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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024063299
(43)【公開日】2024-05-13
(54)【発明の名称】縦型加熱炉
(51)【国際特許分類】
   F27B 9/20 20060101AFI20240502BHJP
   F27B 9/02 20060101ALI20240502BHJP
   F27D 5/00 20060101ALI20240502BHJP
【FI】
F27B9/20
F27B9/02
F27D5/00
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022171104
(22)【出願日】2022-10-26
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-07-31
(71)【出願人】
【識別番号】000004293
【氏名又は名称】株式会社ノリタケカンパニーリミテド
(74)【代理人】
【識別番号】100117606
【弁理士】
【氏名又は名称】安部 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(72)【発明者】
【氏名】岡島 上士
【テーマコード(参考)】
4K050
4K055
【Fターム(参考)】
4K050AA01
4K050CA13
4K050CA15
4K050CC07
4K050CD06
4K050CG01
4K050CG29
4K050EA04
4K050EA08
4K055AA05
4K055NA05
(57)【要約】
【課題】処理条件を制御する。
【解決手段】縦型加熱炉10は、炉体11と、ヒータ25と、搬送装置20とを備えている。炉体11は、高さ方向に沿って被搬送物Aが搬送される炉内空間12を内部に有している。ヒータ25は、炉内空間12に設けられている。搬送装置20は、炉内空間12に設定された、被搬送物Aが搬送される搬送領域12aにおいて、高さ方向に沿って被搬送物Aを搬送する。炉体11には、炉内空間12を高さ方向に沿って加熱ゾーンZ1~Z5を仕切る、仕切り19が設けられている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高さ方向に沿って被搬送物が搬送される炉内空間を内部に有する炉体と、
前記炉内空間に設けられたヒータと、
前記炉内空間に設定された、前記被搬送物が搬送される搬送領域において、高さ方向に沿って前記被搬送物を搬送する搬送装置と
を備え、
前記炉体には、前記炉内空間を高さ方向に沿って加熱ゾーンを仕切る、少なくとも一つの仕切りが設けられている、縦型加熱炉。
【請求項2】
前記仕切りには、高さ方向に沿って前記被搬送物および前記搬送装置が通る貫通孔が形成されている、請求項1に記載された縦型加熱炉。
【請求項3】
前記炉体は、直方体状に形成されており、かつ、少なくとも一つの着脱可能な側壁を有する、請求項1または2に記載された縦型加熱炉。
【請求項4】
前記炉体は、互いに対向する一対の着脱可能な側壁を有している、請求項3に記載された縦型加熱炉。
【請求項5】
前記着脱可能な側壁と隣り合う一対の側壁は、前記仕切りを支持する支持部を有しており、
前記仕切りは、前記一対の側壁の前記支持部に架け渡されている、請求項3に記載された縦型加熱炉。
【請求項6】
前記仕切りは、前記着脱可能な側壁が取り外される方向に沿って分割可能に構成されている、請求項5に記載された縦型加熱炉。
【請求項7】
前記仕切りには、高さ方向に沿って前記被搬送物および前記搬送装置が通る貫通孔が形成されており、前記貫通孔は、分割可能に構成された前記仕切りの境界に形成されている、請求項6に記載された縦型加熱炉。
【請求項8】
前記支持部は、前記一対の側壁から前記炉体の内側に向かって突出した部位である、請求項5に記載された縦型加熱炉。
【請求項9】
前記支持部は、前記一対の側壁の幅方向に沿って延びている、請求項8に記載された縦型加熱炉。
【請求項10】
前記一対の側壁は、前記支持部の上方に、前記仕切りを押さえる押さえ部を有している、請求項8に記載された縦型加熱炉。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、縦型加熱炉に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2022-037806号公報には、被搬送物を炉体内空間において上下方向に搬送可能な縦型加熱炉が開示されている。同公報に開示されている縦型加熱炉は、複数本の送り支持部材と、複数本の送り支持部材それぞれから突き出す複数の支持突起と、複数本の送り支持部材の駆動を制御する駆動制御装置とを備えている。複数本の送り支持部材は、炉体内において被搬送物の周りに設けられており、上下方向に長手状に形成されている。複数の支持突起は、それぞれ被搬送物の外周部を一定の間隔を上下方向に隔てた状態で支持する。駆動制御装置は、複数の送り支持部材に対して、往復運動および回転運動を駆動する。これによって、複数個の被搬送物は、上方向または下方向に送られる。
【0003】
このような縦型加熱炉では、被搬送物の厚みに沿った方向に被搬送物を並べて処理することができる。これによって、水平方向に沿って被搬送物が並べて処理される連続加熱炉と比較して被搬送物が搬送される距離を短くしやすく、炉内空間を狭くしやすい。炉内空間が狭くなることによって炉内を加熱するエネルギーが少なくて済み、設備が省エネルギー化されやすいとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2022-037806号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、加熱炉内の雰囲気は、被処理物の処理温度に応じて、予め設定された処理温度に制御される。しかしながら、縦型加熱炉では、相対的に高い温度に加熱された雰囲気ガスは上昇し、相対的に低い温度の雰囲気ガスは下降しうる。このため、縦型加熱炉では、被搬送物が搬送される高さ方向に沿って処理条件を制御しにくい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ここで開示される縦型加熱炉は、高さ方向に沿って被搬送物が搬送される炉内空間を内部に有する炉体と、炉内空間に設けられたヒータと、炉内空間に設定された、被搬送物が搬送される搬送領域において、高さ方向に沿って被搬送物を搬送する搬送装置とを備えている。炉体には、炉内空間を高さ方向に沿って加熱ゾーンを仕切る、少なくとも一つの仕切りが設けられている。かかる縦型加熱炉では、高さ方向に沿って処理条件が制御されやすい。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、縦型加熱炉10の模式的な断面図である。
図2図2は、縦型加熱炉10の模式的な断面図である。
図3図3は、炉体11の模式図である。
図4図4は、制御装置60による制御を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本開示における実施形態の1つについて、図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の図面においては、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付して説明している。また、各図における寸法関係(長さ、幅、厚み等)は実際の寸法関係を反映するものではない。上、下、左、右、前、後の向きは、図中、U、D、L、R、F、Rrの矢印でそれぞれ表されている。ここで、上、下、左、右、前、後の向きは、説明の便宜上、定められているにすぎず、特に言及されない限りにおいて本願発明を限定しない。本明細書において、「高さ方向」は、図中の矢印で示される上下方向と一致している。「炉体の幅方向」は、図中の矢印で示される左右方向または前後方向と一致している。また、「炉体の幅方向」は、炉体の側壁の厚み方向と一致している。
【0009】
〈縦型加熱炉10〉
図1および図2は、縦型加熱炉10の模式的な断面図である。図1では、縦型加熱炉10の高さ方向に沿った断面が示されている。なお、図1では、回転体に支持されている被搬送物Aの図示が一部省略されている。図2は、図1のII-II線に沿った炉体11の断面が示されている。図2では、被搬送物Aを支持しうる時の回転体31,32,41,42の位置は、実線で示されており、被搬送物Aを支持ない時の回転体31,32,41,42の位置は、破線で示されている。図2では、炉体11によって隠れている仕切り19の位置は、二点鎖線で示されている。図1および図2では、炉体11の断面のハッチングは省略されている。図3は、炉体11の模式図である。図3では、側壁16および仕切り19が取り外された状態の炉体11が模式的に示されている。取り外された仕切り19は、仮想的に炉体11と並べて記載されている。図3では、ヒータ25、温度センサ28、貫通孔14b,14c,15b,15c等の図示は省略されている。
【0010】
図1に示されているように、縦型加熱炉10は、炉体11と、搬送装置20とを備えている。縦型加熱炉10は、搬送装置20を制御する制御装置60をさらに備えている。縦型加熱炉10では、被搬送物Aが高さ方向に沿って搬送される。縦型加熱炉10は、被処理物を加熱処理するためのヒータ25を備えている。被処理物(図示省略)は、被搬送物Aに載せられた状態で炉体11内を搬送されつつ加熱処理される。
【0011】
この実施形態では、被搬送物Aは、板状である。かかる板状の被搬送物Aは、セッターとも称される。被搬送物Aとしては、特に限定されないが、所要の耐熱性および耐反応性を有する材料から構成されるものが適宜選択されうる。この実施形態では、セラミック製の被搬送物Aが用いられている。図2に示されているように、被搬送物Aは、平面視において略正方形状である。被搬送物Aは、一対の第1側面A1(以下、単に側面A1とも称する)と、一対の第2側面A2(以下、単に側面A2とも称する)と、上面と、下面とを有している。一対の第1側面A1は、互いに略平行に形成されている。一対の第2側面A2は、互いに略平行に形成されている。この実施形態では、被搬送物Aの上面には、縦型加熱炉10内で加熱処理される被処理物が載せられる。なお、被搬送物は、かかる形態に限定されない。被搬送物は、例えば、サヤまたは匣鉢とも称される箱状のものであってもよい。被搬送物には、蓋が載せられてもよい。また、被搬送物として、例えば、板状の被処理物が直接搬送されてもよい。
【0012】
〈炉体11〉
炉体11は、図1に示されているように、高さ方向に沿って被搬送物Aが搬送される炉内空間12を内部に有している。炉内空間12において、被搬送物Aが搬送される搬送領域12aが設定されている。搬送領域12aは、高さ方向に沿って搬送される被搬送物Aが搬送される領域である。搬送領域12aは、高さ方向において、被搬送物Aが搬入される高さから搬出される高さに設定されている。搬送領域12aは、炉体11の幅方向(左右方向および前後方向)において炉内空間12の略中央部に設定されている。搬送領域12aは、高さ方向に直交する平面において、被搬送物Aの平面形状に対応した形状(この実施形態では、略正方形状)でありうる。
【0013】
この実施形態では、炉体11は、略直方体状に形成されている。炉体11は、炉体11の幅方向と比較して炉体11の高さ方向(上下方向)に長く形成されている。炉体11は、板状の側壁14~17(図1および図2参照)と、底面部13と、天井部18とを有している。炉内空間12は、側壁14~17、底面部13および天井部18に囲まれている。
【0014】
この実施形態では、炉体11の側壁14~17と、底面部13と、天井部18は、断熱材によって構成されている。断熱材としては、例えば、所定の形状に成形されたセラミックファイバーボードが用いられうる。セラミックファイバーボードは、いわゆるバルクファイバーに無機フィラーと無機・有機結合材とが添加されて板状に成形された板材である。炉体11は、例えば、セラミックファイバーボードが炉体11の厚み方向に重ねられて構成されうる。炉体11の側壁14~17と、底面部13と、天井部18の厚みは、炉内空間12の熱が十分に断熱される程度の所要の厚さに設定されている。
【0015】
〈底面部13〉
底面部13は、板状の断熱部材である。この実施形態では、底面部13は、略矩形状である。底面部13は、中央部13aと、端部13bとを有している。中央部13aは、炉体11の炉内空間12に露出する部位である。端部13bは、略正方形状の底面部13の縁に沿って形成されている。端部13bは、中央部13aと比較して厚みが薄く形成されている。底面部13の端部13bには、側壁14~17の下端が載せられる。中央部13aには、貫通孔13cが形成されている。貫通孔13cには、搬送装置20の軸34,44が挿通される。
【0016】
〈側壁14,15〉
側壁14,15は、板状の断熱部材である。側壁14,15は、底面部13から上方に延びている。図2に示されているように、側壁14および側壁15は、左右方向において互いに対向している。側壁14,15の幅方向において、側壁14,15と底面部13の幅は、略同一である。
【0017】
図1に示されているように、側壁14は、凸部14aを有している。凸部14aは、板状の側壁14の一方の面から炉体11の内側に向かって突出した部位である。凸部14aは、側壁14の幅方向に沿って延びている。凸部14aが突出する方向の断面は、略矩形状である。凸部14aは、上面14uおよび下面14dを有している。上面14uおよび下面14dは、側壁14の幅方向および凸部14aが突出する方向において略平坦な面である。隣り合う凸部14aにおいて、それぞれの上面14uと下面14dは互いに対向している。
【0018】
側壁14の幅方向に沿った凸部14aの長さは、底面部13の中央部13aと略同一に設定されている。この実施形態では、側壁14は、複数の凸部14aを有している。複数の凸部14aは、側壁14の下方から上方に向かって予め定められた間隔で設けられている。この実施形態では、複数の凸部14aの間の間隔は、後述する仕切り19に合わせて設定されている。複数の凸部14aの間の間隔は、仕切り19の厚みよりも広く設定されている。
【0019】
凸部14aのうち、最も下方の凸部14a1および最も上方の凸部14a2には、炉体11の内側に向かってさらに突出した部位がそれぞれ形成されている。当該突出した部位は、側壁14の幅方向における凸部14a1,14a2の端部を除いて形成されている。凸部14aのうち、最も下方の凸部14a1は、底面部13の中央部13aに載せられている。このため、側壁14では、下端が底面部13の端部13bに支持され、凸部14a1が中央部13aに支持されている。
【0020】
側壁15は、側壁14と対向する位置に設けられている。側壁15の形状および底面部13に対する位置は、側壁14と対向する方向において対称である。側壁15は、凸部14aと同数の凸部15aを有している。凸部15aは、側壁14の凸部14aと同様、側壁15の一方の面から炉体11の内側に向かって突出した部位である。側壁15の凸部15aの形状および寸法は、側壁14の凸部14aと同様であるので、詳細な説明は省略する。複数の側壁15の凸部15aは、それぞれ側壁14の凸部14aと対向する位置に設けられている。側壁15は、側壁14と同様、下端が底面部13の端部13bに支持され、最も下方の凸部15a1が中央部13aに支持されている。
【0021】
側壁14の凸部14aと側壁15の凸部15aには、仕切り19が載せられ支持されうる。換言すると、一対の側壁14,15は、仕切り19を支持する支持部としての凸部14a,15aを有している。ここでは、仕切り19は、凸部14a,15aの上面14u,15uに載せられることで、一対の側壁14,15に支持される。また、仕切り19が載せられている凸部14a,15aの上面14u,15uと対向する凸部14a,15aの下面14d,15dは、仕切り19を押さえる押さえ部として作用しうる。
【0022】
側壁14,15には、貫通孔14b,14c,15b,15cが形成されている。貫通孔14b,14c,15b,15cは、側壁14,15のうち、凸部14a,15aを貫通している。貫通孔14b,15bには、ヒータ25が挿通されている。貫通孔14c,15cには、後述する温度センサ28が挿通されている。
【0023】
〈側壁16,17〉
側壁16,17(図2参照)は、板状の断熱部材である。図2に示されているように、側壁16および側壁17は、前後方向において互いに対向している。側壁16,17の幅は、底面部13の中央部13a(図1参照)の幅と略同一である。側壁16,17の高さは、側壁14,15と略同一である。側壁16,17は、底面部13の端部13b(図1参照)に載せられている。詳細な図示は省略するが、側壁16,17の周囲は、底面部13、側壁14,15および天井部18によって囲まれている。
【0024】
側壁16,17は、炉体11の内側に向かって突出した複数の凸部16a,17aを有している。側壁16,17の凸部16a,17aは、側壁14,15の凸部14a,15aと同一の高さにおいて同数設けられている。凸部16a,17aの高さ方向における寸法は、側壁14,15の凸部14a,15aと略同一である。凸部16a,17aの、側壁16,17の幅方向における長さは、側壁14の凸部14aと側壁15の凸部15aの間の間隔と略同一である。このため、炉体11の内部において、凸部14a~17aは、略同一の高さにおいて連続している。
【0025】
側壁16,17には、貫通孔16b,17bが形成されている。貫通孔16b,17bには、ヒータ25が挿通されている。
【0026】
〈天井部18〉
天井部18(図1参照)は、板状の断熱部材である。図1に示されているように、天井部18は、高さ方向において底面部13と対称の形状である。天井部18は、中央部18aと、端部18bとを有している。天井部18の中央部18aと端部18bは、底面部13の中央部13aおよび端部13bと同様の形状であるので、詳細な説明は省略する。天井部18は、底面部13に支持された側壁14,15に支持されている。天井部18の端部13bは、側壁14,15の上端に支持され、天井部18の中央部18aの一部は、側壁14,15の最も上方の凸部14a2,15a2に支持されている。中央部18aには、貫通孔18cが形成されている。貫通孔18cには、搬送装置20の軸33,43が挿通される。
【0027】
炉体11には、被搬送物Aを搬入するための搬入口11aおよび被搬送物Aを搬出するための搬出口11bが設けられている。この実施形態では、搬入口11aは、炉体11の下部に設けられている。搬出口11bは、炉体11の上部に設けられている。被搬送物Aは、炉内空間12内を下方から上方に向かって搬送される。
【0028】
搬入口11aは、側壁14に設けられている。搬入口11aは、側壁14の凸部14a1を側壁14の厚み方向に沿って貫通して形成されている。搬入口11aからは、搬入装置21によって被搬送物Aが順次搬入される。詳細な説明は省略するが、搬入装置21は、搬入口11aを介して接続されている搬入室21aから炉体11内に被搬送物Aを搬入するための装置でありうる。
【0029】
搬出口11bは、側壁15に設けられている。搬出口11bは、側壁15の凸部15a2を側壁15の厚み方向に沿って貫通して形成されている。搬出口11bからは、搬出装置22によって被搬送物Aが順次搬出される。詳細な説明は省略するが、搬出装置22は、搬出口11bを介して接続されている搬出室22aに炉体11内から被搬送物Aを搬出するための装置でありうる。
【0030】
炉体11は、基台26に載せられている。基台26は、炉体11が載せられている面とは反対側に、空間を有していてもよい。当該空間には、例えば、炉内空間12内に雰囲気ガスを給排気するための配管、回転体を駆動する駆動装置等が配置されていてもよい。
【0031】
炉体11の側面および上面は、外壁27によって囲まれている。外壁27は、所要の耐熱性および強度を有する金属製の板によって構成されうる。外壁27は、例えば、ステンレス製の板でありうる。この実施形態では、外壁27は、略矩形の板である。炉体11の天井部18には、外壁27aが取り付けられている。外壁27aは、天井部18よりも幅広に形成されている。外壁27aの縁部は、炉体11よりも外側に突出している。炉体11の側面(側壁14~17)は、周囲を外壁27bに囲まれている。外壁27bの上方および下方の端部は、屈曲されている。外壁27bの当該屈曲された部分は、外壁27aの突出した部分および基台26に接続されている。外壁27bと側壁14~17との間には、空間が形成されている。当該空間には、例えば、炉内空間12内に雰囲気ガスを給排気するための配管、ヒータ25の電極等が配置されうる。
【0032】
図示は省略するが、炉体11には、ガス供給管およびガス排気管が設けられていてもよい。ガス供給管は、炉体11内に雰囲気ガスを供給するための配管である。ガス供給管には、雰囲気ガスを供給するためのガスボンベが接続されうる。特に限定されないが、雰囲気ガスとしては、例えば、窒素、アルゴン、空気、酸素、二酸化炭素、水素等が用いられうる。雰囲気ガスは、被処理物の加熱条件等に応じて適宜選択される。ガス排気管は、炉体11内から雰囲気ガスを排気するための配管である。ガス排気管には、排気ポンプ等の排気装置が接続されうる。被処理物から反応ガスが発生した場合に、ガス排気管からは、当該反応ガスが排気される。炉体11にガス供給管およびガス排気管が設けられていることによって、炉体11内の雰囲気が調整されうる。
【0033】
〈搬送装置20〉
搬送装置20は、被搬送物Aを高さ方向に沿って搬送する装置である。搬送装置20は、被搬送物Aを炉内空間12に設定された、搬送領域12aに沿って搬送する。この実施形態では、搬送装置20は、被搬送物Aを下方から上方に向かって順次搬送することができるように構成されている。被搬送物Aを高さ方向に沿って搬送可能である限りにおいて、搬送装置20の構成は、特に限定されない。
【0034】
この実施形態では、搬送装置20は、複数の回転体31,32,41,42(図2参照)と、回転装置50と、昇降装置55とを備えている。図2に示されているように、回転体31,32,41,42は、炉内空間12に設けられており、高さ方向に延びる略矩形の板状に形成されている。回転体31,32は、被搬送物Aを支持する複数の支持部30aを有している。回転体41,42は、被搬送物Aを支持する複数の支持部40aを有している。複数の支持部30a,40aは、高さ方向に沿って略一定の間隔で設けられている。
【0035】
図1に示されているように、回転体31,32の上端には、軸33が取り付けられている。回転体41,42の上端には、43が取り付けられている。軸33,43は、天井部18に形成された貫通孔18cに挿通されている。回転体31,32は、軸33を介して回転装置50と接続されている。回転体41,42は、軸43を介して回転装置50および昇降装置55と接続されている。回転体31,32の下端には、軸34が取り付けられている。回転体41,42の下端には、軸44が取り付けられている。軸34,44は、底面部13に形成された貫通孔13cに挿通されている。回転体31,32は、軸34を介してガイド29に挿通されている。回転体41,42は、軸44を介してガイド29に挿通されている。軸33,34は、高さ方向において重なる位置に設けられている。軸43,44は、高さ方向において重なる位置に設けられている。回転体31,32の回転軸は、軸33,34によって設定されている。回転体41,42の回転軸は、43,44によって設定されている。軸33,34,43,44は、搬送領域12aの周囲に配置されている。この実施形態では、高さ方向に直交する平面において略正方形状に設定された搬送領域12aの角部の外側に配置されている。
【0036】
回転体31,32,41,42は、回転装置50(図1参照)によって回転駆動されることによって、被搬送物Aを支持する支持姿勢と、被搬送物Aを支持しない非支持姿勢が切り替えられる。図2に示されているように、回転体31,32,41,42は、支持姿勢から時計回りに90度回転することによって、非支持姿勢に切り替えられる。また、回転体31,32,41,42は、非支持姿勢から反時計回りに90度回転することによって、支持姿勢に切り替えられる。回転体31,32,41,42の支持姿勢および非支持姿勢の切り替えは、それぞれの回転体において独立に制御されていてもよい。
【0037】
被搬送物Aは、回転体31,32,41,42のうち回転体41,42に支持された状態で上方に搬送される。このとき、回転体31,32は、非支持姿勢にされている。回転体41,42によって上方に搬送された被搬送物Aは、非支持姿勢であった回転体31,32が支持姿勢にされ、回転体31,32に支持される。この状態で、回転体41,42が非支持姿勢にされ、下方に搬送される。次いで、回転体41,42が支持姿勢にされ、回転体31,32が非支持姿勢にされる。このように、回転体31,32,41,42の回転と、回転体41,42の昇降が組み合わせられることによって、被搬送物Aは、上方に向かって順次搬送される。搬送装置20の具体的な構成及び動作については、後述する。
【0038】
被搬送物Aに載せられた被処理物は、搬送装置20によって搬入口11aから搬出口11bに向かって搬送される間に、ヒータ25によって加熱処理される。
【0039】
〈ヒータ25〉
ヒータ25は、炉体11の炉内空間12に設けられている。ヒータ25は、被搬送物Aに載せられた被処理物を加熱処理するための装置である。この実施形態では、ヒータ25は、円筒形状である。ヒータ25は、側壁14~17に形成された貫通孔14b~17bから炉体11の内部に挿通されている。ヒータ25は、炉体11内において搬送領域12aと搬送装置20を囲う位置に設けられている。ヒータ25は、炉体11の幅方向において搬送領域12aの周囲に設けられている。ヒータ25は、搬送装置20と干渉しないように、搬送装置20の可動域よりも外側に設けられている。
【0040】
図1および図2に示されているように、炉体11には、搬送領域12aを挟んで同じ高さに並べられた一対のヒータ25が設けられている。当該同じ高さに並べられた一対のヒータ25は、炉体11の高さ方向に沿って予め定められた間隔で配置されている。この実施形態では、側壁14,15に挿通された一対のヒータ25と、側壁16,17に挿通された一対のヒータ25は、炉体11の高さ方向に沿って交互に配置されている(図1参照)。互いに異なる方向に沿って延びるヒータ25が高さ方向に沿って交互に並べられていることによって、炉内空間12において温度ムラが発生しにくい。このため、被搬送物Aの加熱条件を合わせやすい。
【0041】
なお、ヒータ25の種類は、特に限定されない。例えば、ヒータは、セラミック製のヒータであってもよく、金属製のヒータであってもよい。ヒータは、円筒形状のものに限られず、例えば、板状のパネルヒータが用いられていてもよい。ヒータの種類および形状は、目的とする加熱温度等の加熱条件に応じて適宜選択されうる。
【0042】
図1に示されているように、炉体11の炉内空間12には、高さ方向に沿って複数のゾーン(領域)が設定されている。この実施形態では、炉内空間12は、下方から上方に向かって、搬入ゾーンZ0、第1加熱ゾーンZ1、第2加熱ゾーンZ2、第3加熱ゾーンZ3、第4加熱ゾーンZ4、第5加熱ゾーンZ5、搬出ゾーンZ6に仕切られている。搬入ゾーンZ0には、搬入口11aが設けられている。搬出ゾーンZ6には、搬出口11bが設けられている。第1加熱ゾーンZ1~第5加熱ゾーンZ5には、それぞれヒータ25が設けられている。
【0043】
第1加熱ゾーンZ1~第5加熱ゾーンZ5は、異なる雰囲気温度に設定されている。各ゾーンZ0~Z6は、仕切り19によって仕切られている。
【0044】
〈仕切り19〉
仕切り19は、所要の耐熱性を有する板状の断熱部材である。仕切り19は、例えば、セラミックファイバーボードから構成されうる。仕切り19は、炉体11に設けられている。仕切り19は、炉体11の側壁14~17に支持されている。この実施形態では、仕切り19は、互いに対向する一対の側壁14,15に架け渡されている。仕切り19は、側壁14,15の支持部としての凸部14a,15aの上面14u,15uに支持されている。仕切り19は、載せられている支持部14a,15aのひとつ上方の支持部14a,15aの下面14d,15dの間隙によって形成された溝に配置されている。換言すると、仕切り19は、一対の側壁14,15において、幅方向に沿って形成された溝によって支持されている。側壁14,15が対向する方向において、仕切り19の端部は、溝に挿通され、支持されている。
【0045】
この実施形態では、炉体11には、複数の仕切り19a~19fが設けられている。それぞれの仕切り19a~19fは、炉体11の高さ方向に沿って加熱ゾーンZ1~Z5を仕切っている。仕切り19は、また、搬入ゾーンZ0および搬出ゾーンZ6を、加熱ゾーンZ1~Z5から仕切っている。
【0046】
この実施形態では、仕切り19の外形形状は、炉体11の形状に合わせて略矩形状に形成されている。板状の仕切り19の一方の面は底面部13に向けられており、他方の面は天井部18に向けられている。
【0047】
この実施形態では、仕切り19は、複数の部材から構成されており、分割可能に構成されている。図2に示されているように、仕切り19は、第1部19g1と、第2部19g2とから構成されている。仕切り19を構成する第1部19g1と第2部19g2の境界は、側壁14,15が対向する方向に沿って形成されている。第1部19g1と第2部19g2の境界は、側壁14,15の幅方向において仕切り19の略中央部を通る直線状に形成されている。
【0048】
仕切り19において、第1部19g1は、側壁16(図2参照)側に配置されており、第2部19g2は、側壁17(図2参照)側に配置されている。なお、仕切り19を構成する第1部19g1と第2部19g2の形態は、特に限定されない。第1部19g1と第2部19g2は、それぞれ対向する面が合わせられた状態で単に並べられて仕切り19を構成していてもよい。第1部19g1と第2部19g2は、一方が他方に対して嵌まり合う構造を有しており、第1部19g1と第2部19g2が接続された状態で仕切り19を構成してもよい。また、仕切り19は、3つ以上の部材に分割可能に構成されていてもよい。
【0049】
仕切り19には、炉体11の高さ方向(仕切り19の厚み方向)に沿って貫通する貫通孔19hが形成されている。貫通孔19hは、仕切り19を、被搬送物Aが搬送される方向に沿って貫通している。貫通孔19hは、搬送装置20が挿通され、かつ、被搬送物Aが通過できる形状に形成されている。
【0050】
この実施形態では、貫通孔19hは、被搬送物Aが通過する第1孔部19h1と、搬送装置20が挿通されている第2孔部19h2によって構成されている。第1孔部19h1は、仕切り19の略中央部に形成されている。第1孔部19h1は、被搬送物Aが通過可能な寸法および形状である。この実施形態では、第1孔部19h1は、被搬送物Aの形状に合わせて、略矩形状に形成されている。第1孔部19h1は、炉体11の幅方向に沿った平面が略矩形状の搬送領域12aよりもわずかに大きく形成されている。
【0051】
第1孔部19h1では、第1孔部19h1を形成する仕切り19の内周面は、搬送領域12aを囲っている。仕切り19の内周面は、被搬送物Aが通過する際に、被搬送物Aの側面と対向する。このため、被搬送物Aが通過する際に、第1孔部19h1が形成されている部位において、仕切り19の内周面と被搬送物Aの間には、不可避的に隙間が形成される。各ゾーンZ0~Z6の雰囲気が高さ方向に沿って隣り合うゾーンに及ばないように、仕切り19の内周面と搬送領域12aの間の隙間は小さいことが好ましい。仕切り19の内周面と、搬送領域12aとの間の隙間は、仕切り19を構成する断熱材の膨張特性を考慮して定められうる。仕切り19の内周面と、搬送領域12aとの間の隙間は、例えば、炉内空間12が予め定められた最高温度になった際に、仕切り19が搬送領域12aに達しない最小限に設定されることが好ましい。
【0052】
第2孔部19h2では、第2孔部19h2を形成する仕切り19の内周面は、搬送装置20のうち回転体31,32,41,42の可動域を囲っている。この実施形態では、第2孔部19h2は、回転体31,32,41,42それぞれの可動域を囲っている。このため、仕切り19には、回転体31,32,41,42それぞれに対応した複数(この実施形態では、4つ)の第2孔部19h2が形成されている。第2孔部19h2は、それぞれ搬送領域12aの角部に形成されている。
【0053】
第2孔部19h2は、搬送装置20の可動域を囲う寸法および形状である。この実施形態では、回転体31,32,41,42は、それぞれ回転軸に沿って90度回転駆動されることによって、支持姿勢と非支持姿勢とが切り替えられる。第2孔部19h2は、回転体31,32,41,42が支持姿勢と非支持姿勢とが切り替えられる時に移動する領域よりも大きい略矩形状に形成されている。このため、第2孔部19h2が形成されている部位において、仕切り19の内周面と、回転体31,32,41,42との間には、不可避的に隙間が形成される。第1孔部19h1と同様に、第2孔部19h2が形成されている部位においても、各ゾーンZ0~Z6の雰囲気が高さ方向に沿って隣り合うゾーンに及ばないように、仕切り19の内周面と搬送領域12aの間の隙間は小さいことが好ましい。仕切り19の内周面と、回転体31,32,41,42の間の隙間は、第1孔部19h1と同様に、仕切り19を構成する断熱材の膨張特性を考慮して定められうる。
【0054】
第1孔部19h1と第2孔部19h2は、搬送領域12aの角部において繋がっている。仕切り19の貫通孔19hは、1つの第1孔部19h1と4つの第2孔部19h2から構成されている。なお、貫通孔19hの形態は、かかる形態に限定されない。貫通孔19hは、例えば、搬送領域12aと搬送装置20の両方が通るように十分な寸法を有する略矩形の孔であってもよい。貫通孔19hの形状は、略矩形状に限られず、円を含んだ楕円形状であってもよく、四角形を含んだ多角形形状であってもよい。貫通孔19hの形状は、被搬送物Aおよび搬送装置20の形状に応じて適宜変更されてもよい。また、仕切り19は、必ずしも貫通孔19hを有する必要はない。仕切り19は、例えば、側壁14~17のうち、一対の対向する側壁に架け渡された板状の断熱材によって構成されていてもよい。
【0055】
この実施形態では、図1に示されているように、炉体11には、炉体11の高さ方向に沿って6箇所に仕切り19a~19fが設けられている。仕切り19a~19fは、同一の形状である。仕切り19aは、搬入ゾーンZ0と第1加熱ゾーンZ1を仕切っている。仕切り19bは、第1加熱ゾーンZ1と第2加熱ゾーンZ2を仕切っている。仕切り19cは、第2加熱ゾーンZ2と第3加熱ゾーンZ3を仕切っている。仕切り19dは、第3加熱ゾーンZ3と第4加熱ゾーンZ4を仕切っている。仕切り19eは、第4加熱ゾーンZ4と第5加熱ゾーンZ5を仕切っている。仕切り19fは、第5加熱ゾーンZ5と搬出ゾーンZ6を仕切っている。なお、炉内空間12に設定されているゾーンの数および仕切り19の数は特に限定されない。
【0056】
仕切り19によって仕切られている第1加熱ゾーンZ1~第5加熱ゾーンZ5は、温度センサ28によって雰囲気温度が検出されている。
【0057】
〈温度センサ28〉
温度センサ28は、側壁14,15に形成された貫通孔14c,15cに挿通されている。温度センサ28は、それぞれ各加熱ゾーンZ1~Z5内の温度を検出している。特に限定されないが、各加熱ゾーンZ1~Z5には、対向する側壁14,15に挿通された2つずつの温度センサが設けられている。換言すると、各加熱ゾーンZ1~Z5では、異なる位置に温度センサ28が設けられている。各加熱ゾーンZ1~Z5において、異なる位置に設けられた複数の温度センサ28によって雰囲気温度が検出されている。これによって、各加熱ゾーンZ1~Z5の雰囲気温度の検出精度が向上しうる。
【0058】
この実施形態では、温度センサ28として、熱電対が用いられている。なお、温度センサ28は、熱電対に限られず、例えば、赤外線温度計等が用いられていてもよい。温度センサ28は、設定される温度に応じて適宜選択されうる。
【0059】
温度センサ28およびヒータ25は、図示しない温度制御装置に接続されている。温度制御装置は、仕切り19によって仕切られた各加熱ゾーンZ1~Z5内の温度を制御する。温度制御装置は、例えば、温度センサ28によって検出された加熱ゾーンZ1~Z5内の温度に応じて加熱ゾーンZ1~Z5に設けられているヒータ25の出力を制御しうる。
【0060】
温度制御装置によって、各加熱ゾーンZ1~Z5内の温度は、任意に設定されうる。この実施形態では、第1加熱ゾーンZ1の温度は、600度に設定されている。第2加熱ゾーンZ2の温度は、800度に設定されている。第3加熱ゾーンZ3の温度は、1000度に設定されている。第4加熱ゾーンZ4の温度は、800度に設定されている。第5加熱ゾーンZ5の温度は、650度に設定されている。なお、加熱ゾーンZ1~Z5の設定温度は、特に限定されず、被処理物の加熱処理温度等によって適宜設定されうる。
【0061】
上述した実施形態では、縦型加熱炉10は、炉体11と、ヒータ25と、搬送装置20とを備えている。炉体11は、高さ方向に沿って被搬送物Aが搬送される炉内空間12を内部に有している。ヒータ25は、炉内空間12に設けられている。搬送装置20は、炉内空間12に設定された、被搬送物Aが搬送される搬送領域12aにおいて、高さ方向に沿って被搬送物Aを搬送する。炉体11には、炉内空間12を高さ方向に沿って加熱ゾーンZ1~Z5を仕切る、仕切り19が設けられている。加熱ゾーンZ1~Z5がそれぞれ仕切り19によって仕切られていることによって、高さ方向に沿って隣り合うゾーン間において雰囲気が干渉しにくい。このため、各加熱ゾーンZ1~Z5における雰囲気が制御されやすくなり、隣り合うゾーン間において設定された温度差が実現されやすくなる。さらに、炉体11内に仕切り19が設けられていることによって、隣り合うゾーン間において大きな温度差を実現させやすくなる。この実施形態では、隣り合う加熱ゾーンZ1~Z5間で約200度の温度差が実現されている。このように、縦型加熱炉10では、仕切り19が設けられていることによって処理条件が制御されやすくなる。
【0062】
また、上述した縦型加熱炉10では、搬入ゾーンZ0と第1加熱ゾーンZ1は、仕切り19aによって仕切られている。搬出ゾーンZ6と第5加熱ゾーンZ5は、仕切り19fによって仕切られている。このため、搬入ゾーンZ0および搬出ゾーンZ6には、加熱ゾーンZ1~Z5の熱が及びにくくなっている。これによって、搬入ゾーンZ0に被搬送物Aを搬入する搬入装置21および搬出ゾーンZ6から被搬送物Aを搬出する搬出装置22の劣化が抑制されうる。
【0063】
なお、仕切り19a~19fを構成する材料および寸法は、必ずしも同じでなくてもよい。高い温度に設定されているゾーン間を仕切る仕切り19は、低い温度に設定されているゾーン間を仕切る仕切り19と比較して、耐熱性の高い材料が選択されうる。温度差が大きいゾーン間を仕切る仕切り19は、温度差の小さいゾーン間を仕切る仕切り19と比較して、厚い断熱材が選択されうる。このように、仕切り19a~19fの構成は、間を仕切る各ゾーンZ0~Z6の雰囲気温度および雰囲気ガスの種類等に応じて適宜選択されうる。
【0064】
上述した実施形態では、仕切り19には、高さ方向に沿って被搬送物Aおよび搬送装置20が通る貫通孔が形成されている。被搬送物Aが仕切り19を通過する領域が貫通孔19hによって設定されていることによって、被搬送物Aの周囲の全周に亘って隣り合うゾーン間の雰囲気が仕切られている。このため、例えば、隣り合うゾーン間が、例えば、一対の側壁に架け渡される板状の断熱材等で仕切られている場合と比較して、雰囲気の干渉がより抑えられやすい。その結果、加熱ゾーンZ1~Z5における雰囲気が制御されやすくなる。
【0065】
縦型加熱炉10では、各ゾーンZ0~Z6は、仕切り19に加えて、被搬送物Aによっても仕切られうる。上述したように、被搬送物Aは、貫通孔19hの第1孔部19h1を通過できる寸法に設定されている(図2参照)。このため、高さ方向において被搬送物Aが仕切り19と重なる高さを搬送されている際には、被搬送物Aによって貫通孔19hの中央部が塞がれる。被搬送物Aが貫通孔19hの中央部を塞ぐことによって、隣り合うゾーン間において雰囲気が干渉しにくくなる。特に限定されないが、被処理物の加熱処理中は、少なくとも1つの被搬送物Aが仕切り19a~19fそれぞれの高さに配置されていてもよい。これによって、各ゾーンZ0~Z6の雰囲気の干渉がより抑えられうる。
【0066】
特に限定されないが、被処理物が載せられた被搬送物Aが搬送される前、および、被処理物が載せられた被搬送物Aが搬送された後に、被処理物が載せられていない被搬送物Aが搬送されてもよい。被処理物が載せられていない被搬送物Aが搬送されることによって、各ゾーン間の温度が制御されやすくなる。これによって、被処理物が搬送され加熱処理されるタイミングによらず、略同一の条件で被処理物が加熱処理されうる。また、被処理物が載せられた被搬送物Aを、間欠的に回転体31,32,41,42の支持部30a,40aに配置して搬送する場合にも、間の支持部30a,40aに被処理物が載せられていない被搬送物Aが搬送されてもよい。このように、被処理物が載せられていない被搬送物Aが搬送されることによって、各ゾーンZ0~Z6の雰囲気の干渉がより抑えられてもよい。
【0067】
上述した縦型加熱炉10は、炉体11を分解できるように構成されている。この実施形態では、側壁14~17のうち、側壁16を炉体11から着脱可能に構成されている。換言すると、炉体11は、着脱可能な側壁16を有している。
【0068】
図2に示されているように、炉体11の側面を囲う外壁27bのうち、側壁16側の外壁27b1には、押さえ板27b2と、蓋27b3とが取り付けられている。押さえ板27b2は、外壁27b1よりも炉体11側に設けられている。押さえ板27b2は、外壁27b1の内側に取り付けられた状態で炉体11の側壁16に接している。これによって、側壁16が炉体11の外側に向かって傾くことを防がれている。外壁27b1と押さえ板27b2の間には、空間が形成されている。当該空間には、ヒータ25の電極等が収められうる。蓋27b3は、外壁27b1のうち、側壁16に挿通されているヒータ25と対応する位置に設けられている。蓋27b3を開けることによって、ヒータ25を側壁16,17から取り外すことができる。
【0069】
側壁16が取り外される際には、はじめに、蓋27b3が開けられ、側壁16,17に挿通されているヒータ25が取り外される。次いで、外壁27b1が取り外される。外壁27b1が取り外されると、次いで、側壁16を押さえる押さえ板27b2が側壁16から外される。これによって、側壁16は、外部に露出した状態になる。この状態で、側壁16は、炉体11から取り外される。側壁16には、炉体11からの着脱を容易にするための取っ手、窪み等が設けられていてもよい。なお、側壁16と押さえ板27b2が互いに接続されており、同時に取り外すことができるように構成されていてもよい。
【0070】
側壁16が取り外されることによって、炉体11の内部が露出される。炉体11の内部を露出させることによって、炉内設備(例えば、搬送装置20のうち、炉体11の内部に設けられた部分)の交換、清掃等のメンテナンスが可能になる。また、底面部13、側壁14,15,17、天井部18、仕切り19のうち、炉内空間12に露出している部分の清掃等のメンテナンスが可能になる。このように、側壁16が着脱可能に構成されていることによって、メンテナンス性が向上しうる。
【0071】
なお、炉体11には、側壁16以外にも着脱可能な部位が含まれていてもよい。例えば、炉体11は、側壁16と対向する側壁17も着脱可能に構成されていてもよい。側壁17を着脱可能とした場合の側壁17の構成は、側壁16と同様とすることができるので、詳細な説明は省略する。炉体11が互いに対向する一対の着脱可能な側壁16,17を有していることによって、炉体11内の一方からは届きにくい部分がメンテナンスされやすくなる。これによって、メンテナンス性がより向上しうる。
【0072】
上述した実施形態では、着脱可能な側壁16と隣り合う一対の側壁14,15は、仕切り19を支持する支持部(この実施形態では、凸部14a,15aの上面14u,15u)を有している。仕切り19は、一対の側壁14,15の支持部に架け渡されている。このため、側壁16を取り外した場合にも、仕切り19がずれたり落下したりする事象が起こりにくい。これによって、仕切り19のメンテナンス性が向上しうる。
【0073】
上述した実施形態では、着脱可能な側壁16と隣り合う一対の側壁14,15は、支持部(この実施形態では、凸部14a,15aの上面14u,15u)の上方に、仕切り19を押さえる押さえ部(この実施形態では、凸部14a,15aの上面14u,15uと対向する凸部14a,15aの下面14d,15d)を有している。仕切り19が下方から支持されているだけではなく、上方からも押さえられていることによって、仕切り19の脱落が抑制されうる。また、仕切り19が炉体11内に支持された状態でのメンテナンスしたい場合にも、仕切り19が脱落しにくくなっており、仕切り19、炉体11内部等のメンテナンス性が向上しうる。
【0074】
上述した実施形態では、仕切り19は、第1部19g1と、第2部19g2とから構成されており、分割可能に構成されている。仕切り19を構成する第1部19g1と第2部19g2は、着脱可能な側壁16が取り外される方向(側壁16,17が対向する方向)に沿って分割可能に構成されている。このため、側壁16を取り外した状態で第1部19g1を取り外すことができる。また、互いに対向する側壁16,17が炉体11に対して着脱可能に構成されている場合には、第1部19g1および第2部19g2を、それぞれ反対方向から取り外すことができる。これによって、仕切り19が交換されやすくなり、仕切り19のメンテナンス性が向上しうる。また、被処理物の加熱条件に応じて適切な材質および寸法の仕切り19を設置することができる。
【0075】
上述した実施形態では、仕切り19には、高さ方向に沿って被搬送物Aおよび搬送装置20が通る貫通孔19hが形成されている。貫通孔19hは、分割可能に構成された仕切り19の境界に形成されている。これによって、仕切り19を構成する第1部19g1が取り外されると、側壁16側から搬送装置20が交換および清掃されやすくなる。第2部19g2が取り外されると、側壁17側から搬送装置20が交換および清掃されやすくなる。このため、搬送装置20のメンテナンス性が向上しうる。
【0076】
なお、側壁16,17のうち、側壁16のみが着脱可能な場合には、仕切り19の第1部19g1が取り外された後に、搬送装置20が炉体11内部から取り出されてもよい。この状態で、仕切り19の第2部19g2が側壁16側から取り外されてもよい。
【0077】
上述した実施形態では、仕切り19を支持する支持部は、一対の側壁14,15から炉体11の内側に向かって突出した凸部14a,15aである。仕切り19を凸部14a,15aの上面14u,15uに載せたり、凸部14a,15aの上面14u,15uから降ろしたりすることによって、仕切り19の清掃、交換等のメンテナンスをすることができる。このため、仕切り19および炉体11の内部のメンテナンスがより容易になりうる。
【0078】
上述した実施形態では、仕切り19の支持部としての凸部14a,15aは、一対の側壁14,15の幅方向に沿って延びている。このため、凸部14a,15a上をスライドさせながら仕切り19を外すことができる。このため、仕切り19の着脱が容易である。また、仕切り19が炉体11に取り付けられている時には、仕切り19の両端は、側壁14,15の凸部14a,15aによって線状に支持されている。このため、仕切り19がずれたり脱落したりしにくい。
【0079】
なお、仕切り19を支持する支持部は、上述した凸部14a,15aの形態に限定されない。支持部は、例えば、側壁14~17において、それぞれの側壁の幅方向に沿って間欠的に設けられた突起であってもよい。側壁14~17のうち、一対の側壁(例えば、側壁14,15)に架け渡された板状の部材であってもよい。
【0080】
以下、本発明に用いられる搬送装置20の構成および動作の一例について説明する。しかしながら、搬送装置20の構成および動作は、以下で説明される形態に限定されず、種々の変更が可能である。
【0081】
上述したように、搬送装置20は、複数の回転体31,32,41,42(図2参照)と、回転装置50と、昇降装置55とを備えている。
【0082】
〈複数の回転体31,32,41,42〉
回転体31,32,41,42は、耐熱性に優れた材料によって形成されている。この実施形態では、回転体31,32,41,42は、セラミック製である。回転体31,32,41,42は、略同一形状に形成されている。回転体31,32は、上端部と下端部がそれぞれブラケット33a,34aに装着されて保持されている。回転体31,32の上端部および下端部には、高さ方向に沿った軸33,34が取り付けられている。回転体31,32の軸33,34は、ブラケット33a,34aから上方および下方にそれぞれ延びるように設けられている。回転体41,42は、上端部と下端部がそれぞれブラケット43a,44aに装着されて保持されている。回転体41,42の上端部および下端部には、高さ方向に沿った軸43,44が取り付けられている。回転体41,42の軸43,44は、ブラケット43a,44aから上方および下方にそれぞれ延びるように設けられている。回転体41,42の軸43,44は、ブラケット43a,44aに一体的に設けられていてもよい。ブラケット33a,34a,43a,44aおよび軸33,34,43,44は、所要の耐熱性と機械強度を有する金属製の部材であるとよい。
【0083】
回転体41,42は、回転体31,32とは異なる位置に配置されている。この実施形態では、回転体31,32および回転体41,42は、前後方向および左右方向において略正方形状に設定された搬送領域12aの角部の外側にそれぞれの回転軸が設けられるように配置されている。以下、回転体31の形状について説明する。回転体32,41,42の構成は、回転体31と同様であるので、詳細な説明は省略する。
【0084】
図1に示されているように、回転体31は、高さ方向に延びる略矩形の板状に形成されている。回転体31の高さは、回転体の幅および厚みと比べて長い。回転体31は、高さ方向において炉内空間12に収められる寸法である。回転体31の長さは、炉体11の底面部13と天井部18の間の距離よりも短く、かつ、高さ方向に沿った搬送領域の距離よりも長い。
【0085】
この実施形態では、複数の支持部30aは、回転体31の一方の面において、高さ方向に沿って予め定められた間隔で設けられている。この実施形態では、支持部30a,40aの間隔は、被搬送物Aの厚みよりも広い間隔である。支持部30aの間隔は、被搬送物Aの寸法等に応じて適宜選択されうる。
【0086】
図2に示されているように、支持部30aは、平面視において、基端から先端に向かってわずかに幅が狭くなった略台形形状である。支持部30aは、被搬送物Aを支持する上端面を有している。支持部30aの上端面は、略水平な平面である。換言すると、支持部30aの上端面は、基端から先端に向かって傾斜していない。これによって、支持部30aの上端面に載せられた被搬送物Aがずれにくい。支持部30aの上端面とは反対側の面は、支持部30aの先端から基端に向かって徐々に厚みが厚くなるように傾斜している。これによって、支持部30aの強度が向上されている。例えば、縦型加熱炉10が長期使用に伴って支持部30aに負荷がかかった場合にも、支持部30aが折れにくい。このため、縦型加熱炉10の耐久性が良好でありうる。なお、支持部30aの形状は、特に限定されない。
【0087】
上述したように、回転体31,32には、高さ方向(回転体31,32の長さ方向)に沿って回転軸が設定されている。回転軸は、回転体31,32の幅方向において一方に偏った位置に設定されている(図2参照)。軸33,34は、回転体31,32に設定されている回転軸に沿って取り付けられている。この実施形態では、軸33,34は、回転体31,32の幅方向の端部に取り付けられている。
【0088】
下方の軸34,44は、炉体11の底面部13に形成されている貫通孔13cに挿通されている。貫通孔13cと軸34,44の間は、断熱性および耐熱性を有するシール材によって隙間が埋められていてもよい。底面部13に挿通されている軸34,44は、基台26に取り付けられたガイド29に挿通されている。ガイド29は、基台26の裏面(炉体11が載せられている面とは反対側の面)に取り付けられている。ガイド29としては、例えば、ブッシュ等が用いられうる。
【0089】
図1に示されているように、上方の軸33,43は、炉体11の天井部18に形成されている貫通孔18cに挿通されている。貫通孔18cと軸33,43の間は、断熱性および耐熱性を有するシール材によって隙間が埋められていてもよい。軸33,43は、炉体11の外部において、回転装置50に接続されている。この実施形態では、回転体31,32に取り付けられている軸33には、回転装置50が接続されている。回転体41,42の回転体41,42に取り付けられている軸43には、回転装置50および昇降装置55が接続されている。
【0090】
〈回転装置50〉
回転装置50は、回転体31,32,41,42を回転軸周りに回転させる装置である。詳細な図示は省略するが、この実施形態では、回転装置50は、回転体31,32,41,42と同数設けられている。特に限定されないが、回転装置50は、回転体31,32それぞれに接続されている2つの回転装置50aと、回転体41,42それぞれに接続されている2つの回転装置50bとを含んでいる。回転装置50aは、回転体31,32を回転軸周りに回転させる。回転装置50bは、回転体41,42を回転軸周りに回転させる。回転装置50は、炉体11の外部に設けられている。
【0091】
回転装置50は、接続されているそれぞれの回転体31,32,41,42の回転角度を制御し、回転体31,32,41,42を予め定められた角度に回転させる。この実施形態では、回転装置50は、回転体31,32,41,42を回転させることによって、被搬送物Aを支持しうる支持姿勢と、被搬送物Aを支持しない非支持姿勢とを切り替える。回転装置50は、例えば、サーボモータ、ロータリーアクチュエーター等によって実現されうる。
図2に示されているように、回転装置50は、回転体31,32,41,42を回転させることによって、支持姿勢と非支持姿勢とを切り替える。支持姿勢では、回転体31,32,41,42の支持部30a,40aは、高さ方向において搬送領域12aと重なる位置に配置される。非支持姿勢では、回転体31,32,41,42の支持部30a,40aは、高さ方向において搬送領域12aと重ならない位置に配置される。
【0092】
図2に示されている実施形態では、回転体31,32,41,42は、支持姿勢から時計回りに90度回転することによって、非支持姿勢に切り替えられる。回転体31,32,41,42は、非支持姿勢から反時計回りに90度回転することによって、支持姿勢に切り替えられる。なお、回転体の回転する向きおよび角度は、かかる形態に限定されない。回転体の回転する向きおよび角度は、回転体の数、形状、被搬送物の形状等によって適宜設定されうる。
【0093】
〈昇降装置55〉
昇降装置55は、回転体を回転軸に沿って昇降させる装置である。昇降装置55は、複数の回転体31,32,41,42のうち、回転体41,42を昇降させる。昇降装置55としては、例えば、シリンダ等が用いられうる。昇降装置55は、炉体11の上部の外壁27aに設けられている。特に限定されないが、昇降装置55は、回転体41,42に接続された回転装置50aを介して回転体41,42の上方の軸43に接続されている。この実施形態では、昇降装置55は、回転体41,42、および、回転体41,42が接続された回転装置50bを昇降させる。この実施形態では、昇降装置55からは、上方に向かってロッド51が延びており、ロッド51には、回転装置50bを支持する支持板52が取り付けられている。昇降装置55は、ロッド51および支持板52を介して回転装置50bを昇降させる。
【0094】
回転体41,42は、昇降装置55によって予め設定された位置に昇降されるように構成されている。昇降装置55には、回転体41,42の基準位置が設定されている。基準位置は、回転体41,42を昇降させる基準となる位置である。この実施形態では、昇降しない回転体31,32と回転体41,42とが同じ高さに配置されるように、基準位置が設定されている。換言すると、回転体41,42が基準位置にある時には、回転体31,32と回転体41,42が同じ高さに配置される。昇降装置55には、回転体41,42を昇降させる際の昇降位置が設定されている。この実施形態では、回転体41,42を上昇させる際の上位置が設定されている。上位置は、基準位置から支持部30a,40aのピッチ分高い位置に設定されている。昇降装置55は、回転体41,42を、上述した基準位置および上位置よりもわずかに高い位置または低い位置に昇降させることができるように構成されている。これによって、一方の支持部に支持された被搬送物Aに対して他方の支持部が干渉しない位置に調整されうる。
【0095】
昇降装置55による回転体41,42の昇降と、回転装置50による回転体31,32および回転体41,42の回転が組み合わせられることによって、被搬送物Aは、順次高さ方向に沿って搬送される。この実施形態では、被搬送物Aは、支持部30a,40aのピッチに相当する距離ずつ上方に搬送される。
【0096】
〈制御装置60〉
制御装置60は、回転装置50および昇降装置55を制御している。制御装置60は、例えば、マイクロコンピュータによって実現されている。制御装置60には、回転装置50によって回転体31,32,41,42を回転させる角度およびタイミングがプログラムされている。制御装置60には、昇降装置55によって回転体31,32,41,42を昇降させる高さおよびタイミングがプログラムされている。なお、この実施形態では、昇降装置55は、回転体31,32,41,42のうち、回転体41,42を昇降させる。
【0097】
制御装置60は、予め定められたプログラムに従って回転装置50を制御し、回転体31,32,41,42を回転させる。これによって、制御装置60は、回転体31,32,41,42の角度を、被搬送物Aを支持しうる支持姿勢と、被搬送物Aを支持せずに支持部30a,40aが搬送領域12aから退避する非支持姿勢とに切り替える。
【0098】
この実施形態では、一対の回転体31,32は、同じタイミングで回転し、一対の回転体41,42は、同じタイミングで回転するように構成されている。換言すると、制御装置60は、回転体31,32を同じタイミングで回転させるように回転装置50aを制御している。制御装置60は、回転体41,42を同じタイミングで回転させるように回転装置50bを制御している。被搬送物Aは、被搬送物Aを挟んで一対の回転体31,32および一対の回転体41,42のうち少なくともいずれかによって支持される。
【0099】
制御装置60は、予め定められたプログラムに従って昇降装置55を制御し、回転体41,42を昇降させる。この実施形態では、制御装置60は、回転体41,42を予め定められた位置に移動させるように、昇降装置55を制御している。基準位置は、上述したように、昇降装置55に接続されてない回転体31,32と同じ高さになる位置に設定されている。回転体41,42が基準位置に位置している時には、回転体31,32と回転体41,42の上端および下端は、略同一の高さに配置される。回転体41,42が上位置に位置している時には、回転体41,42は、基準位置よりも支持部30a,40aのピッチ分高い位置に配置される。回転体41,42が移動する位置としては、上位置および基準位置の他に、上位置および基準位置とはわずかに異なる高さの位置も設定されている。回転体41,42を上位置および基準位置よりも高い位置または低い位置に移動させることによって、一方の支持部に支持された被搬送物Aに対して他方の支持部が干渉することを抑制しうる。換言すると、回転体41,42を上位置および基準位置よりもわずかに高い位置または低い位置に移動させることによって、回転体31,32と回転体41,42との間で被搬送物Aの受け渡しがスムーズになりうる。なお、回転体が昇降される位置は、かかる位置に限定されない。
【0100】
回転装置50による回転体31,32および回転体41,42の回転と、昇降装置55による第2回転体の昇降が組み合わせられることによって、被搬送物Aは、下方から上方に向かって順次搬送される。被搬送物Aは、回転体31,32による支持と回転体41,42による支持とが繰り返されながら搬送される。以下、制御装置60によって実現される回転装置50および昇降装置55の制御の一例を説明する。
【0101】
図4は、制御装置60による制御を示すタイムチャートである。図4では、制御装置60によって回転装置50および昇降装置55が制御されることによって実現される回転体31,32および回転体41,42の動作が時系列に沿って示されている。図4では、回転体31,32の角度および位置は二点鎖線で示されており、回転体41,42の角度および位置は実線で示されている。
【0102】
〈ステップS0〉
ステップS0(図4参照)は、初期状態でありうる。ステップS0では、回転体31,32および回転体41,42は、いずれも支持姿勢に設定されている。回転体31,32および回転体41,42の位置は、いずれも基準位置に設定されている。被搬送物Aは、回転体31,32の支持部30aによって支持されている。
【0103】
〈ステップS1〉
ステップS1(図4参照)では、制御装置60は、昇降装置55を制御し、回転体41,42を上昇させる処理を実行する。昇降装置55は、回転体41,42を基準位置よりも高い位置に上昇させる。昇降装置55は、回転体41,42の支持部40aが被搬送物Aを支持し、かつ、被搬送物A(または被搬送物Aに載せられた被処理物)が上方の回転体31,32の支持部30aに当たらない位置まで上昇させる。ここでは、昇降装置55は、回転体31,32よりもわずかに高くなるように回転体41,42を上昇させる。これによって、被搬送物Aは、回転体41,42に支持された状態になる。このため、後の処理で回転体31,32を回転させた場合にも支持部30aが被搬送物Aの側面A2に当たりにくく、被搬送物Aのずれが生じにくくなる。
【0104】
〈ステップS2〉
ステップS2(図4参照)では、制御装置60は、回転装置50aを制御し、回転体31,32を回転させる処理を実行する。回転装置50aは、回転体31,32を90度時計回りに回転させる。回転体31,32は、非支持姿勢に設定される。回転体41,42は、支持姿勢のままである。
【0105】
〈ステップS3〉
ステップS3(図4参照)では、制御装置60は、昇降装置55を制御し、回転体41,42を上昇させる処理を実行する。この実施形態では、昇降装置55は、支持部30a,40aのピッチ分、回転体41,42を上昇させる。これによって、被搬送物Aを支持する回転体41,42は、上位置よりも上方に持ち上げられる。被搬送物Aは、一段上方の支持部30aよりも上方であり、かつ、後の処理で回転体31,32が回転する際にも支持部30aが被搬送物Aの側面A2に当たらない位置持ち上げられる。
【0106】
〈ステップS4〉
ステップS4(図4参照)では、制御装置60は、回転装置50aを制御し、回転体31,32を回転させる処理を実行する。回転装置50aは、回転体31,32を90度反時計回りに回転させる。回転体31,32は、支持姿勢に設定される。これによって、回転体31,32の支持部30aは、被搬送物Aを支持する位置に配置される。回転体31,32および回転体41,42は、いずれも支持姿勢に設定される。
【0107】
〈ステップS5〉
ステップS5(図4参照)では、制御装置60は、昇降装置55を制御し、回転体41,42を下降させる処理を実行する。昇降装置55は、回転体41,42を、回転体31,32の支持部30aが被搬送物Aを支持する位置まで下降させる。ここでは、昇降装置55は、回転体41,42を上位置まで下降させる。これによって、被搬送物Aは、回転体41,42から回転体31,32に受け渡され、回転体31,32に支持された状態になる。このため、後の処理で回転体41,42を回転させた場合にも支持部40aが被搬送物Aの側面A1に当たりにくく、被搬送物Aのずれが生じにくくなる。
【0108】
〈ステップS6〉
ステップS6(図4参照)では、制御装置60は、回転装置50bを制御し、回転体41,42を回転させる処理を実行する。回転装置50bは、回転体41,42を90度時計回りに回転させる。回転体41,42は、非支持姿勢に設定される。回転体31,32は、支持姿勢に設定されている。
【0109】
〈ステップS7〉
ステップS7(図4参照)では、制御装置60は、昇降装置55を制御し、回転体41,42を下降させる処理を実行する。昇降装置55は、被搬送物Aが回転体31,32に支持される位置まで回転体41,42を下降させる。昇降装置55は、回転体41,42を、後の処理で回転体41,42が回転する際にも支持部40aが被搬送物Aの側面に当たらない位置まで下降させる。ここでは、昇降装置55は、回転体41,42が基準位置よりもわずかに低くなるように、回転体41,42を下降させる。被搬送物Aは、回転体31,32に支持されているため、昇降されない。
【0110】
〈ステップS8〉
ステップS8(図4参照)では、制御装置60は、回転装置50bを制御し、回転体41,42を回転させる処理を実行する。回転装置50bは、回転体41,42を90度反時計回りに回転させる。回転体31,32の角度および回転体41,42は、支持姿勢に設定される。
【0111】
ステップS8で回転体41,42が支持姿勢に設定された後は、再びステップ1の処理が実行される。制御装置60は、昇降装置55を制御し、回転体41,42を基準位置よりも高い位置に上昇させる。ここでは、昇降装置55は、回転体41,42を基準位置よりもわずかに高い位置に上昇させる。これによって、被搬送物Aは、回転体31,32から回転体41,42に受け渡され、回転体41,42に支持された状態になる。
【0112】
このように、ステップS1~S8の処理によって、被搬送物Aは、一段ずつ上方の支持部30a,40aに搬送される。縦型加熱炉10では、制御装置60によって、ステップS1~S8の処理が繰り返し実行されうる。このとき、昇降装置55によって昇降される回転体は、回転体41,42に限られている。このため、制御装置60による制御がシンプルになりうる。また、回転体31,32が昇降されないため、回転体31,32,41,42の駆動がシンプルになる。これによって、比較的簡易な装置構成が実現されうる。また、回転体31,32の駆動が回転だけになるため、回転体31,32に取り付けられている軸33,34と炉体11との間のシール材が劣化しにくくなる。これによって、耐久性やメンテナンス性が良好でありうる。
【0113】
なお、制御装置60による制御は、上述した形態に限定されず、種々の変更が可能である。例えば、上述した実施形態では、下方から上方に向かって搬送されるように制御装置60のプログラムが変更されてもよい。昇降装置55が回転体31,32,41,42を昇降させる高さを変更することにより、1ストロークあたりの搬送距離が変更されてもよい。実現されうる。このように、制御装置60の制御プログラムを変更することによって、被搬送物Aの搬送の方向、速度、タイミング等の搬送条件は、適宜設定されうる。
【0114】
上述した実施形態では、回転体41,42のみに昇降装置55が接続されているが、かかる形態に限定されない。回転体31,32および回転体41,42の両方に昇降装置55が接続され、それぞれ独立に昇降可能に構成されていてもよい。被搬送物Aは、例えば、回転体31,32および回転体41,42の回転および昇降が組み合わせられることによって、回転体31,32および回転体41,42によって交互に搬送されるように構成されていてもよい。
【0115】
以上、具体的な実施形態を挙げて詳細な説明を行ったが、これらは例示にすぎず、請求の範囲を限定するものではない。このように、請求の範囲に記載の技術には、以上に記載した実施形態を様々に変形、変更したものが含まれる。
【0116】
なお、本明細書は以下の項目1~10を含んでいる。以下の項目1~10は、上記した実施形態には限定されない。
【0117】
項目1は、縦型加熱炉に関する。項目1における、縦型加熱炉は、
高さ方向に沿って被搬送物が搬送される炉内空間を内部に有する炉体と、
前記炉内空間に設けられたヒータと、
前記炉内空間に設定された、前記被搬送物が搬送される搬送領域において、高さ方向に沿って前記被搬送物を搬送する搬送装置と
を備え、
前記炉体には、前記炉内空間を高さ方向に沿って加熱ゾーンを仕切る、少なくとも一つの仕切りが設けられている。
【0118】
項目2は、項目1に記載された縦型加熱炉であって、
前記仕切りには、高さ方向に沿って前記被搬送物および前記搬送装置が通る貫通孔が形成されている。
【0119】
項目3は、項目1または2に記載された縦型加熱炉であって、
前記炉体は、直方体状に形成されており、かつ、少なくとも一つの着脱可能な側壁を有する。
【0120】
項目4は、項目3に記載された縦型加熱炉であって、
前記炉体は、互いに対向する一対の着脱可能な側壁を有している。
【0121】
項目5は、項目3または4に記載された縦型加熱炉であって、
前記着脱可能な側壁と隣り合う一対の側壁は、前記仕切りを支持する支持部を有しており、
前記仕切りは、前記一対の側壁の前記支持部に架け渡されている。
【0122】
項目6は、項目5に記載された縦型加熱炉であって、
前記仕切りは、前記着脱可能な側壁が取り外される方向に沿って分割可能に構成されている。
【0123】
項目7は、項目6に記載された縦型加熱炉であって、
前記仕切りには、高さ方向に沿って前記被搬送物および前記搬送装置が通る貫通孔が形成されており、前記貫通孔は、分割可能に構成された前記仕切りの境界に形成されている。
【0124】
項目8は、項目5~7のいずれか一項に記載された縦型加熱炉であって、
前記支持部は、前記一対の側壁から前記炉体の内側に向かって突出した部位である。
【0125】
項目9は、項目8に記載された縦型加熱炉であって、
前記支持部は、前記一対の側壁の幅方向に沿って延びている。
【0126】
項目10は、項目8または9に記載された縦型加熱炉であって、
前記一対の側壁は、前記支持部の上方に、前記仕切りを押さえる押さえ部を有している。
【符号の説明】
【0127】
A 被搬送物
Z0 搬入ゾーン
Z1~Z5 加熱ゾーン
Z6 搬出ゾーン
10 縦型加熱炉
11 炉体
12 炉内空間
12a 搬送領域
13 底面部
14~17 側壁
14a~17a 凸部
14a,15a 支持部
14b~17b 貫通孔
14c,15c 貫通孔
18 天井部
19,19a~19f 仕切り
19g1 第1部
19g2 第2部
19h 貫通孔
19h1 第1孔部
19h2 第2孔部
20 搬送装置
25 ヒータ
27,27b,27b1 外壁
27b2 押さえ板
27b3 蓋
28 温度センサ
30a,40a 支持部
31,32,41,42 回転体
33,34,43,44 軸
50 回転装置
55 昇降装置
60 制御装置
図1
図2
図3
図4
【手続補正書】
【提出日】2023-04-21
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高さ方向に沿って被搬送物が搬送される炉内空間を内部に有する炉体と、
前記炉内空間に設けられたヒータと、
前記炉内空間に設定された、前記被搬送物が搬送される搬送領域において、高さ方向に沿って前記被搬送物を搬送する搬送装置と
を備え、
前記炉体は、
少なくとも一つの着脱可能な側壁と、
前記着脱可能な側壁と隣り合う一対の側壁と、
記炉内空間を高さ方向に沿って加熱ゾーンを仕切る、少なくとも一つの仕切り
を有し、
前記一対の側壁は、それぞれ互いに対向する面に支持部を有し、
前記仕切りは、前記一対の側壁に設けられた前記支持部に支持されている、
縦型加熱炉。
【請求項2】
前記仕切りには、高さ方向に沿って前記被搬送物および前記搬送装置が通る貫通孔が形成されている、請求項1に記載された縦型加熱炉。
【請求項3】
前記炉体は、直方体状に形成されている、請求項1または2に記載された縦型加熱炉。
【請求項4】
前記炉体は、互いに対向する一対の着脱可能な側壁を有している、請求項3に記載された縦型加熱炉。
【請求項5】
記仕切りは、前記一対の側壁の前記支持部に架け渡されている、請求項3に記載された縦型加熱炉。
【請求項6】
前記仕切りは、前記着脱可能な側壁に平行な方向に沿って分割可能に構成されている、請求項5に記載された縦型加熱炉。
【請求項7】
前記仕切りには、高さ方向に沿って前記被搬送物および前記搬送装置が通る貫通孔が形成されており、前記貫通孔は、分割可能に構成された前記仕切りの境界に形成されている、請求項6に記載された縦型加熱炉。
【請求項8】
前記支持部は、前記一対の側壁から前記炉体の内側に向かって突出した部位である、請求項5に記載された縦型加熱炉。
【請求項9】
前記支持部は、前記一対の側壁の幅方向に沿って延びている、請求項8に記載された縦型加熱炉。
【請求項10】
前記一対の側壁は、前記支持部の上方に、前記仕切りを押さえる押さえ部を有している、請求項8に記載された縦型加熱炉。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0074
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0074】
上述した実施形態では、仕切り19は、第1部19g1と、第2部19g2とから構成されており、分割可能に構成されている。仕切り19を構成する第1部19g1と第2部19g2は、側壁16、17に平行な方向に沿って分割可能に構成されている。このため、側壁16を取り外した状態で第1部19g1を取り外すことができる。また、互いに対向する側壁16,17が炉体11に対して着脱可能に構成されている場合には、第1部19g1および第2部19g2を、それぞれ反対方向から取り外すことができる。これによって、仕切り19が交換されやすくなり、仕切り19のメンテナンス性が向上しうる。また、被処理物の加熱条件に応じて適切な材質および寸法の仕切り19を設置することができる。