(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024006329
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】焙煎器具及びこれに使用する焙煎目的物を収容した金属缶
(51)【国際特許分類】
A23N 12/10 20060101AFI20240110BHJP
【FI】
A23N12/10 Z
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022107118
(22)【出願日】2022-07-01
(71)【出願人】
【識別番号】503399492
【氏名又は名称】株式会社富士珈機
(74)【復代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】弁理士法人あーく事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100087815
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 昭二
(72)【発明者】
【氏名】福島 達男
【テーマコード(参考)】
4B061
【Fターム(参考)】
4B061AA03
4B061BA09
4B061CD01
4B061CD07
4B061CD12
4B061CD13
(57)【要約】
【課題】缶入りのコーヒー生豆を利用することにより、必要な時に使い切り分だけの生豆を、移し替えなどの手間をかけることなく、焙煎することのできる簡易焙煎器具を提供する。
【解決手段】コーヒーの生豆(B)を収容した金属缶(10)と、前記金属缶(10)を熱源の上で回転可能に保持する保持具(30)とを有する焙煎器具である。前記金属缶(10)は、外筒と内筒の二重構造の円筒形であり、前記内筒はステンレス製であることが好ましい。前記内筒には少なくとも2本の攪拌翼(18)を設けることが好ましい。前記金属缶(10)の一側面には開蓋手段(19)を設けることが好ましい。前記金属缶(10)のもう一方の一側面には通気孔を設けることが好ましい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
焙煎目的物(B)を収容した金属缶(10,10A)と、前記金属缶(10,10A)を熱源(H)の上で回転可能に保持する保持具(30,30A)とを有することを特徴とする焙煎器具。
【請求項2】
前記金属缶(10,10A)は、外筒(11,11A)と内筒(12,12A)の二重構造の円筒形であり、前記内筒(12,12A)は金属製である請求項1記載の焙煎器具。
【請求項3】
前記内筒(12,12A)に攪拌翼(18,18A)が設けられている請求項2記載の焙煎器具。
【請求項4】
前記金属缶(10,10A)の一側面に、開蓋手段(19,19A)が設けられている請求項1記載の焙煎器具。
【請求項5】
前記金属缶(10,10A)の一側面に、通気孔(20)又は貫通孔(23)が設けられている請求項1記載の焙煎器具。
【請求項6】
前記金属缶(10,10A)を熱源の上で回転可能に保持する保持具(30,30A)が、前記金属缶(10,10A)を横方向平行又は斜めに維持するためのグリップ機構(31,31A)と、金属缶(10,10A)を回転させる回転付与機構(33,33A)と、前記金属缶(10,10A)を熱源の上に維持するフレーム(35,35A)を有する請求項1記載の焙煎器具。
【請求項7】
前記グリップ機構(31,31A)は、前記金属缶(10,10A)の一側面のみを保持する片持ち方式である請求項6記載の焙煎器具。
【請求項8】
前記グリップ機構(31,31A)は、前記金属缶(10,10A)の両側面を保持する両持ち方式である請求項6記載の焙煎器具。
【請求項9】
前記金属缶(10,10A)を熱源の上に維持する前記フレーム(35,35A)は、高さ調節が可能である請求項6記載の焙煎器具。
【請求項10】
請求項1記載の焙煎器具において使用する、まだ焙煎していない焙煎目的物(B)を収容した金属缶(10,10A)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焙煎目的物を家庭内や屋外で手軽且つ安価に焙煎できるようにした簡易な焙煎器具に関する。また、この焙煎器具において使用する焙煎目的物を収容した金属缶にも関する。ここで「焙煎目的物」とは、焙煎前のコーヒー豆、茶葉(緑茶・日本茶、等)、穀物(玄米、大麦、ピーナッツ、アーモンド、等)を含む。以下の説明では便宜上、コーヒー豆で代表させている。
【背景技術】
【0002】
コーヒー生豆の焙煎は通常、コーヒー飲料メーカーやコーヒー専門店などの専門業者が行っている。コーヒーの香りや味わいを重視する人たちであっても自ら焙煎する人は少なく、焙煎済みのコーヒー豆を専門業者から購入して、自分で挽き、サイホンやドリップなどを使ってコーヒーを淹れていることが多い。
【0003】
家庭内でも焙煎できるようにした小型焙煎器が市販されているが、焙煎にはある程度の知識と技術が必要であるとともに、器具の維持管理に時間と手間がかかる。一般の人たちでも手軽且つ安価に焙煎できる簡易な器具があれば、コーヒーの風味を楽しむ人が増え、焙煎の価値がよく知られるようになると思われる。
【0004】
この問題を解決するため、特開2002-125646や実用新案登録第3111262号では、小型容器の取っ手を手で持って熱源にかざすような簡単な構造の焙煎器具を提案しているが、普及しているとはいいがたい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002-125646
【特許文献2】実用新案登録第3111262号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
普及を妨げているのは、袋入りコーヒーの生豆を購入後、袋から取り出し、小型焙煎容器に移し替えなければならず、また、いったん開封した生豆の保存に難があるためであると思われる。
【0007】
上記問題を解決するため、本発明は、密閉された缶入りのコーヒー生豆を利用することにより、必要な時に使い切り分だけの生豆を、移し替えなどの手間をかけることなく、焙煎することのできる簡易な焙煎器具を提供することを目的とするものである。また、この焙煎器具において使用する焙煎目的物を収容した金属缶を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成する本発明の焙煎器具は、焙煎目的物を収容した金属缶と、前記金属缶を熱源の上で回転可能に保持する保持具とを有することを特徴とする。
【0009】
使用時にはもちろん前記缶詰に収容された焙煎目的物を焙煎するための熱源が必要となるが、これは屋内ではガスコンロや電熱器など家庭内の標準装備品でよく、野外では持参した炭や携帯コンロでもよいし、拾ってきた木切れや薪でもよい。そのため熱源は本発明製品の構成にとって必須の要素ではない。
【0010】
金属缶は入手や製造を容易とするために、基本部分が公知の小型容器とすることが好ましい。携帯に便利で、回転させて均等に加熱するのに適している円筒形が好ましく、大きさは直径5~15cm、好ましくは8~12cm程度、販売時の高さ(加熱時の横方向長さ)は8~20cm、好ましくは10~18cm程度が好ましい。
【0011】
金属缶として公知のものは、ブリキ(鉄板にスズめっきしたもの)が多く、内面に防錆材としてスズめっきを施したり、合成樹脂塗料(エポキシ樹脂系、アクリル樹脂系、ポリ塩化ビニル系など)を塗布したりしていることが多い。
【0012】
スズの融点は231℃であり、直火にかけると溶融の恐れがある。一般にスズは人体に無害であるとされているが、溶融スズがコーヒー豆に触れることにより、風味や安全性に影響を与えることは避けなければならない。また、コーヒー豆を直火にかけることにより焦げやすくなるので、それも避けなければならない。そのために、本発明では、缶の内部に金属(例えば、ステンレス鋼)製の内筒を設定して外筒と内筒の二重構造とすることが好ましい。金属缶の両側面(販売時の上面及び底面)も二重にするため、それぞれ両側面の近くに金属円板を設定する。したがって、コーヒー豆はスズめっき又は樹脂めっきとは完全に遮断されて接触しなくなる。
【0013】
なお、近年はスズめっきを使用しない無スズ鋼(ティンフリー鋼)製の金属缶の使用も増えており、この場合は溶融スズの問題はないが、直火にかけることによる焦げ付きの問題は依然として残るので、金属缶を二重にすることの効果は失われていない。
【0014】
金属缶には、コーヒーの生豆の焙煎を均一に行うために攪拌翼を設けることが好ましい。攪拌翼は、内筒表面から回転軸方向かつ缶の横方向長さ全面にわたって1~3cm程度伸びる金属製の細長い板材とすることができ、内筒内に少なくとも2カ所設ける。さらに金属缶の側面(販売時の上面又は底面)にも攪拌翼を設けることができる。攪拌翼は平板状のものが加工容易であるが、攪拌効果を上げるため螺旋状とすることもできる。
【0015】
また、金属缶の一側面(販売時の上面又は底面)には、焙煎が終わった後の豆の取出しのためにプルトップ等の、それ自体周知の開蓋手段を設けておくことが好ましい。野外などで缶切りがなくても開けられるようにするためである。もちろん、缶切りによる開蓋であってもよい。
【0016】
さらに、金属缶の一側面(販売時の上面又は底面)には、気体膨脹による破裂を避け、換気や排煙を行うと共に、焙煎の進行度を香りによって知るために通気孔を設けることが好ましい。通気孔はそのままにしておけばコーヒー豆の鮮度に影響を与えるので、生豆を缶内部に投入した後は加熱直前までシールしておく。加熱時に高温となる缶内部には防湿剤が入れられないため、内部は真空状態または窒素で密封するのが好ましい。
【0017】
金属缶を熱源の上で回転可能に保持する保持具としては、金属缶を横方向に平行又は斜めに維持するためのグリップ機構と、金属缶を回転させる回転付与機構と、金属缶を熱源の上に維持するフレームを設ける。
【0018】
グリップ機構は、一側面のみを保持する片持ち方式でもよいし、両側面を保持する両持ち方式でもよい。グリップ機構としては、金属缶を着脱自在につかむ機能があればどのようなものでもよく、例えば複数の爪とすることができる。
【0019】
回転付与機構としては、例えば、クランクハンドルを手動で回すのが手軽で簡単であるが、電源駆動の小型モータでもよい。
【0020】
金属缶を熱源の上に維持するフレームは、金属缶を支持できればどのような構造やデザインであってもよい。グリップ機構を片持ち方式にするか、両持ち方式にするかによっても当然変わってくる。好ましくは、熱源との距離を調節するため、高さ調節ができることである。また、野外へ運搬しやすいように、通常は折り畳んでおいて、現地で組み立てられるようにすることが好ましい。
【0021】
焙煎が終わった後に焙煎済みの豆を取り出すときには、金属缶の一側部を開放し、フレームを手で握って金属缶を傾ければよい。必要があれば、焙煎器具のグリップ機構に傾斜角度調節手段を設けてもよい。傾斜角度を調節する手段はそれ自体周知の機構を採用すればよい。例えば扇風機の縦方向首振り機構のように、回動軸を中心に縦方向に回動可能としておき、特定位置においてネジなどで締め付けて位置固定することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、焙煎目的物を焙煎するのに用いるのは、焙煎目的物を収容した金属缶そのものであり、別の焙煎用容器に移し替えたり、使い切れなかったものを別に保存したりする必要もない。そのため、必要な時に使い切り分だけの生豆を、移し替えなどの手間をかけることなく、焙煎することができて便利である。家庭内や野外キャンプなどで活用されることが期待される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の実施例1に係る焙煎器具の斜視図であり、蓋を開けて部分的に内部構造を示している。
【
図2】実施例1に係る焙煎器具における缶のグリップ及び回転機構を示す斜視図である。
【
図3】実施例1に係る販売時のコーヒー豆入りの缶の縦断面図である。
【
図4】実施例1に係る加熱時のコーヒー豆入りの缶の縦断面図である。
【
図7】本発明の実施例2に係る販売時のコーヒー豆入りの缶の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付の図面に基づいて、本発明の実施例を具体的に説明する。
【実施例0025】
図1~6は本発明の実施例1である。
図1、
図2は、本実施例の焙煎器具の斜視図である。
図1では金属缶10の蓋を開けて部分的に内部構造を示している。
【0026】
この図面からわかるように、この焙煎器具は、コーヒーの生豆Bを収容した金属缶10と、この金属缶10を熱源の上で回転可能に保持する保持具30とを有する。
【0027】
本実施例の金属缶10は
図3~
図6に示すように、大きさは直径10cm程度、販売時の高さ(加熱時の横方向長さ)は12cm程度の円筒である。
【0028】
金属缶10は、ブリキ(鉄板にスズめっきしたもの)製であり、内面に防錆材としてスズめっき(図示せず)が施されている。スズの融点は231℃であり、直火にかけると溶融の恐れがある。一般にスズは人体に無害であることが知られているが、溶融スズがコーヒー豆に触れることにより、風味や安全性に影響を与えることは避けなければならない。また、コーヒー豆を直火にかけることにより焦げやすくなるので、それも避けなければならない。
【0029】
そのため、本発明では、缶外筒11の内部にステンレス製の缶内筒12を設定して二重にしてあり、内外筒11,12の間の間隔は一定に維持されている。
図3に示すように、金属缶の左右側面13,15(販売時の上面及び底面)も二重にするため、それぞれ左右側面の近くに金属円板14,16を設定している。右側の金属円板16は通気口(後記)と同じ目的で複数の開口17を設けている。このようにして、コーヒー豆はスズめっきと接触しないようにしている。
【0030】
金属缶10には、コーヒーの生豆Bの焙煎を均一に行うために攪拌翼18を設けている。攪拌翼18は、内筒12表面から回転軸方向かつ缶の横方向長さ全面にわたって1.5cm程度伸びる金属製の細長い板材であり、内筒内に2カ所に設けている。
【0031】
また、金属缶10の左側面13(販売時の上面)には、焙煎が終わった後の豆の取出しのためにそれ自体周知のプルトップ開蓋手段19を設けている。
【0032】
さらに、金属缶10の右側面15(販売時の底面)には、気体膨脹による破裂を避け、換気や排煙を行うと共に、焙煎の進行度を香りによって知るために通気孔20を設けている。通気孔20から空気が流入するとコーヒー豆の鮮度に影響を与えるので、生豆を投入した後は加熱直前までシール21(
図6参照)で封鎖しておく。金属缶10内部には防湿剤が入れられないため、内部は真空状態または窒素で密封する。
【0033】
金属缶10の中に収容するコーヒーの生豆は、
図3~5に示すように、缶の容積の1/3程度が好ましい。あまりに詰め込むと均一な加熱が困難となるからである。120g程度のコーヒー豆を焙煎すれば15~20杯ぐらいのコーヒーを淹れることができる。
【0034】
金属缶10は熱源Hの上で加熱される。その目的のために金属缶10を回転可能に保持するための手段30が設けられている。その手段は、
図1に示すように、金属缶10を横方向平行又は左端をやや上向きに維持するグリップ機構31と、金属缶10を回転させる回転付与機構33と、金属缶を熱源Hの上に維持するフレーム35からなる。
【0035】
本実施例のグリップ機構31は、金属缶10の右端部(販売時の底部)のみ保持する片持ち式である。
図2に示すように、グリップ機構31は3方向から金属缶をグリップする複数の爪32を有する。金属缶10の取付けは、金属缶10を3つの爪32の内側に押し込めればよく、取り出しは単に金属缶10を引き抜けばよい。
【0036】
本実施例の回転付与機構33は、クランクハンドル34を手動で回す方式である。
【0037】
金属缶10を熱源Hの上に維持する本実施例のフレーム35は金属缶方向に伸びる三角形の支持軸36と、その支持軸36を安定的に支持する二本の脚部37からなる。
【0038】
熱源Hは、屋内ではガスコンロや電熱器など家庭内の標準装備品でよく、野外では持参した炭や携帯コンロでもよいし、拾ってきた木切れや薪でもよい。
実施例2の焙煎器具は全体的に実施例1のものとよく似ている。異なるのは以下の点であり、その他の点は実施例1と共通する。そのため、共通部分は実施例1の符号の後に「A」を付けてその説明を省略する。
実施例2では、攪拌翼18A,24は内筒だけでなく、金属缶の右側金属板16Aにも取り付けられている。取付位置が異なるだけで、その構造は攪拌翼18Aとほぼ同様である。
焙煎が終わった後に焙煎済みの豆Bを取り出すときには、第2側部22を開け(第2側部22を付けないときはそのまま)、支持軸36Aを手で握って金属缶10Aの左側を下向きに傾ければよい。