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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024063150
(43)【公開日】2024-05-10
(54)【発明の名称】ポリオレフィン系接着剤組成物
(51)【国際特許分類】
   C09J 123/26 20060101AFI20240501BHJP
   C09J 123/14 20060101ALI20240501BHJP
   C09J 7/35 20180101ALI20240501BHJP
【FI】
C09J123/26
C09J123/14
C09J7/35
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024031140
(22)【出願日】2024-03-01
(62)【分割の表示】P 2023014472の分割
【原出願日】2018-04-12
(31)【優先権主張番号】P 2017105416
(32)【優先日】2017-05-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】722014321
【氏名又は名称】東洋紡エムシー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂田 秀行
(72)【発明者】
【氏名】中島 桃子
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ポットライフ性が良好で、かつ金属基材とポリオレフィン樹脂基材との接着性、耐薬品性、および成形性が良好な、酸変性ポリオレフィンおよび多官能ポリイソシアネート硬化剤を含有する接着剤組成物を提供する。
【解決手段】酸変性ポリオレフィン(A)、多官能ポリイソシアネート硬化剤(B)および有機溶剤(C)を含有する接着剤組成物であって、前記酸変性ポリオレフィン(A)は、プロピレン-α-オレフィン共重合体に、α,β-不飽和カルボン酸及びその酸無水物の少なくとも1種をグラフトしたものであり、前記有機溶剤(C)は、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素およびハロゲン化炭化水素からなる群より選択された1種以上の溶剤である溶剤(C1)と、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤およびグリコールエーテル系溶剤からなる群より選択された1種以上の溶剤である溶剤(C2)の混合液である、接着剤組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸変性ポリオレフィン(A)、多官能ポリイソシアネート硬化剤(B)および有機溶剤(C)を含有する接着剤組成物であって、
前記酸変性ポリオレフィン(A)は、プロピレン-α-オレフィン共重合体に、α,β-不飽和カルボン酸及びその酸無水物の少なくとも1種をグラフトしたものであり、
前記酸変性ポリオレフィン(A)の酸価が2~50mgKOH/g-resin、アセトン抽出成分比率が0.01~2質量%であり、
酸変性ポリオレフィン(A)の25℃における貯蔵弾性率(E’)が、400~1800MPaであり、
酸変性ポリオレフィン(A)の25℃における引張破断伸度(Eb)が、60~500%であり、
前記有機溶剤(C)は、溶剤(C1)と溶剤(C2)の混合液であり、溶剤(C1)が芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素およびハロゲン化炭化水素からなる群より選択された1種以上の溶剤であり、溶剤(C2)がアルコール系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤およびグリコールエーテル系溶剤からなる群より選択された1種以上の溶剤である、
接着剤組成物。
【請求項2】
前記酸変性ポリオレフィン(A)100質量部に対して、多官能ポリイソシアネート硬化剤(B)を0.5~40質量部、有機溶剤(C)を80~2000質量部含有する請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項3】
溶剤(C1)/溶剤(C2)=50~97/50~3(質量比)である請求項1又は2に記載の接着剤組成物。
【請求項4】
ポリオレフィン樹脂基材と金属基材との接着に用いられる請求項1~3のいずれか一項に記載の接着剤組成物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の接着剤組成物によって接着されたポリオレフィン樹脂基材と金属基材の積層体。
【請求項6】
請求項5に記載の積層体を構成部材とするリチウムイオン電池用包装材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリオレフィン樹脂基材と金属基材との良好な接着性、耐薬品性、成形性を示す接着剤組成物に関する。より詳しくは酸変性ポリオレフィン、多官能ポリイソシアネート硬化剤、および有機溶剤を含有する接着剤組成物に関する。特にリチウムイオン電池(以下LiBと略す)用接着剤組成物、ならびにそれを含む積層体である包装材料に関する
【背景技術】
【0002】
近年、パソコン、携帯電話等の携帯端末装置、ビデオカメラ、衛星などに用いられる電池として、超薄型化、小型化の可能なLiBが盛んに開発されている。このLiBの包装材料は、従来用いられていた金属製缶とは異なり、軽量で電池の形状を自由に選択できるという利点から、基材層/バリア層/シーラント層のような構成の積層体が用いられるようになってきた。
【0003】
LiBは、電池内容物として正極材及び負極材と共に、炭酸プロピレン、炭酸エチレン、
炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸エチルメチルなどの非プロトン性溶媒にリチウム塩を溶解した電解液若しくはその電解液を含浸させたポリマーゲルからなる電解質層を含んでいる。このような強浸透性の溶媒がシーラント層を通過すると、バリア層とシーラント層間のラミネート強度を低下させてデラミネーションを生じさせ、最終的には電解液が漏れ出すといった問題が生じる。また、電池の電解質であるリチウム塩としてはLiPF6、
LiBF4 等の物質が用いられているが、これらの塩は水分との加水分解反応によりフッ酸を発生させ、フッ酸がバリア層を腐食することによりラミネート強度を低下させる。電池用包装材料は、このように電解質に対する耐性を有していることが必要である。
【0004】
また、LiBはさまざまな環境下で使用されることを想定して、より過酷な耐性を備えて
いる必要がある。例えば、モバイル機器に使用される場合には、車内等の60~70℃という高温環境での耐漏液性が要求される。また、携帯電話に使用され誤って水中に落としたことを想定し、水分が浸入しないよう耐水性も必要とされる。
【0005】
このような状況のもと、耐電解液性を向上させたリチウム電池用包装材料が種々提案されている(例えば、特許文献1~3参照)。
【0006】
さらに、電池用包装材料においては、電池素子を封入する際に金型で成形し、電池素子を収容する空間が形成される。この成形の際に、電池用包装材料が引き延ばされることによって、金型のフランジ部において、バリア層にクラックやピンホールが発生しやすいという問題がある。特に、近年の電池の小型化、薄型化の要請に伴い、より一層薄い電池用包装材料が求められており、このような問題がより顕著に発生しやすくなっている。
【0007】
このような状況のもと、成形性を向上させた電池用包装材料が提案されている(例えば、特許文献4~5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001-243928号公報
【特許文献2】特開2004-42477号公報
【特許文献3】特開2009-238475号公報
【特許文献4】特開2002-216714号公報
【特許文献5】特開2003-31188号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、前記提案されているリチウム電池用包装材料は、耐電解液性および成形性の点でいまだ不十分であった。また耐電解液性および成形性の改善が大きくても、問題がみられるものであった。
具体的には、硬化剤配合後の接着剤のポットライフ性確保と耐電解液性両立が困難であり(特許文献1)、押出ラミネーションによる接着を行っていることからラミネート機台が制約されたり、高温での貼り合せによってポリオレフィン基材が熱収縮の影響を受ける(特許文献2)、ポリオレフィン主剤が水系であることから乾燥時間が長く、生産条件が限定されてしまう(特許文献3)。また、外層フィルム表面にアマイド系スリップ剤をコーティングする工程を設けなければならず、生産性が低下する上に、コーティングしたアマイド系スリップ剤により外層フィルムとアルミニウム箔とのラミネート強度が十分に得られない(特許文献4)、アルミニウム箔より内層側に未延伸ポリプロピレン樹脂フィルムのみが配置された構成、或いはアルミニウム箔より内層側にポリプロピレンとポリエチレンのブレンド樹脂のフィルムのみが配置された構成であるので、直方体形状等に成形される際にアルミニウム箔にピンホールが発生したり、或いはアルミニウム箔に破断部(割れ)が発生し易く、十分な成形性が得られない(特許文献5)などの問題が見られるものであった。
【0010】
本発明の課題は、ポットライフ性や生産条件の制限といった問題なく、接着性、耐薬品性(耐電解液性)および成形性に優れる接着剤組成物を提供することにある。さらにその接着剤組成物からなる接着剤層を含む電池用包装材料及び前記包装材料を用いた電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を達成するため、本発明者らは鋭意検討し、アルミニウム箔の外層側のみならず内層側にも成形時の伸びに対して十分追従できる層を配することが有効であることを見出し、以下の発明を提案するに至った。
【0012】
酸変性ポリオレフィン(A)、多官能ポリイソシアネート硬化剤(B)および有機溶剤(C)を含有する接着剤組成物であって、酸変性ポリオレフィン(A)の酸価が2~50mgKOH/g-resin、アセトン抽出成分比率が0.01~2質量%である接着剤組成物。
【0013】
前記酸変性ポリオレフィン(A)100質量部に対して、多官能ポリイソシアネート硬化剤(B)を0.5~40質量部、有機溶剤(C)を80~2000質量部含有することが好ましい。また、有機溶剤(C)は、溶剤(C1)と溶剤(C2)の混合液であって、溶剤(C1)が芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素およびハロゲン化炭化水素からなる群より選択された1種以上の溶剤であり、溶剤(C2)がアルコール系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤およびグリコールエーテル系溶剤からなる群より選択された1種以上の溶剤であり、溶剤(C1)/溶剤(C2)=50~97/50~3(質量比)であることが好ましい。
【0014】
前記接着剤組成物は、ポリオレフィン樹脂基材と金属基材との接着に用いられることが好ましい。
【0015】
前記接着剤組成物によって接着されたポリオレフィン樹脂基材と金属基材の積層体および該積層体を構成部材とするリチウムイオン電池用包装材料。
【発明の効果】
【0016】
本発明にかかる接着剤組成物は、酸変性ポリオレフィン、多官能ポリイソシアネート硬化剤、および有機溶剤を含有し、長期間保存しても増粘やゲル化を生じることなく良好なポットライフ性を維持することができる。さらにポリオレフィン基材の熱収縮影響が小さい120℃以下のような低温で張り合わせ、40℃以下のような低温でのエージングを行ってもポリオレフィン樹脂基材と金属基材との良好な接着性、耐薬品性さらに成形性を両立することが可能である。
【0017】
本発明によれば、良好なポットライフ性を維持しながら、貼り合せ後のエージング工程により十分に硬化させることができ、優れた接着性および耐薬品性を発現することができる。さらに、優れた成形性を発現するのに必要な貯蔵弾性率および破断伸度を満たす接着剤層を得ることが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0019】
<酸変性ポリオレフィン(A)>
本発明で用いる酸変性ポリオレフィン(A)は、酸価が2~50mgKOH/g-resin、アセトン抽出成分比率が0.01~2質量%の酸変性ポリオレフィンである。
【0020】
本発明で用いる酸変性ポリオレフィン(A)は限定的ではないが、ポリエチレン、ポリプロピレン及びプロピレン-α-オレフィン共重合体の少なくとも1種に、α,β-不飽和カルボン酸及びその酸無水物の少なくとも1種をグラフトすることにより得られるものが好ましい。
【0021】
プロピレン-α-オレフィン共重合体は、プロピレンを主体としてこれにα-オレフィンを共重合したものである。α-オレフィンとしては、例えば、エチレン、1-ブテン、1-ヘプテン、1-オクテン、4-メチル-1-ペンテン、酢酸ビニルなどを1種又は数種用いるこができる。これらのα-オレフィンの中では、エチレン、1-ブテンが好ましい。プロピレン-α-オレフィン共重合体のプロピレン成分とα-オレフィン成分との比率は限定されないが、プロピレン成分が50モル%以上であることが好ましく、70モル%以上であることがより好ましい。
【0022】
α,β-不飽和カルボン酸及びその酸無水物の少なくとも1種としては、例えば、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸及びこれらの酸無水物が挙げられる。これらの中でも酸無水物が好ましく、無水マレイン酸がより好ましい。具体的には、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、無水マレイン酸変性プロピレン-エチレン共重合体、無水マレイン酸変性プロピレン-ブテン共重合体、無水マレイン酸変性プロピレン-エチレン-ブテン共重合体等が挙げられ、これら酸変性ポリオレフィンを1種類又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0023】
酸変性ポリオレフィン(A)の酸価は、ポリオレフィン樹脂基材と金属基材との接着性および耐電解液性の観点から、2~50mgKOH/g-resinの範囲であることが必要である。好ましくは3~45mgKOH/g-resin、より好ましくは5~40mgKOH/g-resin、特に好ましくは7~35mgKOH/g-resinの範囲である。前記の値未満であると、硬化剤との相溶性が乏しくなることがある。そのため、架橋密度が低く、接着強度、耐薬品性(耐電解液性)が低下することがある。前記の値を超えると、分子量が低く、凝集力が弱くなるため、接着強度、耐薬品性(耐電解液性)が低下することがある。さらに製造効率も低下するため好ましくない。
【0024】
酸変性ポリオレフィン(A)の酸価は、α,β-不飽和カルボン酸、α,β-不飽和カルボン酸の酸無水物およびラジカル発生剤の使用量により調整することができる。
【0025】
酸変性ポリオレフィン(A)のアセトン抽出成分比率は、ポリオレフィン樹脂基材と金属基材との接着性および耐電解液性の観点から、0.01質量%~2質量%の範囲であることが必要である。好ましくは0.03質量%~1.7質量%であり、より好ましくは0.05質量%~1.4質量%であり、さらに好ましくは0.07質量%~1.2質量%であり、特に好ましくは0.1質量%~1質量%の範囲である。前記の値未満であると、製造効率が低下するため好ましくない。前記の値を超えると、凝集力が弱くなり接着性、耐薬品性および成形性が劣る場合がある。
【0026】
酸変性ポリオレフィン(A)の25℃における貯蔵弾性率(E’)は、ポリオレフィン
樹脂基材と金属基材の接着性および耐薬品性(耐電解液性)の観点から、10~2000MPaの範囲であることが好ましい。より好ましくは15~1700MPaであり、さらに好ましくは20~1400MPaであり、特に好ましいのは25~1100MPaであり、最も好ましいのは30~800MPaの範囲である。前記の値未満であると接着剤組成物からなる接
着剤層の凝集力不足につながり、接着性および耐薬品性(耐電解液性)が劣る場合がある。前記の値を超えると接着剤組成物からなる接着剤層の追従性が低下し、接着性が劣る場合がある。 また、前記の範囲内であれば、接着性、基材追従性が向上するため、積層体の成形性まで良好になるためリチウムイオン電池用包装材料としてより好ましい。
【0027】
酸変性ポリオレフィン(A)の25℃における引張破断伸度(Eb)はが50%~100
0%の範囲であることが好ましい。より好ましくは80%~900%であり、さらに好ましくは120%~800%であり、特に好ましくは160%~700%であり、最も好ましくは200%~600%である。前記の値未満であると接着剤組成物からなる接着剤層の追従性が低下し、成形時のピンホールなどにつながり成形性が劣る場合がある。また、一般的に引張破断伸度(Eb)と貯蔵弾性率(E’)は相反する性質であり、前記の値を超
えると貯蔵弾性率(E’)が低くなり、接着性および耐電解液性が劣る場合がある。また
、前記の範囲内であれば、接着性、基材追従性が向上するため、積層体の成形性まで良好になるためリチウムイオン電池用包装材料としてより好ましい。
【0028】
酸変性ポリオレフィン(A)の重量平均分子量(Mw)は、10,000~200,000の範囲であることが好ましい。より好ましくは20,000~180,000の範囲であり、さらに好ましくは30,000~160,000の範囲であり、特に好ましくは40,000~140,000の範囲であり、最も好ましくは、50,000~110,000の範囲である。前記の値未満であると、凝集力が弱くなり接着性が劣る場合がある。一方、前記の値を超えると、流動性が低く接着する際の操作性に問題が生じる場合がある。前記範囲内であれば、硬化剤との硬化反応が活かされるため好ましい。
【0029】
酸変性ポリオレフィン(A)における結晶性とは、示差走査型熱量計(DSC)を用いて、-100℃~250℃ まで20℃/分で昇温し、該昇温過程に明確な融解ピークを
示すものを指す。
【0030】
酸変性ポリオレフィンを結晶性とすることで、非晶性に比べ、凝集力が強く、接着性や耐薬品性に優れるため有利である。
【0031】
酸変性ポリオレフィン(A)の融点(Tm)は、50℃~120℃の範囲であることが好ましい。より好ましくは60℃~100℃の範囲であり、最も好ましくは70℃~90℃の範囲である。前記の値未満であると、結晶由来の凝集力が弱くなり、接着性や耐薬品性が劣る場合がある。一方、前記の値を超えると、溶液安定性、流動性が低く接着する際
の操作性に問題が生じる場合がある。
【0032】
酸変性ポリオレフィン(A)の融解熱(ΔH)は、1J/g~60J/gの範囲であることが好ましい。より好ましくは3J/g~50J/gの範囲であり、最も好ましくは5J/g~40J/gの範囲である。前記の値未満であると、結晶由来の凝集力が弱くなり、接着性や耐薬品性が劣る場合がある。一方、前記の値を超えると、溶液安定性、流動性が低く接着する際の操作性に問題が生じる場合がある。
【0033】
酸変性ポリオレフィン(A)の製造方法としては、特に限定されず、例えばラジカルグラフト反応(すなわち主鎖となるポリマーに対してラジカル種を生成し、そのラジカル種を重合開始点として不飽和カルボン酸および酸無水物をグラフト重合させる反応)、などが挙げられる。
【0034】
ラジカル発生剤としては、特に限定されないが、有機過酸化物を使用することが好ましい。有機過酸化物としては、特に限定されないが、ジ-tert-ブチルパーオキシフタレート、tert-ブチルヒドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、tert-ブチルパーオキシベンゾエート、tert-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、tert-ブチルパーオキシピバレート、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジ-tert-ブチルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド等の過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスイソプロピオニトリル等のアゾニトリル類等が挙げられる。
【0035】
<多官能ポリイソシアネート硬化剤(B)>
本発明に用いる多官能ポリイソシアネート硬化剤(B)は、1分子中に2個以上のイソ
シアネート基を有するポリイソシアネートであれば特に限定されず、周知のジイソシアネートおよびこれらから誘導された化合物を好ましく用いることができる。
例えば、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ビス(4-イソシアネートシクロヘキシル)メタン、または水添化ジフェニルメタンジイソシアネート等のジイソシアネートが挙げられる。さらに前記ジイソシアネートから誘導された化合物、即ち、前記ジイソシアネートのイソシアヌレート体、アダクト体、ビウレット型、ウレトジオン体、アロファネート体、イソシアネート残基を有するプレポリマー(ジイソシアネートとポリオールから得られる低重合体)、またはこれらの複合体等が挙げられる。これらを単独で使用しても良いし、2種以上を任意に組み合わせて使用しても良い。
【0036】
また、上記イソシアネート化合物の一部のイソシアネート基を、イソシアネート基との反応性を有する化合物と反応させた化合物を、多官能イソシアネート硬化剤として使用してもよい。イソシアネート基と反応性を有する化合物としては、ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、2-エチルヘキシルアミン、ジブチルアミン、エチレンジアミン、ベンジルアミン、アニリン等のアミノ基を含有する化合物類;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ヘキサノール、オクタノール、2-エチルヘキシルアルコール、ドデシルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ベンジルアルコール、フェノール等の水酸基を含有する化合物類;アリルグリシジルエーテル、2-エチルヘキシルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル等のエポキシ基を有する化合物類;酢酸、ブタン酸、ヘキサン酸、オクタン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、フタル酸等のカルボン酸を含有する化合物等が挙げられる。
【0037】
本発明で使用される多官能ポリイソシアネート硬化剤(B)として、中でも耐電解液性が優れるという理由から、前記ジイソシアネートのイソシアヌレート体を有するものが好ましい。
【0038】
本発明で使用される多官能ポリイソシアネート硬化剤(B)の配合量は、酸変性ポリオレフィン(A)100質量部に対して、0.5~40質量部の範囲が好ましく、より好ま
しくは1~35質量部であり、さらに好ましくは2~30質量部であり、特に好ましくは3~25質量部の範囲である。前記の値未満であると、十分な硬化効果が得られず接着性および耐薬品性が低い場合がある。前記の範囲を超えると、ポットライフ性や接着性が低下することがあり、また追従性の低下により成形時にピンホールが発生することがある。さらにコスト面の観点から好ましくない。
【0039】
<有機溶剤(C)>
本発明で用いる有機溶剤(C)は、酸変性ポリオレフィン(A)、多官能ポリイソシアネート硬化剤(B)を溶解させるものであれば、特に限定されない。具体的には、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素、シクロヘキサン、シクロヘキセン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロへキサン等の脂環族炭化水素、トリクロルエチレン、ジクロルエチレン、クロルベンゼン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、プロパンジオール、フェノール等のアルコール系溶剤、アセトン、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、ペンタノン、ヘキサノン、シクロヘキサノン、イソホロン、アセトフェノン等のケトン系溶剤、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ等のセルソルブ類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、ギ酸ブチル等のエステル系溶剤、エチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、エチレングリコールモノ-iso-ブチルエーテル、エチレングリコールモノ-tert-ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ-iso-ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル等のグリコールエーテル系溶剤等を使用することができ、これら1種または2種以上を併用することができる。
【0040】
有機溶剤(C)は、酸変性ポリオレフィン(A)100質量部に対して、80~2000質量部の範囲であることが好ましい。より好ましくは90~1600質量部、さらに好ましくは100~1200質量部であり、特に好ましくは110~800質量部の範囲である。前記範囲未満では、溶液状態およびポットライフ性が低下することがあり、前記範囲を超えると積層体および積層体を含むLiB用包装材料の生産性、製造コスト、輸送コス
トの面から不利となる場合がある。
【0041】
有機溶剤(C)は、接着剤組成物の溶液状態およびポットライフ性の観点から、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素およびハロゲン化炭化水素からなる群より選択された1種以上の溶剤(C1)、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤およびグリコールエーテル系溶剤からなる群より選択された1種以上の溶剤(C2)の混合液が好ましい。混合比としては、溶剤(C1)/溶剤(C2)=50~97/50~3(質量比)の範囲であることが好ましく、55~95/45~5(質量比)であることがより好ましく、60~90/40~10(質量比)であることがさらに好ましく、70~80/30~20(質量比)であることが特に好ましい。上記範囲を外れると接着剤組成物の溶液状態およびポットライフ性が低下することがある。また、溶剤(C1)が芳香族炭化水素または脂環族炭化水素であり、溶剤(C2)がケトン系溶剤であることが特に好ましい。
【0042】
<接着剤組成物>
本発明にかかる接着剤組成物は、前記酸変性ポリオレフィン(A)、多官能ポリイソシアネート硬化剤(B)および有機溶剤(C)の混合物であり、酸変性ポリオレフィン(A)、硬化剤(B)は、有機溶剤(C)に溶解しても良いし、分散しても良い。ポットライフ性の観点から溶解していることが好ましい。
【0043】
本発明にかかる接着剤組成物は、本発明の性能を損なわない範囲で、前記酸変性ポリオレフィン(A)、多官能ポリイソシアネート硬化剤(B)および有機溶剤(C)の他に各種の粘着付与剤、熱可塑性エラストマー、可塑剤を配合して使用することができる。粘着付与剤としては、特に限定されないが、ポリテルペン系樹脂、ロジン系樹脂、脂肪族系石油樹脂、脂環族系石油樹脂、共重合系石油樹脂及び水添石油樹脂等が挙げられる。また、熱可塑性エラストマーとしては、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン共重合樹脂、スチレン-エチレン-プロピレン-スチレンなどのスチレン系エラストマー、エチレンープロピレン共重合樹脂、エチレン-ブテン共重合樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂、エチレン-エチルアクリレート共重合樹脂等のオレフィン系エラストマー等が挙げられる。更に可塑剤としては、好ましくはポリイソプレン、ポリブテン等の液状ゴム、プロセスオイル等が挙げられる。また、これらの粘着付与剤、熱可塑性エラストマー、可塑剤は1種のみ用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0044】
本発明にかかる接着剤組成物は、本発明の性能を損なわない範囲で、前記酸変性ポリオレフィン(A)、多官能ポリイソシアネート硬化剤(B)および有機溶剤(C)の他に各種の硬化剤を併用して使用することができる。硬化剤としては、特に限定されないが、エポキシ樹脂、カルボジイミド化合物、オキサゾリン化合物、カップリング剤類等が挙げられる。エポキシ樹脂としては、ヘキサヒドロフタル酸グリシジルエステル、ダイマー酸グリシジルエステル等のグリシジルエステルタイプ、トリグリシジルイソシアヌレート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチルカルボキシレート、エポキシ化ポリブタジエン、エポキシ化大豆油等の脂環族もしくは脂肪族エポキサイド、グリシジルエーテル型のエポキシ樹脂、またはグリシジルアミン型のエポキシ樹脂等が挙げられる。また、カルボジイミド化合物としては、ジメチルカルボジイミド、ジイソプロピルカルボジイミド、ジシクロヘキシルカルボジイミド、t-ブチルイソプロピルカルボジイミド、ジフェニルカルボジイミド、ジ-β-ナフチルカルボジイミド等のモノカルボジイミド化合物類、または脂肪族ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネート、もしくは脂環族ジイソシアネートなど有機ジイソシアネートを縮合触媒の存在下、無溶媒又は不活性溶媒中で、脱炭酸縮合反応を行なうことにより製造することができるポリカルボジイミド化合物類等が挙げられる。また、オキサゾリン化合物としては、2-オキサゾリン、2-メチル-2-オキサゾリン、2-フェニル-2-オキサゾリン、2,5-ジメチル-2-オキサゾリン、または2,4-ジフェニル-2-オキサゾリンなどのモノオキサゾリン化合物、2,2’-(1,3-フェニレン)-ビス(2-オキサゾリン)、2,2’-(1,2-エチレン)-ビス(2-オキサゾリン)、2,2’-(1,4-ブチレン)-ビス(2-オキサゾリン)、または2,2’-(1,4-フェニレン)-ビス(2-オキサゾリン)などのジオキサゾリン化合物等が挙げられる。また、カップリング剤としては、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤等が挙げられる。
【0045】
本発明にかかる接着剤組成物は、本発明の性能を損なわない範囲で、前記酸変性ポリオレフィン(A)、多官能ポリイソシアネート硬化剤(B)および有機溶剤(C)の他に、硬化促進剤を配合して使用することができる。硬化促進剤としては、特に限定されないが、カルボン酸金属塩、3級アミン類、4級アンモニウム塩、有機過酸化物、ヒドラジン化合物、金属キレート化合物、含リン化合物、塩基性加硫剤類等が挙げられる。前記カルボン酸金属塩としては、炭素数1~30のカルボン酸の金属塩が挙げられる。当該カルボン
酸金属塩を構成するカルボン酸としては、例えば、酢酸,酪酸,オクタン酸,デカン酸,ラウリン酸,ミリスチン酸,パルミチン酸,ステアリン酸,オレイン酸,ベヘン酸,オクテン酸,エルカ酸,エライジン酸,アジピン酸,マロン酸,コハク酸,グルタル酸,クエン酸,酒石酸,リンゴ酸,ジグリコール酸などの脂肪族カルボン酸;安息香酸,クロロ安息香酸,アニス酸,アミノ安息香酸,フタル酸,テレフタル酸,ナフトエ酸,ナフタレンジカルボン酸,ベンゼントリカルボン酸等の芳香族カルボン酸;ナフテン酸;アセトン酸
等が挙げられる。また、当該カルボン酸金属塩を構成する金属としては、例えば、Li、Na、K、Mg、Ca、Zn、Al、Cu、Pb、Co、Fe、Mn、Sn、Ti等が挙げられる。当該カルボン酸金属塩として、具体的には、酢酸リチウム,酢酸ナトリウム,酢酸マグネシウム,酢酸アルミニウム,酪酸カリウム,酪酸カルシウム,酪酸亜鉛,オクタン酸ナトリウム,オクタン酸カルシウム,デカン酸カリウム,デカン酸マグネシウム,デカン酸亜鉛,ラウリン酸リチウム,ラウリン酸ナトリウム,ラウリン酸カルシウム,ラウリン酸アルミニウム,ミリスチン酸カリウム,ミリスチン酸ナトリウム,ミリスチン酸アルミニウム,パルミチン酸ナトリウム,パルミチン酸亜鉛,パルミチン酸マグネシウム,ステアリン酸ナトリウム,ステアリン酸カリウム,ステアリン酸カルシウム,ステアリン酸亜鉛,オレイン酸ナトリウム,ベヘン酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム,安息香酸亜鉛,フタル酸ナトリウム,フタル酸アルミニウム,テレフタル酸マグネシウム,ナフタレンジカルボン酸カルシウム、ラウリン酸ジブチルスズ、ラウリン酸トリブチルスズ、ラウリン酸ジオクチルスズ、トリブチルスズアセテート、ジブチルスズジアセテート、ジオクチルスズジアセテート、ジブチルスズ2-エチルヘキソエート、テトラブチルチタネート、テトライソブチルチタネート、テトラ2-エチルヘキシルチタネート、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸銅、ナフテン酸マグネシウム、アセト酢酸コバルト等が挙げられる。これらの中でも、好ましくは、ラウリン酸リチウム,ラウリン酸ナトリウム,ラウリン酸カルシウム,ラウリン酸アルミニウム,ミリスチン酸カリウム,ミリスチン酸ナトリウム,ミリスチン酸アルミニウム,パルミチン酸ナトリウム,パルミチン酸亜鉛,パルミチン酸マグネシウム,ステアリン酸ナトリウム,ステアリン酸カリウム,ステアリン酸カルシウム,ステアリン酸亜鉛、オレイン酸ナトリウムが挙げられる。また、カルボン酸の金属塩としては、カルボン酸の金属塩構造を有する重合体を使用することもできる。このような重合体としては、エチレンとラジカル重合性カルボン酸のIA族,IIA族,IIB族, IIIB族の金属(例えばLi,Na,K,Mg,Ca,Zn,Al等)塩とを共重合した構造を有するもの;エチレンとラジカル重合性カルボン酸の金属塩と他のラジカル重合性カルボン酸及び/またはその誘導体とを多元共重合した構造を有するもの等が挙げられる。また、前記3級アミン類としては、例えば、ジメチルアニリン、トリエタノールアミン、ジメチル-p-トルイジン等が挙げられる。また、前記ヒドラジン化合物としては、例えば、1-アセチル-2-フェニルヒドラジン等が挙げられる。また、前記金属キレート化合物としては、例えば、バナジウムアセチルアセトネート等が挙げられる。また、前記含リン化合物としては、例えば、ジメチルホスフィン、トリフェニルフォスフィン等が挙げられる。また、前記塩基性加硫剤類としては、例えば、ヘキサメチレンテトラアミン、n-ブチルアルデヒド-アニリン縮合物等が挙げられる。
【0046】
本発明にかかる接着剤組成物は、本発明の性能を損なわない範囲で前記酸変性ポリオレフィン(A)、多官能ポリイソシアネート硬化剤(B)および有機溶剤(C)の他に各種
の添加剤を配合して使用することができる。添加剤としては、特に限定されないが、難燃剤、顔料、ブロッキング防止剤等を使用することが好ましい。
【0047】
<積層体>
本発明の積層体は、ポリオレフィン樹脂基材と金属基材を本発明にかかる接着剤組成物で積層したものである。
【0048】
積層する方法としては、従来公知のラミネート製造技術を利用することができる。例え
ば、特に限定されないが、金属基材の表面に接着剤組成物をロールコータやバーコータ等の適当な塗布手段を用いて塗布し、乾燥させる。乾燥後、金属基材表面に形成された接着剤組成物の層(接着剤層)が溶融状態にある間に、その塗布面にポリオレフィン樹脂基材を積層接着(ラミ接着)して積層体を得ることができる。
前記接着剤組成物により形成される接着剤層の厚みは、特に限定されないが、0.5~10μmにすることが好ましく、0.8~9.5μmにすることがより好ましく、1~9μmにすることがさらに好ましい。
【0049】
<ポリオレフィン樹脂基材>
ポリオレフィン樹脂基材としては、従来から公知のポリオレフィン樹脂の中から適宜選択すればよい。例えば、特に限定されないが、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体などを用いることができる。中でも、ポリプロピレンの無延伸フィルム(以下、CPPともいう。)の使用が好ましい。その厚さは、特に限定されないが、20~100μmであることが好ましく、25~95μmであることがより好ましく、30~90μmであることがさらに好ましい。なお、ポリオレフィン樹脂基材には必要に応じて顔料や種々の添加物を配合してもよいし、表面処理を施してもよい。
【0050】
<金属基材>
金属基材としては、特に限定されないが、例えばアルミニウム、銅、鉄鋼、クロム、亜鉛、ジュラルミン、ダイカストなどの各種金属およびその合金を使用することができる。また、その形状としては、金属箔、圧延鋼板、パネル、パイプ、カン、キャップなど任意の形状を取り得ることができる。一般的には、加工性等の観点からアルミ二ウム箔が好ましい。また、使用目的によっても異なるが、一般的には0.01~10mm、好ましくは0.02~5mmの厚みのシートの形で使用される。
また、これら金属基材の表面を予め表面処理を施しておいてもよいし、未処理のままでもよい。いずれも場合であっても同等の効果を発揮することができる。
【0051】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。但し、本発明は実施例に限定されない。実施例中および比較例中に単に部とあるのは質量部を示す。
【0052】
<酸変性ポリオレフィン(A)の製造例>
製造例1
1Lオートクレーブに、プロピレン-エチレン共重合体(25℃における貯蔵弾性率320MPa、25℃における引張破断伸度760%)100質量部、トルエン233質量部
及び無水マレイン酸1質量部、ジ-tert-ブチルパーオキサイド0.5質量部を加え、140℃まで昇温した後、更に1時間撹拌した(ここで、1時間「反応」したという)
。その後、得られた反応液を100℃まで冷却後、予め40℃に加温したトルエン717質量部とメチルエチルケトン950質量部が入った容器に攪拌しながら注ぎ、40℃まで冷却し、更に30分間攪拌し、更に25℃まで冷却することで樹脂を析出させた(ここで、反応液をメチルエチルケトンなどの溶剤に攪拌しながら注ぎ込み、冷却することで樹脂を析出させる操作を「再沈」という)。その後、当該樹脂を含有するスラリー液を遠心分離することで無水マレイン酸がグラフト重合した酸変性プロピレン-エチレン共重合体と(ポリ)無水マレイン酸および低分子量物とを分離した。
更に、遠心分離して取り出した酸変性プロピレン-エチレン共重合体を、予め25℃に保温した新たな2000質量部のメチルエチルケトンが入った容器に攪拌しながら投入し、1時間攪拌を続けた。その後、スラリー液を遠心分離することで、更に酸変性プロピレン-エチレン共重合体と(ポリ)無水マレイン酸および低分子量物とを分離した。当該操作を2回繰り返すことで、精製した(ここで、遠心分離して取り出した酸変性プロピレン-エチレン共重合体をメチルエチルケトンに攪拌しながら投入し、再度遠心分離することで、精製を強化する操作を「リスラリー」とする)。
精製後、減圧下70℃で5時間乾燥させることにより、酸変性ポリオレフィンである無水マレイン酸変性プロピレン-エチレン共重合体(PO-1、酸価2mgKOH/g-resin、アセトン抽出成分比率0.1質量%、25℃における貯蔵弾性率300MPa、25℃
における引張破断伸度600%、重量平均分子量190,000、Tm88℃、△H37J/g)を得た。
【0053】
製造例2
無水マレイン酸の仕込み量を3質量部に変更し、リスラリー回数を1回、リスラリーの際に投入するメチルエチルケトンの量を1000質量部に変更した以外は製造例1と同様にすることにより、酸変性ポリオレフィンである無水マレイン酸変性プロピレン-エチレン共重合体(PO-2、酸価5mgKOH/g-resin、アセトン抽出成分比率1.8質量%、25℃における貯蔵弾性率280MPa、25℃における引張破断伸度650%、重量
平均分子量180,000、Tm88℃、△H36J/g)を得た。
【0054】
製造例3
トルエンの仕込み量を150質量部、無水マレイン酸の仕込み量を40質量部、ジ-tert-ブチルパーオキサイドの仕込み量を8質量部、反応時間を3時間、再沈に用いる溶剤をメチルエチルケトン700質量部、リスラリー回数を5回に変更した以外は製造例1と同様にすることにより、酸変性ポリオレフィンである無水マレイン酸変性プロピレン-エチレン共重合体(PO-3、酸価48mgKOH/g-resin、アセトン抽出成分比率0.1質量%、25℃における貯蔵弾性率180MPa、25℃における引張破断伸度35
0%、重量平均分子量31,000、Tm85℃、△H31J/g)を得た。
【0055】
製造例4
トルエンの仕込み量を150質量部、無水マレイン酸の仕込み量を40質量部、ジ-tert-ブチルパーオキサイドの仕込み量を8質量部、反応時間を3時間、再沈に用いる溶剤をメチルエチルケトン700質量部、リスラリーに用いる溶剤をメチルエチルケトン1000質量部、リスラリー回数を3回に変更した以外は製造例1と同様にすることにより、酸変性ポリオレフィンである無水マレイン酸変性プロピレン-エチレン共重合体(PO-4、酸価48mgKOH/g-resin、アセトン抽出成分比率1.8質量%、25℃における貯蔵弾性率150MPa、25℃における引張破断伸度300%、重量平均分子量2
7,000、Tm85℃、△H30J/g)を得た。
【0056】
製造例5
トルエンの仕込み量を150質量部、無水マレイン酸の仕込み量を20質量部、ジ-tert-ブチルパーオキサイドの仕込み量を6質量部、反応時間を3時間、再沈に用いる溶剤をメチルエチルケトン700質量部、リスラリーに用いる溶剤をメチルエチルケトン1000質量部、リスラリー回数を2回に変更した以外は製造例1と同様にすることにより、酸変性ポリオレフィンである無水マレイン酸変性プロピレン-エチレン共重合体(PO-5、酸価25mgKOH/g-resin、アセトン抽出成分比率0.9質量%、25℃における貯蔵弾性率400MPa、25℃における引張破断伸度500%、重量平均分子量6
0,000、Tm87℃、△H35J/g)を得た。
【0057】
製造例6
プロピレン-エチレン共重合体(25℃における貯蔵弾性率52MPa、25℃における
引張破断伸度1050%)を100質量部、トルエンの仕込み量を150質量部、無水マレイン酸の仕込み量を30質量部、ジ-tert-ブチルパーオキサイドの仕込み量を6質量部、反応時間を3時間、再沈に用いる溶剤をメチルエチルケトン700質量部、リスラリーに用いる溶剤をメチルエチルケトン1000質量部、リスラリー回数を2回に変更した以外は製造例1と同様にすることにより、酸変性ポリオレフィンである無水マレイン
酸変性プロピレン-エチレン共重合体(PO-6、酸価25mgKOH/g-resin、アセトン抽出成分比率1.0質量%、25℃における貯蔵弾性率12MPa、25℃における引
張破断伸度900%、重量平均分子量60,000、Tm58℃、△H7J/g)を得た。
【0058】
製造例7
プロピレン単独重合体(25℃における貯蔵弾性率2100MPa、25℃における引張
破断伸度900%)を100質量部、トルエンの仕込み量を150質量部、無水マレイン酸の仕込み量を30質量部、ジ-tert-ブチルパーオキサイドの仕込み量を6質量部、反応時間を3時間、再沈に用いる溶剤をメチルエチルケトン700質量部、リスラリーに用いる溶剤をメチルエチルケトン1000質量部、リスラリー回数を2回に変更した以外は製造例1と同様にすることにより、酸変性ポリオレフィンである無水マレイン酸変性プロピレン単独重合体(PO-7、酸価25mgKOH/g-resin、アセトン抽出成分比率0.9質量%、25℃における貯蔵弾性率1800MPa、25℃における引張破断伸度
60%、重量平均分子量60,000、Tm85℃、△H5J/g)を得た。
【0059】
製造例8
プロピレン-エチレン共重合体(25℃における貯蔵弾性率2720MPa、25℃にお
ける引張破断伸度400%)を100質量部、トルエンの仕込み量を186質量部、無水マレイン酸の仕込み量を20質量部、ジ-tert-ブチルパーオキサイドの仕込み量を6質量部、反応時間を3時間、再沈に用いる溶剤をメチルエチルケトン700質量部、リスラリーに用いる溶剤をメチルエチルケトン1000質量部、リスラリー回数を2回に変更した以外は製造例1と同様にすることにより、酸変性ポリオレフィンである無水マレイン酸変性プロピレン-エチレン共重合体(PO-8、酸価25mgKOH/g-resin、アセトン抽出成分比率1.0質量%、25℃における貯蔵弾性率2350MPa、25℃にお
ける引張破断伸度38%、重量平均分子量60,000、Tm125℃、△H63J/g)を得た。
【0060】
製造例9
トルエンの仕込み量を186質量部、無水マレイン酸の仕込み量を20質量部、ジ-tert-ブチルパーオキサイドの仕込み量を6質量部、反応時間を3時間、再沈に用いる溶剤をメチルエチルケトン1200質量部、リスラリーに用いる溶剤をメチルエチルケトン1200質量部、リスラリー回数を2回に変更した以外は製造例1と同様にすることにより、酸変性ポリオレフィンである無水マレイン酸変性プロピレン-エチレン共重合体(PO-9、酸価25mgKOH/g-resin、アセトン抽出成分比率1.2質量%、25℃における貯蔵弾性率7MPa、25℃における引張破断伸度1200%、重量平均分子量6
0,000、Tmピークなし、△H0J/g)を得た。
【0061】
製造例10
プロピレン-エチレン共重合体(25℃における貯蔵弾性率500MPa、25℃におけ
る引張破断伸度680%)を100質量部、トルエンの仕込み量を150質量部、無水マレイン酸の仕込み量を0.5質量部、ジ-tert-ブチルパーオキサイドの仕込み量を0.2質量部、反応時間を1時間、再沈に用いる溶剤をメチルエチルケトン1000質量部、リスラリーに用いる溶剤をメチルエチルケトン1000質量部、リスラリー回数を2回に変更した以外は製造例1と同様にすることにより、酸変性ポリオレフィンである無水マレイン酸変性プロピレン-エチレン共重合体(PO-10、酸価1mgKOH/g-resin、アセトン抽出成分比率0.1質量%、25℃における貯蔵弾性率400MPa、25℃
における引張破断伸度600%、重量平均分子量65,000、Tm71℃、△H35J/g)を得た。
【0062】
製造例11
トルエンの仕込み量を150質量部、無水マレイン酸の仕込み量を50質量部、ジ-tert-ブチルパーオキサイドの仕込み量を10質量部、反応時間を3時間、再沈に用いる溶剤をメチルエチルケトン700質量部、リスラリーに用いる溶剤をメチルエチルケトン1000質量部、リスラリー回数を3回に変更した以外は製造例1と同様にすることにより、酸変性ポリオレフィンである無水マレイン酸変性プロピレン-エチレン共重合体(PO-11、酸価55mgKOH/g-resin、アセトン抽出成分比率1.0質量%、25℃における貯蔵弾性率150MPa、25℃における引張破断伸度320%、重量平均分子
量30,000、Tm83℃、△H25J/g)を得た。
【0063】
製造例12
トルエンの仕込み量を150質量部、無水マレイン酸の仕込み量を40質量部、ジ-tert-ブチルパーオキサイドの仕込み量を8質量部、反応時間を3時間リスラリー回数を3回に変更した以外は製造例1と同様にすることにより、酸変性ポリオレフィンである無水マレイン酸変性プロピレン-エチレン共重合体(PO-12、酸価46mgKOH/g-resin、アセトン抽出成分比率4.5質量%、25℃における貯蔵弾性率110MPa、
25℃における引張破断伸度90%、重量平均分子量35,000、Tm86℃、△H30J/g)を得た。
【0064】
(主剤1の作製)
水冷還流凝縮器と撹拌機を備えた500mlの四つ口フラスコに、製造例1で得られた無水マレイン酸変性プロピレン-エチレン共重合体(PO-1)を100質量部、メチルシクロヘキサンを280質量部およびメチルエチルケトンを120質量部仕込み、撹拌しながら80℃まで昇温し、撹拌を1時間続けた後、冷却することで主剤1を得た。溶液状態を表1に示す。
【0065】
(主剤2~19の作製)
酸変性ポリオレフィンおよび有機溶剤を表1に示すとおりに変更し、主剤1と同様な方法で主剤2~19を作製した。配合量、溶液状態を表1に示す。
【0066】
【表1】
【0067】
実施例1
主剤1を500質量部、多官能ポリイソシアネート硬化剤(B)としてスミジュール(
登録商表)N-3300を1質量部配合し、接着剤組成物を得た。ポットライフ性、接着
性、耐薬品性および成形性の評価結果を表2に示す。
【0068】
実施例2~21、比較例1~3
主剤1~19および各硬化剤を表2、3に示すとおりに変更し、実施例1と同様な方法で実施例2~21、比較例1~3を行った。配合量、ポットライフ性、接着性、耐薬品性および成形性の結果を表2、3に示す。
【0069】
【表2】
【0070】
【表3】
【0071】
表2、3で用いた硬化剤は以下のものである。
<多官能ポリイソシアネート硬化剤(B)>
ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体:スミジュール(登録商標)N
-3300(バイエル社製)
ヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット体:デュラネート(登録商標)24A-100(旭化成ケミカルズ社製)
【0072】
上記のようにして得られた各酸変性ポリオレフィン、主剤および接着剤組成物に対して下記方法に基づいて分析測定および評価を行った。
酸価の測定
本発明における酸価(mgKOH/g-resin)は、1gの酸変性ポリオレフィン
(A)を中和するのに必要とするKOH量のことであり、JIS K0070(1992)の試験方法に準じて、測定した。具体的には、100℃に温度調整したキシレン100gに、酸変性ポリオレフィン1gを溶解させた後、同温度でフェノールフタレインを指示薬として、0.1mol/L水酸化カリウムエタノール溶液[商品名「0.1mol/Lエタノール性水酸化カリウム溶液」、和光純薬(株)製]で滴定を行った。この際、滴定に要した水酸化カリウム量をmgに換算して酸価(mgKOH/g)を算出した。
【0073】
アセトン抽出成分比率の測定
本発明におけるアセトン抽出成分比率は、ソックスレー抽出器を使用して、アセトンで2時間還流することで測定した。具体的には、円筒ろ紙に酸変性ポリオレフィン(A)50gを秤取し、ソックスレー抽出管の中に入れた後、1100mLのアセトンを入れた平底フラスコ、冷却管を取り付け組み立てて、ウォーターバスにて2時間還流することでアセトン抽出した。その後、円筒ろ紙を取り出し、平底フラスコ内のアセトン抽出液を留去し、更に100℃×1時間減圧乾燥した後の残留物の重量を計量し、下記式により算出した値である。
アセトン抽出成分比率(質量%)=(抽出残留物重量/試料採取量)×100
【0074】
25℃における貯蔵弾性率(E’)の測定
本発明における貯蔵弾性率(E’)は、JIS K7244-4(1999)の試験法
に準拠して測定した。具体的には、アイティー計測制御社製、動的粘弾性測定装置DVA-200を用いて、周波数10Hzにて、-50℃から5℃/分の速度で昇温しながら測定した値
である。
【0075】
25℃における引張破断伸度(Eb)の測定
本発明における引張破断伸度(Eb)は、JIS K7161(2014)の試験法に準拠して測定した。具体的には、オリエンテックコーポレーション社製のテンシロンRTM-100を用いて、25℃環境下で、速度50mm/分における引張において破断した際の伸度(%)を測定した値である。
【0076】
重量平均分子量(Mw)の測定
本発明における重量平均分子量は日本ウォーターズ社製ゲルパーミエーションクロマトグラフAlliance e2695(以下、GPC、標準物質:ポリスチレン樹脂、移
動相:テトラヒドロフラン、カラム:Shodex KF-806 + KF-803、カラム温度:40℃、流速:1.0ml/分、検出器:フォトダイオードアレイ検出器(波長254nm = 紫外線))に
よって測定した値である。
【0077】
融点、融解熱量の測定
本発明における融点、融解熱量は示差走査熱量計(以下、DSC、ティー・エー・インスツルメント・ジャパン製、Q-2000)を用いて、20℃/分の速度で昇温融解、冷却樹脂化して、再度昇温融解した際の融解ピークのトップ温度および面積から測定した値である。
【0078】
主剤溶液状態の評価
主剤1~19の溶液状態について、東機産業社製のブルックフィールド型粘度計TVB-10M(以下、B型粘度計ともいう)を用いて25℃の溶液粘度を測定することで評価した。
<評価基準>
◎(実用上優れる):500mPa・s未満
○(実用可能):500mPa・s以上1000mPa・s未満
×(実用不可能):1000mPa・s以上またはゲル化により粘度測定不可
【0079】
ポットライフ性の評価
ポットライフ性とは、酸変性ポリオレフィンに架橋剤または硬化剤を配合し、その配合直後または配合後一定時間経過後の該溶液の安定性を指す。ポットライフ性が良好な場合は、溶液の粘度上昇が少なく長期間保存が可能であることを指し、ポットライフ性が不良な場合は、溶液の粘度が上昇(増粘)し、ひどい場合にはゲル化現象を起こし、基材への塗布が困難となり、長期間保存が不可能であることを指す。
実施例1~21および比較例1~3で得られた接着剤組成物のポットライフ性を、25℃および40℃雰囲気で24時間貯蔵した後に、B型粘度計を用いて25℃において溶液粘度を測定することで評価した。評価結果を表2、3に示す。
<評価基準>
◎(実用上優れる):500mPa・s未満
○(実用可能):500mPa・s以上1000mPa・s未満
×(実用不可能):1000mPa・s以上またはゲル化により粘度測定不可
【0080】
金属基材とポリオレフィン樹脂基材との積層体の作製
金属基材にはアルミニウム箔(住軽アルミ箔社製、8079-0、厚さ40μm)を使用し、ポリオレフィン樹脂基材には無延伸ポリプロピレンフィルム(東洋紡社製パイレン(登録商標)フィルムCT、厚さ40μm)(以下、CPPともいう。)を使用した。
実施例1~19および比較例1~15で得られた接着剤組成物を金属基材にバーコータを用いて乾燥後の接着剤層の膜厚が3μmになるように調整して塗布した。塗布面を温風乾燥機を用いて100℃雰囲気で1分間乾燥させ、膜厚3μmの接着剤層が積層された金属基材を得た。前記接着剤層表面にポリオレフィン樹脂基材を重ね合わせ、テスター産業社製の小型卓上テストラミネーター(SA-1010-S)を用いて、ラミネート温度80℃あるいは120℃で、0.3MPa、1m/分にて貼り合わせ、25℃、50%RHにて36時間養生することで積層体を得た。
【0081】
上記のようにして得られた積層体に対して、下記方法にて評価を行った。
【0082】
接着性の評価
前記積層体を100mm×15mm大きさに切断し、T型剥離試験により接着性を以下の基準により評価した。評価結果を表2~3に示す。
【0083】
<T型剥離試験>
ASTM-D1876-61の試験法に準拠し、オリエンテックコーポレーション社製のテンシロンRTM-100を用いて、25℃環境下で、引張速度50mm/分における剥離強度を測定した。金属基材/ポリオレフィン樹脂基材間の剥離強度(N/cm)は5回の試験値の平均値とした。
【0084】
<評価基準>
☆(実用上特に優れる):8.0N/cm以上またはCPPが材破する(以下、単に「材破」ともいう。)。材破とは、金属基材/CPPの界面で剥離が生じず、金属基材またはCPPが破壊されることをいう。
◎(実用上優れる):7.5N/cm以上8.0N/cm未満
○(実用可能):7.0N/cm以上7.5N/cm未満
×(実用不可能):7.0N/cm未満
【0085】
耐薬品性の評価
LiBの包装材としての利用性を検討するため電解液試験による耐薬品性(以下、耐電解
液性ともいう)の評価を行った。前記積層体を、100mm×15mm大きさに切断し、電解液[エチレンカーボネート/ジエチルカーボネート/ジメチルカーボネート=1/1/1(容積比)に6フッ化リン酸リチウムを添加したもの]に85℃で1日間浸漬させた。その後、積層体を取り出しイオン交換水で洗浄、ペーパーワイパーで水を拭き取り、十分に水分を乾燥させ、T型剥離試験により耐薬品性を以下の基準により評価した。評価結果を表2~3に示す。
【0086】
<評価基準>
☆(実用上特に優れる):8.0N/cm以上または材破
◎(実用上優れる):7.5N/cm以上8.0N/cm未満
○(実用可能):7.0N/cm以上7.5N/cm未満
×(実用不可能):7.0N/cm未満
【0087】
成形性の評価
同じくLiBの包装材としての利用性を検討するため深絞り試験機による成形性の評価を
行った。
前記積層体を80×120mm大きさに切断し、冷間成形を行った。具体的には、株式
会社アマダ製の張り出し成形機(品番:TP-25C-X2)と、55mm×35mmの口径を有する形成金型(雌型)と、これに対応した成形金型(雄型)を用いて、25℃雰囲気下押え圧0.4MPaで0.5mmの成形深さから0.5mm単位で成形深さを変えて、それぞれ10個のサンプル(積層体)について冷間成形を行った。冷間成形後のサンプルについて、皺やアルミニウム箔にピンホール、クラックが10個のサンプル全てにおいて発生しない最も深い成形深さを、そのサンプルの限界成形深さとした。この限界成形深さから、以下の基準により電池用包装材料の成形性を評価した。評価結果を表3~4に示す。
<判定基準>
☆(実用上特に優れる):限界成形深さ6.0mm以上
◎(実用上優れる):限界成形深さ4.0mm以上6.0mm未満
○(実用可能):限界成形深さ2.0mm以上4.0mm未満
×:限界成形深さ2.0mm未満
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明にかかる接着剤組成物は、酸変性ポリオレフィン、多官能ポリイソシアネート硬化剤および有機溶剤を含有し、長期保存しても増粘やゲル化を生じることなく良好なポットライフ性を維持し、かつ金属基材とポリオレフィン樹脂基材との良好な接着性、耐電解液性、成形性を両立させることができる。そのため、本発明の接着剤組成物から形成されるポリオレフィン樹脂基材と金属基材との積層体は、家電外板、家具用素材、建築内装用部材などの分野のみならず、パソコン、携帯電話、ビデオカメラなどに用いられるリチウム電池の包装材(パウチ形態)としても幅広く利用し得るものである。