(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024063308
(43)【公開日】2024-05-13
(54)【発明の名称】マスク用基材およびマスク
(51)【国際特許分類】
A41D 13/11 20060101AFI20240502BHJP
D06M 11/83 20060101ALI20240502BHJP
B32B 5/02 20060101ALI20240502BHJP
D06M 101/04 20060101ALN20240502BHJP
【FI】
A41D13/11 M
A41D13/11 Z
D06M11/83
B32B5/02 A
D06M101:04
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022171123
(22)【出願日】2022-10-26
(71)【出願人】
【識別番号】000176637
【氏名又は名称】日本製紙パピリア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130812
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100164161
【弁理士】
【氏名又は名称】三宅 彩
(72)【発明者】
【氏名】飯森 武志
(72)【発明者】
【氏名】眞重 るり
(72)【発明者】
【氏名】小山 宗央
【テーマコード(参考)】
4F100
4L031
【Fターム(参考)】
4F100AB02B
4F100AB02H
4F100AB10B
4F100AB10H
4F100AB12B
4F100AB12H
4F100AB14B
4F100AB14H
4F100AB16B
4F100AB16H
4F100AB17B
4F100AB17H
4F100AB18B
4F100AB18H
4F100AB24B
4F100AB24H
4F100AB25B
4F100AB25H
4F100AJ04A
4F100AJ04B
4F100AJ04C
4F100AJ06A
4F100AJ06B
4F100AJ06C
4F100AK03B
4F100AK03H
4F100AK21B
4F100AK21H
4F100AK42B
4F100AK42H
4F100AT00
4F100BA03
4F100CA30B
4F100DG10A
4F100DG10B
4F100DG10C
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4F100DG15C
4F100EC032
4F100EJ40
4F100GB56
4F100GB66
4F100GB71
4F100JC00
4F100JD02
4L031AA02
4L031AB31
4L031BA04
4L031DA12
(57)【要約】
【課題】
マスクの外層の外気側表面における抗菌性、抗ウィルス性、消臭性と血液防御性を有するマスク用基材及びマスクを提供すること。
【解決手段】
外層が金属含有セルロース繊維を含有しない第1層と金属含有セルロース繊維及び合成繊維とを含有する第2層とを積層した湿式不織布であることを特徴とするマスク用基材、および、少なくとも外層と中層と内層から構成されるマスクにおいて外層が前記マスク用基材であり、前記マスクの最外表面が前記マスク用基材の第1層であるマスク。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも金属含有セルロース繊維を含有しない第1湿式不織布層並びに金属含有セルロース繊維及び合成繊維を含有する第2湿式不織布層が積層されたマスク用基材。
【請求項2】
金属含有セルロース繊維が、Ag、Au、Pt、Pd、Ni、Mn、Fe、Ti、Al、Zn及びCuの群から選ばれる1種以上の金属イオン及び/または金属粒子を含有するパルプである請求項1に記載のマスク用基材。
【請求項3】
少なくとも外層、中層及び内層から構成されたマスクであって、
前記外層の最外表面が請求項1に記載のマスク用基材の第1湿式不織布層であるマスク。
【請求項4】
下記条件を満たす請求項3に記載のマスク。
(1)JIS T 9001記載の血液バリア試験を試験圧力10.6kPaにて実施した時の人口血液の浸透しないものが32枚中29枚以上。
(2)JIS L 1902 8.3菌転写法に準じて抗菌性試験を実施した時のマスクの最外表面から菌が転写されたぺたんチェックにおける37℃、湿度約10%、17時間で培養後のコロニー数が10未満。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗菌性、抗ウィルス性、消臭性、及び血液防御性を有するマスク用基材及びマスクに関する。さらに詳しくは、抗菌性、抗ウィルス性、消臭性と血液防御性を有するマスク用基材をマスクの外気側表面(外層)に配したマスクに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な不織布マスクは、外層、中層、内層の3層構造を有しており、外層(外気側)と内層(口元側)には、ポリプロピレン(PP)スパンボンド不織布、中層には、集塵性を担保するPPメルトブローン不織布が用いられている。一般的な不織布マスクには、微小粒子、バクテリア飛沫、ウィルス飛沫を捕集することが求められており、医療用マスクには、さらに血液バリア性が求められている。
抗菌性、抗ウィルス性を担保するために、種々の抗菌加工が施されている不織布マスクが提案されている。
例えば、引用文献1には、外気側PP不織布層、消臭不織布層、防塵不織布層、顔面側PP不織布層の順に積層されたマスクが開示されている。
引用文献2には、表地とフィルターと裏地からなるマスクにおいて、抗菌消臭性を有する二酸化チタンの層を、フィルターの表地方向に形成させるか、表地のフィルター方向に形成させる抗菌消臭マスクが開示されている。
また、引用文献3には、マスクの表面層に柿渋、またはタンニンを含む植物由来の抗菌剤を含有するマスクが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】WO2016/198460号
【特許文献2】特開2022-016243号
【特許文献3】実用新案登録3187487号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、引用文献1や2のマスクは、抗菌抗ウィルス効果を有す層をマスクの外層と中層との間に挿入されており、呼吸によって中層に捕捉された菌やウィルスに対する抗菌抗ウィルス効果は発現できるが、マスク表面に付着したバクテリア飛沫やウィルス飛沫に対する抗菌抗ウィルス効果が発現されない課題を有す。
また、引用文献3のマスクで使用されるタンニンは水溶性であるため、表面層が親水性となり、血液防御性が十分に発現されない問題がある。
このような状況に鑑み、本発明の課題は、マスクの外気側表面における抗菌性、抗ウィルス性、消臭性、及び血液防御性を有するマスク用基材及びマスクを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、少なくとも金属含有セルロース繊維を含有しない第1湿式不織布層、及び金属含有セルロース繊維及び合成繊維を含有する第2湿式不織布層が積層されているマスク用基材を用いることで、マスクの外層の外気側表面において抗菌性、抗ウィルス性、消臭性、血液防御性を有するマスク用基材及びマスクが得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
これらに限定されるものではないが、本発明は以下の態様を包含する。
(1)少なくとも 金属含有セルロース繊維を含有しない第1湿式不織布層、及び金属含有セルロース繊維及び合成繊維を含有する第2湿式不織布層が積層されているマスク用基材。
(2)金属含有セルロース繊維が、Ag、Au、Pt、Pd、Ni、Mn、Fe、Ti、Al、Zn及びCuの群から選ばれる1種以上の金属イオン及び/または金属粒子を含有するパルプである請求項1に記載のマスク用基材。
(3)請求項1に記載のマスク用基材の第1湿式不織布層が最外表面に配置された、少なくとも外層と中層と内層から構成されるマスク。
(4)下記条件(1)~(2)を満たす請求項3に記載のマスク。
条件(1)JIS T 9001記載の血液バリア試験を試験圧力10.6kPaにて実施した時の人口血液の浸透しないものが32枚中29枚以上。
条件(2)JIS L 1902 8.3菌転写法に準じて抗菌性試験を実施した時のマスクの最外表面から菌が転写されたぺたんチェックにおける37℃、湿度約10%、17時間で培養後のコロニー数が10未満。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、マスクの外層の外気側表面において抗菌性、抗ウィルス性、消臭性、血液防御性を有するマスク用基材及びマスクを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1はマスク及びマスク用基材の層構成の一実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態に係るマスク用基材及びマスクを説明する。
(マスクの構成)
本発明におけるマスクの一実施形態を、図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1はマスクを構成する層の断面図であり、外層1、中層2、内層3の3層から構成されるマスクであって、さらに外層1は本願における少なくとも第1湿式不織布層4、第2湿式不織布層5からなり、金属含有セルロース繊維を含有しない第1層不織布層4が外層の外気側表面(最外表面)となるように配される。
【0010】
本発明のマスクは少なくとも外層1と中層2と内層3の3層構成であることが好ましい。各層はそれぞれ2層以上の層から構成されてもよい。また、外層1が金属含有セルロース繊維を含有しない第1湿式不織布層(第1層)4と金属含有セルロース繊維と合成繊維を含有する第2湿式不織布層(第2層)5とが抄き合わされた湿式不織布であるマスク用基材1であり、第1層4がマスクの最外表面(マスク最表面)に配されたマスクであることが好ましい。
【0011】
(マスクの形状)
本発明において、マスクの形状は、平面的な「平型マスク」、立体的になるプリーツ構造を採用した「プリーツ型マスク」、顔のラインに沿った形状で密着性を高めた「立体型マスク」などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0012】
(マスクの構成及びマスク用基材)
本発明において、マスク用基材1は、少なくとも金属含有セルロースを含まない、合成繊維を主体とする第1層4と金属含有セルロース繊維と合成繊維を含有する第2層5とが積層された湿式不織布であり、第1層4がマスク最外表面に配することが望ましい。これにより、マスクの最外表面の抗菌性、血液バリア性などの効果を発現させることができる。中層2は空気中に浮遊する微小粒子やバクテリア飛沫、ウィルス飛沫を捕捉する能力がある不織布であれば材質を含めて特に制限されず、中層2は1枚で構成されても良く、2枚以上の不織布を積層しても良い。また、内層3は顔に触れる不織布であり、肌に触れた時の快適性や通気性を阻害しなければ、特に制限されない。
【0013】
なお、金属含有セルロース繊維と合成繊維を含有する第2層5がマスクの最外表面に配される場合、マスク最外表面の抗菌性と血液バリア性は発現するが、マスクの表と裏を誤って逆に装着した場合に人の肌に金属含有セルロース繊維と合成繊維を含有する第2層5が触れることから、安全性の面で好ましくない。
【0014】
(マスク用基材の形状)
外層1を構成するマスク用基材1を構成する金属含有セルロースを含有しない第1層4と金属含有セルロース繊維と合成繊維を含有する第2層5とが抄き合わされていない場合、すなわち第1層4と第2層5の間に別の基材が配される場合、マスク最外表面の抗菌性が十分に発現されず好ましくない。
【0015】
(マスク用基材の材料)
以下、本発明の実施形態に係る外層を構成する基材である金属含有セルロース繊維を含有しない第1層4と金属含有セルロース繊維と合成繊維を含有する第2層5とが抄き合わされた湿式不織布(マスク用基材1)に使用される材料について説明する。
【0016】
<金属含有セルロース系繊維>
本発明の湿式不織布(マスク用基材1)を構成する第2層5は、カルボキシル基又はカルボキシレート基を有するセルロース系繊維に対し、Ag、Au、Pt、Pd、Ni、Mn、Fe、Ti、Al、Zn及びCuの群から選ばれる1種以上の金属イオン及び/または金属粒子を含有する金属含有セルロース系繊維を含む。本発明において、金属含有セルロース繊維として例えば特開2014-240538に記載の金属ナノ粒子とセルロース系ファイバーとの複合体などを使用することができる。
【0017】
金属含有セルロース系繊維の含有量は、不織布に対し1質量%以上であることが好ましい。上記含有量が1質量%未満であると、十分な消臭・抗菌効果を付与することができない場合がある。一方、金属含有セルロース含有量の上限値は特に限定されないが、求められる消臭・抗菌・抗ウィルス効果に応じて適宜調整することが好ましい。なお、効果、及びコスト等の観点からは、95質量%以下であることが好ましい。することができる。
【0018】
<合成繊維>
本発明の実施形態に係る湿式不織布(マスク用基材1)を構成する第1層4、第2層5は、合成繊維、すなわち石油等の有機低分子を重合した合成樹脂からなる繊維を少なくとも一種類以上含む。一般に、合成繊維は、上述の金属含有セルロ-ス系繊維に比べ、不織布にしたときの通気性や寸法安定性、撥水性等の点では優れている。
【0019】
合成繊維の含有量は、第1層4、第2層5ともに、それぞれの層の全重量に対し5質量%以上であることが、寸法安定性の点から好ましい。第1層4は撥水性の観点から、第1層4の全質量に対して50質量%以上、より好ましくは80質量%以上、更に好ましくは95質量%以上である。所望の撥水性が得られる範囲でパルプなどの親水性である繊維を配合することができる。一方、第2層5は金属イオン含有セルロース系繊維の含有量が、不織布に対し1質量%以上であることが好ましいことから、合成繊維の含有量は不織布に対し99質量%以下であることが好ましい。また、所望の効果が阻害されない範囲でパルプなどの親水性である繊維を配合することができる。
【0020】
合成繊維の種類は、特に限定されず、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)繊維、ポリブチレンテレフタレート(PBT)繊維、ポリエチレンナフタレート(PEN)繊維、ポリエチレンイソフタレート(PEI)繊維などのポリエステル系繊維、ポリプロピレン(PP)繊維、ポリエチレン(PE)繊維、エチレン・ビニルアルコール共重合繊維、エチレン・酢酸ビニル共重合繊維などのポリオレフィン系繊維、ポリアクリル系繊維ポリアミド系繊維、ポリビニルアルコール(PVA)系繊維、ポリ乳酸(PLA)系繊維などの単一繊維、ポリエステル系共重合樹脂-ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂-ポリエステル樹脂、エチレン・ビニルアルコール共重合樹脂-ポリエステル樹脂、ポリエステル系共重合樹脂-ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂-ポリプロピレン樹脂、エチレン・ビニルアルコール共重合樹脂-ポリプロピレン樹脂、エチレン・酢酸ビニル共重合樹脂-ポリプロピレン樹脂など複合繊維を使用することができる。
【0021】
また、合成繊維は、単一同心構造を有する主体性繊維であってよく、また、芯部と鞘部の融点が異なる芯鞘型繊維であってもよい。好ましい態様において合成繊維は、繊維分散性の観点から、繊度が0.5~4.5dtex、繊維長が3~30mm(好ましくは5~20mm、更に好ましくは5~15mm)のものであることが望ましい。この合成繊維の繊度と繊維長の測定は、JIS L 1015:2010に基づく。また、合成繊維の融点は、例えば、110~300℃の範囲であり、好ましくは110~280℃の範囲であり、後段における高温下でのエンボス加工等の高温処理および安定性を考慮すると、200~260℃の範囲であることがより好ましい。融点が110℃未満と低い場合には、湿式不織布の基紙を抄造する際に、抄紙ドライヤーに合成繊維由来の汚れ(毛羽立ち)が発生しやすくなる。一方、融点が300℃を超える合成繊維を配合することは、技術的に意味がないだけでなく、不経済なことでもある。芯鞘型合成繊維を使用する場合は、鞘部の融点が上記範囲内のものを選択する。なお、合成繊維の融点の測定は、JIS K 7121:2012に基づく。
【0022】
芯鞘型繊維としては、芯部/鞘部が、ポリプロピレン(PP)/ポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)/ポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)/低融点ポリエチレンテレフタレート(PET)、又はポリプロピレン(PP)/ポリプロピレン(PP)など、が挙げられる。芯鞘型ポリエステル系複合繊維としては、鞘部(低融点成分)が変性ポリエステルで芯部(高融点成分)がポリエチレンテレフタレートから構成された複合繊維(芯鞘繊維)が挙げられる。芯鞘型ポリオレフィン系複合繊維としては、鞘部(低融点成分)がポリエチレンで芯部(高融点成分)がポリプロピレンから構成された複合繊維(芯鞘繊維)が挙げられる。
【0023】
<湿式不織布>
本発明において湿式不織布は、従来の抄紙方法を用いて製造することができる。抄紙機としては、従来公知の各種のもの、例えば、円網抄紙機、傾斜短網抄紙機、長網抄紙機、短網抄紙機等を用いることができ、円網抄紙機-円網抄紙機、傾斜短網抄紙機-傾斜短網抄紙機、円網抄紙機-傾斜短網抄紙機、円網抄紙機-長網抄紙機など、適宜要求特性に応じて抄紙機の組み合わせを選定することで抄き合わせすることができる。抄紙法における乾燥工程としては、ヤンキードライヤー式、多筒式、熱風式、赤外線加熱式などを使用することができる。
【0024】
繊維同士を結合させる方法は、特に限定されず、公知の方法を用いることができる。例としては、水溶液タイプもしくはエマルジョンタイプのバインダーを含浸、又はスプレーなどの方法で湿式不織布に付着させ、加熱・乾燥させて繊維の交点を接着する方法、低融点の熱可塑性繊維を混合した湿式不織布を、熱ロールの間を通して熱圧着するか、又は熱風を当てることにより、繊維同士を接着させることができる。
【0025】
使用するバインダーは、必要に応じて適宜選択可能であり、たとえば、カゼイン、アルギン酸ナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム塩、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアクリル酸ソーダ等の水溶液タイプのバインダーや、ポリアクリル酸エステル、アクリル・スチレン共重合体、ポリ酢酸ビニル、エチレン・酢酸ビニル共重合体、アクリルニトリル・ブタジエン共重合体、メチルメタアクリレート・ブタジエン共重合体、スチレン・ブタジエン共重合体ラテックス等のエマルジョンタイプのバインダー等が使用可能である。
【0026】
本発明の実施形態に係る湿式不織布(マスク用基材1)の坪量は、15~100g/m2の範囲であることが好ましく、20~80g/m2の範囲であることがさらに好ましい。金属含有セルロース繊維と合成繊維を含有する第2層5の坪量は、10~60g/m2の範囲であることが好ましく、15~50g/m2の範囲であることがさらに好ましい。一方、金属含有セルロースを含有しない第1層4の坪量は5~40g/m2の範囲であることが好ましく、5~30g/m2の範囲であることがさらに好ましい。各層の坪量が10g/m2以上であることが、均一かつ製造時の取り扱いにおいて最低限の強度を持つシートを製造する点から好ましい。湿式不織布(マスク用基材1)の坪量が100g/m2以下であることが、マスクで使用するときの通気性やマスクの厚さの点から好ましい。
【実施例0027】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<金属担持セルロース繊維の製造>
針葉樹由来の漂白済み未叩解クラフトパルプ(白色度85%)275BDkg(絶乾)をTEMPO(Sigma Aldrich社製)1.07kg(絶乾1gのセルロースに対し0.25mmol)と臭化ナトリウム28.3kg(絶乾1gのセルロースに対し1.0mmol)を溶解した水溶液500mlに加え、パルプが均一に分散するまで撹拌した。
次いで、次亜塩素酸ナトリウム水溶液を次亜塩素酸ナトリウムが5.2mmol/gになるように反応系に添加し、室温にて酸化反応を開始した。反応中は系内のpHが低下するが、3M水酸化ナトリウム水溶液を逐次添加し、pH10に調整した。次亜塩素酸ナトリウムを消費し、系内のpHが変化しなくなった時点で反応を終了した(酸化反応に要した時間:約90分)。
反応後の混合物をスクリュープレスで脱水した後、十分な水の量による水洗、ろ過を2回繰り返すことにより、水を含浸させた酸化セルロース繊維を得た(固形分:10質量%、パルプ収率:90%、カルボキシル基量:1.68mmol/g)。
得られた酸化セルロース繊維に対し、水を加えて固形分濃度2%の分散液とし、pHを9.0に調整した。次いで、CuCl2(富士フイルム和光純薬)を加え、酸化セルロース繊維1gに対する濃度が1.0mmol/gになるよう撹拌しながら加え、さらに30分間撹拌することにより、酸化セルロース繊維にCuイオンを含有させた。
その後、十分な量の水による水洗、ろ過を2回繰り返すことにより、未反応の金属塩を除去し、水を含浸させたCuイオン担持酸化セルロース繊維を得た(固形分:30質量%)。得られたCuイオン担持酸化セルロース繊維における金属イオンの含有量は43.8mg/gであり、Cuイオン担持酸化セルロース繊維のカナダ標準ろ水度(CSF)は500mlであった。
【0028】
<評価>
血液防御性(血液バリア試験)
JIS T 9001記載の血液バリア試験(試験圧力:10.6kPa(80mmHg))を行い、以下の基準で評価を行った。
○:浸透なし29枚以上/32枚
×:浸透あり29枚未満/32枚
抗菌活性
JIS L 1902 8.3菌転写法を参考に以下の方法でマスクの最外表面の抗菌活性値を測定した。サンプルは全層重ね合わせた状態で切り出して使用し(40mm×50mm、端の40mm×10mmの範囲をステープラで止めて全層固定)、抗菌性評価は外層にて行った。
(手順)
1.試料に130℃、1時間の乾熱操作(滅菌)を行った。
2.吸引ろ過装置のファンネル、ベースは消毒液で拭き取りまたは洗い込みを行い、さらに簡易滅菌水で洗浄した。
3.ゴム手袋を装着し、20gの簡易滅菌水を加えて2分揉みこみ、菌を洗い出した。これを菌液とした。
4.吸引ろ過装置にセルロースメンブレンフィルター(0.2μm)を装着し、1gの菌液と6gの簡易滅菌水を加えて、吸引ろ過した。
5.ピンセットでフィルターを回収し、シャーレ蓋に置いた。その上に試料を測定面を下にして重ねて、さらにシャーレを置き、おもりを載せて総質量で300gの荷重をかけ、10秒静置して転写した。
6-1(接種直後用).菌転写後の試料の菌転写面に100gのおもりを載せたぺたんチェックを載せて、30秒静置して、ぺたんチェックを回収した。
6-2(接種後30分静置用).菌転写後の試料を秤量瓶内に保存し、接種から30分後、6(接種直後用)と同様の操作を実施した。
7.ぺたんチェックの培養は37℃、湿度約10%、17時間行った。
実験はN=2で行った。
以下の基準で評価を行った。
○:コロニー数が10未満
×:コロニー数が10以上
金属露出試験
エネルギー分散型X線分析において繊維表面の金属元素を検出した。
○:未検出
×:検出された
【0029】
実験1.マスク用基材の製造
[実施例1-1(湿式不織布Aの製造)]
上記金属担持セルロース繊維10質量%、主体ポリエステル繊維(帝人フロンティア(株)製1.7dtex×5mm)40質量%、芯鞘ポリエステルバインダー繊維(ユニチカ(株)製2.2dtex×5mm)50質量%をパルパーにて離解し、傾斜短網抄紙機へ供した。一方、主体ポリエステル繊維(帝人フロンティア(株)製1.7dtex×5mm)50質量%、芯鞘ポリエステルバインダー繊維(ユニチカ(株)製2.2dtex×5mm)50質量%をパルパーにて離解し、円網抄紙機へ供した。傾斜短網抄紙機の坪量を25g/m2、円網抄紙機の坪量を10g/m2となるよう抄紙し、傾斜短網層、円網層の順に抄き合わせたのち、ヤンキードライヤーにて乾燥を行い、湿式不織布Aを得た。金属担持セルロースを含有しない円網層側を表面とした。
【0030】
[比較例1-1(湿式不織布Bの製造)]
上記金属担持セルロース繊維10質量%、主体ポリエステル繊維(帝人フロンティア(株)製1.7dtex×5mm)40質量%、芯鞘ポリエステルバインダー繊維(ユニチカ(株)製2.2dtex×5mm)50質量%をパルパーにて離解し、傾斜短網抄紙機へ供した。傾斜短網抄紙機の坪量を25g/m2となるよう抄紙し、ヤンキードライヤーにて乾燥を行い、湿式不織布Bを得た。抄紙機の網に接していない面を表面とした。
【0031】
【0032】
表1から明らかなように、実施例1-1の湿式不織布Aは両面に抗菌活性を有するが金属が露出しているのは裏面のみであった。一方で、比較例1-1の湿式不織布Bは、表裏ともに抗菌活性を有する者の、表裏いずれの面も金属が露出していた。
【0033】
実験2.マスクの製造
[実施例2-1]
25g/m2のポリプロピレン製メルトブローン不織布と25g/m2のポリプロピレン製スパンボンド不織布を重ね合わせ、さらにメルトブローン不織布の側に湿式不織布Aを金属含有層がメルトブローン不織布と接するように重ね合わせたのち、3段プリーツ加工を施し、ヒートシールを行い、プリーツ型マスクを作製した。
JIS T 9001記載の血液バリア試験を行い、対象の32サンプル全てで人工血液の浸透が見られなかった。
接種直後のコロニー数は6と6、接種後30分静置のコロニー数は4と1であった。
[比較例2-1]
湿式不織布Aを合成繊維層がメルトブローン不織布と接するように積層した以外は実施例1と同様にプリーツ型マスクを作製した。
JIS T 9001記載の血液バリア試験を行い、対象の32サンプル全てで人工血液の浸透が見られなかった。
金属含有層がマスクの最外表面に出ており、安全性に懸念がある。
実施例1と同様の方法で抗菌試験を行い接種直後のコロニー数は5と7、接種後30分静置のコロニー数は4と6であった。
[比較例2-2]
不織布Aを不織布Bに変更した以外は実施例1と同様にプリーツ型マスクを作製した。
JIS T 9001記載の血液バリア試験を行い、対象の32サンプル中16サンプルで人工血液の浸透が見られた。
金属含有層がマスクの最外表面に出ており安全性に懸念がある。
実施例1と同様の方法で抗菌試験を行い接種直後のコロニー数は4と6、接種後30分静置のコロニー数は3と2であった。
[比較例2-3]
不織布Bのメルトブローン不織布とは反対側にポリプロピレン製スパンボンド不織布を積層してプリーツ型マスクを作製した。
JIS T 9001記載の血液バリア試験を行い、対象の32サンプル中31サンプルで人工血液の浸透が見られなかった。
実施例1と同様の方法で抗菌試験を行い接種直後のコロニー数は125と60、接種後30分静置のコロニー数は94と37であった。
[比較例2-4]
市販の三層不織布マスクを用いて評価した。
JIS T 9001記載の血液バリア試験を行い、対象の32サンプル全てで人工血液の浸透が見られなかった。
実施例1と同様の方法で抗菌試験を行い接種直後のコロニー数は135と111、接種後30分静置のコロニー数は51と97であった。
外層に金属は検出されなかった。
【0034】
【0035】
表2から明らかなように、本発明のマスクはマスクの外層の外気側表面において抗菌活性を有し、血液防御性を有するマスクを得ることができた。