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特開2024-63191KCNQ増強剤としての1-((2-(2,2,2-トリフルオロエトキシ)ピリジン-4-イル)メチル)尿素誘導体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024063191
(43)【公開日】2024-05-10
(54)【発明の名称】KCNQ増強剤としての1-((2-(2,2,2-トリフルオロエトキシ)ピリジン-4-イル)メチル)尿素誘導体
(51)【国際特許分類】
   C07D 213/64 20060101AFI20240501BHJP
   A61K 31/44 20060101ALI20240501BHJP
   A61P 21/02 20060101ALI20240501BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240501BHJP
【FI】
C07D213/64
A61K31/44
A61P21/02
A61P43/00 111
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024033668
(22)【出願日】2024-03-06
(62)【分割の表示】P 2021546360の分割
【原出願日】2020-02-04
(31)【優先権主張番号】62/801,716
(32)【優先日】2019-02-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/811,038
(32)【優先日】2019-02-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】594197872
【氏名又は名称】イーライ リリー アンド カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(72)【発明者】
【氏名】セカレシュ,ヘレン,ジェーン
(72)【発明者】
【氏名】ワットン,マリア,アン
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアムズ,アンドリュ,カウェールウィン
(57)【要約】      (修正有)
【課題】カリウムチャネルの小分子増強剤(例えば、Kv7増強剤、これはKCNQ増強剤とも呼ばれる)、そのような化合物を含む組成物、ならびに筋萎縮性側索硬化症および運動ニューロン興奮性の変化によって引き起こされる他の神経疾患、限定されないが原発性側索硬化症、仮性球麻痺、進行性球麻痺、進行性筋萎縮およびてんかんなどの処置のためにそのような化合物を使用する方法を提供する。
【解決手段】以下の式の化合物がKv7増強剤として使用され得る。

【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式:
【化1】
(式中、R1は、
【化2】
であり、
R2はHまたはOHである)
の化合物、またはその薬学的に許容される塩。
【請求項2】
R1が、
【化3】
である、請求項1に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩。
【請求項3】
R2がOHである、請求項2に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩。
【請求項4】
メタノール中で(+)旋光度を有する単一の鏡像異性体を含む式:
【化4】
の、請求項3に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩。
【請求項5】
メタノール中で(-)旋光度を有する単一の鏡像異性体を含む式:
【化5】
の、請求項3に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩。
【請求項6】
R2がHである、請求項2に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩。
【請求項7】
R1が、
【化6】
である、請求項1に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩。
【請求項8】
R2がHである、請求項7に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩。
【請求項9】
R2がOHである、請求項7に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩。
【請求項10】
式:
【化7】
の、請求項9に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩。
【請求項11】
式:
【化8】
の、請求項9に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩を1
種または複数の薬学的に許容される担体、希釈剤または賦形剤と共に含む医薬組成物。
【請求項13】
運動ニューロン興奮性の変化によって引き起こされる疾患を処置する方法であって、必
要とする患者に有効量の請求項1~11のいずれか一項に記載の化合物、またはその薬学
的に許容される塩を投与するステップを含む、方法。
【請求項14】
運動ニューロン興奮性の変化によって引き起こされる前記疾患がALSである、請求項
13に記載の方法。
【請求項15】
運動ニューロン興奮性の変化によって引き起こされる疾患を処置する方法であって、必
要とする患者に請求項12に記載の医薬組成物を投与するステップを含む、方法。
【請求項16】
運動ニューロン興奮性の変化によって引き起こされる前記疾患がALSである、請求項
15に記載の方法。
【請求項17】
治療での使用のための、請求項1~11のいずれか一項に記載の化合物、またはその薬
学的に許容される塩。
【請求項18】
運動ニューロン興奮性の変化によって引き起こされる疾患の処置での使用のための、請
求項1~11のいずれか一項に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩。
【請求項19】
運動ニューロン興奮性の変化によって引き起こされる前記疾患がALSである、請求項
18に記載の使用のための化合物、またはその薬学的に許容される塩。
【請求項20】
運動ニューロン興奮性の変化によって引き起こされる疾患の処置のための医薬を製造す
るための、請求項1~11のいずれか一項に記載の化合物またはその薬学的に許容される
塩の使用。
【請求項21】
運動ニューロン興奮性の変化によって引き起こされる前記疾患がALSである、請求項
20に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩の使用。
【請求項22】
医薬組成物を調製するための方法であって、請求項1~11のいずれか一項に記載の化
合物、またはその薬学的に許容される塩を1種または複数の薬学的に許容される担体、希
釈剤、または賦形剤と混合するステップを含む、方法。
【請求項23】
式:
【化9】
の化合物またはその薬学的に許容される塩。
【請求項24】
メタノール中で(+)旋光度を有する単一の鏡像異性体を含む式:
【化10】
の化合物、またはその薬学的に許容される塩。
【請求項25】
式:
【化11】
の化合物、またはその薬学的に許容される塩。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は医療の分野にある。特に本発明は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、ならびに
運動ニューロン興奮性の変化によって引き起こされる他の神経疾患、例えば限定されない
が原発性側索硬化症、仮性球麻痺、進行性球麻痺、進行性筋萎縮およびてんかんなどを処
置するための化合物、方法、および医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ALS(「ルー・ゲーリック病」と呼ばれることがある)は、1年当たり100,00
0人に約1.5~3人が罹る致命的な神経疾患である。それは運動ニューロンの進行性の
喪失によって特徴付けられ、典型的には診断から2~3年以内に死に至る。研究は続いて
いるが、ALS症例の大多数は既知の原因がない散発性のようである。
【0003】
ALS患者は典型的には、線維束性収縮、筋痙攣および痙縮をもたらす、末梢および中
枢運動ニューロンの興奮性の増大を示す。ニューロン興奮性の増大はカルシウム過負荷お
よび細胞死をもたらすと考えられる。実際、運動ニューロン興奮性はALS患者における
生存と負に相関した(K. Kanai et. al., J. Neurol.Neurosurg.Psychiatry, 83, 734-73
8 (2012)を参照されたい)。
【0004】
研究は、なぜALS患者における運動ニューロンが興奮性を変えたか(非ALS患者と
比較して)に関する機序および原因を調べてきた(K. Kanai et. al., Brain, 129, 953-
962 (2006)を参照されたい)。研究の結果は、疾患関連過剰興奮性の主な誘因として、ニ
ューロンにおけるカリウムチャネル活性の低下を示唆している(同書を参照されたい)。
さらに、ALS患者からの多能性幹細胞に由来する運動ニューロンも過剰興奮性を示した
。(B.J.Wainger et. al., Cell Rep., 7, 1-11 (2014)を参照されたい)。これらの幹細
胞由来ニューロンは遅延整流カリウム電流の減少を示し、実際、薬剤であるレチガビンお
よびフルピルチン(これらは公知のKv7カリウムチャネル増強剤である)がこれらの幹
細胞由来ニューロンに添加された場合、運動ニューロンの過剰興奮性が正常化され、細胞
のin vitro生存が増加した(同書を参照されたい)。別の研究では、ラットの舌
下運動ニューロンを使用するALSのin vitroモデルにおいてKv7増強剤レチ
ガビンは興奮毒性の症状を減少させ、生存を増加させた(F. Ghezzi et. al., J. Physio
l., 596, 2611-2629 (2018)を参照されたい)。
【0005】
現在、ALSを処置するために承認されている唯一の薬物はリルゾールであり、これは
生存を2~3カ月延ばすことが示されている。より有効で、より良好な、より長く持続す
る処置が明らかに必要とされている。
【0006】
公知のKv7増強剤レチガビンはKv7.2~7.5(KCNQ2~KCNQ5)カリ
ウムチャネルに作用する。それは薬物抵抗性てんかんを有する患者における補助療法とし
て承認された。それは欧州および米国において2011年に承認されたが、2017年に
自主的に回収された。臨床使用からのレチガビンの回収は、薬物の非常に限られた使用に
至るいくつかの忍容性の問題に基づくと考えられた。忍容性の問題は、傾眠およびめまい
のよくあるおそらく作用機序に基づく発生、ならびに尿閉と網膜および皮膚における色素
沈着変化の稀な発生を含む。網膜変化、および失明の潜在性は、レチガビンのラベルに枠
付き警告され、作用機序に基づかないと考えられている。尿閉は膀胱Kv7.3/7.5
チャネルの増強の結果である可能性が最も高い。しかし、その副作用を考慮すると、新し
いKv7増強剤を開発する必要がある。
【0007】
ALS患者においてリルゾール(例えば、ALSのための承認された処置)およびレチ
ガビンの運動ニューロン興奮性に対する効果を比較する最近の研究は、Kv7チャネルの
増強剤がリルゾールより優れた有効性を有し得ることを示唆している(M. Kovalchuk et.
al., Clinical Pharmacology & Therapeutics, 104, 1136-1145 (2018)を参照されたい
)。したがって、レチガビンよりも良好な忍容性を有する改善された増強剤は、ALSお
よび他の過剰興奮性関連障害の臨床処置に有益になるであろう。(B. Kalappa, et al.,T
he Journal of Neuroscience, 35(23):8829-8842を参照されたい)(2015)。今日までKv
7に作用する薬剤はALSの処置のために承認されず、したがって、治療利益をもたらす
別のKv7増強剤などのKv7に作用する薬剤が依然として必要とされている。さらに、
そのような増強剤を、他のKv7チャネルよりもKv7.2/7.3に選択的にさせるこ
とは有益であり得る。望ましくない副作用を回避し、特に末梢および中枢運動ニューロン
の興奮性の処置のために、安全性、効力、有効性、および忍容性を含む改善された薬理学
的特性の組合せをもたらし得る、新しいKv7薬剤も必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本実施形態は、運動ニューロン興奮性の変化によって引き起こされるALSおよび他の
神経疾患の処置において有用であるカリウムチャネル増強剤(例えばKv7増強剤、KC
NQ増強剤とも呼ばれる)である化合物を提供する。
【0009】
具体的には、以下の式(「式I」と表される)の化合物がKv7増強剤として使用され
得る:
【0010】
【化1】
式中、R1は、
【0011】
【化2】
であり、式I中、R2はHまたはOHである。式Iの化合物に加えて、1種または複数の
薬学的に許容される塩が式Iの化合物から作製され、そのような薬学的に許容される塩も
Kv7増強剤として作製され、使用され得る。
【0012】
一部の実施形態では、式Iの化合物、またはその薬学的に許容される塩は、R1が、
【0013】
【化3】
であり、R2がHであるように作製される。
【0014】
他の実施形態では、式Iの化合物(またはその薬学的に許容される塩)は、R1が、
【0015】
【化4】
であり、R2がOHであるように作製される。さらに、そのような実施形態では、R2が
OHである場合、OH基が結合する炭素は立体中心である。したがって、一部の実施形態
では、式Iの化合物(または薬学的に許容される塩)は、2種類の鏡像異性体のラセミ混
合物であり得る。他の実施形態では、以下の鏡像異性体:
【0016】
【化5】
のいずれかを含む特定の鏡像異性体が使用され得る。当業者は、前述の鏡像異性体の1つ
だけを使用する実施形態をどのように構築するかを理解するであろう。他の実施形態は、
各成分について異なるパーセンテージを有する異なる鏡像異性体の混合物を用いて設計さ
れ得る。
【0017】
他の実施形態では、式Iの化合物(またはその薬学的に許容される塩)は、R1が、
【0018】
【化6】
であり、R2がHであるように作製される。
【0019】
さらに追加の実施形態では、式Iの化合物(またはその薬学的に許容される塩)は、R
1が、
【0020】
【化7】
であり、R2がOHであるように作製される。さらに、そのような実施形態では、R2が
OHである場合、OH基が結合する炭素は立体中心である。したがって、一部の実施形態
では、式Iの化合物(または薬学的に許容される塩)は、2種類の鏡像異性体のラセミ混
合物であり得る。他の実施形態では、以下の鏡像異性体:
【0021】
【化8】
のいずれかを含む特定の鏡像異性体が使用され得る。当業者は、前述の鏡像異性体の1つ
だけを使用する実施形態をどのように構築するかを理解するであろう。他の実施形態は、
各成分について異なるパーセンテージを有する異なる鏡像異性体の混合物を用いて設計さ
れ得る。
【0022】
本実施形態は、式Iの化合物または薬学的に許容される塩および1種または複数の薬学
的に許容される担体、希釈剤、または賦形剤を含む医薬組成物をさらに提供する。そのよ
うな医薬組成物は、疾患を処置する方法を提供し得る。具体的には、本実施形態は、必要
とする患者に有効量の式Iの化合物(またはその薬学的に許容される塩)を投与するステ
ップを含む、運動ニューロン興奮性の変化によって引き起こされる疾患を処置するための
方法を提供する。一部の特に好ましい実施形態では、運動ニューロン興奮性の変化によっ
て引き起こされる疾患はALSである。
【0023】
他の実施形態は、運動ニューロン興奮性の変化によって引き起こされる疾患を処置する
方法であって、必要とする患者に有効量の式Iの化合物(またはその薬学的に許容される
塩)を投与するステップを含む、方法を提供する。一部の特に好ましい実施形態では、運
動ニューロン興奮性の変化によって引き起こされる疾患はALSである。
【0024】
本実施形態は、治療での使用のための式Iの化合物(またはその薬学的に許容される塩
)も提供する。とりわけ、本実施形態は、運動ニューロン興奮性の変化によって引き起こ
される疾患の処置での使用のための式Iの化合物(またはその薬学的に許容される塩)を
提供する。一部の実施形態では、そのような疾患はALSであり得る。
【0025】
さらに、本実施形態は、運動ニューロン興奮性の変化によって引き起こされる疾患の処
置のための医薬の製造での式Iの化合物(またはその薬学的に許容される塩)の使用を提
供する。一部のそのような実施形態では、疾患はALSである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本明細書で使用される場合、用語「運動ニューロン興奮性の変化に関連する疾患」また
は「運動ニューロン興奮性の変化によって引き起こされる疾患」は、ALS、原発性側索
硬化症、仮性球麻痺、進行性球麻痺、てんかんおよび進行性筋萎縮からなる群から選択さ
れる疾患を含む。これらの用語はA. Verma, et al., "Atypical Motor Neuron Disease a
nd Related Motor Syndromes," Seminars in Neurology, Volume 21, Number 2, 2001に
記載されている疾患の全ても含む。そのような用語はPNH(末梢神経過剰興奮性)障害
も含む。PNH障害についての情報はC. Kucukali et al., "Peripheral nerve hyperexc
itability syndromes" Rev Neurosci. 2015;26(2):239-51で見つけることができる。した
がって、本明細書の化合物および薬学的に許容される塩は、これらの疾患の1つまたは複
数を処置するために使用され得る。
【0027】
本明細書において互換的に使用される場合、用語「患者」、「対象」、および「個体」
は、ヒト、とりわけ、必要とする患者を指す。ある特定の実施形態では、患者は、Kv7
の増強から利益を得る疾患、障害、または状態(例えば、ALSまたは別の疾患)により
さらに特徴付けられる。別の実施形態では、患者は、上記の状態、またはKv7の増強か
ら利益を得る状態を発症するリスクがあるとさらに特徴付けられる。
【0028】
有効量は、公知の技術の使用によって、および類似の状況下で得られた結果を観察する
ことによって、当業者によって決定され得る。患者の有効量の決定において、限定されな
いが、そのサイズ、年齢、および全体的な健康;関与する特定の疾患または障害;疾患ま
たは障害の関与度または重症度;個々の患者の反応;投与される特定の化合物;投与の様
式;投与される調製物のバイオアベイラビリティ特性;選択された用量レジメン;併用薬
の使用;ならびに他の関連する状況を含むいくつかの因子が考慮される。有効量は、一部
の実施形態では、末梢および中枢運動ニューロンの興奮性の臨床的に有意な低下をもたら
す。
【0029】
本発明の化合物は、化合物を生体利用可能にする任意の経路によって投与される医薬組
成物として製剤化される。好ましくは、そのような組成物は経口投与用である。そのよう
な医薬組成物およびそれを調製するための方法は、当技術分野において周知である(例え
ばRemington: The Science and Practice of Pharmacy, L.V.Allen, Editor, 22nd Editi
on, Pharmaceutical Press, 2012を参照されたい)。
【0030】
式Iの化合物およびその薬学的に許容される塩は、本発明の処置方法において特に有用
であり、ある特定の構成が好ましい。本発明の化合物の以下のリストは、そのような構成
を記載している。これらの好ましいものは、本発明の処置方法および化合物の両方に適用
可能であることが理解されるであろう。
【0031】
本実施形態の化合物(R2はOHである)は、
【0032】
【化9】
を含む。R2がOHであるこれらの化合物では、上の「平面結合」を有する化合物は、ラ
セミであり、および/または存在する両方の鏡像異性体を(50/50混合物またはある
他の比で)有する。上のくさび形および破線結合を有する化合物は特定の鏡像異性体を描
写する。「波線」結合を有する化合物は、それが存在する単一の鏡像異性体であるが、こ
の単一の鏡像異性体の正確な立体配置が不明であることを示し、したがってそのような鏡
像異性体はそれらの旋光度(例えば、それらが光を(+)方向に回転させるか、または(
-)方向に回転させるか)によって区別される。
【0033】
本実施形態の化合物は以下の分子(R2はHである)も含む:
【0034】
【化10】
【0035】
R2としてOH基を有する上の化合物は「上向き」の配置にOHを有する(くさび形の
突起によって示される)ものであり得る。OH基が「下向き」の配置である他の実施形態
が設計され得る。当業者は、例えば、異なる出発物質を使用するおよび/または異なる反
応を使用することなどによって、この他の鏡像異性体をどのように作製するかを理解する
であろう。そのような鏡像異性体は以下の構造を有し、本願で特許請求される実施形態の
一部である:
【0036】
【化11】
【0037】
本発明は全ての個々の鏡像異性体およびジアステレオマー、ならびにラセミ体を含む前
記化合物の鏡像異性体の混合物を企図するが、上で挙げた化合物およびその薬学的に許容
される塩が特に好ましい。
【0038】
個々の鏡像異性体は、選択的結晶化技術、キラルクロマトグラフィー(例えば、J. Jac
ques, et al., "Enantiomers, Racemates, and Resolutions", John Wiley and Sons, In
c., 1981、およびE.L.Eliel and S.H.Wilen, "Stereochemistry of Organic Compounds",
Wiley-Interscience, 1994を参照されたい)、または超臨界流体クロマトグラフィー(
SFC)(例えばT. A.Berger; "Supercritical Fluid Chromatography Primer," Agilen
t Technologies, July 2015を参照されたい)などの方法によって、本発明の化合物の合
成中の任意の都合のよい時点で当業者によって分離または分割され得る。
【0039】
本発明の化合物の薬学的に許容される塩は、例えば、当技術分野で周知の標準条件下の
適した溶媒中での本発明の化合物の適切な遊離塩基および適切な薬学的に許容される酸の
反応によって形成され得る。例えば、Gould, P.L., "Salt selection for basic drugs,"
International Journal of Pharmaceutics, 33:201-217 (1986);Bastin, R.J., et al.
"Salt Selection and Optimization Procedures for Pharmaceutical New Chemical Enti
ties," Organic Process Research and Development, 4:427-435 (2000);およびBerge,
S.M., et al., "Pharmaceutical Salts," Journal of Pharmaceutical Sciences, 66:1-1
9, (1977)を参照されたい。
【0040】
本発明の化合物またはその塩は、当業者に公知の様々な手順によって調製することがで
き、その手順の一部は以下のスキーム、調製法、および実施例に例示されている。以下の
スキームにおける各ステップの生成物は、抽出、蒸発、沈殿、クロマトグラフィー、濾過
、粉砕、および結晶化を含む、当技術分野で周知の従来の方法によって回収され得る。以
下のスキームでは、全ての置換基は、特に他の指示がない限り、前に定義された通りであ
る。試薬および出発物質は、当業者に容易に入手可能である。本発明の範囲を限定するこ
となく、以下のスキーム、調製法、および実施例は、本発明の態様をさらに例示するため
に提供される。さらに、当業者は、対応する所望の立体化学配置を有し、当業者が調製で
きる出発物質または中間体を使用することによって、式Iの化合物を調製し得ることを理
解している。
【0041】
ある特定の略語が以下で使用され得る。これらの略語は以下の通りを意味する:「AC
N」はアセトニトリルを指し;「Ac」はアセチルを指し;「AcOH」は酢酸を指し;
「AcO」は無水酢酸を指し;「AP5」は(2R)-アミノ-5-ホスホノペンタン
酸を指し;「BDNF」は脳由来神経栄養因子を指し;「BOC」はtert-ブトキシ
カルボニルを指し;「CAS#」はChemical Abstracts登録番号を指
し;「CMAP」は複合筋活動電位を指し;「DCM」は塩化メチレンまたはジクロロメ
タンを指し;「DIPEA」はN,N-ジイソプロピルエチルアミンを指し;「DMEA
」はジメチルエチルアミンを指し;「DMF」はN,N-ジメチルホルムアミドを指し;
「DMSO」はジメチルスルホキシドを指し;「D-PBS」はダルベッコリン酸緩衝生
理食塩水を指し;「EDTA」はエチレンジアミン四酢酸を指し;「EGTA」はエチレ
ングリコール-ビス(β-アミノエチルエーテル)-N,N,N’,N’-四酢酸を指し
;「ES/MS」はエレクトロスプレー質量分析を指し;「EtO」はジエチルエーテ
ルを指し;「EtOAc」は酢酸エチルを指し;「EtOH」はエタノールまたはエチル
アルコールを指し;「h」は時間(hour)または時間(hours)を指し;「HEPES」
は4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸を指し;「IPA」
はイソプロパノールまたはイソプロピルアルコールを指し;「IPAm」はイソプロピル
アミンを指し;「iPrOAc」は酢酸イソプロピルを指し;「LC/MSMS」はタン
デム質量分析を伴う液体クロマトグラフィーを指し;「LiHMDS」はリチウムビス(
トリメチルシリル)アミドを指し;「KOtBu」はカリウム-tert-ブトキシドを
指し;「Me」はメチルを指し;「msec」は時間の単位としてのミリ秒(millisecon
d)またはミリ秒(milliseconds)を指し;「MTBE」はメチル-tert-ブチルエ
ーテルを指し;「min」は分(minute)または分(minutes)を指し;「NaOtBu
」はナトリウム-tert-ブトキシドを指し;「n-BuLi」はn-ブチルリチウム
を指し;「NBQX」は(2,3-ジヒドロキシ-6-ニトロ-7-スルファモイル-ベ
ンゾ[f]キノキサリンを指し;「OAc」はアセテートまたはアセトキシを指し;「P
BS」はリン酸緩衝生理食塩水を指し;「RT」は室温を指し;「SCX」は強カチオン
交換基を指し;「SD」は標準偏差を指し;「sec」は時間の単位としての秒(second
)または秒(seconds)を指し;「SEM」は標準誤差を指し;「SFC」は超臨界流体
クロマトグラフィーを指し;「TEA」はトリエチルアミンを指し;「TFA」はトリフ
ルオロ酢酸を指し;「THF」はテトラヒドロフランを指し;「TMA」はトリメチルア
ミンを指し;「TMEDA」はテトラメチルエチレンジアミンを指し;「Tris」はト
リス(ヒドロキシメチル)アミノメタンまたは2-アミノ-2-(ヒドロキシメチル)プ
ロパン-1,3-ジオールを指し;「[α] 20」は20℃および589nmでの比旋
光度を指し、cはg/mL単位の濃度である(これは通常g/100mLである)。
【0042】
一般的なスキーム
【0043】
【化12】
スキーム1は式I(式中、Rは上記の通り定義される)の化合物の調製を例示する。
適切に置換されたアミン(またはその対応する塩、例えばHCl)の活性化エステル形成
は、例えばカルボニルジイミダゾールを使用して、当技術分野において十分に文書で実証
されており、適した有機塩基と共に前記活性化中間体を用いる(2-エトキシ-4-ピリ
ジル)メタンアミン(またはその対応する塩形態、例えばHCl)のO-カルボニル化に
対する選択的N-カルボニル化は、本発明の所望の尿素を生成し得る(ステップ1)。当
業者は、当技術分野で周知のように、立体化学を含む式Iの化合物が、単一の鏡像異性体
を得るためのキラル置換アミンを介して、またはSFCなどのキラルクロマトグラフィー
技術を使用する、もしくはキラル塩調製物などのキラル補助剤の使用による、式Iの化合
物のキラル分割によって、調製され得ることを認識するであろう。
【0044】
【化13】
【0045】
スキーム2はrac-2-アミノ-1-[1-(トリフルオロメチル)-シクロプロピ
ル]エタノール塩酸塩の調製を描写する。(トリフルオロメチル)シクロプロパンカルボ
ン酸からのワインレブ型アミド調製(ステップ2)は、当技術分野で十分に記載されてい
る様々な条件下で達成することができる。THFまたはEtOなどの適した有機溶媒中
での、標準的な還元剤を用いる(ステップ3a)、例えば水素化アルミニウムリチウムを
使用するワインレブ型アミドの還元、続いてアルデヒドの単離およびNaHまたはKOt
Buなどの強塩基の存在下で生成したニトロメタンのアニオンの対応するアルデヒドへの
添加(ステップ3b)による、ニトロ-1-[1-(トリフルオロメチル)シクロプロピ
ル]エタノールを調製するための2ステッププロセスは、所望のラセミ2-ニトロ-1-
[1-(トリフルオロメチル)シクロプロピル]エタノールを与え得る。ニトロ基(ステ
ップ4)の対応するアミンへのその後の還元は、当技術分野で十分に記載されている様々
な条件下で達成することができ、得られたアミンは、使用しやすくするために適切な塩形
態、例えばHClに変換され得る。当業者は、キラルクロマトグラフィー、またはキラル
塩補助剤を使用する調製などの当技術分野で周知の標準技術を使用して、アミンのラセミ
混合物がその2種類のキラル鏡像異性体に分割され得ることを認識するであろう。
【0046】
【化14】
【0047】
スキーム3は必要な(2S)-1-アミノ-3,3-ジメチル-ブタン-2-オールま
たはその対応する塩の調製を描写する。Co3+に活性化されているCo2+などのキラ
ル遷移金属触媒を使用する2-tert-ブチルオキシランの速度論的光学分割(ステッ
プ5)は、JACS 9 VOL.124, NO.7, 2002, 1307に報告されている文献に基づいて達成され
得る。得られた立体化学は、キラル触媒の立体化学に依存して割り当てられ得る。したが
って、(2S)-2-tert-ブチルオキシランはS,S-(サレン)Co3+OAc
を使用して調製され得る(JACS 9 VOL.124, NO.7, 2002, 1307を参照されたい)。さらに
、S-立体化学の検証はTetrahedron: Asymmetry 13 (2002) 1209-1217における報告され
たデータとの比較によって達成され得る。立体制御エポキシド開環は、当業者に周知の条
件下で、MeOH中でNHなどの窒素求核剤を使用して達成され得る(ステップ6)。
得られたアミノアルコールは、当技術分野における周知の条件下で適した塩形態に変換さ
れ得る。
【0048】
調製1
N-メトキシ-N-メチル-1-(トリフルオロメチル)シクロプロパンカルボキサミ
【0049】
【化15】
EtOAc(50mL)中の市販の1-(トリフルオロメチル)シクロプロパンカルボ
ン酸[CAS#277756-46-4](4.8g、31.4mmol)およびN,O
-ジメチルヒドロキシルアミン塩酸塩(4.65g、46.7mmol)の混合物を0℃
に冷却し、2,4,6-トリプロピル-1,3,5,2,4,6-トリオキサトリホスホ
ラン-2,4,6-トリオキシド溶液の溶液(DMF中50質量%、28mL、47.5
mmol)を添加漏斗により滴下添加する。反応混合物を室温で20時間撹拌する。反応
混合物を0℃に冷却し、飽和NHCl水溶液に注ぐことによってクエンチする。得られ
た相を分離し、水性層をEtOAcで抽出する。有機抽出物を合わせ、MgSOで脱水
し、濾過し、蒸発乾固して、表題化合物を得る(4.4g、67%収率)。1H NMR (400
MHz, CDCl3) δ 3.74 (s, 3H), 3.29 (s, 3H), 1.33-1.25 (m, 4H).ES/MS:m/z
198[M+H]。
【0050】
調製2
(±)-2-ニトロ-1-[1-(トリフルオロメチル)シクロプロピル]エタノール
【0051】
【化16】
THF(20mL、20mmol)中の水素化アルミニウムリチウムの1M溶液をEt
O(50mL)中のN-メトキシ-N-メチル-1-(トリフルオロメチル)シクロプ
ロパンカルボキサミド(4.3g、20.9mmol)の0℃溶液に滴下添加し、得られ
た混合物を1時間撹拌する。水(0.81mL)、次いで2M水性NaOH(0.81m
L)、次いで追加の水(2.43mL)の滴下添加によって反応をクエンチする。MgS
(5g)を添加し、得られた混合物を最低真空で珪藻土のパッドを通して濾過して、
EtO中の1-(トリフルオロメチル)シクロプロパンカルボアルデヒドの溶液と考え
られるものを得る。この溶液をニトロメタン(60mL、1.1mol)およびKOtB
u(360mg、3.17mmol)の0℃の急速撹拌溶液に滴下添加する。約1時間後
、反応物を室温に温め、終夜撹拌する。フラスコ内の褐色ゴム状物から溶媒をデカントし
、減圧下で濃縮する。得られた残留物を0~10%MeOH/DCMで溶出するシリカゲ
ル上で精製して、表題化合物を無色油状物として得る(2.9g、67%収率)。1H NMR
(400 MHz, CDCl3) δ 0.97-0.91 (m, 1H), 1.13-0.99 (m, 3H), 2.66 (d, J= 5.1 Hz, 1
H), 4.41-4.36 (ddd, J= 9.8, 5.1, 2.4 Hz, 1H), 4.59-4.53 (dd, J= 9.8, 13.8 Hz, 1H
), 4.68 (dd, J= 2.4, 13.8 Hz, 1H).
【0052】
調製3
(±)-2-アミノ-1-[1-(トリフルオロメチル)シクロプロピル]エタノール
塩酸塩
【0053】
【化17】
THF(37mL、37mmol)中の水素化アルミニウムリチウムの1M溶液をEt
O(30mL)中の(±)-2-ニトロ-1-[1-(トリフルオロメチル)シクロプ
ロピル]エタノール(2.9g、14.8mmol)の0℃溶液に滴下添加し、得られた
反応混合物を室温に終夜撹拌する。混合物を0℃に冷却し、THF(15mL、15mm
ol)中の水素化アルミニウムリチウムの追加の1M溶液を滴下添加する。反応混合物を
室温に温め、4時間撹拌する。水(1.96mL)、次いで2M水性NaOH(1.96
mL)、次いで水(5.88mL)の滴下添加によって、0℃で反応混合物をクエンチす
る。MgSO(5g)を添加し、得られた混合物を10分間撹拌し、珪藻土の床を通し
て濾過する。濾液をジオキサン(20mL、80mmol)中の4M HClで処理し、
減圧下で濃縮する。得られた残留物をEtO(50mL)中に急速撹拌により懸濁する
。得られた白色固体を濾過によって単離して、表題化合物を得る(1.52g、47%収
率)。ES/MS:m/z=170[M+H]。
【0054】
調製3の別の手順
PARRフラスコに酸化白金(IV)(242mg、1.07mmol)、EtOH(
24mL)中の(±)-2-ニトロ-1-[1-(トリフルオロメチル)シクロプロピル
]エタノール(2.42g、11.5mmol)の溶液および酢酸(4.96mL)を添
加する。フラスコを55psiの水素雰囲気下に置き、室温で5時間振盪する。反応物を
珪藻土の床を通して濾過し、減圧下で濃縮する。残留物を1,4-ジオキサン(17.2
mL)中でスラリーにし、1,4-ジオキサン(10mL、40mmol)中の4N H
Clを滴下添加し、2時間撹拌する。混合物を濾過し、ケーキを1,4-ジオキサンで洗
浄し、15分間真空引きで乾燥する。得られた固体を真空オーブン内45℃で3時間乾燥
させて、表題化合物を得る(2.21g、80%収率)。
【0055】
調製4(これは実施例2を与える)
(±)-1-[2-ヒドロキシ-2-[1-(トリフルオロメチル)シクロプロピル]
エチル]-3-[[2-(2,2,2-トリフルオロエトキシ)-4-ピリジル]メチル
]尿素
【0056】
【化18】
DCM(4mL)中の[2-(2,2,2-トリフルオロエトキシ)-4-ピリジル]
メタンアミン塩酸塩[CAS#2044704-69-8](200mg、0.8mmo
l)の懸濁液を0℃に冷却し、DIPEA(580μL、3.3mmol)および1,1
’-カルボニルジイミダゾール(149mg、0.9mmol)を添加する。得られた反
応物を0℃で15分間激しく撹拌し、(±)-2-アミノ-1-[1-(トリフルオロメ
チル)シクロプロピル]エタノール塩酸塩(232mg、1.01mmol)を添加する
。得られた混合物を室温で終夜撹拌する。水の添加によってクエンチし、DCMで希釈し
、疎水性フリットを通す。有機層を蒸発させ、得られた残留物を0~15%MeOH/D
CMで溶出するシリカゲル上で精製して、表題化合物を得る(198mg、57%収率)
。ES/MS:m/z=402[M+H]。
【0057】
調製4の別の手順
DCM(10mL)中で[2-(2,2,2-トリフルオロエトキシ)-4-ピリジル
]メタンアミン二塩酸塩(500mg、1.79mmol)およびDIPEA(1.26
mL、7.16mmol)を撹拌して、清澄な溶液を得る。1,1’-カルボニルジイミ
ダゾール(311mg、1.88mmol)を添加し、30分間撹拌する。(±)-2-
アミノ-1-[1-(トリフルオロメチル)シクロプロピル]エタノール塩酸塩(465
mg、2.15mmol)を添加し、反応物を室温で48時間撹拌する。水を添加し、有
機相を分離し、硫酸ナトリウムで脱水する。有機物を濾過し、蒸発させ、得られた残留物
を0~15%MeOH/DCMで溶出するシリカゲル上で精製して、表題化合物を得る(
680mg、90%収率)。
【0058】
この分子のキラル部分は、速度論的光学分割および開環化学を使用して合成し得る。
【0059】
調製5
(2S)-1-アミノ-3,3-ジメチル-ブタン-2-オール塩酸塩
【0060】
【化19】
(2S)-2-tert-ブチルオキシランを商業的に(CAS#40102-55-
4)またはR配置エポキシドがRR触媒から得られ、したがってSエポキシドがSS触媒
から得られることが報告されているJ. AM.CHEM.SOC.9 VOL.124, NO.7, 2002 1307に報告
されている速度論的光学分割により得る:
【0061】
【化20】
【0062】
EtOH(427mL)中の(2S)-2-tert-ブチルオキシラン(107g、
1.01モル)およびNHOH(1.3L、10.7モル)の混合物を密閉容器内で、
100℃で4時間加熱する。減圧下で冷却し、濃縮する。得られた残留物をDCM(10
0mL)中に0℃で溶解し、ジオキサン(267mL、1.1モル)中のHClの4M溶
液を10分にわたりゆっくり添加するうちに、白色沈殿物が形成される。得られた固体を
濾過し、冷たいDCMで洗浄し、真空吸引によって乾燥させて、表題化合物を得る(10
3g;62.9%収率)。1H NMR (300.1 MHz, MeOD): δ 0.94 (s, 9H), 2.76 (dd, J=
11.1, 12.6 Hz, 1H), 3.09 (dd, J= 2.5, 12.6 Hz, 1H), 3.41 (dd, J= 2.5, 11.1 Hz, 1
H).[α] 20=+32.38°(c=0.8g/100mL、EtOH)。Tetrahedr
on:Asymmetry 13 (2002) 1209-1217において報告された文献[α] 20=+25.9°
(c=0.47g/100mL、EtOH)。
【0063】
調製5の別の手順
AおよびBのラベルを付けた2つのISCO2~1000mlシリンジポンプを用意す
る:
ポンプAにMeOH中のNHの7M溶液を充填する。ポンプBにMeOH(995m
L)中のNHの7M溶液に(2S)-2-tert-ブチルオキシラン(25g、23
2mmol)を溶解した溶液を充填する。それらのポンプをオーブン内の500mLステ
ンレス製管型反応器(OD=1/8インチ)に接続し、次いで出口である、熱交換器とし
て作用する、オーブンの外に位置する7mLステンレス製管型反応器(OD=1/16イ
ンチ)に接続し、1200psiに設定されたEQUILIBAR(登録商標)背圧レギ
ュレーターを熱交換器の後ろに接続する。
【0064】
ポンプAを使用して管型反応器にMeOH中のNHの7M溶液を5mL/分で充填す
る。オーブン温度を200℃に設定する。これらの管型反応器が満たされたら、10mL
/分で100分間ポンプBに切りかえ、次いでポンプAに切りかえてMeOH中のNH3
の7M溶液を同じ流速でさらに1時間供給する。
【0065】
収集した溶液を減圧下室温で濃縮して、粗製(2S)-1-アミノ-3,3-ジメチル
-ブタン-2-オール(24.4g)を得る。粗製物質をtert-ブチルメチルエーテ
ル(150mL)に溶解し、IPA(46.4mL、255mmol)中のHClの5.
5M溶液を激しく撹拌しながら5分にわたり滴下添加する。得られた白色固体を濾過し、
MTBE(4×25mL)で洗浄し、乾燥させて、表題化合物を得る(23g、72%収
率)。
【0066】
調製6
[2-(2,2,2-トリフルオロエトキシ)-4-ピリジル]メタンアミン二塩酸塩
【0067】
【化21】
2-(2,2,2-トリフルオロエトキシ)ピリジン-4-カルボニトリル[CAS#
618446-30-3](82.5g、367mmol)をEtOH(500mL)中
で撹拌し、溶液を溶解していない固体からデカントし、毎回溶液をデカントしながら固体
をEtOH(3×50mL)で洗浄する。EtOH溶液を合わせ、追加のEtOH(15
0mL)で希釈し、濃HClの水溶液(125mL)を添加する。約10mL EtOH
中の10%パラジウム炭素(3.7g)のスラリーを添加する。得られた反応混合物を6
0psiのHの雰囲気下、室温で終夜振盪する。混合物を珪藻土のパッドを通して濾過
し、EtOHで洗浄し、濾液を減圧下で濃縮して、白色固体を残す。得られた固体をMT
BE中45℃で30分間スラリーにし、混合物を室温に冷却し、濾過して、固体を得る。
固体を水(400mL)中に溶解し、MTBE(400次いで200ml)で2回抽出す
る。水性相を減圧下で濃縮して、クリーム色の固体を得、これをTHF(100mL)中
でスラリーにし、濾過する。濾過ケーキをTHF(2×30ml)で洗浄し、真空吸引下
で乾燥させて、表題化合物を得る(46.16g、44%収率)。濾液を減圧下でさらに
濃縮し、真空オーブン内で終夜乾燥させる。得られた固体をTHF(50mL)中で30
分間スラリーにし、濾過して、表題化合物の追加の収穫物を得る(34g、32.5%収
率)。ES/MS:m/z307[M+H]。塩化物イオン分析(IC)はモル比2:1
の塩化物イオン:親を示した。
【0068】
[実施例1]
1-[(2S)-2-ヒドロキシ-3,3-ジメチル-ブチル]-3-[[2-(2,
2,2-トリフルオロエトキシ)-4-ピリジル]メチル]尿素
【0069】
【化22】
[2-(2,2,2-トリフルオロエトキシ)-4-ピリジル]メタンアミン塩酸塩(
8.06g、33.2mmol)をDCM(50mL)中で撹拌し、DIPEA(29m
L、166mmol)を添加する。得られた混合物を5分間撹拌し、1,1’-カルボニ
ルジイミダゾール(5.7g、33.2mmol)を添加する。混合物を10分間撹拌し
、(2S)-1-アミノ-3,3-ジメチル-ブタン-2-オール塩酸塩(5g、32.
5mmol)を添加し、得られた反応混合物を週末にかけて撹拌する。反応混合物を水で
洗浄し、有機相を分離し、減圧下で濃縮する。得られた残留物をDCM中0~10%Me
OHで溶出するシリカゲル上のフラッシュカラムクロマトグラフィーによって精製して、
溶媒蒸発後に表題化合物を得る(8.16g、72%収率)。
【0070】
物質を上記の通り調製した別のロットの表題化合物(4.37g)と合わせ、iPrO
Ac(45ml)から再結晶化して、11.29gの表題化合物を得る。ES/MS:m
/z350[M+H]。[α] 20=+29.845°(c=0.2g/100mL、
MeOH)。
【0071】
[実施例2]
キラル分割による(+)-1-[2-ヒドロキシ-2-[1-(トリフルオロメチル)
シクロプロピル]エチル]-3-[[2-(2,2,2-トリフルオロエトキシ)-4-
ピリジル]メチル]尿素および(-)1-[2-ヒドロキシ-2-[1-(トリフルオロ
メチル)シクロプロピル]エチル]-3-[[2-(2,2,2-トリフルオロエトキシ
)-4-ピリジル]メチル]尿素
【0072】
【化23】
35℃、100barで、152mL/分の92:8CO/0.2%N,N-ジメチ
ルエチルアミンを含むエタノールで溶出し、220nmで検出するCHIRALPAK(
登録商標)AD-H(250×30mm、5μ)カラムを使用するSFCキラル精製に(
±)-1-[2-ヒドロキシ-2-[1-(トリフルオロメチル)シクロプロピル]エチ
ル]-3-[[2-(2,2,2-トリフルオロエトキシ)-4-ピリジル]メチル]尿
素(680mg)を供し、各画分を蒸発させ、45℃の真空オーブン内で乾燥させて、
鏡像異性体1(第1の溶出ピーク、285.4mg):(-)-1-[2-ヒドロキシ
-2-[1-(トリフルオロメチル)シクロプロピル]エチル]-3-[[2-(2,2
,2-トリフルオロエトキシ)-4-ピリジル]メチル]尿素;[α] 20=-21.
0°(c=0.20g/100mL、MeOH);
鏡像異性体2(第2の溶出ピーク、289.5mg)を得る。上記の方法を使用して鏡
像異性体2を2回目のSFC精製に供し、各画分を蒸発させ、45℃の真空オーブン内で
乾燥させて、(+)-1-[2-ヒドロキシ-2-[1-(トリフルオロメチル)シクロ
プロピル]エチル]-3-[[2-(2,2,2-トリフルオロエトキシ)-4-ピリジ
ル]メチル]尿素(236mg)を得る;[α] 20=+15.0°(c=0.20g
/100mL、MeOH)。
【0073】
[実施例3]
【0074】
【化24】
1-[[2-(2,2,2-トリフルオロエトキシ)-4-ピリジル]メチル]-3-
[2-[1-(トリフルオロメチル)シクロプロピル]エチル]尿素
丸底フラスコにおいて、2-[1-(トリフルオロメチル)シクロプロピル]エタンア
ミン塩酸塩(500mg、2.6mmol;国際公開第2013/134252号パンフ
レットを参照されたいが、市販もされている[CAS#:1454690-80-2])
をDCM(5mL)中で撹拌し、DIPEA(1.4mL、8mmol)を添加する。清
澄な溶液が得られたら、1,1’-カルボニルジイミダゾール(428mg、2.6mm
ol)を添加し、得られた混合物を室温で30分間撹拌する。[2-(2,2,2-トリ
フルオロエトキシ)-4-ピリジル]メタンアミン二塩酸塩(810mg、2.9mmo
l)を一度に添加し、室温で30分間撹拌する。反応物を40℃に3時間温め、室温で1
6時間撹拌する。反応物をマイクロ波バイアルに移し、100℃で30分間加熱する。得
られた混合物をDCM中0~10%MeOHで溶出するシリカゲルクロマトグラフィーよ
って精製して、表題化合物を得る(892mg、88%収率)。ES/MS:m/z38
6[M+H]
【0075】
実施例3の別の手順
マイクロ波反応容器に市販の2-[1-(トリフルオロメチル)シクロプロピル]エタ
ンアミン塩酸塩(758mg、0.4mmol、CAS#561297-93-6)、D
CM(2mL)、DIPEA(698μL、0.4mmol)および1,1’-カルボニ
ルジイミダゾール(649mg、0.4mmol)を添加する。室温で5時間振盪する。
室温のDCM(0.8mL、0.4mmol)中の市販の[2-(2,2,2-トリフル
オロエトキシ)-4-ピリジル]メタンアミン(CAS#1454690-80-2;代
わりに国際公開第2013/134252号パンフレットを参照されたい)の0.5M調
製溶液を添加する。得られた混合物をマイクロ波中、100℃で30分間加熱する。反応
混合物をより大きな丸底フラスコにデカントし、水(5mL)およびDCM(5mL)で
希釈する。室温で15分間撹拌し、疎水性フリットを通して有機相を分離する。濾液を減
圧下で濃縮し、水性相として5%MeOHを含有する10mM NHHCO(pH約
10)中23~57%のACNで溶出する、GEMINI(登録商標)-NX C18
15×30mmガード付き75×30mm PHENOMENEX(登録商標)GEMI
NI(登録商標)-NX C18カラム、5μ粒子径、110A、AXIAカラムを使用
する高pH逆相クロマトグラフィーによって、得られた残留物を精製して、1-[[2-
(2,2,2-トリフルオロエトキシ)-4-ピリジル]メチル]-3-[2-[1-(
トリフルオロメチル)シクロプロピル]エチル]尿素(90.6mg、59%収率)を得
る。ES/MS:m/z386[M+H]
【0076】
アッセイ
本実施形態の化合物がKv7の増強において活性であることを示す生物学的アッセイデ
ータが下に提供される。
【0077】
アッセイ#1
ALS患者iPSC株由来の運動ニューロンにおける実施例1のOptopatch興
奮性アッセイ
皮質ニューロンおよび下位運動ニューロンの変化した興奮性は、ALSの病態生理学に
おける重要な因子である(例えば、K. Kanai, et. al., J Neurol Neurosurg Psychiatry
, 83, 734-738 (2012);P. Menon, et. al., Eur J Neurol., 24, 816-824 (2017)を参照
されたい)。全光型電気生理学的手法(「Optopatch」)を使用して、異なる病
原性変異を有する2人のALS患者からのiPSC株に由来する培養した運動ニューロン
における興奮性を評価した。
【0078】
細胞培養:2種類のiPSC株はそれぞれ、TARDBPにおける病原性変異を有する
1人の患者、およびC9orf72における病原性リピート伸長変異を有する1人の患者
から得る。運動ニューロンは、運動ニューロン形態形成因子を含めることによって、二重
SMAD阻害ニューロンパターニングプロトコール(S.M.Chambers, et. al., Nat Biote
chnol., 27, 275-280 (2009)を参照されたい)を適応した2D分化方法によってこれらの
株から作製する。分化は、目視検査、核型分析ならびにベータ-III-チューブリンお
よび核運動ニューロンマーカーISL1の染色によって検証する。ニューロンは10ng
/mL BDNFを補充したmTeSR(Stem Cell Technologie
s)においてマウスグリア細胞の単層上で培養する。イメージングの48時間前に、10
0nMトランス-レチナールを培地に添加した。
【0079】
Optopatchベクターによる形質導入:in vitroで15日目に、培養し
た運動ニューロンにレンチウイルスベクターで形質導入し、アクチュエーターCheRi
ff-mOrange2および電圧インジケーターQuasAr3-Citrineの共
発現を駆動する(詳細についてはD.R.Hochbaum, et. al., Nat.Methods, 11, 825-833 (2
014)を参照されたい)。イメージングの48時間前に、100nMトランス-レチナール
を培地に添加した。
【0080】
溶液:記録は3mMカリウムを含むBrainphys(商標)イメージング緩衝液中
で行う。ギャップ結合遮断剤2-ホウ酸アミノエトキシジフェニル(50μM)を添加し
て、細胞間の電気的結合を排除し、NBQX(10μM)、ガバジン(20μM)、およ
びAP5(25μM)を使用して、シナプス伝達を遮断した。
【0081】
Optopatch記録:形質導入の5日後、Optopatchイメージングを室温
でカスタム超広視野蛍光顕微鏡で行う。運動ニューロンを赤色レーザー励起(200W/
cm;635nm)で照射してQuasAr蛍光の変化をモニタリングし、青色LED
励起(0~127mW/cm、470nm)で照射してCheRiffを有する細胞膜
を脱分極する。i)自発活動をモニタリングするためだけの2秒間の赤色照射、ii)青
色光強度を増加させる5×500ミリ秒ステップ、およびiii)それぞれ異なる最大青
色強度を有する2×2秒の青色光ランプを直線的に増加させることからなるカスタム青色
光刺激プロトコールを使用する。Optopatchデータは、1kHzフレームレート
を有するHamamatsu ORCA-Flash 4.0sCMOSカメラを使用し
て記録する。視野サイズは4mm×0.5mmである。MATLAB(登録商標)に書か
れているカスタム制御ソフトウェアを使用して、照射プロトコールを制御し、全ての動画
を記録する。Kv7.2/7.3増強剤の急性効果を調べるために、ニューロンを試験化
合物とイメージング前に15分間インキュベートする。
【0082】
データ分析:個々のニューロンを単離するために時間的主成分分析および空間-時間的
独立成分分析を使用してイメージセグメント化分析を行う。スパイク発見アルゴリズムを
使用して活動電位を見つけ、データは、平均発火頻度、順化、基電流および活動電位波形
に対する化合物の効果についてビヒクル対照と比較することによって分析する(詳細につ
いてはC.A.Werley, et. al., Curr.Protoc.Pharmacol., 78, 11.20.1-11.20.24.(2017)を
参照されたい)。
【0083】
上記のプロトコールに供し、実施例1の主な効果は、低強度青色光照射に応答した活動
電位発火頻度に対する。5.1mW/cmの青色LED照射強度で、化合物は活動電位
頻度を濃度依存的に減少させた。
【0084】
4-パラメーターロジスティック方程式をデータに当てはめることを使用して、活動電
位頻度に対する実施例1の効果の効力(EC50)を決定することができる。結果は、そ
れぞれTARDBPおよびC9orf72変異を有する患者に由来する株についての2つ
の別々の分化の成果について表1に示す。観察された効果は質的に類似しているが、公知
のKv7.2/7.3増強剤フルピルチンで見られるよりも強力であり、患者由来運動ニ
ューロンの興奮性を低下させることによってALSを処置することへの実施例1の潜在的
な有用性を実証している。
【0085】
【表1】
【0086】
アッセイ#2
哺乳動物発現系におけるKv7増強剤によるKv7.2/7.3コンダクタンスの変調
Kv7増強剤の効力および有効性は、IonWorks Barracuda(Mol
ecular Devices)プラットフォームで、機器のポピュレーションパッチク
ランプモードを使用して、自動電気生理学的手法によって評価する。
【0087】
細胞培養:hKv7.2(テトラサイクリン誘導下)およびhKv7.3を安定的に発
現するHEK293細胞(カタログ#CT6147、Charles River)をこ
れらの研究のために使用する。5%テトラサイクリンスクリーニング済みウシ胎児血清(
Sigma-Aldrich)、15mM HEPES、500μg/mL G418、
100U/mLペニシリン、100μg/mLストレプトマイシン、29.2mg/mL
L-グルタミン、100μg/mLゼオシン、および5μg/mLブラストサイジンを
補充したダルベッコ変法イーグル培地/栄養物混合物のHam’s F-12(Sigm
a-Aldrich)で細胞を維持する。hKv7.2の発現を、記録の24時間前に1
μg/mLドキシサイクリンの添加によって誘導する。
【0088】
細胞をCorning T-150フラスコ内で85%~95%の集密度まで培養する
。実験の開始時に、細胞を、カルシウムおよびマグネシウムを含まないD-PBSで1回
洗浄し、次いで37℃で8分間3mlの0.25%トリプシン中でインキュベートするこ
とによって分離する。細胞を培地中で再懸濁し、穏やかに粉砕し、1,000rpmで4
分間遠心分離する。細胞を外液に2.5~3.5M細胞/mLの最終濃度まで再懸濁する
【0089】
溶液:外液は(mMで)、140NaCl、5KCl、2CaCl、1MgCl
10HEPES、10グルコース、pH7.4で構成される。内液は(mMで)、90グ
ルコン酸K、40KCl、3.2EGTA、3.2MgCl、5HEPES、pH7.
25で構成される。膜穿孔剤アンホテリシンBをDMSO中27mg/mL保存溶液とし
て毎日調製し、次いで内液に0.1mg/mLの最終濃度まで添加する。被験物質希釈物
を10mM DMSO保存溶液から384ウェルプレートに調製し、アコースティック分
注(Labcyte ECHO(登録商標))を使用して、最終DMSO濃度が0.1%
になるように希釈する。
【0090】
電気生理学的記録:再懸濁した細胞をIONWORKS(登録商標)BARRACUD
A(商標)(IWB)機器に入れ、外液を384ウェルパッチプレートに添加し、ホール
テストを行って塞がったウェルを判定し、電圧を相殺する。次いで細胞を機器によってパ
ッチプレート(ウェル当たり9μL)に添加する。2回のシールテストを行った後に穿孔
剤アンホテリシンを内液に導入し、約8分かけて電気的接触を得、これは3回目のシール
試験で検証する。コマンド電圧プロトコールは-80mVの保持電位から-80mV~+
40mVの1秒間の電圧ステップのファミリーからなり、被験物質添加前(ベースライン
)および被験物質添加の6分後に適用する。
【0091】
データ分析:IWBソフトウェアを使用して、データを取得し、リークを差し引く。各
電圧ステップの最後の10ミリ秒間の電流振幅の平均を求め、エクスポートする。Mic
rosoft ExcelおよびGraphPad Prismを使用してさらなる分析
を行う。電流振幅を以下の式によってコンダクタンス(G)に変換する:G=I/(V-
Ek)(式中、I=電流、V=ステップ電位、Ek=カリウム逆転電位(-84mV))
。被験物質の存在下でのコンダクタンスを、同じウェルの+40mVでのベースラインコ
ンダクタンスに正規化する。コンダクタンス-電圧(G-V)曲線にボルツマン方程式y
=ボトム+(トップ-ボトム)/(1+EXP((V-V0.5/k))を当てはめる
【0092】
実施例1~3についてコンダクタンス曲線(V0.5)の中点の被験物質媒介シフトを
表2に示す。
【0093】
【表2】
【0094】
4-パラメーターロジスティック方程式をデータに当てはめることを使用して、各試験
化合物の効力(EC50)および有効性(最大シフト)を決定することができる。結果は
実施例1~3について表3に示す。
【0095】
【表3】
【0096】
アッセイ#3
末梢神経興奮性に対する3、10および30mg/kg IPの実施例1の効果を測定
するための閾値追跡
閾値追跡は、その膜電位およびイオンチャネル機能についての情報を提供することによ
って末梢軸索の興奮性の測定を可能にする非侵襲性技術である。
【0097】
方法
Charles Riverからの307~446gの重さの16匹のオスのWist
arラットを使用した。動物を標準飼育条件でグループ飼育する(ケージ当たり4匹、0
7:00時~19:00時の明期、一定温度(21℃)および湿度、ならびに食物および
水への自由アクセス、ならびに環境エンリッチメント)。
【0098】
ラットにイソフルランで麻酔をかけ(2~2.5%、0.5L/分のO)、次いで加
熱パッドの上に仰向けに置き、尾の温度を32℃より上に維持する。リング電極の配置を
区切り、尾のマークを付けた区間を刃物でこすって、毛および皮膚の上層を除去する。こ
の部位を水できれいにし、乾燥させ、皮膚と粘着性電極の間の良好な伝導を可能にする。
【0099】
粘着性リング刺激電極(+ve陽極)を足の周りに巻く。2つ目の粘着性リング刺激電
極(-ve陰極)を尾の付け根から1.5cmに巻く。針記録電極を尾の付け根の刺激陰
極から6cm先端側の尾の上部に少し中心を外して置く。針参照電極を記録電極から2c
m先端側の尾の上部に少し中心を外して置く。粘着性の接地電極を記録電極から2cm基
端側の尾の周りに巻く。
【0100】
研究プロトコール
・マルチ追跡プログラム(下の記載)およびスパイクを開始する。
・15分の安定なベースラインを記録する
・15分後、実施例1またはHECを投薬する
・以下の時点でPKのために血液スポットを採取する:
○投薬後10分
○投薬後20分
○投薬後30分
○投薬後40分
・実施例1のIP(腹腔内)投薬から45分後に、XE-991(XE-991はin
vivoでホルマリンアッセイにおいてKCNQ増強剤効果を遮断する市販の化合物であ
り、Y. Zheng, et al., "Activation of peripheral KCNQ channels relieves gout pain
," Pain, 156 (2015) 1025-1035;およびR. Zaczek, et al., "Two New Potent Neurotra
nsmitter Release Enhancers, 10,10-Bis(4-Pyridinylmethyl)-9(10H)-Anthracenone and
10,10-Bis(2-Fluoro-4-Pyridinylmethyl)-9(10H)-Anthracenone:Comparison to Linopir
dine" The Journal of Pharmacology and Experimental Therapeutics, 285:724-730, 19
98を参照されたい)を投薬する。
○(XE-991は30mg/kgの実施例1の後にのみ投与される)
・以下の時点でPKのために血液スポットを採取する:
・投薬後10分(実施例1の投与後55分)
・投薬後20分(実施例1の投与後65分)
・投薬後30分(実施例1の投与後75分)
・投薬後40分(実施例1の投与後85分)
【0101】
ラットにおける末梢軸索研究の興奮性を測定するための閾値追跡アッセイにおいて、1
%ヒドロキシエチルセルロース:0.25%ポリソルベート80:0.05%消泡剤:精
製水(HEC)の配合を使用して3、10または30mg/kgでIPによって化合物を
投与する。乾燥血液スポット(DBS)を投薬後約10、20、30および最終40分に
採取する。DBS試料を室温で約2時間乾燥させる。脳試料を最終時点で得、分析まで凍
結させる。DBS試料を室温で輸送し、保存する。
【0102】
実施例1の1mg/mL保存溶液を調製し、プールしたラット血液に連続希釈して1~
10000ng/mLの範囲の標準を調製する。血液を白紙のDBSカードにスパイクし
て、標準を作製する。DBS標準の1つの3mmの押し抜いたものまたは試料を96ウェ
ルプレートに添加し、1:1のACN:MeOH中の180μLの内部標準(IS)を添
加する。45分間振盪し、抽出溶液を水で2倍希釈し、薬物濃度分析のためにLC/MS
MSによって分析する。
【0103】
1.14mLのMeOH:HO(2:8)を使用して脳試料をホモジナイズする。保
存溶液を一連のブランク脳ホモジネートに5~50000ng/mLの範囲でスパイクす
ることによって標準を調製する。25μLの標準または試料を96ウェルプレートにピペ
ットで入れ、1:1のACN:MeOH中の180μLの内部標準(IS)を添加し、混
合する。試料を4000RPM、4℃で10分間遠心分離する。上清みを水で15倍希釈
し、LC/MSMSによって分析する。
【0104】
島津HPLCシステム(LC-IOAD、島津製作所)およびGilson215オー
トサンプラーに接続したSciex API 4000トリプル四重極質量分析計(Sc
iex、MDS Inc.の事業部、Toronto、Canada)で試料および標準
を分析する。試料(0.01mL)を5μm Betasil C-18、20×2.1
mm Javelin(Thermo Electron Corp.Cat#7010
5-022106)のHPLCカラムに注入し、勾配で溶出させる。クロマトグラフィー
条件は、水/1M NHHCO(2000:10、v/v)の移動相Aおよび2.5
分にわたる勾配、1.5mL/分の流速で流れるMeOH/1M NHHCO(20
00:10、v/v)の移動相Bからなる。ターボスプレーでの陽イオンモードおよび7
40℃のイオン供給源温度を質量分析検出に利用する。以下の遷移において多重反応モニ
タリング(MRM)を使用して定量を行う。以下の遷移において多重反応モニタリング(
MRM)を使用して定量を行う。実施例1(m/z350.2~m/z233.0)およ
び類似内部標準(m/z263.1~m/z148.1)。内部標準に対する化合物のピ
ーク面積比対薬物濃度の線形回帰プロットを1/x2二次式を用いて得る。内部標準に対
する化合物のピーク面積比対薬物濃度の線形回帰プロットを1/x二次式を用いて得る
【0105】
使用した類似内部標準は2-(ジメチルアミノ)-N-ペンチル-3-フェニル-プロ
パンアミド2,2,2-トリフルオロ酢酸(1:1)であり、以下の構造:
【0106】
【化25】
を有する。
【0107】
この類似内部標準は、Kadijk 3、9747 AT Groningen、Th
e Netherlandsの住所を有するオランダの会社であるSyncomから購入
される。
【0108】
ラット血漿タンパク質および脳ホモジネートへの薬物結合は、薬物をこれらのマトリッ
クスにスパイクし、オービタル振盪しながら37℃で4.5時間にわたりインキュベート
した後に、in vitro透析方法を使用して決定する。HT透析マイクロ平衡デバイ
スおよび透析膜ストリップ(MWCO12~14k)を使用してアッセイを行う。4.5
時間のインキュベーション後にタンパク質マトリックスおよび試料を膜のタンパク質側お
よび緩衝液側の両方から採取した後に時間0試料を採取する。0および45分の両方の時
点でLC-MSMSによって親を定量する。緩衝液側の濃度をタンパク質側の濃度で割る
ことによって、未結合分率を算出する。4.5時間後に緩衝液およびタンパク質各チャン
バーの合計を時間0の濃度で割ることによって、回収率も算出する。総濃度*未結合分率
を使用して、未結合の化合物の濃度を算出する。
【0109】
結果:絶対閾値に対する実施例1の効果を表4に示す。
【0110】
【表4】
CMAP=複合筋活動電位
(このアッセイに関する追加の情報についてはR. Sittl et al. "The Kv7 potassium cha
nnel activator flupirtine affects clinical excitability parameters of myelinated
axons in isolated rat sural nerve," Journal of the Peripheral Nervous System 15
:63-72 (2010);M. Kovalchuk, et al., "Acute Effects of Riluzole and Retigabine o
n Axonal Excitability in Patients With Amyotrophic Lateral Sclerosis:A Randomize
d, Double-Blind, Placebo-Controlled, Crossover Trial," Received 7 March 2018; ac
cepted 13 April 2018; advance online publication 00 Month 2018. doi:10.1002/cpt.
1096, CLINICAL PHARMACOLOGY & THERAPEUTICS, VOLUME 00 NUMBER 00, MONTH 2018;お
よびJ. Fleckenstein et al., "Activation of axonal Kv7 channels in human peripher
al nerve by flupirtine but not placebo -therapeutic potential for peripheral neu
ropathies: results of a randomised controlled trial," Journal of Translational M
edicine 2013, 11:34を参照されたい。)
【0111】
時間および時間*処置交互作用に有意な差異がある(二元配置RM ANOVA;時間
効果F(26,312)=13.18、p=<0.0001;時間*処置交互作用F(7
8,312)=2.888、p<0.0001。ボンフェローニ多重比較検定は、30m
g/kgの実施例1が、ビヒクルと比較して絶対閾値を有意に上昇させること(興奮性の
低下)を示した。XE-991はこの上昇を逆にする(興奮性を増大させる)ことができ
た。
【手続補正書】
【提出日】2024-04-04
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書に記載の発明。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0111
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0111】
時間および時間*処置交互作用に有意な差異がある(二元配置RM ANOVA;時間効果F(26,312)=13.18、p=<0.0001;時間*処置交互作用F(78,312)=2.888、p<0.0001。ボンフェローニ多重比較検定は、30mg/kgの実施例1が、ビヒクルと比較して絶対閾値を有意に上昇させること(興奮性の低下)を示した。XE-991はこの上昇を逆にする(興奮性を増大させる)ことができた。
本発明は以下の態様を含み得る。
[1]
式:
【化1】

(式中、R1は、
【化2】

であり、
R2はHまたはOHである)
の化合物、またはその薬学的に許容される塩。
[2]
R1が、
【化3】

である、[1]に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩。
[3]
R2がOHである、[2]に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩。
[4]
メタノール中で(+)旋光度を有する単一の鏡像異性体を含む式:
【化4】

の、[3]に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩。
[5]
メタノール中で(-)旋光度を有する単一の鏡像異性体を含む式:
【化5】

の、[3]に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩。
[6]
R2がHである、[2]に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩。
[7]
R1が、
【化6】

である、[1]に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩。
[8]
R2がHである、[7]に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩。
[9]
R2がOHである、[7]に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩。
[10]
式:
【化7】

の、[9]に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩。
[11]
式:
【化8】

の、[9]に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩。
[12]
[1]~[11]のいずれか一項に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩を1種または複数の薬学的に許容される担体、希釈剤または賦形剤と共に含む医薬組成物。
[13]
運動ニューロン興奮性の変化によって引き起こされる疾患を処置する方法であって、必要とする患者に有効量の[1]~[11]のいずれか一項に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩を投与するステップを含む、方法。
[14]
運動ニューロン興奮性の変化によって引き起こされる前記疾患がALSである、[13]に記載の方法。
[15]
運動ニューロン興奮性の変化によって引き起こされる疾患を処置する方法であって、必要とする患者に[12]に記載の医薬組成物を投与するステップを含む、方法。
[16]
運動ニューロン興奮性の変化によって引き起こされる前記疾患がALSである、[15]に記載の方法。
[17]
治療での使用のための、[1]~[11]のいずれか一項に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩。
[18]
運動ニューロン興奮性の変化によって引き起こされる疾患の処置での使用のための、[1]~[11]のいずれか一項に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩。
[19]
運動ニューロン興奮性の変化によって引き起こされる前記疾患がALSである、[18]に記載の使用のための化合物、またはその薬学的に許容される塩。
[20]
運動ニューロン興奮性の変化によって引き起こされる疾患の処置のための医薬を製造するための、[1]~[11]のいずれか一項に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩の使用。
[21]
運動ニューロン興奮性の変化によって引き起こされる前記疾患がALSである、[20]に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩の使用。
[22]
医薬組成物を調製するための方法であって、[1]~[11]のいずれか一項に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩を1種または複数の薬学的に許容される担体、希釈剤、または賦形剤と混合するステップを含む、方法。
[23]
式:
【化9】

の化合物またはその薬学的に許容される塩。
[24]
メタノール中で(+)旋光度を有する単一の鏡像異性体を含む式:
【化10】

の化合物、またはその薬学的に許容される塩。
[25]
式:
【化11】

の化合物、またはその薬学的に許容される塩。