(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024063275
(43)【公開日】2024-05-13
(54)【発明の名称】結束機
(51)【国際特許分類】
E04G 21/12 20060101AFI20240502BHJP
B65B 13/18 20060101ALI20240502BHJP
B65B 13/28 20060101ALI20240502BHJP
B21F 23/00 20060101ALI20240502BHJP
B21F 15/06 20060101ALI20240502BHJP
【ＦＩ】
E04G21/12 105E
B65B13/18 A
B65B13/28
B21F23/00 B
B21F15/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】ＯＬ
(21)【出願番号】P 2022171064
(22)【出願日】2022-10-26
(71)【出願人】
【識別番号】000006301
【氏名又は名称】マックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石黒 博樹
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 太一
(72)【発明者】
【氏名】新藤 茂輝
【テーマコード（参考）】
3E052
4E070
【Ｆターム（参考）】
3E052AA42
3E052BA18
3E052CA18
3E052CB05
3E052CB07
3E052FA09
3E052HA09
3E052JA11
3E052LA03
3E052LA06
4E070AA01
4E070AC02
4E070BA02
4E070BA15
4E070BF04
4E070CA01
4E070CA02
(57)【要約】
【課題】ワイヤ送り部によるワイヤの送りでカールガイドから送り出されたワイヤの送り経路の中で、環状送り経路の軸方向に沿ったワイヤの位置が安定するようにした鉄筋結束機を提供する。
【解決手段】鉄筋結束機１Ａは、ワイヤＷが巻かれたリール２０を収容するマガジン２Ａと、ワイヤ送り部で送られるワイヤＷを鉄筋の周囲に巻き回すカール形成部５Ａと、鉄筋に巻き付けられたワイヤＷを捩じる結束部７Ａを備え、カール形成部５Ａは、ワイヤＷに巻き癖をつけるカールガイド５０ａと、カールガイド５０ａで巻き癖を付けられたワイヤＷを結束部７Ａに誘導する誘導ガイド５０ｂを備え、マガジン２Ａは、カールガイド５０ａを基準として第１の方向にオフセットして配置され、カールガイド５０ａは、ワイヤＷの出口部５７ａが第１の方向に向かう方向に傾斜した送出方向誘導部５７を備える。
【選択図】図１Ｄ
【解決手段】鉄筋結束機１Ａは、ワイヤＷが巻かれたリール２０を収容するマガジン２Ａと、ワイヤ送り部で送られるワイヤＷを鉄筋の周囲に巻き回すカール形成部５Ａと、鉄筋に巻き付けられたワイヤＷを捩じる結束部７Ａを備え、カール形成部５Ａは、ワイヤＷに巻き癖をつけるカールガイド５０ａと、カールガイド５０ａで巻き癖を付けられたワイヤＷを結束部７Ａに誘導する誘導ガイド５０ｂを備え、マガジン２Ａは、カールガイド５０ａを基準として第１の方向にオフセットして配置され、カールガイド５０ａは、ワイヤＷの出口部５７ａが第１の方向に向かう方向に傾斜した送出方向誘導部５７を備える。
【選択図】図１Ｄ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤを収容する収容部と、
前記収容部に収容されたワイヤを送るワイヤ送り部と、
前記ワイヤ送り部で送られるワイヤを結束物の周囲に巻き回す環状送り経路を構成するカール形成部と、
結束物に巻き付けられたワイヤを捩じる結束部を備え、
前記カール形成部は、
前記ワイヤ送り部で送られるワイヤに巻き癖をつけるカールガイドと、
前記カールガイドで巻き癖を付けられたワイヤを前記結束部に誘導する誘導ガイドを備え、
前記収容部は、前記カールガイドを基準として一の方向にオフセットして配置され、
前記カールガイドは、前記一の方向に向けてワイヤを送出する
結束機。
前記収容部に収容されたワイヤを送るワイヤ送り部と、
前記ワイヤ送り部で送られるワイヤを結束物の周囲に巻き回す環状送り経路を構成するカール形成部と、
結束物に巻き付けられたワイヤを捩じる結束部を備え、
前記カール形成部は、
前記ワイヤ送り部で送られるワイヤに巻き癖をつけるカールガイドと、
前記カールガイドで巻き癖を付けられたワイヤを前記結束部に誘導する誘導ガイドを備え、
前記収容部は、前記カールガイドを基準として一の方向にオフセットして配置され、
前記カールガイドは、前記一の方向に向けてワイヤを送出する
結束機。
【請求項2】
前記カールガイドは、ワイヤの出口部が前記一の方向に向かう方向に傾斜した送出方向誘導部を備えた
請求項１に記載の結束機。
請求項１に記載の結束機。
【請求項3】
前記送出方向誘導部の傾斜角度は、３°以上７°以下である
請求項２に記載の結束機。
請求項２に記載の結束機。
【請求項4】
前記カールガイドは、ワイヤの出口部が前記一の方向に向かう方向に全体が傾斜する
請求項１に記載の結束機。
請求項１に記載の結束機。
【請求項5】
前記カールガイドは、複数本のワイヤを前記環状送り経路の径方向に並ぶ状態で通過させる
請求項１～請求項４の何れか１項に記載の結束機。
請求項１～請求項４の何れか１項に記載の結束機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
鉄筋等の結束物をワイヤで結束する結束機に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート建造物には強度を向上させるために鉄筋が使用されており、コンクリート打設時に鉄筋が所定の位置からずれないように、ワイヤで結束している。
【0003】
そこで、ワイヤを送り、鉄筋の周囲に巻き回すことが可能な送り手段と、送り手段で結束物の周囲に巻き回されたワイヤを、把持して捩じることで鉄筋を結束する結束手段とを備えることで、２本以上の鉄筋にワイヤを巻き、鉄筋に巻いたワイヤを捩じって当該２本以上の鉄筋をワイヤで結束する鉄筋結束機と称す結束機が提案されている（例えば、特許文献１参照）。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第６７９１１４１号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
結束対象の鉄筋の径が大きくなると、鉄筋の周囲に環状に巻き回されるワイヤの送り経路の径を大きくする必要がある。しかし、環状となるワイヤの送り経路の径が大きくなると、ワイヤ送り部によるワイヤの送りでカールガイドから送り出されたワイヤの送り経路の中で、環状送り経路の軸方向に沿ったワイヤの位置がばらつく。
【0006】
このばらつきは、環状送り経路の径が大きくなるほど拡大する。また、ワイヤの収容部がカールガイドを基準として一の方向にオフセットして配置されることで、収容部から送られ、カールガイドで巻き癖が付けられるワイヤは、収容部がオフセットされた一の方向の反対方向である他の方向に向かう。このため、ワイヤが誘導ガイドに入らない可能性がある。これに対し、誘導ガイドを大きくすることで、ワイヤが誘導ガイドに入るようにすると、結束機の大型化や、結束機の重量が増加することで、操作性が悪化する可能性がある。
【0007】
本発明は、このような課題を解決するためなされたもので、ワイヤ送り部によるワイヤの送りでカールガイドから送り出されたワイヤの送り経路の中で、環状送り経路の軸方向に沿ったワイヤの位置が安定するようにした結束機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するため、本発明は、ワイヤを収容する収容部と、収容部に収容されたワイヤを送るワイヤ送り部と、ワイヤ送り部で送られるワイヤを結束物の周囲に巻き回す環状送り経路を構成するカール形成部と、結束物に巻き付けられたワイヤを捩じる結束部を備え、カール形成部は、ワイヤ送り部で送られるワイヤに巻き癖をつけるカールガイドと、カールガイドで巻き癖を付けられたワイヤを結束部に誘導する誘導ガイドを備え、収容部は、カールガイドを基準として一の方向にオフセットして配置され、カールガイドは、一の方向に向けてワイヤを送出する結束機である。
【0009】
収容部がカールガイドを基準として一の方向にオフセットして配置されることで、収容部から送られ、カールガイドで巻き癖が付けられるワイヤは、収容部がオフセットされた一の方向の反対方向である他の方向に向かう。
【0010】
本発明では、カールガイドで巻き癖が付けられたワイヤが、一の方向に向けて送出されることで、他の方向に向かうワイヤの、カールガイドを基準とした変位量が、ワイヤを一の方向に向けて送出しない場合と比較して少なくできる。
【発明の効果】
【0011】
本発明では、カールガイドで巻き癖が付けられたワイヤが、一の方向に向けて送出されることで、環状送り経路の径が大きくなっても、複数本のワイヤをカールガイドから誘導ガイドに入るように送ることができる。これにより、誘導ガイドを大きくする必要がなく、結束機の大型化や、結束機の重量の増加を抑制し、操作性の悪化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1A】第１の実施の形態の鉄筋結束機の全体構成の一例を示す側面から見た内部構成図である。
【図1B】第１の実施の形態の鉄筋結束機の全体構成の一例を示す正面から見た内部構成図である。
【図1C】第１の実施の形態の鉄筋結束機の全体構成の一例を示す側面図である。
【図1D】第１の実施の形態の鉄筋結束機の全体構成の一例を示す正面図である。
【図2A】カールガイドの一例を示す側面図である。
【図2B】カールガイドの一例を示す上面図である。
【図2C】カールガイドの一例を示す下面図である。
【図2D】カールガイドの一例を示す正面図である。
【図2E】カールガイドの一部の部品を取り外した状態の一例を示す側面図である。
【図2F】カールガイドの一例を示す正面断面図である。
【図2G】カールガイドの並列向き誘導部の一例を示す要部斜視図である。
【図2H】カールガイドの送出方向誘導部の一例を示す断面図である。
【図3】切断部の一例を示す斜視図である。
【図4A】結束部及び駆動部の一例を示す断面平面図である。
【図4B】結束部及び駆動部の一例を示す断面平面図である。
【図5A】切断部でワイヤを切断する動作の一例を示す斜視図である。
【図5B】切断部でワイヤを切断する動作の一例を示す斜視図である。
【図5C】切断部でワイヤを切断する動作の一例を示す斜視図である。
【図5D】切断部でワイヤを切断する動作の一例を示す斜視図である。
【図6A】第１の実施の形態の鉄筋結束機の動作の一例を示す要部側断面図である。
【図6B】第１の実施の形態の鉄筋結束機の動作の一例を示す要部側断面図である。
【図6C】第１の実施の形態の鉄筋結束機の動作の一例を示す要部側断面図である。
【図6D】第１の実施の形態の鉄筋結束機の動作の一例を示す要部側断面図である。
【図6E】第１の実施の形態の鉄筋結束機の動作の一例を示す要部側断面図である。
【図6F】第１の実施の形態の鉄筋結束機の動作の一例を示す要部側断面図である。
【図6G】第１の実施の形態の鉄筋結束機の動作の一例を示す要部側断面図である。
【図6H】第１の実施の形態の鉄筋結束機の動作の一例を示す要部側断面図である。
【図7A】カールガイドにおいてワイヤが並列する向き誘導する動作の一例を示す側面図である。
【図7B】カールガイドにおいてワイヤが並列する向き誘導する動作の一例を示す要部拡大側面図である。
【図7C】カールガイドにおいてワイヤが並列する向き誘導する動作の一例を示す要部拡大斜視図である。
【図7D】送出方向誘導部においてワイヤを誘導する動作の一例を示す要部断面図である。
【図8A】本実施の形態の鉄筋結束機の作用効果の一例を示すカールガイドの正面断面図である。
【図8B】従来の鉄筋結束機の課題の一例を示すカールガイドの正面断面図である。
【図9】第２の実施の形態の鉄筋結束機の要部構成の一例を示す正面図である。
【図10A】カールガイドの他の例を示す側面図である。
【図10B】カールガイドの他の例を示す上面図である。
【図10C】カールガイドの他の例を示す下面図である。
【図10D】カールガイドの他の例を示す正面図である。
【図11A】カールガイドの他の例を示す側面図である。
【図11B】カールガイドの他の例を示す上面図である。
【図11C】カールガイドの他の例を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の結束機の実施の形態としての鉄筋結束機の一例について説明する。
【0014】
＜第１の実施の形態の鉄筋結束機の構成例＞
図１Ａは、第１の実施の形態の鉄筋結束機の全体構成の一例を示す側面から見た内部構成図、図１Ｂは、第１の実施の形態の鉄筋結束機の全体構成の一例を示す正面から見た内部構成図、図１Ｃは、第１の実施の形態の鉄筋結束機の全体構成の一例を示す側面図、図１Ｄは、第１の実施の形態の鉄筋結束機の全体構成の一例を示す正面図である。
図１Ａは、第１の実施の形態の鉄筋結束機の全体構成の一例を示す側面から見た内部構成図、図１Ｂは、第１の実施の形態の鉄筋結束機の全体構成の一例を示す正面から見た内部構成図、図１Ｃは、第１の実施の形態の鉄筋結束機の全体構成の一例を示す側面図、図１Ｄは、第１の実施の形態の鉄筋結束機の全体構成の一例を示す正面図である。
【0015】
鉄筋結束機１Ａは、作業者が手に持って使用する形態であり、本体部１０Ａとハンドル部１１Ａを備える。また、鉄筋結束機１Ａは、ワイヤＷを矢印Ｆで示す正方向に送り、結束物である鉄筋Ｓの周囲に巻き回し、鉄筋Ｓの周囲に巻き回されたワイヤＷを、矢印Ｒで示す逆方向に送って鉄筋Ｓに巻き付けた後、ワイヤＷを捩じり、鉄筋ＳをワイヤＷで結束する。鉄筋結束機１Ａは、複数本のワイヤＷ、本例では、２本のワイヤＷで鉄筋Ｓを結束する。
【0016】
鉄筋結束機１Ａは、上述した機能を実現するため、ワイヤＷが収容されるマガジン２Ａと、２本のワイヤＷを、ワイヤＷの径方向に並べて送るワイヤ送り部３Ａと、ワイヤ送り部３Ａに送られる２本のワイヤＷをガイドするワイヤガイド４Ａを備える。また、鉄筋結束機１Ａは、ワイヤ送り部３Ａで送られる２本のワイヤＷを鉄筋Ｓの周囲に巻き回す環状送り経路を構成するカール形成部５Ａと、鉄筋Ｓに巻き付けられた２本のワイヤＷを切断する切断部６Ａを備える。更に、鉄筋結束機１Ａは、鉄筋Ｓに巻き付けられた２本のワイヤＷを捩じる結束部７Ａと、結束部７Ａを駆動する駆動部８Ａを備える。
【0017】
マガジン２Ａは収容部の一例で、長尺状のワイヤＷが繰り出し可能に巻かれたリール２０が回転、着脱可能に収納される。ワイヤＷは、塑性変形し得る金属線で構成されたワイヤ、金属線が樹脂で被覆されたワイヤ、あるいは撚り線のワイヤが使用される。
【0018】
リール２０は、ワイヤＷが巻かれる筒状のハブ部２１と、このハブ部２１の軸方向両端側に一体に設けられた一対のフランジ部２２、２３を備える。フランジ部２２、２３は、ハブ部２１よりも径の大きい略円板状の形状とされており、ハブ部２１と同心に設けられている。リール２０は、２本のワイヤＷがハブ部２１に巻かれ、リール２０から同時に２本のワイヤＷを引き出せるようになっている。
【0019】
鉄筋結束機１Ａは、図１Ｄに示すように、マガジン２Ａが、カール形成部５Ａの後述するカールガイド５０ａを基準として一の方向である矢印Ｃ１で示す第１の方向にオフセットして配置される。これにより、鉄筋結束機１Ａは、図１Ｂに示すように、ワイヤ送り部３Ａ及びワイヤガイド４Ａなどで規定されるワイヤＷの送り経路ＦＬに対し、ハブ部２１の軸方向に沿ったリール２０の軸線方向に沿って、矢印Ｃ１で示す第１の方向にオフセットした状態でリール２０が取り付けられる。
【0020】
ワイヤ送り部３Ａは、並列された２本のワイヤＷを挟持して送る一対の送りギア３０（３０Ｌ、３０Ｒ）を備える。ワイヤ送り部３Ａは、送りモータ３１の回転動作が一方の送りギア３０Ｌに伝達される。また、送りギア３０Ｌ及び送りギア３０Ｒの外周に設けられたギア部の噛み合いにより、一方の送りギア３０Ｌの回転動作が他方の送りギア３０Ｒに伝達される。これにより、一方の送りギア３０Ｌが駆動側、他方の送りギア３０Ｒが従動側となる。
【0021】
ワイヤ送り部３Ａは、２本のワイヤＷを、一対の送りギア３０Ｌ、３０Ｒが並ぶ方向に沿って並列させる。ワイヤ送り部３Ａは、一方のワイヤＷが一方の送りギア３０Ｌの溝部に接し、他方のワイヤＷが他方の送りギア３０Ｒの溝部に接し、一方のワイヤＷと他方のワイヤＷ同士が接する。これにより、ワイヤ送り部３Ａは、一対の送りギア３０（３０Ｌ、３０Ｒ）が回転することで、一方の送りギア３０Ｌと一方のワイヤＷとの間に生じる摩擦力、他方の送りギア３０Ｒと他方のワイヤＷとの間に生じる摩擦力、２本のワイヤＷの間で生じる摩擦力により、一対の送りギア３０（３０Ｌ、３０Ｒ）の間に挟持した２本のワイヤＷを、ワイヤＷの延在方向に沿って送る。
【0022】
また、ワイヤ送り部３Ａは、送りモータ３１の回転方向の正逆を切り替えることで、送りギア３０の回転方向が切り替えられ、ワイヤＷの送り方向の正逆が切り替えられる。
【0023】
ワイヤガイド４Ａは、正方向に送られるワイヤＷの送り方向に対し、送りギア３０の上流側及び下流側に配置される。ワイヤガイド４Ａは、進入してきた２本のワイヤＷを、一対の送りギア３０の並ぶ方向に沿って並列させて、一対の送りギア３０の間にガイドする。
【0024】
ワイヤガイド４Ａは、正方向に送られるワイヤＷの送り方向に対して上流側の開口が下流側の開口に比べて開口面積が大きく構成され、開口の内面の一部または全てがテーパ状となっている。これにより、マガジン２Ａに収納されたリール２０から引き出したワイヤＷをワイヤガイド４Ａに挿入する動作が容易に行える。
【0025】
カール形成部５Ａは、ワイヤ送り部３Ａで送られる２本のワイヤＷに巻き癖をつけると共に、２本のワイヤＷが並列する向きを規制するカールガイド５０ａと、カールガイド５０ａで巻き癖を付けられた２本のワイヤＷを結束部７Ａに誘導する誘導ガイド５０ｂを備える。カール形成部５Ａは、ワイヤ送り部３Ａで送られ、カールガイド５０ａを通過する２本のワイヤＷに巻き癖を付けることで、カールガイド５０ａから誘導ガイド５０ｂを通り結束部７Ａに到達する図１に二点鎖線で示すような環状送り経路Ｒｕを形成する。カールガイド５０ａは、２本のワイヤＷを環状送り経路Ｒｕの径方向に並ぶ状態で通過させる。また、カールガイド５０ａは、２本のワイヤＷが環状送り経路Ｒｕの径方向に並ぶ向きとなるように誘導する。
【0026】
切断部６Ａは、固定刃部６０と、固定刃部６０との協働でワイヤＷを切断する可動刃部６１と、結束部７Ａの動作を可動刃部６１に伝達する伝達機構６２を備える。切断部６Ａは、固定刃部６０を支点軸とした可動刃部６１の回転動作でワイヤＷを切断する。また、切断部６Ａは、２本のワイヤＷを切断する動作で、２本のワイヤＷが環状送り経路Ｒｕの径方向に並ぶ向きとなるように誘導する。
【0027】
結束部７Ａは、ワイヤＷが係止されるワイヤ係止体７０と、ワイヤ係止体７０を作動させるスリーブ７１を備える。駆動部８Ａは、モータ８０と、減速及びトルクの増幅を行う減速機８１を備える。
【0028】
鉄筋結束機１Ａは、環状送り経路Ｒｕを通り、ワイヤ係止体７０で係止されるワイヤＷの送り経路の終端に、ワイヤＷの先端が突き当てられる送り規制部９０を備える。また、鉄筋結束機１Ａは、上述したカール形成部５Ａのカールガイド５０ａと誘導ガイド５０ｂが、本体部１０Ａの前側の端部に設けられる。更に、鉄筋結束機１Ａは、鉄筋Ｓが突き当てられる突き当て部９１が、本体部１０Ａの前側の端部で、カールガイド５０ａと誘導ガイド５０ｂとの間に設けられる。また、鉄筋結束機１Ａは、カールガイド５０ａに掛かる力を本体部１０Ａで受ける凸部５６をカールガイド５０ａに備える。凸部５６は、カールガイド５０ａの本体部１０Ａ側に設けられ、本体部１０Ａの方向に突出して、本体部１０Ａと接触が可能な構成である。
【0029】
鉄筋結束機１Ａは、ハンドル部１１Ａが本体部１０Ａから下方向に延在する。更に、ハンドル部１１Ａの下部にバッテリ１５Ａが着脱可能に取り付けられる。また、鉄筋結束機１Ａは、マガジン２Ａがハンドル部１１Ａの前方に設けられる。鉄筋結束機１Ａは、上述したワイヤ送り部３Ａ、切断部６Ａ、結束部７Ａ，結束部７Ａを駆動する駆動部８Ａ等が本体部１０Ａに収納される。
【0030】
鉄筋結束機１Ａは、ハンドル部１１Ａの前側にトリガ１２Ａが設けられ、ハンドル部１１Ａの内部にスイッチ１３Ａが設けられる。鉄筋結束機１Ａは、トリガ１２Ａの操作で押されるスイッチ１３Ａの状態に応じて、制御部１００Ａが送りモータ３１及びモータ８０を制御する。
【0031】
＜本実施の形態の鉄筋結束機の要部構成例＞
・カールガイドの構成例
図２Ａは、カールガイドの一例を示す側面図、図２Ｂは、カールガイドの一例を示す上面図、図２Ｃは、カールガイドの一例を示す下面図、図２Ｄは、カールガイドの一例を示す正面図である。また、図２Ｅは、カールガイドの一部の部品を取り外した状態の一例を示す側面図である。更に、図２Ｆは、カールガイドの一例を示す正面断面図、図２Ｇは、カールガイドの並列向き誘導部の一例を示す要部斜視図である。また、図２Ｈは、カールガイドの送出方向誘導部の一例を示す断面図である。ここで、図２Ｆは、図２ＡのＡ－Ａ線断面図である。また、図２Ｈは、図２ＡのＢ－Ｂ線断面図である。次に、各図を参照して、カールガイド５０ａの一例について説明する。
・カールガイドの構成例
図２Ａは、カールガイドの一例を示す側面図、図２Ｂは、カールガイドの一例を示す上面図、図２Ｃは、カールガイドの一例を示す下面図、図２Ｄは、カールガイドの一例を示す正面図である。また、図２Ｅは、カールガイドの一部の部品を取り外した状態の一例を示す側面図である。更に、図２Ｆは、カールガイドの一例を示す正面断面図、図２Ｇは、カールガイドの並列向き誘導部の一例を示す要部斜視図である。また、図２Ｈは、カールガイドの送出方向誘導部の一例を示す断面図である。ここで、図２Ｆは、図２ＡのＡ－Ａ線断面図である。また、図２Ｈは、図２ＡのＢ－Ｂ線断面図である。次に、各図を参照して、カールガイド５０ａの一例について説明する。
【0032】
カールガイド５０ａは、図２Ｅ、図２Ｆに矢印Ｄ１で示す環状送り経路Ｒｕの径方向に対し、径方向の外周側に向かうワイヤＷの位置を、矢印Ｄ２で示す環状送り経路Ｒｕの周方向に沿って規制する第１のワイヤガイド５１を備える。
【0033】
また、カールガイド５０ａは、図２Ｃ、図２Ｄ、図２Ｆなどに矢印Ｄ３で示す環状送り経路Ｒｕの軸方向に対し、軸方向の一方の側に向かうワイヤＷの位置を、矢印Ｄ２で示す環状送り経路Ｒｕの周方向に沿って規制する第２のワイヤガイド５２を備える。
【0034】
さらに、カールガイド５０ａは、矢印Ｄ３で示す環状送り経路Ｒｕの軸方向に対し、軸方向の他方の側に向かうワイヤＷの位置を、矢印Ｄ２で示す環状送り経路Ｒｕの周方向に沿って規制する第３のワイヤガイド５３を備える。
【0035】
第１のワイヤガイド５１は、環状送り経路Ｒｕに沿うような凹状の曲面などで構成される第１のガイド面５１ａを備える。
【0036】
第２のワイヤガイド５２は、環状送り経路Ｒｕの軸方向に沿った第１のワイヤガイド５１の一方の側面に接する部位、及び、第１のワイヤガイド５１の第１のガイド面５１ａから、環状送り経路Ｒｕの径方向に沿って内側に突出する部位を備えた形状である。第２のワイヤガイド５２は、第１のワイヤガイド５１の第１のガイド面５１ａから、環状送り経路Ｒｕの径方向に沿って内側に突出する部位に第２のガイド面５２ａを備える。
【0037】
第３のワイヤガイド５３は、環状送り経路Ｒｕの軸方向に沿った第１のワイヤガイド５１の他方の側面に接する部位、及び、第１のワイヤガイド５１の第１のガイド面５１ａから、環状送り経路Ｒｕの径方向に沿って内側に突出する部位を備えた形状である。第３のワイヤガイド５３は、第１のワイヤガイド５１の第１のガイド面５１ａから、環状送り経路Ｒｕの径方向に沿って内側に突出する部位に第３のガイド面５３ａを備える。
【0038】
カールガイド５０ａは、第２のワイヤガイド５２と第３のワイヤガイド５３の間に第１のワイヤガイド５１が挟まれ、第２のワイヤガイド５２の第２のガイド面５２ａと、第３のワイヤガイド５３の第３のガイド面５３ａが、第１のワイヤガイド５１の厚さ分の間隔を開けて対向する。
【0039】
カールガイド５０ａは、２本のワイヤＷを矢印Ｄ１に示す環状送り経路Ｒｕの径方向に並ぶ状態で通過させる並列ガイド部５４を備える。また、カールガイド５０ａは、並列ガイド部５４を通過する２本のワイヤＷが、環状送り経路Ｒｕの径方向に並ぶ向きとなるように誘導する並列向き誘導部５５を備える。
【0040】
並列向き誘導部５５は、矢印Ｆで示す正方向に送られるワイヤＷの送り方向に対してマガジン２Ａの下流側で、カールガイド５０ａを通過する２本のワイヤが、環状送り経路Ｒｕの径方向に並ぶ向きとなるように誘導する。そこで、カールガイド５０ａは、矢印Ｆで示す正方向に送られるワイヤＷの送り方向に対して、上流側に並列向き誘導部５５が設けられ、下流側に並列ガイド部５４が設けられる。並列向き誘導部５５は、矢印Ｆで示す正方向に送られるワイヤＷの送り方向に対してワイヤ送り３Ａの下流側、好ましくはワイヤ係止体７０の下流側に設けられる。
【0041】
並列ガイド部５４は、第２のワイヤガイド５２の第２のガイド面５２ａと、第３のワイヤガイド５３の第３のガイド面５３ａが、環状送り経路Ｒｕの軸方向に沿った両側で対向し、第２のガイド面５２ａと第３のガイド面５３ａの間で、環状送り経路Ｒｕの径方向に沿った外周側が、第１のワイヤガイド５１の第１のガイド面５１ａで塞がれた溝部で構成される。
【0042】
カールガイド５０ａは、並列ガイド部５４が設けられる部位では、第２のワイヤガイド５２の第２のガイド面５２ａと、第３のワイヤガイド５３の第３のガイド面５３ａとの間隔（幅）Ｒａ１が、ワイヤＷの直径Ｒｂより長く、ワイヤＷの直径Ｒｂの２倍の長さより短く構成される。これにより、カールガイド５０ａは、ワイヤ送り部３Ａで送られる２本ワイヤＷを、並列ガイド部５４の第２のガイド面５２ａと第３のガイド面５３ａとの間隔Ｒａ１による規制により、環状送り経路Ｒｕの径方向に並ぶ状態で通過させる。なお、並列ガイド部５４の間隔Ｒａ１は、環状送り経路Ｒｕの径方向に対し、２本のワイヤＷが並列する方向が４５度以下となるように、ワイヤＷの直径Ｒｂの１．５倍以下であることが好ましい。
【0043】
並列向き誘導部５５は、環状送り経路Ｒｕの径方向に沿った外周側の面で構成される。カールガイド５０ａは、並列向き誘導部５５が設けられる部位では、第２のワイヤガイド５２の第２のガイド面５２ａと、第３のワイヤガイド５３の第３のガイド面５３ａとの間隔Ｒａ２が、ワイヤＷの直径Ｒｂの２倍の長さより長く構成される。これにより、カールガイド５０ａは、並列向き誘導部５５を通過する２本のワイヤＷが、環状送り経路Ｒｕの径方向に交差した向きに並列することが可能である。
【0044】
並列向き誘導部５５は、矢印Ｆで示す正方向に送られるワイヤＷの送り方向に対して、上流側の導入部５５ａが、ワイヤ送り部３Ａで送られる２本のワイヤＷが並列する向きに沿うように、環状送り経路Ｒｕの軸方向に沿う。また、並列向き誘導部５５は、並列ガイド部５４とつながる下流側の導出部５５ｂが、環状送り経路Ｒｕの径方向に沿った向きに近づく方向に、環状送り経路Ｒｕの径方向に対して所定の向きで傾斜する。
【0045】
本例では、並列向き誘導部５５は、導出部５５ｂにおいて、一方のワイヤＷが接する第１の誘導部５５ｂ１に対して、他方のワイヤＷが接する第２の誘導部５５ｂ２が、環状送り経路Ｒｕの径方向に沿った内周側に突出する。
【0046】
これにより、並列向き誘導部５５は、導入部５５ａから導出部５５ｂに向かって、環状送り経路Ｒｕの径方向に沿った向きに徐々に近づく方向に捩じれるように傾斜した面で構成される。
【0047】
したがって、カールガイド５０ａは、ワイヤ送り部３Ａで送られ、並列向き誘導部５５を通過する２本のワイヤＷのうち、第１の誘導部５５ｂ１に接する一方のワイヤＷに対して、第２の誘導部５５ｂ２に接する他方のワイヤＷを、環状送り経路Ｒｕの径方向に沿った内周側に向かうように誘導する。第１の誘導部５５ｂ１に接する一方のワイヤＷは、駆動側の送りギア３０Ｌに接し、第２の誘導部５５ｂ２に接する他方のワイヤＷは、従動側の送りギア３０Ｒに接する。
【0048】
そして、カールガイド５０ａは、環状送り経路Ｒｕの径方向に並ぶ向きとなるように並列向き誘導部５５で誘導した２本のワイヤＷを、並列ガイド部５４を通過させることにより、環状送り経路Ｒｕの径方向に並ぶ状態に保つ。
【0049】
カールガイド５０ａは、ワイヤＷを誘導ガイド５０ｂに誘導する送出方向誘導部５７を備える。送出方向誘導部５７は、正方向に送られるワイヤＷの送り方向に対し、カールガイド５０ａの先端側に設けられる。送出方向誘導部５７は、ワイヤ送り部３Ａで正方向にワイヤＷが送られることで、カールガイド５０ａから送出されるワイヤＷを、環状送り経路Ｒｕの軸方向に沿った矢印Ｃ１で示す第１の方向に誘導する。矢印Ｃ１で示す第１の方向は、マガジン２Ａ及びリール２０がオフセットされた方向である。
【0050】
カールガイド５０ａは、第２のワイヤガイド５２の先端側に第４のワイヤガイド５８が取り付けられる。第４のワイヤガイド５８は、カールガイド５０ａに対して着脱可能に構成されてもよい。
【0051】
送出方向誘導部５７は、第４のワイヤガイド５８により形成される第４のガイド面５８ａと、第３のワイヤガイド５３の第５のガイド面５３ｂを備える。送出方向誘導部５７は、第４のガイド面５８ａが、第２のワイヤガイド５２の第２のガイド面５２ａとつながり、第５のガイド面５３ｂが、第３のワイヤガイド５３の第３のガイド面５３ａとつながる。
【0052】
また、送出方向誘導部５７は、第４のワイヤガイド５８により形成される第６のガイド面５８ｂを備える。送出方向誘導部５７は、第６のガイド面５８ｂが、第１のワイヤガイド５１の第１のガイド面５１ａとつながる。
【0053】
これにより、送出方向誘導部５７は、環状送り経路Ｒｕの軸方向に沿った両側で、第４のガイド面５８ａと第５のガイド面５３ｂが所定の間隔を開けて対向し、第４のガイド面５８ａと第５のガイド面５３ｂの間で、環状送り経路Ｒｕの径方向に沿った外周側が、第６のガイド面５８ｂで塞がれた形状の溝部で構成される。
【0054】
送出方向誘導部５７は、カールガイド５０ａの先端側の一部を、矢印Ｃ１で示す第１の方向（マガジンオフセット方向）に傾斜させることで構成される。すなわち、送出方向誘導部５７は、並列ガイド部５４の環状送り経路Ｒｕの周方向に沿った延伸方向に対して、矢印Ｃ１で示す第１の方向に傾斜して、並列ガイド部５４からつながる。これにより、カールガイド５０ａは、並列ガイド部５４と送出方向誘導部５７がつながる部位で、並列ガイド部５４が環状送り経路Ｒｕの軸方向に沿って第１の方向に曲がる。送出方向誘導部５７の第１の方向への傾斜角度は、３°以上７°以下であることが好ましい。送出方向誘導部５７の傾斜角度は、並列ガイド部５４の延伸方向に対する角度であり、並列ガイド部５４の延伸方向は、カールガイド５０ａで規定される環状送り経路Ｒｕの周方向に沿った方向である。
【0055】
送出方向誘導部５７は、第４のガイド面５８ａと第５のガイド面５３ｂとの間隔（幅）が、並列ガイド部５４と同様に、ワイヤＷの直径Ｒｂより長く、ワイヤＷの直径Ｒｂの２倍の長さより短く構成される。
【0056】
・切断部の構成例
図３は、切断部の一例を示す斜視図である。次に、各図を参照して、切断部６Ａの一例について説明する。
図３は、切断部の一例を示す斜視図である。次に、各図を参照して、切断部６Ａの一例について説明する。
【0057】
固定刃部６０は、正方向に送られるワイヤＷの送り方向に対してワイヤガイド４Ａの下流側に設けられる。固定刃部６０は、可動刃部６１の回転の軸となる円柱形状の部材で構成され、円柱形状の径方向に貫通した開口６０ａを備える。開口６０ａは、ワイヤ送り部３Ａで送られる２本のワイヤＷが並列する向きに沿った長孔形状である。
【0058】
可動刃部６１は、固定刃部６０を軸に回転可能に支持され、固定刃部６０を軸とした回転動作で、固定刃部６０の開口６０ａの開口端に摺接する刃部６１ａを備える。
【0059】
固定刃部６０は、可動刃部６１の刃部６１ａが摺接する開口６０ａの開口端に第１の突き当て刃部６０ｂと第２の突き当て刃部６０ｃを備える。固定刃部６０は、２本のワイヤＷが並列する方向に沿って、第１の突き当て刃部６０ｂと、第２の突き当て刃部６０ｃが設けられる。
【0060】
固定刃部６０は、固定刃部６０を軸とした可動刃部６１の回転動作による矢印Ｅ１で示す刃部６１ａの移動方向に対し、手前側に第１の突き当て刃部６０ｂが設けられ、奥側に第２の突き当て刃部６０ｃが設けられる。固定刃部６０は、開口６０ａから第２の突き当て刃部６０ｃにつながる退避凹部６０ｄを備える。退避凹部６０ｄは、開口６０ａの内周面に、１本のワイヤＷが入る形状で、開口６０ａから第２の突き当て刃部６０ｃに向けて窪む凹状の部位を設けて構成される。固定刃部６０は、第１の突き当て刃部６０ｂに対し、第２の突き当て刃部６０ｃを後退させる量は、好ましくはワイヤWの直径の半分程度である。
【0061】
切断部６Ａは、固定刃部６０を軸とした可動刃部６１の回転動作により、可動刃部６１の刃部６１ａが、固定刃部６０の開口６０ａの開口端に摺接する。切断部６Ａは、開口６０ａに２本のワイヤＷが通された状態で、刃部６１ａが待機位置から矢印Ｅ１方向に移動すると、並列する２本のワイヤＷのうち、一方のワイヤＷは、刃部６１ａにより第１の突き当て刃部６０ｂに押し付けられ、せん断する力が加わることで切断される。また、並列する２本のワイヤＷのうち、他方のワイヤＷは、刃部６１ａに押されて曲がり、退避凹部６０ｄに入った後、刃部６１ａにより第２の突き当て刃部６０ｃに押し付けられ、せん断する力が加わることで切断される。
【0062】
【0063】
結束部７Ａは、ワイヤ係止体７０とスリーブ７１を作動させる回転軸７２を備える。回転軸７２は、減速機８１と一体的に回転可能、かつ、減速機８１に対して軸方向に移動可能とする構成を有した連結部７２ｂを介して減速機８１に連結される。連結部７２ｂは、回転軸７２を減速機８１に近づく方向である後方へ付勢し、軸方向に沿った回転軸７２の位置を規制するバネ７２ｃを備える。これにより、回転軸７２は、バネ７２ｃにより後方へ押される力を受けながら、減速機８１から離れる方向である前方へ移動可能に構成される。よって、回転軸７２は、軸方向に沿ってワイヤ係止体７０を前方に移動させる力が加わると、バネ７２ｃにより後方へ押される力を受けながら前方へ移動可能である。
【0064】
ワイヤ係止体７０は、回転軸７２と連結されるセンターフック７０Ｃと、センターフック７０Ｃに対して開閉する第１のサイドフック７０Ｒ及び第２のサイドフック７０Ｌを備える。
【0065】
センターフック７０Ｃは、回転軸７２の軸方向に沿った一方の端部である回転軸７２の先端に、回転軸７２に対して回転可能、かつ、回転軸７２と一体的に軸方向への移動が可能な構成を介して連結される。
【0066】
ワイヤ係止体７０は、軸７１ｂを支点とした回転動作で、第１のサイドフック７０Ｒの先端側がセンターフック７０Ｃに対して離接する方向に開閉する。また、第２のサイドフック７０Ｌの先端側がセンターフック７０Ｃに対して離接する方向に開閉する。
【0067】
スリーブ７１は、回転軸７２が挿入される空間の内周面に突出する図示しない凸部を有し、この凸部が、回転軸７２の外周に軸方向に沿って形成された送りネジ７２ａの溝部に入る。スリーブ７１は、回転可能及び軸方向に摺動可能に支持部材７６ｄに支持される。スリーブ７１は、回転軸７２が回転すると、図示しない凸部と回転軸７２の送りネジ７２ａの作用により、回転軸７２の軸方向に沿った方向に、回転軸７２の回転方向に応じて移動する。また、スリーブ７１は、回転軸７２と一体的に回転する。
【0068】
スリーブ７１は、第１のサイドフック７０Ｒ及び第２のサイドフック７０Ｌを開閉する開閉ピン７１ａを備える。
【0069】
開閉ピン７１ａは、第１のサイドフック７０Ｒ及び第２のサイドフック７０Ｌに設けられた開閉ガイド孔７３に挿入される。開閉ガイド孔７３は、スリーブ７１の移動方向に沿って延在し、スリーブ７１と連動して移動する開閉ピン７１ａの直線方向の動きを、軸７１ｂを支点とした第１のサイドフック７０Ｒ及び第２のサイドフック７０Ｌの回転による開閉動作に変換する形状を有する。
【0070】
ワイヤ係止体７０は、スリーブ７１が矢印Ａ２で示す下方向に移動することで、開閉ピン７１ａの軌跡と開閉ガイド孔７３の形状により、第１のサイドフック７０Ｒ及び第２のサイドフック７０Ｌが、軸７１ｂを支点とした回転動作でセンターフック７０Ｃから離れる方向に移動する。
【0071】
これにより、第１のサイドフック７０Ｒ及び第２のサイドフック７０Ｌが、センターフック７０Ｃに対して開き、第１のサイドフック７０Ｒとセンターフック７０Ｃとの間、第２のサイドフック７０Ｌとセンターフック７０Ｃとの間に、ワイヤＷが通る送り経路が形成される。
【0072】
第１のサイドフック７０Ｒ及び第２のサイドフック７０Ｌが、センターフック７０Ｃに対して開いた状態では、ワイヤ送り部３Ａで送られるワイヤＷは、センターフック７０Ｃと第１のサイドフック７０Ｒの間を通る。センターフック７０Ｃと第１のサイドフック７０Ｒとの間を通るワイヤＷは、カール形成部５Ａに誘導される。そして、カールガイド５０ａで巻き癖が付けられ、誘導ガイド５０ｂで結束部７Ａに誘導されたワイヤＷは、センターフック７０Ｃと第２のサイドフック７０Ｌの間を通る。
【0073】
ワイヤ係止体７０は、スリーブ７１が矢印Ａ１で示す上方向に移動することで、開閉ピン７１ａの軌跡と開閉ガイド孔７３の形状により、第１のサイドフック７０Ｒ及び第２のサイドフック７０Ｌが、軸７１ｂを支点とした回転動作でセンターフック７０Ｃに近づく方向に移動する。これにより、第１のサイドフック７０Ｒ及び第２のサイドフック７０Ｌが、センターフック７０Ｃに対して閉じる。
【0074】
第１のサイドフック７０Ｒがセンターフック７０Ｃに対して閉じると、第１のサイドフック７０Ｒとセンターフック７０Ｃとの間に挟まれたワイヤＷが、第１のサイドフック７０Ｒとセンターフック７０Ｃとの間を移動することが可能な形態で係止される。また、第２のサイドフック７０Ｌがセンターフック７０Ｃに対して閉じると、第２のサイドフック７０Ｌとセンターフック７０Ｃとの間に挟まれたワイヤＷが、第２のサイドフック７０Ｌとセンターフック７０Ｃとの間から抜けない形態で係止される。
【0075】
スリーブ７１は、ワイヤＷの一方の端部である先端側を所定の方向に押して曲げることで、ワイヤＷを所定の形状に成形する曲げ部７１ｃ１と、切断部６Ａで切断されたワイヤＷの他方の端部である終端側を所定の方向に押して曲げることで、ワイヤＷを所定の形状に成形する曲げ部７１ｃ２を備える。
【0076】
スリーブ７１は、矢印Ａ１で示す上方向に移動することで、センターフック７０Ｃと第２のサイドフック７０Ｌで係止されたワイヤＷの先端側を曲げ部７１ｃ１で押して、鉄筋Ｓ側へ曲げる。また、スリーブ７１は、矢印Ａ１で示す上方向に移動することで、センターフック７０Ｃと第１のサイドフック７０Ｒで係止され、切断部６Ａで切断されたワイヤＷの終端側を曲げ部７１ｃ２で押して、鉄筋Ｓ側へ曲げる。
【0077】
結束部７Ａは、回転軸７２の回転動作と連動したワイヤ係止体７０及びスリーブ７１の回転を規制する回転規制部７４を備える。結束部７Ａは、回転軸７２の軸方向に位置に沿ったスリーブ７１の位置に応じて、回転規制部７４が、回転軸７２の回転に連動したスリーブ７１の回転を規制し、回転軸７２の回転動作でスリーブ７１が矢印Ａ１方向及び矢印Ａ２方向に移動する。
【0078】
これにより、スリーブ７１が回転せずに矢印Ａ１方向に移動することで、第１のサイドフック７０Ｒ及び第２のサイドフック７０Ｌが、センターフック７０Ｃに対して閉じ、ワイヤＷが係止される。また、スリーブ７１が回転せずに矢印Ａ２方向に移動することで、第１のサイドフック７０Ｒ及び第２のサイドフック７０Ｌが、センターフック７０Ｃに対して開き、ワイヤＷの係止が解除される。
【0079】
結束部７Ａは、回転規制部７４によるスリーブ７１の回転の規制が解除されると、回転軸７２の回転に連動してスリーブ７１が回転する。
【0080】
これにより、ワイヤＷを係止した第１のサイドフック７０Ｒ及び第２のサイドフック７０Ｌとセンターフック７０Ｃが回転し、係止されたワイヤＷが捩じられる。
【0081】
＜第１の実施の形態の鉄筋結束機の動作例＞
図５Ａ、図５Ｂ、図５Ｃ及び図５Ｄは、切断部でワイヤを切断する動作の一例を示す斜視図である。次に、各図を参照して、鉄筋ＳをワイヤＷで結束する動作の過程で、切断部６ＡでワイヤＷを切断する動作について説明する。
図５Ａ、図５Ｂ、図５Ｃ及び図５Ｄは、切断部でワイヤを切断する動作の一例を示す斜視図である。次に、各図を参照して、鉄筋ＳをワイヤＷで結束する動作の過程で、切断部６ＡでワイヤＷを切断する動作について説明する。
【0082】
切断部６Ａは、図５Ａに示すように、可動刃部６１の刃部６１ａが待機位置に移動した状態で、ワイヤ送り部３Ａで送られた２本のワイヤＷが、固定刃部６０の開口６０ａに通される。開口６０ａに通される２本のワイヤＷが並列する向きは、図１Ａなどに示す環状送り経路Ｒｕの径方向に交差した軸方向に沿った向きである。
【0083】
切断部６Ａは、固定刃部６０の開口６０ａに２本のワイヤＷが通された状態で、固定刃部６０を軸とした可動刃部６１の回転動作により、可動刃部６１の刃部６１ａが待機位置から矢印Ｅ１方向に移動する。可動刃部６１の回転動作は、後述する結束部７Ａの動作と連動する。
【0084】
可動刃部６１の刃部６１ａが待機位置から矢印Ｅ１方向に移動すると、並列する２本のワイヤＷのうち、一方のワイヤＷ１は、刃部６１ａにより固定刃部６０の第１の突き当て刃部６０ｂに押し付けられる。また、他方のワイヤＷ２は、刃部６１ａに押されて刃部６１ａの移動方向に沿って曲がり、固定刃部６０の退避凹部６０ｄに入る。これにより、一方のワイヤＷ１にせん断する力が加わり、一方のワイヤＷ１の切断が、他方のワイヤＷ２に先行して開始される。
【0085】
固定刃部６０を軸とした可動刃部６１の回転動作により、刃部６１ａが矢印Ｅ１方向に移動することで、一方のワイヤＷ１の切断を開始した後、この一方のワイヤＷ１が所定の位置まで切断されると、他方のワイヤＷ２は、刃部６１ａにより第２の突き当て刃部６０ｃに押し付けられる。これにより、他方のワイヤＷ２の切断が開始される。
【0086】
固定刃部６０を軸とした可動刃部６１の回転動作により、刃部６１ａがさらに矢印Ｅ１方向に移動すると、先行して切断が開始された一方のワイヤＷ１の切断が完了する。そして、刃部６１ａが更に矢印Ｅ１方向に移動して、図５Ｂに示すように、切断完了位置まで移動すると、遅延して切断が開始された他方のワイヤＷ２の切断が完了する。
【0087】
ワイヤＷの切断が終了すると、固定刃部６０を軸とした可動刃部６１の回転動作により、刃部６１ａが矢印Ｅ２方向に移動して、図５Ｃに示すように、待機位置に戻る。切断部６Ａの上述した動作で切断された２本のワイヤＷは、一方のワイヤＷ１に対して他方のワイヤＷ２の先端側が、刃部６１ａの移動方向に沿って曲がっている。この他方のワイヤＷ２の先端側が曲がる方向は、図５Ｄに示すように、ワイヤＷが正方向に送られ、ワイヤＷの先端がカールガイド５０ａに到達したときに、環状送り経路Ｒｕの内周側を向く方向である。一方のワイヤＷ１は、駆動側の送りギア３０Ｌに接して送られ、他方のワイヤＷ２は、従動側の送りギア３０Ｒに接して送られる。
【0088】
図６Ａ、図６Ｂ、図６Ｃ、図６Ｄ、図６Ｅ、図６Ｆ、図６Ｇ及び図６Ｈは、第１の実施の形態の鉄筋結束機の動作の一例を示す要部側断面図である。図６Ａは、鉄筋Ｓが結束可能な位置に入れられたた状態を示す。図６Ｂは、ワイヤＷを正方向に送り、鉄筋Ｓに巻き回す動作を示す。図６Ｃは、鉄筋Ｓに巻き回されたワイヤＷを係止する動作を示す。図６Ｄは、ワイヤＷを逆方向に送り、鉄筋Ｓに巻き付ける動作を示す。図６Ｅは、鉄筋Ｓに巻き付けられたワイヤＷの余剰分を切断する動作を示す。図６Ｆは、鉄筋Ｓに巻き付けられたワイヤＷを曲げる動作を示す。図６Ｇ、図６Ｈは、鉄筋Ｓに巻き付けられたワイヤＷを捩じる動作を示す。
【0089】
次に、各図を参照して、第１の実施の形態の鉄筋結束機１Ａにより鉄筋ＳをワイヤＷで結束する動作について説明する。
【0090】
鉄筋結束機１Ａは、２本のワイヤＷが一対の送りギア３０（３０Ｌ、３０Ｒ）の間に挟持され、各ワイヤＷの先端が、送りギア３０（３０Ｌ、３０Ｒ）の挟持位置と、切断部６Ａの固定刃部６０との間に位置した状態が待機状態となる。また、鉄筋結束機１Ａは、待機状態では、スリーブ７１及びスリーブ７１に第１のサイドフック７０Ｒ、第２のサイドフック７０Ｌ、センターフック７０Ｃが取り付けられたワイヤ係止体７０が、矢印Ａ２で示す後方向に移動し、図４Ａに示すように、第１のサイドフック７０Ｒがセンターフック７０Ｃに対して開き、第２のサイドフック７０Ｌがセンターフック７０Ｃに対して開いた状態である。
【0091】
図６Ａに示すように、鉄筋Ｓがカール形成部５Ａのカールガイド５０ａと誘導ガイド５０ｂとの間に入れられ、トリガ１２Ａが操作されると、送りモータ３１が正回転方向に駆動され、図６Ｂに示すように、ワイヤ送り部３Ａで２本のワイヤＷが矢印Ｆで示す正方向に送られる。
【0092】
ワイヤ送り部３Ａで正方向に送られる２本のワイヤＷは、カールガイド５０ａより上流側では、ワイヤガイド４Ａによって、環状送り経路Ｒｕの軸方向に沿って並列された向きとなる。
【0093】
正方向に送られる２本のワイヤＷは、センターフック７０Ｃと第１のサイドフック７０Ｒの間を通り、カール形成部５Ａのカールガイド５０ａに送られる。２本のワイヤＷは、カールガイド５０ａを通ることで、環状送り経路Ｒｕに沿って鉄筋Ｓの周囲に巻き回される巻き癖が付けられる。また、２本のワイヤＷは、カールガイド５０ａを通ることで、環状送り経路Ｒｕの径方向に並ぶ向きとなるように誘導される。さらに、２本のワイヤＷは、環状送り経路Ｒｕの径方向に並ぶ状態でカールガイド５０ａを通過する。
【0094】
図７Ａは、カールガイドにおいてワイヤが並列する向き誘導する動作の一例を示す側面図、図７Ｂは、カールガイドにおいてワイヤが並列する向き誘導する動作の一例を示す要部拡大側面図、図７Ｃは、カールガイドにおいてワイヤが並列する向き誘導する動作の一例を示す要部拡大斜視図である。
【0095】
上述した切断部６Ａによる２本のワイヤＷの切断動作で、切断された２本のワイヤＷの先端側は、ワイヤＷの先端がカールガイド５０ａに到達したときに、駆動側の送りギア３０Ｌに接して送られる一方のワイヤＷ１に対して、従動側の送りギア３０Ｒに接して送られる他方のワイヤＷ２の先端側が、環状送り経路Ｒｕの内周側を向く方向に曲がっている。
【0096】
次回の結束動作で、ワイヤ送り部３Ａにより２本のワイヤＷが正方向に送られると、前回の結束動作で切断された２本のワイヤＷの先端側が、カールガイド５０ａの並列向き誘導部５５を通過する。ワイヤ送り部３Ａで送られ、並列向き誘導部５５を通過する２本のワイヤＷのうち、一方のワイヤＷ１は、並列向き誘導部５５の第１の誘導部５５ｂ１に接する。これに対し、他方のワイヤＷ２は、並列向き誘導部５５の第２の誘導部５５ｂ２に接する。
【0097】
並列向き誘導部５５は、導入部５５ａから導出部５５ｂに向かい、一方のワイヤＷ１が接する第１の誘導部５５ｂ１に対して、他方のワイヤＷ２が接する第２の誘導部５５ｂ２が、環状送り経路Ｒｕの径方向に沿った内周側に突出する方向に傾斜する。
【0098】
これにより、ワイヤ送り部３Ａで正方向に送られ、並列向き誘導部５５を通過する２本のワイヤＷのうち、第１の誘導部５５ｂ１に接する一方のワイヤＷ１に対して、第２の誘導部５５ｂ２に接する他方のワイヤＷ２が、環状送り経路Ｒｕの径方向に沿った内周側に向かうように誘導される。
【0099】
ワイヤ送り部３Ａで正方向に送られ、環状送り経路Ｒｕの径方向に並ぶ向きとなるように並列向き誘導部５５で誘導された２本のワイヤＷは、並列向き誘導部５５の導出部５５ｂから並列ガイド部５４に入る。
【0100】
並列ガイド部５４は、第２のワイヤガイド５２の第２のガイド面５２ａと、第３のワイヤガイド５３の第３のガイド面５３ａとの間隔Ｒａ１が、ワイヤＷの直径Ｒｂより長く、ワイヤＷの直径Ｒｂの２倍の長さより短く構成される。
【0101】
これにより、ワイヤ送り部３Ａで正方向に送られ、並列向き誘導部５５の導出部５５ｂから並列ガイド部５４に入る２本のワイヤＷは、並列ガイド部５４の第２のガイド面５２ａと第３のガイド面５３ａとの間隔Ｒａ１による規制により、図６Ｂに示すように、環状送り経路Ｒｕの径方向に並ぶ状態を保持して、並列ガイド部５４を通過する。
【0102】
図７Ｄは、送出方向誘導部においてワイヤを誘導する動作の一例を示す要部断面図である。ワイヤ送り部３Ａで正方向に送られ、並列ガイド部５４から送出方向誘導部５７を通る２本のワイヤＷは、図６Ｃに示すように、環状送り経路Ｒｕの径方向に並ぶ状態が保持される。
【0103】
また、並列ガイド部５４から送出方向誘導部５７を通る２本のワイヤＷは、カールガイド５０ａの出口部である送出方向誘導部５７の出口部５７ａから、矢印Ｃ１で示す第１の方向に向けて斜めに送出される。第１の方向は、送出方向誘導部５７が並列ガイド部５４に対して環状送り経路Ｒｕの軸方向に沿って曲がる方向であって、リール２０がオフセットされた方向である。なお、並列ガイド部５４から送出方向誘導部５７を通る２本のワイヤＷは、第１の方向に曲がる癖が付けられるようにしてもよい。例えば、並列ガイド部５４から送出方向誘導部５７を通る２本のワイヤＷは、図７Ｄに示すように、並列ガイド部５４に対して送出方向誘導部５７が曲がる第１の方向の外側に位置する第２のガイド面５２ａと、出口部５７ａにおける第４のガイド面５８ａ側の端面５８ｃに接しながら送られる。また、並列ガイド部５４から送出方向誘導部５７を通る２本のワイヤＷは、並列ガイド部５４に対して送出方向誘導部５７が曲がる第１の方向の内側に位置する第３のガイド面５３ａと第５のガイド面５３ｂとの屈曲部５８ｄに接しながら送られる。これにより、並列ガイド部５４から送出方向誘導部５７を通る２本のワイヤＷは、第１の方向に曲がる癖が付けられ、第１の方向に向けて斜めに送出される。
【0104】
ワイヤ送り部３Ａでリール２０から引き出されて正方向に送られるワイヤＷの先端は、リール２０がオフセットされた第１の方向の反対方向である矢印Ｃ２で示す第２の方向に向かう。これに対し、並列ガイド部５４から送出方向誘導部５７を通るワイヤＷは、第１の方向に向けて送出されることで、送出方向誘導部５７が設けられていない場合と比較して、先端が第２の方向に向かう量が抑制される。
【0105】
カールガイド５０ａで巻き癖が付けられ、環状送り経路Ｒｕの径方向に並ぶ向きで並列し、さらに、カールガイド５０ａの出口部５７ａから第１の方向に向けて送出された２本のワイヤＷは、誘導ガイド５０ｂに誘導され、更にワイヤ送り部３Ａで正方向に送られることで、誘導ガイド５０ｂによりセンターフック７０Ｃと第２のサイドフック７０Ｌの間に誘導される。そして、２本のワイヤＷは、先端が送り規制部９０に突き当てられるまで送られる。ワイヤＷの先端が送り規制部９０に突き当てられる位置まで送られると、送りモータ３１の駆動が停止される。
【0106】
ワイヤＷの正方向への送りを停止した後、モータ８０が正回転方向に駆動される。スリーブ７１は、ワイヤ係止体７０でワイヤＷを係止する動作域では、回転規制部７４により回転軸７２の回転に連動したスリーブ７１の回転が規制される。これにより、図６Ｃに示すように、スリーブ７１は、モータ８０の回転が直線移動に変換され、前方向である矢印Ａ１方向に移動する。
【0107】
スリーブ７１が前方向に移動すると、開閉ピン７１ａが開閉ガイド孔７３を通過する。これにより、第１のサイドフック７０Ｒは、軸７１ｂを支点とした回転動作で、センターフック７０Ｃに近づく方向に移動する。第１のサイドフック７０Ｒがセンターフック７０Ｃに対して閉じると、第１のサイドフック７０Ｒとセンターフック７０Ｃとの間に挟まれたワイヤＷが、第１のサイドフック７０Ｒとセンターフック７０Ｃとの間を移動することが可能な形態で係止される。
【0108】
また、第２のサイドフック７０Ｌは、軸７１ｂを支点とした回転動作で、センターフック７０Ｃに近づく方向に移動する。第２のサイドフック７０Ｌがセンターフック７０Ｃに対して閉じると、第２のサイドフック７０Ｌとセンターフック７０Ｃとの間に挟まれたワイヤＷが、第２のサイドフック７０Ｌとセンターフック７０Ｃとの間から抜けない形態で係止される。
【0109】
第１のサイドフック７０Ｒ及び第２のサイドフック７０Ｌが閉じる動作でワイヤＷを係止する位置までスリーブ７１を前進させた後、モータ８０の回転を一時停止し、送りモータ３１を逆回転方向に駆動する。
【0110】
これにより、一対の送りギア３０（３０Ｌ、３０Ｒ）が逆転し、図６Ｄに示すように、一対の送りギア３０（３０Ｌ、３０Ｒ）の間に挟持された２本のワイヤＷが、矢印Ｒで示す逆方向に送られる。２本のワイヤＷの先端側が、第２のサイドフック７０Ｌとセンターフック７０Ｃとの間から抜けない形態で係止されているので、ワイヤＷを逆方向に送る動作で、ワイヤＷは鉄筋Ｓに巻き付けられる。
【0111】
ワイヤＷを鉄筋Ｓに巻き付けて、送りモータ３１の逆回転方向の駆動を停止した後、モータ８０を正回転方向に駆動することで、スリーブ７１を更に矢印Ａ１で示す前方向に移動させる。図６Ｅに示すように、スリーブ７１が前方向に移動する動作が伝達機構６２で切断部６Ａに伝達されることで可動刃部６１が回転し、第１のサイドフック７０Ｒとセンターフック７０Ｃで係止されたワイヤＷが、固定刃部６０と可動刃部６１の動作で切断される。
【0112】
モータ８０を正回転方向に駆動することで、スリーブ７１を矢印Ａ１で示す前方向に移動させて２本のワイヤＷを切断するとほぼ同時に、曲げ部７１ｃ１、７１ｃ２が鉄筋Ｓに接近する方向へ移動する。これにより、センターフック７０Ｃと第１のサイドフック７０Ｒで係止された２本のワイヤＷの先端側を、曲げ部７１ｃ１で鉄筋Ｓ側へ押圧して、係止位置を支点として鉄筋Ｓ側へ曲げる。スリーブ７１が更に前方向に移動することで、第２のサイドフック７０Ｌとセンターフック７０Ｃとの間で係止されたワイヤＷが、曲げ部７１ｃ１で挟まれた状態で保持される。
【0113】
また、センターフック７０Ｃと第１のサイドフック７０Ｒで係止され、切断部６Ａで切断されたワイヤＷの終端側を、曲げ部７１ｃ２で鉄筋Ｓ側へ押圧して、係止位置を支点として鉄筋Ｓ側へ曲げる。スリーブ７１が更に前方向に移動することで、第１のサイドフック７０Ｒとセンターフックとの間で係止されたワイヤＷが、曲げ部７１ｃ２で挟まれた状態で保持される。ワイヤＷを折り曲げて成形する動作域では、回転規制部７４により回転軸７２の回転に連動したスリーブ７１の回転が規制され、スリーブ７１は非回転で前方向に移動する。
【0114】
２本のワイヤＷのそれぞれ先端側及び終端側を鉄筋Ｓ側に折り曲げた後、モータ８０が更に正回転方向に駆動されることで、スリーブ７１が更に前方向に移動する。スリーブ７１が所定の位置まで移動すると、回転規制部７４によるスリーブ７１の回転の規制が解除される。
【0115】
これにより、モータ８０が更に正回転方向に駆動されることで、回転軸７２と連動してスリーブ７１が回転し、図６Ｆに示すように、ワイヤ係止体７０で係止した２本のワイヤＷが捩じる動作が開始される。
【0116】
結束部７Ａは、スリーブ７１が回転してワイヤＷを捩じる動作域では、ワイヤ係止体７０で係止されたワイヤＷが捩じられることで、ワイヤ係止体７０が回転軸７２の軸方向に沿って前方に引っ張られる力が加わる。一方、回転軸７２は、バネ７２ｃにより後方へ押される力を受ける。これにより、ワイヤ係止体７０は、回転軸７２がバネ７２ｃにより後方へ押される力を受けながら前方へ移動し、図６Ｇに示すように、前方へ移動しながらワイヤＷを捩じる。
【0117】
結束部７Ａは、スリーブ７１が回転してワイヤＷを捩じる動作域では、回転軸７２と連動してワイヤ係止体７０が更に回転すると、ワイヤＷの捩じられた部位と鉄筋Ｓとの隙間が小さくなる方向である前方向にワイヤ係止体７０及び回転軸７２が移動しながら、ワイヤＷを更に捩じる。
【0118】
従って、図６Ｈに示すように、捩じられた２本のワイヤＷは、ワイヤＷの捩じられた部位と鉄筋Ｓとの隙間が小さくなり、鉄筋Ｓに沿うような形態で鉄筋Ｓに密着する。
【0119】
２本のワイヤＷを捩じることで、モータ８０に掛かる負荷が最大となったことが検知されると、モータ８０の正転が停止される。次に、モータ８０が逆回転方向に駆動されることで、回転軸７２が逆回転し、回転軸７２の逆回転に追従してスリーブ７１が逆回転すると、回転規制部７４により回転軸７２の回転に連動したスリーブ７１の回転が規制される。これにより、スリーブ７１は、後方向である矢印Ａ２方向に移動する。
【0120】
スリーブ７１が後方向に移動すると、曲げ部７１ｃ１、７１ｃ２がワイヤＷから離れ、曲げ部７１ｃ１、７１ｃ２によるワイヤＷの保持が解消される。また、スリーブ７１が後方向に移動すると、開閉ピン７１ａが開閉ガイド孔７３を通過する。これにより、第１のサイドフック７０Ｒは、軸７１ｂを支点とした回転動作で、センターフック７０Ｃから離れる方向に移動する。また、第２のサイドフック７０Ｌは、軸７１ｂを支点とした回転動作で、センターフック７０Ｃから離れる方向に移動する。これにより、鉄筋Ｓを結束した２本のワイヤＷがワイヤ係止体７０から抜ける。
【0121】
＜第１の実施の形態の鉄筋結束機の作用効果例＞
図８Ａは、本実施の形態の鉄筋結束機の作用効果の一例を示すカールガイドの正面断面図、図８Ｂは、従来の鉄筋結束機の課題の一例を示すカールガイドの正面断面図である。
図８Ａは、本実施の形態の鉄筋結束機の作用効果の一例を示すカールガイドの正面断面図、図８Ｂは、従来の鉄筋結束機の課題の一例を示すカールガイドの正面断面図である。
【0122】
鉄筋結束機１Ａは、リール２０が矢印Ｃ１で示す第１の方向にオフセットされて配置される。この第１の方向にオフセットされたリール２０から、ワイヤ送り部３Ａで送られ、カールガイド５０ａで巻き癖が付けられるワイヤＷは、リール２０がオフセットされた第１の方向の反対方向である矢印Ｃ２で示す第２の方向に向かう。
【0123】
このような構成の鉄筋結束機において、図８Ｂに示すように、２本のワイヤＷで鉄筋Ｓを結束する従来の鉄筋結束機では、カールガイド５０ａにおいて、第２のワイヤガイド５２の第２のガイド面５２ａと、第３のワイヤガイド５３の第３のガイド面５３ａとの間隔Ｒａ３（カールガイドの内幅と称す）を、ワイヤＷの直径Ｒｂの２倍の長さより長く構成していた。このような構成とすることで、２本のワイヤＷを、矢印Ｄ３で示す環状送り経路Ｒｕの軸方向に並ぶ向きで送ることができる。
【0124】
しかし、カールガイドの内幅がワイヤＷの直径Ｒｂの２倍の長さより長い構成では、それぞれのワイヤＷが、ワイヤＷの直径Ｒｂ分の長さより長く、環状送り経路Ｒｕの軸方向（左右方向と称す）に移動できることになる。カールガイド５０ａ内において、ワイヤＷの左右方向の移動可能量が大きくなると、ワイヤＷを正方向に送る動作によりカールガイド５０ａで巻き癖が付けられたワイヤＷの先端の位置が左右方向のずれる量が大きくなり、誘導ガイド５０ｂに入らない可能性がある。また、カールガイド５０ａ内で、一方のワイヤＷと他方のワイヤＷの左右が入れ替わる可能性があり、カールガイド５０ａ内で２本のワイヤＷが捩じれる可能性がある。
【0125】
これに対し、２本のワイヤＷで鉄筋Ｓを結束する本実施の形態の鉄筋結束機１Ａでは、カールガイド５０ａにおいて、第２のワイヤガイド５２の第２のガイド面５２ａと、第３のワイヤガイド５３の第３のガイド面５３ａとの間隔Ｒａ１を、ワイヤＷの直径Ｒｂより長く、ワイヤＷの直径Ｒｂの２倍の長さより短く構成した。このような構成とすることで、２本のワイヤＷを、矢印Ｄ１で示す環状送り経路Ｒｕの径方向に並ぶ向きで送ることができる。
【0126】
これにより、カールガイド５０ａ内において、ワイヤＷの左右方向の移動可能量が小さくなり、ワイヤＷを正方向に送る動作によりカールガイド５０ａで巻き癖が付けられたワイヤＷの先端の位置が左右方向のずれる量が少なくなって、誘導ガイド５０ｂに入らなくなることが抑制される。また、カールガイド５０ａ内で、一方のワイヤＷと他方のワイヤＷの左右が入れ替わる可能性がなく、カールガイド５０ａ内で２本のワイヤＷが捩じれることが抑制される。
【0127】
また、ワイヤ送り部３Ａで正方向に送られる２本のワイヤＷは、図１Ｄに示すように、カールガイド５０ａの送出方向誘導部５７から矢印Ｃ１で示す第１の方向に向けて送出される。これにより、リール２０が第１の方向にオフセットされることで、矢印Ｃ２で示す第２の方向に向かうワイヤＷの、並列ガイド部５４を基準とした変位量ＷＬが、ワイヤＷを第１の方向に向けて送出しない場合と比較して少なくできる。したがって、ワイヤＷを正方向に送る動作によりカールガイド５０ａで巻き癖が付けられたワイヤＷの先端の位置が、並列ガイド部５４を基準として第２の方向にずれる量が少なくなって、誘導ガイド５０ｂに入らなくなることが抑制される。
【0128】
送出方向誘導部５７の並列ガイド部５４の延伸方向に対する傾斜角度が３°未満であると、変位量ＷＬを少なくする効果が小さく、カールガイド５０ａで巻き癖が付けられたワイヤＷの先端の位置が、第２の方向にずれて誘導ガイド５０ｂに入りにくくなる。一方、送出方向誘導部５７の並列ガイド部５４の延伸方向に対する傾斜角度が７°を超えると、カールガイド５０ａで巻き癖が付けられたワイヤＷの先端の位置が、第１の方向にずれて誘導ガイド５０ｂに入りにくくなる。そこで、送出方向誘導部５７の並列ガイド部５４の延伸方向に対する傾斜角度が３°以上７°以下であることが好ましい。
【0129】
カールガイド５０ａにおいて、送出方向誘導部５７が曲がる方向の外側の部位は、ワイヤＷが接することで摩耗しやすい。そこで、送出方向誘導部５７が曲がる方向の外側に位置する第４のワイヤガイド５８を、カールガイド５０ａに対して着脱可能に構成すれば、第４のワイヤガイド５８が交換可能となる。
【0130】
＜第２の実施の形態の鉄筋結束機の構成例＞
図９は、第２の実施の形態の鉄筋結束機の要部構成の一例を示す正面図である。なお、第２の実施の形態の鉄筋結束機の全体構成は、第１の実施の形態の鉄筋結束機１Ａと同等である。
図９は、第２の実施の形態の鉄筋結束機の要部構成の一例を示す正面図である。なお、第２の実施の形態の鉄筋結束機の全体構成は、第１の実施の形態の鉄筋結束機１Ａと同等である。
【0131】
第２の実施の形態の鉄筋結束機１Ｂは、ワイヤＷが送出される出口部５７ａが、矢印Ｃ１で示す第１の方向に向かう方向へ傾斜したカールガイド５０ａ２を備える。
【0132】
カールガイド５０ａ２は、本体部１０Ａに対する取り付け部で、全体が所定の方向に傾斜して取り付けられる。
【0133】
カールガイド５０ａ２は、マガジン２Ａ及びマガジン２Ａに収容されたリール２０がオフセットされた方向に出口部５７ａが向かう方向に全体を傾斜させて、本体部１０Ａに取り付けられる。
【0134】
これにより、ワイヤ送り部３Ａで送られ、カールガイド５０ａ２を通るワイヤＷは、マガジン２Ａがオフセットされた方向に向けて出口部５７ａから送出される。よって、カールガイド５０ａ２の所定の方向への傾斜によって送出方向誘導部が構成される。
【0135】
＜第３の実施の形態の鉄筋結束機の構成例＞
図１０Ａは、カールガイドの他の例を示す側面図、図１０Ｂは、カールガイドの他の例を示す上面図、図１０Ｃは、カールガイドの他の例を示す下面図、図１０Ｄは、カールガイドの他の例を示す正面図であり、第３の実施の形態の鉄筋結束機の要部構成を示す。
図１０Ａは、カールガイドの他の例を示す側面図、図１０Ｂは、カールガイドの他の例を示す上面図、図１０Ｃは、カールガイドの他の例を示す下面図、図１０Ｄは、カールガイドの他の例を示す正面図であり、第３の実施の形態の鉄筋結束機の要部構成を示す。
【0136】
第３の実施の形態の鉄筋結束機において、カールガイド５０ａ３は、ワイヤＷが送出される出口部５７ａが、矢印Ｃ１で示す第１の方向に向かう方向へ傾斜した送出方向誘導部５７を備える。
【0137】
送出方向誘導部５７は、カールガイド５０ａ３の一部を、矢印Ｃ１で示す第１の方向に傾斜させることで構成される。送出方向誘導部５７は、マガジン２Ａ及びマガジン２Ａに収容されたリール２０がオフセットされた方向に出口部５７ａが向かう方向に、出口部５７ａと反対側の図１Ａなどに示す本体部１０Ａに近い側の曲げ部５０ａ４を起点に傾斜している。送出方向誘導部５７は、曲げ部５０ａ４で曲げられる方向が、環状ワイヤ経路Ｒｕの周方向及び周方向と直交する方向と異なる方向である。
【0138】
これにより、ワイヤ送り部３Ａで送られ、カールガイド５０ａ３を通るワイヤＷは、送出方向誘導部５７によりマガジン２Ａがオフセットされた方向に向けて出口部５７ａから送出される。よって、カールガイド５０ａ３の所定の方向への傾斜によって送出方向誘導部が構成される。
【0139】
＜第４の実施の形態の鉄筋結束機の構成例＞
図１１Ａは、カールガイドの他の例を示す側面図、図１１Ｂは、カールガイドの他の例を示す上面図、図１３Ｃは、カールガイドの他の例を示す正面図であり、第３の実施の形態の鉄筋結束機の要部構成を示す。
図１１Ａは、カールガイドの他の例を示す側面図、図１１Ｂは、カールガイドの他の例を示す上面図、図１３Ｃは、カールガイドの他の例を示す正面図であり、第３の実施の形態の鉄筋結束機の要部構成を示す。
【0140】
第３の実施の形態の鉄筋結束機において、カールガイド５０ａ５は、ワイヤＷが送出される出口部５７ａが、矢印Ｃ１で示す第１の方向に向かう方向へ傾斜した送出方向誘導部５７を備える。
【0141】
送出方向誘導部５７は、カールガイド５０ａ３の一部を、矢印Ｃ１で示す第１の方向に傾斜させることで構成される。送出方向誘導部５７は、は、マガジン２Ａ及びマガジン２Ａに収容されたリール２０がオフセットされた方向に出口部５７ａが向かう方向に、出口部５７ａと、出口部５７ａと反対側の図１Ａなどに示す本体部１０Ａとの中間付近の曲げ部５０ａ６を起点に傾斜している。送出方向誘導部５７は、は、曲げ部５０ａ６で曲げられる方向が、環状ワイヤ経路Ｒｕの周方向と直交する方向である。
【0142】
これにより、ワイヤ送り部３Ａで送られ、カールガイド５０ａ５を通るワイヤＷは、マガジン２Ａがオフセットされた方向に向けて出口部５７ａから送出される。よって、カールガイド５０ａ５の所定の方向への傾斜によって送出方向誘導部が構成される。
【0143】
なお、１本のワイヤＷで鉄筋Ｓを結束する構成であっても、マガジン２Ａ（リール２０）がオフセットされていることにより、ワイヤＷが矢印Ｃ２で示す第２の方向に向かうという課題が生じる。そして、送出方向誘導部５７を備えることで、第２の方向に向かうワイヤＷの、並列ガイド部５４を基準とした変位量ＷＬが、ワイヤＷを第１の方向に向けて送出しない場合と比較して少なくできる。これにより、上述した実施の形態では、複数本のワイヤＷで鉄筋Ｓを結束する例で説明したが、１本のワイヤＷで鉄筋Ｓを結束する構成であってもよく、ワイヤＷの本数は必須の構成では無い。
【符号の説明】
【0144】
１Ａ、１Ｂ・・・鉄筋結束機、１０Ａ・・・本体部、２Ａ・・・マガジン、２０・・・リール、３Ａ、３Ｂ・・・ワイヤ送り部、３０（３０Ｌ、３０Ｒ）・・・送りギア、３１・・・送りモータ、３２Ｌ、３２Ｒ・・・溝部、３３・・・ギア部、５Ａ・・・カール形成部、５０ａ、５０ａ２、５０ａ３、５０ａ５・・・カールガイド、５０ｂ・・・誘導ガイド、５１・・・第１のワイヤガイド、５１ａ・・・第１のガイド面、５２・・・第２のワイヤガイド、５２ａ・・・第２のガイド面、５３・・・第３のワイヤガイド、５３ａ・・・第３のガイド面、５３ｂ・・・第５のガイド面、５４・・・並列ガイド部、５５・・・並列向き誘導部、５５ａ・・・導入部、５５ｂ・・・導出部、５５ｂ１・・・第１の誘導部、５５ｂ２・・・第２の誘導部、５７・・・送出方向誘導部、５７ａ・・・出口部、５８・・・第４のワイヤガイド、５８ａ・・・第４のガイド面、５８ｂ・・・第６のガイド面、５８ｃ・・・端面、５８ｄ・・・屈曲部、６Ａ・・・切断部、６０・・・固定刃部、６０ａ・・・開口、６０ｂ・・・第１の突き当て刃部、６０ｃ・・・第２の突き当て刃部、６０ｄ・・・退避凹部、６１・・・可動刃部、６１ａ・・・刃部、７Ａ・・・結束部、７０・・・ワイヤ係止体、７０Ｒ・・・第１のサイドフック、７０Ｌ・・・第２のサイドフック、７０Ｃ・・・センターフック、７１・・・スリーブ、７２・・・回転軸、７２ａ・・・送りネジ、７２ｂ・・・連結部、７２ｃ・・・バネ、７４・・・回転規制部、８Ａ・・・駆動部、８０・・・モータ、８１・・・減速機、Ｗ・・・ワイヤ
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図2E】
【図2F】
【図2G】
【図2H】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図6E】
【図6F】
【図6G】
【図6H】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図7D】
【図8A】
【図8B】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図10D】
【図11A】
【図11B】
【図11C】