の細胞培養チャンバーから流体コネクターを通して第2の細胞培養チャンバーの中へ移送するステップと、を含み、第1の細胞培養チャンバーは、細胞が付着する第1の材料から構成された底部表面と、ガス透過性の第2の材料から構成されている、少なくとも1つの追加的な表面と、底部表面に対して実質的に平行で対称のインフローとして第1の細胞培養チャンバー内に1つまたは複数の流体を入れるように方向付けるように配置された少なくとも2つの入口部と、底部表面に対して実質的に垂直のアウトフローとして、第1の細胞培養チャンバーから1つまたは複数の流体を方向付けるように配置されている、1つまたは複数の出口部と、を含む方法を提供する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
免疫療法生産物を発生させるための方法であって、該方法は、
第1の細胞培養チャンバーの中で末梢血単核細胞および樹状細胞を培養して、T細胞を含む上清を作り出すステップと、
前記T細胞を含む前記上清を前記第1の細胞培養チャンバーから流体コネクターを通して第2の細胞培養チャンバーの中へ移送するステップと、
を含み、
前記第1の細胞培養チャンバーは、
細胞が付着する第1の材料から構成された底部表面と、
ガス透過性の第2の材料から構成されている、少なくとも1つの追加的な表面と、
前記底部表面に対して実質的に平行で対称のインフローとして前記第1の細胞培養チャンバー内に1つまたは複数の流体を入れるように方向付けるように配置された少なくとも2つの入口部と、
前記底部表面に対して実質的に垂直のアウトフローとして、前記第1の細胞培養チャンバーから1つまたは複数の流体を方向付けるように配置されている、1つまたは複数の出口部と、
を含む、方法。
【請求項2】
前記第2の細胞培養チャンバーは新鮮な樹状細胞を含み、前記方法は、前記T細胞をさらに培養するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の細胞培養チャンバーの中での培養は、第1のセットの刺激抗原の存在下で起こり、前記第2の細胞培養チャンバーの中での培養は、第2のセットの刺激抗原の存在下で起こる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第1のセットの刺激抗原と前記第2のセットの刺激抗原とが同じである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記第1のセットの刺激抗原と前記第2のセットの刺激抗原とが異なっている、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
1つまたは複数のセンサーを介して、少なくとも前記第1のまたは第2の細胞培養チャンバーの中の1つまたは複数のパラメーターを測定するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記1つまたは複数のパラメーターは、pH、溶存酸素、合計バイオマス、細胞直径、グルコース濃度、乳酸濃度、および細胞代謝産物濃度からなる群から選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
垂直方向の流路に沿った前記流体の移動は、流体の流量が前記第1の細胞培養チャンバーの中の細胞の沈殿レートに打ち勝つには不十分とされている、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記第2の細胞培養チャンバーの中の前記T細胞をさらに培養し、増殖させるステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
さらに培養され、増殖された前記T細胞を、前記流体コネクターを通して第3の細胞培養チャンバーに移送するステップをさらに含む、請求項9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2016年6月29日に出願された米国仮出願第62/356,504号明細書、および、2016年7月1日に出願された米国仮出願第62/357,937号明細書の利益および優先権を主張し、その両方は、その全体が参照により本明細書に組み込まれている。
【0002】
(政府支援)
本発明は、アメリカ国立科学財団によって付与された認可番号1645205の下で政府支援によって行われた。政府は本発明に一定の権利を有する。
【0003】
本発明は、概して、細胞培養チャンバーおよびその使用方法に関する。
【背景技術】
【0004】
細胞ベースの癌免疫療法は、キメラ抗原受容体T細胞(CAR-T)療法、T細胞受容体(TCR)療法、樹状細胞ワクチン、および新生抗原ベースのT細胞療法に基づく、特定の癌に関する並外れて前途有望な治療に基づいて、大きな注目を集めている。後者の療法では、腫瘍シーケンシング・データからの候補の新生抗原を予測する能力と、患者の中の新生抗原特有のT細胞反応のモニタリングが、高度に個人に特化された免疫療法を設計するための基礎を提供する。
【0005】
癌に関するT細胞療法はかなり有望であるが、癌抗原特異的T細胞の単離、調製、および増殖のための既存のプロセスには制限がある。現在、T細胞療法は、大きな労働力を要する手動のマルチ・ステップのプロセスを使用して調製されており、これは、そのようなT細胞療法を製造する上でのスケーリングに関して重大な課題をもたらす。T細胞療法生産に関連する複雑な生物学的なプロセス、ならびに、自己細胞処理に関連付けられるバイオプロセスおよび規制要件に起因して、このプロセスを自動化することは成功していない。また、細胞調製の時間、最適な表現型の維持、十分な細胞数への増殖、ならびに、細胞生産物の品質および安全などの、追加的な課題も存在している。
【0006】
図1に示されているように、自己抗原提示樹状細胞(DC)によるヒトT細胞の刺激のための従来の先行技術プロトコルは、培養プレート同士の間での上清の移送、培地の変化、サイトカインおよび細胞培地の追加などを含むいくつかの手動ステップを伴う。T細胞は、7日にわたって樹状細胞(DC)と接触した状態に置かれ、この時間の間にT細胞は刺激を受け、増殖する。このプロセスは、典型的には4回繰り返され、それぞれの刺激サイクルは、上清の中のT細胞の抽出、および、新鮮なDCのプレーティング(plating)を必要とし、一方で、典型的には、それぞれの7日の期間の間に2回、培地および成長因子(サイトカイン)を手動で交換することも必要とする。このプロトコルを実施するために必要とされる手動ステップの数は、とてつもなく高い。たとえば、この従来の4週間のプロトコルを使用する場合には合計でおおよそ4,650回の手動ステップがとられ、これらのステップのすべてが、汚染のリスクを増大させ、細胞生産物の品質および安全を損なう可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際特許出願第PCT/US2016/040042号明細書
【特許文献2】国際特許出願第PCT/US2016/60701号明細書
【特許文献3】米国特許第5,656,155号明細書
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Day et al., Mathematical Models and Immune Cell Biology; 2011
【非特許文献2】Valitutti et al., FEBS Lett. 2010
【非特許文献3】Fulwyer, Science 156, 910 (1974)
【非特許文献4】Li and Harrison, Analytical Chemistry 69, 1564 (1997)
【非特許文献5】Fiedler, et al. Analytical Chemistry 70, 1909-1915 (1998)
【発明の概要】
【0009】
本発明は、抗原特異的T細胞の生産を自動化する新しい技術を開発する必要性が存在していることを認識している。本発明の例示的な実施形態の細胞培養チャンバーは、上記に説明されている手動プロセスの自動化を可能にするさまざまな技術的特徴を含み、プロセスの中のユーザー介入を劇的に低減させ、それによって、汚染のリスクを著しく低減させる。たとえば、本実施形態の細胞培養チャンバーは、細胞が付着する材料から作製された底部表面と、ガス透過性の材料から作製された少なくとも1つの追加的な表面、たとえば側壁部および/または上部壁部、を含むように製作され得る。このように、先行技術の培養システムと比較したときに、底部表面の付着性性質を犠牲にする必要なく、より高いレベルのガス交換が実現される。追加的に、本実施形態の細胞培養チャンバーは、培養培地およびサイトカインがチャンバーの中へ灌流されることを可能にするように構成されており、より一貫したレベルが維持され得るようになっている。抗原特異的T細胞および培養プロセスに関わる他の細胞が灌流の間にチャンバーの中に留まることを確保するために、細胞培養チャンバーの1つまたは複数の入口部および出口部は、チャンバーから出て行くときに垂直方向の流路に少なくとも部分的に沿って細胞培養チャンバーの中の流体を移動させるように配置されている。また、細胞培養チャンバーは、互いに流体接続するように構成されており、抗原特異的T細胞がチャンバー同士の間で自動的に移送され得、新しい細胞培養チャンバーの中でのT細胞のさらなる培養および増殖を可能にするようになっている。いくつかの実施形態では、第1の細胞培養チャンバーの中へガス流を導入し、第1の細胞生産物を含む上清を流体コネクターを通して第2の細胞培養チャンバーの中へ移送することによって、移送が達成される。
【0010】
特定の態様では、例示的な実施形態の細胞培養チャンバーは、同じ患者からの抗原提示細胞を使用して、T細胞の増殖および刺激を提供し、患者の腫瘍を選択的にターゲットにするように患者の自身の免疫システムを動かすことができる治療用T細胞生産物を提供する。これらの細胞培養システムおよび方法は、従来のプロトコルと比較して手動ステップの数を大きく低減させる。このように、汚染のリスクが大きく減少され、製造技法のロバスト性および再現性が大きく増加されるが、それらは両方とも、正確なターゲッティングができる個人に特化されたT細胞療法などの治療用生産物の安全で信頼性の高い製造に関する重要な考慮事項である。
【0011】
免疫療法生産物を発生させるプロセスを簡単化し、潜在的に短縮することの他に、例示的な実施形態の細胞培養チャンバーは、細胞ベースの療法のための患者の細胞材料の利用、ならびに、製造プロセスの信頼性およびロバスト性を著しく改善する一方で、コスト低減(たとえば、労働コスト)にもつながる。さらに、方法は、単に数個の患者サンプルの処理から数百の患者サンプルの処理へ容易に拡張可能である。患者の中に治療反応を作り出すことができる数まで抗原提示T細胞を刺激して増殖させるために、本実施形態の細胞培養チャンバーの構成は、自動化された流体フロー制御が、抗原提示細胞とT細胞を含有する細胞とを接触させることを可能にし、また、必要に応じて抗原提示細胞をリフレッシュさせることを可能にする。また、この設計は、容易に拡張可能である。たとえば、並列に配置される一連の細胞培養チャンバーを備えたシステムを設計することによって、単一のシステムが、1~10から数百のサンプルの範囲にあるサンプルを処理することが可能である。それぞれのチャンバーは独立して制御され得、任意の所与の時間において利用されるチャンバーの数は、サンプルの数に応じて、スケール・アップまたはスケール・ダウンされ得る。他の実施形態では、PLCロジック・コントローラーなどの単一の中央コントローラーが、システムの中のチャンバーのすべてを制御する。
【0012】
次いで例示的な配置が説明され、例示的な配置では、本発明の例示的な実施形態のシステムおよび方法は、1つまたは複数のバイオリアクターを利用し、それぞれが、細胞培養チャンバーを含み、細胞培養チャンバーは、互いに流体連結されるように構成され、患者の細胞材料の処理を実施し、免疫療法生産物を発生させるようになっている。これは本明細書で説明される例示的な配置であり、他の配置も本発明の範囲内にあることを当業者は認識されよう。
【0013】
この例示的な実施形態では、細胞培養チャンバーが提供され、細胞培養チャンバーは、細胞が付着する第1の材料から構成された底部表面と、少なくとも1つの追加的な表面であって、少なくとも1つの追加的な表面は、ガス透過性の第2の材料を含む、少なくとも1つの追加的な表面と、1つまたは複数の入口部および1つまたは複数の出口部であって、1つまたは複数の入口部および1つまたは複数の出口部は、垂直方向の流路に少なくとも部分的に沿って、細胞培養チャンバーの中の流体を移動させるように配置されている、1つまたは複数の出口部と、を含む。特定の態様では、垂直方向の流路に沿った流体の移動は、流体の流量が細胞培養チャンバーの中の細胞の沈殿レートに打ち勝つには不十分となるようになっている。
【0014】
少なくとも1つの追加的なガス透過性の表面を設けることは、従来のプロトコルと比較して、より高いレベルのガス交換を可能にし、したがって、より多数の細胞がチャンバーの中で処理されることを可能にする。特定の態様では、底部表面および少なくとも1つの追加的な表面は、接着剤を使用することなく互いと接合される。特定の実施形態では、少なくとも1つの追加的な表面も第1の材料を含む。
【0015】
第1の材料は、たとえば、ポリスチレンを含むことが可能である。第2の材料は、350の透過性係数以上の酸素に対する透過性、および、2000の透過性係数以上の二酸化炭素に対する透過性を有する、1つまたは複数の材料を含むことが可能であり、ここで、透過性係数の単位は、[cm][cm]/[cm][s][cmHg]である。1つの態様では、第2の材料は、シリコーンおよびポリメチルペンテンのうちの一方または両方から選択される。
【0016】
特定の態様では、細胞培養チャンバーは、細胞培養チャンバーを第2のベッセルに流体連結するように構成された少なくとも1つの流体コネクターを含み、第2のベッセルは、第2の細胞培養チャンバーであることが可能である。それぞれのチャンバーを通る、および、チャンバー同士の間の、流体のフローを支援するために、細胞培養チャンバーは、1つまたは複数のポンプを含むことが可能である。それぞれのチャンバーが各自のポンプを含むことが可能であり、または、1つまたは複数のポンプが複数のチャンバーに対応することが可能である。他の態様では、細胞培養チャンバーは、1つまたは複数のポンプに動作可能に連結されている1つまたは複数の流体リザーバーをさらに含むことが可能である。流体リザーバーは、栄養素およびサイトカインを含む培地をチャンバーに供給するように構成されている。
【0017】
また、細胞培養チャンバーは、1つまたは複数のセンサーを含むことが可能であり、1つまたは複数のセンサーは、細胞培養チャンバーの中の1つまたは複数のパラメーター、たとえば、pH、溶存酸素、合計バイオマス、細胞直径、グルコース濃度、乳酸濃度、および細胞代謝産物濃度などを、センサーが測定することを可能にするようなやり方で細胞培養チャンバーに動作可能に連結されている。細胞培養チャンバーは、中央処理装置をさらに含むことが可能であり、中央処理装置は、1つまたは複数のセンサーに通信可能に連結されており、測定された1つまたは複数のパラメーターの関数として1つまたは複数のポンプの動作状態を調節するように構成されている。電気流体力学メカニズムなどのポンプではなくフロー発生メカニズムが用いられる実施形態では、中央処理装置は、フロー発生メカニズムの動作状態を変化させ、1つまたは複数のパラメーターの関数として第1の細胞生産物の流量を調節することが可能である。
【0018】
特定の実施形態では、細胞培養チャンバーの中および周りで所望の環境を維持することを助けるために、チャンバーは、インキュベーターの中にフィットするようにサイズ決めおよび構成されている。いくつかの実施形態では、1つまたは複数のポンプは、インキュベーターの中に位置する。他の実施形態では、1つまたは複数のポンプは、インキュベーターの外側に位置し、インキュベーターの中の細胞培養チャンバーに動作可能に連結されている。
【0019】
特定の態様では、システムの少なくとも一部は、使い捨てのコンポーネントを含み、使い捨てのコンポーネントのうちのいくつかまたはすべては、非使い捨てのフレームの中に収容され得る。他の態様では、システムのすべてのコンポーネントが使い捨てである。さらに、いくつかの実施形態では、システムは、患者材料をトラッキングおよび記録するためのサンプル・トラッキング・コンポーネントを含む。
【0020】
システムおよび方法は、任意の数の追加的なリアクターまたは細胞培養チャンバーが提供され得るように設計されている。いくつかの実施形態では、システムは、図6Aおよび図6Bに示されているように、T細胞を発生させるための2つ以上のバイオリアクター・チャンバーを含む。図6Aおよび図6Bのシステムは、互いに流体連通している2つの細胞培養チャンバーを有するものとして示されているが、任意の数の追加的なチャンバーがシステムとともに使用され得ることが理解されるべきである。
【0021】
特定の実施形態では、本発明のシステムは、たとえば、細胞培養チャンバーのサイズ、ならびに、樹状細胞および末梢血単核細胞を含む2つ以上の細胞タイプの濃度などの、さまざまな入力を所与として、灌流流体の所望の灌流レートを自動的に計算および設定する能力を有している。例示的な配置では、細胞培養システムが提供され、細胞培養システムは、1つまたは複数の細胞培養チャンバーと、命令を保持したメモリーを含む中央処理装置と、を含み、命令は中央処理装置によって実行可能であり、システムに、細胞培養チャンバーのサイズを含むデータを第1の入力として受け取らせ、細胞培養チャンバーの中へ導入されることとなる1つまたは複数の流体の中の、第1の細胞タイプの第1の濃度および第2の細胞タイプの第2の濃度を含むデータを第2の入力として受け取らせ、第1および第2の入力に基づいて、第1の細胞タイプおよび第2の細胞タイプが細胞培養チャンバー内で互いに接触している確率を最大化する、細胞培養チャンバーの中へ導入される灌流流体の灌流レートを計算させるようになっている。特定の態様では、第1の細胞タイプは末梢血単核細胞であり、第2の細胞タイプは樹状細胞である。
【0022】
中央処理装置は、1つまたは複数の灌流流体リザーバーおよび中央処理装置に動作可能に連結されている1つまたは複数のポンプ(または、バルブ)を制御することによって、灌流流体の灌流レートを制御することが可能である。特定の態様では、1つまたは複数のセンサーは、センサーが細胞培養チャンバーの中の1つまたは複数のパラメーターを測定することを可能にするようなやり方で細胞培養チャンバーに動作可能に連結されている。これらのパラメーターは、pH、溶存酸素、合計バイオマス、細胞直径、グルコース濃度、乳酸濃度、および細胞代謝産物濃度を含む。
【0023】
本発明の別の態様では、第1の細胞培養チャンバーから第2の細胞培養チャンバーの中へ細胞を移送するための方法が提供される。方法は、第1の細胞生産物を含む上清を発生させるようなやり方で第1の細胞培養チャンバーの中で細胞を培養するステップと、第1の細胞培養チャンバーの中へガス流を導入し、第1の細胞生産物を含む上清を、流体コネクターを通して第2の細胞培養チャンバーの中へ移送するステップと、を一般的に含む。流体が第2の細胞培養チャンバーに進入すると、第1の細胞生産物はさらに培養される。
【0024】
第1の細胞培養チャンバーから第2の細胞培養チャンバーへの流体の移送と同様に、方法は、また、第2の細胞培養チャンバーの中へガス流を導入し、さらに培養された第1の細胞生産物を含む上清を、流体コネクターを通して第3の細胞培養チャンバーの中へ移送するステップを含むことが可能である。1つの実施形態では、上清の移送は少なくとも3つの異なる時間に起こり、所望の量の抗原提示T細胞を作り出すために少なくとも4つの培養チャンバーが使用されるようになっている。
【0025】
さらに、特定の態様では、上述のように、細胞培養チャンバーのうちの1つまたは複数は、灌流流体などの流体をチャンバーを通して垂直方向の流路に沿って移動させるように構成されている(図8C)。流体の移動は、流体の流量が細胞培養チャンバーの中の細胞の沈殿レートに打ち勝つには不十分となるようになっている。
【0026】
本発明のさらなる別の態様では、免疫療法生産物を発生させるための方法は、第1の細胞培養チャンバーの中で末梢血単核細胞および樹状細胞を培養して、T細胞を含む上清を作り出すステップと、第1の細胞培養チャンバーの中へガス流を導入し、T細胞を含む上清を流体コネクターを通して第2の細胞培養チャンバーの中へ移送するステップと、を含む。特定の態様では、新鮮な樹状細胞は、第2の細胞培養チャンバーの中に含有されており、T細胞は、第2の細胞培養チャンバーの中でさらに培養される。
【0027】
第1の培養チャンバーの中での培養は、第1のセットの1つまたは複数の刺激抗原の存在下で起こることが可能であり、第2の培養チャンバーの中での培養は、第2のセットの刺激抗原の存在下で起こることが可能である。特定の実施形態では、第1のセットの刺激抗原と第2のセットの刺激抗原とは同じである。一方、他の実施形態では、第1のセットの刺激抗原と第2のセットの刺激抗原とは異なっている。
【0028】
先述の内容は、添付の図面に図示されている例示的な実施形態の以下のより具体的な説明から明らかになり、添付の図面において、同様の参照文字は異なる図の全体を通して同じ部分を表している。図面は、必ずしも一定の縮尺であるわけではなく、その代わりに、実施形態を図示することに重点が置かれている。特許または出願ファイルは、カラーで作成された少なくとも1つの図面を含んでいる。カラー図面を含むこの特許または特許出願刊行物の写しは、要求および必要な料金の支払いをすると庁によって提供される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】免疫療法生産物を作り出すための先行技術の手動技法を示す図である。
図2】本発明の実施形態による、免疫療法生産物を作り出すための例示的な方法を示す図である。
図3】1つの細胞培養チャンバーが示されている状態の、1つの実施形態における本発明のシステムを示す概略図である。
図4A】本発明の実施形態による例示的な細胞培養チャンバー構成を示す図である。
図4B】本発明の実施形態による例示的な細胞培養チャンバー構成を示す図である。
図4C】本発明の実施形態による例示的な細胞培養チャンバー構成を示す図である。
図4D】本発明の実施形態による例示的な細胞培養チャンバー構成を示す図である。
図4E】本発明の実施形態による例示的な細胞培養チャンバー構成を示す図である。
図5】透過性のポリマーを別のポリマーのフレームの中に組み込む構成を有する細胞培養チャンバーの表面を示す図である。
図6A】細胞培養チャンバー同士を接続し、それらの間で流体を移送するための、プロセスの概略表現図である。図3に示されているような第1の細胞培養チャンバーの概略図である。
図6B】細胞培養チャンバー同士を接続し、それらの間で流体を移送するための、プロセスの概略表現図である。第1の細胞培養チャンバーの中の部分的に増殖されたT細胞、および、第1の細胞培養チャンバーに接続するために適切な位置へ第2の細胞培養チャンバーを移動することを図示する図である。
図6C】細胞培養チャンバー同士を接続し、それらの間で流体を移送するための、プロセスの概略表現図である。第1の細胞培養チャンバーの中へ無菌空気を注入し、増殖されたT細胞を含有する上清を第2の細胞培養チャンバーの中へ移送することを図示する図である。
図7】1つの実施形態による、1つの細胞培養チャンバーの出口部から2つの細胞培養チャンバーの入口部への流体のフローを示す図である。
図8A】さまざまなチャンバー構成を通る流体のフローを示す図である。細胞培養チャンバーの中への、および、細胞培養チャンバーから外への、平面的な流体のフローを示す図である。
図8B】さまざまなチャンバー構成を通る流体のフローを示す図である。細胞培養チャンバーの中への、および、細胞培養チャンバーから外への、平面的な流体のフローを示す図である。
図8C】さまざまなチャンバー構成を通る流体のフローを示す図である。対称のインフローおよび垂直方向のアウトフローを備えた構成を示す図である。
図8D】さまざまなチャンバー構成を通る流体のフローを示す図である。対称のインフローおよび垂直方向のアウトフローを備えた構成を示す図である。
図9】T細胞と抗原提示細胞との間の相互作用の動態パラメーター(kinetic parameter)・ベースのモデリングを示す図である。
図10】特定の実施形態による、本発明のシステムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明のデバイス、システム、および方法は、自己細胞の培養を伴う、個人に特化されたターゲットにされた癌または感染症の療法のために、十分な量の抗原特異的T細胞を発生させる方法を自動化し、ならびに、遠隔からモニタリングおよび制御することを可能にする。本発明のシステムおよび方法は、上記で説明した手動プロセスの自動化を可能にするさまざまな技術的特徴を含む。これらの技術的特徴は、それらに限定されないが、1)細胞が付着する材料から作製されている底部表面と、ガス透過性の材料から作製されており、より大きいレベルのガス交換が実現されるようになっている、少なくとも1つの追加的な表面とを含むように、細胞チャンバーを構築することと、2)チャンバーから出て行くときに垂直方向の流路に沿って細胞培養チャンバーの中の流体を移動させ、抗原特異的T細胞および培養プロセスに関わる他の細胞が培養培地の灌流の間にチャンバーの中に留まることを確保するように、細胞培養チャンバーの1つまたは複数の入口部および出口部を配置することと、3)第1の細胞培養チャンバーの中へガス流を導入し、流体コネクターを通して第2の細胞培養チャンバーの中へ細胞を移送することによって、1つのチャンバーから別のチャンバーへ抗原特異的T細胞を自動的に移送することと、を含む。
【0031】
本発明の方法、デバイス、およびシステムは、多数の細胞ベースの免疫療法生産物を提供するようにスケール・アップされ得、単一の対象に関して動作させることも、または、並列にいくつかの対象に関して動作させることもできる(それによって、それらの細胞およびその子孫が別々に留まる)。先行技術の方法およびデバイスと比較して、本発明の方法およびシステムは、動作においてロバストであり、高い生産物収量を提供することができ、簡単かつ効率的であり、汚染のリスクがより少なく、労働力のコストを最小に低減させる。
【0032】
図2は、本明細書で説明されるシステムを使用して細胞ベースの免疫療法生産物を発生させるための方法の概観を示している。簡潔に言えば、本発明の特定の実施形態による細胞療法生産物を発生させる際のステップは、細胞培養チャンバーを含有する生物学的リアクターの中でのT細胞を含有する細胞と刺激される抗原提示細胞との共培養を含む。増殖された治療用T細胞生産物を含有する上清が、培養の間に発生させられる。特定の態様では、患者の中に治療反応を引き起こすために十分な所定量の抗原特異的T細胞を作り出すために、T細胞は、1つまたは複数の追加的な細胞培養チャンバーの中で追加的な培養を受けなければならない。この追加的な培養を達成するために、上清がその中で発生させられた培養チャンバーから、抗原提示細胞の新鮮な供給を含有する後続の細胞培養チャンバーへの、上清の移送が起こらなければならない。細胞培養チャンバー同士の間の上清の移送は、第1の細胞培養チャンバーの中へのガス流の導入を伴うことが可能であり、このガス流は、第1の細胞生産物を含む上清を、流体コネクターを通して新しい細胞培養チャンバーの中へ移送する。さらに、培養ステップのそれぞれの間に、たとえば培地およびサイトカインを含有する灌流流体が、チャンバーに灌流され得る。特定の態様では、灌流流体はチャンバーを通って垂直方向の流路に沿って流れ、細胞が培養の間にチャンバーの中に留まることを確保するようになっている。本発明のシステムを使用して必要とされる唯一の手動ステップは、1つまたは複数の後続の生物学的リアクターをシステムに提供することであり、それぞれのリアクターは細胞培養チャンバーを含有しており、それぞれのチャンバーは抗原ペプチド・パルス自己抗原提示細胞の新しいバッチを含有している。
【0033】
本発明の実施形態による細胞ベースの免疫療法生産物を発生させる方法は、先行技術の方法よりもはるかに簡単で効率的である。図1は、以前に説明したように少なくとも4,650回の手動ステップを必要とする先行技術の従来プロトコルを示している。それとは対照的に、図2図4に示され、説明されるように、および、本明細書で説明されるように、本発明のシステムおよび方法は、下記の表1に示されるように、同じ細胞用量を発生させるためにとる必要がある手動ステップの数を25分の1に減少することを伴う。
【0034】
【表1】
【0035】
本発明の細胞培養チャンバーは、免疫療法生産物製造を著しく改善し、比類なき程度の一貫性、品質、安全、経済性、スケーラビリティー、柔軟性、およびポータビリティーを備えたフロー・ベースの免疫療法生産技術を提供する。
【0036】
次いで例示的な配置が説明され、例示的な配置では、本発明のシステムおよび方法は、1つまたは複数のバイオリアクターを利用し、それぞれのリアクターは、細胞培養チャンバーを含有しており、細胞培養チャンバーは、互いに流体連結されるように構成され、患者の細胞材料の処理を実施し、免疫療法生産物を発生させるようになっている。バイオリアクターは、特定の実施形態では、閉じた環境で提供されることが理解されるべきである。直列および/または並列の処理を可能にするためにモジュール(たとえば、生物学的リアクター)を追加することによって、この例示的な実施形態をスケール・アップすることは当業者の知識内のことであろう。また、当業者は、作り出そうとする生産物に基づいて異なる配置または代替的な配置が望まれる可能性があることを認識されよう。
【0037】
例示的な実施形態では、図3に示されるように、生物学的リアクター110は、細胞培養チャンバー120を含むように設けられており、細胞培養チャンバー120は、底部表面122および少なくとも1つの追加的な表面124を含む。底部表面122は、細胞が付着する第1の材料から構成されており、少なくとも1つの追加的な表面124は、ガス透過性の第2の材料から構成されている。また、細胞培養チャンバーは、1つまたは複数の入口部126、136、および、1つまたは複数の出口部128、138を含む。特定の実施形態では、生物学的リアクターはまた、少なくとも1つの灌流流体リザーバー132、少なくとも1つの廃棄流体リザーバー134、チャンバー120を通して灌流流体を移動させるための少なくとも1つのポンプ140、ならびに、リザーバー132、134へおよびリザーバー132、134から、および、チャンバー120を通して、流体を輸送するための関連の入口部136および出口部138を含む。
【0038】
細胞培養チャンバー120に関して、第1の材料は、生体適合性であり、かつ、樹状細胞(DC)などの抗原提示細胞(APC)がそれに付着する、任意の材料であることが可能である。細胞培養チャンバー120の中で起こるT細胞刺激および増殖プロセスの間に、成熟したAPCは発達し、好ましくは底部表面122に付着することとなり、一方、T細胞は底部表面の上方の上清の中に留まり、増殖されたT細胞を別々に取得することをより容易にする。
【0039】
1つの例示的な実施形態では、第1の材料は、ポリスチレンを含む。培養が起こる底部表面に関してポリスチレンを使用する1つの利益は、PBMCから樹状細胞を発生させるプロセスにおいてこの材料が果たす有用な役割である。具体的には、ポリスチレン表面は、PBMCの不均質な懸濁液から単球を濃縮するために使用され得る。これは、たとえば、IL4およびGM-CSFを含有する培地の中での培養を介して、単球の分化によってDCを発生させるために利用される培養プロセスの中の第1のステップである。T細胞刺激の1回のサイクルの全体を通して樹状細胞生産に関して同じポリスチレン表面を使用することは、バイオプロセスの観点から極めて価値のあることである。その理由は、そうでなければ必要になる多数の移送ステップが排除され、それにより、DC刺激される治療用T細胞製造のための閉じたシステムが可能になるからである。
【0040】
底部表面は、6-ウェル・プレートおよび24-ウェル・プレート(それぞれ、9.5cmおよび3.8cm)などの、従来のウェル・プレートに匹敵する表面積を有することが可能である。また、表面積は、従来のウェル・プレート(たとえば、標準的な細胞培養皿およびフラスコに匹敵する表面積を有する)ものよりも小さくすることも、またははるかに大きくすることも可能であり、たとえば、約2.0cmから約200cmの間の表面積、たとえば、約2.0、3.0、4.0、5.0、6.0、7.0、8.0、9、0、10.0、11.0、12.0、13.0、14.0、15.0、16.0、17.0、18.0、19.0、20.0、25.0、30.0、35.0、40.0、45.0、50.0、55.0、60.0、65.0、70.0、75.0、100.0、125.0、150.0、175.0、および200.0cmの表面積、および、それらの間の任意の表面積を有していることも理解されるべきである。
【0041】
少なくとも1つの追加的な表面124は、1つまたは複数の側壁部および上部壁部などの、任意の構成を含むことが可能である。1つの実施形態では、図3に示されるように、側壁部は、互いに対して90度の角度で配置され得、ボックス形状が底部表面122と関連して形成されるようになっている。別の実施形態では、少なくとも1つの追加的な表面124は、湾曲した側壁部を形成し、図4A図4Cに示されているように、円柱、楕円柱、または円錐が形成されるようになっている。別の例示的な配置では、少なくとも1つの追加的な表面は、図4Dに示されるように、底部表面の上方にドームのような形状を形成することが可能である。さらなる他の実施形態では、側壁部は、図4Eに示されるように、三角形の形状を形成することが可能である。上記の例示的な構成は非限定的なものであり、少なくとも1つの追加的な表面が、上述の例示的な構成には提供されていない他の構成を有することが可能であることが理解されるべきである。
【0042】
別の実施形態では、少なくとも1つの追加的な表面124は、第2の材料を含み、第2の材料は、細胞培養チャンバーの中で起こるガス交換を達成するために、ガス透過性である。底部表面が、ポリスチレンなどの細胞が付着する材料から作製されるように、ならびに、側壁部および/または上部壁部などの少なくとも1つの追加的な表面が、少なくとも部分的にガス透過性の材料から作製されるように、細胞培養チャンバーを製作することによって、高い表面積のガス交換が本発明の実施形態のシステムの中で実現される。底部表面以外に、高い透過性を有するより大きい表面を有することは、先行技術の培養システムと比べて底部表面の付着性性質を犠牲にする必要なしに、より高いレベルのガス交換を実現する能力を提示し、先行技術の培養システムは、細胞が付着することができる培養に好適な表面に含まれ得るおよび/または欠如し得る培養培地の量に関して制限されていた。
【0043】
特定の実施形態では、第2の材料は、350の透過性係数以上の酸素に対する透過性、および、2000の透過性係数以上の二酸化炭素に対する透過性を有する、1つまたは複数の材料を含む。ここで、透過性係数の単位は、[cm][cm]/[cm][s][cmHg]である。例示的な材料は、シリコーンを含有する材料、たとえば、ポリ(ジメチルシロキサン)(PDMS)(それは、高い酸素および二酸化炭素透過性(ポリスチレンおよびPMMAなどの材料よりも最大で3桁も高い)としてよく知られている)およびポリメチルペンテンなどを含む。1つの例示的な実施形態では、細胞培養チャンバーは、ポリスチレンの床部、ならびに、シリコーンの側壁部および上部壁部を含む。
【0044】
特定の態様では、第2の材料に加えて、少なくとも1つの追加的な表面124は、第1の材料も含むことが可能である。たとえば、および、限定ではないが、追加的な表面124、たとえば、1つもしくは複数の側壁部および/または上部壁部は、図5に示されているように、第1の材料(たとえば、ポリスチレン)から作製されたフレームの中に第2の材料(たとえば、シリコーンなどの高透過性ポリマー)を組み込むことが可能である。また、底部表面は、第2の材料も含むことが可能であることが企図される。しかし、いくつかの実施形態では、第2の材料は、底部表面の全体を通して間欠的にのみ分散しており、これにより、細胞が表面に付着することができるように第1の材料が十分な表面積をカバーすることを確保している。
【0045】
第1の材料および第2の材料は、機械的な締結、接着剤、溶媒結合、および溶接などの、当技術分野において知られている任意の方法を使用して、互いと接合され得る。しかし、本発明の実施形態のシステムおよび方法を使用して作り出される細胞免疫療法生産物は、後に人間の患者に投与されることを考慮して、規制上の問題が、細胞培養チャンバーを組み立てる際に特定の(または、すべての)接着剤を使用することを阻止する可能性がある。したがって、特定の実施形態では、第1および第2の材料は、接着剤を使用することなく接合される。1つの実施形態では、細胞培養チャンバーのすべての表面、たとえば、底部壁部、側壁部、および上部壁部などは、第1の材料(たとえば、ポリスチレン)を含み、また、図5に示されているように、超音波溶接を使用して、第2の材料(たとえば、シリコーン材料)の挿入を可能にするようにカットアウトされた側壁部および/または上部壁部の中の第1の材料の少なくとも一部分と一緒に接合されている。図5に示されているように、孔部は、望まれる任意の形状であることが可能であり、単に円形でないことも可能であることが理解されるべきである。例示的な配置では、第2の材料は、ベッセルのシーリングのためにベッセルの上部開口部の中へ挿入されるストッパーと同じようにして、孔部の中へ別々に挿入され得る。別の例では、図5に示されているように、第2の材料は、第1の材料フレームの外側表面を完全に包含して取り囲むように製作可能であり、第2の材料がフレームの中の孔部を通してアクセス可能であるようになっている。上述の構成は単なる例に過ぎず、第1および第2の材料を接合するための他の構成も、企図される本発明の実施形態であることが理解されるべきである。
【0046】
1つまたは複数の細胞培養チャンバーの高さは変化することが可能である。たとえば、および、限定ではないが、細胞培養チャンバー高さの例示的な範囲は、0.5mmから100mmまでのいずれかの高さ、たとえば、0.5、1.0、2.0、3.0、4.0、5.0、6.0、7.0、8.0、9.0、10.0、15.0、20.0、25.0、30.0、35.0、40.0、45.0、50.0、55.0、60.0、65.0、70.0、75.0、80.0、85.0、90.0、95.0、100.0mm、またはそれ以上などの高さ、または、それらの間の任意の高さを含む。特定の実施形態では、チャンバーの高さは、約0.8mLから6mLの体積容量によって、6-ウェル・プレートおよび24-ウェル・プレートの中で典型的に実施される培養における液体高さ、たとえば、2mmから6mmの間の液体高さに匹敵することが可能である。他の実施形態では、細胞培養チャンバーは、たとえば10mmから50mmの間などの大きいサイズであり、約50cmの培養表面をもつ。
【0047】
図3に関して上記で簡潔に述べたように、特定の実施形態では、バイオリアクター110は、1つまたは複数のポンプ140も含み、1つまたは複数のポンプ140は、細胞培養チャンバーの中へ灌流培地を灌流させるために、細胞培養チャンバー120に動作可能に連結されている。また、バイオリアクター110は、1つまたは複数の流体リザーバー132も含むことが可能である。流体リザーバー132は、細胞培養チャンバー120と流体連通しており、1つまたは複数のポンプ140に動作可能に連結され得る。また、流体リザーバーをポンプおよび細胞培養チャンバーに接続するための1つまたは複数のチューブが設けられる。特定の態様では、1つまたは複数のポンプは、流体リザーバーからの、細胞培養チャンバーを通る、および、廃棄物収集リザーバーの中への、ポンピング流体のために構成されている。図3に示されている例示的な実施形態では、流体は、流体リザーバー132から移動し、管152を通ってポンプ140へ移動し、入口部136を介して細胞培養チャンバー120の中へ移動し、出口部138を介して細胞培養チャンバー120から外へ移動し、管154を通って移動し、廃棄物収集リザーバー134の中へ移動する。
【0048】
特定の実施形態では、流体リザーバーおよび/または廃棄物収集リザーバーは、1つまたは複数のキャップ付きボトルとしてそれぞれ提供可能であり、1つまたは複数のキャップ付きボトルは、細胞培養チャンバーの中に含有されているか、または、チャンバーに流体連結されているか、のいずれかである。それぞれのリザーバーは、入口ポートおよび出口ポートを含有しているか、または、出口ポート、および、1つまたは複数の細胞培養チャンバーの入口部に流体連結されているベントを含有している。特定の態様では、たとえば、ルアー・コネクター、および、ルアー・コネクターの周りにフィットするようにカットされたシリコーン・ガスケットは、入口部もしくは出口部のいずれか、または、入口部および出口部の両方を通る漏出を防止するために使用され得る。
【0049】
特定の実施形態では、1つまたは複数の生物学的リアクターは、インキュベーターにフィットするようにサイズ決めおよび構成されており、プロセスがインキュベーターの中で実施されるようになっている。インキュベーターの中の条件は、37℃の持続的な温度および95~100%の湿度を含む。したがって、材料(流体および生物製剤を含む)がそのような条件の下で増殖する傾向にあることを考慮して、選ばれる材料は、これらの条件に耐える完全性を有していなければならない。さらに、いくつかの場合には、インキュベーターの中の条件は安定したままであり、自動化された温度の記録が可能であり、温度変動の知識を有し、インキュベーターの中で実施される反応の任意の収差と相関する。したがって、任意の動力の供給は、インキュベーターの中の環境を変化させるべきではない。たとえば、特定のポンプは、熱を発生させる。したがって、1つの実施形態では、ポンプは、生物学的リアクターから分離して収容されるが、依然として、リアクターと流体連通し、動作可能に連通している。別の実施形態では、ポンプは、生物学的リアクターに直接的に取り付けられており、インキュベーターの中に位置しているが、熱を受けないか、または、ヒート・シンクおよび/またはファンに動作可能に接続されており、熱を消散させる。構成にかかわらず、ポンプは、生物学的リアクターに、そして、細胞培養チャンバーに動作可能に連結されている。灌流ベースの自動化された細胞培養システムに関する追加的な詳細、たとえば、オンボードの試薬ストレージによる内皮細胞培養、および、オンボードの使い捨ての蠕動ポンプによって可能になる灌流のための小規模の培養システム、ならびに、ポリスチレン底部表面を備えたチャンバーを使用して単球から樹状細胞を発生させるためのより大規模の培養システムなどが、特許文献1および特許文献2に見出され、その両方はその全体が参照により本明細書に組み込まれている。
【0050】
また、このシステムは、細胞培養リザーバーおよび任意で流体リザーバーの温度を制御するための加熱器を含むことが可能である。そのような構成では、インキュベーターは必要とされず、システムは、電力の供給源のみによって、自律的に動作することが可能である。システムが加熱器を欠いている場合には、システムは、細胞培養インキュベーターの内側で動作させられ得る。
【0051】
さらなる他の態様では、細胞培養チャンバーは、細胞培養チャンバーに動作可能に連結されている1つまたは複数のセンサー(図示せず)を含む。センサーは、pH、溶存酸素、合計バイオマス、細胞直径、グルコース濃度、乳酸濃度、および細胞代謝産物濃度などの、細胞培養チャンバーの中の1つまたは複数のパラメーターを測定することができる。システムが複数の細胞培養チャンバーを含む実施形態では、1つまたは複数のセンサーは、細胞培養チャンバーのうちの1つまたは複数に連結され得る。特定の実施形態では、1つまたは複数のセンサーは、1つまたは複数の細胞培養チャンバーに連結されているが、システムの中のチャンバーのすべてに連結されているわけではない。他の実施形態では、1つまたは複数のセンサーは、システムの中の細胞培養チャンバーのすべてに連結されている。1つまたは複数のセンサーに動作可能に連結されている複数のチャンバーを有するシステムでは、センサーは、それらが連結されているチャンバーのそれぞれにおいて同じであることが可能であり、センサーはすべて異なっていることが可能であり、または、いくつかのセンサーは同じであることが可能であり、かつ、いくつかのセンサーは異なっていることが可能である。特定の態様では、1つまたは複数のセンサーは、命令を実施するための中央処理装置を有するコンピューター・システム(図3には示されていない)に動作可能に連結されており、パラメーターの自動的なモニタリングおよび調節が可能であるようになっている。細胞培養チャンバーを使用して本発明の方法を実装するためのコンピューター・システムに関する追加的な詳細が下記に提供される。
【0052】
また、図3に示されているように、細胞培養チャンバーは、入口部126および出口部128を有しており、その両方は、流体コネクターを介してチャンバーを1つまたは複数の追加的なベッセルと流体連結するために使用され得る。特定の実施形態では、追加的なベッセルは、下記でより詳細に説明されるように、1つまたは複数の追加的な細胞培養チャンバーを含む。本発明のシステムは、免疫療法生産物を作り出すために直列に互いに流体接続するように構成された、たとえば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、30、40、50、60、70、80、90、100個、もしくは、それらの間の任意の数の細胞培養チャンバー、または、100個よりも多い細胞培養チャンバーを含むことが可能である。代替的にまたは追加的に、1つまたは複数の細胞培養チャンバーは、同時に2つ以上の個体に関して免疫療法生産物の生産を可能にするために、互いに並列に配置され得る。好適な実施形態では、バイオリアクターの細胞培養チャンバーは、無菌接続を介して接続されている。
【0053】
マルチ・バイオリアクター・システムの例示的な構成は、図6Bおよび図6Cに見ることができ、この構成を使用して実施されるプロセスに関する追加的な詳細が下記に提供される。図6Bに示されているように、第2のバイオリアクター210が関わる場合に、第2の細胞培養チャンバー220は、適切な位置へ移動させられ、第1のチャンバーの出口部および第2のチャンバーの入口部を介して第1の細胞培養チャンバー120と接続する。接続は、好ましくは、無菌接続である。その接続は、第1の細胞培養チャンバー120の中への無菌空気の注入を可能にし、増殖されたT細胞を含有する上清を第2の細胞培養チャンバー220の中へ移送する。流体フローの技術分野において知られている代替的な技法が、第1の細胞培養チャンバー120から第2の細胞培養チャンバー220へ上清を移送するために用いられ得る。また、示されているように、それぞれのバイオリアクターは、それ自身の流体および廃棄物収集リザーバー、ポンプ、ならびに、関連する管を含む。しかし、リザーバーおよびポンプは、バイオリアクター同士の間で共有され得ることが理解されるべきである。
【0054】
特定の実施形態では、図6Bおよび図6Cに示されているように、たとえば、1つまたは複数の生物学的リアクターが互いに直列に配置されているときなどに、細胞培養出口部に対する細胞培養入口部の比率が1:1で存在している。他の実施形態では、生物学的リアクターの少なくとも一部分に関して、入口部に対する出口部の比率は1:2である。たとえば、1つの細胞培養チャンバー120の出口部は、2つの細胞培養チャンバー220aおよび220bの入口部に流体接続可能であり、図7に示されているように、第1の細胞培養チャンバー120から流れ出る流体が、2つのストリームへと分割されるようになっており、1つのストリームを第2の細胞培養チャンバー220aの中へ送り、第2のストリームを第3の細胞培養チャンバー220bの中へ送るようになっている。この構成では、第2の細胞培養チャンバー220aおよび第3の細胞培養チャンバー220bの両方が、T細胞をさらに刺激および増殖するために使用され得る。追加的に、または代替的に、第2の細胞培養チャンバー220aまたは第3の細胞培養チャンバー220bのうちの1つは、チャンバーに動作可能に連結されている1つまたは複数のセンサーを使用して、反応およびフロー・パラメーターのモニタリングを可能にするように構成され得る。このように、チャンバーのうちの1つは、追加的なセンサーがないままであり、そのうちのいくつかは、細胞培養チャンバーの壁部を貫通する必要がある可能性があり、それは、漏出および/または汚染のリスクを増大させる可能性がある。
【0055】
特定の実施形態では、生物学的リアクターの細胞培養チャンバーの中で起こるプロセスの前に、それと同時に、または、それに続いて、さまざまな他のプロセスを達成するためのモジュールを含有するシステムの中に、1つまたは複数の生物学的リアクターが設けられ得る。
【0056】
システム、および、そのコンポーネントのうちのいくつかまたはすべては、CADソフトウェアを使用して設計可能であり、次いで、レーザー・カッターへ移送可能であり、レーザー・カッターは、プラスチックが特定のサイズおよび形状へカットされることを可能にする。入口部および出口部などさまざまな接続は、貫通穴をレーザー・カットすることによって作製可能であり、次いで、それは、手動でタップを切られ、オス型ルアー・フィッティングを受け入れるためのねじ山を提供することが可能である。管が鈍い針部分の上に押し込まれる状態で、ルアー・アダプターを鈍いディスペンシング針に接続することによって、流体は、後に、システムへ導入され得る。流体システム・コンポーネントの構築に関する追加的な詳細は、特許文献1および特許文献2の中に見出され、その両方はその全体が参照により本明細書に組み込まれている。
【0057】
上記の説明は、システム・コンポーネントおよびさまざまな可能な構成に焦点を合わせている。以下の説明は、本発明の例示的な実施形態システムを使用して実施されるプロセスに焦点を合わせている。抗原特異的T細胞を刺激および増殖するために、プロセスは、細胞培養チャンバーの中の同じ個体から取得されたAPCとT細胞を含有する細胞との共培養によって始まる。特定の実施形態では、T細胞を含有する細胞は、末梢血単核細胞(PBMC)を含み、APCは、DCを含む。T細胞を含有する細胞およびAPCは、約1000:1から1:1000の比率(T細胞を含有する細胞:APC)、たとえば、および、限定ではないが、約1000:1、900:1、800:1、700:1、600:1、500:1、400:1、300:1、200:1、100:1、75:1、50:1、25:1、20:1、15:1、10:1、5:1、4:1、3:1、2:1、1:1、1:2、1:3、1:4、1:5、1:6、1:7、1:8、1:9、1:10、1:15、1:20、1:50、1:75;1:100、1:200:1:300、1:400、1:500、1:600、1:700、1:800、1:900、1:1000の比率、または、それらの間の任意の比率で、細胞培養チャンバーに提供され得る。1つの態様では、10:1の比率が好適である。
【0058】
T細胞を含有する細胞とAPCとの相互作用からT細胞の刺激および増殖を開始させるために、APCは、刺激される必要がある。これは、1つまたは複数の刺激分子の使用を通して行われ得る。特定の実施形態では、刺激分子は、腫瘍特異的ではない。他の実施形態では、刺激分子は、腫瘍特異的である。たとえば、刺激分子は、異なる抗原ペプチドなどの、個体の腫瘍の1つまたは複数の特質から選ばれ得る。いくつかの実施形態では、刺激分子は、好ましくは、培養サイクルの始まりのみにおいて追加される。刺激分子は、約数分だけ、1時間、数時間、または、それよりも長い期間にわたって追加され得る。1つの好適な実施形態では、刺激分子は、約1時間の期間にわたって追加される。
【0059】
2つの細胞材料の培養の間に、より軽い非付着T細胞を含有した上清が形成され、一方、より重い成熟したAPC(たとえば、樹状細胞)は底部表面に付着する。DCがAPCとして使用されるそれらの実施形態では、プライマリーDCは培養物の中で7日を超えて維持されることはできないため、増殖されたT細胞は、7日間の終わりまでに細胞培養チャンバーから抽出されなければならない。したがって、T細胞の追加的な増殖が望まれる場合には、新鮮な樹状細胞の供給が必要とされる。また、樹状細胞の1つのバッチを使用して細胞を培養することは、7日よりも少ない任意の時間の期間にわたることが可能であることが理解されるべきである。たとえば、細胞は、1分未満から7日までのいずれかの期間にわたって培養可能であり、培養の持続期間は望まれる刺激の程度に依存する。
【0060】
例示的な実施形態では、培養物の中で最大で7日後に、増殖されたT細胞は、抽出され、および、新しい細胞培養チャンバーへ移送され、新しい細胞培養チャンバーは、たとえば、第1の細胞培養チャンバーの中で使用される同じ抗原ペプチドによってパルス化された(pulsed)新鮮なDCを含有している。刺激プロセスは、T細胞の治療用量に関して十分に多数の細胞を発生させるために、必要に応じて何回も繰り返され得る。典型的なウェル・プレートのものに匹敵する培養表面積を使用する場合、刺激プロセスは、典型的には、T細胞の十分な供給を発生させるために4回繰り返される。
【0061】
APCおよびT細胞の共培養は、培養培地の中で起こる。例示的な培養培地は、それに限定されないが、RPMI培地、およびCellgenix(登録商標)培地を含む。当技術分野において知られている任意の他の適切な培養培地が、本発明の実施形態にしたがって使用され得る。また、IL-4およびGM-CSFなどのサイトカインが、培養培地に追加され得る。
【0062】
1つの実施形態では、培地およびサイトカインの灌流は、細胞培養チャンバーの中の細胞混合物に提供され、細胞ベースの免疫療法生産物の形成を支援することが可能である。DCによるT細胞の刺激に関するプレート・ベースのプロトコルにおいて、おおよそ2mLの培養体積が開始から維持され、サイトカインの輸液は、それぞれの7日の刺激期間内に2回起こる。灌流の主要な利点は、培地およびサイトカインの一貫した局所濃度プロファイルを維持する能力(それは、より大きい収量を確保する)であり、先行技術プレート・ベースのプロトコルと比較して、DCへの単球分化のプロセスの速度を上げる潜在的な能力である。しかし、付着(DC)および非付着(T細胞)タイプの組み合わせは、機械的な力に対するDCの高い感度とともに、抗原特異的T細胞の刺激および増殖に対して、特に、細胞培養チャンバーを通る流体のフローに関して、課題をもたらす。したがって、培地およびサイトカインが灌流を介して提供されるそれらの実施形態では、本発明のシステムは、DCなどの特定の抗原提示細胞の剪断感度も考慮に入れながら、バイオリアクターから細胞を除去することなく、栄養素およびサイトカインとともに細胞を供給することができなければならない。本質的に、本発明のいくつかの実施形態のシステムおよび方法は、成長因子をリフレッシュさせ、DCの最小の物理的な刺激を維持しながら、T細胞増殖を好むオートクリン/パラクリン信号の保持を最適化することを目標としている。これを計算に入れるために、細胞培養チャンバーを通る灌流フローの方向およびレートの両方が考慮に入れられなければならない。
【0063】
特定の態様では、流体の流量は、抗原提示細胞の沈降レートを下回って維持される。そうであるので、抗原提示細胞は、それらの質量に起因して、培養チャンバー内に留まることとなる。換言すれば、抗原提示細胞は、細胞培養チャンバーの底部に向けて沈むこととなり、したがって、細胞培養チャンバーの中に留まることとなる。
【0064】
沈降レートよりも低い流量は、等式1にしたがって計算され得る。
【数1】
ここで、v_maxは、それを超えると細胞が上向きに上昇する液体速度であり、ψは、細胞の形状係数(等しい体積の球の表面積に対する細胞の表面積の比率;細胞は完璧な球形ではなく、この係数は1より小さくなることが予期されることに留意されたい)、d_pは、細胞の体積に等しい体積の球形の粒子の直径であり、μは、細胞を含有する液体の粘度であり、gは、重力定数であり、ρ_cellは、細胞の密度であり、ρ_liquidは、細胞を含有する液体の密度であり、∈は、細胞によって占有されていない関心の体積の割合である。
【0065】
他の態様では、細胞培養チャンバーの1つまたは複数の入口部136、および、1つまたは複数の出口部138は、細胞培養チャンバー内の灌流流体などの流体を垂直方向の流路に沿って移動させるように配置されている。この構成は、特に、チャンバーを通る流量が2~10L/minの範囲の中にあるときに、細胞(たとえば、DCおよびT細胞の両方)がチャンバーを離れることを防止することを助ける。たとえば、図8Aおよび図8Bに示されているように、平面的なイン/アウトフローは、高い壁剪断均一性の領域を提供するが、チャンバーからの細胞の除去を防止する手段を必要とする。対照的に、図8Cおよび図8Dに示されているように、対称のインフローおよび垂直方向のアウトフローを備えた構成は、細胞がチャンバーから離れることを防止することが可能である。
【0066】
4つの入口部および1つの垂直方向の出口部を有するものとして図8Cに示されているが、チャンバーから流出する流体がチャンバーの上部から垂直方向に流れる限りにおいて、任意の数の入口部および出口部が提供され得る。たとえば、チャンバーは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個、または、それ以上の灌流流体入口部のうちのいずれかを有することが可能であり、一方、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個、または、それ以上の灌流流体出口部のうちのいずれかを有することも可能である。追加的に、入口部は、図8Cでは対称的なものとして示されているが、また、2つ以上の入口部を含有する構成は、対称的に配置されていないことが企図される。また、入口部は、任意の方向からチャンバーに進入するように、流体を方向付けることが可能である。好適な実施形態では、入口部は、底部表面に対して平行な方向にチャンバーに進入するように、流体を方向付ける。
【0067】
特定の態様では、培地灌流は、たとえば、1日にまたは1週間に、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10回、または、それ以上の回数などのような、任意の1つの細胞培養チャンバーの中で細胞が培養される時間期間にわたる特定の時点において起こる。他の態様では、培地は、培養の間に連続的に灌流される。連続的な灌流は、プロセス全体を通してほぼ一定の培養体積を維持することを助ける。
【0068】
特定の態様では、サイトカインは、たとえば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10回、または、それ以上の回数などのような、培養の間の1つまたは複数のポイントにおいて輸液される。代替的に、サイトカインは、培地によって連続的に灌流され得る。それらの実施形態では、連続的な灌流は、サイトカインの一貫した局所濃度プロファイルを維持することを助け、これは、より大きい収量を確保することを助けることが可能であり、また、静的な細胞培養方法と比較して、T細胞が刺激および増殖される速度を増加させる能力を有している。
【0069】
灌流パラメーターは、培養サイクルの任意の時間において変化させられ得る。例示的なパラメーターは、それに限定されないが、メジアン流量、サイトカイン濃度、および、培養サイクルの持続期間を含む。これらのパラメーターのそれぞれは、T刺激の有効性に対する影響を有することが可能である。たとえば、DCへの単球拡散のための培養チャンバーを設計する最近の研究において、特許文献1および特許文献2に説明されているように、我々は、0.1dyn/cm2の壁剪断応力レベルに対応する培地灌流レートが、従来の6-ウェル・プレートまたは24-ウェル・プレート・ベースのプロトコルを使用して発生させられるものと表現型が同一のDCを作り出すことができると判定した。そうであるので、培養サイクルの間に上記に説明されている表現型および関数型の対策のうちの1つまたは複数を測定することによって、有効性に対する1つまたは複数の灌流パラメーターの効果がモニタリング可能となり、適当な調節を可能にする。
【0070】
特定の態様によれば、刺激有効性が、培養の間の任意のポイントにおいて、好ましくは、7日後に、評価され得る。表現型および関数型の対策の両方が、有効性を評価するために使用され得る。たとえば、細胞数(~倍の増殖)が、直接的な細胞計数方法を使用して計算され得る。テトラマー染色による抗原特異性の評価を含む、細胞表現型は、フロー・サイトメトリーによって特徴付けられ得る。また、機能アッセイが、増殖されたT細胞の能力を評価するために使用され、抗原をロードされたターゲット細胞、および、自己腫瘍細胞を認識することが可能である。結果は、24-ウェル・プレートおよびG-Rex(登録商標)フォーマットの両方において実施されたDCベースのT細胞刺激に対してベンチマークされ得る。
【0071】
上記に説明されているように、樹状細胞などのような、特定のAPCは、7日を超えて培養物の中で生き残ることができないので、本発明の特定の実施形態は、セミ・バッチ構成の2つ以上のバイオリアクターを超えて使用したT細胞刺激の複数のサイクルを必要とする。それぞれのサイクルは、新鮮に発生させられる自己抗原提示細胞によって実施される。特定の実施形態では、抗原提示細胞は、それぞれの刺激サイクルに関して、同じセットの抗原によってパルス化される。他の実施形態では、異なるセットの抗原が、刺激サイクルのうちの1つまたは複数に関して使用される。
【0072】
一般的に、図2に示されているように、複数回のサイクルT細胞刺激は、第1の細胞生産物を含む上清を発生させるようなやり方で第1の細胞培養チャンバーの中で細胞を培養すること、第2の細胞培養チャンバーを提供すること、および、その後に、第1の細胞培養チャンバーの中へガス流を導入することによって、第1の細胞培養チャンバーから第2の細胞培養チャンバーへ上清を移送することを伴う。
【0073】
マルチ・リアクター・システムの例示的な構成を、図6A図6Bに見出すことが可能である。示されているように、プロセスは、成熟した付着されたDCを含有する1つのリアクターによって始まり、これは、PBMCによってロードされ、培地およびサイトカインの灌流によって7日の初期刺激サイクルを受けることとなる。第1の刺激サイクルの終了に続いて、新鮮なDCを含有する、任意でより大きい第2のリアクターが、図6Bおよび図6Cに図示されているように、第1のリアクターに接続される。次いで、無菌空気の注入は、第1のリアクターから第2のリアクターへ上清を移送する。この第2のバイオリアクターは、使い捨ての蠕動ポンプとともに、オンボードのコンテナの中の培地およびサイトカインのそれ自身の供給を含有することとなる。上清の移送に続いて、第1のリアクターは、切り離されて廃棄され得る。このプロセスは、刺激およびT細胞増殖の所望のレベルを実現するために、次第に大きくなるバイオリアクターによって、望まれる回数だけ繰り返され得る。たとえば、1つの実施形態では、4回の刺激サイクルが実施され、3つの異なる時間における新しい細胞培養チャンバーへの上清の移送を伴う。第2のチャンバー220は、第1の細胞培養チャンバー120よりも大きいものとして示されているが、第2のおよび任意の後続の細胞培養チャンバーは、任意のサイズであることが可能であり、たとえば、第1の細胞培養チャンバーよりも大きいサイズであるか、それと同じサイズであるか、または、それよりも小さいサイズであることが可能であることが理解されるべきである。特定の実施形態では、それぞれの後続の細胞培養チャンバーは、上清がそこから移送される先行する細胞培養チャンバーよりもサイズが大きくなっている。
【0074】
モジュール化された設計は、サイクルの数および抗原提示細胞のタイプの両方の観点から柔軟性を提供し、それは、それぞれのサイクルに関して同じセットの抗原を使用するか、それぞれのサイクルに関して異なるセットの抗原を使用するか、または、前者および後者の組み合わせ、のいずれかによって、調製され得る。特定の態様では、1つの自動化されたプロセスの中で、病気に関連付けられる複数の異なる抗原に特有のT細胞を作り出す能力は、複数方向からの攻撃(multi-prong attack)を可能にするので、病気の治療において有利である。
【0075】
特定の態様では、計算モデリング・アプローチが、T細胞とDCなどの抗原提示細胞との相互作用を最適化するために使用される。本発明による計算モデルは、灌流の影響、および、刺激に必要とされる最適な時間を考慮に入れ、粒子相互作用ベースのアプローチ、および、動態パラメーター・ベースのアプローチの両方を組み込む。例示的な粒子相互作用ベースのアプローチおよび動態パラメーター・ベースのアプローチは、当技術分野で知られており、そのうちのいくつかは本明細書で説明されている。たとえば、粒子相互作用ベースのアプローチに関して、DayおよびLytheは、以下の式を使用して、T細胞がリンパ節の表面の上のAPCを見つけるために必要とされる時間を説明しており、ここで、Dは、T細胞の拡散率であり、bは、半径Rの球形のリンパ節の中に中央に位置するAPCの半径である。非特許文献1を参照。
【数2】
動態パラメーター・ベースのアプローチに関して、Valituttiは、図9に示されているように、T細胞と抗原提示細胞との間の相互作用のモデルを開発した。非特許文献2。しかし、そのような相互作用は、培養チャンバーまたはバイオリアクターの文脈の中でモデル化されていなかった。
【0076】
粒子相互作用ベースのアプローチおよび動態パラメーター・ベースのアプローチの両方を、本発明の計算モデルの中へ組み込むことによって、2つの細胞タイプが細胞培養チャンバー内で互いに接触している確率を最大化するために、灌流流体(たとえば、サイトカインを輸液された培地)の最適な灌流レートの自動化された決定およびモニタリングが実現され得る。
【0077】
たとえば、特定の実施形態では、細胞培養チャンバー、および、中央処理装置によって実行可能な命令を保持したメモリーを含む中央処理装置を含む、細胞培養システムが提供される。特定の態様では、命令は、システムに、細胞培養チャンバーのサイズを含むデータを第1の入力として受け取らせ、細胞培養チャンバーの中へ導入される1つまたは複数の流体の中の、第1の細胞タイプの第1の濃度および第2の細胞タイプの第2の濃度を含むデータを第2の入力として受け取らせ、ならびに、第1および第2の入力に基づいて、第1の細胞タイプおよび第2の細胞タイプが細胞培養チャンバー内で互いに接触している確率を最大化する、細胞培養チャンバーの中へ導入される灌流流体の灌流レートを計算させる。細胞培養システム内の本発明の方法を実装するためのコンピューター・システムに関する追加的な詳細が下記に提供される。
【0078】
いくつかの態様では、システムは1つまたは複数のポンプも含み、1つまたは複数のポンプは、1つまたは複数の灌流流体リザーバーに動作可能に連結されているとともに中央処理装置に動作可能に連結されており、中央処理装置が、1つまたは複数のポンプを制御することによって、灌流流体の灌流レートを制御するようになっている。
【0079】
上記に説明されているように、本発明のシステムおよび方法は、モジュール(たとえば、細胞培養チャンバーを含有するバイオリアクターなど)を利用し、モジュールは、個体の細胞材料を処理するために、互いに流体連結されており、免疫療法生産物を作り出す。
【0080】
本発明のシステムまたはデバイスは、モジュール式であり、直列に(すなわち、流体が1つのデバイスから別のデバイスの中へ流れる)および/または並列に、他の同様のデバイスに流体接続することができ、また、互いに物理的に重ねるように構成可能であり、または、インキュベーターなどのような関連のデバイスの中の物理的な配置が可能である。システムのモジュール式の設計は、具体的には、システム内に含まれることとなる所望のプロセスに応じて、モジュールが柔軟にスイッチ・インおよびスイッチ・アウトされることを可能にする。
【0081】
本発明の流体デバイスは、細胞培養チャンバーを含む生物学的リアクターを含み、本発明の流体デバイスは、マイクロ流体の実施形態(すなわち、その中の1つまたは複数のチャネルまたはチャンバーが約1μmから約999μmの範囲にある寸法を有する)またはマクロ流体の実施形態(その中のチャネルまたはチャンバーのすべてが約1mm以上の寸法を有する)のいずれかで、または、その両方で提供され得る。
【0082】
流体デバイスは、特定の設計によって必要とされるような、追加的な流体チャネルまたはコンパートメント、ガスケットまたはシール、混合ゾーン、バルブ、ポンプ、ベント、加圧ガスのためのチャネル、導電体、試薬、ポート、および管をさらに含むことが可能である。また、流体デバイスは、1つまたは複数の制御モジュール、送信器、受信器、プロセッサー、メモリー・チップ、バッテリー、ディスプレイ、ボタン、コントロール、モーター、空気圧式アクチュエーター、アンテナ、および電気コネクターなどを含有することが可能である。このデバイスは、好ましくは、哺乳類の細胞に対して毒性がない材料だけを含有しており、この材料は、アルコールおよび/または熱もしくは他の手段の使用による殺菌、たとえば、ガンマ線またはエチレンオキシド・ガスへの露出などによる殺菌に適合している。
【0083】
機器の材料は、それぞれのプロセスに特有の異なる温度および圧力定格の下での適当な化学的適合性によって選ばれる。追加的に、シリンジポンプ、蠕動ポンプ、圧力ポンプ、および回転ポンプなど、デバイスの中の実装されるポンプの選択は、異なる機能に関するフローおよび圧力要件に応じて、流量がnLからmL、および、圧力が10psiから10,000psiの範囲にある。
【0084】
また、本発明のシステムは、1つまたは複数のサンプル溶液リザーバーもしくはウェル、または、モジュールのさまざまな入口部において、入口部チャネルに流体連通しているデバイスへサンプルを導入するための他の装置を含むことが可能である。本発明の流体デバイスの上に1つまたは複数のサンプルをロードするために使用されるリザーバーおよびウェルは、それに限定されないが、シリンジ、カートリッジ、バイアル、エッペンドルフ・チューブ、および細胞培養材料(たとえば、96ウェル・プレート)を含む。
【0085】
有用である場合、デバイスの表面は、たとえばプラズマへの露出などによってより親水性にされ得、または、1つまたは複数のゲル、化学的機能化コーティング、タンパク質、抗体、プロテオグリカン、グリコサミノグリカン、サイトカイン、または細胞によってコーティングされ得る。本発明の流体デバイスは、好ましくは、動作条件下で流体の漏れがなく、数日から数週間の期間にわたって無菌動作が可能である。また、本発明の流体デバイスは、サンプリング・メカニズムを含み、サンプリング・メカニズムは、新しい材料または汚染物質をシステムへ導入することなくテストするために、流体がシステムから除去されることを可能にする。
【0086】
特定の態様では、細胞培養システムの少なくとも一部は、使い捨てのコンポーネントを含み、使い捨てのコンポーネントのうちのいくつかまたはすべては、非使い捨てのフレームの中に収容され得る。他の態様では、システムのすべてのコンポーネントが使い捨てである。さらに、いくつかの実施形態では、細胞培養システムは、患者材料をトラッキングおよび記録するためのサンプル・トラッキング・コンポーネントを含む。
【0087】
製造プロセスの間の少なくとも1つのステップ、および、ときには、複数のまたはすべてのステップは、さまざまなインライン・プロセス分析ツール(PAT)または小型化されたマイクロ総合分析システム(マイクロTAS)を使用して、生産物特質(たとえば、純度および多形相)に関してモニタリングされる。
【0088】
上記に説明されているように、本発明の細胞培養システムは、システムの中の流体およびエンティティーの方向およびフローを制御することができる。本発明のシステムは、圧力駆動フロー制御を使用する、たとえば、バルブおよびポンプを利用することが可能であり、細胞、試薬などのフローを、1つまたは複数の方向に、および/または、流体デバイスの1つもしくは複数のチャネルの中へ操作する。しかし、電気浸透フロー制御、電気泳動、および誘電泳動(非特許文献3;非特許文献4;非特許文献5;特許文献3)などの他の方法も、単独で、またはポンプおよびバルブと組み合わせて使用され得る。
【0089】
また、本発明のシステムは、システムを通る流体の移動を制御するために;システムの中のさまざまなパラメーター、たとえば、温度などをモニタリングおよび制御するために;ならびに、細胞ベースの免疫療法生産物の存在、生産物の量(直接的にまたは間接的に)、変換レートなどを検出するために、1つまたは複数の制御システムを含むか、または、1つまたは複数の制御システムに動作可能に連結され得る。また、システムは、たとえば、フィードバック制御を可能にする先進的なリアルタイム・プロセス・モニタリングおよび制御プロセス、ならびに、システムを使用して取得される反応および精製結果を所与として統合およびスケール・アップを可能にするプロセスなど、多数のクラスのソフトウェアを装備していることが可能である。
【0090】
特定の実施形態では、システムは、マイクロ流体モジュール、ミリ流体モジュール、またはマクロ流体モジュール、および、管の組み合わせを含み、管は、チャネル寸法、フロー幾何学形状、および、デバイスの異なるモジュール同士の間の相互接続の観点から相互交換可能である。それぞれのモジュールおよび管は、特定の機能に関して設計され得る。1つの実施形態では、システムの中のモジュールのすべては、細胞培養およびT細胞刺激のために設計されている。他の実施形態では、システムを備えたモジュールは、組織処理、樹状細胞発生、細胞培養、濃度、および/または精製などのような、異なる機能のために設計されており、すべては、免疫療法生産物の連続的な製造のために統合されている。均質なプロセスおよび不均質なプロセスの両方が考えられ、これらはフロー用途に適切である。これらのプロセスは、出発材料および動作条件、たとえば、温度、圧力および流量などに関して、設計および最適化され、フロー・プロセスの間にシステムを容易に停滞させないようになっている。
【0091】
デバイス・スケール・アップの方法は、それぞれのプロセス定数および次元パラメーターに対して特徴的な無次元パラメーターのセットを上側および下側境界限界値内に維持しながら、モジュール・リアクターの並列追加、または、モジュール・チャネルの拡大によって実施される。プロセス統合および最適化の間に、温度、圧力、流量、およびチャネル寸法を含む、プロセス決定変数は、収量、純度、およびスループットの間の所望のトレード・オフを実現するように変化させられる。最適化プロセスの全体を通して、上述のセットの無次元パラメーターは、動作制約を伴う代数的最適化を受ける。動作制約は、決定変数の下側境界および上側境界である。目的関数は、純度、収量、およびスループット動作変数の組み合わせを考慮する。無次元パラメーターは、デバイスの定常状態品質を決定するが、デバイスのスタート・アップ品質も有用である。その理由は、これが、定常状態に到達するために必要とされる時間を決定し、そして、ラグ・タイムおよび廃棄物の形態の、デバイスの生産性を決定するからである。スタート・アップ・ダイナミクスは、シミュレーションおよび実験の両方を使用して分析され、これらの結果は、リアルタイム・フィードバック制御の実装形態によってスタート・アップ最適化を実施するために使用される。
【0092】
たとえば、上記に説明したような、システムを通る流体の移動の制御、ならびに、さまざまなパラメーターのモニタリングおよび制御など、本明細書で説明される本開示の態様は、プロセッサー、たとえば、中央処理装置を含む任意のタイプのコンピューティング・デバイス、たとえば、コンピューターまたはプログラマブル論理制御装置(PLC)などを使用して、または、それぞれのデバイスがプロセスもしくは方法の少なくとも一部を実施する、コンピューティング・デバイスの任意の組み合わせを使用して、実施され得る。いくつかの実施形態では、本明細書で説明されるシステムおよび方法は、ハンドヘルド・デバイス、たとえば、スマート・タブレット、スマート・フォン、または、システムのために作り出された特殊デバイスによって実施され得る。
【0093】
本開示の方法は、ソフトウェア、ハードウェア、ファームウェア、ハードワイヤリング、または、これらのうちのいずれかの組み合わせを使用して実施され得る。また、機能を実装する特徴は、さまざまな位置に物理的に位置することができ、それは、異なる物理的な場所において機能の一部分が実装されるように分配されることを含む(たとえば、たとえば、無線接続または有線接続によって、1つの部屋の中にイメージング装置を置き、別の部屋または別個の建物の中にホスト・ワークステーションを置く)。
【0094】
コンピューター・プログラムの実行のために適切なプロセッサーは、例として、汎用および特殊目的マイクロプロセッサーの両方、ならびに、任意の種類のデジタル・コンピューターの任意の1つまたは複数のプロセッサーを含む。一般的に、プロセッサーは、リード・オンリー・メモリーもしくはランダム・アクセス・メモリーまたはその両方から、命令およびデータを受け取る。コンピューターのエレメントは、命令を実行するためのプロセッサー、ならびに、命令およびデータを記憶するための1つまたは複数のメモリー・デバイスである。一般的に、コンピューターは、また、データを記憶するための1つまたは複数の非一時的な大容量記憶デバイス、たとえば、磁気ディスク、光磁気ディスク、または光ディスクを含むか、または、そこからデータを受け取るかもしくはそこへデータを転送するために、そこに動作可能に連結されているか、または、その両方である。コンピューター・プログラム命令およびデータを具現化するために適切な情報キャリアは、すべての形態の不揮発性のメモリーを含み、それは、例として、半導体メモリー・デバイス(たとえば、EPROM、EEPROM、ソリッド・ステート・ドライブ(SSD)、およびフラッシュ・メモリー・デバイス);磁気ディスク(たとえば、内部ハード・ディスクまたはリムーバブル・ディスク);光磁気ディスク;ならびに光ディスク(たとえば、CDおよびDVDディスク)を含む。プロセッサーおよびメモリーは、特殊目的論理回路によって補完され得るか、または、特殊目的論理回路の中に組み込まれ得る。
【0095】
ユーザーとの相互作用を提供するために、本明細書で説明される主題は、I/Oデバイスを有するコンピューターの上で実装され得、I/Oデバイスは、たとえば、CRT、LCD、LED、または、ユーザーに情報を表示するための投影デバイス、ならびに、キーボードおよびポインティング・デバイス(たとえば、マウスまたはトラックボール)などの入力または出力デバイスであり、それによってユーザーは入力をコンピューターに提供することが可能である。他の種類のデバイスも、同様に、ユーザーとの相互作用を提供するために使用され得る。たとえば、ユーザーに提供されるフィードバックは、任意の形態の感覚フィードバック(たとえば、視覚フィードバック、聴覚フィードバック、または触覚フィードバック)であることが可能であり、ユーザーからの入力は、音響入力、音声入力、または触覚入力を含む、任意の形態で受け取られ得る。
【0096】
本明細書で説明されている主題は、バック・エンド・コンポーネント(たとえば、データ・サーバー)、ミドルウェア・コンポーネント(たとえば、アプリケーション・サーバー)、もしくはフロント・エンド・コンポーネント(たとえば、グラフィカル・ユーザー・インターフェースまたはウェブ・ブラウザ(それを通して、ユーザーは、本明細書で説明されている主題の実装形態と相互作用することが可能である)を有するクライアント・コンピューター)、または、そのようなバック・エンド・コンポーネント、ミドルウェア・コンポーネント、およびフロント・エンド・コンポーネントの任意の組み合わせを含む、コンピューティング・システムの中で実装され得る。システムのコンポーネントは、デジタル・データ通信の任意の形態または媒体、たとえば、通信ネットワークなどによって、ネットワークを通して相互接続され得る。通信ネットワークの例は、セル・ネットワーク(たとえば、3Gまたは4G)、ローカル・エリア・ネットワーク(LAN)、およびワイド・エリア・ネットワーク(WAN)、たとえば、インターネットを含む。
【0097】
本明細書で説明される主題は、1つまたは複数のコンピューター・プログラム製品として実装可能であり、それは、たとえば、データ処理装置(たとえば、プログラマブル・プロセッサー、コンピューター、または複数のコンピューター)によって実行するために、または、その動作を制御するために、情報キャリアの中で(たとえば、非一時的なコンピューター可読媒体の中で)有形的に具現化された1つまたは複数のコンピューター・プログラムなどである。コンピューター・プログラム(プログラム、ソフトウェア、ソフトウェア・アプリケーション、アプリ、マクロ、またはコードとして知られる)は、コンパイル言語または解釈言語(たとえば、C、C++、Perl)を含む、任意の形態のプログラミング言語で書かれることができ、また、任意の形態で開発可能であり、スタンド・アロン・プログラムとして、または、モジュール、コンポーネント、サブルーチン、もしくはコンピューティング環境において使用するのに適切な他のユニットとして、展開されることを含む。本発明のシステムおよび方法は、それに限定されないが、C、C++、Perl、Java(登録商標)、アクティブX、HTML5、Visual Basic、またはJavaScript(登録商標)を含む、当技術分野において知られている任意の適切なプログラミング言語で書き込まれた命令を含むことが可能である。
【0098】
コンピューター・プログラムは、必ずしも、ファイルに対応しているわけではない。プログラムは、ファイル、または、ファイルの一部分の中に記憶可能であり、ファイルは、問題のプログラム専用の単一のファイルの中に、または、複数の協調ファイル(たとえば、1つまたは複数のモジュール、サブ・プログラム、または、コードの一部分を記憶するファイル)の中に、他のプログラムまたはデータを保持している。コンピューター・プログラムは、1つのコンピューターの上で実行されるように展開され得るか、もしくは、1つのサイトにおいて複数のコンピューターの上で実行されるように展開され得、または、複数のサイトにわたって分配され、通信ネットワークによって相互接続され得る。
【0099】
ファイルは、たとえば、ハードドライブ、SSD、CD、または、他の有形の非一時的な媒体の上に記憶される、デジタル・ファイルであることが可能である。ファイルは、ネットワーク(たとえば、ネットワーク・インターフェース・カード、モデム、ワイヤレス・カード、または類似物を通して、たとえば、サーバーからクライアントへ送られるパケットとして)を経由して、1つのデバイスから別のデバイスへ送られ得る。
【0100】
本発明の実施形態よるファイルの書き込みは、たとえば、粒子を追加、除去、または再配置することによって、有形の非一時的なコンピューター可読の媒体を変換することを伴い(たとえば、読み取り/書き込みヘッドによって、実効電荷または双極子モーメントを磁化のパターンへ)、パターンは、次いで、ユーザーによって望まれ、かつ、ユーザーに有用である、客観的物理現象についての情報の新しいコロケーションを表している。いくつかの実施形態では、書き込むことは、有形の非一時的なコンピューター可読媒体の中の材料の物理的な変換を伴う(たとえば、光学的な読み取り/書き込みデバイスが、次いで、情報の新しい有用なコロケーションを読み取ることができるように、特定の光学的な特性とともに、たとえば、CD-ROMに焼き付ける)。いくつかの実施形態では、ファイルに書き込むことは、NANDフラッシュ・メモリー・デバイスなどのような、物理的なフラッシュ・メモリー装置を変換することを含み、また、フローティング・ゲート・トランジスターから作製されるメモリー・セルのアレイの中の物理的なエレメントを変換することによって、情報を記憶することを含む。ファイルを書き込む方法は、当技術分野において周知であり、たとえば、手動でまたは自動的に、プログラムによって、または、ソフトウェアからの保存コマンド、もしくは、プログラミング言語からの書き込みコマンドによって、起動され得る。
【0101】
適切なコンピューティング・デバイスは、典型的に、大容量メモリーと、少なくとも1つのグラフィカル・ユーザー・インターフェースと、少なくとも1つのディスプレイ・デバイスとを含み、典型的に、デバイス同士の間の通信を含む。大容量メモリーは、あるタイプのコンピューター可読媒体、すなわち、コンピューター・ストレージ媒体を図示している。コンピューター・ストレージ媒体は、コンピューター可読命令、データ構造、プログラム・モジュール、または他のデータなどのような、情報の記憶のための任意の方法または技術の中で実装される、揮発性の媒体、不揮発性の媒体、リムーバブル媒体、および非リムーバブル媒体を含むことが可能である。コンピューター・ストレージ媒体の例は、RAM、ROM、EEPROM、フラッシュ・メモリー、または他のメモリー技術、CD-ROM、デジタル多用途ディスク(DVD)、または、他の光学ストレージ、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスク・ストレージ、または、他の磁気ストレージ・デバイス、無線周波数識別タグ、もしくはチップ、または、所望の情報を記憶するために使用でき、かつ、コンピューティング・デバイスによってアクセスされ得る、任意の他の媒体を含む。
【0102】
本発明の方法の実施のために必要であるかまたは最も適するものとして当業者に認識されるように、本発明の実施形態の中で用いられるコンピューター・システムまたはマシンは、1つまたは複数のプロセッサー(たとえば、中央処理装置(CPU)、グラフィック処理ユニット(GPU)、または、その両方)、メイン・メモリー、および静的なメモリーを含むことが可能であり、それらは、バスを介して互いに通信する。
【0103】
図10に示されている例示的な実施形態では、システム600は、コンピューター649(たとえば、ラップトップ、デスクトップ、またはタブレット)を含むことが可能である。コンピューター649は、ネットワーク609を横切って通信するように構成され得る。コンピューター649は、1つまたは複数のプロセッサー659およびメモリー663、ならびに、入力/出力メカニズム654を含む。本発明の方法がクライアント/サーバー・アーキテクチャーを用いる場合、本発明の方法の動作は、サーバー613を使用して実施可能であり、サーバー613は、プロセッサー621およびメモリー629のうちの1つまたは複数を含み、データ、命令などを取得することができ、または、インターフェース・モジュール625を介して結果を提供するか、または、ファイル617として結果を提供することができる。サーバー613は、コンピューター649または端末667を通してネットワーク609を経由して係合され得るか、または、サーバー613は、端末667に直接的に接続可能であり、端末667は、1つまたは複数のプロセッサー675およびメモリー679、ならびに、入力/出力メカニズム671を含む。
【0104】
本発明の例示的な実施形態によるシステム600またはマシンは、任意のI/O649、637、または671のいずれかに関して、ビデオ・ディスプレイ・ユニット(たとえば、液晶ディスプレイ(LCD)または陰極線管(CRT))をさらに含むことが可能である。また、いくつかの実施形態によるコンピューター・システムまたはマシンは、英数字入力デバイス(たとえば、キーボード)、カーソル制御デバイス(たとえば、マウス)、ディスク・ドライブ・ユニット、信号発生デバイス(たとえば、スピーカー)、タッチスクリーン、加速度計、マイクロホン、セルラー無線周波数アンテナ、および、ネットワーク・インターフェース・デバイスを含むことが可能であり、それは、たとえば、ネットワーク・インターフェース・カード(NIC)、Wi-Fiカード、またはセルラー・モデムであることが可能である。
【0105】
本発明の例示的な実施形態によるメモリー663、679、または629は、機械可読媒体を含むことが可能であり、本明細書で説明されている方法論または機能のうちの任意の1つまたは複数を具現化する、1つまたは複数のセットの命令(たとえば、ソフトウェア)が、機械可読媒体の上に記憶される。また、ソフトウェアは、完全にまたは少なくとも部分的に、メイン・メモリーの中に、および/または、コンピューター・システムによるその実行の間にプロセッサーの中に、存在することが可能であり、メイン・メモリーおよびプロセッサーは、また、機械可読媒体を構成している。ソフトウェアは、ネットワーク・インターフェース・デバイスを介して、ネットワークを経由して、さらに送信または受信され得る。
【0106】
参照による組み込み
特許、特許出願、特許刊行物、雑誌、書籍、論文、ウェブ・コンテンツなどのような、他の文献への参照および引用が、本開示の全体を通して行われた。すべてのそのような文献は、すべての目的のために、その全体が参照により本明細書に組み込まれている。
【0107】
均等物
本発明は特定の実施形態に関連して説明されてきたが、先述の明細書を読んだ後に、当業者は、本明細書で記述されている組成および方法に対するさまざまな変形例、均等物の置換例、および、他の代替例を実現することができる。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図5
図6
図7
図8
図9
図10