(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024006327
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】体調管理装置、体調管理方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
F24F 11/50 20180101AFI20240110BHJP
F24F 11/46 20180101ALI20240110BHJP
F24F 110/12 20180101ALN20240110BHJP
【FI】
F24F11/50
F24F11/46
F24F110:12
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022107115
(22)【出願日】2022-07-01
(71)【出願人】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】桑山 絹子
【テーマコード(参考)】
3L260
【Fターム(参考)】
3L260BA19
3L260BA25
3L260CA04
3L260CA32
3L260GA17
(57)【要約】
【課題】外気温の影響を加味してユーザの体調を管理する。
【解決手段】体調管理装置10は、建物の外気温を取得する外気温取得部(環境情報取得部11A)と、ユーザの建物への入館時、座席への着席直後及び着席中に、ユーザの皮膚表面温度を取得する体温取得部(第一体温取得部11B、第二体温取得部11C)と、皮膚表面温度及び通常皮膚表面温度から体温異常の有無を判定する判定部11Fと、体温異常があると判定された場合にユーザに所定情報を報知する報知部11Dと、皮膚表面温度に応じてユーザ毎に設けられた個別空調装置の出力を調整する調整部11Eと、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の外気温を取得する外気温取得部と、
ユーザの建物への入館時、座席への着席直後及び着席中に、前記ユーザの皮膚表面温度を取得する体温取得部と、
前記皮膚表面温度及び通常皮膚表面温度から体温異常の有無を判定する判定部と、
体温異常があると判定された場合に前記ユーザに所定情報を報知する報知部と、
前記皮膚表面温度に応じて前記ユーザ毎に設けられた個別空調装置の出力を調整する調整部と、
を備えた体調管理装置。
【請求項2】
前記判定部は、冷房時において、座席への着席直後から所定時間経過時の前記皮膚表面温度が所定の閾値より大きい場合に、体温異常があると判定する、
請求項1に記載の体調管理装置。
【請求項3】
前記ユーザ毎に、前記通常皮膚表面温度が記憶される記憶部を備え、
前記判定部は、測定された前記皮膚表面温度及び記憶されたユーザごとの前記通常皮膚表面温度から体温異常の有無を判定し、
前記調整部は、測定された前記皮膚表面温度と記憶されたユーザごとの前記通常皮膚表面温度との温度差に基づいて、前記個別空調装置の出力を調整する、
請求項1に記載の体調管理装置。
【請求項4】
着席直後に測定した前記皮膚表面温度から着席中の前記通常皮膚表面温度を引いた温度差をδ1、
着席中に測定した前記皮膚表面温度から着席中の前記通常皮膚表面温度を引いた温度差をδ2とした場合に、
前記調整部は、前記個別空調装置の出力度を、着席直後における前記個別空調装置の出力度を1として(δ2/δ1)に調整する、
請求項3に記載の体調管理装置。
【請求項5】
建物の外気温を取得する工程と、
ユーザの建物への入館時、座席への着席直後及び着席中に、前記ユーザの皮膚表面温度を取得する工程と、
前記皮膚表面温度及び通常皮膚表面温度から体温異常の有無を判定する工程と、
体温異常があると判定された場合に前記ユーザに所定情報を報知する工程と、
前記皮膚表面温度に応じて前記ユーザ毎に設けられた個別空調装置の出力を調整する工程と、
を備えた体調管理方法。
【請求項6】
コンピュータを、
建物の外気温を取得する外気温取得部と、
ユーザの建物への入館時、座席への着席直後及び着席中に、前記ユーザの皮膚表面温度を取得する体温取得部と、
前記皮膚表面温度及び通常皮膚表面温度から体温異常の有無を判定する判定部と、
体温異常があると判定された場合に前記ユーザに所定情報を報知する報知部と、
前記皮膚表面温度に応じて前記ユーザ毎に設けられた個別空調装置の出力を調整する調整部と、
して機能させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体調管理装置、体調管理方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、利用者の体温を検知し、利用者の着座状況を判定し、利用者の体温と利用者の周辺の湿度とに基づいて、利用者の生理状態に応じた空調制御を行う空調システムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1における空調システムでは、利用者の体温に基づいて空調制御が行われる。しかしながら、屋外から建物に入館して暫くの間、利用者(ユーザ)の体温は、外気温の影響を受ける。この外気温の影響を加味しない場合、ユーザの生理状態を把握し難い。
【0005】
例えば高温の外気の影響を受けて体温が高い場合と外気の影響が無いにも関わらず体温が高い場合とでは、ユーザの生理状態は異なる。そして、それぞれの生理状態に応じて適切に体調を管理することが好ましい。
【0006】
本発明は、上記事実を考慮して、外気温の影響を加味してユーザの体調を管理できる体調管理装置、体調管理方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の体調管理装置は、建物の外気温を取得する外気温取得部と、ユーザの建物への入館時、座席への着席直後及び着席中に、前記ユーザの皮膚表面温度を取得する体温取得部と、前記皮膚表面温度及び通常皮膚表面温度から体温異常の有無を判定する判定部と、体温異常があると判定された場合に前記ユーザに所定情報を報知する報知部と、前記皮膚表面温度に応じて前記ユーザ毎に設けられた個別空調装置の出力を調整する調整部と、を備える。
【0008】
請求項1の体調管理装置では、体温取得部が、「建物への入館時」にユーザの皮膚表面温度を取得する。この皮膚表面温度及び通常皮膚表面温度から体温異常があると判定された場合、報知部がユーザに所定情報を報知する。
【0009】
例えば、取得された皮膚表面温度が入館時通常皮膚表面温度より高い場合、判定部は体温異常があると判定し、報知部は、所定情報として、体温が異常である旨を報知する。または、報知部は、所定情報として、体調確認を促す提案を報知する。
【0010】
そして、この体調管理装置では、外気温取得部が建物の外気温を取得する。これにより、判定部がユーザの体温異常の有無を判定する際には、外気温の影響を加味して判定することができる。
【0011】
例えば、気温が高い屋外から建物へ入館する場合は、気温が低い屋外から建物へ入館する場合と比較して、ユーザの皮膚表面温度が高い。このため、判定部は、体温異常があると判定するための入館時通常皮膚表面温度を、外気温の影響に応じて変更することができる。
【0012】
また、この体調管理装置では、体温取得部が、「座席への着席直後及び着席中に」、ユーザの皮膚表面温度を取得する。これにより、体温取得部は、着席直後から着席中にかけての、ユーザの皮膚表面温度の経時変化を取得できる。そして、この皮膚表面温度の経時変化から、判定部が、体温異常があると判定した場合、報知部がユーザに所定情報を報知する。
【0013】
例えば、冷房時にユーザの皮膚表面温度の低下が所定スピードより緩慢な場合、判定部は体温異常があると判定し、報知部は、所定情報として、体温が異常である(例えば発熱している)旨を報知する。または、報知部は、所定情報として、体調確認を促す提案を報知する。
【0014】
そして、この体調管理装置では、上述したように、外気温取得部が建物の外気温を取得する。これにより、判定部が、着席中のユーザの体温異常の有無を判定する際にも、外気温の影響を加味して判定することができる。
【0015】
例えば、高気温の屋外から建物へ入館した場合は、低気温の屋外から建物へ入館した場合と比較して、ユーザの体内の蓄熱量が大きい。このため、冷房時におけるユーザの皮膚表面温度の低下が緩慢になる。これにより、判定部は、体温異常があると判定する所定スピード(皮膚表面温度の低下スピード)の閾値を調整することができる。
【0016】
そして、この体調管理装置では、調整部が、皮膚表面温度に応じて個別空調装置の出力を調整する。例えば、高気温の屋外の影響を受けて、皮膚表面温度が通常皮膚表面温度より高い場合は、個別空調装置の冷房出力を大きくする。
【0017】
以上説明したように、本発明の体調管理装置では、外気温の影響を加味してユーザの体調を管理できる。
【0018】
請求項2の体調管理装置は、請求項1に記載の体調管理装置において、前記判定部は、冷房時において、座席への着席直後から所定時間経過時の前記皮膚表面温度が所定の閾値より大きい場合に、体温異常があると判定する。
【0019】
請求項2の体調管理装置では、座席への着席直後から所定時間経過時の皮膚表面温度が所定の閾値以上である場合に、体温異常があると判定する。
【0020】
例えば、冷房時にはユーザの皮膚表面温度が低下するが、ユーザが発熱している場合は、表面温度が下げ止まりして皮膚表面温度が所定の閾値より大きくなる可能性がある。このように所定時間経過時の皮膚表面温度によって体温異常の有無を判定すれば、判定が容易である。
【0021】
これに対して、例えば着席中に皮膚表面温度を取得する毎に、前回取得した皮膚表面温度との差分を算出して体温異常の有無を判定する場合は、判定が比較的複雑である。
【0022】
請求項3の体調管理装置は、請求項1に記載の体調管理装置において、前記ユーザ毎に、前記通常皮膚表面温度が記憶される記憶部を備え、前記判定部は、測定された前記皮膚表面温度及び記憶されたユーザごとの前記通常皮膚表面温度から体温異常の有無を判定し、前記調整部は、測定された前記皮膚表面温度と記憶されたユーザごとの前記通常皮膚表面温度との温度差に基づいて、前記個別空調装置の出力を調整する。
【0023】
請求項3の体調管理装置では、ユーザ毎に、通常皮膚表面温度が記憶される。通常皮膚表面温度には個人差があるが、この個人差を加味して、体温異常の有無が判定される。これにより、体調管理の精度が高くなる。
【0024】
そして、調整部は、測定された皮膚表面温度と記憶されたユーザごとの通常皮膚表面温度との温度差に基づいて、前記個別空調装置の出力を調整する。これにより、体調管理の精度が高くなる。
【0025】
請求項4の体調管理装置は、請求項3に記載の体調管理装置において、着席直後に測定した前記皮膚表面温度から着席中の前記通常皮膚表面温度を引いた温度差をδ1、着席中に測定した前記皮膚表面温度から着席中の前記通常皮膚表面温度を引いた温度差をδ2とした場合に、前記調整部は、前記個別空調装置の出力度を、着席直後における前記個別空調装置の出力度を1として(δ2/δ1)に調整する。
【0026】
請求項4の体調管理装置では、個別空調装置の出力度が、「着席中に測定した皮膚表面温度から着席中の通常皮膚表面温度を引いた温度差」δ2の、「着席直後に測定した皮膚表面温度から着席中の通常皮膚表面温度を引いた温度差」δ1に対する割合に応じて調整される。
【0027】
このため、着席中に皮膚表面温度が着席中の通常皮膚表面温度に近づくにつれ、個別空調装置の出力度が低くなる。また、皮膚表面温度が着席中の通常皮膚表面温度と一致すると、個別空調装置が停止する。これにより、個別空調装置の過剰な出力を抑制し、快適に温調できる。
【0028】
請求項5の体調管理方法は、建物の外気温を取得する工程と、ユーザの建物への入館時、座席への着席直後及び着席中に、前記ユーザの皮膚表面温度を取得する工程と、前記皮膚表面温度及び通常皮膚表面温度から体温異常の有無を判定する工程と、体温異常があると判定された場合に前記ユーザに所定情報を報知する工程と、前記皮膚表面温度に応じて前記ユーザ毎に設けられた個別空調装置の出力を調整する工程と、を備える。
【0029】
請求項6のプログラムは、コンピュータを、建物の外気温を取得する外気温取得部と、ユーザの建物への入館時、座席への着席直後及び着席中に、前記ユーザの皮膚表面温度を取得する体温取得部と、前記皮膚表面温度及び通常皮膚表面温度から体温異常の有無を判定する判定部と、体温異常があると判定された場合に前記ユーザに所定情報を報知する報知部と、前記皮膚表面温度に応じて前記ユーザ毎に設けられた個別空調装置の出力を調整する調整部と、して機能させる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によると外気温の影響を加味してユーザの体調を管理できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】実施形態に係る体調管理システムにおける体調管理装置の電気的な構成を示すブロック図である。
【
図2】実施形態に係る体調管理システムにおける体調管理装置の機能的な構成を示す機能ブロック図である。
【
図3】実施形態に係る個人情報データベースの構成の一例を示す模式図である。
【
図4】実施形態に係る判定情報データベースの構成の一例を示す模式図である。
【
図5】実施形態に係る所定情報データベースの構成の一例を示す模式図である。
【
図6】ユーザの着席後の皮膚表面温度の変化の一例を示すグラフである。
【
図7】実施形態に係る体調管理処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施形態に係る体調管理装置、体調管理方法及びプログラムについて、図面を参照しながら説明する。各図面において同一の符号を用いて示される構成要素は、同一の構成要素であることを意味する。また、各図面において重複する構成及び符号については、説明を省略する場合がある。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において構成を省略する、又は異なる構成と入れ替える等、適宜変更を加えて実施することができる。
【0033】
<体調管理システム>
図1には、本発明の実施形態に係る体調管理システム80の全体構成が示されている。体調管理システム80は、例えば、建物の一例としてのオフィスビルを利用するユーザの体調を管理するために、ユーザに対して注意喚起を促したり個別空調装置60を制御したりするためのシステムである。
【0034】
体調管理システム80は、体調管理装置10、環境センサ20、認証装置30、温度検知装置40、個人端末50、個別空調装置60及び全体空調装置70を含んで構成されている。
【0035】
(体調管理装置)
体調管理装置10は、環境センサ20、認証装置30及び温度検知装置40から取得した各種情報、並びに、入力部14を介して入力された情報及び記憶部13に記憶された情報に基づいて、後述するようにユーザの体温異常の有無を判定するコンピュータである。
【0036】
詳しくは後述するが、体調管理装置10は、ユーザの体温異常があると判定された場合に、個人端末50に所定情報を報知する。また、体調管理装置10は、ユーザの体温異常がある場合及びない場合の双方において、個別空調装置60を制御する。
【0037】
(環境センサ)
環境センサ20は、建物屋外の環境状態に関する諸情報(以下、この諸情報を総称して「環境情報」と称す)を検知する検知機器の総称である。環境センサ20は、少なくとも建物の外気温(℃)を検知する。その他、環境センサ20は、グローブ温度(℃)、相対湿度(%RH)、気流速度(m/s)等を取得することができる。
【0038】
環境センサ20は、これらの環境情報を断続的に(所定時間毎に(例えば1分毎に))検知する。外気温を検知するセンサは温度計である。相対湿度を検知するセンサは湿度計である。また、気流速度を検知するセンサは風速計である。環境センサ20によって検知された「環境情報」は、体調管理装置10に送信される。
【0039】
(認証装置)
認証装置30は、顔認証機能が付いたサーモセンサであり、建物の入り口(エントランス、玄関など、屋外空間から建物内へ進入する場所)に設置されている。認証装置30は、カメラ及び赤外線温度検知モジュールを備えている。
【0040】
カメラは、例えば両眼カメラであり、ユーザの顔の定点分析により登録者情報を照合する。これにより、ユーザの建物への入退出管理と本人確認とを実行できる。また、赤外線温度検知モジュールは、赤外線を用いてユーザの皮膚表面温度を検知する。
【0041】
認証装置30によるこれらの入退出管理、本人確認及び皮膚表面温度の検知は、同時に実行される。これにより、「入館時の皮膚表面温度」が、入館したユーザと紐づけて検知される。認証装置30によって検知されたユーザ毎の「入館時の皮膚表面温度情報」は、体調管理装置10に送信される。
【0042】
なお、認証装置30は、必ずしも1つの装置である必要はない。例えば認証装置30は、ユーザの皮膚表面温度を検知する機構(例えば後述する温度検知装置40と同様の機構)と、ユーザ特定機構とを分けて形成してもよい。ユーザ特定機構としては、例えばユーザが携行するICタグ及び読取装置、ユーザが携行する二次元バーコード及び読取装置等が挙げられる。
【0043】
(温度検知装置)
温度検知装置40は、建物内の執務空間において、ユーザが作業するスペース毎に設置されている。温度検知装置40は、赤外線温度検知モジュールを備えている。赤外線温度検知モジュールは、赤外線を用いてユーザの「着席時の皮膚表面温度」を検知する。「着席時の皮膚表面温度」には、「着席直後の皮膚表面温度」及び「着席中の皮膚表面温度」が含まれる。また、温度検知装置40は、所定時間毎(例えば1分毎)に「着席中の皮膚表面温度」を検知する。
【0044】
ここで、「ユーザが作業するスペース」とは、一例として、ユーザ毎に定められた専用デスクである。この場合、専用デスク毎に設置された各温度検知装置40は、特定のユーザの皮膚表面温度のみを検知する。このため、「着席時の皮膚表面温度」が、ユーザと紐づけて検知される。
【0045】
また、「ユーザが作業するスペース」とは、別の一例として、共用デスク(例えばフリーアドレスオフィスにおけるデスク)である。この場合、共用デスク毎に設置された各温度検知装置40は、様々なユーザの皮膚表面温度のみを検知する。このため、各共用デスクには、温度検知装置40のほか、ユーザを特定するユーザ特定機構を設けることが好ましい。
【0046】
ユーザ特定機構としては、例えばユーザが携行するICタグ及び読取装置、ユーザが携行する二次元バーコード及び読取装置、ログイン認証を必要とするコンピュータ等が挙げられる。このようなユーザ特定機構を用いることで、「着席時の皮膚表面温度」が、ユーザと紐づけて検知される。温度検知装置40によって検知されたユーザ毎の「着席時の皮膚表面温度情報」は、体調管理装置10に送信される。
【0047】
(個人端末)
個人端末50は、体調管理装置10から特定のユーザに宛てて送信された「所定情報」を表示可能な報知画面を備えた装置である。個人端末50は、「所定情報」の宛先であるユーザが一時的に又は常時専用できる画面を備えた端末であり、例えばスマートフォン、タブレット型端末、ノート型パソコン、デスクトップパソコン等である。
【0048】
なお、個人端末50は、体調管理システム80のみに用いられる専用品としてもよく、ユーザが勤務時間に業務のために使用する兼用品としてもよく、ユーザが業務の他プライベートでも使用する兼用品としてもよい。
【0049】
(個別空調装置)
個別空調装置60は、体調管理装置10によって制御され、ユーザ毎に、温度調整された空気、風量調整された空気、並びに、温度及び風量の双方が調整された空気、の何れか(以下、これらを総称して「空調空気」と称す)を吹出し可能な空調装置である。個別空調装置60は、外気温の影響を受けている状態のユーザに対して、外気温の影響を低減して、平常時の体温に戻すことを目的に設けられる空調装置である。個別空調装置60は、上述した「ユーザが作業するスペース」毎に設けられている。
【0050】
個別空調装置60としては、デスクから空調空気を吹き出す装置、床から空調空気を吹き出す装置、天井から空調空気を吹き出す装置等、様々な態様を採用できる。なお、個別空調装置60は、体調管理装置10による制御に関わらず、各ユーザが自ら操作することも可能である。
【0051】
(全体空調装置)
全体空調装置70は、建物の各部屋に設けられた冷暖房装置であり、各部屋の温熱環境を制御する。全体空調装置70は建物内において任意の場所に設けることができる。また、全体空調装置70は、建物におけるセントラル空調装置としてもよい。
【0052】
全体空調装置70は、体調管理装置10によって制御されるものではないが、体調管理装置10は、全体空調装置70の設定温度等に応じて、個別空調装置60から吹き出す空調空気の温度や風量を調整することができる。
【0053】
<体調管理装置の電気的な構成>
図1には、体調管理装置10の電気的な構成を示すブロック図が示されている。体調管理装置10は、CPU(Central Processing Unit:プロセッサ)11、一時記憶領域としてのメモリ12、不揮発性の記憶部13、キーボードとマウス等の入力部14、液晶ディスプレイ等の表示部15、媒体読み書き装置(R/W)16、出入力インタフェース(I/F)部18及び通信I/F部19を備えている。
【0054】
CPU11、メモリ12、記憶部13、入力部14、表示部15、媒体読み書き装置16、出入力I/F部18及び通信I/F部19はバスB1を介して互いに接続されている。媒体読み書き装置16は、記録媒体17に書き込まれている情報の読み出し及び記録媒体17への情報の書き込みを行う。
【0055】
(記憶部)
記憶部13はHDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、フラッシュメモリ等によって実現される。記憶媒体としての記憶部13には、体調管理プログラム13Aが記憶されている。
【0056】
体調管理プログラム13Aは、体調管理プログラム13Aが書き込まれた記録媒体17が媒体読み書き装置16にセットされ、媒体読み書き装置16が記録媒体17からの体調管理プログラム13Aの読み出しを行うことで、記憶部13へ記憶される。CPU11は、体調管理プログラム13Aを記憶部13から読み出してメモリ12に展開し、体調管理プログラム13Aが有するプロセスを順次実行する。
【0057】
また、記憶部13には、個人情報データベース13B、判定情報データベース13C及び所定情報データベース13Dが記憶される。個人情報データベース13B、判定情報データベース13C及び所定情報データベース13Dについては、詳細を後述する。
【0058】
(入力部)
入力部14では、ユーザによって、体調管理プログラム13Aを開始及び終了するための操作が実行される。ユーザとは、一例として、体調管理システム80の管理者又は体調管理システム80による管理対象者である。
【0059】
(表示部)
表示部15には、体調管理プログラム13Aを開始及び終了するための情報(例えば入力ボタン)が表示される。
【0060】
(I/F部)
出入力I/F部18は、体調管理装置10が周囲の機器との出入力を行うためのインタフェースである。一方、通信I/F部19は、体調管理装置10が図示しないサーバ及び他の機器と通信するためのインタフェースであり、たとえば、CAN(Controller Area Network)、イーサネット(登録商標)、LTE(Long Term Evolution)、FDDI(Fiber Distributed Data Interface)、Wi-Fi(登録商標)などの規格が用いられる。
【0061】
<体調管理装置の機能的な構成>
次に、
図2を参照して、本実施形態に係る体調管理装置10の機能的な構成について説明する。
図2に示すように、体調管理装置10は、環境情報取得部11A、第一体温取得部11B、第二体温取得部11C、報知部11D、調整部11E及び判定部11Fを含む。
【0062】
体調管理装置10のCPU11が体調管理プログラム13Aを実行することで、CPU11は、環境情報取得部11A、第一体温取得部11B、第二体温取得部11C、報知部11D、調整部11E及び判定部11Fとして機能する。
【0063】
(環境情報取得部)
環境情報取得部11Aは、本発明における「外気温取得部」の一例であり、少なくとも建物の外気温を取得する。本実施形態においては、環境情報取得部11Aは、環境センサ20から送信された外気温(℃)、グローブ温度(℃)、相対湿度(%RH)、気流速度(m/s)等の建物外部の「環境情報」を取得する。
【0064】
また、環境情報取得部11Aは、通信I/F部19が取得した「環境情報」としての天気情報(快晴、晴れ、薄曇り、・・・雷など)を取得する。環境情報取得部11Aが取得した「環境情報」は、判定部11Fが取得する。
【0065】
(第一体温取得部)
第一体温取得部11Bは、本発明における「体温取得部」の一例であり、ユーザの建物への入館時に、ユーザの皮膚表面温度を取得する。本実施形態においては、第一体温取得部11Bは、認証装置30によって検知されたユーザ毎の「入館時の皮膚表面温度情報」を取得する。また、第一体温取得部11Bが取得した「入館時の皮膚表面温度情報」は、判定部11Fが取得する。
【0066】
(第二体温取得部)
第二体温取得部11Cは、本発明における「体温取得部」の一例であり、ユーザの着席時(着席直後及び着席中)に、ユーザの皮膚表面温度を取得する。本実施形態においては、第二体温取得部11Cは、温度検知装置40によって検知されたユーザ毎の「着席時の皮膚表面温度情報」を取得する。また、第二体温取得部11Cが取得した「着席時の皮膚表面温度情報」は、判定部11Fが取得する。
【0067】
(判定部)
判定部11Fは、ユーザの皮膚表面温度及びユーザの通常皮膚表面温度から体温異常の有無を判定する。本実施形態においては、判定部11Fは、第一体温取得部11Bが取得した「入館時の皮膚表面温度情報」、第二体温取得部11Cが取得した「着席時の皮膚表面温度情報」、個人情報データベース13B(
図3参照)に記憶されたユーザ毎の「通常皮膚表面温度」から、判定情報データベース13C(
図4参照)に記憶された「判定情報」に基づいて、ユーザ毎に、体温異常の有無を判定する。個人情報データベース13B、通常皮膚表面温度、判定情報データベース13C及び体温異常の有無の判定方法については後述する。
【0068】
(報知部)
報知部11Dは、判定部11Fによってユーザの体温異常があると判定された場合に、当該ユーザに「所定情報」を報知する。本実施形態においては、報知部11Dは、判定部11Fによってユーザの体温異常があると判定された場合、所定情報データベース13D(
図5参照)に記憶された「所定情報」を、体温異常があると判定されたユーザが使用する個人端末50の報知画面に表示させる。所定情報データベース13D及び所定情報については後述する。
【0069】
(調整部)
調整部11Eは、ユーザの皮膚表面温度に応じてユーザ毎に設けられた個別空調装置60の出力を調整する。本実施形態においては、調整部11Eは、測定された「皮膚表面温度」と記憶されたユーザごとの「通常皮膚表面温度」との温度差に基づいて、個別空調装置60の出力を調整する。調整部による個別空調装置60の出力調整方法については後述する。
【0070】
<データベース>
(個人情報データベース)
図3には、個人情報データベース13Bが示されている。個人情報データベース13Bは、記憶部に記憶され、ユーザ毎に、「通常皮膚表面温度」が記憶されたデータベースである。「通常皮膚表面温度」とは、「入館時通常皮膚表面温度」(℃)及び「着席中の通常皮膚表面温度」(℃)を示している。
【0071】
「入館時通常皮膚表面温度」とは、平常時にユーザが屋外から建物に入館した直後における、皮膚表面温度を示している。「平常時」とは、ユーザが発熱を伴う罹患を発症していない平熱状態にある時のことを示す。
【0072】
入館時通常皮膚表面温度は、外気温Tの影響を受けるため、外気温Tの所定範囲毎に振り分けて記憶されている。
図3に示した例では、外気温Tが10℃未満、10℃以上15℃未満、15℃以上20℃未満、・・・の5℃刻みの範囲(所定範囲)毎に、各ユーザA1、A2、・・・の「入館時通常皮膚表面温度」が記憶されている。
【0073】
なお、各ユーザA1、A2、・・・の入館時通常皮膚表面温度を記憶する外気温Tの「所定範囲」は、5℃刻みに限らず、5℃刻みより小さな範囲及び大きな範囲の何れを採用してもよい。また、
図3に示された入館時通常皮膚表面温度は一例である。
【0074】
個人情報データベース13Bに記憶される「入館時通常皮膚表面温度」は、予備測定を実施し、入力部14を介して測定結果を入力することにより記憶される。また、第一体温取得部11Bが取得する「入館時皮膚表面温度」を記憶部13へ記憶して蓄積し、蓄積されたデータの平均値によって導出してもよい。
【0075】
「着席中の通常皮膚表面温度」とは、全体空調装置70によって空調された空間において、20分間以上着座して安静作業している状態のユーザの皮膚表面温度である。また、この着席中の通常皮膚表面温度は、入館時通常皮膚表面温度と同様に、平常時における温度である。
【0076】
個人情報データベース13Bに記憶される「着席中の通常皮膚表面温度」は、予備測定を実施し、入力部14を介して測定結果を入力することにより記憶される。また、第二体温取得部11Cが取得する「着席中の皮膚表面温度」を記憶部13へ記憶して蓄積し、蓄積されたデータの平均値によって導出してもよい。
【0077】
また、個人情報データベース13Bには、ユーザ毎に、「通常皮膚表面温度変化速度」(℃/min)も記憶されている。「通常皮膚表面温度変化速度」とは、着席直後から20分間における皮膚表面温度の平均変化速度である。
【0078】
通常皮膚表面温度変化速度は、ユーザが建物に入館後、直ちに(5分以内に)に着席した場合の変化速度である。このため、通常皮膚表面温度変化速度は、外気温Tの影響を受ける。通常皮膚表面温度変化速度は、入館時通常皮膚表面温度と同様に、外気温Tの所定範囲毎に振り分けて記憶されている。
【0079】
なお、各ユーザA1、A2、・・・の通常皮膚表面温度変化速度を記憶する外気温Tの「所定範囲」は、入館時通常皮膚表面温度と同様に、5℃刻みに限らず、5℃刻みより小さな範囲及び大きな範囲の何れを採用してもよい。また、入館時通常皮膚表面温度と異なる温度刻みの範囲で記憶してもよい。
図3に示された通常皮膚表面温度変化速度は一例である。
【0080】
個人情報データベース13Bに記憶される「通常皮膚表面温度変化速度」は、予備測定を実施し、入力部14を介して測定結果を入力することにより記憶される。また、第二体温取得部11Cが取得する「着席中の皮膚表面温度」から導出される「皮膚表面温度変化速度」を蓄積し、蓄積されたデータの平均値によって導出してもよい。
【0081】
(判定情報データベース)
図4には、判定情報データベース13Cが示されている。判定情報データベース13Cは、記憶部に記憶され、判定部11Fがユーザの体温異常の有無を判定するためのデータベースである。
【0082】
判定情報データベース13Cには、入館時、着席中(着席後30分経過するまで)及び着席後30分経過時の各状態において、ユーザの体温異常があると判定する基準値としての閾値が記憶されている。以下に、判定情報データベース13Cを用いて判定部11Fがユーザの体温異常の有無を判定する方法について説明する。
【0083】
[入館時]
1.判定部11Fは、ユーザが入館時に測定されたユーザの「入館時皮膚表面温度」と、個人情報データベース13Bに記憶された当該ユーザの「入館時通常皮膚表面温度」との温度差の絶対値を算出する。
【0084】
2.判定部11Fは、外気温に応じて、判定情報データベース13Cに記憶された閾値を読み出す。
【0085】
3.判定部11Fは、1.で算出された絶対値が、2.で読み出された閾値より大きいか否かを判定する。この絶対値が閾値より大きい場合(すなわち、皮膚表面温度が平常時の皮膚表面温度より大きく乖離している場合)に、判定部11Fは、ユーザの体温異常があると判定する。一方、この絶対値が閾値以下の場合には、判定部11Fは、ユーザの体温異常がないと判定する。
【0086】
[着席中]
1.判定部11Fは、ユーザの「着席直後の皮膚表面温度」と「着席中の皮膚表面温度」との温度差から、「皮膚表面温度変化速度」を算出する。そして、個人情報データベース13Bに記憶された当該ユーザの「通常皮膚表面温度変化速度」との差の絶対値を算出する。
【0087】
2.判定部11Fは、外気温に応じて、判定情報データベース13Cに記憶された閾値を読み出す。
【0088】
3.判定部11Fは、1.で算出された絶対値が、2.で読み出された閾値より小さいか否かを判定する。この絶対値が閾値より小さい場合(すなわち、皮膚表面温度の変化が緩慢な場合)に、判定部11Fは、ユーザの体温異常があると判定する。一方、この絶対値が閾値以下の場合には、判定部11Fは、ユーザの体温異常がないと判定する。
【0089】
[着席後30分経過時]
1.判定部11Fは、ユーザが「着席後30分経過時に測定された皮膚表面温度」と、個人情報データベース13Bに記憶された当該ユーザの「着席中の通常皮膚表面温度」との温度差を算出する。
【0090】
2.判定部11Fは、判定情報データベース13Cに記憶された閾値を読み出す。
【0091】
3.判定部11Fは、1.で算出された差が、2.で読み出された閾値より大きいか否かを判定する。この差が閾値より大きい場合(すなわち、皮膚表面温度が平常時の皮膚表面温度より大きく乖離している場合)に、判定部11Fは、ユーザの体温異常があると判定する。一方、この差が閾値以下の場合には、判定部11Fは、ユーザの体温異常がないと判定する。
【0092】
(所定情報データベース)
図5には、所定情報データベース13Dが示されている。所定情報データベース13Dは、記憶部に記憶され、判定部11Fがユーザの体温異常が有ると判断した場合に、報知部11Dに報知させる「所定情報」を記憶したデータベースである。
【0093】
所定情報データベース13Dには、ユーザの入館時に体温異常があると判定された場合にユーザに報知する所定情報として、例えば「体温異常があるようです。体調管理にご注意下さい。」とのテキストデータが記憶されている。
【0094】
また、所定情報データベース13Dには、ユーザの着席中に体温異常があると判定された場合にユーザに報知する所定情報として、例えば「体温の戻りが遅いようです。体調に問題はありませんか?」とのテキストデータが記憶されている。
【0095】
また、所定情報データベース13Dには、ユーザの着席後30分経過時に体温異常があると判定された場合にユーザに報知する所定情報として、例えば「体温異常があるようです。診療をお勧めします。」とのテキストデータが記憶されている。
【0096】
なお、これらの所定情報としてどのような情報を報知させるかは任意であり、入力部14を介した入力操作によって変更することができるものとしてもよい。
【0097】
<調整部による個別空調装置の出力調整方法>
調整部11Eは、個別空調装置60の出力を調整する。具体的には、調整部11Eは、個別空調装置60の出力度を、着席直後における個別空調装置60の出力度を1として、以下に示す係数δ1及びδ2を用いて、(δ2/δ1)に調整する。
【0098】
δ1:
図6に示すように、温度検知装置40が測定した「着席直後の皮膚表面温度H1」から個人情報データベース13Bに記憶された「着席中の通常皮膚表面温度H2」を引いた温度差。
【0099】
δ2:温度検知装置40が測定した「着席中の皮膚表面温度H3」から個人情報データベース13Bに記憶された「着席中の通常皮膚表面温度H2」を引いた温度差。
【0100】
なお、係数δ1、δ2及び(δ2/δ1)を算出する演算式、また、算出された係数(δ2/δ1)に基づいて個別空調装置60を制御するプログラムは、記憶部13に記憶されている。
【0101】
<作用>
次に、
図7を参照して、本実施形態に係る体調管理システム80の作用を説明する。ユーザからの入力部14を介した実行指示等に応じて、体調管理装置10のCPU11が体調管理プログラム13Aを実行することにより、
図7に示す体調管理処理が実行される。
【0102】
なお、錯綜を避けるため、ここでは、個人情報データベース13Bが予め構築されている場合について説明する。また、ユーザが一人の場合について説明する。ユーザが複数人いる場合は、ユーザ毎に、以下に示すステップ200から232が実行される。
【0103】
体調管理プログラム13Aの実行が開始されると、ステップ200で、CPU11は、ユーザの「入館時皮膚表面温度」を取得待ちする。認証装置30からユーザの入館時皮膚表面温度が取得されると、ステップ202へ移行する。
【0104】
ステップ202で、CPU11は、「環境情報」を取得する。具体的には、CPU11は、外気温を取得する。
【0105】
ステップ204で、CPU11は、判定情報データベース13Cを用いて入館時の体温異常があるか否かを判定し、肯定判定となった場合はステップ206へ移行する。一方、ステップ204において否定判定となった場合はステップ208へ移行する。
【0106】
ステップ206で、CPU11は、所定情報データベース13Dに記憶された所定情報(入館時の体温異常があると判定された場合の所定情報)を個人端末50に報知する。ステップ206の後は、ステップ208へ移行する。
【0107】
ステップ208で、CPU11は、ユーザの「着席時の皮膚表面温度(着席直後の皮膚表面温度)」を取得待ちする。温度検知装置40からユーザの着席直後の皮膚表面温度が取得されると、ステップ210へ移行する。
【0108】
ステップ210で、CPU11は、個別空調装置60を制御する。具体的には、個別空調装置60による空調空気の出力を開始する。ステップ210の後は、ステップ212へ移行する。なお、この空調空気の出力開始は、ステップ204における判定結果に関わらず実施される。
【0109】
ステップ212で、CPU11は、ユーザの「着席時の皮膚表面温度(着席中の皮膚表面温度)」を取得待ちする。温度検知装置40からユーザの着席中の皮膚表面温度が取得されると、ステップ214へ移行する。
【0110】
ステップ214で、CPU11は、判定情報データベース13Cを用いて着席中の体温異常があるか否かを判定し、肯定判定となった場合はステップ216へ移行する。一方、ステップ214において否定判定となった場合はステップ218へ移行する。
【0111】
ステップ216で、CPU11は、所定情報データベース13Dに記憶された所定情報(着席中の体温異常があると判定された場合の所定情報)を個人端末50に報知する。ステップ216の後は、ステップ218へ移行する。
【0112】
ステップ218で、CPU11は、着席直後の皮膚表面温度、着席中の皮膚表面温度に基づいて上述した係数(δ2/δ1)を算出し、この係数に基づいて個別空調装置60を制御する。ステップ218の後は、ステップ220へ移行する。なお、この空調空気の出力調整は、ステップ214における判定結果に関わらず実施される。
【0113】
ステップ220で、CPU11は、着席後30分経過したか否かを判定し、肯定判定となった場合はステップ222へ移行する。一方、ステップ220において否定判定となった場合はステップ221へ移行する。なお、着席後30分経過したか否かは、ステップ208において「着席直後の皮膚表面温度」を取得してから、「着席中の皮膚表面温度」が所定回数取得されたか否かによって判定される。
【0114】
ステップ221では、CPU11は、ユーザが離席したか否かを判定し、肯定判定となった場合はステップ230へ移行する。なお、温度検知装置40からユーザの皮膚表面温度が所定回数以上(例えば5回以上)取得されなくなることに伴い、ユーザが離席したと判定される。一方、ステップ221で否定判定となった場合はステップ212へ戻る。
【0115】
ステップ222で、CPU11は、ユーザの「着席時の皮膚表面温度(着席中の皮膚表面温度)」を取得する。温度検知装置40からユーザの着席中の皮膚表面温度が取得されると、ステップ224へ移行する。
【0116】
ステップ224で、CPU11は、判定情報データベース13Cを用いて着席後30分経過時の体温異常があるか否かを判定し、肯定判定となった場合はステップ226へ移行する。一方、ステップ224において否定判定となった場合はステップ230へ移行する。
【0117】
ステップ226で、CPU11は、所定情報データベース13Dに記憶された所定情報(着席後30分経過時の体温異常があると判定された場合の所定情報)を個人端末50に報知する。ステップ226の後は、ステップ228へ移行する。
【0118】
ステップ228で、CPU11は、ユーザの離席待ちを実行する。温度検知装置40からユーザの皮膚表面温度が所定回数以上(例えば5回以上)取得されなくなることに伴い、ユーザが離席したと判定される。ユーザが離席すると、ステップ230へ移行する。
【0119】
ステップ230で、CPU11は、個別空調装置60を制御する。具体的には、個別空調装置60による空調空気の出力を停止する。ステップ230の後は、ステップ232へ移行する。
【0120】
ステップ232で、CPU11は、体調管理処理の終了タイミングが到来したか否かを判定し、肯定判定となった場合は体調管理処理を終了する。また、否定判定となった場合はステップ200に戻る。この終了タイミングは、一例として、ユーザが入力部14を介して体調管理処理の終了を入力することによって到来する。
【0121】
<効果>
以上説明したように、本発明に係る体調管理装置10、体調管理方法及び体調管理プログラム13Aでは、体温取得部の一例としての第一体温取得部11Bが、「建物への入館時」にユーザの皮膚表面温度(入館時皮膚表面温度)を取得する。この入館時皮膚表面温度及び個人情報データベース13Bに記憶された入館時通常皮膚表面温度から、判定部11Fにより体温異常があると判定された場合、報知部11Dがユーザに所定情報を報知する。
【0122】
例えば、取得された皮膚表面温度が入館時通常皮膚表面温度より高い場合、判定部11Fは体温異常があると判定する。そして、報知部11Dは、所定情報データベース13Dから所定情報を読み出して、体温が異常である旨と、体調確認を促す提案と、の双方を報知する。なお、報知部11Dは、体温が異常である旨又は体調確認を促す提案の何れかのみを報知してもよい。
【0123】
また、この体調管理装置10では、外気温取得部としての環境情報取得部11Aが建物の外気温を取得する。これにより、判定部11Fがユーザの体温異常の有無を判定する際には、外気温の影響を加味して判定することができる。
【0124】
例えば、気温が高い屋外から建物へ入館する場合は、気温が低い屋外から建物へ入館する場合と比較して、ユーザの皮膚表面温度が高い。このため、判定部11Fは、体温異常があると判定するための入館時通常皮膚表面温度を、外気温の影響に応じて変更することができる。
【0125】
具体的には、判定部11Fは、外気温Tの所定範囲毎に振り分けて入館時通常皮膚表面温度が記憶された個人情報データベース13Bを用いている。これにより、判定部11Fは、体温異常の有無の判定に、外気温の影響を加味することができる。
【0126】
また、この体調管理装置10では、体温取得部としての第二体温取得部11Cが、「座席への着席直後及び着席中に」、ユーザの皮膚表面温度を取得する。これにより、第二体温取得部11Cは、着席直後から着席中にかけての、ユーザの皮膚表面温度の経時変化を取得できる。そして、この皮膚表面温度の経時変化から、判定部11Fが、体温異常があると判定した場合、報知部11Dがユーザに所定情報を報知する。
【0127】
例えば、冷房時にユーザの皮膚表面温度の低下が所定スピードより緩慢な場合、判定部11Fは体温異常があると判定し、報知部11Dは、所定情報データベース13Dから所定情報を読み出して、体温が異常である旨と、体調確認を促す提案と、の双方を報知する。なお、報知部11Dは、体温が異常である旨又は体調確認を促す提案の何れかのみを報知してもよい。
【0128】
また、この体調管理装置10では、外気温取得部としての環境情報取得部11Aが建物の外気温を取得する。これにより、判定部11Fが、着席中のユーザの体温異常の有無を判定する際にも、外気温の影響を加味して判定することができる。
【0129】
例えば、高気温の屋外から建物へ入館した場合は、低気温の屋外から建物へ入館した場合と比較して、ユーザの体内の蓄熱量が大きい。このため、冷房時におけるユーザの皮膚表面温度の低下が緩慢になる。これにより、判定部11Fは、体温異常があると判定する所定スピード(皮膚表面温度変化速度)の閾値を調整することができる。
【0130】
具体的には、判定部11Fは、外気温Tの所定範囲毎に振り分けて通常皮膚表面温度変化速度が記憶された個人情報データベース13Bを用いている。これにより、判定部11Fは、体温異常の有無の判定に、外気温の影響を加味することができる。
【0131】
そして、この体調管理装置10では、調整部11Eが、皮膚表面温度に応じて個別空調装置60の出力を調整する。例えば、冷房時に皮膚表面温度が冷房時における通常皮膚表面温度より高い場合、皮膚表面温度と通常皮膚表面温度との温度差に基づいて、個別空調装置の出力を調整する。
【0132】
このように、本発明の体調管理装置10では、外気温の影響を加味してユーザの体調を管理できる。
【0133】
また、本発明の体調管理装置10では、座席への着席直後から所定時間経過時(本実施形態では30分後)の皮膚表面温度が所定の閾値より大きい場合に、判定部11Fが、体温異常があると判定する。
【0134】
具体的には、判定部11Fは、座席への着席後30分経過時の皮膚表面温度と着席中の通常皮膚表面温度との温度差が、判定情報データベース13Cに記憶された所定の閾値以上である場合に、体温異常があると判定する。
【0135】
例えば、冷房時にはユーザの皮膚表面温度が低下するが、ユーザが発熱している場合は、表面温度が下げ止まりして、皮膚表面温度と着席中の通常皮膚表面温度との温度差が所定の閾値(
図4で示した例では0.5℃)より大きくなる可能性がある。このように所定時間経過時の皮膚表面温度によって体温異常の有無を判定すれば、判定が容易である。
【0136】
なお、本実施形態においては、「所定時間」として30分を例示しているが、本発明の実施形態はこれに限らない。この所定時間は、ユーザが着席してから「着席中の通常皮膚表面温度」に到達する時間(本例では20分)以上の時間であればよい。
【0137】
また、本発明の体調管理装置10では、個人情報データベース13Bに、ユーザ毎に、通常皮膚表面温度(入館時通常皮膚表面温度及び着席中の通常皮膚表面温度)が記憶される。これらの通常皮膚表面温度には個人差があるが、この個人差を加味して、体温異常の有無が判定される。これにより、体調管理の精度が高くなる。さらに、個人情報データベース13Bには、ユーザ毎に、通常皮膚表面温度変化速度も記憶される。これにより、体温異常の有無をさらに判定し易い。
【0138】
また、本発明の体調管理装置10では、個別空調装置60の出力度が、
図6に示す「着席中に測定した皮膚表面温度から着席中の通常皮膚表面温度を引いた温度差」δ2の、「着席直後に測定した皮膚表面温度から着席中の通常皮膚表面温度を引いた温度差」δ1に対する割合に応じて調整される。
【0139】
このため、着席中に皮膚表面温度が着席中の通常皮膚表面温度に近づくにつれ、個別空調装置60の出力度が低くなる。また、皮膚表面温度が着席中の通常皮膚表面温度と一致すると、個別空調装置60が停止する。これにより、個別空調装置の過剰な出力を抑制し、快適に温調できる。
【0140】
<その他の実施形態>
上記実施形態においては、
図7に示すように、ユーザの「入館時」、「着席時」(着席後、30分経過するまでの随時)及び「着席後30分経過時」のそれぞれの時点でユーザの体温異常の有無を判定している。
【0141】
しかし、本発明の実施形態はこれに限らない。例えば体温異常の有無を判定するタイミングとして、「着席時」(着席後、30分経過するまでの随時)及び「着席後30分経過時」の何れか一方を省略してもよい。これらのいずれかを省略しても、外気温の影響を加味してユーザの体調を管理できる。
【0142】
また、上記実施形態においては、個人情報データベース13Bに、ユーザ毎に、通常皮膚表面温度(入館時通常皮膚表面温度及び着席中の通常皮膚表面温度)及び通常皮膚表面温度変化速度が記憶されているが、本発明の実施形態はこれに限らない。
【0143】
例えば「着席時」(着席後、30分経過するまでの随時)に体温異常の有無を判定しない場合は、通常皮膚表面温度変化速度を記憶しなくてもよい。また、「着席後30分経過時」に体温異常の有無を判定しない場合は、着席中の通常皮膚表面温度を記憶しなくてもよい。
【0144】
さらに、本発明は、個人情報データベース13Bを備えないものとしてもよい。この場合、個人情報データベース13Bに代えて、入館時通常皮膚表面温度、着席中の通常皮膚表面温度及び通常皮膚表面温度変化速度として、全ユーザに共通した値を記憶したデータベースを備えるものとする。
【0145】
入館時通常皮膚表面温度、着席中の通常皮膚表面温度及び通常皮膚表面温度変化速度として、全ユーザに共通した値を用いる場合は、判定情報データベースに記憶される各閾値を、個人情報データベース13Bを備える場合より大きな閾値とすることが好ましい。
【0146】
また、上記実施形態においては、「環境情報」として外気温のみ用いた場合について説明しているが、本発明の実施形態はこれに限らない。例えば個人情報データベース13Bにおいて、通常皮膚表面温度及び通常皮膚表面温度変化速度を、外気温だけでなく天気情報や相対湿度などの各種の環境情報と紐づけて記憶してもよい。このように「環境情報」としてより多くの指標を用いれば、体温異常の判定制度を高められる。
【0147】
また、本実施形態において、例えば、環境情報取得部11A、第一体温取得部11B、第二体温取得部11C、報知部11D、調整部11E及び判定部11Fの各処理を実行する処理部(processing unit)のハードウェア的な構造としては、次に示す各種のプロセッサ(processor)を用いることができる。上記各種のプロセッサには、前述したように、ソフトウェア(プログラム)を実行して処理部として機能する汎用的なプロセッサであるCPUに加えて、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等の製造後に回路構成を変更可能なプロセッサであるプログラマブルロジックデバイス(Programmable Logic Device:PLD)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路等が含まれる。
【0148】
処理部は、これらの各種のプロセッサのうちの1つで構成されてもよいし、同種又は異種の2つ以上のプロセッサの組み合わせ(例えば、複数のFPGAの組み合わせや、CPUとFPGAとの組み合わせ)で構成されてもよい。また、処理部を1つのプロセッサで構成してもよい。
【0149】
処理部を1つのプロセッサで構成する例としては、第1に、クライアント及びサーバ等のコンピュータに代表されるように、1つ以上のCPUとソフトウェアの組み合わせで1つのプロセッサを構成し、このプロセッサが処理部として機能する形態がある。第2に、システムオンチップ(System On Chip:SoC)等に代表されるように、処理部を含むシステム全体の機能を1つのIC(Integrated Circuit)チップで実現するプロセッサを使用する形態がある。このように、処理部は、ハードウェア的な構造として、上記各種のプロセッサの1つ以上を用いて構成される。
【0150】
更に、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造としては、より具体的には、半導体素子などの回路素子を組み合わせた電気回路(circuitry)を用いることができる。このように、本発明は様々な態様で実施することができる。
【符号の説明】
【0151】
10 体調管理装置
11A 環境情報取得部(外気温取得部)
11B 第一体温取得部(体温取得部)
11C 第二体温取得部(体温取得部)
11D 報知部
11E 調整部
11F 判定部
13 記憶部
13A 体調管理プログラム
80 体調管理システム