(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024063267
(43)【公開日】2024-05-13
(54)【発明の名称】保管数判定システム、保管数判定方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
A47K 10/38 20060101AFI20240502BHJP
【FI】
A47K10/38 Z
A47K10/38 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022171042
(22)【出願日】2022-10-26
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BLUETOOTH
(71)【出願人】
【識別番号】516329543
【氏名又は名称】株式会社バカン
(72)【発明者】
【氏名】猪股 仁
(72)【発明者】
【氏名】吉野 貴史
(57)【要約】
【課題】保管具に収容された物品数をより適切に判定できる。
【解決手段】複数のトイレットペーパーを積み重ねて保管可能な保管具における前記トイレットペーパーの個数を判定する情報処理装置であって、前記保管具の上部に取り付けられた距離センサが検出した、前記距離センサ前記トイレットペーパーのうち最上部のトイレットペーパーとの距離を示す距離情報を取得する取得手段と、前記距離情報に基づいて、前記保管具内部のトイレットペーパーの個数を判定する判定手段とを有し、前記判定手段は、前記距離情報が第1閾値以上である場合は、前記トイレットペーパーの個数は0と判定し、前記距離情報が前記第1閾値未満、かつ、第2閾値以上である場合は、エラーと判定し、前記距離情報が前記第2閾値未満、かつ第3閾値以上である場合は、前記トイレットペーパーの個数を1と判定する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のトイレットペーパーを積み重ねて保管可能な保管具における前記トイレットペーパーの個数を判定する情報処理装置であって、
前記保管具の上部に取り付けられた距離センサが検出した、前記距離センサ前記トイレットペーパーのうち最上部のトイレットペーパーとの距離を示す距離情報を取得する取得手段と、
前記距離情報に基づいて、前記保管具内部のトイレットペーパーの個数を判定する判定手段とを有し、
前記判定手段は、前記距離情報が第1閾値以上である場合は、前記トイレットペーパーの個数は0と判定し、前記距離情報が前記第1閾値未満、かつ、第2閾値以上である場合は、エラーと判定し、前記距離情報が前記第2閾値未満、かつ第3閾値以上である場合は、前記トイレットペーパーの個数を1と判定することを特徴とする情報処理装置。
【請求項2】
前記判定手段は、前記トイレットペーパーの個数ごとの検知幅と前記距離情報とを比較することにより、前記トイレットペーパーの個数を判定することを特徴とする情報処理装置。
【請求項3】
前記トイレットペーパーの個数1に対応する検知幅は、他の個数に対応する検知幅よりも狭いことを特徴とする請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記トイレットペーパーの個数が所定数以上の場合には、検知幅が連続することと特徴とする請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項5】
コンピュータを請求項1から4のいずれか一項に記載の情報処理装置として機能させるためのプログラム。
【請求項6】
複数のトイレットペーパーを積み重ねて保管可能な保管具における前記トイレットペーパーの個数を判定する情報処理方法であって、
前記保管具の上部に取り付けられた距離センサが検出した、前記距離センサ前記トイレットペーパーのうち最上部のトイレットペーパーとの距離を示す距離情報を取得する取得ステップと、
前記距離情報に基づいて、前記保管具内部のトイレットペーパーの個数を判定する判定ステップとを有し、
前記判定ステップにおいて、前記距離情報が第1閾値以上である場合は、前記トイレットペーパーの個数は0と判定し、前記距離情報が前記第1閾値未満、かつ、第2閾値以上である場合は、エラーと判定し、前記距離情報が前記第2閾値未満、かつ第3閾値以上である場合は、前記トイレットペーパーの個数を1と判定することを特徴とする情報処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、保管数判定システム、保管数判定方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トイレットペーパーの予備品等の物品を保管し、保管された物品を排出口から排出可能に構成された保管具が知られている。例えば特許文献1には、使用中のトイレットペーパーを支える回転軸に加わる重量を検知するセンサによって、保管具に保管されているトイレットペーパーの残数を判定する仕組みが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、センサを用いてトイレットペーパー(物品)の残数を検知する方法において、センサの誤検知などによりトイレットペーパーがないにも関わらずトイレットペーパーがあるように判定してしまうことがある。トイレットペーパーがあるか否かは、トイレ個室の利用に関わるため、個数が少ないほど誤判定は許容されず、システムへの信頼度に大きな悪影響を与えてしまう。
【0005】
そこで、本開示の一側面は、複数の物品を補完する保管具において、より適切に物品の個数を判定する情報処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため本発明は、複数のトイレットペーパーを積み重ねて保管可能な保管具における前記トイレットペーパーの個数を判定する情報処理装置であって、前記保管具の上部に取り付けられた距離センサが検出した、前記距離センサ前記トイレットペーパーのうち最上部のトイレットペーパーとの距離を示す距離情報を取得する取得手段と、前記距離情報に基づいて、前記保管具内部のトイレットペーパーの個数を判定する判定手段とを有し、前記判定手段は、前記距離情報が第1閾値以上である場合は、前記トイレットペーパーの個数は0と判定し、前記距離情報が前記第1閾値未満、かつ、第2閾値以上である場合は、エラーと判定し、前記距離情報が前記第2閾値未満、かつ第3閾値以上である場合は、前記トイレットペーパーの個数を1と判定する。
【発明の効果】
【0007】
本開示の一側面によれば、複数の物品を補完する保管具において、より適切に物品の個数を判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】一実施形態に係る管理システムの概要を示す図である。
【
図3】管理サーバ10及び管理用端末40のハードウェア構成の一例を示す図である。
【
図4】管理サーバ10および施設用端末40の機能構成を示す図である。
【
図6】トイレットペーパー残個数の判定処理のフローチャートである。
【
図7】距離に応じたトイレットペーパー残個数判定をグラフ化した図である。
【
図8】トイレットペーパーの残個数を表示するUIの一例を示す図である。
【
図9】保管具20に積み重ねたトイレットペーパーを模式的に示した図である。
【
図10】各トイレットペーパーの残個数の検知幅を示す図である。
【
図11】トイレットペーパー残個数の判定処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して、本開示の一実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0010】
[第1実施形態]
<システム概要>
第1実施形態において、複数のトイレットペーパーを積み上げて保管し、保管されたトイレットペーパーを下方の排出口から排出可能に構成された保管具において、トイレットペーパーの個数を検出する方法について説明する。保管具の上部に距離センサを設置し、最後に使用される予定のトイレットペーパー(一番上に重ねられたトレイットペーパー)と距離センサとの距離を測定することで、トイレットペーパーの個数を検出する。本実施形態では特に、トイレットペーパーがないにも関わらずあると判定してしまうことを回避するため、トイレットペーパーの個数を0と判定する閾値と、1と判定する閾値との間に、エラー帯域を設定する。
【0011】
図1は、一実施形態に係る管理システム1の概要を示す図である。
図1に示されるように管理システム1は、管理サーバ10と、保管具20と管理用端末40を備える。
保管具20は、内部に複数のトイレットペーパーを積み上げて保管するための筐体である。
図2は、保管具20の一例を示す図である。
図2に示す保管具20は、上部が開閉可能であり、かつ、下部の排出口よりトイレットペーパーを引き出せるように構成される。保管具20は、トイレ個室において、トイレの利用者が便座に座った状態でトイレットペーパーを使用できる位置に設置されている。なお、
図1では保管具20を1つだけ図示しているが、トイレ施設内の複数のトイレ個室それぞれに設置されていてもよいし、複数のトイレ施設のトイレ個室に設置されていてもよい。
【0012】
図2(a)は、保管具20の外観図を示し、
図2(b)は、保管具20の内部を説明するための図である。また、
図2(c)は、距離センサ30とトイレットペーパーとの位置関係について説明する図である。本実施形態において保管具20は、トイレットペーパーを5つ保管できるものとし、最下部のトイレットペーパーは排出口から紙を引き出して使用することができる。最下部のトイレットペーパーが使い終わると、下から2番目のトイレットペーパーが排出口から引き出し可能な位置に更新され、各トイレットペーパーの位置は、概ねトイレットペーパー1個分、下方に下がることになる。つまり、保管具20においてトイレットペーパーの個数に応じて、1つ以上積まれたトイレットペーパーの高さが変化する。
【0013】
図2(b)に示すように、保管具20の蓋(天井)の裏側の中央には、下方向に距離を計測する距離センサ30が貼り付けられている。本実施形態では距離センサ30として、検知波(光学、ミリ波、超音波など)を送信して、対象物を反射して戻ってくるまでの時間を距離に変換するToF方式のセンサを用いることとする。
図2(c)に示すように、距離センサ30は、なるべくトイレットペーパーの中心を通り、かつ保管具20におけるトイレットペーパーの積み上げ方向に沿う方向に距離を測定する位置に設置されることが望ましい。距離センサ30は、距離センサ(正確には距離センサ内の基準位置)と最上部のトイレットペーパー(トイレットペーパー上の点210)との距離を測定する。
【0014】
距離センサ20はさらに、通信モジュールを内蔵し、ネットワーク50を介して、管理サーバ10と通信可能に構成されている。ネットワーク50は、有線又は無線の任意の通信ネットワークである。ネットワーク50は、例えば、インターネット、公衆回線網、専用回線網等である。なお、ネットワーク50は、複数の異なる通信ネットワークを含んで構成されてもよい。例えば、複数の個室を含むトイレ施設には、各個室に設置された保管具20に収容された距離センサ30それぞれと管理サーバ10との間の通信を中継するためのゲートウェイ装置が設置されてもよい。また、距離センサ30の各々は、ゲートウェイ装置と近距離無線通信(例えば、BLE(Bluetooth Low Energy)等)を行うための通信モジュールを搭載していてもよい。この場合、ネットワーク50は、距離センサ30とゲートウェイ装置との間の無線通信ネットワーク(BLEネットワーク)と、ゲートウェイ装置と管理サーバ10との間の有線又は無線の通信ネットワークと、を含んで構成されることになる。
【0015】
管理サーバ10は、距離センサ30が検出した結果得られる距離情報に基づいて、保管具20内のトイレットペーパーの個数を判定し、保管に関する情報を格納した保管テーブルを管理する。保管具20内のトイレットペーパーの個数を、トイレットペーパーの在庫数、または、残個数と呼ぶ。
【0016】
管理用端末40は、トイレットペーパーの残個数を閲覧するための情報処理装置である。例えば、管理用端末40は、タブレットやスマートフォン、PCなどの端末であり、保管具20が設置されたトイレ個室を清掃する清掃業者や、トイレ個室を含む施設全体(ビルや駅など)を運営する運営業者などによって管理される。管理サーバ10は、管理用端末40から閲覧リクエストを受け付けると、対象のトイレ個室のトイレットペーパーの残個数を含む情報を管理用端末40に配信する。
【0017】
<管理サーバ10および管理用端末40のハードウェア構成例>
図3は、管理サーバ10及び管理用端末40のハードウェア構成の一例を示す図である。管理サーバ10は、情報処理装置であり、汎用のサーバ向けのコンピュータやパーソナルコンピュータ等を利用することが可能である。また、複数のコンピュータを用いて管理サーバ10を構成することも可能である。図に示されるように、管理サーバ10は、物理的には、プロセッサである一以上のCPU(Central Processing Unit)110と、メモリ120とストレージ130とネットワークNと通信を行うための通信インタフェース等の通信部140と、入出力部150とを有する。管理サーバ10のハードウェアの各構成要素は、バスを介して相互に接続されている。
【0018】
CPU110は、ストレージ130に予め格納されている後述のプログラムを実行することにより、CPU110の制御のもとで各ハードウェアが動作し、
図4に示される管理サーバ10の各機能が実現される。メモリ120は、ストレージ130からロードしたプログラムを一時的に記憶し、CPU110に対して作業領域を提供する。メモリ120には、CPU110がプログラムを実行している間に生成される各種データも一時的に保存される。メモリ120は例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)などを含む。ストレージ130は、各種のプログラムを記憶する。ストレージは例えば、HDD(Hard Disk Drive)である。通信部140は、ネットワークを介して外部の情報処理装置と各種データの送受信を行う。当該通信は、有線、無線のいずれで実行されてもよく、互いの通信が実行できるのであれば、どのような通信プロトコルを用いてもよい。
【0019】
入出力部150は、管理サーバ10に対する各種操作による入力を受け付けて、当該入力にかかる情報をCPU110に伝達する入力装置、およびCPU110の処理結果を出力する出力装置を有する。入力装置は、タッチパネル、マウス及びキーボード等、マイクなどにより実現される。また出力装置は、ディスプレイ及びスピーカ等である。入出力部150は、タッチパネルディスプレイのように入力装置と出力装置が一体化していてもよいし、入力装置と出力装置それぞれに分離していてもよい。
【0020】
管理用端末40のハードウェア構成として、CPU410、メモリ420、ストレージ430、通信部440、入出力部450は、管理サーバ10のCPU110、メモリ120、ストレージ130、通信部140、入出力部150それぞれと同様であるため、説明を省略する。
【0021】
<管理サーバ10および施設用端末40の機能構成>
図4は、管理サーバ10および施設用端末40の機能構成を示す図である。管理サーバ10の機能構成から説明する。管理サーバ10は、CPU110が実行するソフトウェアモジュール(各種プログラムがCPU110の内部メモリに展開されて構成される機能)として、受信部11、判定部12、送信部13、保持部14を備える。以下では記載の便宜上、これらモジュールを動作主体として記載するが、実際にこれらモジュールを実行するのはCPU110であるため、CPU110を動作主体とすることもできる。
【0022】
保持部14は、管理サーバ10が管理する対象の保管具20に関するデータベースを格納している。データベースは、保管具テーブル141を含む。
図5は、保持部14が保持する保管具テーブルの一例を示す図である。なお、本実施形態では、保管具テーブル141はテーブル形式で表されているが、この形式に限らず、各データが紐付けされていればどのような形式で構築してもよい。
【0023】
保管具テーブル141は、管理サーバ10がトイレットペーパーの在庫数を管理する保管具に関する情報を格納するデータセットある。一例として、1つの保管具情報(すなわち、1レコード)は、保管具ID、最大個数、最新の残個数、最新検知日時、センサID、個室ID、トイレ施設IDを関連付けた情報である。
【0024】
「保管具ID」は、保管具を一意に特定するための識別情報である。「最大個数」「高さ」は、保管具20に保管可能な最大のトイレットペーパーの個数、および、保管具を示す。また、「最新の残個数」は、管理サーバ10が判定したトイレットペーパーの個数であり、「最新判定日時」とともに最新の判定結果が記録されている。「センサID」は、距離センサ30を一意に特定するための識別情報である。センサIDとしては例えば、距離センサ30に内蔵された通信モジュールのMACアドレスを事前に登録しておく。「個室ID」は、保管具20が設置されたトイレ個室を一意に特定するための識別情報である。
【0025】
「トイレ施設ID」は、保管具20が設置されたトイレ個室を含むトイレ施設に割り当てられた識別情報である。ここでは、共通の出入り口を有し、洗面台や化粧台などの共有部と複数のトイレ個室があるトイレ施設に対して1つのトイレ施設IDを割り当てるものとする。多目的トイレなど、他のトイレ個室と共有部がなく共通の出入り口がない、1つのトイレ個室から構成された施設の場合は、トイレ個室ID同様に、トイレ施設IDもそのトイレ個室のみに割り当てられることになる。
【0026】
受信部11は、管理用端末40から保管具に関する情報の閲覧を要求する閲覧リクエストを管理用端末40から受信したり、距離センサ30が送信した距離情報を受信する。
【0027】
判定部12は、距離センサ30が検出結果である距離情報に基づいて、リアルタイムな保管具20内のトイレットペーパーの残個数を判定する。上述の通り、保管具20ではトイレットペーパーの残個数に応じて、最上部のトイレットペーパーの位置が変化する。そこで管理サーバ10は、保管具20の天井に設置された距離センサ30と最上部のトイレットペーパーとの間の距離を、事前に設定された閾値と比較することにより、トイレットペーパーの残個数を判定する。詳細な判定処理は、後述する。また、判定部12は、トイレットペーパーの残個数を判定すると、保管具テーブル141を更新する。
【0028】
送信部13は、管理用端末40からの閲覧リクエストに応じて、トイレットペーパーの残個数を含むトイレ施設に関する情報(以下、トイレ情報とする)を管理用端末40に送信する。
【0029】
次に管理用端末40の機能構成を説明する。管理用端末30は、受信部41、表示制御部42、送信部43を有する。管理用端末40の各機能または処理は、管理用端末40が備えるCPU410が各種プログラムを実行することにより実現される。
【0030】
受信部41は、管理サーバ10との通信を行い、管理サーバ10から事前にトイレットペーパーの残個数を含むトイレ情報を受信する。表示制御部42は、事前に保存されたGUI画面データに基づいて、トイレ情報を示すGUI画面を生成して表示する。また表示制御部42は、GUI画面を介してユーザによる操作を受け付ける。送信部42は、表示制御部42が受け付けたユーザ操作に応じて、管理サーバ10に閲覧リクエストを送信する。ユーザ操作により指定されたトイレ施設に関して、トイレットペーパーの在庫数の閲覧リクエストをする際には、送信部42は、ユーザ操作により指定されたトイレ施設を特定する識別情報とともに、閲覧リクエストを送信する。
【0031】
<トイレットペーパー残個数の判定処理>
図6に示されるフローチャートを参照して、管理サーバ10の判定部12が実行するトイレットペーパーの残個数を判定する判定処理を説明する。管理サーバ10においてCPU110が
図6に示すフローチャートを実現可能なプログラムを実行することにより、各処理が行われる。以下の処理は、距離センサ30が検出した結果得られる距離センサを受信部11が受信するたびに実行される。
【0032】
S601において判定部12は、トイレットペーパー残個数の判定処理をまだ実行されていない距離情報を読み出す。S602において判定部12は、保管具テーブル141を参照して、読み出した距離情報に対応する保管器を特定し、保管器の高さ情報を取得する。
【0033】
S603において判定部12は、距離情報が示す距離と第1閾値とを比較し、距離が第1閾値以上か否かを判定する。ここで判定部12は、第1閾値として、S602において取得した保管具20の高さHに応じて設定する。事前に設定されたトイレットペーパーの半径をRとすると、判定部12は、保管具の高さHからトイレットペーパーの半径Rを引いた値(H-R)を第1閾値として用いる。距離が第1閾値以上である場合は、S604に進み、判定部12は、トイレットペーパーの残個数を0と判定する。判定部12は、保管具テーブル141において、判定した保管具の「最新の残個数」および「最新判定日時」を更新する。距離が第1閾値未満である場合は、S605に進む。
【0034】
S605において判定部12はさらに、距離と第2閾値とを比較し、距離が第2閾値以上かを判定する。ここで第2閾値は、保管具の高さHから1.7Rを引いた値(H -1.7R)とする。判定部12は、距離が第2閾値以上である場合は、S606に進み、判定した保管具に対応する「最新の残個数」を「エラー(ERROR)」とし、「最新判定日時」を更新する。つまり距離が第1閾値未満、かつ、第2閾値以上の場合には、残個数がエラーになる。距離が第2閾値以上ではない場合は、S609に進む。
【0035】
S607において判定部12は、距離と第3閾値とを比較し、距離が第3閾値以上かを判定する。ここで第3閾値は、保管具の高さHから2.3Rを引いた値(H -2.3R)とする。判定部12は、距離が第3閾値以上である場合は、S608に進み、判定した保管具に対応する「最新の残個数」を「残個数1」とし、「最新判定日時」を更新する。つまり、距離が第2閾値未満、第3閾値城である場合には、判定部12は残個数2と判定する。距離が第3閾値以上ではない場合は、S609に進む。
【0036】
S609において判定部12は、距離と第4閾値とを比較し、距離が第4閾値以上かを判定する。ここで第4閾値は、保管具の高さHからペーパー2個分の直径4Rを引いた値(H-4R)とする。判定部12は、距離が第4閾値以上である場合は、S610に進み、判定した保管具に対応する「最新の残個数」を「残個数2」とし、「最新判定日時」を更新する。つまり、距離が第3閾値未満、第4閾値以上である場合には、判定部12は残個数2と判定する。距離が第4閾値以上ではない場合は、S611に進む。
【0037】
S611において判定部12はさらに、距離と第5閾値とを比較し、距離が第5閾値以上か否か判定する。ここで第5閾値は、保管具の高さHからペーパー3個分の直径6Rを引いた値(H-6R)とする。判定部12は、距離が第5閾値以上である場合は、S126に進み、判定した保管具に対応する「最新の残個数」を「残個数3」とし、「最新判定日時」を更新する。つまり、距離が第4閾値未満、第5閾値以上である場合には、残個数は3と判定される。距離が第5閾値以上ではない場合は、S613に進む。
【0038】
S613において判定部12はさらに、距離と第6閾値とを比較し、距離が第6閾値以上か否かを判定する。ここで第6閾値は、保管具の高さHからペーパー4個分の直径8Rを引いた値(H -8R)とする。判定部12は、距離が第6閾値以上である場合は、S126に進み、判定した保管具に対応する「最新の残個数」を「残個数3」とし、「最新判定日時」を更新する。つまり、距離が第5閾値未満、第6閾値以上の範囲である場合には、残個数は4と判定される。距離が第6閾値以上ではない場合は、S615に進む。
【0039】
S615において判定部12は、判定した保管具に対応する「最新の残個数」を「残個数5」とし、「最新判定日時」を更新する。つまり、距離が第6閾値未満である場合には、残個数は5と判定されることになる。
以上で、トイレットペーパーの残個数の判定処理を終了する。
【0040】
<閾値の説明>
トイレットペーパーの残個数と閾値との関係について説明する。
図7は、距離に応じたトイレットペーパー残個数判定をグラフ化した図である。縦軸は、距離センサと最上位のトイレットペーパーとの間の距離を示し、横軸は、トイレットペーパーの個数を示す。
【0041】
上述の通り、距離が第6閾値未満の場合は、残個数5、距離が第5閾値未満かつ第6閾値以上の場合は、残個数4、距離が第4閾値未満かつ第5閾値以上の場合、残個数3、距離が第3閾値未満かつ第4閾値以上の場合、残個数2とする。また、距離が第1閾値以上の場合、残個数0とする。ここで、残個数が0と1との境界において、第1閾値未満かつ第2閾値以上の場合は残個数としていずれの個数も出力せず、エラーとする帯域を設けている。また、残個数1と判定される幅(検知幅)は、他の個数に対応する検知幅よりも狭く設定されている。
【0042】
センサにより検出結果を用いてトイレットペーパーの残個数(在庫数)を判定するシステムにおいては、残個数が必ずしも正確ではないことは起こりうる。距離センサ30自体の誤検知で距離が誤っていることもあれば、例えば、ちぎれたトイレットペーパーやトイレットペーパーの終端が円周に沿わず伸びているために、検知波を本来よりも高い位置で反射してしまい、実際の個数よりも多い個数で判定されてしまうことがある。トイレットペーパーの在庫数を把握したい利用者は、残個数4が残個数5と誤判定さてしまうのは許容できるが、残個数が少ないほど補充の緊急度が増すため、残個数が少ない場合に誤判定されることは許容できない。特に、トイレットペーパーがないにも関わらず、在庫がある(つまり残個数1以上)と判定されていると、管理システムへの信頼度に大きな悪影響を与えてしまう。
【0043】
そこで、本実施形態では、在庫がない(残個数0)のに、残個数1と判定されてしまう誤判定を回避するため、残個数0と1との判定の境界に、エラー帯域を設定した。これにより、誤判定になりやすい曖昧な距離情報により、本来残個数0と判定すべき状況で残個数1と判定しまう誤判定を低減する。また、トイレットペーパーの残個数があるか否かの判定は、トイレ個室を利用できる状態か否かに関わり、人目にもすぐにわかるので、誤判定がわかりやすい。そこで、単に残個数0と判定されやすい閾値に設定するのではなく、誤判定になりやすい曖昧な距離情報の場合には、残個数を0とも1とも判定しないエラー帯域とすることで、誤判定を抑制する。
【0044】
また、他の判定境界には、エラー帯域を設定しなかった。これは、トイレットペーパーの残個数が十分にある場合、誤判定は許容されやすく、誤判定の抑制よりも判定結果のデータ数が多い方がメリットが大きい。そこで、判定の境界を不連続とせず、エラーを出さないこととしている。
【0045】
<保管具20における在庫情報の表示例>
管理サーバ10は、管理用端末40からの閲覧リクエストに応じて、対象とするトイレ施設の保管地20におけるトイレットペーパーの残個数を含むトイレ情報を管理用端末40に配信する。管理用端末40は、受信したトイレ情報に基づいて、本管理システムの管理対象である保管器20のトイレットペーパーの残個数を表示する。
図8は、トイレットペーパーの残個数を表示するUIの一例を示す。トイレ施設の名称や位置、属性とともに、トイレ施設に含まれる各トイレ個室のトイレットペーパーの残個数が「2/5」、「5/5」のように表示されている。これはそれぞれ、最大個数5個のうち、2個、あるいは5個のトイレットペーパーがあることを示す。このように表示することで、管理用端末40の管理者は、トイレ個室を直接確認しなくてもトイレットペーパーの在庫数を確認することができる。
【0046】
<作用効果>
以上説明した通り、本管理システム1では、保管具20の天井の内側に距離センサ30を設置し、トイレットペーパーの個数に応じて変動する最上部のトイレットペーパの位置を検出することで、トイレットペーパーの残個数を検出する。距離センサが検出する最上部のトイレットペーパーとの距離は、残個数が少ないほど、大きくなる。管理サーバ10は、距離センサが検出した距離と事前に設定された閾値とを比較することにより、残個数がいくつであるか判定する。このとき、残個数0と判定する距離の範囲と、残個数1と判定する距離の範囲とを不連続にし、その間に、エラーとする範囲を設けることで、本来残個数0と判定すべきところで1と誤判定してしまうのを防ぐ。
【0047】
なお、上述の実施形態では、各閾値を保管具20の高さとトイレットペーパーの半径Rとから定義される値を用いることとした。トイレットペーパーの半径Rは、複数のトイレットペーパーの直径を測定した際の平均値とすればよい。また、本実施形態で説明した保管具20のように、トイレットペーパーを積み上げると、個数が増えるほどトイレットペーパーが重ねられたトイレットペーパーの重みで潰れてしまうことがある。そこで、実際の閾値は、保管具20の高さとトイレットペーパーの半径を参考に、トイレットペーパーを重ねた状態の高さをそれぞれの個数で測定し、設定するようにしてもよい。この場合も、残個数0と判定される距離範囲と、残個数1と判定される距離範囲との間にエラー帯域を設定することで、同様の効果を得ることができる。
【0048】
さらに、残個数0と1との境界だけではなく、他の境界にもエラー帯域を設けるようにしてもよい。この場合、判定結果がエラーになってしまう回数は増えてしまう可能性があるが、誤判定になりやすい距離の範囲は判定の対象外とすることで、誤判定を抑制することができる。あるいは、残個数3以上の誤判定は許容できるが、残個数2以下の誤判定は許容できない場合、残個数0と1との境界に加え、残個数1と2との境界にもエラー帯域を設定するようにしてもよい。
【0049】
[第2実施形態]
第2実施形態では、トイレットペーパーを積み上げた状態で取りうる高さの範囲を、それぞれの残個数に対応する検知幅として設定し、トイレットペーパーの残個数を検知する方法について説明する。なお、第1実施形態と同様の構成については、同一の符号を用いて説明し、詳細な説明を省略する。
【0050】
図9は、保管具20に積み重ねたトイレットペーパーを模式的に示した図である。第2実施形態において、保管具20は、トイレットペーパーを出し入れしやすいように、トイレットペーパーを収納した時に上方から見たトイレットペーパーの外形よりも広い面積の筒状になっている。このとき、複数のトイレットペーパーを積み重ねた高さは、トイレットペーパーの積み方によって異なる。
図9(a)のように、各トイレットペーパーの中心(軸)の位置が同じになるように積み重なっている場合、5つのトイレットペーパーは、理論上取りうる最も高い位置に到達する。一方、
図9(b)のように、互いに反対側の保管具20側面に接触するように積み重なっている場合、トイレットペーパーは理論上通りうる最も低い位置にある。
【0051】
そこで、それぞれの積み重なり方で、残個数ごとにトイレットペーパーを積み重ね、高さを複数回測定した平均値を算出した値に基づいて、各残個数の検知幅とする。
図9(a)に示すように積み重ねた時の高さに基づいて、それぞれの残個数に対応する検知幅の下限値を設定する。また、
図9(b)のように軸を左右にずらしながら積み重ねた時の各残個数の高さに基づいて、残個数の検知幅の上限値を設定する。
【0052】
図10は、本実施形態における各トイレットペーパーの残個数の検知幅を示す図である。例えば、残個数2に対応する検知幅は、上限U2、下限L2によって定義される。上限U2は、
図9(b)に示すようにトイレットペーパーを2個積み重ねた時の高さを測定することで得られる。また、下限U2は、
図9(a)に示すように、トイレットペーパー2つを左右異なる側面に接触するように積み重ねた時の高さを測定することで得られる。このようにして、各検知幅を設定する。ただし本形態において、残個数5に対応する検知幅の上限は、残個数4に対応する検知幅の下限と一致するように設定する。
【0053】
図11は、第2実施形態におけるトイレットペーパーの残個数の判定処理のフローチャートである。S601、S602は、第1実施形態における処理と同様である。
S1103において判定部12は、距離センサ30が送信した距離情報が示す距離が第1検知幅の範囲内か否かを判定する。第1検知幅は、
図10に示すように上限U0および下限L0より定義されるものとする。距離が第1検知幅内の場合、判定部12は残個数0と判定する。距離が第1検知幅内ではない場合、S1105に進む。
【0054】
S1105において判定部12は、距離が第2検知幅の範囲内か否かを判定する。第2検知幅は、
図10に示すように、上限U1と下限L1によって定義される。ここで上限U1は、第1検知幅の下限L0より小さい値である。距離が第2検知幅内の場合、S1104に進み判定部12は、残個数1と判定する。距離が第2検知幅内ではない場合、S1107に進む。
【0055】
S1107において判定部12は、距離が第3検知幅の範囲内か否かを判定する。第3検知幅は、
図10に示すように、上限U2と下限L2によって定義される。ここで上限U2は、第2検知幅の下限L1より小さい値である。距離が第3検知幅内の場合、判定部12はS1108に進み、残個数2と判定する。距離が第3検知幅内ではない場合、S1109に進む。
【0056】
S1109において判定部12は、距離が第4検知幅の範囲内か否かを判定する。第4検知幅は、
図10に示すように、上限U3と下限L3によって定義される。ここで上限U3は、第3検知幅の下限L2より小さい値である。距離が第2検知幅内の場合、判定部12はS1110に進み、残個数3と判定する。距離が第4検知幅内ではない場合、S1111に進む。
【0057】
S1111において判定部12は、距離が第5検知幅の範囲内か否かを判定する。第5検知幅は、
図10に示すように、上限U4と下限L4によって定義される。ここで上限U4は、第4検知幅の下限L3より小さい値である。距離が第4検知幅内の場合、判定部12はS1112に進み、残個数4と判定する。距離が第5検知幅内ではない場合、S1113に進む。
【0058】
S1109において判定部12は、距離が第6検知幅の範囲内か否かを判定する。第6検知幅は、
図10に示すように、上限U5と下限L5によって定義される。ここで上限U3は、第4検知幅の下限L4と同じ値である。距離が第6検知幅内の場合、判定部12はS1114に進み、残個数5と判定する。距離が第6検知幅内ではない場合、S1115に進む。
【0059】
S1106において判定部12は、距離情報の示す距離が、いずれの検知幅にも含まれない場合、判定結果としてエラー(ERROR)を出力する。
以上により、判定処理を終了する。
【0060】
第2実施形態では、それぞれの残個数に対応する検知幅を上限および下限により設定し、判定部12が実行する残個数の判定処理に用いる。各残個数の検知幅は、残個数が少ないほど小さくなる。これは、残個数が少ないほどより正確な判定結果を得られる。また、残個数が多いほど、積み重ね方やトイレットペーパーの潰れ具合などにより、取りうる範囲は広くなる。そこで、残個数が多いほど検知幅を広くする。また、第1実施形態と同様に、誤検知を許容できない残個数0と1との境界には、エラーとする判定対象外のエラー帯域を設定することで、残個数の少ない場合の誤検知を抑制する。
【0061】
[その他の実施形態]
上述の実施形態では、最新の残個数のみ保管具テーブル141に記録する場合を例に説明したが、各保管具20におけるトイレットペーパーの残個数を判定した結果を全て蓄積するようにしてもよい。この場合、管理サーバ10は、閲覧リクエストを受けた対象の保管具20に関して、最新の判定結果を検索して、管理用端末40に配信する。
【0062】
上記の実施形態では、保管具20は、複数の物品Gを鉛直方向に沿って配列、最下部のトイレットペーパーを使用するように構成されたが、これに限定されない。例えば、保管具20は、トイレットペーパーの保管だけで、最下部のトイレットペーパーも使用されず、保管具20の最下部のトイレットペーパーの横に設置されたホルダーから、トイレ個室の利用者がトイレットペーパーを引き出すようにしてもよい。この場合、トイレットペーパーを使い終わると、保管具20の最下部のトイレットペーパーを使用するためのホルダーにスライドさせ、保管具20内のトイレットペーパーは全体的にペーパー1つ分下に移動する。このような保管具20でも同様に本発明を適用することができる。
【0063】
上述の実施形態では、保管具20の天井内面に距離センサ30を設置する方法を例に説明した。他にも、特開2022-023374号公報に示されるように、最上部のトイレットペーパーの移動に伴ってスライドする落としぶたの位置を検出することで、保管具20内部のトイレットペーパーの残個数を検出する方法にも本発明を適用できる。具体的には、残個数に紐付ける落としぶたの位置に対して、上述の実施形態と同様に残個数が少ないほど検知幅を狭くし、かつ、残個数0と1との境界にエラー帯域を設定することで、同様の効果を得ることができる。
【0064】
また、上述の実施形態では、保管具20の天井裏の中央部に距離センサ30を取り付け、垂直な下方向の距離を測定することとしたが、天井裏の中央部から外れた位置に距離センサ30を取り付けてもよい。その場合、必ずしも最上部のトイレットペーパーの最も高い地点と距離センサとの距離ではないが、距離センサ30が放出する検知波は必ず、最上部のトイレットペーパーに当たるように設置する。
【0065】
また、トイレットペーパーを例に説明したが、保管具に積み重ねて物品を保管し、下部から物品を取り出して使用するような器具があれば、トイレットペーパー以外にキッチンペーパーなどを保管する保管具に適用することもできる。
また、排出口から1回のタイミングで排出される物品数は、上記実施形態のように1個であってもよいし、2個以上であってもよい。
【0066】
なお、開示技術は、上述した実施形態に限定されるものではなく、開示技術の要旨を逸脱しない範囲において、他の様々な形で実施することができる。たとえば、上述した各処理は、処理内容に矛盾を生じない範囲で任意に順番を変更し、または並列に実行することができる。
【符号の説明】
【0067】
10…管理サーバ、11…受信部、12…判定部、13…送信部、20…保管具、27…排出口、30…距離センサ