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  • 特開-塗布装置 図1
  • 特開-塗布装置 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024063292
(43)【公開日】2024-05-13
(54)【発明の名称】塗布装置
(51)【国際特許分類】
   B05C 1/02 20060101AFI20240502BHJP
   B05C 11/10 20060101ALI20240502BHJP
【FI】
B05C1/02 102
B05C11/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022171089
(22)【出願日】2022-10-26
(71)【出願人】
【識別番号】000233619
【氏名又は名称】株式会社ニチリン
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】大西 孝博
(72)【発明者】
【氏名】志水 雄一
(72)【発明者】
【氏名】杉山 裕一
【テーマコード(参考)】
4F040
4F042
【Fターム(参考)】
4F040AA04
4F040AB04
4F040CB01
4F040CB06
4F040CB11
4F040CB22
4F040CB33
4F040CB36
4F042AA03
4F042AB00
4F042BA12
4F042BA15
4F042CA01
4F042CA05
4F042CA06
4F042CB02
4F042CC02
4F042CC07
4F042DH09
(57)【要約】
【課題】管状の被塗物の特定部位の外周面に流動性材料を塗布することが可能な塗布装置を提供する。
【解決手段】流動性材料が外周面に塗布された版ロール5と、版ロール5の外周面に塗布された流動性材料が外周面に転写される転写ロール6と、管状の被塗物30の特定部位の外周に沿って転写ロール6を回転させることで、転写ロール6の外周面に転写された流動性材料を、特定部位の外周面に転写させる回転装置7と、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流動性材料が外周面に塗布された版ロールと、
前記版ロールの外周面に塗布された前記流動性材料が外周面に転写される転写ロールと、
管状の被塗物の特定部位の外周に沿って前記転写ロールを回転させることで、前記転写ロールの外周面に転写された前記流動性材料を、前記特定部位の外周面に転写させる回転装置と、
を有することを特徴とする塗布装置。
【請求項2】
前記版ロールの外周面には、全周にわたって溝が形成されており、
前記版ロールの外周面に塗布された前記流動性材料が前記転写ロールの外周面に転写される際に、前記転写ロールは前記溝に当接され、
前記転写ロールが前記溝に当接される際に、前記溝内の前記流動性材料以外の前記流動性材料を前記版ロールの外周面から拭い去るワイパーを有することを特徴とする請求項1に記載の塗布装置。
【請求項3】
前記版ロールの軸方向は、水平方向であり、
前記流動性材料を貯留するタンクと、
前記版ロールの下方に配置され、前記版ロールの下部が浸漬された前記流動性材料を貯留するトレイと、
前記タンクから前記トレイに前記流動性材料を供給するポンプと、
前記タンクから前記トレイに供給される前記流動性材料の流量を検出する流量計と、
前記タンク内に溶剤を供給可能な溶剤タンクと、
前記流量計が検出した流量に応じて、前記溶剤タンクから前記タンク内に溶剤を供給させるコントローラと、
を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の塗布装置。
【請求項4】
前記タンク内を撹拌可能な撹拌部材を有し、
前記コントローラは、前記溶剤タンクから前記タンク内に溶剤が供給された際に、前記撹拌部材に前記タンク内を撹拌させることを特徴とする請求項3に記載の塗布装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被塗物に流動性材料を塗布する塗布装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、板状の被塗物の両面に流動性材料(糊)の膜を塗布する塗布装置が開示されている。特許文献1では、塗布ロールとドクターロールとの軸間距離を、流動性材料の粘度に応じて調整することで、流動性材料の塗布量を調整している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-25371号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、例えば、カーエアコンなどに使用されるパイプの端部に流動性材料(コーティング剤)を全周にわたって塗布した後に、この端部にホースを接続して、流動性材料で両者を接着させることが行われている。従来、パイプの端部への流動性材料の塗布は、パイプの端を含む最端部にキャップを被せたうえで、流動性材料の入った容器内にパイプの端部を浸漬させることで行われている。しかし、塗布装置を用いることで、パイプのような管状の被塗物の特定部位の外周面に、流動性材料を塗布できることが望まれている。
【0005】
本発明の目的は、管状の被塗物の特定部位の外周面に流動性材料を塗布することが可能な塗布装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、流動性材料が外周面に塗布された版ロールと、前記版ロールの外周面に塗布された前記流動性材料が外周面に転写される転写ロールと、管状の被塗物の特定部位の外周に沿って前記転写ロールを回転させることで、前記転写ロールの外周面に転写された前記流動性材料を、前記特定部位の外周面に転写させる回転装置と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、管状の被塗物の特定部位の外周に沿って転写ロールが回転されることで、転写ロールの外周面に転写された流動性材料が、被塗物の特定部位の外周面に転写される。これにより、管状の被塗物の特定部位の外周面に流動性材料を塗布することができる。また、版ロールの外周面から転写ロールの外周面に流動性材料を転写させることで、被塗物の特定部位に塗布したい量の流動性材料を、転写ロールの外周面に保持させることができる。よって、その後に、転写ロールの外周面から被塗物の特定部位の外周面に流動性材料を転写させることで、所望の量の流動性材料を被塗物の特定部位の外周面に塗布することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】塗布装置の構成図である。
図2】版ロールおよび転写ロールの上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0010】
(塗布装置の構成)
本実施形態における塗布装置は、被塗物に流動性材料を塗布するものである。本実施形態において、流動性材料はコーティング剤(接着剤)であるが、流動性材料はこれに限定されず、塗料などであってもよい。本実施形態の被塗物は、管状である。本実施形態の被塗物は、カーエアコンなどに使用されるパイプであるが、これに限定されない。
【0011】
塗布装置1の構成図である図1に示すように、塗布装置1は、タンク2と、トレイ3と、ポンプ4と、版ロール5と、転写ロール6と、回転装置7と、を有している。
【0012】
タンク2は、流動性材料を貯留している。トレイ3は、版ロール5の下方に配置されており、流動性材料を貯留している。トレイ3内の流動性材料は、配管15を通ってタンク2内に戻される。ポンプ4は、タンク2からトレイ3に流動性材料を供給する。ポンプ4によりトレイ3内に供給される流動性材料の量と、トレイ3内から排出される流動性材料の量とのバランスによって、トレイ3内の流動性材料の量は、所定量に維持される。
【0013】
版ロール5は、金属製である。版ロール5は、図中の時計回りに常に回転されている。版ロール5の軸方向は、水平方向である。版ロール5の下部は、トレイ3内の流動性材料に浸漬されている。版ロール5が、その下部を流動性材料に浸漬させながら、常に回転することで、版ロール5の外周面には、流動性材料が塗布される。
【0014】
転写ロール6は、シリコン製であり、版ロール5よりも小径である。転写ロール6の軸方向は、版ロール5の軸方向と平行である。転写ロール6は、版ロール5と被塗物30との間で、図中の左右方向に水平移動される。本実施形態において、転写ロール6を水平移動させる装置は、回転装置7であるが、回転装置7とは別の装置であってもよい。転写ロール6の外周面が版ロール5の外周面に当接されることで、版ロール5の回転に伴って転写ロール6が従動回転する。これにより、版ロール5の外周面に塗布された流動性材料が、転写ロール6の外周面に転写される。このとき、転写ロール6は複数回回転する。
【0015】
転写ロール6の外周面に流動性材料が転写された後に、回転装置7は、転写ロール6を被塗物30の方に移動させて、転写ロール6の外周面を被塗物30の特定部位の外周面に当接させる。被塗物30の特定部位の長手方向は、転写ロール6の軸方向と平行である。本実施形態において、被塗物30の特定部位は、被塗物30の端部であるが、これに限定されない。
【0016】
回転装置7は、転写ロール6と被塗物30の特定部位との当接状態を保ちながら、被塗物30の特定部位の外周に沿って転写ロール6を回転させる。このとき、被塗物30は、その端部が回転装置7の治具に挿入して固定されており、回転しない。転写ロール6の外周面が被塗物30の特定部位の外周面に当接した状態で、被塗物30の周りを転写ロール6が回転されることで、転写ロール6は従動回転する。被塗物30の特定部位の外周に沿って転写ロール6を回転させることで、転写ロール6の外周面に転写された流動性材料が、被塗物30の特定部位の外周面に転写される。このとき、転写ロール6は、被塗物30の周りを複数回回転される。これにより、被塗物30の特定部位の外周面に流動性材料が均一の厚みで塗布される。
【0017】
ここで、被塗物30の特定部位には、複数の溝が形成されている。これらの溝は、被塗物30の特定部位に接続されるホースとの嵌合性を向上させるものである。転写ロール6はシリコン製であり、被塗物30の特定部位の溝の内側に嵌るように変形するので、転写ロール6の外周面に転写された流動性材料は、被塗物30の特定部位の溝の内側にも好適に転写される。
【0018】
このように、管状の被塗物30の特定部位の外周に沿って転写ロール6が回転されることで、転写ロール6の外周面に転写された流動性材料が、被塗物30の特定部位の外周面に転写される。これにより、管状の被塗物30の特定部位の外周面に流動性材料を塗布することができる。また、版ロール5の外周面から転写ロール6の外周面に流動性材料を転写させることで、被塗物30の特定部位に塗布したい量の流動性材料を、転写ロール6の外周面に保持させることができる。よって、その後に、転写ロール6の外周面から被塗物30の特定部位の外周面に流動性材料を転写させることで、所望の量の流動性材料を被塗物30の特定部位の外周面に塗布することができる。
【0019】
図1に示すように、塗布装置1は、ワイパー8を有している。ワイパー8は、版ロール5に対して進退される。ワイパー8は、版ロール5の長手方向の全長にわたって、版ロール5の外周面に当接される。
【0020】
版ロール5および転写ロール6の上面図である図2に示すように、版ロール5の外周面には、全周にわたって溝5aが形成されている。この溝5a内は、流動性材料で満たされている。版ロール5の外周面に塗布された流動性材料が転写ロール6の外周面に転写される際に、転写ロール6は溝5aに当接される。ワイパー8は、転写ロール6が溝5aに当接されるよりも前に、版ロール5の外周面に当接される。これにより、溝5a内の流動性材料以外の流動性材料が、版ロール5の外周面から拭い去られる。そのため、溝5a内に保持された流動性材料のみが、転写ロール6の外周面に転写される。転写ロール6はシリコン製であり、溝5aの内側に嵌るように変形するので、溝5a内の流動性材料は、転写ロール6の外周面に好適に転写される。
【0021】
版ロール5の軸方向における溝5aの幅は、転写ロール6の軸方向の長さよりも短くされている。溝5aの深さは、被塗物30の特定部位に塗布したい量の流動性材料が溝5a内に保持されるような深さに設定されている。よって、版ロール5の溝5a内の流動性材料以外の流動性材料が、ワイパー8で版ロール5の外周面から拭い去られた際に、版ロール5の溝5a内には、被塗物30の特定部位に塗布したい量の流動性材料が保持される。これにより、転写ロール6を溝5aに当接させることで、被塗物30の特定部位に塗布したい量の流動性材料を転写ロール6の外周面に転写することができる。
【0022】
図1に戻って、塗布装置1は、流量計9と、溶剤タンク10と、コントローラ11と、を有している。流量計9は、タンク2からトレイ3に供給される流動性材料が通る配管16に設けられ、タンク2からトレイ3に供給される流動性材料の流量を検出する。溶剤タンク10は、溶剤を貯留し、タンク2内に溶剤を供給可能である。ここで、溶剤タンク10が貯留する溶剤は、流動性材料に含まれる溶剤と同じ種類のものである。コントローラ11は、流量計9が検出した流量に応じて、溶剤タンク10からタンク2内に溶剤を供給させる。
【0023】
流動性材料から溶剤が揮発することで、流動性材料の比重が上がり、流動性材料の流量が低下する。流動性材料の流量が低下した場合に、溶剤タンク10からタンク2に溶剤を供給することで、流動性材料の比重を下げ、流動性材料の流量を上げることができる。
【0024】
また、塗布装置1は、撹拌部材12を有している。撹拌部材12は、タンク2の上方に配置されている。撹拌部材12は、タンク2内の流動性材料に対して上下方向に進退される。撹拌部材12は、タンク2内を撹拌可能なものであり、例えば、プロペラである。コントローラ11は、溶剤タンク10からタンク2内に溶剤が供給された際に、タンク2内の流動性材料に撹拌部材12を浸漬させ、撹拌部材12にタンク2内を撹拌させる。これにより、タンク2内の流動性材料の比重を好適に下げることができる。
【0025】
なお、コントローラ11は、回転装置7およびワイパー8の動作も制御している。
【0026】
(塗布装置の動作)
次に、塗布装置1の動作について説明する。ここで、ポンプ4は、タンク2からトレイ3に流動性材料を供給しつづけており、版ロール5は、その下部をトレイ3内の流動性材料に浸漬させながら、常に回転しつづけている。
【0027】
まず、作業者により、被塗物30の端部が回転装置7の治具に挿入して固定される。次に、コントローラ11により、転写ロール6が版ロール5の方に移動される。コントローラ11により、ワイパー8が、版ロール5の外周面に当接される。これにより、版ロール5の溝5a内の流動性材料以外の流動性材料が、版ロール5の外周面から拭い去られる。この状態で、転写ロール6が溝5aに当接される。これにより、溝5a内に保持された流動性材料が、転写ロール6の外周面に転写される。
【0028】
次に、コントローラ11により、転写ロール6が被塗物30の方に移動され、続いて、転写ロール6が被塗物30の周りを回転される。これにより、転写ロール6の外周面に転写された流動性材料が、被塗物30の特定部位の外周面に転写される。そして、作業者により、被塗物30が回転装置7の治具から取り外される。
【0029】
上記の動作が繰り返されている間、流量計9により、タンク2からトレイ3に供給される流動性材料の流量が検出される。流量計9が検出した流量に応じて、コントローラ11により、溶剤タンク10からタンク2内に溶剤が供給される。タンク2内に溶剤が供給された後には、コントローラ11により、タンク2内の流動性材料に撹拌部材12が浸漬され、撹拌部材12によってタンク2内が撹拌される。
【0030】
(効果)
以上に述べたように、本実施形態に係る塗布装置1によると、図1に示すように、管状の被塗物30の特定部位の外周に沿って転写ロール6が回転されることで、転写ロール6の外周面に転写された流動性材料が、被塗物30の特定部位の外周面に転写される。これにより、管状の被塗物30の特定部位の外周面に流動性材料を塗布することができる。また、版ロール5の外周面から転写ロール6の外周面に流動性材料を転写させることで、被塗物30の特定部位に塗布したい量の流動性材料を、転写ロール6の外周面に保持させることができる。よって、その後に、転写ロール6の外周面から被塗物30の特定部位の外周面に流動性材料を転写させることで、所望の量の流動性材料を被塗物30の特定部位の外周面に塗布することができる。
【0031】
また、図2に示すように、転写ロール6が溝5aに当接される際に、版ロール5の溝5a内の流動性材料以外の流動性材料が、版ロール5の外周面から拭い去られる。版ロール5の溝5a内には、例えば、被塗物30の特定部位に塗布したい量の流動性材料が保持される。この場合、転写ロール6を溝5aに当接させることで、被塗物30の特定部位に塗布したい量の流動性材料を転写ロール6の外周面に転写することができる。
【0032】
また、図1に示すように、流量計9が検出した流動性材料の流量に応じて、溶剤タンク10からタンク2に溶剤が供給される。流動性材料から溶剤が揮発することで、流動性材料の比重が上がり、流動性材料の流量が低下する。流動性材料の流量が低下した場合に、溶剤タンク10からタンク2に溶剤を供給することで、流動性材料の比重を下げ、流動性材料の流量を上げることができる。
【0033】
また、図1に示すように、溶剤タンク10からタンク2内に溶剤が供給された際に、撹拌部材12によりタンク2内が撹拌される。これにより、タンク2内の流動性材料の比重を好適に下げることができる。
【0034】
以上、本発明の実施形態を説明したが、具体例を例示したに過ぎず、特に、本発明を限定するものではなく、具体的構成などは、適宜設計変更可能である。また、発明の実施の形態に記載された、作用及び効果は、本発明から生じる最も好適な作用及び効果を列挙したに過ぎず、本発明による作用及び効果は、本発明の実施の形態に記載されたものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0035】
1 塗布装置
2 タンク
3 トレイ
4 ポンプ
5 版ロール
5a 溝
6 転写ロール
7 回転装置
8 ワイパー
9 流量計
10 溶剤タンク
11 コントローラ
12 撹拌部材
15,16 配管
30 被塗物
図1
図2