(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024063121
(43)【公開日】2024-05-10
(54)【発明の名称】混合ガス分離方法および混合ガス分離装置
(51)【国際特許分類】
B01D 71/02 20060101AFI20240501BHJP
B01D 53/22 20060101ALI20240501BHJP
B01D 61/58 20060101ALI20240501BHJP
【FI】
B01D71/02 500
B01D53/22
B01D61/58
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024029675
(22)【出願日】2024-02-29
(62)【分割の表示】P 2022573914の分割
【原出願日】2021-10-05
(31)【優先権主張番号】P 2021001673
(32)【優先日】2021-01-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110847
【弁理士】
【氏名又は名称】松阪 正弘
(74)【代理人】
【識別番号】100136526
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 勉
(74)【代理人】
【識別番号】100136755
【弁理士】
【氏名又は名称】井田 正道
(72)【発明者】
【氏名】野田 憲一
(57)【要約】 (修正有)
【課題】低濃度のCO
2を含む混合ガスから、非常に高い選択性でCO
2を分離できる分離方法および装置を提供する。
【解決手段】分離方法は、少なくともN
2、H
2およびCO
2を含むとともにCO
2濃度が30体積%以下である混合ガスを、H
2を選択的に透過する第1分離膜(310)に供給し、第1透過ガスと第1非透過ガスとに分離する工程と、第1非透過ガスを、CO
2を選択的に透過する第2分離膜(320)に供給し、第2透過ガスと第2非透過ガスとに分離する工程と、膜分離法以外の分離方法にてCO
2を分離して回収するCO
2回収部(33)に第2非透過ガスを供給し、第2非透過ガス中のCO
2を回収する工程とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
混合ガス分離方法であって、
a)少なくともN2、H2およびCO2を含むとともにCO2濃度が30体積%以下である混合ガスを、H2を選択的に透過する第1分離膜に供給し、前記第1分離膜を透過した第1透過ガスと、前記第1分離膜を透過しなかった第1非透過ガスとに分離する工程と、
b)前記第1非透過ガスを、CO2を選択的に透過する第2分離膜に供給し、前記第2分離膜を透過した第2透過ガスと、前記第2分離膜を透過しなかった第2非透過ガスとに分離する工程と、
を備え、
前記第1非透過ガス中のCO2濃度は、前記混合ガス中のCO2濃度よりも5体積%以上高く、
前記第2非透過ガス中のN2濃度は50体積%以上であり、
前記第2非透過ガス中のH2濃度は30体積%以下である混合ガス分離方法。
【請求項2】
請求項1に記載の混合ガス分離方法であって、
前記第2分離膜によるCO2回収率は70%以上である混合ガス分離方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の混合ガス分離方法であって、
前記第2非透過ガス中のN2濃度は60体積%以上であり、
前記第2非透過ガス中のCO2濃度は30体積%以下である混合ガス分離方法。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1つに記載の混合ガス分離方法であって、
前記第2透過ガス中のCO2濃度は97体積%以上である混合ガス分離方法。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1つに記載の混合ガス分離方法であって、
前記a)工程において前記第1分離膜に供給される前記混合ガスの圧力は1.5MPaG以上である混合ガス分離方法。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1つに記載の混合ガス分離方法であって、
前記第1分離膜のH2/CO2選択性は100以上であり、
前記第2分離膜のCO2/H2選択性は100以上である混合ガス分離方法。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか1つに記載の混合ガス分離方法であって、
前記第1分離膜および前記第2分離膜のうち少なくとも一方はゼオライト膜である混合ガス分離方法。
【請求項8】
混合ガス分離装置であって、
H2を選択的に透過する第1分離膜と、
CO2を選択的に透過する第2分離膜と、
少なくともN2、H2およびCO2を含むとともにCO2濃度が30体積%以下である混合ガスを前記第1分離膜に供給する混合ガス供給部と、
前記混合ガスのうち前記第1分離膜を透過しなかった第1非透過ガスを前記第2分離膜へと導く第1非透過ガス流路と、
前記第1非透過ガス流路を介して前記第2分離膜に供給された前記第1非透過ガスのうち、前記第2分離膜を透過しなかった第2非透過ガスを排出する第2非透過ガス流路と、
を備え、
前記第1非透過ガス中のCO2濃度は、前記混合ガス中のCO2濃度よりも5体積%以上高く、
前記第2非透過ガス中のN2濃度は50体積%以上であり、
前記第2非透過ガス中のH2濃度は30体積%以下である混合ガス分離装置。
【請求項9】
請求項8に記載の混合ガス分離装置であって、
前記第2分離膜によるCO2回収率は70%以上である混合ガス分離装置。
【請求項10】
請求項8または9に記載の混合ガス分離装置であって、
前記第2非透過ガス中のN2濃度は60体積%以上であり、
前記第2非透過ガス中のCO2濃度は30体積%以下である混合ガス分離装置。
【請求項11】
請求項8ないし10のいずれか1つに記載の混合ガス分離装置であって、
前記第2分離膜を透過した第2透過ガス中のCO2濃度は97体積%以上である混合ガス分離装置。
【請求項12】
請求項8ないし11のいずれか1つに記載の混合ガス分離装置であって、
前記第1分離膜に供給される前記混合ガスの圧力は1.5MPaG以上である混合ガス分離装置。
【請求項13】
請求項8ないし12のいずれか1つに記載の混合ガス分離装置であって、
前記第1分離膜のH2/CO2選択性は100以上であり、
前記第2分離膜のCO2/H2選択性は100以上である混合ガス分離装置。
【請求項14】
請求項8ないし13のいずれか1つに記載の混合ガス分離装置であって、
前記第1分離膜および前記第2分離膜のうち少なくとも一方はゼオライト膜である混合ガス分離装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、混合ガスを分離する技術に関する。
[関連出願の参照]
本願は、2021年1月7日に出願された日本国特許出願JP2021-001673からの優先権の利益を主張し、当該出願の全ての開示は、本願に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
近年、石炭火力発電の高効率化のため、石炭ガス化複合発電の研究・開発が行われている。石炭ガス化複合発電では、石炭のガス化により生成されるガスに含まれる二酸化炭素(CO2)を分離して回収することが求められる。しかしながら、生成されるガスが多量であるため、アミン吸収液を用いる化学吸収法によりCO2の回収を行うと、回収用の設備が大型化し、建設コストや運転コストが増大する。そこで、ゼオライト膜等の分離膜を用いて、CO2を低コストで分離して回収することが検討されている。
【0003】
また、石炭ガス化複合発電には、石炭のガス化の際に酸素を用いる酸素吹きと、空気を用いる空気吹きとがある。酸素吹きの場合は、石炭を容易にガス化することができるが、空気中から酸素を抽出するプラントが別途必要となる。これに対し、空気吹きの場合は、酸素抽出プラントが不要であるため、酸素吹きに比べて発電プラントの建設コストや運転コストを低減することができる。なお、空気吹きの石炭ガス化複合発電では、石炭のガス化により生成されたガス中に比較的高濃度の窒素(N2)を含むため、CO2の濃度は低くなる。このような低濃度のCO2を含むガスから、分離膜によりCO2を分離させる場合、非常に高い選択性を有する分離膜が必要となる。
【0004】
一方、分離膜によりCO2を分離する技術の例として、特開2008-247632号公報(文献1)および特開2009-029674号公報(文献2)では、化石燃料を原料として製品水素を製造し、副生されるCO2を分離して回収する装置が提案されている。具体的には、当該装置では、化石燃料を水蒸気改質してH2およびCO2を含有する混合ガスを生成し、当該混合ガスを水素分離膜に供給してH2を分離して回収し、水素分離膜のオフガスを二酸化炭素分離膜に供給してCO2を分離して回収する。当該装置では、水素分離膜を透過した水素富化ガスを還流させて上記混合ガスに合流させることにより、H2の収率向上が図られている。
【0005】
また、特開2014-001109号公報(文献3)では、水蒸気改質により得られたH2およびCO2を含有する混合ガスを、交互に配置された複数の水素分離膜モジュールおよび複数の二酸化炭素分離膜モジュールを順番に通過させることにより、H2およびCO2をそれぞれ分離して回収する装置が提案されている。
【0006】
ところで、化石燃料を水蒸気改質して得られた混合ガスの主成分はH2およびCO2であり、当該混合ガス中のH2濃度およびCO2濃度は高い。文献1、文献2および文献3では、このような高濃度のH2およびCO2を含む混合ガスからのH2およびCO2の分離を前提としているため、上述の空気吹きの石炭ガス化複合発電のようにCO2濃度が低い混合ガスからCO2を効率良く分離することはできない。
【0007】
また、文献1および文献2の装置では、上述のように、混合ガス中のCO2濃度が高いため、当該混合ガスを水素分離膜に供給した際に、CO2により水素分離膜の透過性能が阻害されてH2を効率良く分離することが困難となるおそれがある。したがって、水素分離膜オフガス中のH2濃度が比較的高くなるため、後段のCO2回収設備等において防爆構造等が必要となり、装置構造が複雑化して高コストとなるおそれがある。なお、引用文献1では、水素分離膜におけるH2/CO2選択性は約10であり、二酸化炭素分離膜におけるCO2/H2選択性は約30であり、双方共にあまり高くない。したがって、分離されるCO2濃度もあまり高くないため、当該CO2をCCS(Carbon dioxide Capture and Storage)等で処理しようとすると、回収後のCO2の濃縮が必要となる。
【0008】
文献3の装置では、分離膜のみによりH2およびCO2を分離して回収しているため、回収率の増大に限界がある。また、当該装置において、分離膜モジュールよりも後段に分離膜以外のCO2回収設備を設けて回収率増大を図ると仮定したとしても、どのような組成のガスを当該CO2回収設備に導入するかについて記載も示唆もされていないため、回収率の増大に寄与するか不明である。さらに、当該装置では、水素分離膜モジュールおよび二酸化炭素分離膜モジュールをそれぞれ複数設ける必要があるため、装置構造が複雑化して高コストとなるおそれがある。
【発明の概要】
【0009】
本発明は、混合ガス分離方法に向けられており、低濃度のCO2を含むガスからCO2を効率良く分離させることを目的としている。
【0010】
本発明の好ましい一の形態に係る混合ガス分離方法は、a)少なくともN2、H2およびCO2を含むとともにCO2濃度が30体積%以下である混合ガスを、H2を選択的に透過する第1分離膜に供給し、前記第1分離膜を透過した第1透過ガスと、前記第1分離膜を透過しなかった第1非透過ガスとに分離する工程と、b)前記第1非透過ガスを、CO2を選択的に透過する第2分離膜に供給し、前記第2分離膜を透過した第2透過ガスと、前記第2分離膜を透過しなかった第2非透過ガスとに分離する工程と、を備える。前記第1非透過ガス中のCO2濃度は、前記混合ガス中のCO2濃度よりも5体積%以上高い。前記第2非透過ガス中のN2濃度は50体積%以上である。前記第2非透過ガス中のH2濃度は30体積%以下である。
【0011】
本発明によれば、低濃度のCO2を含むガスからCO2を効率良く分離させることができる。
【0012】
好ましくは、第2分離膜によるCO2回収率は70%以上である。
【0013】
好ましくは、前記第2非透過ガス中のN2濃度は60体積%以上であり、前記第2非透過ガス中のCO2濃度は30体積%以下である。
【0014】
好ましくは、前記第2透過ガス中のCO2濃度は97体積%以上である。
【0015】
好ましくは、前記a)工程において前記第1分離膜に供給される前記混合ガスの圧力は1.5MPaG以上である。
【0016】
好ましくは、前記第1分離膜のH2/CO2選択性は100以上であり、前記第2分離膜のCO2/H2選択性は100以上である。
【0017】
好ましくは、前記第1分離膜および前記第2分離膜のうち少なくとも一方はゼオライト膜である。
【0018】
本発明は、混合ガス分離装置にも向けられている。本発明の好ましい一の形態に係る混合ガス分離装置は、H2を選択的に透過する第1分離膜と、CO2を選択的に透過する第2分離膜と、少なくともN2、H2およびCO2を含むとともにCO2濃度が30体積%以下である混合ガスを前記第1分離膜に供給する混合ガス供給部と、前記混合ガスのうち前記第1分離膜を透過しなかった第1非透過ガスを前記第2分離膜へと導く第1非透過ガス流路と、前記第1非透過ガス流路を介して前記第2分離膜に供給された前記第1非透過ガスのうち、前記第2分離膜を透過しなかった第2非透過ガスを排出する第2非透過ガス流路と、を備える。前記第1非透過ガス中のCO2濃度は、前記混合ガス中のCO2濃度よりも5体積%以上高い。前記第2非透過ガス中のN2濃度は50体積%以上である。前記第2非透過ガス中のH2濃度は30体積%以下である。
【0019】
好ましくは、第2分離膜によるCO2回収率は70%以上である。
【0020】
好ましくは、前記第2非透過ガス中のN2濃度は60体積%以上であり、前記第2非透過ガス中のCO2濃度は30体積%以下である。
【0021】
好ましくは、前記第2透過ガス中のCO2濃度は97体積%以上である。
【0022】
好ましくは、前記第1分離膜に供給される前記混合ガスの圧力は1.5MPaG以上である。
【0023】
好ましくは、前記第1分離膜のH2/CO2選択性は100以上であり、前記第2分離膜のCO2/H2選択性は100以上である。
【0024】
好ましくは、前記第1分離膜および前記第2分離膜のうち少なくとも一方はゼオライト膜である。
【0025】
上述の目的および他の目的、特徴、態様および利点は、添付した図面を参照して以下に行うこの発明の詳細な説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】一の実施の形態に係る混合ガス分離装置の構成を示す図である。
【
図3】第1分離膜モジュールの構成を示す断面図である。
【
図5】分離膜複合体の一部を拡大して示す断面図である。
【
図6】第2分離膜モジュールの構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1は、本発明の一の実施の形態に係る混合ガス分離装置3の構成を示す図である。
図1では、混合ガス分離装置3の各構成を模式的に描いている。混合ガス分離装置3は、窒素(N
2)、水素(H
2)および二酸化炭素(CO
2)を含む混合ガスからH
2およびCO
2をそれぞれ分離する装置である。当該混合ガス中のCO
2濃度は、30体積%以下であり、上述のように、化石燃料を水蒸気改質して得られたガス中のCO
2濃度よりも低い。当該混合ガスは、例えば、石炭のガス化の際に空気を用いる空気吹きの石炭ガス化複合発電(IGCC:Integrated coal Gasification Combined Cycle)において、石炭のガス化とシフト反応とにより生成されるガスである。なお、混合ガスは、当該ガス以外の様々なガスであってよい。
【0028】
混合ガス分離装置3は、第1分離膜モジュール31と、第2分離膜モジュール32と、CO2回収部33と、混合ガス供給部34と、第1透過ガス流路311と、第1非透過ガス流路312と、第2透過ガス流路321と、第2非透過ガス流路322と、回収流路331と、排出流路332とを備える。
【0029】
混合ガス供給部34は、第1分離膜モジュール31に接続されている。混合ガス供給部34は、例えば、第1分離膜モジュール31に向けて混合ガスを圧送するブロワまたはポンプ等の圧送機構を備える。当該圧送機構は、例えば、第1分離膜モジュール31に供給する混合ガスの温度および圧力をそれぞれ調節する温度調節部および圧力調節部を備える。第1分離膜モジュール31と第2分離膜モジュール32とは、第1非透過ガス流路312により接続されている。第2分離膜モジュール32とCO2回収部33とは、第2非透過ガス流路322により接続されている。
【0030】
第1分離膜モジュール31は、H2を選択的に透過する第1分離膜310(すなわち、H2分離膜)を備える。第2分離膜モジュール32は、CO2を選択的に透過する第2分離膜320(すなわち、CO2分離膜)を備える。第1分離膜モジュール31および第2分離膜モジュール32の具体的な構造は後述する。第1分離膜310のH2/CO2選択性(すなわち、単位膜面積・単位圧力差あたりのH2の透過速度(パーミアンス)を単位膜面積・単位圧力差あたりのCO2の透過速度により除算した透過速度比)は、好ましくは100以上であり、より好ましくは150以上である。第2分離膜320のCO2/H2選択性(すなわち、単位膜面積・単位圧力差あたりのCO2の透過速度を単位膜面積・単位圧力差あたりのH2の透過速度により除算した透過速度比)は、好ましくは100以上であり、より好ましくは150以上である。また、第1分離膜310のH2/CO2選択性の上限は、特に限定されないが、現実的な範囲を考慮すると350以下である。第2分離膜320のCO2/H2選択性の上限も、特に限定されないが、現実的な範囲を考慮すると350以下である。なお、第1分離膜310のH2の透過速度およびCO2の透過速度、並びに、第2分離膜320のH2の透過速度およびCO2の透過速度は、それぞれの膜が実際に使用される条件下での値である。
【0031】
CO2回収部33は、膜分離法以外の分離方法にてCO2を分離して回収する。CO2回収部33におけるCO2分離方法としては、例えば、化学吸収法、物理吸収法、吸着法および/または固体吸収法が採用可能である。本実施の形態では、CO2回収部33におけるCO2分離方法は、化学吸収法(例えば、アミン溶液を用いた化学吸収法)である。
【0032】
図2は、混合ガス分離装置3における上記混合ガスの分離の流れを示す図である。混合ガス分離装置3では、まず、混合ガス供給部34により、N
2、H
2およびCO
2を含む上述の混合ガスが第1分離膜モジュール31の第1分離膜310へと供給される(ステップS11)。第1分離膜モジュール31に供給される混合ガスの圧力は、例えば、1MPaG~10MPaGであり、好ましくは1.5MPaG以上である。当該混合ガスの温度は、例えば、10℃~250℃である。混合ガス中のN
2濃度は、例えば10体積%~50体積%である。混合ガス中のH
2濃度は、例えば10体積%~70体積%である。混合ガス中のCO
2濃度は、例えば10体積%~30体積%である。なお、混合ガスは、少なくともN
2、H
2およびCO
2を含んでいれば、他のガスを含んでいてもよい。
【0033】
第1分離膜モジュール31では、混合ガス中のH2が第1分離膜310を透過することにより混合ガスから分離される。第1分離膜310を透過したガス(H2を主成分とするガスであり、以下、「第1透過ガス」とも呼ぶ。)には、H2以外のガス(例えば、N2および/またはCO2)が含まれていてもよい。第1分離膜310は、混合ガスを、第1透過ガスと、第1透過ガスが分離された残りのガス(すなわち、混合ガスのうち第1分離膜310を透過しなかったガスであり、以下、「第1非透過ガス」とも呼ぶ。)とに分離させる(ステップS12)。第1非透過ガスには、第1分離膜310を透過しなかったH2が含まれていてもよい。
【0034】
第1透過ガスは、第1透過ガス流路311により第1分離膜モジュール31から外部へと導出される。
図1に示す例では、第1透過ガス流路311は、CO
2回収部33の排出流路332に合流しており、第1透過ガスは、CO
2回収部33から排出流路332を介して排出されるガス(主に、N
2およびH
2)と合流した後、混合ガス分離装置3の外部の装置(例えば、発電用のガスタービン)へと送出される。
【0035】
第1透過ガス中のH2濃度は、混合ガス中のH2濃度よりも高い。第1透過ガス中のH2濃度は、例えば80体積%~100体積%であり、好ましくは90体積%以上である。第1透過ガス中のN2濃度は、例えば0体積%~5体積%である。第1透過ガス中のCO2濃度は、例えば0体積%~15体積%である。また、第1透過ガスの圧力は、例えば、0MPaG~1MPaGである。
【0036】
第1非透過ガスは、第1非透過ガス流路312により第1分離膜モジュール31から第2分離膜モジュール32の第2分離膜320へと供給される(ステップS13)。第2分離膜モジュール32に供給される第1非透過ガスの圧力は、例えば、第1分離膜モジュール31に供給される混合ガスの圧力と略同じである。上述のように、第1分離膜310により混合ガス中のH2が選択的に透過されているため、第1非透過ガス中のH2濃度は、混合ガス中のH2濃度よりも低い。第1非透過ガス中のH2濃度は、例えば1体積%~25体積%である。また、第1非透過ガス中のCO2濃度は、混合ガス中のCO2濃度よりも5体積%以上高い。第1非透過ガス中のCO2濃度は、例えば30体積%~50体積%である。第1非透過ガス中のN2濃度は、例えば、混合ガス中のN2濃度より高い。第1非透過ガス中のN2濃度は、例えば20体積%~70体積%である。
【0037】
第2分離膜モジュール32では、第1非透過ガス中のCO2が第2分離膜320を透過することにより第1非透過ガスから分離される。第2分離膜320を透過したガス(CO2を主成分とするガスであり、以下、「第2透過ガス」とも呼ぶ。)には、CO2以外のガス(例えば、N2および/またはH2)が含まれていてもよい。第2分離膜320は、第1非透過ガスを、第2透過ガスと、第2透過ガスが分離された残りのガス(すなわち、第1非透過ガスのうち第2分離膜320を透過しなかったガスであり、以下、「第2非透過ガス」とも呼ぶ。)とに分離させる(ステップS14)。第2非透過ガスには、第2分離膜320を透過しなかったCO2が含まれている。
【0038】
第2透過ガスは、第2透過ガス流路321により第2分離膜モジュール32から外部へと導出される。
図1に示す例では、第2透過ガス流路321は、CO
2回収部33の回収流路331に合流しており、第2透過ガスは、CO
2回収部33から回収流路331により導出されるガス(主に、CO
2)と合流した後、混合ガス分離装置3の外部の装置(例えば、CCS(Carbon dioxide Capture and Storage)用の貯留設備)へと送出される。
【0039】
第2透過ガス中のCO2濃度は、第1非透過ガス中のCO2濃度よりも高い。第2透過ガス中のCO2濃度は、例えば90体積%~100体積%であり、好ましくは97体積%以上である。第2透過ガス中のN2濃度は、例えば0体積%~2体積%である。第2透過ガス中のH2濃度は、例えば0体積%~10体積%である。また、第2透過ガスの圧力は、例えば、0MPaG~1MPaGである。
【0040】
第2非透過ガスは、第2非透過ガス流路322により第2分離膜モジュール32からCO2回収部33へと供給される(ステップS15)。CO2回収部33に供給される第2非透過ガスの圧力は、例えば、第1分離膜モジュール31に供給される混合ガスの圧力、および、第2分離膜モジュール32に供給される第1非透過ガスの圧力と略同じである。上述のように、第2分離膜320により第1非透過ガス中のCO2が選択的に透過されているため、第2非透過ガス中のCO2濃度は、第1非透過ガス中のCO2濃度よりも低い。第2非透過ガス中のCO2濃度は、例えば5体積%~40体積%であり、好ましくは30体積%以下である。また、例えば、第2非透過ガス中のN2濃度およびH2濃度はそれぞれ、第1非透過ガス中のN2濃度およびH2濃度よりも高い。第2非透過ガス中のN2濃度は、例えば50体積%~90体積%であり、より好ましくは60体積%以上である。第2非透過ガス中のH2濃度は、例えば2体積%~30体積%である。
【0041】
第2分離膜320によるCO2回収率は、例えば65%~95%であり、好ましくは70%以上である。第2分離膜320によるCO2回収率は、第2分離膜モジュール32にて第2分離膜320を透過したCO2の質量(すなわち、第2透過ガス中のCO2の質量)を混合ガス供給部34から供給された混合ガス中のCO2の質量で除算すること(すなわち、(第2透過ガス中のCO2の質量)/(混合ガス中のCO2の質量))により求められる。
【0042】
CO
2回収部33では、第2非透過ガス中のCO
2が化学吸収法により吸収され、第2非透過ガスから分離されて回収される(ステップS16)。CO
2回収部33により回収されたガス(CO
2を主成分とするガスであり、以下、「回収ガス」とも呼ぶ。)は、回収流路331によりCO
2回収部33から外部へと導出される。
図1に示す例では、上述のように、回収流路331は第2透過ガス流路321と合流しており、回収ガスは、第2透過ガスと共に混合ガス分離装置3の外部の装置(例えば、CCS用の貯留設備)へと送出される。
【0043】
また、CO
2回収部33においてCO
2が分離された残りのガス(N
2およびH
2を主成分とするガスであり、以下、「排出ガス」とも呼ぶ。)は、排出流路332によりCO
2回収部33から外部へと導出される。
図1に示す例では、上述のように、排出流路332は第1透過ガス流路311と合流しており、CO
2回収部33によるCO
2回収後の排出ガスは、第1透過ガスと共に混合ガス分離装置3の外部の装置(例えば、発電用のガスタービン)へと送出される。
【0044】
次に、
図3ないし
図5を参照しつつ、第1分離膜モジュール31の具体的構造の一例について説明する。
図3は、第1分離膜モジュール31の構成を示す断面図である。
図4は、第1分離膜モジュール31の分離膜複合体1の断面図である。
図5は、分離膜複合体1の一部を拡大して示す断面図である。
【0045】
図3に例示する第1分離膜モジュール31は、分離膜複合体1と、封止部21と、外筒22と、2つのシール部材23とを備える。分離膜複合体1は、上述の第1分離膜310を備えており、H
2を選択的に透過することにより混合ガスから分離させる。分離膜複合体1、封止部21およびシール部材23は、外筒22内に収容される。
【0046】
外筒22の形状は特に限定されないが、例えば、略円筒状の筒状部材である。外筒22は、例えばステンレス鋼または炭素鋼により形成される。外筒22の内部空間は、外筒22の周囲の空間から隔離された密閉空間である。外筒22の長手方向の一方の端部(すなわち、
図3中の左側の端部)には供給ポート221が設けられ、他方の端部には第1排出ポート222が設けられる。外筒22の側面には、第2排出ポート223が設けられる。供給ポート221は、上述の混合ガス供給部34に接続される。第1排出ポート222は、上述の第1非透過ガス流路312に接続される。第2排出ポート223は、上述の第1透過ガス流路311に接続される。
【0047】
図4および
図5に示すように、分離膜複合体1は、支持体11と、第1分離膜310とを備える。
図4では、第1分離膜310を太線にて描いている。また、
図5では、第1分離膜310に平行斜線を付し、第1分離膜310の厚さを実際よりも厚く描いている。
【0048】
支持体11は、ガスおよび液体を透過可能な多孔質部材である。
図4に示す例では、支持体11は、一体成形された一繋がりの略柱状の部材である。支持体11には、長手方向にそれぞれ延びる複数の貫通孔111が設けられる。すなわち、支持体11は、いわゆるモノリス型の部材である。支持体11の長手方向は、外筒22の長手方向に略平行である。支持体11の外形は、例えば略円柱状である。各貫通孔111(すなわち、セル)の長手方向に垂直な断面は、例えば略円形である。
図4では、貫通孔111の径を実際よりも大きく、貫通孔111の数を実際よりも少なく描いている。
【0049】
支持体11の長さ(すなわち、
図4中の左右方向の長さ)は、例えば10cm~200cmである。支持体11の外径は、例えば0.5cm~30cmである。隣接する貫通孔111の中心軸間の距離は、例えば0.3mm~10mmである。支持体11の表面粗さ(Ra)は、例えば0.1μm~5.0μmであり、好ましくは0.2μm~2.0μmである。なお、支持体11の形状は、例えば、ハニカム状、平板状、管状、円筒状、円柱状または多角柱状等であってもよい。支持体11の形状が管状または円筒状である場合、支持体11の厚さは、例えば0.1mm~10mmである。
【0050】
支持体11の材料は、表面に第1分離膜310を形成する工程において化学的安定性を有するものであれば、様々な物質(例えば、セラミックまたは金属)が採用可能である。本実施の形態では、支持体11はセラミック焼結体により形成される。支持体11の材料として選択されるセラミック焼結体としては、例えば、アルミナ、シリカ、ムライト、ジルコニア、チタニア、イットリア、窒化ケイ素、炭化ケイ素等が挙げられる。本実施の形態では、支持体11は、アルミナ、シリカおよびムライトのうち、少なくとも1種類を含む。
【0051】
支持体11は、無機結合材を含んでいてもよい。無機結合材としては、チタニア、ムライト、易焼結性アルミナ、シリカ、ガラスフリット、粘土鉱物、易焼結性コージェライトのうち少なくとも1つを用いることができる。
【0052】
支持体11の平均細孔径は、例えば0.01μm~70μmであり、好ましくは0.05μm~25μmである。第1分離膜310が形成される表面近傍における支持体11の平均細孔径は0.01μm~1μmであり、好ましくは0.05μm~0.5μmである。平均細孔径は、例えば、水銀ポロシメータ、パームポロシメータまたはナノパームポロシメータにより測定することができる。支持体11の表面および内部を含めた全体における細孔径の分布について、D5は例えば0.01μm~50μmであり、D50は例えば0.05μm~70μmであり、D95は例えば0.1μm~2000μmである。第1分離膜310が形成される表面近傍における支持体11の気孔率は、例えば20%~60%である。
【0053】
支持体11は、例えば、平均細孔径が異なる複数の層が厚さ方向に積層された多層構造を有する。第1分離膜310が形成される表面を含む表面層における平均細孔径および焼結粒径は、表面層以外の層における平均細孔径および焼結粒径よりも小さい。支持体11の表面層の平均細孔径は、例えば0.01μm~1μmであり、好ましくは0.05μm~0.5μmである。支持体11が多層構造を有する場合、各層の材料は上記のものを用いることができる。多層構造を形成する複数の層の材料は、同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0054】
第1分離膜310は、支持体11の貫通孔111の内側面上において、当該内側面の略全面に亘って設けられる略円筒状の薄膜である。第1分離膜310は、微細孔を有する緻密な多孔膜である。第1分離膜310は、例えば無機膜であり、好ましくはゼオライト膜である。ゼオライト膜とは、少なくとも、支持体11の表面にゼオライトが膜状に形成されたものであって、有機膜中にゼオライト粒子を分散させただけのものは含まない。なお、ゼオライト膜は、構造や組成が異なる2種類以上のゼオライトを含んでいてもよい。第1分離膜310がゼオライト膜である場合、第1分離膜310は、分子篩作用を利用して混合ガスからH2を分離する。
【0055】
図3に示すように、封止部21は、支持体11の長手方向(すなわち、
図3中の左右方向)の両端部に取り付けられ、支持体11の長手方向両端面、および、当該両端面近傍の外側面を被覆して封止する部材である。封止部21は、支持体11の当該両端面からのガスおよび液体の流入および流出を防止する。封止部21は、例えば、ガラスまたは樹脂により形成された板状または膜状の部材である。封止部21の材料および形状は、適宜変更されてよい。なお、封止部21には、支持体11の複数の貫通孔111と重なる複数の開口が設けられているため、支持体11の各貫通孔111の長手方向両端は、封止部21により被覆されていない。したがって、当該両端から貫通孔111へのガスおよび液体の流入および流出は可能である。
【0056】
2つのシール部材23は、分離膜複合体1の長手方向両端部近傍において、分離膜複合体1の外側面と外筒22の内側面との間に、全周に亘って配置される。各シール部材23は、ガスおよび液体が透過不能な材料により形成された略円環状の部材である。シール部材23は、例えば、可撓性を有する樹脂により形成されたOリングである。シール部材23は、分離膜複合体1の外側面および外筒22の内側面に全周に亘って密着する。
図3に示す例では、シール部材23は、封止部21の外側面に密着し、封止部21を介して分離膜複合体1の外側面に間接的に密着する。シール部材23と分離膜複合体1の外側面との間、および、シール部材23と外筒22の内側面との間は、シールされており、ガスおよび液体の通過はほとんど、または、全く不能である。
【0057】
第1分離膜モジュール31では、矢印251にて示すように、混合ガス供給部34から送出された混合ガスが、外筒22の内部に供給される。当該混合ガスは、分離膜複合体1の
図3中の左端から、支持体11の各貫通孔111内に導入される。上述のH
2を主成分とする第1透過ガスは、各貫通孔111の内側面上に設けられた第1分離膜310、および、支持体11を透過して支持体11の外側面から導出される。第1透過ガスは、矢印253にて示すように、第2排出ポート223を介して第1透過ガス流路311へと導かれる。また、第1非透過ガスは、支持体11の各貫通孔111を
図3中の左側から右側へと通過し、矢印252にて示すように、第1排出ポート222を介して第1非透過ガス流路312へと導かれ、第2分離膜モジュール32へと供給される。
【0058】
図6は、第2分離膜モジュール32の具体的構造の一例を示す断面図である。本実施の形態では、第2分離膜モジュール32の構造は、分離膜複合体1において、第1分離膜310に代えて第2分離膜320が設けられる点を除き、第1分離膜モジュール31の構造と略同じである。
図6では、第2分離膜モジュール32の構成のうち、第1分離膜モジュール31の構成と対応する構成に同符号を付す。
【0059】
第2分離膜320は、第1分離膜310と同様に、支持体11の貫通孔111の内側面上において、当該内側面の略全面に亘って設けられる略円筒状の薄膜である。第2分離膜320は、微細孔を有する緻密な多孔膜である。第2分離膜320は、例えば無機膜であり、好ましくはゼオライト膜である。第2分離膜320がゼオライト膜である場合、第2分離膜320は、CO2親和性を利用して第1非透過ガスからCO2を分離する。
【0060】
第2分離膜モジュール32では、矢印251にて示すように、第1分離膜モジュール31から送出された第1非透過ガスが、第1非透過ガス流路312および供給ポート221を介して外筒22の内部に供給される。第1非透過ガスは、分離膜複合体1の
図6中の左端から、支持体11の各貫通孔111内に導入される。上述のCO
2を主成分とする第2透過ガスは、各貫通孔111の内側面上に設けられた第2分離膜320、および、支持体11を透過して支持体11の外側面から導出される。第2透過ガスは、矢印253にて示すように、第2排出ポート223を介して第2透過ガス流路321へと導かれる。また、第2非透過ガスは、支持体11の各貫通孔111を
図6中の左側から右側へと通過し、矢印252にて示すように、第1排出ポート222を介して第2非透過ガス流路322へと導かれ、CO
2回収部33に供給される。
【0061】
次に、第1分離膜310および第2分離膜320として利用可能なゼオライト膜の具体例について説明する。ゼオライト膜の厚さは、例えば0.05μm~30μmであり、好ましくは0.1μm~20μmであり、さらに好ましくは0.5μm~10μmである。ゼオライト膜を厚くすると分離性能が向上する。ゼオライト膜を薄くすると透過速度が増大する。ゼオライト膜の表面粗さ(Ra)は、例えば5μm以下であり、好ましくは2μm以下であり、より好ましくは1μm以下であり、さらに好ましくは0.5μm以下である。
【0062】
ゼオライト膜に含まれるゼオライト結晶の細孔径(以下、単に「ゼオライト膜の細孔径」とも呼ぶ。)は、0.2nm以上かつ0.8nm以下であり、より好ましくは、0.3nm以上かつ0.7nm以下であり、さらに好ましくは、0.3nm以上かつ0.5nm以下である。ゼオライト膜の細孔径とは、ゼオライト膜を構成するゼオライト結晶の細孔の最大直径(すなわち、酸素原子間距離の最大値である長径)と略垂直な方向における細孔の直径(すなわち、短径)である。ゼオライト膜の細孔径は、ゼオライト膜が配設される支持体11表面における平均細孔径よりも小さい。
【0063】
ゼオライト膜を構成するゼオライトの最大員環数がnの場合、n員環細孔の短径をゼオライト膜の細孔径とする。また、ゼオライトが、nが等しい複数種のn員環細孔を有する場合には、最も大きい短径を有するn員環細孔の短径をゼオライト膜の細孔径とする。なお、n員環とは、細孔を形成する骨格を構成する酸素原子の数がn個であって、各酸素原子が後述のT原子と結合して環状構造をなす部分のことである。また、n員環とは、貫通孔(チャンネル)を形成しているものをいい、貫通孔を形成していないものは含まない。n員環細孔とは、n員環により形成される細孔である。選択性能向上の観点から、上述のゼオライト膜に含まれるゼオライトの最大員環数は、8以下(例えば、6または8)であることが好ましい。
【0064】
ゼオライト膜の細孔径は当該ゼオライトの骨格構造によって一義的に決定され、国際ゼオライト学会の“Database of Zeolite Structures”[online]、インターネット<URL:http://www.iza-structure.org/databases/>に開示されている値から求めることができる。
【0065】
ゼオライト膜を構成するゼオライトの種類は、特に限定されないが、例えば、AEI型、AEN型、AFN型、AFV型、AFX型、BEA型、CHA型、DDR型、ERI型、ETL型、FAU型(X型、Y型)、GIS型、IHW型、LEV型、LTA型、LTJ型、MEL型、MFI型、MOR型、PAU型、RHO型、SOD型、SAT型等のゼオライトである。当該ゼオライトが8員環ゼオライトである場合、例えば、AEI型、AFN型、AFV型、AFX型、CHA型、DDR型、ERI型、ETL型、GIS型、IHW型、LEV型、LTA型、LTJ型、RHO型、SAT型等のゼオライトである。
【0066】
ゼオライト膜を構成するゼオライトは、T原子(すなわち、ゼオライトを構成する酸素四面体(TO4)の中心に位置する原子)として、例えば、ケイ素(Si)、アルミニウム(Al)、リン(P)の少なくとも一種を含む。ゼオライト膜を構成するゼオライトとしては、T原子がSiのみ、もしくは、SiとAlとからなるゼオライト、T原子がAlとPとからなるAlPO型のゼオライト、T原子がSiとAlとPとからなるSAPO型のゼオライト、T原子がマグネシウム(Mg)とSiとAlとPとからなるMAPSO型のゼオライト、T原子が亜鉛(Zn)とSiとAlとPとからなるZnAPSO型のゼオライト等を用いることができる。T原子の一部は、他の元素に置換されていてもよい。
【0067】
ゼオライト膜は、例えば、Siを含む。ゼオライト膜は、例えば、Si、AlおよびPのうちいずれか2つ以上を含んでいてもよい。ゼオライト膜は、アルカリ金属を含んでいてもよい。当該アルカリ金属は、例えば、ナトリウム(Na)またはカリウム(K)である。ゼオライト膜がSi原子およびAl原子を含む場合、ゼオライト膜におけるSi/Al比は、例えば1以上かつ10万以下である。Si/Al比は、ゼオライト膜に含有されるAl元素に対するSi元素のモル比率である。後述する原料溶液中のSi源とAl源との配合割合等を調整することにより、ゼオライト膜におけるSi/Al比を調整することができる。
【0068】
なお、混合ガス分離装置3では、第1分離膜310および第2分離膜320は、ゼオライト膜に加えて、ゼオライト膜以外の膜(例えば、ゼオライト膜上に積層された機能膜や保護膜等)を備えていてもよい。また、第1分離膜310および第2分離膜320は、ゼオライト膜以外の無機膜(例えば、シリカ膜や炭素膜等)であってもよく、無機膜以外の膜(例えば、有機膜)であってもよい。第1分離膜310および第2分離膜320は、同じ種類の膜であってもよく、異なる種類の膜であってもよい。好ましくは、第1分離膜310および第2分離膜320のうち少なくとも一方はゼオライト膜である。
【0069】
次に、
図7および表1ないし表5を参照しつつ、第1分離膜310および第2分離膜320の性能と、H
2およびCO
2の分離結果について説明する。
図7は、
図1と略同様に、混合ガス分離装置3の構成を示す図である。
図7では、混合ガス供給部34から第1分離膜モジュール31に供給される混合ガス、第1分離膜モジュール31から導出される第1非透過ガスおよび第1透過ガス、並びに、第2分離膜モジュール32から導出される第2非透過ガスおよび第2透過ガスの流れを示す矢印に、それぞれ(1)~(5)の符号を付す。
【0070】
【0071】
【0072】
【0073】
【0074】
【0075】
表1は、実施例1の混合ガス分離装置3におけるガス(1)~(5)(すなわち、混合ガス、第1非透過ガス、第1透過ガス、第2非透過ガスおよび第2透過ガス)の組成を示す。実施例1では、第1分離膜310のH2/CO2選択性は100であり、第2分離膜320のCO2/H2選択性は100である。表1中の各ガスの組成(すなわち、N2濃度、H2濃度およびCO2濃度)は、プロセスシミュレータにより算出した。後述する表2~4中における各ガスの組成も、表1と同様に、プロセスシミュレータにより算出した。
【0076】
実施例1では、混合ガス供給部34から第1分離膜モジュール31に供給される混合ガスのN2濃度、H2濃度およびCO2濃度は、45.0体積%、30.0体積%および25.0体積%である。混合ガス中のCO2濃度は、30.0体積%以下と低い。混合ガスの組成については、以下の比較例1~3でも同じである。
【0077】
実施例1では、H2分離膜である第1分離膜310を透過した第1透過ガス中のH2濃度は、97.2体積%(すなわち、90体積%以上)と高かった。第1分離膜310を透過しなかった第1非透過ガス中のCO2濃度は32.4体積%であり、混合ガス中のCO2濃度(25.0体積%)よりも5体積%以上高かった。CO2分離膜である第2分離膜320を透過した第2透過ガス中のCO2濃度は、98.7体積%(すなわち、97体積%以上)と高かった。第2分離膜320を透過しなかった第2非透過ガス中のN2濃度は、81.1体積%(すなわち、60体積%以上)であった。第2非透過ガス中のH2濃度は10.8体積%(すなわち、30体積%以下)と低く、第2非透過ガス中のCO2濃度は8.1体積%(すなわち、30体積%以下)と低かった。これにより、第1分離膜モジュール31においてH2が効率良く分離され、第2分離膜モジュール32においてCO2が効率良く分離されていることが分かる。
【0078】
表5に示すように、実施例1では、第2分離膜モジュール32における第2分離膜320によるCO2回収率は、80%(すなわち、70%以上)と高かった。なお、表5では、実施例1および比較例1~3について、第2分離膜320のCO2/H2選択性、第2透過ガス中のCO2濃度、および、第2分離膜320によるCO2回収率を比較している。
【0079】
表2は、比較例1の混合ガス分離装置3におけるガス(1)~(5)の組成を示す。比較例1では、第1分離膜310を省略しており、第2分離膜320のCO2/H2選択性は380である。比較例1の第2分離膜320のCO2/H2選択性は、第2分離膜320によるCO2回収率(表5参照)を実施例1と略同じにするために設定した値であり、過剰に高い。当該設定により、比較例1の第2透過ガス中のCO2濃度、および、第2分離膜320によるCO2回収率は、実施例1と同じになった。一方、第2分離膜320を透過しなかった第2非透過ガス中のN2濃度は、56.4体積%(すなわち、60体積%未満)であり、実施例1よりも低かった。また、第2非透過ガス中のH2濃度は、37.3体積%(すなわち、30体積%よりも大)であり、実施例1よりも高かった。
【0080】
表3は、比較例2の混合ガス分離装置3におけるガス(1)~(5)の組成を示す。比較例2では、第1分離膜310のH2/CO2選択性は10であり、第2分離膜320のCO2/H2選択性は30である。当該数値は、上述の特開2008-247632号公報から求めたものである。
【0081】
比較例2では、H2分離膜である第1分離膜310を透過した第1透過ガス中のH2濃度は、79.2体積%(すなわち、90体積%未満)と低かった。第1分離膜310を透過しなかった第1非透過ガス中のCO2濃度は28.5体積%であり、混合ガス中のCO2濃度(25.0体積%)との差は5体積%未満と小さかった。したがって、比較例2では、第1分離膜モジュール31によるH2の分離が、実施例1に比べて不十分であることが分かる。比較例2では、CO2分離膜である第2分離膜320を透過した第2透過ガス中のCO2濃度は、95.0体積%(すなわち、97体積%未満)であり、実施例1よりも低かった。第2分離膜モジュール32におけるCO2回収率は64%(すなわち、70%未満)であり、実施例1よりも低かった。
【0082】
表4は、比較例3の混合ガス分離装置3におけるガス(1)~(5)の組成を示す。比較例3では、第1分離膜310のH2/CO2選択性は、比較例2と同様に10であり、第2分離膜320のCO2/H2選択性は、実施例1と同様に100である。
【0083】
比較例3では、H2分離膜である第1分離膜310を透過した第1透過ガス中のH2濃度は、79.2体積%(すなわち、90体積%未満)と低かった。第1分離膜310を透過しなかった第1非透過ガス中のCO2濃度は28.5体積%であり、混合ガス中のCO2濃度(25.0体積%)との差は5体積%未満と小さかった。したがって、比較例3では、比較例2と同様に、第1分離膜モジュール31によるH2の分離が、実施例1に比べて不十分であることが分かる。比較例3では、CO2分離膜である第2分離膜320を透過した第2透過ガス中のCO2濃度は、98.4体積%であった。第2分離膜モジュール32におけるCO2回収率は63%(すなわち、70%未満)であり、実施例1よりも低かった。
【0084】
以上に説明したように、混合ガス分離方法は、少なくともN2、H2およびCO2を含むとともにCO2濃度が30体積%以下である混合ガスを、H2を選択的に透過する第1分離膜310に供給し、第1分離膜310を透過した第1透過ガスと、第1分離膜310を透過しなかった第1非透過ガスとに分離する工程(ステップS11~S12)と、第1非透過ガスを、CO2を選択的に透過する第2分離膜320に供給し、第2分離膜320を透過した第2透過ガスと、第2分離膜320を透過しなかった第2非透過ガスとに分離する工程(ステップS13~S14)と、膜分離法以外の分離方法にてCO2を分離して回収するCO2回収部33に第2非透過ガスを供給し、第2非透過ガス中のCO2を回収する工程(ステップS15~S16)と、を備える。第1非透過ガス中のCO2濃度は、混合ガス中のCO2濃度よりも5体積%以上高い。第2非透過ガス中のN2濃度は50体積%以上である。第2非透過ガス中のH2濃度は30体積%以下である。
【0085】
これにより、低濃度(すなわち、30体積%以下)のCO2を含む混合ガスから、過剰に高いCO2/H2選択性を有する分離膜を利用することなく、CO2を効率良く分離させることができる。また、混合ガスからH2も効率良く分離することができるため、CO2回収部33に流入するH2の量を低減することができる。したがって、CO2回収部33の構造の簡素化(例えば、防爆構造等の削減または省略)を実現することができる。
【0086】
上述の混合ガス分離装置3は、第1分離膜310と、第2分離膜320と、CO2回収部33と、混合ガス供給部34と、第1非透過ガス流路312と、第2非透過ガス流路322とを備える。第1分離膜310は、H2を選択的に透過する。第2分離膜320は、CO2を選択的に透過する。CO2回収部33は、膜分離法以外の分離方法にてCO2を分離して回収する。混合ガス供給部34は、少なくともN2、H2およびCO2を含むとともにCO2濃度が30体積%以下である混合ガスを第1分離膜310に供給する。第1非透過ガス流路312は、混合ガスのうち第1分離膜310を透過しなかった第1非透過ガスを第2分離膜320へと導く。第2非透過ガス流路322は、第1非透過ガス流路312を介して第2分離膜320に供給された第1非透過ガスのうち、第2分離膜320を透過しなかった第2非透過ガスをCO2回収部33へと導く。CO2回収部33は、第2非透過ガス流路322を介して供給された第2非透過ガス中のCO2を回収する。第1非透過ガス中のCO2濃度は、混合ガス中のCO2濃度よりも5体積%以上高い。第2非透過ガス中のN2濃度は50体積%以上である。第2非透過ガス中のH2濃度は30体積%以下である。
【0087】
これにより、上述のように、低濃度(すなわち、30体積%以下)のCO2を含む混合ガスから、過剰に高いCO2/H2選択性を有する分離膜を利用することなく、CO2を効率良く分離させることができる。また、混合ガスからH2も効率良く分離することができるため、CO2回収部33の構造の簡素化を実現することもできる。
【0088】
上述の混合ガス分離方法では、ステップS11~S12よりも後に、第1透過ガスをCO2回収部33から排出されるガス(すなわち、排出ガス)に合流させることが好ましい。また、混合ガス分離装置3は、第1透過ガスを導いてCO2回収部33から排出されるガス(すなわち、排出ガス)に合流させる第1透過ガス流路311をさらに備えることが好ましい。これにより、CO2回収部33に供給された第2非透過ガス中のH2を、第1透過ガス中のH2と共に利用することができる。すなわち、混合ガス中のH2を有効利用することができる。
【0089】
上述のように、第2分離膜320によるCO2回収率は、70%以上であることが好ましい。これにより、CO2回収部33を小型化することができ、混合ガス分離装置3の製造コストおよびランニングコストを低減することができる。
【0090】
上述のように、CO2回収部33におけるCO2分離方法は化学吸収法であることが好ましい。これにより、CO2回収部33におけるCO2回収率を高くしつつ、混合ガス分離装置3の製造コストをより低減することができる。
【0091】
上述のように、第2非透過ガス中のN2濃度は60体積%以上であり、第2非透過ガス中のCO2濃度は30体積%以下であることが好ましい。混合ガス分離装置3では、CO2を効率良く分離させることができるため、当該濃度を実現することができる。
【0092】
上述のように、第2透過ガス中のCO2濃度は97体積%以上であることが好ましい。混合ガス分離装置3では、CO2を効率良く分離させることができるため、当該濃度を実現することができる。
【0093】
上述のように、ステップS11~S12において第1分離膜310に供給される混合ガスの圧力は1.5MPaG以上であることが好ましい。上記混合ガス分離方法および混合ガス分離装置3では、このような高圧下においても、CO2を効率良く分離させることができる。
【0094】
上述のように、第1分離膜310のH2/CO2選択性は100以上であり、第2分離膜320のCO2/H2選択性は100以上であることが好ましい。これにより、第1分離膜310によるH2の分離、および、第2分離膜320によるCO2の分離を、さらに好適に行うことができる。
【0095】
上述のように、第1分離膜310および第2分離膜320のうち少なくとも一方はゼオライト膜であることが好ましい。このように、細孔径が均一であるゼオライト結晶により分離膜(すなわち、第1分離膜310および/または第2分離膜320)を構成することにより、当該分離膜の選択的透過物質(すなわち、H2および/またはCO2)をさらに効率良く分離することができる。
【0096】
図1に例示する混合ガス分離装置3では、第1透過ガス流路311を排出流路332に合流させているが、これには限定されない。例えば、第1透過ガス流路311は、排出流路332とは独立して、混合ガス分離装置3の外部の装置(例えば、発電用のガスタービン)に接続されてもよい。あるいは、
図8に示すように、第1分離膜モジュール31から延びる第1透過ガス流路311は、CO
2回収部33に接続されてもよい。
【0097】
図8に示す例では、第1透過ガス流路311は、第1分離膜モジュール31にて第1分離膜310を透過した第1透過ガスをCO
2回収部33へと導き、CO
2回収部33の内部において、第2分離膜モジュール32からCO
2回収部33に供給される第2非透過ガスに合流させる。あるいは、第1透過ガス流路311は、第2分離膜モジュール32とCO
2回収部33との間にて第2非透過ガス流路322に合流してもよい。この場合、第1透過ガスは第2非透過ガスと合流した後、CO
2回収部33に供給される。
【0098】
このように、混合ガス分離方法では、上述のステップS11~S12よりも後に、第1透過ガスをCO2回収部33に供給することにより、第1透過ガスに含まれるCO2も回収することができる。その結果、混合ガスからのCO2の回収率を増大させることができる。また、混合ガス分離装置3は、第1透過ガスをCO2回収部33へと導く第1透過ガス流路311をさらに備えることにより、上記と同様に、混合ガスからのCO2の回収率を増大させることができる。
【0099】
上述の混合ガス分離方法および混合ガス分離装置3では、様々な変更が可能である。
【0100】
例えば、第1分離膜モジュール31および第2分離膜モジュール32の構造は、上述のものには限定されず、様々に変更されてよい。
【0101】
第1分離膜310のH2/CO2選択性は、100未満であってもよい。また、第2分離膜320のCO2/H2選択性も、100未満であってもよい。
【0102】
第1分離膜310に供給される混合ガスの圧力は、1.5MPaG未満であってもよい。
【0103】
第2透過ガス中のCO2濃度は、97体積%未満であってもよい。
【0104】
第2非透過ガス中のN2濃度は、50体積%以上であればよく、60体積%未満であってもよい。第2非透過ガス中のCO2濃度は、30体積%よりも高くてもよい。
【0105】
第2分離膜320によるCO2回収率は、70%未満であってもよい。
【0106】
上記実施の形態および各変形例における構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わされてよい。
【0107】
発明を詳細に描写して説明したが、既述の説明は例示的であって限定的なものではない。したがって、本発明の範囲を逸脱しない限り、多数の変形や態様が可能であるといえる。
【産業上の利用可能性】
【0108】
本発明は、例えば、石炭ガス化複合発電において石炭のガス化とシフト反応とにより生成される混合ガスの分離に利用可能であり、さらに、他の様々な混合ガスの分離に利用可能である。
【符号の説明】
【0109】
3 混合ガス分離装置
33 CO2回収部
34 混合ガス供給部
310 第1分離膜
320 第2分離膜
311 第1透過ガス流路
312 第1非透過ガス流路
322 第2非透過ガス流路
S11~S16 ステップ