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特開2024-63297元素周期律表の第15族及び第16族で第2周期の元素からの水素ガス製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024063297
(43)【公開日】2024-05-13
(54)【発明の名称】元素周期律表の第15族及び第16族で第2周期の元素からの水素ガス製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 3/04 20060101AFI20240502BHJP
   H05H 1/24 20060101ALI20240502BHJP
【FI】
C01B3/04 Z
H05H1/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022171101
(22)【出願日】2022-10-26
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
(71)【出願人】
【識別番号】522419562
【氏名又は名称】株式会社 ゼロ・フォース
(71)【出願人】
【識別番号】502056318
【氏名又は名称】エネルギープロダクト 株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107984
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100182305
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 鉄平
(74)【代理人】
【識別番号】100096482
【弁理士】
【氏名又は名称】東海 裕作
(74)【代理人】
【識別番号】100131093
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 真
(74)【代理人】
【識別番号】100150902
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 正子
(74)【代理人】
【識別番号】100141391
【弁理士】
【氏名又は名称】園元 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100221958
【弁理士】
【氏名又は名称】篠田 真希恵
(74)【代理人】
【識別番号】100192441
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 仁
(72)【発明者】
【氏名】山下 昭彦
【テーマコード(参考)】
2G084
【Fターム(参考)】
2G084AA26
2G084CC11
2G084CC32
(57)【要約】
【課題】
水素ガスを安価に大量製造する技術を提供する。
【解決手段】
元素周期律表の第15族及び第16族で第2周期の元素で作る炭酸ガス、空気及び窒素酸化物などの分子の解離と原子の電離とで陽子と中性子と電子に分解して、これから水素原子を創造し、共有結合によって水素分子を製造することを特徴とする水素ガス製造方法。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
元素周期律表の第15族及び第16族で第2周期の元素及び元素化合物で構成する原料ガスを、分子の解離と原子の電離とで陽子と中性子と電子とに分解し、クーロン力を復元させて陽子と電子とから電気結合によって水素原子を創造し、さらに共有結合によって水素分子を製造することを特徴とする水素ガス製造方法。
【請求項2】
イオン化し易い化合物粉末と電荷をもつ鉱物粉末と重金属とを混合した粉状の活性剤を炉内に投入して150~900℃に加熱し、活性剤の揮発成分を発生させ、炉壁から発生する電磁波との相互作用により濃密なプラズマ場を形成して、前記プラズマ場に元素周期律表の第15族及び第16族で第2周期の元素及び元素化合物で構成する原料ガスを投入することによって、前記原料ガスを分子の解離と原子の電離とで陽子と中性子と電子とに分解し、クーロン力を復元させて陽子と電子との電気結合によって水素原子を創造し、さらに共有結合によって水素分子を製造することを特徴とする水素ガス製造方法。
【請求項3】
粉状の活性剤が、さらにセラミックス粉末を含む、請求項2に記載の水素ガス製造方法。
【請求項4】
粉状の活性剤が、イオン化し易い化合物粉末を30~60%、電荷をもつ鉱物粉末を30~60%、重金属を0~20%含むことを特徴とする請求項2~3項のいずれかに記載の水素ガス製造方法。
【請求項5】
イオン化し易い化合物粉末がSi錯塩、Ca錯塩、Na錯塩、珪酸錯塩及び芒硝から選択されるイオン化し易い化合物粉末であり、電荷を持つ鉱物粉末がCa、Na、Si、Fe、Al、Mg及びMnから選択されるミネラルを含み、重金属がFe、Al、Mg及びMnから選択される重金属である、請求項2~4項のいずれかに記載の水素ガス製造方法。
【請求項6】
電荷を持つ鉱物粉末が、少なくとも3種類以上のミネラルを含むことを特徴とする、請求項5記載の水素ガス製造方法。
【請求項7】
原料ガスが、炭酸ガス、空気又は窒素酸化物である、請求項1~6記載の水素ガス製造方法。
【請求項8】
鉄鋼、ステンレス鋼、又はセラミックスからなる横型円筒型の水素製造炉と、かかる炉長手方向中央部に設置した活性剤粉体を受ける受け皿に上部から活性剤粉体を自動投入するホッパーを含む活性剤粉体投入装置と、活性剤粉体を受ける受け皿内に設置されたスクリュー掻出機によって投入された活性剤粉体を自動的に敷きならし、かつ劣化した粉体を炉外へ自動的に掻き出すことによって、連続製造を可能とした請求項1~7項のいずれかに記載の水素ガス製造方法。
【請求項9】
原料ガス投入のための吸引ブロワー、ガスを分解し水素ガスを製造する水素製造炉、粉状の活性剤を自動投入する活性剤粉体投入装置、及び劣化した活性剤粉体を受ける粉体受けタンクで構成される、元素周期律表の第15族及び第16族で第2周期の元素及び元素化合物で構成する前記原料ガスを、分子の解離と原子の電離とで陽子と中性子と電子とに分解し、クーロン力を復元させて陽子と電子との電気結合によって水素原子を創造し、さらに共有結合によって水素分子を製造するための水素ガス製造装置。
【請求項10】
水素製造炉が、内部に、活性剤粉体投入装置から落下する活性剤粉体を受ける受け皿、受け皿内に活性剤を敷きならし、かつ劣化した粉体を炉外に排出するためのスクリュー掻出機、及び加熱ヒーターを備えることを特徴とする、請求項9記載の水素ガス製造装置。
【請求項11】
水素製造炉の形状が円筒形であり、直径0.35m~1mであり、長さが1.5m~6.5mであることを特徴とする、請求項9又は10記載の水素ガス製造装置。
【請求項12】
水素製造炉が、鉄鋼、ステンレス鋼、又はセラミックスからなる請求項9~11のいずれかに記載の水素ガス製造装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭酸ガス、空気、窒素酸化物などから、分子の解離と原子の電離とで水素原子を創造し、水素分子を製造する水素ガス製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の核崩壊技術としては、原子核融合及び核分裂の方法として、世界各地で衝突破壊法が行われている。衝突破壊法は、直径数キロメールのドーナツ状の空間内で、原子同士を正反対の方向から高速で衝突させるもので、ドーナツ状の空間は真空に近い希薄空間を必要とし、莫大な費用が必要であった。
【0003】
また、従来の水素ガス製造方法は、以下の理由でコスト低下に限度があった。例えば、製造に関しては、天然ガスからの高温水蒸気改質法や、世界共通の結合水素の引き剥がし法(例えば、HOからHを引き剥がす方法)で水素ガスを製造する場合、大きな設備と大きなエネルギーとが必要であり、供給に関しても、既存のガソリンスタンド等の供給拠点が使えず、新規に建設する必要があるなど、製造と供給との両面からコスト低下が望めない結果、市販のガソリン代の方が安くなるという現象が起きていた。
【0004】
一方、2011年に発生した福島の原子力発電所事故では、放射性物質が京単位で大量に大気中に飛散し、甚大な放射能汚染被害をもたらした。これに対応するため、政府は、2012年からの放射性物質除染に関する新しい除染技術の公募を行い、本発明者らの理論を基礎にした放射性物質除染技術が評価認定された。放射性物質除染技術に係る装置は、(1)日本国評価認定技術である放射能除染技術、(2)炭酸ガスによる大気遮断技術、(3)放射能凝集剤、(4)プラズマ空間(長さ4.5m×4筒、Φ350)の4つの技術を使った電気式炭化炉であるが、この装置でセシウムを減容するための運転を行った際、大量の水素ガスが連続発生することを発見した。そして、2012年末迄に、一方では水素ガス発生防止技術、他方では水素ガス大量製造技術を確立させ、電気式炭化炉として、いくつかの関係特許を取得した。
【0005】
さらに、従来の水素ガス製造技術としては、下記特許文献1には、少量の水素を発生する技術が示されているが、実施例に乏しい実験室レベルのもので、連続生産など、商業化のために不可欠な大量生産技術としては不向きであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2020-163377号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
以上のとおり、水素ガス生産の商業化を可能とするためには、水素ガスを安価に大量製造する理論とそれを支える技術とが求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、本発明者らは、従来の水素ガス製造方法ではコスト低下に限界があると考え、分子を解離して原子にし、かかる原子を電離して陽子と中性子と電子とにしてから、水素原子を創造し、水素分子を新たに製造する水素ガス製造方法を発案した。
【0009】
本発明は、以下の事項により特定されるとおりのものである。
[1]元素周期律表の第15族及び第16族で第2周期の元素及び元素化合物で構成する原料ガスを、分子の解離と原子の電離とで陽子と中性子と電子とに分解し、クーロン力を復元させて陽子と電子とから電気結合によって水素原子を創造し、さらに共有結合によって水素分子を製造することを特徴とする水素ガス製造方法。
[2]イオン化し易い化合物粉末と電荷をもつ鉱物粉末と重金属とを混合した粉状の活性剤を炉内に投入して150~900℃に加熱し、活性剤の揮発成分を発生させ、炉壁から発生する電磁波との相互作用により濃密なプラズマ場を形成して、前記プラズマ場に元素周期律表の第15族及び第16族で第2周期の元素及び元素化合物で構成する原料ガスを投入することによって、前記原料ガスを分子の解離と原子の電離とで陽子と中性子と電子とに分解し、クーロン力を復元させて陽子と電子との電気結合によって水素原子を創造し、さらに共有結合によって水素分子を製造することを特徴とする水素ガス製造方法。
[3]粉状の活性剤が、さらにセラミックス粉末を含む、[2]に記載の水素ガス製造方法。
[4]粉状の活性剤が、イオン化し易い化合物粉末を30~60%、電荷をもつ鉱物粉末を30~60%、重金属を0~20%含むことを特徴とする[2]~[3]のいずれかに記載の水素ガス製造方法。
[5]イオン化し易い化合物粉末がSi錯塩、Ca錯塩、Na錯塩、珪酸錯塩及び芒硝から選択されるイオン化し易い化合物粉末であり、電荷を持つ鉱物粉末がCa、Na、Si、Fe、Al、Mg及びMnから選択されるミネラルを含み、重金属がFe、Al、Mg及びMnから選択される重金属である、[2]~[4]のいずれかに記載の水素ガス製造方法。
[6]電荷を持つ鉱物粉末が、少なくとも3種類以上のミネラルを含むことを特徴とする、[5]に記載の水素ガス製造方法。
[7]原料ガスが、炭酸ガス、空気又は窒素酸化物である、[1]~[6]のいずれかに記載の水素ガス製造方法。
[8]鉄鋼、ステンレス鋼、又はセラミックスからなる横型円筒型の水素製造炉と、かかる炉長手方向中央部に設置した活性剤粉体を受ける受け皿に上部から活性剤粉体を自動投入するホッパーを含む活性剤粉体投入装置と、活性剤粉体を受ける受け皿内に設置されたスクリュー掻出機によって投入された活性剤粉体を自動的に敷きならし、かつ劣化した粉体を炉外へ自動的に掻き出すことによって、連続製造を可能とした[1]~[7]のいずれかに記載の水素ガス製造方法。
[9]原料ガス投入のための吸引ブロワー、ガスを分解し水素ガスを製造する水素製造炉、粉状の活性剤を自動投入する活性剤粉体投入装置、及び劣化した活性剤粉体を受ける粉体受けタンクで構成される、元素周期律表の第15族及び第16族で第2周期の元素及び元素化合物で構成する前記原料ガスを、分子の解離と原子の電離とで陽子と中性子と電子とに分解し、クーロン力を復元させて陽子と電子との電気結合によって水素原子を創造し、さらに共有結合によって水素分子を製造するための水素ガス製造装置。
[10]水素製造炉が、内部に、活性剤粉体投入装置から落下する粉状の活性剤を受ける受け皿、受け皿内に活性剤粉体を敷きならし、かつ劣化した粉体を炉外に排出するためのスクリュー掻出機、及び加熱ヒーターを備えることを特徴とする、[9]に記載の水素ガス製造装置。
[11]水素製造炉の形状が円筒形であり、直径0.35m~1mであり、長さが1.5m~6.5mであることを特徴とする、[9]又は[10]に記載の水素ガス製造装置。
[12]水素製造炉が、鉄鋼、ステンレス鋼、又はセラミックスからなる[9]~[11]のいずれかに記載の水素ガス製造装置。
【発明の効果】
【0010】
従来の水素ガス製造方法では、化石燃料由来の水素ガス製造コストが30~60円/m程度、水電解プロセスの場合のコストは50~60円/m程度とされているが、本発明によれば、10円/m以下のコストでの製造が可能となり、従来の1/3~1/6のコストで製造可能となる。併せて、いつでもどこでも入手できる無尽蔵の大気や地球温暖化の主要因とされている炭酸ガスを含む工場排ガスからも安価な水素ガスを製造することが可能となり、生産性の高い再生可能エネルギーと地球環境保全の両面で効果が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1に、本発明の水素ガス製造装置の主要な構造を示す。
図2図2に、本発明の水素製造炉の代表的な基本構造を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書で使用する用語の定義を表1に示す。
【0013】
【表1】
【0014】
本発明で使用される、原料ガス、プラズマ活性剤(活性剤)、プラズマ場、解離・電離・水素化反応、及び製品ガスは以下のとおりである。
[原料ガス]
本発明には、これまでの実験結果から、解離が比較的容易と考えられる、元素周期律表の第15族及び第16族で第2周期の元素で作るガスを原料ガスとして使用することができる。これらのガスの内、例えば、炭酸ガス、空気及び窒素酸化物が好適である。
【0015】
[プラズマ活性剤(活性剤)]
炉内における濃密なプラズマ状態を出現させるためのプラズマ場の形成は、荷電した微粒子(荷電微粒子)を空間内に高密度で満たすこと、及び炉内に電磁波を発生させて、その相互作用で、高濃度の荷電微粒子を自由に飛翔させることで行う。その荷電微粒子源は、電荷をもつ鉱物(ミネラル)やイオン化合物を加熱して揮発させることで得られ、また、炉を加熱して炉壁から電磁波を発生させ、そのの相互作用によってプラズマ場は達成される。ミネラル源は、ミネラル類を豊富に含んだ鉱石、例えば、火山岩、安山岩、深成岩、輝石岩などであり、粉砕機などの機械により粉砕して得られる。代表的には、Ca、Na、Si、Fe、Al、Mg、Mnなどを含む化合物であるが、揮発性に優れたものであればよく、特に限定されない。重金属類は、Fe、Al、Mg、Mnなどで、鉱物粉体の成分によって不足する成分を補完する。イオン化合物は、Si錯塩、Ca錯塩、Na錯塩、珪酸錯塩、芒硝などであるが、比較的イオン化し易く揮発性のあるものであればよく、特に限定されない。これらの成分の混合比率は重量比で、鉱物類が30~60%、重金属類が0~20%、イオン化合物が30~60%である。
【0016】
本発明者らは、福島原子力発電所事故時の放射能汚染水浄化に関する内閣府の技術評価プロジェクトにおいて、本発明を構成するイオン化合物と鉱物粉体とからなる凝集剤(活性剤)が、米独型理論で作られた凝集剤に比べて高い処理能力を有し、例えば、粘土への吸着力の強いセシウムの除染で分離率99.998%を達成した実績を持っている。従って、低電荷であっても複数鉱物の集合体による除染効果が、高電荷の単一重金属の除染効果よりも高いことを確認しており、本発明においても、分子の解離及び原子の電離を行う環境として、できるだけ種類の多いミネラルを複合的に使うことが有利であると考えられ、少なくとも3種類以上のミネラルを含むことが好適である。
【0017】
鉱物、重金属、イオン化合物等12種類の低電荷を持つ活性剤粉末は、混合比率と粒度により効果の程度は異なるが、(1)水を加えると分解する加水分解機能、(2)熱による酸化還元現象を起こすOH基生成機能、(3)粒子間で電荷をやり取りする時の錯塩生成機能、(4)分解・生成を円滑に進めるための触媒的機能、(5)原子を分子にするため、最外殻電子をやり取りする電子添加削減機能の5機能を持ち、炉内に投入されて加熱され、電荷を持つ微粒子が揮発して飛び回るプラズマ場を形成して、解離、電離現象が容易に起こる環境を創ることができる。とりわけ、上記(3)、(4)、及び(5)に係る機能が揮発した荷電微粒子に働きかけて分子の活性化とプラズマとの相互作用により分子の解離を引き起こすと考えられる。
【0018】
これら活性剤には、粉状のセラミックスを加えることも有効である。
活性剤粉体の粒度は、小さければ小さいほどよいが、製造コストも考慮して120メッシュを標準とする。
【0019】
[プラズマ場]
容器で隔離された閉鎖空間を、原料の種類や求められる水素純度によって150~900℃に加熱してプラズマ活性剤の揮発成分を蒸発させるとともに、炉壁から発生する電磁波により、一部はイオン化し、一部は遊離基を生成し、空間内を飛翔することによって濃密なプラズマ場を形成する。
【0020】
[解離・電離・水素化反応]
プラズマ場に投入された原料ガスの分子は、分子結合力を失い、解離して原子を生成し、その原子は電離して陽子、中性子、電子を生成し、出口付近に近づきプラズマ空間の電気的平衡状態が弱まり、温度が低下するにつれて、原子を生成するために必要なクーロン力を回復し、原子の中でも最小単位である陽子1個と電子1個からなる水素原子を創造する。さらに、原子は、プラズマ空間の弱まりと温度の低下により、水素原子同士の最外殻電子の共有結合によって水素分子を製造する。反応としては、分解は吸熱反応であり、水素原子の創造及び水素分子の製造は発熱反応であるが、全体としては吸熱反応であることから、持続的な加熱が必要である。
【0021】
[製品ガス]
製造した水素ガスの純度は、99.9%以上の高純度を実現可能で、後段の用途によって、オンサイトでそのまま使用される場合は系外へ送出され、輸送する場合は保管プロセスに移行する。原料投入から製品ガス送出までの時間は5分程度を要するが、連続生産可能である。なお、処理時間は、投入ガス量や加熱温度、プラズマ活性剤の投下量、炉の寸法によって調整可能である。
【0022】
本発明に係る水素原子創造理論に従った、水素ガス製造工程は以下の表2のとおりである。本発明は、24時間運転を可能とする連続プロセスである。
【0023】
【表2】
【0024】
以下に、上記工程に従い、本発明の水素ガス製造工程に係るプロセスフローを説明する。
[工程1]活性化(プラズマ場の形成)
炉内に設置した受け皿にプラズマ活性剤を落下により載置し、加熱ヒーターにより150~900℃に加熱することで、活性剤粉体の揮発成分が蒸発して荷電微粒子が浮遊する。一方、ある一定温度を超えると炉壁から電磁波が発生するため、荷電微粒子と電磁波との相互作用によってプラズマ空間を活性化させると、常時プラズマ場が形成されるようになり、荷電微粒子は炉内を飛翔する。なお、プラズマ活性剤は、時間の経過とともに費消し、又は劣化するため、原料ガス投入に合わせて追加投入され、一方、劣化した活性剤粉体は炉外に自動排出される。なお、加熱温度は、経済性との兼ね合いからは、170℃~830℃が好ましい。
【0025】
[工程2]投入
原料ガスの投入は、製品ガス出口付近に設置される吸引ブロワーによって行われる。
【0026】
[工程3]解離
原料ガスが炉内のプラズマ場に導入されると、原料ガスの分子結合力が消滅する解離現象が起こり、原子を生成する。例えば、CO2は解離し、C原子1個とO原子2個とに分解する。
【0027】
[工程4]電離
原料ガスは、解離して原子になると、原子は電離して電気結合力をなくし、陽子、中性子及び電子に分解する。プラズマ空間内は電気的平衡状態にあるため、生成した陽子、中性子、及び電子は、プラズマ空間内を飛翔する。
【0028】
[工程5]復元
炉内のプラズマ空間は、ガスの出口付近になると濃密なプラズマ状態が弱まり、また温度も低下するため、平衡状態がゆらぎ、陽子、電子に働くクーロン力が復元して、電気結合により水素原子を創造する。復元工程では、陽子1個と電子1個とで水素原子を創造するが、さらに短時間で効率よく水素原子を創造するために、水蒸気を導入する、電子を余剰に付加する、プラズマ空間と復元空間を分割する、出口付近に冷却器を置くなど、陽子と電子の衝突機会を増やしたり、プラズマ空間を緩める方法が考えられる。
【0029】
[工程6]結合
創造された水素原子は、最外殻電子が1つで不安定なため、水素原子同士で最外殻電子を共有すると安定する。これを共有結合といい、これにより水素ガスを製造する。原子の創造と分子の製造とは同時並行で進行する。共有結合を電気的に補助する機器として共有結合機が使用できる。共有結合機は、入力が交流100V、出力が12Vであって、Φ50のコイル巻きの中を水素原子が通過することで、隣接する水素原子と最外殻電子との共有結合を促進することができる。
【0030】
[構成機器と構造]
以下に、本発明の水素ガス製造工程に係るプロセスフローを実施するための機器について説明する。
上記プロセスフローを実施する機器は、原料ガス投入のための吸引ブロワー、原料ガスを分解し水素ガスを製造する水素製造炉、プラズマ活性剤を自動投入する活性剤粉体投入装置、劣化した活性剤粉体を受ける粉体受タンクで構成される。水素製造炉は、内部に、活性剤受け皿、スクリュー型粉体掻出機、及び加熱ヒーターを設置している。
【0031】
[吸引ブロワー]
原料ガスを投入し、炉内から水素ガスや荷電微粒子が外部へ漏洩することを防止するため、製品ガス出口付近に吸引型のブロワーを設置する。炉内の圧力は若干の負圧で足り、ブロワーは渦巻型、容積型のいずれでも使用可能である。
【0032】
[活性剤粉体投入装置]
活性剤粉体を一時的に貯蔵し、炉内に落とすためのホッパー構造と下部に自動供給のための自動弁を配置する。
【0033】
[水素製造炉]
水素製造炉は、内部中央部に、上部の活性剤粉体投入装置から落下する活性剤粉体の受け皿と、受け皿内に活性剤粉体を敷きならし、かつ劣化した粉体を炉外へ自動排出するためのスクリュー型粉体掻出機を設置している。さらに、受け皿下部には、受け皿及び炉内を加熱するための加熱ヒーターを設置している。炉本体は、横型円筒容器で、例えば、直径0.35~1m、長さ1.5~6.5mの両端が開放及び閉止可能な閉鎖空間を作ることができるもので、直径は、原料ガス量によって、長さは、反応時間や要求される水素ガス純度によって適宜設定される。水素製造炉の一端には原料ガス投入のための投入口、及び活性剤投入口、もう一端には、製造ガス出口及び安全弁を設けた構造である。材質は、加熱可能で電磁波を発生できる、例えば、鉄鋼、ステンレス鋼などで、セラミックス製も採用可能である。炉内部の特定部位には荷電微粒子の付着を防止するために、例えば、カーボン又はテフロン加工のような加工を施すことも有効である。
【0034】
活性剤受け皿は、ステンレス製で、活性剤を一定量溜められる構造になっており、内部には、ステンレス製のスクリュー型粉体掻出機を設置している。加熱ヒーターは、シーズヒーター又はマイクロ波タイプが好ましいが、燃料焚きなど他の方法でもよい。また、水素製造炉本体は、縦型円筒容器でもよく、縦型円筒容器の場合には、底部に原料ガス投入口、中部に活性剤投入口、上部に製造ガス出口を設け、底部に活性剤受け皿とスクリュー粉体掻出機を設けた構造となる。
【0035】
[活性剤粉体受タンク]
鉄製の箱型開放容器で、劣化した活性剤粉体を一時貯蔵するための容器である。
【実施例0036】
原料ガスとしては、炭酸ガス(CO)と窒素化合物(NOX)と酸素(O)の3種類のガスを使用し、270~640℃の操作温度ごとに、ガス分子の解離率及び水素化率について、ガスクロマトグラフィーを使用して確認した。プラズマ活性剤は、操作温度が高くなるにつれて少なくできると予想されたため、5g(乾燥重量)刻みで変更した。
【0037】
放射能汚染土壌を除染し炭化するための炉として設計製作され、2012年に設置された横型円筒型のステンレス製の炭化炉を水素製造炉として用いた。炉内には、シーズヒーターが設置され、炭化した炭を掻き出すためのスクリュー型の掻出機が設置されている。事前に炉内底部に、プラズマ活性剤が投入され、目的の温度に加熱されたのち、原料ガスが投入されて水素ガスが生成されるプロセスである。原料ガス処理量は、48m/24hである。
【0038】
プラズマ活性剤として、イオン化しやすい化合物と鉱石との混合物を使用した。
具体的には、鉱物が全体の42%で、火山岩26%、安山岩・深成岩8%、輝石岩などである。重金属は全体の12%で、Al7%、Mn2%、Mgなどである。イオン化合物は全体の46%で、Si錯塩、Ca錯塩、Na錯塩を含んでいる。
【0039】
実施結果を表3、表4及び表5に示す。
【0040】
【表3】

注)測定は10回行い、最大値、最小値を除外して平均した。
注)Cは目視にて行い、いずれの温度においても確認できなかった。
【0041】
【表4】

注)測定は10回行い、最大値、最小値を除外して平均した。
【0042】
【表5】

注)測定は10回行い、最大値、最小値を除外して平均した。
【0043】
表3、表4、表5の実験結果より、解離率、水素化率を計算した結果を表6に示す。
【0044】
【表6】

注)解離率は、(原料中の濃度-製品ガス中の濃度)/原料中の濃度で計算した。
注)水素化率は、原料ガス容積に対する製品水素ガスの容積比で示した。測定方法は、原料と製品水素を一定時間テトラバックにサンプリングして容積を測定した。
【0045】
表6の結果から、解離率は、加熱温度と投入した活性剤量(=揮発した荷電微粒子濃度)とが関係しており、炭酸ガス(CO)の場合で最大99.9%、窒素化合物(NOX)の場合で最大22.3%、酸素(O)の場合で最大91.1%であった。
また、水素化率も、加熱温度と投入した活性剤量(=揮発した荷電微粒子濃度)とが関係しており、投入ガスに対する製品水素ガス量の割合は、炭酸ガス(CO)を原料ガスとした場合において、最大で原料1に対して水素1.3であった。
炉内温度の解離率及び水素化率に対する影響として、実施例からは、炉内の温度が高くなると、解離率、水素化率とも高くなる傾向を示した。
原料投入から水素ガス製造までの炉内通過時間は最短5分であった。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明により、原料ソースとして、火力発電所などの燃焼排ガスや大気から水素ガスを製造することが可能となり、一方、製造された水素ガスの用途として、水素ガスを直接利用した燃料電池やメタン化を介した火力発電所、既存の都市ガス導管への接続も可能である。また、本発明により、大規模発電に加え、僻地での事業性の高い小規模分散電源を可能とすることができる。
さらに、本発明は、環境分野でも、排ガス中や大気中の汚染物質を分解できる可能性が期待できる。
図1
図2