(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024063239
(43)【公開日】2024-05-10
(54)【発明の名称】植物賦活剤
(51)【国際特許分類】
A01N 37/42 20060101AFI20240501BHJP
A01N 37/06 20060101ALI20240501BHJP
A01N 37/36 20060101ALI20240501BHJP
A01P 15/00 20060101ALI20240501BHJP
A01P 21/00 20060101ALI20240501BHJP
A01N 25/00 20060101ALI20240501BHJP
【FI】
A01N37/42
A01N37/06
A01N37/36
A01P15/00
A01P21/00
A01N25/00 102
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024036165
(22)【出願日】2024-03-08
(62)【分割の表示】P 2020045772の分割
【原出願日】2020-03-16
(31)【優先権主張番号】P 2019230694
(32)【優先日】2019-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020001061
(32)【優先日】2020-01-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000000158
【氏名又は名称】イビデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】苅谷 悟
(72)【発明者】
【氏名】植村 謙太
(57)【要約】
【課題】洗い落としに対する抵抗性を有する植物賦活剤を提供することを目的とする。
【解決手段】オキソ脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩と水酸化脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩とから選ばれる少なくとも1種の化合物、および、不飽和脂肪酸(ただし、オキソ脂肪酸および水酸化脂肪酸を除く)を含む植物賦活剤。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
オキソ脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩と水酸化脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩とから選ばれる少なくとも1種の化合物、および、不飽和脂肪酸(ただし、オキソ脂肪酸および水酸化脂肪酸を除く)を含む植物賦活剤。
【請求項2】
請求項1記載の植物賦活剤であって、前記不飽和脂肪酸が、炭素数10~20の不飽和脂肪酸である。
【請求項3】
請求項2記載の植物賦活剤であって、前記不飽和脂肪酸が、オレイン酸、リノール酸、α-リノレン酸、γ-リノレン酸、アラキドン酸からなる一価または多価不飽和脂肪酸群より選択される不飽和脂肪酸である。
【請求項4】
請求項3記載の植物賦活剤であって、前記不飽和脂肪酸が、リノール酸である。
【請求項5】
請求項1記載の植物賦活剤であって、前記オキソ脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩が以下の式:
HOOC-(R1)-CH=CH-C(=O)-R2 (I)
(式中、
R1:6個~12個の炭素原子を含む、直鎖または分岐の、飽和または不飽和の炭化水素基であり、
R2:炭素数2~8のアルキル基であって、1つまたはそれ以上の分岐および/または二重結合を含んでいてもよい)
の構造式を有するオキソ脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩である。
【請求項6】
請求項5記載の植物賦活剤であって、前記オキソ脂肪酸が、前記オキソ脂肪酸のR1の炭化水素基の炭素数が8~10であり、R2のアルキル基の炭素数が4~6であるオキソ脂肪酸である。
【請求項7】
請求項6記載の植物賦活剤であって、前記オキソ脂肪酸が、前記オキソ脂肪酸のR1が式(I)におけるカルボニル基のαおよびβ炭素の間の二重結合と共役二重結合を形成する二重結合を含むオキソ脂肪酸である。
【請求項8】
請求項7記載の植物賦活剤であって、前記オキソ脂肪酸が、前記オキソ脂肪酸のR1が、炭素数9の直鎖または分岐の炭化水素基であり、R2が、炭素数5のアルキル基であるオキソ脂肪酸である。
【請求項9】
請求項1記載の植物賦活剤であって、前記オキソ脂肪酸が、ケトオクタデカジエン酸である。
【請求項10】
請求項9記載の植物賦活剤であって、前記オキソ脂肪酸が、13-オキソ-9,11-オクタデカジエン酸である。
【請求項11】
請求項1記載の植物賦活剤であって、前記水酸化脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩が、以下の式(II)および/または(III):
HOOC-(R3)-CH(OH)-CH(OH)-CH=CH-CH(OH)-R4 (II)
HOOC-(R3)-CH(OH)-CH=CH-CH(OH)-CH(OH)-R4 (III)
(式中、
R3は、4個~12個の炭素原子を有する直鎖または分岐の炭化水素基であって、1つまたはそれ以上の二重結合および/またはOH基を含んでいてもよく、二重結合を含んでいる場合、二重結合の位置は限定されない、
R4は、2個~8個の炭素原子を有する直鎖または分岐の炭化水素基であって、1つまたはそれ以上の二重結合および/またはOH基を含んでいてもよく、二重結合を含んでいる場合、二重結合の位置は限定されない)
の構造式を有する水酸化脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩である。
【請求項12】
請求項11記載の植物賦活剤であって、前記水酸化脂肪酸が、
R3の炭化水素基が6個~8個の炭素原子を有し、
R4の炭化水素基が4個~6個の炭素原子を有する。
【請求項13】
請求項12記載の植物賦活剤であって、前記水酸化脂肪酸が、
R3が、-(CH2)n-(nは4~12である整数)の構造であり、
R4が、CnH2n+1-(nは2~8である整数)の構造である。
【請求項14】
請求項13記載の植物賦活剤であって、前記水酸化脂肪酸が、
R3が、炭素数7のアルキレン基(-(CH2)7-)であり、
R4が、炭素数5のアルキル基(CH3CH2CH2CH2CH2-)である。
【請求項15】
請求項1記載の植物賦活剤であって、前記水酸化脂肪酸が、ヒドロキシオクタデカエン酸である。
【請求項16】
請求項15記載の植物賦活剤であって、前記水酸化脂肪酸が、9,10,13-トリヒドロキシ-11-オクタデカエン酸である。
【請求項17】
請求項15記載の植物賦活剤であって、前記水酸化脂肪酸が、9,12,13-トリヒドロキシ-10-オクタデカエン酸である。
【請求項18】
前記不飽和脂肪酸に対する、前記オキソ脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩と前記水酸化脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩とから選ばれる前記少なくとも1種の前記化合物の比率が、重量比で10%~90%となるように前記不飽和脂肪酸を含む請求項1~17のいずれか1項に記載の植物賦活剤。
【請求項19】
植物の茎葉もしくは根に接触させる噴霧剤もしくは浸漬用薬剤、または、土壌灌注用薬剤として用いられる請求項1~18のいずれか1項に記載の植物賦活剤。
【請求項20】
前記植物賦活剤が、アブラナ科、イネ科、マメ科、ナス科、バラ科、ヒユ科、またはアオイ科植物から選択される植物に対して使用される請求項1~19のいずれか1項に記載の植物賦活剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物賦活剤に関する。
【背景技術】
【0002】
穀物植物や園芸植物の供給効率を向上させること等を目的として、植物の生長を調整する技術が開発されてきた。温度条件や日照条件の最適化や施肥などの対策に加え、生長促進、休眠抑制、ストレス抑制等の植物生長調節作用を有する植物賦活剤を用いて植物を賦活させる方法が報告されている。
【0003】
特許文献1には、オキソ脂肪酸誘導体またはその塩もしくはエステルを有効成分として含むことを特徴とする植物賦活剤が報告されている。特許文献1に記載の植物賦活剤は、植物への優れた抵抗性誘導効果および生長促進効果を有するが、植物の抵抗性を誘導する、および/または、植物の成長を促進するためのこの賦活剤の使用は、植物に施用してからの賦活剤の効果の持続性が不十分な場合があるという問題を有していた。
【0004】
農作業等の省力化などの面からも、植物賦活剤の賦活成分の効果の持続性は課題である。特許文献1に記載の植物賦活剤における効果の不十分な持続性は、施用された植物の表面から賦活剤が洗い流されるために、十分な濃度で植物体に残留しない可能性にあると推測される。しかしながら、賦活剤を残留させるための有効な手立てがなく、賦活成分の効果の持続性において満足できる性能を得るための技術が強く望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明は、効果の持続性を改善し、施用された植物体において長い残留効果を有し、かつ、優れた病害抵抗性誘導効果および生長促進効果のある植物賦活剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、オキソ脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩と水酸化脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩とから選ばれる少なくとも1種の化合物、および、不飽和脂肪酸(ただし、オキソ脂肪酸および水酸化脂肪酸を除く)を含む植物賦活剤に関する。
【0008】
前記不飽和脂肪酸が、炭素数10~20の不飽和脂肪酸である植物賦活剤が好ましい。
【0009】
前記不飽和脂肪酸が、オレイン酸、リノール酸、α-リノレン酸、γ-リノレン酸、アラキドン酸などからなる一価または多価不飽和脂肪酸群より選択される植物賦活剤が好ましい。
【0010】
前記不飽和脂肪酸が、リノール酸である植物賦活剤が好ましい。
【0011】
前記オキソ脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩が以下の式:
HOOC-(R1)-CH=CH-C(=O)-R2 (I)
(式中、
R1:6個~12個の炭素原子を含む、直鎖または分岐の、飽和または不飽和の炭化水素基であり、
R2:炭素数2~8のアルキル基であって、1つまたはそれ以上の分岐および/または二重結合を含んでいてもよい)
の構造式を有するオキソ脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩である植物賦活剤が好ましい。
【0012】
前記オキソ脂肪酸が、前記オキソ脂肪酸のR1の炭化水素基の炭素数が8~10であり、R2のアルキル基の炭素数が4~6であるオキソ脂肪酸である植物賦活剤が好ましい。
【0013】
前記オキソ脂肪酸が、前記オキソ脂肪酸のR1が式(I)におけるカルボニル基のαおよびβ炭素の間の二重結合と共役二重結合を形成する二重結合を含むオキソ脂肪酸である植物賦活剤が好ましい。
【0014】
前記オキソ脂肪酸が、前記オキソ脂肪酸のR1が、炭素数9の直鎖または分岐の炭化水素基であり、R2が、炭素数5のアルキル基であるオキソ脂肪酸である植物賦活剤が好ましい。
【0015】
前記オキソ脂肪酸が、ケトオクタデカジエン酸である植物賦活剤が好ましい。
【0016】
前記オキソ脂肪酸が、13-オキソ-9,11-オクタデカジエン酸である植物賦活剤が好ましい。
【0017】
前記水酸化脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩が、以下の式(II)および/または(III):
HOOC-(R3)-CH(OH)-CH(OH)-CH=CH-CH(OH)-R4 (II)
HOOC-(R3)-CH(OH)-CH=CH-CH(OH)-CH(OH)-R4 (III)
(式中、
R3は、4個~12個の炭素原子を有する直鎖または分岐の炭化水素基であって、1つまたはそれ以上の二重結合および/またはOH基を含んでいてもよく、二重結合を含んでいる場合、二重結合の位置は限定されない、
R4は、2個~8個の炭素原子を有する直鎖または分岐の炭化水素基であって、1つまたはそれ以上の二重結合および/またはOH基を含んでいてもよく、二重結合を含んでいる場合、二重結合の位置は限定されない)
の構造式を有する水酸化脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩である植物賦活剤が好ましい。
【0018】
前記水酸化脂肪酸が、R3の炭化水素基が6個~8個の炭素原子を有し、R4の炭化水素基が4個~6個の炭素原子を有する植物賦活剤が好ましい。
【0019】
前記水酸化脂肪酸が、R3が、-(CH2)n-(nは4~12である整数)の構造であり、R4が、CnH2n+1-(nは2~8である整数)の構造である植物賦活剤が好ましい。
【0020】
前記水酸化脂肪酸が、R3が、炭素数7のアルキレン基(-(CH2)7-)であり、R4が、炭素数5のアルキル基(CH3CH2CH2CH2CH2-)である植物賦活剤が好ましい。
【0021】
前記水酸化脂肪酸が、ヒドロキシオクタデカエン酸である植物賦活剤が好ましい。
【0022】
前記水酸化脂肪酸が、9,10,13-トリヒドロキシ-11-オクタデカエン酸である植物賦活剤が好ましい。
【0023】
前記水酸化脂肪酸が、9,12,13-トリヒドロキシ-10-オクタデカエン酸である植物賦活剤が好ましい。
【0024】
なお、「オクタデカエン酸」は慣用的な表記であり(例えば、特開平3-14539号公報等)、上述の「9,10,13-トリヒドロキシ-11-オクタデカエン酸」は、「9,10,13-トリヒドロキシオクタデカ-11-エン酸」または「9,10,13-トリヒドロキシ-11-オクタデセン酸」とも表記される。同様に、上述の「9,12,13-トリヒドロキシ-10-オクタデカエン酸」は、「9,12,13-トリヒドロキシオクタデカ-10-エン酸」または「9,12,13-トリヒドロキシ-10-オクタデセン酸」とも表記される。なお、実施例では、かっこ書きで製造元の表記も併記している。また、上記説明は、本明細書、特許請求の範囲、図面および要約書中で使用される「オクタデカエン酸」全てに適用される。
【0025】
「9,10,13-トリヒドロキシ-11-オクタデカエン酸」の構造式は、下記構造式(1)で示されるものである。
【0026】
【0027】
「9,12,13-トリヒドロキシ-10-オクタデカエン酸」の構造式は、下記構造式(2)で示されるものである。
【0028】
【0029】
前記不飽和脂肪酸に対する、前記オキソ脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩と前記水酸化脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩とから選ばれる前記少なくとも1種の前記化合物の比率が、重量比で10%~90%となるように前記不飽和脂肪酸を含む植物賦活剤が好ましい。
【0030】
なお、前記オキソ脂肪酸および水酸化脂肪酸の誘導体としては、それぞれ、オキソ脂肪酸および水酸化脂肪酸のエステルが望ましい。また、前記オキソ脂肪酸および水酸化脂肪酸の塩としては、後述されるが、例えばナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩などの塩を使用できる。
【0031】
前記植物賦活剤が、植物の茎葉もしくは根に接触させる噴霧剤もしくは浸漬用薬剤、または、土壌灌注用薬剤として用いられる植物賦活剤であることが好ましい。
【0032】
前記植物賦活剤が、アブラナ科、イネ科、マメ科、ナス科、バラ科、ヒユ科、またはアオイ科植物から選択される植物に対して使用される植物賦活剤であることが好ましい。
【発明の効果】
【0033】
本発明の植物賦活剤は、優れた病害抵抗性誘導効果および生長促進効果を有し、かつ、植物体からの洗い落としが効果的に防止されることにより、それら効果の高い持続性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】洗い落としに対する抵抗性における不飽和脂肪酸の共存効果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0035】
植物賦活剤
本発明の植物賦活剤は、オキソ脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩と水酸化脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩とから選ばれる少なくとも1種の化合物、および、不飽和脂肪酸(ただし、オキソ脂肪酸および水酸化脂肪酸を除く)を含むことを特徴とする。
【0036】
本発明における「植物賦活」とは、何らかの形で植物の生長活動を活性化または維持するように調整することを意味するものであり、生長促進(茎葉の拡大、塊茎塊根の生長促進等を包含する概念である)、休眠抑制、植物のストレス(例えば病害など)に対する抵抗性を誘導、付与し、抗老化等の植物生長調節作用を包含する概念である。
【0037】
本発明の植物賦活剤は、このような植物賦活効果を示すための有効成分として、オキソ脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩と水酸化脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩とから選ばれる少なくとも1種の化合物を含む。このような化合物またはこのような化合物の誘導体もしくはその塩から選ばれる少なくとも1種の化合物を含むことにより、本発明の植物賦活剤は、植物の茎葉または根の一部に施用されることによって、植物に生長促進効果を付与することができる。本発明の植物賦活剤が接種された植物体において、未処理植物と比較して、植物の生長指標である葉の長さおよび葉の重さの増加、塊茎または塊根の生長促進が確認されることから、本発明の植物賦活剤は植物に生長促進効果を付与していると考えられる。本発明の植物賦活剤を用いることによって、植物体の生育を促進し、野菜や穀物、果物等の植物体の収量増加をもたらすことができる。本発明の植物賦活剤の植物生長促進効果は非常に高く、この結果、商品作物の優れた収量増加効果や向上された収穫効率をもたらすことができる。さらに、本発明の植物賦活剤は、植物の茎葉または根の一部に施用することにより、植物体において抵抗性誘導に関係するサリチル酸経路を活性化することができ、この結果、植物に病害などへの抵抗性を誘導することができる。
【0038】
しかしながら、上述のように、オキソ脂肪酸誘導体またはその塩もしくはエステルを有効成分として含むような植物賦活剤は、その賦活効果は優れているものの、有効成分が十分な効果を生じ得る前やそのあいだに、例えば雨などにより、有効成分の作用位置からの洗い落としが発生してしまう場合がある。植物賦活剤の局所的接種を含む多くの用途において、雨、風食および他の侵蝕力による植物賦活剤中の有効成分のこのような洗い落としは、植物賦活剤の効力および作用の持続期間を著しく減少させかねない。
【0039】
本発明の植物賦活剤は、上述の有効成分、すなわちオキソ脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩と水酸化脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩とから選ばれる少なくとも1種の化合物に加えてさらに、不飽和脂肪酸を含む。なお、本発明の不飽和脂肪酸は、オキソ脂肪酸および水酸化脂肪酸を含まない。本発明の植物賦活剤に含まれる不飽和脂肪酸は、疎水性であり、水溶性が低い。この結果、本発明の不飽和脂肪酸は、植物賦活剤に、接種場所において水をはじく性質を付与することができる。すなわち、本発明の植物賦活剤は、洗い落とされることがほとんどない。さらに、有効成分であるオキソ脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩および/または水酸化脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩は、植物賦活剤中で共存するこの不飽和脂肪酸に包含されるように存在している。したがって、本発明の植物賦活剤は、雨などの洗い落としに対して顕著な抵抗性を示し、有効成分は植物の葉などの植物体の表面により強く付着し、この結果、植物賦活剤の賦活効果の持続期間が増大される。
【0040】
本発明のオキソ脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩としては、以下の式:
HOOC-(R1)-CH=CH-C(=O)-R2 (I)
(式中、
R1:6個~12個の炭素原子を含む、直鎖または分岐の、飽和または不飽和の炭化水素基であり
R2:炭素数2~8のアルキル基であって、1つまたはそれ以上の分岐および/または二重結合を含んでいてもよい)
の構造式を有するオキソ脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩が好適に使用され得る。
【0041】
本発明の一実施形態において、上記オキソ脂肪酸におけるR1の炭化水素基の炭素数は8~10であり、R2のアルキル基の炭素数は4~6である。また、別の一実施形態において、上記オキソ脂肪酸におけるR1は式(I)におけるカルボニル基のαおよびβ炭素の間の二重結合と共役二重結合を形成する二重結合を含んでいる。さらに、別の一実施形態において、上記オキソ脂肪酸におけるR1は、炭素数9の直鎖または分岐の炭化水素基であり、R2は、炭素数5のアルキル基であることが好ましい。
【0042】
本発明のオキソ脂肪酸としては、具体的には、ケトオクタデカジエン酸が挙げられる。例えば、ケトオクタデカジエン酸としては、これらに限定される訳ではないが、9-オキソ-10,12-オクタデカジエン酸(9-oxoODA)、13-オキソ-9,11-オクタデカジエン酸(13-oxoODA)、5-オキソ-6,8-オクタデカジエン酸、6-オキソ-9,12-オクタデカジエン酸、8-オキソ-9,12-オクタデカジエン酸、10-オキソ-8,12-オクタデカジエン酸、11-オキソ-9,12-オクタデカジエン酸、12-オキソ-9,13-オクタデカジエン酸および14-オキソ-9,12-オクタデカジエン酸ならびにそれらの異性体等が挙げられる。
【0043】
なお、オキソ脂肪酸の誘導体としては、エステルが望ましい。本発明のオキソ脂肪酸のエステルとしては、これらに限定されるものではないが、メチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、ブチルエステル、ペンチルエステル、イソペンチルエステル、オクチルエステル等を挙げることができる。また、オキソ脂肪酸の塩としては、例えばアンモニウム塩、テトラメチルアンモニウム塩等のアルキルアンモニウム塩などのアンモニウム塩、例えばカルシウム塩、マグネシウム塩などのアルカリ土類金属塩や例えばナトリウム塩、リチウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩、コバルト塩、マンガン塩などの金属塩等が挙げられるが、肥料などに含まれる塩などの農業上容認可能な1種以上の塩であれば特に限定されない。
【0044】
本発明の水酸化脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩としては、以下の式(II)および/または(III)
HOOC-(R3)-CH(OH)-CH(OH)-CH=CH-CH(OH)-R4 (II)
HOOC-(R3)-CH(OH)-CH=CH-CH(OH)-CH(OH)-R4 (III)
(式中、
R3は、4個~12個の炭素原子を有する直鎖または分岐の炭化水素基であって、1つまたはそれ以上の二重結合および/またはOH基を含んでいてもよく、二重結合を含んでいる場合、二重結合の位置は限定されない、
R4は、2個~8個の炭素原子を有する直鎖または分岐の炭化水素基であって、1つまたはそれ以上の二重結合および/またはOH基を含んでいてもよく、二重結合を含んでいる場合、二重結合の位置は限定されない)
の構造式を有する水酸化脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩が好適に使用され得る。
【0045】
本発明の一実施形態において、上記水酸化脂肪酸におけるR3の炭化水素基は6個~8個の炭素原子を有し、R4の炭化水素基は4個~6個の炭素原子を有する。また、別の一実施形態において、上記水酸化脂肪酸におけるR3は、-(CH2)n-(nは4~12である整数)の構造であり、R4は、CnH2n+1-(nは2~8である整数)の構造である。さらに、別の一実施形態において、上記水酸化脂肪酸におけるR3は、炭素数7のアルキレン基(-(CH2)7-)であり、R4は、炭素数5のアルキル基(CH3CH2CH2CH2CH2-)であることが好ましい。
【0046】
本発明の水酸化脂肪酸としては、具体的には、ヒドロキシオクタデカエン酸が挙げられる。例えば、ヒドロキシオクタデカエン酸としては、これらに限定される訳ではないが、9,10,13-トリヒドロキシ-11-オクタデカエン酸および/または9,12,13-トリヒドロキシ-10-オクタデカエン酸およびそれらの異性体が挙げられる。
【0047】
なお、水酸化脂肪酸の誘導体としては、エステルが望ましい。本発明の水酸化脂肪酸のエステルとしては、これらに限定されるものではないが、メチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、ブチルエステル、ペンチルエステル、イソペンチルエステル、オクチルエステル等を挙げることができる。また、水酸化脂肪酸の塩としては、例えばアンモニウム塩、テトラメチルアンモニウム塩等のアルキルアンモニウム塩などのアンモニウム塩、例えばカルシウム塩、マグネシウム塩などのアルカリ土類金属塩や例えばナトリウム塩、リチウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩、コバルト塩、マンガン塩などの金属塩等が挙げられるが、肥料などに含まれる塩などの農業上容認可能な1種以上の塩であれば特に限定されない。
【0048】
本発明の不飽和脂肪酸としては、特に限定されないが、炭素数10~20程度の不飽和脂肪酸が、水への低い溶解度といった観点から好ましい場合がある。例えば、炭素数18の不飽和脂肪酸がさらに好ましい。また、本発明の不飽和脂肪酸において、その分子構造中の不飽和結合数は限定されるものではなく、一価不飽和脂肪酸であってもよく、多価不飽和脂肪酸であってもよい。例えば、不飽和脂肪酸としては、これらに限定される訳ではないが、オレイン酸、リノール酸、オレイン酸、α-リノレン酸、γ-リノレン酸、アラキドン酸等の不飽和脂肪酸が挙げられる。また、不飽和脂肪酸としては、遊離脂肪酸、その塩(一般的に使用可能な塩であって、例えば上記に例示されている塩)のいずれの状態でもよく、このうちから1種又は2種以上を選択することができる。本発明の不飽和脂肪酸としては、市販品を使用すればよく、また、市販化合物からの合成品であってもよい。また、不飽和脂肪酸として、1種の不飽和脂肪酸を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0049】
なお、本明細書において例示されている化合物に異性体が存在する場合、特に記載のない限り、存在し得る全ての異性体が本発明において使用可能である。
【0050】
本発明の植物賦活剤は、少なくとも一つのオキソ脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩と少なくとも一つの水酸化脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩とから選ばれる少なくとも1種の化合物、および、少なくとも一つの不飽和脂肪酸を含む。すなわち、本発明において使用され得る不飽和脂肪酸は、いずれか特定の種類のオキソ脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩または水酸化脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩との適合性に限定されるものではなく、広範囲にわたる不飽和脂肪酸が本発明の植物賦活剤においてオキソ脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩や水酸化脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩と共に用いられ得る。例えば、本発明の植物賦活剤は、13-oxoODA、9-oxoODAから選ばれる少なくとも一つのオキソ脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩と9,10,13-トリヒドロキシ-11-オクタデカエン酸および/または9,12,13-トリヒドロキシ-10-オクタデカエン酸から選ばれる少なくとも一つの水酸化脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩とから選ばれる少なくとも1種の化合物、および、オレイン酸、リノール酸、α-リノレン酸、γ-リノレン酸、アラキドン酸から選ばれる少なくとも一つの不飽和脂肪酸を含んでいてもよい。例えば、本発明の植物賦活剤は、ケトオクタデカジエン酸またはその誘導体もしくはその塩とヒドロキシオクタデカエン酸またはその誘導体もしくはその塩とから選ばれる少なくとも1種の化合物、および、オレイン酸、リノール酸、α-リノレン酸、γ-リノレン酸、アラキドン酸から選ばれる少なくとも一つの不飽和脂肪酸を含み得る。例えば、本発明の植物賦活剤は、13-オキソ-9,11-オクタデカジエン酸またはその誘導体もしくはその塩とリノール酸とを含んでいてもよく、9,10,13-トリヒドロキシ-11-オクタデカエン酸および/または9,12,13-トリヒドロキシ-10-オクタデカエン酸またはその誘導体もしくはその塩とリノール酸とを含んでいてもよく、13-オキソ-9,11-オクタデカジエン酸および/または9,10,13-トリヒドロキシ-11-オクタデカエン酸および/または9,12,13-トリヒドロキシ-10-オクタデカエン酸またはその誘導体もしくはその塩とリノール酸とを含んでいてもよい。
【0051】
本発明の植物賦活剤は、不飽和脂肪酸を含むために、接種後の植物からの植物賦活剤の洗い落としが最小限に抑えられる。しかも、本発明の植物賦活剤において、不飽和脂肪酸の共存によって、賦活効果のための有効成分すなわちオキソ脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩と水酸化脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩とから選ばれる少なくとも1種の化合物による優れた病害抵抗性誘導効果および生長促進効果が、低下したり、失われたりすることはない。また、不飽和脂肪酸は、施用される植物体に対して悪影響を及ぼさない。結果として、植物賦活剤としての効能およびその寿命の強化が達成され得る。したがって、本発明の植物賦活剤により、植物体への植物賦活剤の施用頻度を低下させることができるとともにまた、植物賦活剤の施用量も低減され得る。
【0052】
上述のように、本発明の植物賦活剤は、天然に存在するオキソ脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩と水酸化脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩とから選ばれる少なくとも1種の化合物、および、天然の不飽和脂肪酸を含む植物賦活剤である。したがって、本発明の植物賦活剤は、環境負荷が少ないという点においても非常に優れている。
【0053】
本発明の植物賦活剤において、不飽和脂肪酸と賦活効果のための有効成分すなわちオキソ脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩および水酸化脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩から選ばれる少なくとも1種の化合物とは、例えば、不飽和脂肪酸に対する、オキソ脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩と水酸化脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩とから選ばれる少なくとも1種の化合物の比率が、重量比で90%以下程度で含まれることが好ましい。不飽和脂肪酸に対する、オキソ脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩と水酸化脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩とから選ばれる少なくとも1種の化合物の比率が90%より大きいと、植物賦活剤中の疎水性成分の含有量が少なく、洗い落としが効果的に防止され得ない恐れがある。また、不飽和脂肪酸と賦活効果のための有効成分すなわちオキソ脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩および水酸化脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩から選ばれる少なくとも1種の化合物とは、例えば、不飽和脂肪酸に対する、オキソ脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩と水酸化脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩とから選ばれる少なくとも1種の化合物の比率が、重量比で10%以上程度で含まれることが好ましい。不飽和脂肪酸に対する、オキソ脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩と水酸化脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩とから選ばれる少なくとも1種の化合物の比率が10%より小さいと、植物賦活剤中の賦活効果のための有効成分量が少なく、植物賦活効果が不十分となる恐れがある。例えば、植物賦活剤中の不飽和脂肪酸に対するオキソ脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩と水酸化脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩とから選ばれる少なくとも1種の化合物の比率は、重量比で約10%以上、約90%以下程度である。植物賦活剤中に、賦活効果のための有効成分と不飽和脂肪酸とがこの程度の比率で含有されていることにより、良好な賦活効果と洗い落としによる抵抗性とが得られる。
【0054】
本発明の植物賦活剤には、必要に応じて、植物賦活剤として使用するのに適した希釈剤または担体が含有されていてもよい。これらの添加成分としては、農業上容認可能な薬剤であれば特に限定されない。また、希釈剤や担体以外の、農薬製剤などに通常用いられる成分がさらに含有されていてもよい。
【0055】
本発明の安定化された植物賦活剤は、任意の方法で植物に施用することができる。例えば、植物の茎葉もしくは根に接触させる噴霧剤もしくは浸漬用薬剤、または、土壌灌注用薬剤として使用され得る。具体的な施用方法は、施用される栽培植物や使用形態によって適宜選択され得るが、例えば、地上液剤散布、地上固形散布、空中液剤散布、空中固形散布、液面散布、施設内施用、土壌混和施用、土壌灌注施用、塗布処理等の表面処理、育苗箱施用、単花処理、株元処理等が例示され得る。施用された植物において、本発明の植物賦活剤は、植物生長促進効果および例えば病害などのストレスに対する抵抗性を植物に付与する。本発明の植物賦活剤は、さらに、洗い落としへの高い抵抗性を有するという点から、上記の施用方法の中で、栽培植物の茎葉を処理するための施用において特に好ましい場合がある。
【0056】
本発明の植物賦活剤を施用することのできる植物は、特に限定されるものではなく、植物一般に対して良好に用いることができる。例えば、アブラナ科、イネ科、マメ科、ナス科、バラ科、ヒユ科、またはアオイ科の植物に対して、好適に施用され得る。また、施用の対象となる植物は野生型の植物に限定されず、例えば変異体や形質転換体等であってもよい。また、それぞれの植物の品種も特に限定されない。
【実施例0057】
本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明は実施例のみに限定されるものではない。
【0058】
<植物賦活剤の調製>
実施例1
オキソ脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩と水酸化脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩とから選ばれる少なくとも1種の化合物として、ケトオクタデカジエン酸である13-オキソ-9,11-オクタデカジエン酸(13-oxoODA)((9Z,11E)-13-オキソ-9,11-オクタデカジエン酸、ケイマンケミカル社製、100μg/100μL エタノール溶液)を用いた。また、不飽和脂肪酸として、リノール酸(富士フイルム和光純薬(株)の一級リノール酸)を用いた。50μgのリノール酸に、13-oxoODAを5μL(5μg)加えて混合した。これを、実施例1の試験用植物賦活剤(リノール酸に対するオキソ脂肪酸の比率=10%)とした。
実施例2
実施例1と同様にオキソ脂肪酸として13-oxoODAを、および、不飽和脂肪酸としてリノール酸を用いた。50μgのリノール酸に、45μL(45μg)の13-oxoODAを加えて混合した。これを、実施例2の試験用植物賦活剤(リノール酸に対するオキソ脂肪酸の比率=90%)とした。
実施例3
オキソ脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩と水酸化脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩とから選ばれる少なくとも1種の化合物として、ヒドロキシオクタデカエン酸である、9,10,13-トリヒドロキシ-11-オクタデカエン酸(ラローダンファインケミカルズ社製、9(S),10(S),13(S)-トリヒドロキシ-11(E)-オクタデセン酸(英語表記で9(S),10(S),13(S)-trihydroxy-11(E)-octadecenoic acid)、200mg/L エタノール溶液)、および、9,12,13-トリヒドロキシ-10-オクタデカエン酸(ラローダンファインケミカルズ社製、9(S),12(S),13(S)-トリヒドロキシ-10(E)-オクタデセン酸(英語表記で9(S),12(S),13(S)-trihydroxy-10(E)-octadecenoic acid)、200mg/L エタノール溶液)を2:1で混合した混合物を用いた。まず、9(S),10(S),13(S)-トリヒドロキシ-11(E)-オクタデセン酸(200mg/L エタノール溶液)を200μL(40μg)と9(S),12(S),13(S)-トリヒドロキシ-10(E)-オクタデセン酸(200mg/L エタノール溶液)100μL(20μg)を混合し、300μLの水酸化脂肪酸混合液を調整した。また、不飽和脂肪酸として、リノール酸(富士フイルム和光純薬(株)の一級リノール酸)を用いた。50μgのリノール酸に、この水酸化脂肪酸混合液25μL(5μgの水酸化脂肪酸混合物)を加えて混合した。これを、実施例3の試験用植物賦活剤(リノール酸に対する水酸化脂肪酸の比率=10%)とした。
実施例4
実施例3と同様に水酸化脂肪酸として9(S),10(S),13(S)-トリヒドロキシ-11(E)-オクタデセン酸および9(S),12(S),13(S)-トリヒドロキシ-10(E)-オクタデセン酸の2:1の水酸化脂肪酸混合液、ならびに、不飽和脂肪酸としてリノール酸を用いた。50μgのリノール酸に、この水酸化脂肪酸混合液225μL(45μgの水酸化脂肪酸混合物)を加えて混合した。これを、実施例3の試験用植物賦活剤(リノール酸に対する水酸化脂肪酸の比率=90%)とした。
比較例1
実施例1の13-oxoODA(100μg/100μLエタノール溶液)を、リノール酸を含まない比較例1の試験用植物賦活剤として用いた。
比較例2
実施例3で調製した200μg/mLの水酸化脂肪酸混合液を、リノール酸を含まない比較例2の試験用植物賦活剤とした。
【0059】
<評価方法>
上記実施例1~4ならびに比較例1および2で調製した試験用植物賦活剤を下記の方法で試験し、評価した。
【0060】
<撥水性試験>
上述の実施例1~4ならびに不飽和脂肪酸を含まない比較例1および2の試験用植物賦活剤において、水に対する撥水性試験を行った。撥水性試験の水はイオン交換水とした。この撥水性試験では、まず、ポリプロピレン製の樹脂板を準備し、この樹脂板に、長さ約15cm程度のホウレンソウの葉を固定した。ホウレンソウの葉の上に長さ方向に1cmの幅で、各試験用植物賦活剤5μLをスパーテルで引き伸ばして塗布し、乾燥させることにより、各試験用植物賦活剤の評価面を形成した。このホウレンソウの葉が固定された樹脂板を、評価面の水平に対する傾斜角度が24度となるように治具に固定し、イオン交換水50μLを各評価面の上方2.5cmの位置から、ホウレンソウの葉の長さ方向に沿って評価面を通過するように滴下し、ホウレンソウの葉の上で滴下位置から評価面(1cm)を含めて11.5cmの区間を流れ落ちるのに要した時間を測定した。結果を
図1に示す。
【0061】
図1に示されるように、不飽和脂肪酸を含む試験用植物賦活剤(実施例1~4)の評価面を含む場合に水が速く流れ落ちていた。すなわち、不飽和脂肪酸を含む試験用植物賦活剤が塗布された面は、撥水性が高いことが見出された。
【0062】
したがって、不飽和脂肪酸を、不飽和脂肪酸に対する、オキソ脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩または水酸化脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩の比率が重量比で10%~90%となるように含む植物賦活剤が塗布された場合、流体(水)と接触する植物賦活剤の抵抗は抑制される。この結果、植物体に施用された植物賦活剤は、施用後に引き続いて降る雨などによる洗い落としに対して抵抗性をもつ。結果として、本発明の植物賦活剤は、有効成分が流れ落ちにくく植物の葉などの植物体の表面により長く付着し、したがって、植物賦活効果の持続期間が増大され得る。
【0063】
上記の結果より、本発明の植物賦活剤が、洗い落としに対する抵抗性を有する、持続性に優れた高い植物賦活効果をもつ植物賦活剤であることがわかる。