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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024063271
(43)【公開日】2024-05-13
(54)【発明の名称】工事進捗状況表示システム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/08 20120101AFI20240502BHJP
【FI】
G06Q50/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022171060
(22)【出願日】2022-10-26
(71)【出願人】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】中村 良平
【テーマコード(参考)】
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
5L049CC07
5L050CC07
(57)【要約】
【課題】より簡便に運用することが可能で、進捗状況の把握が容易な、工事進捗状況表示システムを提供する。
【解決手段】工事進捗状況表示システム1は、建設現場内での各種工事の進捗状況を表示する、工事進捗状況表示システム1であって、現場作業員または建設現場内で移動可能に構成された移動体が建設現場内を移動することにより撮影された撮影画像と、撮影画像に関連付けられた、現場作業員または移動体の位置及び移動方向の履歴を含む移動情報を基に、建設現場内の位置及び方向が指定されると、撮影画像から、当該位置から当該方向を含んで撮影された指定位置画像を複数抽出し、撮影時刻の順で連続して並べることで、各種工事の進捗状況を表すタイムラプスを生成する、タイムラプス生成部45と、タイムラプスを表示する表示部5と、を備える
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建設現場内での各種工事の進捗状況を表示する、工事進捗状況表示システムであって、
現場作業員または前記建設現場内で移動可能に構成された移動体が前記建設現場内を移動することにより撮影された撮影画像と、前記撮影画像に関連付けられた、前記現場作業員または前記移動体の位置及び移動方向の履歴を含む移動情報を基に、前記建設現場内の位置及び方向が指定されると、前記撮影画像から、当該位置から当該方向を含んで撮影された指定位置画像を複数抽出し、撮影時刻の順で連続して並べることで、前記各種工事の進捗状況を表すタイムラプスを生成する、タイムラプス生成部と、
前記タイムラプスを表示する表示部と、
を備えることを特徴とする工事進捗状況表示システム。
【請求項2】
前記移動情報は、前記履歴の各々に対応付けられた時刻を含み、
自律動作するセンサを備え、前記現場作業員または前記移動体が保持又は装着可能に構成されて、前記現場作業員または前記移動体の前記移動情報を取得する自律航法手段と、
前記現場作業員または前記移動体が保持又は装着可能に構成され、前記建設現場内を撮影して前記撮影画像を取得する撮影記録装置と、
前記撮影画像の各々に対し、当該撮影画像の前記撮影時刻と、前記移動情報の前記時刻とを照合することで、前記撮影画像と前記移動情報を時間によって関連付けてデータベースに格納する情報統合部と、
を備えていることを特徴とする請求項1に記載の工事進捗状況表示システム。
【請求項3】
前記撮影画像は360度画像であり、
前記タイムラプス生成部は、前記撮影画像の中から、指定された前記位置と、撮影位置との距離が、閾値よりも近いものを取得し、取得された前記撮影画像から、指定された前記方向周辺を切り出して、前記指定位置画像を作成することを特徴とする請求項1または2に記載の工事進捗状況表示システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設現場内での工事の進捗状況を表示する工事進捗状況表示システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ビルディングやマンション等の建物の工事現場においては、工事の進捗状況を把握する必要がある。このため、例えば現場監督が工事現場内を見て回り、工事現場内の各所の、進捗状況の把握等を行っているが、これには手間と時間が掛かる。
これに対し、例えば特許文献1には、建物の各部屋で行われる複数の作業を把握した上で、把握した複数の作業と現在の各部屋で行われている作業とに基づいて、自己に関連する作業の進捗を把握するための構成が開示されている。この構成では、複数のタスクに関する情報を示す複数の読取対象を読み取り、その読取状態に基づいて、複数の読取対象に対応する複数のタスクの状態を特定し、特定した複数のタスクの状態に基づいて、複数の対象領域で行われる複数のタスクの状態に関連する状態関連情報を格納手段に格納する。複数のタスクのうちの1つ以上のタスクを選択すると、選択されたタスクを基準として、格納手段に格納された状態関連情報に基づいて、少なくとも、複数の対象領域の各々についての選択情報で選択されたタスクに関する状態に対応する情報を表示する。ここで、タスクとは、建設中の建物の内装工事の作業、扉工事の作業、及び外装工事の作業等を示す。また、読取対象とは、例えば二次元バーコードであり、二次元バーコードが表示されたコードシートが、建物の各部屋に個別に設けられる。
特許文献1に開示されたような構成では、例えば作業者が工事実施後に、工事が完了したことを示すため、二次元バーコードを塗りつぶしたりする必要があり、運用が簡便ではない。
また、特許文献1の構成では、上記のように、コードシートを、建物の各部屋に個別に設ける必要がある。このため、部屋内の細かな部位ごとに進捗管理を行うのが困難となる。したがって、特許文献1に開示されたような構成では、進捗状況の管理を、部位ごとに正確かつ詳細に、行うことが難しい。
特許文献1の構成において、部屋内の細かな部位ごとにコードシートを設けることによって、進捗管理をより正確かつ詳細に行うことも可能ではある。しかし、この場合においては、管理対象となるコードシートの数が増大するため、運用が更に簡便ではなくなる。
【0003】
また、特許文献2には、工事箇所に配置された識別コードと工事箇所とを撮影し、識別コードが写った画像に基づいて取得される位置に関する情報及び工事に関する情報に基づき、工事箇所が写った画像の画像データを、工事箇所ごとに分類可能な状態、且つ、工事箇所に適用される工事における複数の工程のうちの特定の工程を表す情報と関連付けられた状態で記憶させる構成が開示されている。ここで、識別コードは、工事対象の建物における工事箇所の位置を表す位置情報と、工事箇所に適用される工事に関する情報と、を表す。工事に関する情報は、工種を表す情報と、工法を表す情報等を含む。このような構成によれば、工事箇所に配置された識別コードを撮影した上で、工事箇所を撮影することにより、工事箇所が写った画像の画像データに基づく画像を工事箇所ごとに工程順に表示し、各工事箇所における工事の進捗状況を容易に把握することができる。
しかしながら、特許文献2に開示されたような構成では、識別コードを各工事個所に個別に設ける必要があるので、進捗状況の管理を簡便に行うことが難しい。
【0004】
また、特許文献3には、建築工事の工事現場を撮影した撮影画像を、撮影日時及び撮影場所を特定する識別子を関連付けて記憶し、予測モデルにより撮影画像における各建築要素の割合を予測し、予測モデルにより予測した各建築要素が属性に記録されている要素モデルを特定し、特定した要素モデルに関連付けられた工程を特定し、特定した工程とともに、撮影画像に含まれる建築要素の割合を記録した進捗管理データを進捗情報記憶部に記録する構成が開示されている。撮影画像の撮影場所を特定するために、GPS(Global Positioning System)が用いられている。
特許文献3においては、進捗状況をわかりやすく表示することに関して、開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2021-12677号公報
【特許文献2】特開2020-30519号公報
【特許文献3】特開2021-47715号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、より簡便に運用することが可能で、進捗状況の把握が容易な、工事進捗状況表示システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、建設現場内での各種工事の進捗状況を表す工事進捗状況表示システムとして、全方位カメラでの撮影動画(または静止画)と建物内位置情報の記録の時系列を用いて、指定した建物内位置に最も近い位置での撮影動画のフレーム画像(または静止画)から指定した方向の平面画像を抽出し、複数の平面画像を時系列で繋げることで建物内の施工状況の進捗を表すタイムラプスを自動的に作成できる点に着眼して、本発明に至った。
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を採用する。
すなわち、本発明の工事進捗状況表示システムは、建設現場内での各種工事の進捗状況を表示する、工事進捗状況表示システムであって、現場作業員または前記建設現場内で移動可能に構成された移動体が前記建設現場内を移動することにより撮影された撮影画像と、前記撮影画像に関連付けられた、前記現場作業員または前記移動体の位置及び移動方向の履歴を含む移動情報を基に、前記建設現場内の位置及び方向が指定されると、前記撮影画像から、当該位置から当該方向を含んで撮影された指定位置画像を複数抽出し、撮影時刻の順で連続して並べることで、前記各種工事の進捗状況を表すタイムラプスを生成する、タイムラプス生成部と、前記タイムラプスを表示する表示部と、を備えることを特徴とする。
このような構成によれば、現場作業員または移動体が建設現場内を移動することにより撮影された撮影画像には、現場作業員または移動体の位置及び移動方向の履歴を含む移動情報が関連付けられている。このため、建設現場内における位置と、当該位置からの方向が指定された際に、移動情報内の位置及び移動方向と、指定された位置、方向とを比較参照すれば、現場作業員または移動体が指定された位置を移動していた際に、指定された方向を含むように撮影された撮影画像を取得することができる。ここで、例えば現場作業員または移動体が、建設現場内を定期的に巡回するような場合には、指定された位置において、異なる複数の時間に撮影された、複数の撮影画像が有るはずである。そこで、このような、指定された位置に対応する複数の撮影画像から、指定された方向を含むように撮影された画像を、指定位置画像として複数抽出して、撮影時刻の順で連続して並べることで、時間の経過とともに変遷する工事の進捗状況を表した、タイムラプスを生成することができる。このように生成されたタイムラプスを表示することで、進捗状況を容易に把握することができる。
タイムラプスを生成するに際して基になる、撮影画像と移動情報は、例えば現場作業員または移動体が静止画や動画を撮影するようなカメラなどの撮影記録装置と、ジャイロセンサ等を内蔵したスマートフォン等の自律航法手段を携帯して、建設現場内を巡回することで、容易に取得することができる。すなわち、撮影画像と移動情報を取得するに際し、特別な設備を導入する必要がない。加えて、撮影画像と移動情報は、例えば現場作業員または移動体によって通常業務として行われる建設現場内の巡回に伴って、副次的に取得することが可能であり、タイムラプスの生成に際して特別な作業を別途実施する必要がない。したがって、簡便に運用することができる。
【0008】
本発明の一態様においては、前記移動情報は、前記履歴の各々に対応付けられた時刻を含み、自律動作するセンサを備え、前記現場作業員または前記移動体が保持又は装着可能に構成されて、前記現場作業員または前記移動体の前記移動情報を取得する自律航法手段と、前記現場作業員または前記移動体が保持又は装着可能に構成され、前記建設現場内を撮影して前記撮影画像を取得する撮影記録装置と、前記撮影画像の各々に対し、当該撮影画像の前記撮影時刻と、前記移動情報の前記時刻とを照合することで、前記撮影画像と前記移動情報を時間によって関連付けてデータベースに格納する情報統合部と、を備えている。
このような構成によれば、現場作業員または移動体が自律航法手段、及び撮影記録装置を保持又は装着した状態で、建設現場内を移動しつつ、撮影記録装置で、建設現場内を撮影するとともに、自律航法手段で、現場作業員または移動体の移動情報を取得する。また、撮影記録装置では、建設現場内を撮影することで、建設現場内の工事の撮影画像が取得される。情報統合部は、撮影画像の撮影時刻と、移動情報の時刻とを照合することで、撮影画像と移動情報を時間によって関連付けてデータベースに格納する。これにより、タイムラプス生成部では、現場作業員または移動体が建設現場内を移動することにより撮影された撮影画像と、移動情報を基に、指定された位置における指定位置画像を、撮影時刻の順で連続して並べ、タイムラプスを生成することができる。
【0009】
本発明の一態様においては、前記撮影画像は360度画像であり、前記タイムラプス生成部は、前記撮影画像の中から、指定された前記位置と、撮影位置との距離が、閾値よりも近いものを取得し、取得された前記撮影画像から、指定された前記方向周辺を切り出して、前記指定位置画像を作成する。
このような構成によれば、360度画像である撮影画像の中から、指定された方向周辺の指定位置画像を容易に作成することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、より簡便に運用することが可能で、進捗状況の把握が容易な、工事進捗状況表示システムを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態に係る工事進捗状況表示システムの構成を示すブロック図である。
図2図1の工事進捗状況表示システムで、工事進捗状況を表示する対象となる建設現場の一例を示す図である。
図3】現場作業員の移動情報を示すPDR記録の一例を示す図である。
図4】識別票が撮影された撮影画像の一例を示す図である。
図5】撮影画像から識別票が検出された履歴の一例を示す図である。
図6】情報統合部において作成された統合データの一例を示す図である。
図7】表示部に表示された、指定された階層の図面データを示す図である。
図8】指定された位置に近い位置で撮影された撮影画像の一例を示す図である。
図9】指定された方向を示す図である
図10】撮影画像から指定位置画像を作成するために設定する範囲の一例を示す図である。
図11】撮影画像から作成される指定位置画像の一例を示す図である。
図12】複数の指定位置画像から生成されるタイムラプスの一例を示す図である。
図13】本実施形態の工事進捗状況表示システムを用いて実行される、工事進捗の表示方法の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、建設現場内での各種工事の進捗状況を表すタイムラプスを備えた工事進捗状況表示システムである。本発明は、定点カメラで工事写真を撮影してタイムラプスを作成するのではなく、現場内を撮影記録装置で動画撮影しながら巡回するだけで、巡回経路上の任意の場所、方向における工事進捗を表すタイムラプスを簡便に作成できる工事進捗状況表示システムである。
以下、添付図面を参照して、本発明による工事進捗状況表示システムを実施するための形態について、図面に基づいて説明する。
本発明の実施形態に係る工事進捗状況表示システムの構成を示すブロック図を図1に示す。図2は、図1の工事進捗状況表示システムで、工事の進捗状況を表示する対象となる建設現場の一例を示す図である。
図1に示されるように、工事進捗状況表示システム1は、自律航法手段2と、撮影記録装置3と、管理システム本体4と、表示部5と、入力部6と、を主に備えている。工事進捗状況表示システム1は、建設現場G内での工事の進捗状況を表示する。
本実施形態においては、建設現場Gは、高層建築物等の、複数の階層を有する建物の工事、施工を行う現場である。
自律航法手段2、及び撮影記録装置3は、図2に示すように、現場作業員Qが、工事中の建物内の、建設現場G内を移動しながら、建設現場G内を撮影する際に用いる。自律航法手段2、及び撮影記録装置3は、現場作業員Qが、保持、又は装着可能に構成されている。すなわち、自律航法手段2、撮影記録装置3は、現場作業員Qが手で保持してもよいし、ポケットに収納することで保持してもよい。更に、自律航法手段2、撮影記録装置3は、現場作業員Qの身体の一部(例えば頭部等)や、装具(ヘルメットや衣服)に装着してもよい。また、自律航法手段2、撮影記録装置3が取り付けられたヘルメットやバッグ等を現場作業員Qが装着するようにしてもよい。また、自律航法手段2と、撮影記録装置3とは、別々のデバイスであってもよいが、自律航法手段2と、撮影記録装置3とを一体化したデバイスを用いるようにしてもよい。
なお、本実施形態においては、上記のように、自律航法手段2及び撮影記録装置3は、現場作業員Qが、建設現場G内を移動しながら、建設現場G内を撮影する際に用いるように説明したが、これに限られない。例えば、現場作業員Qに替えて、自律航法手段2及び撮影記録装置3をドローンやロボット等の、建設現場G内で移動可能に構成された移動体に装着させ、当該移動体が、建設現場G内を巡回、移動しながら、建設現場G内を撮影する際に用いるようにしてもよい。
【0013】
自律航法手段2は、歩行者自律航法すなわちPDR(Pedestrian Dead-Reckoning)により、現場作業員Qの移動情報を取得するデバイスである。上記したような自律航法手段2としては、以下に示す各機能を備えた専用のデバイスを用いてもよいし、以下に示すような各機能を実現可能なアプリケーションプログラムを備えたスマートフォン、タブレット端末等を用いてもよい。図1に示すように、自律航法手段2は、センサ21と、移動情報演算部22と、データ記憶部23と、データ出力部24と、を機能的に備えている。
センサ21としては、例えば、加速度センサ、ジャイロセンサ、地磁気センサ等が用いられている。センサ21は、測位開始後、自律航法手段2を保持又は装着した現場作業員Qの移動に伴って生じる加速度、角速度、地磁気等の変化を検出する。なお、センサ21としては、建設現場G内における現場作業員Qの移動情報を取得できるのであれば、加速度センサ、ジャイロセンサ、地磁気センサに限らず、適宜他のパラメータを検出するものを用いてもよい。
【0014】
移動情報演算部22は、センサ21からの検出データに基づき、測位開始位置から現場作業員Qが移動したときの、測位開始位置からの移動量、すなわち測位開始位置に対する相対的な位置を演算することで、現場作業員Qの移動情報を生成する。より詳細には、移動情報演算部22は、PDRにより、一定の時間間隔をおいて、前回の時間における位置からの移動量、すなわち相対的な位置を計測し、これを積算することにより、位置を演算する。また、移動情報演算部22は、PDRにより、一定の時間間隔をおいて、現場作業員Qが向いている方向を、現場作業員Qの移動方向として、センサ21からの検出データから取得する。このようにして生成される現場作業員Qの移動情報は、現場作業員Qの位置及び移動方向の履歴を含んでいる。より具体的には、現場作業員Qの移動情報においては、上記のようにして計測した相対的な位置による移動経路(移動量)を示す情報と、当該移動経路上の各位置の各々における現場作業員Qの移動方向、及び各位置における時刻情報とが、互いに関連付けられている。
図3は、現場作業員の移動情報を示すPDR記録の一例を示す図である。
図3に示される移動情報においては、予め設定された時間間隔をおいて、例えば時刻情報(日時)と、当該時刻における現場作業員Qの位置(X座標、Y座標)、及び移動方向が、互いに関連付けられて、例えば1組の関連付けされた対応関係が1行に記されたテキストデータとして記録されている。
【0015】
データ記憶部23は、移動情報演算部22で生成される、現場作業員Qの移動情報を記憶する。
データ出力部24は、データ記憶部23に記憶された現場作業員Qの移動情報を、管理システム本体4に出力する。データ出力部24で移動情報を出力する形態としては、例えば、Wi-Fi、Bluetooth(登録商標)等の無線LAN(Local Area Network)、携帯電話通信網等を介したデータ転送の他、接続ケーブルや各種の可搬性を有したメモリを介したデータ転送等を用いることができる。
【0016】
撮影記録装置3は、建設現場G内を撮影する。撮影記録装置3は、例えば、可搬性を有したデジタルカメラ、デジタルビデオ(身体に装着可能なウェアラブルカメラを含む)等からなる。本実施形態において、撮影記録装置3は、後に図8として説明するような、周囲360度の全方位の360度画像を撮影できる、いわゆる全方位カメラ(360度カメラ)である。撮影記録装置3は、撮影部31と、撮影データ記憶部32と、撮影データ出力部33と、を機能的に備えている。
撮影部31は、CCD(Charge Coupled Device;電荷結合素子)、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor:相補型金属酸化膜半導体)等を用いた撮像素子を備えており、360度画像の静止画、及び動画の少なくとも一方を撮影する。
【0017】
撮影データ記憶部32は、撮影部31で撮影した撮影画像を、当該撮影画像が撮影された時刻、すなわち撮影時刻と関連付けて、撮影データとして記憶する。
現場作業員Qは、例えば、図2において破線で示すような移動経路Rに沿って移動している。この、現場作業員Qの移動中に、撮影記録装置3によって撮影画像が撮影される。撮影画像が静止画の場合においては、所定の時間間隔を置いて、撮影画像が撮影される。例えば、図2においては、移動経路R上の、現場作業員Qが所定の時間間隔を置いて位置していた複数の位置Kにおいて、撮影部31で撮影画像が撮影されている。この撮影画像の各々に対して、撮影時刻が関連付けられている。
撮影画像が動画の場合においては、当該動画に対して、例えば動画の撮影を開始した時刻が、撮影時刻として関連付けられるように、構成することができる。ただし、動画は、所定の時間間隔を置いて撮影された複数の静止画をフレームとして連続して並べたものであると考えることができる。このため、動画から、各フレームを静止画として切り出し、切り出された静止画を、動画の撮影を開始した時刻から当該静止画に至るまでに経過した時間と関連付けて保存することで、動画を、所定の時間間隔を置いて撮影された、複数の撮影画像とすることが可能である。したがって、以降においては、撮影画像は、所定の時間間隔を置いて撮影された静止画であるとして説明するが、撮影画像が動画である場合においても、以下の説明と同様な趣旨の説明が可能であることは、言うまでもない。
【0018】
撮影データ記憶部32は、撮影記録装置3に内蔵されたメモリや、撮影記録装置3に着脱可能に備えられた可搬性を有するメモリ等を用いてもよい。また、撮影データ記憶部32は、撮影記録装置3にWi-Fi等の無線LAN通信によって接続可能なスマートフォンやタブレット端末に撮影データを転送して記憶させるようにしてもよい。
撮影データ出力部33は、撮影データ記憶部32に記憶された建設現場G内の撮影データを、管理システム本体4に出力する。データ出力部24で移動情報を出力する形態としては、データ出力部24と同様、例えば、Wi-Fi等の無線LAN、携帯電話通信網等を介したデータ転送の他、接続ケーブルや各種の可搬性を有したメモリを介したデータ転送等を用いることができる。
【0019】
管理システム本体4は、自律航法手段2、及び撮影記録装置3で得られた現場作業員Qの移動情報と、撮影データに基づき、建設現場G内の工事の進捗状況を表示する。管理システム本体4は、パーソナルコンピュータ等のコンピュータ装置からなる。管理システム本体4は、データ入力受付部41と、検出手段42と、情報統合部43と、データベース44と、タイムラプス生成部45と、を機能的に備えている。
データ入力受付部41は、自律航法手段2のデータ出力部24、及び撮影記録装置3の撮影データ出力部33から出力されるデータの入力を受け付ける。
【0020】
データベース44は、管理システム本体4で建設現場G内の工事の進捗状況を表示する為に必要な各種のデータを記憶している。データベース44には、建設現場G内で行われる工事に関するデータと、識別票Mに関するデータとが記憶されている。
工事に関するデータとしては、例えば、建設現場G内の各階層の図面データ等が、データベース44に記憶されている。建設現場G内の各階層の図面データとしては、各階層のCAD(Computer Aided Design)データ、BIM(Building Information Modeling)データ、JPG形式等の画像データ等がある。
【0021】
識別票Mは、図2に示すように、建設現場G内に配置される。本実施形態のように、建設現場Gが複数の階層を有する場合、識別票Mは、複数階層を有する建設現場Gであれば、各階層に設けられる。
識別票Mは、例えば2次元バーコード、ARマーカ等であり、各識別票Mに対して、個別の識別情報(ID)が対応付けられて、記録されている。識別票Mに関するデータとしては、識別票Mに対応付けられて記録された識別情報と、識別票Mが設置された建設現場G内における水平位置及び階層(階数)の情報、識別票Mを掲示する向き(方位又は角度)との対応関係がデータベース44に記憶されている。
識別票Mが設置された建設現場G内における水平位置の情報としては、各識別票Mを設置した階層における平面位置(X-Y座標:設計図面の画像データ上における絶対座標や相対座標)などが用いられ得る。
識別票Mは、建設現場G内で人の往来が多く、各階層での人の移動の始点になりやすい階段室やのエレベータ室近傍に設置する。識別票Mは、各階層の複数個所に設置してもよい。
識別票Mは、例えば施工中の柱や壁の表面に設けるのが望ましい。特に、建設対象となる建物が複数階層を有する場合には、階数を記載した紙などを、各階の柱などに貼り付けて掲示することが多い。このような場合には、識別票Mを、この階数の掲示の近くに設けるようにすることで、階数の表示を掲示する際に、同時に識別票Mを設けることができる。このようにすれば、識別票Mの設置のために建物内を巡回する必要がない。
また、識別票Mは、磁石や粘着剤で貼り付けるように設置すると、撤去する際に作業が容易である。
【0022】
検出手段42は、建設現場G内の各階層のそれぞれにおいて、撮影部31によって撮影された複数の撮影画像から、識別票Mを検出する。
検出手段42は、処理対象となる撮影画像に識別票Mが含まれている場合、撮影画像から既知の画像処理方法などにより、識別票Mを検出(特定)する。検出手段42は、撮影画像に識別票Mが含まれている場合、識別票Mが検出された撮影画像を撮影した際の撮影時刻、及び撮影画像のファイル名を取得する。また、検出手段42は、識別票Mが検出された撮影画像を適宜の画像処理手段によって画像処理することで、識別票Mに記載された識別情報を読み取る。
図4は、識別票が撮影された撮影画像の一例を示す図である。以下の説明では、図8等に示されるように、撮影画像に対して符号Pを付して説明するが、この中でも特に、識別票Mが撮影された撮影画像を、撮影画像Paとして、符号Paを付して説明する。
検出手段42は、撮影画像Pa内における、識別票Mの角部Mcの座標を検出する。本実施形態においては、識別票Mは矩形形状を成しており、したがって、検出手段42は、識別票Mの4つの角部Mcの各々の、座標を検出する。
検出手段42は、識別票Mが検出された履歴である識別票検出履歴を作成する。図5は、検出手段が作成した、識別票検出履歴の一例である。識別票検出履歴としては、識別票Mが含まれている撮影画像Paが撮影された時刻である撮影時刻(日時)、検出された識別票Mの識別情報(ID)、及び、撮影画像Pa中の、識別票Mの角部Mcの画素が位置する座標値である角部座標(コーナー座標)の各々が、互いに関連付けられて、例えば1組の関連付けされた対応関係が1行に記されたテキストデータとして、データベース44に保存される。
【0023】
情報統合部43は、撮影画像Pと移動情報を時間によって関連付ける。情報統合部43は、建設現場G内で撮影された各撮影画像Pに対し、当該撮影画像Pの撮影時刻と、移動情報の時刻とを照合することで、当該撮影画像Pの撮影位置を計算し、撮影位置と、当該撮影画像Pとを関連付け、統合して統合データを作成し、データベース44に格納する。
具体的には、情報統合部43は、各撮影画像Pに対し、以下のような処理を実行する。
まず、情報統合部43は、当該撮影画像Pの撮影時刻を取得する。
情報統合部43は、識別票検出履歴の撮影時刻を参照して、当該撮影画像Pが撮影された撮影時刻に一致するか、または最も近い過去の時刻に、すなわち当該撮影画像Pの撮影の直前に、検出された識別票Mを識別票検出履歴から抽出し、当該識別票Mの識別情報(ID)を取得する。既に説明したように、識別票Mは、各階層での人の移動の始点になりやすい階段室やエレベータ室の近傍に設置されている。したがって、各撮影画像Pに対し、当該撮影画像Pの直前に検出された識別票Mは、当該撮影画像Pが撮影された階層と同じ階層に設けられたものだと考えられる。このため、情報統合部43は、データベース44に格納された、識別票Mに関する対応関係から、直前に検出された識別票Mの識別情報に対応する階層を参照することで、当該撮影画像Pが撮影された階層を特定する。
【0024】
また、情報統合部43は、識別票検出履歴から、検出された識別票Mが撮影された撮影画像Pa中の角部Mcの座標を取得する。情報統合部43は、データベース44に格納された、識別票Mに関する対応関係から、抽出された識別票Mの識別情報に対応する、識別票Mが設置された建設現場G内における水平位置と、識別票Mを掲示する向きと、を取得する。情報統合部43は、識別票Mが撮影された撮影画像Pa中の角部Mcの座標を基にして、撮影画像Pa中の識別票Mの形状を考慮し、当該撮影画像Paが撮影された、識別票Mからの相対位置を計算する。情報統合部43は、当該相対位置と、識別票Mの水平位置、及び識別票Mの掲示の向きから、例えば建設現場G内における絶対位置として、識別票Mが撮影された撮影画像Paの水平位置、及び撮影方向を推定する。
情報統合部43は、このようにして、直前に検出された識別票Mが配置された位置を基点として、直前に検出された識別票Mが撮影された撮影画像Paの撮影位置を推定する。
【0025】
情報統合部43は、更に、当該撮影位置を基点として、現在処理の対象となっている当該撮影画像Pの撮影位置を、移動情報演算部22で生成される現場作業員Qの移動情報を基に計算する。
より具体的には、情報統合部43は、例えば、直前に検出された識別票Mが撮影された撮影画像Paの撮影時刻から、当該撮影画像Pの撮影時刻までの、相対的な移動量を、移動情報演算部22で生成される現場作業員Qの移動情報から取得し、この相対的な移動量を、直前に検出された識別票Mが撮影された撮影画像Paの撮影位置に加算することで、例えば建設現場G内における絶対位置として、当該撮影画像Pの撮影位置を算出する。
また、情報統合部43は、当該撮影画像Pを撮影したときの現場作業員Qの移動方向(向き)を、当該撮影画像Pの撮影時刻を基に、現場作業員Qの移動情報から取得する。
【0026】
情報統合部43は、これらのデータを互いに関連付け、統合した、統合データを作成する。
図6は、情報統合部において作成された統合データの一例を示す図である。この図6に示されるように、統合データとしては、各撮影画像Pに対して、上記のように取得、算出した、当該撮影画像Pの撮影時刻(日時)、ファイル名(画像ファイル名)、当該撮影画像Pの撮影位置と、当該撮影位置における現場作業員Qの移動方向(XY座標、移動方向)、当該撮影画像Pが撮影された階層の各々が互いに関連付けられて、例えば1組の関連付けされた対応関係が1行に記されたテキストデータとして、データベース44に保存される。
【0027】
タイムラプス生成部45に関しては、表示部5と入力部6を説明した後に、説明する。
表示部5は、管理システム本体4に備えられたモニター装置等であってもよいし、管理システム本体4と無線通信によるデータ通信が可能な、スマートフォン、タブレット端末等であってもよい。
入力部6は、作業員による操作を受け付ける。入力部6は、管理システム本体4に備えられたキーボード、マウス等であってよい。あるいは、表示部5がスマートフォン、タブレット端末である場合には、入力部6は、タッチパネル等であってよい。
図7は、表示部に表示された、指定された階層の図面データを示す図である。
表示部5には、建設現場Gの任意の階層が選択可能となるような、図示されないコンボボックス等が表示されている。入力部6からの操作によってコンボボックス等が操作され、階層が指定されると、表示部5には、図7に示されるように、当該階層に対応する図面データが、例えば当該階層の伏図として表示される。
本実施形態の工事進捗状況表示システム1は、建設現場G内で、位置(階層及び当該階層内における水平位置)、及び当該位置からの方向が指定されると、当該位置から、当該方向を見た場合の撮影画像を、指定位置画像として複数抽出し、指定位置画像を撮影時刻の順で連続して並べることで、タイムラプスを生成する。このために、作業者は、入力部6を介して、上記のように階層を指定したうえで、表示部5に表示された図面データ上で、タイムラプスを生成するための基点となる、当該階層における水平位置と、当該水平位置からの方向を、更に指定する。
このようにして、入力部6は、作業者による、位置(階層及び当該階層における水平位置)と、当該位置からの方向の入力を受け付ける。
【0028】
タイムラプス生成部45は、入力部6からのリクエストがあった場合、当該リクエストにおいて指定された、建設現場G内の位置(階層及び当該階層内における水平位置)及び方向に応じた撮影画像Pを、撮影時刻の順で連続して並べることで、各種工事の進捗状況を表すタイムラプスを生成する。タイムラプス生成部45は、画像取得部47と、画像作成部48と、タイムラプス生成処理部49と、を備えている。
画像取得部47は、入力部6から、建設現場G内の位置(階層及び当該階層内における水平位置)及び方向が指定されると、データベース44に保存された統合データから、統合データ内の階層が、指定された階層に一致する撮影画像Pを、抽出する。このようにして抽出された撮影画像Pは、入力部6によって指定された階層で撮影された撮影画像Pである。
【0029】
更に、画像取得部47は、上記のようにして抽出された、指定された階層の複数枚の撮影画像Pの中から、指定された水平位置で撮影された撮影画像Pを取得する。実際には、入力部6によって指定された水平位置と、厳密に同じ位置で撮影された撮影画像Pは、存在しない場合がある。したがって、画像取得部47は、指定された水平位置に近い位置で撮影された撮影画像Pを抽出し、これを、指定された水平位置で撮影された撮影画像Pとして扱う。
具体的には、図7に示されるように、画像取得部47は、指定された階層において、撮影画像Pが撮影された複数の位置(水平位置)Kのうち、指定された位置Xとの距離が、閾値(例えば1m)よりも近い位置Kxを特定する。画像取得部47は、特定された、指定された位置Xに近い位置Kxで撮影された撮影画像Pを、撮影時刻に関わらず、全て取得し、これを、指定された位置Xで撮影された撮影画像Pとして扱う。
図8は、指定された位置に近い位置で撮影された撮影画像Pの一例を示す図である。図8に示されるように、画像取得部47によって取得された、指定された位置Xに近い位置Kxで撮影された撮影画像Pは、当該撮影画像Pを撮影した際の現場作業員Qの移動方向を中心とした360度画像となっている。なお、現場作業員Qは、360度カメラを常に正面になるように持ちながら歩くことで、360度画像の中心が移動方向となっている。
【0030】
図9は、指定された方向Xdを示す図である。図10は、撮影画像から指定位置画像を作成するために設定する範囲の一例を示す図である。図11は、撮影画像から作成される指定位置画像の一例を示す図である。
画像作成部48は、指定された方向Xdが水平方向360度のうちのいずれかの方向である場合、タイムラプス生成部45は、上記のように取得された、指定された位置Xで撮影された撮影画像(360度画像)Pから、指定された方向周辺、つまり、指定された方向を含む、予め設定された大きさの範囲を切り出して、これを平面画像に変換し、指定位置画像Psを作成する。
例えば図9においては、指定された方向Xdが方向Xd1である場合には、現場作業員Qの移動方向と、指定された方向Xd1が一致しているため、図10に領域Aとして示されるように、360度画像である撮影画像Pの中央付近が切り出されて、これを基に、図11に示されるような指定位置画像Psが作成される。あるいは、指定された方向Xdが、現場作業員Qの移動方向からみて90度左側である方向Xd2である場合には、図10に領域Bとして示されるように、領域Aの左側の部分が切り出されて、これを基に指定位置画像Psが作成される。
このようにして生成された指定位置画像Psは、入力部6によって指定された位置、すなわち指定された階層の指定された水平位置Kから、指定された方向Xdを含んで撮影された画像となっている。
【0031】
なお、本実施形態においては、表示部5には、指定された階層の伏図が表示され、この伏図上で、水平位置と方向が指定される構成となっているため、指定される方向は、水平方向に限定される。例えば、水平方向の方向を指定するに際し、水平方向からの仰俯角を併せて指定するようにすれば、水平方向以外の方向の指定位置画像Psを取得することも可能である。
例えば、指定された方向をXd1としたうえで、仰角を設定することで、図10に領域Cとして示されるように、領域Aの上側すなわち天井側の部分が切り出されて、これを基に指定位置画像Psが作成されるようにしてもよい。あるいは、指定された方向をXd1としたうえで、俯角を設定することで、図10に領域Dとして示されるように、領域Aの下側すなわち床側の部分が切り出されて、これを基に指定位置画像Psが作成されるようにしてもよい。
【0032】
このようにして、画像作成部48は、データベース44に保存された全ての統合データのなかから、入力部6によって指定された位置、すなわち指定された階層の、指定された水平位置Kから、指定された方向Xdを含んで撮影された指定位置画像Psを抽出する。
現場作業員Qは、建設現場Gの着工から工事が終了するまでに、少なくない回数、建設現場Gを巡回することが想定される。このため、指定された位置で、複数回、撮影画像Pが撮影されているはずである。本実施形態においては、撮影記録装置3は全方位カメラであるため、指定された位置で撮影された複数の撮影画像Pには、当該位置における全ての方向が撮影されている。したがって、画像作成部48が作成する、指定された位置で、及び指定された方向を含んで撮影された指定位置画像Psは、複数枚の枚数となる。
【0033】
図12は、複数の指定位置画像から生成されるタイムラプスの一例を示す図である。
タイムラプス生成処理部49は、図12に示されるように、画像作成部48によって作成された、複数の指定位置画像Psを、撮影画像Pの撮影時刻に基づいて、撮影時刻の順(時系列順)で連続して並べることで、各種工事の進捗状況を表すタイムラプスPtを生成する。タイムラプスPtは、図12に示されるように、複数の位置指定画像Psが平面的に並べられたものであってもよいし、各位置指定画像Psが1フレームの静止画像となるように構成された、動画であってもよい。
タイムラプス生成処理部49は、生成した、指定された位置から指定された方向を含んで撮影された指定位置画像Psを時系列順に並べたタイムラプスPtのデータを、表示部5に出力する。
【0034】
管理システム本体4は、表示部5に、例えば、通信ケーブル、Wi-Fi等の無線LAN、携帯電話通信網等を介したデータ転送等を介して、タイムラプス生成処理部49で生成されたタイムラプスPtのデータを送信する。
表示部5では、管理システム本体4から送信されたタイムラプスPtのデータに基づき、指定された位置から指定された方向を含んで撮影された指定位置画像Psを時系列順に並べたタイムラプスPtが表示される。
【0035】
図13は、本実施形態の工事進捗状況表示システムを用いて実行される、工事の進捗状況の表示方法の流れを示すフローチャートである。
図13に示されるように、本実施形態における工事進捗状況表示システム1で工事の進捗状況を表示するには、予め、識別票Mを、建設現場G内に設置する(工程S11)。
識別票Mの設置後、管理システム本体4のデータベース44に、識別票Mに関する情報を登録する(工程S12)。具体的には、データベース44に、前述したように、各識別票Mの識別情報と、識別票Mが設置された建設現場G内における水平位置及び階層(階数)の情報、及び識別票Mを掲示する向き(方位又は角度)とを関連付けて記憶させる。
上記の工程S12は、建設現場Gにおいて、工程S11における識別票Mの設置に伴い、一度行えばよい。
【0036】
工程S13では、現場作業員Qが、自律航法手段2、及び撮影記録装置3を保持又は装着して、建設現場G内を歩行して移動しながら、建設現場G内の撮影を行う。このとき、例えば、図2に示されるように、現場作業員Qは、各階層において、識別票Mが設置されている場所付近を始点とした移動経路Rに沿って、各階層内を移動するのが好ましい。
この際に、自律航法手段2が、センサ21からの検出データに基づき、現場作業員Qの移動情報を生成する。また、撮影記録装置3の撮影部31の先に識別票Mが位置していれば、撮影記録装置3により識別票Mが撮影される。
工事進捗状況表示システム1によって建設現場G内の工事の進捗状況を表示するという目的を考えると、現場作業員Qは、建設現場G内の工事実施予定箇所のなるべく全てが撮影記録装置3で撮影されるように、建設現場G内を移動するのが望ましい。しかし、安全点検などを目的とした建設現場Gの定時的な巡回時に、現場作業員Qが自律航法手段2、及び撮影記録装置3を保持又は装着することにより、建設現場G内の工事の進捗状況表示のための建設現場G内の移動を、巡回と兼ねるようにしてもよい。あるいは、多数の現場作業員Qが、常時、各々の作業の支障にならない態様で自律航法手段2、及び撮影記録装置3を携帯することで、建設現場G内での撮影記録装置3による撮影の網羅性を向上させることも可能である。
【0037】
これにより、自律航法手段2においては、センサ21、及び移動情報演算部22により、建設現場G内における現場作業員Qの移動情報が取得され、時刻情報に関連付けられてデータ記憶部23に記憶される。
また、撮影記録装置3では、撮影部31により、現場作業員Qの移動経路Rの周囲に位置する建設現場G内が撮影され、その撮影画像Pである360度画像が、当該撮影画像Pが撮影された時刻である撮影時刻と関連付けられた撮影データとして、撮影データ記憶部32に記憶される。
続いて、自律航法手段2で得られた現場作業員Qの移動情報と、撮影記録装置3による建設現場G内の撮影データとを、データ出力部24、撮影データ出力部33から管理システム本体4に転送する(工程S14)。管理システム本体4では、工程S14で転送された現場作業員Qの移動情報、及び建設現場G内の撮影データの入力を受け付けると、これらをデータベース44に保管する。なお、この工程S14は、上記工程S13の完了後に行ってもよいし、上記工程S13を実行しながら、無線LAN等による通信を利用して、随時行ってもよい。
【0038】
次いで、工事の進捗状況の統合データを生成する(工程S15)。
これには、まず、管理システム本体4の検出手段42が、処理対象となる撮影画像Pから、既知の画像処理方法などにより、識別票Mを検出する。検出手段42は、識別票Mが検出された履歴である識別票検出履歴を作成する。
続いて、情報統合部43が、建設現場G内で撮影された各撮影画像Pに対し、当該撮影画像Pの撮影時刻と、移動情報の時刻とを照合することで、当該撮影画像Pの撮影位置を計算し、撮影位置と、当該撮影画像Pとを関連付け、統合して統合データを作成し、データベース44に格納する。
具体的には、情報統合部43は、各撮影画像Pに対し、以下のような処理を実行する。
まず、情報統合部43は、当該撮影画像Pの撮影時刻を取得する。
情報統合部43は、識別票検出履歴の撮影時刻を参照して、当該撮影画像Pが撮影された撮影時刻に一致するか、または最も近い過去の時刻に、すなわち当該撮影画像Pの撮影の直前に、検出された識別票Mを識別票検出履歴から抽出し、当該識別票Mの識別情報(ID)を取得する。情報統合部43は、データベース44に格納された、識別票Mに関する対応関係から、直前に検出された識別票Mの識別情報に対応する階層を参照することで、当該撮影画像Pが撮影された階層を特定する。
【0039】
また、情報統合部43は、識別票検出履歴から、検出された識別票Mが撮影された撮影画像Pa中の角部Mcの座標を取得する。情報統合部43は、データベース44に格納された、識別票Mに関する対応関係から、抽出された識別票Mの識別情報に対応する、識別票Mが設置された建設現場G内における水平位置と、識別票Mを掲示する向きと、を取得する。情報統合部43は、識別票Mが撮影された撮影画像Pa中の角部Mcの座標を基にして、撮影画像Pa中の識別票Mの形状を考慮し、当該撮影画像Paが撮影された、識別票Mからの相対位置を計算する。情報統合部43は、当該相対位置と、識別票Mの水平位置、及び識別票Mの掲示の向きから、例えば建設現場G内における絶対位置として、識別票Mが撮影された撮影画像Paの撮影位置、及び撮影方向を推定する。
情報統合部43は、このようにして、直前に検出された識別票Mが配置された位置を基点として、直前に検出された識別票Mが撮影された撮影画像Paの撮影位置を推定する。
【0040】
情報統合部43は、更に、当該撮影位置を基点として、現在処理の対象となっている当該撮影画像Pの撮影位置を、移動情報演算部22で生成される現場作業員Qの移動情報を基に計算する。
より具体的には、情報統合部43は、例えば、直前に検出された識別票Mが撮影された撮影画像Paの撮影時刻から、当該撮影画像Pの撮影時刻までの、相対的な移動量を、移動情報演算部22で生成される現場作業員Qの移動情報から取得し、この相対的な移動量を、直前に検出された識別票Mが撮影された撮影画像Paの撮影位置に加算することで、例えば建設現場G内における絶対位置として、当該撮影画像Pの撮影位置を算出する。
また、情報統合部43は、当該撮影画像Pを撮影したときの現場作業員Qの移動方向(向き)を、当該撮影画像Pの撮影時刻を基に、現場作業員Qの移動情報から取得する。
情報統合部43は、これらのデータを互いに関連付け、統合した、統合データを作成する。
【0041】
このようにして、管理システム本体4における統合データの作成が終了した後、作業者が、入力部6によって、建設現場G内の特定の位置(階層及び水平位置)X、及び方向Xdにおける工事の進捗状況の表示をリクエストすると、タイムラプス生成部45が、リクエストに応じた、建設現場G内の位置(階層及び水平位置)X、及び方向Xdにおける工事の進捗状況を表示する、タイムラプスPtを作成する(工程S16)。
これには、まず、タイムラプス生成部45の画像取得部47が、データベース44に保存された統合データから、統合データ内の階層が、指定された階層に一致する撮影画像Pを、抽出する。
更に、画像取得部47は、上記のようにして抽出された、指定された階層の複数枚の撮影画像Pの中から、指定された水平位置で撮影された撮影画像Pを取得する。
具体的には、図7に示されるように、画像取得部47は、指定された階層において、撮影画像Pが撮影された複数の位置(水平位置)Kのうち、指定された位置Xとの距離が、閾値(例えば1m)よりも近い位置Kxを特定する。画像取得部47は、特定された、指定された位置Xに近い位置Kxで撮影された撮影画像Pを、撮影時刻に関わらず、全て取得し、これを、指定された位置Xで撮影された撮影画像Pとして扱う。
【0042】
次いで、画像作成部48は、上記のように取得された、指定された位置Xで撮影された撮影画像P(360度画像)Pから、指定された方向Xd(図9参照)周辺、つまり、指定された方向を含む、予め設定された大きさの範囲を切り出して、これを平面画像に変換し、指定位置画像Psを作成する。
更に、タイムラプス生成処理部49は、図12に示されるように、画像作成部48によって作成された、複数の指定位置画像Psを、撮影画像Pの撮影時刻に基づいて、撮影時刻の順(時系列順)で連続して並べることで、各種工事の進捗状況を表すタイムラプスPtを生成する。
タイムラプス生成処理部49は、生成したタイムラプスPtのデータを、表示部5に出力する。
表示部5では、管理システム本体4から送信されたタイムラプスPtを表示する。(工程S17)
【0043】
上述したような工事進捗状況表示システム1は、建設現場G内での各種工事の進捗状況を表示する、工事進捗状況表示システム1であって、現場作業員Qまたは建設現場内で移動可能に構成された移動体が建設現場G内を移動することにより撮影された撮影画像Pと、撮影画像Pに関連付けられた、現場作業員Qまたは移動体の位置及び移動方向の履歴を含む移動情報を基に、建設現場G内の位置及び方向が指定されると、撮影画像Pから、当該位置から当該方向を含んで撮影された指定位置画像Psを複数抽出し、撮影時刻の順で連続して並べることで、各種工事の進捗状況を表すタイムラプスPtを生成する、タイムラプス生成部45と、タイムラプスPtを表示する表示部5と、を備える。
このような構成によれば、現場作業員Qまたは移動体が建設現場G内を移動することにより撮影された撮影画像Pには、現場作業員Qまたは移動体の位置及び移動方向の履歴を含む移動情報が関連付けられている。このため、建設現場G内における位置Xと、当該位置Xからの方向Xdが指定された際に、移動情報内の位置及び移動方向と、指定された位置、方向とを比較参照すれば、現場作業員Qまたは移動体が指定された位置を移動していた際に、指定された方向Xdを含むように撮影された撮影画像Pを取得することができる。ここで、例えば現場作業員Qまたは移動体が、建設現場G内を定期的に巡回するような場合には、指定された位置Xにおいて、異なる複数の時間に撮影された、複数の撮影画像Pが有るはずである。そこで、このような、指定された位置に対応する複数の撮影画像Pから、指定された方向Xdを含むように撮影された画像を、指定位置画像Psとして複数抽出して、撮影時刻の順で連続して並べることで、時間の経過とともに変遷する工事の進捗状況を表した、タイムラプスPtを生成することができる。このように生成されたタイムラプスPtを表示することで、進捗状況を容易に把握することができる。
タイムラプスPtを生成するに際して基になる、撮影画像Pと移動情報は、例えば現場作業員Qまたは移動体が静止画や動画を撮影するようなカメラなどの撮影記録装置3と、ジャイロセンサ21等を内蔵したスマートフォン等の自律航法手段2を携帯して、建設現場G内を巡回することで、容易に取得することができる。すなわち、撮影画像Pと移動情報を取得するに際し、特別な設備を導入する必要がない。加えて、撮影画像Pと移動情報は、例えば現場作業員Qまたは移動体によって通常業務として行われる建設現場G内の巡回に伴って、副次的に取得することが可能であり、タイムラプスPtの生成に際して特別な作業を別途実施する必要がない。したがって、簡便に運用することができる。
【0044】
また、工事進捗状況表示システム1において、移動情報は、履歴の各々に対応付けられた時刻を含み、自律動作するセンサ21を備え、現場作業員Qまたは移動体が保持又は装着可能に構成されて、現場作業員Qまたは移動体の移動情報を取得する自律航法手段2と、現場作業員Qまたは移動体が保持又は装着可能に構成され、建設現場G内を撮影して撮影画像Pを取得する撮影記録装置3と、撮影画像Pの各々に対し、撮影画像Pの撮影時刻と、移動情報の時刻とを照合することで、撮影画像Pと移動情報を時間によって関連付けてデータベース44に格納する情報統合部43と、を備えている。
このような構成によれば、現場作業員Qまたは移動体が自律航法手段2、及び撮影記録装置3を保持又は装着した状態で、建設現場G内を移動しつつ、撮影記録装置3で、建設現場G内を撮影するとともに、自律航法手段2で、現場作業員Qまたは移動体の移動情報が取得される。また、撮影記録装置3では、建設現場G内を撮影することで、建設現場G内の工事の撮影画像Pを取得する。情報統合部43は、撮影画像Pの撮影時刻と、移動情報の時刻とを照合することで、撮影画像Pと移動情報を時間によって関連付けてデータベース44に格納する。これにより、タイムラプス生成部45では、現場作業員Qまたは移動体が建設現場G内を移動することにより撮影された撮影画像Pと、移動情報を基に、指定された位置における指定位置画像Psを、撮影時刻の順で連続して並べ、タイムラプスPtを生成することができる。
【0045】
また、撮影画像Pは360度画像であり、タイムラプス生成部45は、撮影画像Pの中から、指定された位置Xと、撮影位置との距離が、閾値よりも近いものを取得し、取得された撮影画像Pから、指定された方向Xd周辺を切り出して、指定位置画像Psを作成する。
このような構成によれば、360度画像である撮影画像Pの中から、指定された方向Xd周辺の指定位置画像Psを容易に作成することができる。
【0046】
なお、上記の実施形態では、建設工事における工事進捗管理に関するもので、建物内の任意の場所における内装工事の工事進捗プロセスをタイムラプスとして容易に確認、記録することができる。さらに、工事進捗把握システムとして、工事の進捗状況の情報と、BIMデータを連携させることで各種工事の出来高を推定することもできる。ここでいうBIMデータとは、3次元の建物のデジタルモデルに、コストや仕上げ、管理情報などの属性データを追加した建築物のデータベースと定義する。
【0047】
(実施形態の変形例)
なお、本発明の工事進捗状況表示システムは、図面を参照して説明した上述の実施形態に限定されるものではなく、その技術的範囲において様々な変形例が考えられる。
例えば、上記実施形態では、撮影記録装置3として、全方位カメラを用いるようにしたが、撮影記録装置3として、一方向のみの平面画像を撮影する、通常のカメラを用いることもできる。この場合においては、撮影画像Pの撮影方向は、当該撮影画像Pが撮影されたときの現場作業員Qの移動方向であると見做して、位置(階層と水平位置)、方向が指定されると、統合データに登録された全ての撮影画像Pから、階層が指定された階層に一致し、撮影画像Pが撮影された水平位置Kと指定された水平位置との距離が閾値よりも近く、かつ、撮影方向(移動方向)と指定された方向との間の角度が閾値よりも小さいものを、指定位置画像Psとして抽出するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0048】
1 工事進捗状況表示システム G 建設現場
2 自律航法手段 P 撮影画像
3 撮影記録装置 Ps 指定位置画像
5 表示部 Pt タイムラプス
21 センサ Q 現場作業員
43 情報統合部 X 位置
44 データベース Xd 方向
45 タイムラプス生成部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13