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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024063265
(43)【公開日】2024-05-13
(54)【発明の名称】送達デバイス
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/145 20060101AFI20240502BHJP
【FI】
A61M5/145 500
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021051369
(22)【出願日】2021-03-25
(71)【出願人】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】米田 善紀
(72)【発明者】
【氏名】有馬 大貴
【テーマコード(参考)】
4C066
【Fターム(参考)】
4C066AA10
4C066BB01
4C066CC01
4C066DD08
4C066QQ52
(57)【要約】
【課題】生体内に挿入した注入針の挙動や患部に対する位置を超音波画像で確認する際の生体表面に対する超音波探触子の正しい配置位置を把握すること。
【解決手段】生体内の患部に送達物を送達する送達デバイス100は、第1操作部10と、内腔31を有し、第1操作部10の先端から長軸方向に沿って延在する外筒30と、第1操作部10に対して長軸方向に摺動可能に取り付けられる第2操作部20と、外筒30の内腔31に進退可能に収納され、第2操作部10の先端から長軸方向に沿って延在する注入針40と、第1操作部10と第2操作部20の少なくとも一方に取り付けられ、注入針40の中心軸を通る平面と重なるライン光Lを、生体表面Sに照射する照射部50と、を備える。
【選択図】図2A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体表面から穿刺して生体内の患部に送達物を送達する送達デバイスであって、
第1操作部と、
内腔を有し、前記第1操作部の先端から長軸方向に沿って延在する外筒と、
前記第1操作部に対して長軸方向に摺動可能に取り付けられる第2操作部と、
前記外筒の内腔に進退可能に収納され、前記第2操作部の先端から長軸方向に沿って延在する注入針と、
前記第1操作部と前記第2操作部の少なくとも一方に取り付けられ、前記注入針の中心軸を通る平面と重なるライン光を前記生体表面に照射する照射部と、
を備える、送達デバイス。
【請求項2】
前記注入針は、先端に開口部を有する針先端部と、前記針先端部の基端から長軸方向に沿って延在して設けられる中空の針本体部と、を有し、
前記針先端部は、前記針本体部の先端から前記開口部に向かうに連れて徐々に前記外筒の中心軸から遠ざかるように前記針先端部の少なくとも一部を湾曲する湾曲部を有する、請求項1に記載の送達デバイス。
【請求項3】
前記照射部は、前記生体表面と補色関係となる色味を呈するレーザ光を前記ライン光として照射するレーザ光源を備え、前記ライン光を30度以上の照射角度で照射可能に構成される、請求項2に記載の送達デバイス。
【請求項4】
前記外筒は、前記第1操作部の長軸を中心に回転可能に保持される、請求項3に記載の送達デバイス。
【請求項5】
前記照射部は、前記針先端部の湾曲方向側から前記注入針の中心軸を通る平面と重なるように前記ライン光を照射可能な第1照射位置と、前記第1操作部の外周面において前記第1照射位置と径方向で対向する位置であって前記針先端部の湾曲方向側と反対側から前記注入針の中心軸を通る平面と重なるように前記ライン光を照射可能な第2照射位置にそれぞれ配置される、請求項3または4に記載の送達デバイス。
【請求項6】
前記第2操作部は、前記第1操作部に対して周方向に回転可能に取り付けられ、
前記照射部は、前記第2操作部の回転移動に追従可能に設けられる、請求項3または4に記載の送達デバイス。
【請求項7】
前記照射部は、前記第1操作部に取り付けられる第1照射部と、前記第2操作部に取り付けられる第2照射部と、を有し、
前記第1照射部および前記第2照射部は、前記第2操作部を前記第1操作部に対して回転移動する前の状態において、前記第1照射部から照射されるライン光と、前記第2照射部から照射されるライン光が、前記生体表面で重畳する位置にそれぞれ取り付けられる、請求項3または4に記載の送達デバイス。
【請求項8】
前記照射部は、前記生体表面に対する超音波探触子の送波面の位置合わせを行うための第1ライン光と、前記第1ライン光の両側縁に沿って前記第1ライン光の外側に位置し前記生体表面に対する前記送波面の角度調整を行うための第2ライン光と、を照射する、請求項3または4に記載の送達デバイス。
【請求項9】
前記注入針は、前記第2操作部に対して複数設けられ、
前記照射部は、複数の前記注入針のそれぞれに対応して前記第2操作部の外周面に複数取り付けられる、請求項3または4に記載の送達デバイス。
【請求項10】
前記外筒の先端側の外表面および前記注入針の先端側の外表面は、周囲との音響インピーダンス差を大きくするための反射部を有する、請求項1~9のいずれか1項に記載の送達デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体内の患部に対して薬剤や医療デバイスなどの送達物を送達する送達デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、薬剤を送達する送達デバイス(穿刺デバイス)を用いて腫瘍などの患部や患部の疑いがある部位など処置するため、超音波探触子(プローブ)から観測対象となる生体組織に対して超音波(光音響波)を送受信して得られた超音波信号に基づく超音波画像(光音響画像)を用いて患部を観察しながら穿刺する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-31262号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
生体内に発生した腫瘍を治療する際、副作用の強い薬剤や選択性が少ない薬剤に対して全身性の副作用を抑えつつ、腫瘍への薬剤集積量を高める投与方法として、腫瘍に直接投与する処置方法がある。しかし、腫瘍組織内に薬剤を浸透・拡散させるには、1箇所から投与しても薬剤量は限られている。また、線維性の隔壁を有する腫瘍は、薬剤が浸透し難いため、1箇所から投与しても期待する効果が得られないこともある。そのため、術者は、穿刺デバイスを穿刺し直して複数箇所から腫瘍にアプローチして薬剤の投与を試みるが、出血リスクや播種リスクが高まるという課題がある。
【0005】
そこで、上記課題に対する対応策として、穿刺デバイスの注入針の先端部を軸方向から外方に向けて湾曲させた構成とし、注入針を回転させて腫瘍への穿刺箇所を変えながら薬剤を投与する処置方法が考えられる。この処置方法によれば、注入針を回転させて注入針の穿刺端を腫瘍の異なる位置に向けることができるため、穿刺デバイスの穿刺箇所を変えず、腫瘍の異なる位置にアプローチすることが可能となる。
【0006】
ところで、腫瘍に注入針を穿刺する際に、腫瘍の周囲にある他組織や血管などの損傷リスクを回避するため、術者は、超音波画像を確認しながら注入針の先端部分と腫瘍との位置関係を把握する必要がある。注入針の先端部分を超音波画像上に映し出すには、超音波探触子から送信される超音波を、注入針の中心軸を通る平面と重なるように照射しなければならない。しかし、上記対応策となる処置方法を行う場合、注入針の先端は湾曲して側方を向いているため、注入針の湾曲方向によっては穿刺端が超音波の照射領域から外れる可能性がある。超音波画像上に注入針の先端部分が映し出されない場合、術者は、注入針の湾曲方向に合わせて超音波探触子を配置させようとするが、生体外から注入針の湾曲方向を確認する術がないため、超音波探触子を正しく配置するのは困難である。
【0007】
また、上記対応策となる処置方法では、典型的に超音波探触子に穿刺デバイスを保持するニードルガイドを装着し、超音波探触子と穿刺デバイスを同時に移動させながら処置が行われる。しかし、腫瘍の位置によっては、ニードルガイドを使用せず、穿刺デバイスと超音波探触子を別々に動かして処置する方が好ましい場合もある。このような処置方法では、穿刺デバイスと超音波探触子を別々に動かすため、ニードルガイドを使用する処置方法と比べて、超音波探触子を正しく配置するのがより困難となる。
【0008】
以上のように、超音波探触子を用いて注入針の向きや挙動を確認しながら腫瘍へアプローチする処置方法を実施するには、超音波探触子の生体表面に対する正しい配置位置を把握することが重要となる。しかし、特許文献1の技術では、超音波探触子の正しい配置位置を容易に把握することができず改善の余地がある。
【0009】
本発明の少なくとも一実施形態は、上述の事情に鑑みてなされたものであり、具体的には、生体内に挿入した注入針の挙動や患部に対する位置を超音波画像で確認する際の生体表面に対する超音波探触子の正しい配置位置を把握することができる送達デバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本実施形態に係る送達デバイスは、生体表面から穿刺して生体内の患部に送達物を送達する送達デバイスであって、第1操作部と、内腔を有し、前記第1操作部の先端から長軸方向に沿って延在する外筒と、前記第1操作部に対して長軸方向に摺動可能に取り付けられる第2操作部と、前記外筒の内腔に進退可能に収納され、前記第2操作部の先端から長軸方向に沿って延在する注入針と、前記第1操作部と前記第2操作部の少なくとも一方に取り付けられ、前記注入針の中心軸を通る平面と重なるライン光を前記生体表面に照射する照射部と、を備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明の少なくとも一実施形態によれば、生体内に挿入した注入針の挙動や患部に対する位置を超音波画像で確認する際の生体表面に対する超音波探触子の正しい配置位置を把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施形態に係る送達デバイスの概略側面図である。
図2A】本実施形態に係る送達デバイスにおいて注入針の進出前の状態を示す部分断面図である。
図2B】本実施形態に係る送達デバイスにおいて注入針の進出後の状態を示す部分断面図である。
図3A】本実施形態に係る送達デバイスにおいて照射部からライン光を照射した状態を側方から見た概念図である。
図3B】本実施形態に係る送達デバイスにおいて照射部からライン光を照射した状態を上方から見た概念図である。
図4A】変形例1の送達デバイスの形態を示す部分断面図である。
図4B】変形例1の送達デバイスの他の形態を示す部分断面図である。
図5】変形例2の送達デバイスの形態を示す部分断面図である。
図6A】変形例2の送達デバイスの使用例を示す概略構成図である。
図6B】変形例2の送達デバイスの使用例を示す概略構成図である。
図7A】変形例3の送達デバイスの形態を示す概略側面図である。
図7B】変形例3の送達デバイスの他の形態を示す部分断面図である。
図8A】変形例4の送達デバイスにおいて第2操作部の回転前の状態を示す概略側面図である。
図8B】変形例4の送達デバイスにおいて第2操作部の回転後の状態を示す概略側面図である。
図9A】変形例5の送達デバイスにおいて超音波探触子を正しい姿勢で配置した際の概念図である。
図9B】変形例5の送達デバイスにおいて超音波探触子を誤った姿勢で配置した際の概念図である。
図10A】変形例6の送達デバイスにおいて一の注入針を進出させる前の状態を示す概略側面図である。
図10B】変形例6の送達デバイスにおいて一の注入針を進出させた後の状態を示す概略側面図である。
図11】変形例7の送達デバイスの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。ここで示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するために例示するものであって、本発明を限定するものではない。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で当業者などにより考え得る実施可能な他の形態、実施例および運用技術などは全て本発明の範囲、要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0014】
さらに、本明細書に添付する図面は、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺、縦横の寸法比、形状などについて、実物から変更し模式的に表現される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。
【0015】
また、送達デバイス100が生体内に挿入される側を「先端側」とし、先端側と反対側(術者が把持する側)を「基端側」とする。また、先端(最先端)から長軸方向(送達デバイス100の中心軸Zの延在方向)に沿う一定の範囲を含む部分を「先端部」とし、基端(最基端)から長軸方向における一定の範囲を含む部分を「基端部」とする。
【0016】
なお、以下の説明において、「第1」、「第2」のような序数詞を付して説明する場合は、特に言及しない限り、便宜上用いるものであって何らかの順序を規定するものではない。
【0017】
<構成>
図1図2A図2Bに示すように、送達デバイス100は、概説すると、第1操作部10と、第2操作部20と、外筒30と、注入針40と、照射部50と、を備える。送達デバイス100は、生体に挿入した状態で注入針40を介して生体内の患部に所定の送達物(薬剤や医療デバイス)を送達するためのものである。
【0018】
第1操作部10、第2操作部20、外筒30の中心軸A、および注入針40の中心軸Bは、いずれも送達デバイス100の中心軸Zと一致する(図2Aを参照)。中心軸Zは、生体表面Sに対して送達デバイス100を進退させる方向、第2操作部20を押引き操作する方向と一致する。なお、注入針40は、外筒30から進出した際に後述する湾曲部44により湾曲形状に変形するため、中心軸Zも注入針40の湾曲方向に沿って湾曲する(図2Bを参照)。
【0019】
第1操作部10は、図2Aに示すように、内腔11を有する中空の筒状部材で構成され、先端に外筒30が取り付けられる。第1操作部10の内腔11は、外筒30の内腔31と連通する。第1操作部10の内部には、第2操作部20が長軸方向に沿って摺動可能に収納される。第1操作部10の外周面には、照射部50が配置される。
【0020】
第2操作部20は、図2Aに示すように、内腔21を有する中空の筒状部材で構成され、先端に注入針40が取り付けられる。第2操作部20の内腔21は、注入針40の内腔41と連通する。第2操作部20は、第1操作部10の内腔11に、長軸方向に沿って摺動可能に収納される。そのため、注入針40は、第2操作部20の押引き操作により、長軸方向に沿って外筒30から進退することができる。
【0021】
第2操作部20の先端位置と、第1操作部10の内腔11の先端側内壁との距離は、注入針40の進出量に応じて設定される。すなわち、第2操作部20は、図2Aに示すように、摺動前の状態では、第2操作部20の先端位置と第1操作部10の内腔11の先端側内壁とが少なくとも前記進出量の分だけ離隔している。また、第2操作部20は、図2Bに示すように、摺動後の状態では前記進出量の分だけ先端側へ摺動し、第2操作部20の先端が第1操作部10の内腔11の先端側内壁と近接した状態となる。この状態において、注入針40は、外筒30から進出する。
【0022】
また、第2操作部20は、図2Aに示すように、基端側に押引部22と、ハブ部23と、を備える。
【0023】
押引部22は、外筒30から注入針40を進退させる押引き操作を行うときに操作される。術者は、押引部22を押し操作(先端側への摺動)することで、外筒30から注入針40を進出できる。また、術者は、押引部22を引き操作(基端側への摺動)することで、外筒30から進出した注入針40を外筒30内に収納できる。
【0024】
ハブ部23は、基端側に形成された開口部と連通する内腔を有する。ハブ部23の内腔は、第2操作部20の内腔21を介して注入針40の内腔41と連通する。そのため、注入針40の内腔41は、ハブ部23を介して外部と連通可能となる。ハブ部23は、注入針40に送達物を導入するための導入口として機能する。そのため、ハブ部23は、例えば薬剤投与のためのシリンジの筒先やチューブが装着されたり、医療デバイスが挿入されたりする。なお、本実施形態において、ハブ部23は、第2操作部20の基端側の押引部22に設けた構成であるが、第2操作部20の側面側に設けてもよい。
【0025】
なお、第2操作部20の外周面には、注入針40の湾曲方向が視覚または触覚などで確認可能なマーカー部を設けてもよい。これにより、術者は、事前に注入針40の湾曲方向を把握した状態で、送達デバイス100を生体内に挿入することができる。また、第2操作部20は、マーカー部に加えて、外周面に注入針40の外筒30からの進出長さ(穿刺長さ)や湾曲方向への湾曲度合い(針本体部42の中心軸B1から穿刺端43bまでの離隔距離)が視覚または触覚などで確認可能なスケール部を設けるのが好ましい。これにより、術者は、送達デバイス100を生体内に挿入した状態で注入針40の患部に対する穿刺長さや、湾曲方向への湾曲度合いを把握することができる。
【0026】
また、第2操作部20は、注入針40の穿刺長を所定の長さに制限するための穿刺長制限機構(ストッパー)を設けてもよい。これにより、術者は、注入針40を患部に穿刺し過ぎることがなく、患部に対して適切な穿刺長で穿刺することができる。
【0027】
外筒30は、図2Aに示すように、先端から基端にかけて連通する内腔31を有する中空の筒状部材で構成され、第1操作部10の先端から長軸方向に沿って延在する。外筒30の内腔31は、先端側は先端開口部32と連通し、基端側は基端開口部33と連通する。基端開口部33は、第1操作部10の内腔11と連通する。外筒30の内腔31には、注入針40が収納される。
【0028】
外筒30の構成材料は、医療分野で使用可能な生体に非侵襲または低侵襲な材料(樹脂材料や金属材料など)が適用可能であるが、生体に挿入した際の撓みを抑制するため、比較的剛性の高い材料(ステンレス、チタン合金、CoCr合金など)を採用するのが好ましい。
【0029】
外筒30は、先行して生体内に導入されたカニューレなどの導入デバイスに沿って挿入される。また、外筒30は、先端を鋭利な針形状とした場合、導入デバイスを使用せず、生体表面Sから穿刺して患部まで挿入することができる。
【0030】
なお、外筒30は、手技中に生体表面Sで位置固定するための固定部材を外周面に設けてもよい。これにより、術者は、手技中に外筒30が位置固定され、患部の目的とする箇所に対して注入針40を正確に穿刺することができる。
【0031】
注入針40は、図2Aに示すように、内腔41を有する中空の筒状部材で構成され、第2操作部20の先端から長軸方向に沿って延在する。注入針40は、針本体部42と、針先端部43と、湾曲部44と、を備える。針本体部42、針先端部43は、内腔41を通じて連通する。
【0032】
針本体部42は、中空の筒状部材で構成され、基端が第2操作部20の先端と連結している。そのため、注入針40の内腔41は、第2操作部20の内腔21と連通する。針本体部42の先端は、針先端部43の基端と連結している。
【0033】
針先端部43は、先端に開口部43aを有する鋭利な穿刺端43bを有する。針先端部43の少なくとも一部は、第2操作部20の摺動に伴い、外筒30から生体内へと進出する。また、針先端部43は、湾曲部44を有し、少なくとも一部が側方に向かって湾曲した形状に変形可能に構成される。
【0034】
湾曲部44は、針先端部43の少なくとも一部または略全体を構成し、針本体部42の先端から針先端部43の開口部43aに向かうに連れて徐々に外筒30の中心軸A(針本体部42の中心軸B1)から遠ざかる方向(外筒30の中心軸Aに対する放射方向)に曲がった形状を有する。湾曲部44は、図2Aに示すように、一例として針先端部43と同領域に設定されてもよい。
【0035】
湾曲部44は、図2Bに示すように、針先端部43が外筒30から進出したときに湾曲形状が維持される。また、湾曲部44は、外筒30よりも剛性が低いため、針先端部43が外筒30に収納された状態では、図2Aに示すように、外筒30の内腔31と当接することにより、湾曲形状が略真直状態に矯正される。
【0036】
湾曲部44は、予め湾曲形状をなす構成の他、外筒30の先端開口部32から進出する針先端部43を斜め方向(針本体部42の中心軸B1から遠ざかる方向)にガイドするガイド部材(図示せず)によって湾曲する構成など、外筒30から進出した際に針先端部43を湾曲する構成であればよい。
【0037】
なお、注入針40は、穿刺端43bに開口部43aを有する構成としたが、穿刺端43bの開口部43aを封止して針先端部43の側面に複数の孔を設けた構成としてもよい。
【0038】
注入針40の構成材料としては、医療分野で使用される公知のシリンジに装着される穿刺針などに適用される材料であれば特に制限はなく、例えばステンレスやニチノールのような形状記憶合金などが適用可能である。
【0039】
照射部50は、第1操作部10の外周面に取り付けられる。照射部50は、所定波長のライン状の光線(以下、「ライン光L」と称する)を照射する。照射部50は、ライン光Lが照射可能な光源であれば特に限定されないが、3次元的な勾配を有する生体表面Sに対してライン光Lを直線的に照射可能とするため、直進性の高いレーザ光源を用いるのが好ましい。また、ライン光Lは、生体表面Sに照射するため、補色となる緑系の色調を有するのが好ましい。
【0040】
照射部50は、注入針40の中心軸B(詳細には、注入針40の針本体部42の中心軸B1および針先端部43の中心軸B2と一致する内腔41の中心軸)を通る平面と重なるようにライン光Lを照射する。照射部50から照射されたライン光Lは、生体表面Sに照射される。ライン光Lは、図3A図3Bに示すように、注入針40の中心軸Bを通る平面と重なるように照射されるため、生体内に挿入された注入針40の針先端部43の湾曲方向側から照射される。そのため、術者は、超音波探触子200の送波面210をライン光Lに沿って配置すれば、送波面210から照射される超音波Uの照射領域内に、少なくとも外筒30から進出した注入針40の針先端部43が存在することとなる。したがって、術者は、外筒30から進出した針先端部43の全容が映し出された超音波画像を視認することで、患部の目的とする位置に送達物を送達することができる。
【0041】
照射部50は、ライン光Lを所定の照射角度(好ましくは30度以上、より好ましくは45度以上)で照射するように、照射口に拡散板や反射板などの導光部材を備えてもよい。これにより、照射部50は、超音波探触子200を生体表面Sに配置する際に、位置合わせを行うのに十分な長さのライン光Lを生体表面Sに照射することができる。
【0042】
<処置方法>
次に、本実施形態に係る送達デバイス100を用いた処置方法について説明する。以下の説明では、送達物として患部の腫瘍を治療するための薬剤(液剤)を腫瘍に対して3箇所投与する処置の一例を示す。
【0043】
術者は、患部の腫瘍に対して投与する薬剤を用意し、薬剤を注入するシリンジおよび注入針40をプライミングする。術者は、超音波探触子200を操作して超音波診断装置で患者の腫瘍の中心位置を確認して生体表面Sから腫瘍への穿刺経路を決定する。
【0044】
術者は、穿刺部位の消毒と局部麻酔を行った後、エコーガイド下で送達デバイス100の外筒30を腫瘍に向けて挿入(穿刺)する。このとき、術者は、超音波探触子200を、腫瘍を描出するように体表面に位置させた状態で、送達デバイス100の外筒30の先端が腫瘍の外表面に到達する位置まで外筒30を挿入する。この際、照射部50から照射されたライン光Lは、生体表面Sに照射される。このライン光Lが超音波探触子200に平行に照射されるように穿刺していくことにより、外筒30から進出した注入針40の針先端部43を超音波画像上に映し出すことができる。
【0045】
また、術者は、注入針40を穿刺する際、骨や肺の空気による超音波Uへの干渉や超音波探触子200の視野角の影響で腫瘍を確認できない方向があるため、注入針40を腫瘍に穿刺する前に、腫瘍内への穿刺方向をオリエンテーションすることもできる。術者は、照射部50から照射されたライン光Lを基準に超音波探触子200の配置しながら、エコーで確認可能な穿刺方向を複数ヶ所決定し、生体表面Sに印を付しておけば、手技をスムーズに進めることができる。
【0046】
術者は、外筒30の先端が腫瘍の外表面に達したことを確認すると、腫瘍の界面を確認しながら押引部22を押し操作し、注入針40の針先端部43を外筒30から進出させて腫瘍に穿刺する。術者は、腫瘍に注入針40を穿刺した後、シリンジまたはシリンジポンプを操作して薬剤を投与する。これにより、1回目の投与が終了し、送達物である薬剤は、患部となる腫瘍に送達される。
【0047】
術者は、押引部22を引き操作して注入針40を外筒30内に退避させる。術者は、ニードルガイドから送達デバイス100を取り外し、送達デバイス100を所定方向に回転させ、注入針40の湾曲方向を2箇所目の穿刺箇所へ移動させる。この際、照射部50から照射されたライン光Lは、デバイスの回転に追従し、注入針40の湾曲方向と対応する方向に照射される。したがって、ライン光Lは、1箇所目の穿刺向きとは異なる軌跡で照射される。術者は、生体表面Sに照射されたライン光Lを基準に2箇所目の穿刺方向に対する超音波探触子200の配置位置を位置決めする。超音波探触子200をライン光Lに沿って配置することで、術者は、注入針40の大凡の挙動が把握可能となる。また、術者は、必要に応じてより正確な超音波画像を得るため、超音波探触子200の送波面210をライン光Lに沿わせた状態で前後方向に傾倒させながら注入針40の挙動がより精細に把握可能な姿勢を見つけることもできる。
【0048】
術者は、腫瘍の界面を確認しながら押引部22を押し操作し、注入針40の針先端部43を外筒30から進出させて腫瘍に穿刺する。術者は、腫瘍に注入針40を穿刺した後、シリンジまたはシリンジポンプを操作して薬剤を投与する。これにより、2回目の投与が終了する。送達物である薬剤は、患部となる腫瘍に対し1回目と異なる箇所に送達される。
【0049】
術者は、押引部22を引き操作して注入針40を外筒30内に退避させる。この際、注入針40を退避させる前に、投与によって高まった投与経路内の圧力を除くため、投与経路中の三方活栓を開放するなどの操作を行ってもよい。術者は、2箇所目の穿刺と同様に、送達デバイス100を所定方向に回転させ、注入針40の湾曲方向を3箇所目の穿刺箇所へ移動させる。この際、照射部50から照射されたライン光Lは、デバイスの回転に追従し、注入針40の湾曲方向と対応する方向に照射される。したがって、ライン光Lは、1箇所目、2箇所目の穿刺向きとは異なる軌跡で照射される。術者は、生体表面Sに照射されたライン光Lを基準に3箇所目の穿刺方向に対する超音波探触子200の配置位置を位置決めする。
【0050】
術者は、腫瘍の界面を確認しながら押引部22を押し操作し、注入針40の針先端部43を外筒30から進出させて腫瘍に穿刺する。術者は、腫瘍に注入針40を穿刺した後、シリンジまたはシリンジポンプを操作して薬剤を投与する。これにより、3回目の投与が終了する。送達物である薬剤は、患部となる腫瘍に対し1回目や2回目と異なる箇所に送達される。
【0051】
その後、術者は、押引部22を引き操作して注入針40を外筒30内に退避させる。この後、送達デバイス100を生体から抜去して手技を終了する。
【0052】
[変形例]
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、例えば以下に示すように使用環境などに応じて適宜変更して実施することもできる。また、以下の変形例を本発明の要旨を逸脱しない範囲の中で任意に組み合わせて実施することもできる。以下に説明する変形例1~変形例7は、前述した実施形態と同一の機能を有する構成要件について同一の符号を付して詳細な説明を省略し、特に言及しない構成、部材、および使用方法などについては、前述した実施形態と同様のものとしてよい。
【0053】
<変形例1>
変形例1は、図4A図4Bに示すように、外筒30を第1操作部10の長軸を中心に回転可能に取り付ける構成である。
【0054】
変形例1において、外筒30は、図4Aに示すように、外筒30の基端側の外周面の全周に亘って鍔部34が設けられる。第1操作部10の先端には、鍔部34を回転可能に保持する環状の支持部12が設けられる。
【0055】
変形例1の他の形態において、外筒30は、図4Bに示すように、外筒30の基端側から第1操作部10の外周面に沿って延在し、その先端が第1操作部10の外周面に形成された環状凹溝13と摺動可能に係合する延在部35が設けられる。
【0056】
変形例1の送達デバイス100によれば、外筒30を第1操作部10に対して回転可能に取り付けることで、注入針40を回転させる際、外筒30は連れて回転せず、挿入した状態(挿入姿勢)が維持される。そのため、変形例1では、外筒30が回転することで生じ得る周囲の生体組織との摩擦による損傷が防止される。
【0057】
<変形例2>
変形例2は、図5図6A図6Bに示すように、照射部50を2つ備えた構成であり、その配置位置に特徴を有する。
【0058】
変形例2の送達デバイス100は、針先端部43の湾曲方向側から注入針40の中心軸Bに沿ってライン光L1を照射可能な第1照射位置と、第1操作部10の外周面において第1照射位置と径方向で対向する位置であって針先端部43の湾曲方向側と反対側から注入針40の中心軸Bに沿ってライン光L2を照射可能な第2照射位置にそれぞれ配置される構成となる。第1照射位置と、第2照射位置は、共に注入針40の針本体部42および針先端部43を通る平面と重なるようにライン光Lが照射可能な位置となる。
【0059】
変形例2の送達デバイス100は、注入針40の針先端部43の湾曲方向および湾曲方向の反対側の2方向へライン光L1およびライン光L2を照射することができる。そのため、術者は、送達デバイス100を生体内に挿入した際、図6Aに示すように第1照射位置から照射したライン光L1に沿って超音波探触子200を生体表面Sに配置する。また、術者は、生体内の骨や肺の空気などの障害物により、第1照射位置から照射したライン光L1の位置では、注入針40の針先端部43が確認できない場合、図6Bに示すように、第2照射位置から照射したライン光L2に沿って超音波探触子200を生体表面Sに配置することができる。したがって、術者は、超音波探触子200の配置位置の自由度が上がり、処置がし易くなる。
【0060】
<変形例3>
変形例3は、図7A図7Bに示すように、第2操作部20を第1操作部10に対して回転可能に取り付け、照射部50を第2操作部20の回転操作に追従可能にした構成である。変形例3の送達デバイス100は、第2操作部20を回転させて患部に対する注入針40の穿刺向きを可変する構成である。
【0061】
変形例3の送達デバイス100は、図7Aに示すように、第2操作部20の外周面に照射部50を接合して取り付けた構成である。また、変形例3の送達デバイス100は、照射部50の配置位置の変更に伴い、照射部50が回転移動可能なように第1操作部10の外周面に切り欠き部14を設けている。これにより、第2操作部20および注入針40の外周面の一部と照射部50は、第1操作部10から露出する。変形例3の送達デバイス100は、第2操作部20を回転させて患部に対する注入針40の穿刺向きを可変した際、その回転移動に追従するように照射部50も回転する。
【0062】
また、変形例3の送達デバイス100は、図7Bに示す形態を採用することもできる。変形例3の送達デバイス100は、図7Bに示すように、第2操作部20の外周面に照射部50を接合して取り付けた構成である。照射部50は、第1操作部10の内部に収納された状態で第2操作部20の外周面に配置される。また、変形例3の送達デバイス100は、照射部50の配置位置の変更に伴い、照射部50から照射されるライン光Lを透過する窓部15を設けている。窓部15は、第1操作部10の先端側において、照射部50の照射口と対向する位置に配置される。窓部15は、ライン光Lを極力阻害しない透光性を有する無色または有色の透明材料(ガラス、アクリルなど)で構成される。また、窓部15は、ライン光Lの照射角度を広角にするように屈折率が調整されていてもよい。
【0063】
変形例3の送達デバイス100によれば、注入針40を回転させた際、外筒30は生体に挿入した状態(挿入姿勢)が維持される。そのため、変形例3の送達デバイス100は、外筒30が回転することで生じ得る周囲の生体組織との摩擦による損傷を防止できる。また、第2操作部20の回転操作に伴い、照射部50も連れて回転するため、注入針40の針先端部43の湾曲方向に追従してライン光Lを照射することができる。
【0064】
なお、変形例3の送達デバイス100は、第2操作部20を回転させて患部に対する注入針40の向きを可変する構成において、照射部50が第2操作部20の回転移動に追従可能な構成を有していればよい。そのため、送達デバイス100は、図7A図7Bに示した構成には限定されず、例えば第1操作部10の外周面に対し、第2操作部20の長軸方向に沿った注入針40の進退方向(前後方向)への移動には追従せず、回転移動にのみ追従可能に取り付けた構成としてもよい。
【0065】
<変形例4>
変形例4は、図8A図8Bに示すように、照射部50を2つ具備させ、一方の照射部50(第1照射部51)を第1操作部10の外周面に取り付け、他方の照射部50(第2照射部52)を第2操作部20の外周面に第2操作部20の回転操作に追従可能にした構成である。変形例4の送達デバイス100は、変形例3と同様、第2操作部20を回転させて患部に対する注入針40の穿刺向きを可変する構成である。
【0066】
第1照射部51および第2照射部52は、図8Aに示すように、第2操作部20を第1操作部10に対して回転移動する前の状態において、第1照射部51から照射されるライン光L3と、第2照射部52から照射されるライン光L4が、生体表面Sで重畳する位置にそれぞれ取り付けられる。ライン光L3およびライン光L4は、いずれも注入針40の中心軸Bを通る平面と重なるように照射される。第2照射部52は、図8Bに示すように、第2操作部20の回転移動に追従して回転移動する。第2照射部52から照射されたライン光L4は、注入針40の中心軸Bを通る平面と重なるように照射される。
【0067】
変形例4の送達デバイス100によれば、第2操作部20を回転させる前の状態では、第1照射部51から照射されるライン光L3と、第2照射部52から照射されるライン光L4が重畳する。これにより、術者は、2つのライン光に沿って超音波探触子200を配置することができる。また、第2操作部20を回転させて注入針40の湾曲方向の向きを変えた場合、第2操作部20の回転移動に追従して第2照射部52も回転する。これにより、術者は、第2操作部20を回転した後は、第2照射部52から照射されたライン光L4に沿って超音波探触子200を配置することができる。このように、変形例4の送達デバイス100では、照射部50を2つ設けることによる、第2操作部20を回転させて注入針40の湾曲方向を可変した際にも、超音波探触子200の配置位置を正確に把握することができる。加えて、第1照射部51のライン光L3と第2照射部52からのライン光L4の差分を確認することで、初めに注入針を穿刺した位置と、次に注入針を穿刺しようとする位置がどの程度離れているかを視覚的に確認することができる。
【0068】
なお、変形例4の送達デバイス100において、第1照射部51から照射されるライン光L3と第2照射部52から照射されるライン光L4を容易に区別可能とするため、それぞれの光の三属性(色相、明度、彩度)や照射幅を変えてもよい。
【0069】
<変形例5>

変形例5は、図9A図9Bに示すように、照射部50から照射されるライン光Lを2種類照射する構成である。変形例5の送達デバイス100において、照射部50は、生体表面Sに対する超音波探触子200の配置位置を示す送波面210の位置合わせ用の第1ライン光LAと、生体表面Sに配置した超音波探触子200の生体表面Sに対する送波面210の傾きを補正するための角度調整用の第2ライン光LB(LB1、LB2)を照射する。第2ライン光LB1、LB2は、第1ライン光LAと所定の間隔を空けて略平行に照射される。第1ライン光LAに対する第2ライン光LBの間隔は、超音波探触子200の傾きのずれが確認可能な程度の間隔とする。
【0070】
変形例5の送達デバイス100によれば、図9Aに示すように、術者は、超音波探触子200を正しい位置に配置した場合、超音波探触子200と第2ライン光LBが交差せずに被らない。これに対し、術者は、超音波探触子200の配置角度が正しくない場合、図9Bに示すように、第2ライン光LBが超音波探触子200と交差して被る。そのため、術者は、超音波探触子200を第2ライン光LBと被らないように生体表面Sの第1ライン光LA上に配置することで、超音波探触子200を正しく配置することができる。また、術者は、超音波探触子200に第2ライン光LBが被っていた場合、超音波探触子200に第2ライン光LB(LB1またはLB2)が被らないように傾きを調整することで、超音波探触子200を正しく配置することができる。
【0071】
なお、変形例5において、照射部50は、第2ライン光LBを、第1ライン光LAの両側端に沿って照射する構成としてもよい。すなわち、第1ライン光LAは、側方が第2ライン光LBに囲まれた状態となってもよい。
【0072】
<変形例6>
変形例6は、注入針40を複数設け、注入針40のそれぞれは個々に独立して進退可能に構成される。また、変形例6の送達デバイス100は、複数の注入針40の湾曲方向に対応する外筒30の外周面に、照射部50を設けている。変形例6の送達デバイス100は、図10A図10Bに示すように、一例として、3本の注入針40の湾曲方向を第2操作部20の周方向の所定角度(軸方向から見て、例えば時計回りに0°、120°、240°)に位置させ、これら注入針40の基端は3分割された押引部22のそれぞれに連結された構成である。また、ハブ部23は、3分割された押引部22にそれぞれ設けられる。
【0073】
術者は、図10Bに示すように、分割された押引部22のうちの一つを押引き操作すると、操作された押引部22と連結される注入針40は外筒30に対して進出または退避する。また、術者は、分割された押引部22を3つ同時に押引き操作すると、3本の注入針40を同時に進退操作することができる。
【0074】
変形例6の送達デバイス100によれば、第2操作部20を回転させたり、送達デバイス100自体を回転させたりすることなく、患部に対して注入針40を患部の異なる位置に穿刺することができる。また、変形例6の送達デバイス100は、注入針40のそれぞれに対して注入針40の中心軸Bを通る平面と重なるようにライン光Lを照射する照射部50を備えている。そのため、術者は、注入針40を個別に押引き操作する際、対応する照射部50から照射されたライン光Lに沿って超音波探触子200を配置することができる。
【0075】
なお、変形例6において、複数の注入針40は、一つの第2操作部20の先端に設け、第2操作部20の押引き操作の際に、同時に進退する構成としてもよい。このような形態として場合、術者は、事前に各ライン光Lを頼りに各注入針40が進出する方向を確認し、最も腫瘍の辺縁まで近い針を見ながら同時に穿刺することができる。また、穿刺後は、術者は、各ライン光Lを基準に他の注入針40が組織から出ていないことを確認することもできる。
【0076】
<変形例7>
変形例7は、外筒30の先端側および注入針40の先端側(主として針先端部43の近傍)の外周面に対し、周囲との音響インピーダンス差を大きくするための反射部60を設けた構成である。
【0077】
反射部60は、図11に示すように、外筒30の先端側の外周面および注入針40の針先端部43の外周面に設けられる。反射部60は、超音波Uの反射効率を向上させ、超音波画像上での視認性を向上させる効果を奏する。反射部60は、超音波Uの反射効率を向上させる形状を有する。反射部60は、一例として、凹溝(凹形状)、凸条や複数の突起(凸形状)、梨地加工のような凹凸形状で構成される。反射部60は、超音波画像上において注入針40の湾曲方向が確認可能なように、湾曲方向に対応する外周面に設けるのが好ましい。
【0078】
変形例7の送達デバイス100によれば、術者は、超音波画像上において外筒30や注入針40の視認性が向上するため、生体挿入時において患部に対する挿入位置や穿刺箇所の位置決めが容易となる。
【0079】
[作用効果]
以上説明したように、本実施形態に係る送達デバイス100は、生体表面Sから穿刺して生体内の患部に送達物を送達するデバイスであり、第1操作部10と、内腔31を有し、第1操作部10の先端から長軸方向に沿って延在する外筒30と、第1操作部10に対して長軸方向に摺動可能に取り付けられる第2操作部20と、外筒30の内腔31に進退可能に収納され、第2操作部20の先端から長軸方向に沿って延在する注入針40と、第1操作部10と第2操作部20の少なくとも一方に取り付けられ、注入針40の中心軸Bを通る平面と重なるライン光Lを生体表面Sに照射する照射部50と、を備える。また、注入針40は、先端に開口部43aを有する針先端部43と、針先端部43の基端から長軸方向に沿って延在して設けられる中空の針本体部42と、を有し、針先端部43は、針本体部42の先端から開口部43aに向かうに連れて徐々に外筒30の中心軸Aから遠ざかるように針先端部43の少なくとも一部を湾曲する湾曲部44を有する。
【0080】
このように構成された送達デバイス100によれば、照射部50から照射されたライン光Lは、注入針40の中心軸Bを通る平面と重なるように生体表面Sに照射されるため、生体内に挿入された注入針40の針先端部43の湾曲方向側から照射される。これにより、術者は、生体表面Sに対する超音波探触子200の正しい配置位置を把握することができる。そのため、術者は、超音波探触子200の送波面210をライン光Lに沿って配置すれば、送波面210から照射される超音波Uの照射領域内に、少なくとも外筒30から進出した注入針40の針先端部43を存在させることができる。したがって、術者は、超音波画像上において、注入針40の湾曲方向や挙動などを容易に確認でき、患部の目的とする箇所に送達物を送達することができる。
【0081】
また、本実施形態に係る送達デバイス100において、照射部50は、生体表面Sと補色関係となる色味を呈するレーザ光をライン光Lとして照射するレーザ光源を備え、ライン光Lを30度以上の照射角度で照射可能に構成してもよい。
【0082】
このように構成された送達デバイス100によれば、緑系などの生体表面Sに対して補色となる色味を呈するレーザ光をライン光Lとして照射することで、3次元的な勾配を有する生体表面Sに対してライン光Lを直線的に照射可能となる。また、ライン光Lを30度以上の照射角度で照射することにより、超音波探触子200を生体表面Sに配置する際に、位置合わせを行うのに十分な長さのライン光Lを生体表面Sに照射することができる。
【0083】
また、本実施形態に係る送達デバイス100において、外筒30は、第1操作部10の長軸を中心に回転可能に保持されるように構成してもよい。
【0084】
このように構成された送達デバイス100によれば、外筒30を第1操作部10に対して回転可能に取り付けることで、注入針40を回転させる際、外筒30は連れて回転せず、挿入した状態(挿入姿勢)が維持される。そのため、送達デバイス100は、外筒30が回転することで生じ得る周囲の生体組織との摩擦による損傷を防止できる。
【0085】
また、本実施形態に係る送達デバイス100において、照射部50は、針先端部43の湾曲方向側から注入針40の中心軸Bを通る平面と重なるようにライン光L1を照射可能な第1照射位置と、第1操作部10の外周面において第1照射位置と径方向で対向する位置であって針先端部43の湾曲方向側と反対側から注入針40の中心軸Bを通る平面と重なるようにライン光L2を照射可能な第2照射位置にそれぞれ配置されるように構成してもよい。
【0086】
このように構成された送達デバイス100によれば、術者は、送達デバイス100を生体内に挿入した際、第1照射位置から照射したライン光L1と、第2照射位置から照射したライン光L2に沿って超音波探触子200を生体表面Sに配置することができる。第1照射位置から照射されたライン光L1と、第2照射位置から照射されたライン光L2は、いずれも注入針40の中心軸Bを通る平面と重なるように照射される。したがって、術者は、超音波探触子200の配置位置の自由度が上がり、処置がし易くなる。
【0087】
また、本実施形態に係る送達デバイス100において、第2操作部20は、第1操作部10に対して周方向に回転可能に取り付けられ、照射部50は、第2操作部20の回転移動に追従可能に設けた構成としてもよい。
【0088】
このように構成された送達デバイス100によれば、注入針40を回転させた際、外筒30は生体に挿入した状態(挿入姿勢)が維持されるため、外筒30が回転することで生じ得る周囲の生体組織との摩擦による損傷を防止できる。また、第2操作部20の回転操作に伴い、照射部50も連れて回転するため、注入針40の針先端部43の湾曲方向に追従してライン光Lを照射することができる。
【0089】
また、本実施形態に係る送達デバイス100において、照射部50は、第1操作部10に取り付けられる第1照射部51と、第2操作部20に取り付けられる第2照射部52と、を有し、第1照射部51および第2照射部52は、第2操作部20を第1操作部10に対して回転移動する前の状態において、第1照射部51から照射されるライン光L3と、第2照射部52から照射されるライン光L4が、生体表面Sで重畳する位置にそれぞれ取り付けられるように構成してもよい。
【0090】
このように構成された送達デバイス100によれば、第2操作部20を回転させる前の状態では、術者は、2つのライン光L3、L4に沿って超音波探触子200を配置し、第2操作部20を回転させて注入針40の湾曲方向の向きを変えた場合、第2照射部52から照射されたライン光L4に沿って超音波探触子200を配置することができる。したがって、術者は、第2操作部20を回転させて注入針40の湾曲方向を可変した際にも、超音波探触子200の配置位置を正確に把握することができる。
【0091】
また、本実施形態に係る送達デバイス100において、照射部50は、生体表面Sに対する超音波探触子200の送波面210の位置合わせを行うための第1ライン光LAと、第1ライン光LAの両側縁に沿って第1ライン光LAの外側に位置し生体表面Sに対する送波面210の角度調整を行うための第2ライン光LB(LB1、LB2)と、を照射するように構成してもよい。
【0092】
このように構成された送達デバイス100によれば、術者は、超音波探触子200を第2ライン光LBと被らないように生体表面Sの第1ライン光LA上に配置することで、超音波探触子200を正しく配置することができる。また、術者は、超音波探触子200に第2ライン光LB(LB1またはLB2)が被っていた場合、超音波探触子200に第2ライン光LBが被らないように傾きを調整することで、超音波探触子200を正しく配置することができる。
【0093】
また、本実施形態に係る送達デバイス100において、注入針40は、第2操作部20に対して複数設けられ、照射部50は、複数の注入針40のそれぞれに対応して第2操作部20の外周面に複数取り付けた構成としてもよい。
【0094】
このように構成された送達デバイス100によれば、第2操作部20を回転させたり、送達デバイス100自体を回転させたりすることなく、患部に対して注入針40を患部の異なる位置に穿刺することができる。また、注入針40のそれぞれに対して注入針40の中心軸Bを通る平面と重なるようにライン光Lを照射する照射部50を備えているため、術者は、注入針40を個別に押引き操作する際、対応する照射部50から照射されたライン光Lに沿って超音波探触子200を配置することができる。
【0095】
また、本実施形態に係る送達デバイス100において、外筒30の先端部の外表面および注入針40の針先端部43の外表面は、周囲との音響インピーダンス差を大きくするための反射部60を有する構成としてもよい。
【0096】
このように構成された送達デバイス100によれば、術者は、超音波画像上において外筒30や注入針40の視認性が向上するため、生体挿入時において患部に対する挿入位置や穿刺箇所の位置決めが容易となる。
【符号の説明】
【0097】
10 第1操作部、
20 第2操作部、
30 外筒、
31 外筒の内腔、
40 注入針、
42 針本体部、
43 針先端部、
44 湾曲部、
50 照射部、
51 第1照射部、
52 第2照射部、
60 反射部、
100 送達デバイス、
200 超音波探触子、
210 送波面、
L(L1~L4) ライン光、
LA 第1ライン光、
LB 第2ライン光、
A 外筒の中心軸、
B 注入針の中心軸(B1 針本体部の中心軸、B2 針先端部の中心軸)、
S 生体表面、
U 超音波、
Z 送達デバイスの中心軸。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図5
図6A
図6B
図7A
図7B
図8A
図8B
図9A
図9B
図10A
図10B
図11