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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024063277
(43)【公開日】2024-05-13
(54)【発明の名称】メタン合成用触媒及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 27/232 20060101AFI20240502BHJP
   B01J 37/04 20060101ALI20240502BHJP
   B01J 37/08 20060101ALI20240502BHJP
【FI】
B01J27/232 M
B01J37/04 102
B01J37/08
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022171068
(22)【出願日】2022-10-26
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【弁理士】
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【弁理士】
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【弁理士】
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】米田 英昭
(72)【発明者】
【氏名】柳澤 和貴
(72)【発明者】
【氏名】牧 美里
(72)【発明者】
【氏名】毛里 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】吉田 潤平
(72)【発明者】
【氏名】椿 範立
【テーマコード(参考)】
4G169
【Fターム(参考)】
4G169AA02
4G169AA03
4G169AA08
4G169BA12A
4G169BA12B
4G169BB05A
4G169BB05B
4G169BB16A
4G169BB16B
4G169BC16A
4G169BC16B
4G169BC58A
4G169BC58B
4G169BC68A
4G169BC68B
4G169CC22
4G169DA06
4G169EC03Y
4G169EC06Y
4G169EC17Y
4G169EC25
4G169FB05
4G169FB27
4G169FB29
4G169FB30
4G169FC04
4G169FC08
4G169FC09
(57)【要約】
【解決手段】メタン合成用触媒(30)は、一般式が下記の式(1)で表される層状複水酸化物からなる。なお、式(1)中のM2+はNi2+であり、M3+はAl3+又はCr3+である。また、An-はCO3 2-である。さらに、xは0.19~0.34の範囲内(0.19≦x≦0.34)であり、yは0又は正の整数である。
[M2+ 1-x3+ x(OH)2x+[An- x/n・yH2O]x- …(1)
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式が下記の式(1)で表される層状複水酸化物からなり、メタンを得る合成反応を促進するメタン合成用触媒であって、
式(1)中のM2+及びAn-のそれぞれがNi2+及びCO3 2-であり、且つM3+がAl3+又はCr3+である、メタン合成用触媒。
[M2+ 1-x3+ x(OH)2x+[An- x/n・yH2O]x- …(1)
ただし、0.19≦x≦0.34であり、yは0又は正の整数である。
【請求項2】
請求項1記載のメタン合成用触媒において、一酸化炭素及び水素からメタンを得る合成反応を促進する、メタン合成用触媒。
【請求項3】
一般式が下記の式(1)で表される層状複水酸化物からなり、メタンを得る合成反応を促進するメタン合成用触媒の製造方法であって、
硝酸ニッケルと、硝酸クロム又は硝酸アルミニウムと、尿素とを水に溶解して混合溶液を得る混合工程と、
前記混合溶液を加熱及び加圧して生成物を得る加熱工程と、
前記生成物を洗浄する洗浄工程と、
洗浄された前記生成物を焼成して前記層状複水酸化物を得る焼成工程と、
を有するメタン合成用触媒の製造方法。
[M2+ 1-x3+ x(OH)2x+[An- x/n・yH2O]x- …(1)
ただし、式(1)中のM2+及びAn-のそれぞれはNi2+及びCO3 2-であり、且つM3+はAl3+又はCr3+である。0.19≦x≦0.34であり、yは0又は正の整数である。
【請求項4】
請求項3記載の製造方法において、前記洗浄工程で水を洗浄液として用い、且つ前記洗浄液が中性を示すまで前記生成物の洗浄を繰り返す、メタン合成用触媒の製造方法。
【請求項5】
請求項3記載の製造方法において、前記焼成工程での雰囲気を不活性雰囲気とするメタン合成用触媒の製造方法。
【請求項6】
請求項3記載の製造方法において、前記混合工程で、硝酸ニッケルと、硝酸クロム又は硝酸アルミニウムとを水に溶解した第1水溶液と、尿素を水に溶解した第2水溶液とを個別に調製し、前記第1水溶液と前記第2水溶液とを混合して前記混合溶液を得る、メタン合成用触媒の製造方法。
【請求項7】
請求項6記載の製造方法において、前記第1水溶液及び前記第2水溶液を調製するときに該第1水溶液及び該第2水溶液を個別に撹拌し、且つ前記混合溶液を調製するときに該混合溶液を撹拌する、メタン合成用触媒の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メタンを得る合成反応において用いられるメタン合成用触媒及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、気候変動の緩和又は影響軽減を目的とした取り組みが継続され、この実現に向けて二酸化炭素の削減に関する研究開発が行われている。その一環として、二酸化炭素及び水を電解して一酸化炭素及び水素を得、さらに、一酸化炭素及び水素からメタンを合成することが試みられている。一酸化炭素及び水素からメタンを得る化学反応式を、以下に示す。
CO+3H2→CH4+H2
【0003】
上記の化学反応は、触媒によって促進される。例えば、特許文献1には、MgAl24相及びMgNiO2相を含む触媒が提案されている。また、特許文献2には、Ni、Ru、Fe、Co、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Tc、Re及びこれらの合金を活性金属とし、且つAl、V、Ti、Zr、Si、Mg、Ceの少なくとも一つ以上からなる酸化物、窒化物又は炭化物を担体とする触媒が例示されている。特許文献1、2によれば、これらの触媒は、一酸化炭素を選択的にメタン化するCO選択メタン化触媒として機能する。
【0004】
以上とは別に、二酸化炭素からメタノールを合成することも試みられている。特許文献3には、この合成において触媒に用いるための層状複水酸化物を製造する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2015-502247号公報
【特許文献2】特開2017-1016号公報
【特許文献3】特表2020-510599号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
メタンを得るための触媒には、できる限り多量の一酸化炭素を反応に関与させる能力が求められる。ここで、一酸化炭素及び水素からメタンを得る反応において、二酸化炭素が副生成物として生成される。また、メタン以外の炭化水素化合物も副生成物として生成される。二酸化炭素及び炭化水素化合物は、メタンの純度を低下させる。このため、前記触媒には、メタンの合成反応を優先的に促進する能力も求められる。
【0007】
本発明は、上述した課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施形態によれば、一般式が下記の式(1)で表される層状複水酸化物からなり、メタンを得る合成反応を促進するメタン合成用触媒であって、式(1)中のM2+及びAn-のそれぞれがNi2+及びCO3 2-であり、且つM3+がAl3+又はCr3+である、メタン合成用触媒が提供される。
[M2+ 1-x3+ x(OH)2x+[An- x/n・yH2O]x- …(1)
ただし、0.19≦x≦0.34であり、yは0又は正の整数である。
【0009】
本発明の別の一実施形態によれば、一般式が下記の式(1)で表される層状複水酸化物からなり、メタンを得る合成反応を促進するメタン合成用触媒の製造方法であって、硝酸ニッケルと、硝酸クロム又は硝酸アルミニウムと、尿素とを水に溶解して混合溶液を得る混合工程と、前記混合溶液を加熱及び加圧して生成物を得る加熱工程と、前記生成物を洗浄する洗浄工程と、洗浄された前記生成物を焼成して前記層状複水酸化物を得る焼成工程と、を有するメタン合成用触媒の製造方法が提供される。
[M2+ 1-x3+ x(OH)2x+[An- x/n・yH2O]x- …(1)
ただし、式(1)中のM2+及びAn-のそれぞれはNi2+及びCO3 2-であり、且つM3+はAl3+又はCr3+である。0.19≦x≦0.34であり、yは0又は正の整数である。
【発明の効果】
【0010】
上記した層状複水酸化物からなるメタン合成用触媒は、触媒活性に優れる。すなわち、この触媒を用いることにより、短時間で多量の一酸化炭素をメタンに変化させることが可能である。しかも、メタン以外の副生成物(二酸化炭素又は有機化合物)が生成されることが抑制される。このように、この触媒は、多量の一酸化炭素を反応に関与させる能力に優れ、且つメタンの合成反応を優先的に促進する能力も優れる。
【0011】
また、この触媒は、優れた耐水性を示す。電解を経て生じた一酸化炭素及び水素は、水分を含む。また、一酸化炭素と水素とのメタン合成反応では、水が生成される。このように水分が比較的多量に存在する環境下であっても、この触媒は、触媒活性を維持する。このため、電解装置とメタン合成装置との間に設けられる除湿器を、省くことが可能である。
【0012】
これにより、メタン合成システムの簡素化と、設備投資の低廉化とを図ることができる。加えて、除湿器に設ける付帯設備等を省くことができるので、メタン合成システムを連続運転するときのランニングコストが低廉化する。
【0013】
さらに、上記の製造方法によれば、粒径が小さく且つ粒度分布幅が狭い層状複水酸化物(触媒)を容易に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、メタン合成システムの概略システム図である。
図2図2は、本実施形態に係るメタン合成用触媒を用いたメタン合成装置の要部縦断面図である。
図3図3は、層状複水酸化物の構造を示す模式図である。
図4図4は、本実施形態に係るメタン合成用触媒の製造方法の概略フローである。
図5図5は、実施例1、2及び比較例1~3の操作によって得られた生成物のX線回折プロファイルである。
図6図6は、実施例1、2及び比較例1~12と、触媒名との対比を示す図表である。
図7図7は、実施例1、2及び比較例4、5、8~12の各触媒におけるBET表面積、細孔容積及び細孔径を示す図表である。
図8図8は、実施例1、2及び比較例1~12の各触媒を用いてメタン合成を行ったときのCO転化率を示すグラフである。
図9図9は、実施例1、2及び比較例1~12の各触媒を用いてメタン合成を行ったときのメタン選択率を示すグラフである。
図10図10は、実施例1、2及び比較例1~12の各触媒を用いてメタン合成を行ったときのメタン生成率を示すグラフである。
図11図11は、実施例1、2及び比較例1~12の各触媒を用いてメタン合成を行ったときの、触媒の単位重量当たりのメタン生成量を示すグラフである。
図12図12は、実施例1、2及び比較例5、9の各触媒を用い、一酸化炭素及び水素の混合ガスの供給流量を変更してメタン合成を行ったときのCO転化率を示すグラフである。
図13図13は、実施例1、2及び比較例5、9の各触媒を用い、一酸化炭素及び水素の混合ガスの供給流量を変更してメタン合成を行ったときのメタン生成率を示すグラフである。
図14図14は、実施例1、2及び比較例5の各触媒を用い、一酸化炭素及び水素の混合ガスに水分を添加してメタン合成を行ったときのCO転化率を示すグラフである。
図15図15は、実施例1、2及び比較例5の各触媒を用い、一酸化炭素及び水素の混合ガスに水分を添加してメタン合成を行ったときのメタン生成率を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、二酸化炭素及び水からメタンを得るメタン合成システム10の概略システム図である。メタン合成システム10は、電解装置12と、除湿器14と、メタン合成装置16とを備える。後述するように、除湿器14を省くことも可能である。
【0016】
電解装置12は、二酸化炭素及び水を一緒に電気分解する装置である。二酸化炭素及び水としては、例えば、工場又はゴミ処理場等からの排出物を用いることができる。二酸化炭素として、大気中の二酸化炭素の回収物を用いてもよい。水蒸気を凝縮して水を得ることも可能である。
【0017】
二酸化炭素及び水の電気分解(共電解)により、一酸化炭素及び水素が生成される。水素源として水(液水)を用いているので、一酸化炭素及び水素は湿潤ガスである。除湿器14は、一酸化炭素及び水素から湿分を除去する。ただし、上記したように除湿器14を省いてもよい。
【0018】
メタン合成装置16は、一酸化炭素及び水素からメタンを合成するための反応装置である。メタン合成装置16の内部には、図2に示すように複数個のカラム管20が設けられている。各々のカラム管20には、粉末状のメタン合成用触媒30が充填されている。以下、メタン合成用触媒30を単に「触媒30」とも表記する。
【0019】
本実施形態において、触媒30は、層状複水酸化物(LDHs)からなる。すなわち、触媒30の一般式は、下記の式(1)で表される。
[M2+ 1-x3+ x(OH)2x+[An- x/n・yH2O]x- …(1)
【0020】
ここで、M2+は2価の金属イオンであり、M3+は3価の金属イオンである。本実施形態では、M2+はNi2+であり、M3+はAl3+又はCr3+である。An-はアニオンであり、本実施形態ではCO3 2-である。xは0.19~0.34の範囲内(0.19≦x≦0.34)であり、yは0又は正の整数である。すなわち、層状複水酸化物は、層間に水を含まない構造を採ることも可能である。また、脱水反応及び再水和反応が温度に応じて可逆的に起こるので、yは変数である。
【0021】
層状複水酸化物の構造を、図3に模式的に示す。層状複水酸化物は、M2+、M3+及びOH-を含む層を複数個有する。アニオン(An-)及び水は、2個の層の間である層間に介在する。このことから理解されるように、層状複水酸化物は層間化合物である。
【0022】
一般的なメタン合成用触媒は、担体に担持された状態でカラム管20に充填される。これに対し、本実施形態では、粉末状の触媒30を単体でカラム管20に充填することが可能である。すなわち、触媒30を担体に担持する必要は特にない。
【0023】
後述するように、触媒30を用いた場合、多量の一酸化炭素が高率でメタンに変化する。換言すれば、触媒30は、CO転化率に優れる。さらに、触媒30を用いた場合、メタン以外の生成物(副生成物)の生成量が少ない。すなわち、触媒30により、メタンが優先的に生成される。このように、触媒30はメタン選択率にも優れる。
【0024】
さらに、触媒30は、上記の式(1)から理解されるように、分子内に水を水和物として保持することができる。このため、触媒30は、水に対して化学的に安定である。すなわち、触媒30は、優れた耐水性を示す。従って、二酸化炭素及び水素を、湿分を含んだ湿潤ガスとしてメタン合成装置16に供給した場合であっても、カラム管20内の触媒30が劣化することが長期間に亘って抑制される。
【0025】
このような理由から、本実施形態によれば、メタン合成システム10から除湿器14を省くことが可能である。この場合、メタン合成システム10の構成が簡素化する。また、設備投資の低廉化を図ることができる。加えて、除湿器14に設ける付帯設備等を省くことができるので、メタン合成システム10を連続運転するときのランニングコストが低廉化する。
【0026】
以上に基づき、本実施形態によれば、メタンの製造コストの低廉化を図ることができる。
【0027】
次に、触媒30の製造方法につき、図4に示す概略フローを参照して説明する。この製造方法は、混合工程S10と、加熱工程S20と、洗浄工程S30と、焼成工程S40とを有する。洗浄工程S30と焼成工程S40との間では、乾燥工程S35が実施される。
【0028】
先ず、混合工程S10において、作業者は、第1水溶液及び第2水溶液を調製する。3価の金属イオンをCr3+とする場合、第1水溶液は、ニッケル源であるニッケル化合物と、クロム源であるクロム化合物とを同一の脱イオン水に溶解することで調製される。ここで、ニッケル化合物としては硝酸ニッケルが選択される。なお、硝酸ニッケルは水和物であってもよい。硝酸ニッケルの水和物の典型例は、六水和物である。硝酸ニッケルの六水和物の化学式を、以下に示す。
Ni(NO32・6H2
【0029】
また、クロム化合物としては硝酸クロムが選択される。硝酸クロムは水和物であってもよい。硝酸クロムの水和物の典型例は、九水和物である。硝酸クロムの九水和物の化学式を、以下に示す。
Cr(NO33・9H2
【0030】
上記の式(1)におけるxの値を0.25とする場合、硝酸ニッケル及び硝酸クロムは、ニッケルとクロムとのモル比がNi:Cr=3:1となる量で脱イオン水に添加される。
【0031】
3価の金属イオンをAl3+とする場合、第1水溶液は、ニッケル源であるニッケル化合物と、アルミニウム源であるアルミニウム化合物とを同一の脱イオン水に溶解することで調製される。ここで、アルミニウム化合物としては硝酸アルミニウムが選択される。硝酸アルミニウムは水和物であってもよい。硝酸アルミニウムの水和物の典型例は、九水和物である。硝酸アルミニウムの九水和物の化学式を、以下に示す。
Al(NO33・9H2
【0032】
上記の式(1)におけるxの値を0.25とする場合、硝酸ニッケル及び硝酸アルミニウムは、ニッケルとアルミニウムとのモル比がNi:Al=3:1となる量で脱イオン水に添加される。
【0033】
以上のようにして調製された第1水溶液は、好ましくは撹拌される。第1水溶液を撹拌する場合、該第1水溶液を加温する必要は特にない。また、撹拌は大気下で行うことができる。
【0034】
上記とは別に、作業者は、第2水溶液を調製する。第2水溶液は、炭酸源である炭酸化合物を脱イオン水に溶解することで調製される。ここで、炭酸化合物としては尿素が選択される。尿素の化学式を、以下に示す。
CO(NH22
【0035】
第2水溶液は、好ましくは撹拌される。第2水溶液を撹拌する場合、該第2水溶液を加温する必要は特にない。また、撹拌は大気下で行うことができる。
【0036】
その後、第1水溶液と第2水溶液とを混合する。これにより混合溶液が得られる。混合溶液を撹拌してもよい。この場合においても混合溶液を加温する必要は特にない。また、撹拌は大気下で行うことができる。
【0037】
次に、加熱工程S20が実施される。加熱工程S20では、混合工程S10で得られた混合溶液が加熱される。本実施形態では、加熱工程S20において、混合溶液に圧力が付与される。すなわち、混合溶液は、加圧されながら加熱される。具体的に、混合溶液は、例えば、オートクレーブに密封される。この状態で、オートクレーブが所定温度まで昇温される。このときの昇温速度は、緩やかであることが好ましい。好適な昇温速度は、例えば、1~5℃/分の範囲内である。
【0038】
オートクレーブ内の圧力は、例えば、5~8気圧程度となる。これにより混合溶液が加圧される。オートクレーブの温度は、所定温度に到達した後、該所定温度に保持される。好ましい所定温度は100~150℃の範囲内であり、この場合、好ましい保持時間は10~20時間の範囲内である。この間、混合溶液を撹拌する必要はない。
【0039】
圧力が付与され且つ高温となった混合溶液では、水熱反応が進行する。この水熱反応によって生成物が生成され、混合溶液中に沈殿する。混合溶液を撹拌していないので、水熱反応は静的に進行する。生成物(沈殿物)を含んだ混合溶液を濾過することにより、生成物が混合溶液から分離される。
【0040】
次に、洗浄工程S30が行われる。具体的に、作業者は、生成物及び洗浄液を遠心分離器の分離槽内に投入した後、前記分離槽を回転させる。洗浄液は、分離槽の外部に排出される。その一方で、生成物は分離槽の内壁に残留する。なお、洗浄液の典型例は、脱イオン水である。脱イオン水とエタノールとの混合物を洗浄液とすることも可能である。
【0041】
ここで、作業者は、分離槽から排出された洗浄液のpHを測定する。洗浄液のpHがアルカリ性である場合、作業者は、新たな洗浄液を用いて生成物を再洗浄する。作業者は、このサイクルを、分離槽から排出された洗浄液が中性を示すまで繰り返す。洗浄液が中性を示した時点で、洗浄工程S30(生成物の洗浄)を終了する。
【0042】
次に、好ましくは乾燥工程S35が行われる。具体的に、洗浄された生成物を、100℃以下の温度で乾燥する。乾燥温度が比較的低温であるので、生成物を大気下で乾燥したとしても、生成物が大気中の酸素と化合することが回避される。すなわち、乾燥工程において生成物が酸化することが回避される。乾燥は、例えば、10時間~1日程度継続される。この時点で、生成物は、層状複水酸化物の前駆体に変化している。
【0043】
次に、焼成工程S40が実施される。焼成工程S40では、乾燥工程までの工程を経ることで得られた前駆体が、焼成炉にて所定温度で焼成される。なお、焼成炉の昇温速度は、緩やかであることが好ましい。好適な昇温速度は、例えば、1~5℃/分の範囲内である。また、好適な焼成温度は、400~700℃の範囲内である。焼成温度は、例えば、3~10時間保持される。
【0044】
ここで、酸素が存在する雰囲気下で焼成を行うと、前駆体が酸化する懸念がある。この場合、層状複水酸化物が得られない。これを回避するため、焼成炉内を不活性雰囲気とすることが好ましい。すなわち、焼成炉内に不活性ガスを流通し、この状態で焼成を行う。不活性ガスの好適な具体例としては、窒素ガスが挙げられる。窒素ガスは安価であるので、層状複水酸化物(触媒30)の製造コストが高騰することが回避される。
【0045】
焼成により、前駆体が粉末状の層状複水酸化物に変化する。すなわち、触媒30が粉末として得られる。この時点において、層状複水酸化物の粒径は、共沈法で得られる層状複水酸化物の粒径よりも小さい。また、共沈法で得られる層状複水酸化物では粒径のバラツキが大きいが、上記のようにして得られた層状複水酸化物では、粒径が比較的揃っている。すなわち、粒度分布幅が狭い。
【0046】
必要に応じ、篩を用いて触媒30を分級する。この分級により、触媒30の粒径が一層揃えられる。
【実施例0047】
[実施例1]
2.18gのNi(NO32・6H2Oと、0.94gのAl(NO33・9H2Oとを60mlの脱イオン水に溶解して第1水溶液を調製した。この第1水溶液を、撹拌速度を300rpmとして室温で30分間撹拌した。その一方で、6gの尿素を60mlの脱イオン水に溶解して第2水溶液を調製した。その後、第2水溶液を、撹拌速度を300rpmとして室温で30分間撹拌した。さらに、全量の第1水溶液と、全量の第2水溶液とを混合し、撹拌速度を300rpmとして室温で5分間撹拌した。以上により、混合溶液を調製した。
【0048】
次に、ステンレス鋼製のオートクレーブに混合溶液を封入した。オートクレーブを介して、混合溶液を3℃/分の昇温速度で120℃まで昇温した。その後、オートクレーブを120℃で12時間保持した。以上の過程において、撹拌は行わなかった。
【0049】
冷却後に混合溶液を目視すると、混合溶液中に沈殿物が生じていることが確認された。次に、混合溶液を濾過し、溶媒と沈殿物とを分離した。沈殿物を200mlの脱イオン水で洗浄した後、沈殿物を含む洗浄水を遠心分離器の分離槽に投入した。分離槽を回転させることにより、沈殿物を洗浄水から分離した。分離槽から排出された洗浄水につき、pHを測定した。以上の洗浄作業を、分離槽から排出された洗浄水が中性を示すまで繰り返した。
【0050】
次に、空気中にて60~80℃で沈殿物を乾燥した。乾燥時間は12時間とした。これにより、層状複水酸化物の前駆体を得た。
【0051】
次に、前駆体を焼成炉に投入し、該焼成炉内をN2雰囲気として、2℃/分の昇温速度で500℃まで昇温した。その後、焼成炉を500℃で4時間保持した。これにより、前駆体の焼成処理を施した。得られた焼成物のX線回折プロファイルを図5に示す。図5において金属酸化物のピークが出現していないことから、Ni2+、Al3+及びCO3 2-を含む層状複水酸化物(LDHs)が得られたことが分かる。これを実施例1とする。得られた層状複水酸化物を、篩を用いて分級した。
【0052】
実施例1につき、層状複水酸化物の理論上の化学式を以下に示す。
[Ni2+ 0.75Al3+ 0.25(OH)20.25+[CO3 2- 0.25/20.25-
図6では、実施例1を「NiAl-LDHs」と表している。
【0053】
[実施例2]
1.0gのCr(NO33・9H2Oを用いたことを除いては実施例1と同様にして、Al3+の代わりにCr3+を含む層状複水酸化物を得た。すなわち、この層状複水酸化物は、Ni2+、Cr3+及びCO3 2-を含む。これを実施例2とする。実施例2につき、層状複水酸化物の理論上の化学式を以下に示す。
[Ni2+ 0.75Cr3+ 0.25(OH)20.25+[CO3 2- 0.25/20.25-
また、実施例2のLDHsのX線回折プロファイルを図5に併せて示す。図5から理解されるように、実施例2のX線回折プロファイルにおいても、金属酸化物のピークは出現していない。なお、図6では、実施例2を「NiCr-LDHs」と表している。
【0054】
[比較例1~3]
硝酸鉄、硝酸ガリウム又は硝酸セリウムのいずれかを用いたことを除いては実施例1と同様にして、Al3+の代わりにFe3+、Ga3+又はCe3+のいずれかを含む層状複水酸化物を得た。これらをそれぞれ比較例1~3とする。比較例1~3のLDHsのX線回折プロファイルを、図5に併せて示す。なお、図6では、比較例1~3を、「NiFe-LDHs」、「NiGa-LDHs」又は「NiCe-LDHs」とそれぞれ表している。
【0055】
[比較例4]
触媒としてNiを選定した。これを比較例4とする。
【0056】
[比較例5~8]
Niをシリカ系の担体に担持し、触媒とした。担持量は20重量(wt)%とし、且つ富士シリシア化学社製のQ3、Q10、Q15又はQ30を担体に用いた。なお、Q3、Q10、Q15又はQ30は商品名である。これらをそれぞれ比較例5~8とする。図6では、比較例5~8を、「20wt%Ni-Q3」、「20wt%Ni-Q10」、「20wt%Ni-Q15」又は「20wt%Ni-Q30」とそれぞれ表している。
【0057】
[比較例9~12]
γ-アルミナ、ジルコニア、セリア又はチタニアのいずれかを担体としたことを除いては比較例5~8と同様にNiを担体に担持し、触媒を得た。これらをそれぞれ比較例9~12とする。図6では、比較例9~12を、「20wt%Ni-γAl23」、「20wt%Ni-ZrO2」、「20wt%Ni-CeO2」又は「20wt%Ni-TiO2」とそれぞれ表している。
【0058】
図6に、実施例1、2及び比較例1~12と、触媒名との対比を示す。
【0059】
[細孔に関するキャラクタリゼーション]
実施例1、実施例2、比較例4、比較例5、比較例8、比較例9、比較例10、比較例11及び比較例12の各触媒につき、BET表面積を測定した。また、細孔容積及び細孔径を評価した。結果を、図7に併せて示す。
【0060】
[CO転化率]
実施例1、2又は比較例1~12の触媒の各々をカラム管に充填し、メタン合成装置を組み立てた。メタン合成装置の温度を300℃に上昇させた後、カラム管に一酸化炭素及び水素の混合ガスを導入した。混合ガスの流量は、20ミリリットル/分とした。その後、カラム管から排出された排出ガスをサンプリングし、排出ガスにつき、ガスクロマトグラフを用いて分析した。具体的に、排出ガスに含まれる水分以外の化学物質の成分と、各成分の組成比とを求めた。
【0061】
その結果、実施例1の触媒又は実施例2の触媒を用いた場合では、排出ガスにCOが含まれていないことが認められた。すなわち、これらの場合、カラム管に導入されたCOの全量が、他の化学物質に変化した。換言すれば、実施例1の触媒又は実施例2の触媒におけるCO転化率は、双方とも100%であった。
【0062】
比較例1~12の触媒についても同様に、排出ガスに一酸化炭素が含まれるか否かを調べ、排出ガスに一酸化炭素が含まれる場合には組成比を求めた。カラム管への一酸化炭素の供給量と、排出ガスに含まれる一酸化炭素の量とに基づき、CO転化率を求めた。結果を、グラフとして図8に示す。図8には、実施例1及び実施例2におけるCO転化率も併せて示している。図8を参照し、実施例1の触媒及び実施例2の触媒が、優れたCO転化率を示すことが分かる。
【0063】
[メタン選択率]
上記の分析において、排出ガスの全量に対するメタン量から、メタンの組成比を求めた。この組成比を、メタン選択率として図9に示す。メタン選択率の値が高いほど、副生成物の生成量が少ないことを表す。すなわち、メタンの生成反応が、他の化学物質の生成反応よりも優先的に進行する。実施例1の触媒及び実施例2の触媒におけるメタン選択率は99.8%であり、比較例1~12の各触媒よりも高い値を示した。
【0064】
[メタン生成率]
上記のCO転化率及びメタン選択率を用い、下記の計算式に基づいてメタン生成率を求めた。
メタン生成率=CO転化率×メタン選択率×0.01
実施例1、2及び比較例1~12の各触媒におけるメタン生成率を、図10に示す。図10を参照することにより、実施例1の触媒及び実施例2の触媒を用いた場合、カラム管に導入された一酸化炭素の略全量がメタンに変化することが分かる。これに対し、比較例1~4、6~12の各触媒を用いた場合、メタン生成率は85%以下であった。なお、比較例5の触媒を用いた場合のメタン生成率は、93%であった。
【0065】
また、上記のメタン合成において生成されたメタンの量を、触媒の質量及び時間で割ることで、触媒の単位重量当たり且つ単位時間当たりのメタン生成量を算出した。すなわち、換算によって、1kgの触媒を用いて1時間当たりに得られたメタン生成量を求めた。結果を、図11に示す。
【0066】
以上の結果から、実施例1の触媒(NiAl-LDHs)又は実施例2の触媒(NiCr-LDHs)を用いることにより、一酸化炭素が高率でメタンに変化することが明らかである。従って、実施例1の触媒及び実施例2の触媒を用いることで、一酸化炭素の源である二酸化炭素を有効に消費することができる。
【0067】
[触媒のCO処理能力の評価]
実施例1及び実施例2の各触媒と、比較例5及び比較例9の各触媒とにつき、カラム管に大流量の混合ガスを導入した場合のCO処理能力を調べた。ここで、比較例5の触媒(20wt%Ni-Q3)及び比較例9の触媒(20wt%Ni-γAl23)は、比較的高いメタン生成率を示した触媒である。
【0068】
カラム管に導入する一酸化炭素及び水素の流量を、40ミリリットル/分又は200ミリリットル/分に変更した。それぞれの場合におけるCO転化率及びメタン生成率を、分析結果に基づいて算出した。CO転化率の変化を図12に示し、メタン生成率の変化を図13に示す。図12及び図13から、比較例5の触媒及び比較例9の触媒では、混合ガスを大流量で供給した場合、CO処理能力が低下することが分かる。すなわち、排出ガス中に未反応の一酸化炭素が混在する。
【0069】
これに対し、実施例1の触媒及び実施例2の触媒を用いた場合、混合ガスを大流量で供給する場合においても、一酸化炭素が高率でメタンに変化する。すなわち、実施例1の触媒及び実施例2の触媒によれば、多量の一酸化炭素を短時間で処理することが可能である。
【0070】
[触媒の耐水性の評価]
実施例1及び実施例2の各触媒と、比較例5の触媒とを用い、水分を添加した混合ガスをカラム管に導入した。水分の添加割合を変更し、CO転化率の変化及びメタン生成率の変化を求めた。水分の添加割合に対するCO転化率の変化を図14に示し、水分の添加割合に対するメタン生成率の変化を図15に示す。
【0071】
図14及び図15から、比較例5の触媒では、水分の添加割合が多くなるにつれてCO転化率及びメタン生成率が大きく低下することが分かる。これに対し、実施例1の触媒及び実施例2の触媒を用いた場合、水分の添加割合が30%を超えた場合であっても、十分に大きなCO転化率及びメタン生成率を示す。
【0072】
このことから、実施例1の触媒及び実施例2の触媒の存在下では、一酸化炭素又は水素が比較的多量の水分を含んでいる場合であっても、一酸化炭素が高率でメタンに変化することが分かる。すなわち、実施例1の触媒及び実施例2の触媒は、優れた耐水性を示す。
【0073】
このため、実施例1の触媒又は実施例2の触媒を用いたメタン合成システムでは、電解装置とメタン合成装置との間に除湿器を設けることが不要となる。この場合、メタン合成システムの簡素化を図り、且つ設備投資の低廉化を図ることができる。また、除湿器に設ける付帯設備等を省くことができるので、メタン合成システムを連続運転するときのランニングコストの低廉化を図ることもできる。
【0074】
以上説明したように、本実施形態は、一般式が下記の式(1)で表される層状複水酸化物からなり、メタンを得る合成反応を促進するメタン合成用触媒であって、式(1)中のM2+及びAn-のそれぞれがNi2+及びCO3 2-であり、且つM3+がAl3+又はCr3+である、メタン合成用触媒(30)を開示する。
[M2+ 1-x3+ x(OH)2x+[An- x/n・yH2O]x- …(1)
ただし、0.19≦x≦0.34であり、yは0又は正の整数である。
【0075】
典型的には、メタン合成用触媒は、一酸化炭素及び水素からメタンを得る合成反応を促進する。すなわち、本実施形態は、一酸化炭素及び水素からメタンを得る合成反応を促進する、メタン合成用触媒を開示する。
【0076】
2価の金属イオンとしてNi2+を含み、3価の金属イオンとしてCr3+又はAl3+を含み、且つアニオンとしてCO3 2-を含む層状複水酸化物からなるメタン合成用触媒は、触媒活性に優れる。すなわち、この触媒を用いることにより、短時間で多量の一酸化炭素をメタンに変化させることが可能である。しかも、メタン以外の副生成物(二酸化炭素又は有機化合物)が生成されることが抑制される。このように、この触媒は、多量の一酸化炭素を反応に関与させる能力に優れ、且つメタンの合成反応を優先的に促進する能力も優れる。さらに、この触媒は、耐水性にも優れる。
【0077】
加えて、この触媒を担体に担持する必要は特にない。このため、担体を選定することが不要となり、担体に触媒を担持するための操作も不要となる。
【0078】
本実施形態は、一般式が下記の式(1)で表される層状複水酸化物からなり、メタンを得る合成反応を促進するメタン合成用触媒の製造方法であって、硝酸ニッケルと、硝酸クロム又は硝酸アルミニウムと、尿素とを水に溶解して混合溶液を得る混合工程(S10)と、前記混合溶液を加熱及び加圧して生成物を得る加熱工程(S20)と、前記生成物を洗浄する洗浄工程(S30)と、洗浄された前記生成物を焼成して前記層状複水酸化物を得る焼成工程(S40)と、を有するメタン合成用触媒の製造方法を開示する。
[M2+ 1-x3+ x(OH)2x+[An- x/n・yH2O]x- …(1)
ただし、式(1)中のM2+及びAn-のそれぞれはNi2+及びCO3 2-であり、且つM3+はAl3+又はCr3+である。0.19≦x≦0.34であり、yは0又は正の整数である。
【0079】
層状複水酸化物は、一般的には共沈法によって得られる。この場合、粉末状の層状複水酸化物が得られるものの、粒径が大きく、しかも粒径が揃っていないので粒度分布幅が広い。これに対し、上記した製造方法では、加熱工程において水熱反応が進行する。その結果、粒径が小さく、且つ粒度分布幅が比較的狭い層状複水酸化物が得られる。上記したように、この層状複水酸化物を用いることにより、一酸化炭素を高率でメタンに変化させることができる。
【0080】
本実施形態は、前記洗浄工程で水を洗浄液として用い、且つ前記洗浄液が中性を示すまで前記生成物の洗浄を繰り返す、メタン合成用触媒の製造方法を開示する。
【0081】
これにより、未反応の尿素等を生成物から除去することができる。
【0082】
本実施形態は、前記焼成工程での雰囲気を不活性雰囲気とするメタン合成用触媒の製造方法を開示する。
【0083】
これにより、層状複水酸化物が焼成中に酸化することが回避される。
【0084】
本実施形態は、前記混合工程で、硝酸ニッケルと、硝酸クロム又は硝酸アルミニウムとを水に溶解した第1水溶液と、尿素を水に溶解した第2水溶液とを個別に調製し、前記第1水溶液と前記第2水溶液とを混合して前記混合溶液を得る、メタン合成用触媒の製造方法を開示する。
【0085】
この場合、2価の金属イオン(Ni2+)のモル濃度と、3価の金属イオン(Cr3+又はAl3+)のモル濃度とを調整することが容易である。また、両金属イオンのモル濃度と、尿素から得られるアニオン(CO3 2-)のモル濃度とを調整することも容易である。従って、Ni2+のモル比と、Cr3+又はAl3+のモル比と、CO3 2-のモル比とが所望のモル比に調整された層状複水酸化物を得ることが可能である。
【0086】
本実施形態は、前記第1水溶液及び前記第2水溶液を調製するときに該第1水溶液及び該第2水溶液を個別に撹拌し、且つ前記混合溶液を調製するときに該混合溶液を撹拌する、メタン合成用触媒の製造方法を開示する。
【0087】
撹拌により、硝酸ニッケル、硝酸クロム又は硝酸アルミニウムが水に十分に溶解される。また、第1水溶液において、Ni2+と、Cr3+又はAl3+とが略均一に分布する。尿素及びCO3 2-についても同様である。従って、加熱工程において、良好な収率で生成物を得ることができる。
【0088】
なお、本発明は、上述した開示に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得る。
【符号の説明】
【0089】
10…メタン合成システム 12…電解装置
14…除湿器 16…メタン合成装置
20…カラム管 30…メタン合成用触媒
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15