(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024006312
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】フロントローダの操作補助装置
(51)【国際特許分類】
E02F 9/26 20060101AFI20240110BHJP
E02F 9/20 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
E02F9/26 B
E02F9/20 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022107087
(22)【出願日】2022-07-01
(71)【出願人】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092794
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 正道
(72)【発明者】
【氏名】織田 湧平
【テーマコード(参考)】
2D003
2D015
【Fターム(参考)】
2D003AA01
2D003BA06
2D003CA02
2D003DA02
2D003DA04
2D003DB04
2D003DB05
2D003FA02
2D015HA03
2D015HB04
2D015HB05
(57)【要約】
【課題】本発明は、フロントローダの操縦操作を楽に行えるようにすることが課題である。
【解決手段】トラクタTの前部に伸ばすブーム1の先端にバケット4を設けたフロントローダの操作補助装置において、測位装置26で測位する機体位置をモニタ25の地図上に表示し、さらにその地図に入力する移動地点44を中心にした適宜広さの放出エリア44Sを設定すると、該放出エリア44Sをバケット4の積載面積4Sで分割して分割放出地44Aを示し、さらに物資を山状に積み上げるに必要な分割放出地44Aの放出順位を表示することを特徴とするフロントローダの操作補助装置とする。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トラクタ(T)の前部に伸ばすブーム(1)の先端にバケット(4)を設けたフロントローダの操作補助装置において、測位装置(26)で測位する機体位置をモニタ(25)の地図上に表示し、さらにその地図に入力する移動地点(44)を中心にした適宜広さの放出エリア(44S)を設定すると、該放出エリア(44S)をバケット(4)の積載面積(4S)で分割して分割放出地(44A)を示し、さらに物資を山状に積み上げるに必要な分割放出地(44A)の放出順位を表示することを特徴とするフロントローダの操作補助装置。
【請求項2】
バケット(4)への物資の掬い込みを検出するバケットセンサ(6)を設け、該バケットセンサ(6)が物資の掬い上げを検出すると、放出順位で分割放出地(44A)をモニタ(25)に表示する請求項1に記載のフロントローダの操縦補助装置。
【請求項3】
バケット(4)から物資の放出を検出するバケットセンサ(6)を設け、バケットセンサ(6)で物資の放出を検出すると次回分割放出地(44A)をモニタ(25)に表示する請求項1に記載のフロントローダの操作補助装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗用トラックタの機体前部に装着したフロントローダの操作補助装置に関する。
【背景技術】
【0002】
フロントローダは、特開2006-152707号公報に記載されているように、乗用トラックタの機体前部に伸ばすブーム先端のバケットを昇降させて、土砂や堆肥等の物資を移動する作業に使用する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
フロントローダは機体の前方に伸ばしたブームの先端に設けるバケットを昇降回動させて土砂等の物資を掬い上げて移動し、所定の位置で物資を放出して山状に積み上げるが、ブーム先端に設けるバケットを操作して物資を掬って移動し所定位置で放出して山状に積み上げる操縦操作には熟練を要する。
【0005】
本発明は、フロントローダの操縦操作を楽に行えるようにするフロントローダの操作補助装置を提供することが課題である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記本発明の課題は、次の技術手段により解決される。
【0007】
請求項1の発明は、トラクタTの前部に伸ばすブーム1の先端にバケット4を設けたフロントローダの操作補助装置において、測位装置26で測位する機体位置をモニタ25の地図上に表示し、さらにその地図に入力する移動地点44を中心にした適宜広さの放出エリア44Sを設定すると、該放出エリア44Sをバケット4の積載面積4Sで分割して分割放出地44Aを示し、さらに物資を山状に積み上げるに必要な分割放出地44Aの放出順位を表示することを特徴とするフロントローダの操作補助装置とする。
【0008】
請求項2の発明は、バケット4への物資の掬い込みを検出するバケットセンサ6を設け、該バケットセンサ6が物資の掬い上げを検出すると、放出順位で分割放出地44Aをモニタ25に表示する請求項1に記載のフロントローダの操縦補助装置とする。
【0009】
請求項3の発明は、バケット4から物資の放出を検出するバケットセンサ6を設け、バケットセンサ6で物資の放出を検出すると次回分割放出地44Aをモニタ25に表示する請求項1に記載のフロントローダの操作補助装置とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の発明で、トラクタTを操縦する作業者は、モニタ25の作業地地図に表示される移動地点44に向かってトラクタTを走行して、移動地点44の放出エリア44S内に示される分割放出地44Aの放出順位に順って放出する作業を繰り返すことで、物資の放出位置に迷うことなく、放出エリア44Sに物資を山状に積み上げて安定した載置状態に出来る。
【0011】
請求項2の発明で、バケット4で物資を掬い上げるとバケットセンサ6が検出してモニタ25に放出順位にしたがった分割放出地44Aが表示されるので、トラクタTを操縦する作業者はモニタ25を見ながら放出地44Aに向かって走行してバケット4の放出操作を行えば良く、迷うことなく迅速に作業を行える。
【0012】
請求項3の発明で、バケット4を下方へ回動して物資を放出する動作がバケットセンサ6で検出されると、次回の分割放出地44Aがモニタ25に表示され、物資の移動作業を効率よく継続できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施形態にかかるトラクタの全体右側面図。
【
図2】同トラクタの操縦席周囲の各種操作具を示す平面図。
【
図4】同トラクタのコントローラの制御ブロック図。
【
図5】同トラクタにおける作業地の地図を示すモニタの画面。
【
図6】同トラクタにおける作業開始時のモニタ画面。
【
図7】同トラクタにおける移動放出地の拡大モニタ画面。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、フロントローダを農業用トラクタ(以下、トラクタT)に搭載した形態について説明する。
【0015】
最初にトラクタTの構成について説明する。
【0016】
トラクタTは、
図1、
図3に示すように、ボンネット14内部にエンジン13を備え、このエンジン13の回転動力をミッションケース16内の各種変速装置で適宜減速した後、左右後輪18、または左右前後輪17,18へ伝達して走行する構成となっている。
【0017】
また、トラクタTの操縦席20の前方には、前記前輪17を操舵するステアリングハンドル22を操縦ヘッド19に突出して設け、この下方に車両の前後進を切り替える前後進切替レバー21やエンジン13の回転数を調節するアクセルレバー等を設けている。また前記前後進切替レバー21の回動基部には、同レバー21の操作位置を検出するレバー位置センサ42を設けると共に、このセンサ情報を操縦席20下方のコントローラC(制御手段)へ入力する構成となっている。
【0018】
また前記操縦席20の側方には、
図2に示すように、変速レバー10、設定スイッチ8Aと復帰スイッチ8Bから成るスイッチ式操作具8、更にはフロントローダのブーム1を上下回動操作、及びバケット4を上下回動操作する十字レバー7を設け、同レバー基部にも左右前後の傾倒操作を検出するレバー位置センサ6を設け、前記コントローラCへ接続している。
【0019】
またトラクタTのボンネット14左右両側方には、ローダ装着ブラケット27を取り付け、同ブラケット27の後部にブーム支持フレーム28を立設し、この支持フレーム28の上端部に前方へ伸びるブーム1を横軸29Aで上下回動自在に取り付ける構成となっている。またこのブーム1と前記ブーム支持フレーム28との間には、昇降用アクチュエータとなるブーム昇降用シリンダ2を介装し、このシリンダ2のピストンの伸縮操作により前記ブーム1を上下回動操作する構成となっている。
【0020】
また前記ブーム1の横軸29A近傍には、同ブーム1の回動位置を検出するポテンショメータ式のブームセンサ3を設けている。また前記ブーム1の先端部には、バケット4を回動軸30で枢支して上下回動自在に取り付けると共に、同バケット4と前記ブーム1との間に、バケット回動用アクチュエータとなるバケット回動用シリンダ5及びリンク機構31,32を介装し、このシリンダ5のピストンの伸縮操作により前記バケット4を上下に操作する構成となっている。また前記バケット4の回動軸30近傍には、同バケット4の物資積載と放出を検出するバケットセンサ6を設けている。バケット4は、横幅4aと縦幅4bで示される平面面積が積載面積4Sとなる。
【0021】
また前記ブーム昇降用シリンダ2とバケット回動用シリンダ5は、油圧回路中のブーム昇降用制御弁のソレノイド36a,36b、及びバケット回動用制御弁のソレノイド37a,37bへの通電操作により駆動する共に、この通電量により駆動速度を調整する構成となっている。
【0022】
さらに、トラクタTのキャビン24の天板上に測位衛星からの電波を受けて機体位置を認識する測位装置26を設け、キャビン24内のステアリングハンドル22上に設けるモニタ25に現在地地図と共に機体位置を表示する。
【0023】
以上のように構成したトラクタTに備えたフロントローダでは、前記十字レバー7を前方へ倒すと、前記ブーム昇降用シリンダ2のピストンが短縮してブーム1が下方へ下がり、同十字レバー7を後方へ倒すと、ブーム昇降用シリンダ2のピストンが伸長してブーム1が上方へ上がり、また同十字レバー7を内方へ倒すと、前記バケット回動用シリンダ5のピストンが伸長してバケット4を土砂等、積載物をダンプする方向へ、即ち下方へ向かって回動し、前記レバー7を外側へ倒すと、前記バケット回動用シリンダ5のピストンが短縮してバケット4を土砂等、積載物を掬う方向、即ち上方へ向かって回動する。
【0024】
次にフロントローダの制御構成に付いて
図4の制御ブロック図で説明する。前記コントローラCは、ローダ制御用コントローラ35とエンジン制御用コントローラ47から成り、それぞれ内部に各種情報を処理するCPUと、制御プログラムを格納したROM、これらセンサや設定器の情報を一時記憶するEEPROM等を備える構成となっている。そして、前記ローダ制御用コントローラ35は、この入力部に、前記設定スイッチ8A、復帰スイッチ8B、ブームセンサ3、バケットセンサ6、車軸回転センサ43、前後進レバー位置センサ42、自動スイッチ45、測位装置26等を接続して設けている。また出力部には、ブーム昇降用の制御弁のソレノイド36a,36b、及びバケット回動用制御弁のソレノイド37a,37b、モニタ25を接続して設けている。
【0025】
また前記エンジン制御用コントローラ47は、前記ローダ制御用コントローラ35と通信ラインを介して接続され、携帯電話機48との通信手段(受信器50と送信機51)と、この出力部にエンジン始動スイッチ49を備える構成となっている。
【0026】
以上のように構成したトラクタTで、フロントローダの操作補助としてのモニタ25に
図5の作業地地図が表示される。
【0027】
まず、土砂の採取地39から移動地40へトラクタTのフロントローダで移動する地図がモニタ25に表示され、移動地40の地図上の移動ポイント44を作業者が画面タッチで入力するとその移動ポイント44を中心とした放出エリア44Sが自動で表示される。
【0028】
採取地42で土砂をバケット4に掬い取るとバケットセンサ6で検出し、移動地43の移動ポイント44に土砂を山形状に積み上げるに適した分割放出地44Aが移動地点44の中心から周囲に向かう順番で点灯或いは点滅によって表示されるので、作業者はトラクタTを操縦してその分割放出地44Aに向けて走行し、バケット4を下方へ回動して土砂を放出する。
【0029】
図6は、モニタ25の初期拡大図で、トラクタTが▲で示され、移動地点44の方向が方向マークSで表示されるが、移動地点44が画面から外れている場合は画面端に移動地点44の方向が表示される。
【0030】
図7は、移動地40の拡大図で、移動地点44を作業者が画面タッチで入力するとその移動ポイント44を中心とした放出エリア44Sが自動で表示される。また、この放出エリア44Sは、バケット4の横幅4aと縦幅4bで示される積載面積4Sで仕切られて番号を付された分割放出地44Aとして分割表示される。この分割放出地44Aが物資を山状に積み上げるに適した順番に自動で点灯表示或いは点滅表示されるようになる
【符号の説明】
【0031】
T トラクタ
1 ブーム
4 バケット
4S 積載面積
6 バケットセンサ
25 モニタ
26 測位装置
44 移動地点
44A 分割放出地
44S 放出エリア