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特開2024-6326ロボット、ロボット制御装置、ロボット制御方法、及びプログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024006326
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】ロボット、ロボット制御装置、ロボット制御方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   B25J 13/08 20060101AFI20240110BHJP
【FI】
B25J13/08 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022107114
(22)【出願日】2022-07-01
(71)【出願人】
【識別番号】514275772
【氏名又は名称】三菱重工航空エンジン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100140914
【弁理士】
【氏名又は名称】三苫 貴織
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100172524
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】江頭 健人
(72)【発明者】
【氏名】栗原 啓
(72)【発明者】
【氏名】中村 太
(72)【発明者】
【氏名】石田 誠
(72)【発明者】
【氏名】浅野 伸
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 篤
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707AS06
3C707BS12
3C707KS03
3C707KS07
3C707KS33
3C707KT01
3C707KW03
3C707KX10
(57)【要約】
【課題】組付け部品に設けられた複数の特徴部を被組付け部品に設定されたそれぞれ対応する目標位置に導くこと。
【解決手段】制御装置60は、パネルがロボットアームにより把持された状態における複数のスタッドの状態と、教示データを得たときのスタッドの状態とを比較することにより、スタッドのそれぞれに対応して定義された第1基準点の教示データを補正して第1補正基準点を得る第1基準点補正部62と、予め設定された順序に基づいて、複数の第1補正基準点のうちの一つを目標基準点に設定する目標基準点設定部64と、目標基準点を、インナーライナの貫通孔に対応して設定された第2基準点に一致させるように、ロボットアームを制御するアーム制御部65とを備える。目標基準点設定部64は、目標基準点が対応する第2基準点に一致したと判定された場合に、次の順序の第1補正基準点を目標基準点として設定する。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
N個(Nは2以上の整数)の第1特徴部を有する組付け部品をロボットアームにより把持し、各前記第1特徴部に対応するN個の第2特徴部を有する被組付け部品に組付けるためのロボット制御装置であって、
前記組付け部品が前記ロボットアームにより把持された状態におけるM個(Mは2以上N以下の整数)の前記第1特徴部の状態と、教示データを得たときのM個の前記第1特徴部の状態とを比較することにより、M個の前記第1特徴部のそれぞれに対応して定義されたM個の第1基準点の教示データを補正して、M個の第1補正基準点を得る第1基準点補正部と、
予め設定された順序に基づいて、M個の前記第1補正基準点のうちの一つを目標基準点に設定する目標基準点設定部と、
前記目標基準点を、前記被組付け部品の前記第2特徴部に対応して設定された第2基準点に一致させるように、前記ロボットアームを制御するアーム制御部と
を備え、
前記目標基準点設定部は、前記目標基準点が対応する前記第2基準点に一致したと判定された場合に、次の順序の前記第1補正基準点を前記目標基準点として設定するロボット制御装置。
【請求項2】
前記第1特徴部は、前記組付け部品に設けられた突起部である請求項1に記載のロボット制御装置。
【請求項3】
前記組付け部品は、曲率を有するパネルであり、
N個の前記突起部は、曲率方向に沿って間隔を空けて設けられている請求項2に記載のロボット制御装置。
【請求項4】
前記目標基準点を設定する順序は、前記パネルの一端部領域から中央領域に向けて順に設定されている請求項3に記載のロボット制御装置。
【請求項5】
前記第1基準点補正部は、前記組付け部品が前記ロボットアームにより把持された状態の3次元データ及び2次元データを取得し、前記教示データを得たときの3次元データ及び2次元データと比較することにより、M個の前記第1基準点の教示データを補正する請求項1に記載のロボット制御装置。
【請求項6】
前記アーム制御部は、前記目標基準点を前記第2基準点に一致させる場合に、前記組付け部品が前記被組付け部品に接触することにより生じる反力が予め設定されている第1閾値を超えた場合に、前記ロボットアームを予め設定された揺動方向に揺動させながら前記組付け部品を前記被組付け部品に押し込む力制御を行う請求項1に記載のロボット制御装置。
【請求項7】
前記アーム制御部は、前記力制御を行った場合に、前記反力が予め設定されている第2閾値以下となった場合に、目標基準点が前記第2基準点に一致したと判定する請求項6に記載のロボット制御装置。
【請求項8】
前記アーム制御部は、前記反力が予め設定されている第2閾値以下となるまで、前記力制御を繰り返し行い、前記力制御を所定回数行っても前記反力が前記第2閾値以下とならない場合には、エラー通知を行う請求項7に記載のロボット制御装置。
【請求項9】
前記被組付け部品が固定された状態におけるM個の前記第2特徴部の状態と、教示データを得たときのM個の前記第2特徴部の状態とを比較することにより、M個の前記第2特徴部のそれぞれに対応して定義されたM個の第2基準点の教示データを補正して、M個の第2補正基準点を得る第2基準点補正部と、
前記アーム制御部は、前記目標基準点を対応する前記第2補正基準点に一致させるように、前記ロボットアームを制御する請求項1に記載のロボット制御装置。
【請求項10】
請求項1に記載のロボット制御装置を備えるロボット。
【請求項11】
N個(Nは2以上の整数)の第1特徴部を有する組付け部品をロボットアームにより把持し、各前記第1特徴部に対応するN個の第2特徴部を有する被組付け部品に組付けるためのロボット制御方法であって、
前記組付け部品が前記ロボットアームにより把持された状態におけるM個(Mは2以上N以下の整数)の前記第1特徴部の状態と、教示データを得たときのM個の前記第1特徴部の状態とを比較することにより、M個の前記第1特徴部のそれぞれに対応して定義されたM個の第1基準点の教示データを補正して、M個の第1補正基準点を得る工程と、
予め設定された順序に基づいて、M個の前記第1補正基準点のうちの一つを目標基準点に設定する工程と、
前記目標基準点を、前記被組付け部品の前記第2特徴部に対応して設定された第2基準点に一致させるように、前記ロボットアームを制御する工程と、
前記目標基準点が対応する前記第2基準点に一致したと判定された場合に、次の順序の前記第1補正基準点を前記目標基準点として設定する工程と
をコンピュータが実行するロボット制御方法。
【請求項12】
コンピュータを請求項1に記載のロボット制御装置として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ロボット、ロボット制御装置、ロボット制御方法、及びプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、3次元で形状を認識した組付け部品をロボットにより把持し、ロボットアームをハンドリングすることにより、組付け部品を被組付け部品に組付ける組付け方法が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、組付け部品であるネジを被組付け部品に設けられたネジ穴に組付ける方法が提案されている。より具体的には、特許文献1には、3次元モデルデータにおいて規定された組付け部品の第1基準点に対応する第1基準位置としてのTCP把持位置と、被組付け部品の3次元モデルデータにおいて規定された組付け部品の第2基準点に対応する第2基準位置としてのTCP組付け位置とを対応させるように、作業部の動作を制御する組付け装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-099808号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1には、組付け部品であるネジを被組付け部品に設けられたネジ穴に組付ける方法が記載されているが、この方法は、1つのネジを1つのネジ穴にはめ込む単純なはめ込み作業に過ぎない。
したがって、例えば、組付け部品に複数の特徴部(例えば、ネジ、スタッドボルト等の突起部)が設けられており、これら特徴部の各々を被組付け部品に設けられたそれぞれ対応する目標位置(例えば、ネジ穴、貫通孔等の開口部)に導くといった複雑な組付け作業には対応することが難しかった。
【0006】
本開示は、このような事情に鑑みてなされたものであって、組付け部品に設けられた複数の特徴部を被組付け部品に設定されたそれぞれ対応する目標位置に導くことのできるロボット、ロボット制御装置、ロボット制御方法、及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の第一態様は、N個(Nは2以上の整数)の第1特徴部を有する組付け部品をロボットアームにより把持し、各前記第1特徴部に対応するN個の第2特徴部を有する被組付け部品に組付けるためのロボット制御装置であって、前記組付け部品が前記ロボットアームにより把持された状態におけるM個(Mは2以上N以下の整数)の前記第1特徴部の状態と、教示データを得たときのM個の前記第1特徴部の状態とを比較することにより、M個の前記第1特徴部のそれぞれに対応して定義されたM個の第1基準点の教示データを補正して、M個の第1補正基準点を得る第1基準点補正部と、予め設定された順序に基づいて、M個の前記第1補正基準点のうちの一つを目標基準点に設定する目標基準点設定部と、前記目標基準点を、前記被組付け部品の前記第2特徴部に対応して設定された第2基準点に一致させるように、前記ロボットアームを制御するアーム制御部とを備え、前記目標基準点設定部は、前記目標基準点が対応する前記第2基準点に一致したと判定された場合に、次の順序の前記第1補正基準点を前記目標基準点として設定するロボット制御装置である。
【0008】
本開示の第二態様は、上記ロボット制御装置を備えるロボットである。
【0009】
本開示の第三態様は、N個(Nは2以上の整数)の第1特徴部を有する組付け部品をロボットアームにより把持し、各前記第1特徴部に対応するN個の第2特徴部を有する被組付け部品に組付けるためのロボット制御方法であって、前記組付け部品が前記ロボットアームにより把持された状態におけるM個(Mは2以上N以下の整数)の前記第1特徴部の状態と、教示データを得たときのM個の前記第1特徴部の状態とを比較することにより、M個の前記第1特徴部のそれぞれに対応して定義されたM個の第1基準点の教示データを補正して、M個の第1補正基準点を得る工程と、予め設定された順序に基づいて、M個の前記第1補正基準点のうちの一つを目標基準点に設定する工程と、前記目標基準点を、前記被組付け部品の前記第2特徴部に対応して設定された第2基準点に一致させるように、前記ロボットアームを制御する工程と、前記目標基準点が対応する前記第2基準点に一致したと判定された場合に、次の順序の前記第1補正基準点を前記目標基準点として設定する工程とをコンピュータが実行するロボット制御方法である。
【0010】
本開示の第四態様は、コンピュータを上記ロボット制御装置として機能させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0011】
本開示に係るロボット、ロボット制御装置、ロボット制御方法、及びプログラムによれば、組付け部品に設けられた複数の特徴部を被組付け部品に設定されたそれぞれ対応する目標位置に導くことができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本開示の一実施形態に係る燃焼器を示した概略斜視図である。
図2図1の切断線II-IIにおける燃焼器の概略断面図である。
図3】本開示の一実施形態に係るアウター燃焼器の概略斜視図である。
図4】本開示の一実施形態に係るインナー燃焼器の概略斜視図である。
図5】本開示の一実施形態に係るパネルが取り付けられる前のインナーライナの概略斜視図である。
図6】本開示の一実施形態に係るパネルの概略斜視図である。
図7】バルクヘッドの概略斜視図である。
図8】本開示の一実施形態に係るロボットの概略構成を示した図である。
図9】本開示の一実施形態に係る制御装置が備える機能の一例を示した機能ブロック図である。
図10】本開示の一実施形態に係る2次元パネルマスターデータの一例を示した図である。
図11】本開示の一実施形態に係る第1基準点について説明するための図である。
図12】本開示の一実施形態に係る2次元ライナマスターデータの一例を示した図である。
図13】本開示の一実施形態に係る第2基準点について説明するための図である。
図14】パネルを把持するときのエンドエフェクタの把持位置のずれについて説明するための図である。
図15】パネルを把持するときのエンドエフェクタの把持角度のずれについて説明するための図である。
図16】パネルを把持するときのエンドエフェクタの把持角度のずれについて説明するための図である。
図17】本開示の一実施形態に係るロボット制御方法の処理手順の一例を示したフローチャートである。
図18】本開示の一実施形態に係るロボット制御方法の処理手順の一例を示したフローチャートである。
図19】パネルをインナーライナに組付ける際の第1基準点の切り替えタイミングについて説明するための模式図である。
図20】パネルをインナーライナに組付ける際の第1基準点の切り替えタイミングについて説明するための模式図である。
図21】パネルをインナーライナに組付ける際の第1基準点の切り替えタイミングについて説明するための模式図である。
図22】パネルをインナーライナに組付ける際の第1基準点の切り替えタイミングについて説明するための模式図である。
図23】本開示の他の態様に係る第1基準点の定義について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示に係るロボット、ロボット制御装置、ロボット制御方法、及びプログラムの一実施形態について、図面を参照して説明する。以下の説明では、燃焼器1の組付け工程の一部に、本開示のロボット、ロボット制御装置、ロボット制御方法、及びプログラムを適用する場合を例示して説明するが、この例に限られない。すなわち、本開示に係るロボット、ロボット制御装置、ロボット制御方法、及びプログラムは、組付け部品に設けられた複数の特徴部(一例として、ネジ、スタッドボルト等の突起部)を被組付け部品に設定されたそれぞれ対応する目標位置(一例として、ネジ穴、貫通孔等の開口部)に導くような組付け作業に幅広く適用することができる。
【0014】
[燃焼器の基本的構成について]
燃焼器1の基本的構成について説明する。燃焼器1は、例えば航空機に搭載されるターボファンエンジンにおいて、圧縮空気と燃料とを混合して燃焼させ、タービンを回転させる高温の燃焼ガスを生成する燃焼室CCを画定している機器である。
【0015】
図1は、本開示の一実施形態に係る燃焼器1を示した概略斜視図、図2は、図1の切断線II-IIにおける燃焼器1の概略断面図である。図1及び図2に示すように、燃焼器1は、アウター燃焼器10、インナー燃焼器20、バルクヘッド30(図2参照)及びフード40を備えている。燃焼室CCは、アウター燃焼器10、インナー燃焼器20及びバルクヘッド30によって画定されている。
【0016】
図3は、アウター燃焼器10の概略斜視図である。図3に示すように、アウター燃焼器10は、全体として円筒形状の部品とされている。アウター燃焼器10は、アウターライナ11及びアウターライナ11の内周面に設けられた複数のアウターライナ用パネル12(以下、単に「パネル12」という。)を有している。
【0017】
アウターライナ11は、例えば、軸線X0を中心軸線とする円筒形状とされた金属製の部品であり、例えば板金とされている。燃焼室CCに臨むアウターライナ11の内周面は、複数のパネル12によって分割されて略全面が覆われている。パネル12は、アウターライナ11を燃焼ガスから熱的に保護する。
【0018】
図2及び図3に示すように、各パネル12は、アウターライナ11の外周面の各所の形状に対応した円弧形状の部品であり、例えば鋳造された板材の表面に耐熱処理(例えばセラミックコーティング)が施されることで構成されている。
各パネル12の外周面には、外側に向かって突出した複数のスタッド12aが設けられている。
各パネル12は、アウターライナ11に形成された孔にスタッド12aが挿通されるとともに孔から突出したスタッド12aにワッシャ12b及びナット12cが取り付けられることで、アウターライナ11に固定されている。
【0019】
アウターライナ11の一端側の周面(縁部分)には、例えば、軸線X0を中心軸線とする周方向に沿って複数の貫通孔11aが略等角度間隔で形成されている。この縁部分は、パネル12に覆われていない。この縁部分には、バルクヘッド30(図7参照)の外側壁部32が嵌め込まれる(例えば、しまりばめ)。
【0020】
図4は、インナー燃焼器20の概略斜視図である。図4に示すように、インナー燃焼器20は、全体として円筒形状の部品とされている。インナー燃焼器20は、例えば、インナーライナ21及びインナーライナ21の外周面に設けられた複数のインナーライナ用パネル22(以下、単に「パネル22」という。)を有している。図1及び図2に示すように、インナー燃焼器20は、組立て後の燃焼器1において、アウター燃焼器10の内側に配置される。
【0021】
図4に示すように、インナーライナ21は、例えば、軸線X1を中心軸線とする円筒形状とされた金属製の部品であり、例えば板金とされている。燃焼室CCに臨むインナーライナ21の外周面は、複数のパネル22によって分割されて略全面が覆われている。パネル22は、インナーライナ21を燃焼ガスから熱的に保護する。
【0022】
図5は、パネル22が取り付けられる前のインナーライナ21の概略斜視図、図6はパネル22の概略斜視図である。図5に示すように、インナーライナ21の周面には、軸線X1を中心軸線とする周方向に沿って複数の貫通孔24が略等角度間隔で形成されている。なお、図5では、一部の貫通孔24の図示が省略されている。
【0023】
図6に示すように、パネル22は、インナーライナ21の外周面の各所の形状に対応した円弧形状の部品、換言すると、曲率を有する部品であり、例えば鋳造された板材の表面に耐熱処理(例えばセラミックコーティング)が施されることで構成されている。パネル22の内周面には、内側に向かって突出した複数のスタッドボルト(以下「スタッド」という。)23が設けられている。スタッド23は、パネル22の曲率方向に沿って間隔を空けて設けられている。パネル22のスタッド23がインナーライナ21に形成された貫通孔24(図5参照)に挿通される。そして、図2に示すように、貫通孔24から突出したスタッド23にインナーライナ21の内側からワッシャ25及びナット26が取り付けられることで、パネル22がインナーライナ21に固定されている。
【0024】
また、図4に示すように、インナーライナ21の縁部分に設けられた貫通孔27は、パネル22に覆われていない。この縁部分には、バルクヘッド30の内側壁部33が嵌め込まれる(例えば、しまりばめ)。なお、図4において、一部の貫通孔27及びスタッド23は図示が省略されている。
【0025】
図7は、バルクヘッド30の概略斜視図である。図1に示すように、バルクヘッド30は、アウター燃焼器10の一端とインナー燃焼器20の一端との間に形成された環状の開口を塞ぐように設置された、軸線X0を中心軸線とする環状の部品とされている。
図7に示すように、バルクヘッド30は、環状の底部31、底部31の外周縁から立設した外側壁部32及び底部31の内周縁から立設した内側壁部33を有している。外側壁部32は、アウターライナ11に嵌め込まれる。また、内側壁部33は、インナーライナ21に嵌め込まれる。
【0026】
外側壁部32には、軸線X2を中心軸線とする周方向に沿って複数の貫通孔32aが略等角度間隔で形成されている。貫通孔32a同士の角度間隔は、貫通孔11a(図3参照)同士の角度間隔と等しい。このため、バルクヘッド30をアウターライナ11に嵌め込んだときに、各貫通孔32aの位置と各貫通孔11aの位置とを周方向において一致させることができる。
【0027】
内側壁部33には、軸線X2を中心軸線とする周方向に沿って複数の貫通孔33aが略等角度間隔で形成されている。
貫通孔33a同士の角度間隔は、貫通孔27(図4参照)同士の角度間隔と等しい。このため、バルクヘッド30をインナーライナ21に嵌め込んだときに、各貫通孔32aの位置と各貫通孔27の位置とを周方向において一致させることができる。
【0028】
図2に示すように、組立て後の燃焼器1において、バルクヘッド30の外側壁部32はアウター燃焼器10の内周面に接触し、バルクヘッド30の内側壁部33はインナー燃焼器20の内周面に接触している。
【0029】
バルクヘッド30は、外側壁部32及びアウター燃焼器10に挿通されたボルト(図示略)が外側壁部32に設けられたナットプレートに螺合され、かつ、内側壁部33及びインナー燃焼器20に挿通されたボルト(図示略)が内側壁部33に設けられたナットプレートに螺合されることで、アウター燃焼器10及びインナー燃焼器20に固定される。
図1及び図2に示すように、フード40は、バルクヘッド30を覆うように設置された環状の部品とされている。
【0030】
以上のように構成された燃焼器1は、次のように機能する。
すなわち、コンプレッサで圧縮された空気及び燃料が燃焼室CCに供給され、燃焼室CCで混合される。そして、空気及び燃料の混合流体を燃焼室CCで燃焼させて、タービンを回転させる高温の燃焼ガスを生成する。
【0031】
[パネル22の組付け工程]
本実施形態に係るロボット、ロボット制御装置、ロボット制御方法、プログラム、及びロボットは、上述した燃焼器1の組み立て工程において、パネル22(図6参照)をインナーライナ21(図5参照)に組付ける工程に適用される。
具体的には、複数のスタッド(第1特徴部)を有するパネル(組付け部品)をロボットアームにより把持し、各スタッドに対応する複数の貫通孔24(第2特徴部)を有するインナーライナ(被組付け部品)に組付ける工程に適用される。
【0032】
[ロボットの構成]
図8は、本開示の一実施形態に係るロボット50の概略構成を示した図である。図8に示すように、ロボット50は、ロボットアーム52と、ロボットアーム52の先端に取り付けられたエンドエフェクタ52aとを備えている。更に、ロボット50は、ロボット50を制御する制御装置(ロボット制御装置)60を備えている。
【0033】
また、例えば、ロボットアーム52には、力センサ53が設けられている。例えば、力センサ53は、ロボットアーム52の先端と、エンドエフェクタ52aとの間に設けられている。力センサは、例えば、6軸力センサであり、パネル22のスタッド23がインナーライナ21に接触するときに、インナーライナ21からパネルが受ける力(反力)及びモーメントを検出する。力センサの検出値は、制御装置60に出力される。
【0034】
また、ロボット50は、ビジョンセンサ54を備えていてもよい。ビジョンセンサ54は、パネル22の形状データの取得、インナーライナ21の形状データの取得、パネル22のインナーライナ21への取り付け工程における位置検出等に用いられる。例えば、ビジョンセンサ54は、これから取り付けを行うパネル22がエンドエフェクタ52aによって把持された状態で撮像を行い、パネル22の2次元データ及び3次元データを取得する。また、これからパネル22が取り付けられるインナーライナ21を固定した状態で撮像を行い、インナーライナ21の画像データを取得する。ビジョンセンサ54は、2次元のセンサでもよいし、3次元のセンサでもよい。本実施形態では、ビジョンセンサ54として、2次元及び3次元のセンサを備えている。
【0035】
ビジョンセンサ54によって取得された2次元データ及び3次元データは、制御装置60に出力される。ビジョンセンサ54の設置位置は、特に限定されない。使用用途に応じて適切な位置に適宜設置することが可能である。また、ビジョンセンサ54は、複数台設けられていてもよい。
ロボット50は、例えば、6軸駆動のロボットとされている。ロボット50は、各関節(リンク)の角度を制御することにより、ロボットアーム52の先端に設けられたエンドエフェクタ52aを所望の位置に導くことができる。
【0036】
制御装置(Controller)60は、例えば、CPU(Central Processing Unit:プロセッサ)、主記憶装置(Main Memory)、二次記憶装置(Secondary storage:メモリ)等を備えている。更に、制御装置60は、他の装置と情報の送受信を行うための通信部を備えていてもよい。
【0037】
主記憶装置は、例えば、キャッシュメモリ、RAM(Random Access Memory)等の書き込み可能なメモリで構成され、CPUの実行プログラムの読み出し、実行プログラムによる処理データの書き込み等を行う作業領域として利用される。
二次記憶装置は、非一時的なコンピュータ読み取り可能な記録媒体(non-transitory computer readable storage medium)である。二次記憶装置は、例えば、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、DVD-ROM、半導体メモリなどである。
【0038】
後述する各種機能を実現するための一連の処理は、一例として、プログラムの形式で二次記憶装置に記憶されており、このプログラムをCPUが主記憶装置に読み出して、情報の加工・演算処理を実行することにより、各種機能が実現される。なお、プログラムは、二次記憶装置に予めインストールしておく形態や、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体に記憶された状態で提供される形態、有線又は無線による通信手段を介して配信される形態等が適用されてもよい。コンピュータ読み取り可能な記憶媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、DVD-ROM、半導体メモリ等である。
【0039】
図9は、制御装置60が備える機能の一例を示した機能ブロック図である。図9に示すように、制御装置60は、例えば、記憶部61、第1基準点補正部62、第2基準点補正部63、目標基準点設定部64、アーム制御部65を備えている。
【0040】
記憶部61には、事前に作成されたロボット50の教示データが格納されている。例えば、記憶部61には、組付け部品であるパネル22に設けられた複数のスタッド(特徴部)23のそれぞれを被組付け部品であるインナーライナ21に設けられたそれぞれ対応する貫通孔24に導いてはめ込むための各種データが教示データとして格納されている。
【0041】
教示データは、ロボット50のティーチングに用いたときの各種データを含んでいる。
例えば、教示データは、ティーチング時におけるパネル22を把持したエンドエフェクタ52aの2次元データ(以下「2次元パネルマスターデータ」という。)及び3次元データ(以下「3次元パネルマスターデータ」という。)を含んでいる。
図10は、2次元パネルマスターデータの一例を示した図である。
【0042】
教示データは、パネル22に定義された複数の第1基準点の位置データ等を含んでいる。図11は、第1基準点について説明するための図である。図11に示したエンドエフェクタ52aの構成は一例であり、これに限られない。図11に示すように、本実施形態において、第1基準点は、スタッド23の先端に定義される。また、本実施形態では、一例として、2つの第1基準点TCP1a、TCP1bが定義されている。例えば、第1基準点TCP1aは、マスターパネル22rの周方向(長手方向)の一端部領域に設けられたスタッド23aの先端に定義され、第1基準点TCP1bは、マスターパネル22rの中央領域に設けられたスタッド23bの先端に定義されている。
第1基準点は、例えば、TCP(ツールセンターポジション)であり、例えば、位置成分(作業座標空間におけるXYZ座標値)及び方向成分(XYZ成分)で定義される。
【0043】
教示データは、ティーチング時におけるインナーライナ21を固定した状態での2次元データ(以下「2次元ライナマスターデータ」という。)及び3次元データ(以下「3次元ライナマスターデータ」という。)を含んでいる。
図12は、2次元ライナマスターデータの一例を示した図である。
【0044】
教示データは、第1基準点TCP1a、TCP1bにそれぞれ対応するインナーライナ21側に設けられた複数の第2基準点TCP2a、TCP2bの位置データを含んでいる。
図13は、第2基準点について説明するための図である。図13において、インナーライナ21の構成は簡略化されて示されている。図13に示すように、本実施形態において、第2基準点TCP2a、TCP2bは、例えば、インナーライナ21において、パネルが嵌め込まれる側とは反対側に設けられている。換言すると、第2基準点TCP2a、TCP2bは、インナーライナ21の内周面側に定義されている。
第2基準点は、第1基準点と同様に、TCP(ツールセンターポジション)であり、例えば、位置成分(作業座標空間におけるXYZ座標値)及び方向成分(XYZ成分)で定義される。
【0045】
更に、教示データは、第1基準点TCP1aを第2基準点TCP2aに一致させるための制御データ、第1基準点TCP1bを第2基準点TCP2bに一致させるための制御データを含んでいる。制御データは、例えば、ロボットアーム52の各関節の回転角度を示すパラメータで定義される。
【0046】
第1基準点補正部62(図9参照)は、パネル22がエンドエフェクタ52aにより把持された状態におけるスタッド23a、23bの状態(例えば、位置及び方向)と、教示データを得たときのスタッド23a、23bの状態(例えば、位置及び方向)とを比較することにより、スタッド23a、23bのそれぞれに対応して定義された第1基準点TCP1a、TCP1bの教示データを補正して、第1補正基準点TCP1a´、TCP1b´を得る。
【0047】
例えば、パネル22には、個体差(製造誤差)がある。このような個体差は、例えば、パネルの曲率誤差、スタッド23の配置誤差、スタッド23の向きの誤差等である。更に、組付け時におけるエンドエフェクタ52aの掴みズレによってもスタッド23a、23bの位置及び向きは変化する。例えば、図14図16に示すように、パネル22を把持するときのエンドエフェクタ52aの把持位置のずれ、把持角度のずれ等に応じて、スタッド23a、23bの状態は、教示データを得たときのスタッド23a、23bの状態と異なる。
【0048】
教示データに含まれる制御データは、教示データで定義された第1基準点TCP1a、TCP1bをそれぞれ対応する第2基準点TCP2a、TCP2bに移動させるための制御データとされている。したがって、上述のような個体差やエンドエフェクタ52aの掴みズレが予め設定されている許容値よりも大きいと、パネル22の各スタッド23をインナーライナ21の対応する貫通孔24に導くことができない。
このため、第1基準点補正部62は、例えば、組付け対象であるパネル22のスタッド23a,23bの状態に基づいて、第1基準点TCP1a、TCP1bの教示データを補正する。
【0049】
例えば、第1基準点補正部62は、これから取り付けを行うパネル22をエンドエフェクタ52aによって把持した状態で、2次元データ及び3次元データを取得する。そして、取得したこれら2次元データ及び3次元データと、記憶部61に格納されているパネル2次元マスターデータ及びパネル3次元マスターデータと比較して、スタッド23a、23bの位置ずれ及び方向ずれを算出する。そして、算出結果を用いて、第1基準点TCP1a、TCP1bを補正し、第1補正基準点TCP1a´、TCP1b´を得る。
【0050】
ここで、ずれ量が許容値以内である場合には、後述する力制御によってパネル22を貫通孔24にはめ込むことができる可能性が高いことから、第1基準点の補正は行わないこととしてもよい。
【0051】
第2基準点補正部63は、第1基準点補正部62と同様に、インナーライナ21が固定された状態における貫通孔24a、24bの状態と、教示データを得た時の貫通孔24a、24bの状態とを比較することにより、貫通孔24a、24bに対応して定義された第2基準点TCP2a、TCP2bの教示データを補正して、第2補正基準点TCP2a´、TCP2b´を得る。
【0052】
例えば、第2基準点補正部63は、これから取り付けが行われるインナーライナ21を固定した状態で、2次元データ及び3次元データを取得する。そして、取得したこれら2次元データ及び3次元データと、記憶部61に格納されているライナ2次元マスターデータ及びライナ3次元マスターデータと比較して、貫通孔24a、24bの位置ずれを算出する。そして、算出結果を用いて、第2基準点TCP2a、TCP2bを補正し、第2補正基準点TCP2a´、TCP2b´を得る。
ずれ量が許容値以内である場合には、後述する力制御によってパネル22を貫通孔24にはめ込むことができる可能性が高いことから、第2基準点の補正は行わないこととしてもよい。
【0053】
本実施形態において、上述した2次元データ及び3次元データは、例えば、ビジョンセンサ54(図8参照)を用いて取得するが、これに限られない。すなわち、上述したずれ量を検出できるセンサであれば、公知のセンサ等を適宜採用することができる。
【0054】
目標基準点設定部64は、予め設定された順序に基づいて、複数の第1補正基準点TCP1a´、TCP1b´のうちの一つを目標基準点に設定する。目標基準点を設定する順序は、パネル22の一端部領域から中央領域に向けて設定されている。本実施形態では、第1補正基準点TCP1a´、TCP1b´の順で、目標基準点が設定される。目標基準点設定部64は、目標基準点が対応する第2基準点に一致したことが検出された場合に、次の順序の第1補正基準点を目標基準点として設定する。
【0055】
アーム制御部65は、目標基準点を、インナーライナ21に設定された対応する第2基準点に一致させるように、ロボットアーム52を制御する。具体的には、アーム制御部65は、教示データに含まれる制御データに基づいて、ロボット50の各関節の角度を制御することにより、エンドエフェクタ52aを所望の位置に導き、目標基準点を対応する第2補正基準点に一致させる。
【0056】
アーム制御部65は、目標基準点を第2基準点に一致させる場合に、パネル22(具体的には、スタッド23)がインナーライナ21に接触することにより生じる反力が、予め設定されている第1閾値を超えた場合に、力制御を行う。この反力は、力センサ53の検出値によって得ることができる。
【0057】
この力制御は、例えば、ロボットアーム52を予め設定された揺動方向に揺動させながらパネル22をインナーライナ21に押し込む制御である。揺動方向は、1方向でもよいし、複数方向の組み合わせでもよい。また、このときの押し込む力は、パネル22やインナーライナ21に変形等の不具合が生じない程度の押圧力となるように調整される。
【0058】
アーム制御部65は、力制御を行った場合に、反力が予め設定されている第2閾値以下となった場合に、目標基準点が設定されたスタッド23が対応する貫通孔24に入ったとみなし、目標基準点が第2基準点に一致したと判定する。
【0059】
アーム制御部65は、反力が予め設定されている第2閾値以下となるまで、または、予め設定された所定期間が経過するまで、若しくは、揺動回数が予め設定された回数に達するまで、力制御を行う。そして、力制御を所定期間又は揺動回数が所定回数に達しても反力が第2閾値以下とならない場合には、ロボット制御を停止し、エラー通知を行う。
【0060】
次に、上述した制御装置60によって実行されるロボット制御方法について図17及び図18を参照して説明する。図17及び図18は、本実施形態に係るロボット制御方法の処理手順の一例を示したフローチャートである。後述する各処理を実現するための一連の処理は、一例として、プログラムの形式で二次記憶装置に記憶されており、このプログラムをCPUが主記憶装置に読み出して、情報の加工・演算処理を実行することにより、各処理が実現される。
【0061】
まず、エンドエフェクタ52aによってパネル22を把持し(SA1)、この状態で2次元データ及び3次元データを取得する(SA2)。続いて、取得した2次元データ及び3次元データと記憶部61に教示データとして格納されているパネル2次元マスターデータ及びパネル3次元マスターデータとを比較して第1基準点に関するずれ量、換言すると、スタッド23a,23bのずれ量(位置、方向に関するずれ量)を算出する(SA3)。続いて、算出したずれ量に基づいて、教示データの第1基準点TCP1a、TCP1bを補正し、第1補正基準点TCP1a´、TCP1b´を得る(SA4)。
【0062】
次に、インナーライナ21が固定された状態で2次元データ及び3次元データを取得する(SA5)。続いて、取得した2次元データ及び3次元データと、記憶部61に教示データとして格納されているライナ2次元マスターデータ及びライナ3次元マスターデータとを比較し、第2基準点に関するずれ量(位置に関するずれ量)を算出する(SA6)。続いて、算出したずれ量に基づいて、教示データの第2基準点TCP2a、TCP2bを補正し、第2補正基準点TCP2a´、TCP2b´を得る(SA7)。
【0063】
次に、目標基準点として第1補正基準点TCP1a´を設定し(SA8)、目標基準点を第2補正基準点TCP2a´に一致させるように、ロボットアーム52が制御される(SA9)。続いて、目標基準点が第2補正基準点TCP2a´に一致したか否かを判定し(図18のSA10)、一致していなければ(SA10:NO)、第1閾値以上の反力が検出されたか否かを判定する(SA11)。第1閾値以上の反力が検出されていない場合には(SA11:NO)、ステップSA10に戻る。一方、第1閾値以上の反力が検出された場合には(SA11:YES)、力制御を行う(SA12)。これにより、パネル22が所定の揺動方向に揺動されながら、所定の力でパネル22がインナーライナ21に押し込まれる。なお、力制御については、反力が予め設定されている第2閾値以下となるまで、所定回数リトライすることとしてもよい。
【0064】
続いて、反力が予め設定されている第2閾値以下となったか否かを判定する(SA13)。この結果、反力が第2閾値以下となっていない場合には(SA13:NO)、ロボット制御を停止し、エラー通知を行う(SA14)。
【0065】
一方、反力が第2閾値以下となった場合には(SA13:YES)、目標基準点として設定されていない第1補正基準点が存在するか否かを判定する(SA15)。この結果、未設定の第1補正基準点が存在する場合には(SA15:YES)、予め設定されている順序に従って目標基準点を設定する(図17のSA8)。これにより、目標基準点は第1補正基準点TCP1a´から第1補正基準点TCP1b´に切り替えられ、第1補正基準点TCP1b´を第2補正基準点TCP2b´に一致させるように、ロボットアーム52が制御され(SA9)、それ以降の処理が繰り返し行われる。そして、第1補正基準点TCP1b´が第2補正基準点TCP2b´に一致した場合(SA10:YES)、又は、反力が第2閾値以下となった場合には(SA13:YES)、ステップSA15において、目標基準点として設定されていない第1補正基準点は存在しないと判定され(SA15:NO)、組付け完了通知を行い(SA16)、処理を終了する。
【0066】
図19図22は、パネル22をインナーライナ21に組付ける際の第1基準点の切り替えタイミングについて説明するための模式図である。図19図22において、パネル22及びインナーライナ21は簡略化されて示されている。
【0067】
図19に示すように、まずは、パネル22の周方向端部に設けられた第1補正基準点TCP1a´が目標基準点として設定され、この第1補正基準点TCP1a´を第2補正基準点TCP2a´に一致させるためのロボットアーム52の制御が行われる。そして、図20に示すように、第1補正基準点TCP1a´が第2補正基準点TCP2a´に一致すると、図21に示すように、次の第1補正基準点TCP1b´が目標基準点として設定され、この第1補正基準点TCP1b´を第2補正基準点TCP2b´に一致させるためのロボットアーム52の制御が行われる。そして、図21に示すように、第1補正基準点TCP1b´が第2補正基準点TCP2b´に一致すると、結果として全てのスタッド23が貫通孔24に挿通した状態となり、組付けが終了する。
【0068】
以上説明してきたように、本実施形態に係るロボット、ロボット制御装置、ロボット制御方法、及びプログラムによれば、以下の作用効果を奏する。
【0069】
例えば、制御装置60は、パネル22がロボットアーム52により把持された状態におけるスタッド23の状態と、教示データを得たときのスタッド23の状態とを比較することにより、スタッド23a、23bのそれぞれに対応して定義された第1基準点TCP1a、TCP1bの教示データを補正する第1基準点補正部62を備えている。これにより、パネル22の製造誤差やロボットアーム52によってパネル22を把持する際の把持ズレを考慮した組付け作業を実施することができる。
【0070】
更に、制御装置60は、複数の第1補正基準点TCP1a´、TCP1b´の中から順番に目標基準点を定める目標基準点設定部64及び目標基準点を対応する第2補正基準点TCP2a´、TCP2b´へ一致させるようなロボットアーム52の制御を行うアーム制御部65を備えている。これにより、複数のスタッド23を備えるパネルを複数の貫通孔24を備えるインナーライナ21に容易に組付けることが可能となる。
【0071】
以上、本発明について実施形態を用いて説明したが、本開示の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されない。発明の要旨を逸脱しない範囲で上記実施形態に多様な変更又は改良を加えることができ、該変更又は改良を加えた形態も本開示の技術的範囲に含まれる。また、上記実施形態を適宜組み合わせてもよい。
また、上記実施形態で説明したロボット制御方法の流れも一例であり、本開示の主旨を逸脱しない範囲内において不要なステップを削除したり、新たなステップを追加したり、処理順序を入れ替えたりしてもよい。
【0072】
第1基準点は一例であり、3つ以上定義されてもよい。すなわち、第1基準点の数をM個(Mは整数)、スタッドの数をN個(Nは整数)とした場合、第1基準点の数は、N≧M≧2とされる。例えば、パネル22の両端領域にそれぞれ第1基準点を定義してもよい。この場合、目標基準点設定部64は、一端部領域に設けられた第1基準点、中央領域に設けられた第1基準点、他端部領域に設けられた第1基準点の順に目標基準値を設定する。
【0073】
例えば、図23に示すように、パネル22において、スタッド23aが設けられた端部領域と反対の端部領域に設けられたスタッド23cに対応する第1基準点TCP1cを設定してもよい。この場合、目標基準点設定部64は、一端部領域に設けられた第1基準点TCP1a、中央領域に設けられた第1基準点TCP1b、他端部領域に設けられた第1基準点TCP1cの順に目標基準値を設定する。
【0074】
また、上述した実施形態では、複数のスタッド23が設けられたパネル22を組付け部品とし、このパネル22をロボットアーム52によって把持して組み付けることとしたが、組付け部品及び被組付け部品の形状等はこの例に限られない。
また、上述した実施形態では、複数の突起部(ねじ、スタッドボルト等)が設けられた部品を組付け部品としたが、これに代えて、開口部が設けられた部品を組付け部品とし、複数の突起部が設けられた被組付け部品に対して組付け作業を行うこととしてもよい。
また、上述した実施形態では、パネル22が曲率を有している場合を例示して説明したが、パネルは必ずしも曲率を有している必要はなく、平板のものであってもよい。
【0075】
以上の通り説明した本実施形態に係るロボット、ロボット制御装置、ロボット制御方法、及びプログラムは、例えば、以下のように把握される。
【0076】
本開示の第1態様に係るロボット制御装置(60)は、N個(Nは2以上の整数)の第1特徴部(23)を有する組付け部品(22)をロボットアーム(52)により把持し、各前記第1特徴部に対応するN個の第2特徴部(24)を有する被組付け部品(21)に組付けるためのロボット制御装置であって、前記組付け部品が前記ロボットアームにより把持された状態におけるM個(Mは2以上N以下の整数)の前記第1特徴部(23a、23b)の状態と、教示データを得たときのM個の前記第1特徴部の状態とを比較することにより、M個の前記第1特徴部のそれぞれに対応して定義されたM個の第1基準点(TCP1a、TCP1b)の教示データを補正して、M個の第1補正基準点(TCP1a´、TCP1b´)を得る第1基準点補正部(62)と、予め設定された順序に基づいて、M個の前記第1補正基準点のうちの一つを目標基準点に設定する目標基準点設定部(64)と、前記目標基準点を、前記被組付け部品の前記第2特徴部に対応して設定された第2基準点(TCP2a、TCP2b)に一致させるように、前記ロボットアームを制御するアーム制御部(65)とを備え、前記目標基準点設定部は、前記目標基準点が対応する前記第2基準点に一致したと判定された場合に、次の順序の前記第1補正基準点を前記目標基準点として設定する。
【0077】
本態様によれば、第1基準点補正部により、組付け部品がロボットアームにより把持された状態におけるM個の第1特徴部の状態と、教示データを得たときのM個の第1特徴部の状態とを比較することにより、M個の第1特徴部のそれぞれに対応して定義されたM個の第1基準点の教示データが補正される。これにより、組付け部品の製造誤差やロボットアームによって組付け部品を把持する際の把持ズレを考慮した組付け作業を実施することができる。
また、複数の目標補正基準点の中から順番に目標基準点を定め、目標基準点を対応する第2基準点へ一致させるようなロボットアームの制御が行われる。このように、複数の目標補正基準点の中から一つずつ制御対象となる目標基準点を設定することにより、複数の第1特徴部を備える組付け部品を被組付け部品の対応する第2特徴部に効率的に導くことが可能となる。
【0078】
本開示の第2態様に係るロボット制御装置(60)は、前記第1態様において、前記第1特徴部は、前記組付け部品に設けられた突起部(23)であってもよい。
【0079】
本態様によれば、N個の突起部が設けられた組付け部品において、M個の突起部の状態と、教示データを得たときのM個の突起部の状態とを比較することにより、M個の突起部のそれぞれに対応して定義されたM個の第1基準点の教示データが補正され、補正後のこれら教示データに基づいて組付け作業が行われる。これにより、組付け部品に設けられた突起部の製造誤差やロボットアームが組付け部品を把持する際の把持ズレなどを考慮した組付け作業を行うことが可能となる。
【0080】
本開示の第3態様に係るロボット制御装置(60)は、前記第2態様において、前記組付け部品は、曲率を有するパネルであり、N個の前記突起部は、曲率方向に沿って間隔を空けて設けられていてもよい。
【0081】
本態様によれば、N個の突起部が間隔をあけて設けられた曲率を有するパネルにおいて、M個の突起部の状態と、教示データを得たときのM個の突起部の状態とを比較することにより、M個の突起部のそれぞれに対応して定義されたM個の第1基準点の教示データが補正される。これにより、パネルの製造誤差(例えば、パネルの曲率誤差、突起部の向きの誤差)等も加味した組付け作業を行うことが可能となる。
【0082】
本開示の第4態様に係るロボット制御装置(60)は、前記第1態様から前記第3態様のいずれかにおいて、前記目標基準点を設定する順序は、前記パネルの一端部領域から中央領域に向けて順に設定されていてもよい。
【0083】
本態様によれば、一端部から中央部にかけて順番に、組み立て部品に設けられた第1特徴部を被組付け部品の対応する第2特徴部に導くことが可能となる。これにより、効率的に組付け作業を進めることができる。
【0084】
本開示の第5態様に係るロボット制御装置(60)は、前記第1態様から前記第4態様のいずれかにおいて、前記第1基準点補正部は、前記組付け部品が前記ロボットアームにより把持された状態の3次元データ及び2次元データを取得し、前記教示データを得たときの3次元データ及び2次元データと比較することにより、M個の前記第1基準点の教示データを補正することとしてもよい。
【0085】
本態様によれば、組付け部品がロボットアームにより把持された状態の3次元データ及び2次元データを用いて教示データの補正が行われる。これにより、組付け部品の製造誤差とロボットアームによる組付け部品の把持ズレとの両方が反映されたずれ量を効率的に演算することができる。
【0086】
本開示の第6態様に係るロボット制御装置(60)は、前記第1態様から前記第5態様において、前記アーム制御部は、前記目標基準点を前記第2基準点に一致させる場合に、前記組付け部品が前記被組付け部品に接触することにより生じる反力が予め設定されている第1閾値を超えた場合に、前記ロボットアームを予め設定された揺動方向に揺動させながら前記組付け部品を前記被組付け部品に押し込む力制御を行うこととしてもよい。
【0087】
本態様によれば、組付け部品が被組付け部品に接触することにより、被組付け部品からの反力が第1閾値を超えた場合には、ロボットアームを予め設定された揺動方向に揺動させながら組付け部品を被組付け部品に押し込む力制御が行われる。これにより、第1基準点補正部によって補正しきれなかった誤差が生じており、組付け部品が被組付け部品に接触してしまった場合でも、ロボットアームを揺動させながら被組付け部品の方向へ押し込むことにより、第2基準値を探索しながら組付け部品の第1特徴部を被組付け部品の対応する第2特徴部に導くことが可能となる。
【0088】
本開示の第7態様に係るロボット制御装置(60)は、前記第6態様において、前記アーム制御部は、前記力制御を行った場合に、前記反力が予め設定されている第2閾値以下となった場合に、目標基準点が前記第2基準点に一致したと判定することとしてもよい。
【0089】
力制御を行っているときに、反力が第2閾値以下となった場合には、組付け部品と被組付け部品との接触が解消され、第1基準点が対応する第2基準点に到達したとみなすことができる。従って、反力が第2閾値となった場合には、目標基準点が第2基準点に一致したと判定することにより、効率的に組付け制御を進めることができる。
【0090】
本開示の第8態様に係るロボット制御装置(60)は、前記第7態様において、前記アーム制御部は、前記反力が予め設定されている第2閾値以下となるまで、前記力制御を繰り返し行い、前記力制御を所定回数行っても前記反力が前記第2閾値以下とならない場合には、エラー通知を行うこととしてもよい。
【0091】
力制御を所定回数繰り返し行っても、反力が第2閾値以下とならない場合には、力制御によっても解消できない誤差が組付け部品と被組付け部品との間に生じているとみなすことができる。したがって、このような場合には、エラー通知を行うことで、不具合品の通知を効率的に行うことができるとともに、迅速な対応を取ることが可能となる。
【0092】
本開示の第9態様に係るロボット制御装置(60)は、前記第1態様から前記第8態様のいずれかにおいて、前記被組付け部品が固定された状態におけるM個の前記第2特徴部の状態と、教示データを得たときのM個の前記第2特徴部の状態とを比較することにより、M個の前記第2特徴部のそれぞれに対応して定義されたM個の第2基準点(TCP2a、TCP2b)の教示データを補正して、M個の第2補正基準点(TCP2a´、TCP2b´)を得る第2基準点補正部(63)を更に備え、前記アーム制御部は、前記目標基準点を対応する前記第2補正基準点に一致させるように、前記ロボットアームを制御することとしてもよい。
【0093】
本態様によれば、第2基準点補正部により、被組付け部品が固定された状態におけるM個の第2特徴部の状態と、教示データを得たときのM個の第2特徴部の状態とが比較されることにより、M個の第2特徴部のそれぞれに対応して定義されたM個の第2基準点の教示データが補正される。これにより、組付け部品の製造誤差等だけでなく、被組付け部品の製造誤差や設置誤差を考慮した組付け作業を実施することが可能となる。これにより、組付け作業を更に効率的に実行することが可能となる。
【0094】
本開示の第1態様に係るロボットは、前記第1態様から前記第9態様のいずれかに係るロボット制御装置を備える。
【0095】
本開示の第1態様に係るロボット制御方法は、N個(Nは2以上の整数)の第1特徴部を有する組付け部品をロボットアームにより把持し、各前記第1特徴部に対応するN個の第2特徴部を有する被組付け部品に組付けるためのロボット制御方法であって、前記組付け部品が前記ロボットアームにより把持された状態におけるM個(Mは2以上N以下の整数)の前記第1特徴部の状態と、教示データを得たときのM個の前記第1特徴部の状態とを比較することにより、M個の前記第1特徴部のそれぞれに対応して定義されたM個の第1基準点の教示データを補正して、M個の第1補正基準点を得る工程と(SA4)、予め設定された順序に基づいて、M個の前記第1補正基準点のうちの一つを目標基準点に設定する工程と(SA8)、前記目標基準点を、前記被組付け部品の前記第2特徴部に対応して設定された第2基準点に一致させるように、前記ロボットアームを制御する工程と(SA9~SA15)、前記目標基準点が対応する前記第2基準点に一致したと判定された場合に、次の順序の前記第1補正基準点を前記目標基準点として設定する工程(SA8)とをコンピュータが実行する。
【0096】
本開示の第1態様に係るプログラムは、コンピュータを前記第1態様から前記第9態様のいずれかに係るロボット制御装置として機能させるためのプログラムである。
【符号の説明】
【0097】
1:燃焼器
20:インナー燃焼器
21:インナーライナ
22:インナーライナ用パネル(パネル:組付け部品)
22r:マスターパネル
23、23a、23b:スタッド(第1特徴部)
24、24a、24b:貫通孔(第2特徴部)
25:ワッシャ
26:ナット
27:貫通孔
50:ロボット
52:ロボットアーム
52a:エンドエフェクタ
53:力センサ
60:制御装置(ロボット制御装置)
61:記憶部
62:第1基準点補正部
63:第2基準点補正部
64:目標基準点設定部
65:アーム制御部
TCP1a,TCP1b,TCP1c:第1基準点
TCP1a´,TCP1b´:第1補正基準点
TCP2a,TCP2b:第2基準点
TCP2a´,TCP2b´:第2補正基準点
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23